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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 13/00 20060101AFI20240411BHJP
   B05C 5/02 20060101ALI20240411BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
B05C13/00
B05C5/02
B05C11/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022133005
(22)【出願日】2022-08-24
(65)【公開番号】P2024030264
(43)【公開日】2024-03-07
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】池田 文彦
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-86875(JP,A)
【文献】特開2018-113329(JP,A)
【文献】特開2013-111908(JP,A)
【文献】特開2001-244313(JP,A)
【文献】特開2011-88732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00-21/00
B05D 1/00-7/26
B65G 49/00-49/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の周縁部を保持して前記基板を水平に保持する保持部と、
前記保持部により保持される前記基板の下面中央部と対向して配置された上面から流体を噴出して、前記基板を浮上状態かつ水平姿勢に支持する浮上機構と、
前記保持部を水平方向に移動させて、前記浮上機構に支持された前記基板を搬送する移動機構と、
前記浮上機構により支持される前記基板の上面に対向配置され前記基板の上面に処理液を吐出するノズルと
を備え、
前記保持部は、
前記基板の搬送方向に直交する幅方向における前記基板の両端部それぞれに対応して設けられ、前記移動機構により前記搬送方向に移動される1対の走行部材と、
前記走行部材とは別体に構成され、前記1対の走行部材のそれぞれに少なくとも1つずつ取り付けられて前記幅方向における前記基板の端部を保持する保持部材と
を有し、
前記1対の走行部材の少なくとも一方で、前記走行部材に対する前記保持部材の取り付け位置が前記搬送方向および前記幅方向の少なくとも一方において多段階にまたは連続的に変更可能である、塗布装置。
【請求項2】
前記保持部材および前記走行部材の一方には貫通孔が設けられるとともに、他方にはねじ穴が設けられ、
前記貫通孔を挿通されて前記ねじ穴に螺合することにより、前記保持部材と前記走行部材とを結合する固結部材を備える、請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記幅方向および前記搬送方向の少なくとも一方において、前記ねじ穴の配設数が前記貫通孔の配設数よりも大きい、請求項2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記幅方向および前記搬送方向の少なくとも一方において、前記貫通孔の配設数が前記ねじ穴の配設数よりも大きい、請求項2に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記貫通孔が前記幅方向または前記搬送方向を長手方向とする長穴である、請求項2に記載の塗布装置。
【請求項6】
前記基板の下面に当接して前記基板を吸着保持する吸着機構が、前記保持部に設けられている、請求項1ないし5のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項7】
前記浮上機構は、上面が平面に仕上げられて前記保持部に保持される前記基板の前記下面中央部と対向し、前記上面に前記流体を噴出する噴出孔が設けられたステージ部材と、
前記ステージ部材を下面側から支持する支持部と
を有し、
前記支持部に対し前記ステージ部材が着脱可能に取り付けられている、請求項1ないし5のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項8】
前記浮上機構は、前記支持部に結合され、前記幅方向において前記支持部より長い前記ステージ部材を下方からバックアップするサポート部材を有する、請求項7に記載の塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板の下面に流体を吹き付けることで基板を浮上状態で水平姿勢に保持しつつ、基板の上面に処理液を塗布する塗布装置に関するものである。なお、上記基板には、半導体基板、フォトマスク用基板、液晶表示用基板、有機EL表示用基板、プラズマ表示用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの電子デバイス等の製造工程では、基板の表面に例えばレジスト液のような液体を供給し、当該液体を基板に塗布する塗布装置が用いられている。例えば特許文献1に記載の塗布装置は、基板を浮上させた状態で当該基板を搬送しながら液体をスリットノズルに送給してスリットノズルの吐出口から基板の表面に吐出して基板のほぼ全体に液体を塗布する。
【0003】
この塗布装置では、基板の下面中央部に対向させた浮上ステージの上面から気体を吹き付けて基板を浮上させつつ、基板の周縁部をチャック機構で吸着保持することで、基板の姿勢を安定させるとともに水平な搬送方向に基板を搬送する。このようにすることで、大判サイズの基板であってもノズルとの対向位置における姿勢を精密に制御して、塗布膜の厚みを均一にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-113329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の基板の製造現場においては、規格化された標準サイズのものの他に、これとは外形寸法が少しだけ異なる基板が使用されることがある。例えば液晶表示パネル製造用ガラス基板では、一般にG8サイズと称される2160mm×2460mmの基板サイズに対して、長さおよび幅の少なくとも一方が数十mm異なる(例えば2200mm×2500mmといった)いくつかの派生サイズが作られている。
