(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】組換えタンパク質及びそれらの治療的用途
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20240411BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240411BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240411BHJP
C07K 14/485 20060101ALI20240411BHJP
C07K 14/28 20060101ALI20240411BHJP
C07K 14/475 20060101ALI20240411BHJP
C07K 14/71 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
A61K39/00 H
A61P35/00
C07K14/485
C07K14/28
C07K14/475
C07K14/71
(21)【出願番号】P 2021159307
(22)【出願日】2021-09-29
(62)【分割の表示】P 2019072235の分割
【原出願日】2012-11-21
【審査請求日】2021-10-21
(32)【優先日】2012-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2011-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514129453
【氏名又は名称】イン3バイオ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IN3BIO LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】514129464
【氏名又は名称】チャールトン,キース・アラン
【氏名又は名称原語表記】CHARLTON, KEITH ALAN
(73)【特許権者】
【識別番号】514129475
【氏名又は名称】ドント,エリック
【氏名又は名称原語表記】D’HONDT, ERIK
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャールトン,キース・アラン
(72)【発明者】
【氏名】ドント,エリック
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-508861(JP,A)
【文献】特開平07-285883(JP,A)
【文献】特開2005-052135(JP,A)
【文献】特表2009-543071(JP,A)
【文献】特表2008-518583(JP,A)
【文献】Peptides,2002年,Vol.23,pp.97-102
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-15/90
C07K 1/00-19/00
C12P 1/00-41/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コレラ毒素Bサブユニット(CT-B)またはE.coli熱-不安定性LTBサブユニット(LT-B)を含む免疫原性ポリペプチド配列と、
ペプチドスペーサーと
、
ポリペプチド配列とを含み、
前記ポリペプチド配列は、前記ペプチドスペーサーにより前記免疫原性ポリペプチド配列から分離され、
前記ポリペプチド配列は、上皮成長因子(EGF)の少なくともCys6-Cys31の配列と、前記上皮成長因子のCys33が変更されたAla33とを含み、
前記ポリペプチド配列においてCys6はCys20に連結され、Cys14はCys31に連結さ
れている、組換えタンパク質。
【請求項2】
コレラ毒素Bサブユニット(CT-B)またはE.coli熱-不安定性LTBサブユニット(LT-B)を含む免疫原性ポリペプチド配列と、
ペプチドスペーサーと
、
ポリペプチド配列とを含み、
前記ペプチドスペーサーは、SSGGGSGG、SSGGGGSGGG、TSGGGSG、TSGGGGSGG、SSGGGSGGSSG、GGSGGTSGGGSG、SGGTSGGGGSGG、GGSGGTSGGGGSGG、SSGGGGSGGGSSG、SSGGGSGGSSGGG、SSGGGGSGGGSSGGGおよびGGSGGTRPSTAATSからなる群より選択される1つ以上であり、
前記ポリペプチド配列は、前記ペプチドスペーサーにより前記免疫原性ポリペプチド配列から分離され、かつ
前記ポリペプチド配列は、上皮成長因子(EGF)の少なくともCys6-Cys31の配列と、前記上皮成長因子のCys33が変更されたAla33とを含む、組換えタンパク質。
【請求項3】
前記ペプチドスペーサーは、前記免疫原性ポリペプチド配列と前記ポリペプチド配列との間の立体障害を減少させる、請求項1または請求項2に記載の組換えタンパク質。
【請求項4】
前記ポリペプチド配列は、
a)腫瘍抗原を含む配列、
b)受容体を含む配列、または
c)腫瘍抗原を含む配列および受容体を含む配列、
をさらに含む、請求項1または請求項2に記載の組換えタンパク質。
【請求項5】
前記ポリペプチド配列は、少なくとも2つの異なる成長因子を含む、請求項1または請求項2に記載の組換えタンパク質。
【請求項6】
前記ポリペプチド配列は、前記組換えタンパク質内に単一ドメイン又は2つ以上のタンデム反復として1つ以上の成長因子を含む、請求項1または請求項2に記載の組換えタンパク質。
【請求項7】
前記ポリペプチド配列は、IGF-1、IGF-2、FGF1、FGF2、TGF-α、TGF-β、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、PDGF、NGF、EGF、HGF、BMP1~BMP6及びIL1~IL6からなる群より選択される1つ以上の成長因子を含む、請求項4に記載の組換えタンパク質。
【請求項8】
前記腫瘍抗原は、2~4つの互いに異なる腫瘍抗原を含み、あるいは単一エピトープ又は2つ以上のタンデム反復として1つ以上の腫瘍抗原を含む、請求項4に記載の組換えタンパク質。
【請求項9】
前記受容体は、ヒト上皮成長因子受容体2(Her2)、またはヒト上皮成長因子受容体3(Her3)を含む、請求項4に記載の組換えタンパク質。
【請求項10】
前記受容体は、2~4つの互いに異なる受容体を含み、あるいは単一エピトープ又は2つ以上のタンデム反復として1つ以上の受容体を含む、請求項4に記載の組換えタンパク質。
【請求項11】
1つ以上の請求項1または請求項2に記載の組換えタンパク質から多量体を組み立てることを含む、多価分子の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疾患の治療に用いられる組換えタンパク質の分野に関するものである。
関連出願の相互参照
本出願は、2011年11月23日付で提出された発明の名称「免疫合成の組換えタンパク質」の米国特許出願番号第61/563,128号及び2012年6月1日付で提出された発明の名称「免疫合成の組換えタンパク質」の米国特許出願番号第61/654,401号に基づく優先権を主張し、本明細書はその全体を参照文献として含む。
【背景技術】
【0002】
がん免疫学は、腫瘍または悪性腫瘍等のがん細胞と免疫系との間の相互作用に関する研究である。ヒト腫瘍では発現するが、正常組織では発現しないがん特異抗原の認識等における免疫反応の開始は特に興味深い。通常、悪性細胞の分裂及び増殖を制御する方法は、これらの抗原を分離して免疫系により非自己抗原として認識されるようにそれらを提示することで、特定の免疫反応を誘導することである。
【0003】
現在、解明されている成長因子は相当数あるが、多くは、他の疾患状態に関与しているだけでなく、各種がんにおける細胞増殖の重要な媒介体であると見られる。通常、成長因子は細胞表面に位置する成長因子受容体群により制限され認識される水溶性の血清タンパク質である。特定の成長因子は、1つの受容体に特異的であったり、多様な親和性で1つ以上の関連する受容体と密接に結合し得る。同様に、一部の受容体は、単一成長因子リガンドにのみ結合されるが、通常、他の受容体は異なる親和性を有する複数の関連する成長因子と再度結合し得る。天然受容体と結合する際、受容体の細胞質ドメインはリン酸化され、これが1つ以上の遺伝子の転写調節をもたらし、究極的には細胞周期及び細胞増殖に拡
大する細胞内のシグナル伝達カスケードを開始する。
【0004】
成長因子及びその受容体は、成長、発達及び修復の正常過程において必須成分であり、それらの組織分布プロファイル及び発現レベルは、細胞成長を密接に調節する。多くの研究は、成長因子が生体外(in vitro)及び生体内(in vivo)の両方において、各種細胞型の
増殖を刺激できるということを示している(Cohen S.,Carpenter G., PNAS USA 72, 1317,
1975, Witsch E等:Physiology: 25(2):85-101,(2010))。また、特定の成長因子は、一
部のがん細胞株の増殖を刺激することが示され、例えば、上皮成長因子(EGF)は、一部の
非小細胞肺がん種細胞を刺激し得る(Osborne C. K. 等。Can Res. 40, 2. 361(1980))。
血管内皮成長因子(VEGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)及び血小板由来成長因子(PDGF)等の
その他の成長因子は、非小細胞肺がん(NSCLC)(Ballas MS, Chachoua A., Onco Targets and Therapy: 4,43-58(2011))、前立腺がん(Cox ME等;Prostate 69(1):33-40(2009))及び
乳がん(Law J等、Cancer Res; 68,24: 10238-10346(2008))等の各種腫瘍学的疾患に重要
である。
【0005】
悪性組織では、高いレベルの各種の成長因子受容体が報告されている。例えば、上皮成長因子受容体(EGFR)は、肺(lung)がん、乳房がん、膀胱がん、卵巣がん、外陰部がん、結腸がん、肺(pulmonary)がん、脳がん及び食道がん等の上皮由来の悪性腫瘍で異常に高い
レベルで検出された。腫瘍成長の調節において、成長因子及びその受容体の役割は知られていないものの、腫瘍細胞における成長因子受容体の発現は異常な増殖につながるオートクリン成長促進のメカニズムを提供するということが提示されている(Schlessinger J., Schreiber A. B., Levi A., Liberman T., Yarden Y. Crit. Rev. Biochem. 1983, 14(2)93-1 11)。また、Liao Y等;Hum Pathol 36(11):1186-1196(2005)及び Cox ME等;Prostate:69(1) 33-40 (2009)には、転移性前立腺がんで増加する成長因子及び島受容体の役
割について記載されている。
【0006】
がん治療において、成長因子のシグナル伝達を目的とする1つの治療戦略では、関連す
る特定の受容体/受容体に対してモノクローナル抗体を用いる等の受動免疫療法が用いら
れている。かかる研究は、リガンドの結合を抑制し得る受容体に対する抗体の特異的認識が、悪性細胞のマイトジェン刺激に与える影響を抑制し得るということが説明されている(SATO J. D.,等。Methods in Enzymology, vol.146 63-81頁、1987)。しかし、通常、マ
ウス由来の抗体は、ヒト抗マウス抗体(HAMA)反応を生成するため、単一投与に制限され得る。
【0007】
他の治療戦略では、腫瘍に対する成長因子の増殖効果を抑制する分子に対して免疫反応を誘導するのに関与する成長因子を含有するワクチンを用いた能動免疫療法が用いられている。Davila等の発明の名称「Vaccine Composition Comprising Autologous Epidermal Growth Factor or a Fragment or a Derivative Thereof having Anti-tumor Activity and use Thereof in the Therapy of Malignant Diseases」の米国特許第5,984,018号は、例えば、グルテルアルデヒド(gluterhaldehyde)を用いて化学的に共に接合される免疫原
性(即ち、非ヒト)の担体タンパク質と成長因子の混合物を含有するワクチンの使用を開示している。しかし、任意の特定の理論に限られることなく、化学的接合は、ワクチンに対する免疫反応を阻害すると考えられる。
【0008】
これは、宿主は「自己抗原」に対して免疫反応を生成するが、脊椎動物の免疫系は、かかる反応の発生を防止するように進化することが求められるため、技術的に解決し難い課題である。強力な免疫反応は、例えば、ヘルパーT細胞活性化を含む自己抗原に対して生
成される場合、通常、自己免疫疾患の状態をもたらす。一部の自己免疫障害、例えば、ループス、多発性硬化症(MS)、糖尿病等は、宿主自己エピトープを近似して模倣する免疫原性エピトープ(T細胞エピトープ)を含む環境要因に初期露出することでもたらされ得ると
