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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/10 20060101AFI20240411BHJP
   B05C 5/02 20060101ALI20240411BHJP
   B05C 13/00 20060101ALI20240411BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20240411BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
B05C11/10
B05C5/02
B05C13/00
B05D1/26 Z
B05D3/00 B
B05D3/00 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022111322
(22)【出願日】2022-07-11
(65)【公開番号】P2024009643
(43)【公開日】2024-01-23
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】大宅 宗明
(72)【発明者】
【氏名】北村 翔也
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-61395(JP,A)
【文献】特開2006-167610(JP,A)
【文献】特開2000-24571(JP,A)
【文献】特開2011-212544(JP,A)
【文献】特開2018-1104(JP,A)
【文献】特開2018-43200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00-21/00
B05D 1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上面に処理液を塗布する基板処理装置であって、
吐出口を有するノズルと、
前記基板の下面に気体を噴射して前記基板を浮上させる浮上部と、
前記浮上部により浮上された前記基板の下面の一部を基板保持部の保持面で保持しながら前記ノズルに対して前記基板を相対的に移動させる移動部と、

前記移動部により前記ノズルが前記基板に対して相対的に進行するノズル進行方向において前記ノズルの前方側に配置され、前記ノズルと一体的に移動するノズルガードと、

前記ノズルと前記ノズルガードを一体的に昇降させる昇降部と、

前記昇降部が、前記ノズルと前記ノズルガードを一体的に下降させて前記ノズルをコンタクト位置に位置決めするコンタクト動作を実行するように、前記昇降部を制御する制御部と、を備え、
前記コンタクト動作の際に、上方から見て前記保持面と前記ノズルガードとが互いに離間していることを特徴とする、基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記基板保持部の上面全体が前記保持面として機能し、
前記コンタクト動作の際に、上方から見て前記基板保持部と前記ノズルガードとが互いに離間している、基板処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記基板保持部は、上面全体が前記保持面として機能する第1保持部材および第2保持部材と、前記第1保持部材および前記第2保持部材を前記ノズル進行方向において前記ノズルガードの幅よりも広い間隔だけ相互に離間することで前記第1保持部材と前記第2保持部材とに挟まれて下方に窪んだ非保持領域と、を有し、
前記コンタクト動作の際に、上方から見て前記非保持領域と前記ノズルガードとが互いに重なっている、基板処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記基板保持部は、前記ノズル進行方向において前記ノズルガードの幅よりも広い幅で下方に窪んだ非保持領域を有するブロック体を有し、前記ブロック体の上面のうち前記非保持領域を除く領域を前記保持面として機能させ、
前記コンタクト動作の際に、上方から見て前記非保持領域と前記ノズルガードとが互いに重なっている、基板処理装置。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記コンタクト動作の際に、前記ノズル進行方向における前記保持面と前記ノズルガードとの離間間隔が前記基板の厚み以上である、基板処理装置。
【請求項6】
基板の下面の一部を基板保持部の保持面で保持するとともに前記基板の下面に気体を噴射することで前記基板を浮上させた状態で、コンタクト位置に位置決めされたノズルに対して前記基板を相対的に搬送しつつ前記ノズルの吐出口から処理液を吐出することで、前記基板の上面への前記処理液の塗布を行う塗布工程と、
前記塗布工程の前に、前記ノズルが前記基板に対して相対的に進行するノズル進行方向において前記ノズルの前方側に配置された、ノズルガードと一体的に前記ノズルを前記コンタクト位置に下降させるコンタクト工程と、を備え、
前記コンタクト工程において、上方から見て、前記ノズルガードと前記保持面とが互いに離間していることを特徴とする、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶表示装置や有機EL表示装置等のFPD用ガラス基板、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、カラーフィルター用基板、記録ディスク用基板、太陽電池用基板、電子ペーパー用基板等の精密電子装置用基板、半導体パッケージ用基板(以下、単に「基板」と称する)にノズルから処理液を供給して塗布する基板処理技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スリット状の吐出口を有するスリットノズルを基板に対して相対移動させつつスリットノズルから処理液を吐出することで、基板に処理液を塗布する基板処理装置が知られている。例えば特許文献1に記載の装置では、ステージのステージ面の上方でスリットノズルを所定の塗布位置に位置させたまま、チャックが基板の一部を下方側から保持しながら、いわゆる浮上方式で基板を移動させる。そして、基板処理装置は、基板を浮上搬送しながら基板の上面に処理液を供給して塗布する。
