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特許7470688I型インターフェロン治療に対する患者の反応性を特定する方法および特定一塩基多形を有する患者を治療するためのI型インターフェロンの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】I型インターフェロン治療に対する患者の反応性を特定する方法および特定一塩基多形を有する患者を治療するためのI型インターフェロンの使用
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6883 20180101AFI20240411BHJP
   C12Q 1/6886 20180101ALI20240411BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240411BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240411BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240411BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240411BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240411BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20240411BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240411BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240411BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240411BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240411BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240411BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240411BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20240411BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240411BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 38/21 20060101ALI20240411BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20240411BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240411BHJP
【FI】
C12Q1/6883 Z
C12Q1/6886 Z
A61P9/00
A61P11/00
A61P29/00
A61P17/02
A61P9/10
A61P1/18
A61P13/12
A61P31/00
A61P25/00
A61P35/02
A61P35/00
A61P31/12
A61P31/18
A61P1/16
A61P17/00
A61K38/21
A61P43/00 121
A61K31/573
C12N15/12
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021531823
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-31
(86)【国際出願番号】 FI2019050870
(87)【国際公開番号】W WO2020115368
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-11-04
(31)【優先権主張番号】20186041
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】504459559
【氏名又は名称】ファロン ファーマシューティカルズ オサケ ユキチュア
【氏名又は名称原語表記】Faron Pharmaceuticals Oy
【住所又は居所原語表記】Joukahaisenkatu 6, 20520 Turku Finland
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤルカネン、ユホ
(72)【発明者】
【氏名】ヤルカネン、マルック
(72)【発明者】
【氏名】カルボネン、マッチ
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-527535(JP,A)
【文献】BELLINGAN G. et al., "A phase III double-blind, randomised, parallel-group comparison of the efficacy and safety of FP-1201-Lyo (recombinant human interferon beta-1A) and placebo in the treatment of patients with moderate or severe acute respiratory distress syndrome", [online],2018年10月22日,retrieved from the internet <URL: https://www.faronpharmaceuticals.com/sites/default/files/Bellingan%20and%20Ranieri%20INTEREST%20trial%20results%2022Oct2018%20(003)_at%2016%2040.pdf >