長年にわたって推定されてきた。これは宿主エピトープと交差反応するヘルパーT細胞の
刺激につながり得る。よって、環境要因への持続的な露出は、抗自己免疫反応をもたらし得る(Albert, L.J.,及びInman, R.D New England Journal of Medicine, Dec. 30th 2068-2074頁、1999)。実際に、ウイルス性抗原が神経細胞タンパク質に対して、抗自己免疫反応を起こし得るということが説明されている(Levin, M.C.等、Nature Medicine vol 8 (5) 509-513頁、2002)。
【0009】
Casimiro等の発明の名称「Method for Treatment of Malignant and Infectious Chronic Diseases」の米国特許公開第2006/0251654号(654発行)は、担体タンパク質と結合する悪性または伝染性慢性疾患に関する自己抗原を含有するワクチンを用いて被験者に免疫力を持たせる方法;免疫調節剤を用いて被験者を治療する方法;及びステップ1のワクチン
を用いて被験者に再度免疫力を持たせる方法、並びに水酸化アルミニウム及びモンタナイドISA51(Seppic, Paris, France)から選択される適切なアジュバントを開示する。不幸にも、化学的接合によるワクチンの調製は、免疫反応を阻害すると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のワクチンの多くは、タンパク質生成物の均一性及び相同性の潜在的な不足及び製造方法で主に発生する多くの限界を示す。通常、上述のワクチンは、組換え担体タンパク質及びグルテルアルデヒドを用いて化学的に接合されるヒト由来のポリペプチド混合物を含む。不幸にも、この反応性試薬は、各種の化学基間に共有架橋結合を形成し得るため好ましくなく、通常、非常に異質な生成物につながる。よって、得られたワクチンは、様々な数の標的ヒトポリペプチド(例えば、0、1、2、3等)が付着した担体タンパク質分子だけでなく、異なる原子を介して各々異なる位置及び異なる方向に担体と付着し得るヒトポリ
ペプチドを含み得る。また、標的ポリペプチド及び担体タンパク質分子は、それ自体で結合されて臨床的効能を有することができず、抗がん患者の免疫反応に寄与できない各種のホモ多量体をもたらし得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、組換えタンパク質及びそれらの各々の製造方法;組換えタンパク質の特徴、及び前記組換えタンパク質を用いて、例えば、肺(lung)がん、乳房がん、膀胱がん、前立腺がん、卵巣がん、外陰部がん、結腸がん、大腸がん、小腸がん、肺(pulmonary)がん、
脳がん、食道がん、その他がん等の慢性疾患並びにその他疾患を治療する治療方法に関するものである。
【0012】
例示的な実施形態において、前記組換えタンパク質は、例えば、コレラ菌のコレラ毒素B(CTB)タンパク質または合成等価物の1つ以上の配列及びヒト成長因子の1つ以上のエピトープの1つ以上の配列を発現する物理的構造に折りたたまれた1つ以上の配列を発現する免疫原性のタンパク質分子である。前記成長因子またはその一部の発現物質は、多重部位に、各部位ごとに単一抗原及び/又は抗原分子の長鎖として同時に存在し得る。
【0013】
他の例示的な実施形態において、前記組換えタンパク質は、例えば、コレラ菌のコレラ毒素B(CTB)タンパク質または合成等価物の1つ以上の配列及び1つ以上の腫瘍抗原またはその一部の1つ以上の配列を発現する物理的構造に折りたたまれた1つ以上の配列を発現する免疫原性のタンパク質分子である。また、前記組換えタンパク質は、1つ以上の成長因子
またはその一部の1つ以上の配列、及び/又は1つ以上の受容体またはその一部の1つ以上の配列を含んでもよい。
【0014】
他の例示的な実施形態において、前記組換えタンパク質は、例えば、コレラ菌のコレラ毒素B(CTB)タンパク質または合成等価物の1つ以上の配列及び1つ以上の受容体またはその一部の1つ以上の配列を発現する物理的構造に折りたたまれた1つ以上の配列を発現する免疫原性のタンパク質分子である。また、前記組換えタンパク質は、1つ以上の成長因子ま
たはその一部の1つ以上の配列、及び/又は1つ以上の受容体またはその一部の1つ以上の配列を含んでもよい。
【0015】
これらの例示的な実施形態において、前記腫瘍抗原またはその一部、受容体またはその一部、及び/又は成長因子またはその一部の発現物質は、多重部位に、単一抗原または受
容体及び/又は各部位ごとに抗原または受容体分子の長鎖として同時に存在し得る。
【0016】
例示的な実施形態において、前記腫瘍抗原の配列は、前立腺特異抗原(PSA)またはその
一部の配列を含み得る。例示的な実施形態において、前記受容体の配列は、ヒト上皮成長因子受容体2(Her2)の配列またはその一部及び/又はヒト上皮成長因子受容体3(Her3)また
はその一部を含み得る。
【0017】
例示的な実施形態において、前記成長因子の配列は、組換えタンパク質内の1つ以上の
位置にEGFの中和ドメインを含むEGFの適切なコード領域の実質的な部分または上皮成長因子(EGF)の配列を含み得る。他の例示的な実施形態において、前記成長因子の配列は1つ以上の成長因子の全長またはその一部、及び/又はEGF、IGF-1, IGF-2、FGF、TGF-β、TGF-
α、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、PDGF、NGF、EGF、HGF、BMP1~BMP6及びIL1~IL6
を含み、これらに限らないその他成長因子等の他の自己抗原を含み得るが、これらに限らない。本発明の範囲内で、成長因子はヒト及び非ヒト種から選択され得ることが考慮される。また、本発明の範囲内で、前記成長因子の配列は、ヒトまたは非ヒト成長因子の何れか1つと実質的に類似するか、前記配列はその機能的部分を含み得ることが考慮される。
また、前記組換えタンパク質は、組換え免疫原性タンパク質の配列内において、成長因子
の一部または全部を機能的に模型化するのに用いられる他の配列の1つ以上の発現物質を
含み得る。更に、一実施形態において、付加的な隣接残基は発現するか最小配列に付加され、分子の全中和ドメインが天然立体構造で提示されて、免疫系の細胞とアクセスできるようにする。
【0018】
本開示の文脈において、「中和ドメイン」は、特異的結合対、例えば、成長因子及びその関連受容体の何れか1つまたは両方の1つの領域或いは領域として規定され、ここで、上述の領域と特異的結合対のメンバーでない第3分子の結合は、特異的結合対の2つのメンバーの後続結合を防止し得る。前記第3分子は、抗体を含むものの、これに限らない他のタ
ンパク質分子または小さな非タンパク質分子であり得、また、天然由来若しくは合成由来の何れか1つであってもよい。通常、前記中和ドメインは、結合時に直接接触する特異的
結合対のメンバーの領域を含み、また、第3分子の結合時に十分な立体障害を誘導して、
前記特異的結合対のメンバーが直接結合されることを防止する前記領域の内外の領域を含み得る。
【0019】
その関連受容体によるリガンドの特異的認識は、受容体の結合部位とリガンドの特定分子シグネチャー(エピトープ)間の相互作用により規定される技術分野でよく確立している。よって、前記受容体の結合部位と結合するか逆に遮断され、又はリガンドの認識エピトープと結合するか逆に遮断される抗体は、リガンド-受容体の相互作用を防止することが
できる。かかる抗体は、「中和」されることで説明される。本開示の文脈において、中和抗体は、組換えタンパク質の投与時に宿主によって生成されることが好ましく、よって、前記タンパク質の配列は、受容体結合に求められるエピトープが機能的(天然)立体構造で提示されるよう、成長因子又は腫瘍抗原に由来する好適な配列の1つ以上又は全体を発現
するか含み得る。
【0020】
また、物理的部位ごとに単一腫瘍抗原、受容体及び/又は成長因子若しくはその一部、
及び/又は腫瘍抗原、受容体及び/又は成長因子の配列の反復鎖として提示される単一腫瘍抗原、受容体及び/又は成長因子の多重発現複製物質(例えば、n=1以上)以外に、本発明によるタンパク質は、組換えタンパク質の配列内の互いに異なる位置に単鎖又は鎖として存在する2つ以上の互いに異なる腫瘍抗原、受容体及び/又は成長因子の1つ以上のエピトー
プ若しくは結合部位の発現物質を含み得る。
【0021】
得られたタンパク質は、組換えタンパク質の配列内で腫瘍抗原、受容体及び/又は成長
因子若しくは1つ以上のエピトープを発現する単一ポリペプチド或いはその結合部位であ
ってもよい。例示的な実施形態において、組換えタンパク質の配列は、組換えタンパク質の表面上にCTB配列の1つ以上の部分を発現させ、腫瘍抗原、受容体及び/又は成長因子発
現物質若しくは1つ以上のエピトープの発現物質或いはその結合部位を天然立体構造で提
示する。
【0022】
他の例示的な実施形態において、タンパク質製剤を調製する方法が開示される。この例示的な実施形態において、前記方法は、1種以上の腫瘍抗原、受容体及び/又は成長因子若しくはその一部を含む組換えタンパク質を含む多価のワクチンを調製する1つ以上の単一
の一価又は多価の単量体を組み立てる方法を含む。
【0023】
また別の例示的な実施形態において、患者を治療する方法が開示される。この例示的な実施形態において、前記方法は、1つ以上の一価又は多価のワクチン、1つの腫瘍抗原、受容体及び/又は成長因子、合成タンパク質をワクチン接種当日又はワクチン接種期間に隔
日又は数回に亘って患者に投与する方法を含む。
【0024】
他の例示的な実施形態において、患者を治療する方法が開示される。この例示的な実施
形態において、前記方法は、合成タンパク質を薬学的に許容できるアジュバントを含む担体中の1つ以上の一価又は多価のワクチン、1つの腫瘍抗原、受容体及び/又は成長因子を
患者に投与し、免疫反応を促進する方法が含まれる。
【0025】
本発明に記載された実施形態は、参照される図面の図で示され、これは例示的であって制限的ではない。また、参照符号は類似部分又は該当部分を意味するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】種々の生物種におけるEGF分子の配列及び構造の表を示す図である。
【
図2】EGF中和ドメインを含むヒトEGF分子構造の実施形態を示す図である。
【
図3】EGF中和ドメインを含むEGF分子のシステイン対における単純化線構造の実施形態を示す図である。
【
図4】EGF中和ドメインを正確な立体構造で提示するEGF分子の最小配列の実施形態を示す図である。
【
図5】EGF中和ドメインを発現する変形合成分子構造の実施形態を示す図である。
【
図6】rHuEGFと結合するmAb10825及びmAb10827に対して、450nmで吸光度(OD)を測定した棒グラフを示す図である。
【
図7】rHuEGFと結合するmAb10825及びmAb10827と、中和ドメインに由来する遊離可溶性ペプチドを比較した棒グラフを示す図である。
【
図8】ELISAプレートに直接吸着される6 EGF-CTB合成タンパク質と抗EGF中和ドメインmAb10827の結合の折れ線グラフを示す図である。
【
図9】抗ウサギ-CTB抗体により捕捉される6 EGF-CTB合成タンパク質と抗EGF中和ドメインmAb10827の結合の折れ線グラフを示す図である。
【
図10】天然(未沸騰)条件下でSDSゲル上に6つの1価の合成EGF-CTBタンパク質を電気泳動し、抗-CTB抗体を用いて検出するウエスタンブロットを示す図である。
【
図11】2 全長EGF配列(E2)又は2つの部分EGF配列(B2)の何れか1つを含む合成EGF-CTBタンパク質と抗-EGF中和ドメインmAb10827の結合の折れ線グラフを示す図である。
【
図12】二価の合成EGF-CTBタンパク質を非変性SDS-PAGEゲル上に電気泳動するウエスタンブロットを示す図である。
【
図13】2つの全長EGF配列(下線)及びCTB配列(イタリック体)を含む合成タンパク質の配列を示す図である。
【
図14】2つのEGF中和ドメイン配列(下線)及びCTB配列(イタリック体)を含む合成タンパク質の配列を示す図である。
【
図15】EGF中和ドメインCys6-Cys31(下線)及びCTB配列(イタリック体)を含むEGF分子の2つの部分配列を含む合成タンパク質の配列を示す図である。
【
図16】天然CTBタンパク質の多量体化に対するpH変化の効果を示すウエスタンブロットを示す図である。前記ゲルの右側のサンプルは、ゲル分析前に下記に示すpHで5分間培養した。左側のサンプルは、下記に示すpHで5分間培養し、次いで、ゲル分析前にpH7.0まで1時間中和させた。
【
図17】EGF及びCTBを発現させる配列を含む構成体T1-T6、E2及びB2の表を示す図である。
【
図18】E2及びB2構成体のウエスタンブロットを示す図である。
【
図19】EGF及びCTBを発現する配列を含む構成体E2、E2N及びE2Cを示す図である。
【
図20】EGF及びCTBを発現する配列及び延びたアミノ酸リンカーを含有する構成体を示す図である。
【
図21】E2、E2N及びE2C構成体のウエスタンブロットを示す図である。
【
図22】延びたアミノ酸リンカーを含む多数のN末端構成体のウエスタンブロットを示す図である。
【
図23】延びたアミノ酸リンカーを含む多数のC末端構成体のウエスタンブロットを示す図である。
