(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240411BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
H01L21/304 643A
H01L21/306 R
(21)【出願番号】P 2022151741
(22)【出願日】2022-09-22
【審査請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 亨
(72)【発明者】
【氏名】青木 陸太
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-82650(JP,A)
【文献】特開2015-191952(JP,A)
【文献】特開2020-47857(JP,A)
【文献】特開2019-176125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持して回転させる基板保持部と、
前記基板保持部によって回転される前記基板に、硫酸および過酸化水素水を混合した硫酸過酸化水素水混合液を供給する混合液供給部と
を備え、
前記混合液供給部は、
第1期間に、前記硫酸過酸化水素水混合液を第1流量で前記基板に供給し、
前記第1期間の後の第2期間に、前記硫酸過酸化水素水混合液を前記第1流量よりも少ない第2流量で前記基板に供給し、
前記第2期間において前記硫酸過酸化水素水混合液の前記硫酸の比率は、前記第1期間において前記硫酸過酸化水素水混合液の前記硫酸の比率よりも小さい、基板処理装置。
【請求項2】
前記混合液供給部が前記基板に前記硫酸過酸化水素水混合液を供給する前に、前記基板にエッチング液を供給するエッチング液供給部をさらに備える、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記エッチング液供給部は、前記エッチング液としてフッ酸または希フッ酸を前記基板に供給する、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記混合液供給部は、130℃以上200℃以下の前記硫酸と室温の前記過酸化水素水とを混合して生成した前記硫酸過酸化水素水混合液を前記基板に供給する、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記混合液供給部は、
前記第1期間において前記硫酸および前記過酸化水素水を4:1~9:1の比率で混合した前記硫酸過酸化水素水混合液を前記基板に供給し、
前記第2期間において前記硫酸および前記過酸化水素水を2:1~3:1の比率で混合した前記硫酸過酸化水素水混合液を前記基板に供給する、請求項1から4のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記第2期間は、前記第1期間よりも長い、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記基板保持部は、前記第1期間において前記基板を第1回転速度で回転した後に、前記第2期間において前記基板を第2回転速度で回転し、
前記第2回転速度は、前記第1回転速度よりも小さい、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記混合液供給部は、前記第2期間の後に、前記基板に前記過酸化水素水を供給する、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記基板からの前記硫酸過酸化水素水混合液の液滴の飛散を抑制する飛散抑制部材をさらに備える、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項10】
基板保持部によって保持されて回転される基板に、硫酸および過酸化水素水を混合した硫酸過酸化水素水混合液を供給して前記硫酸過酸化水素水混合液で前記基板を処理するSPM処理工程を包含する、基板処理方法であって、
前記SPM処理工程は、
第1期間に、前記硫酸過酸化水素水混合液を第1流量で前記基板に供給して前記基板を処理する第1処理工程と、
前記第1期間の後の第2期間に、前記硫酸過酸化水素水混合液を前記第1流量よりも小さい第2流量で前記基板に供給して前記基板を処理する第2処理工程と
を含み、
前記第2期間において前記硫酸過酸化水素水混合液の前記硫酸の比率は、前記第1期間において前記硫酸過酸化水素水混合液の前記硫酸の比率よりも小さい、基板処理方法。
【請求項11】
前記SPM処理工程の前に、エッチング液で前記基板を処理するエッチング工程をさらに包含する、請求項10に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記エッチング工程において、前記エッチング液としてフッ酸または希フッ酸を前記基板に供給する、請求項11に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記SPM処理工程において、130℃以上220℃以下の前記硫酸と室温の前記過酸化水素水とを混合して生成した前記硫酸過酸化水素水混合液を前記基板に供給する、請求項10に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記第1処理工程は、前記第1期間において前記硫酸および前記過酸化水素水を4:1~9:1の比率で混合した前記硫酸過酸化水素水混合液を前記基板に供給し、
前記第2処理工程は、前記第2期間において前記硫酸および前記過酸化水素水を2:1~3:1の比率で混合した前記硫酸過酸化水素水混合液を前記基板に供給する、請求項10から13のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項15】
前記第2期間は、前記第1期間よりも長い、請求項10に記載の基板処理方法。
【請求項16】
前記SPM処理工程において、前記第1期間において前記基板を第1回転速度で回転した後に、前記第2期間において前記基板を第2回転速度で回転し、
前記第2回転速度は、前記第1回転速度よりも小さい、請求項10に記載の基板処理方法。
【請求項17】
前記第2期間の後に、前記基板に前記過酸化水素水を供給して前記基板を前記過酸化水素水で処理する工程をさらに包含する、請求項10に記載の基板処理方法。
【請求項18】
前記SPM処理工程において、前記基板のうちの前記硫酸過酸化水素水混合液が前記基板に到達する位置に対向する飛散抑制部材によって、前記硫酸過酸化水素水混合液の液滴の飛散を抑制する、請求項10に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体装置および液晶表示装置のような基板を含む装置の製造工程では、基板を処理する基板処理装置が用いられている。基板は、例えば、半導体ウエハまたは液晶表示装置用ガラス基板である。
【0003】
基板の表面に固着する対象物を剥離する処理としてSPM処理が知られている。SPM処理では、硫酸と過酸化水素水とを混合した硫酸過酸化水素水混合液を基板に供給することにより、基板に表面に固着した対象物を剥離する。
【0004】
特許文献1には、高温のSPMで基板を処理するSPM処理が記載されている。特許文献1の基板処理装置では、カメラによって撮像されるSPM中のレジスト残渣に応じてSPMノズルの吐出位置を基板の中央から外側に移動させることにより、基板の表面に固着している対象物を効率的に剥離する。また、特許文献1には、過酸化水素水がリッチな第1SPMで基板を処理した後に、硫酸がリッチな第2SPMで基板を処理することも記載されている。特許文献1の手法によれば、第2SPMにより、残存する対象物を良好に除去できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の基板処理装置では、高温のSPMを基板に供給することにより、基板を効率的にSPM処理できる。しかしながら、高温の硫酸過酸化水素水混合液で基板を処理する場合、基板上の硫酸過酸化水素水混合液の液滴が周囲に跳ねることがある。このように硫酸過酸化水素水混合液の液滴が基板から跳ねて何らかの部材に付着すると、後の工程において付着物に起因して基板が汚れてしまうことがある。一方で、低温のSPMでSPM処理を行うと、SPM処理の効率が低下することがある。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板からの硫酸過酸化水素水混合液の液滴の跳ねを抑制しながら基板を効率的にSPM処理することが可能な基板処理装置および基板処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面による基板処理装置は、基板を保持して回転させる基板保持部と、前記基板保持部によって回転される前記基板に、硫酸および過酸化水素水を混合した硫酸過酸化水素水混合液を供給する混合液供給部とを備える。前記混合液供給部は、第1期間に、前記硫酸過酸化水素水混合液を第1流量で前記基板に供給し、前記第1期間の後の第2期間に、前記硫酸過酸化水素水混合液を前記第1流量よりも少ない第2流量で前記基板に供給し、前記第2期間において前記硫酸過酸化水素水混合液の前記硫酸の比率は、前記第1期間において前記硫酸過酸化水素水混合液の前記硫酸の比率よりも小さい。
【0009】
