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特許7470696負極活物質並びにそれを含む電気化学装置及び電子装置
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  • 特許-負極活物質並びにそれを含む電気化学装置及び電子装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】負極活物質並びにそれを含む電気化学装置及び電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/48 20100101AFI20240411BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
H01M4/48
H01M4/36 A
H01M4/36 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021540896
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-07
(86)【国際出願番号】 CN2021084484
(87)【国際公開番号】W WO2022205100
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】姜道義
(72)【発明者】
【氏名】陳志煥
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/054476(WO,A1)
【文献】特開2011-096455(JP,A)
【文献】特開2013-235685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素と一酸化ケイ素とを含有する基体材料を含み、
前記炭素は前記一酸化ケイ素にドープされ、
前記基体材料の任意の領域において、炭素、ケイ素及び酸素の全質量に対する前記炭素の含有量が0.5%~10%であり、
前記基体材料の内部にSi-C及びO-C結合が形成された、二次電池用負極活物質。
【請求項2】
前記基体材料の平均粒子径が0.5μm~30μmである、請求項1に記載の二次電池用負極活物質。
【請求項3】
前記基体材料の比表面積が10m/g以下である、請求項1に記載の二次電池用負極活物質。
【請求項4】
前記二次電池用負極活物質は、更に前記基体材料の少なくとも一部の表面に形成される被覆層を含み、
前記被覆層は炭素、酸化物及び重合体の少なくとも一つを含む、請求項1に記載の二次電池用負極活物質。
【請求項5】
前記二次電池用負極活物質が下記の特徴の少なくとも一つを満たす、請求項4に記載の二次電池用負極活物質:
(a)前記被覆層が炭素を含み、前記被覆層における前記炭素が非晶質炭素を含み、
(b)前記被覆層が炭素を含み、前記被覆層における炭素含有量と前記基体材料における炭素含有量との重量比が0.5~5であり、
(c)前記被覆層が炭素を含み、前記二次電池用負極活物質の重量に対する前記被覆層における炭素含有量が0.05%~10%であり、
(d)前記酸化物は式MeOyで表される物質を有し、MeがAl、Si、Ti、Mn、V、Cr、Co及びZrの少なくとも一つを含み、2×yの値がMeの原子価であり、前記二次電池用負極活物質の重量に対する前記Meの含有量が0.05%~5%であり、
(e)前記被覆層の厚さが0.5nm~100nmである。
【請求項6】
前記重合体は、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ブタジエンスチレンゴム、ポリアクリルアミド、ポリイミド及びポリアミドイミドの少なくとも一つを含む、請求項4に記載の二次電池用負極活物質。
【請求項7】
前記二次電池用負極活物質のX線回折パターンにおいて、2θが28.4±0.1範囲内にある最高のピークの強度をIとし、2θが22.0±0.1範囲内にある最高のピークの強度をIとすると、I/I≦10を満たす、請求項1に記載の二次電池用負極活物質。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の二次電池用負極活物質を含有する負極を含む、二次電池。
【請求項9】
請求項8に記載の二次電池を含む、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願はエネルギー貯蔵技術分野に関し、より詳しくは負極活物質並びにそれを含む電気化学装置及び電子装置に関し、特にリチウムイオン電池に適用する負極活物質に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気化学装置(例えば、リチウムイオン電池)はエネルギー密度が高く、動作電圧が高く、軽量、自己放電率が低く、サイクル寿命が長く、メモリー効果がなく、及び環境に優しい等の利点があるため、スマート製品(携帯電話、ノートブック、カメラなどの電子製品を含む)、電気自動車、電動工具、ドローン、先端兵器、大規模エネルギー貯蔵などの分野と産業で広く使用されている。
【0003】
シリコン系負極活物質は高い容量を持ち、未来に最も応用の見込みがあるリチウムイオン負極活物質と考えられる。しかしながら、シリコンの導電性は比較的に悪く、シリコン系負極活物質は充放電のサイクルで不安定な固体電解質界面(SEI)膜を形成しやすく、しかも体積膨張が発生しやすいため、その応用がひどく制限される。
【0004】
この実情に鑑みて、電気化学装置の室温と高温下のサイクル性能改善に寄与する負極活物質を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本願の実施例は負極活物質並びにそれを含む電気化学装置及び電子装置を提供することで、当分野にある少なくとも一つの問題を少なくともある程度で解決することを図る。
【0006】
ある実施例において、本願は炭素と一酸化ケイ素を含む基体材料を含有し、炭素、ケイ素及び酸素の全質量に対する前記炭素の含有量が0.5%~10%である、負極活物質を提供する。
【0007】
本願の実施例によれば、前記炭素は前記一酸化ケイ素にドープされ、前記基体材料の任意の領域において、炭素、ケイ素及び酸素の全質量に対する前記炭素の含有量が0.5%~10%である。
【0008】
本願の実施例によれば、前記基体材料の平均粒子径は0.5μm~30μmである。
【0009】
本願の実施例によれば、前記基体材料の比表面積は10m/g以下である。
【0010】
本願の実施例によれば、前記負極活物質は、更に前記基体材料の少なくとも一部の表面に形成する被覆層を含み、前記被覆層は炭素、酸化物及び重合体の少なくとも一つを含む。
【0011】
本願の実施例によれば、前記負極活物質は下記特徴の少なくとも一つを満たす:(a)前記被覆層は非晶質炭素を含む炭素を含有する;(b)前記被覆層は炭素を含み、前記被覆層における炭素含有量と前記基体材料における炭素含有量との重量比が0.5~5である;(c)前記被覆層は炭素を含み、前記負極活物質の重量に対する前記被覆層における炭素含有量が0.05%~10%である;(d)前記酸化物は式MeOyで表される物質を有し、MeはAl、Si、Ti、Mn、V、Cr、Co及びZrの少なくとも一つを含み、2×yの値がMeの原子価であり、前記負極活物質の重量に対する前記Meの含有量が0.05%~5%である;(e)前記被覆層の厚さが0.5nm~100nmである。
【0012】
本願の実施例によれば、前記重合体は、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ブタジエンスチレンゴム、ポリアクリルアミド、ポリイミド及びポリアミドイミドの少なくとも一つを含む。
