(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】リアクトル用電磁鋼板
(51)【国際特許分類】
H01F 41/02 20060101AFI20240411BHJP
H01F 37/00 20060101ALI20240411BHJP
H01F 27/24 20060101ALI20240411BHJP
H01F 27/245 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
H01F41/02 B
H01F37/00 M
H01F37/00 A
H01F27/24 K
H01F27/245
(21)【出願番号】P 2021159130
(22)【出願日】2021-09-29
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雄
(72)【発明者】
【氏名】高田 潤一
(72)【発明者】
【氏名】清水 健志
(72)【発明者】
【氏名】角藤 清隆
(72)【発明者】
【氏名】近藤 拓真
(72)【発明者】
【氏名】田中 直樹
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-116709(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第02638780(DE,A1)
【文献】仏国特許発明第00639930(FR,A)
【文献】特開昭56-062306(JP,A)
【文献】特開昭55-008063(JP,A)
【文献】特開昭53-140532(JP,A)
【文献】実開昭48-040718(JP,U)
【文献】実開昭47-017150(JP,U)
【文献】米国特許第03181402(US,A)
【文献】米国特許第03491437(US,A)
【文献】米国特許第05073766(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第00028494(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 41/02
H01F 37/00
H01F 27/24-27/255
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向に延びる板状の第一部分と、
該第一部分と一体に設けられ、前記第一方向に直交する第二方向の一方側に突出するとともに前記第一部分と同一の面内に広がる板状をなす少なくとも3つの第二部分と、
を有する2つの外側部品と、
前記第一方向に延びる板状をなすとともに、前記少なくとも3つの第二部分の端部同士を接続する第三部分を有する中央部品と、
を備え、
前記少なくとも3つの第二部分のうち、前記第一方向の最も一方側に位置する前記第二部分は、前記第二方向における寸法が、他の前記第二部分よりも所定長さの分だけ短く形成され、
前記中央部品は、前記第三部分の両端部から前記第二方向における互いに離間する方向にそれぞれ前記所定長さの分だけ突出する一対の突出部分をさらに有するリアクトル用電磁鋼板。
【請求項2】
前記第一方向の最も一方側に位置する前記第二部分は、前記第二方向における寸法が0であり、
前記突出部分は、前記第三部分の両端部から前記第二方向における互いに離間する方向にそれぞれ前記第一方向の最も他方側に位置する前記第二部分の第二方向における寸法の分だけ突出している請求項
1に記載のリアクトル用電磁鋼板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リアクトル用電磁鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
リアクタンスを発生させるための電気部品としてリアクトルが広く用いられている。リアクトルは、電磁鋼板を複数積層することで形成されたコアと、このコアに巻回された線材からなるコイルと、を備えている。
【0003】
従来、コアを製造するに当たっては、所定の形状を有する部品を打ち抜き加工によって得ることが一般的であった。当該部品を複数積層した後、互いに溶接することで1つのコアが形成される(例えば下記特許文献1、又は下記特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-93921号公報
