(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】接圧センサ、それを備えたニット製品、および接圧センサの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01L 1/20 20060101AFI20240411BHJP
G01L 5/00 20060101ALN20240411BHJP
【FI】
G01L1/20 G
G01L5/00 101Z
(21)【出願番号】P 2021561568
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(86)【国際出願番号】 JP2020044331
(87)【国際公開番号】W WO2021107131
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2019/046926
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【氏名又は名称】安田 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100223424
【氏名又は名称】和田 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】竝川 哲也
(72)【発明者】
【氏名】福原 修一
(72)【発明者】
【氏名】高水 達哉
(72)【発明者】
【氏名】亀井 孝典
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-014694(JP,A)
【文献】国際公開第2006/068194(WO,A1)
【文献】特開平07-109637(JP,A)
【文献】特開2006-225797(JP,A)
【文献】登録実用新案第3183657(JP,U)
【文献】特表2006-515071(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0238151(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0224280(US,A1)
【文献】特開2013-163630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/20
G01L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧体と被押圧体との間に配置されたセンサ部を介して、前記押圧体が前記被押圧体に与える押圧力を検出する接圧センサであって、
前記センサ部は、カーボンナノチューブ糸からなる編糸
のみを用いた編地で構成され、
前記センサ部が、
前記押圧体が接触する押圧体接触面と、
前記被押圧体が接触する被押圧体接触面と、
前記押圧体接触面と前記被押圧体接触面との間に形成された編糸交差部と、
前記押圧体接触面と前記被押圧体接触面との間に形成され、かつ前記編糸が配置されていない空間である空隙部と、を有し、
前記センサ部は、コース方向およびウェール方向の両方に交差する方向からの力を受けたとき、もしくは受けた力が開放されたときの前記編糸交差部における前記押圧力の変化に応じて前記編糸同士の接触面積が変化することで、前記センサ部における接触抵抗が変化するように構成されている、接圧センサ。
【請求項2】
前記センサ部のコース方向の両端部である第1端部および第2端部が、前記センサ部の複数のコースから出た前記編糸からなる端子部をそれぞれ含んでいる、請求項1に記載の接圧センサ。
【請求項3】
複数のコースから出た前記編糸からなる前記端子部を、前記センサ部における接触抵抗を検出するための抵抗検出回路の一部をなす配線に接続する接続部を更に備える、請求項2に記載の接圧センサ。
【請求項4】
前記配線は、前記編糸よりも抵抗値の変化が小さい導電性糸を編んで構成された編地配線である、請求項3に記載の接圧センサ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の接圧センサと、
非導電性糸を用いて編成され、前記センサ部が一体的に編み付けられたニットと、
を備えるニット製品。
【請求項6】
押圧体と被押圧体との間に配置されたセンサ部を介して、前記押圧体が前記被押圧体に与える押圧力を検出する接圧センサの製造方法であって、
カーボンナノチューブ糸からなる編糸
のみを用いて編地として前記センサ部を編成するセンサ部編成工程を備え、
前記センサ部編成工程は、
前記押圧体が接触する押圧体接触面と、前記被押圧体が接触する被押圧体接触面と、前記押圧体接触面と前記被押圧体接触面との間の編糸交差部と、前記押圧体接触面と前記被押圧体接触面との間の空間であり、かつ前記編糸が配置されていない空間である空隙部と、を形成する工程を含み、
前記センサ部編成工程により、前記センサ部がコース方向およびウェール方向の両方に交差する方向からの力を受けたとき、もしくは受けた力が開放されたときの前記編糸交差部における前記押圧力の変化に応じて前記編糸同士の接触面積が変化することで、前記センサ部における接触抵抗が変化するように前記センサ部が構成される、接圧センサの製造方法。
【請求項7】
センサ部編成工程の前に前記カーボンナノチューブ糸からなる編糸を準備する編糸準備工程を更に備え、
前記編糸準備工程は、前記カーボンナノチューブ糸と水溶性糸とを撚り合わせる撚糸工程を含み、前記撚糸工程において前記カーボンナノチューブ糸の表面が前記水溶性糸により覆われる、請求項6に記載の接圧センサの製造方法。
