IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越ポリマー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-押釦スイッチ用部材 図1
  • 特許-押釦スイッチ用部材 図2
  • 特許-押釦スイッチ用部材 図3
  • 特許-押釦スイッチ用部材 図4
  • 特許-押釦スイッチ用部材 図5
  • 特許-押釦スイッチ用部材 図6
  • 特許-押釦スイッチ用部材 図7
  • 特許-押釦スイッチ用部材 図8
  • 特許-押釦スイッチ用部材 図9
  • 特許-押釦スイッチ用部材 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】押釦スイッチ用部材
(51)【国際特許分類】
   H01H 13/20 20060101AFI20240411BHJP
【FI】
H01H13/20 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021017172
(22)【出願日】2021-02-05
(65)【公開番号】P2022120336
(43)【公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】平谷 光利
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-7450(JP,A)
【文献】特開2017-45608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に窪む若しくは貫通する空間を備えたベース部と、
前記空間内にて往復可動なキートップと、
前記キートップに固定されていて、前記キートップの前記空間内への押圧と当該押圧の解除によって前記空間内を往復可動な第1磁石と、
前記第1磁石よりも前記キートップを押圧する方向と逆側の先端方向において固定され、前記第1磁石と磁力を通じて引き合う第2磁石と、
前記ベース部自体または前記ベース部の厚さ方向の一部に配置される壁を構成し、少なくとも前記第2磁石および前記空間を囲うように配置され、前記第1磁石および前記第2磁石からの磁束を遮蔽する第1磁束遮蔽部と、
を備える押釦スイッチ用部材であって、
前記第2磁石は、前記キートップの往復移動時において挿通可能な大きさの第1貫通孔を備え、
前記第1磁束遮蔽部は、前記キートップの往復移動時において挿通可能な大きさの第2貫通孔を備え、
前記第1磁石は、前記第1貫通孔の外周領域にて前記第2磁石に吸着可能であって、
前記キートップを押圧する前には、前記第1磁石と前記第2磁石とが磁力で吸着しており、
前記キートップを前記空間内に向けて押圧すると、前記磁力に反して前記第1磁石を前記第2磁石から引き離し可能であり、
前記キートップの押圧を解除すると、前記第1磁石と前記第2磁石とが引き合い、前記第1磁石が前記第2磁石の方向に移動して再び吸着可能であることを特徴とする押釦スイッチ用部材。
【請求項2】
前記キートップは、ゴム状弾性体と、前記第1磁石および前記第2磁石からの磁束を遮蔽する第2磁束遮蔽部と、を備え、
前記第2磁束遮蔽部は、少なくとも前記キートップが前記第1貫通孔を往復移動する領域に備えられることを特徴とする請求項1に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項3】
前記キートップは、柱状の前記ゴム状弾性体と、柱状の前記第2磁束遮蔽部と、を前記キートップの押圧方向に積載して成ることを特徴とする請求項2に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項4】
前記キートップは、筒状の前記第2磁束遮蔽部と、前記第2磁束遮蔽部に挿入されている前記ゴム状弾性体と、を備えることを特徴とする請求項2に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項5】
前記第1磁束遮蔽部は、
前記第2貫通孔を有し、前記ベース部において前記キートップの押圧方向と逆側の先端方向に開口する開口部を覆う遮蔽面と、
前記遮蔽面の外周端部から前記空間における前記押圧方向の先端へ延びる遮蔽壁と、
を備え、
前記第2磁石は、前記径方向において前記第2貫通孔より大きくかつ前記開口部より小さい磁石であって、前記遮蔽面の前記押圧方向側の面に保持されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項6】
前記第1磁石は、前記キートップの押圧方向の先端に固定されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項7】
前記第1磁石または前記キートップにおける押圧方向側の面に固定される導電性の可動接点をさらに備え、前記可動接点よりも押圧方向に位置する別の接点に電気的に接続可能としていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項8】
前記可動接点と前記第1磁石との間に配置され、少なくとも前記第1磁石からの磁束を遮蔽する第3磁束遮蔽部をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の押釦スイッチ用部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押釦スイッチ用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車載機器、通信機器、オーディオ機器、家庭用電気機器等の多種多様な機器のスイッチとして、キートップ、ドーム部およびベース部を備える押釦スイッチ用部材を用いたものが知られている(例えば、特許文献1,2を参照)。
【0003】
図10は、従来から公知の押釦スイッチ用部材の使用例を説明するための縦断面図を示す。
【0004】
図10に示す押釦スイッチ用部材100は、基板110上に配置され、基板110に向かう方向(図10の下方向)およびその逆方向(図10の上方向)に弾性的に往復可動な部材である。押釦スイッチ用部材100は、キートップ101と、キートップ101から基板110側へ突出するプッシャー部102と、キートップ101の平面視にて径方向外側にスカート状に接続されるドーム部103と、ドーム部103の径方向外側に連接するベース部104と、を備える。押釦スイッチ用部材100は、プッシャー部102の先端に、基板110上の固定接点108,108に対して接触と非接触とを可能とする可動接点107を備える。キートップ101、プッシャー部102、ドーム部103およびベース部104は、同一種類のゴム状弾性体からなる。
【0005】