【文献】中国実用新案第206194495号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のコアの構成では、電磁鋼板の打ち抜きに際して無駄な部分が生じやすく、歩留まりの改善が望まれていた。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、歩留まりを改善することが可能なリアクトル用電磁鋼板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係るリアクトル用電磁鋼板は、第一方向に延びる板状の第一部分と、該第一部分と一体に設けられ、前記第一方向に直交する第二方向の一方側に突出するとともに前記第一部分と同一の面内に広がる板状をなす少なくとも3つの第二部分と、を有する2つの外側部品と、前記第一方向に延びる板状をなすとともに、前記少なくとも3つの第二部分の端部同士を接続する第三部分を有する中央部品と、を備え、前記少なくとも3つの第二部分のうち、前記第一方向の最も一方側に位置する前記第二部分は、前記第二方向における寸法が、他の前記第二部分よりも所定長さの分だけ短く形成され、前記中央部品は、前記第三部分の両端部から前記第二方向における互いに離間する方向にそれぞれ前記所定長さの分だけ突出する一対の突出部分をさらに有する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、歩留まりを改善することが可能なリアクトル用電磁鋼板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の第一実施形態に係るリアクトルの構成を示す断面図である。
【
図2】本開示の第一実施形態に係るリアクトル用電磁鋼板を打ち抜く際の形状を示す説明図である。
【
図3】本開示の第二実施形態に係るリアクトルの構成を示す断面図である。
【
図4】本開示の第二実施形態に係るリアクトル用電磁鋼板を打ち抜く際の形状を示す説明図である。
【
図5】本開示の第三実施形態に係るリアクトルの構成を示す断面図である。
【
図6】本開示の第三実施形態に係るリアクトル用電磁鋼板を打ち抜く際の形状を示す説明図である。
【
図7】本開示の第三実施形態に係るリアクトル用電磁鋼板の他の部品を打ち抜く際の形状を示す説明図である。
【
図8】本開示の第三実施形態に係るリアクトル用電磁鋼板を打ち抜く際の形状を示す説明図であって、変形例を示す図である。
【
図9】本開示の第三実施形態に係るリアクトル用電磁鋼板を打ち抜く際の形状を示す説明図であって、さらなる変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第一実施形態>
(リアクトルの構成)
以下、本開示の第一実施形態に係るリアクトル100、及びリアクトル用電磁鋼板90について、
図1と
図2を参照して説明する。
【0013】
リアクトル100は、電気回路上でリアクタンスを発生させるために用いられる部品である。
図1に示すように、リアクトル100は、コア1と、2つのコイル(第一コイル51、及び第二コイル52)と、を備えている。
【0014】
(コアの構成)
コア1は、板状のリアクトル用電磁鋼板90を厚さ方向に複数積層することで形成されている。リアクトル用電磁鋼板90は、中央部品1aと、一対の外側部品1bと、を有している。
【0015】
中央部品1aは、第一方向D1に延びる第一部分11と、第一方向D1に直交する第二方向D2に延びる複数(6つ)の第二部分12と、を有している。第二部分12は、第一部分11の第二方向における両側の端縁にそれぞれ3つずつ設けられている。第二部分12は、第一部分11と一体に形成されており、同一の面内に広がる板状をなしている。また、第一方向D1における第二部分12同士の間の離間寸法は互いに同一である。なお、ここで言う「同一」とは実質的な同一を指すものであって、製造上の誤差や設計上の公差は許容される。以下の説明においても同様である。
【0016】
第一方向D1における両側に位置する4つの第二部分12は、第一部分11の第一方向D1における両端部にそれぞれ設けられている。つまり、第一部分11は、第一方向D1の両側に突出していない。
【0017】
なお、6つの第二部分12のうち、第一方向D1の中央に位置する一対の第二部分12は、残余の第二部分12に比べて第二方向D2における寸法が小さくてもよい。これは、後述する外側部品1bとの間にエアギャップを形成するためである。
【0018】
