IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン ユーエスエイ,インコーポレイテッドの特許一覧

<図1>
  • 特許-手動管腔検出に基づく蛍光較正 図1
  • 特許-手動管腔検出に基づく蛍光較正 図2
  • 特許-手動管腔検出に基づく蛍光較正 図3
  • 特許-手動管腔検出に基づく蛍光較正 図4
  • 特許-手動管腔検出に基づく蛍光較正 図5
  • 特許-手動管腔検出に基づく蛍光較正 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】手動管腔検出に基づく蛍光較正
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20240411BHJP
   A61B 1/313 20060101ALI20240411BHJP
   A61B 1/045 20060101ALI20240411BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20240411BHJP
   A61B 8/12 20060101ALN20240411BHJP
【FI】
A61B1/00 630
A61B1/313 510
A61B1/045 622
A61B1/00 526
A61B1/00 530
A61B1/00 511
G01N21/17 620
A61B8/12
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022155988
(22)【出願日】2022-09-29
(65)【公開番号】P2023054764
(43)【公開日】2023-04-14
【審査請求日】2023-04-18
(31)【優先権主張番号】17/493,184
(32)【優先日】2021-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596130705
【氏名又は名称】キヤノン ユーエスエイ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CANON U.S.A.,INC
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】ピアス マシュー スコット
(72)【発明者】
【氏名】エルマアナオウイ バドル
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-207222(JP,A)
【文献】特開2021-090723(JP,A)
【文献】特開2019-088771(JP,A)
【文献】特開2007-222381(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0121132(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
G01N 21/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光干渉断層撮影(OCT)イメージングモダリティ及び蛍光イメージングモダリティと、
前記2つのイメージングモダリティに接続されるとともに、血管の管腔を通して挿入されて、2つ以上の波長のを血管壁へ誘導するように構成されたカテーテルであって、第1の波長の光で前記血管壁を照明することに応じて後方散乱OCT光を収集すると同時に、記第1の波長とは異なる第2の波長の光で前記血管壁を照明することに応じて、前記血管壁によって発せられた蛍光信号を収集するように構成された、カテーテルと、
プロセッサであって、
収集された前記後方散乱OCT光に対応する第1のデータと、収集された前記蛍光信号に対応する第2のデータとをオーバーレイすることによって、前記血管の画像を表示することであって、前記第1のデータは、前記血管壁の管腔境界を示し、前記第2のデータは、前記管腔境界に関して径方向に前記蛍光信号を示す、表示することと、
前記第1のデータに基づいて、前記カテーテルから前記血管壁までの管腔距離、及び/又は、前記血管壁に入射した前記の入射角を計算することと、
前記管腔距離及び/又は前記入射角に基づいて、前記蛍光信号に第1の較正係数を適用することによって、第1の較正済み蛍光信号を生成することと、
を実行するように構成されたプロセッサと、
を備える、カテーテルベースのマルチモダリティイメージングシステムであって、
前記第1の較正済み蛍光信号のパラメータが所定の閾値と異なる場合、前記プロセッサは、
(i)前記血管壁の前記管腔境界の一部及び/又は関心領域(ROI)を選択するよう、ユーザに促すことと、
(ii)前記血管壁から収集された前記後方散乱OCT光に基づいて、前記管腔境界の前記選択された一部の光減衰特性、及び/又は、選択された前記ROIの光減衰特性を計算することと、
(iii)前記第1の較正済み蛍光信号に第2の較正係数を適用することによって、第2の較正済み蛍光信号を生成することと、
を実行するように更に構成され、
前記第2の較正係数は、前記管腔境界の前記選択された一部の前記光減衰特性、及び/又は、選択された前記ROIの前記光減衰特性に基づく、
カテーテルベースのマルチモダリティイメージングシステム。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記後方散乱OCT光に対応するデータと、前記第1の較正済み蛍光信号に対応するデータ及び/又は前記第2の較正済み蛍光信号に対応するデータとを組み合わせることによって、前記血管の画像を再構成するように更に構成され、
前記再構成された画像は、前記第1の較正済み蛍光信号に対応する前記データ、及び/又は、前記第2の較正済み蛍光信号に対応する前記データを、前記蛍光信号の較正が行われた径方向位置においてのみ、前記第1のデータと径方向に対応させて示す、
請求項1に記載のカテーテルベースのマルチモダリティイメージングシステム。
【請求項3】
前記血管壁は、様々な深さに位置するフルオロフォアを含む血管組織を含み、
前記プロセッサは、前記血管壁の形態パラメータを決定し、前記フルオロフォアから前記管腔境界までの信号経路長の関数としての前記後方散乱OCT光の光減衰に基づいて、前記第1の較正済み蛍光信号を較正するように構成される、
請求項1に記載のカテーテルベースのマルチモダリティイメージングシステム。
【請求項4】
記蛍光イメージングモダリティは、近赤外自家蛍光(NIRAF)イメージングモダリティ、又は近赤外蛍光(NIRF)イメージングモダリティを含む、
請求項1に記載のカテーテルベースのマルチモダリティイメージングシステム。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記管腔境界にオーバーレイされた複数の制御点を表示するように更に構成され、
前記制御点の1つ以上が前記管腔境界に一致しない場合、前記プロセッサは、前記制御点の全てを前記血管壁の前記管腔境界に一致させるために、前記制御点の前記1つ以上を移動するよう、前記ユーザに促すように構成される、
請求項1に記載のカテーテルベースのマルチモダリティイメージングシステム。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記管腔境界に一致するように移動された前記1つ以上の点を通って前記血管壁から前記カテーテルまで進む前記後方散乱OCT光の光減衰を計算することにより、前記管腔境界の前記選択された一部の前記光減衰特性を計算する、
