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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】充填済み薬物送達装置のゼロ点調整
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/19 20060101AFI20240411BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
A61M5/19
A61M5/315 550P
A61M5/315 580
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021522346
(86)(22)【出願日】2019-10-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2019079155
(87)【国際公開番号】W WO2020084109
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-09-28
(31)【優先権主張番号】18202896.9
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】イェンセン, ニコライ ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】ベンディクス, クラウス
【審査官】田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/072233(WO,A1)
【文献】特開2016-005610(JP,A)
【文献】特開2014-221278(JP,A)
【文献】特表2018-516690(JP,A)
【文献】特表2013-544160(JP,A)
【文献】特表2016-514605(JP,A)
【文献】特表2018-519091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/19
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カートリッジ本体(21)およびピストン構造(25、29)を有する薬物カートリッジ(20)を担持するカートリッジホルダ(11)を含む、カートリッジユニット(10)と、
用量排出ユニットであって、
長手方向軸に沿って延在している、ハウジング(2)と、
前記薬物カートリッジ(20)を加圧するためのピストンロッド(45)であって、前記ピストンロッド(45)が、前記ピストン構造(25、29)と接触するよう適合された接触面(48)と、非自己係止スレッド(46)と、を含む、ピストンロッド(45)と、
前記ハウジング(2)に対して回転式に固定され、かつ前記非自己係止スレッド(46)と係合するナット部材(60)であって、前記ナット部材(60)が、一方向性ラチェット連結(65、68r)の第1の連結部分(65)を担持する、ナット部材(60)と、
前記ハウジング(2)に対して軸方向に固定され、かつ前記長手方向軸の周りで回転可能である、ピストンロッド駆動部材(67)であって、前記ピストンロッド駆動部材(67)が、前記一方向性ラチェット連結(65、68r)の第2の連結部分(68r)と動作可能に連結されている、ピストンロッド駆動部材(67)と、を含む、用量排出ユニットと
含み、
前記ピストンロッド駆動部材(67)および前記ピストンロッド(45)が、回転式に連動し、その結果、前記ピストンロッド駆動部材(67)の第1の方向への回転が、前記ナット部材(60)を通した前記ピストンロッド(45)の遠位移動と関連付けられ、前記ピストンロッド駆動部材(67)の第2の方向への回転が、前記ナット部材(60)を通した前記ピストンロッド(45)の近位移動と関連付けられ、
組み立て前の状態では、前記ナット部材(60)が、前記ハウジング(2)および前記ピストンロッド駆動部材(67)に対する第1のナット部材位置を想定し、ここにおいて、前記第1の連結部分(65)および第2の連結部分(68r)が、係合解除されており、組み立てられた状態では、前記ナット部材(60)が、前記ハウジング(2)および前記ピストンロッド駆動部材(67)に対する第2のナット部材位置を想定し、ここにおいて、前記第1の連結部分(65)および前記第2の連結部分(68r)が、係合しており、それにより、前記ピストンロッド駆動部材(67)を前記第1の方向に一方向に回転可能にし、
前記ナット部材(60)が、前記ピストン構造(25、29)と前記接触面(48)との間の接触が確立された後に、前記ハウジング(2)と前記カートリッジホルダ(11)との間の収束する相対的な軸方向の動きに応答して、前記用量排出ユニットおよび前記カートリッジユニット(10)の組み立て中に、前記第1のナット部材位置から前記第2のナット部材位置への不可逆的な変位を受けるように構成されている
薬物送達装置(1)。
【請求項2】
前記カートリッジホルダ(11)が、前記ハウジング(2)と前記カートリッジホルダ(11)との間の前記収束する相対的な軸方向の動きの間に、前記ナット部材(60)に対して近位に配向された力を加える、近位縁部分(13)を含み、前記近位に配向された力が、前記ナット部材(60)を、前記第1のナット部材位置から前記第2のナット部材位置に移動させる、請求項1に記載の薬物送達装置。
【請求項3】
前記カートリッジユニット(10)が、
第2のカートリッジ本体(31)および第2のピストン構造(35、39)を有する、第2の薬物カートリッジ(30)であって、前記薬物カートリッジ(20)および前記第2の薬物カートリッジ(30)が、前記カートリッジホルダ(11)によって並列に保持されている、第2の薬物カートリッジ(30)をさらに含み、
前記用量排出ユニットが、
前記第2の薬物カートリッジ(30)を加圧するための第2のピストンロッド(50)であって、前記第2のピストンロッド(50)が、前記第2のピストン構造(35、39)と接触するよう適合された第2の接触面(58)と、前記ナット部材(60)の第2のスレッドと係合する第2のピストンロッドスレッド(52)と、を含む、第2のピストンロッド(50)と、
前記ハウジング(2)に対して軸方向に固定され、かつ前記長手方向軸と平行な第2の軸の周りで回転可能である、第2のピストンロッド駆動部材(69)であって、前記第2のピストンロッド駆動部材(69)と前記第2のピストンロッド(50)が、回転式に連動されており、前記第2のピストンロッド駆動部材(69)が、前記ピストンロッド駆動部材(67)と回転式に連結されている、第2のピストンロッド駆動部材(69)と、をさらに含み、
前記第2のピストンロッド(50)が、前記第2のピストン構造(35、39)と前記第2のピストンロッド(50)との間の接触が確立された後に、前記用量排出ユニットおよび前記カートリッジユニット(10)の組み立て中に設定される軸方向に可変な寸法を有する、請求項1または2に記載の薬物送達装置。
【請求項4】
前記第2のピストンロッド(50)が、互いに沿って相対的な摺動運動を受けることができる前部ピストンロッド部分(51)および後部ピストンロッド部分(55)を含み、前記軸方向に可変な寸法が、前記前部ピストンロッド部分(51)および前記後部ピストンロッド部分(55)を軸方向に連動させることによって設定される、請求項3に記載の薬物送達装置。
【請求項5】
前記ピストンロッド駆動部材(67)および前記第2のピストンロッド駆動部材(69)が、前記ハウジング(2)に固定される筐体(70)内に配設されており、前記筐体(70)が、遠位スロット(72)と、前記遠位スロット(72)から軸方向に離間した近位スロット(73)と、を提供され、前記ナット部材(60)が、前記第1のナット部材位置から前記第2のナット部材位置への前記ナット部材(60)の移動中に、前記遠位スロット(72)内の位置から前記近位スロット(73)内の位置へと移動するように適合され、かつ前記ナット部材(60)の前記第1のナット部材位置に向かうその後の移動を防止するよう構成されている、突起部(64)を含む、請求項4に記載の薬物送達装置。
【請求項6】
中央歯車(68)をさらに含み、前記ピストンロッド駆動部材(67)が、第1の歯車歯部(67t)を含み、前記第2のピストンロッド駆動部材(69)が、第2の歯車歯部(69t)を含み、前記ピストンロッド駆動部材(67)および前記第2のピストンロッド駆動部材(69)が、前記中央歯車(68)を介して回転式に連結されている、請求項4または5に記載の薬物送達装置。
【請求項7】
前記第2の連結部分(68r)が、前記中央歯車(68)の部分を形成する、請求項6に記載の薬物送達装置。
【請求項8】
前記第2のピストンロッドスレッド(52)が、自己係止式である、請求項4~7のいずれかに記載の薬物送達装置。
【請求項9】
前記前部ピストンロッド部分(51)および前記後部ピストンロッド部分(55)が、前記カートリッジホルダ(11)内の穴(19)を通したレーザー溶接によって連動されている、請求項4~8のいずれかに記載の薬物送達装置。
