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特許7470678分注データセットのデータ品質を向上させるためのシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】分注データセットのデータ品質を向上させるためのシステム
(51)【国際特許分類】
   G16H 40/00 20180101AFI20240411BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
G16H40/00
A61M5/315 550J
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021516686
(86)(22)【出願日】2019-09-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 EP2019075626
(87)【国際公開番号】W WO2020064681
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-08-26
(31)【優先権主張番号】62/735,354
(32)【優先日】2018-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18198410.5
(32)【優先日】2018-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ハウン, マーク
(72)【発明者】
【氏名】アンデルセン, カーステン シャウ
(72)【発明者】
【氏名】ミラー, トーマス デデンロース
(72)【発明者】
【氏名】フレージャー, ライアン スコット
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/007935(WO,A1)
【文献】特表2015-514483(JP,A)
【文献】特表2012-519026(JP,A)
【文献】特表2017-533016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クエリー薬剤分注データセットのデータ品質を向上させるためのコンピューティングシステム(502)であって、前記コンピューティングシステムが一つ以上のプロセッサおよびメモリを備え、前記メモリが、
前記一つ以上のプロセッサによって実行されたとき、分注データ品質を向上させるためのクエリー要求の受信に応答して方法を実行する命令を含み、前記命令が、
a)時間経過にわたって生成された複数の分注記録を含むクエリー分注データセット(520)を取得する工程であって、各分注記録が、
(i) 医薬の分注量であって、プライミング量[p]または注射量[i]のうちの一つであり、各量がサイズに対応する、分注量と、
(ii)対応する分注タイムスタンプと、を含む分注イベントを表す、工程と、
b)前記クエリー分注データセットを、一つ以上の現在のセッション(530)へとセグメント化する工程(710)であって、各現在のセッションが、クラスター化基準のセットに従って時間的にクラスター化された一連の分注イベントのシーケンスを含む、セグメント化する工程と、
各現在のセッション(532)に対して:
c)パターンルールのセットに従って、可能性のある分注パターン(16、716)のリストを生成する工程であって、分注パターンが、プライミング量または注射量のいずれかの分注量のシーケンスである、生成する工程と、
d)各分注パターンに対して、前記分注パターンにおける各分注に対する重み因子の積である組み合わされたパターン重みを計算する工程であって、各重み因子が、所与の分注タイプおよび分注サイズに対して、重み因子対分注サイズ関数(70、770)に従って決定され、前記分注サイズがより大きいほど、注射イベントを表す可能性がより高く、プライミングイベントを表す可能性がより低い、工程と、
e)成功パターンを、最も高い組み合わされたパターン重みを有するパターンであるパターンとして特定する工程と、
f)前記成功パターンに対応してプライミングまたは注射イベントのいずれかとしてラベル付けされた対応する分注イベントをメモリ内に保存する工程と、を含む、コンピューティングシステム。
【請求項2】
前記命令が、
以前の時間経過にわたって生成された複数の以前の分注記録を含む、履歴分注データセットを取得するさらなる工程を含む、請求項1に記載のコンピューティングシステム。
【請求項3】
前記命令が、各現在のセッションに対して、
履歴分注データからの平均値および分散値(555、556)に基づく、想総注射量の分布を生成するさらなる工程と、
最も高い組み合わされたパターン重みと二番目に高い組み合わされたパターン重みとを比較し、パターン重みが互いの所与の近接内にある場合、生成された前記分布に従って最も高い確率を有するパターンとして、更新された成功パターンを特定するさらなる工程を含む、請求項2に記載のコンピューティングシステム。
【請求項4】
前記命令が、各現在のセッションに対して、
前記予想総注射量の値がこれに基づく、前記履歴分注データに対する履歴重みを計算する工程であって、前記履歴重みが、
データの経過年数、
時刻の類似性、および
セッション間のギャップの類似性、のうちの一つ以上を含む関係のある基準に基づくさらなる工程を含み、
前記履歴重みが所与の最小閾値に到達しない限り、前記想総注射量値が生成されない、請求項3に記載のコンピューティングシステム。
【請求項5】
前記命令が、各現在のセッションに対して、
信頼値の群からの一つ以上の信頼性指標に基づいて、組み合わされた信頼値を決定する工程であって、
前記最も高い組み合わされたパターン重みの値に基づくデータ信頼値と、
計算された場合に、推定総注射量と予想総注射量との差異に基づく、予想量信頼値と、
生成された場合に、生成された予想総注射量の分布[A1]による、前記最も高い組み合わされたパターン重みおよび二番目に高い組み合わされたパターン重みの確率の近接性に基づく曖昧性の信頼値、および
前記成功パターンのプライミング挙動間の一貫性に基づくプライミング信頼値と、を含む、さらなる工程を含み、
前記組み合わされた信頼値が所与の閾値を上回るとき、
推定総注射量を、前記成功パターンにおけるすべての注射量の合計として計算する、請求項1~4のいずれかに記載のコンピューティングシステム。
【請求項6】
記組み合わされた信頼値が所与の閾値を上回るとき、
前記成功パターンに対応する前記セッションにラベル付けし、前記予想総注射量の分布前記平均値および分散値が、ラベル付けされたセッションからの履歴分注データのみに基づく、請求項3に従属するときの請求項5に記載のコンピューティングシステム。
【請求項7】
組み合わされたパターン重みが、一つ以上のさらなる因子の前記積であり、
履歴分注データに基づくプライミング確率因子と、
プライミング差異因子と、
三つ以上の分注を有するセッションに対するセッション内の分注間隔因子と、を含む、請求項2~6のいずれかに記載のコンピューティングシステム。
【請求項8】
前記命令が、各現在のセッションに対して、
推定総注射量を、前記成功パターンにおけるすべての注射量の合計として計算する、請求項1のいずれかに記載のコンピューティングシステム。
【請求項9】
得された前記分注記録が、所与の分注イベントをボーラスイベントまたは基礎イベントとして特定するための識別子を含み、
前記方法の前記パターンルールおよびパラメータが、ボーラスレジメンのみ、基礎レジメンのみ、またはボーラスレジメンおよび基礎レジメンで生成された分注データとともに使用するために適合される、請求項1~8のいずれかに記載のコンピューティングシステム。
【請求項10】
前記セグメント化が、時間パラメータのセットおよび時間尺度のセットによって制御され、分注イベントの前記シーケンスにおける当初の分注イベントがセッションを開始し、かつタイマーをゼロにし、次の分注が、セッション時間ウィンドウが経過するまでこのセッション内に自動的に含まれ、かつ、(i)結果として得られるセッション長さと結果として得られる前記セッションの両側でのセッション間の長さ(763、765)との間の比が前記セッション長さの比より小さく、かつ(ii)前記結果として得られるセッション長さがセッション時間ウィンドウ最大値より小さいという表現が真である、という条件で、その後の分注が含まれ、
前記セッション内の分注イベントの前記シーケンスが、分注イベントのセットを画定し、かつ各分注イベントが、分注された前記医薬の量である対応する分注サイズを含み、かつ
前記表現がもはや真ではないことに応答して、新しいセッションが開始される、請求項1~9のいずれかに記載のコンピューティングシステム。
【請求項11】
所与のイベントまたはセッションラベルを、ユーザーが変更することができる、請求項1~10のいずれかに記載のコンピューティングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実際に注射された投与量を反映する信頼性の高い自動分注データを提供するために、薬剤用量分注データセットのデータ品質を向上させるためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
患者が最適なインスリン用量まで漸増するのに役立つように設計された、意思決定支援システム(DSS)が提案されている(例えば、PCT/EP2019/067000を参照のこと)。信頼性の高いDSSを取得するための基本的な要件は、注射したインスリン量の履歴に関する良好なデータ品質である。したがって薬剤送達装置およびそのアドオン装置は、排出された投与量のログを自動的に生成するように適合されて提供されるが、捕捉されたすべての分注が、どのような理由で、注射されたインスリン用量を非注射のインスリン用量からフィルタリングすることを可能にするペン式の基礎療法およびボーラス療法のためのデータフィルタリングソリューションを提供することが望ましいかに対して臨床的に関連があるわけではない。
【0003】
この問題は過去にも対処されている。例えば、国際特許公開公報第2016/007935号は、患者のスマートフォンと通信する、注射装置を含むインテリジェントな医薬品投与システムを開示し、この中で、注射装置は、分注された(例えば、プライミングされた、または患者に注射された)用量サイズを検出および記録することができ、また、プライム用量と療法用量とを区別することができる。患者は、療法用量または治療用量を注射する前に、プライム用量またはプライミング用量を分注する必要がある場合がある。例えば、いくつかのユースケースでは、患者は、その針を交換し、新しい針から空気を除去することを意図したプライム用量を送達する。一部の事例では、例えば、針が交換されない場合でさえも、プライム用量が送達されることになる。一部の事例では、例えば、針が交換された場合でさえも、プライム用量は送達されない。どの用量がプライム用量であり、どの用量が治療用量であるかを決できる必要があり、ここで用量タイプの決定に関連付けられたデータが、用量計算(例えば、「残存インスリン」計算)および療法分析に含まれるべきである。
【0004】
典型的には、プライム用量が送達されるときには、療法用量がその後に続く。インテリジェントな医薬品投与システムの一部の実装形態では、例えば、スマートフォンのソフトウェアアプリケーションは、用量分注データを処理し、ペン式装置から分注されたプライム用量と療法用量とを決定しかつ区別するための、用量識別装置または用量特定モジュールを含むことができる。
【0005】
インテリジェントな医薬品投与システムの一部の実装形態では、例えば、ペン式装置上のデータ処理ユニットは、用量分注データを処理し、ペン式装置から分注されたプライム用量と療法用量とを決定しかつ区別するための、用量識別装置モジュールを含むことができる。
【0006】
一部の実施形態では、用量識別装置モジュールは、分注された医薬品用量に関連付けられたデータをグループ化し、グループ内の分注された用量を、プライム用量または注射された(例えば、療法)用量のいずれかとして分類する用量分類方法を実施するように構成され、それにより、時間的に近接して起こる用量の任意のグループに対して、最後の用量のみが治療用量として記録される。時間的な近接性とは、例えば、10秒、30秒、1分、2分、5分、または10分または他のものとして定義することができる、所定の時間的閾値である。
【0007】
インスリンの必要量が低い患者においては、用量をプライムとして特定することが重要である。例えば、小児では、典型的なプライム用量は2単位である場合があるが、一方で典型的な療法用量は0.5または1単位である場合がある。この場合、ユーザーが(治療的なインスリンのみではなく)すべての分注したインスリンを追跡に含む場合には、療法追跡は間違っていることになり、あらゆる残存インスリンの計算または将来の推奨用量も同様に間違っていることになる。
【0008】
これは、プライム用量をサイズのみに基づいて区別できないことを示す一例である。上に提示した例では、療法用量は、プライム用量よりもはるかに小さいが、完全に成長した成人または2型患者の場合、療法用量は、プライムよりもはるかに大きい場合がある。
【0009】
一部の事例では、例えば、ユーザーは、自身の装置をプライミングして、治療用量を送達しない場合がある。用量識別装置モジュールが、用量を治療用量として不適切に特定することを防止するために、このような場合、システムは、用量を「プライム」または「治療」のいずれかとして迅速に特定するために利用されてもよい追加的な機構を含むことができる。この追加的な用量特定機構の一実施例では、ユーザー確認入力をスマートフォンのソフトウェアアプリケーションに含んで、患者が記録された用量をプライム用量または療法用量のうちの一つであることを識別することが可能であり、これはその後、必要に応じて、こうした用量を任意の療法分析および残存インスリン計算に含むことを可能にする。このユーザー確認入力機構は、用量、スライダー、またはその他の機構をタップすることを可能にする、ユーザーインターフェースのラジオボタン、トグルスイッチ、および/またはグラフィックを含むことができる。
【0010】
一部の実施形態では、例えば、用量識別装置モジュールは、治療用量として時間的に近接して発生する用量群の最後の用量をグループ分けおよび分類するための、例示的な用量分類方法に対する一つ以上の追加のプロセスまたは例外を含むように構成することができる。一実施例では、用量分類方法は、カートリッジ交換後に、単一の用量のみがある場合、療法用量ではなく、プライム用量と指定されるように実施することができる。別の実施例では、用量分類方法は、最初の用量(または中間用量)が所定の用量の量の閾値より大きいとき、その用量は療法と見なされるように実施することができる。例えば、2、5、10単位、または他のサイズよりも大きいと決定された任意の用量は、用量シーケンスにおけるそれらの位置に関係なく、療法と見なされる可能性がある。
【0011】
治療用量からプライム用量を決定する開示されたシステムの用量識別装置モジュールは、プライム用量のためのペン式装置に別個の投与ノブを含むことができる。例示的な別個の投与ノブは、投与用のねじ式ジャッキを作動させるが、用量エンコーダは作動させないように構成することができる。これらの実施形態では、例えば、ユーザーが別個の投与ノブを回転させると医薬品が注射されるが、エンコーダは用量をカウントしない。
【0012】
治療用量からプライム用量を決定する開示された技術の用量識別装置モジュールは、用量識別のための追加的または代替的な方法を含んでもよい。一実施例では、分注用量がプライムであるかどうかを決定する方法は、注射時にペン式装置が本体と接触しているかどうかを感知することを含む。これは、いくつかの方法のうちのいずれかで行うことができる。一つの非限定的な実施例では、ペン式装置10は、注射の際に針組立品または装置の先端に力が加えられたかどうかを決定するために、針組立品またはペン式装置10の本体の先端もしくは端部に連結された圧力センサーを含むことができる。一つの非限定的な実施例では、ペン式装置は、本体への近接性を感知することになる装置の端部の近くに嵌合された容量センサーを含むことができる。これらの例示的な事例のいずれでも、圧力または近接性の感知は、用量が治療であってプライムではないと見なされる結果をもたらす。
【0013】
プライム用量対療法用量を決定する用量分類方法は、送達される用量のスピードの検出を含むことができる。例えば、プライム用量が、非プライム用量より速い速度で送達される可能性がある。ペン式装置のエンコーダ機構は、例えば、スピードデータが処理のためにスマートフォンに転送される、用量のスピードを記録するように構成することができる。次いで、スピードは、所定の用量スピード閾値と比較され、用量がプライムであるかまたはプライムでないかが決定されてもよい。例えば、エンコーダ機構は、スピードを検出することができ、閾値はギア比、および回転当たりのエンコーダのカウント、および/または他の要因に依存することになる。1秒当たりのパルス閾値を超える平均用量スピードをもたらす用量はプライム用量であることが決定されてもよい。この用量速度の閾値は、一連のプライム用量および療法用量の両方を送達するようにユーザーに求め、各々の平均用量スピードを比較することによって決定することが可能である。各タイプの用量の用量スピード範囲に重複がほとんどない場合、用量スピードは、用量タイプの良好な指標である。一部の実装形態では、例えば、用量識別装置モジュールは、プライム用量から療法用量を特定するために、所定の近接した時間内での用量分注のグループ分けに加えて、検出された用量スピードを利用することができる。一部の実装形態では、例えば、用量識別装置モジュールは、用量分注グループ分けにおける用量のシーケンスを考慮することなく、検出された用量スピードを利用することができる。
【0014】
一部の実装形態では、プライム用量対療法用量を決定する用量分類方法には、針組立品の針のすべてまたは一部の周りのシュラウド組立品およびシュラウド組立品内のセンサーを含むペン式装置を関与させることができる。実装形態では、針が患者に注射される時、シュラウドは皮膚に接触し、後ろへスライドすることになり、センサーをトリガーして実際の療法用量を検出し、かつ示す。シュラウドが後ろに動かない場合は、ペンが空気中に保持されていたことを示すことになり、用量はプライムと見なされることになる。別の方法として、シュラウドの代わりに、センサーを、皮膚と接触しかつ同様に機能する小さいボタンまたはレバーを含む組立品内に構造化することができる。
【0015】
一部の実装形態では、プライム用量対療法用量を決定するための用量分類方法は、ペン式装置の移動データを検出し、これをスマートフォンに転送して移動データを分析するために、内部加速度計、ジャイロスコープ、またはその他の速度センサーを含むペン式装置を関与させることができる。例えば、用量が分注される前にペンが内向きの動きを感知し、かつ用量が分注された後に外向きの動きを感知する場合、スマートフォンは、ペンが患者へと注射されたことを示し、これによって、分注された用量を療法用量として特定するが、一方でこれらの動きがない場合はペンが空気中に保持されたことを示すことになる。
【0016】
用量識別モジュールの一部の実施形態では、例えば、モジュールは、用量がプライム用量であるかどうかを決定するための「投票」方法を含むことができる。投票方法の例示的な実施例では、用量識別モジュールは、特定の用量順序に対して、例えば、例示的な用量グループ分けプロセス(例えば、療法用量として所定の近接した時間内に分注された用量シーケンスにおける最後の分注された用量の特定)、例示的な用量スピード検出プロセス、例示的な移動データ検出プロセスなどの、複数の用量分類方法の実施形態を並行して実施することができる。特定の用量または用量シーケンスの後、ある特定の過半数の例示的な用量識別方法が分注された用量がプライム用量であることを示し、かつ少数の方法がそれではないことを示す場合、投票方法は、この場合には用量がプライム用量として特定されると決定することになる。
【0017】
上記を考慮して、本発明の目的は、実際に注射された投与量を反映する自動分注データを確実に、かつコスト効果高く提供するために、薬剤用量分注データセットのデータ品質を改善するように適合されたシステム、方法、および装置を提供することである。
【0018】
改善されたデータは、例えば、糖尿病を治療するために対象者にインスリン調節一日推奨用量(漸増)を提供するよう適合されたシステムにおいて、患者に対して用量ガイダンスをより良好に、より速く、かつより正確に提供するために、DSSで使用することが可能である。別の方法として、本発明によるシステムは、電子用量ログ(例えば、スマートフォン上で実行され、かつ接続された薬剤送達装置からデータを受信する用量ロギングアプリによって提供される)を患者がつけることを支援することが可能であり、ここで、用量イベントは、注射量または非注射量と自動的にラベル付けされ、これは、患者からのこのタスクの負担と複雑さを除去するだけでなく、また医療従事者と患者とが協力してより良好な順守を提供するために役立つ信頼性の高い用量データも提供する。こうした用途のためには、DSSおよび用量ロギングアプリは、本発明によって提供されるサービスのクライアントと見なすことができる。
【0019】
[課題を解決するための手段]
