(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】触媒貴金属粒子
(51)【国際特許分類】
B01J 23/44 20060101AFI20240411BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20240411BHJP
B01J 37/03 20060101ALI20240411BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
B01J23/44 A ZAB
B01D53/94 280
B01J37/03 B
F01N3/28 301A
F01N3/28 301Q
(21)【出願番号】P 2022100625
(22)【出願日】2022-06-22
【審査請求日】2023-09-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100122404
【氏名又は名称】勝又 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】野口 貴弘
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-131086(JP,A)
【文献】特開2020-131111(JP,A)
【文献】特表2010-534572(JP,A)
【文献】特開2018-141235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/94
F01N 3/00 - 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Pt及びPdを含む合金から成る排ガス浄化用触媒貴金属粒子であって、
前記触媒貴金属粒子における、Pt及びPdの合計質量に対するPt質量の比(Pt/(Pt+Pd))で表される組成の標準偏差σ
COMが3.0質量%以下である、
触媒貴金属粒子。
【請求項2】
前記組成の標準偏差σ
COMが2.5質量%以下である、請求項1に記載の触媒貴金属粒子。
【請求項3】
前記組成(Pt/(Pt+Pd))が、1.0質量%以上70質量%以下である、請求項1に記載の触媒貴金属粒子。
【請求項4】
前記組成(Pt/(Pt+Pd))が、3.0質量%以上40質量%以下である、請求項3に記載の触媒貴金属粒子。
【請求項5】
前記触媒貴金属粒子の平均粒径が2.0nm以上5.0nm以下である、請求項1に記載の触媒貴金属粒子。
【請求項6】
前記触媒貴金属粒子の粒径の標準偏差σ
radが2.0nm以下である、請求項5に記載の触媒貴金属粒子。
【請求項7】
前記触媒貴金属粒子の粒径の標準偏差σ
radが1.5nm以下である、請求項6に記載の触媒貴金属粒子。
【請求項8】
前記触媒
貴金属粒子の組成の変動係数が0.45以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の触媒貴金属粒子。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の触媒貴金属粒子の製造方法であって、
Pt前駆体及びPd前駆体を含む溶液と、有機塩基を含む溶液とを、マイクロリアクター中で反応させることを含む、
製造方法。
【請求項10】
前記有機塩基が、アミン及び第4級アンモニウム塩から選択される、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記有機塩基の量が、前記Pt前駆体及びPd前駆体を含む溶液に含まれるPt及びPdの合計のモル量に対して、0.5倍モル以上10倍モル以下である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
無機酸化物担体粒子と、
前記無機酸化物担体粒子に担持されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の触媒貴金属粒子と
を含む排ガス浄化用担持触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒貴金属粒子に関する。
【0002】
自動車エンジン等の内燃機関から排出される排ガスは、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(NOx)を含み、これらは、排気系に設置される排ガス浄化触媒装置によって浄化された後、大気に放出されている。排ガス浄化触媒装置は、例えば、ハニカム基材の隔壁に触媒コート層が配置された構造を有している。
【0003】
排ガス浄化触媒装置の触媒コート層は、排ガス浄化の活性成分である触媒貴金属を含む。触媒貴金属は、例えば、Pt、Pd、及びRhから選択される1種又は2種以上を含み、Pt及びPdはHC及びCO酸化浄化に、RhはNOxの還元浄化に触媒活性を示すと考えられている。
【0004】
HCは、飽和炭化水素及び不飽和炭化水素を含む。これらのうち、飽和炭化水素の方が、より酸化浄化され難いと考えられている。
【0005】
HCの酸化浄化に関し、非特許文献1では、Pt及びPdのうち、Ptは飽和炭化水素の酸化浄化能に優れ、Pdは不飽和炭化水素の酸化浄化能に優れることが報告されている。
【0006】