【0003】
この基板処理装置においては、基板の上面側で上方に異物など(以下、単に「異物」という)が突出していることがあるのを考慮し、ノズルガードが設けられている。すなわち、異物が存在したまま処理液の塗布を実行すると、スリットノズルが異物に衝突することで、処理液の塗布が阻害される。つまり、上記衝突により、塗布した処理液やスリットノズルに悪影響が及ぶことがある。そこで、上記従来装置では、スリットノズルが基板に対して相対的に進行するノズル進行方向においてスリットノズルの前方側にノズルガードが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-212544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記基板処理装置では、基板に対してスリットノズルを相対移動させて塗布処理を実行する前に、スリットノズルが基板から上方に離れた位置(後で説明する上方位置P1)から基板の上面に近接した位置(後で説明するコンタクト位置P3)に下降して吐出口と基板との間に処理液のメニスカスを形成する。このとき、スリットノズルと一体的に昇降するノズルガードも、スリットノズルと一体的に下降し、ノズルガードの先端(下端)が基板の上面近傍に位置する。このノズルガードの直下位置に、異物が基板の上面に存在するとともに、基板を下方から支持するチャックが位置すると、ノズルガードとチャックとが異物を挟み込む。これによって、異物が押し潰され、ノズルガードに付着してしまうことがある。
【0006】
このように異物がノズルガードに付着したまま基板処理を行うと、ノズルガードに付着した異物が基板を傷付けてしまう。その結果、歩留まりが低下するという問題を招くことがあった。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、ノズルガードと一体的にノズルをコンタクト位置に下降させる際に、ノズルガードが基板の上面に存在する異物を押し潰すのを防止することができる基板処理装置および基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、基板の上面に処理液を塗布する基板処理装置であって、吐出口を有するノズルと、
基板の下面に気体を噴射して基板を浮上させる浮上部と、浮上部により浮上された基板の下面の一部を基板保持部の保持面で保持しながらノズルに対して基板を相対的に移動させる移動部と、
移動部によりノズルが基板に対して相対的に進行するノズル進行方向においてノズルの前方側に配置され、ノズルと一体的に移動するノズルガードと、 ノズルとノズルガードを一体的に昇降させる昇降部と、
昇降部が、ノズルとノズルガードを一体的に下降させてノズルをコンタクト位置に位置決めするコンタクト動作を実行するように、昇降部を制御する制御部と、を備え、コンタクト動作の際に、上方から見て保持面とノズルガードとが互いに離間していることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の他の態様は、基板処理方法であって、基板の下面の一部を基板保持部の保持面で保持するとともに基板の下面に気体を噴射することで基板を浮上させた状態で、コンタクト位置に位置決めされたノズルに対して基板を相対的に搬送しつつノズルの吐出口から処理液を吐出することで、基板の上面への処理液の塗布を行う塗布工程と、塗布工程の前に、ノズルが基板に対して相対的に進行するノズル進行方向においてノズルの前方側に配置された、ノズルガードと一体的にノズルをコンタクト位置に下降させるコンタクト工程と、を備え、コンタクト工程において、上方から見て、ノズルガードと保持面とが互いに離間していることを特徴としている。
【0010】
いわゆる浮上方式で基板を搬送する場合、基板は、その下面に噴射される気体を受けて浮上されるとともに、当該基板の一部を下方から保持されている。この浮上状態のまま、基板はノズルガードが一体化されたノズルに対して相対的に搬送される。したがって、ノズルがコンタクト位置に下降するコンタクト動作(工程)を行う際に、ノズルガードもノズルと一緒に下降する。このとき、基板の上面のうちノズルガードの下方領域に異物が存在すると、ノズルガードが異物と当接しながら下方に移動する。ここで、基板の下面を保持している基板保持部の保持面がノズルガードの下方に位置すると、ノズルガードと保持面とが異物を上下方向から挟み込んで押し潰すことがある。しかしながら、本発明では、上方から見て、ノズルガードと保持面とは互いに離間している。つまり、ノズルガードの下方に保持面は存在しておらず、ノズルガードの下方に位置する基板の下面領域は気体噴射により浮上されているにすぎない。その結果、上記挟み込みは発生せず、ノズルガードによる異物の押し潰しが防止される。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、ノズルガードと一体的にノズルをコンタクト位置に下降させる際に、ノズルガードが基板の上面に存在する異物を押し潰すのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る基板処理装置の第1実施形態である塗布装置の全体構成を模式的に示す図である。