【0006】
一方、塗布装置では特定サイズの基板に対して設計が最適化される。特に上記のように基板を浮上させつつ周縁部を保持して搬送する装置では、基板の水平姿勢を維持することが重要視されることから、基板を保持するための機構部品も想定される基板のサイズに合わせて最適化されることが必要である。その結果として、このように基板サイズが僅かに異なるだけでも、それに合わせた部品の再設計および製造が必要となる。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板を浮上させつつ上面に処理液を塗布する塗布装置において、基板サイズが異なる複数種の基板に対応することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る塗布装置の一の態様は、基板の周縁部を保持して前記基板を水平に保持する保持部と、前記保持部により保持される前記基板の下面中央部と対向して配置された上面から流体を噴出して、前記基板を浮上状態かつ水平姿勢に支持する浮上機構と、前記保持部を水平方向に移動させて、前記浮上機構に支持された前記基板を搬送する移動機構と、前記浮上機構により支持される前記基板の上面に対向配置され前記基板の上面に処理液を吐出するノズルとを備えている。
【0009】
ここで、前記保持部は、前記基板の搬送方向に直交する幅方向における前記基板の両端部それぞれに対応して設けられ、前記移動機構により前記搬送方向に移動される1対の走行部材と、前記走行部材とは別体に構成され、前記1対の走行部材のそれぞれに少なくとも1つずつ取り付けられて前記幅方向における前記基板の端部を保持する保持部材とを有し、前記1対の走行部材の少なくとも一方で、前記走行部材に対する前記保持部材の取り付け位置が前記搬送方向および前記幅方向の少なくとも一方において多段階にまたは連続的に変更可能である。
【0010】
このように構成された発明では、走行部材に対する保持部材の取り付け位置を変更可能である。そのため、保持部材の位置を変更することにより、サイズが異なる種々の基板に対して、当該基板の周縁部を支持することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明において基板の周縁部を保持する保持部では、走行部材に対する保持部材の取り付け位置が変更可能に構成されている。そのため、基板サイズが異なる複数種の基板に対応することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明にかかる塗布装置の一実施形態の全体構成を模式的に示す図である。
図2図1に示す塗布装置の側面図であり、
図3】チャック機構の構造を示す分解組立図である。
図4】基板サイズと保持部材の位置との関係を示す図である。
図5】チャックユニットの他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明にかかる塗布装置の一実施形態の全体構成を模式的に示す図である。この塗布装置1は、図1の左手側から右手側に向けて水平姿勢で搬送される基板Sの上面Sfに塗布液を塗布するスリットコーターである。なお、以下の各図において装置各部の配置関係を明確にするために、基板Sの搬送方向を「X方向」とし、図1の左手側から右手側に向かう水平方向を「+X方向」と称し、逆方向を「-X方向」と称する。また、X方向と直交する水平方向Yのうち、装置の正面側を「-Y方向」と称するとともに、装置の背面側を「+Y方向」と称する。さらに、鉛直方向Zにおける上方向および下方向をそれぞれ「+Z方向」および「-Z方向」と称する。
【0014】
まず図1を用いてこの塗布装置1の構成および動作の概要を説明する。なお、塗布装置1の基本的な構成や動作原理は、本願出願人が先に開示した特開2018-187597号公報に記載されたものと共通している。そこで、本明細書では、塗布装置1の各構成のうち当該公知文献に記載のものと同様の構成を適用可能なもの、およびその記載から構造を容易に理解することのできるものについては詳しい説明を省略することがある。
【0015】
塗布装置1では、基板Sの搬送方向Dt(+X方向)に沿って、入力コンベア100、入力移載部2、浮上ステージ部3、出力移載部4、出力コンベア110がこの順に近接して配置されており、以下に詳述するように、これらにより略水平方向に延びる基板Sの搬送経路が形成されている。なお、以下の説明において基板Sの搬送方向Dtと関連付けて位置関係を示すとき、「基板Sの搬送方向Dtにおける上流側」を単に「上流側」と、また「基板Sの搬送方向Dtにおける下流側」を単に「下流側」と略することがある。この例では、ある基準位置から見て相対的に(-X)側が「上流側」、(+X)側が「下流側」に相当する。
【0016】
処理対象である基板Sは図1の左手側から入力コンベア100に搬入される。入力コンベア100は、コロコンベア101と、これを回転駆動する回転駆動機構102とを備えており、コロコンベア101の回転により基板Sは水平姿勢で下流側、つまり(+X)方向に搬送される。入力移載部2は、コロコンベア21と、これを回転駆動する機能および昇降させる機能を有する回転・昇降駆動機構22とを備えている。コロコンベア21が回転することで、基板Sはさらに(+X)方向に搬送される。また、コロコンベア21が昇降することで基板Sの鉛直方向位置が変更される。このように構成された入力移載部2により、基板Sは入力コンベア100から浮上ステージ部3に移載される。
【0017】