ある実施形態では、前記基板処理装置は、前記混合液供給部が前記基板に前記硫酸過酸化水素水混合液を供給する前に、前記基板にエッチング液を供給するエッチング液供給部をさらに備える。
【0010】
ある実施形態では、前記エッチング液供給部は、前記エッチング液としてフッ酸または希フッ酸を前記基板に供給する。
【0011】
ある実施形態では、前記混合液供給部は、130℃以上200℃以下の前記硫酸と室温の前記過酸化水素水とを混合して生成した前記硫酸過酸化水素水混合液を前記基板に供給する。
【0012】
ある実施形態では、前記混合液供給部は、前記第1期間において前記硫酸および前記過酸化水素水を4:1~9:1の比率で混合した前記硫酸過酸化水素水混合液を前記基板に供給し、前記第2期間において前記硫酸および前記過酸化水素水を2:1~3:1の比率で混合した前記硫酸過酸化水素水混合液を前記基板に供給する。
【0013】
ある実施形態では、前記第2期間は、前記第1期間よりも長い。
【0014】
ある実施形態では、前記基板保持部は、前記第1期間において前記基板を第1回転速度で回転した後に、前記第2期間において前記基板を第2回転速度で回転し、前記第2回転速度は、前記第1回転速度よりも小さい。
【0015】
ある実施形態では、前記混合液供給部は、前記第2期間の後に、前記基板に前記過酸化水素水を供給する。
【0016】
ある実施形態では、前記基板処理装置は、前記基板からの前記硫酸過酸化水素水混合液の液滴の飛散を抑制する飛散抑制部材をさらに備える。
【0017】
本発明の別の局面による基板処理方法は、基板保持部によって保持されて回転される基板に、硫酸および過酸化水素水を混合した硫酸過酸化水素水混合液を供給して前記硫酸過酸化水素水混合液で前記基板を処理するSPM処理工程を包含する、基板処理方法であって、前記SPM処理工程は、第1期間に、前記硫酸過酸化水素水混合液を第1流量で前記基板に供給して前記基板を処理する第1処理工程と、前記第1期間の後の第2期間に、前記硫酸過酸化水素水混合液を前記第1流量よりも小さい第2流量で前記基板に供給して前記基板を処理する第2処理工程とを含み、前記第2期間において前記硫酸過酸化水素水混合液の前記硫酸の比率は、前記第1期間において前記硫酸過酸化水素水混合液の前記硫酸の比率よりも小さい、基板処理方法。
【0018】
ある実施形態では、前記基板処理方法は、前記SPM処理工程の前に、エッチング液で前記基板を処理するエッチング工程をさらに包含する。
【0019】
ある実施形態では、前記エッチング工程において、前記エッチング液としてフッ酸または希フッ酸を前記基板に供給する。
【0020】
ある実施形態では、前記SPM処理工程において、130℃以上220℃以下の前記硫酸と室温の前記過酸化水素水とを混合して生成した前記硫酸過酸化水素水混合液を前記基板に供給する。
【0021】
ある実施形態では、前記第1処理工程は、前記第1期間において前記硫酸および前記過酸化水素水を4:1~9:1の比率で混合した前記硫酸過酸化水素水混合液を前記基板に供給し、前記第2処理工程は、前記第2期間において前記硫酸および前記過酸化水素水を2:1~3:1の比率で混合した前記硫酸過酸化水素水混合液を前記基板に供給する。
【0022】
ある実施形態では、前記第2期間は、前記第1期間よりも長い。
【0023】
ある実施形態では、前記SPM処理工程において、前記第1期間において前記基板を第1回転速度で回転した後に、前記第2期間において前記基板を第2回転速度で回転し、前記第2回転速度は、前記第1回転速度よりも小さい。
【0024】
ある実施形態では、前記基板処理方法は、前記第2期間の後に、前記基板に前記過酸化水素水を供給して前記基板を前記過酸化水素水で処理する工程をさらに包含する。
【0025】
ある実施形態では、前記SPM処理工程において、前記基板のうちの前記硫酸過酸化水素水混合液が前記基板に到達する位置に対向する飛散抑制部材によって、前記硫酸過酸化水素水混合液の液滴の飛散を抑制する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、基板からの硫酸過酸化水素水混合液の液滴の跳ねを抑制しながら基板を効率的にSPM処理することが可能な基板処理装置および基板処理方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本実施形態の基板処理装置の模式的な平面図である。
【
図2】本実施形態の基板処理装置における基板処理ユニットの模式図である。
【
図3】本実施形態の基板処理装置のブロック図である。
【
図4】硫酸過酸化水素水混合液の温度に応じた基板から跳ねた硫酸過酸化水素水混合液の液滴の数を示すグラフである。
【
図5】硫酸過酸化水素水混合液の硫酸比率および流量に応じて基板から跳ねた硫酸過酸化水素水混合液の液滴の数を示すグラフである。
【
図6】本実施形態の基板処理方法におけるSPM処理に含まれる第1処理および第2処理における硫酸過酸化水素水混合液の流量および硫酸比率を示すテーブルである。
【
図7】(a)~(c)は、本実施形態の基板処理装置の模式図である。
【
図8】本実施形態の基板処理装置のフロー図である。
【
図9】(a)~(e)は、本実施形態の基板処理装置の模式図である。
【
図10】(a)~(c)は、本実施形態の基板処理装置の模式図である。
【
図11】本実施形態の基板処理装置のフロー図である。
【
図12】本実施形態の基板処理装置における基板処理ユニットの模式図である。
【
図13】本実施形態の基板処理装置における基板処理ユニットの模式的な上面図である。
【
図14】本実施形態の基板処理装置のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明による基板処理装置および基板処理方法の実施形態を説明する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。なお、本願明細書では、発明の理解を容易にするため、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を記載することがある。典型的には、X軸およびY軸は水平方向に平行であり、Z軸は鉛直方向に平行である。
【0029】
まず、
図1を参照して、本発明による基板処理装置100の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態の基板処理装置100の模式的な平面図である。
【0030】
基板処理装置100は、基板Wを処理する。基板処理装置100は、基板Wに対して、エッチング、表面処理、特性付与、処理膜形成、膜の少なくとも一部の除去および洗浄のうちの少なくとも1つを行うように基板Wを処理する。
【0031】
基板Wは、半導体基板として用いられる。基板Wは、半導体ウエハを含む。例えば、基板Wは略円板状である。ここでは、基板処理装置100は、基板Wを一枚ずつ処理する。
【0032】
図1に示すように、基板処理装置100は、複数の基板処理ユニット10と、処理液キャビネット110と、処理液ボックス120と、複数のロードポートLPと、インデクサーロボットIRと、センターロボットCRと、制御装置101とを備える。制御装置101は、ロードポートLP、インデクサーロボットIRおよびセンターロボットCRを制御する。制御装置101は、制御部102および記憶部104を含む。本明細書において、インデクサーロボットIRおよびセンターロボットCRを総称して搬送ユニットと記載することがある。
【0033】
ロードポートLPの各々は、複数枚の基板Wを積層して収容する。インデクサーロボットIRは、ロードポートLPとセンターロボットCRとの間で基板Wを搬送する。センターロボットCRは、インデクサーロボットIRと基板処理ユニット10との間で基板Wを搬送する。基板処理ユニット10の各々は、基板Wに処理液を吐出して、基板Wを処理する。処理液は、薬液、リンス液、除去液および/または撥水剤を含む。処理液キャビネット110は、処理液を収容する。なお、処理液キャビネット110は、ガスを収容してもよい。
【0034】
具体的には、複数の基板処理ユニット10は、平面視においてセンターロボットCRを取り囲むように配置された複数のタワーTW(
図1では4つのタワーTW)を形成している。各タワーTWは、上下に積層された複数の基板処理ユニット10(
図1では3つの基板処理ユニット10)を含む。処理液ボックス120は、それぞれ、複数のタワーTWに対応している。処理液キャビネット110内の液体は、いずれかの処理液ボックス120を介して、処理液ボックス120に対応するタワーTWに含まれる全ての基板処理ユニット10に供給される。また、処理液キャビネット110内のガスは、いずれかの処理液ボックス120を介して、処理液ボックス120に対応するタワーTWに含まれる全ての基板処理ユニット10に供給される。
【0035】
典型的には、処理液キャビネット110は、処理液を調製するための貯留槽(タンク)を有する。処理液キャビネット110は、一種類の処理液のための貯留槽を有してもよく、複数種類の処理液のための貯留槽を有してもよい。また、処理液キャビネット110は、処理液を流通するためのポンプ、バルブおよび/またはフィルターを有する。
【0036】
制御装置101は、基板処理装置100の各種動作を制御する。制御装置101により、基板処理ユニット10は基板Wを処理する。
【0037】
