IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ノースロップ グラマン システムズ コーポレイションの特許一覧

特許7470715可動部品のない広角視野のスキャンLIDARのための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】可動部品のない広角視野のスキャンLIDARのための方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/481 20060101AFI20240411BHJP
   G01S 17/32 20200101ALI20240411BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G01S17/32
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021569293
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-28
(86)【国際出願番号】 US2020033065
(87)【国際公開番号】W WO2020236555
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-01-23
(31)【優先権主張番号】16/418,615
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520128820
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【弁理士】
【氏名又は名称】末松 亮太
(74)【代理人】
【識別番号】100195408
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ルマラ,イサ・エス
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-072878(JP,A)
【文献】特開2015-163912(JP,A)
【文献】特表2000-506676(JP,A)
【文献】特表2021-520487(JP,A)
【文献】特表2021-517237(JP,A)
【文献】国際公開第2007/013648(WO,A1)
【文献】特開2020-051760(JP,A)
【文献】国際公開第2018/071251(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0202283(US,A1)
【文献】国際公開第2018/213410(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51
G01S 17/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光検出および測距(LIDAR)システムとターゲットとの間の距離を判定するために、前記LIDARシステムにおいて、送信ビームを360°の視野(FOV)にわたってスキャンし、前記ターゲットから反射されたビームを処理するための方法であって、前記LIDARシステムは、送信機サブシステムおよび受信機サブシステムを含み、前記方法は、
前記送信機サブシステムによって第1の周波数で送信されるレーザビームを生成するステップと、
前記送信機サブシステムおよび/または受信機サブシステムにおける光学および電気光学構成要素の温度を判定するステップと、
前記送信機サブシステムおよび/または受信機サブシステムにおける前記光学および電気光学構成要素の前記温度における変化を補償するために、前記レーザビームの前記第1の周波数を調整するステップと、
スパイラル位相プレート共振器(SPPR)デバイスにおいて前記レーザビームを前後に反射させる、対向する反射面を有する前記送信機サブシステムにおいて、前記SPPRデバイスへ前記レーザビームを向けるステップであって、前記反射面のうちの1つの反射面は、スパイラルステップインデクスを含み、前記スパイラルステップインデクスは、前記SPPRデバイスの片側から放射され、光渦のコヒーレントな重ね合せを有する前記送信ビーム、および、前記SPPRデバイスの反対側から放射され、光渦のコヒーレントな重ね合せを有する処理ビームとして、異なる位相を有する複数の内部反射ビームを結合させる、向けるステップと、
前記SPPRデバイスからの前記送信ビームを円錐ミラーに向け、前記レーザビームの前記第1の周波数に応じて、前記円錐ミラーから特定の角度に前記送信ビームを向けるステップと、
前記送信ビームが前記円錐ミラーから向けられる角度を変化させるために、前記レーザビームの光周波数を、第2の周波数にシフトさせるステップと、
所定の期間、第1の強度変調周波数を使用して、前記第2の周波数前記レーザビームを強度変調するステップと、
前記受信機サブシステムにおける複数の検出器モジュールの一部である、1つまたは複数の検出器モジュールにおいて、前記ターゲットから反射ビームを受信するステップと、
前記レーザビームの前記変調を使用して、前記ターゲットへの前記送信ビームと、前記ターゲットからの前記反射ビームとの往復時間を推定するステップと、
他の複数の強度変調周波数を使用して、前記第2の周波数前記レーザビームを強度変調するステップと、
前記複数の強度変調周波数で変調された前記レーザビームを、前記1つまたは複数の検出器モジュールと同期させるステップと、
測距パラメータを計算するために、前記送信機サブシステムと、前記受信機サブシステムとの間の相関付けを提供するステップとを備える、方法。
【請求項2】
前記送信ビームが360°のFOVでスキャンされるように、前記レーザビームの前記周波数を、他の周波数に変更するステップと、
前記複数の変調周波数を使用して、前記ビーム周波数の各々において前記レーザビームを強度変調するステップと、
前記複数の強度変調周波数で変調された前記レーザビームを、前記1つまたは複数の検出器モジュールと同期させるステップと、
すべての前記周波数の測距パラメータを計算するために、前記送信機サブシステムと前記受信機サブシステムの間の相関付けを提供するステップとをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記送信機サブシステムおよび/または前記受信機サブシステムにおける前記光学および前記電気光学構成要素の温度を判定するステップは、前記送信機サブシステムおよび/または前記受信機サブシステムにおける温度センサから温度測定値を読み取るステップ、または、前記SPPRデバイスにおける幅および縦モードを推定して、その自由スペクトル範囲を判定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記送信ビームが前記ミラーから反射される角度を判定するために、前記送信ビームの前記強度変調における変化に応じて、前記レーザビームを内部的に追跡するステップをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記レーザビームを内部的に追跡するステップは、前記第2の周波数について前記SPPRデバイスにおいて生成された前記処理ビームを、複数の単一ピクセル検出器を含む前記送信機サブシステムにおける検出器アセンブリに向けるステップを備える、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記検出器アセンブリは、前記単一ピクセル検出器に各々個別にファイバ結合された複数のアパーチャを有するアパーチャデバイスを含み、前記レーザビームの前記周波数が、1つの周波数から別の周波数に調整されると、前記単一ピクセル検出器のうちの1つの単一ピクセル検出器が、前記送信ビームの角度方位を示すヌルを読み取る、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記複数のアパーチャは、8つのアパーチャであり、前記単一ピクセル検出器は、円の周りに45°ごとに構成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記処理ビームを、前記SPPRデバイスにおける前記レーザビームのタイミングおよび強度変調を監視する前記送信機サブシステムにおけるタイミング検出器に向けるステップをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記送信ビームが前記送信機サブシステムから放射される角度に応じて、前記受信機サブシステムにおける検出器モジュールをオンおよびオフにするステップをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記検出器モジュールをオンおよびオフにするステップは、前記検出器モジュールをパワーサイクルするステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記検出器モジュールをパワーサイクルするステップは、前記検出器モジュールのバイアス電圧を変更するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記レーザビームを強度変調するステップは、音響光学変調器(AOM)またはマッハツェンダ変調器を使用するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記受信機サブシステムは、円筒形状のハウジングを含み、前記検出器モジュールは、前記ハウジングの周りに360°のFOVを提供するように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
