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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】自己潤滑性コーティング組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240411BHJP
   C08K 9/10 20060101ALI20240411BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20240411BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K9/10
C08L71/02
C08L75/04
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021547914
(86)(22)【出願日】2019-10-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 EP2019079305
(87)【国際公開番号】W WO2020089129
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】18306434.4
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】デ カンポ, フロリャン
(72)【発明者】
【氏名】ファントーニ, マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】パバジョー, ベルトラン
(72)【発明者】
【氏名】ブギス, ケビン
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-162515(JP,A)
【文献】特開2006-064059(JP,A)
【文献】特開平06-304469(JP,A)
【文献】特開2001-226629(JP,A)
【文献】国際公開第2014/196607(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0122539(US,A1)
【文献】特開平09-290145(JP,A)
【文献】特開2002-028872(JP,A)
【文献】特開2002-028848(JP,A)
【文献】特表2005-513257(JP,A)
【文献】国際公開第2017/046360(WO,A1)
【文献】特表2018-535829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 少なくとも1つのポリマー[ポリマー(A)]又は前記ポリマー(A)の前駆体(P)と、
- 液体媒体[媒体(E)]と、
- 複数のマイクロカプセル[カプセル(M)]であって、前記カプセル(M)は、架橋ポリマーシェル、及び(パー)フルオロポリオキシアルキレン鎖[鎖(R)]を含む少なくとも1つの(パー)フルオロポリエーテル化合物[化合物(PFPE)]を含むコアを有し、前記鎖(R)は、少なくとも1つのエーテル結合及び少なくとも1つのフルオロカーボン部位を有する一連の繰り返し単位である、カプセルと、
を含み、
組成物(C)中の前記ポリマー(A)の量が、他の成分の量よりも多く、
前記媒体(E)の量が、ポリマー(A)の100重量部に基づいて、5~50phrの範囲にあり、
前記カプセル(M)の量が、ポリマー(A)の100重量部に基づいて、0.1~50phrの範囲にあり、
前記媒体(E)が、少なくとも1つの有機溶媒を含む、
コーティング組成物[組成物(C)]。
【請求項2】
前記化合物(PFPE)は、式(I):
-(CFX-O(R)(CFX-Y(I)
(式中、
- Y及びYは、互いに等しいか又は異なり、F、Cl、及びC~Cパーフルオロアルキル基からなる群から選択され、
- m及びnは、互いに等しいか又は異なり、1以上の整数であり、
- X及びXは、互いに等しいか又は異なり、F、及びC~Cパーフルオロアルキル基からなる群から選択され、
- Rは、前記鎖(R)である)
に従う、請求項1に記載の組成物(C)。
【請求項3】
前記鎖(R)は、
(i)-CFXO-(式中、Xは、F又はCFである)、
(ii)-CFXCFXO-(式中、Xは、出現毎に等しいか又は異なり、F又はCFであり、但し、Xの少なくとも1つは、-Fである)、
(iii)-CFCFCWO-(式中、Wのそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、F、Cl、Hである)、
(iv)-CFCFCFCFO-、
(v)-(CF-CFZ-O-(式中、jは、0~3の整数であり、Zは、一般式-O-R(f-a)-Tの基であり、R(f-a)は、0~10の数の繰り返し単位を含むフルオロポリオキシアルキレン鎖であり、前記繰り返し単位は、以下:-CFXO-、-CFCFXO-、-CFCFCFO-、-CFCFCFCFO-の中から選択され、Xのそれぞれは、独立してF又はCFであり、Tは、C~Cパーフルオロアルキル基である)からなる群から独立して選択される繰り返し単位を含む、一連の繰り返し単位である、請求項1又は2に記載の組成物(C)。
