(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】改善された注入システムおよびそのためのデイセットアセンブリ
(51)【国際特許分類】
A61M 39/12 20060101AFI20240411BHJP
A61M 5/142 20060101ALI20240411BHJP
A61M 5/14 20060101ALI20240411BHJP
A61M 39/10 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
A61M39/12
A61M5/142
A61M5/14 580
A61M5/14 500
A61M39/10 110
(21)【出願番号】P 2021502606
(86)(22)【出願日】2019-07-23
(86)【国際出願番号】 EP2019069794
(87)【国際公開番号】W WO2020020884
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-04-13
(32)【優先日】2018-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508286762
【氏名又は名称】アシスト・メディカル・システムズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】シャッソ ピエール-イヴ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィリエ フランソワ
【審査官】田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0208251(US,A1)
【文献】特開2017-108902(JP,A)
【文献】特開2015-073664(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0169044(US,A1)
【文献】特表2017-501753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/12
A61M 5/142
A61M 5/14
A61M 39/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-患者の血管構造内に注入する流体を供給するための少なくとも1つの供給所(105a、105b、105c)と、
-前記少なくとも1つの供給所(105a、105b、105c)から受け取った流体を加圧するためのモーターを備える加圧ユニット(140)と、
-前記少なくとも1つの供給所(105a、105b、105c)と流体連結している、接続エレメント(375)および掛金機構(380)を有するコネクタ(300)を備える送達アレンジメント(135)と、
-前記送達アレンジメント(135)と流体連結している患者セットアセンブリ(145)であって、前記患者セットアセンブリ(145)は、加圧された流体を患者に送達するための蠕動ポンプ構成要素(147)および少なくとも1つの送達チューブ(146)を備え、前記蠕動ポンプ構成要素(147)は、加圧ユニット(140)のポート(151)において送達アレンジメント(135)のコネクタ(300)の接続エレメント(375)と流体的にかみ合わさせるための接続エレメント(150)を有する、患者セットアセンブリと
を備え、前記掛金機構(380)は前記コネクタ(300)の本体部分(370)と一体の細長いフラップ(381)を備え、前記掛金機構(380)は加圧ユニット(140)の対応する前記ポート(151)とかみ合わさることを特徴とする、注入システム(100)。
【請求項2】
細長いフラップ(381)が第1の直線的な部分(382)および第2の曲線的な部分(383)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の注入システム(100)。
【請求項3】
細長いフラップ(381)が、操作者によって働きかけられるためのフリーな第1の末端(384)を備えることを特徴とする、請求項
2に記載の注入システム(100)。
【請求項4】
細長いフラップ(381)が第1の末端(384)の逆側に第2の末端(385)を備え、前記第2の末端(385)が前記コネクタ(300)の本体部分(370)と一体であることを特徴とする、請求項3に記載の注入システム(100)。
【請求項5】
本体部分(370)が前壁(371)および後壁(372)を定義し、細長いフラップ(381)の第2の末端(385)が前記後壁(372)と一体であることを特徴とする、請求項4に記載の注入システム(100)。
【請求項6】
コネクタ(300)が送達アレンジメント(135)の少なくとも1つのチューブを受け入れるための筺体(400)を備え、前記筺体(400)がコネクタ本体部分(370)と一体であることを特徴とする、請求項1に記載の注入システム(100)。
【請求項7】
筺体(400)がコネクタ本体部分(370)の後壁(372)と一体であることを特徴とする、請求項5および6に記載の注入システム(100)。
【請求項8】
第2の曲線的な部分(383)の湾曲が筺体(400)の湾曲と少なくとも部分的に一致することを特徴とする、請求項2および6に記載の注入システム(100)。
【請求項9】
第2の曲線的な部分(383)が筺体(400)から間隔があけられていることを特徴とする、請求項2および6に記載の注入システム(100)。
【請求項10】
細長いフラップ(381)が、前記第2の曲線的な部分(383)の外部プロフィールから突き出る隆起エレメント(386)を備えることを特徴とする、請求項2~4のいずれか1項に記載の注入システム(100)。
【請求項11】
前記隆起エレメント(386)が起点とする第1の点(387)が、細長いフラップ(381)の第2の末端(385)がコネクタ本体部分(370)の後壁(372)に取り付けられている第2の点(388)に対して異なるレベルで配置されていることを特徴とする、請求項10に記載の注入システム(100)。
【請求項12】
コネクタ本体部分(370)の底部構成要素(373)を参照して、前記第1の点(387)が前記第2の点(388)の高さよりも高い高さに配置されていることを特徴とする、請求項11に記載の注入システム(100)。
【請求項13】
前記フリーな第1の末端(384)の近傍において、前記細長いフラップ(381)の外部プロフィールにグリップ表面(389)が備えられていることを特徴とする、請求項3に記載の注入システム(100)。
【請求項14】