制御装置101は、制御部102および記憶部104を含む。制御部102は、プロセッサーを有する。制御部102は、例えば、中央処理演算機(Central Processing Unit:CPU)を有する。または、制御部102は、汎用演算機を有してもよい。
【0038】
記憶部104は、データおよびコンピュータープログラムを記憶する。データは、レシピデータを含む。レシピデータは、複数のレシピを示す情報を含む。複数のレシピの各々は、基板Wの処理内容および処理手順を規定する。
【0039】
記憶部104は、主記憶装置と、補助記憶装置とを含む。主記憶装置は、例えば、半導体メモリである。補助記憶装置は、例えば、半導体メモリおよび/またはハードディスクドライブである。記憶部104はリムーバブルメディアを含んでいてもよい。制御部102は、記憶部104の記憶しているコンピュータープログラムを実行して、基板処理動作を実行する。
【0040】
次に、
図2を参照して、本実施形態の基板処理装置100における基板処理ユニット10を説明する。
図2は、基板処理装置100における基板処理ユニット10の模式図である。
【0041】
基板処理ユニット10は、チャンバー11と、送風ユニット12と、基板保持部20と、エッチング液供給部30と、リンス液供給部40と、SPM供給部50と、リンス液供給部60とを備える。
【0042】
チャンバー11は、内部空間を有する略箱形状である。チャンバー11は、基板Wを収容する。ここでは、基板処理装置100は、基板Wを1枚ずつ処理する枚葉型であり、チャンバー11には基板Wが1枚ずつ収容される。基板Wは、チャンバー11内に収容され、チャンバー11内で処理される。チャンバー11には、基板保持部20、エッチング液供給部30、リンス液供給部40、SPM供給部50およびリンス液供給部60のそれぞれの少なくとも一部が収容される。
【0043】
送風ユニット12は、チャンバー11の上方に配置される。例えば、送風ユニット12は、チャンバー11の天面に配置される。送風ユニット12は、チャンバー11内に空気を送る。送風ユニット12は、例えば、ファン・フィルタ・ユニット(FFU)を含む。送風ユニット12および排気装置(図示しない)により、チャンバー11内にダウンフロー(下降流)が形成される。
【0044】
基板保持部20は、基板Wを保持する。基板保持部20は、基板Wの上面(表面)Waを上方に向け、基板Wの裏面(下面)Wbを鉛直下方に向くように基板Wを水平に保持する。また、基板保持部20は、基板Wを保持した状態で基板Wを回転させる。例えば、基板Wの上面Waには、リセスの形成された積層構造が設けられている。基板保持部20は、基板Wを保持したまま基板Wを回転させる。
【0045】
例えば、基板保持部20は、基板Wの端部を挟持する挟持式であってもよい。あるいは、基板保持部20は、基板Wを裏面Wbから保持する任意の機構を有してもよい。例えば、基板保持部20は、バキューム式であってもよい。この場合、基板保持部20は、非デバイス形成面である基板Wの裏面Wbの中央部を上面に吸着させることにより基板Wを水平に保持する。あるいは、基板保持部20は、複数のチャックピンを基板Wの周端面に接触させる挟持式とバキューム式とを組み合わせてもよい。
【0046】
例えば、基板保持部20は、スピンベース21と、チャック部材22と、シャフト23と、スピンモーター24と、ハウジング25とを含む。チャック部材22は、スピンベース21に設けられる。チャック部材22は、基板Wをチャックする。典型的には、スピンベース21には、複数のチャック部材22が設けられる。
【0047】
シャフト23は、回転軸Axに沿って鉛直方向に延びている。シャフト23の上端には、スピンベース21が結合されている。基板Wは、スピンベース21の上方に載置される。
【0048】
スピンベース21は、円板状である。チャック部材22は、基板Wを水平に支持する。シャフト23は、スピンベース21の中央部から下方に延びる。スピンモーター24は、シャフト23に回転力を与える。スピンモーター24は、シャフト23を回転方向に回転させることにより、回転軸Axを中心に基板Wおよびスピンベース21を回転させる。ハウジング25は、シャフト23およびスピンモーター24を収容する。
【0049】
エッチング液供給部30は、基板Wにエッチング液を供給する。典型的には、エッチング液供給部30は、基板Wの上面Waにエッチング液を供給する。エッチング液供給部30の少なくとも一部は、チャンバー11内に収容される。
【0050】
エッチング液供給部30は、基板Wの上面Waにエッチング液を供給する。エッチング液は、フッ酸または希フッ酸を含む。例えば、フッ酸は、40℃以上70℃以下に加熱されてもよく、50℃以上60℃以下に加熱されてもよい。ただし、フッ酸は、加熱されなくてもよい。
【0051】
エッチング液供給部30は、配管32と、バルブ34と、ノズル36とを含む。ノズル36は、基板Wの上面Waにエッチング液を吐出する。ノズル36は、配管32に接続される。配管32には、供給源からエッチング液が供給される。
【0052】
バルブ34は、配管32内の流路を開閉する。バルブ34は、配管32の開度を調節して、配管32に供給されるエッチング液の流量を調整する。具体的には、バルブ34は、弁座が内部に設けられたバルブボディ(図示しない)と、弁座を開閉する弁体と、開位置と閉位置との間で弁体を移動させるアクチュエータ(図示しない)とを含む。
【0053】
ノズル36は、基板Wに対して移動可能に構成されてもよい。エッチング液供給部30は、ノズル移動部38をさらに有してもよい。ノズル移動部38は、ノズル36を昇降してもよく、ノズル36を回動軸線の周りに水平回動させてもよい。ノズル移動部38は、ノズル36を昇降させる。例えば、ノズル移動部38は、ボールねじ機構と、ボールねじ機構に駆動力を与える電動モーターとを含む。また、ノズル移動部38は、ノズル36を水平回動させる。例えば、ノズル移動部38は、電動モーターを含む。
【0054】
リンス液供給部40は、基板Wにリンス液を供給する。典型的には、リンス液供給部40は、基板Wの上面Waにリンス液を供給する。リンス液供給部40の少なくとも一部は、チャンバー11内に収容される。
【0055】
リンス液供給部40は、基板Wの上面Waにリンス液を供給する。典型的には、リンス液は、炭酸水を含む。あるいは、リンス液は、炭酸水以外であってもよい。一例として、リンス液として、例えば、脱イオン水(Deionized Water:DIW)、電解イオン水、オゾン水、アンモニア水、希釈濃度(例えば、10ppm~100ppm程度)の塩酸水、および、還元水(水素水)が挙げられる。
【0056】
リンス液供給部40は、配管42と、バルブ44と、ノズル46とを含む。ノズル46は、基板Wの上面Waにリンス液を吐出する。ノズル46は、配管42に接続される。配管42には、供給源からリンス液が供給される。バルブ44は、配管42内の流路を開閉する。ノズル46は、基板Wに対して移動可能に構成されてもよい。
【0057】
バルブ44は、配管42内の流路を開閉する。バルブ44は、配管42の開度を調節して、配管42に供給されるリンス液の流量を調整する。具体的には、バルブ44は、弁座が内部に設けられたバルブボディ(図示しない)と、弁座を開閉する弁体と、開位置と閉位置との間で弁体を移動させるアクチュエータ(図示しない)とを含む。
【0058】
ノズル46は、移動可能であってもよい。ノズル46は、制御部102によって制御される移動機構にしたがって水平方向および/または鉛直方向に移動できる。
【0059】
SPM供給部50は、基板Wに硫酸過酸化水素水混合液を供給する。典型的には、SPM供給部50は、基板Wの上面Waに硫酸過酸化水素水混合液を供給する。硫酸過酸化水素水混合液は、90℃以240℃以下に加熱されてもよい。SPM供給部50の少なくとも一部は、チャンバー11内に収容される。本明細書において、SPM供給部50を混合液供給部50と記載することがある。
【0060】
SPM供給部(混合液供給部)50は、配管52aと、バルブ54aと、配管52bと、バルブ54bと、ヒータ55aと、ポンプ57aと、ノズル56とを有する。ノズル56は、基板Wの上面Waに硫酸過酸化水素水混合液を吐出する。
【0061】
ここでは、ノズル56は、配管52aおよび配管52bに接続される。配管52aには、供給源から硫酸が供給される。バルブ54aは、配管52a内の流路を開閉する。バルブ54aは、配管52aの開度を調節して、配管52aに供給される硫酸の流量を調整する。具体的には、バルブ54aは、弁座が内部に設けられたバルブボディ(図示しない)と、弁座を開閉する弁体と、開位置と閉位置との間で弁体を移動させるアクチュエータ(図示しない)とを含む。
【0062】
ポンプ57aは、配管52a内に硫酸を流通させる。ヒータ55aは、配管52aを流れる硫酸を加熱する。ヒータ55aにより、硫酸の温度を調整できる。ヒータ55aは、配管52aを流通する硫酸を加熱し、硫酸の温度(例えば、約70℃~220℃)を調整する。ヒータ55aは、硫酸を加熱するとともに硫酸の温度を測定してもよい。
【0063】
配管52bには、供給源から過酸化水素水が供給される。バルブ54bは、配管52b内の流路を開閉する。バルブ54bは、配管52bの開度を調節して、配管52bに供給される過酸化水素水の流量を調整する。具体的には、バルブ54bは、弁座が内部に設けられたバルブボディ(図示しない)と、弁座を開閉する弁体と、開位置と閉位置との間で弁体を移動させるアクチュエータ(図示しない)とを含む。