【請求項8】
前記センサ部編成工程の後に、形成されたセンサ部を湯で洗い流すことにより、前記水溶性糸を溶かしてセンサ部から除去する水溶性糸除去工程をさらに備える、請求項7に記載の接圧センサの製造方法。
【請求項9】
前記水溶性糸は、水溶性ビニロンである、請求項8に記載の接圧センサの製造方法。
【請求項10】
前記センサ部編成工程では、前記センサ部のコース方向の両端部である第1端部および第2端部が、前記センサ部の複数のコースから出た前記編糸からなる端子部をそれぞれ含むように前記センサ部を編成する、請求項7~9のいずれか一項に記載の接圧センサの製造方法。
【請求項11】
前記センサ部編成工程で形成した前記第1端部および前記第2端部の前記端子部を、前記センサ部における接触抵抗を検出するための抵抗検出回路の一部をなす配線に接続する配線接続工程を更に備える、請求項10に記載の接圧センサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接圧センサ、それを備えたニット製品、および接圧センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されるように、非導電糸を用いて筒状に編成した指袋に加え、導電糸を用いてウェール方向の編目を編成することで突出編地部を形成した、静電容量式のタッチパネルの操作用指袋が知られている。この指袋は、たとえば手袋の一部の指袋に適用される。また特許文献1に記載された手袋では、突出編地部が形成された指袋とは別に、親指用指袋の指先部が、導電糸を用いて編成されている。
【0003】
特許文献2に記載されるように、繊維製品に組み込むことができる圧力センサが知られている。この圧力センサは、圧力に依存する電気抵抗を有する感圧層と、その感圧層に接触する導電層とを有する多層糸を有する。この圧力センサでは、2つの多層糸が交差して互いに接触する交差領域において、圧力が感圧被覆(感圧層)の弾性圧縮を生じさせる。加えられる圧力の増加に従って、2つの多層糸の間の感圧被覆を横切る電流に対し、抵抗が生じる。電気抵抗を測定することにより、圧力を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-229502号公報
【文献】特表2009-516839号公報
【文献】特開2010-14694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の指袋は、静電容量式のタッチパネルに用いられるニット製品である。この指袋では、指に加わる押圧力を検出することはできない。特許文献2に記載の圧力センサでは、圧力の測定が可能であるが、圧力の測定精度が十分であるとは言えない。また、構造が複雑で製造に手間がかかる。
【0006】
特許文献3に記載のニット品を形成している負荷検知繊維は、単体で圧力変化を検出できる構成を有している。つまり負荷検知繊維は、糸自体の潰れ具合により圧力変化を検知する構造を有する。このような負荷検知繊維はどのような形状に編んでも、圧力変化を検知することは可能であるが、負荷検知繊維が複雑な構造を有し、取り扱いの面でもコストの面でも不利となる。
【0007】
本開示は、押圧体が被押圧体に与える押圧力をより正確に検出することができる接圧センサ、ニット製品、および接圧センサの製造方法を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、押圧体と被押圧体との間に配置されたセンサ部を介して、押圧体が被押圧体に与える押圧力を検出する接圧センサであって、センサ部は、カーボンナノチューブ糸を含んだ編糸で構成され、センサ部が、押圧体が接触する押圧体接触面と、被押圧体が接触する被押圧体接触面と、押圧体接触面と被押圧体接触面との間に形成された編糸交差部と、押圧体接触面と被押圧体接触面との間に形成され、かつ編糸が配置されていない空間である空隙部と、を有する。
【0009】
この接圧センサによれば、押圧体接触面と被押圧体接触面との間に、編糸が交差する部分である編糸交差部と、編糸が配置されていない空間である空隙部とが形成される。被押圧体接触面が被押圧体に接触した状態で、センサ部の押圧体接触面に押圧体が接触すると、最初存在した空隙部が、徐々に縮小される。いくつかの場合には(常にとは限らないが)、編糸の断面が変形するように、編糸が潰れる。このように、押圧体接触面と被押圧体接触面との間で、空隙部が存在する状態と空隙部がなく編糸が接触する状態とに編糸間の接触形態が変化するため、カーボンナノチューブ糸における接触抵抗の変化量が大きい。この接圧センサを用いてセンサ部における接触抵抗を検出することにより、押圧体が被押圧体に与える押圧力をより正確に検出することができる。またセンサ部の軽量化を実現できる。
【0010】
センサ部は、コース方向およびウェール方向の両方に交差する方向からの力を受けたとき、もしくは受けた力が開放されたときの編糸交差部における押圧力の変化に応じて編糸同士の接触面積が変化することで、センサ部における接触抵抗が変化するように構成されていてもよい。カーボンナノチューブ糸を含んだ編糸の間で接触面積が変化した場合、その変化が、センサ部における接触抵抗に確実に反映される。したがって、編糸交差部における押圧力の変化を確実に検出することができる。
【0011】