本発明の開示では、上記の目的のうちの一つ以上に対処する、または下記の開示だけでなく例示的な実施形態の説明からも明らかな目的に対処する、実施形態および態様が説明される。
【0020】
したがって、本発明の第一の態様では、クエリー分注データセットのデータ品質を向上させるためのコンピューティングシステムが提供される。システムは、一つ以上のプロセッサと、命令が保存されるメモリとを備え、その命令は、一つ以上のプロセッサによって実行されたとき、クライアントから分注データ品質を向上させるためのクエリー要求の受信に応答して、方法を実行する。方法は、(a)時間経過にわたって生成された複数の分注記録を含むクエリー分注データセットを取得する工程であって、各それぞれの分注記録が、(i)医薬の分注量であって、分注量がプライミング量[p]または注射量[i]のうちの一つであり、各量がサイズに対応する、分注量と、(ii)対応する分注タイムスタンプと、を含む分注イベントを表す、工程、および(b)クエリー分注データセットを一つ以上の現在のセッションへとセグメント化するさらなる工程であって、各現在のセッションが、一組のクラスター化基準による時間でクラスター化された分注イベントのシーケンスを含む、工程と、を含む。各現在のセッションに対して、方法は、(c)パターンルールのセットに従って、可能性のある分注パターンのリストを作成する工程であって、分注パターンが、プライミング量または注射量のいずれかの分注量のシーケンスである、工程と、(d)各パターンに対して組み合わされたパターン重みを計算することが、各パターンにおける分注に対する重み因子の積である工程であって、各重み因子が、所与の分注タイプおよび分注サイズに対して、重み因子対分注サイズ関数に従って決定され、分注サイズがより大きいほど、注射イベントを表す可能性がより高く、プライミングイベントを表す可能性がより低い、工程と、(e)最も高い組み合わされたパターン重みを有するパターンとして、成功パターンを特定する工程と、(f)成功パターンに対応して、プライミングイベントまたは注射イベントのいずれかとしてラベル付けされた対応する分注イベントをメモリ内に保存する工程、を含む。
【0021】
クエリー分注データセットが、一つ以上の現在のセッションへとセグメント化されると定義されるとき、これには、分注データセットが、いかなるセッションも特定できないことを可能にすることを含む。さらに、クエリー分注データセットのセッションへのセグメント化は、データセットがすでにセグメント化されたフォーマットで取得された事例を含み、これはその後、特許請求の範囲に記載する方法のルールを使用して、再度許容またはセグメント化されてもよい。
【0022】
示されるように、方法は、パターンルールのセットに従って可能な分注パターンのリストを作成し、その後、リスト内の各パターンに対して、成功パターンが決定されることを可能にする重みを計算する概念に基づく。より具体的には、各分注パターンは、プライミングイベントおよび注射イベントの特定のシーケンスであり、各分注パターンにより、現在のセッションにおける分注イベントの解釈が可能になる。計算は、分注サイズが大きいほど注射イベントを表す可能性がより高く、またプライミングイベントを表す可能性がより低いという認識に基づく。これに基づいて、各パターンの各プライミング量[p]および各注射量[i]に対して、重み因子対分注サイズ関数を生成することができる。
【0023】
当業者にとって明らかであるように、実際のルールを定め、そして実際の重み因子対分注サイズ関数を決定することは、多数のやり方で、かつデータ取り扱いシステムの通常の設計手順だけでなく、本出願で提供される設計ガイダンスに従って行うことができる。
【0024】
上記の工程によって、方法が提供され、分注イベントを、高い信頼性および柔軟性でラベル付けすることができる。セッションに対する推定総注射量は、成功パターンのすべての注射量の合計として計算することができる。
【0025】
つまり、例示的な実施形態では、所与のイベントまたはセッションのラベルは、ユーザーによって変更することができ、そのラベルは、その後将来の計算のためにシステムによって許容可能である。
【0026】
方法の信頼性および精度をさらに精緻化するために、例えば、以前のクエリー要求内に保存されたデータから、以前の時間経過にわたって作成された複数の以前の分注記録を含む、履歴分注データセットを取得してもよい。
【0027】
組み合わされたパターン重みは、履歴分注データに基づくプライミング確率因子、プライミング差異因子(ボーラス注射に対する)、および3回以上の分注を有するセッションに対するセッション内の分注間隔因子から成る群からの一つ以上の追加的な因子の積であってもよい。ボーラス投与薬剤患者では一般的である少量の注射からプライムを区別しようと試みるとき、プライミング差異因子を適用することによってプライミング分注が一貫したサイズを有しない場合、パターンの重みを少なくするために役立つ可能性があり、これはプライミング用量が一定サイズである可能性が高いという認識に基づく。
【0028】
例示的な実施形態では、方法は、各現在のセッションに対して、履歴分注データに基づいて予想される総注射量分布の平均値および分散値を生成し、かつ最も高い組み合わされたパターン重みと二番目に高い組み合わされたパターン重みを比較し、そしてパターン重みが互いの所与の近接内にある場合、次いで生成された分布に従って最も高い確率を有するパターンとして更新された成功パターンを特定するという、さらなる工程を含む。実際、二番目に高い組み合わされたパターン重みを有する近い候補が二つ以上存在する場合、これらの重みも比較されるべきである。
【0029】
履歴データの使用を組み込み、かつ予想される総注射量の分布に対する平均値および分散値を計算することによって、方法は、二つ(またはそれ以上)のパターン重みが互いの所与の近接内にある場合に、より確実に成功パターンを特定することができる。
【0030】
信頼性および精度をさらに改善するために、方法は、各現在のセッションに対して、予想される総注射量値の基となる履歴分注データに対する履歴重みを計算する工程、というさらなる工程を含んでもよい。履歴重みは、データの経過年数、時刻の類似性、およびセッション間のギャップの類似性のうちの一つ以上を含む関連性基準に基づいてもよい。
【0031】
言い換えれば、以前のデータ値が現在のデータ値とより類似しているほど、計算により多くの重みが提供される。それ故に、履歴重みが所与の最小閾値に到達しない限り、予想される総注射量値は生成されない。
【0032】
信頼性および精度をさらに改善するために、方法は、各現在のセッションに対して、最も高い組み合わせパターン重みの値に基づくデータ信頼値(すなわち、値が高いほど信頼性が高い)と、計算した場合には、推定総注射量と予想される総注射量との間の差異に基づく予想量信頼値と、生成される場合には(すなわち、二つのパターンがほぼ等しく可能性が高く、曖昧性信頼性が低いとき)、生成された分布による、最も高い高い組み合わされたパターン重みおよび二番目に高い組み合わされたパターン重みの確率の近接性に基づく、曖昧性信頼値と、成功パターンのプライミング挙動間の一貫性に基づくプライミング信頼値(すなわち、ユーザーが過去により多くプライミングしたほど、想定されるプライミングイベントの信頼性が高い)と、を含む信頼値の群からの一つ以上の信頼性指標に基づいて、組み合わされた信頼値を決定する工程、というさらなる工程を含んでもよい。組み合わされた信頼値は、異なるやり方で(例えば、すべての値の平均として、または単一の最も低い値として)、計算することができる。組み合わされた信頼値が所与の閾値を上回るとき、推定総注射量は、成功パターンのすべての注射量の合計として計算することができる。次いで、推定総注射量は、さらなる計算で使用するために、要求者(例えば、患者の個人ログまたはDSSなど)に提供することができる。
【0033】
別の方法として、推定総注射量(組み合わされた信頼値のサイズに関わらず)は、組み合わされた信頼値と組み合わせて提供されてもよく、これは患者またはシステムが信頼性レベルを考慮して結果を評価することを可能にする。
【0034】
さらに、組み合わされた信頼値が現在のセッションに対して所与の閾値を上回るとき、セッションはそのようにラベル付けされてもよく、それによって、予想される総注射量分布の平均値および分散値は、ラベル付きセッションのみからの履歴分注データに基づき、これは、計算値の信頼性および精度の改善を提供する。セッションがラベル付けされていない場合、システムは、セッションにラベル付けするようにユーザーに促して、セッションを将来の計算に使用できるようにする。
【0035】
組み合わされたパターン重みは、履歴分注データに基づくプライミング確率因子、プライミング差異因子、および3回以上の分注を有するセッションに対するセッション内の分注間隔因子、から成る群からの一つ以上のさらなる因子の積であってもよい。
【0036】
例示的な実施形態では、取得された分注記録は、所与の分注イベントをボーラスイベントまたは基礎イベントとして識別するための識別子を含み、これは、方法のルールおよびパラメータを、ボーラスレジメンのみ、基礎レジメンのみ、またはボーラスレジメンおよび基礎レジメンで生成された分注データとともに使用するように適合させることを可能にする。
【0037】
セグメント化は、時間パラメータのセットおよび時間尺度のセットによって制御されてもよく、分注イベントのシーケンスにおける初回分注イベントは、セッションを開始し、かつタイマーをゼロにし、次の分注は、セッション時間ウィンドウが経過するまでこのセッション内に自動的に含まれるが、ただし、(i)結果として得られるセッション長さと結果として得られるセッションの両側でのセッション間の長さとの間の比がセッション長さの比よりも小さく、かつ(ii)結果として得られるセッション長さがセッションウィンドウ最大値より小さいという表現が真である、という条件で、より以降の分注が含まれ、セッション内の分注イベントのシーケンスが、分注イベントのセットを画定し、かつ各分注イベントが、分注された医薬の量である対応する分注サイズを含み、表現がもはや真ではないことに応答して、新しいセッションが開始される。
【0038】
本発明の特定の態様では、クエリー分注データセットのデータ品質を向上させるためのコンピューティングシステムが提供される。システムは、一つ以上のプロセッサおよびメモリを備え、メモリ内には、一つ以上のプロセッサによって実行されたとき、分注データの分注データ品質を向上させるためのクライアントの要求を受信したことに応答して方法を実行する命令が保存され、方法は、
治療レジメンを適用するために対象者によって使用される一つ以上の注射装置から、分注データセットを取得する工程であって、時間経過にわたって取られた複数の分注記録を含む分注データセットが、(i)一つ以上の注射装置内のそれぞれの注射装置を使用して対象者によって分注された自動的に取得された医薬の量を含む、それぞれの分注イベントであって、分注イベントが、注射イベントまたはプライミングイベントのうちの一つであり、プライミングイベントが注射イベントの準備である任意の分注イベントであり、かつ注射イベントが分注イベントであり、医薬が対象者へと注射されたと推測される、分注イベント、(ii)それぞれの医薬分注イベントの発生に伴い、それぞれの注射装置によって自動的に生成される、対応する自動的に取得された時間的経過内の分注イベントのタイムスタンプを含む、工程と、
分注データセットを複数のセグメントへとセグメント化する工程であって、各セグメントがセッションを含む工程を含み、
各それぞれのセッションが、時間通りにクラスター化された分注データセットの分注イベントのシーケンスを含み、その時間の間に、ユーザーが一つ以上の注射イベントを実施することを意図し、かつ分注イベントのシーケンス内の分注イベントのうちの一つ以上を、注射イベントとして解釈することができ、
現在のセッションに対して、
(i)以前のセッションに基づき、かつ時間重みを設定することによって予想用量および対応する分散を取得することであって、時間重みが、時刻、セッション間の時間、およびセッションの経過年数における類似性に関連する、取得すること、または、
(ii)用量ガイダンスに基づいて、案内される用量および対応する分散を取得することと、それによって、
セッション用量に対する以前の用量に基づく確率分布を提供する工程と、
許容される分注パターンのセットをリストする工程であって、分注パターンがプライミングイベントおよび注射イベントの特定のシーケンスであり、それによって各分注パターンが、現在のセッション中の分注イベントの解釈であり、分注された医薬の量とともに、セッション注射用量の推定を提供することができる、リストする工程と、
以前のセッションのプライミング確率または分注イベント間のセッション内の時間長さに基づいて、現在のセッションの分注イベントのセットにおける、パターン重みを計算する工程と、
分注サイズに基づいてパターン確率を計算する工程であって、分注サイズが大きいほど、注射イベントである可能性がより高く、プライミングイベントである可能性が低い、計算する工程と、
パターン重みおよび分注サイズに基づくパターン確率に基づいて、組み合わされたパターン確率を計算する工程と、
分注サイズに基づいて可能性のある用量をリストする工程であって、可能性のある用量が注射イベントであると想定される分注イベントのうちの一つ以上の組み合わせである、リストする工程と、
可能性のある用量の各々に対して、一つ以上の可能性のあるパターンおよび対応する組み合わされたパターン確率を特定し、かつ一つ以上の対応する組み合わされたパターン確率の合計を計算して、組み合わされたパターン確率の合計を提供する工程と、
可能性のある用量の各々について、組み合わされたパターン確率の合計と、確率分布に基づいて以前の用量から以前に取得された対応する用量とに基づいて、可能性のある用量の組み合わせ確率を計算する工程と、を含み、
可能性のある用量の最も高い組み合わせ確率をもたらす可能性のある用量が、最大尤度用量が指定される可能性が最も高いセッション用量であり、各セッションの可能性が最も高いセッション用量の提供が、分注データセットの品質を向上させ、かつ信頼性の高い自動意思決定支援を可能にする。
【0039】
このようにして、分注サイズに基づくパターン確率を含む技術的情報を使用して、分注データセットの品質を自動的に向上させることができる。パターン確率に関する技術的情報は、異なるパターン重みと組み合わせることができ、そしてその後、セッション用量確率に変換され、セッション用量の以前の確率分布と組み合わせることができる。用量セッションの最大尤度推定を含む、分注データセットの向上したデータ品質は、意思決定支援システムのさらなる工程で入力として使用することができ、強化された品質を有するデータセットは、基となっている向上していない分注データの出力と比較して、意思決定支援システムの最終データ出力の向上した品質を提供する。
【0040】
セグメント化は、時間パラメータのセットおよび時間尺度のセットによって制御されてもよく、分注イベントのシーケンスにおける初回分注イベントは、セッションを開始し、かつタイマーをゼロにし、そして次の分注は、セッション時間ウィンドウが経過するまで、このセッション内に自動的に含まれるが、ただし、(i)結果として得られるセッション長さと結果として得られるセッションの両側でのセッション間の長さとの間の比がセッション長さの比よりも小さく、かつ(ii)結果として得られるセッション長さがセッションウィンドウ最大値より小さいという表現が真である、という条件で、より後の分注が含まれ、
セッション内の分注イベントのシーケンスが、分注イベントのセットを画定し、かつ各分注イベントが、分注された医薬の量である対応する分注サイズを含み、かつ
表現がもはや真ではないことに応答して、新しいセッションが開始される。
【0041】
さらなる態様では、方法は、最大尤度用量に対する信頼性スコアのセットを計算し、最も小さい信頼性スコアが信頼性閾値よりも大きいかどうかを評価し、信頼性評価が真であることに応答してセッションを自動的にラベル付けすることをさらに含む。
【0042】
さらなる態様では、ラベル付けは、現在のセッションに分注パターンを割り当てることを含み、割り当てられた分注パターンは、最大尤度用量をもたらす一つ以上の分注パターンの可能性が最も高い分注パターンである。
【0043】
さらなる態様では、本方法は、信頼性評価が偽であることに応答して、ラベル付けされていないセッションにラベル付けする工程をユーザーが確認することをユーザーに要求することをさらに含む。
【0044】
さらなる態様では、方法は、推定される最大尤度用量のうちの一つ以上に基づいて、推奨用量を自動的に提供することをさらに含む。
【0045】
【図面の簡単な説明】
【0046】
以下では、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1A図1Aはペン式装置を示す。
図1B図1Bはペンキャップを取り外した図1Aのペン式装置を示す。
図1C-1D】図1Cおよび図1Dは、薬剤送達装置から用量分注データを収集するためのアドオン装置の概略図を示し、薬剤送達装置も図上に示される。
図2A-2G】図2A図2Gは、患者に対する基礎研究データセットからの基礎セッションに基づいて、分注データ品質を向上させる方法の例示を集合的に図示する。
図3A-3D】図3A図3Dは、患者に対するボーラス研究データセットからのボーラスセッションに基づいて、分注データ品質を向上させる方法の例示を集合的に図示する。
図4A図4Aは、例示的なアルゴリズムに対するフローチャートを示す。
図4B図4Bは、セッションごとの異なる分注に対する潜在的なパターンを示す。
図4C図4Cは、重み因子対分注サイズ関数の例を示す。
図4D図4Dは、異なるセッションパターンに対する潜在的な用量サイズのアウトカムを示す。
図5A図5Aは、示されるように、データ収集装置は、一つ以上の注射装置からデータを収集することができ、また一部の実施形態では、対象者からグルコースデータを測定する一つ以上のグルコースセンサーから血糖データも収集することができ、一つ以上の注射装置は、治療レジメンに従って、対象者によって血糖調節薬剤を注射するために使用され、上記で特定された構成要素は相互接続され、任意選択的に通信ネットワークを通して、本開示の一実施形態に従い、データ収集装置から収集されたデータのストリームを処理するための意思決定支援システムを含む、例示的なシステムトポロジーを図示する。
図5B図5Bは、本開示の実施形態による意思決定支援システムを図示し、意思決定支援システムは、プロセッサおよびメモリを備え、システムは、一つ以上の注射装置から取得された分注データのデータ品質を向上させるために適合される。
図5C図5Cは、データ収集装置から取得された分注データのデータ品質を向上させるための本開示による方法を図示し、データ品質を向上したデータは、意思決定支援システムによって使用するために構造化される。
図6-17】図6図17は、図5Cに示される分注データ品質を向上させる方法の一般的な態様を集合的に図示する。
図6-7】図6および図7は、図5Cに示される分注データ品質を向上させる方法におけるデータのセグメント化の工程を集合的に図示する。
図8A-8D】図8A図8B図8C、および図8Dは、以前のセッションの情報に基づいて、予想用量を決定する工程を集合的に図示する。
図9A-9B】図9Aおよび図9Bは、以前のセッションからの時間データに基づいて、用量確率を取得する工程を集合的に図示する。
図10図10は、分注の数および選択ルールに基づいて、許容可能な分注データを取得する工程を図示する。
図11A-11B】図11Aおよび図11Bは、集合的に、許容可能なパターンに対してパターン重みを設定する工程である。
図12A-12B】図12Aおよび図12Bは、分注サイズに基づいて許容可能なパターンのパターン確率を計算する工程を集合的に図示する。
図13図13は、パターン確率を更新するさらなる工程を図示する。
図14図14は、パターン確率を用量確率へと変換するさらなる工程を図示する。
図15図15は、以前のセッションからの時間データに基づく用量確率を用いて用量確率を更新するさらなる工程を図示する。
図16図16は、信頼性指標に基づいて信頼性スコアを計算するさらなる工程を図示する。
図17図17は、セッションにラベル付けするかどうかを決定するさらなる工程を図示する。
図18図18は、多数の分注セッションを含む患者調査プロットを図示する。
図19A-19K】図19A図19Kは、図18のプロットからのセッションに基づいて、分注データ品質を向上させる方法の例示を集合的に図示する。
【0047】
図において、同様の構造物は、主として同様の参照番号によって特定される。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下で「上方」および「下方」、「右」および「左」、「水平」および「垂直」などの用語、または類似の相対表現が使用される場合、これらは添付の図を参照するのみであり、必ずしも実際の使用状況ではない。示される図は、概略図であり、そのため、その相対寸法だけでなく、異なる構造の構成も、例示的な目的でのみ機能することが意図される。部材という用語が所与の構成要素に対して使用される場合、1つ以上の機能を有する単一構成要素または構成要素の一部分を定義するために使用することができる。
【0049】