実車の排ガス中のHCには、飽和炭化水素及び不飽和炭化水素双方が含まれるため、排ガス浄化触媒装置の触媒コート層は、飽和炭化水素の酸化浄化能に優れるPt、及び不飽和炭化水素の酸化浄化能に優れるPd双方を含むことが望まれる。
【0007】
特許文献1では、Pt、Pd、及びRdを含む触媒貴金属粉末について、各元素についての含有量の標準偏差を20質量%以下に調整することにより、触媒貴金属粉末の耐熱性及び耐久性を向上することが記載されている。
【0008】
また、特許文献2では、車両からの排ガスの処理に有用な、Pt及びPd双方を含む触媒について、Pdに対するPtの重量比は、20:1~1:20であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2011-123004号公報
【文献】特開2017-039121号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】Applied Catalysis B. Environmental 251(2019), pp283-294
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
非特許文献1には、Ptによる飽和炭化水素の酸化浄化能は、Pdとの合金によって損なわれることが記載されている。
【0012】
また、特許文献1及び2の触媒では、車両の排ガス経路のような、1,000℃以上の高温にて、酸化性のリーン雰囲気、及び還元性のリッチ雰囲気に交互に曝露される過酷な環境下における耐熱性及び耐久性が不十分であり、HC酸化浄化活性が経時的に損なわれる。
【0013】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものである。
【0014】
本発明の目的は、リーン雰囲気及びリッチ雰囲気に交互に曝露される過酷な環境下でも、十分に高い耐熱性及び耐久性を示し、飽和炭化水素及び不飽和炭化水素の双方、特に一般的に浄化が比較的困難と考えられている飽和炭化水素に対して、高度の酸化浄化活性を示す、触媒貴金属粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、以下のとおりのものである。
【0016】
《態様1》Pt及びPdを含む合金から成る排ガス浄化用触媒貴金属粒子であって、
前記触媒貴金属粒子における、Pt及びPdの合計質量に対するPt質量の比(Pt/(Pt+Pd))で表される組成の標準偏差σCOMが3.0質量%以下である、
触媒貴金属粒子。
《態様2》前記組成の標準偏差σCOMが2.5質量%以下である、態様1に記載の触媒貴金属粒子。
《態様3》前記組成(Pt/(Pt+Pd))が、1.0質量%以上70質量%以下である、態様1又は2に記載の触媒貴金属粒子。
《態様4》前記組成(Pt/(Pt+Pd))が、3.0質量%以上40質量%以下である、態様3に記載の触媒貴金属粒子。
《態様5》前記触媒貴金属粒子の平均粒径が2.0nm以上5.0nm以下である、態様1~4のいずれか一項に記載の触媒貴金属粒子。
《態様6》前記触媒貴金属粒子の粒径の標準偏差σradが2.0nm以下である、態様1~5のいずれか一項に記載の触媒貴金属粒子。
《態様7》前記触媒貴金属粒子の粒径の標準偏差σradが1.5nm以下である、態様6に記載の触媒貴金属粒子。
《態様8》前記触媒金属粒子の組成の変動係数が0.45以下である、態様1~7のいずれか一項に記載の触媒貴金属粒子。
《態様9》態様1~8のいずれか一項に記載の触媒貴金属粒子の製造方法であって、
Pt前駆体及びPd前駆体を含む溶液と、有機塩基を含む溶液とを、マイクロリアクター中で反応させることを含む、
製造方法。
《態様10》前記有機塩基が、アミン及び第4級アンモニウム塩から選択される、態様9に記載の製造方法。
《態様11》前記有機塩基の量が、前記Pt前駆体及びPd前駆体を含む溶液に含まれるPt及びPdの合計のモル量に対して、0.5倍モル以上10倍モル以下である、態様9又は10に記載の製造方法。
《態様12》無機酸化物担体粒子と、
前記無機酸化物担体粒子に担持されている、態様1~8のいずれか一項に記載の触媒貴金属粒子と
を含む排ガス浄化用担持触媒。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、リーン雰囲気及びリッチ雰囲気に交互に曝露される過酷な環境下でも、十分に高い耐熱性及び耐久性を示し、飽和炭化水素及び不飽和炭化水素の双方に高度の酸化浄化活性を示す、触媒貴金属粒子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施例1~5及び比較例1~3における、触媒貴金属粒子の組成の標準偏差σ
COMとプロパン50%浄化温度(T50(C
3H
8))との関係を表すグラフである。
【
図2】
図2は、実施例7~12及び比較例5~11における、触媒貴金属粒子の組成(Pt/(Pt+Pd)比)とプロパン50%浄化温度(T50(C
3H
8))との関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
《触媒貴金属粒子》
本発明の触媒貴金属粒子は、
Pt及びPdを含む合金から成る排ガス浄化用触媒貴金属粒子であって、
触媒貴金属粒子における、Pt及びPdの合計質量に対するPt質量の比(Pt/(Pt+Pd))で表される組成の標準偏差σCOMが3.0質量%以下の触媒貴金属粒子である。