請求項5に記載のカテーテルベースのマルチモダリティイメージングシステム。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記第1の較正済み蛍光信号に前記第2の較正係数を適用することによって、前記第2の較正済み蛍光信号を生成し、
前記第2の較正係数は、前記管腔境界に一致するように移動された前記1つ以上の点を通って前記血管壁から前記管腔境界まで進む前記後方散乱OCT光の前記光減衰に基づく、
請求項6に記載のカテーテルベースのマルチモダリティイメージングシステム。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記管腔境界にオーバーレイされた複数の制御点を表示するように更に構成され、
前記制御点の1つ以上が前記管腔境界に一致しない場合、前記プロセッサは、前記制御点の前記1つ以上の近くのROIを選択するよう前記ユーザに促し、前記血管壁から前記ROIを通って前記1つ以上の制御点まで進む前記後方散乱OCT光の光減衰を計算するように構成される、
請求項1に記載のカテーテルベースのマルチモダリティイメージングシステム。
【請求項9】
前記プロセッサは、選択された前記ROIを通り前記管腔境界まで、前記血管壁から前記カテーテルまで進む前記後方散乱OCT光の前記光減衰を計算することにより、前記管腔境界の前記選択された一部の前記光減衰特性を計算する、
請求項8に記載のカテーテルベースのマルチモダリティイメージングシステム。
【請求項10】
光干渉断層撮影(OCT)イメージングモダリティ及び蛍光イメージングモダリティを用いて画像を取得するカテーテルベースのマルチモダリティイメージングシステムの作動方法であって、
血管の管腔を通してカテーテルを動かすステップであって前記カテーテルは、前記2つのイメージングモダリティによって提供される2つ以上の波長のを血管壁へ誘導する、動かすステップと、
第1の波長の光によって照明された前記血管壁から前記カテーテルによって収集された後方散乱OCT光を検出するステップと、
前記カテーテルが、前記第1の波長とは異なる第2の波長の光によって照明された前記血管壁によって発せられた蛍光信号を収集するステップと、
プロセッサが、前記血管壁から収集された前記後方散乱OCT光及び前記蛍光信号を処理して、前記血管の画像を形成するステップと、
前記プロセッサが、収集された前記後方散乱OCT光に対応する第1のデータと、収集された前記蛍光信号に対応する第2のデータとをオーバーレイすることによって、前記血管の前記画像を表示画面上に表示するステップであって、前記第1のデータは、前記血管壁の管腔境界を示し、前記第2のデータは、前記管腔境界に関して径方向に前記蛍光信号を示す、表示するステップと、
前記プロセッサが、前記第1のデータに基づいて、前記カテーテルから前記血管壁までの管腔距離、及び/又は、前記血管壁に入射した前記の入射角を計算するステップと、
前記プロセッサが、前記管腔距離及び/又は前記入射角に基づいて、前記蛍光信号に第1の較正係数を適用することによって、第1の較正済み蛍光信号を生成するステップと、
を含み、
前記第1の較正済み蛍光信号のパラメータが所定の閾値と異なる場合、
(i)前記プロセッサが、前記血管壁の前記管腔境界の一部及び/又は関心領域(ROI)を選択するよう、ユーザに促すステップと、
(ii)前記プロセッサが、前記血管壁から収集された前記後方散乱OCT光に基づいて、前記管腔境界の前記選択された一部の光減衰特性、及び/又は、選択された前記ROIの光減衰特性を計算するステップと、
(iii)前記プロセッサが、前記第1の較正済み蛍光信号に第2の較正係数を適用することによって、第2の較正済み蛍光信号を生成するステップと、
を更に含み、
前記第2の較正係数は、前記管腔境界の前記選択された一部の前記光減衰特性、及び/又は、選択された前記ROIの前記光減衰特性に基づく、
方法。
【請求項11】
前記プロセッサが、前記後方散乱OCT光に対応するデータと、前記第1の較正済み蛍光信号に対応するデータ及び/又は前記第2の較正済み蛍光信号に対応するデータとを組み合わせることによって、前記血管の画像を再構成するステップと、
前記プロセッサが、前記再構成された画像を表示画面上に表示して、前記第1の較正済み蛍光信号に対応する前記データ、及び/又は、前記第2の較正済み蛍光信号に対応する前記データを、前記蛍光信号の較正が行われた径方向位置においてのみ、前記第1のデータと径方向に対応させて示すステップと、
を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記血管壁は、様々な深さに位置するフルオロフォアを含む血管組織を含み、
前記方法は、
前記プロセッサが、前記血管壁の形態パラメータを決定し、前記フルオロフォアから前記管腔境界までの信号経路長の関数としての前記後方散乱OCT光の光減衰に基づいて、前記第1の較正済み蛍光信号を較正するステップ、
を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
記蛍光信号を収集するステップは、近赤外自家蛍光(NIRAF)信号又は近赤外蛍光(NIRF)信号を収集するステップを含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記プロセッサが、前記管腔境界にオーバーレイされた複数の制御点を前記表示画面上に表示するステップと、
前記制御点の1つ以上が前記管腔境界に一致しない場合、前記プロセッサが、前記制御点の全てを前記血管壁の前記管腔境界に一致させるために、前記制御点の前記1つ以上を手動で移動するよう、前記ユーザに促すステップと、
を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記プロセッサが、前記管腔境界に一致するように移動された前記1つ以上の点を通って前記血管壁から前記カテーテルまで進む前記後方散乱OCT光の光減衰を計算することにより、前記管腔境界の前記選択された一部の前記光減衰特性を計算するステップ、
を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記プロセッサが、前記第1の較正済み蛍光信号に前記第2の較正係数を適用することによって、前記第2の較正済み蛍光信号を生成するステップ、
を更に含み、
前記第2の較正係数は、前記管腔境界に一致するように移動された前記1つ以上の点を通って前記血管壁から前記管腔境界まで進む前記後方散乱OCT光の光減衰に基づく、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記プロセッサが、前記管腔境界にオーバーレイされた複数の制御点を前記表示画面上に表示するステップ
を更に含み、
前記制御点の1つ以上が前記管腔境界に一致しない場合、前記プロセッサは、前記制御点の前記1つ以上の近くのROIを選択するよう前記ユーザに促し、前記血管壁から前記ROIを通って前記1つ以上の制御点まで進む前記後方散乱OCT光の光減衰を計算す
を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記プロセッサが、選択された前記ROIを通り前記管腔境界まで、前記血管壁から前記カテーテルまで進む前記後方散乱OCT光の光減衰を計算することにより、前記管腔境界の前記選択された一部の光減衰特性を計算するステップ、
を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
命令を格納するように構成された非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記命令は、つ以上のプロセッサによって実行されると、請求項1~9のいずれか一項に記載の前記カテーテルベースのマルチモダリティイメージングシステムを制御する、非一時的なコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