送達アレンジメント(135)が、単一の構成要素から作製される、横断面が実質的にU字型の立体配置を有する少なくとも1つの支持エレメント(600)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の注入システム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は医療装置の分野に関する。より詳細には、本開示は、医療用流体を患者に送達するための注入システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本開示の背景を、本明細書中で以降、その内容に関連する技法の記述を用いて紹介する。しかし、この記述が文書、行為、人工物などを指す場合でも、これは、記述した技法が従来技術の一部である、または本開示に関連する分野において共有される一般知識であることを示唆または表すものではない。
【0003】
患者内への流体の注入は、いくつかの医療処置においてありきたりのことである。たとえば、造影剤(または造影媒体)を、場合によっては生理食塩水と共に注入して、患者内の標的(身体)の特長(たとえば、人体の構造または臓器)のコントラストを、そのスキャン検査において増強させ得る。特に、イメージング用途(患者の内部の視覚表示を、手術的技法に頼らずに非侵襲的方法で作成すること)においては、造影剤の使用により標的特長がより目立たされる。その結果、そうでなければ他の隣接する特長(たとえば周辺組織)との識別がよりされにくいであろう標的特長が強調される。これにより、診断的応用における臨床家の課題が顕著に容易となり、特に病変の同定および/または特徴づけにおいては、その進化または医療に対する応答のモニタリングが容易となる。たとえば、ヨウ素系の造影剤(イオパミドールを含むものなど)がコンピュータ断層撮影(CT)用途(血管造影法調査用など)において一般的に使用されている。
【0004】
造影剤は通常、(自動)注入システムによって患者の血管内に注入される。注入システムは、造影剤(対応する容器から供給される)を加圧し、事前に決定された注入条件下で、たとえば事前に決定された流速および体積でそれを患者内に注入する。このようにして、造影剤を制御された安全かつ効率的な様式で注入し得る。
【0005】
US2014/0208251号の文書は、血管形成術などの医療処置中に流体を血管、動脈、静脈、および心腔などの中空の解剖学的構造内に注入するための自動注入システムを開示している。この出願において開示されている自動注入システムは、生理食塩水、コントラスト、または両方の混合物などの流体源を選択して高圧で注入するための、簡易化されたインタフェースを医師に有利に提供する。注入器システムは、複数回使用のサブアセンブリ、単回使用のサブアセンブリ、複数回使用および単回使用のサブアセンブリを流体接続させるための継手、手持型のコントローラ、ユーザインタフェース、ならびに注入器の筺体を備え得る。
【0006】
当技術分野で知られており、現在購入可能な自動注入システムは、2つの主な群に分類される:シリンジ注入器(Bracco Injeneering SAによって製造されるEmpower CTAまたはEmpower CTA+など)および無シリンジ注入器(Bracco Injeneering SAによって製造されるCT Expresなど)。
【0007】
本開示は、無シリンジ注入器を対象にしており、加圧ユニットには、複数のローラーを格納する蠕動ポンプが備えられており、それに混じって送達チューブが挿入されており、最終的には医療用流体(すなわち、1つの造影剤もしくは2つの異なる造影剤、生理食塩水、またはその混合物)を患者内に注入するために、順次かつ交互に圧迫される。
【0008】
注入システムには、典型的には、造影剤および/または生理食塩水を対応する容器(たとえば、ボトル、バッグ、またはパウチ)から供給するための1つまたは複数の供給所が備えられている。注入システムには、少なくとも1つの供給所および加圧ユニットと流体連結している送達アレンジメントがさらに備えられている。送達アレンジメントは加圧ユニットの上流に位置しており、したがって患者と直接接続していないため、相互汚染の危険性は実質的にないまたは非常に低く、一般に、送達アレンジメントは定期的(たとえば10または12時間毎)に交換される使い捨てエレメントである。このことは、新しい患者が検査を受ける際に送達アレンジメントを交換しないことを意味し、実際にこれは、典型的には複数の連続的な注入の間、その送達アレンジメント用に設計された事前に決定された期間が完全に経過するまでその場に保つ。
【0009】
送達アレンジメント(操作者によって「デイセット(day set)」アセンブリとしても示される)は、前記加圧ユニットの対応するポートと解放可能にかみ合わさせるコネクタによって加圧ユニットと流体接続しており、前記コネクタは、加圧された流体を患者の血管構造内に送達するための「患者セット(patient set)」アセンブリとも流体連結されている。上述のように、送達アレンジメントは、加圧ユニットとかみ合わさるよう要求され、続いて新しい送達アレンジメントを設置しなければならない際にかみ合わせ解除させる使い捨てエレメントであるため、コネクタには、加圧ユニットの専用ポートとの正しいかつ頑強な接続を保証し、注入システムを注入の準備ができているように設定する間にユーザによって容易かつ効率的に操作されることを必要とする、掛金機構が備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本出願人は、特に、加圧ユニットとのコネクタのかみ合わせおよびそれからのかみ合わせ解除中における、任命された人員による操作の容易性に関して、ならびに注入システムの作動中における改善された接続の信頼性に関して、また、コネクタ自体の改善されたより効率的な製造プロセスに関しても、現在の掛金機構を改善させる必要性を理解している。
【0012】
さらに、現在使用されている送達アレンジメントは、送達アレンジメントのチューブ(移送ライン)を受け入れるためのコネクタ本体の両側の側面に入口ポートを備えており、前記チューブは注入器システムの流体供給所(単数または複数)に流体接続されている。典型的には、前記入口ポートのうちの少なくとも1つが、送達アレンジメントの2本の別個のチューブをコネクタ本体の同じ入口ポート内に導くためのY字型チューブコネクタを受け入れる。
【0013】
したがって、本出願人は、コネクタに入る流体(単数または複数)の流れの安定性および均質性を改善させるため、ならびに送達アレンジメントの構成要素の全体的な数を減らし、それによってその製造プロセスを簡易化させ、関連する費用を減らすために、現在の送達アレンジメントの設計を修正することの必要性を理解している。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示の基本的な理解を提供するために、その簡易化した概要を本明細書中に提示する。しかし、本概要の唯一の目的は、本開示の一部の概念を、その続くより詳細な説明の前置きとして簡易化した形態で紹介することであり、その主要要素の同定としても、その範囲の描写としても解釈されるべきでない。
【0015】
本開示は、コネクタのユーザーフレンドリーかつ信頼性のある配置および操作を確実にする、改善された掛金機構が備えられたコネクタを備えた送達アレンジメントを備える、注入システムに関する。特に、本開示の一態様によれば、掛金機構はコネクタ本体と一体であり、コネクタ本体から外へ突き出る細長いフラップを備える。