【請求項4】
前記ポリマー(A)がポリウレタンであり、組成物(C)がポリウレタンの前駆体(P)として、少なくとも1つのポリイソシアネートと、少なくとも1つのポリオールとを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのポリイソシアートが、ポリイソシアヌレート、ジイソシアネートのビウレット及び付加物の中から選択される、請求項4に記載の組成物(C)。
【請求項6】
前記少なくとも1つのポリイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のトリマー又はイソホロンジイソシアネート(IPDI)のトリマーである、請求項5に記載の組成物(C)
【請求項7】
前記少なくとも1つのポリオールが、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリエーテル、及びポリカーボネートポリオールの中から選択される、請求項4~6のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項8】
前記少なくとも1つのポリオールが、溶媒系又は水系である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記カプセル(M)が、4μm~8μmの範囲の平均直径を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項10】
前記カプセル(M)のコアと架橋ポリマーシェルとの間の重量比が、20/80~80/20の範囲にある、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項11】
前記カプセル(M)の前記架橋ポリマーシェルが、0.1μm~1.5μmの範囲の平均厚さを有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項12】
前記架橋ポリマーシェルが、重合したときに、少なくとも1つのモノマー若しくはポリマー、又はモノマー若しくはポリマーの混合物を架橋することによって得られ、
前記モノマーが、アクリレート、メタクリレート、ビニルエーテル、N-ビニルエーテル、メルカプトエステル、チオレン、シロキサン、エポキシ、オキセタン、ウレタン、イソシアネート、及び過酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの反応性官能基を有し、
前記ポリマーが、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアミド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリスルフィド、及びポリジメチルシロキサンの中から選択され、前記ポリマーは、アクリレート、メタクリレート、ビニルエーテル、N-ビニルエーテル、メルカプトエステル、チオレン、シロキサン、エポキシ、オキセタン、ウレタン、イソシアネート、及び過酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの反応性官能基を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項13】
前記少なくとも1つのポリマー(A)、又はその前駆体(P)、及び前記カプセル(M)を、前記少なくとも1つの媒体(E)に混合することを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物(C)を調製するためのプロセス。
【請求項14】
基板(S)と、前記基板(S)の少なくとも一部に接着されたコーティング層[層(L)]とを含むアセンブリを形成するための方法であって、前記基板(S)の少なくとも一部を請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物(C)でコーティングし、これにより湿潤コーティング層[湿潤層(WL)]を得る工程と、続いて前記湿潤層(WL)を乾燥させ、これにより前記層(L)を得る工程とを含む方法。
【請求項15】
基板(S)、及び前記基板(S)の少なくとも一部に接着されたコーティング層[層(L)]を含むアセンブリであって、前記層(L)は、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物(C)から作製されるアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年10月31日出願の欧州特許出願第18306434.4号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全体内容はあらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、自己潤滑性コーティング組成物及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