360°の視野(FOV)にわたって送信ビームをスキャンし、ターゲットから反射されたビームを処理するための方法であって、
第1の周波数で送信されるレーザビームを生成するステップと、
前記レーザビームをスパイラル位相プレート共振器(SPPR)デバイスに向けるステップと、
前記SPPRデバイスからの送信ビームを円錐ミラーに向け、前記レーザビームの前記第1の周波数に応じて、前記円錐ミラーから特定の角度に前記送信ビームを向けるステップと、
前記送信ビームが前記円錐ミラーから向けられる角度を変化させるために、前記レーザビームの光周波数を、第2の周波数にシフトさせるステップと、
所定の期間、第1の強度変調周波数を使用して、前記第2の周波数前記レーザビームを強度変調するステップと、
1つまたは複数の検出器モジュールにおいて、前記ターゲットから反射ビームを受信するステップと、
前記レーザビームの前記変調を使用して、前記ターゲットへの前記送信ビームと、前記ターゲットからの前記反射ビームとの往復時間を推定するステップと、
他の複数の強度変調周波数を使用して、前記第2の周波数前記レーザビームを強度変調するステップと、
前記複数の強度変調周波数で変調された前記レーザビームを、前記1つまたは複数の検出器モジュールと同期させるステップとを備える、方法。
【請求項15】
前記送信ビームが360°のFOVでスキャンされるように、前記レーザビームの前記周波数を、他の周波数に変更するステップと、前記複数の変調周波数を使用して、前記ビーム周波数の各々で、前記レーザビームを強度変調するステップと、前記複数の強度変調周波数で変調された前記レーザビームを、前記1つまたは複数の検出器モジュールと同期させるステップとをさらに備える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
温度変化を補償するために、前記第1の周波数を調整するステップをさらに備える、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
温度変化を補償するために、前記第1の周波数を調整するステップは、温度センサから温度測定値を読み取るステップ、または、前記SPPRデバイスにおける幅および縦モードを推定して、その自由スペクトル範囲を判定するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記レーザビームを強度変調するステップは、音響光学変調器(AOM)またはマッハツェンダ変調器を使用するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記送信ビームが前記ミラーから反射される角度を判定するために、前記送信ビームの強度変調における変化に応じて、前記レーザビームを内部的に追跡するステップをさらに備え、前記レーザビームを内部的に追跡するステップは、前記SPPRデバイスからの後方反射を監視するステップと、前記検出器モジュールをオン状態にし、前記検出器モジュールのうちの1つの検出器モジュールで前記反射ビームを読み取るステップと、検出器デジタル信号と前記第2の周波数に対応する信号との重み付けられた相関付けを提供するステップと、良好な測定の場合、前記レーザビームの角度を報告するステップと、不良な初期測定の場合、前記レーザビームの前記周波数をシフトさせ、再度測定を行うステップとをさらに備える、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
360°の視野(FOV)にわたって送信ビームをスキャンし、ターゲットから反射されビームを処理するための方法であって、
送信されるレーザビームを生成するステップと、
複数の変調周波数で前記レーザビームを強度変調するステップと、
前記レーザビームをスパイラル位相プレート共振器(SPPR)デバイスに向けるステップと、
前記SPPRデバイスからの送信ビームを円錐ミラーに向け、前記レーザビームの波数に応じて、前記円錐ミラーから特定の角度に前記送信ビームを向けるステップと
前記送信ビームが前記ターゲットから反射された反射ビームを検出し、前記レーザビームの前記強度変調を使用して、前記ターゲットへの前記送信ビームと、前記ターゲットからの前記反射ビームとの往復時間を推定するステップとを備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、一般に、測距目的のために、360°の視野(FOV)にわたって、LIDARシステムにおいて送信ビームをスキャンし、ターゲットから反射されたビームを処理するための方法に関し、より詳細には、スパイラル位相プレート共振器(SPPR)デバイスを使用して、360°のFOVにわたって、LIDARシステムにおいて振幅変調された送信ビームをスキャンし、測距目的のために、ターゲットから反射されたビームを処理するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]光検出および測距(LIDAR)は、ターゲットから反射された変調パルス光ビームを送信し、戻りビームが検出される動作であり、ここでは、ターゲットまでの距離を判定するために、ビームの飛行時間が使用される。この方式で距離測定の点群を提供することにより、オブジェクトの画像を構築できる。そのような測距を実行するLIDARシステムは、通常、レーザビーム源、光ビームのスキャンを提供する素子、およびビーム反射を検出するための検出器を含む。
【0003】
[0003]LIDARシステムは、たとえば、ゲーム、ソーシャルメディア、通信アプリケーションなどを含む種々のコンピュータアプリケーションにおける使用のために、航空宇宙車両、自動運転車両、または自律型車両を使用した地形のマッピング、静止オブジェクトのマッピング、部屋や他のオブジェクトの3Dモデルの構築のような多くのアプリケーションで使用される。多くのアプリケーションでは、自律型無人航空宇宙機、有人航空宇宙車両、および自動運転車両など、0から360°の全視野(FOV)で送信ビームをスキャンすることに関心がある。
【0004】
[0004]LIDARシステムにおいて光ビームをスキャンするには、通常、可動の機械的構成要素が使用される。多くの場合、光ビームスキャン構成要素は、固定された光のビームをミラーに向けるために回転するミラーであるか、または光ビーム源が、ジンバルに取り付けられ、ジンバルが回転する。ある設計では、ミラーは、圧電素子などの電気機械的構成要素に取り付けられ、ミラーが向いている方向を変化させるように制御される。ビーム方向における変化を生み出す力を提供する機械的および/または電気的構成要素に関わらず、ミラーまたはビーム源自体の位置の物理的変化が使用される。機械的な可動部品がある場合、システムは、機械的な故障のリスクが高くなる。また、回転速度は、これらのメカニズムと、その寿命にわたって非常に多くのサイクルを実行すると予想される構成要素の通常の摩耗に関する考慮事項によって制限される。あるいは、複数のLIDARシステムを組み合わせて、0から360°の全FOVをカバーすることができる。
【0005】
[0005]可動部品がなく、低コストで、0から360°までの方位角の全範囲にわたって瞬間的なFOVを提供するLIDARシステムに対する要求が高まっている。この要求は一般に、自動運転車両のための誘導システムのみならず、地形マッピングおよび構造マッピング用のシステムを含む、有人および無人の自律型陸上、空中および海上車両用のイメージングおよび測距システムを作成したいという要望によって推進されている。しかしながら、可動部品を使用しない単一LIDARシステムで、0から360°の全投影スキャン範囲を達成することは困難である。
【0006】
[0006]LIDARシステムにおいてビームをスキャンするために、微小電気機械システム(MEMS)デバイスが適用されている。MEMSデバイスの振動の振幅は小さく、スキャンの周波数は高いため、機械的な故障のリスクは低くなるが、FOVのスキャンは、通常、制限される。光学フェーズドアレイ技術は新しい技術であるが、視野のスキャンも制限され、測距距離は比較的短い。液晶スキャナは、この目的で使用されることが知られているが、液晶のアクティブな電気的制御が必要であり、角度範囲が狭くなる。低反射SPPRデバイスの共振器効果を示す基本的な科学的研究がある。これらのシステムは、360°のFOVを提供するための多くの長所と短所を与える。しかしながら、特に高いスキャン速度で動作する場合、可動構成要素を使用せずに実質的なFOVの周りの光ビームをスキャンすることができる光学スキャナの必要性が依然として存在する。
【0007】