操作者がキートップ101をその上から押圧していくと、ドーム部103が弾性変形(座屈)し、可動接点107が固定接点108,108に接触して、固定接点108,108を導通させる。操作者がキートップ101の押圧を解除すると、ドーム部103は自身の弾性力により元の形状に戻るため、キートップ101、プッシャー部102および可動接点107は上昇し、押圧前の初期状態に戻る。押釦スイッチ用部材100によれば、ドーム部103の弾性変形により操作者に良好なクリック感を付与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-233973号公報
【文献】特開2000-76959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、電子機器の高性能化により、押釦スイッチ用部材の使用頻度は高まり、押釦スイッチ用部材の繰り返し打鍵に対する長寿命化が求められている。しかしながら、このような押釦スイッチ用部材は、スイッチがオンになった後の急激な荷重の上昇を十分に抑えることが困難である。ドーム部はゴム状弾性体で形成されているため、スイッチがオンになった後もキートップへの加重が繰り返されると、プッシャー部とキートップとに生じる撓みにより薄いドーム部にストレスが加わる。この結果、ドーム部が破断してキートップの復帰不良が生じる虞がある。
【0008】
本出願人に属する発明者は、本発明に先立ち、厚さ方向に窪む若しくは貫通する空間を備えたベース部と、当該空間内にて往復可動であってゴム状弾性体からなるキートップと、キートップの当該空間内への押圧とその解除によってキートップとともに当該空間内を往復可動な第1磁石と、第1磁石よりキートップの押圧方向と反対側に固定され、第1磁石と磁力を通じて引き合う第2磁石と、を備える押釦スイッチ用部材を開発した(本発明の時点において未公開)。当該押釦スイッチ用部材によれば、キートップを押圧する前は第1磁石と第2磁石とが磁力で吸着し、キートップを押圧すると磁力に反して第1磁石が第2磁石から引き離され、キートップの押圧を解除すると第1磁石と第2磁石とが引き合い、第1磁石が第2磁石の方向に移動して再び吸着する。よって、当該押釦スイッチ用部材によれば、従来の押釦スイッチ用部材(図10を参照)のようなドーム部を備えず、第1磁石と第2磁石との間の磁力によりスイッチのオンおよびオフの切り替えを可能とするため、ドーム部の破断によるキートップの復帰不良を抑制することができる。しかし、これをさらに改良して、第1磁石および第2磁石からの磁束による周辺部材への影響を抑制することが望まれている。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、キートップの復帰不良を抑制し、第1磁石および第2磁石からの磁束による周辺部材への影響を抑制し、かつ操作性の良好な押釦スイッチ用部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る押釦スイッチ用部材は、厚さ方向に窪む若しくは貫通する空間を備えたベース部と、前記空間内にて往復可動なキートップと、前記キートップに固定されていて、前記キートップの前記空間内への押圧と当該押圧の解除によって前記空間内を往復可動な第1磁石と、前記第1磁石よりも前記キートップを押圧する方向と逆側の先端方向において固定され、前記第1磁石と磁力を通じて引き合う第2磁石と、前記ベース部自体または前記ベース部の厚さ方向の一部に配置される壁を構成し、少なくとも前記第2磁石および前記空間を囲うように配置され、前記第1磁石および前記第2磁石からの磁束を遮蔽する第1磁束遮蔽部と、を備える押釦スイッチ用部材であって、前記第2磁石は、前記キートップの往復移動時において挿通可能な大きさの第1貫通孔を備え、前記第1磁束遮蔽部は、前記キートップの往復移動時において挿通可能な大きさの第2貫通孔を備え、前記第1磁石は、前記第1貫通孔の外周領域にて前記第2磁石に吸着可能であって、前記キートップを押圧する前には、前記第1磁石と前記第2磁石とが磁力で吸着しており、前記キートップを前記空間内に向けて押圧すると、前記磁力に反して前記第1磁石を前記第2磁石から引き離し可能であり、前記キートップの押圧を解除すると、前記第1磁石と前記第2磁石とが引き合い、前記第1磁石が前記第2磁石の方向に移動して再び吸着可能である。
(2)別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材では、好ましくは、前記キートップは、ゴム状弾性体と、前記第1磁石および前記第2磁石からの磁束を遮蔽する第2磁束遮蔽部と、を備え、前記第2磁束遮蔽部は、少なくとも前記キートップが前記第1貫通孔を往復移動する領域に備えられても良い。
(3)別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材では、好ましくは、前記キートップは、柱状の前記ゴム状弾性体と、柱状の前記第2磁束遮蔽部と、を前記キートップの押圧方向に積載して成っても良い。
(4)別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材では、好ましくは、前記キートップは、筒状の前記第2磁束遮蔽部と、前記第2磁束遮蔽部に挿入されている前記ゴム状弾性体と、を備えても良い。
(5)別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材は、好ましくは、前記第1磁束遮蔽部は、前記第2貫通孔を有し、前記ベース部において前記キートップの押圧方向と逆側の先端方向に開口する開口部を覆う遮蔽面と、前記遮蔽面の外周端部から前記空間における前記押圧方向の先端へ延びる遮蔽壁と、を備え、前記第2磁石は、前記径方向において前記第2貫通孔より大きくかつ前記開口部より小さい磁石であって、前記遮蔽面の前記押圧方向側の面に保持されていても良い。
(6)別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材では、好ましくは、前記第1磁石は、前記キートップの押圧方向の先端に固定されていても良い。
(7)別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材は、好ましくは、前記第1磁石または前記キートップにおける押圧方向側の面に固定される導電性の可動接点をさらに備え、前記可動接点よりも押圧方向に位置する別の接点に電気的に接続可能としていても良い。
(8)別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材は、好ましくは、前記可動接点と前記第1磁石との間に配置され、少なくとも前記第1磁石からの磁束を遮蔽する第3磁束遮蔽部をさらに備えても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、キートップの復帰不良を抑制し、第1磁石および第2磁石からの磁束による周辺部材への影響を抑制し、かつ操作性の良好な押釦スイッチ用部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材の平面図を示す。
図2図2は、図1の平面図のA-A線断面図を示す。
図3図3は、第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材の使用例を説明するための図を示す。