センサ部のコース方向の両端部である第1端部および第2端部が、センサ部の複数のコースから出た編糸からなる端子部をそれぞれ含んでいてもよい。この構成によれば、複数のコースを含むセンサ部のいずれのコース付近に押圧力が与えられた場合でも、その押圧力に応じた接触抵抗の変化を検出することができる。言い換えれば、ある一定の押圧力が加わると仮定した場合に、その位置がセンサ部内で変わると接触抵抗が変わるといったような位置による誤差を低減することができる。
【0012】
接圧センサは、複数のコースから出た編糸からなる端子部を、センサ部における接触抵抗を検出するための抵抗検出回路の一部をなす配線に接続する接続部を更に備えてもよい。この構成によれば、配線を介して接触抵抗を検出することができる。配線の位置または取付け方(又は取付構造)を調整することで、接圧センサをあらゆる用途、道具、および装置等に適用することができる。
【0013】
配線は、編糸よりも抵抗値の変化が小さい導電性糸を編んで構成された編地配線であってもよい。この構成によれば、編地配線を介して、センサ部で生じた接触抵抗の変化を高感度に検出することができる。
【0014】
本開示の別の態様として、上記のいずれかの接圧センサと、非導電性糸を用いて編成され、センサ部が一体的に編み付けられたニットと、を備えるニット製品が提供されてもよい。このニット製品によれば、たとえば、ユーザ(ニット製品の装着者)が身体の一部を物体の何らかの部分に押し付けた場合に、その押圧力を検出することができる。ここで、身体の一部とは、ニット製品の装着者の身体のうち、センサ部が編み付けられた位置に対応する(対面する)部分である。この身体の一部が、押圧体に相当する。物体の何らかの部分とは、押圧力を受けることができる程度に定形性または硬さを有する部分であり、被押圧体に相当する。
【0015】
本開示の更に別の態様は、押圧体と被押圧体との間に配置されたセンサ部を介して、押圧体が被押圧体に与える押圧力を検出する接圧センサの製造方法であって、カーボンナノチューブ糸を含んだ編糸を用いてセンサ部を編成するセンサ部編成工程を備え、センサ部編成工程は、押圧体が接触する押圧体接触面と、被押圧体が接触する被押圧体接触面と、押圧体接触面と被押圧体接触面との間の編糸交差部と、押圧体接触面と被押圧体接触面との間の空間であり、かつ編糸が配置されていない空間である空隙部と、を形成する工程を含む。この接圧センサの製造方法によれば、センサ部編成工程によって、押圧体接触面と被押圧体接触面との間に、編糸が交差する部分である編糸交差部と、編糸が配置されていない空間である空隙部とが形成される。よって、上述したように、押圧体が被押圧体に与える押圧力をより正確に検出することができる接圧センサを製造できる。
【0016】
接圧センサの製造方法は、センサ部編成工程の前にカーボンナノチューブ糸を含んだ編糸を準備する編糸準備工程を更に備え、編糸準備工程は、カーボンナノチューブ糸と水溶性糸とを撚り合わせる撚糸工程を含み、撚糸工程においてカーボンナノチューブ糸の表面が水溶性糸により覆われてもよい。
【0017】
接圧センサの製造方法は、センサ部編成工程の後に、形成されたセンサ部を湯で洗い流すことにより、水溶性糸を溶かしてセンサ部から除去する水溶性糸除去工程をさらに備えてもよい。
【0018】
接圧センサの製造方法において、水溶性糸は、水溶性ビニロンであってもよい。
【0019】
センサ部編成工程では、センサ部のコース方向の両端部である第1端部および第2端部が、センサ部の複数のコースから出た編糸からなる端子部をそれぞれ含むようにセンサ部を編成してもよい。センサ部編成工程によって、複数のコースから出た編糸からなる端子部が形成される。そうして製造された接圧センサによれば、複数のコースを含むセンサ部のいずれのコース付近に押圧力が与えられた場合でも、その押圧力に応じた接触抵抗の変化を検出することができる。
【0020】
接圧センサの製造方法は、センサ部編成工程で形成した第1端部および第2端部の端子部を、センサ部における接触抵抗を検出するための抵抗検出回路の一部をなす配線に接続する配線接続工程を更に備えてもよい。配線接続工程によって、上記の端子部が配線に接続される。そうして製造された接圧センサによれば、配線を介して接触抵抗を検出することができる。配線の位置または取付け方を調整することで、接圧センサをあらゆる用途、道具、および装置等に適用することができる。
【発明の効果】
【0021】
本開示のいくつかの態様によれば、押圧体が被押圧体に与える押圧力をより正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は本開示の一実施形態に係る接圧センサおよびニット製品を示す図である。
【
図2】
図2は一実施形態に係る接圧センサと、配線を含む抵抗検出回路とを示す図である。
【
図3】
図3はセンサ部の第1端部および第2端部における端子部と配線の接続構造を説明するための図である。
【
図4】
図4(a)はセンサ部編成工程における端子部の形成方法を説明するための図、
図4(b)は形成された端子部と配線接続工程における接続方法とを説明するための図である。
【
図5】
図5(a)は
図3のV-V線に沿った断面図、
図5(b)は
図5(a)の編み構造が力を受けた場合の編み構造の変形の一例を示す図である。
【
図6】
図6(a)は撚糸工程で撚り合わされる糸を示す図、
図6(b)は撚り合わされた糸の断面図、
図6(c)は撚り合わされた糸の別の例の断面図である。
【
図7】
図7は抵抗測定試験の結果を示すグラフである。
【
図8】
図8(a)は未加圧状態におけるセンサ部の拡大写真、
図8(b)は加圧状態におけるセンサ部の拡大写真である。
【
図9】
図9は配線および接続部の変形形態を示す図である。
【
図10】