該当なし
【0002】
本開示は、概して医用イメージングに関する。特に、本開示は、マルチモダリティイメージングカテーテルによって生体管腔内から取得された医用画像の画像処理及び信号較正のシステム及び方法を対象とする。
【背景技術】
【0003】
生体組織は、光を吸収するクロモフォアや蛍光を発する(すなわち光を吸収し再放射する)フルオロフォア等の不均質構造から成る。このような理由から、光が生体組織と相互作用すると、光は組織構造内で拡散し、吸収、反射、再放射及び/又は散乱され得る。これらの光学的プロセスにより、イメージング技術は、非侵襲的又は低侵襲的なイメージング方法によって組織構造の特徴を明らかにし、疾患を特定することができる。光干渉断層撮影(OCT)イメージングは、近赤外光を用いて、in situかつリアルタイムで組織の微細構造の高解像度断面形態情報を提供するイメージング技術である。OCTでは、レーザビームによってサンプルの組織表面をスキャンして、2次元又は3次元の画像を取得する。この技術は、眼科学と心臓病学では一般に使用されている。心血管用途では、OCT光ビームは、冠動脈疾患(CAD)の治療を受けている患者の冠動脈内に挿入されたカテーテルを通って送達される。カテーテルが動脈内でプルバックされる間に、カテーテル遠位端から発せられたイメージングビームが血管壁に沿って回転しながら掃引されて、約5~10センチメートル(cm)の長さにわたって血管から画像データが収集される。得られたデータセットの画像処理により、複雑な冠動脈の状態や、アテローム性動脈硬化症等の血管壁病態を、およそ10ミクロン(μm)の解像度で示すことができる。典型的なOCT画像処理としては、画像セグメンテーション、特徴定量化、オブジェクト検出、組織特性評価(characterization)が挙げられる。
【0004】
血管内蛍光法は、カテーテルベースの分子イメージング技術であり、レーザ光を用いて、血管壁からの蛍光放射、及び/又は、特定の血管内のプラーク成分からの蛍光放射を刺激する。蛍光には、内因性フルオロフォアによって生じる近赤外自家蛍光(NIRAF)、又は、血管に静脈注射された分子剤によって生じる近赤外蛍光(NIRF)が含まれることがある。短時間の蛍光の放射強度を積分したり、蛍光信号の寿命を測定したり(すなわち蛍光寿命イメージングマイクロスコピー又はFLIM)、放射された蛍光のスペクトル形状を解析したり(蛍光分光法)することにより、蛍光検出を得ることができる。近赤外光は、血管内用途の場合に蛍光放射を刺激するためによく使用される。イメージングカテーテルには光ファイバが含まれ、半侵襲的インターベンション(例えば、冠動脈の場合は経皮的冠動脈インターベンション)により、血管の管腔に光を送ったり、管腔から光を収集したりする。
【0005】
OCTと蛍光のイメージングモダリティを単一のイメージングカテーテルに統合することにより、動脈等の管腔サンプルからの共存する解剖学的情報と分子情報を同時に取得できるマルチモダリティOCTシステム(MMOCTシステム)が得られる。例えば、とりわけ、Wang他(本明細書では"Wang")による"Ex vivo catheter-based imaging of coronary atherosclerosis using multimodality OCT and NIRAF excited at 633 nm"と題された刊行物(Biomedical Optics Express 6(4)、1363-1375(2015));Ughi他(本明細書では"Ughi")による"Dual modality intravascular optical coherence tomography (OCT) and near-infrared fluorescence (NIRF) imaging:a fully automated algorithm for the distance-calibration of NIRF signal intensity for quantitative molecular imaging"と題された刊行物(Int J Cardiovasc Imaging.2015 Feb;31(2):259-68);並びに、特許関連刊行物(US9557154、US20160228097、US20190099079、US20190298174等)を参照されたい。
【0006】
MMOCTシステムでは、検出された蛍光の信号強度は、カテーテルと管腔エッジの間の距離(「管腔距離」)、及び/又は、管腔に対する放射の入射の角度(「入射角」)に依存する。その点に関して、検出される蛍光信号は、管腔距離が短いと強くなり、イメージングプローブから管腔壁までの距離が大きくなるにつれて弱くなることが知られている。また、カテーテルが管腔エッジに近すぎる(例えば血管の壁に触れている)と、検出される蛍光信号が不正確になり得る(すなわち、検出される蛍光が偽陽性信号になり得る)ことも知られている。現在の技術(例えばWangによって開示されたシステム)では、OCTモダリティを用いて管腔距離を測定し、光学プローブと組織の間の距離に基づく較正係数を用いて、イメージングプローブによって収集された蛍光信号の強度を較正する。更に、米国特許出願公開第2019/0099079号(本願の譲受人によって開示)では、OCTモダリティを用いて、軸断面と縦断面の入射角を測定し、計算された入射角に基づく較正係数を用いて、イメージングプローブによって収集された蛍光信号の強度を較正する。しかしながら、蛍光信号の収集効率は、管腔距離及び/又は放射の入射角だけでなく、組織異種性の光減衰特性及び/又は散乱特性等の1つ以上の光学特性にも左右されることが分かっている。例えば、Liu他(Liu)の"Tissue characterization with depth-resolved attenuation coefficient and backscatter term in intravascular optical coherence tomography images"(J.Biomed.Opt.22(9)096004(2017年9月12日))を参照されたい。また、米国特許出願公開第2003/0028100号、第2009/0036770号、第2009/0043192号、第2021/0161387号も参照されたい(これらは参照により全体として本明細書に援用される)。
【0007】
言い換えれば、現在の技術は、カテーテルから管腔壁までの距離や、放射の入射角、信号の深さ及び組織組成(一般に「進行路」として表される)等の1つ以上のパラメータに基づいて、蛍光信号の較正を行うことを提案している。これらのパラメータは、典型的には、OCTや血管内超音波検査(IVUS)等の構造モダリティを用いて生成された形態画像から得られる。
【0008】
これに関して、血管壁や血管の様々な場所に蓄積したプラークにおいて、様々な深さにフルオロフォアが位置し得ることに留意されたい。しかしながら、管腔壁までの距離と入射角のみを用いたNIRAFの較正方法では、現在の技術は、管腔壁の表面にフルオロフォアが位置することを前提としている。フルオロフォアの特徴を正確に明らかにするには、管腔壁だけでなく管腔形態とその位置も把握して、フルオロフォアまでの信号経路長の関数としてNIRAF信号の減衰を較正する必要がある。
【0009】