【請求項10】
前記薬物カートリッジ(20)が、貫通可能なセプタム(22)によって密封された薬物出口をさらに有し、前記第2の薬物カートリッジ(30)が、第2の貫通可能なセプタム(32)によって密封された第2の薬物出口をさらに有し、前記貫通可能なセプタム(22)および前記第2の貫通可能なセプタム(32)が、前記カートリッジホルダ(11)に対して軸方向に整列するときに、前記第2のピストン構造(35、39)が、前記ピストン構造(25、29)の遠位に位置付けられている、請求項4~9のいずれかに記載の薬物送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して薬物送達装置に関し、より具体的には、単一の用量エンジンを有するツインチャンバー装置を含む、充填済み注射装置のゼロ点調整に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、液体薬物の自己投与のための多くの装置は、経皮的送達、例えば、注射装置もしくは注入ポンプ、または肺送達、例えば、吸入器の技術に基づいている。こうした薬物送達装置の技術分野では、いわゆる充填済み装置といわゆる再利用可能な装置との間に顕著な区別がある。用語「再利用可能な装置」は、ユーザが交換可能な薬物容器を用いる薬物送達装置を示すのに対し、用語「充填済み装置」は、製造業者によって予め装着された交換不可能な薬物容器を運ぶ薬物送達装置を示す。したがって、前者は、複数の薬物容器の排出のために使用されるように適合されるが、後者は、予め装着された薬物容器を空にした後に廃棄されることが意図される。
【0003】
例えば、インスリンまたはglp-1の投与のために糖尿病ケアセグメントで一般的に使用される充填済み注射ペンなどの、充填済み薬物送達装置の大規模製造およびアセンブリでは、寛容鎖は、装置間でわずかに変化する特定の内部構成要素の相対的位置を結果としてもたらす可能性が高い。例えば、摺動可能なピストンを含む薬物含有カートリッジがペンハウジングに取り付けられる場合、ピストンは、薬物の排出のためにカートリッジ内でピストンを前方に押し出すように適合されたペンハウジング内のピストンロッドと完全に整列しない場合がある。結果として、ピストンとピストンロッドとの間の望ましくないクリアランスが確立される場合があり、これは、第1の用量投与の前に初期プライミング行為を実行するユーザによる用量予測可能性を確実にするために排除される必要がある。
【0004】
初期プライミング行為は、ユーザが少量の用量を設定し、送達機構を起動して、設定用量を排出することを含む。それによって、ピストンロッドは、ピストンロッドによって所定の距離だけ遠位に付勢される。ピストンロッドによって移動される所定の距離は、ピストンロッドとピストンとの間のいかなる初期クリアランスも排除するのに十分であるが、少量の薬物がカートリッジから排出される原因にもなる。
【0005】
したがって、充填済み薬物送達装置の初期プライミングは、ユーザに対して課される追加の活動であるだけでなく、必然的に薬物のいくらかの浪費も引き起こす。薬物のこの浪費は、固定用量タイプの薬物送達装置について顕著であり得、これは典型的には、特定の所定の用量の設定のみを許容する。したがって、初期プライミングが不要となるように、ピストンとピストンアクチュエータが常に物理的に接触する、充填済み薬物送達装置を提供することが非常に望ましい。
【0006】
WO2017/072233(Novo Nordisk A/S)は、充填済み薬物送達装置の製造方法を開示するとともに、製造中に薬物送達装置の専用のゼロ点調整を実行することによって、初期プライミングを回避する方法を教示している。ゼロ点調整は、薬物リザーバのピストンを使用して、装置ハウジングのナット部材内でピストンロッドを、初期アセンブリ位置から最終的なアセンブリ位置へと近位に移動させることと、その後、ピストンロッド駆動部材を回転式に制限することによって、ピストンロッドのさらなる近位動きを防止することと、を含む。ピストンロッドのさらなる近位動きの防止は、その後に、ピストンロッドとピストンとの間にエアギャップを導入するリスクを排除するための前提条件である。
【0007】
本開示の方法は、装置ハウジングの遠位端からのピストンロッド上の動作、ならびに装置ハウジングの近位端からのピストンロッド駆動部材上の動作を必要とし、それに応じて、一部の場合では煩雑であるとみなされる場合がある。したがって、製造ラインにおける充填済み薬物送達装置のゼロ点調整を容易にする解決策を提供することが望ましい。
【0008】
一部の医療治療領域内では、少なくとも2つの活性剤の併用投与を含む併用療法は、相乗的または相加的効果のために有利である。例えば、糖尿病ケアにおいて、2型糖尿病の管理では、特定のインスリンおよびglp-1産物の同時使用は、対象においてHbA1cレベルを減少させ、それによって、血糖管理を改善することが示されている。
【0009】
経皮的薬物送達は、多くの人々が皮膚を通して注射針を挿入するという考えを嫌うため、しばしば不快感と関連する。明らかにされていない数の人々は、針恐怖症にさえ苦しむ。したがって、注射可能な媒体を同時に、または実質的に同時に投与することによって、必要な皮膚浸透の数を減少させることは魅力的なシナリオである。その点において、関与する媒体のプレハブ混合物は、必ずしも最適な解決策ではない。1つには、一部の物質は、混合形態の短期でのみ安定しており、それゆえに、投与直前までそれらの物質を隔離しておく必要がある場合がある。それに加えて、個々の対象ユーザは、構成活性成分の用量比に関して異なるニーズを有し得る。単一の対象ユーザでさえ、時々、例えば、滴定期間中など、比較的短い期間にわたって、異なる用量比の活性成分を必要とする場合がある。したがって、予め混合された医薬品によって個々のすべてのニーズを網羅することは、実現可能ではない場合がある。
【0010】
プレハブ混合物を使用しない様々な解決策が存在する。デュアルチャンバー薬物送達装置は、典型的には、1つの媒体に対する前部チャンバー、および他の媒体に対する後部チャンバー、ならびに分離ピストンが特定の位置または状態にあるときに、後部チャンバー内の媒体の通過を可能にするバイパス手段を確立する、2つの間隔を置いたピストンを有する、単一の細長いカートリッジを搭載している。こうした装置は、実質的に同時に、または単一の出口インターフェースを介して連続的に2つの媒体を投与し、したがって、2回の別個の針刺しの必要性を回避することを可能にする。デュアルチャンバー薬物送達装置の例は、US4,394,863(Survival Technology, Inc.)に開示されている。
【0011】
代替的な構成を提示すると、ツインチャンバー薬物送達装置は、2つの媒体を並列な薬物リザーバに分離したままにし、2つのリザーバ出口は、単一の注射針を有するマニホールド針ユニットによって流体的に接続される。リザーバは、典型的に、専用のアクチュエータによって個別に加圧されており、これは、別個の用量エンジンまたは単一の共通用量エンジンのいずれかによって操作されてもよい。後者の例は、WO2017/114921(Novo Nordisk A/S)に開示されている。
【0012】
2つのアクチュエータが動作可能に連結された単一の用量エンジンを有するツインチャンバー薬物送達装置については、1つのアクチュエータの移動が他方の位置に影響を及ぼすため、投与システムのゼロ点調整を実行することは、製造中の課題であり得る。薬物送達装置の投与精度については、各アクチュエータが、用量排出機構の作動時にその関連する薬物リザーバと接触することが重要であるため、製造ラインにおいてこうした装置のゼロ点調整を容易にする解決策を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0013】
先行技術の少なくとも1つの欠点を除去するかもしくは低減させること、または先行技術の解決策に対する有用な代替案を提供することが、本発明の目的である。
【0014】
特に、簡単かつ容易にゼロ点調整を実行することを可能にする薬物送達装置の解決策を提供することが、本発明の目的である。
【0015】
簡単かつ容易に実施できる薬物送達装置のゼロ点調整を実行するための方法を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【0016】
単一の用量エンジンを有するツインチャンバー薬物送達装置の簡単かつ容易なゼロ点調整を可能にする解決策を提供することが、本発明のなおもさらなる目的である。
【0017】
本発明の開示では、上記の目的のうちの1つ以上に対処し、かつ/または、以下の文章から明らかである目的に対処する、態様および実施形態が記載される。
【0018】
本発明の第1の態様では、請求項1に定義されるような薬物送達装置を提供する。
【0019】