【0020】
本発明者らは、従来公知のPt及びPdを含む触媒貴金属粒子が、高温においてリーン雰囲気及びリッチ雰囲気に交互に曝露されると、触媒活性、特に、飽和炭化水素の酸化浄化活性が劣化する原因について考察した。
【0021】
その結果、リーン雰囲気におけるPtの耐久性が低く、触媒貴金属粒子中のPtリッチな部分のPtが、優先的に急速に酸化劣化して、触媒貴金属粒子全体の触媒活性が著しく損なわれることが見出された。
【0022】
そこで、本発明では、触媒貴金属粒子中のPt及びPdの複合化の程度を均一化して、リーン状態で優先的に酸化劣化されるPtリッチな部分の割合をできるだけ少なくした。これにより、リーン雰囲気におけるPtの酸化劣化が抑制されて、飽和炭化水素の酸化浄化活性が、長期間維持されることとなった。また、本発明の構成によって、不飽和炭化水素の酸化浄化活性が損なわれることはない。
【0023】
以上の理由により、本発明の触媒貴金属粒子は、過酷な環境下でも、十分に高い耐熱性及び耐久性を示し、飽和炭化水素及び不飽和炭化水素の双方に高度の酸化浄化活性を示すことが可能になったのである。
【0024】
このような、組成の標準偏差σCOMが小さい触媒貴金属粒子は、例えば、Pt前駆体及びPd前駆体を含む溶液と、有機塩基を含む溶液とを、マイクロリアクター中で反応させることを含む方法によって製造されてよい。
【0025】
〈触媒貴金属粒子の組成〉
発明の触媒貴金属粒子は、Pt及びPdを含む合金から成る。この合金は、Pt及びPdの他に、これら以外の貴金属(例えばRh等)を含んでいてもよい。しかしながら、触媒貴金属粒子は、Pt及びPd以外の金属を、実質的に含まなくてよい。
【0026】
発明の触媒貴金属粒子が、Pt及びPd以外の金属を、実質的に含まないとは、触媒貴金属粒子の全質量に対する、Pt及びPd以外の金属の質量の割合が、5質量%以下、3質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下、若しくは0.1質量%以下であることをいい、0質量%である場合も含まれる。
【0027】
本明細書において、触媒貴金属粒子の組成は、Pt及びPdの合計質量に対するPt質量の比(Pt/(Pt+Pd))によって参照され、百分率によって示される。
【0028】
本発明の触媒貴金属粒子は、比較的広い組成範囲において、HC酸化浄化能、特に飽和炭化水素の酸化浄化能が高い。この点、従来技術の触媒金属粒子では、所望のHC酸化浄化能を示す組成範囲が、特定の狭い範囲に限られていた。しかしながら本発明の触媒貴金属粒子では、広い組成範囲において高度のHC浄化能を示すので、触媒設計の自由度が高い利点を有する。
【0029】
飽和炭化水素の高い酸化浄化活性を確保する観点から、比Pt/(Pt+Pd)で表される触媒貴金属粒子の組成(質量%)は、1.5質量%以上、2.0質量%以上、3.0質量%以上、5.0質量%以上、10質量%以上、12質量%以上、15質量%以上、17質量%以上、又は20質量%以上であってよい。
【0030】
一方で、不飽和炭化水素の高い酸化浄化活性を確保する観点から、触媒貴金属粒子の組成(質量%)は、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、又は30質量%以下であってよい。
【0031】
触媒貴金属粒子の組成(質量%)は、典型的には、1.0質量%以上70質量%以下、又は3.0質量%以上40質量%以下であってよい。
【0032】
触媒貴金属粒子の組成は、走査透過型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光分析(STEM-EDX)によって知ることができる。
【0033】
具体的には、触媒貴金属粒子を無作為に抽出した50個の触媒貴金属粒子についてEDXによる元素分析を行って各触媒貴金属粒子の組成を求め、その数平均値として、触媒貴金属粒子の組成を算出してよい。
【0034】
STEM-EDX分析は、触媒貴金属粒子について行ってもよいし、触媒貴金属粒子が担体に担持された担持触媒の形態にある場合には、担持触媒についてSTEM-EDX分析を行ってもよい。担持触媒についてSTEM-EDX分析を行った場合には、STEM像中の触媒貴金属粒子に相当する部分についてのEDXの情報を使用すればよい。
【0035】
〈触媒貴金属粒子の組成の標準偏差〉
本発明の触媒貴金属粒子は、組成の標準偏差σCOMが3.0質量%以下である。
【0036】
本発明の触媒貴金属粒子は、組成の標準偏差σCOMが3.0質量%以下であることにより、触媒貴金属粒子中のPt及びPdの複合化の程度の均一化が担保される。そして、これにより、リーン状態で優先的に酸化劣化されるPtリッチな部分の割合が極めて少なくなるから、リーン雰囲気におけるPtの酸化劣化が抑制されて、高度の安定性及び耐久性を示す。
【0037】
触媒貴金属粒子の組成の標準偏差σCOMは、2.9質量%以下、2.7質量%以下、2.5質量%以下、2.2質量%以下、又は2.0質量%以下であってよい。組成の標準偏差σCOMは、低ければ低いほどよいが、この値を極めて低くしても、触媒貴金属粒子の排ガス浄化能が無制限に向上するものではない。本発明の効果を発現するためには、触媒貴金属粒子の組成の標準偏差σCOMは、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、1.2質量%以上、1.5質量%以上、又は2.0質量%以上であってもよい。