コーティング組成物は、様々な材料の表面をコーティングするために、様々な用途において広く使用されている。
【0004】
シーリング及び自動車などの一部の用途では、摩耗及び裂けが発生しやすい接触面を覆うためにコーティング組成物が必要である。従って、前述のコーティング組成物は、接触面間で効果的であり長期的に継続する潤滑効果を提供し、摩擦によるこれらの損傷を回避することが必要である。
【0005】
自己潤滑性コーティング組成物は、従来技術で知られており、摩擦制御をもたらすという課題に取り組むためにいくつかの試みがなされてきた。
【0006】
一般的な手法は、(パー)フルオロポリエーテル(PFPE)などの低摩擦フィラーを前述のコーティング組成物に添加することを伴っていた。
【0007】
例えば、特開平11-291769号公報は、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)に基づくポリウレタンプレポリマーを、粉末のフッ素樹脂、及びPFPEと混合することによって得られるコーティングを開示している。しかしながら、得られた摩擦係数の値は、満足のいくものではなかった。
【0008】
今までのところ、この分野では、米国特許第5,633,086号明細書は、PFPEなどの潤滑剤の添加が摩擦係数と摩耗損傷を低減すると記載している。
【0009】
しかしながら、特に過酷な条件で摩擦の低減及び制御をもたらす自己潤滑性コーティング組成物を提供する必要性が依然として感じられている。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、広範囲の負荷で効果的であり長期的に継続する潤滑効果をもたらし、過酷な条件での摩擦低減及び制御をもたらし、厳しい機械的用途に適したコーティング組成物を利用可能にすることである。
【0011】
第1の態様では、本発明は、
- 少なくとも1つのポリマー[ポリマー(A)]又は前述のポリマーの前駆体[前駆体(P)]と、
- 少なくとも1つの液体媒体[媒体(E)]と、
- 複数のマイクロカプセル[カプセル(M)]であって、前述のカプセル(M)が、架橋されたポリマーシェル、及び(パー)フルオロポリオキシアルキレン鎖[鎖(R)]を含む少なくとも1つの(パー)フルオロポリエーテル化合物[化合物(PFPE)]を含むコアを有し、前述の鎖(R)は、少なくとも1つのカテナリーエーテル結合及び少なくとも1つのフルオロカーボン部位を有する一連の繰り返し単位である、カプセルと、
を含む組成物に関する。
【0012】
第2の態様では、本発明は、上記で定義されたコーティング組成物(C)を調製するためのプロセスに関し、前述の方法は、前述の少なくとも1つの媒体(E)において前述の少なくとも1つのポリマー(A)又はその前駆体(P)と前述のカプセル(M)とを混合することを含む。
【0013】
第3の態様では、本発明は、基板(S)と、前述の基板(S)の少なくとも一部に接着されたコーティング層[層(L)]とを含むアセンブリを形成する方法に関し、前述の方法は、前述の基板(S)の少なくとも一部を上記指定の組成物(C)でコーティングし、これにより湿潤コーティング層[湿潤層(WL)]を得る工程と、続いて前述の湿潤層(WL)を乾燥させ、これにより層(L)を得る工程とを含む。
【0014】
第4の態様では、本発明は、基板(S)、及び前述の基板(S)の少なくとも一部に接着されたコーティング層[層(L)]を含むアセンブリに関し、前述の層(L)は、上記で定義された組成物(C)から作製される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の目的のために、「ポリマー(A)」という表現は、ホモポリマー及びコポリマーの両方を指すことを意図している。
【0016】
本発明の目的のために、「エラストマー」という用語は、真のエラストマーを得るための基本構成要素として機能するポリマー樹脂を指すことを意図している。
【0017】
真のエラストマーは、室温でこれらの固有の長さの2倍まで引き伸ばすことができ、5分間張力下にそれらを保持した後に一旦それらが解放されると、同時にこれらの最初の長さの10%以内戻る材料とASTM,Special Technical Bulletin,No.184標準によって定義されている。
【0018】
「ポリイソシアネート」という表現は、少なくとも2つのイソシアネート基を含むポリマーを示すことを意図している。
【0019】
「芳香族ポリイソシアネート」という表現は、少なくとも1つの芳香環系を含むポリイソシアネートを示すことを意図しており、また、芳香族ポリイソシアネートを包含する。
【0020】
「脂環式ポリイソシアネート」という表現は、少なくとも1つの脂環式環系を含むポリイソシアネートを示すことを意図している。
【0021】
「脂肪族ポリイソシアネート」という用語は、専ら直鎖又は分枝鎖、即ち非環式化合物を含むポリイソシアネートを示すことを意図している。
【0022】