したがって、カートリッジ本体およびピストン構造を有する薬物カートリッジを担持するカートリッジホルダを含む、カートリッジユニットと、ハウジング、およびピストン構造との相互作用によって、薬物カートリッジを加圧するためのピストンロッドであって、ピストンロッドが、非自己係止スレッド係合においてナット部材と係合し、ピストンロッド駆動部材と回転式に連動されている、ピストンロッド、を含む、用量排出ユニットと、を含む、薬物送達装置が提供される。ピストンロッド駆動部材は、ピストンロッド駆動部材の第1の方向への回転が、ナット部材を通るピストンロッドの遠位移動を引き起こし、またその逆も可であり、かつピストンロッド駆動部材の第1の方向とは反対の第2の方向への回転が、ナット部材を通るピストンロッドの近位移動を引き起こし、またその逆も可であるように、長手方向軸を中心に初期段階で双方向に回転可能である。
【0020】
ナット部材は、回転式に固定されるが、初期段階ではハウジングに対して軸方向に変位可能であり、ピストンロッド駆動部材は、ハウジングに対して軸方向に固定される。ナット部材は、一方向性ラチェット連結の第1の連結部分を含み、ピストンロッド駆動部材は、一方向性ラチェット連結の第2の連結部分と動作可能に連結され、ナット部材は、その第1の連結部分およびその第2の連結部分が係合解除され、ピストンロッド駆動部材が初期段階で双方向に回転可能であることを提供する、第1のナット部材位置から、その第1の連結部分およびその第2の連結部分が係合して、ピストンロッド駆動部材の第2の方向への回転、したがって、ピストンロッドのさらなる近位変位を防止する、第2のナット部材位置へと、初期段階でハウジングおよびピストンロッド駆動部材に対して軸方向に変位可能である。
【0021】
ナット部材は、ピストン構造とピストンロッドとの間の接触が確立された後に、ハウジングおよびカートリッジホルダを長手方向軸に沿ってまとめることを含む、用量排出ユニットおよびカートリッジユニットの組み立て中に、第1のナット部材位置から第2のナット部材位置へと不可逆的に移動される。したがって、初期段階で軸方向に変位可能なナットを有するハウジングの構築は、ピストン構造とストンロッドが当接した後にカートリッジユニットおよび用量排出ユニットの組み立て中に実施される、カートリッジホルダとハウジングとの間の単純な収束する相対的な軸方向の動きの点で、薬物送達装置の製造中のピストンロッドとピストン構造との間のエアギャップを容易に除去することを可能にし、まず、ピストン構造が、非自己係止スレッドを通してピストンロッドの近位動きを付勢することを可能にし、次に、例えば、カートリッジホルダが、ナット部材を、第1のナット部材位置から第2のナット部材位置へと当接および移動させ、それによって、非自己係止スレッドを通したピストンロッドのさらなる近位動きを防止し、結果として、ピストンロッドとピストン構造との間の継続的な当接を確実にする、ナット部材とピストンロッド駆動部材との間のラチェット接続を確立する。
【0022】
ピストン構造と接触面との間の接触は、カートリッジホルダとハウジングとの間の初期段階の収束する相対的な軸方向の動きの間に確立されてもよく、ナット部材は、カートリッジユニットとハウジングとの間のその後の収束する相対的な軸方向の動きの間に、第1のナット部材位置から第2のナット部材位置へと移動してもよい。したがって、ゼロ点調整ならびにピストンロッドの固定は、カートリッジホルダとハウジングとの間の単純な相対的な軸方向の動きによって完全に実施されてもよい。
【0023】
本発明の例示的な実施形態では、カートリッジホルダの近位縁部分は、ハウジングとカートリッジホルダとの間の収束する相対的な軸方向の動きの間にナット部材の少なくとも1つの遠位に突出する脚部に近位に配向された力を加えるよう構築され、近位に配向された力は、第1のナット部材位置から第2のナット部材位置へとナット部材を移動させる。
【0024】
カートリッジユニットは、第2のカートリッジ本体および第2のピストン構造を有する第2の薬物カートリッジをさらに含んでいてもよく、ここで、薬物カートリッジおよび第2の薬物カートリッジは、カートリッジホルダによって並列に保持される。したがって、用量排出ユニットは、第2の薬物カートリッジを加圧するための第2のピストンロッドであって、第2のピストンロッドが、第2のピストン構造と接触するよう適合された第2の接触面と、ナット部材の第2のスレッドと係合する第2のピストンロッドスレッドと、を含む、第2のピストンロッドと、ハウジングに対して軸方向に係止され、かつ初期段階で長手方向の軸に平行な第2の軸の周りで双方向に回転可能である、第2のピストンロッド駆動部材であって、第2のピストンロッド駆動部材と第2のピストンロッドが、回転式に連動され、第2のピストンロッド駆動部材が、ピストンロッド駆動部材と回転式に連結されている、第2のピストンロッド駆動部材と、をさらに含んでいてもよい。このような場合、第2のピストンロッドは、第2のピストン構造と第2のピストンロッドとの間の接触が確立された後に、用量排出ユニットおよびカートリッジユニットの組み立て中に設定される軸方向に可変な寸法を有する。特に、第2のピストンロッドは、機能的に単一構造に変換されて、それによって、軸方向に可変な寸法を設定することができる、テレスコピック構造を含んでもよい。例えば、第2のピストンロッドは、第2のピストン構造と第2のピストンロッドとの間の接触が確立された後に、初期段階で互いに沿って相対的な摺動運動を受けることができ、用量排出ユニットおよびカートリッジユニットの組み立て中に軸方向に連動される、前部ピストンロッド部分および後部ピストンロッド部分を含み得る。
【0025】
それによって、ツインチャンバー薬物送達装置におけるピストンとピストンロッド、および第2のピストンと第2のピストンロッドとの間のうちのいずれかの間のエアギャップを除去するための解決策が提供される。まさに上記のように、エアギャップの除去は、カートリッジホルダとハウジングとの間の収束する相対的な軸方向の動きを単に誘導することによって、カートリッジユニットおよび用量排出ユニットの組み立て中に確実にされ得る。二部品の第2のピストンロッドは、2つのピストンロッド駆動部材が、軸範囲を初期段階で変化させることができるため、回転式に連結されているにもかかわらず、両方のピストン構造/ピストンロッド対間の接触の確立を可能にする。その接触が確立されると、前部ピストンロッド部分および後部ピストンロッド部分は、互いに軸方向に固定され、第2のピストンロッドを軸方向に剛直にし、第2の薬物カートリッジから薬物を排出するために第2のピストンに力を伝達することができる。前部ピストンロッド部分および後部ピストンロッド部分は、例えば、カートリッジホルダ内の穴を通してレーザー溶接することによって軸方向に連動されてもよい。
【0026】
ピストンロッド駆動部材および第2のピストンロッド駆動部材は、ハウジングに固定される筐体内に配設されてもよい。筐体は、遠位スロットと、遠位スロットから軸方向に離間した近位スロットと、を提供されてもよく、ナット部材は、第1のナット部材位置から第2のナット部材位置へのナット部材の移動中に、遠位スロット内の位置から近位スロット内の位置へと移動するように適合され、かつナット部材の第1のナット部材位置に向かうその後の移動を防止するよう構成されている、突起部を含んでいてもよい。それによって、ナット部材は、第2のナット部材位置に到達したときにハウジングに対して軸方向に固定され、一方向性ラチェット連結の第1の連結部分の一方向性ラチェット連結の第2の連結部分からのその後の係合解除を防止する。
【0027】
薬物送達装置は、中央歯車をさらに含んでいてもよく、ピストンロッド駆動部材は、第1の歯車歯部を含んでいてもよく、第2のピストンロッド駆動部材は、第2の歯車歯部を含んでいてもよく、ピストンロッド駆動部材および第2のピストンロッド駆動部材は、中央歯車を介して回転式に連結されていてもよい。これは、ツインチャンバー薬物送達装置のためのコンパクトな駆動機構を提供する。特に、第2の連結部分は、中央歯車の一部を形成し得る。
【0028】
第2のピストンロッドスレッドは、自己係止であってもよく、または少なくとも非自己係止スレッドのピッチよりも小さいピッチを有してもよい。それによって、2つのピストンロッドは、ギア化した関係になり、ここで、第2のピストンロッドは、ピストンロッドドライバーおよび第2のピストンロッドドライバーの(等しい)回転の間、ピストンロッドよりも軸方向に変位が小さい。例示的なギア比は、3:1である。
【0029】
薬物カートリッジは、貫通可能なセプタムによって密封された薬物出口をさらに含んでいてもよく、第2の薬物カートリッジは、第2の貫通可能なセプタムによって密封された第2の薬物出口をさらに含んでいてもよい。貫通可能なセプタムおよび第2の貫通可能なセプタムが、カートリッジホルダに対して軸方向に整列するときに、第2のピストン構造は、ピストン構造の遠位に位置付けられ得る。これは、例えば、第2の薬物カートリッジの軸方向寸法が薬物カートリッジの軸方向寸法よりも小さい場合に当てはまる可能性がある。
【0030】