外側部品1bは、中央部品1aにおける3つの第二部分12同士を第一方向D1に接続している。言い換えれば、外側部品1bは、3つの第二部分12にまたがるようにして第一方向に延びている。
【0019】
(コイルの構成)
第一コイル51、及び第二コイル52は、第一方向D1における中央の第二部分12にそれぞれ線材を複数回巻きまわすことで形成される。つまり、このリアクトル100は2つの独立したコイルを有している。線材の巻き方としてはこれまで提唱されている種々の態様を採ることが可能である。
【0020】
リアクトル100を形成するに当たっては、上記のような形状に打ち抜き加工された中央部品1a、及び外側部品1bを厚さ方向に複数積層した後、線材を巻きまわして第一コイル51、及び第二コイル52を形成する。その後、中央部品1aの積層体と、外側部品1bの積層体とを溶接することで、リアクトル100が完成する。
【0021】
(リアクトル用電磁鋼板の打ち抜き形状について)
次いで、
図2を参照して、リアクトル用電磁鋼板90の打ち抜き形状について説明する。リアクトル用電磁鋼板90を打ち抜く際のダイ(刃)は、
図2に示す形状となっている。即ち、中央部品1aの第二部分12同士が互いに対向した状態で配列された状態で、第二部分12同士の間の領域に外側部品1bが配置された状態となっている。したがって、外側部品1bの第一方向D1における寸法は、第
二方向D2における第二部分12の寸法の2倍である。つまり、互いに対向配置された一対の中央部品1aにおいて、4つの第二部分12によって囲まれた領域の面積を埋めるように外側部品1bが配置されている。また、これにより、第二方向D2における外側部品1bの寸法(幅寸法)は、第一方向D1における第二部分12同士の間の離間距離と同一である。
【0022】
(作用効果)
【0023】
従来、コア1を製造するに当たっては、所定の形状を有する部品を打ち抜き加工によって得ることが一般的であった。当該部品を複数積層した後、互いに溶接することで1つのコアが形成される。しかしながら、従来のコアの構成では、電磁鋼板の打ち抜きに際して無駄な部分が生じやすく、歩留まりの改善が望まれていた。
【0024】
上記構成によれば、中央部品1aと外側部品1bとを打ち抜き加工によって形成する際に材料となる板材の歩留まりを向上させることができる。つまり、無駄となる部分を低減することができる。具体的には、一対の中央部品1aを、第二部分12同士が対向するように組み合わせた状態で、互いに隣接する第二部分12同士の間に外側部品1bを配置した状態で打ち抜き加工を行うことができる。これにより、歩留まりを向上させることができる。
【0025】
また、上記構成によれば、第二方向D2における外側部品1bの寸法が第二部分12の突出長さの2倍とされていることにより、第二部分12同士の間に形成される領域を外側部品1bとして無駄なく使用することができる。
【0026】
さらに、上記構成によれば、第一方向D1における外側部品1bの寸法が第二部分12同士の間の離間寸法と同一とされていることにより、第二部分12同士の間に形成される領域を外側部品1bとしてさらに無駄なく使用することができる。これにより、一枚の鋼板からリアクトル用電磁鋼板90を得るに当たって、歩留まりを大きく向上させることが可能となる。
【0027】
また、上記のような作用効果に加えて、リアクトル100では、2つのコイルの軸方向が同一であることから、励磁による振動をこれら2つのコイル同士の間で打ち消すことが可能となる。特に、インターリーブ方式でリアクトル100を動作させる場合、2つのコイル同士で電流の位相が異なる状態となる。電流に含まれる基本成分とキャリア成分のうち、基本成分同士が打ち消し合うことで上記のような振動低減効果を得ることができる。一般的に、電磁鋼板で形成されたリアクトルは長辺側(つまり、外側部品1b側)を筐体にねじなどで固定するが、本実施形態に係るリアクトル100では、長辺と平行に振動が発生するため、筐体に伝わる振動を低減する事が可能である。
【0028】
さらに、リアクトル100では、コア1の内側にそれぞれのコイルが収容されている。言い換えると、同一の大きさのコイルをコア1の外側に露出するように配置した場合に比べて、コア1の大きさを拡大することが可能となる。その結果、磁路の長さが全体として拡張され、結合係数を小さく抑えることができる。これにより、リアクトル100の性能をさらに向上させることができる。
【0029】