【0013】
本願の実施例によれば、前記負極活物質のX線回折パターンにおいて、2θが28.4±0.1範囲内にある最高のピークの強度をIとし、2θが22.0±0.1範囲内にある最高のピークの強度をIとすると、I/I≦10を満たす。
【0014】
他の実施例では、本願は上述したような負極活物質を含む電気化学装置を提供する。
【0015】
更に他の実施例では、本願は上述したような電気化学装置を含む電子装置を提供する。
【0016】
本願の実施例の他の態様および利点は後述の説明で部分的に述べ、表し、または本願の実施例の実施によって説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本願の実施例を記述するために、下記において、本願の実施例または先行技術を記述するために必要な図面を簡単に説明する。明らかなことに、以下記述される図面は本願の実施例の一部に過ぎない。当業者にとっては、創造的な労働をしない前提としても、依然としてこれらの図面に例示された構造に基づいて、他の実施例の図面を得ることができる。
図1図1は実施例2の負極活物質における炭素分布の模式図を示す。
図2図2は比較例2の負極活物質における炭素分布の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本願の実施例を詳細に示す。本願の明細書の全文にわたって、同じ又は類似する部材、並びに同じ又は類似する機能を有する部材を類似する符号で表す。ここに記載された係わる図面の実施例は、説明的に図解性のものであり、本願に対する基本的な理解を提供するためのものである。本願の実施例は本願を制限するものとして解釈されるべきではない。
【0019】
別に断らない限り、本明細書に用いる下記用語は下記の意味を有する。
【0020】
用語「約」は小さな変化を表現及び説明するためのものである。事例または状況と合わせて用いると、前述用語は事例または場合が精確に発生した例、並びに事例または状況が極めて近似的に発生した例を指しうる。例を挙げて説明すると、数値と合わせて使用する時は、用語は前述数値の±10%以下の変化範囲、例えば±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、または±0.05%以下を指しうる。また、本明細書において、範囲の様式で量、比率および他の数値を呈することがある。このような範囲の様式は、便宜上のおよび簡潔のためのものと理解されるべきであり、なお、円滑に理解されるべきものであり、範囲で制限される数値と明らかに指されるものだけではなく、明らかに指される数値および副範囲のように、前述範囲内に及ぶ全ての個別の数値または副範囲も含まれている。
【0021】
発明の具体的な実施形態及び請求の範囲において、用語「からなる群の少なくとも一つ」で表現される項目のリストは、列挙された項目の何れの組み合わせを意味しうる。例えば、もし項目AとBを列挙すれば、「AとBからなる群の少なくとも一つ」という文は、Aのみ;Bのみ;又はA及びBを意味する。他の実例において、もし項目A、B及びCを列挙すれば、「A、B及びCからなる群の少なくとも一つ」という文は、Aのみ;又はBのみ;Cのみ;A及びB(Cを除く);A及びC(Bを除く);B及びC(Aを除く);又はA、B及びCの全部を意味する。項目Aは一つ又は複数の部材を含みうる。項目Bは一つ又は複数の部材を含みうる。項目Cは一つ又は複数の部材を含みうる。
【0022】
シリコン系負極活物質は1000mAh/g~4200mAh/gと高いグラム当たりの容量を持ち、未来に最も応用される展望があるリチウムイオン電池負極活物質と考えられる。しかしながら、シリコンの導電性が比較的に悪く(抵抗率が10Ω・cmより大きい)、シリコン系負極活物質が充放電のサイクルに形成する固体電解質界面(SEI)膜が不安定であり、体積膨張(300%と高い)が発生しやすいため、消費用電池に求められる長いサイクル及び低い膨張を満たすことができない。
【0023】
シリコン負極活物質の性能を高める手段として、多孔質材料を設計すること、材料の寸法を低減すること、酸化物で被覆すること、重合体で被覆すること、炭素で被覆すること及び基体の材料を改善することなどを含む。多孔質材料を設計すること及び材料の寸法を低減することは、サイクルの進行に伴う副反応の発生及び制御不能のSEI膜の成長を避けられなく、シリコン負極材料のサイクル安定性を制限した。酸化物又は重合体で被覆されるシリコン負極活物質の導電性は依然として比較的に悪く(抵抗率が10Ω・cmより大きい)、電気化学上の抵抗が比較的に大きく、且つリチウムが放出される過程において被覆層が壊れやすく、これによりリチウムイオン電池のサイクル寿命に悪い影響を与える。炭素で被覆することは優れた導電性(抵抗率が0.1Ω・cm未満)を提供しうるが、極片の加工において脱炭素の現象が発生しやすく、しかもサイクルにケイ素の膨張、収縮及び破裂により、炭素被覆層はシリコン系負極活物質から剥がれやすく、リチウムイオン電池のサイクル寿命が縮まることをもたらす。シリコン負極活物質の基体材料は主にケイ素酸素炭素セラミック材料及び一酸化ケイ素材料を含む。ポリシロキサン前駆体で調製されるケイ素酸素炭素セラミック材料は、SiOC、SiO、SiOまたはSiO等の構造を含み、そのグラム当たりの容量は比較的に低い(例えば、1000mAh/g)。前駆体の原料と構造の制限により、形成するケイ素酸素炭素セラミック構造において炭素の含有量は10%より大きくなり、これにより電圧プラットフォームが大幅に低減する。ドープまたは被覆で改善しても、ケイ素酸素炭素セラミックは依然として比較的に高い電圧プラットフォオームを備え、且つエネルギー密度が比較的に低い。不均化で一酸化ケイ素におけるケイ素と酸素の分布を制御でき、ケイ素と酸素が基体において均一に分布してもよいが、リチウムを吸蔵した後に形成するケイ酸リチウムは不安定で、一酸化ケイ素のサイクル性能を不十分にして、リチウムイオン電池のサイクル性能を効果に改善できない。
【0024】
上記課題を解決するために、本願は炭素が特定の含有量でドープされた一酸化ケイ素を基体材料として、負極活物質を調製することで、電気化学装置の室温と高温下のサイクル性能を改善する。具体的に、本願は炭素と一酸化ケイ素を含む基体材料を含有し、炭素、ケイ素及び酸素の全質量に対する前記炭素の含有量が0.5%~10%である、負極活物質を提供する。ある実施例において、炭素、ケイ素及び酸素の全質量に対する前記炭素の含有量が0.8%~8%である。ある実施例において、炭素、ケイ素及び酸素の全質量に対する前記炭素の含有量が1%~6%である。ある実施例において、炭素、ケイ素及び酸素の全質量に対する前記炭素の含有量が2%~5%である。ある実施例において、炭素、ケイ素及び酸素の全質量に対する前記炭素の含有量が3%~4%である。ある実施例において、炭素、ケイ素及び酸素の全質量に対する前記炭素の含有量が0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%であり、または上記任意の数値が構成する範囲内にある。
【0025】
一酸化ケイ素の内部に原子レベルの炭素を特定の含有量でドープすることで、基体材料の内部でSi-C及びO-C結合を形成でき、これによりSi-O結合がサイクルに切断して再組織してSiの集中領域を形成するのを緩和または抑制し、更にSiの集中領域の膨張応力が大きすぎる問題を緩和し、これにより電気化学装置の室温と高温下のサイクル性能を顕著に改善する。
【0026】