第2の態様では、本発明は、A)カートリッジ本体およびピストン構造を有する薬物カートリッジを担持するカートリッジホルダを含む、カートリッジユニットと、長手方向軸に沿って延在している、ハウジングと、薬物カートリッジを加圧するためのピストンロッドであって、ピストンロッドが、ピストン構造と接触するよう適合された接触面と、非自己係止スレッドと、を含む、ピストンロッドと、ハウジングに対して回転式に固定され、かつ非自己係止スレッドと係合するナット部材であって、ナット部材が、一方向性ラチェット連結の第1の連結部分を担持する、ナット部材と、ハウジングに対して軸方向に固定され、かつ長手方向軸の周りで回転可能である、ピストンロッド駆動部材であって、ピストンロッド駆動部材が、一方向性ラチェット連結の第2の連結部分と動作可能に連結されている、ピストンロッド駆動部材と、を含み、ピストンロッド駆動部材およびピストンロッドが、回転式に連動し、その結果、ピストンロッド駆動部材の第1の方向への回転が、ナット部材内のピストンロッドの遠位のらせん状の移動と関連付けられ、ピストンロッド駆動部材の第2の方向への回転が、ナット部材内のピストンロッドの近位のらせん状の移動と関連付けられる、用量排出ユニットと、を含む、薬物送達装置のゼロ点調整を実行する方法を提供する。
【0031】
方法は、(i)接触面が最終的な接触面組み立て位置の遠位に位置付けられるように、ピストンロッドをナット部材内に配設することと、(ii)ピストン構造と接触面を、相互に当接させることと、(iii)カートリッジホルダとハウジングとの間の収束する相対的な軸方向の動きを誘導することであって、それによって、最初に、ピストン構造によって、ピストンロッドをナット部材の近位に押し込み、次に、第1の連結部分および第2の連結部分が係合解除されている、第1のナット部材位置から、第1の連結部分および第2の連結部分が係合されている、第2のナット部材位置へと、ナット部材を、ハウジングに対して軸方向に移動させ、ピストンロッド駆動部材を、第1の方向に一方向に回転可能にする、誘導することと、(iv)カートリッジホルダおよびハウジングを軸方向に連動させることと、を含む。
【0032】
方法は、ゼロ点調整、すなわち、カートリッジユニットおよび投与ユニットの接合に関連して薬物送達装置の製造中に容易に実施される、カートリッジホルダとハウジングとの間の単純な収束する相対的な軸方向の動きによる、ピストンロッドとピストンとの間のスラックの除去を提供する。したがって、この方法によって、例えば、WO2017/072233の事例のように、装置ハウジングの近位端からピストンロッド駆動部材に対して動作を行う必要がなくなる。
【0033】
本発明の例示的な実施形態では、ピストン構造と接触面を、相互に当接させることは、カートリッジホルダとハウジングとの間の収束する相対的な軸方向の動きを誘導することを含む。したがって、ゼロ点調整を含むカートリッジユニットおよび投与ユニットの最終的な組み立て全体は、カートリッジホルダおよびハウジングのうちの1つの他方に向かう単なる並進運動によって、またはカートリッジホルダおよびハウジングの互いに向かう単なる並進運動によって実施され得る。
【0034】
第3の態様では、本発明は、A)a1)第1のカートリッジ本体および第1のピストン構造を有する、第1の薬物カートリッジと、a2)第2のカートリッジ本体および第2のピストン構造を有する、第2の薬物カートリッジと、を担持する、カートリッジホルダを含む、カートリッジユニットと、B)b1)長手方向中心軸に沿って延在している、ハウジングと、b2)第1の薬物カートリッジを加圧するための第1のピストンロッドであって、第1のピストンロッドが、第1のピストン構造と接触するよう適合された第1の接触面と、非自己係止スレッドと、を含む、第1のピストンロッドと、b3)第2の薬物カートリッジを加圧するための第2のピストンロッドであって、第2のピストンロッドが、第2のピストン構造と接触するよう適合された第2の接触面と、第2のピストンロッドスレッドを有する後部ロッド部分と、を含み、前部ピストンロッド部分および後部ピストンロッド部分が、互いに沿って相対的な摺動運動を受けることができる、第2のピストンロッドと、b4)ハウジングに対して回転式に固定され、かつそれぞれ非自己係止スレッドおよび第2のピストンロッドスレッドと係合するナット部材であって、ナット部材が、一方向性ラチェット連結の第1の連結部分を担持する、ナット部材と、b5)ハウジングに対して軸方向に固定され、かつ長手方向中心軸に平行な第1の軸の周りで回転可能である、第1のピストンロッド駆動部材であって、第1のピストンロッド駆動部材が、一方向性ラチェット連結の第2の連結部分と動作可能に連結されており、第1のピストンロッド駆動部材および第1のピストンロッドが、回転式に連動し、その結果、第1のピストンロッド駆動部材の第1の軸の周りの第1の方向への回転が、ナット部材内の第1のピストンロッドの遠位のらせん状の移動と関連付けられ、第1のピストンロッド駆動部材の第1の軸の周りの第2の方向への回転が、ナット部材内の第1のピストンロッドの近位のらせん状の移動と関連付けられる、第1のピストンロッド駆動部材と、b6)ハウジングに対して軸方向に固定され、かつ長手方向中心軸に平行な第2の軸の周りで回転可能である、第2のピストンロッド駆動部材であって、第2のピストンロッド駆動部材が、第1のピストンロッド駆動部材と回転式に連結されており、第2のピストンロッド駆動部材および後部ピストンロッド部分が、回転式に連動し、その結果、第2のピストンロッド駆動部材の第2の軸の周りの第1の方向への回転が、ナット部材内の後部ピストンロッド部分の遠位のらせん状の移動と関連付けられ、第2のピストンロッド駆動部材の第2の軸の周りの第2の方向への回転が、ナット部材内の後部ピストンロッド部分の近位のらせん状の移動と関連付けられる、第2のピストンロッド駆動部材と、を含む、用量排出ユニットと、を含む、薬物送達装置のゼロ点調整を実行する方法を提供する。方法は、(i)第1の接触面が最終的な第1の接触面組み立て位置の遠位に位置付けられ、かつ第2の接触面が最終的な第2の接触面組み立て位置の遠位に位置付けられるように、第1のピストンロッドおよび第2のピストンロッドをナット部材内に配設することと、(ii)第1のピストン構造が第1の軸と整列し、かつ第2のピストン構造が第2の軸と整列するように、カートリッジホルダとハウジングを、長手方向中心軸に沿って整列させることと、(iii)カートリッジホルダとハウジングとの間の収束する相対的な軸方向の動きを誘導することであって、その動きが、カートリッジホルダおよびハウジングを中間の組み立て位置に移動させ、その過程で(しかし、第1の部分的な動き全体の間である必要はない)、第1の接触面が、第1のピストン構造によって、ナット部材に対して近位方向に移動し、第2の接触面が、後部ピストンロッド部分に対して近位方向に移動し、それにより、第2のピストンロッドが、中間の第2のピストンロッド組み立て構成を得る、第1の部分的な動きと、カートリッジホルダおよびハウジングを最終的な組み立て位置に移動させ、その間に、第1のピストンロッド、第2のピストンロッド、およびナット部材が、第1のピストンロッド駆動部材に対して一緒に移動し、それにより、一方向性ラチェット連結の第1の連結部分が、一方向性ラチェット連結の第2の連結部分と係合し、第1のピストンロッド駆動部材を、第1の軸の周りで第1の方向に一方向に回転可能にし、かつ第2のピストンロッド駆動部材を、第2の軸の周りで第1の方向に一方向に回転可能にする、第2の部分的な動きと、を含む、誘導することと、(iv)中間の第2のピストンロッド組み立て構成において、前部ピストンロッド部分および後部ピストンロッド部分を軸方向に連動させることと、(v)最終的な組み立て位置に、カートリッジホルダおよびハウジングを軸方向に連動させることと、を含む。
【0035】
方法は、単一の用量エンジンを有するツインチャンバー薬物送達装置のゼロ点調整、すなわち、カートリッジユニットおよび投与ユニットの接合に関連して薬物送達装置の製造中に容易に実施される、カートリッジホルダとハウジングとの間の単純な収束する相対的な軸方向の動きによる、それぞれのピストンロッドとピストンとの間のスラックの除去を提供する。
【0036】
第2のピストンロッドの軸範囲を変更する可能性は、ステップ(i)における第1のピストンロッドおよび第2のピストンロッドの相対的な過程配設を可能にするので有利である。例えば、それぞれの用量排出ユニットが嵌合されるカートリッジホルダに対する第1のピストン構造および第2のピストン構造の位置に影響を与える、様々な製造公差に対応するために、バッチにおける各用量排出用量ユニットについてナット部材内に第1のピストンロッドおよび第2のピストンロッドを正確に位置付ける必要を回避して、第1の接触面と第1のピストン構造との間の接触、第2の接触面と第2のピストン構造との間の接触がそれぞれ、ステップ(iii)の間に同時に確立されることを確実にすることが望ましい。
【0037】