【0064】
ここでは、ノズル56内において、配管52a内を流通した硫酸と配管52b内を流通した過酸化水素水とが混合され、硫酸過酸化水素水が生成される。硫酸と過酸化水素水との混合により、硫酸過酸化水素水の温度は上昇する。
【0065】
ノズル56は、基板Wに対して移動可能に構成されてもよい。SPM供給部50は、ノズル移動部58をさらに有してもよい。ノズル移動部58は、ノズル56を昇降してもよく、ノズル56を回動軸線の周りに水平回動させてもよい。ノズル移動部58は、ノズル56を昇降させる。例えば、ノズル移動部58は、ボールねじ機構と、ボールねじ機構に駆動力を与える電動モーターとを含む。また、ノズル移動部58は、ノズル56を水平回動させる。例えば、ノズル移動部58は、電動モーターを含む。
【0066】
なお、バルブ54aが開いて配管52a内を硫酸が流通し、バルブ54bが開いて配管52b内を過酸化水素水が流通する場合、SPM供給部50は、ノズル56から硫酸過酸化水素水混合液を基板Wに供給する。また、バルブ54aが閉じて配管52a内を硫酸が流通せず、バルブ54bが開いて配管52b内を過酸化水素水が流通する場合、SPM供給部50は、ノズル56から過酸化水素水を基板Wに供給する。さらに、バルブ54aが開いて配管52a内を硫酸が流通し、バルブ54bが閉じて配管52b内を過酸化水素水が流通しない場合、SPM供給部50は、ノズル56から硫酸を基板Wに供給する。
【0067】
リンス液供給部60は、基板Wにリンス液を供給する。典型的には、リンス液供給部60は、基板Wの上面Waにリンス液を供給する。リンス液供給部60の少なくとも一部は、チャンバー11内に収容される。
【0068】
リンス液供給部60は、基板Wの上面Waにリンス液を供給する。例えば、リンス液として、脱イオン水(Deionized Water:DIW)、炭酸水、電解イオン水、オゾン水、アンモニア水、希釈濃度(例えば、10ppm~100ppm程度)の塩酸水、または、還元水(水素水)が挙げられる。
【0069】
リンス液供給部60は、配管62と、バルブ64と、ノズル66とを含む。ノズル66は、基板Wの上面Waにリンス液を吐出する。ノズル66は、配管62に接続される。配管62には、供給源からリンス液が供給される。バルブ64は、配管62内の流路を開閉する。ノズル66は、基板Wに対して移動可能に構成されてもよい。
【0070】
バルブ64は、配管62内の流路を開閉する。バルブ64は、配管62の開度を調節して、配管62に供給されるリンス液の流量を調整する。具体的には、バルブ64は、弁座が内部に設けられたバルブボディ(図示しない)と、弁座を開閉する弁体と、開位置と閉位置との間で弁体を移動させるアクチュエータ(図示しない)とを含む。
【0071】
ノズル66は、移動可能であってもよい。ノズル66は、制御部102によって制御される移動機構にしたがって水平方向および/または鉛直方向に移動できる。
【0072】
基板処理ユニット10は、カップ90をさらに備える。カップ90は、基板Wから飛散した処理液を回収する。カップ90は昇降する。例えば、カップ90は、エッチング液供給部30、リンス液供給部40、SPM供給部50および/またはリンス液供給部60が基板Wにエッチング液、リンス液、SPMおよび/またはリンス液を供給する期間にわたって基板Wの側方にまで鉛直上方に上昇する。この場合、カップ90は、基板Wの回転によって基板Wから飛散するエッチング液、リンス液、SPMおよび/またはリンス液を回収する。また、カップ90は、エッチング液供給部30、リンス液供給部40、SPM供給部50および/またはリンス液供給部60が基板Wにエッチング液、リンス液、SPMおよび/またはリンス液を供給する期間が終了すると、基板Wの側方から鉛直下方に下降する。
【0073】
上述したように、制御装置101は、制御部102および記憶部104を含む。制御部102は、送風ユニット12、基板保持部20、エッチング液供給部30、リンス液供給部40、SPM供給部50、リンス液供給部60および/またはカップ90を制御する。一例では、制御部102は、送風ユニット12、スピンモーター24、バルブ34、44、54a、54b、64、ノズル移動部38、58、ヒータ55a、ポンプ57aおよび/またはカップ90を制御する。
【0074】
本実施形態の基板処理装置100は、半導体の設けられた半導体素子の作製に好適に用いられる。典型的には、半導体素子において、基材の上に導電層および絶縁層が積層される。基板処理装置100は、半導体素子の製造時に、導電層および/または絶縁層の洗浄および/または加工(例えば、エッチング、特性変化等)に好適に用いられる。
【0075】
次に、
図1~
図3を参照して、本実施形態の基板処理装置100を説明する。
図3は、基板処理装置100のブロック図である。
【0076】
図3に示すように、制御装置101は、基板処理装置100の各種動作を制御する。制御装置101は、インデクサーロボットIR、センターロボットCR、送風ユニット12、基板保持部20、エッチング液供給部30、リンス液供給部40、SPM供給部50、リンス液供給部60およびカップ90を制御する。具体的には、制御装置101は、インデクサーロボットIR、センターロボットCR、送風ユニット12、基板保持部20、エッチング液供給部30、リンス液供給部40、SPM供給部50、リンス液供給部60およびカップ90に制御信号を送信することによって、インデクサーロボットIR、センターロボットCR、送風ユニット12、基板保持部20、エッチング液供給部30、リンス液供給部40、SPM供給部50、リンス液供給部60およびカップ90を制御する。
【0077】
また、記憶部104は、コンピュータープログラムおよびデータを記憶する。データは、レシピデータを含む。レシピデータは、複数のレシピを示す情報を含む。複数のレシピの各々は、基板Wの処理内容、処理手順および基板処理条件を規定する。制御部102は、記憶部104の記憶しているコンピュータープログラムを実行して、基板処理動作を実行する。
【0078】
制御部102は、インデクサーロボットIRを制御して、インデクサーロボットIRによって基板Wを受け渡しする。
【0079】
制御部102は、センターロボットCRを制御して、センターロボットCRによって基板Wを受け渡しする。例えば、センターロボットCRは、未処理の基板Wを受け取って、複数のチャンバー11のうちのいずれかに基板Wを搬入する。また、センターロボットCRは、処理された基板Wをチャンバー11から受け取って、基板Wを搬出する。
【0080】
制御部102は、送風ユニット12を制御して、チャンバー11内に空気を送る。例えば、制御部102は、送風ユニット12および排気装置(図示せず)を制御して、チャンバー11内にダウンフローを形成する。
【0081】
制御部102は、基板保持部20を制御して、基板Wの脱着、基板Wの回転の開始、回転速度の変更および基板Wの回転の停止を制御する。例えば、制御部102は、基板保持部20を制御して、基板保持部20の回転速度を変更することができる。具体的には、制御部102は、基板保持部20のスピンモーター24の回転速度を変更することによって、基板Wの回転速度を変更できる。
【0082】
制御部102は、エッチング液供給部30のバルブ34を制御して、バルブ34の状態を開状態と閉状態とに切り替えることができる。具体的には、制御部102は、エッチング液供給部30のバルブ34を制御して、バルブ34を開状態にすることによって、ノズル36に向かって配管32内を流れるエッチング液を通過させることができる。また、制御部102は、エッチング液供給部30のバルブ34を制御して、バルブ34を閉状態にすることによって、ノズル36に向かって配管32内を流れるエッチング液の供給を停止させることができる。
【0083】
制御部102は、リンス液供給部40のバルブ44を制御して、バルブ44の状態を開状態と閉状態とに切り替えることができる。具体的には、制御部102は、リンス液供給部40のバルブ44を制御して、バルブ44を開状態にすることによって、ノズル46に向かって配管42内を流れるリンス液を通過させることができる。また、制御部102は、リンス液供給部40のバルブ44を制御して、バルブ44を閉状態にすることによって、ノズル46に向かって配管42内を流れるリンス液の供給を停止させることができる。
【0084】
制御部102は、バルブ54aを制御して、バルブ54aの状態を開状態と閉状態とに切り替えることができる。具体的には、制御部102は、バルブ54aを制御して、バルブ54aを開状態にすることによって、ノズル56に向かって配管52a内を流れる硫酸を通過させることができる。また、制御部102は、バルブ54aを制御して、バルブ54aを閉状態にすることによって、ノズル56に向かって配管52a内を流れる硫酸の供給を停止させることができる。
【0085】
制御部102は、バルブ54bを制御して、バルブ54bの状態を開状態と閉状態とに切り替えることができる。具体的には、制御部102は、バルブ54bを制御して、バルブ54bを開状態にすることによって、ノズル56に向かって配管52b内を流れる過酸化水素水を通過させることができる。また、制御部102は、バルブ54bを制御して、バルブ54bを閉状態にすることによって、ノズル56に向かって配管52b内を流れる過酸化水素水の供給を停止させることができる。