[0007]本開示の譲受人に譲渡され、参照により本明細書に組み込まれる、「Scanning An Optical Beam About A Field of Regard With No Moving Parts」(可動部品のない関連視野の周りの光ビームのスキャン)と題され、2018年3月22日に出願された米国特許出願第15/928,347号は、LIDARシステム用の可動部品のない0から360°のスキャンメカニズムとして、スパイラル位相プレート共振器(SPPR)を適用することを開示している。SPPRデバイスは、デバイスで光を反射するか、デバイスを介して光を透過することにより、光渦のコヒーレントな重ね合せを生成できる小型化された光学素子である。SPPRデバイスは、単一のSPPRにおける光渦の干渉に基づいているため、光渦を生成する他の一般的なデバイスと比較して、SPPRデバイスのコンパクトさ、高い電力耐性、反射または透過構成において光渦を生成する機能のみならず、振動やミスアライメントに対する回復力を含む多くの利点を有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0008]以下の議論は、LIDARシステムと、送信ビームが反射されたターゲットとの間の距離を判定するために、LIDARシステムにおいて、振幅変調された送信ビームを360°のFOVにわたってスキャンし、ターゲットから反射されたビームを処理するための方法を開示および説明し、LIDARシステムは、送信機サブシステムおよび受信機サブシステムを含む。方法は、送信機サブシステムによって第1の周波数で送信されるレーザビームを生成することと、送信機サブシステムおよび/または受信機サブシステムの重要な構成要素に影響を与える温度を判定することと、送信機サブシステムおよび/または受信機サブシステムの温度における変化を補償するために、レーザビームの第1の周波数を調整することとを含む。レーザビームは、SPPRデバイスにおいてレーザビームを前後に反射させる、対向する反射面を有する送信機サブシステムにおけるSPPRデバイスに関し、反射面のうちの1つの反射面は、スパイラルステップインデクスを含み、スパイラルステップインデクスは、SPPRデバイスの片側から放射され、光渦のコヒーレントな重ね合せを有する送信ビーム、および、SPPRデバイスの反対側から放射され、光渦のコヒーレントな重ね合せを有する処理ビームとして、異なる位相を有する複数の内部反射ビームを結合させる。SPPRデバイスからの送信ビームは、レーザビームの第1の周波数に応じて、円錐ミラーから特定の角度に送信ビームを向けるために円錐ミラーに向けられる。方法は、送信ビームが円錐ミラーから向けられる角度を変化させるために、レーザビームの光周波数を、第2の周波数にシフトさせ、所定の期間、第1の強度変調周波数を使用して、第2の周波数でレーザビームを振幅変調し、ここで、レーザビームの周波数は、ビームが360°の全FOVをスキャンするまでシフトされる。方法はさらに、受信機サブシステムにおける複数の検出器モジュールの一部である、1つまたは複数の検出器モジュールにおいてターゲットから反射ビームを受信することと、レーザビームの変調を使用して、ターゲットへの送信ビームと、ターゲットからの反射ビームとの往復時間を推定することと、他の複数の振幅変調周波数を使用して、第2の周波数でレーザビームを振幅変調することとを含む。方法は、複数の振幅変調周波数で変調されたレーザビームを、1つまたは複数の検出器モジュールと同期させ、測距パラメータを計算するために、デジタル信号プロセッサによって、送信機サブシステムの電子信号と、受信機サブシステムの電子信号との間の相関付けを提供する。
【0009】
[0009]本開示の追加の特徴は、添付の図面と併せて、以下の説明および添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】360°の全FOVを提供するためのSPPRデバイスを含むLIDARシステムの等角図である。
図2】LIDARシステムにおける送信機サブシステムの正面図である。
図3】送信機サブシステムの上面図である。
図4】LIDARシステムにおける受信機サブシステムの断面上面図である。
図5】振幅変調されたスキャン型レーザビームを送信する送信機サブシステムと、ターゲットからの反射ビームを、直接検出を使用して受信および処理する受信機サブシステムとを示すLIDARシステムの概略ブロック図である。
図6】送信機サブシステムにおいてSPPRデバイスの出力面上で送信されたレーザビームの図である。
図7】SPPRデバイスの入力面上で反射されたレーザビームの図である。
図8】送信されたレーザビームの水平方向cおよび垂直方向dの視野を示す図である。
図9】送信機および受信機サブシステムとインターフェースする中央信号プロセッサおよび二次信号プロセッサを含む、LIDARシステムにおけるプロセッササブシステムのブロック図である。
図10】送信機サブシステムにおける検出器のための信号処理要素を示す回路の概略図である。
図11】スキャンされたビームの方位を判定する送信機サブシステムにおける検出器の図である。
図12図11に示される検出器によって生成される信号の信号処理要素を示す回路の概略図である。
図13】送信機サブシステムにおいてDFBレーザビーム源の周波数を制御するための回路の概略図である。
図14】送信機サブシステムにおいてレーザビームを変調するための変調器を制御するドライバを制御するための回路の概略図である。
図15】送信機サブシステムの温度および受信機サブシステムの温度を読み取る回路のブロック図である。
図16】受信機モジュールにおけるターゲットからの反射ビームを処理するための回路の概略図である。
図17】単一ピクセル検出器にバイアス電圧入力を提供するための回路の概略図である。
図18】距離データの点群を表示するための表示システムのブロック図である。
図19図5に示されるLIDARシステムの動作を示すフローチャート図である。
図20】アルゴリズムが送信機サブシステムおよび受信機サブシステムの温度をどのように取得するかを示す方法の処理を示すフローチャート図である。
図21図5および図27に示されるLIDARシステムにおける波長へのビーム方位の内部追跡およびロックを説明するフローチャート図である。
図22】異なる単一ピクセル検出器間の切替を説明するフローチャート図である。
図23】縦軸にレーザビーム周波数掃引、横軸に時間を示すグラフであり、図5に示されるLIDARシステムにおける送信ビームおよびターゲットからの反射ビームの周波数変調を示す図である。
図24】縦軸にビート周波数、横軸に時間を示すグラフであり、周波数変調された送信ビームによる、送信されたレーザビームと、受信されたレーザビームとの間の光ビート周波数対時間の関係を示す図である。
図25】縦軸にレーザビーム周波数、横軸に時間を示すグラフであり、図5および図27に示すLIDARシステムにおける送信ビームと、360°のスキャンのための送信ビームの周波数において段階的に増加するスキャンでのターゲットからの反射ビームとの周波数変調を示す図である。
図26図25に示されるグラフの拡大部分を示す図である。
図27】周波数変調されたスキャン型レーザビームを送信する送信機サブシステムと、ヘテロダイン検出またはホモダインコヒーレント検出を使用してターゲットからの反射ビームを受信および処理する受信機サブシステムとを含むLIDARシステムの概略ブロック図である。
図28図27に示されるLIDARシステムの動作を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0038]0から360°のFOVにわたって振幅変調された送信ビームをスキャンし、ターゲットから反射されたビームを処理するための方法に関する本開示の実施形態に関する以下の議論は、本質的に単なる例示であり、開示またはその用途もしくは使用を限定することは決して意図されない。
【0012】
[0039]以下で詳細に論じられるように、本開示は、送信機サブシステム、受信機サブシステム、および信号プロセッササブシステムを含むLIDARシステムを説明する。送信機サブシステムおよび受信機サブシステムは、信号プロセッサを介して互いにフィードバックを提供するために、同期される。信号プロセッササブシステムはまた、関連する量を計算し、測距距離の点群を出力する。
【0013】
[0040]図1は、送信機サブシステム12および受信機サブシステム14を含むLIDARシステム10の等方タイプの図である。図2は、送信機サブシステム12の正面図、図3は、上面図であり、図4は、受信機サブシステム14の上面断面タイプの図である。送信機サブシステム12は、分散フィードバック(DFB)レーザなどの狭線幅のコヒーレントレーザビーム源20を含み、ここで、コヒーレントレーザビーム源20は、周波数調整され、制限されたモードホッピングを伴う過酷な環境で動作することができ、たとえば、可視IR周波数範囲において、特定の用途に応じて様々な光学構成要素を含むオプトエレクトロニクスアーキテクチャ16へ、コヒーレントレーザビーム18を放射する。たとえば、アーキテクチャ16は、レーザビーム18がレーザビーム源20に逆反射するのを防ぐための光アイソレータを含み得る。具体的には、レーザビーム源20に反射して戻される光は、レーザキャビティにおけるビームジッタを引き起こし、出力レーザビーム18の強度変動またはレーザ波長におけるスプリアス周波数シフトを引き起こし得、これは、レーザキャビティにおけるモードを不安定にし、レーザビーム源20をロックから外す。光アイソレータからのビーム18は、レーザビーム強度を変調する変調器、たとえば音響光学変調器(AOM)にファイバ結合され、駆動回路構成は、レーザパルス変調のタイミングを追跡する。アーキテクチャ16はまた、単一光学モード、たとえば、TEM00ガウスモードにおいて、ビーム18を維持する光ファイバなどの導波路を含み得る。代替実施形態では、単一モード光ファイバの代わりに他の光学素子を使用して、TEM00ガウスモードを提供することができる。アーキテクチャ16はまた、その偏光に基づいて光ビームを分離する偏光ビームスプリッタ(PBS)(以下でさらに詳細に説明する)、および偏光回転子(PR)を含み得る。この実施形態では、DFBレーザは、レーザビーム源20であるが、周波数調整可能ダイオードレーザ、周波数調整可能ファイバレーザ、外部キャビティレーザ、および分散ブラッグ反射体(DBR)レーザなどの複数の他の狭線幅またはパルスレーザ源が適切である。レーザビーム源20の出力、および場合によっては他の電気光学構成要素の電力定格に応じて、高出力電力のために、PBSの前に光増幅器を含めることができる。