非自己係止スレッドのピッチが、第2のピストンロッドスレッドのピッチとは異なる実施形態では、回転式に連結された第1のピストンロッド駆動部材および第2のピストンロッド駆動部材が同じ回転を受けるときに、第1のピストンロッドおよび後部ピストンロッドは、異なる軸方向の距離を移動する。第2のピストンロッドの軸方向寸法の変動により、第1のピストンロッド/ピストン構造システムおよび第2のピストンロッド/ピストン構造システムの両方のエアギャップの除去が可能になり、また、そのような実施形態について、これは、第1の接触面および後部ピストンロッド部分の両方とは独立して第2の接触面の軸方向の動きが可能になるからである。したがって、それぞれの接触は、それらが同時に確立されていないにもかかわらず、および第1のピストンロッド駆動部材および第2のピストンロッド駆動部材が回転可能に連結され、それに応じて、一緒に回転するにもかかわらず、確立され得る。
【0038】
第4の態様では、本発明は、カートリッジホルダと、第1のカートリッジ本体および第1のピストンを有する、第1のカートリッジと、に第2のカートリッジ本体および第2のピストンを有する、第2のカートリッジと、を含み、第1のカートリッジおよび第2のカートリッジが、カートリッジホルダによって並列に保持されている、カートリッジユニットと、ハウジングと、第1のカートリッジから第1の液体物質を発現するための第1の排出システムであって、第1の排出システムが、第1のカートリッジ本体の第1のピストンを前進させるための第1のピストンロッドであって、第1のピストンロッドが、ハウジングに対して回転式に固定された第1のスレッドセグメントと非自己係止ねじ込み係合状態にある、第1のピストンロッドと、第1の軸に沿って第1のピストンロッドを前進させるために、第1のピストンロッドに対して回転式に固定され、かつ第1の軸の周りで回転可能である、第1のピストンロッド駆動部材と、を含む、第1の排出システムと、第2のカートリッジから第2の液体物質を発現するための第2の排出システムであって、第2の排出システムが、第2のカートリッジ本体の第2のピストンを前進させるための第2のピストンロッドであって、第2のピストンロッドが、ハウジングに対して回転式に固定された第2のスレッドセグメントとねじ込み係合状態にある、第2のピストンロッドと、第2の軸に沿って第2のピストンロッドを前進させるために、第2のピストンロッドに対して回転式に固定され、かつ第2の軸の周りで回転可能である、第2のピストンロッド駆動部材と、を含み、第2のピストンロッドが、第2の軸に沿って延長部を有し、これは、第2のピストンと第2のピストンロッドとの間の接触が確立された後に、初期段階では可変であり、用量排出ユニットおよびカートリッジユニットの組み立て中に決定および固定される、第2の排出システムと、を含む、用量排出ユニットと、を含む、薬物送達装置を提供する。
【0039】
それによって、単位用量排出ユニットおよびカートリッジユニットを含む薬物送達装置が提供され、ここで、カートリッジユニットは、第1のカートリッジ本体および第1のピストンを含み、第1の液体物質を保持する、第1のカートリッジと、第2のカートリッジ本体および第2のピストンを含み、第2の液体物質を保持する、第2のカートリッジと、を担持し、用量排出ユニットは、少なくとも部分的に、第1の用量排出システムおよび第2の用量排出システムを収容する、ハウジングを含む。
【0040】
第1のカートリッジおよび第2のカートリッジは、カートリッジホルダによって並列に保持されており、例えば、カートリッジホルダ内で並列に配設されており、第1の用量排出システムは、第1のカートリッジから一回分の用量の第1の液体物質を排出するように構成されており、一方で第2の用量排出システムは、第2のカートリッジから一回分の用量の第2の液体物質を排出するように構成されている。
【0041】
第1の用量排出システムは、第1のカートリッジ本体内の第1のピストンを前進させるための第1のピストンロッドと、第1のピストンロッドと連結され、第1の軸の周りを回転して、第1の軸に沿って第1のピストンロッドを前進するように適合された第1のピストンロッド駆動部材と、を含む。第1のピストンロッドは、非自己係止であり、ハウジング、例えば、ハウジング内に配設されたナット部材の第1のナット構造に対して回転式に固定されている第1のスレッドセグメントと係合する、第1のピストンロッドスレッドを含む。
【0042】
第2の用量排出システムは、第2のカートリッジ本体内の第2のピストンを前進させるための第2のピストンロッドと、第2のピストンロッドと連結され、第2の軸の周りを回転して、第2の軸に沿って第2のピストンロッドを前進するように適合された第2のピストンロッド駆動部材と、を含む。第2のピストンロッドは、ハウジングに対して回転式に固定される第2のスレッドセグメントと係合する第2のピストンロッドスレッド、例えば、ナット部材の第2のナット構造を含む。第2のピストンロッドスレッドは、自己係止または非自己係止であってもよい。
【0043】
第1のピストンロッド駆動部材および第2のピストンロッド駆動部材は、回転式に連結され、すなわち、一方の方向に回転すると、他方の反応性回転が引き起こされる。これにより、単一の回転式の入力動作は、両方のピストンロッド駆動部材を作動させるのに十分である。
【0044】
第2のピストンロッドは、初期段階では可変であり、第2のピストンと第2のピストンロッドとの間の接触が確立された後に、第1の軸および第2の軸に平行な長手方向軸に沿ってハウジングおよびカートリッジホルダを一緒に移動させることを含む、用量排出ユニットおよびカートリッジユニットの組み立て中に決定され、非可変にされる、第2の軸に沿った延長部を有する。
【0045】
例えば、第2のピストンロッドは、第2のピストンと第2のピストンロッドとの間の接触が確立された後に、初期段階で互いに沿って相対的な摺動運動を受けることができ、および連動される、前部ピストンロッド部分および後部ピストンロッド部分を含み得る。
【0046】
こうした構造は、ハウジングとカートリッジホルダとの間の相対的な軸方向の動きを単に収束させることによって、単一の用量エンジンを有するツインチャンバー薬物送達装置の容易なゼロ点調整を可能にする。ハウジング内の第1のピストンロッドおよび第2のピストンロッドのそれぞれの初期段階での軸方向位置は、意図的または意図せずに異なっていてもよく、カートリッジホルダ内の第1のピストンおよび第2のピストンのそれぞれの初期段階での軸方向位置がまた、異なっていてもよい。
【0047】
2つのピストンロッド駆動部材が回転式に連結され、したがって、一方のピストンロッドの回転(近位変位を伴う)が他方の回転(近位変位を伴う)を引き起こすにもかかわらず、第2のピストンロッドの延長部が初期段階では可変であるという事実は、第1のピストンロッドおよび第2のピストンロッドのそれぞれの遠位端面の初期段階での非同期移動を可能にする。これは、どのピストンが、ハウジングとカートリッジホルダとの間の収束する相対的な軸方向の動きの初期段階の間に最初にその関連するピストンロッドと接触するかに関係なく、問題のピストンロッドの遠位端は、他のピストンロッドの遠位端面の移動を引き起こすことなく、単にハウジングに対して近位に変位し、それによって、他方のピストンがその後、その関連するピストンロッドと接触することを可能にし得ることを意味する。
【0048】
具体的には、第1のピストンが、第2のピストンが第2のピストンロッドに到達する前に第1のピストンロッドと接触する場合、第1のピストンロッドは、ハウジングとカートリッジホルダとの間の継続的な収束する相対的な軸方向の動きの間に、第1のスレッドセグメントを通して後方に押され(非自己係止ねじ込み係合によって可能である)、それによって、第1のピストンロッド駆動部材と第2のピストンロッド駆動部材との間の回転式の連結による第2のピストンロッドの後部ピストンロッド部分の後方変位を引き起こす。しかしながら、重力および/または前部ピストンロッド部分と後部ピストンロッド部分との間の摩擦のないインターフェースにより、前部ピストンロッド部分が定位置に留まり、それによって、接近する第2のピストンと前部ピストンロッド部分の遠位端面との接触が確立されるまで、第2のピストンロッドの軸方向の伸長を増加させ、その点で、両方の用量排出システムがプライミングされることが可能になる。
【0049】
あるいは、第2のピストンが、第1のピストンが第1のピストンロッドに到達する前に第2のピストンロッドと接触する場合、前部ピストンロッド部分は、ハウジングとカートリッジホルダとの間の継続的な収束する相対的な軸方向の動きの間に、第2のスレッドセグメント内で静止したままである後部ピストンロッド部分に対して後方に摺動し、それによって、第1のピストンロッドの移動を引き起こすことなく、第2のピストンロッドの軸方向の伸長を減少させる。後部ピストンロッド部分に対する前部ピストンロッド部分のこの移動の間のある時点で、第1のピストンは、第1のピストンロッドに到達し、次いで、両方の用量排出システムがプライミングされる。
【0050】