現在の技術では、自動管腔検出は、カテーテルから管腔までの信号経路長を決定することに主に依拠している。しかしながら、管腔表面、信号の深さ及び放射角度の自動検出が不正確である場合、結果として生じるイメージング信号の同期と較正も不正確になり得る。管腔形状が変則的であったり、管腔壁の組成が不均一であったり、光学プローブからの管腔壁距離が径方向に変化したりするような血管では、自動管腔検出の精度は損なわれてしまう。このような環境では、自動管腔検出のみに依拠すると、NIRAF較正の忠実度が低下するおそれがある。また、このような較正に基づいて予測されるNIRAF再構成も不正確であるおそれがあり、これが誤った診断及び/又は治療につながるおそれがある。したがって、自動管腔検出に加えて、手動で管腔壁を特定し、蛍光領域を選択し、或いは、部分的に自動セグメンテーションを行うとともにNIRAF較正に関連する血管内の関心領域を手動で選択する方法により、較正の忠実度を高め、より正確な診断及び/又は治療結果を保証することができるであろう。
【発明の概要】
【0010】
本開示の少なくとも1つの実施形態によれば、MMOCTシステム、及び、マルチモダリティイメージングカテーテルを用いて管腔サンプルから収集された蛍光データを較正するための方法が提供される。一実施形態では、第1のモダリティによって取得された蛍光信号は、カテーテルからサンプルまでの管腔距離及び/又は入射角に基づく第1の較正係数を適用することによって較正される。較正済み蛍光信号のパラメータが所定の条件と異なる場合、サンプルの境界及び/又は関心領域(ROI)を手動で選択するようユーザに促す。選択された境界及び/又はROIの光減衰特性は、第2のモダリティによって収集された後方散乱放射に基づいて計算され、蛍光信号は、光減衰特性に基づく第2の較正係数を適用することによって更に較正される。
【0011】
別の実施形態によれば、カテーテルベースのマルチモダリティイメージングシステムは、以下を備える:血管の管腔を通して挿入されて、2つ以上の波長の放射を血管壁へ誘導するように構成されたカテーテルであって、血管壁に第1の波長の放射を照射することに応じて後方散乱放射を収集すると同時に、血管壁に第1の波長とは異なる第2の波長の放射を照射することに応じて、血管壁によって発せられた蛍光信号を収集するように構成された、カテーテル;及び、プロセッサ。プロセッサは、以下を実行するように構成される:収集された後方散乱放射に対応する第1のデータと、収集された蛍光信号に対応する第2のデータとをオーバーレイすることによって、血管の画像を表示することであって、第1のデータは、血管壁の管腔境界を示し、第2のデータは、管腔境界に関して径方向に蛍光信号を示す、表示すること;第1のデータに基づいて、カテーテルから血管壁までの管腔距離、及び/又は、血管壁に入射した放射の入射角を計算すること;及び、管腔距離及び/又は入射角に基づいて、蛍光信号に第1の較正係数を適用することによって、第1の較正済み蛍光信号を生成すること。第1の較正済み蛍光信号のパラメータが所定の閾値と異なる場合、プロセッサは、更に以下を実行するように構成される:(i)血管壁の管腔境界の一部及び/又は関心領域(ROI)を選択するよう、ユーザに促すこと、(ii)血管壁から収集された後方散乱放射に基づいて、管腔境界の選択された一部の光減衰特性、及び/又は、選択されたROIの光減衰特性を計算すること、及び、(iii)第1の較正済み蛍光信号に第2の較正係数を適用することによって、第2の較正済み蛍光信号を生成すること。第2の較正係数は、管腔境界の選択された一部の光減衰特性、及び/又は、選択されたROIの光減衰特性に基づく。
【0012】
別の実施形態によれば、プロセッサは、後方散乱放射に対応するデータと、第1の較正済み蛍光信号に対応するデータ及び/又は第2の較正済み蛍光信号に対応するデータとを組み合わせることによって、血管の画像を再構成するように更に構成される。再構成された画像は、第1の較正済み蛍光信号に対応するデータ、及び/又は、第2の較正済み蛍光信号に対応するデータを、蛍光信号の較正が行われた径方向位置においてのみ、第1の画像データと径方向に対応させて示す。
【0013】
更なる実施形態によれば、マルチモダリティプローブによって取得された画像を用いて蛍光信号を較正する方法は、以下を含む:第1のイメージングモダリティを用いて、第1の波長の放射をサンプルに照射するステップ;第2のイメージングモダリティを用いて、第1の波長の放射とは異なる第2の波長の放射をサンプルに照射するステップ;第1の波長の放射と第2の波長の放射を同時にサンプルへ誘導し、第1の波長の放射をサンプルに照射することに応じた後方散乱放射と、第2の波長の放射をサンプルに照射することに応じてサンプルによって放射された蛍光信号とを、第1及び第2のイメージングモダリティに作動的に結合されたカテーテルを用いて同時に収集するステップ;及び、プロセッサを用いて、サンプルから収集された後方散乱放射及び蛍光信号を処理して、後方散乱放射に基づいて、カテーテルとサンプルの間の管腔距離、及び/又は、サンプルに入射した放射の入射角を計算し、管腔距離及び/又は入射角に基づいて、蛍光信号に第1の較正係数を適用することによって、第1の較正済み蛍光信号を生成するステップ。第1の較正済み蛍光信号のパラメータが所定のレベルと異なる場合、プロセッサは、(i)サンプルの境界及び/又は関心領域(ROI)を選択するよう、ユーザに促し、(ii)選択された境界及び/又はROIから収集された後方散乱放射に基づいて、サンプルの光減衰特性を計算し、(iii)光減衰特性に基づいて、第1の較正済み蛍光信号に第2の較正係数を適用することによって、第2の較正済み蛍光信号を生成するように更に構成される。
【0014】
本開示のこれら及び他の目的、特徴及び利点は、本開示の例示の実施形態の以下の詳細な説明を添付の図面及び提供された特許請求の範囲と併せて読むと、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、共通のファイバベースのイメージングカテーテル160を用いる蛍光モダリティとOCTモダリティを含む例示のマルチモダリティイメージングシステム100を示す。
図2図2A図2Bは、それぞれ、プルバック動作中の連続する位置におけるカテーテル160の例示の縦断面図と軸方向図を示す。
図3図3A図3Bは、それぞれ、血管壁の管腔に組織アーチファクトが浮遊している状態の同一管腔断面のOCTオーバーレイとNIRAFオーバーレイを示す。図3Cは、極座標に配置された複数のAスキャンから再構成された例示のBスキャン画像を示す。図3Dは、本開示の実施形態に係る、図3A図3Bの断面での組織強度プロファイルのグラフを示す。
図4図4A及び図4Bは、本開示の実施形態に係る、例示のOCTとNIRAFのコレジストレーション画像を示し、アルゴリズム生成された管腔検出境界線と、自動検出が正確な管腔境界を作成できなかった場合の手動オーバーライド線の両方を表示している。
図5図5は、本開示の実施形態に係る、例示のOCTとNIRAFのコレジストレーション画像を示し、アルゴリズム生成された管腔境界線401と、手動選択ROI405を表示している。ここでは、手動ROI選択により、システムは、OCT特性に基づくNIRAF較正に用いられる組織組成を特定することができる。
図6図6は、本開示の実施形態に係る、手動ROI選択と併せて管腔壁の自動及び手動の特定を反復的に組み合わせる(或いは、自動及び手動の特定を交互に行う)蛍光信号較正のための例示アルゴリズムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
様々な実施形態が更に詳細に説明される前に、本開示は特定の実施形態に限定されないことを理解されたい。また、当然のことながら、本明細書において用いられる用語は、例示の実施形態を説明する目的のものにすぎず、限定することを意図するものではない。