【0086】
また、制御部102は、バルブ54a、54bを制御して、バルブ54a、54bを開状態にすることによって、ノズル56に向かって配管52a、52b内を硫酸および過酸化水素水をそれぞれ通過させて、ノズル56から硫酸過酸化水素水混合液を吐出できる。また、制御部102は、バルブ54a、54bを制御して、バルブ54a、54bを閉状態にすることによって、ノズル56からの硫酸過酸化水素水混合液の吐出を停止させることができる。
【0087】
制御部102は、リンス液供給部60のバルブ64を制御して、バルブ64の状態を開状態と閉状態とに切り替えることができる。具体的には、制御部102は、リンス液供給部60のバルブ64を制御して、バルブ64を開状態にすることによって、ノズル66に向かって配管62内を流れるリンス液を通過させることができる。また、制御部102は、リンス液供給部60のバルブ64を制御して、バルブ64を閉状態にすることによって、ノズル66に向かって配管62内を流れるリンス液の供給を停止させることができる。
【0088】
制御部102は、カップ90を制御して基板Wに対してカップ90を移動させてもよい。具体的には、制御部102は、エッチング液供給部30、リンス液供給部40、SPM供給部50および/またはリンス液供給部60が基板Wにエッチング液、リンス液、SPMおよび/またはリンス液を供給する期間にわたって基板Wの側方にまで鉛直上方にカップ90を上昇させる。また、制御部102は、エッチング液供給部30、リンス液供給部40、SPM供給部50および/またはリンス液供給部60が基板Wにエッチング液、リンス液、SPMおよび/またはリンス液を供給する期間が終了すると、基板Wの側方から鉛直下方にカップ90を下降させる。
【0089】
本実施形態の基板処理装置100は、半導体素子を形成するために好適に用いられる。例えば、基板処理装置100は、積層構造の半導体素子として用いられる基板Wを処理するために好適に利用される。半導体素子は、いわゆる3D構造のメモリ(記憶装置)である。一例として、基板Wは、NAND型フラッシュメモリとして好適に用いられる。
【0090】
基板を高温の硫酸過酸化水素水混合液で処理する場合、基板から硫酸過酸化水素水混合液の液滴が跳ねることがある。疎水性の基板を硫酸過酸化水素水混合液で処理することにより、基板は親水性に変化する。このとき、硫酸過酸化水素水混合液が高温であると、硫酸過酸化水素水混合液が基板と激しく反応することになり、基板から硫酸過酸化水素水混合液の液滴が跳ねることがある。例えば、基板をフッ酸または希フッ酸でエッチング処理すると、基板は、疎水性を示す。その後、基板を硫酸過酸化水素水混合液で処理して基板が親水性に変化する際に、硫酸過酸化水素水混合液が高温であると、基板から硫酸過酸化水素水混合液の液滴が跳ねることがある。
【0091】
次に、
図4を参照して、硫酸過酸化水素水混合液の温度および硫酸比率に応じた硫酸過酸化水素水混合液の液滴の跳ねについて説明する。
図4は、硫酸の加熱温度に応じた基板から跳ねた硫酸過酸化水素水混合液の液滴の数の変化を示すグラフである。
図4には、硫酸比率が異なる硫酸過酸化水素水混合液についての結果を示す。
図4において、線L1は、硫酸過酸化水素水混合液において硫酸と過酸化水素水の比率が6:1である場合の結果を示し、線L2は、硫酸過酸化水素水混合液において硫酸と過酸化水素水の比率が2:1である場合の結果を示す。
【0092】
図4の線L1に示されるように、硫酸過酸化水素水混合液の硫酸比率が比較的高い場合、硫酸の温度が高くなっても、基板から跳ねた硫酸過酸化水素水混合液の液滴の数はほとんど変化しない。一方、
図4の線L2に示されるように、硫酸過酸化水素水混合液の硫酸比率が比較的低い場合、硫酸の温度が高くなると、液滴数が増加する。例えば、硫酸の温度が120℃を超えると、液滴数は急激に増加する。これは、硫酸過酸化水素水混合液の硫酸比率が低く、かつ、硫酸過酸化水素水混合液の温度が高いと、基板上において硫酸過酸化水素水混合水が激しく反応するため、基板から跳ねた硫酸過酸化水素水混合液の液滴の数(液滴数)が増加するためと考えられる。
【0093】
次に、
図5を参照して、硫酸過酸化水素水混合液の温度に応じた硫酸過酸化水素水混合液の跳ねの程度について説明する。
図5は、硫酸過酸化水素水混合液の硫酸比率および流量に応じた液滴数を示すグラフである。
図5において、X軸は硫酸比率を示し、Y軸は流量を示し、Z軸は基板から跳ねた硫酸過酸化水素水混合液の液滴の数(液滴数)を示す。なお、
図5において、X軸の最小値の結果は、硫酸と過酸化水素水の比率が2:1の硫酸過酸化水素水混合液で基板を処理した結果であり、X軸の最大値の結果は、硫酸と過酸化水素水の比率が9:1の硫酸過酸化水素水混合液で基板を処理した結果である。
【0094】
図5のY軸に沿った変化から、硫酸過酸化水素水混合液の流量が増加するほど、液滴数が増加する傾向がわかる。また、
図5のX軸に沿った変化から、硫酸過酸化水素水混合液の硫酸比率が低いほど、液滴数が増加する傾向がわかる。これは、一般に、硫酸過酸化水素水混合液の硫酸比率は、硫酸と過酸化水素水の比率2:1から増えるほど、硫酸過酸化水素水混合液の温度上昇の程度が減少することも一因であると考えられる。
【0095】
液滴数が増加するほど、チャンバー内に液滴が付着しやすくなるため、基板を適切に処理しづらくなる。このため、液滴数を低減する観点からは、比較的低い温度、かつ、硫酸比率が比較的高い硫酸過酸化水素水混合液で基板を処理することが好ましい。一方で、基板に対するSPM処理の観点からは、比較的高い温度、かつ、硫酸比率が比較的低い硫酸過酸化水素水混合液で基板を処理することが好ましい。
【0096】
上記知見に基づき、本実施形態の基板処理装置100では、硫酸過酸化水素水混合液で基板WをSPM処理する際に、先に高い流量かつ高い硫酸比率の硫酸過酸化水素水混合液で基板Wを処理し、その後、低い流量かつ低い硫酸比率の硫酸過酸化水素水混合液で基板Wを処理する。
【0097】
次に、
図1~
図6を参照して、本実施形態の基板処理方法を説明する。
図6は、本実施形態の基板処理方法におけるSPM処理を示すテーブルである。
【0098】
図6に示すように、本実施形態において、SPM処理は、第1処理および第2処理を含む。SPM処理は、第1処理から開始する。第1処理は、第1期間に行われる。第2処理は、第1処理が終了した後に開始する。第2処理は、第1期間の後に、第2期間に行われる。典型的には、第2期間は、第1期間が終了した後に連続的に開始する。
【0099】
まず、第1処理において、高流量および高硫酸比率の硫酸過酸化水素水混合液で基板Wを処理する。例えば、バルブ54aおよびバルブ54bの開度を比較的大きくして、配管52aおよび配管52bを流れる硫酸および過酸化水素水の流量を比較的大きくする。また、配管52aおよび配管52bを流れる硫酸および過酸化水素水の流量の合計に対して配管52aを流れる硫酸の流量の比率を比較的高くする。
【0100】
第1処理の後の第2処理において、低流量および低硫酸比率の硫酸過酸化水素水混合液で基板Wを処理する。例えば、バルブ54aおよびバルブ54bの開度を比較的小さくして、配管52aおよび配管52bを流れる硫酸および過酸化水素水の流量を比較的小さくする。また、配管52aおよび配管52bを流れる硫酸および過酸化水素水の流量の合計に対して配管52aを流れる硫酸の流量の比率を比較的低くする。
【0101】
本実施形態の基板処理方法によれば、第1処理において、高流量の硫酸過酸化水素水混合液で基板Wを処理する。このため、基板Wの上面Waを硫酸過酸化水素水混合液で速やかにカバーすることができ、基板Wにパーティクルが付着することを抑制できる。また、第1処理において、硫酸過酸化水素水混合液の硫酸比率が高いことから、硫酸過酸化水素水混合液の液跳ねを抑制できる。
【0102】
本実施形態の基板処理方法によれば、第2処理において、低硫酸比率の硫酸過酸化水素水混合液で基板Wを処理する。第2処理において、硫酸過酸化水素水混合液の硫酸比率が低いことから、基板Wを硫酸過酸化水素水混合液で短時間に処理できる。また、第2処理において、低流量の硫酸過酸化水素水混合液で基板Wを処理するため、SPM処理における硫酸過酸化水素水混合液の消費量を低減できる。
【0103】
なお、
図4~
図6を参照した上述の説明では、液跳ねは、硫酸過酸化水素水混合液の温度、硫酸比率および流量に依存したが、液跳ねは、基板Wの回転速度にも依存する。典型的には、基板Wの回転速度が高いほど液跳ねが生じやすく、基板Wの回転速度が低いほど液跳ねが生じにくい。このため、第1処理において、基板Wの回転速度は閾値よりも低いことが好ましい。
【0104】
一方で、第2処理において、基板W上の酸過酸化水素水混合液の温度は、比較的高く保つことが好ましい。また、第2処理における基板Wの回転速度が高いと、液膜が薄くなり、SPM処理の効率が低下することがある。このため、第2処理における基板Wの回転速度は、第1処理における基板Wの回転速度よりも低くしてもよい。
【0105】
次に、
図1~
図7を参照して、本実施形態の基板処理方法を説明する。
図7(a)~
図7(c)は、本実施形態の基板処理方法の模式図である。
【0106】