【
図24】IGF1(下線)、EGF(下線及びイタリック体)並びにCTB配列(イタリック体)を含む合成タンパク質の配列を示す図である。
【
図25】単一組換えタンパク質上に、IGF、EGF及びCTB配列が同時に存在することを説明する捕捉ELISAの棒グラフを示す図である。棒A及び棒Bは、抗-EGF抗体により捕捉され、棒Cは抗-IGF抗体により捕捉された。タンパク質は次のように検出された;A 抗-CTB、B 抗-IGF及びC 抗-CTB。
【
図26】Hu-IGF1配列(下線)及びCTB配列(イタリック体)を含む合成タンパク質の配列を示す図である。
【
図27】IGF-CTB及びEGF-CTBのヘテロオリゴマーが検出される捕捉ELISAの棒グラフを示す図である。サンプルは何れもCTBにIGF C末端を含む。サンプルA及びBは、CTBにEGF C末端を含み、サンプルB及びDは、CTBにEGF N末端を含む。サンプルA及びBは、抗EGF抗体により捕捉されてIGFが検出されたのに対し、サンプルC及びDは、抗IGF抗体により捕捉されてEGFが検出された。
【
図28】(a-e)は、a)TGF-β1、b)FGF2、c)HGF(NK1)、d)IGF 1/2及びe)VEGF-A/C(VEGF-C配列(下線及びイタリック体))の成長因子配列(下線)、並びにCTB配列(イタリック体)を含む合成タンパク質の配列を示す図である。
【
図29】CTB配列と共に1つ以上の成長因子に由来する配列を含む多様な種類のキメラ組換えタンパク質の捕捉ELISAの棒グラフを示す図である。各々の場合において、組換えタンパク質は、配列のうちの1つに対して特異的な抗体により捕捉され、次いで、異なる配列に対して特異的な抗体により次のように検出された。HGF及びTGF B1は、α-HGF及びα-TGF B1抗体により捕捉されCTBが検出された。FGF2は、α-CTB抗体によって捕捉されFGF2が検出された。VEGF A/Cは、(i)α-VEGF-A抗体及び(ii)α-VEGF-C抗体により捕捉され、どちらの場合もCTBが検出された。どちらの場合もα-IGF1によりIGF1/2が捕捉され、(i)α-CTB抗体及び(ii)α-IGF2抗体により検出された。
【
図30】主に5量体の組み換えタンパク質の存在を説明する
図28aによる天然組換えTGF B1-CTBタンパク質のSDS-PAGEゲルのウエスタンブロットを示す図である。
【
図31】a)TGF-B1配列(下線)及びCTB配列(イタリック体)を含む合成タンパク質の配列、及びb)TGF-β2受容体リガンド結合ドメインの配列(下線)及びCTB配列(イタリック体)を含む合成タンパク質の配列を示す図面である。
【
図32】TGF-β-R2及びCTB配列を共に含有する組換えタンパク質の捕捉ELISAの棒グラフを示す図である。前記グラフは、両者の配列が偏向することなく、両方向に同時に結合できるということを説明する。
【
図33】TGF-β及びCTB由来の配列を含有する組換えタンパク質が、TGFβ受容体2及びCTBのリガンド結合ドメイン由来の配列を含有する組換えタンパク質と結合できるということを示す図である。
【
図34】免疫化の後、r-IGFに対してマウス血清を1/100に希釈したグループ1のIgG抗体反応を示す図である。
【
図35】免疫化の後、r-EGFに対してマウス血清を1/100に希釈したグループ2のIgG抗体反応を示す図である。
【
図36】免疫化の後、r-EGFに対してマウス血清を(a)1/100及び(b)1/8に希釈したグループ3のIgG抗体反応を示す図である。
【
図37】免疫化の後、r-IGFに対してマウス血清を(a)1/100及び(b)1/8に希釈したグループ3のIgG抗体反応を示す図である。
【
図38】免疫化の後、r-EGFに対してマウス血清を(a)1/100及び(b)1/8に希釈したグループ4のIgG抗体反応を示す図である。
【
図39】免疫化の後、r-IGFに対してマウス血清を(a)1/100及び(b)1/8に希釈したグループ4のIgG抗体反応を示す図である。
【
図40】免疫化の後、r-IGFに対してマウス血清を1/8に希釈(1/100のサンプル178は除く)したグループ5のIgG抗体反応を示す図である。
【
図41】免疫化の後、a)r-IGF及びb)rHu-EGFに対してマウス血清を1/100に希釈したグループ6のIgG抗体反応を示す図である。
【
図42】モノ-ガングリオシドGM1、コレラ毒素サブユニットBの天然結合パートナーの構造を示す図である。
【
図43】固相支持体(ピアス)に接合される市販のD-ガラクトースの構造を示す図である。
【
図44】CTB発現ベクターにより形質転換されたE.coli細胞の3つの菌株の培養上清液(培地)からrCTBを精製するSDS-PAGEゲルを示す図である:レーン1はサイズマーカーを示す。レーン2、レーン5及びレーン8は、原培養上清液を示す。レーン3、レーン6及びレーン9は、粗製細胞質画分を示す。レーン4、レーン7及びレーン10は、溶出された精製CTBを示す。レーン11は、IMACにより精製されたヒスチジンタグCTBを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書には、組換えタンパク質又はワクチンに関する詳細な実施形態が開示されているが、前記開示された実施形態は単に例示的なものであり、様々な形態で実施され得ると理解される。よって、本明細書に開示された特定の機能の詳細な説明は、制限的に解釈されるのではないが、単に請求範囲に関する基礎資料及び当業者を理解させるための代表的な基礎資料としてここに開示された各種の組換えタンパク質が利用される。
【0028】
本発明は、免疫原性の組換えタンパク質の構成要素として、最大数の成長因子エピトープ、腫瘍抗原エピトープ及び/又は受容体の結合部位の提示を改善させるために、同種の
組換えタンパク質を提供する。例示的な実施形態において、コレラ毒素B(CTB)、及びヒト上皮成長因子(EGF)、腫瘍抗原及び/又は受容体の全部若しくは一部を発現する組換えタンパク質が開示されている。他の例示的な実施形態において、タンパク質は公知の免疫原性のタンパク質に基づいて模型化するその他免疫原性の組換えタンパク質を発現し得る。かかる組換えタンパク質は、ヒトの免疫系に非常に免疫原性のあるポリペプチドの発現物質であり得るということが本発明の範囲内で考慮される。好ましくは、前記組換えタンパク質は、キメラタンパク質に付加的な性質、例えば、高発現収率及び製造の容易性、経口安定性及び腸から血流までの交差能、及び/又は人体で検証された安定した使用性を付与す
る。
【0029】
例示的な実施形態において、本願に記載の組換えタンパク質は、総分子量の関数として、標的自己抗原に由来するタンパク質の配列を高比率で含んだり発現し得る。これは、例えば、多重成長因子エピトープを含有する巨大タンパク質模型を用いることで達成され得る。これらの成長因子エピトープは、単一成長因子の全部又は一部の多重複製物質、若しくは1つ以上の互いに異なる成長因子の全部又は一部の複製物質であり得る。
【0030】
本発明によって、成長因子エピトープの発現物質は、実質的に天然立体構造が維持するように折りたたまれ、前記エピトープに対して強い宿主免疫反応を誘導する方式で、宿主免疫系の成分に提示され得る。組換えタンパク質のドメインを支持するエピトープを模型化する好適な天然タンパク質模型の例としては、コレラ毒素Bサブユニット、E.coli熱-不安定性LT及びLT-IIエンテロトキシンBサブユニット、ベラトキシン、百日咳毒素、カンピロバクター・ジェジュニ・エンテロトキシン、志賀毒素、リステリア毒素、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、髄膜炎菌I外膜タンパク質、バクテリオファージ外被タン
パク質、アデノウイルス及びその他ウイルス性の外被タンパク質が含まれるが、これらに限られるわけではない。また、前記タンパク質の非自己成分は減少し得る。少なくとも、非自己配列は、約9、10、11以上のアミノ酸長を含み、少なくとも1つのヒトT-細胞エピトープを全体又は部分的に含み得る。また、非天然「合成」ポリペプチドは、タンパク質全体に免疫原性を付与する要求を満たして、前記宿主免疫系に成長因子、受容体、腫瘍抗原又はそのエピトープを適切に提示するように用いられ得る。
【0031】
例示的な実施形態において、組換えタンパク質のドメインを支持するエピトープは、ポリペプチド配列が天然由来なのか合成なのかに応じて、適切な化学的/環境的条件下でオ
リゴマー多量体に自己組み立てされたり、若しくは、別の条件下で単量体に還元される能力を有し得る。理想として、多量体化ドメインは、各々の数のサブユニット、例えば、2
量体、3量体、4量体、5量体等の安定した多量体に組み立てられ均一なサイズの生成物を
生成し得る。天然ポリペプチドの例としては、ロイシンジッパー、lacリプレッサータン
パク質、ストレプトアビジン/アビジン、コレラ毒素Bサブユニット、その他AB5毒素のBサブユニット、シュードモナス3量体化ドメイン、及びウイルス性カプシドタンパク質が含
まれるが、これらに限られるわけではない。
【0032】
本発明による組換えタンパク質は、成長因子又はその一部、細胞受容体又はその一部、腫瘍抗原又はその一部かどうかによって、慢性疾患又は抗がんに関する成長因子及び受容体に対する広範囲な細胞経路、更に、前記合成タンパク質内で腫瘍抗原が最も広く用いられ得る固形腫瘍と関連がある。前記タンパク質は組換えタンパク質の形態であり、例えば、乳房がん、肺(lung)がん、膀胱がん、卵巣がん、外陰部がん、結腸がん、肺(pulmonary)がん、脳がん、大腸がん、小腸がん、頭がん及び首がん、並びに食道がん等の慢性疾患
を治療するのに有用であり得る。前記疾患において、互いに異なる腫瘍抗原が発現され、複数の細胞受容体及び成長因子が過剰に発現され得るため、後述するタンパク質は、前記疾患に関する複数の細胞経路に対して1つ以上の互いに異なる腫瘍抗原、1つ以上の互いに異なる受容体又は成長因子を含有し得る。これらのタンパク質を「多価」とよぶ。
【0033】
例示的な実施形態において、1つ以上の上皮成長因子(EGF)の中和ドメインを発現する同種の組換えタンパク質からなるタンパク質が開示される。前記タンパク質は組換えタンパク質の形態であり、例えば、乳房がん、肺(lung)がん、膀胱がん、卵巣がん、外陰部がん、結腸がん、肺(pulmonary)がん、脳がん、大腸がん、頭がん及び首がん、並びに食道が
ん等の慢性疾患を治療するのに有用であり得る。例示的な実施形態において、前記タンパク質は、EGF配列及びCTB配列を発現又は含む組換えタンパク質である。
【0034】
他の例示的な実施形態において、1つの線維芽細胞成長因子(FGF)を発現する同種の組換えタンパク質からなるタンパク質が開示される。例示的な実施形態において、前記タンパク質は、FGF配列及びCTB配列を発現又は含む組換えタンパク質である。
【0035】
他の例示的な実施形態において、1つの形質転換成長因子β1(TGF-β1)を発現する同種
の組換えタンパク質からなるタンパク質が開示される。例示的な実施形態において、前記タンパク質は、TGF-β1配列及びCTB配列を発現又は含む組換えタンパク質である。
【0036】
また別の例示的な実施形態において、1つの形質転換成長因子β1(TGF-β1)を発現する
同種の組換えタンパク質からなるタンパク質が開示される。例示的な実施形態において、前記タンパク質は、TGF-β1配列及びCTB配列を発現又は含む組換えタンパク質である。
【0037】
1つの例示的な実施形態において、1つのインスリン様成長因子-1(IGF-1)を発現する同
種の組換えタンパク質からなるタンパク質が開示される。例示的な実施形態において、前記タンパク質は、IGF-1配列及びCTB配列を発現又は含む組換えタンパク質である。
【0038】
他の例示的な実施形態において、1つの肝細胞成長因子(HGF)を発現する同種の組換えタンパク質からなるタンパク質が開示される。例示的な実施形態において、前記タンパク質は、HGF配列及びCTB配列を発現又は含む組換えタンパク質である。
【0039】
他の例示的な実施形態において、1つのインスリン様成長因子-1(IGF-1)及び1つのイン
スリン様成長因子-2を発現する同種の組換えタンパク質からなるタンパク質が開示される
。例示的な実施形態において、前記タンパク質は、IGF-1配列、IGF-2配列及びCTB配列を
発現又は含む組換えタンパク質である。
【0040】
また別の例示的な実施形態において、1つの血管内皮成長因子-A(VEGF-A)及び1つの血管内皮成長因子-C(VEGF-C)を発現する同種の組換えタンパク質からなるタンパク質が開示される。例示的な実施形態において、前記タンパク質は、VEGF-Aの中和ドメイン配列、VEGF-C配列及びCTB配列を発現又は含む組換えタンパク質である。
【0041】
発現又は含まれるHuEGFの適切なコード領域を決定するために、種々の生物種においてEGF分子の配列及び構造が分析される。種々の生物種におけるEGF分子の配列及び構造を示
す表を
図1を参照して説明する。
図1に示したように、ボックス100は、種々の生物種にお
けるEGF分子の配列の一部を含み、前記EGF分子の中和ドメインエピトープを示す。互いに異なる種のEGF分子の中和ドメインエピトープの間で顕著な保存量がある一方、種間でも