【0038】
触媒貴金属粒子の組成の標準偏差σCOMは、走査透過型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光分析(STEM-EDX)によって上記のようにして求めた各触媒貴金属粒子の組成から算出されてよい。
【0039】
上記の触媒貴金属粒子の組成の標準偏差σCOMの推奨範囲は、本発明の触媒貴金属粒子を調製した直後に測定した、初期値に関する。本発明の触媒貴金属粒子は、使用して耐久の程度が進んでいくに連れて、組成の標準偏差σCOMが小さくなっていく傾向が見られる。しかし、このことは、本発明の効果を損なうものではない。
【0040】
〈触媒貴金属粒子の組成の変動係数〉
本発明の触媒金属粒子は、上記のようにして求めた組成の標準偏差σCOMを、組成の平均値で除した値として定義される、組成の変動係数が、0.45以下であってよい。本発明の触媒貴金属粒子は、組成の標準偏差σCOMが3.0質量%以下であることに加えて、組成の変動係数が0.45以下であることにより、触媒貴金属粒子中のPt及びPdの複合化の程度の均一化が、高いレベルで担保される。
【0041】
本発明の触媒金属粒子における組成の変動係数は、0.40以下、0.30以下、又は0.20以下であってよい。また、本発明の効果を発現するためには、触媒貴金属粒子の組成の変動係数は、0.02以上、0.04以上、0.06以上、又は0.10以上であってもよい。
【0042】
〈触媒貴金属粒子の粒径〉
本発明の触媒金属粒子の粒径は、Pt及びPdを含む合金が組成の安定性を維持する観点から、ある程度大きくてよい。この観点から、触媒貴金属粒子の平均粒径は、1.5nm以上、2.0nm以上、2.5nm以上、3.0nm以上、又は3.5nm以上であってよい。
【0043】
一方で、触媒金属粒子の比表面積を高くして、表面に露出する排ガス浄化活性点を多くする観点からは、小さい方がよい。この観点から、触媒貴金属粒子の平均粒径は、10.0nm以下、8.0nm以下、6.0nm以下、又は4.0nm以下であってよい。
【0044】
本発明の触媒貴金属粒子の平均粒径は、典型的には、2.0nm以上6.0nm以下であってよい。
【0045】
本発明の触媒貴金属粒子の平均粒径は、例えば、STEM像から算出することができる。
【0046】
上記の触媒貴金属粒子の平均粒径の推奨範囲は、本発明の触媒貴金属粒子を調製した直後に測定した、初期値に関する。本発明の触媒貴金属粒子は、使用して耐久の程度が進んでいくに連れて、平均粒径が大きくなっていく傾向が見られる。しかし、このことは、本発明の効果を損なうものではない。
【0047】
〈触媒貴金属粒子の粒径の標準偏差〉
本発明の触媒貴金属粒子は、高度の触媒活性と、耐熱性及び耐久性とを両立する観点から、微細粒子及び粗大粒子を含まなくてもよい。この観点から、触媒貴金属粒子の粒径の標準偏差σradは、1.2nm以下、1.0nm以下、0.8nm以下、又は0.6nm以下であってよい。また、本発明の効果を発現するためには、触媒貴金属粒子の粒径の標準偏差σradは、0.1nm以上、0.2nm以上、0.3nm以上、又は0.4nm以上であってもよい。
【0048】
上記の触媒貴金属粒子の粒径の標準偏差σradの推奨範囲は、本発明の触媒貴金属粒子を調製した直後に測定した、初期値に関する。本発明の触媒貴金属粒子は、使用して耐久の程度が進んでいくに連れて、粒径の標準偏差σradが大きくなっていく傾向が見られる。しかし、このことは、本発明の効果を損なうものではない。
【0049】
《排ガス浄化用担持触媒》
本発明の別の観点によると、
無機酸化物担体粒子と、
この無機酸化物担体粒子に担持されている、本発明の触媒貴金属粒子と
を含む排ガス浄化用担持触媒が提供される。
【0050】
無機酸化物担体粒子は、例えば、Al、Ti、Si、Zr,Ce、Ce以外の希土類元素等から選択される、1種又は2種以上の金属元素を含む酸化物から成る粒子であってよい。無機酸化物担体粒子が、2種以上の金属元素の酸化物から成る場合、金属酸化物の混合物であってもよく、複合酸化物であってもよく、これらの混合物であってもよい。
【0051】
無機酸化物担体粒子は、上述の金属元素の酸化物の他、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選択される1種又は2種以上の金属元素の酸化物を含有していてもよい。
【0052】
無機酸化物担体粒子の粒径は、排ガス浄化用担持触媒の目的に応じて適宜に設定されてよい。無機酸化物担体粒子の粒径は、例えば、0.1μm以上、0.5μm以上、又は1.0μm以上であってよく、20.0μm以下、15.0μm以下、又は10.0μm以下であってよい。
【0053】
本発明の排ガス浄化用担持触媒における、触媒貴金属粒子の担持率は、排ガス浄化用担持触媒の全質量に対する触媒貴金属粒子の質量割合として、0.1質量%以上、0.3質量%以上、又は0.5質量%以上であってよく、5.0質量%以下、3.0質量%以下、又は2.0質量%以下であってよい。
【0054】
《排ガス浄化触媒装置》
本発明の更に別の観点によると、
基材と、
基材上の触媒コート層と