「(パー)フルオロエラストマー」という用語は、特に、10%(重量)超、好ましくは30%(重量)超の、少なくとも1つのフッ素原子を含む少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー(以下、(パー)フッ素化モノマー)に由来する繰り返し単位、及び任意選択で、フッ素原子を含まない少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー(以下、水素化モノマー)に由来する繰り返し単位を含む、完全に又は部分的にフッ素化されたエラストマーを示すことを意図している。
【0023】
「phr」で表される任意の量は、ポリマー(A)の100重量部に基づいている。
【0024】
本発明の目的のために、「粒子」という用語は、幾何学的観点から、三次元によって特徴付けられる明確な三次元の体積及び形状を有し、前述の寸法のいずれもが、1000%超の残りの2つの次元を超えない材料の塊を示すことを意図している。一般的に、粒子は、等次元ではなく、即ち、粒子は、他の方向よりも一方向に長く、楕円体、棒状、石畳などの様々な形状を含む。
【0025】
本記載では、例えば、「組成物(C)」及び「ポリマー(A)」などの、式、又は式の一部を識別する化合物、記号、又は数字の名前の前後に括弧「(…)」を使用することは、残りのテキストから、これらの名前、記号、又は数字をより適切に区別することを単に目的としており、従ってまた、前述の括弧は省略することができる。
【0026】
好ましくは、カプセル(M)の量は、ポリマー(A)の100重量部に基づいて、0.1~50phr、より好ましくは0.5~15phr、更により好ましくは1~10phrの範囲にある。
【0027】
好ましくは、媒体(E)の量は、ポリマー(A)の100重量部に基づいて、5~50phr、より好ましくは5~30phr、更により好ましくは5~15phrの範囲にある。
【0028】
化合物(PFPE)
前述のように、化合物(PFPE)は、少なくとも1つのカテナリーエーテル結合及び少なくとも1つのフルオロカーボン部位を有する一連の繰り返し単位である(パー)フルオロポリオキシアルキレン鎖[鎖(R)]を含む。
【0029】
化合物(PFPE)の末端基の性質は、特に限定されず、ハロゲンとは異なるヘテロ原子を含む官能基が(パー)フルオロカーボン末端基に存在し得ることが一般的に理解されており、このような官能基には、特に、ヒドロキシル基、ハロゲン化アシル基、カルボン酸基、エステル基、アミド基、エチレン性不飽和基、アクリル基、(ヘテロ)芳香族基などが含まれ得る。
【0030】
それにもかかわらず、特定の好ましい実施形態によれば、化合物(PFPE)は、ハロゲンとは異なるヘテロ原子を含まない(パー)フルオロカーボン末端基を有することが理解される。これらの実施形態によれば、化合物(PFPE)は、式(I)に従う:
-(CFX-O(R)(CFX*)-Y*(I)
(式中、
- Y及びY*は、互いに等しいか又は異なり、F、Cl、及びC~Cパーフルオロアルキル基からなる群から選択され、前述のパーフルオロアルキル基は、好ましくは-CFであり、
- m及びnは、互いに等しいか又は異なり、1以上の整数であり、
- X及びX*は、互いに等しいか又は異なり、F、及びC~Cパーフルオロアルキル基からなる群から選択され、前述のパーフルオロアルキル基は、好ましくは-CFであり、
- Rは、上で詳述されるように、フルオロポリオキシアルキレン鎖[鎖(R)]である)。
【0031】
鎖(R)は、好ましくは、以下からなる群から独立して選択される繰り返し単位を含む、より好ましくはこれらからなる配列である:
(i)-CFXO-(式中、Xは、F又はCFである)、
(ii)-CFXCFXO-(式中、Xは、出現毎に等しいか又は異なり、F又はCFであり、但し、Xの少なくとも1つは、-Fである)、
(iii)-CFCFCWO-(式中、Wのそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、F、Cl、Hである)、
(iv)-CFCFCFCFO-、
(v)-(CF-CFZ-O-(式中、jは、0~3の整数であり、Zは、一般式-O-R(f-a)-Tの基であり、R(f-a)は、0~10の繰り返し単位の数を含むフルオロポリオキシアルケン鎖であり、前述の繰り返し単位は、以下:-CFXO-、-CFCFXO-、-CFCFCFO-、-CFCFCFCFO-の中から選択され、Xのそれぞれは、独立してF又はCFであり、Tは、C~Cパーフルオロアルキル基である)。
【0032】
好ましくは、鎖(R)は、以下の式:
(R-I)
-[(CFXO)g1(CFXCFXO)g2(CFCFCFO)g3(CFCFCFCFO)g4]-
(式中、
- Xは、-F及び-CFから独立して選択され、
- X、Xは、互いに及び出現毎に等しいか又は異なり、独立して、-F、-CFであり、但し、Xの少なくとも1つは、-Fであり、
- g1、g2、g3及びg4は、互いに等しいか又は異なり、独立して、g1+g2+g3+g4が2~300、好ましくは2~100の範囲であるような0以上の整数であり、g1、g2、g3及びg4の少なくとも2つは、ゼロと異なるべきである)に従う。
【0033】
より好ましくは、鎖(R)は、式:
(R-IIA)-[(CFCFO)a1(CFO)a2]-
(式中、