浮上ステージ部3は、基板の搬送方向Dtに沿って3分割された平板状のステージを備える。すなわち、浮上ステージ部3は入口浮上ステージ31、塗布ステージ32および出口浮上ステージ33を備えており、これらの各ステージの上面は互いに同一平面の一部をなしている。入口浮上ステージ31および出口浮上ステージ33のそれぞれの上面には浮上制御機構35から供給される圧縮空気を噴出する噴出孔がマトリクス状に多数設けられており、噴出される気流により押し上げられて基板Sが浮上する。こうして基板Sの下面Sbがステージ上面から離間した状態で水平姿勢に支持される。基板Sの下面Sbとステージ上面との距離、つまり浮上量は、例えば10マイクロメートルないし500マイクロメートルとすることができる。
【0018】
一方、塗布ステージ32の上面では、圧縮空気を噴出する噴出孔と、基板Sの下面Sbとステージ上面との間の空気を吸引する吸引孔とが交互に配置されている。浮上制御機構35が噴出孔からの圧縮空気の噴出量と吸引孔からの吸引量とを制御することにより、基板Sの下面Sbと塗布ステージ32の上面との距離が精密に制御される。これにより、塗布ステージ32の上方を通過する基板Sの上面Sfの鉛直方向位置が規定値に制御される。浮上ステージ部3の具体的構成としては、例えば特許第5346643号公報に記載のものを適用可能である。
【0019】
なお、入口浮上ステージ31には、図には現れていないリフトピンが配設されており、浮上ステージ部3にはこのリフトピンを昇降させるリフトピン駆動機構34が設けられている。
【0020】
入力移載部2を介して浮上ステージ部3に搬入される基板Sは、コロコンベア21の回転により(+X)方向への推進力を付与されて、入口浮上ステージ31上に搬送される。入口浮上ステージ31、塗布ステージ32および出口浮上ステージ33は基板Sを浮上状態に支持するが、基板Sを水平方向に移動させる機能を有していない。浮上ステージ部3における基板Sの搬送は、入口浮上ステージ31、塗布ステージ32および出口浮上ステージ33の下方に配置された基板搬送部5により行われる。
【0021】
基板搬送部5は、基板Sの下面周縁部に部分的に当接することで基板Sを下方から支持するチャック機構51と、チャック機構51の保持部材513に設けられた吸着パッド(図示省略)に負圧を与えて基板Sを吸着保持させる機能およびチャック機構51をX方向に往復走行させる機能を有する吸着・走行制御機構52とを備えている。チャック機構51が基板Sを保持した状態では、基板Sの下面Sbは浮上ステージ部3の各ステージの上面よりも高い位置に位置している。したがって、基板Sは、チャック機構51により周縁部を吸着保持されつつ、浮上ステージ部3から付与される浮力により全体として水平姿勢を維持する。
【0022】
入力移載部2から浮上ステージ部3に搬入された基板Sをチャック機構51が保持し、この状態でチャック機構51が(+X)方向に移動する。これにより、基板Sが入口浮上ステージ31の上方から塗布ステージ32の上方を経由して出口浮上ステージ33の上方へ搬送される。搬送された基板Sは、出口浮上ステージ33の(+X)側に配置された出力移載部4に受け渡される。
【0023】
浮上ステージ部3の各ステージのうち出口浮上ステージ33については、その上面位置がチャック機構51の上面位置よりも低くなる下部位置と、上面位置がチャック機構51の上面位置よりも高くなる上部位置との間で昇降可能となっている。この目的のために、出口浮上ステージ33は昇降駆動機構36によって支持されている。昇降駆動機構36は、制御ユニット9からの制御指令に応じて出口浮上ステージ33を昇降させ、処理の進行に応じた所定の高さに位置決めする。
【0024】
出力移載部4は、コロコンベア41と、これを回転駆動する機能および昇降させる機能を有する回転・昇降駆動機構42とを備えている。コロコンベア41が回転することで、基板Sに(+X)方向への推進力が付与され、基板Sは搬送方向Dtに沿ってさらに搬送される。また、コロコンベア41が昇降することで基板Sの鉛直方向位置が変更される。出力移載部4により、基板Sは出口浮上ステージ33の上方から出力コンベア110に移載される。
【0025】
出力コンベア110は、コロコンベア111と、これを回転駆動する回転駆動機構112とを備えており、コロコンベア111の回転により基板Sはさらに(+X)方向に搬送され、最終的に塗布装置1外へと払い出される。なお、入力コンベア100および出力コンベア110は塗布装置1の構成の一部として設けられてもよいが、塗布装置1とは別体のものであってもよい。また例えば、塗布装置1の上流側に設けられる別ユニットの基板払い出し機構が入力コンベア100として用いられてもよい。また、塗布装置1の下流側に設けられる別ユニットの基板受け入れ機構が出力コンベア110として用いられてもよい。
【0026】
このようにして搬送される基板Sの搬送経路上に、基板Sの上面Sfに塗布液を塗布するための塗布ユニット7が配置される。塗布ユニットSはスリットノズルであるノズル71を有している。ノズル71には、図示しない塗布液供給部から塗布液が供給され、ノズル下部に下向きに開口する吐出口から塗布液が吐出される。
【0027】
ノズル71は、塗布ユニット7の位置決め機構79によりX方向およびZ方向に移動位置決め可能となっている。位置決め機構79により、ノズル71が塗布ステージ32の上方の塗布位置(点線で示される位置)に位置決めされる。塗布位置に位置決めされたノズル71から塗布液が吐出されて、塗布ステージ32との間を搬送されてくる基板Sに塗布される。こうして基板Sへの塗布液の塗布が行われる。
【0028】
基板Sの搬送経路の上方には、ノズル71に対しメンテナンスを行うためのメンテナンスユニット8が設けられている。メンテナンスユニット8は、バット80内に設けられた、洗浄液貯留槽82と、ノズルクリーナ81と、洗浄液貯留槽82およびノズルクリーナ81の動作を制御するメンテナンス制御機構89とを備えている。
【0029】
ノズル71が、実線で示されるノズルクリーナ81の上方位置(クリーニング位置)にある状態では、ノズルクリーナ81によりノズル71の吐出口の周囲に付着した塗布液が除去される。このように塗布位置へ移動させる前のノズル71に対してクリーニング処理を行わせることにより、塗布位置での塗布液の吐出をその初期段階から安定させることができる。