を含み、
触媒コート層中に、本発明の触媒貴金属粒子を含む、
排ガス浄化触媒装置が提供される。
【0055】
〈基材〉
本発明の排ガス浄化触媒装置に適用される基材は、隔壁によって区分された複数のセル流路を有する基材であってよく、従来技術の排ガス浄化触媒装置に用いられているハニカム基材であってよい。基材の隔壁は、隣接する排ガス流路間を流体的に連通する細孔を有していてもよいし、このような細孔を有していなくてもよい。
【0056】
基材の構成材料は、例えば、コージェライト等の耐火性無機酸化物であってよいし、金属であってもよい。基材は、ストレートフロー型であっても、ウォールフロー型であってもよい。
【0057】
本発明の排ガス浄化触媒装置の製造方法における基材は、典型的には、例えば、コージェライト製のストレートフロー型のモノリスハニカム基材、コージェライト製のウォールフロー型のモノリスハニカム基材、メタルハニカム基材等であってよい。
【0058】
〈触媒コート層〉
本発明の排ガス浄化触媒装置における触媒コート層は、本発明の触媒貴金属粒子を含む。
【0059】
触媒コート層中の触媒貴金属粒子は、例えば、無機酸化物担体粒子に担持されている、排ガス浄化用担持触媒の形態であってよい。
【0060】
本発明の排ガス浄化触媒装置における触媒コート層は、触媒貴金属粒子又は排ガス浄化用担持触媒以外に、任意成分を含んでいてよい。この任意成分は、例えば、無機酸化物担体粒子以外の無機酸化物粒子、バインダー等であってよい。
【0061】
本発明の排ガス浄化触媒装置は、任意の方法によって製造されてよい。典型的な製造方法は、基材上に、触媒貴金属粒子又は排ガス浄化用担持触媒、及び必要に応じて任意成分を含む触媒コート層形成用スラリーをコートし、次いで焼成する方法である。
【0062】
触媒コート層形成用スラリーは、本発明の触媒貴金属粒子又は排ガス浄化用担持触媒を含む他は、公知の組成であってよい。基材上への触媒コート層形成用スラリーのコート、及び焼成は、それぞれ、公知の方法によって、又はこれに準じる方法によって、行われてよい。
【0063】
《触媒貴金属粒子の製造方法》
本発明の触媒貴金属粒子は、例えば、Pt前駆体及びPd前駆体を含む溶液と、有機塩基を含む溶液とを、マイクロリアクター中で反応させることを含む方法によって製造されてよい。
【0064】
Pt前駆体及びPd前駆体を含む溶液と、有機塩基を含む溶液とを反応させることにより、Pt前駆体及びPd前駆体を含む共沈物が得られる。この共沈物を、適当な無機酸化物担体粒子の存在下、又は不存在下に焼成することにより、触媒貴金属粒子が得られる。ここで、共沈物の焼成を無機酸化物担体粒子の存在下で行うと、無機酸化物担体粒子に触媒貴金属粒子が担持されている、排ガス浄化用担持触媒が得られる。共沈物の焼成を無機酸化物担体粒子の不存在下で行うと、触媒貴金属粒子が得られる。
【0065】
〈Pt前駆体及びPd前駆体を含む溶液〉
Pt前駆体は、溶媒に可溶な塩であってよく、具体的には、例えば、Ptの硝酸塩、硫酸塩、錯塩等であってよい。Pd前駆体は、溶媒に可溶な塩であってよく、具体的には、例えば、Pdの硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物等であってよい。
【0066】
溶液中のPt及びPdの割合は、所望の触媒貴金属粒子中のPt及びPdの割合に応じて、適宜に設定されてよい。
【0067】
Pt前駆体及びPd前駆体を含む溶液の溶媒は、Pt前駆体及びPd前駆体を溶解し得る限り、特に制限はない。溶媒は、例えば、水及び水溶性有機溶媒から選択される1種又は2種以上であってよく、典型的には、水であってよい。
【0068】
溶液中のPt及びPdの濃度は、Pt前駆体及びPd前駆体が溶解する範囲で、適宜に設定されてよく、Pt前駆体及びPd前駆体の合計濃度として、例えば、1質量%以上又は5質量%以上、かつ、25質量%以下又は20質量%以下の濃度が例示できる。
【0069】
〈有機塩基を含む溶液〉
有機塩基は、アミン、第4級アンモニウム塩、窒素原子を含む複素環式化合物、塩基性アミノ酸等であってよい。
【0070】
アミンは、例えば、ピリジン、トリエチルアミン等であってよく;
第4級アンモニウム塩は、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム等であってよく;
窒素原子を含む複素環式化合物は、例えば、ジアザビシクロウンデセン、1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、1,8-ビス(ジエチルアミノ)ナフタレン等であってよく;
塩基性アミノ酸は、例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン、トリプトファン等であってよい。
【0071】
有機塩基は、アミン及び第4級アンモニウム塩から選択される1種又は2種以上であってよい。
【0072】
有機塩基を含む溶液の溶媒は、有機塩基を溶解し得る限り、特に制限はない。溶媒は、例えば、水及び水溶性有機溶媒から選択される1種又は2種以上であってよく、典型的には、水であってよい。
【0073】
溶液中の有機塩基の濃度は、有機塩基が溶解する範囲で、適宜に設定されてよく、有機塩基の合計濃度として、例えば、5質量%以上又は10質量%以上、かつ、30質量%以下又は25質量%以下の濃度が例示できる。