図7(a)に示すように、基板Wにリンス液を供給する。制御部102の制御により、リンス液供給部40は、ノズル46から基板Wにリンス液を供給する。これにより、基板Wは、リンス処理される。
【0107】
リンス液は、ノズル46から回転する基板Wに供給される。リンス液が基板Wの中心に吐出されると、リンス液は、遠心力によって基板Wの中心から径方向に広がり、基板Wの上面Wa全体に行きわたる。このとき、リンス液は、液厚L0の膜を形成する。
【0108】
図7(b)に示すように、基板Wに硫酸過酸化水素水混合液を供給して、基板Wを第1処理する。制御部102の制御により、SPM供給部50は、ノズル56から基板Wに硫酸過酸化水素水混合液を供給する。ここでは、バルブ54aが開いて硫酸が配管52aを流通するとともにバルブ54bが開いて過酸化水素水が配管52bを流通し、ノズル56において硫酸と過酸化水素水との混合によって生成された硫酸過酸化水素水混合液がノズル56から吐出される。
【0109】
硫酸過酸化水素水混合液は、ノズル56から回転する基板Wに供給される。硫酸過酸化水素水混合液は、基板Wの中心に吐出されると、遠心力によって基板Wの中心から径方向に広がり、基板Wの上面Wa全体に行きわたる。このとき、硫酸過酸化水素水混合液は、液厚L1の膜を形成する。
【0110】
このように、回転する基板Wに硫酸過酸化水素水混合液を供給して、基板Wを硫酸過酸化水素水混合液で処理する。これにより、基板Wは、第1期間において硫酸過酸化水素水混合液で処理される。
【0111】
ここで、第1処理において、配管52aを流れる硫酸の流量はFs1であり、硫酸の温度はTs1である。第1処理において、配管52bを流れる過酸化水素水の流量はFh1であり、過酸化水素水の温度はTh1である。また、第1処理において、硫酸過酸化水素水混合液の流量はFc1であり、硫酸過酸化水素水混合液の温度はTc1であり、硫酸過酸化水素水混合液の硫酸比率はRc1である。また、第1処理において、基板Wの回転速度はRr1である。
【0112】
硫酸および過酸化水素水が混合して硫酸過酸化水素水混合液が生成される。この際に、硫酸および過酸化水素水は発熱反応を生じる。したがって、硫酸過酸化水素水混合液の温度Tc1は、硫酸の温度Ts1および過酸化水素水の温度Th1のいずれもよりも高い。
【0113】
例えば、硫酸の温度Ts1は、70℃以上220℃以下であり、100℃以上200℃以下であってもよい。また、過酸化水素水の温度Th1は、室温である。例えば、硫酸過酸化水素水混合液の温度Tc1は、90℃以上240℃以下である。
【0114】
第1処理により、基板Wは親水処理される。ここでは、硫酸過酸化水素水混合液の流量Fc1が比較的大きいことにより、硫酸過酸化水素水混合液で基板Wを速やかにカバーできる。
【0115】
なお、第1処理において、基板Wに供給された硫酸過酸化水素水混合液が基板Wから跳ねて、チャンバー11に付着することがある。このため、第1処理は、基板Wから硫酸過酸化水素水混合液の液滴が跳ねないように行われることが好ましい。例えば、第1処理において、硫酸過酸化水素水混合液の硫酸比率が比較的低いと、硫酸過酸化水素水混合液が基板Wから跳ねてチャンバー11に付着することがある。このため、硫酸過酸化水素水混合液の硫酸比率を比較的高くすることが好ましい。
【0116】
典型的には、硫酸の流量Fs1は、過酸化水素水の流量Fh1よりも大きい。例えば、第1処理において、硫酸および過酸化水素水は、4:1~9:1の比率で混合される。
【0117】
また、第1処理において、基板Wの回転速度が比較的大きいと、硫酸過酸化水素水混合液が基板Wから跳ねてチャンバーに付着することがある。このため、第1処理における基板Wの回転速度Rr1は閾値よりも小さいことが好ましい。例えば、第1処理における基板Wの回転速度Rr1は、700rpm以上1400rpm以下であり、800rpm以上1200rpm以下であってもよい。
【0118】
図7(c)に示すように、基板Wに硫酸過酸化水素水混合液を供給して、基板Wを第2処理する。制御部102の制御により、SPM供給部50は、ノズル56から基板Wに硫酸過酸化水素水混合液の供給を継続する。第2処理の条件は、第1処理の条件とは異なる。ここでは、基板Wに硫酸過酸化水素水混合液を供給して、基板Wを硫酸過酸化水素水混合液で処理する。
【0119】
第2処理では、低流量および低硫酸比率の硫酸過酸化水素水混合液で基板Wを処理する。このとき、硫酸過酸化水素水混合液は、液厚L2の膜を形成する。第2処理における液厚L2は、第1処理における液厚L1よりも小さい。
【0120】
第2処理において、第1処理におけるバルブ54aおよびバルブ54bの少なくとも一方の開度を変更する。例えば、第2処理において、第1処理におけるバルブ54aの開度を小さくし、硫酸の流量を低減する。なお、第2処理において、第1処理におけるバルブ54bの開度を変更して、過酸化水素水の流量を変更してもよい。
【0121】
ここで、第2処理において、配管52aを流れる硫酸の流量はFs2であり、硫酸の温度はTs2である。第2処理において、配管52bを流れる過酸化水素水の流量はFh2であり、過酸化水素水の温度はTh2である。また、第2処理において、硫酸過酸化水素水混合液の流量はFc2であり、硫酸過酸化水素水混合液の温度はTc2であり、硫酸過酸化水素水混合液の硫酸比率はRc2である。また、第2処理において、基板Wの回転速度はRr2である。
【0122】
第2処理では、親水化された基板Wを硫酸過酸化水素水混合液で処理する。ここで、コスト低減および環境に対する影響の観点から、基板Wに対する硫酸過酸化水素水混合液の流量Fc2は比較的少ないことが好ましい。また、硫酸過酸化水素水混合液は、基板Wに対する処理が効率的に進む比率で調製されることが好ましい。
【0123】
典型的には、ここでも、硫酸の流量Fs2は、過酸化水素水の流量Fh2よりも大きい。例えば、第2処理において、硫酸および過酸化水素水は、2:1~3:1の比率で混合される。
【0124】
例えば、硫酸の温度Ts2は、70℃以上220℃以下であり、100℃以上200℃以下であってもよい。また、過酸化水素水の温度Th2は、室温である。例えば、硫酸過酸化水素水混合液の温度Tc2は、90℃以上240℃以下である。
【0125】
ここで、第1処理および第2処理を比較すると、第2処理における硫酸過酸化水素水混合液の流量Fc2は、第1処理における硫酸過酸化水素水混合液の流量Fc1よりも小さい。これにより、基板Wを速やかに硫酸過酸化水素水混合液で被覆して基板Wにパーティクルが付着することを抑制できるとともに、硫酸過酸化水素水混合液の消費量を低減できる。例えば、第2処理における硫酸過酸化水素水混合液の流量Fc2は、第1処理における硫酸過酸化水素水混合液の流量Fc1の30%以上85%以下であり、40%以上75%以下であってもよい。
【0126】
例えば、なお、第2処理における硫酸の温度Ts2は、第1処理における硫酸の温度Ts1と等しくてもよい。この場合、ヒータ55aの加熱温度は、第1処理および第2処理において変更しなくてもよい。同様に、第2処理における過酸化水素水の温度Th2は、第1処理における過酸化水素水の温度Th1と等しくてもよい。
【0127】
なお、第2処理における硫酸の温度Ts2および過酸化水素水の温度Th2が、第1処理における硫酸の温度Ts1および過酸化水素水の温度Th1と等しくても、第2処理における硫酸過酸化水素水混合液の温度Tc2は、第1処理における硫酸過酸化水素水混合液の温度Tc1とは異なる。典型的には、第2処理における硫酸過酸化水素水混合液の温度Tc2は、第1処理における硫酸過酸化水素水混合液の温度Tc1よりも高くなる。これは、硫酸過酸化水素水混合液の硫酸比率Rs2が硫酸過酸化水素水混合液の硫酸比率Rs1よりも小さいことによる。
【0128】
また、第2処理における硫酸過酸化水素水混合液の硫酸比率Rc2は、第1処理における硫酸過酸化水素水混合液の硫酸比率Rc1よりも小さい。これにより、比較的少量の硫酸過酸化水素水混合液で基板Wを効率的にSPM処理できる。
【0129】
第2処理における基板Wの回転速度Rr2は、第1処理における基板Wの回転速度Rr1よりも小さくてもよい。これにより、比較的少量の硫酸過酸化水素水混合液で基板Wを効率的にSPM処理できる。
【0130】
ただし、第2処理における基板Wの回転速度Rr2が小さすぎると、基板W上の硫酸過酸化水素水混合液が基板Wから下方に垂れて硫酸過酸化水素水混合液が基板保持部20に付着することがある。このため、第2処理における基板Wの回転速度Rr2は、所定の値よりも大きいことが好ましい。例えば、第2処理における基板Wの回転速度Rr2は、100rpm以上500rpm以下であってもよく、150rpm以上300rpm以下であってもよい。
【0131】
次に、
図1~
図8を参照して、本実施形態の基板処理方法を説明する。
図8は、本実施形態の基板処理方法のフロー図である。
【0132】
図8に示すように、ステップS110において、基板Wをチャンバー11に搬入する。制御部102の制御により、センターロボットCRは、基板Wをチャンバー11に搬入し、基板保持部20は、搬入された基板Wを保持する。
【0133】
ステップS120において、基板Wの回転を開始する。制御部102の制御により、基板保持部20は、基板Wを保持した状態で基板Wの回転を開始する。
【0134】