以下の詳細な説明では、本開示の完全な理解を提供するために多数の具体的な詳細が記載されている。しかしながら、本開示はこれらの特定の詳細を用いずに実施されてもよいことが、当業者には明らかであろう。他の事例では、実施形態の態様を不必要に不明瞭にすることがないように、周知の方法、手順、構成要素、回路、およびネットワークは詳細には説明されていない。
【0050】
また当然のことながら、第一、第二などの用語が本明細書では様々な要素を記述するために使用される場合があるが、これらの要素はこれらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、一つの要素を別の要素と区別するためにのみ使用される。例えば、本開示の範囲から逸脱することなく、第一の対象者は第二の対象者と称される可能性があり、同様に第二の対象は、第一の対象と称される可能性がある。第一の対象者および第二の対象者は両方とも対象であるが、同じ対象者ではない。さらに、「対象者」、「ユーザー」、および「患者」といった用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「場合(if)」とは、文脈に応じて、「ときに(when)」または「際に(upon)」または「決定に応じて(in response to determining)」または「検出に応じて(in response to detecting)」を意味すると解釈され得る。同様に、語句「決定される場合」または「〔記載の状態または事象〕が検出される場合」とは、文脈に応じて、「決定する際に(upon determining)」、または「決定に応じて(in response to determining)」、または「〔記載の状態または事象〕を検出する際に(in response to detecting [the stated condition or event])」、または「〔記載の状態または事象〕の検出に応じて(in response to detecting [the stated condition or event])」を意味すると解釈され得る。
【0052】
本発明それ自体の実施形態へ戻る前に、予め充填された薬剤送達装置の一実施例が説明され、こうした装置は本発明の例示的な実施形態の基盤を提供する。図1図3に示されるペン型の薬剤送達装置100は、「一般的な」薬剤送達装置を表す場合があり、実際に示される装置は、デンマークBagsverdのNovo Nordisk A/Sによって製造および販売される、FlexTouch(登録商標)の予め充填された薬剤送達ペンである。
【0053】
ペン式装置100は、キャップ部品107と、薬剤排出機構がその中に配設または統合されているハウジング101を有する近位本体または駆動組立品部分を有する主要部分と、遠位の針貫通可能な隔壁を有する薬剤充填透明カートリッジ113が、近位部分に付着された取り外し不可能なカートリッジホルダーによって定位置に配設され保持される遠位カートリッジホルダー部分とを備え、カートリッジホルダーは、カートリッジの一部分が検査されるのを可能にする開口部、ならびに針組立品が取り外し可能に設置されるのを可能にする遠位連結手段115を有する。カートリッジには、排出機構の一部を形成するピストンロッドによって駆動されるピストンが提供されており、例えば、インスリン、GLP-1または成長ホルモン製剤を含んでもよい。多数の軸方向に配向された溝182を有する最も近位の回転可能な用量設定部材180は、表示ウィンドウ102に示される望ましい用量の薬剤を手動で設定する役割をし、その後、ボタン190が作動したときに薬剤を放出することができる。ウィンドウは、面取りされた縁部分109および用量ポインタ109Pによって囲まれたハウジング内の開口部の形態であり、ウィンドウは、らせん状に回転可能なインジケータ部材170(スケールドラム)の一部分を観察することを可能にする。薬剤送達装置内に具体化される排出機構のタイプに応じて、排出機構は、実施形態に示されるように、用量設定中に変形され、その後、解放ボタンが作動したときに解放されてピストンロッドを駆動するばねを備えてもよい。別の方法として、排出機構は完全に手動であってもよく、その場合、例えば、Novo Nordisk A/Sによって製造および販売されるFlexPen(登録商標)のように、設定された用量サイズに対応する用量設定中に、用量部材および作動ボタンを近位に移動し、次に、設定用量を排出するためにユーザーによって遠位に移動する。
【0054】
図1Aおよび図1Bは、予め充填されたタイプの薬剤送達装置を示し、すなわち、これは予め設置されたカートリッジを有して供給され、カートリッジが空になったとき廃棄されるが、代替的な実施形態では、薬剤送達装置は、充填されたカートリッジと交換することが可能であるように、例えば、カートリッジホルダーが装置主要部分から取り外されるように適合された「後方装填式」薬剤送達装置の形態で、または別の方法として、カートリッジが遠位開口部を通して装置の主要部分に取り外し不可能に取り付けられたカートリッジホルダー内に挿入される、「前方充填式」装置の形態で設計されてもよい。
【0055】
図1Cおよび図1Dは、予め充填されたペン型の薬剤送達装置200の組立品、およびそのために適合されたアドオン用量ロギング装置300の概略図を示す。アドオン装置は、ペン式装置ハウジングの近位端部分上に設置されるように適合され、図1Dに示す取り付けられた状態でのペン式装置上の対応する手段を覆う用量設定および用量解放手段380が提供される。示される実施形態で、アドオン装置は、薬剤送達ハウジング上に軸方向に取り付けられ回転方向に係止されるように適合された連結部分385を備える。アドオン装置は、回転可能な用量設定部材380を備え、これは、用量設定中に、アドオン用量設定部材の回転移動がいずれの方向でもペン式用量設定部材に伝達されるように、ペン式用量設定部材280に直接的または間接的に連結される。用量排出中および用量サイズ決定中に外部からの影響を低減するために、外側アドオン用量設定部材380は、用量排出中、ペン式用量設定部材280から回転方向に連結を外すことができる。アドオン装置は、遠位側に移動し、これによってペン式解放部材290を作動させることができる用量解放部材390をさらに備える。ユーザーによって把持され回転されるアドオン用量設定部材390は、それと回転方向で係合するペン式ハウジングに直接取り付けられてもよい。国際特許公開公報第2019/162235号は、例示的なアドオン用量ロギング装置を開示している。用量ロギング回路および無線通信が統合された薬剤送達ペン式装置の一例は、Novo Nordisk A/Sによって製造および販売されるNovoPen(登録商標)6である。
【0056】
データ品質を向上させるシステムについて最初に説明された機能を提供するアルゴリズムの一般的な説明が提供される前に、それぞれインスリン分注の基礎的なボーラスセッションを取り上げる二つのウォークスルー例が提供される。
【0057】
[実施例1]
[基礎ウォークスルー]
基礎ウォークスルーは、インスリン基礎研究データセット(プロジェクト「Mustang」)におけるユーザー#8511の7つのセッションを取り上げる。ウォークスルーは、アルゴリズムのいくつかの重要な特徴を示すため、セッション11で終わる。実施例は、以前のデータだけでなく信頼値および追加のパターン重みも利用する。
【0058】
実施例は、セッション1~4および関連する計算はセッション5と類似しているので、セッション5から開始する。さらに、示される実施例では、セッション1~4は、ignoreFirstSessionsパラメータに対応するラベル付けされていない。下記参照のこと。
【0059】
セッション5‐図2A
このセッションは二つのインスリン用量記録{2,30}を含む。左上隅に示されているように、セッションは火曜日の01:04(すなわち、夜)に記録され、30秒続いた。前回セッションからの時間は23時間42分であり、次回のセッションまでの時間(基礎研究設定における)は24時間31分であった。「パターン列挙」のルールによると、可能性のある解釈(パターン)は、piとiiの二つのみである。これらの可能性を、様々な基準によって評価し、これを、以下の「パターン重み」サブプロットに要約した:
【0060】
パターンpiはプライミングを伴うが、iiは伴わない。このユーザーはプライミングする傾向があり(右上のテキストブロックのpProb=0.76)、そのためpiはプライミング重み因子>1を得、iiはプライミング重み因子<1(ハッチング付きの下向きのバー、PrimeProb)を得る。
【0061】
分注サイズを見ると、piはiiより可能性が高いパターンである。2単位の分注は注射に対して非常に小さいが、プライミングに対して予想するものと正に同じであるからである。サイズベースの分析は、一番下の列の曲線に示されており、この曲線は、重み因子対分注サイズをプロットしており、バブルは、2および30の分注サイズにおいて、これらの曲線上のサンプリング点を表す。いくつかの構成可能なパラメータに依存するこれらの曲線の生成に対するルールは、例示的なアルゴリズムの説明において下記で詳述される。iiの事例では、2単位の「候補注射」は、依然としてスコアは非常に低いが、30単位候補注射(固体)よりもはるかにより迅速に上昇する曲線(点線)を有することに留意されたい。2回の注射が異なるサイズである分割用量を正しく解釈するために、これは意図的なことである。バブルの積(piについては約4、iiについては0.4)は、サイズベースの重み因子(円パターンのバー、DispSize)を構成する。
【0062】
差異重み因子(ハッチング付きの上向きのバー、Disparity)は、基礎インスリンには使用されない。セッション内の間隔分析(水玉模様のバー、DispItvl)は、基礎インスリンに対して使用されるが、3回以上の分注のセッションに対してのみ使用される。したがって、全体的なパターン重み(黒塗りのバー、Overall)は、単にサイズ重みおよびプライミング重みの積である。
【0063】
空の履歴サブプロットおよび全体のプロット表題における「exp -- u」によって示されるように、このセッションに対して予想用量がないことに留意されたい。予想用量を計算するための十分な履歴がないので、予想用量は存在しない: 予想用量は、ある特定の類似性基準を満たす過去のラベル付けされたセッションからの用量の加重平均であり、アルゴリズムは、それらの重みの合計が何らかの最小閾値(構成可能なパラメータ、この場合は3.0)に達するまで、予想用量を宣言しない。ここでは、以前のラベル付きセッションがないので、履歴重みの合計は0.0である。
【0064】
濃灰色のバーがある上のグラフは、このセッションに対する用量サイズの最終的な確率(「事後分布」)を示す。これは、正にパターン重みであり、用量サイズへと変換され(piは30の用量ということになり、一方でiiは32の用量ということになる)、合計すると1になるように正規化される。このセッションに対して予想用量がある場合、それは予想用量の分散推定値に基づく分散を用いて、予想用量を中心とするガウスの「事前分布」として明示されることになり、これを濃灰色のバーの上に点線の曲線としてプロットすることになる。以前のものがある場合、正規化の前にパターン重みの結果で乗算されることになる。この場合、予想用量がないため、以前のものは一様分布として取られ、したがって、事後と呼ぶ濃灰色のバーには効果を有しない。
【0065】
推定用量は30単位である。アルゴリズムは、セッションの結果に対する信頼性が信頼性の閾値(構成可能なパラメータ、ここでは70%)よりも大きいため、正式にセッションにラベル付けすることになる。信頼性は、濃灰色のバーグラフの右側にあるテキストブロックに示されているように、最小で4つの指標である。データ信頼性は、成功パターン(ここではpi)の全体的な妥当性の尺度であり、これはセッション中の分注の数によって正規化された成功パターンの緑色のバーと等しい。予想用量信頼性は、予想用量と推定用量との間の差異に依存する(予想用量がないため、このセッションには適用されない)。曖昧性の信頼性は、分布の最大値、別名推定用量(ここでは30)が、その他の用量(ここでは32)のうちの一つにあまりにも近い確率を有する場合、事後分布のピークの「ピーキネス(peakiness)」に依存し、曖昧性が高いと言われ、そして曖昧性の信頼性は損なわれる。プライミング信頼性は、成功パターンにおけるプライミング挙動と、過去の挙動に基づいて計算されたプライミング確率との間の一貫性を測定する(ここでは0.76)。四つの指標はすべて構成可能な重みを有し、またこのシミュレーションではプライミング信頼性はオフになっているため、常に100%と読まれることになる。
【0066】
セッション6‐図2B
セッション分析は、セッション5とほぼ同一である。プライミング確率が上昇している(これでは0.81)ことに留意されたい。これにより、以前よりもわずかに高い(piに対して)、および低い(iiに対して)パターン重みで、ハッチング付きの下向きのPrimeProbバーが作成される。これにより、全体的なパターン重みがわずかにより明確になり、事後分布において30単位と32単位との間でわずかにより大きい確率の差異がもたらされる。(セッション5では、曖昧性の信頼性が95%に対して96%であり、データスコアもより高いことに留意されたい。)予想用量は依然として存在しないが、履歴は蓄積し始めている(重みの合計=0.8)。
【0067】
セッション7~9-図2C図2E
これらのセッションは、セッション6からのトレンドを継続する。ユーザーの挙動は全く同じなので、セッション9ではプライミング確率が0.89に上昇し、履歴の重みは2.9に達し、ほぼ3.0である。3.0は予想用量を有するために必要とされる値である。信頼性も上昇しているが、飽和レベルに近づくにつれて、よりゆっくりと上昇している。
【0068】
履歴重みサブプロットの曲線は、過去のセッションの(最終的な)加重平均で使用される類似性基準を示す:経過年数は、最近のセッションをより古いセッションよりも重み付けする単純な指数関数的減衰であり、TODは、時刻(time of day)の略語であり、これは現在のセッションと類似した時刻に発生した過去のセッションを優先的に重み付けし、ギャップは、現在のセッションの先行するギャップと類似した先行するギャップを有する過去のセッションを優先的に重み付けする、前回のセッション(「先行するギャップ」)以来の時間を指す。
【0069】
セッション10‐図2F
ユーザーの挙動は依然として同じであり、またこれでは予想用量を30単位と宣言するのに十分な履歴がある。これでは、30単位を中心とするガウスの事前(点線の曲線)があり、これは、予想される30単位からはるかに離れている用量の可能性を抑制する傾向がある。これは、セッション分注がこれほど明快でない場合にアルゴリズムをより堅牢にし、これは次回のセッションで明らかになる。ガウス事前の分散は、少なくとも「minVariance」(構成可能なパラメータ)に制約され、これは、ここでのように、ユーザーは1回の用量で100%一貫してよいにもかかわらず、ユーザーは依然として任意の時点で異なる用量サイズに漸増する可能性があり、またアルゴリズムがこれらの段階的な変化に順応する必要があるという理由から、必要である。
【0070】
履歴の重みは以下のとおりである(セッション5~9が含まれ、すべてがラベル付き)。
経過年数: [0.706、0.758、0.813、0.869、0.934]
時刻: [0.972、1.000、0.998、0.968、0.997]
前回セッションからのギャップ: [0.999、0.944、0.982、0.957、0.892]
全体(積): [0.685、0.715、0.796、0.805、0.831](合計=3.83)
【0071】
セッション11‐図2G
分注パターン{2,15,10,15}は、ねじりを用いた古典的な分割用量である: 3回目の分注はプライムであるか、または注射であるか? アルゴリズムは複数の基準を考慮し、それが協力して答えに到達するように作動する。
【0072】
パターン列挙は、考慮する必要のある七つの異なるパターンをもたらす。(パターン列挙の態様は、構成可能なパラメータである。)一見すると、パターン重みサブプロット内の黒塗りのバーは、piiiが最も高い重みを有し、続いてpipi、次いでpppiであることを示す。その他の可能性は、はるかに低く重み付けされている。一番下には、サイズベースの重み曲線のうちの四つを表示するスペースのみがあり、そのため上位四つのパターンが示されていることに留意されたい。
【0073】
ユーザーのプライミング確率は0.92であり、これらのパターンのすべてがプライミングを伴うので、上位パターンはすべて、プライミングで高いスコアを示す(ハッチング付きの下向きのバー、PrimeProb)。
【0074】
候補注射として取られた場合、第3の分注は、最大で10単位だけすでに上昇している[灰色の点線]曲線を有するので、パターンpiiiは最も高いサイズベースの重みを得る。(灰色の曲線は、両方とも15単位候補注射であるため、実曲線に重なることに留意されたい。)パターンpipiは、サイズベースの重みははるかに低いが、候補注射に対する曲線と候補プライミングに対する曲線との間の交点は、およそ8単位であることが留意される。この交点は、セッション中の分注のサイズに応じて適合可能であり、また10単位の候補プライムが少なくともチャンスを得ることを意味する。
【0075】
基礎に対しては、フローチェックS曲線の交点(確率および統計で一般的に使用され、かつerf()と略される誤差関数の使用を介して実行される、下記参照)は、疑わしい用量、セッション中の注射の数、および履歴平均フローチェックサイズに基づいて、特定の式に従って計算される。疑わしい用量は、履歴成分からの予想用量、履歴的な平均注射サイズ、および現在のセッションにおける最大分注値に基づく。これらのすべての要因により、S曲線の交点は、その特定のユーザーに対して、その履歴に基づいて変更することができる。
【0076】
このセッションには三つ以上の分注があるので、セッション内の間隔分析(水玉模様のバー、DispItvl)が動作する。この分析は、一連の1回以上のプライムから注射へと切り替えるときの時間遅延は、通常プライム間での時間遅延より長いという統計的観察に基づく。pipiとpiiiは両方とも、これに基づいて、1より大きいDispItvl重み因子を有するが、pipiは、最も高い重み因子を有し、これは、その低いサイズベースの重み因子をいくらか軽減する。パターンpppiは、1より小さいDispItvl重み因子を得、これはその全体的なパターン重みをさらに減少させる。(pppiとpipiが、ほぼ同様のプライミングとサイズベースの重み因子を有していたことに留意されたい。)
【0077】
履歴の重みは以下のとおりである(セッション5~10が含まれる、すべてラベル付き)。
経過年数: [0.660、0.708、0.759、0.812、0.872、0.935]
時刻: [1.000、0.981、0.960、1.000、0.957、0.975]
前回セッションからのギャップ: [0.987、0.861、0.923、0.996、0.791、0.979]
全体(積): [0.651、0.598、0.673、0.808、0.661、0.892](合計=4.28)
【0078】
パターン重みのみに基づいた成功パターンは、依然としてpiiiであり、これは正しくなく、pipiが僅差での2位である。予想用量がない場合、30(pipi)単位用量と40(piii)単位用量の間の確率が近いので、曖昧性の信頼性は低いことになる。幸いなことに、40単位用量の確率を事実上ゼロに減少させ、30(pipi)を成功とする、予想用量がある。信頼性スコアの制限因子は、89%のデータ信頼性であり、これは依然として良好であるが、pipiの全体的に平凡なパターン重みのために通常より低いことに留意されたい。これは、アルゴリズムが予想用量によって「保存」された場合に、アルゴリズムが信頼されすぎないようにするための保護機能であるが、このパターンは本来妥当ではない。例えば、第3の分注が10単位ではなく15単位だった場合、pipiのパターン重みははるかにより低かったことになる(pipiの下の点線の灰色のサイズ曲線上のバブルが10から15に移動する)。その場合、アルゴリズムは、データ信頼性検定に失敗し、セッションのラベル付けを控えることになる。これは、例示的なアルゴリズムの設計目標を図示しており、経験豊かな人間の解釈者が確信を持てない場合、セッションのラベル付けを試みてはならない。
【0079】
[実施例2]
[ボーラスウォークスルー]
このウォークスルーは、インスリンボーラス研究データセットにおけるユーザー#3821に対する四つのセッション(102~105)を取り上げる。ボーラス薬剤分析は基礎よりもわずかに複雑であるため、このウォークスルーは上記のユーザー#8511に対する基礎ウォークスルーに基づいて構築される。そのウォークスルーは、例示的な「完全な」アルゴリズムの以下の詳細な説明とともに、実施例の完全に理解のために必要である場合がある。
【0080】
セッション102‐図3A
このセッションは{2,6.5}で、研究においてユーザーはプライムとして報告し、それに続いて注射が行われ、アルゴリズムは同じ結論に達し、高い信頼性(91%)が得られ、それ故にセッションにラベル付けがなされた。6.5単位の注射は、実際にはボーラスデータで典型的に遭遇するもののうちの高めのものであり、1単位または2単位となる注射が、プライミング分注(フローチェック)とほぼ同じサイズになることは、珍しいものでは全くない。この分注サイズに基づく簡単な区別の欠如は、アルゴリズムの基礎バージョンとボーラスバージョン間の差異のほとんどを駆動するものである。