【0014】
[0041]単一モードビーム18は、エタロン22を介してSPPRデバイス26に送られ、SPPRデバイス26は、360°のFOVにおいてスキャンできるように、ビーム18の形状を変更し、円錐反射体24に向けて放射し、ここで、スキャン方向は、レーザビーム18の増加または減少する光周波数に基づく。ターゲットにおけるスペックルは、円錐反射体24の周りにディフューザを使用するか、円錐反射体24の粗い表面を設計することによって回避できる。上記で参照された第15/928,347号出願は、この文脈におけるSPPRデバイス26のより詳細な説明を提供する。SPPRデバイス26は、ガラスなどの光学的に透明なブロック28と、反射材料コーティングを有するポリマ層などの段階的スパイラル反射体32とを含み、出力ビームが伝播し、デバイス26から出力されるように、十分に光学的に透過性のあるブロック28の出力側に、高さΔhを有する方位角方向に変化するステップ36を有する。この設計では、ブロック28上に反射面を提供するために、滑らかな反射材料コーティングが採用されているが、代替設計では、ブロック28におけるビーム18の反射率を提供するために、ナノスケール構造を使用できる。
【0015】
[0042]ビーム18が、表面反射率なしでブロック28を通って伝播した場合、明確に定義された回転数を有する光渦ビームが、デバイス26の出力面上に生成され、デバイス26は、スパイラル位相プレートとして機能するであろう。デバイス26の対向する表面に、有限の反射率を提供し、徐々に変化する方位角厚さを有する反射体32を提供することにより、デバイス26は、スパイラル位相プレート共振器として動作し、ビーム18は、特定の正の回転数で分離された光渦のコヒーレントな重ね合せとしてデバイス26から出力される。言い換えれば、デバイス26内のビーム18の各反射は、デバイス26から出力される固有の位相を有する個々の光渦ビームを生成する。
【0016】
[0043]受信機サブシステム14は、以下で論じられるシステム10に関連付けられた様々なプロセッサおよび電気ハードウェアを収容する円筒形状のハウジング40を含む。アバランシェフォトダイオード(APD)またはシリコン光電子増倍管(SiPM)など、高速かつ高感度の検出器44を各々含む多数の検出器モジュール42は、特定の構成でハウジング40に取り付けられ、これによって、検出器44は、任意のビーム方向で対象のターゲットから反射されたビームを検出する位置にあるように、適切な行および列におけるようなハウジング40の外面46に配置される。別の実施形態では、単一光子アバランシェフォトダイオード(SPAD)も使用することができる。各検出器モジュール42は、ハウジング40内に延びる回路基板48を含む。この実施形態では、360°の全FOVをカバーするために、36個の単一ピクセル検出器のネットワークが提供され、検出器44の列が、ハウジング40において30°離れているが、検出器の視野のために、複数の配置において、異なる数の検出器が存在し得る。
【0017】
[0044]図5は、LIDARシステム10の1つの非限定的な例を表すLIDARシステム50の概略ブロック図であり、システム50は、送信機サブシステム52と、複数の検出器モジュール56を含む受信機サブシステム54と、信号プロセッササブシステム58とを含む。送信機サブシステム52は、レーザビーム源70と、アイソレータ72と、変調器74と、導波路76と、PBS78と、PR80と、高フィネスエタロン68に取り付けられたSPPRデバイス82と、オブジェクト88までの距離を判定できるように、受信機サブシステム54によって受信される反射ビーム108としてオブジェクト88から反射され、上述した方式で360°のFOVで送信およびスキャンされたビーム86を提供する円錐ミラー84とを含む。特に示されていないが、レーザビーム源70によって生成されたレーザビーム86は、光増幅器によって増幅される可能性が高いことに留意されたい。送信機サブシステム52を通過し、送信されるすべての段階での前方伝搬レーザビームは、以下、ビーム86と呼ばれる。
【0018】
[0045]変調器74からのビーム86は、導波路76の端部においてコリメータ(図示せず)によって導波路76に、そしてPBS78にファイバ結合される。PR80は、デバイス82へのビーム86の各通過中、ビーム86の偏光を、45°回転させる。より具体的には、PR80を前方に通過し、その後、PR80を後方に通過する光ビームの場合、偏光は90°回転される。その後、ビーム86は、SPPRデバイス82に結合され、ここで、SPPRデバイス82からの弱い反射による後方伝搬ビーム122が生成され、そのために、ビーム86の方位が内部的に判定される。PR80とPBS78とが結合すると、レーザビーム源70に向かう後方伝搬ビーム122が低減する。SPPRデバイス82からの反射ビーム122は、PR80によって偏光回転されて、入射ビーム86とは異なる偏光を有し、その結果、PBS78を通って送信されるのではなく、PBS78によって反射される。SPPRデバイス82から出現する送信ビーム86は、コリメートされ、ビーム86は、円錐ミラー84から所望のFOVに反射される。
【0019】
[0046]図6は、ビーム86の方向における光領域62を示す、SPPRデバイス82の出力面における透過レーザビーム86の図であり、図7は、ヌル64を示すSPPRデバイス82の入力面における反射レーザビーム122の図であり、図8は、水平cおよび垂直dの視野を示すビーム86の図である。
【0020】
[0047]ビーム86のスキャンは、以下に従って、送信機サブシステム52におけるSPPRデバイス82によって達成される。
【数1】
ここで、φは、送信機から出現する光ビームの角度位置であり、δνは、レーザ周波数の変化であり、νは、中心レーザ周波数であり、Δhは、デバイス82の方位角ステップ高さであり、hは、基板高さである。式(1)は、ほとんどのSPPR設計に典型的であるΔh<<hを仮定し、デバイス82は均一な屈折率を有する。
【0021】
[0048]ビーム86の回転速度は、以下のように定義される。
【数2】
【0022】
[0049]上記式から、レーザビーム86のスキャン速度は、レーザビームの周波数の変化速度に正比例することが明らかである。レーザビーム源70は、非常に高速に調整できるので、調整速度は、ビーム86の360°のスキャンで例示される。
【0023】
[0050]エタロン68なしで、SPPRデバイス82の全調整範囲をカバーするようにビーム86が広げられた場合、ビーム86は360°の全FOVにおいて円錐ミラー84から同時に出現するので、スキャン分解能が低下する。エタロン68は、調整可能な広帯域レーザが使用される場合、光学フィルタとして機能するが、それにも関わらず、レーザビーム周波数調整の増分は、360°の角度内で、ビーム86の方位を変えることを可能にする。位置合わせは、送信機サブシステム52における光学構成要素によって維持される。これは、ほとんどの光学素子が互いにファイバ結合されており、PBS78からSPPRデバイス82までの光学素子間に小さなエアギャップがあるためである。これは、ビーム86の方位に関する情報を与える後方反射光学モードを保ち続けることを可能にする。エアギャップは、エバネッセント場の減衰を可能にし、内部散乱光を排除するのに十分な大きさであるが、システムをコンパクトに保つのに十分な小ささである。このエアギャップを囲む光学素子は、動きを防ぐために堅固に固定される。この位置合わせは、システムの振動が存在する場合でさえも、維持されることが期待される。
【0024】
[0051]信号プロセッササブシステム58は、送信機サブシステム52および受信機サブシステム54に入るデジタル信号を調整および合成する。これは、パルスのタイミング、変調周波数、ビーム86の大きさ、および送信機サブシステム52および受信機サブシステム54の電子信号の位相を含む。また、送信機と受信機の電子デジタル信号を、ヘテロダイン化するためのプラットフォームも提供する。言い換えれば、直接検出によって得られる送信機および受信機の信号は、信号の振幅の時間遅延を判定するために電子的に混合される。サブシステム58は、信号を生成、受信、および合成することができるフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を有するフレキシブルデジタル信号プロセッサ(DSP)を含み得る。FPGAデジタルプロセッサは、組み込まれた有限パルス応答フィルタ(および、他のフィルタ)、高速フーリエ関数、離散コサイン関数のみならず、乗算結果を効率的に組み合わせるための組み込まれた加算、減算、および累積ユニットを有する。プロセッサはまた、送信機サブシステム52および受信機サブシステム54と通信するための複数の入力/出力インターフェース、ならびに外部メモリ、および他の制御のためのインターフェースを有する。複数のFPGAを並列に接続して、処理を高速化できる。別の実施形態では、マイクロコントローラユニットまたはグラフィックプロセシングユニット(GPU)を、デジタル信号プロセッサ、またはデジタル信号プロセッサの一部として使用できる。
【0025】