図4図4は、第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材の荷重-ストローク曲線を示す。
図5図5は、第2実施形態に係る押釦スイッチ用部材の図2と同視の縦断面図を示す。
図6図6は、第3実施形態に係る押釦スイッチ用部材の図2と同視の縦断面図を示す。
図7図7は、第4実施形態に係る押釦スイッチ用部材の図2と同視の縦断面図を示す。
図8図8は、第5実施形態に係る押釦スイッチ用部材の図2と同視の縦断面図を示す。
図9図9は、第6実施形態に係る押釦スイッチ用部材の図2と同視の縦断面図を示す。
図10図10は、従来から公知の押釦スイッチ用部材の使用例を説明するための縦断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている諸要素およびその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材の平面図を示す。図2は、図1の平面図のA-A線断面図を示す。
【0015】
(1)概略構成
第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材1は、厚さ方向(図2の上下方向)に窪む若しくは貫通する空間32を備えたベース部30と、空間32内にて往復可動なキートップ11と、キートップ11に固定されていて、キートップ11の空間32内への押圧と当該押圧の解除によって空間32内を往復可動な第1磁石14と、第1磁石14よりもキートップ11を押圧する方向と逆側の先端方向(図2の上方向)において固定され、第1磁石14と磁力を通じて引き合う第2磁石15と、ベース部30自体またはベース部30の厚さ方向の一部に配置される壁を構成し、少なくとも第2磁石15および空間32を囲うように配置され、第1磁石14および第2磁石15からの磁束を遮蔽する第1磁束遮蔽部40と、を備える。第2磁石15は、キートップ11の往復移動時において挿通可能な大きさの第1貫通孔16を備える。第1磁束遮蔽部40は、キートップ11の往復移動時において挿通可能な大きさの第2貫通孔44を備える。第1磁石14は、第1貫通孔16の外周領域にて第2磁石15に吸着可能である。キートップ11は、好ましくは、ゴム状弾性体12と、第1磁石14および第2磁石15からの磁束を遮蔽する第2磁束遮蔽部46と、を備える。押釦スイッチ用部材1は、キートップ11を押圧する前には、第1磁石14と第2磁石15とが磁力で吸着している(図3のaを参照)。キートップ11を空間32内に向けて押圧すると、押釦スイッチ用部材1は、磁力に反して第1磁石14を第2磁石15から引き離し可能である(図3のcを参照)。そして、キートップ11の押圧を解除すると、押釦スイッチ用部材1は、第1磁石14と第2磁石15とが引き合い、第1磁石14が第2磁石15の方向に移動して再び吸着可能である(図3のaを参照)。押釦スイッチ用部材1の使用例については、図3を用いて詳細を後述する。
【0016】
この実施形態において、押釦スイッチ用部材1は、回路基板(以後、単に「基板」とも称する)50上に配置され、キートップ11から基板50に向かう方向への押圧と当該押圧の解除によって、キートップ11が押圧方向(図2の下方向)およびその逆方向(図2の上方向)に往復可動する部材である。押釦スイッチ用部材1は、好ましくは、第1磁石14またはキートップ11における押圧方向側(図2の下側)の面に固定される導電性の可動接点17をさらに備える。この実施形態において、可動接点17は、第1磁石14における押圧方向側の面(すなわち、第2磁石15と反対側の面)に備えられる。また、可動接点17は、好ましくは、可動接点17よりも押圧方向に位置する別の接点に電気的に接続可能としている。この実施形態において、可動接点17は、基板50上の当該可動接点17に対向する位置に配置された2つの固定接点18,18に電気的に接続可能としている。なお、固定接点18は、基板50上に3つ以上備えられていても良い。また、押釦スイッチ用部材1は、好ましくは、可動接点17と第1磁石14との間に配置され、少なくとも第1磁石14からの磁束を遮蔽する第3磁束遮蔽部48をさらに備える。
【0017】
(1)ベース部
ベース部30は、押圧および当該押圧の解除によりキートップ11が往復移動する空間32を備える部材である。ベース部30において、空間32は、キートップ11の押圧方向と逆側の先端方向(図2の上方向)に開口する開口部34を備える。この実施形態において、空間32は、厚さ方向に貫通する空間である。すなわち、空間32は、開口部34から基板50まで貫通する空間である。固定接点18,18は、好ましくは、基板50上であって、かつ空間32の内部に配置されている。この実施形態において、空間32は、開口部34を平面視にて略円形とする円筒形状の空間である。また、この実施形態において、ベース部30は、中央部に空間32を備える円筒形状の部材である。ただし、開口部34は、少なくともキートップ11および第1磁石14が通過可能な形状であれば、その形状に制約はなく、例えば、平面視にて楕円形状、多角形状等であっても良い。また、空間32は、その内部に固定接点18,18が配置可能であって、可動接点17と固定接点18,18とが接触可能な形状であれば、筒形状以外の形状を有するものであっても良い。ベース部30の形状もまた、円筒形状に制約されず、例えば、多角形筒形状等であっても良い。ベース部30の径方向の大きさは、押釦スイッチ用部材1の取付場所等に応じて適宜設計可能であるが、例えば、直径10~20mmが好ましい。また、空間32(開口部34)の径方向の大きさは、第1磁石14および第2磁石15の大きさに応じて適宜設計可能であるが、例えば、直径8~15mmが好ましい。
【0018】
ベース部30は、キートップ11の押圧によりキートップ11が基板50側へ移動可能な距離(ストローク)を確保するためのものであり、ベース部30の厚さ(図2の上下方向の長さ)に応じてストロークを調整することができる。この実施形態において、ベース部30の厚さは、好ましくは、0.5~30mm、より好ましくは、1~2mmである。ただし、ベース部30の厚さは、押釦スイッチ用部材1の用途等に応じて、適宜設計可能である。ベース部30は、金属、熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂等の樹脂、ガラス、セラミックス、キートップ11より高硬度のゴム状弾性体等により形成されることが好ましく、アルミニウムがより好ましい。
【0019】
(2)第1磁束遮蔽部