【0017】
図全体を通して、別段の記載がない限り、同じ参照番号及び文字は、例示される実施形態の同様の特徴、要素、コンポーネント又は部分を示すために用いられる。更に、同封の図を参照して本開示を詳細に説明するが、それは、例示の実施形態に関連してなされる。添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の真の範囲から逸脱することなく、説明される例示の実施形態に対して変更及び修正を行うことができることが意図される。図面はいくつかの可能な構成及びアプローチを表すが、図面は必ずしも縮尺どおりではなく、本開示の特定の態様をより分かりやすく図示及び説明するために、特定の特徴が誇張、削除又は部分的に切断される場合がある。本明細書に記載の説明は、網羅的であること、そうでなければ、図面に示され以下の詳細な説明に開示される正確な形態及び構成に特許請求の範囲を限定又は制限することを意図するものではない。
【0018】
当業者には当然のことながら、一般に、本明細書、特に添付の特許請求の範囲(例えば添付の特許請求の範囲の本文)で使用される用語は、概して、"オープン"な用語として意図されている(例えば、「含む(including)」という用語は「含むが、これに限定されない」と解釈されるべきであり、「有する」という用語は「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、「含む(includes)」は「含むが、これに限定されない」と解釈されるべきである、等)。更に、当業者には当然のことながら、導入された請求項記載の具体的な数字が意図されている場合、そのような意図は特許請求の範囲に明示的に記載され、また、そのような記載がない場合、そのような意図は存在しない。例えば、理解の助けとして、以下の添付の特許請求の範囲は、請求項記載を導入するために、「少なくとも1つの」や「1つ以上の」という導入句の使用を含む場合がある。ただし、そのような語句の使用は、同じ請求項に「1つ以上の」又は「少なくとも1つの」との導入句と、"a"又は"an"等の不定冠詞とが含まれている場合でも、不定冠詞"a"又は"an"による請求項記載の導入により、そのような導入された請求項記載を含む特定の請求項が、そのような記載を1つだけ含む請求項に限定されることを意味すると解釈されるべきではない(例えば、"a"及び/又は"an"は、典型的には、「少なくとも1つの」又は「1つ以上の」を意味すると解釈されるべきである)。請求項記載を導入するために使用される定冠詞の使用についても、同じことが言える。
【0019】
更に、導入された請求項記載の具体的な数字が明示的に記載されている場合であっても、当業者には当然のことながら、そのような記載は、典型的には、少なくとも記載された数を意味すると解釈されるべきである(例えば、他の修飾語を伴わずに「2つの記載」とだけ記載される場合、典型的には、少なくとも2つの記載、又は2つ以上の記載を意味する)。更に、「A、B及びC等のうちの少なくとも1つ」に類似した規定が使用される場合、概して、そのような構文は、当業者が該規定を理解し得るという意味で意図されている(例えば、「A、B及びCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、A単独で、B単独で、C単独で、AとBを併せて、AとCを併せて、BとCを併せて、かつ/又は、A、B及びCを併せて有するシステム等を含み得る)。「A、B又はC等のうちの少なくとも1つ」に類似した規定が使用される場合、概して、そのような構文は、当業者が該規定を理解し得るという意味で意図されている(例えば、「A、B又はCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、A単独で、B単独で、C単独で、AとBを併せて、AとCを併せて、BとCを併せて、かつ/又は、A、B及びCを併せて有するシステム等を含み得る)。更に、当業者には当然のことながら、典型的には、離接語、及び/又は2つ以上の代替用語を表す語句(明細書、特許請求の範囲、又は図面のいずれにおいても)は、文脈上別段の指示がない限り、該用語の一方、該用語のいずれか、又は該用語の両方を含む可能性を企図するものと理解されるべきである。例えば、「A又はB」という表現は、典型的には、「A」又は「B」又は「A及びB」の可能性を含むと理解される。
【0020】
本明細書において、特徴又は要素が別の特徴又は要素の「上」にあるとして言及されるとき、それは、当該他の特徴又は要素の直上に存在してよく、又は、介在する特徴及び/又は要素も存在してよい。対照的に、特徴又は要素が別の特徴又は要素の「直上」にあるとして言及されるとき、介在する特徴又は要素は存在しない。また、当然のことながら、特徴又は要素が別の特徴又は要素に「接続される」、「取り付けられる」、「結合される」等として言及されるとき、それは、当該他の特徴に直接的に接続されてよく、取り付けられてよく、又は結合されてよく、又は、介在する特徴又は要素が存在してもよい。対照的に、特徴又は要素が別の特徴又は要素に「直接的に接続される」、「直接的に取り付けられる」又は「直接的に結合される」として言及されるとき、介在する特徴又は要素は存在しない。一実施形態に関して説明又は図示したが、一実施形態においてそのように説明又は図示された特徴及び要素は、他の実施形態に適用することができる。また、当業者であれば理解できるように、別の特徴に「隣接」して配置されている構造又は特徴への言及は、当該隣接する特徴にオーバーラップするかその下にある部分をもつ場合がある。
【0021】
本明細書では、様々な要素、コンポーネント、領域、部品及び/又は部分を説明するために、第1、第2、第3等の用語が使用される場合がある。当然のことながら、これらの要素、コンポーネント、領域、部品及び/又は部分はこれらの指定の用語によって限定されない。これらの指定の用語は、ある要素、コンポーネント、領域、部品又は部分を別の領域、部品又は部分から区別するためにのみ使用されている。よって、後述する第1の要素、コンポーネント、領域、部品又は部分は、単に区別を目的として、しかし限定をすることなく、また、構造的又は機能的な意味から逸脱することなく、第2の要素、コンポーネント、領域、部品又は部分と呼ぶことができる。
【0022】
本明細書において用いられる場合、単数形は、文脈上明確に別段の指示がない限り、複数形も含むことを意図している。更に、当然のことながら、「含む」、「備える」、「成る」という用語は、本明細書及び特許請求の範囲において用いられる場合、記載の特徴、整数、ステップ、動作、要素及び/又はコンポーネントの存在を指定するが、明示的に記載されていない1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、コンポーネント及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除するものではない。更に、本開示では、「~から成る」という移行句は、クレームで指定されていないいかなる要素、ステップ又はコンポーネントも除外する。更に、留意すべきこととして、一部のクレーム又はクレームの一部の特徴は、任意の要素を除外するように起草される場合があり、このようなクレームは、クレーム要素の記載に関連して「単独で」、「~のみ」等の排他的な用語を使用する場合があり、又は、「否定的な」限定を使用する場合がある。
【0023】