[0052]送信機サブシステム52および受信機サブシステム54における構成要素とインターフェースするいくつかの二次信号プロセッサがある。二次プロセッサは、いくつかのアルゴリズムを使用して信号出力を計算する、中央信号プロセッサに接続される。図9は、中央信号プロセッサ90と、レーザビーム源70および変調器74を制御する二次信号プロセッサ92と、以下に詳細に論じられる検出器信号を受信および処理する二次信号プロセッサ94と、また以下に詳細に論じられる送信機サブシステムおよび受信機サブシステムの温度センサから温度信号を受信する二次信号プロセッサ96と、受信機サブシステム54を制御する二次信号プロセッサ98とを含む、信号プロセッササブシステム58のブロック図である。様々なプロセッサクロックも、適切なタイミングのために同期される。システム50において診断を実行するための中央信号プロセッサ90への入力もある。
【0026】
[0053]二次信号プロセッサ92、94、および96と連携して中央信号プロセッサ90によって実施される選択アルゴリズムは、0から360°まで送信ビームをスキャンし、受信機サブシステム54によって反射ビーム108を検出するアルゴリズムと、ビーム位置の内部追跡のためのアルゴリズムと、異なる単一ピクセル検出器を切り替えるためのアルゴリズムと、送信機サブシステム52および受信機サブシステム54の温度を報告するためのアルゴリズムとを含む。信号プロセッサ92と中央信号プロセッサ90との交換は、レーザビーム86の周波数のスキャン、ならびに変調器74のタイミングを制御する。二次信号プロセッサ94と中央信号プロセッサ90との交換は、以下に論じるように、送信機サブシステム52における検出器の積分時間、ならびに送信ビーム86の初期方位の判定、およびビーム86の波長に対するビーム方位の定期的な較正およびロックを制御する。中央信号プロセッサ90と二次信号プロセッサ96との交換は、検出器モジュール56における検出器を制御し、これは、検出器モジュール56間の切替のためのバイアス電圧、ならびに反射ビーム108のタイミングおよび利得を含む。検出器モジュール56の積分時間は、可変である可能性がある。二次信号プロセッサ98と中央信号プロセッサ90との交換は、送信機サブシステム52および受信機サブシステム54のチップ温度を読み取り、温度によって引き起こされる変化を補正する。信号プロセッサ92、94、96および98は、中央信号プロセッサ90を介して情報を交換することに留意されたい。これらのアルゴリズムのより詳細な議論は、この議論の後半で与えられる。
【0027】
[0054]PBS78からの反射ビーム122は、ビームスプリッタ100によって分割され、分割ビームのうちの1つの分割ビームは、検出器102に送られ、他の分割ビームは、送信機サブシステム52におけるいくつかの検出器106を含む検出器アセンブリ104に送られる。検出器102は、高速ダイオードなどの高速検出器であり、SPPRデバイス82におけるビーム86のタイミングおよび強度変調のみならず、発生する可能性のあるエタロン68の自由スペクトル範囲における変化による縦モードにおける任意のシフトを追跡する。検出器102からの電気信号は、二次信号プロセッサ94に送られる前に、回路110によって調整される。
【0028】
[0055]図10は、検出器102からの電気信号を処理する回路110の概略図であり、ここで、検出器102は、ダイオード112として示され、二次信号プロセッサ94は、信号プロセッサ114として示される。ダイオード112からの電気信号は、トランスインピーダンス増幅器(TIA)116によって増幅され、帯域通過フィルタ118によって帯域通過フィルタリングされ、その後、アナログ-デジタル変換器(ADC)120によってデジタル信号に変換される。検出器102からの電気信号は、レーザビーム源70に提供される信号を変更し、受信機サブシステム54の一部を選択する。送信機サブシステム52からの電気信号のいくつかは、距離範囲判定および誤り訂正のために、受信機サブシステム54における適切な検出器モジュール56からの電子信号と混合される。
【0029】
[0056]円錐ミラー84からFOVに反射されるときのビーム86の角度方位は、検出器アセンブリ104によって内部的に測定される。より具体的には、方位角度は、SPPRデバイス82からの弱い後方反射を測定することによって内部的に測定される。検出器アセンブリ104は、ビームの方位角をリアルタイムで認識するための、ならびに波長を較正し、送信ビーム86の角度位置にロックするための内部メカニズムを形成する。二次信号プロセッサ94に提供されるフィードバックはまた、受信機サブシステム54における検出器モジュール56間の適切なパワーサイクリングを可能にする。
【0030】
[0057]図11は、反射ビーム122を分割するビームスプリッタ100を示す検出器アセンブリ104の概略図である。反射ビーム122は、その後、GRINレンズなどの短焦点距離レンズ130を使用して、回折遠方場に投射される。アパーチャデバイス132は、レンズ130の後ろに配置され、高速ダイオードなどの8つの単一ピクセル検出器136に個別にファイバ結合された8つのアパーチャ134を含む。レーザビーム86の周波数は、ある周波数から別の周波数に調整されるので、光は、1つまたは複数のアパーチャ134を通過しない。各アパーチャ134は、対応する検出器136にファイバ結合されているので、ヌル64を読み取る検出器136は、ビームの方位角を示し、したがって、検出器136は、ビーム86の対応するスキャン投影角度も読み取る。
【0031】
[0058]検出器アセンブリ104は、45°離された8つの検出器136を含むが、多かれ少なかれ単一ピクセル検出器と、アパーチャとの組合せが、存在し得る。精度および正確さを向上させるために、アパーチャと検出器との組合せを、非対称方式で、円に沿って配置することができる。つまり、一部のアパーチャと検出器との組合せは、45°離されているが、他は、より重要な数字で、より小さな、またはより大きな角度で離される。このようにして、これらの角度がわかれば、ビームの正確な初期方位もわかる。
【0032】
[0059]検出器136からの電気信号は、二次信号プロセッサ94に送られる前に処理される回路140に提供される。図12は、特定の要素を示し、各検出器136のための検出器モジュール144と、二次信号プロセッサ94を表す信号プロセッサ146とを含む回路140の概略図である。各検出器モジュール144は、検出器モジュール144からの信号を受信および増幅するトランスインピーダンス増幅器148と、増幅された信号をフィルタリングする帯域通過フィルタ150と、増幅およびフィルタリングされた信号をデジタル信号へ変換するアナログ-デジタル変換器(ADC)152とを含む。すべての検出器モジュール144からのデジタル信号は、信号プロセッサ146に送られ、その結果、システム50は、レーザビーム源70からのレーザビーム86の波長が変化するときにビーム86の方位を知る。
【0033】
[0060]二次信号プロセッサ92は、信号をレーザビーム源70に送り、回路160を介してビーム86の周波数を調整する。図13は、回路160の概略図であり、二次信号プロセッサ92を表す信号プロセッサ162と、レーザビーム源70を表すダイオード164とを示す。信号プロセッサ162からのデジタル調整信号は、DAC166によってアナログ信号に変換され、その後、FETスイッチ170を制御して、ダイオード164に電力を供給する相互コンダクタンス増幅器168によって増幅される。指定された開始時間において、DFBレーザの波長は、ダイオード164へのダイオード電流を変えるか、または、適切なコマンド信号を介して調整される。
【0034】
[0061]変調器74は、レーザビーム86の振幅または強度変調を提供する。変調器74を駆動する信号はまた、二次信号プロセッサ92によって生成され、回路174およびドライバ176を介して変調器74に提供され、回路170は、プロセッサ92からのデジタル信号をアナログ信号へ変換するためのDACを含む。レーザビーム86は、AOMによって直接強度変調することができるか、またはマッハツェンダ変調器を使用して、さらに高い帯域幅で強度を変調できることに留意されたい。AOMと同様に、バイアスがマッハツェンダ変調器に適用される。
【0035】
[0062]図14は、回路174の代わりに使用することができる回路180の概略図であり、プロセッサ92からデジタル信号を受信する振幅変調器182、振幅変調信号を受信するミキサ184、および変調信号を増幅する無線周波数増幅器186を含む。
【0036】
[0063]温度センサ190は、送信機サブシステム52の温度を測定し、各検出器モジュール56における温度センサ192は、受信機サブシステム54の温度を測定する。温度測定値は、クロックジェネレータ196を含む、図15に一般的に示される回路194に提供される。送信機サブシステム52からの温度の定期的な更新は、レーザビーム86の波長を調整して、SPPRデバイス82およびレーザビーム源70が受ける遅い熱ドリフトを補償する。エタロン68からの後方反射はまた、縦モードにおけるシフト、すなわち、測距のために、強度変調の高速時間スケールと比較して非常に遅い時間スケールでの、SPPRデバイス82の自由スペクトル範囲における変化を通じて、同様の情報を提供する。特殊なアルゴリズムを使用すると、SPPRデバイス82における熱光学効果によって、有害な測定値が得られるとは考えられない。これは、ビーム86を回転させるためにレーザビーム周波数が変化する時間スケールが、SPPRデバイス82の温度誘導膨張が存在する時間スケールよりもはるかに高速であるためである。温度を読み取って、熱的に誘発される可能性のあるレーザ周波数シフト、およびSPPRデバイス82の膨張を補正するための1つのアルゴリズムが、この説明の後半で論じられる。
【0037】