ステップS130において、エッチング液を基板Wに供給して、基板Wをエッチング処理する。制御部102の制御により、基板保持部20によって回転する基板Wに対して、エッチング液供給部30は、ノズル36からエッチング液を供給する。例えば、エッチング液供給部30は、エッチング液としてフッ酸を供給する。この場合、フッ酸により、基板Wの自然酸化膜を除去するとともに、基板Wは疎水化される。
【0135】
ステップS140において、リンス液を基板Wに供給して、基板Wをリンス処理する。制御部102の制御により、リンス液供給部40は、ノズル46から基板Wにリンス液を供給する。例えば、リンス液供給部40は、リンス液として炭酸水を供給する。
【0136】
ステップS150において、硫酸過酸化水素水混合液を基板Wに供給して、基板WをSPM処理する。制御部102の制御により、SPM供給部50は、ノズル56から基板Wに硫酸過酸化水素水混合液を供給する。SPM処理により、基板Wから有機物が除去され、ケミカル酸化膜が生成される。
【0137】
ステップS150は、第1期間において第1処理を行うステップS152と、第1期間の後の第2期間において第2処理を行うステップS154とを含む。第2処理の第2期間は、第1処理の第1期間よりも長い。典型的には、第1期間は、10秒以下であり、1秒以上5秒以下であってもよい。一方、第2期間は、30秒以上であり、1分以上5分以下であってもよい。
【0138】
ステップS152では、第1期間において基板Wを硫酸過酸化水素水混合液で処理する。第1処理において、流量Fc1および硫酸比率Rc1の硫酸過酸化水素水混合液で基板Wを処理する。このとき、基板Wは、回転速度Rr1で回転する。
【0139】
ステップS154では、第2期間において、基板Wを硫酸過酸化水素水混合液で処理する。第2処理において、流量Fc2および硫酸比率Rc2の硫酸過酸化水素水混合液で基板Wを処理する。ここで、流量Fc2は、流量Fc1よりも小さい。また、硫酸比率Rc2は、硫酸比率Rc1よりも小さい。このとき、基板Wは、回転速度Rr2で回転する。回転速度Rr2は、回転速度Rr1よりも低くてもよい。
【0140】
ステップS160において、基板Wに過酸化水素水を供給して過酸化水素水で基板Wを処理する。ここでは、基板Wに硫酸を供給することを停止して、基板Wに過酸化水素水の供給を継続する。具体的には、バルブ54aを閉じて配管52a内の硫酸の流通を停止する一方で、バルブ54bを開いたまま配管52b内の過酸化水素水の流通を継続する。ただし、必要に応じてバルブ54bの開度を変更して配管52b内の過酸化水素水の流量を変化させてもよい。
【0141】
ステップS170において、基板Wにリンス液を供給して基板Wをリンス処理する。制御部102の制御により、リンス液供給部60は、ノズル66から基板Wにリンス液を供給する。例えば、リンス液供給部60は、リンス液として純水を供給する。
【0142】
ステップS180において、基板Wを乾燥する。制御部102の制御により、基板保持部20は、基板Wの回転速度を増加させて基板W上のリンス液を遠心力によって吹き飛ばす。
【0143】
ステップS190において、基板Wの回転を停止する。制御部102の制御により、基板保持部20は、基板Wの回転を停止する。
【0144】
ステップS200において、基板処理ユニット10から基板Wを取り出す。制御部102の制御により、基板保持部20は基板Wの保持を解除し、センターロボットCRは、チャンバー11から基板Wを取り出す。その後、基板Wは、インデクサーロボットIRを介して基板処理装置100の外部に搬送される。
【0145】
以上のようにして、本実施形態の基板処理方法によれば、基板Wを処理できる。本実施形態によれば、基板Wからの硫酸過酸化水素水混合水の跳ねを抑制しながら基板W上の有機物を除去できる。
【0146】
次に、
図1~
図10を参照して、本実施形態の基板処理装置100における基板処理方法を説明する。
図9(a)~
図10(c)は、本実施形態の基板処理方法の模式図である。
【0147】
図9(a)に示すように、基板保持部20が基板Wを保持する。制御部102の制御により、基板保持部20は、搬送された基板Wを保持する。
【0148】
図9(b)に示すように、基板Wを回転するとともにエッチング液を基板Wに供給して、基板Wをエッチング処理する。制御部102の制御により、基板保持部20は保持した基板Wを回転させ、エッチング液供給部30は、ノズル36からエッチング液を基板Wに供給し、基板Wをエッチング処理する。例えば、ノズル36からフッ酸を基板Wに供給して、基板Wをフッ酸処理する。フッ酸処理により、基板Wの自然酸化膜を除去できる。フッ酸処理により、基板Wは疎水化する。
【0149】
図9(c)に示すように、リンス液を基板Wに供給して、基板Wをリンス処理する。制御部102の制御により、リンス液供給部40は、ノズル46からリンス液を基板Wに供給し、基板Wをリンス処理する。例えば、ノズル46から炭酸水を基板Wに供給して、基板Wをリンス処理する。
【0150】
図9(d)に示すように、基板Wを硫酸過酸化水素水混合液で処理する。第1処理において、流量Fc1および硫酸比率Rc1の硫酸過酸化水素水混合液で基板Wを処理する。制御部102の制御により、SPM供給部50は、ノズル56から硫酸過酸化水素水混合液を基板Wに供給し、基板WをSPM処理する。詳細には、バルブ54aを開いて硫酸が配管52aを流通させるとともに、バルブ54bを開いて過酸化水素水が配管52bを流通させる。
【0151】
図9(e)に示すように、基板Wを硫酸過酸化水素水混合液で処理する。第2処理において、流量Fc2および硫酸比率Rc2の硫酸過酸化水素水混合液で基板Wを処理する。制御部102の制御により、SPM供給部50は、ノズル56から硫酸過酸化水素水混合液を基板Wに供給し続け、基板WのSPM処理を継続する。
【0152】
第2処理では、流量Fc2を流量Fc1よりも小さくし、硫酸比率Rc2を硫酸比率Rc1よりも小さくする。詳細には、バルブ54aの開度を小さくて配管52aを流れる硫酸の流量を減少させる。このとき、バルブ54bの開度を変更して配管52bを流れる過酸化水素水の流量を変更してもよい。
【0153】
図10(a)に示すように、基板Wに過酸化水素水を供給し、基板Wを過酸化水素水で処理する。制御部102の制御により、SPM供給部50は、ノズル56から過酸化水素水を基板Wに供給し、基板Wを過酸化水素水で処理する。ここでは、基板Wに硫酸を供給することを停止して、基板Wに過酸化水素水の供給を継続する。詳細には、バルブ54bを開いた状態で配管52bに過酸化水素水を流したまま、バルブ54aを閉じて配管52aを流れる硫酸の流通を停止させる。このとき、バルブ54bの開度を変更して配管52bを流れる過酸化水素水の流量を変更させてもよい。
【0154】
図10(b)に示すように、基板Wにリンス液を供給して基板Wをリンス処理する。制御部102の制御により、リンス液供給部60は、ノズル66からリンス液を基板Wに供給し、基板Wをリンス処理する。
【0155】
図10(c)に示すように、基板Wを乾燥する。制御部102の制御により、基板保持部20は、基板Wを回転する回転速度を増加させる。その後、基板Wの回転を停止し、基板処理ユニット10から基板Wは取り出される。
【0156】
以上のようにして、基板Wを処理できる。本実施形態では、先に高流量および高硫酸比率の硫酸過酸化水素水混合液で基板Wを処理し、その後、低流量および低硫酸比率の硫酸過酸化水素水混合液で基板Wを処理する。このため、基板Wからの硫酸過酸化水素水混合液の液滴が跳ねることを抑制しながら基板Wを効率的にSPM処理できる。
【0157】
なお、
図1~
図10を参照した上述の説明では、SPM処理は、2つの工程に分かれて行われる一方で、過酸化水素水処理は、1つの工程で行われたが、本実施形態は、これに限定されない。過酸化水素水処理は、2つの工程に分かれて行われてもよい。
【0158】
次に、
図11を参照して本実施形態の基板処理方法を説明する。
図11は、本実施形態の基板処理方法のフロー図である。
図11のフロー図は、過酸化水素水処理が2つの処理工程を含む点を除いて、
図8を参照して上述したフロー図と同様であり、冗長を避ける目的で重複する説明を省略する。
【0159】
図11に示すように、ステップS110~ステップS154は、
図8と同様である。
【0160】
ステップS160において、SPM処理した後の基板Wを過酸化水素水で処理する。ここでは、基板Wに過酸化水素水を供給して、基板Wを過酸化水素水で処理する。バルブ54aを閉じる一方で、バルブ54bは開いた状態を維持する。必要に応じてバルブ54bの開度を変更してもよい。
【0161】
ステップS160は、第1過酸化水素水処理を行うステップS162と、第2過酸化水素水処理を行うステップS164とを含む。第2過酸化水素水処理の処理期間は、第1過酸化水素水処理の処理期間よりも長い。
【0162】
ステップS162において、過酸化水素水を基板Wに供給して第1過酸化水素水処理を行う。第1過酸化水素水処理において、配管52bを流れる過酸化水素水の流量はFhh1であり、流量Fhh1の硫酸過酸化水素水で基板Wを処理する。また、第1過酸化水素水処理において、流量Fhh1の硫酸過酸化水素水で基板Wを過酸化水素水処理する。
【0163】