- a1及びa2は、独立して、数平均分子量が400~10,000、好ましくは1,000~8,000であるような0以上の整数であり、a1及びa2の両方は、好ましくはゼロと異なり、比a1/a2は、好ましくは0.1~10に含まれる)、
(R-IIB)-[(CFCFCFO)]-
(式中、
- bは、数平均分子量が400~10,000、好ましくは1,000~8,000であるような0超の整数である)、
(R-IIC)-[(CFCFCFCFO)]-
(式中、
- cは、数平均分子量が400~10,000、好ましくは1,000~8,000であるような0超の整数である)、
(R-IID)-[(CFCFO)d1(CFO)d2(CF(CF)O)d3(CFCF(CF)O)d4]-
(式中、
d1、d2、d3、d4は、独立して、数平均分子量が400~10,000、好ましくは1,000~8,000であるような0以上の整数であり、好ましくは、d1は、0であり、d2、d3、d4は、0超であり、比d4/(d2+d3)は、1以上である)、
(R-IIE)-[(CFCFO)e1(CFO)e2(CF(CFewCFO)e3]-
(式中、
ew=1又は2であり、
e1、e2及びe3は、独立して、数平均分子量が400~10,000、好ましくは1,000~8,000であるように選択される0以上の整数であり、好ましくは、e1、e2及びe3は、全て0超であり、比e3/(e1+e2)は、一般的に、0.2より小さい)、
(R-IIF)-[(CF(CF)CFO)]-
(式中、
fは、数平均分子量が400~10,000、好ましくは1,000~8,000であるような0超の整数である)
の鎖から選択される。
【0034】
鎖(R-IIA)、(R-IIB)、(R-IIC)及び(R-IIE)が特に好ましい。
【0035】
更により好ましくは、鎖(R)は、式(R-IIA)(式中、
- a1及びa2は、数平均分子量が400~10,000、好ましくは1,000~8,000であるような0超の整数であり、比a1/a2は、一般的に0.1~10、より好ましくは0.2~5に含まれる)に従う。
【0036】
カプセル(M)
上記のように、組成物(C)は、上で詳述されるように、架橋されたポリマーシェル、及び前述の少なくとも1つの化合物(PFPE)を含むコアを有する複数のカプセル(M)を含む。
【0037】
前述のカプセル(M)は、好ましくは4μm~8μmの範囲、より好ましくは4μm~6μmの範囲の平均直径を有する。
【0038】
前述のカプセル(M)のコアと架橋されたポリマーシェルとの間の重量比は、好ましくは20/80~80/20、好ましくは30/70~40/60の範囲にあり、より好ましくは30/70である。
【0039】
前述のカプセル(M)の架橋されたポリマーシェルは、好ましくは0.1μm~1.5μmの範囲、より好ましくは0.7μm~1.3μmの範囲、更により好ましくは0.7μm~1.0μmの範囲、最も好ましくは0.7μm~0.8μmの範囲の平均厚さを有する。
【0040】
前述のカプセル(M)のポリマーシェルは、一般的に、重合時に、少なくとも1つのモノマー若しくはポリマー、又はモノマー若しくはポリマーの混合物を架橋することによって得られる。
【0041】
「モノマー又はポリマー」とは、単独で、或いは他のモノマー又はポリマーと組み合わせて、重合によって固体材料を形成するのに適した任意の基礎的要素と理解すべきである。
【0042】
好ましくは、モノマーは、アクリレート、メタクリレート、ビニルエーテル、N-ビニルエーテル、メルカプトエステル、チオレン、シロキサン、エポキシ、オキセタン、ウレタン、イソシアネート、及び過酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの反応性官能基を有するモノマーから選択される。より好ましくは、モノマーは、1級、2級及び3級アルキルアミン、4級アミン、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、ヒドロキシル、カルボン酸塩、及びハロゲンからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有するモノマーから選択される。
【0043】
好ましくは、前述のポリマーは、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアミド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリスルフィド、及びポリジメチルシロキサンの中から選択され、前述のポリマーは、アクリレート、メタクリレート、ビニルエーテル、N-ビニルエーテル、メルカプトエステル、チオール、シロキサン、エポキシ、オキセタン、ウレタン、イソシアネート、及び過酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの反応性官能基を有する。このようなポリマーの例は、国際公開第2017/046360号パンフレット(CALYXIA)に引用されており、その内容は参照により本明細書に援用される。
【0044】