図2】基板処理装置を鉛直上方から見た平面図である。
図3図2から塗布機構を取り外した平面図である。
図4図1に示す基板処理装置で採用されているスリットノズルおよびノズルガードの全体構成を示す斜視図である。
図5A】上方位置に位置決めされたスリットノズルおよびノズルガードを幅方向から見た側面図である。
図5B】コンタクト動作中のスリットノズルおよびノズルガードを幅方向から見た側面図である。
図6図1に示す塗布装置により実行される塗布動作を示すフローチャートである。
図7】本発明に係る基板処理装置の第2実施形態を示す図である。
図8】本発明に係る基板処理装置の第3実施形態を示す図である。
図9】本発明に係る基板処理装置の第4実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明に係る基板処理装置の第1実施形態である塗布装置の全体構成を模式的に示す図である。この塗布装置1は、図1の左手側から右手側に向けて水平姿勢で搬送される基板Sの上面Sfに塗布液を塗布するスリットコータである。例えば、ガラス基板や半導体基板等各種の基板Sの上面Sfに、レジスト膜の材料を含む塗布液、電極材料を含む塗布液等、各種の処理液を塗布し均一な塗布膜を形成する目的に、この塗布装置1を好適に利用することができる。
【0014】
なお、以下の各図において装置各部の配置関係を明確にするために、図1に示すように右手系XYZ直交座標を設定する。基板Sの搬送方向を「X方向」とし、図1の左手側から右手側に向かう水平方向を「+X方向」と称し、逆方向を「-X方向」と称する。また、X方向と直交する水平方向Yのうち、装置の正面側(図において手前側)を「-Y方向」と称するとともに、装置の背面側を「+Y方向」と称する。さらに、鉛直方向Zにおける上方向および下方向をそれぞれ「+Z方向」および「-Z方向」と称する。
【0015】
塗布装置1では、基板Sの搬送方向Dt、つまり(+X方向)に沿って、入力コンベア100、入力移載部2、浮上部3、出力移載部4、出力コンベア110がこの順に近接して配置されており、以下に詳述するように、これらにより略水平方向に延びる基板Sの搬送経路が形成されている。
【0016】
処理対象である基板Sは図1の左手側から入力コンベア100に搬入される。入力コンベア100は、コロコンベア101と、これを回転駆動する回転駆動機構102とを備えており、コロコンベア101の回転により基板Sは水平姿勢で下流側、つまり(+X)方向に搬送される。入力移載部2は、コロコンベア21と、これを回転駆動する機能および昇降させる機能を有する回転・昇降駆動機構22とを備えている。コロコンベア21が回転することで、基板Sはさらに(+X)方向に搬送される。また、コロコンベア21が昇降することで基板Sの鉛直方向位置が変更される。このように構成された入力移載部2により、基板Sは入力コンベア100から浮上部3に移載される。
【0017】
図2は基板処理装置を鉛直上方から見た平面図である。また、図3図2から塗布機構を取り外した平面図である。また、図4図1に示す基板処理装置で採用されているスリットノズルおよびノズルガードの全体構成を示す斜視図である。図5Aおよび図5Bは、スリットノズルおよびノズルガードを幅方向から見た側面図であり、図5Bはコンタクト位置P3にノズル71を位置決めしたときを示し、図5Aはコンタクト位置P3よりも上方の上方位置P1にノズルを位置決めしたときを示している。なお、後述するチャック51b、51dを明確にするために、図5Aおよび図5Bでは、チャック51b、51dに対してドットを付している。また同様の主旨で、後で説明する図7図9においても、チャックに対してドットを付している。
【0018】
以下、これらの図を参照しながら塗布装置1の具体的な機械的構成を説明する。幾つかの機構については特許文献1の記載を参照することでより詳細な構造を理解することが可能である。なお、図2および図3においては入力コンベア100等が有するコロの記載が省略されている。
【0019】
浮上部3は、図2ないし図4に示すように、2つのステージにより構成されている。これらのうち上流浮上ステージ3Aおよび下流浮上ステージ3Cは、ともに多数の空気の噴出孔31が1枚の板状のステージ面の全面にわたってマトリックス状に分散して形成されている。そして、各噴出孔31に対して圧縮空気が与えられることで、各噴出孔31からの圧縮空気の噴出による気体流によって基板Sを浮上させる。これによって、上流浮上ステージ3Aおよび下流浮上ステージ3Cでは、基板Sは上記ステージ面から所定の浮上高さ、例えば10~500マイクロメートルだけ浮上する。各噴出孔31に圧縮空気を供給するために、図1および図2に示すように、浮上制御機構35が設けられている。
【0020】
また、図示を省略しているが、下流浮上ステージ3Cは上記噴出孔31以外に複数のリフトピンを有している。また、図1に示すように、リフトピンを昇降させるために、リフトピン駆動機構34が設けられている。複数のリフトピンは噴出孔31の合間を縫って所定間隔をおいて、基板Sの下面Sb全体に対向可能に設けられている。そして、リフトピンはステージ面の下方に設置されたリフトピン駆動機構34によって、鉛直方向(Z軸方向)に昇降駆動される。つまり、下降時はリフトピンの先端が下流浮上ステージ3Cのステージ面よりも(-Z)方向側に下降し、上昇時はリフトピンの先端が基板Sを移載ロボット(図示省略)に受け渡す位置まで上昇する。こうして上昇したリフトピンによって基板Sの下面は支持され、持ち上げられるので、基板Sは下流浮上ステージ3Cのステージ面から上昇する。これによって、移載ロボットによる基板Sの塗布装置1からのアンローディングが可能となる。
【0021】