かなりの差がある。特に、生体内研究において、1つの中和ドメイン(ボックスで表示された配列100)は霊長類では完全に保存されているが、齧歯類および他の種では差がある。同様に、前記EGF分子の異なる配列は、三次構造の差と同等である。
【0042】
例示的な実施形態において、EGF中和ドメインを含むヒトEGF分子の構造を
図2を参照し
て説明する。前記EGF分子は、Cys6、Cys14、Cys20、Cys31、Cys33及びCys42を含む6つの
システイン残基を含有する。前記6つのシステイン残基は、EGF分子の折りたたみを決定するのに重要である。前記EGF中和ドメイン200(逆平行βシートとして図示)は、分類した2
対のジスルフィド結合システイン、Cys6-Cys20及びCys14-Cys31により拘束されている。
前記2対のジスルフィド結合システイン、Cys6-Cys20及びCys14-Cys31は、これら2対がEGF中和ドメイン200を正確な立体構造として提示するEGF分子の最小配列及び最小ペプチドを規定するため重要である。
【0043】
例示的な実施形態において、EGF B-ループ200を含むEGF分子のシステイン対の単純化された線構造を
図3を参照して説明する。
図3に示したように、Cys6はCys20に連結され、Cys14はCys31に連結され、Cys33はCys42に連結されている。前記EGF B-ループ200は、Cys20
とCys31との間に位置している。よって、
図4に示したように、EGF中和ドメイン200を正確な立体構造で提示するEGF分子の最小配列又は最小ペプチド400は、Cys6-Cys31の配列である。
【0044】
例示的な実施形態において、EGF中和ドメインを含むEGF分子の少なくとも一部を発現する本発明による変形組換えタンパク質分子の構造は、
図5を参照して説明する。単一の突
然変異又は変更は、EGF分子のCys33がCys33をAla33に変更する変形合成分子を生成してCys33を除去することで、可能な限りのあらゆる誤った折りたたみ(miss-folding)の問題を
防止するようにする。
【0045】
アラニンは、機能的特性の側面において極めて「中性」であり、グリシンから離れて最も短い側鎖を有するため用いられる。よって、アラニンは、変形組換えタンパク質に任意の非天然特性を付与する可能性が最も低い残基と見なされる。潜在的には任意の他の残基が用いられ得るが、ほとんど変更させないのが本発明の範囲内で考慮される。
【0046】
例示的な実施形態において、EGF分子のあらゆる部分は、Met21-Ala30残基で規定される領域からEGF配列全体にまで用いられ得る。前記組換えEGF-CTBタンパク質の発現に選択される配列は、例えば、EGF配列全体及び前記脈絡で中和ドメインとして規定された中和ド
メインの正確な提示に必要であると思われる領域を各々含み、これを達成するために必要と見なされないEGFの如何なる他の部分も含まない。
【0047】
他の例示的な実施形態において、血管内皮成長因子-A(VEGF-A)の中和ドメインを発現する同種の組換えタンパク質からなるタンパク質が開示されている。例示的な実施形態において、前記タンパク質は、VEGF-A配列及びCTB配列を発現又は含む組換えタンパク質であ
る。例示的な実施形態において、前記VEGF-A配列は、成熟タンパク質の配列Cys57-Cys104を含む中和ドメインを含み得る。他の実施形態において、VEGF-Aの配列は、Val14及びLys108まで延びた1つ以上の隣接残基を含み得る。
【0048】
他の例示的な実施形態において、TGF-β受容体IIのリガンド結合ドメインを発現する同種の組換えタンパク質からなるタンパク質が開示されている。例示的な実施形態において、前記タンパク質は、TGFB-RII配列及びCTB配列を発現又は含む組換えタンパク質である
。前記TGFB-RII配列は、Thr23とGln166との間に細胞外ドメインの任意の配列を含み得る
。
【0049】
他の例示的な実施形態において、HGF受容体(c-Met)のリガンド結合ドメインを発現する同種の組換えタンパク質からなるタンパク質が開示されている。例示的な実施形態において、前記タンパク質は、HGF受容体配列及びCTB配列を発現又は含む組換えタンパク質である。好ましくは、前記HGF受容体配列は、Lys27とLeu515との間に細胞外SEMAドメインの任意の配列を含み得る。
【実施例】
【0050】
実施例I:ELISAプロトコール
本発明によるEGF-CTB合成タンパク質等の組換えタンパク質が正確な立体構造でEGFのβ-ループを表示できるか否かを決定するために、EGF受容体とEGFの結合をブロックするこ
とが知られている市販の2種のモノクローナル抗体(Santa Cruz Antibodies、カタログ番
号10825及び10827)を入手した。任意の特定理論に限られることなく、Met21-Ala30残基により規定された領域を通じてEGF受容体との結合が部分的に達成されるということが、多
くのソースにより推定される。
【0051】
例示的な実施形態において、ELISAで1μg/ml及び2μg/ml濃度のmAb10825及びmAb10827
が組換えEGF(rEGF)タンパク質を結合するのに用いられ、吸光度(OD)は450nmで測定された。その結果を
図6を参照して棒グラフで示した。
図6に示したように、rEGFは、ELISAプレ
ートに吸着されるとき、天然立体構造を維持し、mAb10825又はmAb10827の何れか1つが1μg/mlであれば良好なシグナルを得るのに十分である。
【0052】
Met21-Ala30残基の認識を評価するために、プレートを約1μg/mlのタンパク質(rEGF)約100μl/ウェルでコーティングし、約37℃で約1時間培養した。前記プレートをPBS-0.5%
のTween(PBST)約200μl/ウェルで2回洗浄してから約200μlPBSで2回洗浄した。前記プレ
ートをPBS-2%のミルクパウダー(MPBS)約200μl/ウェルでブロックし、約37℃で約1時間
培養した。その後、前記のように、プレートをPBSTで約2回洗浄し、PBSで2回洗浄した。
約1μg/ml又は約2μg/mlの試験抗体約100μlを添加し、室温(RT)付近で約1時間培養した
。上述したように、プレートを再度洗浄した。二番目に、約1/1000希釈の抗体(HRP-labeled anti-mouse Fc-specific、Sigma product code A0168)を約100μl/ウェルで添加し、
室温付近で約1時間培養した。前記のように、前記プレートを再度洗浄し、色が発現する
まで(通常、約5~10分)、Sureblue TMB基質約100μl/ウェルで発現した。1M H2S04約50μl/ウェルで反応を停止させ、プレートを450nmで読み出した。
【0053】
また、競合結合ELISAを行った。2次ELISAにおいて、各々のmAb10825及びmAb10827抗体
とrEGFの結合は、目的のエピトープ(ペプチド配列MYIEALDKYA)又は対照群の無関係ペプチド(ペプチド配列SLAGSSGALSK)に対応する遊離可溶性ペプチドの存在下で評価された。約1μg/mlのmAb10825と、標的エピトープに対応する約1μg/mlの遊離可溶性ペプチド、約1μ
g/mlのmAb10827と約1μg/mlの遊離可溶性ペプチドMet21-Ala30、約1μg/mlのmAb10825と
約1μg/mlの対照群の無関係ペプチド、及び約1μg/mlのmAb10827と約1μg/mlの対照群の
無関係ペプチドの約100μl/ウェルを用いたELISAを行った。
【0054】
吸光度(OD)を450nmで測定した。その結果を
図7を参照して棒グラフで示した。
図7に示
したように、2つの抗体のmAb10825及びmAb10827のうち、mAb10827抗体はMet21-Ala30の中和エピトープと結合し、mAb10825抗体はMet21-Ala30の中和エピトープと結合しないとい
うことが明らかである。前記mAb10825抗体は、Met21-Ala30残基により規定された領域に
立体構造的に類似するEGF領域をブロックして受容体結合を立体的に妨害することで中和
されると推定される。よって、前記mAb10827抗体は、天然状態でrEGF中和エピトープのMet21-Ala30と結合して合成EGF-CTBワクチン前駆体の下記分析に用いられる。
【0055】
実施例II:EGF中和エピトープの提示
CTB配列の末端にEGFを発現する組換えタンパク質EGF-CTBワクチンがEGFドメインの任意の好ましい固有特性に妨害になるか、又は影響を与えるか否か、具体的には、EGF Met21-Ala30のエピトープの正確な立体構造的提示及び適切な物理化学的な条件下で、多量体(5
量体環)に組み立てられるCTB単量体の能力を決定するために、N(試験1~試験3)又はC末端(試験4~試験6)の何れか1つのCTB配列上に全EGFコード領域を発現する6つの組換えタンパク質が生成される。
【0056】
試験1及び試験4は、CTBドメイン上に直接全長EGF配列を発現する組換えタンパク質EGF-CTBワクチンを含む。試験2及び試験5は、短い3アミノ酸ペプチド配列によりCTBドメイン
から分離される全長EGF配列を発現する合成EGF-CTBワクチンを含む。N末端でEGF配列を発現する組換えタンパク質EGF-CTBワクチンは、3アミノ酸ペプチド配列としてSerGlyGlyを
含み、KpnI制限部位を含む。C末端でEGF配列を発現する組換えタンパク質EGF-CTBワクチ
ンは、3アミノ酸ペプチド配列としてSerSerGlyを含み、XhoI制限部位を含む。
【0057】
試験3及び試験6は、短い5アミノ酸ペプチドの配列によりCTBドメインから分離される全長EGF配列を発現する組換えタンパク質EGF-CTBを含む。N末端でEGF配列を発現する組換えタンパク質EGF-CTBは、5アミノ酸ペプチドの配列としてGlyGlySerGlyGlyを含み、KpnI制
限部位を含む。C末端でEGF配列を発現する合成EGF-CTBは、5アミノ酸ペプチドの配列としてSerSerGlyGlyGlyを含み、XhoI制限部位を含む。前記短い3及び5アミノ酸ペプチドの配
列は何れも、CTB配列から成長因子ドメインまで距離を提供し、また、他の1つに対して1
つのドメインの移動自由度は任意の潜在的な立体障害を減少させるようにする。
【0058】
6つの組換えタンパク質EGF-CTBは、各々バクテリア発現ベクター(pIMS147)にクローニ
ングされ、合成組換えEGF-CTBタンパク質は、E.coliのペリプラズムで発現し、C末端の6xHisタグを含むことで精製され得る。組換えEGF-CTBの配列は、各々発現、精製され、タンパク質ゲル/ブラッドフォード検定によって定量化された。
【0059】
各々の6つの組換えEGF-CTBタンパク質のEGF中和エピトープMet21-Ala30の提示はELISA
によって決定された。1つの末端EGFドメインを含む組換えEGF-CTBタンパク質は、ELISAプレート上に固定された。前記EGF Met21-Ala30のエピトープは、mAb10827抗体(Santa Cruz)によって検出された。
【0060】
前記ELISAプレートは、合成EGF-CTB 6-His精製タンパク質の連続2倍希釈液でコーティ
ングされ、約37℃で約1時間培養された。上述のように、前記プレートを約2%のMPBSで洗浄しブロックした。洗浄は、各ウェルに約200μlのPBS又はPBSTをピペット(pipetting)し、プレートを反転させてウェルが空になるようにはじいて繰り返すことを含む。次いで、約1μg/mlのmAb10827抗体を全てのウェルに添加し、室温付近で約1時間培養した。前記プ
レートをもう一度洗浄し、抗マウス西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)をウェルに添加し
、さらに、約1時間培養した。前記プレートを再度洗浄し、SureBlue TMBを用いて発現さ
せた。
【0061】
SureBlue TMB基質を添加すると、二次抗体と酵素的に接合されるHRPは、青色生成物を
収得するように基質を処理する。前記色強度が十分なレベルに至ったと判断されるまで反応を観察しモニタリングした。(一次抗体を含有していない対照群ウェルで色が現れ始め
ると、この時点で反応を停止させる)。HRP活性を破壊させる約50μlのH2SO4を添加することで反応を停止させる。また、青色から黄色に反応生成物の色が変わる。次いで、これは約450nmの吸光度でプレートリーダーにより測定され得る。
【0062】
前記結合ELISAの結果は、
図8を参照して折れ線グラフで示す。各製剤においてEGF-Met21-Ala30のエピトープが天然立体構造で提示され、免疫系の成分とアクセスされ得るとい
うことを説明する
図8に示したように、mAb10827抗体は、6つの組換えEGF-CTB 6-His精製
タンパク質と何れも結合できた。
【0063】
合成組換えEGF-CTBタンパク質がEGFドメイン及びCTB配列の発現物質を含むことを確認
するために、
図9に示したように二次ELISAを行うことで、組換えタンパク質は、プレート上に直接吸着されるよりは、抗ウサギ-CTB抗体(Antibodies On-Line)を用いて捕捉された。この「捕捉」抗体は、天然CTBに特異であるため、前記分析は、検出されたEGF中和ドメインが正確に折りたたまれたCTBドメインを含む巨大組換えタンパク質の成分であること