以上、本開示の第一実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、上記第一実施形態では、中央部品1aに片側3つずつの第二部分12が形成されていることによって計2つのコイルを形成した例について説明した。しかしながら、設計や仕様に応じてコイルの数は4つ以上に変更することが可能である。
【0030】
<第二実施形態>
次に、本開示の第二実施形態について、
図3と
図4を参照して説明する。なお、上記第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
図3に示すように、本実施形態に係るリアクトル200は、コア2と、2つのコイル(第一コイル51、及び第二コイル52)と、を備えている。
【0031】
(コアの構成)
コア2は、第一実施形態と同様に、板状のリアクトル用電磁鋼板90bを厚さ方向に複数積層することで形成されている。リアクトル用電磁鋼板90bは、中央部品2aと、一対の外側部品2bと、を有している。
【0032】
中央部品2aは、第一方向D1に延びる第一部分21と、第一方向D1に直交する第二方向D2に延びる複数(6つ)の第二部分22と、を有している。第二部分22は、第一部分21の第二方向D2における両側の端縁にそれぞれ3つずつ設けられている。また、第一方向D1における第二部分22同士の間の離間寸法は互いに同一である。
【0033】
第一方向D1における両側に位置する4つの第二部分22は、第一部分21の第一方向D1における両端部にそれぞれ設けられている。つまり、第一部分21は、第一方向D1の両側に突出していない。
【0034】
外側部品2bは、上記の3つの第二部分22に対して、第二方向D2から対向するように延びる3つの第三部分23と、これら3つの第三部分23同士を第一方向D1に接続する第四部分24と、を有している。これにより、外側部品2bは全体としてE字型をなしている。このような外側部品2bの積層体が、中央部品2aの積層体の第二方向D2両側からそれぞれ1つずつ取り付けられている。
【0035】
第一部分21に対する第二部分22の突出長さと、第四部分24に対する第三部分23の突出長さは互いに同一である。また、第二部分22同士の間の離間寸法と、第三部分23同士の間の離間寸法は互いに同一である。さらに、第二部分22同士の離間寸法は、3つの第二部分22同士の間で同一である。同様に、第三部分23同士の間の離間寸法は、3つの第三部分23同士の間で同一である。
【0036】
なお、6つの第二部分22のうち、第一方向D1の中央に位置する一対の第二部分22は、残余の第二部分22に比べて第二方向D2における寸法が小さくてもよい。同様に、6つの第三部分23のうち、第一方向D1の中央に位置する一対の第三部分23は、残余の第三部分23に比べて第二方向D2における寸法が小さくてもよい。これは、中央部品2aと外側部品2bとの間にエアギャップを形成するためである。
【0037】
(コイルの構成)
第一コイル51、及び第二コイル52は、第一方向D1における中央の第二部分22にそれぞれ線材を複数回巻きまわすことで形成される。つまり、このリアクトル200は2つの独立したコイルを有している。線材の巻き方としてはこれまで提唱されている種々の態様を採ることが可能である。
【0038】
(リアクトル用電磁鋼板の打ち抜き形状について)
次いで、
図4を参照して、リアクトル用電磁鋼板90bの打ち抜き形状について説明する。リアクトル用電磁鋼板90bを打ち抜く際のダイ(刃)は、
図4に示す形状となっている。即ち、中央部品2aの第二部分22同士の間の間隙に、外側部品2bの3つの第三部分23のうち、最も外側の第三部分23がはめ込まれた状態となっている。このような配置を連続的に繰り返すことで、打ち抜き加工が施される。
【0039】
(作用効果)
上記構成によれば、中央部品2aにおける第二部分22同士の間の間隙に、外側部品2bにおける最も外側の第三部分23をはめ込んだ状態で配置することで、打ち抜き加工に際して無駄な部分が生じる可能性を低減することができる。
【0040】
また、上記構成によれば、第一方向D1における第三部分23の寸法が第二部分22同士の間の離間寸法と同一であることにより、中央部品2aの第二部分22同士の間の領域を無駄なく使用することができる。
【0041】