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00-3/00
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コルチコステロイドと併用でI型インターフェロンを含む療に対する患者の反応性を特定する方法であって、
-患者から得られた試料から、第21染色体のインターフェロンアルファおよびベータ受容体のサブユニット2(IFNAR2)における一塩基多形(SNP)rs9984273(C/T)の存を特定すること、および
-前記SNPの存を根拠として患者を分類することを含む方法であり、
記SNPの存在が、コルチコステロイドと併用でI型インターフェロンを含む治療への反応性を示す
方法。
【請求項2】
I型インターフェロンが、インターフェロンベータ、インターフェロンアルファおよびそれらのいずれかのサブタイプから選択される請求項1記載の方法。
【請求項3】
I型インターフェロンがインターフェロンベータ-1aである請求項記載の方法。
【請求項4】
コルチコステロイドが、糖質コルチコイドの群、好ましくはヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾンおよび/またはデキサメタゾンから選択される請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
患者の反応性が、
-脈管内皮疾患、
-急性呼吸促迫症候群(ARDS)、全身性炎症反応症候群(SIRS)、または他の外傷症状、
-虚血-再灌流害、
-主要血管または心臓手術および臓器移植の前の虚血プレコンディショニング、
-急性膵炎、
-急性腎害、
-多臓器不全(MOF)、
-重症呼吸器感染症または出血性ウイルス感染症、
-多発性硬化症(MS)、
-へアリー細胞白血病、悪性メラノーマ、濾胞性リンパ腫、尖圭コンジローム、AIDS関連カポジ肉腫、慢性C型肝炎、急性C型肝炎、および慢性B型肝炎
を含む群から選択される疾患または障害の治療に対して特定される、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
試料に前記SNPが存在する患者が、前記治療により>0.8、好ましくは>0.85、より好ましくは>0.9の生存確率を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
コルチコステロイドと併用でI型インターフェロンを含む治療に対する患者の反応性を特定するためのマーカーとしての、第21染色体のインターフェロンアルファおよびベータ受容体のサブユニット2(IFNAR2)における一塩基多形(SNP)rs9984273(C/T)の使用であって、前記SNPの存在が患者から得られた試料から特定される使用
【請求項8】
患者が、
-脈管内皮疾患、
-急性呼吸促迫症候群(ARDS)、全身性炎症反応症候群(SIRS)、または他の外傷症状、
-虚血-再灌流害、
-主要血管または心臓手術および臓器移植の前の虚血プレコンディショニング、
-急性膵炎、
-急性腎害、
-多臓器不全(MOF)、
-重症呼吸器感染症または出血性ウイルス感染症、
-多発性硬化症(MS)、
-へアリー細胞白血病、悪性メラノーマ、濾胞性リンパ腫、尖圭コンジローム、AIDS関連カポジ肉腫、慢性C型肝炎、急性C型肝炎、および慢性B型肝炎
を含む群から選択される疾患または障害を有する、請求項記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、I型インターフェロンで患者を治療することを決定するためにI型インターフェロンの投与を含む治療に対する患者の反応性を特定する方法、およびその治療に対する患者の反応性を特定するためのマーカーとしての特定の一塩基多形の使用に関する。本発明はまた、特定の一塩基多形を有する患者を治療するためのI型インターフェロンの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
I型インターフェロン(なかでもインターフェロンアルファおよびベータ)は、感染における我々の防御の最前線である(非特許文献1)。急性発作(acute insults)への対策として、I型インターフェロンは細胞膜および脈管の完全性(vascular integrity)を強める。脈管漏出は、敗血症;MERS、SARSおよびインフルエンザなどの重度の呼吸器ウイルス感染症;エボラなどのウイルス性出血熱;全身性炎症反応症候群(SIRS)、および大きな外傷または心臓血管手術により生じる虚血-再灌流害における重要な特徴である。I型インターフェロンは、抗炎症性アデノシンを生み出す分子であるCD73をアップレギュレートする能力を有する(非特許文献2)。CD73に誘導されるアデノシンは、内皮バリア機能を強め、脈管漏出、急性臓器損傷における優勢な病態生理学的事象(非特許文献3)、すなわち、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、急性腎害(AKI)および多臓器不全(MOF)を予防する。急性肺害(ARDS)における脈管漏出は、肺胞腔への血漿滲出を許し、生命を脅かす可能性のある低酸素血症の原因となる。インターフェロンベータ-1aは、脈管漏出を減少させることによりARDSの影響を和らげることが示されている(非特許文献4)。
【0003】