一方、中央浮上ステージ3Bは、次のように構成されて、上流浮上ステージ3Aおよび下流浮上ステージ3Cよりも高い浮上精度を有している。すなわち、中央浮上ステージ3Bは矩形形状の板状のステージ面を有している。当該中央浮上ステージ3Bには、上流浮上ステージ3Aおよび下流浮上ステージ3Cに設けられた噴出孔31よりも狭いピッチで複数の孔がマトリックス状に分散して設けられている。また、上流浮上ステージ3Aおよび下流浮上ステージ3Cと異なり、中央浮上ステージ3Bでは、孔のうち半分は圧縮空気の噴出孔32として機能し、残りの半分は吸引孔33として機能する。つまり、噴出孔32から圧縮空気を基板Sの下面Sbに向けて噴出してステージ面と基板Sの下面Sbとの間の空間に圧縮空気を送り込む。一方、吸引孔33を介して空間SPから空気を吸引するように構成されている。このように上記空間に対して空気の噴出と吸引とが行われることで、上記空間では各噴出孔32から噴出された圧縮空気の気体流は水平方向に広がった後、当該噴出孔32に隣接する吸引孔33から吸引されることになり、上記空間に広がる空気層(圧力気体層)における圧力バランスは、より安定的となり、基板Sの浮上高さを高精度に、しかも安定して制御することができる。なお、各噴出孔32への圧縮空気の供給および吸引孔33からの空気の吸引については、浮上制御機構35が制御する。
【0022】
入力移載部2を介して浮上部3に搬入される基板Sは、コロコンベア21の回転により(+X)方向への推進力を付与されて、上流浮上ステージ3A上に搬送される。上流浮上ステージ3A、中央浮上ステージ3Bおよび下流浮上ステージ3Cは基板Sを浮上状態に支持するが、基板Sを水平方向に移動させる機能を有していない。浮上部3における基板Sの搬送は、上流浮上ステージ3A、中央浮上ステージ3Bおよび下流浮上ステージ3Cの下方に配置された基板搬送部5により行われる。
【0023】
基板搬送部5は、基板Sの下面周縁部に部分的に当接することで基板Sを下方から支持するチャック機構51と、チャック機構51上端の吸着部材に設けられた吸着パッド511に負圧を与えて基板Sを吸着保持させる機能およびチャック機構51をX方向に往復走行させる機能を有する吸着・走行制御機構52とを備えている。より詳しくは、基板搬送部5のチャック機構51は4つのチャック51a~51dを備えている。これらのうち(+Y)側に配置されたチャック51a、51bは、ベース521の(-Y)側の端部の上に取り付けられている。また、チャック51a、51bはベース521を介してX方向において互いに離間した状態で相互に連結されている。そして、連結状態を保ったまま、チャック51a、51bは基台10にX方向に延設された走行ガイド87LによりX方向に走行可能に支持されている。また、これら2つのチャック51a、51bは、走行ガイド87Lに沿ってX方向に走行可能になっている。また、チャック51a、51bの上面には、吸着部材(図示省略)が設けられている。つまり、チャック51a、51bの上面全体が基板Sの下面周縁部を吸着保持する保持面51sとして機能する。これらのうち(+X)側のチャック51bの保持面51sが、後で詳述するように、コンタクト動作の実行時においてノズルガード72に対して所定の関係を有している。
【0024】
(-Y)側に設けられたチャック51c、51dも同様に、ベース521の(+Y)側の端部の上に取り付けられている。また、チャック51a、51bはベース521を介してX方向において互いに離間した状態で相互に連結されている。そして、連結状態を保ったまま、基台10にX方向に延設された走行ガイド87RによりX方向に走行可能に支持されている。また、チャック51c、51dの上面にも吸着部材(図示省略)が設けられ、チャック51c、51dの上面全体が基板Sの下面周縁部を吸着保持する保持面51sとして機能する。これらのうち(+X)側のチャック51dの保持面51sが、後で詳述するように、コンタクト動作の実行時においてノズルガード72に対して所定の関係を有している。
【0025】
制御ユニット9は、X方向において、チャック51a、51cが常に同一位置となるとともにチャック51b、51dが常に同一位置となるように、チャック51a~51dの位置制御を行う。これにより、4つのチャック51a~51dが見かけ上一体のチャック機構51として移動することになる。
【0026】
入力移載部2から浮上部3に搬入された基板Sをチャック機構51が保持し、この状態でチャック機構51が(+X)方向に移動することで、基板Sが上流浮上ステージ3Aの上方から中央浮上ステージ3Bの上方を経由して下流浮上ステージ3Cの上方へ搬送される。搬送された基板Sは、下流浮上ステージ3Cの(+X)側に配置された出力移載部4に受け渡される。
【0027】
出力移載部4は、コロコンベア41と、これを回転駆動する機能および昇降させる機能を有する回転・昇降駆動機構42とを備えている。コロコンベア41が回転することで、基板Sに(+X)方向への推進力が付与され、基板Sは搬送方向Dtに沿ってさらに搬送される。また、コロコンベア41が昇降することで基板Sの鉛直方向位置が変更される。出力移載部4により、基板Sは下流浮上ステージ3Cの上方から出力コンベア110に移載される。
【0028】
出力コンベア110は、コロコンベア111と、これを回転駆動する回転駆動機構112とを備えており、コロコンベア111の回転により基板Sはさらに(+X)方向に搬送され、最終的に塗布装置1外へと払い出される。なお、入力コンベア100および出力コンベア110は塗布装置1の構成の一部として設けられてもよいが、塗布装置1とは別体のものであってもよい。また例えば、塗布装置1の上流側に設けられる別ユニットの基板払い出し機構が入力コンベア100として用いられてもよい。また、塗布装置1の下流側に設けられる別ユニットの基板受け入れ機構が出力コンベア110として用いられてもよい。