【0016】
より詳細には、本開示の1つまたは複数の態様は独立クレームに記載されており、その有利な特長は従属クレームに記載されており、すべてのクレームの表現は本明細書中に一語一語参考として組み込まれている(任意の特定の態様を参照して提供される任意の有利な特長は、必要な変更を加えて他のすべての態様に適用される)。
【0017】
本開示の解決策ならびにそのさらなる特長および利点は、純粋に非制限的な表示として与える、添付の図面と併せて読まれるべきである以下のその詳細な説明を参照して最も良く理解されるであろう(ここで、簡易化のために、対応する要素は等価または同様の参照で示し、その説明は繰り返さず、それぞれの実体の名称は、一般に、その種類ならびにその属性の両方、たとえば、値、内容、および表示などを示すために使用する)。この観点から、図は必ずしも尺度通りに描かれておらず(一部の詳細は誇張および/または簡易化されている場合がある)、また、別段に指定しない限りは、これらは、単に本明細書中に記載の構造および手順を概念的に例示するためだけに使用されることを明白に意図する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態による解決策(図中に示さず)を適用し得る注入システムの図表示を示す部分分解組立図である。
【
図2】
図2A~Dはそれぞれ、従来技術によるコネクタの側面図および3つの斜視図を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態による注入システムに備えられているコネクタを示す側面図である。
【
図4】
図4A~Bは、本開示の一実施形態による注入システムに備えられているコネクタを示す斜視図である。
【
図6】
図5A~Cは、注入器システムの加圧ユニットからかみ合わせ解除させるためにコネクタをどのように操作するかを示す側面図である。
【
図6】
図6は、本開示の一実施形態による送達アレンジメントの詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
特に
図1を参照して、本開示の一実施形態による解決策(図中に示さず)を適用し得る注入システム100の、部分分解組立図での図表示を示す。
【0020】
注入システム100は、1つまたは複数の医療用流体を患者(図中に示さず)内に注入するために使用する。特に、注入システム100は、スキャン検査を行うために(たとえば、CT用途などのX線撮影用途において)臨床家によって使用される、造影剤および生理食塩水の(自動)無シリンジ注入器である。
【0021】
注入システム100は、注入する医療用流体を対応する容器から供給するために、(左)供給所105a、(右)供給所105b、および(前)供給所105cを備える。特に、供給所105aおよび供給所105bは、ボトル110aおよびボトル110b(たとえば、ガラスまたは硬質プラスチックから作製)からそれぞれ医療用流体を供給する一方で、供給所105cは、医療用流体をパウチ110c(たとえば、軟プラスチックから作製)から供給する。供給所105a、105bは、1つもしくは複数の造影剤(患者内の特定の身体特長のコントラストを増強させるため)または造影剤と生理食塩水(生理溶液もしくは等張溶液を含む)を供給するために使用し得る一方で、供給所105cは生理食塩水を供給するために使用し得る。たとえば、CT用途では、造影剤は、ジアトリゾエート、イオキサグレート、イオパミドール、イオヘキソール、イオキシラン、イオプロミド、またはイオジキサノールを含むヨウ素系の造影剤であってよく、生理食塩水は塩化ナトリウムであってよい。イオパミドールを含む市販の造影剤の一例は、Bracco Diagnostics Inc.(商標)によって製造されるISOVUEである。それぞれのボトル110a、110bは、単一または複数の用量(たとえば50~500ml)の異なる造影剤(事前に決定された順序で供給する)または同じ造影剤(スキャン検査の持続期間を増やすために連続的に供給する)を含有し得る。パウチ110cは、一般に、造影剤注入の前(プリフラッシュ)、後(ポストフラッシュ)、もしくはその間(間期)に供給する、または造影剤との迅速かつ交互に連続的に供給する(患者の臓器、たとえば心臓内での造影剤と生理食塩水との混合を得るため)、バルクの生理食塩水(たとえば100~1,000ml)を含有する。あるいは、供給所105aおよび105bは、造影剤および生理食塩水をそれぞれ供給するために使用し得る(供給所105cを使用せずに)。
【0022】
より詳細には、それぞれの供給所105a、105b(それぞれ)は、ボトル110a、110b用のボトルホルダ115a、115bを備える。保護カバー120a、120bをボトルホルダ115a、115b上に搭載して、保護カバーがボトルホルダ上に保たれている場合にボトル110a、110bを覆ってもよく、それによってボトル110a、110bを格納するための(閉じた)チャンバが定義される。ボトルホルダ115a、115bおよび保護カバー120a、120bは、ボトル110a、110bを外的な偶発的ショックから保護する。さらに、これらは熱損失を減らすために断熱材料(たとえばポリカーボネート)で作製されており、それによってボトル110a、110b内に含有される医療用流体を温かく(たとえば約体温に)維持することを助ける。その代わりに、供給所105cは単にパウチ110cを吊るすためのフック125cを備える。
【0023】
送達アレンジメント(「移送セット」または「デイセット」アセンブリとしても示される)135は、医療用流体を容器110a、110b、110cから患者に送達するための、完全に閉じた流体通路を作る。
【0024】
この目的のために、それぞれの供給所105a、105bにおいて、ボトルコネクタ130a、130bはボトルホルダ115a、115bの接続ポート132a、132b中に配置されている。ボトルコネクタ130a、130bは、ボトル110a、110bと接続するためのスパイクと、スパイクと流体接続している接続エレメント(たとえば、セプタムまたはオスのルアーロック継手)とを備える。スパイクおよび接続エレメントは、ボトルコネクタ130a、130bの逆側の縦方向末端に位置する。典型的には、ボトルコネクタ130a、130bは、そのスパイクと接続エレメントとの間にフィルターユニット(図中に示さず)も備える。ボトルコネクタ130a、130bは、単一のボトル110a、110bで使用するための使い捨てエレメントである(たとえば、偶発的なその再利用をすべて防ぐために、ボトルコネクタ130a、130bを取り外す際に折れてボトル110a、110b内に留まるスパイクを有するもの)。
【0025】