ある実施例において、前記炭素は前記一酸化ケイ素の中にドープされ、前記基体材料の任意の領域において、炭素、ケイ素及び酸素の全質量に対する前記炭素の含有量が0.5%~10%である。ある実施例において、前記基体材料の任意の領域において、炭素、ケイ素及び酸素の全質量に対する前記炭素の含有量が0.8%~8%である。ある実施例において、前記基体材料の任意の領域において、炭素、ケイ素及び酸素の全質量に対する前記炭素の含有量が1%~6%である。ある実施例において、前記基体材料の任意の領域において、炭素、ケイ素及び酸素の全質量に対する前記炭素の含有量が2%~5%である。ある実施例において、前記基体材料の任意の領域において、炭素、ケイ素及び酸素の全質量に対する前記炭素の含有量が3%~4%である。ある実施例において、前記基体材料の任意の領域において、炭素、ケイ素及び酸素の全質量に対する前記炭素の含有量が0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%であり、または上記任意の数値が構成する範囲内にある。
【0027】
ある実施例において、前記基体材料の平均粒子径は0.5μm~30μmである。ある実施例において、前記基体材料の平均粒子径は1μm~25μmである。ある実施例において、前記基体材料の平均粒子径は5μm~20μmである。ある実施例において、前記基体材料の平均粒子径は10μm~15μmである。ある実施例において、前記基体材料の平均粒子径は0.5μm、1μm、3μm、5μm、8μm、10μm、13μm、15μm、18μm、20μm、23μm、25μm、28μm、30μmであり、または上記任意の数値が構成する範囲内にある。基体材料の平均粒子径が上記範囲内にある場合、電気化学装置の室温と高温下のサイクル性能を更に改善することに寄与する。
【0028】
ある実施例において、前記基体材料の比表面積は10m/g以下である。ある実施例において、前記基体材料の比表面積は9m/g以下である。ある実施例において、前記基体材料の比表面積は8m/g以下である。ある実施例において、前記基体材料の比表面積は7m/g以下である。ある実施例において、前記基体材料の比表面積は6m/g以下である。ある実施例において、前記基体材料の比表面積は5m/g以下である。ある実施例において、前記基体材料の比表面積は4m/g以下である。ある実施例において、前記基体材料の比表面積は3m/g以下である。ある実施例において、前記基体材料の比表面積は2m/g以下である。ある実施例において、前記基体材料の比表面積は1m/g以下である。基体材料の比表面積が上記範囲内にある場合、電気化学装置の室温と高温下のサイクル性能を更に改善することに寄与する。
【0029】
ある実施例において、前記負極活物質は前記基体材料の少なくとも一部の表面に形成する被覆層を更に含み、前記被覆層は炭素、酸化物及び重合体の少なくとも一つを含む。
【0030】
ある実施例において、前記被覆層は炭素を含む。
【0031】
ある実施例において、前記被覆層における前記炭素は非晶質炭素を含む。
【0032】
ある実施例において、前記被覆層における炭素含有量と前記基体材料における炭素含有量との重量比が0.5~5である。ある実施例において、前記被覆層における炭素含有量と前記基体材料における炭素含有量との重量比が0.8~4である。ある実施例において、前記被覆層における炭素含有量と前記基体材料における炭素含有量との重量比が1~3である。ある実施例において、前記被覆層における炭素含有量と前記基体材料における炭素含有量との重量比が0.5、0.8、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5であり、または上記任意の数値が構成する範囲内にある。被覆層における炭素含有量と基体材料における炭素含有量との重量比が上記範囲内にある場合、電気化学装置の室温と高温下のサイクル性能を更に改善することに寄与する。
【0033】
ある実施例において、前記負極活物質の重量に対する前記被覆層における炭素含有量が0.05%~10%である。ある実施例において、前記負極活物質の重量に対する前記被覆層における炭素含有量が0.1%~8%である。ある実施例において、前記負極活物質の重量に対する前記被覆層における炭素含有量が0.5%~5%である。ある実施例において、前記負極活物質の重量に対する前記被覆層における炭素含有量が0.8%~3%である。ある実施例において、前記負極活物質の重量に対する前記被覆層における炭素含有量が1%~2%である。ある実施例において、前記負極活物質の重量に対する前記被覆層における炭素含有量が0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%であり、または上記任意の数値が構成する範囲内にある。被覆層における炭素含有量が上記範囲内にある場合、電気化学装置の室温と高温下のサイクル性能を更に改善することに寄与する。
【0034】
ある実施例において、前記被覆層は酸化物を含む。
【0035】
ある実施例において、前記酸化物は式MeOyで表される物質を有し、MeがAl、Si、Ti、Mn、V、Cr、Co及びZrの少なくとも一つを含み、2×yの値がMeの原子価である。
【0036】
ある実施例において、前記負極活物質の重量に対する前記Meの含有量が0.05%~5%である。ある実施例において、前記負極活物質の重量に対する前記Meの含有量が0.1%~4%である。ある実施例において、前記負極活物質の重量に対する前記Meの含有量が0.5%~3%である。ある実施例において、前記負極活物質の重量に対する前記Meの含有量が1%~2%である。ある実施例において、前記負極活物質の重量に対する前記Meの含有量が0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%であり、または上記任意の数値が構成する範囲内にある。酸化物におけるMe元素の含有量が上記範囲内にある場合、電気化学装置の室温と高温下のサイクル性能を更に改善することに寄与する。
【0037】
ある実施例において、前記被覆層は重合体を含む。
【0038】
ある実施例において、前記重合体は、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ブタジエンスチレンゴム、ポリアクリルアミド、ポリイミド及びポリアミドイミドの少なくとも一つを含む。
【0039】
ある実施例において、前述被覆層の厚さは約0.5nm~100nmである。ある実施例において、前述被覆層の厚さは約1nm~80nmである。ある実施例において、前述被覆層の厚さは約5nm~60nmである。ある実施例において、前述被覆層の厚さは約10nm~50nmである。ある実施例において、前述被覆層の厚さは約20nm~30nmである。ある実施例において、前述被覆層の厚さは0.5nm、1nm、5nm、10nm、15nm、20nm、25nm、30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、55nm、60nm、65nm、70nm、75nm、80nm、85nm、90nm、95nm、100nmであり、または上記任意の数値が構成する範囲内にある。被覆層の厚さが上記範囲内にある場合、電気化学装置の室温と高温下のサイクル性能を更に改善することに寄与する。
【0040】
ある実施例において、前記負極活物質のX線回折パターンにおいて、2θが28.4±0.1範囲内にある最高のピークの強度をIとし、2θが22.0±0.1範囲内にある最高のピークの強度をIとすると、I/I≦10を満たす。数値I/Iの大きさは、負極活物質の不均化される程度を反映しうる。I/I値が小いほど、負極活物質材料の内部のナノシリコン結晶粒の寸法が大きくなる。I/I値が上記範囲内にある場合、電気化学装置の室温と高温下のサイクル性能を更に改善することに寄与する。
【0041】
負極