すべてのタンパク質に基づくバイオ医薬品と同様に、インターフェロンアルファまたはベータなどのI型インターフェロンの治療薬としての使用において克服されるべき主要な障壁の一つは、個体におけるその生物活性と、その予測される効果を発揮することである。分子経路における遺伝的な差異が医薬品におけるポリペプチドの活性および有効性を脅かす。これらの変更のいくつかは、目的のタンパク質の医薬的生物活性の損失または低下につながることが知られている。少量のホルモンペプチドが投与される場合、患者がその治療に反応するということも重要である。
【0004】
I型インターフェロンはまた、多発性硬化症(MS)の治療において広く使用されているが、患者の50%以上がその治療に反応しない。この理由は、不明である(非特許文献5)。MSはたいてい緩徐進行性疾患であるため、MS患者が治療に反応するかどうかを臨床的に特定するのに平均最大2年かかる。患者がインターフェロン治療に反応するかどうかを事前特定するための手段は、MSにおいても、そしてARDSおよび/または脈管漏出および臓器機能不全に関連した症状などの生命を脅かす急性の症状においても切実に必要とされ、I型インターフェロンが脈管の完全性を増強し、急性臓器不全を防ぐために使用された。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Levy et. al., 2003
【文献】Jalkanen and Salmi, 2006
【文献】Kiss et. al., 2007
【文献】Bellingan et. al., 2014
【文献】Mahurkar et. al., 2016
【発明の概要】
【0006】
先行技術に見られる上記課題を減少させること、さらには取り除くことが本発明の目的である。
【0007】
本発明の目的は、患者をI型インターフェロンで治療する臨床的決定をする方法を提供すること、およびI型インターフェロンによる薬理的介入を必要とする疾患および/または障害における転帰および反応を予測することである。ある目的は、I型インターフェロンの投与を含む治療に対する患者の反応性の予測において使用するためのマーカーを提供することである。
【0008】
治療反応についての予測テストを行うことにより、医者は、患者のケアを簡単にかつ効率的に最適化することができる。したがって、本発明の目的は、医師の意思決定を支援するための遺伝子検査およびI型インターフェロンによる薬理的介入の組み合わせを提供することである。
【0009】
さらに、本発明の目的は、患者選択に基づく薬理的介入による治療を提供することである。特に、本発明の目的は、具体的に特定された患者群にI型インターフェロンによる治療方法、すなわち個々の患者に合わせた治療を提供することである。
【0010】
とりわけ上記目的を達成するために、本発明は同封の独立請求項に示されているものに特徴づけられる。いくつかの好ましい実施態様は他の請求項に記載される。
【0011】
本明細書に言及されている実施態様および利点は、該当する場合には、必ずしも具体的に言及されていなくとも、本発明の方法と使用の両方に関連する。
【0012】
本発明の典型的な方法は、I型インターフェロンによる治療、任意にはコルチコステロイドとの併用治療、に対する患者の反応性を特定する(determining)ために使用され、
-患者から得られた試料から、第21染色体のインターフェロンアルファおよびベータ受容体のサブユニット2(IFNAR2)における一塩基多形(SNP)rs9984273(C/T)の存否を特定すること、および
-前記SNPの存否を根拠として患者を分類することを含み、
i)前記SNPの存在が、コルチコステロイドと併用でまたは併用しないでI型インターフェロンを含む治療に反応性を示し、または
ii)前記SNPの不存在が、コルチコステロイドと併用でI型インターフェロンを含む治療に非反応性を示し、コルチコステロイドと併用しないでI型インターフェロンを含む治療に軽度の反応性を示す。
【0013】
本発明はまた、I型インターフェロンおよび任意にはコルチコステロイドの併用を含む治療に対する患者の反応性を特定するためのマーカーのための、第21染色体のインターフェロンアルファおよびベータ受容体のサブユニット2(IFNAR2)における、一塩基多形(SNP)rs9984273(C/T)および/またはSNPrs9984273(C/T)との連鎖不均衡におけるSNPの使用に関し、言い換えれば、上記SNPはI型インターフェロンおよび任意にはコルチコステロイドの併用を含む治療に対する患者の選択におけるマーカーとして使用することができる。本発明の好ましい実施態様において、第21染色体のインターフェロンアルファおよびベータ受容体のサブユニット2(IFNAR2)における、一塩基多形(SNP)rs9984273(C/T)および/またはSNPrs9984273(C/T)との連鎖不均衡におけるSNPは、コルチコステロイドと併用されるI型インターフェロンを含む治療に対する患者の選択におけるマーカーとして使用される。
【0014】
さらに、本発明は、個体においてI型インターフェロンによる薬理的介入を必要とするかまたはI型インターフェロンによる薬理的介入から恩恵を受ける疾患または障害の予防および/または治療における使用のための活性成分としてI型インターフェロンを含む組成物であって、上記個体が、第21染色体のインターフェロンアルファおよびベータ受容体のサブユニット2(IFNAR2)における、検出された一塩基多形(SNP)rs9984273(C/T)および/またはSNPrs9984273(C/T)との連鎖不均衡における検出されたSNPを有する、組成物に関する。
【0015】