送達アレンジメント135は、すべての供給所105a、105b、105cを、対応する医療用流体を容器110a、110b、110cから患者セットアセンブリ145へと移送するための加圧ユニット140に接続し、患者セットアセンブリ145は加圧ユニット140内に受け入れられる。送達アレンジメント135は、それぞれの供給所105a、105b、105c用の移送ラインを備える。それぞれの供給所105a、105bの移送ラインは、リザーバ(またはドリップチャンバ)142a、142bと、ボトルコネクタ130a、130bの接続エレメントと嵌め合わせるための接続エレメント143a、143bとを(加圧ユニット140に対してその遠位末端に)備えた、柔軟なチューブ141a、141bを備える。たとえば、ボトルコネクタ130a、130bの接続エレメントがセプタムである場合は、接続エレメント143a、143bはスパイクであり、または、ボトルコネクタ130a、130bの接続エレメントがオスのルアー継手である場合は、接続エレメント143a、143bはメスのルアーロック継手である。リザーバ142a、142bおよび接続エレメント143a、143bはボトルホルダ115a、115b内に配置される。供給所105cの移送ラインは、リザーバ(またはドリップチャンバ)142cと、パウチ110cと接続させるためのスパイク143cとを(加圧ユニット140に対してその遠位末端に)備えた、柔軟なチューブ141cを備える。すべての柔軟なチューブ141a、141b、141cは、加圧ユニット140の対応するポート151内に挿入するためのプラグを備えるTコネクタ144と(加圧ユニット140に対してその近位末端で)連結されている。送達アレンジメント135は、定期的(たとえば24時間毎)に交換するべきである使い捨てエレメントである。
【0026】
加圧ユニット140は、医療用流体(送達アレンジメント135を介して容器105a、105b、105cから受け取ったもの)を、患者内に(たとえば、8バールの圧力まで、または0.5~9.9ml/秒の流速で)注入するために加圧するために使用する蠕動ポンプを操作するための、電動モーター(図中には見られず)を備える。
【0027】
さらに、上述のように、注入システム100は、(加圧された)医療用流体を患者に送達するために送達アレンジメント135を患者と接続させる患者セットアセンブリ145を備える。患者セットアセンブリ145は、(患者に対してその遠位末端に)蠕動ポンプ147が備えられており、加圧ユニット140において備えられている専用スロット152内に導入する、また、送達アレンジメント135のTコネクタ144と流体連結させる、柔軟な送達チューブ146から作製された送達ラインを備える。実際、蠕動ポンプ構成要素147には、加圧ユニット140のポート151に対応するTコネクタ144の接続エレメント175と流体的にかみ合わさる接続エレメント150が備えられている。蠕動ポンプ147は複数の圧迫用車輪を有するローターを格納し、それに混じって送達チューブ146の対応する一部分が挿入されている。患者セットアセンブリ145が一人の患者によって使用されるための単回使用型のもの(
図1に示す)である場合、柔軟なチューブ146はかなり長く(図中に模式図を示すチューブ146よりも長い)、これは、皮膚を通って患者の末梢静脈内に挿入されている末梢カテーテル(図中に示さず)のそれぞれの対応する接続エレメント(たとえばプラグ)と嵌め合わせるための接続エレメント149を(患者に対してその近位末端に)備える。また、送達チューブ146は、末梢カテーテルの設置または取外し中にチューブを挟んで送達ラインを閉じるクリップ148も備えることができる。
【0028】
それに対して、患者セットアセンブリ145が複数人の患者によって使用される複数回使用型(図中に示さず)のものである場合、送達チューブ146はかなり短く、これは、典型的にはかなり長い柔軟なチューブを備えた追加の患者ラインの対応する接続エレメントと嵌め合わせるための接続エレメントを(患者に対して)その近位末端に備える。追加の患者ラインは、末梢カテーテルが保有する対応する接続エレメントと嵌め合わせるための接続エレメントを(患者に対してその近位末端で)終端とする。
【0029】
患者セットアセンブリ145は使い捨てエレメントであり、単回使用の場合は完全に一人の患者で使用するためのものである一方で、複数回使用の場合は、一人の患者のみで使用することが意図される患者ライン以外は定期的(たとえば12時間毎)に交換されるものである。
【0030】
制御ユニット155は注入システム100の操作を制御する。たとえば、制御ユニット155は、マイクロプロセッサを備えた(メインPCB)ボード、マイクロプロセッサによって作業記憶として使用されるRAM、および電源供給がオフである場合でも保存すべき情報を記憶しているフラッシュE2PROM(特に、注入システム100の制御プログラム)を備える。さらに、制御ユニット155はタッチスクリーンおよびいくつかのボタンを備えており、これらは、操作者がそれと対話するために使用される。
【0031】
注入システム100はスタンド160によって支持される。スタンド160には、注入システム100の移動を容易にするために車輪が備えられおり、さらに、車輪は、注入システム100を適所に固定するためのフットブレーキを有する。あるいは、注入システムは、注入システムを設置する場所の医療上の前提や要件/必要条件に応じて、天井または壁搭載具(図中に示さず)によって支持される。
【0032】
操作中、行うそれぞれのスキャン検査について、操作者は注入システム100を患者の近くに配置し、その後、電源を入れる。既に行われていない場合は、操作者は、それぞれの柔軟なチューブ141a、141b上に備えられている支持エレメント170a、170bに対して働きかけることによって、それぞれのリザーバ142a、142bおよび接続エレメント143a、143bを対応するボトルホルダ115a、115b内に挿入することによって送達アレンジメント135を設置する。
図1に示す実施形態によれば、支持エレメント170a、170bは、チューブの設置/取外し中にそれを正しくかつ容易に取り扱うための適切なフラップが備えられている、ブラケットの形態である。支持エレメント170a、170bは、典型的にはリザーバ142a、142bと接続エレメント143a、143bとの間に位置しており、リザーバおよび接続エレメントが、それ中の対応するボトルホルダ内に、たとえばスナップ継手機構によって解放可能に遮断されている。パウチ110c(生理食塩水を含有)が設置されていない場合、制御ユニット155が、操作者にそれを行うよう促すメッセージをそのスクリーン上に表示する。パウチ110cを使用する場合、操作者がスパイク143cでパウチ110cの封印を突き刺し、パウチ110cをフック125cから吊るし、リザーバ142cを生理食塩水で完全に満たす(それを繰り返し圧迫することによる)。この時点で、パウチ110cの生理食塩水に関する具体的な情報(たとえば、その商品名および体積)を入力することによって、操作者が制御ユニット155をプログラミングする。そうでなければ、パウチ110cを使用しない場合、操作者は対応するコマンドを制御ユニット155に入力する。どちらの事例においても、ボトル110a(造影剤を有する)が設置されていない場合、制御ユニット155が、操作者にそれを行うよう促すメッセージをそのスクリーン上に表示する。