本明細書で使用される「約」又は「およそ」という用語は、例えば10%以内、5%以内又はそれ未満を意味する。一部の実施形態では、「約」という用語は、測定誤差内を意味することがある。これに関して、説明され又はクレームされる際に、用語が明示的に表示されていなくても、全ての数値は「約」又は「およそ」という語が前置されているかのように読まれてよい。「約」又は「およそ」という語句は、大きさ及び/又は位置を記述するとき、記載の値及び/又は位置が値及び/又は位置の妥当な予想範囲内にあることを示すために使用されることがある。例えば、数値は、記述された値(又は値の範囲)の±0.1%、記述された値(又は値の範囲)の±1%、記述された値(又は値の範囲)の±2%、記述された値(又は値の範囲)の±5%、記述された値(又は値の範囲)の±10%等である値を含み得る。本明細書に記載されている場合、あらゆる数値範囲は、具体的に別段の記載がない限り、終了値を含むことを意図しており、そこに属する全ての部分範囲を含む。本明細書で用いられる場合、「実質的に」という用語は、意図された目的に悪影響を及ぼさない、記述子からの逸脱を許容することを意味する。例えば、測定値の限定に由来する逸脱、製造公差内の差異、又は5%未満の変動は、実質的に同じ範囲内にあると見なすことができる。指定された記述子は、絶対値(例えば、実質的に球形、実質的に垂直、実質的に同心等)又は相対語(例えば、実質的に類似、実質的に同じ等)であり得る。
【0024】
具体的に別段の記載がない限り、以下の開示から明らかであるように、本開示を通して、「処理する」、「コンピュータで計算する」、「計算する」、「決定する」、「表示する」等の用語を用いた議論は、コンピュータシステム、又は同様の電子コンピューティングデバイス、又は、コンピュータシステムのレジスタ及びメモリ内の物理(電子)量として表されるデータを操作し、同様にコンピュータシステムのメモリ又はレジスタ又は他のそのような情報の記憶、伝送又は表示用のデバイス内の物理量として表される他のデータに変換するデータ処理デバイスの、動作及びプロセスを指すものと理解される。本明細書に記載されているか、若しくは添付の特許請求の範囲に記載されているコンピュータ動作又は電子動作は、文脈上別段の指示がない限り、一般に、任意の順序で実行することができる。また、様々な動作フロー図が順番に提示されているが、当然のことながら、各種動作は、図示又は特許請求されている順序以外の順序で実行することができ、或いは、動作を同時に実行することができる。そのような代替の順序付けの例としては、文脈上別段の指示がない限り、重複、インターリーブ、中断、再順序付け、増分、準備、補足、同時、逆、又は他の変形の順序付けが挙げられる。更に、「~に応答して」、「~に応えて」、「~に関連して」、「~に基づいて」等の用語、又は他の同様の過去形容詞は、文脈上別段の指示がない限り、通常、そのような変形を除外することを意図していない。
【0025】
本開示は、概して医療機器に関し、分光装置(例えば内視鏡)、光干渉断層法(OCT)装置、又はそのような装置の組合せ(例えばマルチモダリティ光プローブ)に適用可能である光プローブの実施形態を例示する。光プローブ及びその部分の実施形態を、三次元空間におけるそれらの状態に関して説明する。本明細書で用いられる場合、「位置」という用語は、3次元空間における物体又は物体の一部の位置(例えばデカルトX、Y、Z座標に沿った3自由度の並進自由度)を指し、「向き」という用語は、物体又は物体の一部の回転配置(回転の3自由度―例えばロール、ピッチ、ヨー)を指し、「姿勢」という用語は、少なくとも1つの並進自由度にある物体又は物体の一部の位置と、少なくとも1つの回転自由度にある物体又は一部の物体の向きとを指し(合計で最大6つの自由度)、「形状」という用語は、物体の長尺体に沿って測定された一連の姿勢、位置及び/又は方向を指す。
【0026】
医療機器の分野において既知であるように、「近位」及び「遠位」という用語は、ユーザから手術部位又は診断部位まで延びる器具の端部の操作に関して用いられる。これに関して、「近位」という用語は、器具のユーザに近い部分(例えばハンドル)を指し、「遠位」という用語は、ユーザから離れており外科部位又は診断部位に近い器具の部分(先端)を指す。更に、当然のことながら、便宜上簡潔にするために、本明細書では、図面に関して「垂直」、「平行」、「上」、「下」等の空間用語が用いられる場合がある。ただし、手術器具は多くの向きと位置で使用されるものであり、これらの用語は限定的かつ/又は絶対的であることを意図していない。
【0027】
本明細書で用いられる場合、「カテーテル」との用語は、概して、広範囲の医療機能を実行するために、狭い開口を通して体腔(例えば血管)の中に挿入されるように設計された、医療グレードの材料から作られる軟性の薄い管状器具を指す。より具体的な「光学カテーテル」との用語は、医療グレード材料から作られた保護シース内に配置され光学イメージング機能をもつ1つ以上の軟性の光伝導ファイバの細長い束を含む医用器具を指す。光学カテーテルの特定の例は、シース、コイル、プロテクタ及び光学プローブを備える光ファイバカテーテルである。一部の用途では、カテーテルは、シースと同様に機能する「ガイドカテーテル」を含み得る。本開示では、「光ファイバ」又は単に「ファイバ」等の用語は、全反射として知られる効果によって一端から他端に光を伝導することができる、細長い軟性の光伝導管を指す。「導光コンポーネント」又は「導波管」との用語も、光ファイバを指す場合があり、又は光ファイバの機能をもつ場合がある。「ファイバ」との用語は、1つ以上の光伝導ファイバを指す場合がある。光ファイバは、一般に透明で均質なコアをもち、それを通して光が誘導され、また、コアは均質なクラッディングによって囲まれている。コアの屈折率は、クラッディングの屈折率よりも大きい。設計上の選択に応じて、一部のファイバは、コアを囲む複数のクラッディングをもつことができる。
【0028】
上記の背景セクションで述べたように、サンプルまでの距離及び/又は放射の入射角に基づいて較正係数を決定することによって、検出された蛍光信号の較正を行うことができる。サンプルまでの距離及び/又は放射の入射角は、典型的には、OCTやIVUS等の構造イメージングモダリティから得られる。この手法では、検出信号を較正するために、蛍光信号の検出強度に較正係数を乗算する。較正精度を向上させるには、様々な信号の深さや組織の組成について、OCT信号強度プロファイルから得られる蛍光信号の"深さ"を用いて、各パラメータに対応する較正関数を定めることで、較正を行うことができる。IVUS-NIRSマルチモダリティでは、IVUSエラストグラフィと組織学技術を用いて、それらを任意に距離及び/又は角度の測定と組み合わせて、特異な較正係数を決定することによって、較正を向上させることができる。管腔距離、信号の深さ、組織組成及び入射角に基づくこのような較正方法のほとんどは、本開示に記載の因子に適用される較正技術を実現する際のワークフロー構成要素として組み合わせることができ、かつ/又は、別の目的で用いることができる。
【0029】
本開示は、選択された関心領域内の光学パラメータの測定を改善するために、手動管腔検出及び/又は1つ以上のROIの手動選択に基づく蛍光較正の特定の例示実施形態を提案するが、他の実施形態は、代替物、均等物及び変更を含み得る。更に、例示実施形態は、請求項に記載される主題を説明するいくつかの新規な特徴を含むが、特定の特徴は、本明細書に記載の装置、システム及び/又は方法の実装又は実施に必須ではないことがある。
【0030】
<マルチモダリティカテーテルシステム>