【0074】
〈Pt前駆体及びPd前駆体を含む溶液、及び有機塩基を含む溶液の溶媒の使用割合〉
Pt前駆体及びPd前駆体を含む溶液、及び有機塩基を含む溶液の溶媒の使用割合は、Pt前駆体及びPd前駆体の共沈反応が、迅速かつ均一に進行する範囲で、設定されてよい。
【0075】
Pt前駆体及びPd前駆体を含む溶液、及び有機塩基を含む溶液の溶媒の使用割合は、有機塩基を含む溶液に含まれる有機塩基のモル量の、Pt前駆体及びPd前駆体を含む溶液に含まれるPt及びPdの合計のモル量に対する割合として、0.5倍モル以上、1倍モル以上、2倍モル以上、3倍モル以上、4倍モル以上、又は5倍モル以上であってよく、12倍モル以下、10倍モル以下、8倍モル以下、6倍モル以下、又は5倍モル以下であってよい。
【0076】
有機塩基のモル量の、Pt及びPdの合計のモル量に対する割合は、典型的には、0.5倍モル以上10倍モル以下であってよい。
【0077】
〈マイクロリアクター〉
本発明の触媒貴金属粒子の製造方法は、Pt前駆体及びPd前駆体を含む溶液と、有機塩基を含む溶液とを、マイクロリアクター中で反応させることを特徴とする。
【0078】
本明細書におけるマイクロリアクターとは、第1の反応原液(Pt前駆体及びPd前駆体を含む溶液)と第2の反応原液(有機塩基を含む溶液)とが接触する反応場(ミキサー部)の容積(反応容積)が、1.0mL以下、0.5mL以下、0.3mL以下、0.2mL以下、又は0.1mL以下である、流通型のリアクターをいう。
【0079】
マイクロリアクターの反応容積は、0.01mL以上、0.03mL以上、0.05mL以上、又は0.07mL以上であってよい。
【0080】
反応場の型式は任意であり、例えば、T字型、J字型、V字型、インターデジタルトライアングル型、インターデジタルレクタングル型、スーパーフォーカス型、サイクロン型、ピラー型、ディスク型、衝突型、キャピラリー型、スリット型等の、適宜の形式であってよい。
【0081】
マイクロリアクターの反応場の伝熱係数は、比較的高くてよく、例えば、1MW/(m3・K)以上500MW/(m3・K)以下であってよい。マイクロリアクターの反応場の伝熱係数を、この範囲に設定することにより、第1の反応原液と第2の反応原液との接触時に生成する反応熱を効率よく逃がすことができる。これにより、局所的な温度上昇が回避され、反応の均一性が担保される。
【0082】
マイクロリアクターへの反応原液の供給量は、第1の反応原液及び第2の反応原液の合計の供給量として、50mL/分以上、75mL/分以上、100mL/分以上、125mL/分以上、又は150mL/分以上であってよく、500mL/分以下、450mL/分以下、400mL/分以下、350mL/分以下、300mL/分以下、又は250mL/分以下であってよい。
【0083】
反応温度は、第1の反応原液及び第2の反応原液が液体状態にある温度としてよく、例えば、0℃以上、10℃以上、20℃以上、30℃以上、40℃以上、50℃以上、又は60℃以上であってよく、100℃以下、90℃以下、80℃以下、70℃以下、60℃以下、50℃以下、又は40℃以下であってよい。
【0084】
第1の反応原液及び第2の反応原液が、マイクロリアクターの反応場に留まる時間は極めて短い。そのため、反応温度の制御は、第1の反応原液及び第2の反応原液の温度を予め所定の温度に調節したうえでマイクロリアルターに導入することによって、行われてよい。
【0085】
上記のようにして、本発明の触媒貴金属粒子又は排ガス浄化用担持触媒が得られる。得られた触媒貴金属粒子又は排ガス浄化用担持触媒は、必要に応じて分級したうえで、使用に供してよい。
【実施例】
【0086】
《実施例1》
(1)排ガス浄化用触媒貴金属粒子の調製
(i)共沈物スラリーの調製
Pt金属換算0.0909g(0.466mmol)相当の硝酸白金を含む硝酸白金水溶液及びPd金属換算0.909g(8.54mmol)相当の硝酸パラジウムを含む硝酸パラジウム水溶液を混合して、反応原液Aを得た。この反応原液A中の金属換算のPt及びPdの合計量は1.0g(9.01mmol)であり、Pt/(Pt+Pd)の組成比は9.10質量%であった。
【0087】
一方、水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)10.61g(72.07mmol)を含むTEAH水溶液を調製し、これを、反応原液Bとした。
【0088】
固定ディスクと回転ディスクとの間隙を反応場(ミキサー)とする、ディスク型のマイクロリアクターに、上述の反応原液A及び反応原液Bを供給して、マイクロリアクターの反応場中で接触させて反応を行い、共沈物を含むスラリー(共沈物スラリー)を得た。このときのマイクロリアクターの条件は、以下のとおりとした。
反応容積:85mm3(0.085mL)
ディスク直径:100mm
回転ディスクの回転速度:1,000rpm
反応原液A及びBの温度:各50℃
反応原液A及びBの流量:両液合計で200mL/分
【0089】
実施例1では、TEAH/(Pt+Pd)のモル比が8.0となるように、反応原液A及びBの供給速度を調節して、反応を行った。
【0090】
(ii)酸化物担体上への触媒貴金属粒子の担持