図10は接圧センサがシートカバーに適用された場合の適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0024】
まず
図1および
図2を参照して、本実施形態の接圧センサ20の基本構成について説明する。接圧センサ20は、たとえば非導電性糸を用いて編成されたニットに取り付けられ、そのニットを着用した着用者の身体の一部(押圧体)が、被押圧体に与える押圧力を検出するためのセンサである。たとえば、
図1に示されるように、接圧センサ20は、非導電性糸を用いて編成されたニットである手袋100に取り付けられている。なお、
図1は、手袋100を掌部102側から見て示す図である。手袋100は、たとえば平編みによって編成される。接圧センサ20は、導電性糸で編成された編地であるセンサ部1を備える。センサ部1は、たとえば、手袋100の親指腹部101(指紋側に相当する部分)に一体的に編み付けられている。センサ部1が一体的に編み付けられた手袋100と、接圧センサ20とによって、一種のウェアラブルセンサである接圧センサ付き手袋(ニット製品)100Aが構成されている。
【0025】
図1および
図2に示されるように、接圧センサ20は、センサ部1と、センサ部1における接触抵抗を検出するための抵抗検出回路(
図2参照)の一部をなす第1配線2aおよび第2配線2bと、センサ部1をこれらの第1配線2aおよび第2配線2bにそれぞれ接続する第1接続部3aおよび第2接続部3bとを備える。抵抗検出回路は、第1配線2aに電気的に接続された増幅器7および制御部8と、第1配線2aに対する増幅器7の接続点と回路内のグランドとの間に設けられた抵抗9とを備える。増幅器7は、センサ部1における接触抵抗の値を示す電流値を増幅させる。増幅器7は、条件によっては省略されてもよい。制御部8は、増幅器7から出力された電流値に基づいて、センサ部1における接触抵抗の抵抗値を算出する。なお、抵抗検出回路において、センサ部1および抵抗9の位置が、
図2の例とは逆に配置されていてもよい。
【0026】
接圧センサ付き手袋100Aは、手袋100の甲部103上に取り付けられた、増幅器7および制御部8を含む検出装置6を有してもよい。たとえば、増幅器7および制御部8を含む検出装置6の筐体が、甲部103に設けられた収納ポケット104内に収納されてもよい。その場合、第1配線2aおよび第2配線2bは、甲部103側の適宜の位置に配置され、第1配線2aが、増幅器7および制御部8に電気的に接続される。また、第2配線2bは、図示しない電源(バッテリーなど)に接続される。なお、増幅器7および制御部8、または検出装置6が、手袋100上に取り付けられなくてもよい。たとえば、センサ部1における接触抵抗の抵抗値を示す信号を発信する発信器を手袋100または他の部分に取り付け、センサ部1から離れた場所に設けられた受信器および制御部8によって、センサ部1における接触抵抗の抵抗値が算出されてもよい。本実施形態において、抵抗9は、検出装置6とは別部材として増幅器7の接続点と回路内のグランドとの間に設けられているが、この抵抗9を検出装置6の一部として構成してもよい。また、本実施形態では、検出装置6による検出値を外部に送信する手段としては、有線・無線を問わず採用することができる。
【0027】
センサ部1は、カーボンナノチューブ(以下、CNTという)からなる紡績糸であるカーボンナノチューブ糸(以下、CNT糸という)を含んだ編糸4で構成されている。言い換えれば、センサ部1は、CNT糸を含んだ編糸4を用いて編成されている。センサ部1の平面視における形状は特に限定されないが、たとえば矩形である。センサ部1の形状は、長方形状であってもよいし、正方形状であってもよい。センサ部1の形状は、矩形以外の形状であってもよい。センサ部1の大きさは、押圧体の大きさによって適宜に変更または設定されてよい。接圧センサ付き手袋100Aの場合、センサ部1の大きさは、着用者の親指の腹と同程度か、または親指の腹より大きく設定される。センサ部1の大きさが、着用者の親指の腹より小さく、親指の腹の中央部に配置されてもよい。センサ部1は、完全に筒状に編まれた手袋100の親指腹部101上に編み付けられてもよいし、手袋100の親指腹部101に相当する部分のみが、非導電性糸ではなく、導電性糸からなるセンサ部1に置換されてもよい。すなわち、手袋100の一部(この例では親指等の指袋の一部)が編糸4からなる編地で構成されてもよい。もちろん、手袋100の用途に応じて、センサ部1の位置を親指腹部101に対してずらして配置することも可能である。たとえば、親指の指先を使った作業に用いられる場合には、センサ部1の位置を腹部よりも指先側に配置することが好ましい。
【0028】
編糸4は、たとえば、導電性糸であるCNT糸からなる糸である。編糸4がCNT糸からなる場合、後述する接触抵抗の検出精度が高まり、押圧力をより一層正確に検出することができる。編糸4は、たとえば、複数本(たとえば3本または6本)のCNT糸を撚り合わせた合撚糸であってもよい。編糸4は、1本のCNT糸からなる単糸であってもよい。編糸4は、CNTのみからなる糸であってもよいが、CNTに多少の他の物質が混合されてもよい。他の物質として、たとえばポリエステルや綿、ナイロン、ウール等が挙げられる。その場合、CNTが占める割合は50%以上であり、好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上であり、更により好ましくは90%以上である。あるいは、編糸4は、CNT糸以外の他の糸と撚り合わせた合撚糸であってもよい。
【0029】