【0081】
許容可能なパターンは基礎に対するものと同じであるため、二つの分注に対しては、可能性はpiおよびiiである。パターン重みは、ボーラスに対する四つの重み因子(プライミング差異、セッション内の分注間隔、プライミング確率、および分注サイズ)すべての積であるが、プライミング差異は、可能性のあるパターンのうちの一つに二つ以上のプライミングがない限り意味を有しないため、このセッションでは、その重み因子は一つであり、それ故に、パターン重みサブプロットにおいてバーは見えない。同様に、セッション中に少なくとも3回の分注があり、そのため重みも1でない限り、分注内の間隔は意味を持たない。他の2つの重み因子を見ると、
【0082】
1)パターンpiはプライミングを伴うが、一方でiiは伴わない。このユーザーは、非常に一貫してプライマーを行うため(pProb=1.00)、piはプライミング重み因子>1を得、またiiはプライミング重み因子<1(ハッチング付きの下向き、PrimeProb)を得る。これは基礎アルゴリズムと同じである。
【0083】
2)パターンpiはまた、最も高いサイズベースの重み因子(DispSize、円パターンのバー)を得、左下の“pi”プロット内の円から判断して、約4である(1.9*1.9=約4)。代替的なiiは、ちょうど1のサイズベースの重み因子を得る。重み因子は、依然としてプロットの一番下の行にあるサイズ曲線上で、白丸によって表される試料の積として計算される。しかしながら、曲線自体はボーラスに対して異なる。
【0084】
一つのルールは、候補注射が、“pi”プロットの実線の曲線で見られるように、1未満の重みを決して受けないことである。これは、大きい分注が注射である可能性が高いことは依然として真であるが、一方で小さい分注がプライムである可能性が高いことは「真ではない」ためであり、したがって、その注射(複数可)が小さい分注(複数可)に対応するという理由だけでパターンの重みを少なくすることはできない。1より大きい重みは「可能性が高い」ことを表し、1より小さい重みは「可能性が低い」ことを表し、ちょうど1の重みは中立を表すということを思い起こされたい。
【0085】
候補注射に対するサイズ曲線はまた、パターン中の候補プライムの平均サイズに応じてシフトされることにもなる(詳細は、例示的なアルゴリズムの下記の詳細な説明を参照)。注射曲線を可能な限り早く上昇し始めさせることがその狙いであるが、プライミング分注に使用されるサイズの後にのみ開始される。
【0086】
パターン内に候補プライムがない場合(このセッションではパターンiiの場合)、すべてのサイズ重みは1のままにされる。代わりに、デフォルトの注射サイズ曲線を使用することが可能であり、これによって、分注が大きいときにパターンの重みを多くすることが可能であるが、注射曲線は1より小さくなる可能性がないので、プライムパターンを有しない不公平な利点を与えるというリスクをもたらすことになる。この場合、単にサイズ重みを1と等しいままにしておくことは、より信頼性が高いことが見いだされた。
【0087】
ガウス用量の事前分布(上方のサブプロットの点線の曲線)が非常に幅広いことに留意されたい。履歴的な用量は結果的に将来の不十分な予測因子であることが判明し、これがボーラスデータの特徴である。一般に、すべての履歴的な用量が、その加重平均で組み合わされる場合(時刻の類似性、最後の用量からのギャップの類似性、およびセッションの経過年数による重みを伴う)、推定された分散は高く、そのためガウスの用量事前は幅広い。この場合、事前分布は実際には間違ったパターン(ii)を好むが、効果は小さく、またアルゴリズムを正しい答えから高い信頼性で守るには十分ではない。
【0088】
セッション103‐図3B
セッション分析は、セッション102とほぼ同一であるが、今回は予想用量が異なり、実際の用量により近い。このセッションは、完全に異なる時刻(12:18対00:59)で生じ、前回セッションからのギャップも異なる(11:18対03:58)ため、予想用量計算における加重平均は、過去のセッションの異なるグループを強調する。概して、これが予想用量をより正確に作成するかどうかを考察することができる。しかしながら、外部用量ガイダンス情報が存在しない場合、履歴によることは正当なアプローチである。
【0089】
より正確な用量事前は、および具体的には事前のピーク(5.4単位)が、次に最も可能性が高い用量(パターンiiからの8.5単位)からの正しい用量の反対側にあることは、用量事前が、誤った用量を犠牲にして正しい用量を強調していることを意味する。これは、セッション102と比較して、97%の曖昧性の信頼性スコアに反映される、二つの間の曖昧性を低減させた。
【0090】
セッション104‐図3C
これもまた、セッション102および103と類似しており、さらにより良好な予想用量(実際の7単位に対し6.7単位)である。予想用量加重平均で使用された過去のセッションの群は、異なる時刻(16:20対00:59および12:18)を理由に、ここでも異なる。この証拠として、履歴重みの合計が急に2倍近くになり、19.2になったことに留意されたい。これは単に、平均でより多くの「類似」セッションが利用可能であったことを意味する(時刻、前回セッションからのギャップ、および経過年数に基づく)。おそらく、このユーザーは、00:00または12:00よりも16:00の近くでより頻繁に投与する。
【0091】
セッション105‐図3D
分注パターン{2,7,2,2,4}は分割用量と思われ、カートリッジ交換が原因である可能性が高い。分注の数が多いほど、パターン重みに関する良好なケーススタディとなる。
【0092】
アルゴリズム分析によって許容される10個の異なるパターンがあり、パターン重みグラフを読むのは少し難しい。まず、5つのバーすべてが使用されていることに留意されたい。4つの重み因子とその積(全体的な重み)である。また、可能性のあるパターンが10個あるが、それらのうちの四つについてサイズベースの重み付け曲線を示すためのスペースしかないため、上位四つのみを示す(最も高い四つの黒塗りのバーに対応し、全体的な重みが最も高いものから最も低いものへとソートされる)。
【0093】
1)候補プライムが一致しない場合、パターンにペナルティを科すために「プライミング差異」(ハッチング付きの上向きのバー、差異)が考案された。理論は、所与のユーザーが好ましいプライミング分注サイズを有し、この場合では2単位と思われる。パターン中の候補プライムがすべて同じサイズを有しない場合、プライミング差異の重み因子は、差異の量に応じて<1(ペナルティ)に設定される。(間違ったパターン(例えばppppiなど)は、自然に高い差異を有することになり、重みを少なくするのに役立つ。)最も高い可能性のある差異重みは、単純に一つであり、すなわち、この重みはブーストを決して与えず、ペナルティのみを与える。
【0094】
2)セッション内の分注タイミング(水玉模様のバー、DispItvl)は適度に役立つ。タイミングのみに基づく可能性が最も高いパターンは、pipiiおよびpiipiであり、これは正しくないが、pippiは僅差の2位のスコアとなり、その他のパターンは、ほとんどペナルティ(1未満の重み因子)を受ける。
【0095】
3)ほとんどのパターンはプライミング(ハッチング付きの下向きのバー、PrimeProb)で良好なスコアとなる。ユーザーのプライミング確率が高いため(1.0)、注射から始まるパターン(先行プライミングなし)のみがペナルティを科される。
【0096】
4)正しいパターンは、4単位および7単位の両方の分注が候補注射曲線上で1より高いスコアとなるので、最も高いサイズベースの重み(円パターンのバー、DispSize)を得る。(この曲線は、一番下の行の左端プロットの灰色の大きい点線である。新しいパターンは、いくつであっても各分注に対して自動的に割り当てられるが、最初の4つの分注のスペースしかないため、灰色の大きい点線は凡例に表示されないことに留意されたい。灰色の大きい点線の曲線は、実線のi曲線の上にある。)その他の3つの高いランクを有するパターンはより低いスコアとなったが、それほど大幅に低くはない。これは、候補注射を1未満に重み付けしないことの結果であり、それ故にサイズベースの重みに対する最小限の費用で、2単位のプライムのいずれかを注射として「取る」ことが可能になる。
【0097】
三つの最も高いランクのパターン(pippi、pipii、およびpiipi)の全体的なパターン重みは、正しいパターンに対する重みよりわずかにのみ低い。この場合、二つのものによって答えが「保存」される。 第一に、予想用量(ガウス用量事前のピーク、一番上のプロットの点線の曲線)は、正しい用量の低いサイズ上にあり、一方で正しくない用量は高い側にあり、これは、正しい用量に対して正しくない用量にペナルティを科す。第二に、最も高いランクの正しくないパターンのすべては、注射として取られる2単位のプライムの各々に相当する13単位の[正しくない]用量をもたらす。これは、13単位の用量(事後分布、濃い灰色のバー)の確率を上昇させるが、二つ以上のパターンが同じ用量を結果としてもたらすこのような場合には、その用量ビンにおける可能性のうち最も高く重み付けされたもののみを使用して、曖昧性を計算する。それ故に、曖昧性の信頼性スコア(76%)は、事後確率のみから予想されるものよりも高い。
【0098】
ボーラスデータにおける分割用量の取り扱いは、難しいトピックである。特定をさらに改善するために、追加的なキュー、例えば、ユーザーの典型的なプライミング・分注サイズを使用してもよい。また、分割用量パターンの尤度を、ペン/カートリッジの既知の能力および前回分割用量が特定されたとき以来の分注した総量に基づいて推論することも可能である場合がある。
【0099】
次に、本発明のすべての異なる態様および任意選択を組み込んだ、アルゴリズムの例示的かつ包括的で「完全」なバージョンの詳細な説明が提供される。
【0100】
1.導入
アルゴリズムは、薬剤送達装置(例えば、インスリンペン)からの分注を、フローチェック(フローチェックとプライミングとは同意語として使用される)または注射のいずれかとして分類するためのアルゴリズムである。これは、装置からの未加工の分注データ(分注サイズおよびタイムスタンプ)以外には何も使用しないでこれを行う。
【0101】
アルゴリズムは、相互に関連するセグメント化、履歴、およびセッション分析の構成要素から成り、これは、入ってくるデータストリームを論理チャンク(セッション)へと分割し、各セッションに対する全体的な用量を推定し、履歴的な用量挙動を追跡するために作動する。これらの構成要素は、以下のセクションで説明される。
【0102】
フローチェック予測アルゴリズムを通したデータの流れは、以下のように要約することができる。まず、データをセッションへとセグメント化し、次に二つの平行分析を実施する。一つは患者の過去の挙動を分析するため、もう一つは現在のセッションを分析するためである。その後、このデータを組み合わせて推定用量を計算し、その後、この推定用量は、セッション、すなわち、セッション出力について最終的な決定が与えられる前に、一連の信頼性検定を通過する。
【0103】
アルゴリズムの完全なバージョンは、図4Aに概要を示し、「現在のセッションの証拠」フローチャートは、アルゴリズムのコア部分を表し、一方で「ユーザーの過去の挙動」フローチャートは、精度および信頼性をさらに改善するために、コアアルゴリズムに対する任意選択的な精緻化を表す。
【0104】
2.セグメント化構成成分
アルゴリズムへの主要な入力は、タイムスタンプ付きの一連の分注記録である。セグメント化モジュールは、以下を担当する:
・ 分注をセッションへとグループ分けし、セッションオブジェクトとして保存し、
・ セッションが完了した(これ以上の分注を追加することができない)とき、用量推定を自身で実行するようセッションオブジェクトに要求し、かつ
・ 用量推定後、セッションの概要(用量、分類された分注、信頼性など)を保存のために履歴モジュールに送信する
【0105】
セグメント化モジュールは、分注を保持するために必要に応じてセッションオブジェクトを作成し、かつセッションオブジェクトがもはや必要がなくなったときに破壊する責任を有するので、「セッションファクトリー」として考えられうる。各新しいセッションオブジェクトは、その分注のリスト、前回セッションの最後の分注以来の経過時間(先行するギャップと呼ばれる)、およびユーザーの第一のセッションに対して1で開始するシリアル番号で初期化される。
【0106】
セグメント化モジュールの寿命は、システム内のユーザーの寿命と等しく、そのため、より高いレベルのAPI(アプリケーションプログラムインターフェース)とインターフェースするアルゴリズムの一部である。
【0107】
セグメント化モジュールは、クライアントが新しい分注について通知するために使用する「分注の追加」方法を提供する。接続されたペンまたは他の薬剤送達装置の性質に応じて、これらの通知は、リアルタイムで、または何らかの後の時間にバッチで発生してもよい。唯一のタイミング要件は、セグメント化モジュールに、それらが起きたのと同じ順序で分注を追加しなければならないことである。順序外の分注は、セグメント化論理を混乱させる。
【0108】
セッションが完了したとき(セグメント化アルゴリズムによって決定される)、セグメント化モジュールは、セッションオブジェクトに、それ自体で用量推定を実行するように要求し、結果をクライアントに返し、セッションの概要を履歴モジュールに保存する。
【0109】
2.1 セグメント化アルゴリズム
アルゴリズムは、三つの構成可能なパラメータのみを使用する単純なクラスター化基準を用いて、分注をセッションへとグループ分けする。
の2つの期間は、セッションの最初の分注からカウントを開始し、また比である
は、必要とされるクラスター化の程度を制御する。
【0110】
一般性を失うことなく、時間
において単一の分注
で開始したばかりの一つのセッション
を考慮する。前回セッション
の最後の分注は、
で示され、時間
に発生した。次回セッション
の最初の分注は、
と呼ばれ、時間
に発生する。
【0111】
現在のセッションは分注
で開始する。後続の分注
は、以下の場合、セッションに追加される:
A)
、すなわち、
の場合、
が含まれ、
または
B)
であり、かつ、

であると仮定される場合、得られたセッション
は、
および
の両方を満たすことになる。
【0112】
言い換えれば、セッション開始後の
時間まで、分注は常に現在のセッションに含まれる。分注は、最大で
時間まで含まれてもよいが、このセッションと先行する/後続のセッションとの間のギャップが両方とも、このセッションの長さの
より長い場合のみである。次に考察するように、
との間に包含される分注は、
とが過ぎてからしばらく経つまで検定することができない。
【0113】
2.2因果関係およびリアルタイム動作
検定は、暫定的な分注がある場合、しばらく時間が経過するまでセッションが完了したことを知ることができないことを暗示している。
との間に到着する分注は、
の一部となってもならなくてもよい。
【0114】
それらのメンバーシップは不明確であり、また
は以下のいずれかを行うまでオープンのままである。
【0115】
1)次の分注が上記の条件(B)を満たすことが保証される十分な時間が経過する
(その場合、暫定的な分注はすべての
に留まる)。条件(B)から前回セッションのギャップテストが満たされたと想定する場合、可変の「新しいセッション閾値」は、以下のように計算することができる。
【0116】
この新しいセッション閾値の後に新しい分注が入る場合、
は、現在のセッションに含まれ、また新しい分注は、新しいセッションで最初の分注を定義する。
または
【0117】
2)別の分注が、
の後だが、上で定義した新しいセッション閾値の前に到着する。これが発生するとすぐに、現在のセッション内のすべての潜在的分注のセッションメンバーシップは解決され、一部は現在のセッションの一部または
の一部となる。
【0118】
まず、
以前のすべての分注が
に属し、また新しい分注が、新しいセッション
に対して
であると想定する。条件(B)は失敗するはずであり、(新しいセッション閾値に達していないため)、そのため

から
へと投入し、これを新しいセッションの新しい第一の分注にし、上記からの条件(B)を再検定する。このようにして、(1)条件(B)を満たす

の間に分岐点を見つける、または(2)すべての暫定的な分注が
から取り除かれる、のいずれまで継続する。
【0119】
この時点で、新しい分注(
の外部にあるもの)と一緒に取り出されたすべての分注は、
としてセッションタイマーとともに処理されるべきであり、ここで
として終了するいずれかの分注で開始する。(稀な事例では、この分注のリストがそれ自体、
などの間で再帰的に分割されることも考えられる。)
【0120】
一部の使用シナリオでは、ペンは、ほぼリアルタイムにアルゴリズムに分注を通信し、クライアントソフトウェアは、用量推定後にユーザーフィードバックを所望する場合がある。例えば、信頼性が低く、かつアルゴリズムがセッションにラベル付けしないことを選んだ場合、ユーザーは、分注をフローチェックまたは注射として手動で分類するように求められる場合がある。こうした場合には、セグメント化アルゴリズムの最悪の場合の待ち時間を考慮する必要がある。定義により、最長の可能なセッションは
と等しい持続時間を有し、したがって条件(B)は常に、最大でも
で最後の分注から満たされる。これは、
が完了していることが知られ、用量推定を進行できるまでの最悪の場合の待ち時間である。基礎インスリンおよびボーラスインスリンのデータセットに対するこれらのパラメータの現在値では、最後の分注からの最悪の場合の待ち時間は、基礎では2時間半、ボーラスでは35分である。
【0121】
この長い待ち時間がアプリケーションによって許容できない場合、セグメント化の精度を犠牲にして、アルゴリズムを条件(A)のみに単純化する
を設定することが可能である。しかしながら、
との間で分注が生じるのは比較的稀であるため、実際には、典型的な待ち時間は、セッション開始からの
であり、最悪の場合よりもはるかに低い。(
は現在、基礎では30分、ボーラスでは7分である。)
【0122】
2.3セグメント化構成要素パラメータ
【0123】
【表1】
【0124】
3. 履歴コンポーネント
履歴モジュールは、現在のユーザーに対する過去のすべてのセッションのリストを維持し、かつアルゴリズムの全体的な分類精度を向上させる統計を追跡する。各セッションが完了し、かつラベル付けの決定がなれた後、セグメント化モジュールは、履歴モジュールに以下の概要データを保存のために提供する。
・ セッションのタイムスタンプ(セッション内の最後の分注のタイムスタンプとして取られる)
・ セッション間のギャップ(前回セッションの最後の分注からこのセッションの最初の分注までの時間)
・ 推定用量
・ セッションがラベル付けされたか?(真/偽)
・ ユーザーはフローチェックを実施したか?(真/偽、セッション中に少なくとも一つのフローチェックとして定義される)
・ (x,y)対の形態のセッションを含む分注のリストであって、ここでxは分注サイズであり、yは注射に対して真であり、かつフローチェックに対して偽である、ブール変数である、分注のリスト
【0125】
履歴モジュールは、セグメント化モジュールが呼び出してこの情報を提供する方法を提供する。要求に伴い、履歴モジュールはクライアントに以下の統計を提供する:フローチェックおよび注射分注の平均サイズ、ユーザーの「プライミング確率」、および予想用量平均および分散。
【0126】
3.1フローチェックおよび注射分注の平均サイズ
これらは、ユーザーが記録したすべての分注(過去のすべてのセッション内の)の平均である。フローチェック平均サイズは、フローチェックとして分類されるすべての分注に引き継がれ、そして注射された平均サイズは、注射として分類されるすべての分注に引き継がれる。ラベル付けされたセッションからの分注のみがカウントされる。
【0127】
両方の平均は、最近の分注がより強く重み付けされるように、減衰因子
で重み付けされる。
は、構成可能なパラメータであり、また経過年数
は、履歴モジュール内に保存されたセッションタイムスタンプから計算されるので、セッション中の分注のすべてが、同じ
で終わる。平均の式は:
【0128】
ここで、
は分注サイズである(ラベル付けされたセッションのみ)。
重みの合計(上記の方程式の分母)が、構成可能なパラメータ
より小さい場合、二つの平均に対するデフォルト値が、実際の平均の代わりに返される。これらのデフォルト値も構成可能なパラメータである。
【0129】
3.2 ユーザーの「プライミング確率」
これは、プライミング(セッション中に少なくとも1回のフローチェックを行うものとして定義される)のユーザーの尤度の尺度であり、0~1の範囲である。これは、ラベルのないセッションを含む、過去のすべてのセッションの平均として計算される。二つの重みの合計、“プライミング重み”および“非プライミング重み”は、以下のように計算される。
【0130】
ここで、
は、構成可能な減衰定数であり、
は、プライミングを伴うセッションの経過年数(プライミングの重みの合計に対して)またはプライミングを伴わないセッション(非プライミング重みの合計に対する)である。次に、プライミング確率は以下のように計算される。