それに応答して、操作者は典型的にはボトル110aを別の保温器(図中に示さず)から取り、ここでボトル110aは標的温度まで事前に温められている。標的温度は、造影剤を効率的(たとえば所望の流速で)かつ患者にとって心地よく注入することを可能にするために十分高いが、患者に有害であるほどは高くない値に設定する(たとえば32~37.5℃)。あるいは、保温器は使用されず、ボトル110aは室温で設置される。操作者がボトルコネクタ130aのスパイクでボトル110aの封印を突き刺す。その後、操作者はボトル110aを(それに接続されたボトルコネクタ130aを用いて)上下逆さまにし、ボトルコネクタ130aを接続ポート132a内に挿入し(その接続エレメントを接続エレメント143aと接続させるため)、保護カバー120aをボトルホルダ115a上に搭載し(ボトル110aを安全に囲い込むため)、リザーバ142aを造影剤で完全に満たす(リザーバ142aを繰り返し圧迫することによる)。この時点で、ボトル110aの造影剤に関する具体的な情報(たとえば、その商品名および体積)を入力することによって、操作者が制御ユニット155をプログラミングする。必要な場合は、操作者は同じ操作を繰り返してボトル110bを設置する(造影剤を有するまたは生理食塩水を有する)。ここで、制御ユニット155は操作者が患者セットアセンブリ145を設置するよう促すメッセージをそのスクリーン上に表示する。それに応答して、操作者は、蠕動ポンプ147を加圧ユニット140の対応するスロット152内に挿入し、蠕動ポンプ147をTコネクタ144と接続させる。患者セットアセンブリ145が複数回使用のためのものである場合、操作者は、患者ラインの接続エレメントを送達ライン146の対応する接続エレメントとさらに接続させる。ここで、移送ライン141a-143a、141b-143b、および141c-143c、送達ライン146、ならびに/または(場合によっては)患者ライン内に存在する可能性のあるすべての気泡を排除するために、操作者は、対応するプライミング機能を制御ユニット155上で選択することによって、それぞれの移送ライン141a-143a、141b-143b、および141c-143cを別々にプライミングする。このプライミング段階が終わった後(注入システム100において感知される空気がもはや存在しない)、操作者は最後に、送達ライン146の接続エレメント149(または複数患者使用の場合は患者ラインの接続エレメント)を末梢カテーテル(既に患者内に導入)の接続エレメントと接続させる。
【0033】
この時点で、操作者は、スキャン検査に関する情報(たとえば、末梢カテーテルの針のゲージ、それぞれが医療用流体の種類、体積、および流速によって定義される1つまたは複数の段階を備え、場合によっては様々な種類のスキャン検査について事前に定義された注入プロフィールから選択される、注入プロフィール)を入力することによって制御ユニット155をプログラミングし、その後、スキャン検査を開始する。スキャン検査の終わりに、注入システム100は自動的に停止し、操作者は患者セットアセンブリ145の送達/患者ラインを末梢カテーテルから接続解除し、その後それを取り外して廃棄する。
【0034】
図2A~Cは、当技術分野で知られているTコネクタ144の様々な観点の図表示を示す。詳細には、
図2AはTコネクタ144の側面図である一方で、
図2Bおよび
図2CはそれぞれTコネクタ144の後および前の透視図を表す。Tコネクタ144は、前壁171、後壁172、および底部構成要素173を定義する本体部分170を備える。Tコネクタが加圧ユニット140の専用ポート151に正しく設置された後、その前壁171は操作者と向かい合う。前壁171は、本体部分170の中に配置されていて患者セットアセンブリ145の蠕動ポンプ147の対応する接続エレメント150によってかみ合わさせるために適している接続エレメント175(
図2Cに部分的に示す)へのアクセスを提供する、開口部174を備える。前壁171は、底部構成要素173に対して実質的に横位に伸び、開口部174を取り囲むように配置される、フランジ176をさらに備える。フランジ176は、加圧ユニットへのその設置およびそれからの取外し中にTコネクタを取り扱う際に適切な支持を操作者に提供し、それによって、特に接続エレメントの設置中において、接続エレメント175を操作すること、およびその結果としての潜在的な汚染をすべて回避する。底部構成要素173は、加圧ユニット140の対応するポート151内に導入されるような形状および寸法であり、注入システムの作動中にTコネクタを適切かつ正確に配置するために加圧ユニットが保有する対応する位置センサによって感知されることに適した突出歯177(
図2Aに部分的に示す)を備える。後壁172は、加圧ユニット140の専用ポート151内に少なくとも部分的に挿入されるように設計されており、Tコネクタ144を前記加圧ユニット140に固定するための掛金機構180も備える。詳細には、掛金機構180は、本体部分170から切り離された、すなわち本体部分170とは一体でない別個の構成要素であり、Tコネクタ144の後壁172に配置されているヒンジ178によって後者と結合されている。掛金機構180は、Tコネクタを注入システム100の加圧ユニットにロックするおよび/またはそれからロック解除させるために、操作者によってヒンジ178の周りを部分的に回転させることができる(
図2A~Bの矢印Fを参照)、ピボットエレメント181を備える。ヒンジ178の近傍の第1の遠位末端182では、ピボットエレメント181には、その横位全長に沿って、加圧ユニットの対応するポート151が保有する嵌め合せ表面とかみ合わさるように設計された突出フッキングエレメント184が備えられている。したがって、注入システム100の新しい送達アレンジメント(「デイセット」アセンブリ)135の設置中に、操作者はTコネクタ144をフランジ176によって手動で持ち、その後、Tコネクタを加圧ユニット140の対応するポート151内に導入する。Tコネクタ144を押す間、底部構成要素173の一部のリブ(示さず)が加圧ユニットの対応するスロットと連動し、突出歯177は加圧ユニットの対応する位置センサによって感知される。さらに、Tコネクタ144を押すことは、ピボットエレメント181がヒンジ178の周りを時計回り方向で回転し、その後、逆回転すること(反時計回り方向)も引き起こすことで、フッキングエレメント184が加圧ユニットの対応するポート151が保有する嵌め合せ表面とかみ合わさり、それによってTコネクタ144を加圧ユニットの対応するポート151内に安全かつ正しく遮断される。同様に、使用済みの送達アレンジメント(「デイセット」アセンブリ)135を廃棄して新しいものと置き換えなければならない時、操作者は、その指でピボットエレメント181の第2の遠位末端183を押し、それによってヒンジ178の周りのその回転(時計回り方向)を引き起こし、したがってTコネクタ144が加圧ユニットの対応するポート151から解放される。最後に、Tコネクタを引き(典型的にはフランジ176に働きかけることによる)、歯177を加圧ユニットの位置センサから解放することによって操作が完了する。