を説明する。
【0064】
実施例III:EGF-CTBタンパク質の組立
単量体のサブユニットからの多量体の組立において、CTB由来の組換えタンパク質の末
端に成長因子を含む構造的ドメインの発現効果を調べるために、試験1~試験6の合成タンパク質が天然条件(非還元-未沸騰)下で、SDS-PAGEゲル上に電気泳動された。その後、前
記合成組換えEGF-CTBタンパク質は、電気ブロットによりニトロセルロース膜上に移動し
、(実施例IIで上述したように)抗ウサギ-CTB抗体を用いて探針された。二次HRP標識抗ウ
サギ抗体の結合は、 オートラジオグラフのフィルム上でECL基質を用いた放射光によって検出された。
図10に示したように、ウエスタンブロットは、合成EGF-CTB単量体タンパク
質がCTBドメインを通じて多量体に組み立てられ得ることを示す高分子量CTBの存在を確認する。
【0065】
別の実験において、天然(未沸騰又は非還元)CTBタンパク質の二重サンプルをpH1.0~7.0の異なるpH値の範囲で5分間培養した。培養後、各々の二重サンプルのうち1つをpH7.0で1時間中性化させた。次いで、サンプルを全てSDS-PAGEゲル上に電気泳動し、ウエスタン
ブロットして、タンパク質を抗CTB抗体で検出した(
図16)。これは、i)CTB5量体は5分間pH3.0以下で単量体に還元し、ii)中性pHへの復帰は、5量体の形成を復元するということを説明する。従来、好適なリンカー(~16kDaの分子量)を通じて、カメリッド抗体の結合
部位及びタグに融合されるCTBタンパク質を含むキメラタンパク質は、機能的に活性5量体を形成するようにできるということが説明されている(Li等、2009Molecular Immunology 46; 1718-1726)。
【0066】
実施例IV:二価の合成EGF-CTBタンパク質
例示的な実施形態において、前記試験2及び5で説明されたように、i)3つのアミノ酸配列によりCTB遺伝子から分離された全長EGF遺伝子は、N及びC末端の両側で発現され(E2で
表示)、又は、前記のように、ii)Met21-Ala30の中和エピトープを含む切断EGFはCTB遺
伝子の末端両側で発現され(B2で表示)、2つの合成組換えEGF-CTBタンパク質がさらに生成された。上述の通り、組換えタンパク質は何れも、E.Coli発現ベクターpIMS147にクロー
ニングされた。上述の通り、組換えEGF-CTBタンパク質は何れも発現及び精製され、正確
に折りたたまれたCTBドメインの提示及びEGF中和エピトープMet21-Ala30の正確な立体構
造の提示について分析された。その結果を
図11を参照して折れ線グラフで示した。
図11に示したように、E2及びB2の組変えEGF-CTBタンパク質は何れも、CTBドメイン、及び抗体とアクセスできるように表示される少なくとも1つの機能的に正確なEGF Met21-Ala30のエピトープを含む。
【0067】
また、分析は先ずサンプルを沸騰させず、pH7.0の非変性SDS-PAGEゲル上に精製されたE2及びB2の組換えEGF-CTBタンパク質のサンプルを電気泳動させ、電気移動を通じてニトロセルロース膜に移動させることを含む。前記移動したタンパク質は、AbOL(Antibodies On-Line)の抗CTBラビットポリクロナール抗体及びHRP標識-抗ウサギ抗体を用いて検出され
た。
図12に示したように、ウエスタンブロットは、CTBドメイン含有組換えタンパク質が
何れも単量体として存在し、また、2量体、3量体、4量体及び5量体を含む一連のオリゴマーの多量体として形成されていることを示す。
【0068】
実施例V:EGF-CTBタンパク質の配列
合成組換えEGF-CTBタンパク質の配列の1つの実施例を
図13に示す。
図13に示したように、サンプルの配列は、2つの全長EGF配列(下線)及びCTB配列(イタリック体)を含む合成タ
ンパク質の配列を示す。
【0069】
実施例VI:EGF-CTBタンパク質の配列
合成組換えEGF-CTBタンパク質の配列の他の実施例を
図14に示す。
図14に示したように
、サンプルの配列は、2つのEGF中和ドメイン配列(下線)及びCTB配列(イタリック体)を含
むタンパク質の配列を示す。
【0070】
実施例VII:EGF-CTBタンパク質の配列
組換えEGF-CTBタンパク質の配列のまた別の実施例を
図15に示す。
図15に示したように
、サンプルの配列は、EGF中和ドメインを含むEGF分子の部分配列(Cys31-Cys6)(下線)及びCTB配列(イタリック体)を含むタンパク質配列を示す。
【0071】
実施例VIII:リンカーを含むEGF-CTBタンパク質の配列
他の例示的な実施形態において、本願には1つ以上のリンカー又はスペーサを含む組換
えEGF-CTBタンパク質がさらに開示されている。上述の1つ以上の実施形態は、1つの遺伝
子がすぐあとに来ることができるよう、CTBの一側又は両側末端に融合されるEGFを含む。これらの得られた組換えタンパク質又はキメラタンパク質は、CTBに直接融合されるEGFを含むことが必須である。他の例示的な実施形態において、キメラタンパク質のEGF及びCTB成分は、2つのドメインの間に柔軟なスペーサ又はリンカーを形成する3若しくは5アミノ
酸により効果的に分離されている。下記リンカーとして用いられ得るアミノ酸は、SSG、SSGGG、SGG、GGSGG及びGGGGSを含むが、これらに限られるわけではない。
【0072】
前記リンカーの添加は、立体障害等からの干渉を減少させ、CTBドメインによる5量体の形成に役立たせる。また、前記リンカーは、リンカー内に導入される固有の制限部位が遺伝構成体の後続操作を許容することを可能にする。この実施例において、
図17に示された表に挙げられた配列を有する8つの構成体(T1~T6、E2及びB2)が記載されている。1つの例示的な実施形態において、前記制限部位は、Xho1、Kpn1、BspE1及びSpe1を含むが、これ
らに限られるわけではない。
【0073】
前記構成体T1~T6、E2及びB2のウエスタンブロット分析を行い、
図18に関して後述する。
図18に示したように、構成体E2及びB2のウエスタンブロットは、一部の干渉、例えば、単量体、2量体、3量体等の各種オリゴマーからなるタンパク質の生成をもたらす立体障害
及び/又はその他干渉等を示している。また、サンプルに存在するタンパク質の濃度は、
天然のCTB5量体化に対して依存的要素であるので、オリゴマー化に影響を与え得る。
【0074】
最も低いバンドはモノマーに該当し、その次は2量体等である。ウエスタンブロット上
でより低く示されているB2は、切断されたEGFを含むため、E2よりも小さく見える。
【0075】
オリゴマーの数及び割合は、構成体によって異なるが、同様の結果が構成体T1~T6についても見られる。最初は、アミノ酸リンカーを含むN末端にEGFを有するタンパク質が5量
体を高い割合で提供できるかのように見えた。しかし、その後、5量体の割合はバッチに
よって異なるということが分かった。
【0076】
最初は、1つ又は他の末端の融合が5量体化を好むと推定されたため、E2構成体に加えて2つのタンデム融合物質から構成され、これを
図19に示す。第1のタンデム融合(E2N)は、CTBのN末端に2つの連続EGFを含む。ここで、L3はSGGであり、L4はGSSGである。第2の融合(E2C)は、CTBのC末端に2つの連続EGFを含む。ここで、L3はSSGであり、L5はGGSGGである。
【0077】
例示的な実施形態において、N末端及びC末端におけるアミノ酸リンカーの長さは、各末端のアミノ酸リンカーが5量体のみを収得するか、それとも、N末端又はC末端の1つの末端のアミノ酸リンカーが5量体を高い割合で収得するか否かを決定するために延ばされた。
図20を参照して、N末端及びC末端のアミノ酸リンカーは、各々構成体T2/3及びT4/5を用いて延ばされた。前記図示(
図20)はC末端融合のE2Cを意味する。この例示的な実施例において、L3はSSG、L5はSSGGG、L8はSSGGGSGG、L10はSSGGGGSGGGである。N末端の場合において、挿入されたリンカースペーサの長さは、約7及び9残基であった。この実施例において、前記4つのリンカーは、L3はSGG、L5はGGSGG、L7はTSGGGSG、L9はTSGGGGSGGであり得る。
リンカースペーサは、更に短いL3及びL5リンカーに各々挿入され得る。その結果、L7がL5に挿入されるかL9がL3に挿入されたものは何れも12残基のリンカーを収得するが、これらは異なる配列(以下、「a」及び「b」と称する)を有し得る。また、
図20に示したように、N末端リンカーは10、12及び14アミノ酸まで延ばされ、C末端は11、13及び15アミノ酸まで延ばされた。この例示的な実施例において、L10はSSGGGSGGSSG、L12aはGGSGGTSGGGSG、L12bはSGGTSGGGGSGG、L14はGGSGGTSGGGGSGGである。同様に、L11はSSGGGSGGSSG、L13aはSSGGGGSGGGSSG、L13bはSSGGGSGGSSGGG、L15はSSGGGGSGGGSSGGGである。
【0078】
図21を参照して、前記タンデムEGF融合物質、E2N及びE2Cのウエスタンブロット分析は
、本来の二価の構成体を本来のE2と比較してE2及びE2C共に多数のオリゴマーを生成する
ことを説明する。また、E2Nはオリゴマーを生成するものの、第1のEGFドメインが切断タ
ンパク質として発現するか、発現/精製時の一部段階において裂かれることがはっきりと
示されている。
【0079】
また、比較ウエスタンブロット分析は、延びたリンカーを有する一価の「T」構成体上
で行われた(
図22に図示)。前記リンカー延長物質がT2及びT3(各々N末端の3aaリンカー及
びN末端の5aaリンカー)と既に命名された構成体に導入される場合、T2SL(短い延長リンカー、即ちL10)、T2LL(長いリンカー、L12a)、T3SL(短いリンカー、L12b)及びT3LL(長いリ
ンカー、L14)が得られた。同様に、前記N末端のT5及びT6構成体は、T5SL(L11を有する)、T5LL(L13aを有する)、T6SL(L13bを有する)及び T6LL(L15を有する)となる。
【0080】
リンカースペーサが挿入されると、これらは実際にかなり異なる配列を提供する2つの
方向の何れか一方にクローニングされ得る。できる限り、所望の方向に挿入されたクローンを見出すために、十分なクローンが配列された。T3LL-Revの場合において、最初は好ましいリンカー長(即ち、14aa)を有するが、「誤った」方向に挿入されたクローンのみ得られる。少なくとも物理的スペーサーとして作動する限り、これらのリンカーの正確な配列
は必ずしも必要ではないということは明らかである。前記T3LL-Revの実際のリンカー配列は、GGSGGTRPSTAATS(下線=反転部)であり得る。
【0081】
図22に図示されたウエスタンブロットに示したように、N及びRは、各々天然及び還元/
変性タンパク質を意味する。2つの第1のレーンは、5量体(天然)及び単量体(還元)として
の野生型CTBを示す。他のレーンに示したように、T3(5アミノ酸リンカーを含む)は、様々なサイズの所定のオリゴマーを生成するが、より長いリンカーを有するN末端構成体は、
天然条件下で主に5量体を生成するということが分かった。
【0082】
一方、
図23に図示したように、C末端構成体のウエスタンブロットは、延長リンカーを
有する天然条件下でも多重バンドを生成する。
【0083】
このデータに基づいて、CTBとEGFのタンデムN末端融合は、相当興味深いものに見える
。また、第1のリンカー(2つのEGFドメインの間)は、上述のE2N構成体による切断/タンパ
ク質分解を防止し、他の成長因子を導入する際に柔軟性を許容するために延ばされる。延長された第1のリンカーを有するCTBとEGFのN末端融合のための配列は、次の通りである:
HHHHHHIEGRNSDSECPLSHDGYCLHDGVCMYIEALDKYACNCVVGYIGERCQYRDLKWWELRGGSGGTSGGGGSGGTPQNITDLCAEY HNTQIHTLNDKIFSYTESLAGKREMAIITFKNGATFQVEVPGSQHIDSQKKAIERMKDTLRIAYLTEAKVEKLCVWNNKTPHAIAAISMAN
EGFのBループのエピトープを発現又は含む同種の組換えタンパク質は、特定の実施形態に関して記載及び図示されているが、多くの変形及び修正は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者に明らかである。
【0084】
実施例IX:二重特異性IGF1-EGF-CTBタンパク質(a)
単一合成の組換えタンパク質を有する1つ以上の成長因子を目標とした実現の可能性を
立証するために、実施例VIIIで説明された構成体E2Nにクローニングできるように短い隣
接領域を含むヒトインスリン様成長因子1(IGF1)をコード化する遺伝子が合成された。即
ち、N末端EGF遺伝子は、制限エンドヌクレアーゼNco1及びXho1でDNAを分解することによ
ってベクターから切り取られた。次に、当業者によく知られている方法を利用して同様に分解されたヒトIGF1遺伝子に置き換えた。得られたDNAベクターは、組換えタンパク質を
設計された通り発現させる方法により、必要とする組換え遺伝子がコード化されることを確認するために配列された。新たな組換えタンパク質の配列を