【0029】
上記のようにして搬送される基板Sの搬送経路上に、基板Sの上面Sfに塗布液を塗布するための塗布機構7が配置される。塗布機構7はスリットノズル71を有している。また、スリットノズル71には、図1に示すように、ノズル駆動機構8が接続されている。ノズル駆動機構8は、スリットノズル71をZ方向に昇降させる昇降部と、スリットノズル71をX方向に移動させる移動部とを有している。このため、制御ユニット9からの指令に応じて上記昇降部および/または移動部が作動することで、スリットノズル71は、中央浮上ステージ3Bの上方の塗布位置(図4において実線で示される位置P2)、塗布位置P2から上方に離れた上方位置(図5Aにおいて実線で示される位置P1)、塗布位置P2から若干下方でかつコンタクト動作を実行するためのコンタクト位置(図5Bにおいて実線で示される位置P3)やメンテナンス位置(図示省略)に位置決めされる。さらに、スリットノズル71には、図示を省略する塗布液供給機構が接続されており、塗布液供給機構から塗布液が供給され、ノズル下部に下向きに開口する吐出口711から塗布液が処理液として吐出される。
【0030】
このスリットノズル71は、その吐出口711がY方向に延設され、かつ、鉛直下方(-Z側)に向けて塗布液を吐出可能にノズル支持部701によって支持される。ノズル支持部はノズル駆動機構8と接続されている。そして、スリットノズル71により塗布液を基板Sの上面Sfに供給する際には、制御ユニット9が昇降部および移動部を制御することで、スリットノズル71は、吐出口711が上方位置P1に位置するように、移動された。その後で、制御ユニット9が昇降部を制御することで、コンタクト位置P3への下降(コンタクト動作)および塗布位置P2への上昇(ギャップ調整動作)を経て、吐出口711と基板Sとの間隔(ギャップ)が所定値に調整される。その後で、当該ギャップ調整完了のまま吐出口711から塗布液を基板Sの上面Sfに向けて吐出する一方、基板Sは(+X)方向に搬送される。つまり、スリットノズル71は、基板Sに対して相対的に(-X)方向に移動して塗布処理を実行する。つまり、本実施形態では、(-X)方向が本発明の「ノズル進行方向」に相当している。
【0031】
また、ノズル支持部701はX方向に移動可能に構成されている。具体的には、基台10の(+Y)側および(-Y)側端部上面のそれぞれに、X方向に延設された1対の走行ガイド81L、81Rが取り付けられている。そして、ノズル支持部701は、その下部に取り付けられたスライダ(図示省略)を介して走行ガイド81L、81Rに係合されており、走行ガイド81L、81Rに沿ってX方向に移動自在となっている。このため、制御ユニット9が移動部を制御することで、スリットノズル71はX方向に移動される。
【0032】
このように構成されたスリットノズル71に対して所定のメンテナンスを行うために、図1に示すように、塗布機構7にはノズル洗浄待機ユニット79が設けられている。ノズル洗浄待機ユニット79は、主にローラ791、洗浄部792、ローラバット793などを有している。ローラバット793はY方向に延設されたバット支持部702により支持されている。バット支持部702は、その下部に取り付けられたスライダ(図示省略)を介して走行ガイド84L、84Rに係合されており、走行ガイド84L、84Rに沿ってX方向に移動自在となっている。このため、制御ユニット9が移動部を制御することで、ノズル洗浄待機ユニット79はX方向に移動される。そして、スリットノズル71がメンテナンス位置に位置決めされた状態で、これらによってノズル洗浄や予備吐出処理を適宜、行い、スリットノズル71の吐出口を次の塗布処理に適した状態に整える。
【0033】
塗布処理中では、既述のように基板Sの上面Sfに存在する異物が基板搬送に伴って塗布位置P2に移動してスリットノズル71に達すると、塗布済の塗布液やスリットノズル71に悪影響が及ぶことがある。そこで、スリットノズル71には、ノズルガード72が取り付けられている。
【0034】
ここで、ノズルガード72としては、例えば図4図5Aおよび図5Bに示すものを使用することができる。すなわち、ノズルガード72は、基板SのY方向のサイズよりも長い長尺状で非可撓性を有する非透明材料、例えば
金属、セラミックス等の突出物と接触しても破損しない程度の比較的堅い材質の部材で構成される。ノズルガード72は、図5Aおよび図5Bに示すように、スリットノズル71から(-X)方向に延びるガード支持部73により支持されている。より詳しくは、ノズルガード72が、Y方向に沿った支持軸74を中心にXZ平面において揺動可能に、当該支持軸74を介してガード支持部73に対して支持される。
【0035】
また、ノズルガード72の後端部、つまり支持軸74よりも上方部分はバネ75によって(-X)方向側へ付勢されるとともに、ノズルガード72の先端部、つまり支持軸74の下方部分はストッパ76によって(-X)方向側への回転が規制されている。これにより、ノズルガード72の先端は(-X)方向側(塗布処理中におけるスリットノズル71のノズル進行方向においてスリットノズル71の前方側)で(+X)方向にのみ回転が可能に構成されている。したがって、ノズルガード72と異物FM1との非接触状態では、ノズルガード72はバネ75による付勢力により鉛直方向Zに沿った状態に保持される。その一方で、塗布処理中にノズルガード72と異物FM1とが接触すると、ノズルガード72の先端が、バネ75による付勢力に逆らって(+X)方向側へ、スリットノズル71に対して相対的に回転移動する。それを回転検知センサ(図示省略)により上記回転移動を検出することで、異物FM1がスリットノズル71に到達する前に、異物FM1の存在を検知することができる。