今、I型インターフェロン治療を受けかつ第21染色体のインターフェロンアルファおよびベータ受容体のサブユニット2(IFNAR2)に一塩基多形(SNP)rs9984273(C/T)を有する患者が、上記SNPrs9984273(C/T)を持たずインターフェロン治療を受けた患者よりも有意に良好な転帰を得たことが観察されている。結果は、SNPrs9984273(chr21:chr位置34635065)マーカーがI型インターフェロン治療に対する反応と関係しているということを示す。この多形マーカーを含む配列は、IFNAR2遺伝子の糖質コルチコイド受容体結合部位である。大規模な第III相無作為化プラセボ対照試験において、IFNAR2においてTTの代わりにCTを有する患者が、レスポンダーの中で富化され、またARDSにおいて良好な生存率を示すことが観察された。したがって、IFNAR2における、SNPrs9984273(C/T)および/またはSNPrs9984273(C/T)との連鎖不均衡におけるSNPが、I型インターフェロンの投与を必要としかつI型インターフェロンの投与から恩恵を受ける疾患または障害を患う患者において、薬理的なI型インターフェロン介入を開始する、または開始しないという臨床的決定を補助するためのマーカーともなり得ることが観察された。この知見は、IFNAR2におけるSNPrs9984273(C/T)の存否を根拠に患者の治療方法をそれぞれの個人に合わせたものとすることを可能とする。IFNAR2におけるSNPrs9984273(C/T)の存否は、特定の遺伝子検査を用いることにより単純に特定することが可能であり、そしてその検査の結果は、I型インターフェロンによる介入を必要とするかまたはI型インターフェロンによる介入から恩恵を受ける疾患または障害における転帰および反応を予測するために利用することが可能である。
【0016】
さらに、インターフェロンアルファまたはインターフェロンベータなどのI型インターフェロンとのコルチコステロイドの併用が、IFNAR2におけるSNPrs9984273(C/T)を有する患者における治療反応に影響を及ぼさないことが観察された。IFNAR2におけるSNPrs9984273(C/T)を有する患者は、コルチコステロイドの併用に関わらず、インターフェロンアルファまたはインターフェロンベータなどのI型インターフェロンによる薬理的介入に対して反応性を示す。患者におけるIFNAR2のSNPrs9984723(C/T)の存在は、コルチコステロイドの併用にかかわらず、I型インターフェロンを用いることによりCD73をアップレギュレートするための治療方法を提供する。患者におけるIFNAR2のSNPrs9984273の存在はまた、I型インターフェロン治療と組み合わせたコルチコステロイドの投与を開始するまたは開始しないという臨床的決定を補助するためのマーカーとして使用することができる。
【0017】
本発明の一側面によれば、遺伝子検査とI型インターフェロン治療との組み合わせは、急性臓器損傷(AEDS、AKI、SIRSおよびMOF)および重篤なウイルス感染症の予防および/または治療において使用することができる。そのような治療の一つは、静脈内インターフェロンベータ-1aであり、例えば、急性臓器損傷(AEDS、AKI、SIRSおよびMOF)および重篤なウイルス感染症の治療において有益であるとみなされている。
【0018】
本発明の別の側面によれば、遺伝子検査とI型インターフェロン治療との組み合わせは、敗血症のヒトにおける脈管内皮疾患、重篤な急性ウイルス性感染症、虚血-再灌流害を引き起こす主要な心臓血管手術を受けているヒト、およびAKI、ARDS、SIRS、MOFならびにMSとして言及される疾患状態の予防および/または治療において使用することができる。
【0019】
本発明のなお別の側面によれば、遺伝子検査とI型インターフェロン治療との組み合わせは、へアリー細胞白血病、悪性メラノーマ、濾胞性リンパ腫、尖圭コンジローム、AIDS関連カポジ肉腫、慢性C型肝炎、急性C型肝炎、および慢性B型肝炎を含むヒトにおける悪性疾患の予防および/または治療において使用することができる。
【0020】
本発明によれば、IFNAR2における、SNPrs9984273(C/T)および/またはSNPrs9984273(C/T)との連鎖不均衡におけるSNPは、上記症状/疾患において予後バイオマーカーとして使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第III相臨床試験におけるインターフェロン-ベータ-1a(FP-1201-lyo)またはプラセボを投与されているARDS患者のカプラン-マイヤー生存曲線を示す。
図2】I型インターフェロンで患者を治療する、または治療しない臨床的決定をするために本発明により決定的因子として特定されるIFNAR2における一塩基多形(SNP)rs9984273を示す。
図3a】第III相臨床試験において、IFNAR2に(SNP)rs9984273を有するかまたは有さない、静脈内インターフェロン-ベータ-1aを投与されたARDS患者のカプラン-マイヤー生存曲線を示す(0=多形なし、1=多形あり)。
図3b】第III相臨床試験において、IFNAR2に(SNP)rs9984273を有するかまたは有さない、静脈内インターフェロン-ベータ-1aを投与されたARDS患者のカプラン-マイヤー生存曲線を示す(0=多形なし、1=多形あり)。
図4】第III相臨床試験の多変量ロジスティック回帰の結果を示す。
図5】第III相臨床試験の多変量ロジスティック回帰の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
用語および定義
用語「患者」または「個体」は、ヒトを意味する。
【0023】
用語「治療(treatment)」または「治療する(treating)」は、疾患の完全な治癒ならびに該疾患の改善または軽減を含むと理解されるものとする。
【0024】
用語「予防(prevention)」は、完全な予防(prevention)、予防(prophylaxis)、ならびに上記疾患または障害となる個人のリスクの低減を含む。