[0064]送信機サブシステム52からのビーム86は、オブジェクト88に移動し、反射ビーム108として反射して受信機サブシステム54に戻され、そこで1つまたは複数の検出器モジュール56によって検出される。狭帯域通過光学フィルタ200は、モジュール56の各々の前に配置され、たとえば日光のような、周囲の任意の背景光を大幅に低減する。レーザビーム86の周波数は、送信ビーム86の方向を変化させるために、中心レーザ周波数νと比較して比較的狭い範囲Δνにわたって調整される。これは、SPPRデバイス82に入る光周波数
【数3】
におけるわずかな変化によって定量化できる。送信機サブシステム52から出現する狭周波数範囲は、帯域通過フィルタ200が1nmよりもはるかに狭くなることを可能にし、したがって、かなりの背景光を戻す。レンズ202は、各モジュール56における単一ピクセル検出器204の前に配置され、検出器のFOVを拘束し、したがって、たとえば日光のような背景光をさらに低減する。代替実施形態では、レンズ202からの光は、光ファイバを介して各検出器204に結合される。
【0038】
[0065]検出器204からの電気信号は、図16に示される回路210を介して二次信号プロセッサ98に送られ、ここで、信号プロセッサ98は、信号プロセッサ214によって示され、検出器204は、ダイオード212によって示される。特に、ダイオード212からの信号は、トランスインピーダンス増幅器(TIA)216および可変利得増幅器(VGA)218によって増幅され、ここで、VGA218は、信号プロセッサ214から利得信号を受信し、帯域通過フィルタ226によってフィルタリングされ、その後、ADC222によってデジタル信号に変換される。
【0039】
[0066]二次信号プロセッサ98は、VGA218を介して検出器204の適切な利得レベルを、回路224を介して検出器204の適切な変調バイアスを判定して、検出器204をオンまたはオフにする。図17は、回路224の概略図であり、信号プロセッサ214からの変調バイアス信号が、DAC226によってアナログ信号に変換され、その後、ダイオード212に送られる前にTCA228によって増幅されることを示す。検出器204を適切な時間にオンおよびオフにすること、すなわち、パワーサイクリングは、低電力動作のために重要である。別の実施形態では、時間デジタル変換器(TDC)を使用して、パルス到着時間を信号プロセッサのデジタル出力に直接変換することができる。
【0040】
[0067]中央信号プロセッサ90は、距離発見情報をディスプレイ230に表示する。図18は、距離発見情報をどのように表示できるかを示すシステム232の概略ブロック図である。信号プロセッサ234によって表される信号プロセッサ90からのデータは、データを周波数領域に変換する高速フーリエ変換(FFT)モジュール236に、その後、記憶のために、メモリアレイ238に送られる。メモリアレイ238からのデジタルデータは、その後、DAC240によってアナログデータに変換され、その後、VGA242によって増幅され、ディスプレイ244に表示される。
【0041】
[0068]いくつかの0から360°のFOV LIDARシステムのために、異なる送信機エミッタと、受信機検出器との間にクロストークが発生する可能性があり得、この場合、1つのレーザ源から放射された光が、別の検出器によって誤って受信される。送信機におけるSPPRデバイスに基づく360°のFOV LIDARシステムは、360°の全FOVにおいてレーザビームをスキャンできる送信機が1つしかないため、この問題を軽減し、外向きに伝搬するビームの各角度は、対応する受信機角度FOVにロックされる。レーザビームがスキャンされるときに異なる受信機検出器204を切り替えることにより、クロストークを防止し、したがって、距離範囲推定における誤った値を低減する。
【0042】
[0069]システム50がビーム86を0から360°までスキャンし、オブジェクト88からの反射ビーム108を検出できるように、レーザビーム源70は、周波数υでレーザビーム86を生成し、これは、角度φ1でミラー84から反射されたビーム86の方位に対応し、ここで、ν∝φ∈[0,2π]である。周波数υは、角度φにおいてビーム方位を得るためのレーザビーム86の第1の周波数である。温度補償後、信号プロセッサ92は、ソース70のダイオード電流を増減するコマンド信号を送り、レーザビーム86の周波数を周波数υに変化させる。その後、周波数υにおいて、レーザビーム86は、N個の変調された強度パルスを用いて、時間τの間、変調器74によって、変調周波数Ωで振幅または強度変調される。レーザビーム周波数υは、送信機サブシステム52から伝搬する明確に定義されたビーム角度φに対応する。プロセッサ92におけるクロックは、信号を送信機の光学構成要素、すなわち、レーザビーム源70および変調器74へ送り、N個のパルスまたは変調を生成する。この電子信号はまた、プロセッサ94、96と同期され、プロセッサ94、96は、電子信号を送り、受信機サブシステム54における関連する検出器モジュール56をオンおよびオフにする。マルチパス干渉の緩和を含む高い信号対雑音比を保証するために、変調器74は、レーザビーム周波数υに対して、いくつかの異なる強度変調周波数、すなわち、Ω、Ω、Ω、...で変調され、レーザビーム86は、受信機サブシステム54において「オン」である検出器モジュール56と同期される。後述する図21を参照されたい。その後、距離範囲は、送信機サブシステム52においてビーム86を変調するために送られた電子デジタル信号と、検出器モジュール56の列に入射して返された光強度から判定される受信機サブシステム54からの電子デジタル信号受信機信号と、信号プロセッサ92によって内部的に生成された基準信号との相互相関から計算される。場合によっては、基準信号は、変調された電子送信信号と同じである。この相互相関は、デジタル信号プロセッサ92によって実行され、送信された信号と、受信された信号との間の位相を追跡し、その結果、オブジェクト88までの距離を計算する。上記のステップは、レーザビーム86が0から360°すべてを描く、すなわち、φ、φ、φ、..、φ=2πradまで、レーザビーム86の周波数υ、υ、υ、..、υについて繰り返される。送信ビーム86を反射するターゲットまでの測距のための点群が計算され、表示される。横方向の分解能を改善する目的で、ビーム86をスキャンしている間、レーザビーム周波数を各角度でディザリングすることができる。
【0043】
[0070]ビーム86の方位反射角は、送信機サブシステム52において内部的に追跡される。SPPRデバイス82からのビーム86の後方反射は、SPPRデバイス82の出力面上のビーム方位を示す。各高速検出器136の位置は、送信機サブシステム52から出現するビーム86の角度φに対応する。高速検出器136のうちの1つの高速検出器136は、後方反射ビーム、すなわちヌル信号を読み取り、ビーム角度位置を信号プロセッサ94に報告する。検出器光信号からのデジタル信号と、特定のレーザ周波数に対応するデジタル信号(レーザ電流)との間の重み付けられた相互相関は、SPPRデバイス82の出力面上の方位に波長をロックするプロセッサ92によって実行される。これは、ビーム方位を波長に動的にロックするスキームである。良好な測定の場合、システム50から出現する送信ビーム86の位置が報告される。不良な測定の場合、レーザビーム86の周波数は増分で調整され、良い測定が得られるまでステップが再度実行される。この動作を実行する時間は、ビーム86が360°の全スキャンを行うのに費す時間よりも短くする必要がある。最初の較正測定後、この測定は、360°のFOVにわたるビーム86のスキャン内で、連続する時間間隔で実行される。これは、送信機サブシステム52から出現するビーム86の正確で高精度な角度、ならびに検出器204の適切なパワーサイクリングを保証する。
【0044】
[0071]アルゴリズムは、送信機サブシステム52から放射されるビーム86の角度位置に応じて、受信機サブシステム54における単一ピクセル検出器204のうちの別の単一ピクセル検出器204を、オン状態およびオフ状態に切り替える。レーザビーム源70に入る電流またはコマンド信号に対応するレーザビーム86の特定の周波数について、プロセッサ92は、レーザビーム86の現在位置を、レーザビーム86の新しい位置に変化させる。新しい検出器位置に対応するバイアス電圧がオンになり、古い検出器位置に対応するバイアス電圧がオフになる。検出器モジュール56の列が、反射ビーム108からあまりにも多くの光を受け取る場合、アルゴリズムはより短い期間で完了し、送信機サブシステム52からのビーム86のピーク強度を低減する。検出器204が反射ビーム108から受け取る光が少なすぎる場合、アルゴリズムはより長い期間で完了する。アルゴリズムは、スキャン角度ごとに短時間の完了と長時間の完了とを交互に行う。これにより、高い動作速度を保証しながら、より多くのノイズ源を排除できる。
【0045】
[0072]温度の変化を報告するために、デジタル信号プロセッサ96は、センサ190、192から初期温度を読み取る。これらの測定値から、SPPRデバイス82における縦モードの数および幅が推定され、そのために、SPPRデバイス82の自由スペクトル範囲が計算される。SPPRデバイス82における縦モードにおける変化またはシフト、ならびにサブシステム52、54それぞれにおけるセンサ190、192からの温度の変化について、アルゴリズムは、送信機サブシステム52におけるレーザビーム86の周波数と、受信機サブシステム54における検出器モジュール56のバイアス電圧とを調整する。温度が読み取られる時間間隔は、送信機のスキャン速度から判定される。