【0035】
後壁172の近く、ヒンジ178の近傍において、Tコネクタ144の本体部分170は、それぞれの供給所105a、105b、105cの移送ライン、すなわち、柔軟なチューブ141a、141b、141cを受け入れるための筺体190をさらに備える。筺体190は、本体部分170を通過し、前記本体部分170の両側の側壁上にある第1および第2の入口ポートを定義する、管状導管である。接続エレメント175と筺体190の間の交差はT字型交差を定義し、Tコネクタ144にその名称を与えるものである。さらに、筺体190は、供給所105a、105b、105cに含有される流体が接続エレメント175に適切に到達できるように、本体部分170内の接続エレメント175と流体接続されている(そのような接続は図中に見られない)。より詳細には、
図2Dは、送達アレンジメント135の移送ラインの2本の別個のチューブ(たとえば、
図1に示す実施形態による柔軟なチューブ141a、141c、チューブ141cは
図2Dに示さず)が、2つの別々の供給所(たとえば、
図1に示す実施形態による供給所105a、105c)に含有される流体をTコネクタ144内に運搬し、その後、接続エレメント175を通ってそこから出ていくように、筺体190の第1の入口ポートと結合されている(追加の接続チューブ192を介して)Y字型チューブコネクタ191を示す。本体部分170の逆の側壁(
図2Dに示す実施形態における右側)では、送達アレンジメント135の移送ラインのチューブ(たとえば、
図1に示す実施形態による柔軟なチューブ141b)が、1つの供給所(たとえば、
図1に示す実施形態による供給所105b)に含有される流体をTコネクタ144内に運搬し、その後、接続エレメント175を通ってそこから出ていくように、筺体190は第2の入口ポートを定義する。典型的には、送達アレンジメント135の移送ラインのチューブは、追加の接続チューブ(示さず)によって第2の入口ポートに入る。
図2Dに示すTコネクタ144は掛金機構180を有さず、これは明瞭性のために削除してある。
【0036】
図3および4A~Bはそれぞれ、本開示の一実施形態による注入システムに提供されるTコネクタ300の側面図ならびに2つの異なる(前および後の)斜視図を示す。詳細には、Tコネクタ300は、前壁371、後壁372、および底部構成要素373を定義する本体部分370を備える。Tコネクタが注入システム100の加圧ユニット140の専用ポート151に正しく設置された後、その前壁371は、操作者と向かい合い、また、本体部分370内に位置していて患者セットアセンブリ145の蠕動ポンプ147の対応する接続エレメント150によってかみ合わさせるために適している接続エレメント375(
図4Aに部分的に示す)へのアクセスを提供する、開口部374を備える。前壁371は、底部構成要素373に対して実質的に横位に伸びる平面に存在するフランジ376をさらに備える。フランジ376は開口部374を取り囲むように配置されており、注入システムの加圧ユニットへのその設置およびそれからの取外し中にTコネクタ300を取り扱う際に適切な支持を操作者に提供する。底部構成要素373は、加圧ユニット140の対応するポート151内に導入されるような形状および寸法であり、注入システムの作動中にTコネクタを適切かつ正確に配置するために加圧ユニットが保有する位置センサによって感知されることに適した突出歯377を備える(
図3に部分的に示す)。後壁372は、Tコネクタ300を前記加圧ユニット140に固定するための掛金機構380を備える。
【0037】
本開示の注入システムの一実施形態によれば、掛金機構380は本体部分370と一体となって、一ステップで有利に製造(たとえば射出成形)することができ、それによって、複数の構成要素を設計および生成すること、ならびにそのアセンブルを回避することができる、単一の構成要素を形成する。掛金機構380は、前記本体部分370と一体であり、コネクタ300の後壁372から外に向かって突き出る、細長いフラップ381を備える。詳細には、細長いフラップ381は第1の部分382および前記第1の部分382と接続された第2の部分383を備える。第2の部分383は、細長いフラップ381の縦方向の展開(伸長)に沿って第1の部分383に順次(逐次的に)従う。細長いフラップの長さの実質的に主要な部分を表す第1の部分382は、コネクタの前壁371に対して実質的に平行である方向に展開される直線的な伸長を有する。第2の部分383は、コネクタ本体部分370とその後壁372で交差する曲線的な伸長を有する。さらに、
図5A~Cを参照して以下の開示に記載されるように、第1の部分382に対応して、細長いフラップ381は、コネクタを加圧ユニット140に設置するおよび/またはそれから取り外すために操作者によって働きかけられるフリーな第1の末端384を備える。第1の末端384の逆側で、曲線的な第2の部分383に対応して、細長いフラップ381は、底部構成要素373の近傍において掛金機構380をコネクタの後壁372と一体化して結合させる第2の末端385をさらに備える。
【0038】
Tコネクタ300を注入システム100の加圧ユニット140にロックするおよび/またはTコネクタ300をそれからロック解除するために、細長いフラップ381は第2の末端385の近くに、Tコネクタ300をそれ内に挿入する加圧ユニット140のポート151が保有する、対応する嵌め合せ表面とかみ合わさるように設計されている隆起エレメント386を備える(
図3および
図4Bにより良好に示されている)。隆起エレメント386は、細長いフラップ381の曲線的な第2の部分383中に備えられており、前記曲線的な第2の部分383の外部プロフィールから突き出る(すなわち、これは、注入システム100の加圧ユニット140と向かい合う曲線的な第2の部分383のプロフィールから突き出る)。さらに、細長いフラップ381の第2の曲線的な部分383に沿った隆起エレメント386の位置は、前記隆起エレメントが起点とする第1の点387が、細長いフラップ381の第2の末端385がコネクタ本体部分370の後壁372に取り付けられている第2の点388に対して異なるレベル(高さ)に位置するように設計されている。より詳細には、コネクタ本体部分370の底部構成要素373を参照システムとして考慮する際に、前記第1の点387は、前記第2の点388の高さTよりも高い高さSに配置されている。言い換えれば、細長いフラップをその周りに屈曲させることができる軸の位置は、隆起エレメント386によって定義されるロック位置よりも低くなるよう設計されている。この解決策(すなわち、そのような幾何学的立体配置)は、Tコネクタ300、したがって全体的な注入システム100が安全かつ正確に機能することのために、加圧ユニット140の対応するポート151内の隆起エレメント386の最適な遮断性能を確実にする。
【0039】