【0025】
発明の開示
急性呼吸促迫症候群(ARDS)を治療するために静脈内インターフェロンベータ-1aの使用を調査する大規模第III相無作為化プラセボ対照試験において、プラセボよりも優れているということは見出せなかった。
【0026】
試験のプロトコルは、Bellingan et. al., 2017により詳細に説明されている。第III相臨床試験は、二重盲検、1対1無作為化、並行群間試験として行われ、経静脈的に投与された組み換えヒトインターフェロンベータ-1aの有効性および安全性が、ARDSの成人患者の治療においてプラセボと比較して試験された。試験は、300人の患者が募集され、ベルギー、チェコ共和国、フィンランド、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、およびUKにある64の病院の集中治療室(ICU)で実施された。患者は、無作為に割り付けられ、10μgの組み換えヒトインターフェロンベータ-1aまたはプラセボを1日1回、6日間投与され、28日間、または集中治療室を出るまでモニターされた。一次評価項目は、28日での全ての死因、および生存者の28日以内の人工呼吸器を使用しない日数を含む複合評価項目であった。その前の第I/II相試験では死亡率の減少が示されたが、このIII相試験では、ヒト組み換えインターフェロンベータ-1aでの治療は死亡率の減少をもたらさず、またはプラセボと比較した人工呼吸器非使用日数の増加をもたらさなかった。この臨床試験結果のカプラン-マイヤー生存曲線を図1に示す。したがって、試験結果および処置される患者のより詳細な分析が今行われる。
【0027】
第III相無作為化プラセボ対照試験結果のより詳細な分析のために、静脈内インターフェロンベータ-1aを投与され、インターフェロンアルファおよびベータ受容体のサブユニット2(IFNAR2)に一塩基多形(SNP)rs9984273(C/T)を有する試験の対象は、図3aに示すように、該SNPrs9984273(C/T)を有さないインターフェロン治療を受けた対象でよりも有意に良好な転帰を示した。これは、図3bに示すプラセボ群においては見られなかった。プラセボ群における対象の転帰は、対象が該SNPrs9984273(C/T)を有するか否かにより変わらなかった。さらに、以下に詳細に説明するように、疾患重症度に関して調整された多変量ロジスティック回帰モデルにおいて、コルチコステロイドの同時投与が、死亡率と独立して関連し、一方SNPrs9984273(C/T)とインターフェロン治療との組み合わせが生存率に非常に有意な効果を示すということが示された。
【0028】
上記第III相無作為化プラセボ対照試験の結果をより詳細に分析するために、線形ステップダウン多変量回帰モデルを治療開始後28日目(D28)の転帰に影響を与える最も重要な因子が何かを調査するために行った。そのモデルに含まれる変量は、単変量解析にしたがい選択された。テストP値<0.15を有する変量を、モデルに入れた。これらは、臨床試験におけるインターフェロンベータの治療期間のあいだ(すなわち、0日目~7日目)のコルチコステロイドの重複使用、およびインターフェロンアルファおよびベータ受容体サブユニット2におけるC/T多形の存在(IFNAR2、多形ID:rs9984273)。連続的な数的APACHE IIスコアを、単変量分析における死亡率とも相関するため、疾患の重症度の調整のために使用した。
【0029】
第III相試験の多変量ロジスティック回帰モデルの結果を図4および5に示す。図4に示される表は、インターフェロンで治療された患者群由来のものであり、図5に示される表はプラセボで処置された患者群由来のものである。表において、SNP:1=遺伝子あり、0=遺伝子なし、およびコルチコステロイドの効果:cstart2=投薬中に調整され、APACHEスコア(AP30)に関して調整されたコルチコステロイド。
【0030】
多変量回帰モデルは、インターフェロンベータ-1a治療を受け、SNPrs9984273(C/T)を担持する患者が、該変異のない疾患よりもD28で生きている可能性が5.7倍高い(p=0.0057)一方、治療期間中にコルチコステロイド(cstart2)を投与されている患者がD28で死んでいる可能性が7.6倍高い(オッズ比0.13、p=0.0008)ということを示す。治療の最初の数日間のコルチコステロイド使用に対する同様の有害な効果は、プラセボ群に見られた(D28で死んでいる可能性が3.5倍高い、p=0.06)が、プラセボ群におけるC/T多形について生存効果は見られなかった。これは、インターフェロンアルファおよびベータ受容体サブユニット2におけるC/T多形(IFNAR2、多形ID:rs9984273)とインターフェロンベータ-1a治療とが、患者の転帰およびインターフェロン治療の有効性について最も好ましい組み合わせである、すなわち生存の最も高い予測値が定義されたSNPを有することとI型インターフェロン治療をうけることとの組み合わせである、ということを意味する。
【0031】
発明の実施態様
上述したように、本発明の知見は、I型インターフェロン治療により反応する可能性のあるものとして患者を分類するための方法を提供する。
【0032】
I型インターフェロンの投与、任意にはコルチコステロイドとの併用投与を含む治療に対する患者の反応性を特定する方法は、
-患者から試料を取得すること、
-患者から得られた試料から、患者の第21染色体のインターフェロンアルファおよびベータ受容体のサブユニット2(IFNAR2)における一塩基多形(SNP)rs9984273(C/T)の存否を特定すること、および
-該SNPの存否を根拠として患者を分類することを含み、
i)前記SNPの存在が、コルチコステロイドの投与を伴うかまたは伴わないI型インターフェロンの投与を含む治療に反応性を示し、または