第5の態様では、本発明は、薬物送達装置のハウジングに対して第1のピストンロッドおよび第2のピストンロッドを位置付けることであって、第1のピストンロッドが、ハウジングに対して回転式に固定された第1のスレッドセグメントと非自己係止ねじ込み接続の状態にあり、第2のピストンロッドが、ハウジングに対して回転式に固定された第2のスレッドセグメントとねじ込み接続の状態にあり、第1のピストンロッドが、ハウジングに対して軸方向に固定され、かつ初期段階では第1の長手方向軸の周りで双方向に回転可能である第1のピストンロッド駆動部材に対してさらに回転式に係止されており、第2のピストンロッドが、互いに対して軸方向に変位することができる前部ピストンロッド部分および後部ピストンロッド部分をさらに含み、少なくとも後部ピストンロッド部分が、ハウジングに対して軸方向に固定され、かつ初期段階では第2の長手方向軸の周りで双方向に回転可能である第2のピストンロッド駆動部材に対して回転式に係止されており、第1のピストンロッド駆動部材および第2のピストンロッド駆動部材が、回転可能なクラッチを介して回転式に連結されており、ここで、回転可能なクラッチの第1の方向への回転が、第1のピストンロッドおよび後部ピストンロッド部分の前方変位と関連付けられており、回転可能なクラッチの第2の方向への回転が、第1のピストンロッドおよび後部ピストンロッド部分の後方変位と関連付けられている、位置付けることを行う方法を提供し、方法は、(i)第1のピストンロッドを初期段階の第1のピストンロッド組み立て位置に配置し、第2のピストンロッドをハウジングに対して初期段階の第2のピストンロッド組み立て位置に配置することと、(ii)カートリッジホルダとハウジングを軸方向に整列させることであって、カートリッジホルダが、第1の貫通可能なセプタムおよび第1のピストンによって密封された第1の軸方向に延在する充填済みカートリッジと、第2の貫通可能なセプタムおよび第2のピストンによって密封された第2の軸方向に延在する充填済みカートリッジと、を担持する、整列させることと、(iii)カートリッジホルダとハウジングとの間の収束する相対的な軸方向の動きを誘導することであって、その収束する相対的な軸方向の動きが、カートリッジホルダおよびハウジングを中間組み立て位置に移動させ、その間に、第1のピストンが、第1のピストンロッドを第1のスレッドセグメントに対して中間の第1のピストンロッドアセンブリ位置に移動させ、第2のピストンが、前部ピストンロッド部分を後部ピストンロッド部分に対して移動させ、それにより、第2のピストンロッドが、中間の第2のピストンロッドアセンブリ位置に到達する、第1の部分的な動きと、カートリッジホルダおよびハウジングを最終的な組み立て位置に移動させ、その間に、第1のピストン、第1のピストンロッド、および第1のスレッドセグメントが、第1のピストンロッド駆動部材に対して一緒に移動し、それにより、第1のピストンロッドが、最終的な第1のピストンロッド組み立て位置に到達し、第2のピストン、前部ピストンロッド部分、後部ピストンロッド部分、および第2のトレッドセグメントが、第2のピストンロッド駆動部材に対して一緒に移動し、それにより、第2のピストンロッドが、最終的な第2のピストンロッド組み立て位置に到達する、第2の部分的な動きと、を含む、誘導することと、(iv)中間の第2のピストンロッド組み立て構成、または最終的な第2のピストンロッド組み立て構成において、前部ピストンロッド部分および後部ピストンロッド部分を軸方向に連動させることと、(v)最終的な組み立て位置に、カートリッジホルダおよびハウジングを軸方向に連動させることと、を含む。
【0051】
ステップ(iv)は、第2のピストンロッドを軸方向に剛直にするように、後部ピストンロッド部分に対して前部ピストンロッド部分をレーザー溶接、接着、またはそうでなければ固定することによって実施され得る。
【0052】
ステップ(v)は、単にカートリッジホルダおよびハウジングをスナップ嵌合することによって、または代替的に、レーザー溶接、接着、または他の適切な手段によって実施され得る。
【0053】
第1のスレッドセグメントおよび第2のスレッドセグメントは、ナット部材の部分を形成してもよく、ナット部材は、一方向性ラチェット連結の第1の連結部分を含んでいてもよい。回転可能なクラッチは、一方向性ラチェット連結の第2の連結部分を含んでいてもよく、第2の部分的な動きは、第1の連結部分および第2の連結部分を係合解除可能な係合にし、それによって、第2の方向における回転可能なクラッチの回転を防止し得る。それによって、第1のピストンロッドが最終的な第1のピストンロッド組み立て位置にもたらされ、第2のピストンロッドが最終的な第2のピストンロッド組み立て位置にもたらされると、第1のピストンロッドが、第1のスレッドセグメントを通して近位に、または後方に移動することができなくなり、第2のピストンロッドが、第2のスレッドセグメントを通して近位に、または後方に移動することができなくなることを確実にする。したがって、それぞれのピストンロッドとピストンとの間に確立された接触は、薬物送達装置の使用全体を通して維持される。
【0054】
薬物カートリッジ、または単にカートリッジは、典型的には、ペン型注射装置で従来使用されるタイプのリザーバであり、すなわち、ネック部分を有する略円筒形カートリッジ本体を含み、そのカートリッジ本体は、それぞれピストンおよび貫通可能な自己密封セプタムによって封止され、薬物の体積を収容する。
【0055】
本明細書では、用語「ピストンロッド」が、それ自体としてのピストンロッド、およびピストンワッシャーまたはピストンロッド足部と組み合わせたピストンロッドを含むピストンロッド構造の両方を包含し得ることに留意されたい。同様に、用語「ピストン」は、それ自体としてのピストン、およびピストンワッシャーと組み合わせたピストンを含むピストン構造の両方を包含することができる。具体的には、本発明による薬物送達装置の製造の間に、本発明のピストンワッシャーは、初期段階でピストンロッドまたはピストンに接続されていてもよい。いずれにしても、ゼロ点調整は、ピストンロッドとピストンとの間の接触の確立につながり、それは、ピストンワッシャーが存在する場合、ピストンロッドとピストンワッシャーとの間に、それぞれピストンワッシャーとピストンとの間に物理的接触が得られるという意味で、むしろピストンワッシャーを介した動作可能な接触である。
【0056】
さらに本明細書で使用される場合、「遠位」および「近位」という用語は、薬物送達装置に沿った位置または方向を示し、「遠位」は薬物出口端を指し、また「近位」は薬物出口端の反対側の端を指す。
【0057】
本明細書において、特定の態様または特定の実施形態(例えば、「態様」、「第1の態様」、「一実施形態」、「例示的な実施形態」など)への言及は、それぞれの態様または実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、少なくとも本発明のその一態様または実施形態に含まれるか、または固有のものであるが、必ずしも本発明のすべての態様または実施形態であるわけでもそれらに含まれるわけでもないことを、表明する。しかしながら、本発明に関連して説明した様々な特徴、構造および/もしくは特性の任意の組み合わせが、本明細書に明示的に記載されていない限り、または明確に文脈上矛盾しない限り、本発明に包含されることが強調される。
【0058】
本文中のありとあらゆる例、または例示的な言語(例えば、など)の使用は、単に本発明をよりよく明らかにすることを意図したものであり、別段の特許請求がされていない限り、本発明の範囲を制限するものではない。さらに、本明細書中のいずれの言語または言い回しも、特許請求されていないいずれかの要素が本発明の実施に必須であると示しているとは解釈されない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
以下において、本発明は、図面を参照してさらに説明される。
図1】本発明の一実施形態による薬物送達装置のリザーバサブアセンブリおよびピストンロッドサブアセンブリの分解図である。
図2】リザーバサブアセンブリおよびピストンロッドサブアセンブリの長手方向断面図である。
図3-6】本発明の一実施形態によるゼロ点調整手順中のそれぞれの状態におけるリザーバサブアセンブリおよびピストンロッドサブアセンブリの長手方向断面図である。
図7a-7b】異なるアセンブリ状態におけるナット部材およびトランスミッションケースの部分的に切断された斜視図である。
図8a-8b】図7aおよび図7bの異なるアセンブリ状態の側面図である。
図9】組み立てられた薬物送達装置の長手方向断面図である。図において、同様の構造物は、主として同様の参照番号によって特定される。
【発明を実施するための形態】
【0060】
「上」および「下」、「左」および「右」、「水平」および「垂直」、「時計回り」および「反時計回り」などの相対的な表現が以下で使用される時/場合、これらは添付の図を参照しており、必ずしも実際の使用状況を参照するものではない。示される図は、概略図であり、そのため、その相対寸法だけでなく、異なる構造の構成も、例示的な目的でのみ機能することが意図される。
【0061】