第1磁束遮蔽部40は、好ましくは、第2貫通孔44を有し、ベース部30の開口部34を覆う遮蔽面41と、遮蔽面41の外周端部から空間32における押圧方向(図2の下方向)の先端へ延びる遮蔽壁42と、を備える。第2貫通孔44は、少なくともキートップ11のうち第2磁束遮蔽部46が挿通可能な大きさであることが好ましい。この実施形態において、遮蔽面41は、その平面視形状を略円形とする第2貫通孔44を中央部に有する略円環状の部材である。ただし、遮蔽面41の形状は、第2貫通孔44を備え、開口部34を覆う形状であれば、略円環形状以外の形状であっても良い。また、第2貫通孔44は、キートップ11の往復移動において第2磁束遮蔽部46が挿通可能な大きさの貫通孔であれば、例えば、略楕円形、略多角形等、略円形以外の形状であっても良い。遮蔽壁42は、ベース部30の厚さ方向の一部に配置される壁を構成する部材である。この実施形態において、遮蔽壁42は、ベース部30の内壁に接するように空間32内に配置されている。第1磁束遮蔽部40は、第1磁石14および第2磁石15からの磁束を遮蔽する磁束遮蔽体で形成される部材である。磁束遮蔽体としては、鉄、パーマロイ、センダスト、珪素鋼、アモルファス等を用いるのが好ましい。上記材料の候補の内では、特に、鉄を用いるのが好ましい。第1磁束遮蔽部40の厚さは、好ましくは、0.5~10mm、より好ましくは、1~5mmである。ただし、第1磁束遮蔽部40の厚さは、押釦スイッチ用部材1の用途等に応じて、適宜設計可能である。このように構成された第1磁束遮蔽部40は、第2磁石15および第1磁石14が配置される空間32を囲うように備えられるため、第1磁石14および第2磁石15からの磁束による周辺部材への影響を抑制することができる。なお、第1磁束遮蔽部40は、第1磁石14および第2磁石15からの磁束を遮蔽するために、少なくとも第2磁石15および空間32を囲うように配置される部材であれば、遮蔽面41と遮蔽壁42とからなる上述の形状に制約されない。また、第1磁束遮蔽部40は、上記磁束遮蔽体の両面にベース部30を構成する材料のシートを貼り付けた遮蔽面41および遮蔽壁42から形成されていても良い。
【0020】
(3)キートップ
キートップ11は、スイッチのオン、オフまたはその両方のときに、指やその他の押圧操作手段による基板50の方向(図2の下方向)への押圧を受けて空間32内を基板50の方向に移動可能な部材である。また、キートップ11は、当該押圧の解除を受けて空間32内を基板50の方向と逆方向(図2の上方向)に移動可能な部材である。キートップ11は、押圧部、押釦部、頭部等と称されることもある。キートップ11は、好ましくは、ゴム状弾性体12と、第1磁石14および第2磁石15からの磁束を遮蔽する第2磁束遮蔽部46と、を備える。キートップ11は、より好ましくは、柱状のゴム状弾性体12と、柱状の第2磁束遮蔽部46と、をキートップ11の押圧方向(図2の下方向)に積載して成る部材である。この実施形態において、キートップ11は、円柱形状の第2磁束遮蔽部46を円柱形状のゴム状弾性体12の押圧方向側の面に積載して成る部材である。ただし、ゴム状弾性体12および第2磁束遮蔽部46の形状は特に制約されず、例えば、多角柱状であっても良い。また、第2磁束遮蔽部46の径方向の大きさは、ゴム状弾性体12の径方向の大きさと同一であっても良いし、ゴム状弾性体12の径方向の大きさより大きくても小さくても良い。
【0021】
ゴム状弾性体12としては、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)あるいはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の熱硬化性エラストマー; ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等を用いるのが好ましい。上記材料の候補の内では、特に、ゴム弾性や耐熱、耐寒性、圧縮永久歪に優れ、酸化防止剤や可塑剤、軟化剤を含まずブリード汚染の心配が殆どないシリコーンゴムが好ましい。また、ゴム状弾性体は、シリカ等のフィラーを含有していても良い。また、ゴム状弾性体12は、その内部に孔を有する多孔体(発泡体)でも良い。
【0022】
第2磁束遮蔽部46は、好ましくは、少なくともキートップ11が第1貫通孔16を往復移動する領域に備えられる。第2磁束遮蔽部46は、第1磁石14および第2磁石15からの磁束を遮蔽する磁束遮蔽体で形成される部材である。磁束遮蔽体としては、上述の第1磁束遮蔽部40を形成する磁束遮蔽体と同様のものを用いるのが好ましい。第2磁束遮蔽部46は、第1磁束遮蔽部40と同様に、上記磁束遮蔽体の候補の内では、特に、ゴム状弾性体12よりも高硬度であって、キートップ11が第1貫通孔16の内壁に接しないだけの十分な硬さを有する鉄を用いるのが好ましい。ただし、第2磁束遮蔽部46を形成する磁束遮蔽体は、第1磁束遮蔽部40を形成する磁束遮蔽体と同一種類の材料であっても良いし、異なる種類の材料であっても良い。
【0023】
(4)第1磁石
第1磁石14は、好ましくは、キートップ11(より具体的には、第2磁束遮蔽部46)の押圧方向の先端に固定されていて、キートップ11の往復移動に伴って空間32内を往復可動な磁石である。第1磁石14は、好ましくは、N極およびS極がその厚さ方向(図2の上下方向)の各側に着磁され、キートップ11(第2磁束遮蔽部46)の押圧方向の先端面に固定されている。第1磁石14は、好ましくは、その径方向において第1貫通孔16より大きく、かつ開口部34より小さい磁石である。よって、第1磁石14は、空間32内を往復移動可能であり、かつ第1貫通孔16の外周領域にて第2磁石15に吸着可能である。この実施形態において、第1磁石14は、その平面視形状を略円形とする磁石である。例えば、第1磁石14は、直径8~12mmの平面視略円形状の磁石であることが好ましい。ただし、第1磁石14の形状は、特に制約されず、例えば、略楕円形、略多角形等であっても良い。第1磁石14は、ネオジム系、フェライト系、サマリウムコバルト系等の磁石が好ましく、ネオジム磁石がより好ましい。
【0024】
(5)第2磁石
第2磁石15は、第1磁石14よりもキートップ11の押圧方向と逆側の先端方向(図2の上方向)に固定され、第1磁石14と磁力を通じて引き合うようにN極およびS極が着磁されている。第2磁石15は、キートップ11の往復移動において挿通可能な大きさの第1貫通孔16を備える。第1貫通孔16は、少なくともキートップ11のうち第2磁束遮蔽部46が挿通可能な大きさであることが好ましい。この実施形態において、第2磁石15は、その平面視形状を略円形とする第1貫通孔16を中央部に有する略円環状の磁石である。ただし、第2磁石15の形状は、第1貫通孔16を備え、第1磁石14よりもキートップ11の押圧方向と逆側の先端方向に固定可能な形状であれば、略円環形状以外の形状であっても良い。また、第1貫通孔16は、キートップ11の往復移動において第2磁束遮蔽部46が挿通可能な大きさの貫通孔であれば、例えば、略楕円形、略多角形等、略円形以外の形状であっても良い。第2磁石15は、好ましくは、その径方向において第2貫通孔44より大きくかつ開口部34より小さい磁石であって、遮蔽面41の押圧方向側(図2の下側)の面に保持されている。例えば、第2磁石15は、直径2~5mmの第1貫通孔16を備える直径8~12mmの平面視略円環状の磁石であることが好ましい。第2磁石15の遮蔽面41への保持方法は、特に制約されないが、鉄製またはステンレススチール製のピンやネジを用いて第2磁石15が遮蔽面41へ固定されることが好ましい。この場合、当該ピンやネジは、第2磁石15からの磁束を第1磁束遮蔽部40へ導く導線の役割を担うことができる。第2磁石15は、ネオジム系、フェライト系、サマリウムコバルト系等の磁石が好ましく、ネオジム磁石がより好ましい。第2磁石15は、第1磁石14と同一種類の材料からなる磁石であっても良いし、異なる種類の材料からなる磁石であっても良い。第1磁石14および第2磁石15は、キートップ11を最下点まで押し下げた位置からキートップ11への押圧を解除した際に、互いに引き合う結果、第1磁石14が第2磁石15に向けて上昇可能なレベルの磁力を有していれば良い。