図24に示す。
【0085】
その後、両成長因子が全て同時に哺乳類の免疫系の成分(即ち、抗体)に現れ得るということを説明するために、上述したベクターの発現により生成されたタンパク質をELISAに
より分析した。即ち、ELISAプレートのウェルを適切に希釈した抗CTB抗体でコーティングした後、上述した通り2%のミルクパウダーを含有するPBSでブロックした。前記組換えタ
ンパク質のサンプルのプレート上に塗布し、室温で1時間培養した。それから、洗浄の後
、説明の通り準備した他のウェルをi)抗マウスEGF抗体AbOL 10827、又はii)抗ウサギ
ヒトIGF1 2o抗体の何れか1つの1/1000(製造社の推奨に従って)と共に培養した。洗浄の後、ウェルをi)HRP標識抗マウス抗体、又はii)HRP標識抗ウサギ抗体と共に培養し、上述
した通り発現した。
図25に示すように、生成されたシグナルはIGF及びEGFが全て天然立体配座で表示されていることを確認した。また、抗IGF抗体により生成されたシグナルは、IGF、EGF及びCTBの配列が発現ベクターのコード化DNAの配列の相対的な位置により、同じ
分子内に存在することを確認した。
【0086】
実施例X:二重特異性IGF1-EGF-CTBタンパク質(b)
二重特異性組換えタンパク質がCBTの自然的特徴を用いて生成され、オリゴマーを形成
することができることを説明するために、実施例IXで説明されたIGF遺伝子を、当業者に
よく知られている方法を用いたPCRにより操作することによって、EGF遺伝子が置き換えら
れたT5構成体にクローニングされるようにした。得られた組換えタンパク質は、CTB配列
にIGF配列のC末端が含まれ、3アミノ酸リンカーにより分離された(
図26)。
【0087】
前記組換えタンパク質のサンプルは、同じ(モル)量のi)T2タンパク質、及びii)T5タンパク質と各々結合された。前記混合物は、各々必要に応じて緩衝された10mMのTris-HCLを添加することによってpH3.0に調整され、4℃で15分間培養し、任意に存在するオリゴマーを解離させた。その後、前記タンパク質の混合物を中和し、オリゴマー化を促進するために60分間連続して培養した。ヘテロオリゴマーの存在を検出するために、ELISAプレー
トのウェルは、抗マウスEGF抗体又は抗ウサギIGF抗体の何れか1つで塗布されてブロック
された。洗浄の後、IGF-CTB/T2の混合及びIGF-CTB/T5の混合を抗EGF抗体又は抗IGF抗体でコーティングされたウェルに各々塗布し、室温で60分間培養した。
【0088】
洗浄の後、コーティングされる抗体により標的とならない成長因子に特異的な抗体を添加し、60分間培養した。従って、抗ウサギIGF抗体が抗マウスEGF抗体でコーティングされたウェルに塗布され、その逆も同様に行なわれた。結合されない2o抗体を洗浄して除去した後、HRP標識抗マウス又はHRP標識抗ウサギ抗体は、2o抗体を標的とするために適切に塗布した。その結果を
図27に示し、抗EGF塗布抗体が捕捉され、IGF配列を含有するタンパク質を固定できることが明らかになった。同様に、抗IGF抗体が捕捉され、EGF配列を含むタンパク質を固定させることができる。どちらの場合も、これは両方共に存在する単量体を含有するIGF及びEGFのオリゴマー化に起因する。また、ヘテロオリゴマーは、成長因子が全てCTB成分(即ち、IGF-CTB及びT2)の反対側の末端に位置する場合、及び成長因子が全て同じ(C)末端(即ち、IGF-CTB及びT5)上にある場合に形成され得る。さらに、前記分析は他の方向でも行なわれる。
【0089】
実施例XI:多様な成長因子の提示
本発明の柔軟性をさらに説明するために、1つ以上の成長因子の範囲に由来する付加配
列と共に、CBTに由来する配列を含み、従来技術で行なわれたことが知られている標準法
を用いて、
図28による様々なサイズのドメインの範囲を示す組換えタンパク質のパネルを生成した。前記タンパク質のサンプルは各々、E.co1iの遺伝構成体の発現により作成され、各タンパク質のヘキサヒスチジンタグのN末端を通じてIMACを用いて精製された。互い
に異なる各々の配列が存在し、各配列に対して特異的な抗体を用いて各配列が正確に表示されることを説明するために、精製された組換えタンパク質をELISAにより分析した(
図29)。天然タンパク質は、mTGF B1及びCTBに由来する配列を含む組換えタンパク質のサンプ
ル及びウエスタンブロットの準備に用いられた(
図30)。タンパク質はα-CTB抗体により検出され、組換えキメラタンパク質が用いられる条件下で、CTBの特性を維持する安定した5量体を形成することができることを示した。
【0090】
実施例XII:成長因子受容体の提示
本発明に記載の方法が成長因子以外のタンパク質の機能表示に適用できるということを示すために、成長因子受容体及びCTBに由来する配列を含む組換えタンパク質が生成され
、かかる配列はCTB配列と結合し、天然立体配座で示された。ヒトTGF-β1のタンパク質の配列をコード化するDNAは、当業者によく知られている標準法を用いてDNAをコード化するEGFをT3LLのクローンに置き換えることによって、CTB遺伝子の上流をクローニングした。この構成体は、ヒトTGF-β1及びCTB配列を全て含む組換えタンパク質の生成に用いられた(
図31a)。同様に、ヒトTGFβ受容体2の細胞外リガンド結合のドメイン及びCTB配列を含む第2の組換えタンパク質が生成された(
図31b)。
【0091】
単一組換えタンパク質に対してTGF-βR2及びCTB配列を同時に提示することは、捕捉ELISAにより立証された。即ち、ELISAプレートのウェルをi)抗マウスCTB抗体、又はii)抗ヤギTGFβR2抗体でコーティングし、ミルクパウダーを含有するPBSでブロックした。次い
で、
図31bによる組換えタンパク質のサンプルをウェルと接触させ、約1時間培養した。洗浄の後、ウェルを各々i)抗ヤギTGFβR2抗体、又はii)抗マウスCTB抗体と接触させ、1
時間培養した。洗浄の後、ウェルを各々i)HRP標識抗ヒツジ(ヤギ)抗体、及びii)HRP標識抗マウス抗体と接触させ、1時間培養した。前記プレートをTMB基質を用いて発現し、色強度を450nmで測定した。前記分析は、TGF-βR2及びCTB配列が全て同一であるキメラ組換えタンパク質に存在することを示した(
図32)。
【0092】
TGF-β1及びTGFβR2が全て天然立体配座のCTB配列で各々存在することを立証するため
に、TGFβ1とその天然受容体との間の相互作用をELISAにより測定した。即ち、ELISAプレートのウェルを抗マウスCTB抗体でコーティングしてブロックした。それから、前記ウェ
ルを
図31aに示したヒトTGF-β1及びCTB配列を含有する組換えタンパク質と接触させ、1時間培養した。洗浄の後、前記ウェルを
図31bに示したヒトTGF-βR2及びCTB配列を含有する組換えタンパク質と接触させ、1時間培養した。前記ウェルを洗浄してから、抗ヤギTGFβR2抗体と1時間接触させた。最終的にウェルを洗浄し、HRP標識抗ヒツジ(ヤギ)抗体と約1
時間接触させた。前記プレートをTMB基質で発現し、450nmで読み取った。
図33は、2つの
組換えタンパク質は相互作用により結合される天然受容体リガンドを再生成でき、分析に用いられる抗受容体の抗体により妨がれないことを示す。
【0093】
実施例XIII:組換えタンパク質製剤に対するマウスの免疫反応
前記マウスの免疫反応に対する各種製剤の効果を評価するために、本発明によるCBT及
び1つ以上の成長因子の配列を含む組換えタンパク質を他の実験群のマウスに免疫接種し
た。各々6匹のマウスを含む6つのマウス群は、後述するスケジュールに従って、互いに異なる組換えタンパク質製剤で免疫化された。
【0094】
特に明示しない限り、マウスは緩衝液75μlとモンタナイドアジュバント75μlで乳化させた組換えタンパク質25μgで免疫化した。免疫原は、0日及び14日目に筋肉注射により投与した。血清のサンプルは0日及び28日目に採取し、接種される組換えタンパク質内に含
有された成長因子の配列に対するIgG抗体の存在を分析した。前記マウス群は、下記の抗
原で免疫化された。
【0095】
グループ1:SB1、
図26によるヒトIGF及びCTB配列を含むモンタナイド75μlで乳化した組換えタンパク質75μl(25μg)
グループ2:SB2、実施例VIIIに記載のT3LLと呼ばれるヒトEGF及びCTB配列を含むモンタ
ナイド75μlで乳化した組換えタンパク質75μl(25μg)
グループ3:SB3、実施例IXに記載され、
図24によるIGF、ヒトEGF及びCTB配列を含むモンタナイド75μlで乳化した組換えタンパク質75μl(25μg)
グループ4:SB4、IGF-CTB及びEGF-CTBを全て含有するオリゴマーを含み、実施例Xに記載の方法により結合されるモンタナイド75μlで乳化したSB1 37.5μl(12.5μg)及びSB2 37.5μl(12.5μg)
グループ5:SB5、Matrix-Mアジュバント20μlで乳化したものを除き、グループ1と同様
であるSB1 75μl(25μg)
グループ6:SB6、モンタナイド37.5μlで乳化したSB1 37.5μl(12.5μg)、5分後にモン
タナイド37.5μlで乳化し、別の位置で投与したSB2 37.5μl(12.5μg)
免疫化の直前及び免疫化後14日目に血液のサンプルを採取し、組換えタンパク質免疫抗原の成長因子成分に対するIgG抗体の存在及び相対的力価があるかELISAにより血清を分析した。ELISAプレートに市販の組換えヒトIGFまたはEGFを1μg/ml濃度でコーティングした。ブロック及び洗浄の後、試験マウスの血清を多様な希釈率でウェルに塗布し、室温で1
時間培養した。結合しなかった抗体及びその他タンパク質を洗浄により除去し、結合したマウスIgGをHRP標識抗マウス抗体で検出した。
【0096】
グループ6は、全て免疫原性組換えキメラタンパク質の成長因子成分に対して特異的免
疫反応が増加する動物を含む。全般的に、たった1つの成長因子の配列が含まれているグ
ループで、IGFよりEGFでさらに強い反応を示すことが明らかになった(グループ1及びグループ2、
図34及び
図35)。特定の理論に限られることなく、これは、EGFが15/53残基のみ異なり、IGFが4/70残基のみ異なるマウスとヒトのタンパク質間の相同性の反映であり得る
。また、同じ抗原に対するグループ内での各々の動物間の反応差は、グループ間の差より大きい場合がある。
【0097】
アジュバントとしてモンタナイドよりもMatrix-Mを使用したもの(グループ5をグループ1と比較、
図40及び
図34)、が、マウスのうち一匹は全く反応せず、他の4つのサンプルを
モンタナイドより更に高い濃度でスクリーニングが求められる、劣悪な反応をもたらした。
【0098】
グループ3、グループ4及びグループ6は、EGF及びIGFの配列が全て含まれたタンパク質
が供給され、製剤または投与の差があった。グループ3のマウスは、各タンパク質の分子
にEGF及びIGFの配列が全て含まれた組換えタンパク質が供給され、6匹のうち2匹はα-IGFの反応を示さなかったが、EGFには全て反応した(
図36及び
図37)。また、グループ4及びグループ6のマウスは、全てEGFに対して抗体を生成した(
図38、
図39及び
図41)。グループ4
のうち1匹は、IGFに反応せず、他の1匹は非常に弱く反応した。グループ6でのみ、EGF及
びIGF含有のタンパク質が各々他の位置で投与され、6匹は全てIGFに対する反応が増加し
た。
【0099】
実施例XIV:遺伝子単一段階の精製
本発明で詳細に説明されている免疫原性組換えタンパク質の一部又は全部に単一の第一段階の精製方法が適用されることが好ましい。前記精製はヘキサヒスチジン、MBP、F1AG
等の親和性タグの含有は必要ないことが理想的である。本発明の組換えタンパク質は、全てビブリオコレラCTB毒素サブユニットに由来する少なくとも一部の配列又は合成機能的
等価物を含むものと関連がある。精製は、モノクローナル又はポリクローナル抗体の使用により達成できるが、モノクローナル抗体は生産コストが高いことが予想される。ポリクローナル抗体はそれより安いが、同じ動物のバッチ間、及び個々の動物間に性能の差が現れる可能性がある。また、免疫親和性の精製は、前記標的タンパク質に悪影響を与え得る標的タンパク質を溶離するために低pH等の劣悪な条件が求められ、親和性マトリックスの再使用を制限する。また、製造過程において、付加的なタンパク質の導入を伴い、これは避けられることが好ましい。
【0100】
前記天然CTホロトキシンにおいて、モノガングリオシドGm1と結合する毒素(
図42)は、
気道(respiratory tract)及び胃腸の上皮細胞を含む大多数の哺乳類の細胞表面で見つけ
られる。結合は、CTBサブユニットにより影響を受け、CTBオリゴマーのみがGm1と結合す
る。従って、好適な支持体で固定されるCTBは、本発明の免疫原性組換えタンパク質の精
製に用いられ得ると予想される。しかし、前記CTBの使用は、いくつかの理由で好ましい
方法と思われず、特にCTBは牛の脳から精製された材料の市販品のみを用いることができ
る。動物材料の使用及び特に牛の脳組織の使用は、治療剤の生産に利用するには好適ではない。
【0101】
前記CTBとGm1の結合は、2つの隣接したCTBサブユニットと結合する分岐のグリコ分子Gm1上に末端ガラクトース部分を含むことが知られている。従って、好適な固体支持体に固