【0131】
【0132】
分母(両方の重みの合計)が、構成可能なパラメータ
より小さい場合、0.5という値が代わりに返され、最大不確かさを表す。
【0133】
3.3 予想用量の平均および分散
履歴モジュールは、ガウス確率分布関数(pdf)によって表される、予想用量値を生成し、この関数は、ユーザーの以前の用量履歴に基づく、ユーザーの平均用量サイズおよび用量変動を表す。ラベル付きセッション(十分に高い信頼性スコアを有するセッション)のみが、予想用量の平均および分散の計算に使用されることになる。平均は予想用量であり、分散はユーザーの過去の用量の一貫性に反比例する。
【0134】
計算は、平均分注サイズに対する計算と類似しているが、加重平均に加えて、加重サンプル分散を生成し、また重み因子はより複雑である。各重みは、実際には、時間(経過年数)、時刻の類似性、およびセッション間のギャップの類似性の三つの因子の積である。目標は、現在のセッションに対する関連性に比例して過去のセッションを重み付けすることである。すなわち、最近のセッションは、より古いセッションよりも関連性が高く、同じ時刻に行われたセッションはより関連性が高く、また、現在のセッションと直前のセッションとの間のギャップと類似の持続時間のセッションギャップに続いて行われたセッションはより関連性が高い。重みの式は、以下のとおりである。
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
ここで、各過去のセッションに対して、
はセッション経過年数、
は、そのセッションと現在のセッションとの時刻の差、そして
は、そのセッションと現在のセッションとのセッション間のギャップの差である。
は循環する様式で、例えば、01.00と23.00との間のTODの差異が22時間ではなく2時間となるように、正しく計算されなければならないことに留意されたい。これを確認するやり方の一つは、二つの変数に対する「元期からの秒」形式であり:
【0140】
【0141】
減衰因子
、ならびにタイトネス因子
は、指数の分子における時間量と同じ時間の単位を有する個別に構成可能なパラメータである。
【0142】
の場合、良好な計算を行うには履歴が不十分であり、また履歴モジュールは、予想用量パラメータを提供することを拒否し、代わりに、平均をゼロに設定し、分散を
に設定する(下記参照)。そうでない場合は、予想用量平均および分散は以下のように計算される。
【0143】
【0144】
【0145】
ここで、
は、過去のすべてのラベル付きセッションに対するセッション用量であり、各々がそれらの対応する履歴の重みを有する。分散
は、常に
(構成可能なパラメータ)となるように制約される。実際には、これは、ユーザーが過去の1回の用量と非常に一貫していた場合に、アルゴリズムが予想用量について確信し過ぎるのを防ぐ。
【0146】
3.4 履歴構成要素パラメータ
【表2】
【0147】
4. セッション分析アルゴリズム
セッション対象は、セグメント化モジュールによってそこにグループ分けされた分注のための容器である。また、各セッションオブジェクトは、その分注を分析し、可能性が最も高いセッション用量を決定し、結果におけるその信頼性を評価するために必要とされる方法(コード)も含む。セッションモジュールの方法は、三つのグループに分けることができる。
【0148】
4.1 分注の追加および除去
セッションモジュールは、セッションの終わりに分注を添付する、またはセッションの終わりから分注を除去する、および呼び出し側にそれを返すための方法を提供する。両方の方法は、セグメント化モジュールによって使用される。
【0149】
4.2 ヘルパー
セッションモジュールは、報告するためのユーティリティ方法を提供する。
・ セッション持続時間(セッションの最初の分注と最後の分注との間のタイムスタンプの差異)。
・ セッションにラベル付けされているか否か。(セッションは、最終化されかつ信頼性スコアのすべてが
よりも大きい場合にのみ、ラベル付けされる。)
・ セッションがラベル付けされているか否かにかかわらず、信頼性尺度は、最も低い信頼性スコアをもたらす。
・ セッションを最も良好に説明するプライムおよび注射のパターン(「成功パターン」と呼ばれる)。
【0150】
4.3 セッション分析および用量推定
用量推定は、セッションモジュールのコア機能である。分析は、下記の図に示すように四つの段階に分割することができる。まず、アルゴリズムは、セッション分注を解釈するために使用されてもよいプライム(フローチェック)および注射のパターンをすべて列挙し、次いで、様々な基準に従ってそれらのパターンを重み付けし、次に、加重パターンを加重用量推定に変換し、ベイズルールを使用して、用量事前(ユーザーの用量履歴に基づく)と組み合わせ、用量事後および可能性が最も高いセッション用量を取得し、最後に、このセッションにラベル付けするかどうかを決定する信頼性チェックを適用する。
【0151】
これらの段階は、参照実装における方法である、enumerate_patterns、weight_patterns、estimate_dose、およびevaluate_resultに対応する。ここで各々を詳細に説明する。
【0152】
4.3.1 パターン列挙
の分注を有するセッションを考慮すると、用量推定の問題は、パターン選択の問題と完全に等価である。各分注が、フローチェック(しばしば、簡潔のために「プライム」と呼ばれる)または注射のいずれかに分類された後、結果として得られるパターンは、セッション用量を暗示する。
を省略表現として使用すると、分注{2、1、2、4}を有するセッションは、パターンが
の場合は4、パターンが
の場合は5、またはパターンがppii
の場合は6の用量を有する。
【0153】
パターン列挙は、いくつかの単純なルールと構成可能なパラメータを考慮して、すべての潜在的パターン16(図4B)をリストするタスクである。
・ セッションの最後の分注は注射でなければならない。
・ 各注射には、少なくとも
のフローチェックが先行しなければならない。これは通常、フローチェックが厳密に要求されないようにゼロに設定され、そうでない場合は、ラベル付け率は極めて低い。
・ 1回のセッションにおける注射の数は、
に、以下に詳述する大用量のための余裕を加えたものに制限される。
【0154】
以下の疑似コードがパターン列挙を実行することになる。
(セッション中の分注の数)、
(薬剤送達装置でダイヤルすることができる最大分注)、および構成可能なパラメータである
を考慮すると、
【0155】
(「下限」オペレーターに留意されたい)
【0156】
空のパターンのリストに対してPを初期化する。
【0157】
Ninj=1~min(maxlnjects,Ndisp-minPrimes)
に対しては、PにNdisp-Ninjのプライムを有するパターンを添付し、その後にNinjの注射が続く
Ninj=2~maxlnjects
に対して、Ninj_before=1~Ninj-1
に対して、Nleading_primes=minPrimes~Ndisp-Ninj
に対して、Ndisp-Ninj-Nleading_primes≧minPrimes
の場合、PにNleading_primesのプライムを有するパターンを添付し、
その後にNinj_before注射が続き、
その後にNdisp-Ninj-Nleading_primesのプライムが続き、
その後にNinj-Ninj_beforeの注射が続く
【0158】
Pをスキャンして、重複パターンがあれば削除する。
【0159】
4.3.2 パターンの重み付け
各パターンは、多くの独立した重み因子の積である重みを受ける:
【0160】
重みが大きいほど、そのパターンが正しいものである可能性が高い。重み因子は、分注のタイミングおよびサイズ、ユーザーのプライミング挙動、および他の基準から導き出される。一部はある特定の薬剤タイプにのみ適用され、その他のものは最小限の分注回数のセッションにのみ適用される。以下のサブセクションは、どのようにして重み因子の各々を決定できるかについて具体的な実施例を説明する。
【0161】
各重み因子は、Pの各パターンに対して1回、複数回計算されることに留意されたい。この文脈では、しばしば、分注をフローチェックまたは注射として言及することが必要であり、これらの分類は、実際の真実ではなく、評価されるパターンを指す。
【0162】
4.3.2.1 セッション内の分注間隔
統計分析により、ユーザーがプライミングから注射に切り替える場合、一連のフローチェックを継続する場合に比べて、2回の連続する分注間の時間が長くなることが明らかになった。
【0163】
研究されたデータセットでは、臨界間隔は約3.5秒であり、これよりも長く、かつ2回の分注はおそらくpi(フローチェック、続いて注射)であり、より短く、かつ分注はおそらくpp(2回のフローチェック)である。Ndisp≧3のセッションには、この傾向を利用した重み因子が適用される。(Ndisp=2の場合、2回目の分注は常に注射であるため、これは予測力がない。)
【0164】
疑似コード:
Ndisp≧3の場合、
Npp,short=#のppが、<criticalDispenselntervalの時間間隔で発生し、
Npi,long=#のpiが、≧ criticalDispenselntervalの時間間隔で発生し、
Npi,short=#のpiが、<criticalDispenselntervalの時間間隔で発生し、
Npp,long=#のppが、≧criticalDispenselntervalの時間間隔で発生し、
weightFactor = dispenselntervalFactor(Npp,short+Npi,long-Npi,short-Npp,long)
そうでなければ
weightFactor = 1
例えば、Ndisp=4で、分注タイムスタンプが0、2、7、および10秒である場合、構成可能なパラメータcriticalDispenselnterval=3.5秒およびdispenslntervalFactor=2であり、パターンpppi、ppii、およびpipiに対する重み因子は、
pppi: 2(1+0-1-1) = 0.5
ppii: 2(1+1-0-0) = 4.0
pipi: 2(0+1-1-0) =1.0であることになる。
【0165】
4.3.2.2 プライミング確率
ユーザーが過去に定期的にフローチェックを実施した場合、現在のセッションで評価されるパターンは、一貫性に有利に傾くよう重み付けをされるべきであり、すなわちプライミングを有するパターンは、プライミングを有しないパターンよりも高い重み付けをされるべきである。逆に、ユーザーが過去に一貫してフローチェックを実行しなかった場合、プライミングしないパターンがより可能性が高いと見なされるように、パターンは反対方向に重み付けされるべきである。履歴モジュールは、0(決してプライムしない)と1(常にプライムする)の間の範囲の「プライミング確率」
を提供する。構成可能なパラメータ
は、この重み因子の相対強度を制御する。
【0166】
この計算の目的のために、「プライミングを有するパターン」は、実際には、プライムで始まるパターンとして定義され、そのため、piはプライミングを有するパターンであり、iiはプライミングを有しないパターンであるが、ipiはどちらとも見なされない。(2回の注射の間にプライミングを有するパターンは、カートリッジ交換に関連付けられる。新しいカートリッジのプライミングは、ルーチンの注射前のプライミングとはいくらか異なるため、重み因子は意図的にこれによる影響を受けない。しかしながら、同様にカートリッジ交換である可能性が高いpipiは、先行プライムに起因して、依然として「プライミングのあるパターン」と見なされることに留意されたい。)
【0167】
疑似コード:
パターンの最初の分注がプライムである場合、
weightFactor = primeProbFactotr(2*primeProb-1)
そうでなければ、パターン内の分注のすべてが注射である場合、
weightFactor = primeProbFactotr(1-2,primeProb)
そうでなければ、
weightFactor = 1
【0168】
4.3.2.3 プライミングの差異(ボーラス薬剤のみ)
ボーラス薬剤患者では一般的な小さい注射からプライムを区別しようと試みるときに、プライミング分注が一貫したサイズを有しない、重みを少なくするパターンに役立てることができる。これは、構成可能なパラメータbolusPrimeDisparityFactorによるプライミング差異の背後にある考え方である。
評価されるパターン中のすべてのプライムに対する分注サイズを有する、primesというリストを考慮すると、
このパターンに対して、Ndisp≧ 3、かつNprimes ≧ 2である場合、
disparity = max(primes) - min(primes)
weightFactor = bolusPrimeDisparityFactor-disparity
そうでなければ、
weightFactor = 1
【0169】
4.3.2.4 分注サイズ(ボーラス薬剤)
分注サイズは、おそらくプライムと注射の間の最も明らかな分化要因であり、単純化された見解は、プライムは小さく注射が大きいというものである。これはMDI(基礎/ボーラス)療法を受けている患者には良好に作用しないが、典型的なボーラス投与は、2単位の推奨されるプライミングサイズと同程度に小さくなりやすいためである。プライミングサイズ分布は、2単位の近くでピークに達すると予想されるが、注射サイズ分布は、非常に大きい分注は注射である可能性が高いことを除いては、あまり洞察を与えない。
【0170】
基礎セッションおよびボーラスセッションの両方について、サイズベースの重み因子は、パターンでの各分注に対して一つずつの一連の「サイズ因子」の積である。サイズ因子は、累積ガウス関数70のシフトされかつスケールされたコピーからのサンプルであり、
【0171】
erf()が使用される深い理由はなく、単に便利で、かつ幅広く利用可能なS字形状の関数である。特別な分注サイズでは、アルゴリズム挙動に不連続性を導入することなく、滑らかなS曲線モデルの閾値挙動(例えば、「y単位超は、おそらく注射、y単位以下は、おそらくプライム」)、図XXを参照。移行区域は、必要に応じて、オペランドをスケーリングすることによって狭くするか、または広げることができる。また、関数の漸近値も変更が簡単である。現在の使用では、
の式は、0~2の範囲の出力を生成するが、これは、重み因子を構築するために好都合である。S曲線の中心では、出力は1となり、重み因子は中性となる。図4Cを参照。
【0172】
疑似コード:
パターン内のフローチェックおよび注射に対する分注サイズを有する所与の二つのリスト、primesおよびinjectsを評価し、構成可能なパラメータ、bolusPrimeSizeSlope、bolusPrimeCrossoverSize、boluslnjectSizeSlope、およびboluslnjectSizeOffsetは、
weightFactor = 1で、
Nprimes > 0の場合、
【0173】
xに対しては、primesでは、
weightFactor = weightFactor*
であり、xに対しては、injectsでは、
weightFactor = weightFactor*であり、
【0174】
説明:
前述したように、重み因子はスケールされ、かつシフトされたS曲線からのサンプルである個々のサイズ因子の積である。(重み因子は1へと初期化されるので、計算の順序を所望に応じて並べ替えることができ、ここでは、フローチェックおよび注射のリスト上で別個のループとして示される。これは、サイズ因子が各々に対して異なるためである。)プライムに対しては、S曲線は2から0に進み、bolusPrimeCrossoverSizeにおいて1に達する。注射の場合、S曲線は0~2になるが、2つの修正がある:第一に、これは決して1を下回らない。これは、ボーラス注射が自由裁量によって小さい場合があるという事実を反映しており、また典型的なプライムの領域と重なるという理由だけでこれをより低いスコアにすることは意味をなさない。第二に、固定された交点サイズの代わりに、曲線は、avgPrime+bolusInjectSizeOffsetにおいてデータ依存性交点を有する。(bolusInjectSizeOffsetは、典型的には1である。)この適合可能性は、プライミングサイズが小さいときに候補注射のスコアがより高くなることと、間違ったパターンが評価されているときに候補注射のスコアを台無しにするように作用することとの両方を可能にする(このパターンに対する候補プライミングの平均であるavgPrimeは、候補プライムの一部が実際に注射されたときにより大きくなる場合があるため)。
【0175】
4.3.2.5 分注サイズ(基礎薬剤)
基礎薬剤セッションについては、注射は大きい傾向があるため、サイズに基づくプライムと注射との区別が若干より簡単になる。この区別の有効性を最大化するために、アルゴリズムは、履歴的な平均プライムサイズおよび注射サイズを使用し、かつS曲線(重みが1になるサイズ、すなわち中立)上に最適な交点を設定するように試みる。
【0176】
疑似コード:
評価されるパターン内のフローチェックおよび注射に対する分注サイズを有する二つのリスト、primesおよびinject、履歴ベースまたはガイダンスベースのexpectedDose(履歴が不十分な場合はゼロ)、履歴的な平均分注サイズhistoricalPrimeおよびhistoricalInject、ゼロで割るのを防止するための小さい数字
、ならびに構成可能なパラメータbasalSizeSlopeMin、basalSizeSlopeMax、およびbasalSplitDoseRatioMinを考慮すると、
weightFactor=1、
expectedDose>0である場合、
expDose=expectedDose
、そうでなければ
expDose = max(historicalInject, max(all dispenses in session))
【0177】
【0178】
primesにおけるxに対しては、
weightFactor= weightFactor *(1-erf(injectSlope * √π * (x - injectCenter)))
injectsにおけるxに対しては、
【0179】
【0180】
weightFactor = weightFactor * (1 + erf(injectSlope* √π * (x - injectCenter)))
【0181】
説明:
これらの計算の基本的な構造は、その中でサイズ因子は依然としてシフトされ、かつスケールされたS曲線のサンプルであるという点で、ボーラス薬剤に対するものと類似している。しかしながら、ボーラスの式は、交点分注サイズ、primeCenterおよびinjectCenterを、可能性のあるプライムサイズと注射サイズとの間の中間に置くために真摯な試みを行う。expDoseは、存在する場合、履歴ベースの予想用量expectedDoseの別名であり、そうでない場合は代わりに代役が使用されることに留意されたい。
【0182】
可能性が高いプライムサイズは、単純にユーザーの履歴的な平均プライムである。可能性が高い注射サイズは、分割用量を考慮に入れなければならない。評価されるパターンが二つ以上の注射を有する場合、
は、均等分割を仮定した下で注射サイズを近似する。この(primeCenter)は、候補プライムを評価するためには十分良好であるが、用量が不均等に分割されたときには候補注射のスコアを低くしすぎる可能性があり、それ故にinjectCenterに対する計算は量
を使用し、
を、
で置き換える。このようにして、より小さい分注xが可能な注射として評価されるとき、「可能性が高い注射サイズ」は低下され、用量が不均等に分割された場合でさえも、そのスコアを高く保つ。これは、例えば、プライムが候補注射として高くスコアされるのを防止するように制限されなければならないため、パラメータbasalSplitDoseRatioMinは、分割の幅に対する限界を設定する。(典型値は0.2である。)injectCenterおよびinjectSlopeの位置は、パターン内の各候補注射のサイズxに依存するため、ループの内部で計算されることに留意されたい。
【0183】
primeSlopeおよびinjectionSlopeの計算はより複雑に見えるが、すでに説明した同じ式に基づいて構築されている。S曲線の傾きは、可能性が高いプライムサイズと可能性が高い注射サイズとが互いに近い場合はより急になり、互いからさらに離れている場合はより緩やかになるべきである。傾きは、中央計算で使用されるこれらのサイズの平均ではなく、これらのサイズの差の逆数に過ぎない。これらはさらに、2つの追加のパラメータ、basalSizeSlopeMinとbasalSizeSlopeMaxにより、上方の境界と下方の境界の中で制約される。
【0184】
4.3.3 用量推定およびセッション解釈
パターン重みを計算した後、アルゴリズムは、それらをパターンに対する重み付けから用量に対する重み付けに変換する。パターンから用量へのマッピングは多対一であり、各パターンは1回の用量をもたらすが、複数のパターン26は同じ用量をもたらす場合がある。図4Dを参照。
【0185】
疑似コード:
doseWeight[dose]=0を、あらゆる用量(dialIncの工程内で0~capacityAvg)に対して初期化し、
P内で各パターンに対して
dose=Σパターンで注射された分注
doseWeight[dose] = doseWeight[dose] + patternWeight[pattern]
【0186】
合計から1へと正規化された場合、doseWeightは、用量に対する確率分布である。
【0187】
用量に対する別の確率分布は、履歴モジュールからの予想用量平均および分散に基づく。(予想用量は、ユーザーの投与履歴から計算される。)これは、用量事前分布として知られている。これは、ガウス分布(正規)であり、平均および分散は、予想用量平均μおよび分散σ2に等しいか、または予想用量を計算するのに十分な履歴がない場合、一様分布:
【0188】
予想用量平均μおよび分散σ2を考慮すると、
μ>0の場合、
用量=0~capacityAvgに対して、dialIncの工程において、
【0189】
そうでなければ
用量=0~capacityAvgに対して、dialIncの工程において、
【0190】
【0191】
ここで、用量の事前分布および用量重みを、ベイズのルールを使用して組み合わせ、用量事後分布を得ることができる:

dose=0~薬剤送達装置容量に対し、最少ダイヤル増分の工程において、
【0192】
【0193】
最大尤度用量(しばしば推定用量と呼ばれ、予想用量と混同しないこと)は、dosePosteriorにおける最も高い確率を有する用量である:
は、f(dose)を最大化し、かつそのdoseの値を戻すdoseの値を見つけることを意味する。それ故に、dosePosteriorのピークに対応する用量サイズを見いだしつつある。これは、現在のセッションに対する真の注射用量におけるアルゴリズムの最も妥当な推測である。)
【0194】
推定用量から後ろ向きに作業すると、これは、推定用量と等しい用量をもたらすフローチェックおよび注射のパターンである、「成功パターン」の存在を暗示する。(これは必ずしも、用量事前が結果を歪める場合があるため、最大重みのパターンではない。)一つのパターンのみが推定用量を生成した場合、それが成功パターンである。二つ以上のパターンが推定用量を生じさせた場合、成功パターンは、最も高いパターン重みを有するものである。これらのパターンのうちの二つ以上が同じ[最大]重みを有し、またその重みが最も大きい場合、選択は任意である。
【0195】
4.3.4 信頼性チェックと結果の評価
アルゴリズムは、セッションが「簡単」かまたは「難しい」かにかかわらず、あらゆるセッションに対して推定用量を生成する。しかしながら、想定される適用では、結果に合理的な信頼性がない限り、通常、セッションにラベル付け(正式な用量推定を提供)しないことが好ましい。このセッションモジュールの第四および最後の部分の目的は、アルゴリズムが推定用量においてどの程度信頼性があるかを定量化することである。
【0196】
アルゴリズムには、0(信頼性なし)から1(100%の信頼性)までの五つの独立した信頼性の尺度があり、これらの各々は0と1との間の構成可能な重みを有する。
【0197】
4.3.4.1 データの信頼性
これは単純に、様々なセッション長さに対して正規化された、可能性が最も高い用量の用量重みである「データスコア」に依存する。
【0198】
dataConfidence = 1 - (dataConfidenceWeight × (1 - min(1,dataScore)))
【0199】
低いデータ信頼性は、成功パターンの観察されたセッションに対する説明が不十分であり、また他のパターンがさらにより不良なことのみを理由に選ばれたことを示す。
【0200】
4.3.4.2 予想用量信頼性
これは、推定用量の照合として、履歴ベースの予想用量を使用する別のやり方である。(もう一つのやり方は、用量の事前分布による。)これは、推定用量が予想用量とどの程度異なるかを標準偏差で測定する。
【0201】
予想される用量平均μおよび分散σ2を考慮すると、
μ>0である場合
【0202】
そうでなければ
expectedDoseConfidence = 1
【0203】
4.3.4.3 曖昧性の信頼性
これは、第二の選択、第三の選択などの回答に対して十分な余裕をもって優位に立たない場合、推定用量にペナルティを科す。
【0204】
ここでεは、ゼロで割ることに対する保護のための小さい数である。
【0205】
4.3.4.4 プライミングの信頼性
これは、ユーザーの過去のプライミング履歴、すなわちフローチェックの使用(primeProbによって与えられ、履歴モジュールによって提供される)と、現在のセッションとの間の一貫性を測定する。プライミングの信頼性が低いことは、ユーザーは通常はプライミングを行うが今回は行わなかったことを示し、または稀にしかプライミングを行わないが今回は行ったことを表す可能性がある:
成功パターンが少なくとも一つのプライムを含む場合、
【0206】
そうでなければ
【0207】
【0208】
4.3.4.5 トレーニングの信頼性
このアルゴリズムは、最初の少数のセッションはユーザートレーニングであるかまたは別の形で正常でないという理論で、他の信頼性指標に関わらず、最初のignoreFirstSessionsセッションにラベル付けすることを拒否する。これは、第五の非常に単純な信頼性指標によって達成される。
sessionSerial > ignoreFirstSessionsである場合、
trainingConfidence = 1
そうでなければ、
trainingConfidence= 0
ここで、sessionSerialは、セッションオブジェクトの作成時にセグメント化モジュールによって提供されるこのセッションのシリアル番号である。
【0209】
すべての信頼性指標が計算された後、セッション全体の信頼性は、個々の指標の最小値として計算される。この全体的な信頼性は、セッションがラベル付けされているか、またはラベル付けされていないかを決定するために、構成可能なパラメータのconfidenceThresholdに対して比較される。
confidence = min(dataConfidence, expectedDoseConfidence, ambiguityConfidence, primingConfidence, trainingConfidence)

confidence ≧ confidenceThresholdである場合、
セッションはラベル付けされ、
そうでなければ
セッションはラベル付けされない。
【0210】
4.4 セッション分析アルゴリズムのパラメータ
【表3】
【0211】
5. 定義および用語
このリストには、本書で使用される略語および用語の定義を含有する。
【0212】
【表4】
【0213】
本発明の態様を第一の実施例に図示し、また特定のアルゴリズム構成要素の詳細な説明によって本発明の態様を例証してきたが、次に第二の実施例を、開示されるアルゴリズム構成要素の態様を参照しながら説明する
【0214】
図5Aは、一つ以上の注射装置404からの分注データの収集のための統合医療システム802の実施例を図示する。図示した実施形態はまた、システムが、任意選択的に、一つ以上のグルコースセンサー402から血糖データを収集するように適合されうることも示す。医療システム802はまたプロセッサも含むが、これは図5Aには図示されていない。
【0215】
統合システム802を用いて、対象者に治療レジメンを適用するために使用される、一つ以上の接続された注射装置404からのデータが、医薬分注記録522のセットとして、複数の分注データ520または分注データセット520で取得される。各分注記録は、対象者が治療レジメンの一部として受けた、分注された血糖調節薬剤の量を特定する、タイムスタンプ付きイベントを含む。血糖調節薬剤の量を特定するタイムスタンプ付きイベントは、対象者または注射装置のユーザーが、電子的もしくはデジタル的なタイムスタンプ、および/または血糖調節薬剤の電子的もしくはデジタル的な量を取得するために、積極的な工程を行う必要がないという意味で、自動的に取得される。これらのデータは、注射の適用に伴い注射装置によって自動的に生成され、すなわち、注射は、ある量の医薬を排出するために、対象者またはユーザーによって適用されるが、データの生成は、ユーザーが装置を使用するとき、ユーザーの意図に関わらず提供される。また、一部の実施形態では、対象者の自主的なタイムスタンプ付きグルコース測定値が取得される。こうした実施形態では、自律的グルコース測定はフィルタリングされ、かつ非一時的メモリ内に保存される。時間経過にわたって取られた対象者の複数の分注記録を使用して、未加工のデータストリームの品質を向上させ、かつそれをデータ構造へと変換するように適合された意思決定支援システム(DSS)550への入力が提供され、これは注射された医薬の予測を確実に可能にする。
【0216】
一つ以上の注射装置から未加工の分注データを収集し、かつ未加工のデータストリームの品質を向上させ、それを注射された医薬の予測を確実に可能にするデータ構造へと変換する医療システム48の詳細な説明を、図5Aおよび図5Bと併せて説明する。このように、図5Aおよび図5Bは、本開示によるシステムのトポロジーを集合的に図示している。トポロジーでは、分注データのデータ品質を向上させるための意思決定支援システム550、信頼性のある意思決定支援を治療レジメン506に従う対象者に提供できるようにするための、データ収集用装置(「データ収集装置500」)、対象者へと医薬を注射するための一つ以上の注射装置404、および任意選択的に対象者に関連付けられた一つ以上のグルコースセンサー402がある。本開示を通して、データ収集装置500および意思決定支援システム550は、明確化の目的のためだけに別個の装置として参照される。すなわち、データ収集装置500の開示された機能および用量履歴通信装置550の開示された機能は、図5Aに示されるように、別個の装置内に含まれる。しかし、当然のことながら、実際には、一部の実施形態では、データ収集装置500の開示された機能および意思決定支援システム550の開示された機能は、単一装置に含まれる。一部の実施形態では、意思決定支援システムの開示された機能は、スマートフォンまたはクラウドサービスに含まれる。一部の実施形態では、データ品質向上機能は、別個の装置内、例えば、意思決定支援システム550を含む装置とは異なる品質向上装置内にあってもよい。次に、データ品質向上装置は、意思決定支援システム550を含む意思決定支援装置と通信することができる。一部の実施形態では、データ収集装置は、図1Cおよび図1Dに図示されるようなアドオン装置300であり、また他の実施形態では、データ収集装置は、一つ以上の注射装置404の統合装置である。
【0217】
図5Bを参照すると、一部の実施形態では、治療レジメン506は、短時間作用型インスリン薬剤を有するボーラスインスリン薬剤の投与レジメン、または長時間作用型インスリン薬剤を有する基礎インスリン薬剤の投与レジメンを含む。一部の実施形態では、治療レジメンは、例えば、リラグルチドまたはセマグルチドなどのGLP-1受容体作動薬を含む医薬を用いた投与レジメンも含んでもよい。
【0218】
図5Aを参照すると、意思決定支援システム550は、治療レジメン506に従って、対象者に信頼性の高い意思決定支援を提供することができるように、分注データのデータ品質を向上させる。これを行うために、意思決定支援システム550と電気的に通信しているデータ収集装置500は、時間経過にわたって複数の血糖調節薬剤の分注記録を受信し、各分注記録522は、(i)一つ以上の注射装置におけるそれぞれの注射装置404を使用して対象者によって分注されたインスリン薬剤526の量を含む血糖調節薬剤の分注イベント524と、(ii)血糖調節薬剤の注射イベントの発生時に、それぞれの注射装置によって生成される、対応する電子分注イベントのタイムスタンプ528と、を含む。二つ以上の医薬が適用される場合、(iii)対象者によって、短時間作用型インスリン薬剤および長時間作用型インスリン薬剤のうちの一つから分注される、それぞれのタイプの血糖調節薬剤529を含む。一部の実施形態では、データ収集装置500はまた、血糖値を測定するために対象者によって使用される一つ以上のグルコースセンサー(例えば、連続グルコースモニター/センサー)502からグルコース測定値も受信する。一部の実施形態では、データ収集装置500は、こうしたデータを対象者によって使用される注射装置404および/またはグルコースセンサー(複数可)502から直接受信する。例えば、一部の実施形態では、データ収集装置400は、無線周波数信号を通して無線でこのデータを受信する。一部の実施形態では、こうした信号は、802.11(Wifi)、Bluetooth、またはZigbee標準に従っている。一部の実施形態では、データ収集装置200は、こうしたデータを直接受信し、データを分析し、分析したデータを用量履歴通信装置250へと渡す。一部の実施形態では、インスリンペンとすることができる注射装置404および/またはグルコースセンサー402は、RFIDタグを含み、かつRFID通信を使用してデータ収集装置500および/または意思決定支援システム550と通信する。
【0219】
一部の実施形態では、データ収集装置500および/もしくは意思決定支援システムは対象者者に近接しておらず、かつ/または無線能力を有していないか、またはこうした無線能力は、医薬分注データ、自主的なグルコースデータ、および/もしくはライフスタイル関連測定データを取得する目的で使用されていない。こうした実施形態では、インスリン薬剤の分注データを一つ以上の注射装置404からデータ収集装置500および/もしくは意思決定支援システムへと、かつ/または自律的グルコース測定値をグルコースセンサー402からデータ収集装置500および/もしくは意思決定支援システム550へと通信するために通信ネットワーク406を使用してもよい。
【0220】
ネットワーク406の例としては、ワールドワイドウェブ(WWW)、イントラネットおよび/または無線ネットワーク(携帯電話ネットワーク、無線ローカルエリアネットワーク(LAN)および/もしくはメトロポリタンエリアネットワーク(MAN)など)、ならびに無線通信による他の装置などが挙げられるが、これらに限定されない。ワイヤレス通信は、任意選択的に、汎欧州デジタル移動電話方式(Global System for Mobile Communications)(GSM)、高速データGSM環境(EDGE)、高速ダウンリンクパケットアクセス(HSDPA)、高速アップリンクパケットアクセス(HSUPA)、エボリューションデータオンリー(EV-DO)、HSPA、HSPA+、デュアルセルHSPA(DC-HSPDA)、ロングタームエボリューション(LTE)、近距離無線通信(NFC)、広帯域符号分割多元接続(W-CDMA)、符号分割多元接続(CDMA)、時分割多元接続(TDMA)、Bluetooth、Wireless Fidelity(Wi-Fi)(例えば、IEEE802.11a、IEEE802.11ac、IEEE802.11ax、IEEE802.11b、IEEE 802.11g、および/またはIEEE802.11n)、ボイスオーバーインターネットプロトコル(VoIP)、Wi-MAX、電子メール用プロトコル(例えば、インターネットメッセージアクセスプロトコル(IMAP)、および/またはポストオフィスプロトコル(POP))、インスタントメッセージング(例えば、エクステンシブルメッセージングアンドプレゼンスプロトコル(XMPP)、インスタントメッセージングアンドプレゼンスレバレッジングエクステンション用セッション初期化プロトコル(SIMPLE)、インスタントメッセージングアンドプレゼンスサービス(IMPS))、および/またはショートメッセージサービス(SMS)、または本開示の出願日には未開発である通信プロトコルを含む、任意の他の好適な通信プロトコルが挙げられるが、これらに限定されない、複数の通信基準、プロトコル、および技術のうちのいずれかを使用する。
【0221】
一部の実施形態では、データ収集装置500および/または意思決定支援システム550は、インスリンペンの一部である。すなわち、一部の実施形態では、データ収集装置500および/または意思決定支援システム550、ならびに注射装置404は、単一の装置である。
【0222】
当然のことながら、システム48の他のトポロジーも可能である。例えば、通信ネットワーク106に依存するのではなく、一つ以上の注射装置404および任意選択の一つ以上のグルコースセンサー402は、情報をデータ収集装置500および/または意思決定支援システムへと直接無線で送信してもよい。さらに、データ収集装置500および/または意思決定支援システムは、ポータブル電子装置、サーバコンピュータを構成してもよく、または実際にはネットワーク内でともに連結されているいくつかのコンピュータを構成し得るか、またはクラウドコンピューティングコンテキスト内の仮想マシンであってもよい。このように、図1に示されている例示的なトポロジーは、単に、当業者に容易に理解されるであろう様式で本開示の実施形態の特色を説明するために機能する。
【0223】
図5Bを参照すると、典型的な実施形態では、意思決定支援システム550は、一つ以上のコンピュータを含む。図5Bでは図示の目的のために、意思決定支援システム550は、治療レジメン506に従って、信頼性のある意思決定支援を対象者に提供することができるように、未加工の分注データのデータ品質を向上させるためのすべての機能を含む単一のコンピュータとして表される。しかしながら、本開示はそのように限定されない。一部の実施形態では、分注データのデータ品質を向上させるための機能は、任意の数のネットワーク接続されたコンピュータにわたって広げられ、かつ/またはいくつかのネットワーク接続されたコンピュータの各々の上に存在し、かつ/または通信ネットワーク406にわたってアクセス可能な離れた場所で一つ以上の仮想マシン上にホストされる。広範な異なるコンピュータトポロジーのうちのいずれかがアプリケーション用に使用され、かつすべてのこうしたトポロジーが本開示の範囲内であることを当業者は理解するであろう。
【0224】
前述のことを念頭に置いて図5Bに目を向けると、未加工の分注データのデータ品質を向上させるための例示的な意思決定支援システム550は、一つ以上の処理ユニット(CPU)574、ネットワークまたはその他の通信インターフェース584、メモリ492(例えば、ランダムアクセスメモリ)、一つ以上のコントローラ588によって任意選択的にアクセスされる一つ以上の磁気ディスク記憶装置および/または永続的装置590、前述の構成要素を相互接続するための一つ以上の通信バス513、ユーザーインターフェース578であって、ディスプレイ582および入力580(例えば、キーボード、キーパッド、タッチスクリーン)を含むユーザーインターフェース578、および前述の構成要素に電力供給するための電源576を含む。一部の実施形態では、メモリ492内のデータは、キャッシングなどの公知のコンピューティング技法を使用する、不揮発性メモリ590とシームレスに共有される。一部の実施形態では、メモリ492および/またはメモリ590は、中央処理装置(複数可)574に対して離れて位置するマスストレージを含む。言い換えれば、メモリ492および/またはメモリ590内に保存される一部のデータは、実際には、意思決定支援システム550の外部であるが、ネットワークインターフェース584を使用してインターネット、イントラネット、または他の形態のネットワークもしくは電子ケーブル(図3に要素406として図示されている)を介して、意思決定支援システム550によって電子的にアクセスすることができるコンピュータ上にホストされてもよい。
【0225】
一部の実施形態では、データ収集装置500からの未加工の分注データのデータ品質を向上させるための意思決定支援システム550のメモリ492は、
・様々な基本システムサービスを取り扱うための手順を含むオペレーティングシステム502と、
・意思決定支援モジュール504と、
・対象者が参加している治療レジメン206と、
・治療レジメンを適用するために対象者によって使用される一つ以上の注射装置から自動的に取得される、分注データセット520であって、時間経過にわたる分注記録のセットと、(i)一つ以上の注射装置におけるそれぞれの注射装置104を使用して対象者によって分注された医薬526の量を含む、それぞれの医薬分注イベント524、(ii)時間経過内の対応する電子分注イベントタイムスタンプ228であって、それぞれの医薬注射イベントの発生に伴いそれぞれの注射装置104によって自動的に生成されるタイムスタンプ228、(iii)二つ以上のタイプの医薬が分注される場合、医薬のタイプ529を含む、医薬記録のセット内の各それぞれの医薬分注記録522とを備える分注データセット520と、を含む分注データセットと、
・時間経過内の分注セッション530のセットであって、
・各それぞれのセッション523が、(i)セッション注射用量を表す最大尤度用量534、(ii)セッションが生じた時刻を表す時刻536登録、(iii)前回セッション以来の時間を表すセッション間の時間537登録、(iv)可能性が最も高い分注パターン537、および(v)可能性が最も高いパターンにセッションがラベル付けすることができるかどうかを表すブール値であるラベルインジケータ538、を含む、分注セッション530のセットと、