さらに、上記のような作用効果に加えて、リアクトル200では、2つのコイルの軸方向が同一であることから、励磁による振動をこれら2つのコイル同士の間で打ち消すことが可能となる。特に、インターリーブ方式でリアクトル200を動作させる場合、2つのコイル同士で電流の位相が異なる状態となる。電流に含まれる基本成分とキャリア成分のうち、基本成分同士が打ち消し合うことで上記のような振動低減効果を得ることができる。一般的に、電磁鋼板で形成されたリアクトルは長辺側(つまり、外側部品2b側)を筐体にねじなどで固定するが、本実施形態に係るリアクトル200では、長辺と平行に振動が発生するため、筐体に伝わる振動を低減する事が可能である。
【0042】
以上、本開示の第二実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、上記第二実施形態では、中央部品2aに片側3つずつの第二部分22が形成されていることによって計2つのコイルを形成した例について説明した。しかしながら、設計や仕様に応じてコイルの数は4つ以上に変更することが可能である。
【0043】
<第三実施形態>
続いて、本開示の第三実施形態について、
図5から
図7を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
図5に示すように、本実施形態に係るリアクトル300は、コア3と、2つのコイル(第一コイル51、及び第二コイル52)と、を備えている。
【0044】
(コアの構成)
コア3は、上記の各実施形態と同様に、板状のリアクトル用電磁鋼板90cを厚さ方向に複数積層することで形成されている。リアクトル用電磁鋼板90cは、一対の外側部品3aと、中央部品3bと、を有している。
【0045】
外側部品3aは、第一方向D1に延びる第一部分31と、第一部分31の長辺から第二方向D2に延びる3つの第二部分32と、を有している。第一方向D1における第二部分32同士の間の離間寸法は互いに同一である。3つの第二部分32のうち、第一方向D1の一方側に位置する1つの第二部分32(小第二部分32s)は、残余の2つの第二部分32よりも、予め定められた所定長さ(
図5の場合は単位長さ)の分だけ第二方向D2における寸法が小さくなっている。ここで言う単位長さとは、第一部分31の第二方向D2における幅を指している。なお、残余の2つの第二部分32のうち、第一方向D1の中央に位置する第二部分32のみ、エアギャップを形成するためにさらに残余の1つの第二部分32よりもわずかに短く形成することが可能である。つまり、3つの第二部分32の間で第二方向における寸法が互いに異なった状態とすることが可能である。
【0046】
このような形状の外側部品3aが、第一方向D1を基準として点対称となるような姿勢で一対設けられている。
【0047】
中央部品3bは、第一方向D1に延びるとともに、3つの第二部分32の端部同士を接続する第三部分33と、第一方向D1における第三部分33の両端部から第二方向D2における互いに離間する方向にそれぞれ単位長さ(上述)の分だけ突出する一対の突出部分34と、を有している。
【0048】
(コイルの構成)
第一コイル51、及び第二コイル52は、第一方向D1における中央の第二部分32にそれぞれ線材を複数回巻きまわすことで形成される。つまり、このリアクトル300は2つの独立したコイルを有している。線材の巻き方としてはこれまで提唱されている種々の態様を採ることが可能である。
【0049】
(リアクトル用電磁鋼板の打ち抜き形状について)
次いで、
図6と
図7を参照して、リアクトル用電磁鋼板90cの打ち抜き形状について説明する。リアクトル用電磁鋼板90cを打ち抜く際のダイ(刃)は、
図6と
図7に示す形状となっている。即ち、
図6に示すように、第二方向D2に一体に接続された2つの外側部品3aからなる組が、最も外側の第二部分32同士を係合させるようにして配置される。この時、一方の外側部品3aの当該最も外側の第二部分32の外辺の第二方向D2における長さと、他方の外側部品3aの中央の第二部分32の第二方向D2における突出長さが同一であるため、当該組の左右端が揃った状態となる。2つの外側部品3aの組では、一方側の外側部品3aにおける中央の第二部分32が、他方側の外側部品3aにおける最も外側の第二部分32と連続するようにして結合されている。このような配置を連続的に繰り返すことで、外側部品3aの打ち抜き加工が施される。なお、事後、又は打ち抜き加工と同時に、連結されている2つの外側部品3aを、
図6中の点線部分で切断する。
【0050】
図7に示すように、中央部品3bは、突出部分34同士を対向させるようにして組を形成し、平面内に複数の組を連続的に敷き詰めるようにして打ち抜き加工が施される。