本実施形態のCNT糸は、たとえば、基板支持部に支持されたCNT形成基板からCNT繊維群を引き出し、そのCNT繊維群を糸製造部に導入し、糸製造部で発生させた圧縮空気の旋回流によってCNT繊維群に撚りを施すことで製造され得る。CNT形成基板とは、たとえばカーボンナノチューブフォレストまたはCNTの垂直配向構造体等である。このように製造されたCNT糸は、CNT繊維群が扁平な形状とならない未凝集の状態で撚られるため、密度の高い糸となる。またCNT糸は、高い配向性をもったCNT繊維群を含んでいる。CNT糸の製造方法は、たとえば国際公開第2015/001669号に記載された方法によって製造され得る。なお、CNT糸が、他の公知の製造方法を用いて製造されてもよい。
【0030】
続いて
図3および
図4を参照して、接圧センサ20およびセンサ部1について詳細に説明する。
図3に示されるように、センサ部1は、横編みによって形成された編地である。センサ部1は、編糸4の横編みによって形成された編地部1cと、編地部1cの両端部である第1端部1aおよび第2端部1bとを有する。編地部1cは、コース方向D1とウェール方向D2とを有する。第1端部1aおよび第2端部1bは、たとえば編地部1cのコース方向D1の両端部である。
【0031】
センサ部1のコース方向D1の両端部である第1端部1aおよび第2端部1bは、センサ部1のすべてのコースから出た編糸4からなる第1端子部10aおよび第2端子部10bをそれぞれ含んでいる。
図3に示す例では、編地部1cは、全部で6つのコースを有する。第1端子部10aは、第1コース糸11a、第2コース糸12a、第3コース糸13a、第4コース糸14a、第5コース糸15a、および第6コース糸16aからなり、これらの第1~第6コース糸11a~16aが束ねられている。第2端子部10bは、第1コース糸11b、第2コース糸12b、第3コース糸13b、第4コース糸14b、第5コース糸15b、および第6コース糸16bからなり、これらの第1~第6コース糸11b~16bが束ねられている。なお、
図3は、編糸4によって形成されたセンサ部1の構造を理解しやすいために模式的な図となっているが、第1~第6コース糸11a~16aおよび第1~第6コース糸11b~16bは、編地部1cの両端部により近接した位置で束ねられてもよい。
【0032】
ここで
図4を参照して、編地部1cおよび端子部10a,10bの形成方法(センサ部編成工程)について説明する。
図4(a)において、丸で囲まれた数字は編成コース数を示す。センサ部1は、公知の横編機を用いて編成される。まず、第1コースから順に、ニードルヘッドに並設された編針に編糸4を供給しながら図示しないキャリッジにより編針を進退させ、編針で編糸4を引っ掛けて編地部1cを形成していく。第1コースでは、編針A、E~I、およびMで編目を形成し、編針B~DとJ~Lは動かさずに編糸4を横に渡らせる。その後、第2コースでは給糸方向を逆にして編針M、I~E,Aで編目を形成し、編針L~JとD~Bは動かさずに編糸4を横に渡らせる。以上の編成工程を第6コースまで繰り返し、編針E~Iの編目に対して解れ止めを施す。この解れ止めは、公知の方法で実施されてよいが、たとえば「伏せ目」と呼ばれる編み方や、特殊な糸を用いて実施され得る。
【0033】
第6コースの編針AとMについては、係止した編目を編針から外すことで縦方向(ウェール方向D2)に並んでいる全ての編目の接続が解かれ、
図4(b)に示されるようにヒゲ状の第1端子部10aおよび第2端子部10bが形成される。なお、編針AとMから編目を外す工程は毎コースあるいは数コース毎に行ってもよい。編地部1cおよび端子部10a,10bを形成するための編み方は多様な編み方から採用されてよく、上記した編み方に限定されない。上記では容易に理解し得る編み方の一例について説明したが、これよりも複雑な編み方が採用されてもよい。また
図4(b)に示される例では、複数のU字状の折返し部18が形成され、編糸4の両端に糸端部19,19が形成されているが、折返し部18を含んだまま端子部が配線に接続されてもよいし、編糸4が切られて折返し部18を含まない状態で、端子部が配線に接続されてもよい。
【0034】
再び
図3を参照し、抵抗検出回路(
図2参照)の一部をなす第1配線2aおよび第2配線2bに、第1端子部10aおよび第2端子部10bをそれぞれ接続する第1接続部3aおよび第2接続部3bは、これらの電気的な接続を可能とするあらゆる手段によって実現され得る。たとえば、第1接続部3aおよび第2接続部3bは、金属製の接続部材を用いた加締め構造または圧着構造を有してもよい。第1端子部10aおよび第2端子部10bは、半田付けによって、第1配線2aおよび第2配線2bに接続されてもよい。その場合、第1接続部3aおよび第2接続部3bは、半田付け部を有し、半田付け部にはCNTおよび半田と親和性の強いプライマー層が設けられていることが好ましい。
【0035】
続いて、CNT糸からなるセンサ部1の編み構造について説明する。
図5(a)は、
図3のV-V線に沿った断面図、
図5(b)は、
図5(a)の編み構造が力を受けた場合の編み構造の変形の一例を示す図である。これらの図では、接圧センサ付き手袋100Aのセンサ部1が、着用者によって着用され、着用者の指M(より具体的には親指)が押圧体となって被押圧体Nに押圧力を与える様子が示されている。被押圧体Nは、指Mで押される定形性または硬さを有する物体である。一例として、被押圧体Nは、親指によって押されるボタン等であってもよい。
【0036】