図1は、共通のファイバベースのイメージングカテーテル160を用いる蛍光モダリティとOCTモダリティを含む例示のマルチモダリティイメージングシステム100を示す。図2A図2Bは、それぞれ、プルバック動作中の連続する位置におけるカテーテル160の例示の縦断面図と軸方向図を示す。システム100は、冠動脈や脳動脈の画像を取得するように構成された血管内イメージングシステムとして使用することができる。システム100は、バルーンカテーテルその他の適切な構造とともに適合されて、食道イメージング等の他の体腔のイメージングに用いられてもよい。図1に示されるように、OCTモダリティは、サンプルアーム10及び参照アーム20を有する干渉計と、OCT光源110と、検出部120と、データ取得(DAQ)部130と、コンピュータシステム200とから成る。コンピュータシステム200は、表示装置300や、画像保管通信システム(PACS)350等の外部システムに接続される。サンプルアーム10は、患者インタフェースユニット(PIU)150と、ファイバベースのカテーテル160とを含む。蛍光モダリティは、励起光源180と、カテーテル160と、光検出器183と、データ取得(DAQ)部130と、コンピュータシステム200とから成る。すなわち、OCTモダリティと蛍光モダリティは、同じファイバベースカテーテル160を用いる。
【0031】
PIU150は、図示されていないビームコンバイナ/スプリッタと、光ファイバ回転継手(FORJ)152と、プルバック部151(例えば精密リニアステージ)とを含む。一実施形態では、システム100は、OCTモダリティのOCT光源110として波長掃引型レーザ(1310nm±50nm)を用い、蛍光モダリティの励起光源180として中心波長約633nmのヘリウムネオン(He-Ne)レーザを用いる。カテーテル160は、トルクコイル163と、ダブルクラッドファイバ(DCF)167と、遠位光学系アセンブリ168とから成るイメージングコアを含む。イメージングコアは、保護シース162(図2Aに図示)に囲まれている。遠位光学系アセンブリ168は、側方ビューイメージングのために、DCF167の先端に研磨ボールレンズを含むことがある。或いは、遠位光学系アセンブリ168は、DCF167の先端に取り付けられた屈折率分布型(GRIN)レンズ及びビーム指向性部品(例えばミラーや回折格子、プリズム)を含むことがある。近位端では、カテーテル160は、カテーテルコネクタ161を介してPIU150に着脱可能に接続される。蛍光モダリティでは、励起光源180は、光ファイバ181を介してPIU150に接続される。PIU150は、カテーテル160を介してサンプル170に対する放射の送達及び収集を同時に行うように、コンピュータ200によって制御される。
【0032】
動作中、イメージングシステム100は、動脈や静脈等の血管を含み得るサンプル170から、コレジストレーションされたOCT画像と蛍光画像を取得するように構成される。そのために、OCT光源110からの光その他の電磁放射(第1の波長の放射)は2分割され、一方は、カテーテル160を介してサンプルアーム10を通ってサンプル170へ誘導され、他方は、参照アーム20を通って反射器140へ誘導される。その後、反射器140によって反射された光と、サンプルによって後方散乱された光が収集されることにより、OCT干渉信号が生成される。同時に、励起光源180からの光その他の電磁放射(第2の波長の放射)が、ファイバ181を通ってFORJ及びサンプル170へ誘導され、サンプル170から放射された蛍光信号(第3の波長の放射)が、カテーテル160を介して収集される。コンピュータシステム200は、OCT干渉信号と蛍光信号を用いて、サンプル170の画像を再構成する。
【0033】
具体的には、光源110からの光は、スプリッタ102(例えば50/50のファイバスプリッタ又はビームスプリッタ)によってサンプルビームと参照ビームに分割され、これらはそれぞれ、各光ファイバを介してサンプルアーム10と参照アーム20へ送られる。サンプルアーム10では、サンプルビームがサーキュレータ105に入り、シングルモード(SM)ファイバ106へ移動し、PIU150へ送られる。カテーテル160はPIU150に接続され、PIU150は、ケーブルや束等の図示されていない接続部を介して、コンピュータ200に接続される。コンピュータ200の制御下で、PIU150は、カテーテル160のイメージングコアの回転を制御して、ヘリカルスキャン方式でサンプル170にサンプルビームを照射する。サンプル170によって反射及び/又は散乱されたサンプルビームの光は、カテーテル160の遠位端に配置された遠位光学系168によって収集され、収集された光は、ダブルクラッドファイバ167を通ってPIU150に送り返される。収集された光(サンプルビーム)は、PIUから、SMファイバ106を介してサーキュレータ105に進む。サーキュレータ105は、サンプルビームをコンバイナ104へ誘導する。
【0034】
参照アーム20では、参照ビームの光がサーキュレータ103に入り、光ファイバ141を介して反射器140に送られる。時間領域OCT(TD-OCT)イメージングの場合、反射器140は走査ミラーとして実装することができる。また、周波数領域OCT(FD-OCT)イメージングの場合、反射器140は固定ミラーとして実装することができる。反射器140から反射された参照ビームの光は、サーキュレータ103を通過し、コンバイナ104へ誘導される。このように、サンプルビームと参照ビームはビームコンバイナ104で結合され、既知のOCT原理に従って干渉信号が生成される。検出器121(第1の検出器)は、干渉信号の強度を検出する。
【0035】
検出器121は、フォトダイオードのアレイ、光電子増倍管(PMT)、マルチアレイカメラ、又は他の同様の干渉縞検出機器として実装されるバランス検出器であってよい。第1の検出器121から出力された干渉信号は、データ取得電子機器(DAQ1)131によって前処理され、コンピュータ200へ伝送される。コンピュータ200は、信号処理を実行して、既知の方法でOCT画像を生成する。干渉縞は、OCT光源110のコヒーレンス長の範囲内でサンプルアーム10の経路長が参照アーム20の経路長と一致する場合にのみ、生成される。一部の実施形態では、サンプルアーム10は光遅延線を含むことがある。
【0036】
蛍光モダリティでは、励起光源180が、中心波長633nmの励起放射(光)(第2の波長の放射)を放射して、PIU150とカテーテル160の遠位光学系を介して、サンプル170に照射する。励起光の照射に応じて、サンプル170は、既知の蛍光放射原理に基づいて、約633~800nmの広帯域波長の近赤外自家蛍光(NIRAF信号)又は近赤外蛍光(NIRF信号)を発する(第3の波長の放射)。本明細書でいう蛍光とは、光子の形のエネルギーが分子に吸収されることにより、波長の長い蛍光光子が直ちに放出される光学現象である。
【0037】
一実施形態では、サンプル170によって生成された蛍光信号は自家蛍光を含むことがあり、これは、染料や薬剤の添加なしに発生する内因性の蛍光である。他の実施形態では、サンプル170によって生成された蛍光信号は、管腔サンプルに静脈内投与された外因性の蛍光染料や造影剤によって生じた蛍光を含むことがある。自家蛍光(又は蛍光)の光は、カテーテル160の遠位光学系168によって収集され、PIU150に送り返され、そこでFORJ152及び図示されていないビームコンバイナ/スプリッタが、蛍光信号を検出器122へ誘導する。検出器122から出力された蛍光信号(蛍光強度信号)は、データ取得部(DAQ)132によってデジタル化され、画像処理のためにコンピュータシステム200に送られる。OCTモダリティのOCT干渉縞と、蛍光モダリティからの蛍光信号は、時間と場所に関してコレジストレーションされるように、同時にコンピュータ100へ送られることが好ましい。
【0038】