【0036】
しかしながら、異物FM2が塗布開始位置Ps(図4参照)またはその近傍位置に存在すると、既述の問題が発生することがある。つまり、ノズルガード72の下方位置にチャック51b、51dの保持面51sが存在したままコンタクト動作を行うと、ノズルガード72と保持面51sとが異物FM2を上下方向から挟み込んで押し潰すことがある。そこで、本実施形態では、コンタクト動作を行う際に、上方から見て、ノズルガード72と保持面51sとが互いに離間するように、塗布装置1は構成されている。換言すると、図5Bに示すように、ノズルガード72およびチャック51b、51dを上方から投影したときのX方向領域をそれぞれ「ノズルガード領域R72」および「チャック領域R51」と定義すると、ノズルガード領域R72とチャック領域R51とは重なっていない。したがって、仮にノズルガード72の下方に異物FM2が存在したとしても、図5Bに示すように、コンタクト位置P3に下降中のノズルガード72が異物FM2を押え付けるが、その押し付けに伴って基板Sの一部(ノズルガード72の直下領域)が下方に撓む。また、浮上方式で基板Sを搬送しており、基板Sの下方には空気層(圧力気体層)が存在し、クッションの役割を果たす。これらの要因によって、ノズルガード72による異物FM2の押し潰しは発生しない。しかも、コンタクト動作に続くギャップ調整動作(コンタクト位置P3から塗布位置P2へのノズル上昇)中に、ノズルガード72による異物FM2の押え付け力は徐々に弱まる。その結果、異物FM2の押し潰しを確実に防止することができる。
【0037】
上記のように構成された塗布装置1の各部を制御するために、制御ユニット9が設けられている。この制御ユニット9は、図1に示すように、各種演算処理を行う演算部91(例えば、CPUなど)、基本プログラムおよび各種情報を記憶する記憶部92(例えば、ROMやRAMなど)をバスラインに接続した一般的なコンピュータシステムの構成となっている。バスラインはさらに塗布プログラムなどの記憶を行う固定ディスク93(例えば、ハードディスクドライブなど)と、各種情報を表示する表示部94(例えばディスプレイなど)、操作者からの入力を受け付ける入力部95(例えば、キーボードおよびマウスなど)が接続されている。なお、例えば表示部94と入力部95との機能が一体となったタッチパネルディスプレイなどを用いても良い。さらに、図示を省略するインターフェイスを介して装置各部に設けられたセンサなどから送られてくる信号を受け取り、制御ユニット9の演算部91が塗布プログラムにしたがって装置各部を制御し、以下の説明する塗布処理を実行する。
【0038】
図6図1に示す塗布装置により実行される塗布動作を示すフローチャートである。この塗布装置1では、塗布処理に使用されるスリットノズル71をメンテナンス位置に移動させて予備吐出処理を実行する。また、浮上部3における圧縮空気の噴出および吸引を開始して、搬入される基板Sを浮上させることができるように準備する(ステップS1)。なお、予備吐出処理に先立ってスリットノズル71の洗浄処理が行われてもよい。
【0039】
次に、塗布装置1への基板Sの搬入を開始する(ステップS2)。上流側の別の処理ユニット、搬送ロボット等により処理対象となる基板Sが入力コンベア100に載せられ、コロコンベア101が回転することで基板Sが(+X)方向に搬送される。入力コンベア100と、コロコンベア21の上面が入力コンベア100のコロコンベア101と同じ高さ位置に位置決めされた入力移載部2とが協働することにより、基板Sは圧縮空気の噴出により基板Sに浮力を与える上流浮上ステージ3Aの上部まで搬送されてくる。基板Sが上流浮上ステージ3Aまで搬入されると、上流浮上ステージ3Aに設けられたリフトピンがリフトピン駆動機構34によりその上端が上流浮上ステージ3Aの上面よりも上方に突出する上方位置に位置決めされる。これにより、基板S、より具体的にはリフトピンが当接する基板SのY方向両端部が持ち上げられる。
【0040】
そして、チャック機構51が(-X)方向に移動し、基板S直下の搬送開始位置まで移動してくる(ステップS3)。これに続いて、基板Sがチャック機構51に移載される。それに続いて、チャック機構51のチャック51a~51dが基板Sの周縁部を吸着保持し、その状態のまま(+X)方向に移動する。これによって、基板Sの(+X)側の端部が塗布開始位置Ps(図4参照)に位置するまで、基板Sが搬送される(ステップS4)。基板Sが塗布開始位置Psに到着した段階で、図5Aおよび図5Bに示すように、(+X)側のチャック51b、51dのチャック領域R51はノズルガード領域R72と重なっていない。つまり、上方から見て、ノズルガード72と保持面51sとは互いに離間している。しかも、本実施形態では、ノズルガード72と保持面51sとは、基板Sの厚みよりも長い離間間隔L1だけ離間している。なお、X方向におけるノズルガード72と保持面51sとの相互関係は、塗布開始まで維持される。
【0041】
また、これと並行してスリットノズル71が予備吐出位置から位置P1、P3を経由して塗布位置P2に移動して位置決めされる(ステップS5~S8)。すなわち、ステップS5では、図5Aに示すように、スリットノズル71はノズル駆動機構8により塗布位置P2の上方位置P1に移動する。それに続いて、スリットノズル71のコンタクト位置P3への下降が開始される(ステップS6)。そして、スリットノズル71がコンタクト位置P3に到達していない間(ステップS7で「NO」)、ステップS6に戻ってスリットノズル71の下降が継続される。
【0042】