【0046】
[0073]上記の議論は、以下のフローチャート図で示される。図19は、上記で論じたようなLIDARシステム50の動作を示すフローチャート図250である。ボックス252において、アルゴリズムは、ボックス254において提供された送信機サブシステム52および受信機サブシステム54の個々の重要な構成要素のいくつかの温度に基づいて、レーザビーム源70によって生成されるレーザビーム86の光周波数υを設定する。温度を判定する目的は、光学および電気光学構成要素のみならず、電子構成要素に熱光学効果を引き起こす温度におけるあらゆる変化が、適切に補償されることを保証するためである。ほとんどの電子構成要素には、デジタル信号プロセッサを含む温度センサがすでに組み込まれている。
【0047】
[0074]図20は、アルゴリズムが、送信機サブシステム52および受信機サブシステム54の温度を、どのように取得し得るのかに関する処理を示すフローチャート図260である。二次信号プロセッサ96において動作するアルゴリズムは、ボックス262において、センサ190、192から温度測定値を読み取り、二次プロセッサ94において動作するアルゴリズムは、ボックス264において、検出器102、104の出力を読み取る。その後、アルゴリズムは、ボックス266において、SPPRデバイス82における縦モードの数および幅を推定する。この測定値から、SPPRデバイス82の自由スペクトル範囲を判定できる。自由スペクトル範囲からのSPPRデバイス82における縦モードにおける変化もしくはシフト、またはセンサ190、192からの温度測定がある場合、アルゴリズムは、ボックス268において、受信機サブシステム54において、レーザビーム86の周波数と、検出器モジュール56のバイアス電圧とを変化させる。アルゴリズムは、その後、ボックス270において、ビーム86のスキャン速度によって判定された速度で温度を読み取る。
【0048】
[0075]図19に戻って示すように、アルゴリズムは、その後、ボックス272において、ビーム86の光周波数を周波数υにシフトさせ、その後、時間τの間、強度変調周波数Ωでビーム86を強度変調する。アルゴリズムは、その後、ボックス274において、オブジェクト88に向かって送信される強度変調ビーム86を内部的に追跡する。
【0049】
[0076]図21は、アルゴリズムがビーム86の内部追跡をどのように提供するかを示すフローチャート図280である。アルゴリズムは、ボックス282において、SPPRデバイス82からの反射ビーム122を監視し、ボックス284において、検出器204をオン状態にし、ボックス286において、検出器204のうちの1つの検出器204で、反射ビーム108を読み取る。アルゴリズムは、その後、ボックス288において、検出器デジタル信号と、レーザビーム周波数υに対応する信号との重み付けされた相関付けを提供する。アルゴリズムは、その後、ボックス290において、良好な測定の場合、レーザビーム86の角度位置を報告し、不良な初期測定の場合、レーザビーム86の周波数にシフトさせ、再度測定を行う。初期較正後、アルゴリズムは、ボックス292において、連続した間隔で測定値を報告する。
【0050】
[0077]再び図19に戻って示すように、アルゴリズムは、ボックス294において、プロセッサ90、92、94、96、98、114、146、162、214、および234におけるクロックと、送信機サブシステム52および受信機サブシステム54におけるオプトエレクトロニクス構成要素における電子構成要素とを同期させる。その後、アルゴリズムは、ボックス296において、複数の強度変調周波数Ω、Ω、Ω、...、Ωにおいてレーザビーム86を体系的に強度変調し、強度変調されたレーザビーム86を、検出器モジュール56と同期させる。この同期は、プロセッサ90、92、94、96、98、114、146、162、214、および234が、オン状態の検出器204に電子信号を送信して、プロセッサへの戻り電子信号が存在する戻り光強度パルスを受信し、信号をレーザビーム源70および変調器74に送信することによって発生する。アルゴリズムは、その後、ボックス298において、オブジェクト88への測距パラメータを計算するために、電気光学素子信号、すなわち、送信機サブシステム52におけるレーザビーム源70および変調器74、受信機サブシステム54における検出器204の信号と、信号プロセッサ90によって生成された基準信号との間の相関付けを実行する。その後、ボックス252、272、204、296、および298からの処理が、360°のFOVのために、様々なレーザビーム周波数υ、υ、υ、...、υに対してボックス300において繰り返される。この動作は、検出器モジュール56における別の検出器モジュール56を使用する必要があり、ボックス302では、モジュール56間の切替が行われる。
【0051】
[0078]図22は、検出器204のうちの別の検出器204間で切替またはパワーサイクリングするための処理を示すフローチャート図304である。ボックス306において、アルゴリズムは、フローチャート図280から得られたビームの角度位置を報告する。各レーザ周波数において、検出器204の1つまたは複数の列は「オン」状態にあり、他の検出器204は「オフ」状態にある。検出器204のネットワークにおける「オン」状態と「オフ」状態との間のパワーサイクリングは、電力損失を低減し、その結果、構成要素の内部加熱を低減する。レーザビーム86の周波数変化に比例する、送信されたレーザビーム86の空間位置は、レーザビーム86の角度スキャン中にそれらの「オフ」状態から「オン」状態になる検出器204の列を判定する。これは、信号プロセッサ98が回路224を介してバイアス電圧を返し、検出器モジュール56の切替動作を実行する、送信機サブシステム52における検出器アセンブリ104からの内部信号の合成によって行われる。これらの単一ピクセル検出器の応答速度は、数十メガヘルツを超え、したがって、検出器204間のパワーサイクリングは非常に高速である。アルゴリズムは、その後、ボックス308において、検出器204の適切な列をオンにし、ボックス310において、反射ビーム108を受信する。アルゴリズムは、ボックス312において、スキャン動作中、新しい検出器の位置に対応するバイアス電圧をオンにし、古い検出器の位置をオフにする。完了時間は、ボックス314において、異なる受信光レベルに対して変化する。その後、ボックス316において、オブジェクト88の測距点群が計算され、表示される。
【0052】
[0079]上記で論じたシステム50は、レーザビーム86の振幅または強度変調を使用して、オブジェクト88の距離範囲点群を抽出する。代替実施形態では、システム50は、レーザビーム86の周波数変調を使用することによって、オブジェクト88の距離範囲点群を抽出するように変更できる。ターゲットの範囲および速度を得るために、LIDARシステムにおいてレーザビームを周波数変調することは、当該技術分野で知られている。しかしながら、本開示は、その技法を、SPPRデバイス82と組み合わせて、可動部品なしで360°のスキャンを提供する。周波数変調方法の利点は、同じ光信号から距離と速度、最も重要なことには、長距離かつ高分解能の測距の情報を明確に抽出することを含む。この実施形態では、変調器74は、ビーム86のオブジェクト88への移動時間およびその逆の移動時間に対してレーザビーム86を振幅変調しないが、ビーム86の強度を、長い方形パルスで変調することによってビーム86に周波数バイアスを加え、ノイズ除去およびタイミング同期のために、送信されたレーザビーム86および反射されたビーム108をゲート制御するのに役立つ。
【0053】
[0080]ビーム周波数変調を適用するこのタイプのLIDARシステムでは、レーザビーム86の周波数は、ΔF=F-Fの周波数範囲にわたって線形三角波形によって変調され、ここで、FおよびFはそれぞれ、ビーム86の波形の開始(低)周波数および停止(高)周波数である。レーザビーム86を送信してから、反射されたビーム108を受信するまでの時間遅延Δtおよびレーザ掃引速度slaser
【数4】
は、周波数fDisからオブジェクト88までの距離範囲Dを判定するために使用され、ここで、
【数5】
であり、ここで、Cは光の速度であり、
【数6】
は、三角波形でレーザビーム周波数を変調するための時間または期間であり、fDisは、中間レーザビーム周波数fIF1、fIF2から判定され、fmodは、一定の期間にわたってレーザビーム86を駆動する波形の変調周波数である。
【0054】
[0081]オブジェクト88が静止している場合、1つの中間周波数fIF1が存在するが、オブジェクト88が移動している場合、2つの中間周波数fIF1、fIF2が存在し、中間周波数fIF1、fIF2は、オブジェクト88への送信ビーム86と、オブジェクト88からの反射ビーム108との混合された光信号を表すビート周波数から判定される。オブジェクト88までの距離は、中間周波数fIF1、fIF2の平均から以下のように判定される。
【数7】
【0055】
[0082]オブジェクト88が動いている場合、オブジェクト88の速度は、以下のように、ドップラシフトによる中間周波数fIF1、fIF2における差に関連している。
【数8】
ここで、fDopplerは、ドップラシフト周波数、Vは、オブジェクト88の速度であり、νは、レーザビーム86の中心周波数である。
【0056】