ステップS164において、過酸化水素水を基板Wに供給して第2過酸化水素水処理を行う。第2過酸化水素水処理では、配管52bを流れる過酸化水素水の流量はFhh2であり、第2過酸化水素水処理における流量Fhh2は、第1過酸化水素水処理における流量Fhh1よりも大きい。
【0164】
その後、
図8と同様に、ステップS170~ステップS200を行う。
【0165】
以上のようにして、基板Wを処理できる。本実施形態では、先に高流量および高硫酸比率の硫酸過酸化水素水混合液で基板Wを処理し、その後、低流量および低硫酸比率の硫酸過酸化水素水混合液で基板Wを処理する。このため、基板Wからの硫酸過酸化水素水混合液の液滴が跳ねることを抑制しながら基板Wを効率的にSPM処理できる。
【0166】
さらに、基板WをSPM処理した後の第1過酸化水素水処理の流量Fhh1が比較的小さいことにより、基板W上の硫酸残存成分と過酸化水素水とが過剰に反応して液跳ねが発生することを抑制できる。また、その後、第2過酸化水素水処理において比較的高い流量Fhh2の過酸化水素水を供給することにより、基板W上の硫酸残存成分を効果的に除去できる。
【0167】
次に、
図1~
図13を参照して、本実施形態の基板処理装置100を説明する。
図12は、本実施形態の基板処理装置100における基板処理ユニット10の模式図であり、
図13は、
図12の基板処理ユニット10の模式的な上面図である。
図12の基板処理ユニット10は、薬液供給部70およびリンス液供給部80をさらに備え、エッチング液供給部30のノズル36、SPM供給部50のノズル56およびリンス液供給部60のノズル66が一体的に設けられ、斜め方向にSPMを吐出するノズル56に飛散抑制部材59が取り付けられる点を除いて、
図2に示した基板処理装置100における基板処理ユニット10と同様の構成を有しており、冗長を避ける目的で重複する説明を省略する。
【0168】
図12に示すように、基板処理ユニット10は、薬液供給部70およびリンス液供給部80をさらに備える。薬液供給部70は、基板Wに薬液を供給する。典型的には、薬液供給部70は、基板Wの上面Waに薬液を供給する。薬液供給部70の少なくとも一部は、チャンバー11内に収容される。
【0169】
薬液供給部70は、基板Wの上面Waに薬液を供給する。薬液は、SC1(アンモニア水と過酸化水素水と水との混合液)を含む。
【0170】
薬液供給部70は、配管72と、バルブ74と、ノズル76とを含む。ノズル76は、基板Wの上面Waに薬液を吐出する。ノズル76は、配管72に接続される。配管72には、供給源から薬液が供給される。バルブ74は、配管72内の流路を開閉する。
【0171】
バルブ74は、配管72内の流路を開閉する。バルブ74は、配管72の開度を調節して、配管72に供給される薬液の流量を調整する。具体的には、バルブ74は、弁座が内部に設けられたバルブボディ(図示しない)と、弁座を開閉する弁体と、開位置と閉位置との間で弁体を移動させるアクチュエータ(図示しない)とを含む。
【0172】
ノズル76は、基板Wに対して移動可能に構成されてもよい。薬液供給部70は、ノズル移動部78をさらに有してもよい。ノズル移動部78は、ノズル76を昇降してもよく、ノズル76を回動軸線の周りに水平回動させてもよい。ノズル移動部78は、ノズル76を昇降させる。例えば、ノズル移動部78は、ボールねじ機構と、ボールねじ機構に駆動力を与える電動モーターとを含む。また、ノズル移動部78は、ノズル76を水平回動させる。例えば、ノズル移動部78は、電動モーターを含む。
【0173】
リンス液供給部80は、基板Wにリンス液を供給する。典型的には、リンス液供給部80は、基板Wの上面Waにリンス液を供給する。リンス液供給部80の少なくとも一部は、チャンバー11内に収容される。
【0174】
リンス液供給部80は、基板Wの上面Waにリンス液を供給する。リンス液は、脱イオン水(Deionized Water:DIW)、電解イオン水またはオゾン水を含む。あるいは、リンス液は、これら以外であってもよい。一例として、リンス液として、アンモニア水、希釈濃度(例えば、10ppm~100ppm程度)の塩酸水、および、還元水(水素水)が挙げられる。
【0175】
リンス液供給部80は、配管82と、バルブ84と、ノズル86とを含む。ノズル86は、基板Wの上面Waにリンス液を吐出する。ノズル86は、配管82に接続される。配管82には、供給源からリンス液が供給される。バルブ84は、配管82内の流路を開閉する。ノズル86は、基板Wに対して移動可能に構成されてもよい。
【0176】
バルブ84は、配管82内の流路を開閉する。バルブ84は、配管82の開度を調節して、配管82に供給されるリンス液の流量を調整する。具体的には、バルブ84は、弁座が内部に設けられたバルブボディ(図示しない)と、弁座を開閉する弁体と、開位置と閉位置との間で弁体を移動させるアクチュエータ(図示しない)とを含む。ノズル86は、基板Wに対して移動可能に構成されてもよい。
【0177】
エッチング液供給部30のノズル36、SPM供給部50のノズル56およびリンス液供給部60のノズル66が一体的に設けられる。このため、基板Wに供給する液の種類を切り替える際にノズル36、56、66の移動時間を短縮でき、基板処理のスループットを向上できる。
【0178】
ここでは、ノズル56は、斜め右下方向に硫酸過酸化水素水混合液を吐出する。ノズル56が、斜め方向に硫酸過酸化水素水混合液を吐出することにより、仮に、基板Wから、硫酸過酸化水素水混合液の液滴が跳ねたとしても、ノズル56に硫酸過酸化水素水混合液の液滴が付着することを抑制できる。
【0179】
また、ノズル56には、飛散抑制部材59が取り付けられる。飛散抑制部材59は、ノズル56に対してノズル56から硫酸過酸化水素水混合液が吐出される方向に取り付けられる。飛散抑制部材59は、基板Wのうちのノズル56から吐出された硫酸過酸化水素水混合液が基板Wに到達する位置に対向する。これにより、基板Wに吐出された硫酸過酸化水素水混合液が基板Wから液跳ねしたとしても、飛散抑制部材59により、基板Wからの液滴が周囲に付着することを抑制できる。
【0180】
なお、
図13に示すように、飛散抑制部材59は、ノズル56とともに待機ポッド92に収容される。待機ポッド92は、ノズル56が待機位置に配置されているときに、ノズル56および飛散抑制部材59と重なる位置に配置される。待機ポッド92は、ノズル56および飛散抑制部材59を収容する。なお、待機ポッド92において、ノズル56および飛散抑制部材59が洗浄可能であることが好ましい。
【0181】
次に、
図12~
図14を参照して本実施形態の基板処理方法を説明する。
図14は、本実施形態の基板処理方法のフロー図である。
図14のフロー図は、薬液処理およびリンス処理をさらに含む点を除いて、
図8を参照して上述したフロー図と同様であり、冗長を避ける目的で重複する説明を省略する。
【0182】
図14に示すように、ステップS110~ステップS170までは、
図8と同様である。
【0183】
ステップS170に続いて、ステップS200において、基板Wに薬液を供給する。これにより、基板Wを薬液処理する。制御部102の制御により、薬液供給部70は、ノズル76から基板Wに薬液を供給する。
【0184】
ステップS210において、基板Wにリンス液を供給する。これにより、基板Wをリンス処理する。制御部102の制御により、リンス液供給部80は、ノズル86から基板Wにリンス液を供給する。
【0185】
その後、ステップS210の後に、ステップS180において、基板Wを乾燥する。これにより、基板Wは乾燥処理される。ステップS180~ステップS200は、
図8と同様であるため、説明を省略する。
【0186】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施できる。また、上記の実施形態に開示される複数の構成要素は適宜改変可能である。例えば、ある実施形態に示される全構成要素のうちのある構成要素を別の実施形態の構成要素に追加してもよく、または、ある実施形態に示される全構成要素のうちのいくつかの構成要素を実施形態から削除してもよい。
【0187】
また、図面は、発明の理解を容易にするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚さ、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の構成は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0188】
例えば、
図2、
図7、
図9、
図10および
図12に示した基板処理ユニット10では、硫酸過酸化水素水混合液は、チャンバー11内のノズル56において硫酸および過酸化水素水を混合することによって生成されたが、本実施形態は、これに限定されない。硫酸過酸化水素水混合液は、チャンバー11の外で硫酸および過酸化水素水を混合することによって生成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0189】
本発明は、基板処理装置および基板処理方法の分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0190】
20 基板保持部
30 エッチング液供給部
40 リンス液供給部
50 SPM供給部
60 リンス液供給部
100 基板処理装置
101 制御装置
102 制御部
104 制御部