図5(a)に示されるように、センサ部1の編地部1cは、指Mが接触する押圧体接触面1mと、被押圧体Nが接触する被押圧体接触面1nとを有する。押圧体接触面1mは、センサ部1の表面であり、被押圧体接触面1nは、センサ部1の裏面である。なお、手袋100の指袋を基準として考えた場合には、押圧体接触面1mは親指側(指紋側)に位置する裏面であり、被押圧体接触面1nは手袋100の表側に露出する表面である。いずれにしても、センサ部1の編地部1cは、第1面である押圧体接触面1mと、第1面とは反対側の第2面である被押圧体接触面1nとを有する。センサ部1の編地部1cは、押圧体接触面1mと被押圧体接触面1nとの間に形成された多数の(複数の)編糸交差部5と、押圧体接触面1mと被押圧体接触面1nとの間に形成された空間であり、かつ、編糸4が配置されていない空間である多数の(複数の)空隙部Sとを有する。編糸交差部5は、編糸4が交差する部分である。空隙部Sは、たとえば、ある1つの編糸交差部5と、それにコース方向D1に隣接する他の1つの編糸交差部5との間に形成されている。一方、一部の編糸交差部5においては、編糸4と編糸4とが接触しているが、他の一部の編糸交差部5においては、編糸4と編糸4とが接触していない。このように編糸交差部5において編糸4と編糸4とが接触していない場合には、これらの編糸4と編糸4の間の空間も、空隙部Sであると言える。
【0037】
センサ部1の編地部1cが、編地部1cの厚み方向、すなわちコース方向D1およびウェール方向D2の両方に直交する方向から力を受けたときの編糸交差部5における押圧力の増加に応じて編糸4同士の接触面積が増大することで、編地部1cにおける接触抵抗が減少する。
図5(b)に示されるように、編地部1cが押圧力を受けると、編地部1cの厚みすなわち押圧体接触面1mと被押圧体接触面1nとの間の距離が縮小される。このとき、空隙部Sの容積は縮小する。編糸4同士の接触面積は、
図5(a)に示す自然状態よりも、増大している。また、センサ部1の編地部1cは、編地部1cの厚み方向に受けた力が開放されたときの編糸交差部5における押圧力の減少(消失)に応じて編糸4同士の接触面積が減少することで、編地部1cにおける接触抵抗が増大する。このとき、空隙部Sの容積は増大し、
図5(a)に示す元の自然状態に戻る。このように、センサ部1は、指Mと被押圧体Nとの間に配置され、指Mから被押圧体Nに押圧力が与えられたとき又は当該押圧力が開放されたときの編糸交差部5における押圧力の変化に応じて編糸4同士の接触面積が変化することで、センサ部1における接触抵抗が変化するように構成されている。
【0038】
接圧センサ20の製造方法について説明すると、まず、CNT糸からなる編糸4を用いてセンサ部1が編成される(センサ部編成工程)。このセンサ部編成工程では、上述した押圧体接触面1m、被押圧体接触面1n、編糸交差部5、および空隙部Sが形成される。センサ部編成工程は、たとえば、公知の横編機を用いて実施される。センサ部編成工程では、
図3を参照して説明したように、編地部1cのコース方向D1の両端部である第1端部1aおよび第2端部1bが、編地部1cのすべてのコースから出た編糸4からなる第1端子部10aおよび第2端子部10bをそれぞれ含むように、センサ部1が編成される。
【0039】
センサ部1が編成された後、第1端子部10aおよび第2端子部10bが、加締め、圧着又は半田付け等により、第1配線2aおよび第2配線2bに接続され(配線接続工程)、第1接続部3aおよび第2接続部3bが形成される。第1配線2aおよび第2配線2bとしては、たとえば、金属導体からなる伸縮性の電線(伸縮電線)が用いられる。第1配線2aおよび第2配線2bとして、伸縮電線以外の電線が用いられてもよい。第1接続部3aおよび第2接続部3bには、絶縁性のカバー部材等が取り付けられてもよい。その場合、カバー部材は、第1接続部3aおよび第2接続部3bの金属が露出した部分を覆うように取り付けられる。
【0040】
さらに、センサ部1を手袋100等のニットに編み付け(編付け工程)、
図2に示したような抵抗検出回路を形成した上で(回路形成工程)、抵抗検出回路を構成する部品をニットまたはニット以外の場所に取り付ける(組立工程)。これらの各工程を経て、接圧センサ付き手袋100A等のニット製品(ウェアラブルセンサ)が製造される。
【0041】
本実施形態の接圧センサ20によれば、押圧体接触面1mと被押圧体接触面1nとの間に、編糸4が交差する部分である編糸交差部5と、編糸4が配置されていない空間である空隙部Sとが形成される。被押圧体接触面1nが被押圧体Nに接触した状態で、センサ部1の押圧体接触面1mに指M等の押圧体が接触すると、最初に多く存在した空隙部Sが、徐々に縮小される。いくつかの場合には(常にとは限らないが)、編糸4の断面が変形するように、編糸4が潰れる。このように、押圧体接触面1mと被押圧体接触面1nとの間で、空隙部Sが多く存在する状態と空隙部Sが縮小し編糸4が接触する状態とに編糸4間の接触形態が変化するため、CNT糸における接触抵抗の変化量が大きい。この接圧センサ20を用いてセンサ部1における接触抵抗を検出することにより、押圧体が被押圧体に与える押圧力をより正確に検出することができる。またセンサ部1の軽量化を実現できる。編糸交差部5と空隙部Sとを有する構造は、上記力を受けたときは空隙部Sが縮小するように変化し、上記力が開放されたときは空隙部Sが拡大する(復元される)ように変化する。よって、接圧センサ20は、押圧力が加わったことを検出可能であり、また押圧力がなくなったことも検出可能である。接圧センサ20では、押圧力がなくなれば(除去されれば)空隙部Sが復元されるので、押圧力が与えられる度に、その押圧力を検出することができる。