【0030】
また、位置決め機構79は、ノズル71をノズル下端が洗浄液貯留槽82内に貯留される洗浄液に接液する位置(待機位置)に位置決めすることが可能である。ノズル71を用いた塗布処理が実行されないときには、ノズル71はこの待機位置に位置決めされる。なお、上記洗浄液に超音波を付与してノズル下端を洗浄する構成としてもよい。
【0031】
この他、塗布装置1には、装置各部の動作を制御するための制御ユニット9が設けられている。制御ユニット9は所定の制御プログラムや各種データを記憶する記憶手段、この制御プログラムを実行することで装置各部に所定の動作を実行させるCPUなどの演算手段、ユーザや外部装置との情報交換を担うインターフェース手段などを備えている。
【0032】
図2図1に示す塗布装置の側面図であり、具体的には塗布装置1の要部を(+X)方向に見た図である。塗布ユニット7は、図2に示すように架橋構造を有している。具体的には、塗布ユニット7は、浮上ステージ部3の上方でY方向に延びる梁部材731のY方向両端部を、基台10から上方に立設された1対の柱部材732,733で支持した構造を有している。柱部材732には例えばボールねじ機構により構成された昇降機構734が取り付けられており、昇降機構734により梁部材731の(+Y)側端部が昇降自在に支持されている。また、柱部材733には例えばボールねじ機構により構成された昇降機構735が取り付けられており、昇降機構735により梁部材731の(-Y)側端部が昇降自在に支持されている。
【0033】
制御ユニット9からの制御指令に応じて昇降機構734,735が連動することにより、梁部材731が水平姿勢のまま鉛直方向(Z方向)に移動する。上記した昇降機構としては、ボールねじ機構に代えて例えばリニアモーター、直動ガイド、エアシリンダ、ソレノイドのような各種アクチュエータ等、適宜の直線運動機構が用いられてもよい。
【0034】
梁部材731の中央下部には、ノズル71が吐出口711を下向きにして取り付けられている。したがって、昇降機構734,735が作動することで、ノズル71のZ方向への移動が実現される。
【0035】
柱部材732,733は基台10上においてX方向に移動可能に構成されている。具体的には、基台10の(+Y)側および(-Y)側端部上面のそれぞれに、X方向に延設された1対の走行ガイド74L,74Rが取り付けられている。柱部材732はその下部に取り付けられたスライダ736を介して(+Y)側の走行ガイド74Lに係合される。スライダ736は走行ガイド74Lに沿ってX方向に移動自在となっている。同様に、柱部材733はその下部に取り付けられたスライダ737を介して(-Y)側の走行ガイド74Rに係合され、X方向に移動自在となっている。
【0036】
また、柱部材732,733はリニアモーター75L,75RによりX方向に移動される。具体的には、リニアモーター75L,75Rのマグネットモジュールが固定子として基台10にX方向に沿って延設され、コイルモジュールが移動子として柱部材732,733それぞれの下部に取り付けられている。制御ユニット9からの制御指令に応じてリニアモーター75L,75Rが作動することで、塗布ユニット7全体がX方向に沿って移動する。これにより、ノズル71のX方向への移動が実現される。柱部材732,733のX方向位置については、スライダ736,737の近傍に設けられたリニアスケール76L,76Rにより検出可能である。昇降機構734,735と同様に、この場合においても、リニアモーターに代えて、ボールねじ機構、直動ガイド等の適宜の直線運動機構により塗布ユニット7の移動が実現されてもよい。
【0037】
このように、昇降機構734,735が動作することによりノズル71がZ方向に移動し、リニアモーター75L,75Rが動作することによりノズル71がX方向に移動する。すなわち、制御ユニット9がこれらの機構を制御することにより、ノズル71の各停止位置(塗布位置、クリーニング位置、待機位置等)への位置決めが実現される。したがって、昇降機構734,735、リニアモーター75L,75Rおよびこれらを制御する制御ユニット9等が一体として、図1の位置決め機構79として機能している。
【0038】
次にメンテナンスユニット8について説明する。図1に示したように、メンテナンスユニット8は、バット80内にノズルクリーナ81および洗浄液貯留槽82が収容された構造を有している。図2に示すように、バット80はY方向に延設された梁部材861により支持され、梁部材861の両端部が1対の柱部材862,863により支持されている。1対の柱部材862,863はY方向に延びるプレート864のY方向両端部に取り付けられている。
【0039】
プレート864のY方向両端部の下方には、基台10上に1対の走行ガイド84L,84RがX方向に延設されている。プレート864のY方向両端部は、スライダ866,867を介して走行ガイド84L,84Rに係合されている。このため、メンテナンスユニット8が走行ガイド84L,84Rに沿ってX方向に移動可能となっている。
【0040】
このようにメンテナンスユニット8はX方向に移動可能である。ただし、本実施形態の塗布装置1の動作においては、メンテナンスユニット8をX方向に移動させる局面は存在しない。例えば装置全体のメンテナンスや部品交換等の際に、ユーザの要求に応じてメンテナンスユニット8を移動させることは可能である。このための移動はオペレーターにより手動でなされてもよく、リニアモーター等、適宜の直線運動機構によって駆動されてもよい。
【0041】
次にチャック機構51の構造について図2を参照して説明する。チャック機構51は、XZ平面に関して互いに対称な形状を有しY方向に離隔配置された1対のチャックユニット51L,51Rを備える。これらのうち(+Y)側に配置されたチャックユニット51Lは、基台10にX方向に延設された走行ガイド57LによりX方向に走行可能に支持されている。具体的には、チャックユニット51Lは、上面が平坦に仕上げられX方向に延設された平板状のベース部512を備えている。ベース部512にはスライダ511が設けられ、スライダ511が走行ガイド57Lに係合される。これにより、ベース部512は走行ガイド57Lに沿ってX方向に走行可能になっている。