ii)該SNPの不存在が、コルチコステロイドの投与を伴う治療に非反応性を示し、コルチコステロイドの投与を伴わない治療に軽度の反応性を示す。
【0033】
コルチコステロイドと併用でI型インターフェロンによる処置を含む治療に対する患者の反応性を特定するための本発明の一実施態様による方法は、
-患者から得られた試料から、第21染色体のインターフェロンアルファおよびベータ受容体のサブユニット2(IFNAR2)における一塩基多形(SNP)rs9984273(C/T)の存否を特定すること、および
-該SNPの存否を根拠として患者を分類することを含み、
i)前記SNPの存在が、I型インターフェロンおよびコルチコステロイドでの処置を含む治療に反応性を示し、または
ii)該SNPの不存在が、I型インターフェロンおよびコルチコステロイドでの処置を含む治療に非反応性を示す。
【0034】
本発明による方法は、簡単には、患者から得られた試料における一塩基多形(SNP)rs9984273(C/T)の存否を特定することに基づく。問題のSNPrs9984273(C/T)は、第21染色体(ホモ サピエンス:chr21:chr位置34635065)におけるインターフェロンアルファおよびベータ受容体のサブユニット2(IFNAR2)の中にある。これはPubMed(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/projects/SNP/snp_ref.cgi?rs=9984273)において完全に言及されており、この前にはこのSNPについて機能的な役割は発見されていない。第21染色体のインターフェロンアルファおよびベータ受容体のサブユニット2(IFNAR2)における一塩基多形(C/T)の位置の詳細な説明は、図2にも示されている。該SNPrs9984273(C/T)を有する患者は、該遺伝子の少なくとも1つにTの代わりにCを有する。
【0035】
試料におけるSNPrs9984273(C/T)の存否は、第21染色体のインターフェロンアルファおよびベータ受容体のサブユニット2におけるSNPrs9984273(C/T)および/またはSNPrs9984273(C/T)との連鎖不均衡におけるSNPを検出することにより分析することができる。本発明の一つの実施態様によれば、試料中のSNPrs9984273(C/T)および/またはSNPrs9984273(C/T)との連鎖不均衡におけるSNPの存否は、商業的に入手可能なアッセイおよび測定方法で特定することができる。本発明は、どんな具体的な方法またはアッセイに制限されるものではなく、すべての好適なアッセイおよび/または方法を、ゲノムDNA試料において該SNPを増幅および検出するために利用することができる。ゲノムDNAは、組織、唾液、血液または血清試料などの患者由来の様々な種類の試料から生じ得る。該SNPの存在は、例えば、試料を、SNPrs9984273(C/T)および/またはSNPrs9984273(C/T)との連鎖不均衡におけるSNPを認識するオリゴヌクレオチドプローブと接触させることにより特定することができる。上記第III相試験の患者群のより詳細な分析のために、SNPrs9984273(C/T)の存在は、Taqman(登録商標)SNP遺伝子分類アッセイ(Genotyping Assay)(サーモフィッシャー サイエンティフィック社;アッセイID C_2443264_10)を用いることにより検出された。より詳細な情報は、https://www.thermofisher.com/order/genome-database/details/genotyping/C___2443264_10?CID=&ICID=&subtype=に示されている。あらかじめ設計されたTaqMan(登録商標)SNP遺伝子分類アッセイは、異なる蛍光色素に接触する2つのアレル-特異的TaqMan(登録商標)プローブと、特異的SNP標的を検出するPCRプライマーペアを含む。本発明は、この具体的に記載された該SNPを認識するためのアッセイ方法に限定されるものではない。本発明の別の実施態様によれば、該SNPの存在は、試料を、オリゴヌクレオチドプローブと接触させ、ポリメラーゼ連鎖反応および多形SNPrs9984273(C/T)および/またはSNPrs9984273(C/T)との連鎖不均衡におけるSNPを認識する特異的制限酵素を用いて検出され得る。好適なプローブは、例えば検出すべき配列の長さによって異なる。
【0036】
試料中のSNPrs9984273(C/T)の存否は、好適なプローブを用いることによりSNPrs9984273(C/T)自体を検出することにより特定することができる。あるいは、試料中のSNPrs9984273(C/T)の存否は、SNPrs9984273(C/T)との連鎖不均衡におけるSNPを検出することにより特定することができる。連鎖不均衡は、2つ(またはそれより多く)の多形が、遺伝子試料において同時に存在する(50%超の確率で)ということを意味する。また、連鎖不均衡におけるこれらの多形の2つ(またはそれより多く)の異なる遺伝子座の間の物理的な距離が短いことを意味し、これらの遺伝子座が互いに独立して受け継がれるのではなく、高い確率(>50%)でそれらは一緒に受け継がれることを意味する。したがって、患者のスクリーニング方法は、試料中の一塩基多形(SNP)の存否を特定する(そのSNPはIFNAR2におけるSNPrs9984273(C/T)および/またはSNPrs9984273(C/T)との連鎖不均衡におけるSNPである)ことを含み得る。
【0037】