【0042】
CNT糸を含んだ編糸4の間で接触面積が変化した場合、その変化が、センサ部1における接触抵抗に確実に反映される。したがって、編糸交差部5における押圧力の変化を確実に検出することができる。
【0043】
センサ部1の第1端部1aおよび第2端部1bが、すべてのコースから出た編糸4からなる端子部10a,10bをそれぞれ含んでいる。この構成によれば、複数のコースを含むセンサ部1のいずれのコース付近に押圧力が与えられた場合でも、その押圧力に応じた接触抵抗の変化を検出することができる。言い換えれば、ある一定の押圧力が加わると仮定した場合に、その位置がセンサ部1内で変わると接触抵抗が変わるといったような位置による誤差を低減することができる。
【0044】
接圧センサ20は、すべてのコースから出た編糸4からなる端子部10a,10bを、センサ部における接触抵抗を検出するための抵抗検出回路の一部をなす配線2a,2bに接続する接続部3a,3bを備える。この構成によれば、配線2a,2bを介して接触抵抗を検出することができる。配線2a,2bの位置または取付け方(又は取付構造)を調整することで、接圧センサ20をあらゆる用途、道具、および装置等に適用することができる。
【0045】
本実施形態のニット製品である接圧センサ付き手袋100Aによれば、ユーザ(ニット製品の装着者)が身体の一部を物体の何らかの部分に押し付けた場合に、その押圧力を検出することができる。また、センサ部1をヒーターとしての役割を兼ねることもできる。センサ部1は一定温度で一定抵抗を示す。3本または6本のCNT糸の合撚糸は、ヒーターとしてセンサ部1を用いる場合に有利である。
【0046】
上述の実施形態においては、CNT糸からなる編糸4を横編機にダイレクトに供給してセンサ部1を編成したが、接圧センサの製造方法は、以下のような変形例として実施することも可能である。
【0047】
変形例においては、CNT糸からなる編糸21を横編機に供給する前に水溶性糸22と合糸し、これらを撚り合わせることにより編糸21を水溶性糸22でカバーする(
図6(a)および
図6(b)参照)。編糸21の表面を水溶性糸22で覆い隠す比率であるカバー率は100%であることが好ましい。水溶性糸22が編糸21を覆う層数は、
図6(a)および
図6(b)に示される編糸4Aのように、たとえば1層である。しかし、
図6(c)に示される編糸4Bのように、第1水溶性糸22と第2水溶性糸23とからなる2層のカバーを設けることも可能である。2層のカバーとすることにより確実にカバー率を100%とすることが出来る。
【0048】
CNT糸は、素材としてのCNTが持っているファンデルワールス力による独自の粘り(Sticky)を有している。この粘りにより、編成の際に糸と編針の摩擦抵抗が高くなり、意図せぬ糸の破断や編針の破損が発生することがある。
【0049】
本変形例では、編糸21の表面を水溶性糸22で覆い隠しているので、編成の際に編糸21がダイレクトに編針と接触することが防止され、糸と編針の摩擦抵抗が低下する。これにより、意図せぬ糸の断裂や編針の破損を防止することが出来る。センサ部1として編成された編糸21には、水溶性糸22が被覆されているが、この水溶性糸は湯で溶かすことにより洗い流すことが出来る。水溶性糸22を洗い流して除去することにより、編糸21のみで編成されたセンサ部1を製造することができる。水溶性糸22を洗い流して除去した後のセンサ部はCNT糸からなる編糸21のみで編成されているので、CNTの持つ導電性能を十分に発揮することが出来る。編糸4Bにおいても、第1水溶性糸22と第2水溶性糸23を洗い流すことにより、CNT糸からなる編糸21のみでセンサ部を編成できる。
【0050】
水溶性糸22(または水溶性糸23)としては、ポリビニルアルコールから成る水溶性ビニロンが好適に用いられる。水溶性ビニロン糸と編針の摩擦抵抗は、編糸21と編針の摩擦抵抗よりも低い。また、水溶性ビニロンは(好ましくは50℃~60℃の湯)で溶かして洗い流して除去することが出来るので、扱いが容易である。しかしながら、編針との摩擦抵抗が、編糸21と編針の摩擦抵抗よりも低く、かつ湯で溶かして洗い流すことが出来る素材であれば水溶性ビニロンに代えて採用することができる。
【0051】
変形例におけるセンサ部編成工程をまとめると以下のようになる。
工程1:[編糸準備工程]CNT糸と水溶性ビニロン糸とを合糸し、さらに撚糸する(撚糸工程)。
工程2:[センサ部編成工程]合糸して撚糸されたCNT糸と水溶性ビニロン糸とを横編機で編成することによりセンサ部を形成する。より詳細には、センサ部として押圧体が接触する押圧体接触面と、被押圧体が接触する被 押圧体接触面と、押圧体接触面と被押圧体接触面との間の編糸交差部と、押圧体接触面と被押圧体接触面との間の空間であり、かつ編糸が配置されていない空間である空隙部と、が形成される。
工程3:[水溶性糸除去工程]形成されたセンサ部を湯で溶かし、水溶性ビニロンをセンサ部から洗い流して除去する。
【0052】
続いて、
図7および
図8を参照して、抵抗値の測定試験について説明する。上記した実施形態と同様の構成を有するCNT編地からなるセンサ部を作成し、このセンサ部に、加締めにより伸縮電線を接続した。手袋100の親指腹部101(
図1参照)にセンサ部1を取り付け、センサ部1に押圧力を与えた。
図7には、3種類の実施例において、各3回ずつ、接圧(g)に対する抵抗値(Ω)の変化が示されている。実施例1、2および3は、手袋を装着した手の大きさが異なっている。実施例1では小さい手、実施例2では中くらいの手、実施例3では大きな手に手袋100を装着して測定した。各実施例では、手の大きさにより手袋の張り具合が異なるため、抵抗の初期値が異なっているが、圧力の変化は同傾向として測定されることが示された。