第1の実施形態では、前述のモノマー又はポリマーの少なくとも1つは、カプセル(M)の破裂及びpH、温度、UV又はIR外部トリガーによってそれぞれ刺激されたときのカプセル(M)の内容物のその後の放出を誘発することができる、pH感受性基、温度感受性基、UV感受性基、又はIR感受性基を有する。その例は、国際公開第2017/046360号パンフレット(CALYXIA)に記載されている。
【0045】
第2の代替実施形態では、前述のポリマーシェルは、アクリレート、メタクリレート、ビニルエーテル、N-ビニルエーテル、メルカプトエステル、チオレン、シロキサン、エポキシ、オキセタン、ウレタン、イソシアネート、及び過酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの反応性官能基をその表面に有するナノ粒子を含む。これらのナノ粒子は、外部電磁界によって刺激されると熱を発生し、マイクロカプセルの破裂とそれに続くその内容物の放出を誘発する可能性がある。適切なナノ粒子は、金、銀、及び二酸化チタンのナノ粒子(IR磁場に反応する)及び酸化鉄ナノ粒子(磁場に反応する)から選択することができる。
【0046】
ポリマー(A)及びその前駆体(P)
本発明の第1の実施形態によれば、組成物(C)は、少なくとも1つのポリマー(A)を含む。ポリマー(A)は、コーティングを形成することができるポリマー、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)のコポリマー、エラストマー及び芳香族ポリマーの中から選択される。
【0047】
エラストマーの中で、ポリマー(A)は、アクリロニトリル/ブタジエンゴム(NBR)、イソブチレン/イソプレンゴム(IIR)、ポリクロロプレン(CR)、ポリアクリルゴム(ACM)、EPDMゴム、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、ポリウレタン(PU)、シリコーン、(パー)フルオロエラストマーから選択することができる。また、ポリマー(A)は、熱可塑性エラストマー(TPE)、熱可塑性加硫物(TPV)、及び熱可塑性ポリウレタン(TPU)から選択することができる。
【0048】
本発明の第2の実施形態によれば、組成物(C)は、上記で定義されたポリマー(A)の前駆体を含み、混合すると、適切な条件下で、その場で反応してポリマー(A)自体を生成する。
【0049】
好ましい実施形態では、組成物(C)は、ポリウレタンの前駆体(P)、即ち、少なくとも1つのポリイソシアネート及び少なくとも1つのポリオールを含む。
【0050】
前述の少なくとも1つのポリイソシアネートは、脂肪族、脂環式及び芳香族ポリイソシアネートの中から選択され得る。脂肪族ポリイソシアネートが好ましい。好ましくは、前述の少なくとも1つのポリイソシアネートは、ポリイソシアヌレート、ジイソシアネートのビウレット及び付加物の中から選択される。好ましくは、前述のジイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、及び水素化ジフェニルメタンジイソシアネート(H12-MDI)の中から選択される。
【0051】
好ましい実施形態では、前述の少なくとも1つのポリイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のトリマーであり、これは、Tolonate(登録商標)HDT-LVの商品名でも知られている。
【0052】
別の好ましい実施形態では、前述の少なくとも1つのポリイソシアネートは、イソホロンジイソシアネート(IPDI)のトリマーであり、これは、Vestanat T1890(登録商標)の商品名でも知られている。
【0053】
好ましくは、前述の少なくとも1つのポリオールは、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテル-エステルポリオール、及びポリカーボネートポリオールの中から選択される。
【0054】
様々な実施形態によれば、前述の少なくとも1つのポリオールは、溶媒系又は水系である。従って、前述の媒体(E)は、それぞれ有機溶媒又は水である。溶媒系ポリオールは、有機溶媒、例えば、酢酸ブチル、キシレン、酢酸メトキシプロピル及びこれらの混合物におけるポリオールの溶液である。
【0055】
好ましい実施形態では、前述の少なくとも1つのポリオールは、酢酸ブチルにおけるアクリルポリオールの溶液である。
【0056】
媒体(E)
コーティング技術の選択に応じて、媒体(E)は、前述のポリマー(A)又はその前駆体(P)の粒子を懸濁及び分散させるのに有効であり得る、或いは前述のポリマー(A)又はその前駆体(P)を可溶化するのに有効であり得る。
【0057】
前述のポリマー(A)又はその前駆体(P)を可溶化することができる媒体(E)は、典型的には有機溶媒である。
【0058】
組成物(C)において、単独で又は組み合わせて使用され得る有機溶媒の例示的な実施形態は、特に:
- 芳香族炭化水素、より具体的には、特に、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、アルキルベンゼンの混合物からなる石油留分などの芳香族炭化水素、