SNPrs9984273(C/T)の存在が患者から検出される場合、それは、コルチコステロイドの投与を伴うかまたは伴わないI型インターフェロンの該患者への投与を含む治療に対する反応性を示す。一方、試料中の該SNPの不存在は、コルチコステロイドの投与を伴うその治療に非反応であり、コルチコステロイドの投与を伴わないその治療に軽度の反応を示す。すわなち、仮にSNPrs9984273(C/T)を持たない患者がI型インターフェロンにより処置された場合は、コルチコステロイドを伴わないでするべきである。該SNPの存否を特定することにより、医師は、I型インターフェロンの投与を開始することまたは開始しないことを決定できる。さらに、該SNPは、I型インターフェロン治療と組み合わせたコルチコステロイドの投与を開始するまたは開始しないという臨床的決定を補助するためのマーカーとしても使用することができる。
【0038】
本発明によれば、試料中にSNPrs9984273(C/T)が存在する患者は、コルチコステロイドの投与を伴うかまたは伴わないI型インターフェロンの該患者への投与を含む治療での>0.8、好ましくは>0.85、より好ましくは>0.9の生存確率を有する。したがって、本発明のスクリーニング方法は、処置を治療の初期の段階でそれぞれの個人に合わせたものにすることができるため、患者の生存する可能性を際立って改善する。
【0039】
この出願において、用語、I型インターフェロンは、インターフェロンベータおよびインターフェロンアルファのすべての形態およびそれらのサブタイプを意味する。本発明の好ましい実施態様において、インターフェロンベータは、インターフェロンベータ-1a、インターフェロンベータ-1b、および/またはインターフェロンベータ-2(すなわち、インターロイキン-6)であってもよい。本発明による一つの好ましい実施態様において、I型インターフェロンは、インターフェロンベータ-1aを含む。本発明による一つの実施態様において、インターフェロンアルファはインターフェロンアルファ-1、インターフェロンアルファ-2、インターフェロンアルファ-8、インターフェロンアルファ-19、インターフェロンアルファ-14、およびインターフェロンアルファ-21から選択することができる。本発明によるスクリーニング方法は、I型インターフェロンによる薬理的介入を必要とする、またはI型インターフェロンによる薬理的介入により恩恵を受ける疾患または障害を患うあらゆる患者をスクリーニングために利用可能であるとみなされる。
【0040】
本発明の一実施態様によれば、治療がI型インターフェロンに組み合わせてコルチコステロイドの投与も含む場合、コルチコステロイドは、糖質コルチコイドの群から選択される。本発明の一実施態様によれば、糖質コルチコイドは、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾンおよび/またはデキサメタゾンであってもよい。
【0041】
本発明によれば、活性成分としてI型インターフェロンを含む組成物は、個体における疾患または障害の予防および/または治療に使用され、その疾患または障害はI型インターフェロンによる薬理的介入を必要するかまたはI型インターフェロンによる薬理的介入から恩恵を受ける。本発明の一実施態様によれば、組成物の医薬製剤は、賦形剤を含む好適な薬学的に許容され得る担体および活性化合物の薬学的に使用できる製剤への加工を容易にする助剤も含む。組成物は、薬理学的に有効な量のI型インターフェロンを含む。「薬理学的に有効な量」との表現は、所望の治療結果をもたらすのに十分なI型インターフェロンのあらゆる量を含む。治療効果は、対象の遺伝子プロファイルに依存し得る。本発明による医薬組成物は、それらの意図する目的を達成する任意の手段により投与することができる。例えば、投与は静脈内、関節内、または皮下投与とすることができる。
【0042】
本発明は、治療決定に先立つ遺伝子検査と組み合わせたI型インターフェロンの薬理的処置に基づく。特定の遺伝子検査は、患者の転帰を予測するために使用することもでき、重篤な生命を脅かすウイルス感染症、例えばエボラ、MERS、インフルエンザ、鳥インフルエンザ、豚インフルエンザ、および全身性炎症反応症候群(SIRS)および中枢器官の機能不全、すなわち急性腎害(AKI)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)および/または多臓器不全(MOF)を引き起こす他の同様な症状;ならびに虚血および全身性炎症性損傷は、主要な外傷により生み出され、頻回輸注または心臓血管手術、例えば、開放大動脈再建術、開放心臓手術、臓器移植、または任意の他の手術的介入が体外循環および動脈の遮断を必要とする。
【0043】
I型インターフェロンの投与を含む発明は、ヒトにおける脈管内皮疾患の範囲の治療のために使用され得る。局所的なアデノシンを産生することができるCD73、すなわち内皮の外酵素は、内皮バリアおよび肺機能を維持するためのカギとなる分子である。インターフェロン-ベータは、CD73発現を増加させ、結果として局所的なアデノシンを増加させる。多くの炎症状態は、炎症した/傷を負った内皮細胞の表面からのCD73の損失を生じることが知られており、したがって、利用できるアデノシン含量が減少する。アデノシンの抗-炎症性は、文献上よく知られており、局所的アデノシン作用の損失から生じることが知られているあらゆる状態は、CD73発現のアップレギュレーションから恩恵を受ける。恒久的な支援が必要とされる場合、CD73のアップレギュレーションは、デノボ合成に基づくべきである。
【0044】
I型インターフェロンの投与を含む発明は、血管または心臓手術、臓器移植、脳卒中、心筋梗塞または急性冠症候群から生じる虚血-再灌流害の予防および/または治療における使用、または主要血管または心臓手術および臓器移植の前の虚血プレコンディショニングにおける使用にも適している。加えて、発明は心筋梗塞および脳卒中における虚血-再灌流害の予防および/または治療における使用に適している。
【0045】