【0042】
ベース部512の上面には、上端部に後述する吸着パッドが設けられた保持部材513が設けられている。図1に示されるように、保持部材513は、基板SのX方向における両端部位置に対応して、X方向に位置を異ならせて2個配置されている。ベース部512が走行ガイド57Lに沿ってX方向に移動すると、これと一体的に2つの保持部材513,513がX方向に移動する。なお、ベース部512は2ピースに分割され、これらがX方向に一定の距離を保ちながら移動することで見かけ上一体のベース部として機能する構造であってもよい。この距離を基板の長さに応じて設定すれば、種々の長さの基板に対応することが可能となる。
【0043】
チャックユニット51Lは、リニアモーター58LによりX方向に移動可能となっている。すなわち、リニアモーター58Lのマグネットモジュールが固定子として基台10にX方向に延設され、コイルモジュールが移動子としてチャックユニット51Lの下部に取り付けられている。制御ユニット9からの制御指令に応じてリニアモーター58Lが作動することで、チャックユニット51LがX方向に沿って移動する。チャックユニット51LのX方向位置についてはリニアスケール59Lにより検出可能である。
【0044】
(-Y)側に設けられたチャックユニット51Rも同様に、ベース部512と保持部材513とを備えている。ただし、その形状は、XZ平面に関してチャックユニット51Lとは対称なものとなっている。ベース部512はスライダ511により走行ガイド57Rに係合される。また、チャックユニット51Rは、リニアモーター58RによりX方向に移動可能となっている。すなわち、リニアモーター58Rのマグネットモジュールが固定子として基台10にX方向に延設され、コイルモジュールが移動子としてチャック部材51Rの下部に取り付けられている。制御ユニット9からの制御指令に応じてリニアモーター58Rが作動することで、チャックユニット51RがX方向に沿って移動する。チャック部材51RのX方向位置についてはリニアスケール59Rにより検出可能である。
【0045】
制御ユニット9は、チャックユニット51L,51RがX方向において常に同一位置となるように、これらの位置制御を行う。これにより、1対のチャックユニット51L,51Rが見かけ上一体のチャック機構51として移動することになる。チャックユニット51L,51Rを機械的に結合する場合に比べ、チャック機構51と浮上ステージ部3との干渉を容易に回避することが可能となる。
【0046】
計4つの保持部材513はそれぞれ、保持される基板Sの四隅に対応して配置される。すなわち、チャックユニット51Lの2つの保持部材513,513は、基板Sの(+Y)側周縁部であって搬送方向Dtにおける上流側端部と下流側端部とをそれぞれ保持する。一方、チャックユニット51Rの2つの保持部材513,513は、基板Sの(-Y)側周縁部であって搬送方向Dtにおける上流側端部と下流側端部とをそれぞれ保持する。各保持部材513の吸着パッドには必要に応じて負圧が供給され、これにより基板Sの四隅がチャック機構51により下方から吸着保持される。
【0047】
チャック機構51が基板Sを保持しながらX方向に移動することで基板Sが搬送される。このように、リニアモーター58L,58R、各保持部材513に負圧を供給するための機構(図示せず)、これらを制御する制御ユニット9等が一体として、図1の吸着・走行制御機構52として機能している。
【0048】
図1および図2に示すように、チャック機構51は、浮上ステージ部3の各ステージ、すなわち入口浮上ステージ31、塗布ステージ32および出口浮上ステージ33の上面よりも上方に基板Sの下面を保持した状態で基板Sを搬送する。チャック機構51は、基板Sのうち各ステージ31,32,33と対向する中央部分よりもY方向において外側の周縁部の一部を保持するのみであるため、基板Sの中央部は周縁部に対し下方に撓むことになる。浮上ステージ部3は、このような基板Sの中央部に下方から気体を吹き付けることで、基板Sの鉛直方向位置を制御して水平姿勢に維持する機能を有する。
【0049】
浮上ステージ部3のうち、最も高精度な平面度および高さ設定が必要とされる塗布ステージ32については、堅牢な支持部320により支持されている。具体的には、塗布ステージ32の下面側が、温度変化による形状変化が極めて小さい例えば石材で平面精度の高い平板状に形成された、サブステージ321によりバックアップされている。そして、サブステージ321は脚部322により支持されている。
【0050】
図3はチャック機構の構造を示す分解組立図である。ここでは基板Sの進行方向に対して左側に位置するチャックユニット51Lについて説明するが、右側のチャックユニット51Rも構造は同じである。チャックユニット51Lは、X方向を長手方向として延びる平板状のベース部512と、ベース部512に取り付けられた2個の保持部材513とを有している。保持部材513の各々は、ベース部512に対し着脱自在に構成され、例えばボルト等の固結部材514によりベース部512に結合されている。
【0051】
保持部材513の上端は平坦に仕上げられ、この上面には少なくとも1つ(この例では2つ)の吸着パッド518が設けられている。後述する負圧付与部52から吸着パッド518に負圧が供給されることで、保持部材513は吸着パッド518を基板Sの下面Sbに当接させて基板Sを吸着保持することができる。
【0052】
ベース部512の上面は平坦に仕上げられ、保持部材513を取り付けるためのねじ穴515が複数設けられている。一方、保持部材513には固結部材514を挿通するための貫通孔516が穿設されている。保持部材513の貫通孔516に挿通された固結部材514がベース部512のねじ穴515に螺合することにより、保持部材513がベース部512に結合される。
【0053】