アルミナ粉末及びイオン交換水を混合して得られたスラリーに、上記で得られた共沈物スラリーを加えて、30分間撹拌した。次いで、固形物をろ取し、120℃において8時間乾燥した後、電気炉中、500℃において1時間焼成して、アルミナ上にPt・Pd合金から成る触媒貴金属粒子を担持することにより、排ガス浄化用担持触媒を得た。このとき、反応混合物中の固形分濃度が30質量%となるように、イオン交換水の使用量を調節した。また、使用した共沈物スラリーには、アルミナ粉末99.0gに対して、Pt金属換算0.0909g(0.466mmol)相当のPt前駆体及びPd金属換算0.909g(8.54mmol)相当のPd前駆体を含んでいた。
【0091】
(2)触媒貴金属粒子の粒径及び粒径の標準偏差、並びに組成の標準偏差の評価(初期値)
得られた排ガス浄化用担持触媒における触媒貴金属粒子について、粒径及び粒径の標準偏差、並びに組成の標準偏差を、走査透過型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光分析(STEM-EDX)によって調べた。
【0092】
具体的には、得られた排ガス浄化用担持触媒をSTEMで観察し、無作為に抽出した50個の触媒貴金属粒子について粒径を測定し、平均粒径を数平均値として求め、粒径の標準偏差σradを算出した。また、同じ50個の触媒貴金属粒子についてEDXによる元素分析を行って、各触媒貴金属粒子の組成を求め、Pt/(Pt+Pd)の標準偏差σcomを算出した。
【0093】
実施例1における調製直後の排ガス浄化用担持触媒の触媒貴金属粒子の平均粒径は3.44nm、粒径の標準偏差σradは0.62nmであり、Pt/(Pt+Pd)の標準偏差σcomは、2.22質量%であった。
【0094】
(3)排ガス浄化用担持触媒の評価
(i)熱耐久処理
得られた排ガス浄化用担持触媒粉末10gを、直径65mm、長さ900mm(容量3,000mL)の管状耐久炉に入れ、以下の条件にて熱耐久処理を行った。
【0095】
先ず、N2ガスを10L/分の流量にて流通させつつ、触媒温度を、20℃から1,050℃まで、約3.43℃/分の昇温速度で5時間かけて昇温させた。次いで、触媒温度を1,050℃に維持して、リッチ雰囲気及びリーン雰囲気のモデルガスを5分ごとに切り替えながら各10L/分の流速で流通させて、5時間の熱耐久処理を行った。更に、N2ガスを10L/分の流量にて流通させつつ、触媒温度を、1,050℃から20℃まで、約3.43℃/分の降温速度で5時間かけて降温させた。
【0096】
上記の熱耐久処理に用いた、リッチ雰囲気及びリーン雰囲気のモデルガスの組成は、それぞれ、以下のとおりである。
【0097】
〈リッチ雰囲気のモデルガス〉
CO:2体積%
H2O:10体積%
N2:バランス
【0098】
〈リーン雰囲気のモデルガス〉
O2:5体積%
H2O:10体積%
N2:バランス
【0099】
(ii)排ガス浄化試験
上記の熱耐久処理後の排ガス浄化用担持触媒を圧縮成型した後、粉砕及び分級して、1.0~2.0mmサイズの不定形状ペレットとした。得られたペレット1.0gを、直径10.0mm、長さ55mm(容量4.3mL)の管状反応器に入れ、排ガスモデルガスを8L/分の流速で流通させながら、触媒温度700℃において5分間の前処理を行った後、排ガスモデルガスの流通を維持しつつ、80℃まで冷却した。
【0100】
次いで、排ガスモデルガスの流通を維持しつつ、35℃/分の昇温速度で触媒温度を上昇させていき、モデルガス中のプロパン及びプロピレンの浄化率が、それぞれ、50%に達したときの温度を、プロパン50%浄化温度(T50(C3H8))及びプロピレン50%浄化温度(T50(C3H6))とした。
【0101】
排ガス浄化試験で使用した排ガスモデルガスの組成は、以下のとおりである。
【0102】
〈排ガスモデルガス〉
プロパン(C3H8)):600ppm
プロピレン(C3H6):2,400ppm
CO:11.1体積%
O2:0.77体積%
NO:2,111ppm
CO:5,600ppm
H2:2,000ppm
H2O:10体積%
N2:バランス
【0103】
上記の排ガスモデルガス中の成分濃度の単位「ppm」は、体積基準の値である。
【0104】
実施例1の排ガス浄化用担持触媒のプロパン50%浄化温度(T50(C3H8))は325.0℃であり、プロピレン50%浄化温度(T50(C3H6))は262.9℃であった。
【0105】
(iii)触媒貴金属粒子の粒径及び粒径の標準偏差、並びに組成の標準偏差の評価(耐久後)
上述の「(2)触媒貴金属粒子の粒径及び粒径の標準偏差、並びに組成の標準偏差の評価(初期値)」と同様の手法により、上記の熱耐久処理後の排ガス浄化用担持触媒の粒径及び粒径の標準偏差、並びに組成の標準偏差を調べた。実施例1における耐久後の排ガス浄化用担持触媒の触媒貴金属粒子の平均粒径は31.0nm、粒径の標準偏差σradは11.3nmであり、Pt/(Pt+Pd)の標準偏差σcomは、0.58質量%であった。
【0106】
《実施例2~5》
「(i)共沈物スラリーの調製」において、反応原液Bに含まれるTEAHの量を表1に記載のとおりに変更して、TEAH/(Pt+Pd)のモル比を表1に記載のとおりに調節した他は、実施例1と同様にしてそれぞれ排ガス浄化用担持触媒を調製し、各種の評価を行った。結果を表2に示す。
【0107】
なお、「(ii)酸化物担体上への触媒貴金属粒子の担持」では、反応混合物中の固形分濃度が、30質量%となるように、イオン交換水の使用量を調節した。