【0051】
上記構成によれば、外側部品3aの第二部分32同士が係合した状態で配置することにより、打ち抜き加工に際して無駄な部分が生じる可能性をさらに低減することができる。また、中央部品3bを打ち抜く際も、平面内を隙間なく所定の形状で埋め尽くすことができるため、歩留まりを改善することができる。
【0052】
さらに、上記のような作用効果に加えて、リアクトル300では、2つのコイルの軸方向が同一であることから、励磁による振動をこれら2つのコイル同士の間で打ち消すことが可能となる。特に、インターリーブ方式でリアクトル300を動作させる場合、2つのコイル同士で電流の位相が異なる状態となる。電流に含まれる基本成分とキャリア成分のうち、基本成分同士が打ち消し合うことで上記のような振動低減効果を得ることができる。一般的に、電磁鋼板で形成されたリアクトルは長辺側(つまり、外側部品3a側)を筐体にねじなどで固定するが、本実施形態に係るリアクトル300では、長辺と平行に振動が発生するため、筐体に伝わる振動を低減する事が可能である。
【0053】
以上、本開示の第三実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、上記第三実施形態では、外側部品3aに片側3つずつの第二部分32が形成されていることによって計2つのコイルを形成した例について説明した。しかしながら、設計や仕様に応じてコイルの数は4つ以上に変更することが可能である。
【0054】
さらに、変形例として
図8に示すように、第二部分32のうちの1つを無くすことも可能である。つまり、この場合、一の第二部分32の第二方向D2における寸法が0となっている。外側部品3aをこのような形状とすることによって、打ち抜き加工に際して
図8に示すようなダイ(刃)の配置(長さが0である第二部分32同士が対向した状態で配置すること)を採ることが可能になり、歩留まりをさらに向上させることが可能となる。
【0055】
また、
図9に示すように、一の第二部分32の第二方向D2における寸法を、上記第三実施形態よりもさらに短くすることも可能である。具体的には、上記第三実施形態では単位長さ当たりの分だけ一の第二部分32が短く形成されている。一方で、
図9の例では、所定長さとしてこの単位長さの2倍の分だけ一の第二部分32が短く形成されている。この場合、
図9に示すように、ダイ(刃)の配置がさらに効率的になり、歩留まりをさらに向上させることができる。
【0056】
<付記>
各実施形態に記載のリアクトル用電磁鋼板90、及びリアクトル100は、例えば以下のように把握される。
【0057】
(1)第1の態様に係るリアクトル用電磁鋼板90は、第一方向D1に延びる板状の第一部分11と、該第一部分11と一体に設けられ、前記第一方向D1に直交する第二方向D2の両側に少なくとも3つずつ設けられ、前記第一部分11から突出するとともに前記第一部分11と同一の面内に広がる板状をなす少なくとも6つの第二部分12と、を有する中央部品1aと、前記少なくとも3つの第二部分12が互いに対向するように一対の前記中央部品1aを組み合わせた状態で、互いに隣接する前記第二部分12同士の間の間隙を埋めることが可能な面積を有するとともに、前記第一部分11と同一の面内に広がる板状をなす外側部品1bと、を備える。
【0058】
上記構成によれば、中央部品1aと外側部品1bとを打ち抜き加工によって形成する際に材料となる板材の歩留まりを向上させることができる。つまり、無駄となる部分を低減することができる。具体的には、一対の中央部品1aを組み合わせた状態で、互いに隣接する第二部分12同士の間に外側部品1bを配置した状態で打ち抜き加工を行うことができる。これにより、歩留まりを向上させることができる。
【0059】
(2)第2の態様に係るリアクトル用電磁鋼板90では、前記第二方向D2における前記外側部品1bの寸法は、前記第二方向D2における前記第二部分12の突出長さの2倍である。
【0060】
上記構成によれば、第二方向D2における外側部品1bの寸法が第二部分12の突出長さの2倍とされていることにより、第二部分12同士の間に形成される領域を外側部品1bとして無駄なく使用することができる。
【0061】
(3)第3の態様に係るリアクトル用電磁鋼板90では、前記第一方向D1における前記外側部品1bの寸法は、前記第一方向D1における前記第二部分12同士の間の離間寸法と同一である。