負極は、負極集電体及び負極集電体上に設置される負極活物質層を含む。負極活物質層は本願に記載される負極活物質を含む。
【0042】
ある実施例において、負極活物質層は負極粘着剤を含む。ある実施例において、負極粘着剤はポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化されたポリビニルクロリド、ポリビニルフルオリド、エチレンオキシドを含む重合体、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ1,1-ジフルオロビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル酸(エステル)化されたスチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂、ナイロンを含むが、これらに限定されるものではない。
【0043】
ある実施例において、負極活物質層は負極導電材を含む。ある実施例において、負極導電材は天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバー、金属粉末、金属ファイバー、銅、ニッケル、アルミニウム、銀、又はポリフェニレン誘導体を含むが、これらに限定されるものではない。
【0044】
ある実施例において、負極集電体は銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、ニッケルフォーム、銅フォーム、又は導電性金属で覆われた重合体基板を含むが、これらに限定されるものではない。
【0045】
ある実施例において、負極は、溶媒の中で活物質、導電材と粘着剤を混合して調製される負極活物質スラリーを負極集電体に塗工する方法で得られる。
【0046】
ある実施例において、溶媒はN-メチルピロリドンを含みうるが、これに限定されるものではない。
【0047】
正極
正極は、正極集電体及び前記正極集電体上に設置される正極活物質を含む。正極活物質の具体的な種類は具体的に制限されなく、必要に応じて選択しうる。
【0048】
ある実施形態において、正極活物質はリチウム(Li)を吸蔵と放出できる正極材料を含む。リチウム(Li)を吸蔵/放出できる正極材料の例として、コバルト酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミン酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄マンガンリチウム、リン酸バナジウムリチウム、リン酸バナジルリチウム、リン酸鉄リチウム、チタン酸リチウム及びリチウムリッチマンガン系材料が含まれうる。
【0049】
具体的には、コバルト酸リチウムの化学式は化学式1であり得る:
LiCoM12-c 化学式1
ここで、M1はニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、タングステン(W)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ジルコニウム(Zr)、及びケイ素(Si)の少なくとも一つを表し、x、a、b及びcの値はそれぞれ下記の範囲内にある:0.8≦x≦1.2、0.8≦a≦1、0≦b≦0.2、-0.1≦c≦0.2。
【0050】
ニッケルコバルトマンガン酸リチウム又はニッケルコバルトアルミン酸リチウムの化学式は化学式2であり得る:
LiNiM22-f 化学式2
ここで、M2はコバルト(Co)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、及びケイ素(Si)の少なくとも一つを表し、y、d、e及びfの値はそれぞれ下記の範囲内にある:0.8≦y≦1.2、0.3≦d≦0.98、0.02≦e≦0.7、-0.1≦f≦0.2。
【0051】
マンガン酸リチウムの化学式は化学式3であり得る:
LiMn2-gM34-h 化学式3
ここで、M3はコバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、及びタングステン(W)の少なくとも一つを表し、z、g及びhの値はそれぞれ下記の範囲内にある:0.8≦z≦1.2、0≦g<1.0和-0.2≦h≦0.2。
【0052】
ある実施例において、前記正極活物質層の重量は、前記負極活物質層の1.5~15倍である。ある実施例において、前記正極活物質層の重量は、前記負極活物質層の3~10倍である。ある実施例において、前記正極活物質層の重量は、前記負極活物質層の5~8倍である。ある実施例において、前記正極活物質層の重量は、前記負極活物質層の1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍又は15倍である。
【0053】
ある実施例において、正極活物質層は表面に塗工層を有してもよく、又は塗工層を有する他の化合物と混合してもよい。前記塗工層は、塗工元素の酸化物、塗工元素の水酸化物、塗工元素のヒドロキシ酸化物、塗工元素のオキシカーボネート(oxycarbonate)と塗工元素のヒドロキシカーボネート(hydroxycarbonate)の少なくとも一つの塗工元素化合物を含みうる。塗工層に用いられる化合物は非晶質又は結晶性のものでありうる。塗工層に含有される塗工元素は、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zr、F又はこれらの混合物を含みうる。任意の方法で塗工層を形成してもよく、前記方法が正極活物質の性能に不利の影響を与えなければよい。例えば、前記方法は、例えばスプレーコーティングや浸漬などの、当業者の周知の任意の塗工方法を含みうる。
【0054】
ある実施形態において、正極活物質層は粘着剤を含み、更に正極導電材を任意に含む。
【0055】
粘着剤は正極活物質粒子同士の結合を高め、正極活物質と集電体との結合も高める。粘着剤の非限定的な例はポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化されたポリビニルクロリド、ポリビニルフルオリド、エチレンオキシドを含む重合体、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ1,1-ジフルオロビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル酸(エステル)化されたスチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂、ナイロンなどを含む。
【0056】
正極活物質層は正極導電材を含んで、電極に導電性を付与する。化学変化を起こさない限り、前記正極導電材は任意の導電材を含みうる。正極導電材の非限定的な例は、炭素による材料(例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボン繊維など)、金属による材料(例えば、金属粉末、金属繊維など、例えば銅、ニッケル、アルミニウム、銀などが含まれる)、導電重合体(例えばポリフェニレン誘導体)およびそれらの混合物を含む。
【0057】
本願に係わる電気化学装置に用いられる正極集電体はアルミニウム(Al)でありうるが、これに限定されるものではない。
【0058】
電解液
本願の実施例に用いられる電解液は先行技術において既知の電解液であってもよい。
【0059】