【0025】
(6)可動接点
可動接点17は、可動接点17よりも押圧方向(図2の下方向)に位置する別の接点に接触してスイッチをオンまたはオフさせる部材である。この実施形態において、可動接点17は、第3磁束遮蔽部48の押圧方向側(図2の下側)の面に接着され、キートップ11の往復移動に伴って基板50上の固定接点18,18に対して接触と非接触とを可能とする部材である。可動接点17は、好ましくは、金属や導電性のゴム状弾性体等の導電性を有する材料から構成される。可動接点17の形状は、固定接点18,18に対して接触と非接触とを可能とする形状であれば、特に制約されない。なお、可動接点17は、押釦スイッチ用部材1にとって必須の部材ではない。例えば、キートップ11の直下にメタルドームを配置して、キートップ11の先端がメタルドームを押下し、メタルドームの直下に配置された固定接点18,18を導通させるようにしても良い。以後の各実施形態においても同様である。
【0026】
(7)第3磁束遮蔽部
第3磁束遮蔽部48は、一方の面が第1磁石14の押圧方向側(図2の下側)の面に接着され、他方の面が可動接点17の押圧方向と逆側(図2の上側)の面に接着される部材である。第3磁束遮蔽部48は、少なくとも第1磁石14からの磁束を遮蔽する磁束遮蔽体で形成される部材である。磁束遮蔽体としては、上述の第1磁束遮蔽部40を形成する磁束遮蔽体と同様のものを用いるのが好ましい。第3磁束遮蔽部48は、第1磁束遮蔽部40と同様に、上記磁束遮蔽体の候補の内では、特に、鉄を用いるのが好ましい。ただし、第3磁束遮蔽部48を形成する磁束遮蔽体は、第1磁束遮蔽部40を形成する磁束遮蔽体と同一種類の材料であっても良いし、異なる種類の材料であっても良い。このように構成された第3磁束遮蔽部48は、第1磁石14からの磁束により可動接点17や固定接点18,18等の周辺部材に与える影響を抑制することができる。なお、第3磁束遮蔽部48の形状は、可動接点17と第1磁石14との間に配置され、少なくとも第1磁石14からの磁束の遮蔽を可能とする形状であれば、特に制約されない。
【0027】
第2磁束遮蔽部46は、好ましくは、少なくともキートップ11が第1貫通孔16を往復移動する領域に備えられる。言い換えれば、第2磁束遮蔽部46は、キートップ11の押圧方向の移動に伴って可動接点17が固定接点18,18と接触した状態(図3のcを参照)において、キートップ11のうち少なくとも空間32および第1貫通孔16内に配置される領域に備えられる。具体的には、第2磁束遮蔽部46は、キートップ11の厚さ方向(図2の上下方向)において、キートップ11の押圧方向側端部(キートップ11の下端)から、少なくともキートップ11のストローク長L1と第2磁石15の厚さL2とを加算した長さL(L1+L2)の領域に備えられることがより好ましい(図2を参照)。このように構成された第2磁束遮蔽部46は、キートップ11が第1貫通孔16および第1磁束遮蔽部40で囲まれた空間32内を往復移動する領域に備えられるため、第1磁石14及び第2磁石15からの磁束によるキートップ11および周辺部材への影響を抑制することができる。また、ゴム状弾性体12は、指やその他の押圧操作手段による押圧を受けると、弾性変形してキートップ11の径方向に膨張する。キートップ11が第1貫通孔16を往復移動する領域にゴム状弾性体12が備えられている場合、当該弾性変形した状態のゴム状弾性体12が第1貫通孔16を往復移動するため、第1貫通孔16は、少なくとも当該弾性変形により膨張したゴム状弾性体12が挿通可能な大きさの貫通孔とする必要がある。押釦スイッチ用部材1は、少なくともキートップ11が第1貫通孔16を往復移動する領域に第2磁束遮蔽部46を備える。第2磁束遮蔽部46を形成する材料として、第1貫通孔16の内壁に接しないだけの十分な硬さを有する鉄等の磁束遮蔽体を用いる場合、第1貫通孔16は、ゴム状弾性体12の弾性変形を考慮せず、少なくとも第2磁束遮蔽部46が挿通可能な大きさの貫通孔であればよい。よって、押釦スイッチ用部材1は、キートップ11が第1貫通孔16を往復移動する領域にゴム状弾性体12が備えられている場合に比べて、第1貫通孔16を小さく形成することが可能となるため、第2磁石15のうち第1磁石14と着磁可能な領域を大きく形成することができる。この結果、押圧荷重を高めることができる。
【0028】
次に、押釦スイッチ用部材1の使用例について説明する。
【0029】
図3は、第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材の使用例を説明するための図を示す。図4は、第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材の荷重-ストローク曲線を示す。なお、図4は、操作者がキートップ11を押圧することにより可動接点17が固定接点18,18に接触してから、さらに操作者がキートップ11を押し込み、その後操作者が当該押し込みを解除するまでの往復の変位(ストローク)と荷重との関係を示す曲線である。図4において、実線で示す曲線は、操作者がキートップ11を押圧する押下げ時のストロークと荷重との関係を示す曲線であり、点線で示す曲線は、操作者がキートップ11への押圧を解除する押上げ時のストロークと荷重との関係を示す曲線である。
【0030】
キートップ11が押圧されていない無荷重状態においては、可動接点17と固定接点18,18とは非接触状態を維持している(図3のaおよび図4の点Aを参照)。この無荷重状態において、第1磁石14は、第1貫通孔16の外周領域にて第2磁石15に磁力を通じて吸着している。このとき、キートップ11は、第2磁束遮蔽部46の押圧方向側の面に第1磁石14が固定され、かつ第2磁束遮蔽部46の一部が第1貫通孔16内に位置している。このため、第1磁石14および第2磁石からの磁束は第2磁束遮蔽部46により遮蔽されるため、当該磁束によるキートップ11および周辺部材への影響を抑制することができる。操作者がキートップ11を押圧していくと、ゴム状弾性体12の弾性変形によりストロークの増大とともに荷重は増加していく(図3のbおよび図4の矢印1を参照)。このとき、第2磁束遮蔽部46は、ゴム状弾性体12に比べて弾性変形が小さく、第1貫通孔16および第2貫通孔44の内壁に接しない。押釦スイッチ用部材1は、荷重がピーク荷重に達するまで、ゴム状弾性体12の弾性変形に伴ってストロークおよび荷重が増加していく。ピーク荷重とは、キートップ11の押圧により第1磁石14を第2磁石15から引き離させるのに必要な最大荷重である。図4に示す点Bは、ピーク荷重を示すピーク荷重点である。荷重がピーク荷重に達すると、第1磁石14が第2磁石15との吸着力に反して第2磁石15から引き離されて荷重が低下する(図4の矢印2を参照)。