こうしたスリットノズル71のコンタクト動作中に、ノズルガード72が異物FM2に当接すると、それ以降においてはノズルガード72が異物FM2を押え付けながら下降するが、この下降に応じて基板Sが下方に撓んで異物FM2の押し潰しを防いでいる。そして、スリットノズル71がコンタクト位置P3に到達した時点でスリットノズル71の吐出口711の近傍に付着している塗布液が塗布開始位置Psで基板Sの上面と接触する。これによって、塗布開始位置Psで塗布液のメニスカスが基板Sの上面に形成される。
【0043】
このメニスカス形成後、スリットノズル71はノズル駆動機構8によりコンタクト位置P3から塗布液の厚みに応じた距離だけ上昇し、吐出口711と基板Sの上面との間隔、いわゆる塗布ギャップを調整する。
【0044】
上記塗布ギャップの調整に続いて、塗布動作が開始される(ステップS9)。すなわち、スリットノズル71の吐出口711から吐出される塗布液が基板Sの上面Sfに着液する。また、チャック機構51が基板Sをノズルガード72およびスリットノズル71とステージ面とで挟まれた塗布領域を通過するように定速で搬送することにより、スリットノズル71が基板Sの上面Sfに塗布液を塗布する塗布動作が実行され、基板Sの上面Sfには塗布液による一定厚さの塗布膜CF(図4参照)が形成される。
【0045】
塗布動作は、塗布を終了させるべき終了位置に基板Sが搬送されるまで継続される(ステップS10)。基板Sが終了位置に到達すると(ステップS10において「YES」)、スリットノズル71は塗布位置から離脱してメンテナンス位置に戻され、再び予備吐出処理が実行される。また、基板Sの下流側端部が出力移載部4上に位置する搬送終了位置にチャック機構51が到達する時点で、チャック機構51の移動は停止され、吸着保持が解除される。そして、下流浮上ステージ3Cおよび出力移載部4を介して基板Sは(+X)方向に搬出され(ステップS11)、最終的に下流側ユニットに払い出される。処理すべき次の基板がある場合(ステップS12で「YES」)には上記と同様の処理を繰り返し、なければ(ステップS12で「NO」)処理を終了する。
【0046】
以上のように、第1実施形態によれば、上方から見て、塗布開始位置Psに近接するチャック51b、51dの保持面51sと、ノズルガード72とは互いに離間している。つまり、ノズルガード72の下方に保持面51sは存在しておらず、ノズルガード72の下方に位置する基板Sの下面領域は気体噴射により浮上されているにすぎない。その結果、コンタクト動作においてチャック51b、51dとノズルガード72との挟み込みは発生せず、ノズルガード72による異物FM2の押し潰しを効果的に防止することができる。
【0047】
また、ノズルガード72が異物FM2を押し付けた際に基板Sが撓み、異物FM2に掛かる応力の一部を吸収するため、異物FM2の押し潰しをさらに効果的に防止することができる。ここで、図5Bから明らかなように、ノズルガード領域R72とチャック領域R51とが近づくと、上記基板Sの撓みによる応力低減効果が十分に得られず、むしろ基板Sに掛かるせん断応力が大きなってしまう。これらの点を考慮すると、X方向におけるノズルガード72とチャック51b、51dとの離間間隔L1については、基板Sの厚み以上に設定するのが望ましい。
【0048】
図7は本発明に係る基板処理装置の第2実施形態を示す図である。この第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、チャック51b、51dのX方向サイズおよび配置であり、それ以外の構成は基本的に第1実施形態と同一である。したがって、以下においては、相違点を中心に説明し、同一構成および動作については同一符号を付して説明を省略する。
【0049】
第1実施形態では、チャック51b、51dはノズルガード72に対し(-X)側に配置されているのに対し、第2実施形態では、チャック51b、51dはノズルガード72に対し(+X)側に配置されている。また、このような配置を採用する場合、ノズルガード領域R72から基板Sの(+X)側の端面までの距離が短くなる。そこで、第2実施形態では、ノズルガード72のX方向サイズは第1実施形態のそれらよりも短くなっている。
【0050】
このように第2実施形態においても、上方から見て、塗布開始位置Psに近接するチャック51b、51dの保持面51sと、ノズルガード72とは互いに基板Sの厚み以上の離間間隔L1だけ離間している。したがって、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0051】
ここで、チャック51b、51dのX方向サイズが減少した分だけ、第1実施形態に比べ、チャック51b、51dによる基板Sの保持力が小さくなる。そこで、保持力を高めるために、図8に示すように、チャック51e、51fを追加してもよい(第3実施形態)。
【0052】
図8は本発明に係る基板処理装置の第3実施形態を示す図である。この第3実施形態が第2実施形態と大きく相違する点は、チャック51e、51fが追加されている点のみであり、それ以外の構成は基本的に第2実施形態と同一である。したがって、以下においては、相違点を中心に説明し、同一構成および動作については同一符号を付して説明を省略する。
【0053】
第3実施形態では、ノズルガード72に対し(-X)側にチャック51e、51fが追加されている。つまり、上方から見て、塗布開始位置Psに近接するチャック51b、51d、51e、51fの保持面51sと、ノズルガード72とは互いに基板Sの厚み以上の離間間隔L1、L2だけ離間している。したがって、(+Y)側において、ノズルガード領域R72を(+X)側および(-X)側から挟み込むように、チャック51b、51eが一対で設けられている。このため、チャック51b、51eで挟まれた領域は、下方に窪んだ非保持領域Rnとなっている。また、(-Y)側において、ノズルガード領域R72を(+X)側および(-X)側から挟み込むように、チャック51d、51fが一対で設けられている。このため、チャック51d、51fで挟まれた領域も、下方に窪んだ非保持領域Rnとなっている。そして、第3実施形態では、コンタクト動作の際に、上方から見て非保持領域Rnとノズルガード72とが互いに重なっている。換言すると、ノズルガード72の下方には、非保持領域Rnが広がっており、保持面51sは存在していない。したがって、コンタクト動作においてチャック51b、51d、51e、51fとノズルガード72との挟み込みは発生せず、ノズルガード72による異物FM2の押し潰しを効果的に防止することができる。