図1は、本発明の一実施形態による薬物送達装置1(図5)のリザーバサブアセンブリ10(図2)およびピストンロッドサブアセンブリ40(図2)の分解図である。リザーバサブアセンブリ10は、略楕円形のカートリッジホルダ11を含み、これは、第1の媒体を保持する第1のカートリッジ20および第2の媒体を保持する第2のカートリッジ30の収容を可能にする。第1のカートリッジ20は、概して円筒形の第1のカートリッジ本体21を有し、第1のカートリッジセプタム22、それぞれ第1のピストン25によって閉じられる(図2)。第2のカートリッジ30は、概して円筒形の第2のカートリッジ本体31を有し、第2のカートリッジセプタム32、それぞれ第2のピストン35によって閉じられる(図2)。本発明のこの例示的な実施形態では、第2のカートリッジ30は、第1のカートリッジ20よりも短く、第1のピストン25は、第2のピストン35よりもカートリッジホルダ11の近位端の近くに配置され、後者は、例えば、図2から明確である。
【0062】
カートリッジホルダ11は、第1の開口部16および第2の開口部18が形成される、横方向の遠位端面15を有する遠位端部分14と、マニホールド針ユニット(図示せず)の受容のための側壁突出部17と、を有する。第1のカートリッジ20および第2のカートリッジ30は、第1のカートリッジセプタム22が第1の開口部16に隣接して位置付けられ、かつ第2のカートリッジセプタム32が第2の開口部18に隣接して位置付けられて、それによって、マニホールド針ユニットの専用の後部針(図示せず)によるそれぞれのカートリッジセプタムの容易な貫通を可能にするように、カートリッジホルダ11内に並列に配設されている。その近位端部分では、カートリッジホルダ11は、薬物送達装置1のハウジング2(図5)とのスナップ嵌合係合のための多くの突起部12を備える。第1のピストンワッシャー29は、第1のピストン25と当接して配設されており、第2のピストンワッシャー39は、第2のピストン35と当接して配設されている。
【0063】
ピストンロッドサブアセンブリ40は、第1のピストンロッド構造44、第2のピストンロッド構造50(図2)、ナット部材60、ならびに第1の歯車67、第2の歯車69、および中央歯車68を支持するベアリング71を有するトランスミッションケース70を含む。
【0064】
第1のピストンロッド構造44は、非自己係止スレッド46が提供され、第1のピストンワッシャー29に当接し、それを通して第1のピストン25に駆動力を加えるように適合された第1の接触面48を有する、第1のピストンロッド45を含む。
【0065】
第2のピストンロッド構造50は、二部品構造である。1つの部品は、自己係止スレッド52および突出部分54を有するセクションを有する、第2のピストンロッド51を含む。別の部品は、突出部分54を摺動可能に受容するように適合された中空後部56と、第2のピストンワッシャー39に当接するように適合され、それを通して第2のピストン35に駆動力を加えるように適合された第2の接触面58に終端する固体前部57とを有する、延長部55を含む。組み立て前の状態では、薬物送達装置1の最終的な組み立ての前に、第2のピストンロッド51および延長部55は、第2のピストンロッド51の長手方向軸に沿って相対運動を摺動することができ、それによって、第2のピストンロッド構造50の軸方向延長部は、可変である。
【0066】
本実施形態では、第1のピストンワッシャー29および第2のピストンワッシャー39は、リザーバサブアセンブリ10の一部を形成する。しかしながら、代替的に、それらがピストンロッドサブアセンブリの一部を形成してもよく、第1のピストンワッシャー29は、第1の接触面48で第1のピストンロッド45に取り付けられるか、または第1のピストンロッド45と一体であり、第2のピストンワッシャー39は、第2の接触面58で延長部55に取り付けられるか、またはそれらと一体であることに留意されたい。
【0067】
ナット部材60は、非自己係止スレッド46とねじ込み係合し、それによって、第1のピストンロッド45を支持する第1のナット61aと、自己係止スレッド52とねじ込み係合し、それによって、第2のピストンロッド51を支持する第2のナット61bと、を含む。それぞれのナット壁63は、第1のナット61aおよび第2のナット61bから近位に延在している。各ナット壁63は、以下から明らかになる方法で、ナット部材60をトランスミッションケース70に連結するための突起部64を担持する。ナット部材60はまた、薬物送達装置1の組み立て中にカートリッジホルダ11の近位縁部分と整合するように配設された、第1のナット61aおよび第2のナット61bから遠位に延在する4つの脚部62を有する。
【0068】
ベアリング71では、第1の歯車67は、第1の歯車歯部67tを有し、第2の歯車69は、第2の歯車歯部69tを有し、中央歯車68は、第1の歯車歯部67tおよび第2の歯車歯部69tの両方と噛み合い、それによって、第1の歯車67および第2の歯車69と回転式に連結する、中央歯車歯部68tを有する。中央歯車68は、中央歯車歯部68tの遠位に配設されたラチェット歯部68rをさらに有する。
【0069】
トランスミッションケース70は、4つのガイドロッド74および一対の係止解除状態スロット72をさらに含み、それぞれ、ナット壁63上のそれぞれの突起部64の受容に適合されて、ナット部材60およびトランスミッションケース70の2つの別個の連結状態を画定する係止状態スロット73を含む。
【0070】
第1の歯車67は、第1のピストンロッド45の周りに配設され、それに対して回転式に係止されており、第2の歯車69は、第2のピストンロッド51の周りに配設され、それに対して回転式に係止されている。したがって、第1の歯車67の回転は、第1のピストンロッド45の対応する回転を生じさせ、その逆もまた同様であり、第2の歯車69の回転は、第2のピストンロッド51の対応する回転を生じさせ、その逆もまた同様である。
【0071】
図2は、それぞれの組み立てられた状態のリザーバサブアセンブリ10およびピストンロッドサブアセンブリ40の長手方向断面図である。その図は、第1のチャンバー26が第1の内容物を保持している状態である第1のカートリッジ20と、第2のチャンバー36が第2の内容物を保持している状態である第2のカートリッジ30と、の平行配設を示しており、カートリッジホルダ11の穴19が見えるが、その目的は以下に記載される。
【0072】
第1のピストンロッド45は、脚部62を通り抜けて第1のナット61aを通って延在しており、第1の接触面48は、第1のピストンロッド構造44の最終的な組み立て位置よりも、ナット部材60のより遠位に意図的に位置付けられる。同様に、第2のピストンロッド51は、第2のナット61bを通って延在しており、第2の接触面58は、第2のピストンロッド構造50の最終的な組み立て位置よりも、ナット部材60のより遠位に意図的に位置付けられる。突出部分54の一部分は、延長部55の中空後部56内にあり、それに摩擦嵌合される。
【0073】
用量投与システムの精度を確実するためには、薬物送達装置1の最終的な組み立て状態において、それぞれ第1のピストンワッシャー29と第1のピストンロッド構造44との間に、第2のピストンワッシャー39と第2のピストンロッド構造50との間にエアギャップがないことが不可欠である。薬物送達装置1における(図5に示される)用量排出機構の作動の結果として、いずれかのピストンロッド構造の特定の軸変位は、それによって、関連するピストンに直接的に伝達される。
【0074】
したがって、潜在的なエアギャップのリスクを排除するために、薬物送達装置1の組み立て中に、製造業者によってゼロ点調整が実行される。ピストンロッドサブアセンブリ40の構成は、図3図6を参照して後述するように、特に単純なゼロ点調整手順を可能にする。
【0075】
図3は、カートリッジホルダ11とトランスミッションケース70との間の相対的な軸方向の動きを収束させることによって、第1のピストンワッシャー29が第1の接触面48と当接するようにもたらされたゼロ点調整手順の開始時の、リザーバサブアセンブリ10およびピストンロッドサブアセンブリ40の長手方向断面図であり、カートリッジホルダ11の近位縁部とそれぞれの脚部62の遠位端との間のクリアランスXがある。トランスミッションケース70は、この段階で薬物送達装置1のハウジング2(図5)に軸方向に、および回転式に固定される。しかしながら、明確にするために、ハウジング2は、図3図6から省略されている。
【0076】
ナット部材60に対する第1の接触面48および第2の接触面58の初期段階のそれぞれの位置は、原則として、第1のカートリッジ本体21の第1のピストン25および第2のカートリッジ本体31の第2のピストン35のそれぞれの位置と相関しており、図3はまた、実際に第2のピストンワッシャー39が第2の接触面58に当接していることを示している。しかしながら、様々な製造公差のために、第2のピストンワッシャー39は、第1のピストンワッシャー29が第1の接触面48に接触すると同時に、第2の接触面58と当接していない場合がある。どの接触が最初に確立されたかに関わらず、ピストンロッドサブアセンブリ40の設計は、カートリッジホルダ11とトランスミッションケース70との間の相対的な軸方向の動きを単に収束させることによって、その後に第2の接触が確立されることを確実にする。
【0077】