【0031】
キートップ11の押圧に伴って第1磁石14が基板50側へ移動すると、第1磁石14の押圧方向側の面に固定された可動接点17と基板50上の2つの固定接点18,18とが接触する(図3のcおよび図4の点Cを参照)。図4に示す点Cは、可動接点17が固定接点18,18に接触した点である。この接触により、一方の固定接点18から可動接点17を通じて他方の固定接点18へと通電経路が形成されるため、スイッチがオン(若しくはオフ)となる。このとき、キートップ11のうち第2磁束遮蔽部46は、第1貫通孔16および空間32内に位置している。また、ゴム状弾性体12は、第1貫通孔16よりも押圧方向と逆側に位置している。このため、可動接点17と固定接点18,18の接触状態においても、第1磁石14および第2磁石からの磁束は第2磁束遮蔽部46により遮蔽されるため、当該磁束によるキートップ11および周辺部材への影響を抑制することができる。可動接点17と固定接点18,18の接触後も操作者がキートップ11を押圧すると、ゴム状弾性体12がさらに弾性変形して膨張することにより荷重が再び増加する(図3のdおよび図4の矢印3を参照)。このとき、第2磁束遮蔽部46は、ゴム状弾性体12に比べて弾性変形が小さく、第1貫通孔16および第2貫通孔44の内壁に接しない。
【0032】
操作者がキートップ11への押圧を解除すると、弾性変形していたゴム状弾性体12は自身の復元力によって元の形状に戻ろうとし、荷重が低下する(図3のcおよび図4の矢印4を参照)。図4に示す点Dは、キートップ11への押圧が解除された点である。その後、第1磁石14と第2磁石15とが磁力により引き合うことにより第1磁石14が第2磁石15の方向に移動して再び吸着し、弾性変形していたゴム状弾性体12が初期状態である無荷重状態に戻る(図3のb,aおよび図4の矢印5,6を参照)。
【0033】
この実施形態に係る押釦スイッチ用部材1では、従来の押釦スイッチ用部材(図10を参照)のようなスカート状のドーム部を備えず、第1磁石14と第2磁石15との間の磁力によりスイッチのオンおよびオフの切り替えを可能とする。このため、ドーム部の破断によるキートップの復帰不良を抑制することができる。特に、押釦スイッチ用部材1は、第1磁石14と第2磁石15との間の磁力によりスイッチのオンおよびオフの切り替えを行うため、長期的な使用に伴う材料の劣化を低減し、長期にわたり安定した操作性を提供することができる。また、押釦スイッチ用部材1は、操作者がキートップ11を押圧することによりゴム状弾性体12をその長さ方向に変形させながら、第1磁石14および第2磁石15によりスイッチのオンおよびオフを切り替えることができ、この結果、操作者に良好な押圧感を提供することができる。また、押釦スイッチ用部材1は、第1磁束遮蔽部40、第2磁束遮蔽部46および第3磁束遮蔽部48を備えるため、第1磁石14及び第2磁石15からの磁束を遮蔽し、当該磁束による周辺部材への影響を抑制することができる。
【0034】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る押釦スイッチ用部材について説明する。先の実施形態と共通する部分については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0035】
図5は、第2実施形態に係る押釦スイッチ用部材の図2と同視の縦断面図を示す。
【0036】
第2実施形態に係る押釦スイッチ用部材1aは、第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材1と類似の構造を有するが、第1磁束遮蔽部40に代えて第1磁束遮蔽部40aを備え、かつベース部30に代えてベース部30aを備える点において、第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材1と異なる。
【0037】
第1磁束遮蔽部40aは、第1磁石14および第2磁石15からの磁束を遮蔽する部材であって、ベース部30aを構成する部材である。すなわち、押釦スイッチ用部材1aは、第1磁束遮蔽部40a自体がベース部30aを構成する点で、第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材1と異なる。第1磁束遮蔽部40aは、押圧および当該押圧の解除によりキートップ11が往復移動する空間32aを備える。この実施形態において、空間32aは、空間32と同様に、厚さ方向に貫通する空間である。空間32aは、キートップ11の押圧方向と逆側の先端方向(図5の上方向)に開口する開口部34aを備える。固定接点18,18は、好ましくは、基板50上であって、かつ空間32aの内部に配置されている。第1磁束遮蔽部40aは、好ましくは、第2貫通孔44aを有し、開口部34aを覆う遮蔽面41aと、遮蔽面41aの外周端部から基板50側へ延びる遮蔽壁42aと、を備える。第2貫通孔44aは、第2貫通孔44と同様に、少なくともキートップ11のうち第2磁束遮蔽部46が挿通可能な大きさであることが好ましい。なお、第1磁束遮蔽部40aは、第1磁石14および第2磁石15からの磁束を遮蔽するために、少なくとも第2磁石15および空間32aを囲うように配置される部材であれば、遮蔽面41aと遮蔽壁42aとからなる上述の形状に制約されない。遮蔽面41aおよび遮蔽壁42aにおけるその他の構成は、遮蔽面41および遮蔽壁42とそれぞれ同様のため、詳細な説明を省略する。第1磁束遮蔽部40aは、第1磁石14および第2磁石15からの磁束を遮蔽する磁束遮蔽体で形成される部材である。磁束遮蔽体としては、上述の第1磁束遮蔽部40を形成する磁束遮蔽体と同様のものを用いるのが好ましい。第2磁石15は、好ましくは、遮蔽面41aの押圧方向側(図5の下側)の面に保持されている。第2磁石15の遮蔽面41aへの保持方法は、特に制約されないが、鉄製またはステンレススチール製のピンやネジを用いて第2磁石15が遮蔽面41aへ固定されることが好ましい。この場合、当該ピンやネジは、第2磁石15からの磁束を第1磁束遮蔽部40aへ導く導線の役割を担うことができる。このように構成された押釦スイッチ用部材1aもまた、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0038】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る押釦スイッチ用部材について説明する。先の実施形態と共通する部分については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0039】