ここで、ベース部512のねじ穴515は、保持部材513の貫通孔516よりも多数設けられている。具体的には、保持部材513には、X方向において複数の(この例では3個の)貫通孔516が一定ピッチで設けられている。一方、ベース部512上では、X方向において、保持部材513に設けられた貫通孔516と同一ピッチで、かつ保持部材513上の貫通孔516よりも多数の(この例では5個の)ねじ穴515が配列されている。さらに、ベース部512上では、このようにX方向に並ぶねじ穴515の列が、Y方向に位置を異ならせて複数(この例では3列)設けられている。
【0054】
このため、ベース部512に対する保持部材513の取り付け位置は一意でなく、X方向およびY方向のそれぞれに複数用意されていることになる。つまり、ベース部512上において、保持部材513は多段階の位置を採り得る。ベース部512の(-X)側端部、(+X)側端部のそれぞれにおいて、このように保持部材513の取り付け位置が複数用意されている。
【0055】
ベース部512に取り付けられた保持部材513のそれぞれに対応して、負圧付与部52がベース部512に取り付けられている。負圧付与部52は、内部にマニホールド空間となる空洞が形成されたマニホールド部521と、マニホールド部521に接続されたフレキシブルチューブ522とを有している。保持部材513がベース部512に取り付けられた状態で、保持部材513に設けられ吸着パッド518に連通する吸気口519に、フレキシブルチューブ522が接続される。マニホールド部521の内部空間は、ベース部512に接続されたケーブルキャリア53内の配管を通じて図示しない負圧発生源に接続されている。
【0056】
したがって、負圧発生源から供給される負圧がマニホールド部521およびフレキシブルチューブ522を介して吸着パッド518に供給され、これにより基板Sの下面のうち周縁部が吸着保持される。
【0057】
また、ベース部512の両端部よりも内側の中央部にも複数のねじ穴517が設けられてもよい。こうすることで、図3に点線で示すように、ベース部512に対し保持部材513を追加的に取り付けることが可能となる。特に大判の基板Sに対しては、基板Sの四隅だけでなく搬送方向における中間部分も支持するようにすることで、その姿勢をより安定的に維持することが可能である。また例えば、X方向における長さが通常基板の半分以下である複数枚の基板を一括して保持することも可能になる。
【0058】
塗布装置1の処理対象となる基板Sとしては種々のサイズのものがあり得るが、実際にはいくつかの標準的なサイズが広く用いられている。ただし、用途によってはこのような標準的サイズから僅かに異なるサイズのものが用いられる場合がある。例えば液晶表示装置製造用のガラス基板では、標準的なG8サイズに対してG8.5、G8.6等の派生サイズが存在している。これらの派生サイズの標準サイズとの差異は、長さおよび幅とも数十mm程度である。このような小さなサイズの差異に対して、本実施形態のチャックユニット51では、ベース部512に対する保持部材513の取り付け位置を変更することにより対応することが可能となっている。
【0059】
図4は基板サイズと保持部材の位置との関係を示す図である。ここでは幅方向(Y方向)においてサイズが僅かに異なる2つの基板S1,S2を例として採り上げる。図4(a)に示すように、想定される基板のうち比較的幅の小さい基板S1が用いられる場合には、ベース部512に設けられたねじ穴515のうち、最も内側(チャックユニット51Lから見れば(-Y)側)の1組が使用されて保持部材513が取り付けられる。こうすることで、基板S1の周縁部がチャック機構51により保持される。
【0060】
基板S1の表面(上面)のうち、チャック機構51により吸着保持される領域Rtよりも内側で、かつ下面側が塗布ステージ32によりバックアップされた領域Reが、高さが精密に制御されて均質な塗布膜を形成可能な有効領域となる。
【0061】
一方、より幅の広い基板S2に対しては、図4(b)に示すように、中央または外側のねじ穴515を使用して保持部材513を取り付けることで、当該基板S2の周縁部を保持することが可能となる。保持部材513の配置を図4(a)の状態から変えずに基板S2を保持した場合、基板S2はその周縁部よりも内側で保持されることとなり、周縁部の姿勢の管理ができなくなって基板S2が波打つことがある。基板サイズに応じて保持部材513の位置を変えることで、この問題を解消することができる。
【0062】
ただし、塗布ステージ32のサイズが同じであれば、有効領域Reの拡大は限定的である。基板サイズが大きくなった場合でも有効領域Reを拡大する必要がない場合には、図4(b)に示すように保持部材513の位置のみ変更すればよい。
【0063】
一方、基板サイズの拡大に伴い有効領域Reも拡大したい場合には、拡大された有効領域Reの全体が塗布ステージ32によりバックアップされていることが望ましい。例えば図4(c)に示すように、塗布ステージ32に代えて、基板サイズに対応したサイズを有する塗布ステージ32aを装着することができる。この場合、塗布ステージ32aの端部が延伸されることでサブステージ321によるバックアップが受けられない状態となると、塗布ステージ32a上面の平面精度の確保が困難となり、例えば温度ムラによる表面の湾曲が問題となり得る。
【0064】
そこで、サブステージ321の側方にもサポート部材323を取り付けることで、サブステージ321を変更することなく、塗布ステージ32aへのバックアップが塗布ステージ32aの端部にまで及ぶようにすることができる。これにより、有効領域Reをより外側まで拡張することができる。サブステージ321との温度差による歪みが生じないように、サポート部材323はサブステージ321と同じ素材(例えば石材)で形成されることが望ましい。また、サポート部材323はサブステージ321と結合されていることが望ましい。
【0065】