- 脂肪族又は芳香族ハロゲン化炭化水素、より具体的には、特に、テトラクロロエチレン、ヘキサクロロエタンなどの全塩素化炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、トリクロロエチレン、1-クロロブタン、1,2-ジクロロブタンなどの部分塩素化炭化水素、モノクロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン又は異なるクロロベンゼン類の混合物など、
- 脂肪族、脂環式又は芳香族のエーテルオキシド、より具体的には、ジエチルオキシド、ジプロピルオキシド、ジイソプロピルオキシド、ジブチルオキシド、メチルテルチオブチルエーテル、ジペンチルオキシド、ジイソペンチルオキシド、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテルベンジルオキシド、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、
- 芳香族アミン、特に、ピリジン、及びアニリンなど、
- メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、2-ヘプタノンなどのケトン、
- 酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、アセト酢酸メチル、フタル酸ジメチル、γ-ブチロラクトンなどの直鎖状又は環状エステル、
- N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド、又はN-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの直鎖状又は環状カルボキサミド、
- 有機カーボネート、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、
- リン酸トリメチル、リン酸トリエチルなどのリン酸エステル、
- ジメチルスルホキシド(DMSO)、並びに
- 式(Ide)のジエステル、式(Iea)のエステルアミド、又は式(Ida)のジアミド:
-OOC-Ade-COO-R(Ide)、
-OOC-Aea-CO-NR(Iea)、
N-OC-Ada-CO-NR(Ida
(式中、
- R及びRは、互いに等しいか又は異なり、独立して、C~C20炭化水素基からなる群から選択され、
- R、R、R、及びRは、互いに及び出現毎に等しいか又は異なり、独立して、水素、場合により置換されているC~C36炭化水素基からなる群から選択され、R及びRは、それらが結合している窒素原子を含む環状部位(前述の環状部位は、場合により置換されており、及び/又は場合により1つ以上の更なるヘテロ原子を含み、並びにこれらの混合である)の一部であり得ることが理解され、
- Ade、Aea、及びAdaは、互いに等しいか又は異なり、独立して、直鎖状又は分岐状2価アルキレン基である)を含む。
【0059】
一実施形態によれば、媒体(E)は、上記で列挙されたものの中から、より好ましくは、上記で定義されたエステル及びケトンから選択される少なくとも1つの有機溶媒を含むか、又は好ましくはこれからなる。
【0060】
別の実施形態によれば、媒体(E)は、水性媒体、即ち、主要な液体成分として水を含み、好ましくは本質的に水からなる液体媒体である(これらが実質的に媒体の水性特性に影響を与えることなく、他の少量の液体成分が含まれる場合がある)。
【0061】
後者の実施形態によれば、組成物(C)は、「水性分散液」として認定することができ、これは、ポリマー(A)又はその前駆体(P)の粒子が、水性媒体中に安定して分散され、その結果、分散液を使用する時間内に、粒子の沈降は発生しないことを意味する。
【0062】
後者の実施形態によれば、組成物(C)は、有利には、少なくとも1つの非イオン性非フッ素化界面活性剤を含む。組成物(C)での使用に適した非イオン性非フッ素化界面活性剤[界面活性剤(NS)]は、当技術分野で知られており、その例は、特に、Nonionic Surfactants.Edited by SCHICK,M.J.Marcel Dekker,1967.p.76-85及び103-141に見出すことができる。
【0063】
水性分散液中のポリマー(A)又はその前駆体(P)の粒子は、好ましくは、少なくとも20nm、好ましくは少なくとも30nm、より好ましくは少なくとも50nm、及び/又は多くとも450nm、好ましくは多くとも400nm、最も好ましくは多くとも350nmの平均粒子サイズを有する。
【0064】
一実施形態では、前述の水性分散液は、分散(又はマイクロエマルジョンを含むエマルジョン)重合(即ち、粗重合ラテックスとして)として知られるプロセスによって直接得られる、又は、例えば、濃縮方法(混濁(clouding)、限外ろ過...)などの後処理による前述の粗重合ラテックスから得ることができる。
【0065】
別の実施形態では、前述の水性分散液は、当業者に知られている任意の手段によって、好ましくは、高圧ホモジナイザー、コロイドミル、高速ポンプ、振動攪拌機、又は超音波装置などの小型化装置(size-reduction equipment)によって調製される。