図6は、第3実施形態に係る押釦スイッチ用部材の図2と同視の縦断面図を示す。
【0040】
第3実施形態に係る押釦スイッチ用部材1bは、第2実施形態に係る押釦スイッチ用部材1aと類似の構造を有するが、第1磁束遮蔽部40aに代えて第1磁束遮蔽部40bを備え、かつベース部30aに代えてベース部30bを備える点において、第2実施形態に係る押釦スイッチ用部材1aと異なる。
【0041】
ベース部30bは、ベース部30aと同様に、その内方に空間32aを備え、当該空間32aを囲うように配置される部材である。ベース部30bは、好ましくは、少なくともキートップ11のうち第2磁束遮蔽部46が挿通可能な大きさの第3貫通孔36を有する。ベース部30bは、ベース部30を形成する材料と同様の材料で形成されることが好ましい。第1磁束遮蔽部40bは、第1磁石14および第2磁石15からの磁束を遮蔽する部材であって、ベース部30bの内壁に備えられる部材である(図6を参照)。第1磁束遮蔽部40bは、好ましくは、第2貫通孔44bを有し、開口部34aを覆う遮蔽面41bと、遮蔽面41bの外周端部から基板50側へ延びる遮蔽壁42bと、を備える。第2貫通孔44bは、少なくともキートップ11のうち第2磁束遮蔽部46が挿通可能な大きさであって、平面視にて第3貫通孔36と同等の位置に形成されることが好ましい。なお、第1磁束遮蔽部40bは、第1磁石14および第2磁石15からの磁束を遮蔽するために、少なくとも第2磁石15および空間32aを囲うように配置される部材であれば、遮蔽面41bと遮蔽壁42bとからなる上述の形状に制約されない。また、ベース部30bは、その内方に空間32aを備え、かつその内壁に第1磁束遮蔽部40bを備える部材であれば、上述の形状に制約されない。遮蔽面41bおよび遮蔽壁42bにおけるその他の構成は、遮蔽面41および遮蔽壁42とそれぞれ同様のため、詳細な説明を省略する。第1磁束遮蔽部40bは、第1磁石14および第2磁石15からの磁束を遮蔽する磁束遮蔽体で形成される部材である。磁束遮蔽体としては、上述の第1磁束遮蔽部40を形成する磁束遮蔽体と同様のものを用いるのが好ましい。第1磁束遮蔽部40bは、第1磁束遮蔽部40と同様に、上記磁束遮蔽体の候補の内では、特に、鉄を用いるのが好ましく、例えば、鉄の薄膜をベース部30bの内壁に貼り付けることにより形成される。第2磁石15は、好ましくは、遮蔽面41bの押圧方向側(図6の下側)の面に保持されている。第2磁石15の遮蔽面41bへの保持方法は、特に制約されないが、鉄製またはステンレススチール製のピンやネジを用いて第2磁石15が遮蔽面41bへ固定されることが好ましい。この場合、当該ピンやネジは、第2磁石15からの磁束を第1磁束遮蔽部40bへ導く導線の役割を担うことができる。このように構成された押釦スイッチ用部材1bもまた、先述の各実施形態と同様の効果を奏する。
【0042】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る押釦スイッチ用部材について説明する。先の実施形態と共通する部分については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0043】
図7は、第4実施形態に係る押釦スイッチ用部材の図2と同視の縦断面図を示す。
【0044】
第4実施形態に係る押釦スイッチ用部材1cは、第3実施形態に係る押釦スイッチ用部材1bと類似の構造を有するが、第1磁束遮蔽部40bに代えて第1磁束遮蔽部40cを備え、かつベース部30bに代えてベース部30cを備える点において、第3実施形態に係る押釦スイッチ用部材1bと異なる。
【0045】
ベース部30cは、ベース部30bと同様に、その内方に空間32aを備え、当該空間32aを囲うように配置される部材である。ベース部30cは、ベース部30bと同様に、少なくともキートップ11のうち第2磁束遮蔽部46が挿通可能な大きさの第3貫通孔36aを有することが好ましい。ベース部30cは、ベース部30を形成する材料と同様の材料で形成されることが好ましい。第1磁束遮蔽部40cは、第1磁石14および第2磁石15からの磁束を遮蔽する部材であって、ベース部30cの外壁に備えられる部材である(図7を参照)。第1磁束遮蔽部40cは、好ましくは、第2貫通孔44cを有し、開口部34aおよびベース部30cを覆う遮蔽面41cと、遮蔽面41cの外周端部から基板50側へ延びる遮蔽壁42cと、を備える。第2貫通孔44cは、少なくともキートップ11のうち第2磁束遮蔽部46が挿通可能な大きさであって、平面視にて第3貫通孔36aと同等の位置に形成されることが好ましい。なお、第1磁束遮蔽部40cは、第1磁石14および第2磁石15からの磁束を遮蔽するために、少なくとも第2磁石15および空間32aを囲うように配置される部材であれば、遮蔽面41cと遮蔽壁42cとからなる上述の形状に制約されない。また、ベース部30cは、その内方に空間32aを備え、かつその外壁に第1磁束遮蔽部40cを備える部材であれば、上述の形状に制約されない。遮蔽面41cおよび遮蔽壁42cにおけるその他の構成は、遮蔽面41および遮蔽壁42とそれぞれ同様のため、詳細な説明を省略する。第1磁束遮蔽部40cは、第1磁石14および第2磁石15からの磁束を遮蔽する磁束遮蔽体で形成される部材である。磁束遮蔽体としては、上述の第1磁束遮蔽部40を形成する磁束遮蔽体と同様のものを用いるのが好ましい。第1磁束遮蔽部40cは、第1磁束遮蔽部40と同様に、上記磁束遮蔽体の候補の内では、特に、鉄を用いるのが好ましく、例えば、鉄の薄膜をベース部30cの外壁に貼り付けることにより形成される。第2磁石15は、好ましくは、ベース部30cの天面のうち押圧方向側(図7の下側)の面に保持されている。第2磁石15のベース部30bへの保持方法は、特に制約されないが、鉄製またはステンレススチール製のピンやネジを用いてベース部30cの天面および遮蔽面41cへ固定されることが好ましい。この場合、当該ピンやネジは、第2磁石15からの磁束を第1磁束遮蔽部40cへ導く導線の役割を担うことができる。このように構成された押釦スイッチ用部材1cもまた、先述の各実施形態と同様の効果を奏する。
【0046】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態に係る押釦スイッチ用部材について説明する。先の実施形態と共通する部分については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0047】
図8は、第5実施形態に係る押釦スイッチ用部材の図2と同視の縦断面図を示す。
【0048】
第5実施形態に係る押釦スイッチ用部材1dは、第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材1と類似の構造を有するが、キートップ11に代えてキートップ11aを備える点において、第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材1と異なる。
【0049】