・ラベルインジケータの2進値を決定する信頼性閾値539と、を保存する。
【0226】
一部の実施形態では、意思決定支援モジュール504は任意のブラウザ(電話、タブレット、ラップトップ/デスクトップ)内でアクセス可能である。一部の実施形態では、意思決定支援モジュール504は、ネイティブ装置フレームワーク上で実行され、またAndroidまたはiOSなどのオペレーティングシステム502を実行する意思決定支援システム550を含む装置の上へとダウンロードするために利用可能である。
【0227】
一部の実装形態では、未加工の分注データのデータ品質を向上させるための、意思決定支援システム550の上記で識別されたデータ要素またはモジュールのうちの一つ以上が、前述のメモリ装置のうちの一つ以上の中に保存され、かつ上述の機能を実行するための命令のセットに対応する。上記で特定されたデータ、モジュール、またはプログラム(例えば、命令のセット)は、別個のソフトウェアプログラム、手順、またはモジュールとして実装される必要はなく、それ故にこれらのモジュールの様々なサブセットは、様々な実装で組み合わされてもよく、またはそうでない場合は再配置されてもよい。一部の実装形態では、メモリ492および/または590は、上記で特定されたモジュールのサブセットおよびデータ構造を任意選択的に保存する。さらに、一部の実施形態では、メモリ492および/または590は、上述されていない追加的なモジュールおよびデータ構造を保存する。
【0228】
一部の実施形態では、未加工の分注データのデータ品質を向上させるための意思決定支援システム550は、スマートフォン(例えば、iPhone)、ラップトップ、タブレットコンピュータ、デスクトップコンピュータ、またはその他の形態の電子機器(例えば、ゲーム機)である。一部の実施形態では、意思決定支援システム550はモバイルではなく、また一部の実施形態ではモバイルである。
【0229】
図5Cは、本開示による、データ収集装置200からの分注データの品質を向上させる方法を図示し、また方法を説明する目的で、以下の用語が使用される。
【0230】
分注または分注イベントは、インスリンが針から出るか否かにかかわらず、または身体の中へと注射されたか否かにかかわらず、ペンの起動である。
【0231】
プライムまたはプライミングイベントは、注射に対する任意の分注準備である。これは、新しいカートリッジのプライミングだけでなく、注射ごとの前の日常的なフローチェックを含む。
【0232】
注射または注射イベントは、医薬が身体の中へと注射されると推測される、分注イベントである。
【0233】
セッションは、ユーザーがインスリンの単一の標的用量を取ることを意図する時間内にクラスター化された、一連の「プライム」および「注射」の分注のシーケンスである。単一のセッションは、用量分割、ダイヤル制限、またはカートリッジ交換のために、複数回の注射を有してもよい。
【0234】
パターンは、プライムおよび注射の一つの特定のシーケンスであり、しばしば、「ppi」(プライム、プライム、および注射)または「pii」(プライム、注射、および注射)のように省略した表現で標記される。各パターンは、セッションを含む分注の解釈である。各分注の医薬526の量は分かっているので、正しいパターンを特定することは、セッション注射用量534を決定することに等しい。
【0235】
セッション注射用量は、ユーザーがセッション中に注射することを意図したインスリンの量である。
【0236】
最大尤度用量は、セッション注射用量のルールベースのアルゴリズムの最良の推定値である。
【0237】
ラベル付け率は、最大尤度用量が意思決定支援システムに通信して戻され、最大尤度用量の値でセッション注射用量を割り当て、かつ推定パターンでセッションにラベル付けする、セッションの割合である。ユーザーは、残りの部分に手動でラベル付けするように求められることになる。セッションにラベル付けするという決定は、信頼性スコアに基づくものである。信頼性スコアは、ラベル付け率に影響を与える信頼性閾値に対して評価される。ラベル付け率は、選択したアルゴリズムパラメータ、すなわち、信頼性閾値の選択によって、0%から100%までの任意の場所に設定することができる。
【0238】
図5Cを参照すると、参照番号701は、プロセスにおける個々の工程を番号付けするためのインデックス番号を表す。プロセス工程710に対してはインデックス番号701~1=1であり、またプロセス工程712に対しては701~2=2などとなっている。長方形702は、前回セッションの推定に基づいて、用量の事前確率分布を決定することに関するプロセスを表す。長方形703は、現在のセッションの情報に基づいて用量の確率を決定することに関するプロセスを表す。
【0239】
データのセッションへのセグメント化
ブロック710。注射装置を接続するソリューションは、タイムスタンプ付きの分注記録のストリームを提供する。これらは、図5Cで工程710に示され、また図6および図7にさらに図示されるように、用量推定を進行できるようになる前に、論理セッションへとセグメント化される必要がある。セッションは、何らかのインスリンを取ることを決定し、かつそのタスクを完了するユーザーに対応する。
【0240】
セグメント化は、三つのパラメータによって制御される。当初の分注は、新しいセッションを開始し、タイマーをゼロにし、そして次の分注は、図6に図示するように、sessionWindow(761)秒が経過するまでこのセッションに自動的に含まれる。得られたセッション長さと両側のギャップとの間の比がsessionLengthRatioよりも小さく、かつタイマーが依然としてsessionWindowMaxより小さいことを条件に、後の分注は依然として含まれてもよい。これがもはや真ではなくなると、次の分注が新しいセッションを開始し、プロセスを繰り返す。
【0241】
以下の実施例では、また図6に図示するように、分注a、b、c、d、e、fでは、
{a,b}は、t-t<sessionWindow(761)なので、一つのセッションを含む。t-t>sessionWindowsMax(762)なので、分注イベントcは、新しいセッションが開始する。分注イベント{c,d,e}は、セッションを以下のように含む:
sessionWindow(761)<t-t<sessionWindowMax(762)、ただし、
(t-t)/(t-t )<sessionLengthRatio、および
(t-t)/(t-t )<sessionLengthRatioであることを条件とする。
【0242】
-t>sessionWindowMax(762)なので、分注イベントfは、新しいセッションを開始する。
【0243】
予想用量の決定
ブロック712。予想用量を決定する工程は、工程712で行われ、図8A図8Dにさらに図示する。現在のセッションに関するいかなるデータもない場合でさえ、何らかの用量が他の用量より可能性が高いと決定することが可能である。用量の尤度に関する情報は、意思決定支援システムまたは類似の過去もしくは以前のセッション713によって与えられる用量ガイダンスによって得ることができる。以前のセッション履歴に基づく予想用量は、expectedDoseMethod=’history’を設定し、かつdoseHistoryパラメータを調節することによって選択される。同様に、expectedDoseMethod=‘dose guidance’を設定する場合、用量ガイダンスが使用される。doseHistoryパラメータは、重みを時刻の類似性、前回セッション以来の時間における類似性、およびデータの経過年数によって設定し、最近の用量をより強く重み付けした加重平均を制御する。重み付け関数の減少は、データの性質に応じて、ガウス分布、指数関数的、または線形とすることができる。図8Aは、セクション化工程710で作製されたセットセッションを含むデータ構造の構築を図示する。セッション530のセットは、いくつかのセッションLを含み、各セッションは、説明されたアルゴリズムによって推定されるセッション注射用量534、時刻535、およびセッション間の時間536を含む。
【0244】
これらの三つの重みに寄与するものはすべて、コード内で完全に調節可能であり、またアプリケーションに対して調節する必要があることに留意することは価値がある。経時的な重みの割り引きに対する指数関数的な減衰率は、ボーラスレジメンでは28日、基礎レジメンでは10日の半減期を用いて設定することができる。時間における類似性のために、例えば、ガウス減衰因子を使用することが可能であり、重みは+/-3時間で50%である。セッション間の時間長さの場合、ガウス減衰因子は、例えば、ボーラスレジメンに対しては±2.5時間で50%、ボーラスに対しては1e20とすることができ、これは、基礎レジメンにおいてこのセッション間の時間重みを効果的に無効化する。基礎インスリンの適用に対しては、注射はより定期的であるべきである。
【0245】
したがって、図8Aに図示されるように、各以前のセッションに対して、記録532には、セッション注射用量54、時刻535、および前回セッションに対する時間を特定するセッション間の時間が関連付けられる。1~Lで実行されるセット内の各セッションiに対して、およびセッションがデータ構造として図8Bに図示されるものに対して、対応する重み時刻543と、重みセッション間の時間544と、重みセッションの経過年数545が計算され、これは、対応するデータ構造として図8Cに図示される。三つの重み543、543、545は、組み合わされた時間重み546へと組み合わせることができる。重みは、過去の時間から、そして現在のセッションiの直前(i-1)のセッションまで評価される。

[A1]明確性の指摘に関連して、請求項5を請求項3に従属させるか迷ったのですが(直接的には指摘されていません)、クレームの文言上、請求項1~4のままでも通る可能性があると思ったので(請求項5は、あえて請求項1~4を引用する意図であると思うので)、引用関係は補正しませんでした。
ただ、この「分布」は明らかに請求項3の文言を受けていると思いますので、「予想総注射量の分布」としています。
【0246】
以前のセッション548に対する組み合わされた時間重みの合計の値は、以前の確率分布を継続して決定するために十分なデータが存在するかどうかを決定するために使用することができる。合計548の値は、経験的に推定された閾値と比較される。
【0247】
十分に類似した以前のデータがある場合、組み合わされた重みを、各セッションに対するセッション注射用量と掛け合わせて、平均555への入力と呼ばれる分布の平均に対する寄与を提供することができる。現在のセッション前の各セッションからすべての入力を平均555に追加することによって、以前の確率分布に対する加重平均が取得され、これもまた、予想用量558と呼ぶことができる。同様に、加重分散は、分散(w σ )556への入力を計算し、現在のセッションの前にセッションからのすべての入力を加えることによって計算することができる。wは重みを示し、σ は分散を示す。
【0248】
図8Dは、現在のセッションiが以前の確率550への入力のセットと関連付けられる現在のセッションを図示し、また事前分布552への各入力は、セッション注射用量553を含む。セッション注射用量553は、セッション注射用量534と数字的には同一であるが、ここでは事前分布を計算するために使用されることを図示するために新しい参照番号が与えられる。事前分布への入力はまた、組み合わされた時間重み554、平均への入力555、および分散への入力も含む。入力555、556は、セッションi(558)に関連する平均への入力の合計、およびセッション559に対する分散への入力の合計を提供するために合計される。セッション注射用量553は、セッション注射用量534と数字的には同一であるが、ここでは事前分布を計算するために使用されることを図示するために新しい参照番号が与えられる。同様の、組み合わされた時間重み554は、組み合わされた時間重み546と数字的に同一であるが、ここでは事前分布を計算するために使用されることを図示するために新しい参照番号が与えられる。
【0249】
用量確率の設定
ブロック714。加重平均558および加重分散559は、図9Aに図示されるデータ構造および図9Bに示されるガウス分布を用いて図示されるように、整数用量に対して事前用量確率を計算するために使用される。この工程は、図5ではボックス714を用いて表される。事前分布は、十分な事前知識または用量ガイダンスがない場合、均一、すなわち、一定であってもよい。これは、意思決定支援がなく、またユーザーがシステムにおいて新しすぎるため有意義な用量履歴を蓄積していない場合に一般的である。
【0250】
図9Aは、工程714で使用することができるデータ構造の例を示し、セッション注射用量は整数であると想定されるので、用量確率を評価するための整数用量560のセットが作成される。セッション用量が、用量の割合を含む実数である場合、実数の用量のセットとして対応する可能性のあるセッション用量が生成されるべきである。可能性のあるセッション用量は、注射装置の性質によって決定される。この例では、各整数用量562に対して、用量事前563が評価される。用量事前は、予想用量558に対応する平均および分散、ならびに加重分散559を有する事前分布に基づいて評価される。予想用量558は、図9Bでも用量事前563とともに表される。
【0251】
以下、方法は、図5の工程716に表される現在のセッションに基づいて情報を評価することに進む。
【0252】
許容可能なパターンのリスト
ブロック716。N回の分注を有するセッションは、最大2通りのやり方があると解釈することができ、例えば、N=2では、パターンの数は4であり、「p」がプライムを表し「i」が注射を表す表記法を用いると、パターンは「pp」、「pi」、「ip」、または「ii」のいずれかとすることができる。しかし、これらのすべてが妥当であるわけではなく、また説明された例では、(1)すべてのセッションが注射をもたらし、かつ(2)その後に行われる別の注射が依然としてセッションにない限り、注射後にはプライムが発生しないと想定されている。注射後のプライムは、カートリッジが耐久性のあるペンにおいて交換された場合、または新しい予め充填されたペンが使用されている場合に、セッション中に発生する可能性がある。
【0253】
カートリッジ交換は、自動検出機構がない再利用可能なペンでは特に課題である。現在のアルゴリズムでは、カートリッジ交換について、または新しいペンが使用されるとき、常に通知されることを想定している。これは、例えば、現在のカートリッジの使用を追跡し、かつ寿命が近づいたらUIを通してユーザーに「しつこく表示」し、交換されたかどうかを確認/拒否することによって達成することができる。新しいペンを使用する場合、新しいペンは一意の識別コードでそれ自体を特定する。
【0254】
許容可能な注射数は、分割用量の尤度、および構成可能なパラメータmaxInjectsSimpleにも依存する。それ故に、カートリッジ交換を除外し、かつmaxInjectsSimple=2を設定することにより、最高で4回までの分注に対する許容可能なパターンは、下記の表にリストされるとおりである。
【0255】
【表5】
【0256】
表は、任意の数の分注に拡張することができる。この例では、プライムの数には上限がないが、注射数には上限がある。予想用量がペンのダイヤル制限より大きい場合、N=3のときは「iii」、N=4のときは「piii」を許容する別の注射が許容されることになる。セッションがカートリッジ交換を含む場合、パターン「ipi」、「ippi」、「pipi」も可能となることになる。
【0257】
図10は、本方法で使用するための可能性のあるデータ構造の実施例を示しており、データ構造は、セッションIに対する分注の数569、およびO個のパターン572を含む許容可能な分注パターンのセット570の構造化を図示する。
【0258】
パターン重み(パターン事前)の設定
ブロック718。分注サイズを見なくても、一部のパターンは他のパターンよりも可能性が高い。これは工程714と類似しており、ここで可能性のあるセッション用量に対する事前確率が見出された。パターンに対する事前分布への入力は、(i)ユーザーの過去のプライミング挙動であり、過去にプライミングされていない場合、それらは、今からプライミングを開始される可能性が低く、逆も同様である。(ii)現在のセッションにおける分注間の時間間隔。具体的には、3.5秒より長い間隔は注射に先行する可能性が高く、一方で3.5秒より短い間隔はプライミングに先行する可能性が高い。しかしながら、間隔を決定することはまた、例えば、3秒および4秒のように3.5秒に近い可能性がある。
【0259】
図11Aは、前回セッションすべてに対するプライミングインジケータ682を含むプライミングインジケータ680のセットを含む、セッションiに対するデータ構造を図示する。各プライミングインジケータ682は、バイナリ2進法、例えば、1または0であり、また現在のセッションに対するプライミング重み684を計算するために使用することができ、これは次に、プライミングを有するセッションの割合である。プライミングインジケータを引数として使用する他の線形関数的または指数関数的な重み関数を企図することができる。
【0260】
図11Bは、セッションiの中でセクション化された分注イベント592を図示する。セッション内の時間681により考慮される分注イベント前の時間が定義されるため、二つのセッション内の時間681をもたらすセクション内には、三つの分注イベント592がある。したがって、最初の分注イベント592~i~1は、セッション内の時間681を有することができない。セッション内の時間の下限769は、プライムまたは注射のいずれかに対する選好を決定するパラメータを表す。セッション内の時間の下限769は、例えば、3.5秒とすることができる。図示した例では、セッション内の時間681~i~2は、セッション内の時間の下限769より小さく、これは、分注イベント592~i~2がプライミングイベントである可能性が高いことを意味する。分注イベント592~i~2は、セッション内の時間の下限769より大きいため、注射である可能性が最も高い。
【0261】
どのパターンが許容可能であるかが決定された後、各々は最初に等しい確率を有する。これらの確率は、説明された実施形態では、(1)ユーザーの「プライミング確率」(過去にどの程度の頻度でフローチェックを実施するのを観察したかに基づく)、および(2)このセッション内の分注間のタイミング(セッション内タイミング)の二つの要因に基づいて調節される。
【0262】
項目(1)に対しては、0~1の「プライミング確率」が維持される。プライミング重みは、ユーザーが少なくとも一つのフローチェックまたはプライミング分注を実施した過去のセッションの割合として理解することができる。別の実施形態では、ずっと以前のセッションがより最近のセッションと同程度にカウントされないように、指数関数的な「忘れ因子」が適用される。そうでない場合は、ユーザーが自らの挙動を変更した場合にアルゴリズムが十分に早く適合することができないことになる。これがパターン重みに影響を与えるやり方は、以下のとおりである:当初、各重みは1.0である。プライミングを有する各パターンに対して、重みは以下のように修正される:

patternWeight=patternWeight*2(2*primeProb-1)

またプライミングを有しない各パターンに対して、重みを以下のように修正する

patternWeight=patternWeight*2(1-2*primeProb)
【0263】
ユーザーがいずれのやり方でも傾向を示さない場合(primeProb=0.5)、重みが1倍され、同じままにされることが留意される。ユーザーがプライムする傾向にある場合、プライミングを有するパターンはより大きい重みを得るが、プライミングを有しないパターンはより小さい重みを得て、ユーザーがプライミングしない傾向にある場合はその逆も同じである。
【0264】
項目(2)に対しては、調査は、分注間の3.5秒のギャップは良好なカットオフであり、より長いギャップは、より頻繁に「pi」(フローチェック、続いて注射)と関連付けられ、一方でより短いギャップは、より頻繁に「pp」(2回のフローチェック)と関連付けられる。セッション内に2回の分注しかない場合、パターン「pp」はいずれにしても許容されないため全く効果がないことに留意されたい。少なくとも1回の注射が必要である。しかし、3回以上の分注を有するセッションに対しては、セッション内の時間に関する情報を使用することができる。
例示的な実施形態では、重み計算は、以下のやり方で計算することができる:

patternWeight=patternWeight*
1.2(length(shortPPs)+length(longPIs))/1.2(length(longPPs)+length(shortPIs))
ここで、「length(longPPs)」は、パターン内の「pp」分注対の数のカウントであり、「length(longPIs)」は、パターン内の「pi」分注対の数のカウントであり、ここで、実際の時間間隔は、どちらも長く、例えば、t>3.5秒である。「length(shortPPs)」は、パターン内の「pp」分注対の数のカウントであり、「length(shortPIs))」は、パターン内の「pi」分注対の数のカウントであり、この例では、実際の時間間隔は、短く、例えば、t<3.5秒である。
【0265】