【0108】
《比較例1~3》
「(i)共沈物スラリーの調製」において、マイクロリアクターの代わりにフラスコを用い、かつ、反応原液A及び反応原液Bの使用量を変更して、TEAH/(Pt+Pd)のモル比を表1に記載のとおりに調節した他は、実施例1と同様にしてそれぞれ排ガス浄化用担持触媒を調製し、各種の評価を行った。結果を表2に示す。
【0109】
なお、「(ii)酸化物担体上への触媒貴金属粒子の担持」では、反応混合物中の固形分濃度が、30質量%となるように、イオン交換水の使用量を調節した。
【0110】
また、比較例3では、反応原液Bを使用せず、反応原液Aをそのまま「(ii)酸化物担体上への触媒貴金属粒子の担持」に供して、排ガス浄化触媒を調製した。
【0111】
《実施例6》
反応原液Bとして、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)3.29g(36.04mmol)を含むTMAH水溶液を用いた他は、実施例3と同様にして排ガス浄化用担持触媒を調製し、各種の評価を行った。結果を表4に示す。
【0112】
《比較例4》
反応原液Bとして、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)3.29g(36.04mmol)を含むTMAH水溶液を用いた他は、比較例2と同様にして排ガス浄化用担持触媒を調製し、各種の評価を行った。結果を表4に示す。
【0113】
《参考例1及び実施例7~12》
「(i)共沈物スラリーの調製」において、反応原液Aに含まれる硝酸白金及び硝酸パラジウムの量を表5に記載のとおりに変更して、金属換算のPt及びPdの合計量を1.0gに維持しつつ、Pt/(Pt+Pd)の質量比を表5に記載のとおりとし、反応原液Bに含まれるTEAHの量を表5に記載のとおりに変更して、TEAH/(Pt+Pd)のモル比を4.0に調節した他は、実施例1と同様にしてそれぞれ排ガス浄化用担持触媒を調製し、各種の評価を行った。結果を表6に示す。
【0114】
なお、「(ii)酸化物担体上への触媒貴金属粒子の担持」では、反応混合物中の固形分濃度が、30質量%となるように、イオン交換水の使用量を調節した。
【0115】
《比較例5~11》
「(i)共沈物スラリーの調製」において、マイクロリアクターの代わりにフラスコを用いた他は、上記の参考例1及び実施例7~12とそれぞれ同様にして、排ガス浄化用担持触媒を調製し、各種の評価を行った。結果を表6に示す。
【0116】
また、実施例1~5及び比較例1~3における、触媒貴金属粒子の組成の標準偏差σ
COMとプロパン50%浄化温度(T50(C
3H
8))との関係を表すグラフを、
図1に示す。
【0117】
更に、実施例7~12及び比較例5~11における、触媒貴金属粒子の組成(Pt/(Pt+Pd)比)とプロパン50%浄化温度(T50(C
3H
8))との関係を表すグラフを、
図2に示す。
【表1】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
表1~6、並びに
図1及び2の結果から、以下のことが分かった。
【0124】
組成の標準偏差σcon(初期値)が3.0質量%を超える触媒貴金属粒子を含む、比較例1~4及び7~11の排ガス浄化用担持触媒は、Ptを含有しているものであるが、Ptを含有していない比較例5の排ガス浄化用担持触媒と比較して、プロパン50%浄化温度(T50(C3H8))がほとんど低下しておらず、したがって飽和炭化水素(C3H8)の浄化能がほとんど向上していない。
【0125】
これに対して、組成の標準偏差σ
con(初期値)が3.0質量%以下の触媒貴金属粒子を含む、実施例1~5及び7~12に示した本発明の排ガス浄化用担持触媒は、Ptを含有することにより、不飽和炭化水素(C
3H
6)の浄化能を損なわずに、飽和炭化水素(C
3H
8)の浄化能が向上されている。本発明の排ガス浄化用担持触媒における飽和炭化水素(C
3H
8)の浄化能の向上(プロパン50%浄化温度(T50(C
3H
8))の低下)は、
図1にも顕著に示されている。
【0126】
本発明のこのような効果は、触媒貴金属粒子におけるPt/(Pt+Pd)比、及び触媒貴金属粒子製造時のTEHA/(Pt+Pd)比の広い範囲にわたって発現されることが検証された。
【0127】
特に、Pt/(Pt+Pd)比については、
図2に見られるように、同じPt/(Pt+Pd)比で比較した場合、本発明の触媒貴金属粒子を含む、実施例の排ガス浄化用担持触媒は、比較例の排ガス浄化用担持触媒に比べて、プロパン50%浄化温度(T50(C
3H
8))が低下しており、飽和炭化水素(C
3H
8)の浄化能が向上することが検証された。
【0128】
また、従来技術における方法で製造された触媒貴金属粒子を含む、比較例の排ガス浄化用担持触媒では、Pt/(Pt+Pd)比の最適範囲が、比較的狭い。これに対して、本発明の、マイクロリアクターを用いる方法によって製造された触媒貴金属粒子を含む、実施例の排ガス浄化用担持触媒では、Pt/(Pt+Pd)比の広い範囲にわたって、高度の飽和炭化水素浄化能を示すことが検証された。
【0129】
更に、実施例6と比較例4との比較から、TEAHの代わりにTMAHを用いたときにも、本発明の効果の発現が確認された。