【0054】
また、ノズルガード72が異物FM2を押し付けた際に基板Sが撓み、異物FM2に掛かる応力の一部を吸収するため、異物FM2の押し潰しをさらに効果的に防止することができる。また、図8から明らかなように、X方向におけるノズルガード72とチャック51b、51dとの離間間隔L1ならびにノズルガード72とチャック51e、51fとの離間間隔L2を、基板Sの厚み以上に設定しているので、上記基板Sの撓みによる応力低減効果を得ることができる。さらに、チャック51e、51fの追加により基板Sの保持力を第2実施形態よりも高めつつ塗布処理を実行することができる。
【0055】
ところで、第3実施形態では、ノズルガード領域R72を(+X)側および(-X)側から挟み込むように、チャック51b、51eが一対で設けられるとともに、チャック51d、51fが一対で設けられている。ここで、例えば図9に示すように、チャック51b、51eを一体化した構造を有するブロック体のチャック51gと、チャック51d、51fを一体化した構造を有するブロック体のチャック51hと、を設けてもよい(第4実施形態)。
【0056】
図9は本発明に係る基板処理装置の第4実施形態を示す図である。第4実施形態が第3実施形態と大きく相違する点は、基板Sの(+X)側の下面周縁部を保持するチャックとして、X方向(ノズル進行方向)においてノズルガード72の幅よりも広い幅で下方に窪んだ非保持領域Rnを有するブロック体をチャック51g、51hとして用いている点である。これらのチャック51g、51hの上面のうち非保持領域Rnを除く領域が保持面51sとして機能する。そして、第3実施形態と同様に、コンタクト動作の際に、上方から見て非保持領域Rnとノズルガード72とが互いに重なっている。したがって、コンタクト動作においてチャック51g、51hとノズルガード72との挟み込みは発生せず、ノズルガード72による異物FM2の押し潰しを効果的に防止することができる。
【0057】
上記した実施形態では、吸着・走行制御機構52が本発明の「移動部」の一例に相当している。ノズル駆動機構8が本発明の「昇降部」の一例に相当している。チャック51a~51hが本発明の「保持部材」の一例に相当し、これらの組み合わせが本発明の「基板保持部」として機能する。特に、チャック51b、51dが本発明の「第1保持部材」の一例に相当し、チャック51e、51fが本発明の「第2保持部材」の一例に相当している。制御ユニット9が本発明の「制御部」の一例に相当している。ステップS6、S7が本発明の「コンタクト工程」の一例に相当するとともに、ステップS9が本発明の「塗布工程」の一例に相当している。
【0058】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、基板SのY方向のサイズよりも長い長尺状で非可撓性を有する非透明材料によりノズルガード72が構成されているが、特許文献1にも記載されているように短尺状の部材が複数個をY方向に配列されたものを用いてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、「ノズル」の一例としてスリットノズル71を有する基板処理装置に対して本発明を適用しているが、ノズル形状はこれに限定されるものではなく、ノズルガードが一体的に取り付けられたノズル全般に対し、本発明を適用することができる。
【0060】
また、上記実施形態では、上方位置P1が塗布位置P2およびコンタクト位置P3の鉛直上方に設定されている塗布装置1に対し、本発明を適用しているが、上方位置P1の設定はこれに限定されるものではない。例えば上方位置P1が塗布位置P2およびコンタクト位置P3よりも(+X)側に設定されており、斜め上方からコンタクト位置P3に向かって下降するように構成された基板処理装置に対しても、本発明を適用することができる。
【0061】
また、上記実施形態では、(+Y)側のチャック51a、51b、(51e)、(51g)と、(-Y)側のチャック51c、51d、(51f)、(51h)とを基板Sの搬送経路に対して対称に設けているが、非対称な構成であってもよい。また、(+Y)側または(-Y)側にのみチャックを設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
この発明は、基板にノズルから処理液を供給して塗布する基板処理技術全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1…塗布装置(基板処理装置)
3…浮上部
7…塗布機構
8…ノズル駆動機構8(昇降部)
9…制御ユニット(制御部)
51a~51h…チャック(保持部材、基板保持部)
51s…保持面
52…吸着・走行制御機構(移動部)
71…(スリット)ノズル
72…ノズルガード
711…(スリットノズルの)吐出口
Dt…搬送方向
FM2…異物
L1、L2…離間間隔
P3…コンタクト位置
Rn…非保持領域
S…基板
Sf…(基板の)上面
X…ノズル進行方向
Z…鉛直方向
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9