本願の実施例に用いられる電解液における電解質は、LiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiSbF、LiSOF、LiN(FSO)などの無機リチウム塩;LiCFSO、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO)、LiN(CSO)、環状1,3-ヘキサフルオロプロパンジスルホンイミドリチウム、環状1,2-テトラフルオロエタンジスルホンイミドリチウム、LiN(CFSO)(CSO)、LiC(CFSO)、LiPF(CF)、LiPF(C)、LiPF(CFSO)、LiPF(CSO)、LiBF(CF)、LiBF(C)、LiBF(CFSO)、LiBF(CSO)などのフッ素含有有機リチウム塩;ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、ジフルオロオキサラトホウ酸リチウム、トリス(オキサラト)リン酸リチウム、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウムなどのジカルボン酸錯体含有リチウム塩。なお、上記電解質は一種類を単独で使用してもよく、二種類又は二種類以上を同時に使用してもよい。ある実施例において、電解質はLiPFとLiBFの組み合わせを含む。ある実施例において、電解質はLiPF又はLiBFなどの無機リチウム塩と、LiCFSO、LiN(CFSO)、LiN(CSO)などのフッ素含有有機リチウム塩との組み合わせを含む。ある実施例において、電解質はLiPFを含む。
【0060】
ある実施例において、電解質の濃度は0.8~3mol/Lの範囲内にあり、例えば0.8~2.5mol/Lの範囲内、0.8~2mol/Lの範囲内、1~2mol/Lの範囲内にあり、例えば1mol/L、1.15mol/L、1.2mol/L、1.5mol/L、2mol/L又は2.5mol/Lである。
【0061】
本願の実施例に用いられる、電解液における溶媒は、環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状カルボン酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状エーテル、鎖状エーテル、リン含有有機溶媒、硫黄含有有機溶媒および芳香族フッ素含有溶媒を含むが、これに限定されるものではない。
【0062】
ある実施例において、環状カーボネートはエチレンカーボネート(ethylene carbonate,EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate,PC)およびブチレンカーボネートを含むが、これに限定されるものではない。
【0063】
ある実施例において、環状カーボネートは3~6の炭素原子を有する。
【0064】
ある実施例において、鎖状カーボネートは炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル(diethyl carbonate,DEC)、炭酸メチルn-プロピル、炭酸エチルn-プロピル、炭酸ジ-n-プロピルなどの鎖状カーボネート;フッ素に置換された鎖状カーボネートとして、例えばビス(フルオロメチル)カーボネート、ビス(ジフルオロメチル)カーボネート、ビス(トリフルオロメチル)カーボネート、ビス(2-フルオロエチル)カーボネート、ダブル(2,2-ジフルオロエチル)カーボネート、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート、2-フルオロエチルメチルカーボネート、2,2-ジフルオロエチルメチルカーボネートエステルおよび2,2,2-トリフルオロエチルメチルカーボネートを含むが、これに限定されるものではない。
【0065】
ある実施例において、環状カルボン酸エステルはγ-ブチロラクトンとγ-バレロラクトンを含むが、これに限定されるものではない。ある実施例において、環状カルボン酸エステルの一部の水素原子はフッ素で置換されてもよい。
ある実施例において、鎖状カルボン酸エステルは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、ピバリン酸メチル、ピバリン酸エチルを含むが、これに限定されるものではない。ある実施例において、鎖状カルボン酸エステルの一部の水素原子はフッ素で置換されてもよい。ある実施例において、フッ素で置換された鎖状カルボン酸エステルは、トリフルオロ酢酸メチル、トリフルオロ酢酸エチル、トリフルオロ酢酸プロピル、トリフルオロ酢酸ブチル、トリフルオロ酢酸2,2,2-トリフルオロエチルを含むが、これに限定されるものではない。
【0066】
ある実施例において、環状エーテルは、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、2-メチル1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサンおよびジメトキシプロパンを含むが、これに限定されるものではない。
【0067】
ある実施例において、鎖状エーテルは、ジメトキシメタン、1,1-ジメトキシエタン、1,2-ジメトキシエタン、ジエトキシメタン、1,1-ジエトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、エトキシメトキシメタン、1,1-エトキシメトキシエタンおよび1,2-エトキシメトキシエタンを含むが、これに限定されるものではない。
【0068】
ある実施例において、リン含有有機溶媒は、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸ジメチルエチル、リン酸メチルジエチル、リン酸エチレンメチル、リン酸エチレンエチル、リン酸トリフェニル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、リン酸トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)、およびリン酸トリス(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル)を含むが、これに限定されるものではない。
【0069】
ある実施例において、硫黄含有有機溶媒は、スルホラン、2-メチルスルホラン、3-メチルスルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、エチルメチルスルホン、メチルプロピルスルホン、ジメチルスルホキシド、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、エタンスルホン酸メチル、エタンスルホン酸エチル、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、および硫酸ジブチルを含むが、これに限定されるものではない。ある実施例において、硫黄含有有機溶媒の一部の水素原子はフッ素で置換されてもよい。
【0070】
ある実施例において、芳香族フッ素含有溶媒は、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、トリフルオロベンゼン、テトラフルオロベンゼン、ペンタフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼンを含むが、これに限定されるものではない。
【0071】
ある実施例において、本願の電解液に用いる溶媒は上記の一種類又は多種類を含む。ある実施例において、本願の電解液に用いる溶媒は環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状カルボン酸エステル、鎖状カルボン酸エステルおよびそれらの組み合わせを含む。ある実施例において、本願の電解液に用いる溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、酢酸n-プロピル、酢酸エチルおよびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる有機溶媒を含む。ある実施例において、本願の電解液に用いる溶媒はエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、γ-ブチロラクトンおよびそれらの組み合わせを含む。