なお、ここではY方向、つまり基板Sの搬送方向Dtと直交する幅方向における基板サイズの変更への対応について説明したが、基板Sの搬送方向Dt、つまりX方向における基板サイズの変更についても同様にして対応することができる。すなわち、固定部材514を取り付けるねじ穴515の位置をX方向に異ならせることで、X方向の基板サイズ変更に対応することができる。特にX方向に対しては、2つの保持部材513の間で取り付け位置の組み合わせを変えることで、多様なサイズに対応することが可能である。
【0066】
このように、ベース部512に対する保持部材513の取り付け位置を、X方向およびY方向に予め複数用意しておき、基板サイズに応じて取り付け位置を変更することで、基板Sのサイズ変更に対応することができる。基板Sの幅が変更される際には塗布ステージ32のサイズも変更されることが好ましいが、上記のようにすることで、少なくとも基板Sを搬送する機構については既存の部品をそのまま使うことができ、大規模な変更を必要としない。
【0067】
吸着パッド518への負圧の供給は、フレキシブルチューブ522を介して行われる。このため、保持部材513の位置変更に対応することが可能であり、保持部材513がどの位置に取り付けられた場合でも、吸着パッド518に対し良好に負圧を供給し、基板Sを確実に吸着保持することが可能である。
【0068】
なお、ここではベース部512に多数のねじ穴515を設けることにより、ベース部512に対する保持部材513の取り付け位置を変更可能としている。これに代えて、またはこれに加えて、次に説明するように、取り付け位置を変更可能とするための機構を保持部材513側に設けてもよい。
【0069】
図5はチャックユニットの他の構成例を示す図である。図5(a)に示す変形例では、保持部材513aに、複数の(この例では3個の)貫通孔516がX方向に並んでなる列が、Y方向に3列形成されている。一方、ベース部512aには、X方向に複数の(この例では5個の)ねじ穴515が形成されている。このような構成では、固結部材514を挿通する貫通孔516を選択することで、Y方向における保持部材513aの位置を多段階に変更することができる。また、固結部材514を螺合させるねじ穴515を選択することで、X方向における保持部材513aの位置を多段階に変更することができる。
【0070】
図5(b)に示す変形例では、ベース部512bにおけるねじ穴515の配列は上記変形例と同じである。一方、保持部材513bには、Y方向を長手方向とする長穴(スロット穴)516bが形成されている。したがって、X方向においては上記と同様に多段階に保持部材513bの位置を設定可能であるとともに、Y方向には保持部材513bの位置を連続的に変更設定することが可能である。このような構成によれば、サイズが僅かに異なる種々のサイズの基板Sに対して、保持部材513bの位置を最適化することが可能である。
【0071】
さらなる変形例として、上記した貫通孔およびねじ穴の配置を適宜変更または組み合わせて用いることが可能である。例えば図3に示すベース部512と、図5(a)に示す保持部材513aとを組み合わせれば、ベース部512に対する保持部材513bの位置をよりきめ細かく調整することが可能となる。この場合、ベース部512上におけるねじ穴515のY方向の配設ピッチと、保持部材513b上における貫通孔516のY方向の配設ピッチとが互いに異なっていることがより好ましい。こうすることで、ベース部512上のねじ穴515と、保持部材513b上の貫通孔516との組み合わせにより実現される保持部材513bの位置を細かく変更することができる。
【0072】
また例えば、保持部材に設けられる長穴をX方向に延びるようにしてもよい。このような構成によれば、X方向において保持部材の取り付け位置を連続的に変化させることが可能となる。この場合、Y方向については、図3に示すようにベース部512側にY方向に並ぶ複数のねじ穴515を設けることで、多段階の位置変更が可能である。
【0073】
このような基板サイズ変更に伴う保持部材513の取り付け位置の変更は、例えばロット単位で行われるものであり、これを変更するための段取り替えはオペレーターの作業により行われる。基板サイズに合わせた精密な位置決めのためには、適宜の調整用治具が適用されてよい。また、基板Sを水平姿勢に支持するという目的のためには、各保持部材513の高さが規定通りに揃っていることが重要である。そのために、ベース部512の上面および保持部材513の下面については、高い平面度に仕上げられていることが望ましい。また必要に応じて、ベース部512と保持部材513との間に高さ調整用のシムが挿入されてもよい。
【0074】
以上のように、上記実施形態では、基板Sを保持し搬送するチャック機構51は、基板Sの搬送方向Dtに走行する1対のチャックユニット51L,51Rを備えている。各チャックユニット51L,51Rでは、ベース部512に対する保持部材513の取り付け位置が、搬送方向および幅方向の少なくとも一方において、多段階に、または連続的に変更可能である。このため、基板サイズの変更に応じて保持部材513の取り付け位置を変更設定することにより、種々のサイズの基板に対し、当該基板の周縁部を保持部材513により保持することが可能となっている。
【0075】
このため、基板のサイズ変更に伴う装置各部の設計変更を不要とし、あるいは最小限に抑えることが可能となる。そのため、サイズ変更に伴う装置コストの上昇を抑えることが可能である。
【0076】
以上説明したように、上記実施形態の塗布装置1においては、浮上ステージ部3が本発明の「浮上機構」として機能しており、そのうち塗布ステージ32が本発明の「ステージ部材」に、サブステージ321および脚部322が一体として本発明の「支持部」として機能している。また、チャック機構51が本発明の「保持部」に相当しており、ベース部512,512、保持部材513が、それぞれ本発明の「1対の走行部材」、「保持部材」として機能している。また、負圧付与部52および吸着パッド518が、本発明の「吸着機構」として機能している。
【0077】
また、走行ガイド57L,57Rおよびリニアモーター58L,58Rが一体として、本発明の「移動機構」として機能している。また、上記実施形態では、スリットノズル71が本発明の「ノズル」として機能している。