キートップ11aは、好ましくは、有底筒状の第2磁束遮蔽部46aと、第2磁束遮蔽部46aに挿入されている柱状のゴム状弾性体12aと、を備える。この実施形態において、キートップ11aは、有底円筒状の第2磁束遮蔽部46aに円柱形状のゴム状弾性体12aが挿入されて成る部材である。ただし、ゴム状弾性体12aおよび第2磁束遮蔽部46aの形状は特に制約されず、例えば、多角柱状および多角筒状であっても良い。第2磁束遮蔽部46aは、好ましくは、少なくともキートップ11aが第1貫通孔16を往復移動する領域に備えられる。すなわち、第2磁束遮蔽部46aは、第2磁束遮蔽部46と同様に、キートップ11aの厚さ方向(図8の上下方向)において、キートップ11aの押圧方向側端部(キートップ11aの下端)から、少なくともキートップ11aのストローク長L1と第2磁石15の厚さL2とを加算した長さLa(L1+L2)の領域に備えられることが好ましい(図8を参照)。ただし、第2磁束遮蔽部46aは、キートップ11aの厚さ方向において、キートップ11aの押圧方向側端部から長さLa以上の領域であれば特に制約されず、例えば、ゴム状弾性体12aが露出しないようにゴム状弾性体12aの外周を全て囲うように備えられていても良い。ゴム状弾性体12aおよび第2磁束遮蔽部46aの材料については、ゴム状弾性体12および第2磁束遮蔽部46と同様のため、詳細な説明を省略する。なお、ゴム状弾性体12aは、第2磁束遮蔽部46aの内壁に向かって膨張しにくくするため、内部に空孔を多く備えた多孔体である方が好ましい。このように構成された押釦スイッチ用部材1dもまた、先述の各実施形態と同様の効果を奏する。押釦スイッチ用部材1dは、押釦スイッチ用部材1a,1b,1cと同様に、第1磁束遮蔽部40およびベース部30に代えて、第1磁束遮蔽部40a,40b,40cおよびベース部30a,30b,30cを備えていても良い。
【0050】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態に係る押釦スイッチ用部材について説明する。先の実施形態と共通する部分については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0051】
図9は、第6実施形態に係る押釦スイッチ用部材の図2と同視の縦断面図を示す。
【0052】
第6実施形態に係る押釦スイッチ用部材1eは、第5実施形態に係る押釦スイッチ用部材1dと類似の構造を有するが、キートップ11aに代えてキートップ11bを備える点において、第5実施形態に係る押釦スイッチ用部材1dと異なる。
【0053】
キートップ11bは、好ましくは、厚さ方向(図9の上下方向)に貫通する筒状の第2磁束遮蔽部46bと、第2磁束遮蔽部46bに挿入されている柱状のゴム状弾性体12bと、を備える。すなわち、キートップ11bは、第2磁束遮蔽部46bが有底形状でない点において、キートップ11aと異なる。この実施形態において、キートップ11bは、円筒状の第2磁束遮蔽部46bに円柱形状のゴム状弾性体12bが挿入されて成る部材である。ただし、ゴム状弾性体12bおよび第2磁束遮蔽部46bの形状は特に制約されず、例えば、多角柱状および多角筒状であっても良い。第2磁束遮蔽部46は、好ましくは、少なくともキートップ11bが第1貫通孔16を往復移動する領域に備えられる。すなわち、第2磁束遮蔽部46bは、第2磁束遮蔽部46aと同様に、キートップ11の厚さ方向(図9の上下方向)において、キートップ11bの押圧方向側端部(キートップ11bの下端)から、少なくともキートップ11bのストローク長L1と第2磁石15の厚さL2とを加算した長さLb(L1+L2)の領域に備えられることが好ましい(図9を参照)。ただし、第2磁束遮蔽部46bは、キートップ11bの厚さ方向において、キートップ11bの押圧方向側端部から長さLb以上の領域であれば特に制約されず、例えば、ゴム状弾性体12bが露出しないようにゴム状弾性体12bの外周を全て囲うように備えられていても良い。ゴム状弾性体12bおよび第2磁束遮蔽部46bの材料については、ゴム状弾性体12,12aおよび第2磁束遮蔽部46,46aと同様のため、詳細な説明を省略する。ゴム状弾性体12bは、第5実施形態と同様に、多孔体である方が好ましい。このように構成された押釦スイッチ用部材1eもまた、先述の各実施形態と同様の効果を奏する。押釦スイッチ用部材1eは、押釦スイッチ用部材1a,1b,1cと同様に、第1磁束遮蔽部40およびベース部30に代えて、第1磁束遮蔽部40a,40b,40cおよびベース部30a,30b,30cを備えていても良い。
【0054】
(その他の実施形態)
上述のように、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0055】
先述の各実施形態において、第1磁石14は、キートップ11,11a,11bの押圧方向の先端(先端面)に固定されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1磁石14は、当該先端面ではなく、キートップ11,11a,11bのうち第2磁石15より当該押圧方向の先端側の所定位置に固定されていても良い。この場合、第1磁石14は、キートップ11,11a,11bの外周を囲う略円環状の磁石であって、第1貫通孔16の外周領域にて第2磁石15に吸着可能であることが好ましい。また、この場合、可動接点17は、キートップ11,11a,11bの押圧方向の先端面に固定されていることが好ましい。
【0056】
また、ベース部30は、基板50上に設けられていなくても良い。また、ベース部30の空間32,32aは、厚さ方向に貫通する筒形状の空間に限定されず、例えば、開口部34,34aを有する一端開放型のカップ形状であっても良い。この場合、固定接点18,18は、当該カップ形状の空間32,32aの底部に設けられていることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、例えば、自動車、車載用電子機器、携帯通信機器、パーソナルコンピューター、カメラ、家庭用オーディオ機器、家庭用電化製品等の押圧式のキーを備える各種機器に用いるための押釦スイッチを構成するために利用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1,1a,1b,1c,1d,1e・・・押釦スイッチ用部材、11,11a,11b・・・キートップ、12,12a,12b・・・ゴム状弾性体、14・・・第1磁石、15・・・第2磁石、16・・・第1貫通孔、17・・・可動接点、18・・・固定接点(別の接点の一例)、30,30a,30b,30c・・・ベース部、32,32a・・・空間、34,34a・・・開口部、40,40a,40b,40c・・・第1磁束遮蔽部、41,41a,41b,41c・・・遮蔽面、42,42a,42b,42c・・・遮蔽壁、44,44a,44b・・・第2貫通孔、46,46a,46b・・・第2磁束遮蔽部、48・・・第3磁束遮蔽部。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10