さらに、フリーな第1の末端384の近傍において、細長いフラップ381の第1の部分382には、操作者の指の、細長いフラップ381との接触を有利に改善させるためにグリップ表面389が備えられている。より詳細には、グリップ表面は、細長いフラップ381の第1の部分382の外部プロフィール上、すなわち、注入システム100上に設置された際に加圧ユニット140と向かい合うプロフィール上に備えられている。細長いフラップ381が、操作者がそれに容易にアクセスし、最も効率的な様式でそれ上で操作することを可能にするために適した長さを有するべきであることは、明らかである。本開示の一実施形態によれば(
図4Bにより良好に表される)、グリップ表面389は、細長いフラップ381の縦伸びに対して横位の方向に延びる複数の突出エレメントから形成される。
【0040】
本開示の注入システムのさらなる態様によれば、Tコネクタ300の本体部分370は、それぞれの供給所105a、105b、105cの移送ライン、すなわち、
図1に示す注入システム100の柔軟なチューブ141a、141b、141cを受け入れるための筺体400をさらに備える。筺体400は、本体部分370の後壁372に取り付けられている管状エレメントであり、それと一体である。本体部分370の両側の側壁上において、筺体400はそれぞれの供給所の移送ラインと接続するための入口ポートを定義する。詳細には、筺体400は、本体部分370の第1の側壁390において2つの第1の入口ポートを定義する2つの管状導管410、420、および本体部分370の第2の側壁391において第2の入口ポートを定義する1つの管状導管430を備える。
図3および
図4A~Bに示す実施形態によれば、本体部分370の第1の側壁390において、管状導管410は供給所105aを接続するチューブ141aを受け入れ、管状導管420は供給所105cを接続するチューブ141cを受け入れる一方で、本体部分370の第2の側壁391において、管状導管430は供給所105bを接続するチューブ141bを受け入れる。
【0041】
さらに、
図4Aにより良好に示されるように、筺体400は、本体部分370の内部に配置されている接続エレメント375と流体接続しており、これは、供給所105a、105b、105cに含有される流体を、それぞれの移送ライン(すなわち、柔軟なチューブ141a、141b、141c)を通じてTコネクタ400へと移送し、その後、前記接続エレメント375へと移送することができるようにするためである。接続エレメント375と筺体400との間の交差はT字型交差を定義し、Tコネクタ400にその名称を与えるものである。
【0042】
本開示の注入システムの一実施形態によれば、
図3により良好に示されるように、細長いフラップ381の第2の曲線的な部分383は、筺体400の湾曲と少なくとも部分的に一致する湾曲を有する。より詳細には、第2の曲線的な部分383は、ユーザによって操作された際、細長いフラップ381が曲がってその後に隆起エレメント386を開放するために十分な空間があるように、筺体400から間隔があけられており、これは、
図5A~Cを参照して以下の説明中により良好に説明されている。上述のように、第2の曲線的な部分383の内部プロフィール(すなわち、筺体400と向かい合うプロフィール)の湾曲は、筺体400のほとんどの放射状の外部管状導管(すなわち、図に示す実施形態による管状導管410、430)の湾曲と実質的に一致する。
【0043】
図5A~Cを参照して、以下の説明は、どのようにコネクタ300を容易に操作して注入器システムの加圧ユニットから解放することができるかを説明している。明瞭性のために、加圧ユニットを図中に部分的に表し、コネクタ300を支持してかみ合わさることが要求される部分500の部分図のみを含む。
図5Cにより良好に示されるように、加圧ユニット部分500は、細長いフラップ381の隆起エレメント386と連動することが想定されるかみ合わせ表面510(図中に示される実施形態における突出歯)を備える。
【0044】
したがって、送達アレンジメント(「デイセット」アセンブリ)135を廃棄して新しいものと置き換えなければならない時、操作者は、その指を細長いフラップ381のフリーな第1の末端384におけるグリップ表面389上に配置し、それを押して、細長いフラップ381をコネクタ本体部分370に向かって(すなわち、
図5Bの矢印Gによって示される方向に)屈曲させる。細長いフラップ381は、その第2の曲線的な部分383が筺体400と接触し、隆起エレメント386が加圧ユニット部分500のかみ合わせ表面510から解放され、それによって送達アレンジメント(「デイセット」アセンブリ)135が注入器から完全に取り外されるまで屈曲させる。
【0045】
同様に(図中に示さず)、注入システム100の新しい送達アレンジメント(「デイセット」アセンブリ)135の設置中、操作者はTコネクタ300をフランジ376によって手動で持ち、その後、Tコネクタ300を加圧ユニット140の対応するポート151内に導入する。Tコネクタ300を押す間、底部構成要素373の突出歯377は加圧ユニットの位置センサによって感知され、隆起エレメント386が加圧ユニット部分500のかみ合わせ表面510とかみ合わさり、それによって注入器においてTコネクタ300が完全に接続され遮断される。
【0046】
本開示のさらなる態様によれば、送達アレンジメント135の移送ライン(すなわち、ボトル容器が使用されているそれぞれの供給所105a、105bと接続する、柔軟なチューブ141a、141b)には、注入器上における送達アレンジメント135の正確な取扱いおよび配置を可能にする支持エレメント(ブラケット)600(それぞれの柔軟なチューブについて1つずつの支持エレメント)が備えられている。詳細には、それぞれの支持エレメント600は、移送ラインのチューブがU字型の立体配置の開いた部分内に入り、対応する支持エレメント600において固定されることを可能にする、(横断面が)実質的にU字型の立体配置を有する単一のプラスチック構成要素から作製されている。
図6により良好に示されるように、支持エレメント600の軸端は、柔軟なチューブ(すなわち、
図6中のチューブ141a)上の対応する嵌め合せエレメント710、720とかみ合わさり、それによって支持エレメント600を移送ラインのそれぞれのチューブと正しくかつ安全に接続させる(矢印PおよびQを参照)、クリップ継手610、620を備える。本開示によれば、支持エレメント600は、送達アレンジメント135の設置および取外しの操作中に、移送ラインの取扱いおよびそれをボトルホルダ内に正しく挿入するために操作者によって使用される、一対のフラップ630、640を備える。
【0047】
修正