定されるガラクトースは、本発明の組換えタンパク質を精製する遺伝子手段を提供するであろうと予想される。かかる接近方式の適用可能性を評価するために、従来技術を用いてCTBをコード化する遺伝子は、ペリプラスムタンパク質の復元のために設計されたバクテ
リアタンパク質発現のベクターにクローニングされ、E.co1iバクテリアの各種菌株に変形
される。ガラクトース-セファロース樹脂(
図43)は、Pierce(PierceのカタログNo.20372)
から供給された。XL1-Blue、BL21及びTGI E.co1i菌株のCTB発現クローン培養液50mlを成
長させ、組換えCTBを発現するように37℃で一晩誘導した。前記細胞を遠心分離により収
集し、CTBの抽出のために精製された培地を保管した。細胞ペレットのペリプラズム含有
量は、培養液当たり10mlを収得する当業者によく知られている標準法を用いた浸透圧衝撃(osmotic shock)により放出した。
【0102】
前記ガラクトースセファロース樹脂は、製造社の使用説明書に従って、200mMのNaCl、50mMのTris HC1、5mMのEDTA pH7.5(TEN緩衝液)で洗浄した。NaCl、Tris-HCl pH7.5及びEDTAを200mMのNaCl、50mMのTris-HCl及び5mMのEDTAの最終濃度になるように馴化培地及びペ
リプラズム分画に添加した。洗浄されたガラクトースセファロース0.5mlを馴化培地及び
ペリプラズム分画に各々添加し、4℃で2~3時間攪拌しながら培養した。前記樹脂は、BioRadカラムで回収し、氷冷のTEN緩衝液30ベッド体積で洗浄した。結合されたタンパク質は、PBSの1Mガラクトース0.5mlで樹脂を再懸濁(re-suspending)させることによって溶離し
、10分間培養した。前記カラムは廃棄し、溶離液は分析のために保管した。前記溶離方法を数回繰り返し、分画はCTBの存在があるか分析された。略全ての発現CTBタンパク質が培地で見つかった。(培地から)精製されたCTBを含有する統合カラムの溶離液と共に予め精
製された馴化培地のサンプル及びペリプラズム分画をSDS-PAGEにより分析し、IMACにより精製されたHis-タグのCTBと比較した(
図44)。固定剤のCTBは、最も高収率で提供されるXL1-Blue細胞を有する3つの菌株の培養上清から得られることが確認できた(レーン4、7及び10)。純度は、IMAC精製(レーン11)に示された純度と比べて遜色がなく、重要な5量体タンパク質を含む。
【0103】
追加の実施形態
他の実施例において、本願では、合成免疫原性組換えタンパク質の構成要素として腫瘍抗原エピトープの提示を改善し、その数を増加させる同種の組換えタンパク質からなるワクチンが開示される。1つの例示的な実施形態において、本願では、ポリペプチド配列及
び腫瘍抗原の全部又は一部を発現する組換えタンパク質で形成されるワクチンが開示される。
【0104】
例示的な実施形態において、本願に記載されている組換えタンパク質は、総分子量の関数として腫瘍抗原及び/又はそのエピトープに由来するタンパク質の配列を高比率で含ん
だり発現し得る。これら腫瘍抗原エピトープは、単一腫瘍抗原の全部又は一部の多重複製、または1つ以上の他の腫瘍抗原の全部又は一部の複製であり得る。
【0105】
例示的な実施形態において、前記組換えタンパク質は、物理的構造で折り畳まれた1つ
以上の配列、例えば、ビブリオコレラのコレラ毒素B(CTB)タンパク質または合成等価物の1つ以上の配列、及び1つ以上の腫瘍抗原及びその一部の1つ以上の配列を発現する免疫原
性タンパク質分子である。
【0106】
例示的な実施形態において、前記腫瘍抗原の配列は前立腺特異抗原(PSA)又はその一部
の配列を含み得る。他の例示的な実施形態において、前記腫瘍抗原は下記PSA及びその他
腫瘍抗原を含むが、これらに限られない1つ以上の腫瘍抗原の全長又はその一部を含み得
る。
【0107】
他の例示的な実施形態において、本願では免疫原性組換えタンパク質の構成要素として受容体の結合部位の提示を改善し、その数を増加させる同種の組換えタンパク質からなるタンパク質が開示される。1つの例示的な実施形態において、本願ではポリペプチド配列
及び受容体の全長又は一部を発現する組換えタンパク質が開示される。
【0108】
例示的な実施形態において、本願に記載されている組換えタンパク質は、総分子量の関数として受容体及び/又はその結合部位に由来するタンパク質の配列を高比率で含んだり
発現し得る。これら結合部位は、単一受容体の全部又は一部の多重複製物質、または1つ
以上の互いに異なる受容体の全部又は一部の複製物質であり得る。
【0109】
例示的な実施形態において、前記組換えタンパク質は、物理的構造で折り畳まれた1つ
以上の配列、例えば、ビブリオコレラのコレラ毒素B(CTB)タンパク質又は合成等価物の1
つ以上の配列、及び1つ以上の腫瘍抗原及びその一部の1つ以上の配列を発現する免疫原性タンパク質分子である。
【0110】
例示的な実施形態において、前記受容体の配列は、ヒト上皮成長因子受容体2(Her2)又
はその一部及び/又はヒト上皮成長因子受容体3(Her3)もしくはその一部の配列を含み得る。他の例示的な実施形態において、前記受容体は、下記Her2、Her3及びその他の受容体を含む1つ以上の受容体の全長又はその一部を含み得るが、これらに限らない。
【0111】
他の例示的な実施形態において、前記組換えタンパク質は物理的構造で折り畳まれた1
つ以上の配列、例えば、CTB又は合成変異体(modified variant)の1つ以上の配列を発現し、1つ以上の成長因子又はその一部の1つ以上の配列、1つ以上の腫瘍因子又はその一部の1つ以上の配列、及び1つ以上の受容体又はその一部の1つ以上の配列を発現する免疫原性タンパク質分子である。
【0112】
例示的な実施形態において、前記組換えタンパク質は1つ以上の成長因子又はその一部
の発現物質もしくは配列、及び1つ以上の腫瘍抗原またはその一部の1つ以上の配列を含む。1つの実施形態において、前記組換えタンパク質は、CTBまたは合成変異体、PSA又はそ
の一部、及びIGF-1又はその一部の1つ以上の配列を含む。
【0113】
他の例示的な実施形態において、前記組換えタンパク質は1つ以上の成長因子又はその
一部の発現物質もしくは配列、及び1つ以上の受容体又はその一部の1つ以上の配列を含む。1つの実施形態において、前記組換えタンパク質は、CTBまたは合成変異体、Her2又はその一部、及びIGF-1又はその一部の1つ以上の配列を含む。また別の実施形態において、前記組換えタンパク質は、CTBまたは合成変異体、Her2又はその一部、Her2又はその一部、
及びPDGF又はその一部の1つ以上の配列を含む。
【0114】
他の例示的な実施形態において、前記組換えタンパク質は1つ以上の腫瘍抗原またはそ
の一部の発現物質もしくは配列、及び1つ以上の受容体又はその一部の1つ以上の配列を含む。
【0115】
また別の例示的な実施形態において、前記組換えタンパク質は1つ以上の成長因子又は
その一部の発現物質もしくは配列、及び1つ以上の受容体またはその一部の1つ以上の配列を含む。
【0116】
上述の実施形態の何れかにおいて、単一腫瘍抗原、受容体及び/又は成長因子の1つ以上の複製の発現に加え、物理的部位ごとに単一の腫瘍抗原、受容体及び/又は成長因子、及
び/又は繰り返しの腫瘍抗原、受容体及び/又は成長因子の配列の鎖が提示される(例えば
、n=1~10)。また、本発明による組換えタンパク質は、2つ以上の互いに異なる腫瘍抗原
、受容体及び/又は成長因子が組換えタンパク質の配列内で互いに異なる位置に単一又は
鎖として提示される1つ以上の中和ドメインもしくは結合部位の発現を含む。例えば、組
換えタンパク質は、単一エピトープまたは結合部位又は2つ以上のタンデム反復物質とし
て、2~4つの互いに異なる腫瘍抗原、受容体及び/又は成長因子の全長又は一部、及び/又は1つ以上の腫瘍抗原、受容体及び/又は成長因子の全長あるいは一部の発現物質もしくは
配列を含み得る。
【0117】
得られたタンパク質は、組換えタンパク質の配列内で腫瘍抗原、受容体及び/又は成長
因子、あるいは1つ以上のエピトープもしくはその結合部位を発現する単一ポリペプチド
である。例示的な実施形態において、前記組換えタンパク質の配列は、CTB配列の1つ以上の部分を発現し、エピトープまたはその結合部位の少なくとも1つ以上の発現を含む腫瘍
抗原、受容体及び/又は成長因子を前記免疫原性組換えタンパク質の表面に天然の立体配
座で提示する。
【0118】
本発明によると、腫瘍抗原のエピトープ、受容体の結合部位及び/又は成長因子のエピ
トープの発現は、それらの天然立体配座が強力な宿主の免疫反応を誘導する方式で、主に宿主免疫系の成分を含有及び提示するように折り畳まれ得る。好ましい天然タンパク質のモデルの実施例としては、コレラ毒素Bサブユニット、リステリア菌、破傷風トキソイド
、ジフテリアトキソイド、バクテリオファージ外被タンパク質、アデノウイルス及びその他ウイルス性外被タンパク質が含まれるが、これらに限らない。また、非天然の「合成」ポリペプチドは、全タンパク質に対して免疫原性を付与し、宿主免疫系に対して腫瘍抗原のエピトープ、受容体の結合部位及び/又は成長因子のエピトープの適切な提示を許容す
る要件を満たし得る。
【0119】
アジュバント
本願で提供された特定の例示的な実施形態は、組換えタンパク質以外に少なくとも1つ
のアジュバント(アジュバントの活性を有する組成物の成分を意味する)を含有する薬剤学的組成物を含むワクチン組成物及び免疫学的アジュバントの組成物内で本発明による組換えタンパク質を含む。かかるアジュバントの活性を有するアジュバントは、認識免疫系を有するヒト(例えば、ヒト患者)、非ヒト霊長類、哺乳動物又はその他高等真核生物等の対象に投与した時に免疫反応の効力及び持続性を変化(即ち、統計学的に有意な方式で増加
又は減少、及び特定の好ましい実施形態においては、促進または増加)させることができ
る組成を含む。本願に記載されている特定の例示的な実施形態において、所望の抗原及び/又はタンパク質担体内に含有される抗原、並びに選択的に1つ以上のアジュバントは、免疫反応を変更させ得るが、その変更は、例えば、誘導または促進を意味する。免疫反応は、所望の抗原及び/又は投与時に同時に投与されたり、時間及び/又は空間(例えば、互い
に異なる解剖学的部位)に応じて分離され投与され得る抗原に対して免疫反応を変更させ
得る。しかし、特定の例示的な実施形態はこれらに限らず、特定の抗原を含まないが、1
つ以上のコアジュバント、イミダゾキノリンの免疫反応調節剤をさらに含むことができる組成であって、組換えタンパク質を投与することを考慮することができる。
【0120】
従って、上述した通り、アジュバントはQS21及びQS21の模倣薬(例えば、米国特許第5,057,540号;EP0362279B1;WO95/17210)、ミョウバン、トマチン、サポニン、ポリソルベート80、スパン85及びステアリルチロシン等(これらに限らない)の植物性アルカロイド、1つ
以上のサイトカイン(例えば、GM-CSF、IL-2、IL-7、IL-12、TNF-α、IFN-γ)、イミダゾ
キノリンの免疫反応調節剤、及びダブルステムループの免疫調節剤(dSLIM、例えば、Weeratna et al、2005ワクチン23:5263)を含むサポニン及びサポニン模倣薬等のアジュバントの効果を有する組成物を含む。
【0121】
サポニンを含む洗浄剤は、例えば、米国特許第6,544,518号;Lacaille-Dubois,M及びWagner H.(1996 Phytomedicine 2:363-386)、米国特許第5,057,540号、Kensil,Crit. Rev Ther Drug Carrier Syst, 1996, 12(1-2):1-55、及びEP0362279B1で知られている。免疫
刺激複合体(ISCOMS)のQuil A(サポニン)分画を含む微粒子構造は溶血性であり、ワクチンの製造に用いられてきた(Morein, B., EP0109942B1)。これらの構造は、アジュバントの
活性を有することが報告されている(EP0109942B1;WO96/11711)。前記溶血性サポニンQS21
及びQS17(Quil AのHPLC精製分画)は、強力な全身性アジュバントとして説明されており、その製造方法は、米国特許第5,057,540号及びEP0362279B1に開示されている。また、全身性ワクチンに対する強力なアジュバントとして作用するQS7(Quil-Aの非溶血性分画)の用
途がこれらの参照文献に記載されている。また、QS21の用途がKensil等(1991. J. Immunology 146:431-437)に記載されている。QS21とポリソルベートまたはシクロデキストリン
の結合が公知となっている(WO99/10008)。QS21及びQS7等のQuil Aの分画を含む微粒子ア
ジュバント系は、WO96/33739及びWO96/11711に記載されている。合成ワクチンの研究に用いられてきたその他のサポニンは、カスミソウ(Gypsophila)及びサポナリア(Saponaria)
等のその他植物種に由来するものを含む(Bomford等、Vaccine, 10(9):572-577, 1992)。
【0122】
エスシン(Escin)は、本願に開示されている実施形態のアジュバント組成物に用いられ