【0072】
本願の実施例の電解液に用いられる添加剤は、シアノ基を2~3個有する化合物、炭素-炭素二重結合を含む環状カーボネート、硫黄-酸素二重結合を含む化合物、ジフルオロリン酸リチウムを含むが、これに限定されるものではない。
【0073】
ある実施例において、シアノ基を2~3個有する化合物は、スクシノニトリル(SN)、アジポニトリル(ADN)、エチレングリコールビス(プロピオニトリル)エーテル(EDN)、1,3,5-ペンタメチレントリカルボニトリル、1,2,3-プロパントリカルボニトリル、1,3,6-ヘキサントリカルボニトリル(HTCN)、1,2,6-ヘキサントリカルボニトリル、1,2,3-トリス(2-シアノエトキシ)プロパン(TCEP)及び1,2,4-トリス(2-シアノエトキシ)ブタンの少なくとも一つを含みうる。
【0074】
ある実施例において、炭素-炭素二重結合を含む環状カーボネートは、具体的にビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、ビニルビニルエチレンカーボネート、1,2-ジメチルビニレンカーボネートの少なくとも一つを含むが、これに限定されるものではない。
【0075】
ある実施例において、硫黄-酸素二重結合を含む化合物は、硫酸ビニル、硫酸1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンスルトン、1-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、2-フルオロ-1,3-プロパンスルトン及び3-フルオロ-1,3-プロパンスルトンの少なくとも一つを含むが、これに限定されるものではない。
【0076】
セパレータ
ある実施形態において、正極と負極の間には短絡を防止するためのセパレータが設けられる。本願の実施例に用いられるセパレータの材料と形状は特に制限されなく、従来技術に開示された任意の技術であってもよい。ある実施形態において、セパレータは本願の電解液に対して安定な材料で形成される重合体または無機物を含む。
【0077】
例えば、セパレータは基材層と表面処理層を含んでも良い。基材層は多孔質構造を有する無織布、膜または複合膜であり、基材層の材料はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートおよびポリイミドの少なくとも一つである。具体的には、ポリプロピレン多孔質膜、ポリエチレン多孔質膜、ポリプロピレン不織布、ポリエチレン不織布、またはポリプロピレン-ポリエチレン-ポリプロピレン多孔質複合膜を使用しても良い。多孔質構造は、セパレータの耐熱性能、酸化防止性能および電解質濡れ性能を高め、セパレータと極片の接着性を強めることができる。
【0078】
基材層の少なくとも一方の面には表面処理層が設けられ、表面処理層は重合体層であっても無機物層であってもよく、重合体と無機物を混合して形成された層であってもよい。
【0079】
無機物層は無機粒子と結着剤を含み、無機粒子は酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化チタン、二酸化ハフニウム、酸化スズ、酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化イトリウム、炭化ケイ素、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム及び硫酸バリウムの一つまたは幾つかの組み合わせである。結着材はポリビニリデンフルオリド、ビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレンの共重合体、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリヘキサフルオロプロピレンの一つまたは幾つかの組み合わせである。
【0080】
重合体層には重合体を含み、重合体の材料はポリアミド、ポリアクリロニトリル、アクリレートポリマー、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)の少なくとも一つである。
【0081】
電気化学装置
本願は、正極、電解液および負極を含み、前記正極が正極活物質層と正極集電体を含み、前記負極が本願に記載される負極活物質を含有する負極活物質層と負極集電体を含む、電気化学装置を更に提供する。
【0082】
本願の電気化学装置は、電気化学反応を起こす任意の装置を含み、その具体的な例はあらゆる種類の一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池、又はキャパシタを含む。特に、この電気化学装置はリチウム二次電池であり、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池またはリチウムイオンポリマー二次電池を含む。
【0083】
電子装置
本願はまた、本願の電気化学装置を含む、電子装置を提供する。
【0084】
本願の電気化学装置の用途は特に限定されなく、従来技術における既知の任意の電子装置に用いられる。ある実施形態において、本願の電子装置はノートブックコンピューター、ペン入力コンピューター、モバイルコンピューター、電子書籍プレーヤー、携帯電話、ポータブルファックス機、ポータブルコピー機、ポータブルプリンター、ヘッドセット、ビデオレコーダー、液晶テレビ、ポータブルクリーナー、ポータブルCDプレーヤー、ミニCD、トランシーバー、電子ノートブック、電卓、メモリーカード、ポータブルテープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、バイク、補助自転車、自転車、照明器具、おもちゃ、ゲーム機、時計、電動工具、フラッシュ、カメラ、大型家庭用蓄電池およびリチウムイオンキャパシタに用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
下記はリチウムイオン電池を例にして、具体的な実施例と合わせてリチウムイオン電池の調製を説明するが、当業者は、本願に記述された調製方法はただ実例であり、他の任意の適宜な調製方法はいずれも本願の請求の範囲内にあると理解している。
【0086】
実施例
以下、本願に係わるリチウム電池の実施例と比較例に対する性能評価について説明する。
【0087】
1.リチウムイオン電池の調製
(1)負極の調製
下記の方法で各実施例および比較例1の負極活物質を調製した。シリコンとシリカを1:1.1の重量比で均一に混合し、真空蒸着炉に入れ、温度1300℃~1350℃、真空度1pa~100paになるように制御し、適宜の量の炭素源ガス(メタン、アセチレン、エチレンなど)を流し、炭素ドープ一酸化ケイ素(SiO)の蒸着物を得て、粗砕、細砕、粉砕分級、消磁に経て、炭素ドープ一酸化ケイ素を得た(平均粒子径が3μm~8μmである)。
【0088】