【0066】
組成物(C)は、充填剤、増粘剤、顔料、酸化防止剤、安定剤、加工助剤/可塑剤等などの他の従来の添加剤を更に含むことができる。
【0067】
前述のように、本発明はまた、基板(S)と、前述の基板(S)の少なくとも一部に接着された層(L)とを含むアセンブリを形成するための方法に関し、前述の方法は、前述の基板(S)の少なくとも一部を組成物(C)でコーティングし、これにより湿潤層(WL)を得る工程と、続いて前述の湿潤層(WL)を乾燥させて層(L)を得る工程とを含む。
【0068】
基板(S)は、一般的に、特にアルミニウム、銅、スズ、亜鉛、鉄、及び鋼を含むこれらの合金、及びステンレス鋼の基板を含む金属基板である。
【0069】
基板(S)は、一般的に、組成物(C)のコーティングをその上に塗布する前に、適切に脱脂及び洗浄される。
【0070】
接着性を高めるために粗面化の工程を適用することができるが、これは特に必要ではない。
【0071】
基板(S)の少なくとも一部に対する組成物(C)のコーティングは、特にスプレーコーティング、スピンコーティング、ブラシコーティング、浸漬コーティング、ブレードコーティングなどを含む任意のコーティング方法によって達成することができる。
【0072】
本発明の方法は、基板(S)に層(L)を形成するために、前述の湿潤層(WL)を乾燥させる後続の工程を含む。乾燥は、室温から媒体(E)の沸点を超える範囲の温度で実施することができ、組成物(C)に含まれる全ての揮発性材料を有利に除去することを意図している。
【0073】
参照により本明細書に援用される特許、特許出願及び刊行物のいずれかの開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0074】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0075】
本発明はこれから、以下の実施例に関連してより詳細に説明されるが、その目的は、例示的であるに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0076】
実験の部
材料
Tolonate(商標)HDT-LVは、ヘキサメチレンジイソシアネートトリマーに基づく無溶媒の脂肪族ポリイソシアネートであり、Vencorexから市販されている。
【0077】
Setalux 1907 BA-75は、Nuplexから市販されている、酢酸ブチルにおけるアクリルポリオールである。
【0078】
Fomblin(登録商標)YR1800は、Solvay Specialty Polymers Italyから市販されているパーフルオロポリエーテルである。
【0079】
酢酸ブチルは、Sigma-Aldrichから入手した。
【0080】
2-ヘプタノンは、Sigma-Aldrichから入手した。
【0081】
ポリエポキシシェル、Fomblin(登録商標)YR1800 PFPEを含むコア、コア/シェル重量比30/70、平均直径4μm、及び平均シェル厚0.7μmを有するカプセルは、国際公開第2017/046360号パンフレット及び仏国特許第3059666号明細書に記載されている方法を使用して作製されている。
【0082】
方法
接触角
接触角は、ASTM D7334に従って、溶媒を完全に蒸発させた後の元の試料と、50サイクルの摩耗後の同じ試料について測定した。上記の測定は、23℃の温度で実行した。
【0083】
摩耗試験
サンドペーパーP1000を使用して手で柔らかい摩耗を加えた。
【0084】
試料の調製
実施例1(Ex.1)
Fomblin YR 1800 PFPEを含むコアを備えたカプセルを、酢酸ブチル(8phr)及び2-ヘプタノン(7phr)中で、室温で30分間450rpmにてマグネチックスターラーで攪拌しながら、Tolonate(商標)(24phr)及びSetalux(76phr)と混合した。こうして得られた配合物を、Bird film applicators(登録商標)(70~200μm)を使用して基板にブレードコーティングした。溶媒キャストにより均一な膜が形成された。
【0085】
カプセルの量が異なる5つの試料を調製した(実施例1A~1E)。
【0086】
比較の実施例2(Ex.2)
Tolonate(商標)(24phr)とSetalux(76phr)を、酢酸ブチル(8phr)及び2-ヘプタノン(7phr)中で、室温で10分間450rpmにてマグネチックスターラーで混合した。こうして得られた配合物を、Bird film applicators(登録商標)(70~200μm)を使用して基板にブレードコーティングした。溶媒キャストにより均一な膜が形成された。
【0087】
実験結果
表1に、摩耗前後の実施例1A~1Eと比較の実施例2の試料の接触角を示す。
【0088】
【0089】
上記の結果は、実施例1A~1Eの試料は、比較の実施例2の試料よりも、摩耗後の疎水性がはるかに高い(即ち、接触角がより大きい)ことを示している。従って、実施例1A~1Eの試料は、摩耗後の表面エネルギーがはるかにより低く、従って、摩擦係数がより低く、長期での自己潤滑効果がより大きい。