るサポニンに関するまた別の洗浄剤である。エスシンは、マロニエの木(セイヨウトチノ
キ)の種から生成されるサポニンの混合物であって、kindex(12.sup.th Ed.:entry3737)に記載されている。クロマトグラフィー及び精製(Fiedler、Arzneimittel-Forsch.4, 213(1953))、並びにイオン交換樹脂(Erbring等、米国特許第3,238,190号)による分離が記載さ
れている。エスシン(エスチンとしても知られている)の分画は精製され、生物学的活性を示す(Yoshikawa M等(Chem Pharm Bull(Tokyo)1996 August;44(8):1454-1464))。また、ジギトニンはまた別の洗浄剤であり、ジギタリス(Digitalis purpurea)の種に由来し、Gisvo1d等、J. Am. Pharm. Assoc., 1934, 23, 664;及びRubenstroth-Bauer、Physio1. Chem., 1955, 301, 621に記載の方法によって精製されるサポニンであって、Merck index(12thEd., entry3204)に記載されている。
【0123】
本願に記載されている特定の実施形態によって用いられるその他のアジュバント又はコアジュバントは、当業者によく知られているポリマー化合物の種類を意味するブロック共重合体又は生分解性ポリマーを含む。ワクチンの構成又は免疫学的アジュバントに含まれていてもよいブロック共重合体あるいは生分解性ポリマーの例としては、Pluronic.RTM.L121(BASF Corp.、Mount o1ive, N.J.;例えば、Yeh等、1996 Pharm. Res. 13:1693参照)が含まれる。
【0124】
他の特定の例示的な実施形態は、かかる他の実施形態において、コアジュバントの活性を付与することができ、かかる他の実施形態において、薬剤学的に許容され得る担体又は賦形剤を添加したり、代わりに提供し得るオイルを含む免疫学的アジュバントを考慮するが、これらに限らない。多数の好適なオイルが知られており、本発明を基礎とするワクチン組成物及び免疫学的アジュバント組成物に含むために選択され得る。かかるオイルの実施例としては、スクアレン、スクアラン、ミネラルオイル、オリーブオイル、コレステロール及びマンニドモノオレエートが含まれるが、例示的な方法であり、これらに限らない。
【0125】
また、イミダゾキノリンの免疫反応調節剤等の免疫反応調節剤は当業界に知られており、特定の例示的に開示された実施形態において、アジュバント又はコアジュバントとして含まれ得る。
【0126】
さらに、上述した通り、本願に記載されている発明によるワクチンの組成に用いられるアジュバント又はコアジュバントのうち1つは、通常「ミョウバン」と呼ばれるアルミニ
ウムコアジュバントであり得る。ミョウバンコアジュバントは、良好な安全に関する記録、抗体反応の増加、安定した抗原を有するため利点があり、大量生産に比較的容易である(Edelman 2002 Mol. Biotechnol. 21:129-148;Edelman, R. 1980 Rev. Infect. Dis.2:370-383.)。
【0127】
薬剤学的組成物
特定の例示的な実施形態において、薬剤学的組成物は本発明による組換えタンパク質を含み、TLRアゴニスト、コアジュバント(例えば、サイトカイン、イミダゾキノリンの免疫反応調節剤及び/又はdSLIMを含む)等から選択される本願に記載されている1つ以上の成分及び/又は組換え発現構成体を薬剤学的に許容できる担体、賦形剤又は希釈剤と組み合わ
せて含むワクチンの組成である。
【0128】
例示的な担体は、使用される投与量及び濃度では受容者に無毒性であり得る。組換えタンパク質を含むワクチンは一般的に体重1kg当り約0.01mg~約100mgが、皮内、皮下、筋肉内または静脈経路、あるいは他の経路により投与され得る。
【0129】
宿主の反応時に投与の回数及び頻度が依存しているのは、当業者に明らかである。治療的使用のための「薬剤学的に許容できる担体」は、薬剤学分野でよく知られており、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.(A. R. Gennaro edit.1985)に記載されている。例えば、生理的pHの無菌食塩水及びリン酸緩衝生理食塩水が用
いられ得る。前記薬剤学的組成物に、保存剤、安定剤、染料及び香味剤も提供され得る。例えば、安息香酸ナトリウム、アスコルビン酸及びp-ヒドロキシ安息香酸のエステルがが保存剤として添加され得る。また、抗酸化剤及び懸濁化剤が使用されてもよい。
【0130】
前記薬剤学的組成物は、患者に投与される組成物として許容されるどのような形態であってもよい。例えば、前記組成物は、固体、液体又はガス(エアロゾル)の形態であってもよい。通常の投与経路は、経口、局部、非経口(例えば、舌下又は口腔)、舌下腺、直腸、膣及び鼻腔内(例えば、噴射方法として)を含むが、これらに限らない。ここで使われる非経口とは、イオン導入のソノフォレティック、受動経皮、マイクロニードルの投与、及び皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内、空洞内(intracavernous)、髄腔内(intrathecal)、
外耳道内(intrameatal)、尿道内(intraurethral)の注射または投入方法を含む。特定の実施形態において、ここに記載された組成物(ワクチン及び薬剤学的組成物を含む)は、イオン導入、マイクロキャビテーション、ソノフォレーシスまたはマイクロニードルにより皮内投与される。
【0131】
前記薬剤学的組成物は、その中に含まれる活性成分が、患者に組成物を投与する時に生理学的に利用可能なように製剤化される。患者に投与される組成物は、1つ以上の用量単
位であってもよく、例えば、錠剤は単一用量単位であってもよく、本発明の1つ以上の化
合物を含有するエアロゾル形態の容器は、複数の用量単位を有してもよい。
【0132】
経口投与においては、賦形剤及び/又はバインダーが例示され得る。その例としては、
スクロース、カオリン、グリセリン、澱粉デキストリン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース及びエチルセルロースがある。着色剤及び/又は香味剤が例示され
得る。コーティングシェル(coating shell)が用いられ得る。
【0133】
前記組成物は、エリキシル(elixir)、シロップ、溶液、エマルション又は懸濁液等、液状であり得る。前記液体は、2つの例の通り、経口投与又は注射による伝達に用いられる
。経口投与の場合、組成物は、甘味剤、保存剤、染料/着色剤及び香味増進剤のうち1つ以上を含有することが好ましい。注射により投与しようとする組成物においては、界面活性剤、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁液、緩衝液、安定剤及び等張剤のうち1つ以上が含ま
れ得る。
【0134】
本願で用いられる液状の薬剤学的組成物は、溶液、懸濁液又はその他どんな形態なのかによって、次の担体または賦形剤:注射用蒸留水、食塩水、好ましくは生理食塩水、リン
ガー溶液、等張食塩水等の無菌希釈剤、スクアレン、スクアラン、ミネラルオイル、マンニドモノオレエート、コレステロール及び/又は溶剤もしくは懸濁液として提供され得る
合成モノまたはジグリセリド等の固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたはその他溶剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベン等の抗菌剤;アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウム等の抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸等のキ
レート剤;アセテート、クエン酸塩またはリン酸塩等の緩衝液及び塩化ナトリウム又はデ
キストロース等の等張調節剤のうち1つ以上を含み得る。前記非経口用製剤は、ガラス又
はプラスチックで製造されたアンプル、使い捨て注射器又は多人数用バイアルに入れられる。注入可能な薬剤学的組成物は滅菌することが好ましい。
【0135】
特定の実施形態において、本発明の薬剤学的又はワクチン組成物は、0.2μm未満の安定した水性懸濁液を含み、リン脂質、脂肪酸、界面活性剤、洗浄剤、サポニン、フッ素化脂質等からなる群から選択される少なくとも1つの成分をさらに含む。
【0136】
また、ワクチン又は薬剤学的組成物には、アルミニウム塩、油中水滴型(water-in-oil)エマルション、生分解性油の賦形剤、水中油型(oil-in-water)エマルション、生分解性のマイクロカプセル及びリポソームを含む送達賦形剤等のその他成分を含むことが好ましい。また、かかる賦形剤に用いられる免疫活性化物質(コアジュバント)の例としては、上述したもの以外にN-アセチルムラミル-L-アラニン-D-イソグルタミン(MDP)、グルカン、IL-12、GM-CSF、γインターフェロン及びIL-12が含まれ得る。
【0137】
当業者に公知の任意の好適な担体は、本発明の薬剤学的組成物に用いられ得るが、担体の種類は、投与形態及び徐放性(sustained release)が要求されるかどうかによって変わ
り得る。皮下注射等の非経口投与において、担体は水、食塩水、アルコール、脂肪、ワックスまたは緩衝液を含むことが好ましい。経口投与において、マンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、サッカリン・ナトリウム、タルカム、セルロース、グルコース、スクロース及び炭酸マグネシウム等の前記担体又は固体担体の何れか1つが
用いられ得る。生分解性ミクロスフェア(例えば、ポリ乳酸ガラクチド)は、本発明の薬剤学的組成に対して担体として用いられ得る。
【0138】
また、薬剤学的組成物は、緩衝液等の希釈剤、アスコルビン酸等の抗酸化剤、低分子量(約10残基未満)のポリペプチド、タンパク質、アミノ酸、グルコース、スクロース又はデキストリンを含む炭水化物、EDTA等のキレート剤、グルタチオン及びその他安定剤並びに賦形剤を含み得る。中性緩衝生理食塩水又は非特異的血清アルブミンと混合された生理食塩水は典型的且つ適切な希釈剤である好ましくは、希釈剤として適切な賦形剤溶液(例え
ば、スクロース)を用いて、生成物を凍結乾燥させることによって製剤化し得る。
【0139】
例示的な実施形態において、前記組換えタンパク質のドメインを支持するエピトープ又は受容体は、ポリペプチドの配列が天然由来なのか、合成由来なのかによって適切な化学的/環境的条件下でオリゴマーの多量体へ自己組織化したり、他の条件下で単量体に還元
する能力を有し得る。理想的としては多量体化ドメインは、例えば、2量体、3量体、4量
体、5量体等各々の数のサブユニットを有する安定した多量体に組み立てられ、均一な大
きさの生成物が生成できる。天然ポリペプチドの例としては、ロイシン・ジッパー、lac
リプレッサータンパク質、ストレプトアビジン/アビジン、コレラ毒素Bサブユニット、シュードモナス3量体ドメイン及びウイルス性カプシドタンパク質に含まれるが、これらに
限らない。
【0140】
例示的な実施形態において、多価の分子を調製する方法が開示される。この例示的な実施形態において、単量体のサブユニットから多量体を組み立てて、1つ以上の腫瘍抗原、
受容体及び/又は成長因子もしくはその一部を含む合成タンパク質を形成する方法を含む
。
【0141】
他の例示的な実施形態において、ワクチン製剤を調製する方法が開示される。この例示的な実施形態において、1つ以上の単一の1価多量体を1つ以上の腫瘍抗原、受容体、及び/又は成長因子もしくはその一部を含む組換えタンパク質を含む多価ワクチンと共に混合して調製する方法を含む。
【0142】
また別の例示的な実施形態において、患者を治療する方法が開示される。この例示的な実施形態において、1つ以上の1価抗体、1つの腫瘍抗原、受容体、及び/又は成長因子、組換えタンパク質をワクチン接種の当日またはワクチン接種期間に隔日または数回にわたって患者に投与する方法を含む。
【0143】
前記組換えタンパク質は、前記腫瘍抗原、成長因子、及び/又は受容体のうち少なくと
も1つの配列及びCTB配列の全部又は一部を1つ以上含んだり発現すると記載されているが
、前記組換えタンパク質は、天然のCTB配列又は前記天然のCTB配列と実質的に同じ配列及び/又は合成配列を含んでもよい。
【0144】
前記組換えタンパク質は、前記CTB配列を含んだり発現すると記載されているが、前記
組換えタンパク質は、前記CTB配列の誘導体または前記CTB配列と実質的に同じ配列を含んでもよく、又は発現してもよい。
【0145】
1つ以上の腫瘍抗原、成長因子、及び/又は受容体を発現したり含む同種の組換えタンパク質は、特定の実施形態に関して記載及び説明されているが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者に多くの変更及び修正があることは明白である。従って、本発明は、上述した方法論または構成の詳細な説明に限らず、本発明の範囲内でかかる変更及び修正を含むことを意図している。
【配列表】