各実施例の設置により、必要に応じて、下記の方法で炭素ドープ一酸化ケイ素の表面に酸化物層(MeOy)を被覆する。上記で得られた炭素ドープ一酸化ケイ素と酸化物前駆体MeTnを有機溶媒(エタノール)と脱イオン水の存在下で混合溶液に形成し、前記混合溶液を乾燥して粉末を得て、そして粉末を約250℃~900℃で0.5~24時間焼結し、表面に酸化物層が被覆している炭素ドープ一酸化ケイ素を得た(ここで、2×yの数値がMeの原子価であり、MeがAl、Si、Ti、Mn、Cr、V、Co及びZrの少なくとも一つを含み、Tがメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基又はハロゲンの少なくとも一つを含み、nが1、2、3又は4である)。
【0089】
各実施例の設置により、必要に応じて、下記の方法で炭素ドープ一酸化ケイ素の表面に重合体層を被覆する。上記で得られた炭素ドープ一酸化ケイ素と重合体を溶媒(エタノール、メタノール、イソプロパノール又はそれらの任意に混合した溶媒)に1~12時間高速分散し、懸濁液を得て、そして前記懸濁液中の溶媒を除去し、表面に重合体層が被覆している炭素ドープ一酸化ケイ素を得た。
【0090】
各実施例の設置により、必要に応じて、下記の方法で炭素ドープ一酸化ケイ素の表面に炭素層を被覆する。上記で得られた炭素ドープ一酸化ケイ素、炭素材料および分散剤重合体(カルボキシメチルセルロースナトリウムまたはカルボキシメチルセルロースリチウム)を溶媒(エタノール、メタノール、イソプロパノール又はそれらの任意に混合した溶媒)に溶解し、1~12時間高速分散し、懸濁液を得て、前記懸濁液中の溶媒を除去し、得られた固体を250℃~900℃で0.5~24時間焼結し、表面に炭素層が被覆している炭素ドープ一酸化ケイ素を得た。必要に応じて、上記で得られた炭素ドープ一酸化ケイ素又は炭素層が被覆している炭素ドープ一酸化ケイ素をCVD気相成長炉に置き、炭素源ガス(メタン、アセチレン、エチレン又はそれらの混合物)を流し、600℃~950℃で処理し、表面に非晶質炭素層が被覆している炭素ドープ一酸化ケイ素を得た。
【0091】
各実施例および比較例1について、黒鉛(放電カットオフ電圧が0.8V;グラム当たりの容量が355mAh/gである)と負極活物質を混合し、グラム当たりの容量が500mAh/gになるように調整し、各実施例および比較例1の負極活物質を得た。
【0092】
比較例2について、ポリシロキサンとアスファルトを1:1の重量比で混合し、3℃/分で1100℃に昇温し、4時間保温して、破砕、粉砕、分級などの工程に経て、比較例2の負極活物質を得た。
【0093】
得られた負極活物質、導電剤であるカーボンナノチューブ(CNT)、および結着剤であるポリアクリル酸リチウム(PAALi)を95%:0.2%:4.8%の重量比で混合し、適宜の量の水を加え、固体含有量が約55wt%~70wt%である状態で混練し、更に適宜の量の水を加え、粘度が約4000~6000Pa・sになるように調整し、負極スラリーを得た。調製した負極スラリーを負極集電体である銅箔に塗布し、乾燥し、コールドプレスし、負極を得た。
【0094】
(2)正極の調製
コバルト酸リチウム、導電カーボンブラックおよびポリフルオロビニリデンを95%:2.5%:2.5%の重量比でN-メチルピロリドン(NMP)と混合し、均一に撹拌し、正極スラリーを得た。調製した正極スラリーを正極集電体のアルミ箔に塗布し、乾燥し、コールドプレスし、正極を得た。
【0095】
(3)電解液の調製
乾燥のアルゴンガス雰囲気下、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)を約1:1:1の重量比で混合し、リチウム塩のLiPFを加え、ここでLiPFの濃度が1.15mol/Lであり、そしてフルオロエチレンカーボネート(EC)を約12.5wt%加え、均一に混合し、電解液を得た。
【0096】
(4)セパレータの調製
PE多孔質重合体膜をセパレータとした。
【0097】
(5)リチウムイオン電池の調製
正極、セパレータ、負極をこの順で重ね、セパレータを正極と負極の間に介在して隔離の役割を果たすようにした。捲き回してベアセルを得た。ベアセルを外装に置き、電解液を注ぎ、封じた。化成、脱気、トリミングなどのプロセスに経て、リチウムイオン電池を得た。
【0098】
2.試験方法
(1)基体材料のミクロ形態の観測方法
走査型電子顕微鏡(SEM)でサンプルのミクロ形態(例えば、粒子の凝集の状況)を観測することで、サンプルの表面の被覆状況を特徴付け、試験機器はOXFORD EDS(X-max-20mm)であり、加速電圧が10KVである。
【0099】
(2)基体材料における炭素の相対含有量の試験方法
基体材料を導電性接着剤の銅箔に振りかけ、断面に裁断し、プラスマ研磨機(Leica EM TIC 3X ‐ Ion Beam Slope Cutter)で研磨し、そして走査型電子顕微鏡(SEM)にセットし、裁断された負極活物質の粒子を探し、集束イオンビーム(FIB)で上記負極活物質の粒子を断面と垂直する方向にカットし、負極活物質粒子の断面を含む薄片を得た後、透過型電子顕微鏡(TEM)とエネルギー分光計(EDS)で選択された領域の炭素、酸素およびケイ素における炭素の割合を測定した。
【0100】
(3)炭素含有量の試験方法
サンプルを酸素富化条件で高周波炉で高温加熱して燃焼させ、炭素を二酸化炭素に酸化させ、その気体は処理を経て対応する吸収セルに入り、対応する赤外線輻射を吸収し、検出器により対応するシグナルに転換する。このシグナルはコンピュータによりサンプリングし、直線性補正した後、二酸化炭素の濃度と比例する数値に転換され、そして分析過程における全ての数値を累加して分析した後、コンピュータでこの累加した値を重量の値で除し、校正係数を掛け、空白を引いて、サンプル中の炭素、硫黄の百分率の含有量を得た。以上の試験に用いた機器は高周波赤外線硫黄炭素分析装置(Shanghai Dekai Instrument Co., Ltd.製HCS-140)。
【0101】
調製された未被覆の炭素ドープ一酸化ケイ素をサンプルとし、測定して、基体材料における炭素含有量を得た。被覆後の炭素ドープ一酸化ケイ素をサンプルとし、測定して、負極活物質における全炭素含有量を得た。下記の式に従って被覆層における炭素含有量を計算した。
被覆層における炭素含有量=負極活物質における全炭素含有量-基体材料における炭素含有量。
【0102】
(4)基体材料の平均粒子径の試験方法
ビーカーに粉末サンプル約0.02g、脱イオン水約20mlを入れ、数滴の1%の界面活性剤を滴下し、粉末を水中に完全に分散させた。120Wの超音波洗浄機に置いて超音波を5分かけて、MasterSizer 2000により粒度分布を測定した。
【0103】
(5)基体材料の比表面積の試験方法
1.5~3.5gの粉末サンプルを秤量し、TriStar II 3020の試験サンプル管に入れ、200Cで120分脱気した後、試験を行った。定温の低温で、異なった相対的な圧力での気体が固体表面への吸着量を測定し、Brownauer-Eter-Taylor吸着理論とその公式に基づき、下記の式に従ってサンプルの比表面積を計算した。
【数1】
ここで:
Wは相対圧力でサンプルに吸着する気体の質量である;
Wmは完全な単分子層になるまでの気体飽和吸着量である;
(c-1)/(WmC)が傾きであり、1/WmCが切片であり、全比表面積=Wm×N×Acs/M
【0104】
比表面積S=St/m、ここでmがサンプルの質量であり、AcsがN一分子当たりが占める平均面積16.2Aである。
【0105】
(6)元素含有量の試験方法
ミクロウェーブでサンプルで粉末を溶解させ、濾過して上澄み液を得て、メスフラスコで希釈した後、誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP-OES)を用い、サンプル中の金属又は非金属元素の含有量を測定した。
【0106】
(7)I/Iの試験方法