【0078】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、ベース部512に対する取り付け位置の変更により、同一形状の保持部材513で複数サイズの基板Sに対応している。これに加えて、より多様な基板サイズに対応可能とするために、形状の異なる複数種の保持部材が用意されてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、Y方向に1対設けられたチャックユニット51L,51Rのそれぞれが、ベース部512に対する保持部材513の取り付け位置を変更可能な構造となっている。これにより、Y方向における基板Sの中心をスリットノズル71の中心と揃えることが可能である。一方、例えば基板サイズの変化が軽微である場合などでは、いずれか一方のチャックユニットで取り付け位置の調整を行うようにしてもよい。
【0080】
また、上記実施形態のチャック機構51は、保持部材513に設けられた貫通孔516に固結部材514を挿通し、これをベース部512に設けられたねじ穴515に螺合させることにより、ベース部512に対して保持部材513を取り付ける構造となっている。したがって、保持部材513の着脱作業は上方からのアクセスにより行われることとなる。これとは逆に、ベース部512に貫通孔を、保持部材513にねじ穴を設けて、下方からのアクセスで着脱を行う構造としてもよい。また、ベース部および保持部材の形状の工夫により、側方からのアクセスで着脱作業を行える構造としてもよい。
【0081】
また、上記実施形態のチャック機構51は、上面に吸着パッド518が設けられた保持部材513が基板Sの下面Sbに当接して基板Sを吸着保持する。しかしながら、基板保持の態様はこれに限定されず、例えば基板の周縁部を把持する機構を用いて基板を支持するものであってもよい。
【0082】
さらに、上記実施形態では、基板Sの表面Sfに塗布液を供給する塗布装置1に対して本発明を適用しているが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではない。すなわち、ノズルに処理液を送給することで当該ノズルから基板の表面に処理液を供給しながら、基板をノズルに対して相対的に移動させて所定の処理を施す基板処理技術全般に適用可能である。
【0083】
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、本発明に係る塗布装置は、例えば、保持部材および走行部材の一方に貫通孔が設けられるとともに他方にはねじ穴が設けられ、貫通孔を挿通されてねじ穴に螺合することにより保持部材と走行部材とを結合する固結部材を備える構成であってもよい。このような構成によれば、固結部材の着脱により、保持部材と走行部材とを容易に結合および分離することが可能であり、取り付け位置を変更するための調整作業を簡単に行うことが可能となる。
【0084】
より具体的には、幅方向および搬送方向の少なくとも一方において、ねじ穴の配設数が貫通孔の配設数よりも大きくなるようにすることができる。また、これとは逆に、幅方向および搬送方向の少なくとも一方において、貫通孔の配設数がねじ穴の配設数よりも大きくなるようにしてもよい。これらのいずれの構成でも、固結部材を挿通する貫通孔とねじ穴との組み合わせを変えることにより、保持部材の取り付け位置を多段階に変更することが可能である。
【0085】
また例えば、貫通孔が幅方向または搬送方向を長手方向とする長穴とされてもよい。このような構成によれば、走行部材に対する保持部材の取り付け位置を、長穴の長さの範囲で連続的に変更設定することが可能となる。
【0086】
また、本発明に係る塗布装置では、例えば基板の下面に当接して基板を吸着保持する吸着機構が保持部に設けられてもよい。このような構成によれば、基板の下面側からの当接のみで基板を保持することが可能であり、基板の側面および上面側を開放した状態で基板を保持することができる。したがって、基板の上面側での処理液の塗布が、保持部に支障されることなく実行可能である。
【0087】
また例えば、浮上機構は、上面が平面に仕上げられて保持部に保持される基板の下面中央部と対向し、上面に流体を噴出する噴出孔が設けられたステージ部材と、ステージ部材を下面側から支持する支持部とを有し、支持部に対しステージ部材が着脱可能に取り付けられた構造とすることができる。このような構成によれば、基板サイズの変更に応じて必要な場合には、異なるサイズのステージ部材を取り付けて使用することが可能となる。すなわち、ステージ部材の交換により、異なるサイズの基板に対応可能である。
【0088】
この場合、浮上機構は、支持部に結合され幅方向において支持部より長いステージ部材を下方からバックアップするサポート部材を有していてもよい。例えばステージ部材が幅方向において支持部よりも長くなる場合、ステージ部材の周縁部が撓むことで上面の平面度が低下することがあり得る。この部分を下方からバックアップするサポート部材を支持部に結合することで、このような撓みを抑制し、ステージ部材上面の平面度を維持することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0089】
この発明は、基板を浮上状態かつ水平姿勢に支持しながら搬送し、基板の上面に処理液を塗布する塗布装置全般に適用可能であり、塗布される処理液の種類としては各種のものを適用可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 塗布装置
3 浮上ステージ部(浮上機構)
32 塗布ステージ(ステージ部材)
51 チャック機構(保持部)
52 負圧付与部(吸着機構)
57L,57R 走行ガイド(移動機構)
58L,58R リニアモーター(移動機構)
71 スリットノズル(ノズル)
320 支持部
321 サブステージ(支持部)
322 脚部(支持部)
323 サポート部材
512 ベース部(走行部材)
513 保持部材
514 固結部材
515 ねじ穴
516 貫通孔
518 吸着パッド(吸着機構)
S 基板
図1
図2
図3
図4
図5