【0053】
実施例1~3のいずれにおいても、抵抗値が接圧の変化に対してばらつくことなく線形的に変化しており、実用に十分に耐え得る検出結果が得られた。
図8(a)に示されるように、押圧力を付与する前は、編糸4と編糸4が離れており、空隙部Sが多く観察されたが、
図8(b)に示されるように、押圧力を付与しセンサ部1を圧縮した際には、編糸4と編糸4の接触が増え、空隙部Sが減少している様子が観察された。なお、
図8(a)および
図8(b)は、それぞれセンサ部1の同じ箇所を、
図3に示されるのと同じ平面視の方向から撮影した画像である。
【0054】
配線は、上記実施形態と異なる態様とすることができる。たとえば
図9に示されるイメージ図のように、たとえばCNT糸以外の抵抗値の変化が小さい導電性糸31を編んで構成された編地配線30a,30bを備えたセンサ部1Aが提供されてもよい。編地配線30a,30bの抵抗値の変化は、編糸4の抵抗値の変化よりも小さい。編地配線30a,30b、すなわちウェール方向D2の長さは、第1接続部40aおよび第2接続部40bが形成される部分において、編地部1cの幅Wと略等しいが、編地部1cの幅Wと異なっていてもよい。具体的には、センサ部1Aの第1端子部10aおよび第2端子部10bに対し、第1接続部40aおよび第2接続部40bは、たとえばインターシャによって形成される。この構成によれば、編地配線30a,30bを介して、センサ部1Aで生じた接触抵抗の変化を高感度に検出することができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。たとえば、非導電性糸を用いて編成されたニットにセンサ部が編み付けられる位置、大きさおよび形状は、上記実施形態以外のあらゆる態様を採り得る。センサ部を介して押圧体が被押圧体に与える押圧力を検出する態様であれば、どのような態様にも本発明は適用され得る。手袋において指の腹に相当する部分にセンサ部が取り付けられてもよいし、掌部102または甲部103にセンサ部が取り付けられてもよい。センサ部が、手袋以外のニットに取り付けられてもよい。本開示の接圧センサが、指サックに適用されてもよいし、靴下や靴に適用されてもよい。
【0056】
また、たとえば
図10に示されるように、複数のセンサ部1が車両用シートを覆うシートカバー200に編み込まれた実施形態が提供されてもよい。シート部201の所定の箇所に複数のセンサ部1を配設すると共に、背もたれ部202の所定の箇所に複数のセンサ部1を配設することで、座圧分布および背もたれの圧力分布を検出・測定することができる。このような座圧分布または圧力分布を検出・測定する観点では、シートカバー200以外にも、たとえば、便座や車椅子の座面に接圧センサ20およびセンサ部1が適用されてもよい。上記実施形態では、車両用シートを覆うシートカバー200に複数のセンサ部1を編み込んでいるが、複数のセンサ部1は、車両用シートに直接編み付けることもできる。複数のセンサ部1を、車両用シートに直接編み付けることにより、複数のセンサ部1と車両用シートとの位置ずれを防止することができ、精度良く座圧分布および背もたれの圧力分布を検出・測定することができる。
【0057】
センサ部1の編地部1cが押圧体から受ける押圧力は、編地部1cの厚み方向、すなわちコース方向D1およびウェール方向D2の両方に直交する方向の力に限られず、コース方向D1およびウェール方向D2の両方に90°以外の角度をもって交差する方向の力であってもよい。
【0058】
配線が接続されるセンサ部の第1端部および第2端部は、コース方向の両端部である場合に限られない。第1端部および第2端部は、センサ部のウェール方向の両端部であってもよい。第1端部および第2端部が、センサ部のすべてのコースから出た編糸からなる端子部をそれぞれ含む場合に限られず、センサ部の一部の複数のコースから出た編糸からなる端子部をそれぞれ含んでもよい。
【0059】
また、センサ部の編地部の押圧体接触面の外側(コース方向D1および/またはウェール方向D2における周縁部の外側)や、被押圧体接触面の外側(コース方向D1および/またはウェール方向D2における周縁部の外側)に対して、別の編地を形成してもよく、後工程において保護フィルム等を貼り付けてもよい。これにより、汗などの水分の影響を防ぐことができ、耐久性を向上させることが可能となる。なお、本発明は、押圧体接触面あるいは被押圧体接触面が、押圧体あるいは被押圧体に直接接触する態様に限られない。押圧体接触面あるいは被押圧体接触面が、間接的に押圧体あるいは被押圧体に接触する態様も、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1…センサ部、1a…第1端部、1b…第2端部、1c…編地部、1m…押圧体接触面、1n…被押圧体接触面、2a…第1配線、2b…第2配線、3a…第1接続部、3b…第2接続部、4…編糸、4A,4B…編糸、5…編糸交差部、6…検出装置、7…増幅器、8…制御部、9…抵抗、10a…第1端子部、10b…第2端子部、20…接圧センサ、21…編糸、22…水溶性糸、23…水溶性糸、30a…編地配線、30b…編地配線、40a…第1接続部、40b…第2接続部、100…手袋(ニット)、100A…接圧センサ付き手袋(ニット製品)、101…親指腹部、D1…コース方向、D2…ウェール方向、M…指(押圧体)、N…被押圧体、S…空隙部。