サンプル1.0g~2.0gをガラス製サンプルラックの溝に置き、ガラス片で圧縮して平にし、X線回折装置(Bruker D8)を採用し、JJS K 0131-1996「X線回折分析法通則」に従って試験し、試験電圧を40 kV設置し、電流が30mAであり、走査角度範囲が10~85°であり、走査ステップが0.0167°であり、ステップ当たりの時間を0.24秒に設置し、XRD回折パターンを得て、パターンから、2θの28.4±0.1範囲内にある最高のピークI及び2θの22.0±0.1範囲内の最高のピークIを得て、I/I値を計算した。
【0107】
(8)負極活物質のグラム当たりの容量と初期クーロン効率の試験方法
調製された負極活物質、導電カーボンブラック及び重合体を80%:10%:10%の重量比で脱イオン水に入れ、撹拌してスラリーを形成し、ドクターブレードにより厚さが約100μmの塗工層を形成し、真空乾燥箱に置き、85Cで約12時間乾燥し、乾燥の雰囲気で打抜機を用いて直径が約1cmの丸片に裁断し、グローブボックスでリチウム金属片を対電極として、ceglard複合膜をセパレータとして選択し、電解液を入れて、ボタン式電池に組み立てた。ランド(LAND)シリーズ電池試験システムで電池に対して充放電試験を行い、負極活物質のグラム当たりの容量を測定した。初期クーロン効率は下記式で計算した
初期クーロン効率=電圧が2.0Vになるまで放電した容量/電圧が0.005Vになるまで充電した容量。
【0108】
(9)サイクル回数の試験方法
試験温度(25C又は45C)で、リチウムイオン電池を0.7Cの定電流で4.4Vに充電し、定電圧で0.025Cに充電し、5分静置した後、0.5Cで3.0Vに放電し、このステップで得られた容量を初期容量とする。そして、0.7C充電/0.5C放電でサイクル試験を行い、初期容量に対して各サイクル後の容量の比率を計算し、容量減衰曲線を得た。25℃で、容量保持率が85%なるまでのサイクル回数をリチウムイオン電池の室温下のサイクル回数とする。45℃で、容量保持率が85%なるまでのサイクル回数をリチウムイオン電池の高温下のサイクル回数とする。
【0109】
(10)サイクル膨張率の試験方法
試験温度(25C又は45C)で、スパイラルマイクロメータを用いて、50%充電状態(SOC)(半分に充電された)のリチウムイオン電池の厚さを測定した。「サイクル回数の試験方法」と同じステップで、リチウムイオン電池を400サイクル循環し、電池を100%SOC(完全に充電された)状態にし、スパイラルマイクロメータを用いて完全に充電されたリチウムイオン電池の厚さを測定した。完全に充電されたリチウムイオン電池の厚さと半分に充電されたリチウムイオン電池の厚さの比率がサイクル膨張率である。25℃で測定されたサイクル膨張率は、リチウムイオン電池が室温下のサイクル膨張率である。45℃で測定されたサイクル膨張率は、リチウムイオン電池が高温下のサイクル膨張率である。
【0110】
3.試験の結果
表1には、基体材料における炭素含有量、平均粒子径及び比表面積、並びに負極活物質のI/Iがリチウムイオン電池の室温と高温下のサイクル性能に対する影響を示した。
【0111】
【表1】
表1に示すように、比較例1の基体材料における炭素含有量は比較的に低く、リチウムイオン電池の室温と高温下のサイクル回数が低く、且つサイクル膨張率が比較的に高い。基体材料において、炭素含有量(炭素、ケイ素及び酸素の全質量に対する)が0.5%~10%の範囲内にあると(実施例1-8)、リチウムイオン電池の室温と高温下のサイクル回数が顕著に増加し、且つサイクル膨張率が顕著に低下する。一酸化ケイ素基体材料に少量の炭素をドープすれば、負極活物質のグラム当たりの容量と初期クーロン効率を低減するが、サイクル性能の顕著な向上に比べて、この程度の低減は応用上で許容される。
【0112】
図1は、実施例2を例として本願の負極活物質における炭素の分布の模式図を示し、その中に、炭素は基本的に均一に分布し、即ち、基体材料の任意の領域において、炭素含有量は基本的に同じである。図2は、比較例2の負極活物質における炭素の分布の模式図を示し、その中に、負極活物質の基体材料はケイ素酸素炭素セラミック材料であり、基体材料における炭素が不均一に分布する。
【0113】
基体材料の平均粒子径が0.5μm~30μmであると、リチウムイオン電池の室温と高温下のサイクル回数を更に高め、サイクル膨張率を低減することに寄与する。
【0114】
基体材料の比表面積が10m/g以下であると、リチウムイオン電池の室温と高温下のサイクル回数を高め、サイクル膨張率を低減することに寄与する。
【0115】
前記負極活物質のI/I≦10であると、リチウムイオン電池の室温と高温下のサイクル回数を更に高め、サイクル膨張率を低減することに寄与する。
【0116】
表2には、負極活物質における炭素被覆層がリチウムイオン電池の室温と高温下のサイクル性能に対する影響を示した。実施例9~11と実施例2の相違点は、表2に示すパラメーターのみである。
【0117】
【表2】
「/」は存在しないことを意味する。
【0118】
表2に示すように、実施例9~11の負極活物質は、基体材料の表面に形成された炭素被覆層を含む。基体材料の被覆層における炭素含有量が0.05%~10%になる及び/又は被覆層における炭素含有量と基体材料における炭素含有量との重量比が0.5~5であると、リチウムイオン電池の室温と高温下のサイクル回数を更に高め、サイクル膨張率を低減することに寄与する。
【0119】
表3には、負極活物質における酸化物被覆層がリチウムイオン電池の室温と高温下のサイクル性能に対する影響を示した。実施例12~14と実施例2の相違点は、表3に示すパラメーターのみである。
【0120】
【表3】
「/」は存在しないことを意味する。
【0121】
表3に示すように、実施例12~14の負極活物質は、基体材料の表面に形成された酸化物被覆層MeOyを含む。酸化物層におけるMeの含有量が0.05%~5%であると、リチウムイオン電池の室温と高温下のサイクル回数を更に高め、サイクル膨張率を低減することに寄与する。
【0122】
表4には、負極活物質における重合体被覆層及びその厚さがリチウムイオン電池の室温と高温下のサイクル性能に対する影響を示した。実施例15~19と実施例2の相違点は、表4に示すパラメーターのみである。
【0123】
【表4】
「/」は存在しないことを意味する。
【0124】
表4に示すように、実施例15~19の負極活物質は、基体材料の表面に形成された重合体被覆層を含み、リチウムイオン電池の室温と高温下のサイクル回数を更に高め、サイクル膨張率を低減することに寄与する。被覆層の厚さが0.5nm~100nmであると、リチウムイオン電池の室温と高温下のサイクル回数を更に高め、サイクル膨張率を低減することに寄与する。
【0125】
本明細書にわたって、「ある実施例」、「一部の実施例」、「一つの実施例」、「もう一つの例」、「例」、「具体的な例」又は「部分的な例」の引用は、本願の少なくとも一つの実施例又は例に、当該実施例又は例に記載の特定の特徴、構造、材料又は特性を含むことを意味する。したがって、本明細書にわたって、各箇所に現れる記載、例えば、「ある実施例において」、「実施例において」、「一つの実施例において」、「もう一つの例において」、「ある例において」、「特定の例において」又は「例」は、必ずしも本願における同じ実施例又は例を引用するわけではない。また、本明細書における特定の特徴、構造、材料又は特性は、任意の適切な方式で、一つ又は複数の実施例又は例において、あらゆる好適な形態で組み合わせることができる。
【0126】
説明するための実施例を表現及び叙述したが、当業者は、上記実施例が本願を限定するものとして解釈されることができなく、且つ、本願の要旨、原理及び範囲を脱逸しない場合に実施例を変更、置換及び修正できると理解すべきである。
図1
図2