【0062】
上記構成によれば、第一方向D1における外側部品1bの寸法が第二部分12同士の間の離間寸法と同一とされていることにより、第二部分12同士の間に形成される領域を外側部品1bとしてさらに無駄なく使用することができる。
【0063】
(4)第4の態様に係るリアクトル用電磁鋼板90bは、第一方向D1に延びる板状の第一部分21と、該第一部分21と一体に設けられ、前記第一方向D1に直交する第二方向D2の両側に少なくとも3つずつ設けられ、前記第一部分21から突出するとともに前記第一部分21と同一の面内に広がる板状をなす少なくとも6つの第二部分22と、を有する中央部品2aと、前記第二方向D2に延びる板状をなすとともに、前記第一方向D1において前記少なくとも3つの第二部分22と同一の位置に設けられた少なくとも3つの第三部分23と、該少なくとも3つの第三部分23を前記第一方向D1に接続する第四部分24と、を有する2つの外側部品2bと、を備える。
【0064】
上記構成によれば、中央部品2aにおける第二部分22同士の間の間隙に、外側部品2bにおける最も外側の第三部分23をはめ込んだ状態で配置することで、打ち抜き加工に際して無駄な部分が生じる可能性を低減することができる。
【0065】
(5)第5の態様に係るリアクトル用電磁鋼板90bでは、前記第一方向D1における前記第三部分23の寸法は、前記第一方向D1に隣接する前記第二部分22同士の間の離間寸法と同一である。
【0066】
上記構成によれば、第一方向D1における第三部分23の寸法が第二部分22同士の間の離間寸法と同一であることにより、中央部品2aの第二部分22同士の間の領域を無駄なく使用することができる。
【0067】
(6)第6の態様に係るリアクトル用電磁鋼板90cは、第一方向D1に延びる板状の第一部分31と、該第一部分31と一体に設けられ、前記第一方向D1に直交する第二方向D2の一方側に突出するとともに前記第一部分31と同一の面内に広がる板状をなす少なくとも3つの第二部分32と、を有する2つの外側部品3aと、前記第一方向D1に延びる板状をなすとともに、前記少なくとも3つの第二部分32の端部同士を接続する第三部分33を有する中央部品3bと、を備え、前記少なくとも3つの第二部分32のうち、前記第一方向D1の最も一方側に位置する前記第二部分32は、前記第二方向D2における寸法が、他の前記第二部分32よりも所定長さの分だけ短く形成され、前記中央部品3bは、前記第三部分33の両端部から前記第二方向D2における互いに離間する方向にそれぞれ前記所定長さの分だけ突出する一対の突出部分34をさらに有する。
【0068】
上記構成によれば、外側部品3aの第二部分32同士が係合した状態で配置することにより、打ち抜き加工に際して無駄な部分が生じる可能性をさらに低減することができる。また、中央部品3bを打ち抜く際も歩留まりを改善することができる。
【0069】
(7)第7の態様に係るリアクトル用電磁鋼板90cでは、前記第一方向D1の最も一方側に位置する前記第二部分32は、前記第二方向D2における寸法が0であり、前記突出部分34は、前記第三部分33の両端部から前記第二方向D2における互いに離間する方向にそれぞれ前記第一方向D1の最も他方側に位置する前記第二部分32の第二方向D2における寸法の分だけ突出している。
【0070】
上記構成によれば、長さが0である第二部分32同士が対向した状態で配置することにより、打ち抜き加工に際して無駄な部分が生じる可能性をさらに低減することができる。
【0071】
(8)第8の態様に係るリアクトル100は、厚さ方向に複数積層された上記いずれか一の態様に係るリアクトル用電磁鋼板90を有するコア1と、少なくとも前記第二部分12にそれぞれ巻回された線材を有するコイル(第一コイル51、第二コイル52)と、を備える。
【0072】
上記構成によれば、材料の歩留まりが改善されることで低コスト化されたリアクトル100を提供することができる。
【符号の説明】
【0073】
100,200,300 リアクトル
90,90b,90c リアクトル用電磁鋼板
1,2,3 コア
1a 中央部品
1b 外側部品
11 第一部分
12 第二部分
2a 中央部品
2b 外側部品
21 第一部分
22 第二部分
23 第三部分
24 第四部分
3a 外側部品
3b 中央部品
31 第一部分
32 第二部分
32s 小第二部分
33 第三部分
34 突出部分
51 第一コイル
52 第二コイル
D1 第一方向
D2 第二方向