図7aおよび図8aにさらに示すピストンロッドサブアセンブリ40の示した状態において、最初の前述の2つの別個の連結状態(トランスミッションケースは明瞭性のために斜視図で部分的に断面化されている)のナット部材60およびトランスミッションケース70の側面図をそれぞれ斜視図で示すように、中央歯車68は、自身の延長部の軸を中心に両方向で回転することができる。これは、突起部64が係止解除状態のスロット72(図8a)を塞ぎ、かつラチェットアーム65がラチェット歯部68rから軸方向に離間しているためである。
【0078】
したがって、第2のピストンワッシャー39が第2の接触面58に到達する前に、第1のピストンワッシャー29が第1の接触面48に到達した場合、カートリッジホルダ11とトランスミッションケース70との間の継続的な収束する相対的な軸方向の動きは、第1のチャンバー26が非圧縮液体で充填されるため、ピストンワッシャー29が第1のピストンロッド45を後方に押すことを引き起こす。第1のピストンロッド45が非自己係止スレッド46を介して第1のナット61aと係合するため、第1のピストンワッシャー29からの軸力は、第1のナット61aを通って回転するときに、第1のピストンロッド45のらせん状の近位動きを引き起こす。
【0079】
第1のピストンロッド45の回転は、第1の歯車歯部67tと中央歯車歯部68tの噛み合いにより、第1の歯車67の回転を引き起こし、次に、中央歯車歯部68tと第2の歯車歯部69tの噛み合いにより、中央歯車68の回転を引き起こし、第2の歯車69の回転を引き起こし、それによって、第2のピストンロッド51のらせん状の近位動きを引き起こす。特に、自己係止スレッド52は非自己係止スレッド46よりも小さいピッチを有するため、第2のピストンロッド51の軸方向変位は、第1のピストンロッド45の軸方向変位よりも小さい。したがって、最終的に、第1のピストンロッド45の押し戻しの間に、第2のピストンワッシャー39は、第2の接触面58と当接するようになる。
【0080】
あるいは、第1のピストンワッシャー29が第1の接触面48に到達する前に、第2のピストンワッシャー39が第2の接触面58に到達した場合、カートリッジホルダ11とトランスミッションケース70との間の継続的な収束する相対的な軸方向の動きは、単に、第1のピストンワッシャー29が第1の接触面48と当接するまで、延長部55を突出部分54にわたって軸方向に後方に押す。
【0081】
第1のピストンワッシャー29と第1のピストンロッド45との間の初期接触が確立された後、図3に示すように、カートリッジホルダ11およびトランスミッションケース70は、さらに収束する相対的な軸方向の動きを受け、クリアランスXを除去する。図4では、カートリッジホルダ11の近位縁部は、それによって、それぞれの脚部62と当接され、そしてこの点で、第1のピストンワッシャー29は、第1のピストンロッド45に当接する一方で、第2のピストンワッシャー39は、延長部55に当接する。言い換えれば、用量投与システムの両方の部分が、ゼロ点調整されている。
【0082】
クリアランスXを除去するカートリッジホルダ11とトランスミッションケース70との間の収束する相対的な軸方向の動きの間、第1のピストンロッド構造44は、第1のピストンロッド45の非自己係止スレッド46によるらせん状の近位動きを受け、一方で、第2のピストンロッド構造50は、第2のピストンロッド51の組み合わされたらせん状の近位動き、および延長部55の純粋な軸方向の近位動きを受け、前者は、トランスミッションケース70内の中間噛み合い歯車によって駆動され、後者は、第2のピストンワッシャー39からの軸力によって駆動される。第2のピストンロッド51のらせん状の近位動きの軸成分は、延長部55の軸方向の近位動きよりも小さいため、第2のピストンロッド構造50は、カートリッジホルダ11およびそれぞれの脚部62が相互作用するまで軸方向寸法を変化させ、その点で、突出部分54は、中空後部56におけるその最終位置に到達する。
【0083】
カートリッジホルダ11の近位縁部と脚部62との間の接触が確立された後、カートリッジホルダ11とトランスミッションケース70との間のさらに収束する相対的な軸方向の動きは、ナット部材60をトランスミッションケース70に向かって押し出し、突起部64を係止解除状態スロット72から係止状態スロット73内にスナップアウトし、それによって、前述の2つの別個の連結状態の第2の状態でナット部材60とトランスミッションケース70を連動させる。図7bの斜視部分的断面図および図8bの側面図によって示されるこの第2の連結状態において、ラチェットアーム65は、軸方向に整列し、かつ、ラチェット歯部68rと係合して、中央歯車68の一方向の回転動きを確実にする。
【0084】
中央歯車68は、それによって、第1のピストンロッド45の第1のナット61aを通る、および第2のピストンロッド51の第2のナット61bを通るそれぞれの前進に対応する第1の歯車67および第2の歯車69の回転の方向を引き起こす方向に回転することができるが、反対方向に回転することはできない。第1の歯車67および第2の歯車69はまた、結果として、一方向の回転動きに限定される。これは、第1のピストンロッド45および第2のピストンロッド51が、ナット部材60に対して近位変位をもはや受け得なくなり、第1の接触面48と第1のピストンワッシャー29との間の確立された接触、第2の接触面58と第2のピストンワッシャー39との間の確立された接触が、それぞれ適宜に固定されることを意味する。
【0085】
特に、第1のピストンロッド45および第2のピストンロッド51が第1のナット61aおよび第2のナット61bと共に近位にシフトするため、カートリッジホルダ11、およびトランスミッションケース70に対するナット部材60の関節運動は、第1のピストンロッド構造44および第2のピストンロッド構造50のいかなる回転も引き起こさない。さらに、第2のピストンロッド51は、第2のピストンワッシャー39と同じ距離にシフトするため、第2のピストンロッド構造50は、軸方向寸法のさらなる減少を受けない。これらのサブアセンブリの最終的な組み立て状態を構成する、リザーバサブアセンブリ10およびピストンロッドサブアセンブリ40の様々な構成要素の結果として生じる相互関連した位置を図5に示す。
【0086】
図6は、第2のピストンロッド51に対する上述の位置を想定した後の延長部55が、その後、穴19を通して突出部分54に中空後部56の壁部分をレーザー溶接することによって固定されていることを示す、最終的な組み立て状態のリザーバサブアセンブリ10およびピストンロッドサブアセンブリ40のV断面図である。それによって、第2のピストン35を駆動するために第2のピストンワッシャー39に軸力を伝達することができる、調整非可能な軸方向寸法を有する第2のピストンロッド構造50が提供される。
【0087】
図9は、組み立てられた薬物送達装置1の長手方向断面図であり、ここで、カートリッジホルダ11は、ハウジング2に接続されている。上述のゼロ点調整により、第1のピストンロッド構造44は、第1のカートリッジ20内の第1のピストン25と接触する第1のピストンワッシャー29と接触し、ここにおいて剛性である第2のピストンロッド構造50は、第2のカートリッジ30内の第2のピストン35と接触する第2のピストンワッシャー39と接触する。したがって、投与システムは、プライミング済みであり、用量排出機構を介する2つのピストンロッド構造の作動は、それに応じて、2つのピストンの即時の軸方向変位をもたらす。用量排出機構は、トランスミッションケース70内の中央歯車68の回転を引き起こすように解放可能である張力をかけたねじりばね5によって動力を得る。ねじりばね5の解放機構の詳細、ならびにピストンロッド構造の駆動機構のさらなる詳細は、本発明に無関係であるため、本明細書には提供されていない。
【0088】
本発明の記載される例示的な実施形態は、ツインチャンバータイプの薬物送達装置に関する一方で、上記に開示されたゼロ点調整の包括的な原理は、万年筆形状の注射装置などの単一の薬物リザーバを有する薬物送達装置に等しく適用されることに留意されたい。カートリッジホルダ11が、ピストンを有する単一のカートリッジを担持するように適合される場合、ハウジング2は、単一のピストンロッド(非自己係止スレッドを有する)、および回転式に連結された歯車の代わりに、例えば、それ自体がラチェット歯部を担持する単一のピストンロッド駆動部材を収容し、ナット部材60は、単一のナットと、ピストンとピストンロッドとの間の接触が確立された後に歯車歯部と係合するためのラチェットアームと、を含む。用量排出イベント中にピストンロッド駆動部材を回転させるための機構は、原則として、いくつかの既知の駆動機構のいずれかであってもよく、特定の例は、WO2017/072233に概略を記されているものである。ナット部材は、例えば、ハウジングとのそれぞれのスナップばめまたは摩擦ばめによって、第1のナット部材位置および/または第2のナット部材位置に保持されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8a
図8b
図9