[0083]連続またはパルス状の三角波形で周波数変調された送信レーザビーム86と、上記の議論に基づいて得られた反射ビーム108との関係は、図23のグラフに示され、ここで、時間は横軸にあり、周波数は縦軸にある。変調周波数範囲ΔFにわたる特定のビーム角度周波数νにおけるレーザビーム86の変調は、グラフ線320によって示され、反射ビーム108は、グラフ線322によって示され、ここで、slaserは、線320、322の勾配である。図24は、横軸に時間、縦軸にビート周波数を示すグラフであり、経時的なビーム86、108におけるビート周波数を示す。中間周波数fIF1、fIF2は、オブジェクト88からの反射ビーム108の、送信ビーム86との混合または相関付けから判定される。オブジェクト88からの反射ビーム108はまた、基準信号を提供する局部発振器と相関付けることができる。線320、322と中間周波数fIF1、fIF2との間の時間遅延Δtは、オブジェクト88までの距離を判定するために使用され、ドップラシフト周波数fDopplerは、オブジェクト88の速度を判定するために使用される。
【0057】
[0084]周波数変調を提供するために、レーザビーム源70によって生成されるビーム86の周波数を制御するダイオード電流は、レーザビーム86の狭線幅周波数を変化させ、したがって、送信したレーザビーム86を360°のFOVにおいて回転させるように調整され、ここで、レーザビーム86のコヒーレンス長さは、測距距離の少なくとも2倍でなければならない。SPPRデバイス82の設計パラメータに応じて、周波数調整範囲Δυは、360°にわたってレーザビーム86をスキャンするために、数十GHzから数百GHzの範囲である可能性がある。信号プロセッササブシステム58は、レーザビーム源70にレーザビーム86を生成させ、それにより、レーザビーム86が360°のFOVに投射されるように、周波数がステップ状かつランプ状に、線形的に系統的に増加する。信号プロセッササブシステム58はまた、線形的に増加するレーザビーム周波数ランプ上に小さな三角変調波形を配置して、各ビーム周波数υで、レーザビーム86を周波数変調し、ここで、この三角波形の周波数範囲ΔFは、数十MHzのオーダであり、変調量は、ビーム86がミラー84から反射される角度を大幅に変化させる。これは、高い横方向分解能を可能にし、距離測定のために、送信したレーザビーム86の周波数と、反射したビーム108の周波数との間のビート周波数を得ることを可能にする。
【0058】
[0085]このビーム周波数および変調制御は、送信したレーザビーム86の周波数が、周波数範囲Δυにわたって、周波数においてステップ状に増加すると、ビーム86は、三角波形で変調されることを示す図25および図26のグラフによって示される。グラフ線324は、送信したレーザビーム86であり、グラフ線326は、反射したビーム108であり、図25のグラフは、図26におけるグラフの拡大部分である。
【0059】
[0086]信号プロセッササブシステム58は、送信したビーム86と、反射したビーム108との間の時間遅延Δtを得る。直接検出の場合、信号プロセッササブシステム58はまた、検出器102、106、および204からの送信および受信周波数領域チャープパルスの電子信号を混合し、信号の高速フーリエ変換(FFT)を計算して、中間周波数fIF1、fIF2を抽出する。ビーム86を360°の角度にわたって回転させるように周波数調整された変調ビームのビート周波数は、同様の形状を有するであろう。その後、オブジェクト88までの距離およびオブジェクト88の速度を計算できる。
【0060】
[0087]LIDARシステム50は、ビーム86を強度変調するか周波数変調するかに関わらず、説明したように、受信機サブシステム54における反射ビーム108の直接検出を提供する。しかしながら、受信機サブシステム54は、コヒーレント検出を提供する平衡受信機と置き換えることができる。言い換えれば、送信ビーム86および反射ビーム108は、システム50において、ビーム同期および相関付けの目的のために電気的に混合される。しかしながら、送信ビーム86および反射ビーム108は、同じ目的のために光学的に混合することもできる。
【0061】
[0088]図27は、上記で論じた方式でレーザビーム86の周波数変調を提供するLIDARシステム330の概略ブロック図であるが、送信機サブシステム52および受信機サブシステム54は、直接検出の代わりに、送信ビーム86と反射ビーム108とを光学的に混合するために、反射ビーム108のヘテロダインまたはホモダインのコヒーレント検出を提供するように変更され、システム50と同様の要素は、同じ参照番号によって識別される。この実施形態では、ビームスプリッタ100からの分割ビームと、レンズ202からの反射ビーム108とは、送信ビーム86と反射ビーム108とが互いに干渉するように、送信機サブシステム52における3dBカプラなどの50-50ビームスプリッタ332においてコヒーレントにまたは光学的に混合される。その後、混合ビームは、ビーム追跡を提供する、送信機サブシステム52における検出器102に送られ、戻りビーム検出を提供する、受信機サブシステム54における検出器204へ送られる。検出器102、204からの信号は、信号プロセッササブシステム58に送られ、信号プロセッササブシステム58は、検出器102、204からの混合信号に対してFFTを実行して、信号を周波数領域に変換し、時間の関数としてビート周波数を生成する。その後、サブシステム58は、ビート周波数から中間周波数fIF1、fIF2を推定し、これらは、本明細書で論じられた方式で、オブジェクト88までの距離およびオブジェクト88の速度を判定するために使用される。代替実施形態では、ビーム86は、上記のように強度変調することができ、ビーム86およびビーム108は、ビームスプリッタ332を使用して光学的に混合できることに留意されたい。さらに、ビーム86の回転(角度および回転速度)を内部的に追跡するための技法、および検出器204のパワーサイクリングは、コヒーレント検出技法と、反射ビーム108の直接検出技法との両方についてほぼ同じである。
【0062】
[0089]図28は、システム50に関連付けられた直接検出技法と、システム330に関連付けられたコヒーレント検出技法との両方のために、ビーム86の周波数変調を使用して、オブジェクト88までの距離およびオブジェクト88の速度を判定するために、信号プロセッササブシステム58で実行される動作およびアルゴリズムを示すフローチャート図340である。ボックス342において、アルゴリズムは、ミラー84からのビーム86の開始角度φを提供する送信機サブシステム52および受信機サブシステム54の個々の重要な構成要素の温度に基づいて、レーザビーム源70によって生成されるレーザビーム86の周波数υを設定する。レーザビーム86の周波数は、ボックス344において、ミラー84からのビーム86の角度φを調整するために、周波数υである次の周波数ステップにシフトされる。周波数υにおけるビーム86は、ボックス346において、周波数範囲ΔFにわたって変調周波数fmodにおいて三角波形で変調され、ここで、変調周波数fmodの範囲ΔFは、ΔF<<Δυであり、これは、測距中に、ビーム86が、オブジェクト88を外れることを阻止する。たとえば、システム50または330は、変調周波数fmodの範囲ΔFが、数十または数百MHzのオーダであり、360°の全FOVスキャンを提供するためのレーザビーム86の周波数範囲Δυにおける変化は、数十GHzまたは数百GHzであるように設計できる。
【0063】
[0090]ビーム86が現在設定されている周波数υは、ボックス348において、検出された反射ビーム108から差し引かれ、これは、変調周波数fmodを残す。その後、アルゴリズムは、ボックス350において、オブジェクト88から差し引かれた反射ビーム108を、送信ビーム86と混合し相関付ける。混合は、上記で論じたように、コヒーレント検出の場合は光学領域で、直接検出の場合は電子領域で実行される。アルゴリズムは、ボックス352において、混合ビームを表す信号のFFTを計算して、信号を周波数領域に変換し、ボックス354において、時間の関数として混合およびフーリエ変換された信号におけるビート周波数を判定し、ボックス356において、ビート周波数から中間周波数fIF1、fIF2を特定し、ボックス358において、オブジェクト88までの距離を判定するために、ビート周波数から、送信ビーム86と反射ビーム108との間の時間遅延Δtを推定し、ボックス358において、オブジェクト88の速度を判定するために、ビート周波数からのドップラシフト周波数fDopplerを判定する。アルゴリズムは、その後、判定ダイヤモンド360において、360°のスキャンが完了したか否かを判定し、完了していないと判定すると、360°の全FOVが掃引されるまで、ミラー84を反射するビーム86の角度φを変化させるために、次のステップの周波数υ-υのためにボックス344に戻る。ボックス346~358におけるステップは、各ステップ周波数υについて繰り返され、判定ダイヤモンド360において360°のスキャンが完了すると、ボックス362において、オブジェクト88の測距点群および速度が計算され表示される。
【0064】
[0091]前述の議論は、単に、本開示の例示的な実施形態を開示および説明しているに過ぎない。当業者は、そのような議論から、ならびに添付の図面および特許請求の範囲から、以下の特許請求の範囲で定義される開示の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変化、修正、および変形を行うことができることを容易に認識するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28