現地および具体的な必要条件を満たすために、当業者は、多くの理論的および/または物理的な修正および改変を本開示に適用し得る。より詳細には、本開示をその1つまたは複数の実施形態を参照して特定の度合の特定性を用いて記載したが、形態および詳細の様々な省略、置換、および変更、ならびに他の実施形態が可能であることを理解されたい。特に、本開示の様々な実施形態は、そのより徹底的な理解を提供するために前述の説明において記載した具体的な詳細(数値など)を用いずに実施してさえもよい。逆に、不必要な詳細で説明を不明瞭にしないために、周知の特長を省略または簡易化した場合がある。さらに、本開示の任意の実施形態に関連して記載した具体的な要素および/または方法ステップを、一般的な設計選択の事柄として任意の他の実施形態に組み込み得ることが明確に意図される。いずれの場合においても、それぞれの数値は、(既にされている場合を除いて)約という用語によって修飾されるものとして読まれるべきであり、それぞれの数値の範囲は、範囲内の連続体に沿った任意の可能な数(その端点を含む)を明白に指定するものとして意図されるべきである。さらに、順序または他の修飾子は、単に同じ名称を有する要素を識別するための標識として使用され、それ自体でいかなる優先度、先行度、または順序も暗示するものではない。含む(include)、含む(comprise)、有する、含有する、および伴う(involve)という用語(ならびにそれらの任意の形態)は、オープンな非網羅的意味が意図されるべきであり(すなわち、列挙した事項に限定されない)、基づく、依存する、従う、その機能である(function of)という用語(およびそれらの任意の形態)は、非排他的関係として意図されるべきであり(すなわち、場合によってはさらなる可変性が伴う)、用語a/anは、1つまたは複数の事項として意図されるべきであり(そうでないと明白に示されない限り)、~の手段という用語(または任意の手段+機能の公式)は、関連性がある機能を実施するために適応または構成された任意の構造として意図されるべきである。
【0048】
一実施形態では、本注入システムは、1つまたは複数の流体を患者内に注入するためのものである。しかし、流体は任意の数および任意の種類のものであってよく(たとえば、どのような医療用流体でも、薬物もしくは体液などの診断もしくは治療目的のための一般的医学用途において使用するもの、またはより一般的に、美容目的のためなどの任意の他の処置において使用するもの)、さらに、流体は、任意の様式(たとえば動脈内)で任意の(ヒトまたは動物)患者内に注入し得る。
【0049】
一実施形態では、本注入システムは、それぞれが注入する流体のうちの1つを容器から供給するためのものである、1つまたは複数の供給所を備える。しかし、注入システムは、同じまたは異なる流体を(任意の組合せで)供給するための任意の数の供給所(1つだけに至るまで)を備え得る。さらに、容器は、供給所において同じまたは異なるもののどちらかの、任意の種類であり得る(たとえば、ボトル、バッグ、パウチ、シリンジ、およびその任意の組合せ)。
【0050】
一実施形態では、供給所のうちの少なくとも1つは、容器を格納するためのチャンバを定義する格納手段を備える。しかし、上述の解決策を任意の数の供給所(1つだけからすべてまで)に適用し得る。さらに、チャンバは、任意の種類、形状、大きさで、任意の位置に配置してよく(たとえば、容器を完全にまたは部分的にのみ囲い込み、それを吊るすためのフックを備える)、また、任意の構造によって定義されてもよい(たとえば、アクセス扉を備えた囲い込み)。
【0051】
一実施形態では、チャンバは、流体を患者に送達するために、容器を送達アレンジメントに接続させるための接続ポートを有する。しかし、接続ポートは、任意の種類、形状、大きさで、任意の位置に配置してよく(たとえば、ボトルホルダと一体の弁)、さらに、送達アレンジメントは任意の種類のものであってよい(たとえば、それぞれの供給所について個別の移送ラインを有するもの、患者内に直接挿入するための針を末端に備える送達ラインを有するもの)。
【0052】
一実施形態では、本注入システムは、患者のスキャン検査中に患者内に流体を注入するためのものであり、流体は、造影剤および/または生理食塩水を含む1つまたは複数の医療用流体である。しかし、注入システムは任意のスキャン検査に(たとえば、MR、核または超音波イメージング用途において)使用してよく、さらに、注入システムは、任意の造影剤(たとえば、硫酸バリウムなどのバリウム系造影剤、ガドリニウム、放射性同位元素、ガス入り微小気泡の懸濁液)、任意の生理食塩水(たとえばデキストロースを添加したもの)、その任意の組合せと共に、またはより一般的には任意の医療用流体(単数または複数)と共に使用し得る。
【0053】
一般に、より多くのステップもしくはその一部分の同じ機能を有する同様のステップを使用することによって、必須でない一部のステップを削除することによって、またはさらなる任意選択のステップを追加することによって、同じ解決策が等価な方法を用いて実装されている場合に、同様の考慮が適用される)。さらに、ステップは、異なる順序で、同時に、または交互の様式で(少なくとも部分的に)行ってもよい。
【符号の説明】
【0054】
100 注入システム
105a 容器
105b 容器
105c 容器
110a ボトル
110b ボトル
110c パウチ
115a ボトルホルダ
115b ボトルホルダ
120a 保護カバー
120b 保護カバー
125c フック
130a ボトルコネクタ
130b ボトルコネクタ
132a 接続ポート
132b 接続ポート
135 送達アレンジメント(「デイセット」アセンブリ)
140 加圧ユニット
141a 柔軟なチューブ
141b 柔軟なチューブ
141c 柔軟なチューブ
142a リザーバ(またはドリップチャンバ)
142b リザーバ(またはドリップチャンバ)
142c リザーバ(またはドリップチャンバ)
143a 接続エレメント
143b 接続エレメント
143c スパイク
144 Tコネクタ
145 患者セットアセンブリ
146 柔軟なチューブ
146 送達チューブ
146 送達ライン
146 チューブ
147 蠕動ポンプ構成要素
148 クリップ
149 接続エレメント
150 接続エレメント
151 専用ポート
152 専用スロット
155 制御ユニット
160 スタンド
170 本体部分
170a エレメント
170b エレメント
171 前壁
172 後壁
173 底部構成要素
174 開口部
175 接続エレメント
176 フランジ
177 突出歯
178 ヒンジ
180 掛金機構
181 エレメント
182 第1の遠位末端
183 第2の遠位末端
184 フッキングエレメント
190 筺体
191 Y字型チューブコネクタ
192 追加の接続チューブ
300 Tコネクタ
370 本体部分
371 前壁
372 後壁
373 底部構成要素
374 開口部
375 接続エレメント
376 フランジ
377 突出歯
380 掛金機構
381 細長いフラップ
382 第1の部分
383 曲線的な第2の部分
384 第1の末端
385 第2の末端
386 隆起エレメント
387 第1の点
388 第2の点
389 グリップ表面
390 第1の側壁
391 第2の側壁
400 筺体
400 Tコネクタ
410 管状導管
420 管状導管
430 管状導管
500 加圧ユニット部分
510 かみ合わせ表面
600 支持エレメント(ブラケット)
610 クリップ継手
620 クリップ継手
630 フラップ
640 フラップ
710 嵌め合せエレメント
720 嵌め合せエレメント