したがって、例えば、分注1と分注2との間に2秒、および分注2と分注3との間に5秒を有する3回の分注の現在のセッションが考慮される。許容可能なパターンは、ppi、piiである。
【0266】
パターンppiについて、分注対は以下のようにカウントされる:
length(longPPs)=0、length(shortPIs)=0および(length(longPPs)+length(shortPIs))=0、および
length(shortPPs)=1、length(longPIs)=1および(length(shortPPs)+length(longPIs))=2。
【0267】
対応するパターン重みは、次いで以下のように計算することができる:
patternWeight(“ppi”)=patternWeight(“ppi”)*1.2/1.2=patternWeight(“ppi”)*1.2

パターンppiに対して、パターン対は以下のようにカウントされる:
length(longPPs)=0、length(shortPIs)=1および(length(longPPs)+length(shortPIs))=1、および
length(shortPPs)=0、length(longPIs)=1および(length(shortPPs)+length(longPIs))=1。
【0268】
対応するパターン重みは、次いで以下のように計算することができる:
patternWeight(“pii”)=patternWeight(“pii”)*1.2/1.2=patternWeight、
【0269】
それによって、patternWeight(“ppi”)>patternWeight(“pii”)となり、パターン事前は、それによって、この実施例では、パターン確率がパターン重みで乗算され、かつブロック722に関連して説明されるように1に正規化されるときに、セッションを「ppi」としてラベル付けする確率を増加させる。
【0270】
パターン確率の計算
ブロック720。セッション内の各分注について、分注が注射またはプライムである確率を、用量サイズ、すなわち、P(注射)対分注サイズ曲線またはP(プライム)対分注サイズ曲線に基づいて表現するために、確率曲線が使用される。分注サイズが大きいほど、注射である可能性が高くなり、プライムである可能性が低くなる。各セッションにおける分注の分注サイズは、パターン確率の計算に入力721する。
【0271】
使用される実際の曲線は、例えば、良好なS形状を有するerf(x)(ガウス分布の積分)とすることができる。スケーリングは薬剤タイプに依存する。基礎インスリンについては、現在のユーザーに対して追跡された平均プライム/注射サイズが使用され、これによってアルゴリズムが、注射が通常はるかに大きい、例えば20単位などであることが分かっている場合に、より大きいプライミング分注(3~4単位またはそれ以上)を拒否する可能性が低くなる。ボーラスインスリンについては、注射用量はより一貫性が低く、またしばしばより小さく、そのためこの例では、erf(x)は、4単位におけるプライム/注射間の50/50交点を有する固定したS曲線となるように選ばれる。さらに、セッション内のすべての分注が≦4単位である場合、候補注射は実際には注射であると自動的に想定する。これは、非常に小さい用量を拒否するのを回避する。erf(x)曲線が決定されると、各パターンの確率は、P(注射)とP(プライム)との単純な積=1-P(注射)因子となる。例えば、{3,8}を分注するセッションでは、パターン「pi」の確率は[1-P(3は注射である)]*P(8は注射である)である。
【0272】
図12Aは、2回のボーラス分注に対する確率曲線erf(x)を図示する。左パネル770~1では、パターン「pi」に対する確率を示す。点線の曲線は、分注がプライムであることに対する確率を示し、分注サイズが4ユニット未満である場合、分注イベントはプライムである可能性が最も高い。同様に、実線の曲線は、分注が注射であることに対する確率を分注サイズの関数として示す。右パネル770~2は、パターンiiに対する確率を示す。円は、現在のセッションに対する実際の分注サイズを表す。図12Bは、現在のセッションiに対して関連付けられたパターン確率607に対するデータ構造を図示する。
【0273】
パターン確率の更新(事前を使用)
ブロック722。各許容可能なパターンに対してサイズベースの確率が得られた後、工程718からのパターン重みの因子に対してベイズの定理が適用される。サイズベースの確率にパターン重み(事前分布)を掛け、結果を正規化すると、全体的なパターン確率の合計は1となる。
【0274】
図13は、現在のセッションiのセクション化された分注イベント592および許容可能なパターン572の構造を図示するデータ構造を示す。許容可能なパターンは、プライミング重み684およびセッション内の時間重み676を含むパターン重み674、ならびに分注サイズ607に基づくパターン確率と関連付けられる。上述のように、パターン重み674および分注サイズに基づくパターン確率607に基づいて、組み合わされたパターン確率688を計算することができる。
【0275】
パターン確率の用量確率への変換
ブロック724。パターンから用量へのマッピングは、「多対1」である。すなわち、複数のパターンは、同じセッション用量をもたらす場合があるが、パターンから用量へ進む曖昧性はない。
【0276】
例: セッション{1,2,1,7}。許容可能なパターンは、「pppi」、「ppii」、「pipi」、「ippi」である。
可能性のある用量は以下の通りである:
7単位(「pppi」)
8単位(「ppii」、「ippi」)
9単位(「pipi」)
【0277】
したがって、
P(用量=7)=P(パターンは「pppi」である)
P(用量=8)=P(パターンは「ppii」である)+P(パターンは「ippi」である)
P(用量=9)=P(パターンは「pipi」である)
P(用量<7)=P(用量>9)=0
【0278】
図14は、多数の可能性のある用量612を含む、可能性のある用量610のセットの構造化を図示するデータ構造を示す。各可能性のある用量は、一つ以上の対応する可能性のあるパターン614を含み、また各パターンは組み合わされたパターン確率688を含む。可能性のある用量が、複数の可能性のあるパターンを含む場合、各パターンの可能性を合計して、問題の可能性のある用量に対する組み合わされたパターン確率617の合計を提供する。パターン確率617の合計は、各可能性のある用量に対して計算される。
【0279】
用量確率の更新
ブロック726。工程724で取得された用量確率は、工程714からの事前分布と乗算され、その合計が1になるように再正規化される。これはベイズのルールとして知られる。結果として得られる分布は、セッション用量に関する「事後」分布と呼ばれる。
【0280】
可能性が最も高いセッション用量は、最も高い確率、すなわち、argmax(事後分布)を有する用量である。引数は最大値を生成する。これは最も妥当な推測であるが、「良好な」推測である場合もあればそうでない場合もある。推定の適切性を決定することは、工程728に説明される信頼性スコアおよび評価の目標である。事後分布において可能性が最も高い用量は、最大尤度の推定値である。
【0281】
図15は、パターン確率617の対応する合計、および対応する整数用量624、および用量事前626を有する可能性のある用量の構造化を図示するデータ構造を示す。二つの確率は両方ともセッション用量サイズに関するものであり、したがって、可能性のある用量の組み合わせ確率627と組み合わせることができる。この場合も、この用量627は、合計を1に正規化することができる。
【0282】
信頼性スコアの計算
ブロック728。直感的に、セッション用量の推定値の最大尤度における信頼性を測るいくつかのやり方がある。

(i) データ確率。正規化前の工程720の確率はどの程度大きかったか(または小さかったか)?
(ii) 予想用量の一致。このセッションに対する予想用量があった場合、それは最大尤度の用量推定値からどの程度離れていたか?
(iii) 曖昧性。最大尤度用量推定値は、事後セッション-用量分布において支配的であったか、または、それよりはるかに低くはない他のピークがあったか?
(iv) プライミングの一貫性。最大尤度用量推定値を、成功パターン(例えば、「pi」または「ii」)まで遡って、これは、ユーザーの履歴的なプライミングの傾向と一致するか?
【0283】
これらの四つの例示的な信頼性指標(より多くを追加してもよい)は、信頼性スコアへと変換することができ、またConfidenceWeightパラメータを使用して個別に構成可能である。全体的な信頼性スコアは、min(conf. score 1, conf. score 2, …)である。
【0284】
様々な信頼性指標が選択され、また対応するConfidenceWeight変数を設定することによってスコアが調整される。慣例により、信頼性指標は、その対応する重みがゼロである場合、効果を有するべきではない。
【0285】
全体的な信頼性はmin(すべての信頼性指標)である。全体的な信頼性は、閾値(confidenceThreshold)に対して比較されて、セッション注射用量にラベル付けするか、またはユーザーが手動でラベル付けするためにそれをユーザー相間に戻すかを決定する。
【0286】
観察されたセッションデータの確率を使用して、
指標、最大尤度用量において評価される。信頼性スコアの式は:
pDataConfidence=1-(pDataConfidenceWeight*(1-pData))、
そのため、重みが1.0であるとき(pDataConfidenceWeight=1.0)、pDataConfidence=pDataである。
【0287】
指標、予想用量と最大尤度用量との間の差は、
信頼性指標としてどうか?信頼性スコアは、以下の式に従う。
expDoseConfidence=1-expDoseConfidenceWeight*(MLDose- ExpDose)/sqrt(Variance),
expDoseConfidenceWeight=0.15。conf閾値が0.7の場合、標準偏差は最大2。
【0288】
指標、事後セッション注射用量確率の出力における曖昧性。信頼性スコアの式は:
ambigConfidence=max(0,1-(ambigConfidenceWeight*(1-max(pDoseOut))/max(pDoseOut))),
【0289】
それにより、重みが1で、最大尤度用量確率が0.5に下がったとき(その他の用量確率の合計も0.5である)、ambigConfidenceがゼロに低下する。ambigConfidenceWeight=0.75。
【0290】
指標、信頼性指標としてのプライミング/非プライミングの一貫性?スコアは、primeProbまたは1-primeProbのどの値で信頼性がゼロに向かって減少し始めるかを決定する。例えば、0は、consistencyConfidenceが常に1であることを意味し、1は、そのプライミングまたは非プライミング履歴が完全である場合にのみ、consistencyConfidence=1を意味し、0.5は、そのプライミング履歴が50/50と完全の間のどこかにある限り、consistencyConfidence=1を意味する。consistencyConfidenceWeight=0.5。
【0291】
図16は、信頼性指標のセット630と、信頼性スコアのセット640における対応する信頼性スコアとを含む、信頼性指標を構造化するためのデータ構造を示す。すべての信頼性スコア642、643、644、645が評価され、最小信頼性スコアが信頼性閾値539に対して評価される。
【0292】
信頼性>閾値の場合のセッションのラベル付け
ブロック730。最少信頼性スコアは、信頼性閾値539(例えば、0.7とすることができる)に対して比較される。最少信頼性スコアが信頼性閾値よりも大きい場合、セッションは「ラベル付き」であり、ユーザーに確認を求める必要はない。信頼性スコアが信頼性閾値よりも小さい場合、ユーザー相間は、ユーザーに注射用量を確認するように求める必要がある。インテリジェントなフィードバックは、信頼性が低い理由に応じて適合することができ、例えば、プライミングの一貫性があるかどうかをユーザーに尋ね、ユーザーは「プライミングを忘れましたか?」などと尋ねられる可能性がある。所与のデータセット上のラベル付け率は、アルゴリズムの固有の特性ではないことを覚えておくことが重要である。ラベル付け率は、信頼性閾値に応じて0~100%の任意の値を簡単に選ぶことができる。用量推定の精度とユーザー許容との間のトレードオフに基づいて、標的ラベル付け率を選ぶことが望ましい。
【0293】
図17は、二つの分注のパターンが不明である、セッション詳細プロットにおけるラベル付けされていないセッション772を概略的に図示する。図はまた、ラベル付きセッション773も図示し、ここで分注は、最大尤度用量を提供する可能性が最も高いパターンでラベル付けされている。ラベルインジケータ538は、信頼性スコア評価の結果に応じて、セッションにラベル付けするかどうかを表すことができる。
【0294】
[実施例3]
[時間のセクション化]
図18は、患者調査プロットを示す。調査プロットは、144セッションの詳細プロットを含む最初の最大144セッションを示す。最初の5セッション774aはラベル付けされておらず、後続の5セッション774bはラベル付けされ、セッション774cはラベル付けされておらず、774dはラベル付けされている。セッション詳細ブロット間の長方形は、セッション間の時間を表す。グレースケールに起因して、カラー表示を識別することは不可能である。そうでない場合は、「ラベル付けされた」、「ラベル付けされていない」、「注射」、「プライム」を表すことになる。セッション詳細ブロットの下方の数字は、分注された医薬のサイズを表す。図18は、分注をセクションへとセクション化する工程710に関する。
【0295】
予想用量の決定
図19Aは工程712に関し、調査プロットに示される144セッションに対する「履歴重み」プロットにおける先験的情報を示す。履歴重みプロットは、最も新しいものから最も古いものへとソートされた過去のセッションの、現在のセッションへの適用可能性を要約する。中央パネルに示される実線778は、セッションの経過年数による重みであり、ソーティングされているため、常に減少曲線である。左パネルの長い破線777bと、中央パネルの対応する黒丸777aは、セッション間のギャップ長さの類似性による重みである。右パネルの短い破線776bと、中央パネルの対応する黒丸776aは、時刻の類似性による重みである。1.0に近い点が多いほど、「予想用量」を推定するときに過去のセッションがより適用可能である。
【0296】
現在のセッションに対するすべての組み合わされた重み548の合計(ここでは8.6)は、予想用量を計算できるようになる前に閾値を超える必要がある。重み548の合計は、図19Bの左パネルのデータ構造内に示される。
【0297】
用量確率の設定
この実施例では、加重平均を計算するのに十分な履歴(8.6は経験的な閾値を超える)があり、これは「予想用量」558である。この場合、予想用量は7.9Uである。事前用量確率はガウス分布であり、図19Bのプロット767では黒丸と実線で示されている。平均は予想用量558にあり、分散は加重平均における過去の用量の分散に比例し、事前分布の計算は工程714に関連する。
【0298】
許容可能なパターン
図19Cは、分注の数569、および許容可能なパターン570を含む、許容可能なパターンのセット570を有するデータ構造を示す。
【0299】
パターン重みの設定
図19Dは、パターン重みを有するデータ構造を示す。セッションには二つの分注のみがあるため、プライミングに関するパターン重みのみを使用することができる。各パターンは、過去のプライミング挙動に基づいて重みを得る。この場合、患者は非常に一貫してプライムを行う患者であるため、分注サイズを考慮する前でさえも、「pi」に強く偏っている。図19Dは、重みを割合として考慮する場合、この場合のプライミング重み684が0.79であることを示すが、しかし、プライミングの習慣を変更するのがどれほど容易であるかまたは困難であるかに応じて、引数としての割合を有する指数関数的減衰を論拠として考慮する重みもまた可能である。
【0300】
パターン確率の計算
セッション内の分注は分注サイズ{2,9}を有する。考察されたルールを適用することによって、パターン572には二つの可能性のある解釈、「pi」および「ii」のみがある。各パターンは、図19Eに確率プロットで図示される。パターン「pi」の確率はおよそ1であり、またパターンiiの確率はおよそ0である。これは、パターン確率607として図19Eにデータ構造で図示される。
【0301】
パターン確率は、分注サイズに基づいて評価することができる。パターン重みからとは別個に、各パターンは、分注サイズに基づいて確率を得る。より大きい分注は、注射である可能性がより高い。図19Eにおける確率プロットは、各分注に対するP(プライム)またはP(注射)対用量サイズを示す。ボーラス薬剤については、曲線は固定され、4uにおいて50/50の確率で交わる。バブルは、曲線が評価される点、すなわち2uおよび9uである。P(2はプライムである)*P(9は注射である)は1に近いため、「pi」は高い確率となる。P(2は注射である)は非常に小さいため、iiは低い確率を有する。
【0302】
パターン確率の更新
図19Fは、パターン確率を更新する工程722を図示する。左パネルでは、現在のセッションiに対する分注イベントのセット590が、対応する分注サイズ592とともに示されている。右パネルには、現在のセッションiに対する許容可能な分注パターンのセット570が示されている。分注サイズに基づくパターン確率は、パターン重みで更新されて全体的なパターン確率に到達し、本質的に「pi」に対して100%であり、「ii」に対して0%である。セッション内の時間に基づく重みは、2回の分注のみのセッションに対しては利用できない。
【0303】
パターン確率の用量確率への変換
図19Gは、可能性のある用量610のセットを含むデータ構造を示し、各可能性のある用量612は、可能性のあるパターンを含む。図19Gは、パターン確率を用量確率へと変換する工程724に関する。P(“pi”)=xおよびP(“ii”)=yの場合、P(用量は9)=xであり、P(用量は11)=yであり、P(用量は9でも11でもない)=0である。
【0304】
用量確率の更新
次に、用量事前と再正規化(ベイズルール)とを乗算することによって、これらの用量確率を更新する。結果は、最終的な(「事後」)用量確率分布617である。最大事後用量確率は、「最大尤度」用量と呼ばれる。
【0305】
図19Hは、現在のセッション532~iに対する可能性のある用量のセット610を含むデータ構造を示し、各可能性のある用量612は、組み合わされたパターン確率617、対応する整数用量624、および工程714で取得された用量事前626の合計を含む。次いで、確率617、626は、可能性のある用量627の組み合わせ確率まで組み合わされる。可能性のある用量627の組み合わせ確率は、合計が1になるように正規化され、可能性のある用量の正規化された組み合わせ確率を得る。9である可能性のある用量612に対する可能性のある用量の正規化された組み合わせ確率628は1であり、すなわち、最大尤度用量は9Uである。
【0306】
信頼性スコアの計算
信頼性スコア。ここで用量推定値(9U)が得られたが、これが正しい可能性はどの程度だろうか? これは信頼性スコアのドメインである。現在、四つのタイプの信頼性スコアがあり、すべて調整可能である。推定値は、予想用量とどの程度一致しているか? 正規化する前の選択されたパターンおよび用量確率(pData数)は、どの程度可能性が高いか? 最終的な(事後)確率はどの程度曖昧か?すなわち、1より大きい非自明な確率を有する回答か? 選択されたパターンは、この患者のプライミング履歴と一致しているか? 全体的な信頼性はこれらのスコアの中で最小であり、この場合、「ExpDose」(予想用量の一致)である。0.96の全体的な信頼性レベルは、閾値0.7より大きく、またセッションはラベル付けされ、かつセッション用量は9Uの値に割り当てられる。セッションはラベル付けされていなくても、依然としてその後のセッションにおけるその後の用量推定値の評価に使用することができる。
【0307】
まとめ
セッション{2,9}は2つの方法でしか解釈することができない。2は注射に対しては小さいが、プライムでは典型的であり、またこの患者は一貫してプライミングしているため、iiよりも「pi」の方が、はるかに可能性が高い。推定用量は、この時刻およびセッション間のギャップに対する用量平均に非常に近く、確率は高く、最終的な確率に曖昧性はなく、プライミング挙動は一貫しており、したがって信頼性は高い。信頼性は閾値(シミュレーションでは70%)を超えているので、セッションは正式にラベル付けされる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8A
図8B-8D】
図9A-9B】
図10
図11A-11B】
図12A-12B】
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19A-19C】
図19D-19E】
図19F
図19G-19H】
図19I
図19J-19K】