I型インターフェロンの投与を含む発明は、全身性炎症反応症候群(SIRS)や多臓器不全(MOF)を引き起こす重篤な細菌性肺炎における使用に適している。
【0046】
I型インターフェロンの投与を含む発明は、全身性炎症反応症候群(SIRS)や多臓器不全(MOF)を引き起こす重症呼吸器感染症または出血性ウイルス感染症における使用に適している。
【0047】
I型インターフェロンの投与を含む発明は、多発性硬化症(MS)の治療における使用に適している。
【0048】
I型インターフェロンの投与、特にインターフェロンアルファの投与を含む発明は、へアリー細胞白血病、悪性メラノーマ、濾胞性リンパ腫、尖圭コンジローム、AIDS関連カポジ肉腫、慢性C型肝炎、急性C型肝炎、および慢性B型肝炎を含む人における悪性疾患の治療における使用に適している。
【0049】
本発明の実施態様によれば、I型インターフェロンによる薬理的介入を必要とするかまたはI型インターフェロンによる薬理的介入から恩恵を受ける疾患または障害は、
-脈管内皮疾患、
-急性呼吸促迫症候群(ARDS)、全身性炎症反応症候群(SIRS)、または他の外傷症状、
-虚血-再灌流害、
-主要血管または心臓手術および臓器移植の前の虚血プレコンディショニング、
-急性膵炎、
-急性腎害、
-多臓器不全(MOF)、
-重症呼吸器感染症または出血性ウイルス感染症、
-多発性硬化症(MS)
から選択することができる。
【0050】
本明細書において説明される患者を治療する方法の実施態様の一つにおいて、患者は、脈管内皮疾患、または本願において記載される任意の他の症状を有する。I型インターフェロンの投与は、疾患診断および遺伝子検査の後、出来るだけ早期に開始すべきである。
【0051】
本発明の実施態様によれば、I型インターフェロンによる治療、任意にはコルチコステロイドとの併用治療に対する患者の反応性を特定するための方法は、ARDSを患う患者をスクリーニングし、IFNAR2におけるSNPrs9984273(C/T)の存否を根拠に治療方法を個人に合ったものにすることができるように使用される。
【0052】
患者を治療するための本発明の実施態様による方法は、IFNAR2におけるSNPrs9984273(C/T)の存否の特定、およびI型インターフェロンを含む組成物の、任意にはコルチコステロイドを伴うかまたは伴わない投与を含む。
【0053】
患者は、第1の活性成分としてI型インターフェロンの有効量、すなわち目的とする疾患または障害を治療、緩和または予防するのに十分な量を投与されるであろう。任意の特定の対象についてのI型インターフェロンの最適な有効量および濃度は、患者の年齢、サイズ、健康および/または性別、症状の性質および程度などを含む様々な因子に依存し、また、例えばインターフェロン活性と干渉することが知られているコルチコステロイドの同時投与など、I型インターフェロンと組み合わせて投与される可能性のある任意の別の治療剤にも依存する。所定の状況のために使用される有効量は、臨床医の判断、および行われた遺伝子検査と共に特定され得る。
【0054】
明細書に引用された参考文献
Bellingan et. al. The effect of intravenous interferon-beta-1a (FP-1201) on lung CD73 expression and on acute respiratory distress syndrome mortality: an open-label study. Lancet Respir Med 2014, 2: 98-107.
Bellingan et. al. Comparison of the efficacy and safety of FP-1201-lyo (intravenously administered recombinant human interferon beta-1a) and placebo in the treatment of patients with moderate or severe acute respiratory distress syndrome: study protocol for a randomized controlled trial. Trials 2017, 18:536.
Jalkanen, S. and Salmi, M., VAP-1 and CD73, Endothelial cell surface enzymes in leukocyte extravasation. Asterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 2008, 18-26.
Kiss et. al., IFN-β protects from vacular leakage via up-reguoelation of CD73. Eur. J. Immunology 2007, 37: 3334-3338.
Levy et. al., Ringing the interferon alarm: differential regulation of gene expression at the interface between innate and adaptive immunity. Current Opinion in Immunology 2003,15:52-58.
Mahurkar et. al., Response to interferon-beta treatment in multiple sclerosis patients: a genome-wide association study. The Pharmacogenomics Journal, March 2016, 1-7.
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5