図1に示されるように、コンピュータ200は、中央処理装置(CPU)191と、記憶メモリ(ROM/RAM)192と、ユーザ入出力(I/O)インタフェース193と、システムインタフェース194とを含む。コンピュータ200の各種機能コンポーネントは、物理データ回線及び論理データ回線(例えばデータバス)195を介して作動的に接続され、互いに通信する。記憶メモリ192は、1つ以上のコンピュータ可読媒体及び/又はコンピュータ書込み可能媒体を含み、例えば、磁気ディスク(例えばハードディスクドライブHHD)、光ディスク(例えばDVD(登録商標)、Blu-ray(登録商標)、又は配線)、光磁気ディスク、半導体メモリ(例えば不揮発性メモリカード、Flash(登録商標)メモリ、ソリッドステートドライブ、SRAM、DRAM)、EPROM、EEPROM等を含んでよい。記憶メモリ192は、オペレーティングシステム(OS)プログラムや、制御プログラム及び処理プログラム等、コンピュータ可読データ及び/又はコンピュータ実行可能命令を格納することができる。
【0039】
ユーザインタフェース193は、入出力(I/O)デバイスに対して通信インタフェース(電気接続)を提供し、入出力デバイスとしては、キーボード、表示装置(LCD又はLED又はOLEDのディスプレイ)300、マウス、印刷装置、タッチスクリーン、ライトペン、外付け光記憶装置、スキャナ、マイクロフォン、カメラ、ドライブ、通信ケーブル及びネットワーク(有線又は無線のいずれか)が挙げられる。また、システムインタフェース194は、OCTモダリティの光源110、蛍光モダリティの励起光源180、検出器ユニット120、DAQユニット130及びPIU150のうちの1つ以上の電子インタフェース(電子接続回路)を提供する。システムインタフェース194は、プログラマブルロジックデバイス(PDL)(フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)その他のPLD等)と併用されるプログラマブルロジック、ディスクリートコンポーネント、集積回路(例えば特定用途向け集積回路(ASIC))、又は、それらの任意の組合わせを含む他のコンポーネントを含んでよい。ユーザインタフェース193及びシステムインタフェース194の機能は、記憶装置192に記録されCPU191によって実行されるコンピュータ実行可能命令(例えば1つ以上のプログラム)によって、或いは、ネットワークを介して遠隔地で実行されるプログラム(例えばクラウドコンピューティング)によって、少なくとも部分的に実現することができる。更に、コンピュータ200は、例えば、PACS350のような他の医療機器と通信するための通信手段やネットワークインタフェースカード等のコンポーネントのような、1つ以上の追加の機器を備えることがある。図1に示されるイメージングシステム100の機能構成は、コンピュータ200のCPU191が、記憶装置192のROM/RAMに格納された実行可能命令又はプログラムを実行することによって、実現される。
【0040】
再び図2A及び図2Bを参照すると、カテーテル160の例示のプルバック動作が、以下のように簡単に説明されている。トルクコイル163は、PIU150に位置する回転モータ(図示なし)からの回転トルクを、カテーテルの遠位端に配置された遠位光学系アセンブリ168へ送り、プルバックユニット151は、カテーテル160をz方向(プルバック方向)に直線的に動かす。遠位光学系アセンブリ168のうち、ビーム指向部品165(例えばミラーやプリズム、回折格子)が、管腔距離(LD)に位置するサンプル170(管腔の壁)に向けて、照射光(照明光ビーム11)を径方向外向きに偏向させる。照明光ビーム11は、カテーテル160の遠位端から、カテーテル軸Oxに対して角度θ(シータ)を成して伝播し、サンプル表面171に入射角β(ベータ)で入射する。入射角βは、入射放射の方向(ビーム11の方向)と、サンプル表面171の傾斜とに依存する。したがって、サンプル表面171は均一ではなく、カテーテルから管腔壁までの管腔距離(LD)は一定ではないので、管腔長に沿った複数の測定点A1、A2、A3、A4等において、入射角βは異なる値β1、β2、β3、β4等をとり得る。ここで、OCTデータと蛍光データは遠位光学系168によって同時に取得されるので、照明光ビーム11とは、OCT光源110によって放射される光、及び/又は、励起光源180から放射される光(すなわちサンプル表面171に照射される光)を指す。
【0041】
照明ビーム11(OCT光と励起光を含む)がサンプル170(例えば動脈)を照明する間、イメージングコアがシース162内でプルバックされる(シース162はほぼ静止したままである)間に、少なくともカテーテル160のイメージングコアが、カテーテル軸Oxに関して回転又は振動する(矢印Rで示されるように)。このように、カテーテル160は、連続する径方向位置を通して、照明ビーム11をヘリカル回転方式で連続的に掃引することができる(図2Bに示されるように)。遠位光学系168は、サンプルから後方散乱されたOCT光と、サンプル170から放射された蛍光とを含む返り光12(サンプルビーム)を収集する。返り光12は、内部サンプル表面171(例えば血管壁)に関する情報を伝達する。参照光ビーム(図示なし)が、サンプルから反射されて収集された後方散乱OCT光と組み合わされたときに、検出器121によって干渉信号が検出される。同時に、検出器122は、蛍光信号を検出し、検出値(蛍光信号の強度)をDAQ2132及びコンピュータ200に転送する。図1を参照して先に述べたように、干渉OCT信号及び/又は蛍光信号は、それぞれ独立して電子信号に変換され、次いでデジタル化、保存及び/又は処理されて、検査中のサンプルの状態が解析される。
【0042】
サンプルビーム12からの後方散乱光と参照ビーム(図示なし)からの参照光を組み合わせると、サンプルビームと参照ビームの両方の光がほぼ同じ光学距離を進んだ場合にのみ、干渉信号が生じる(「ほぼ同じ光学距離」とは、光源のコヒーレンス長以下の差を指す)。サンプル170のうちより多くの光を反射する領域は、反射する光が少ない領域よりも強い干渉信号を生じることになる。コヒーレンス長を超える光は、干渉信号に寄与しない。反射/後方散乱光の強度プロファイルは、Aスキャン又はAラインスキャンとも呼ばれ、サンプル内の特徴的な特徴の空間次元と位置に関する情報を含む。OCT画像(一般にBスキャンと呼ばれる)は、複数の隣接するAラインスキャンを組み合わせることによって形成することができる。図2Aの図は、対応するタイミングT1、T2、T3、T4等での、カテーテル160のプルバック手技中の管腔サンプルの長さに沿った位置A1、A2、A3、A4での一連の測定を示す。デルタ(δ)は、連続する1回転測定間のプルバック中にカテーテルが移動する距離を表す。照明光ビーム11によるサンプル170のスキャンは、プルバック経路に沿って、ほぼ固定された角度θで発生すると考えられるが、サンプル170の表面171は均一ではなく、カテーテルは管腔に対して同心を維持しないので、管腔距離(LD)と入射角ベータは一定ではないと理解すべきである。
【0043】
図2Bは、カテーテル160の遠位端の軸方向図を示し、例示の照明光ビーム11が、ヘリカル経路に沿った複数の位置R1、R2、R3、R4で管腔サンプル170(例えば血管壁)に入射している(これは、カテーテルが回転しプルバックされる間に発生する)。各回転位置での測定は、固定(同一)角度θでサンプル170をスキャンする間に実行される。位置R1、R2、R3、R4の各々は、管腔内表面上で、カテーテル160が回転する間に測定が行われる異なる回転位置を表す。
【0044】
カテーテル160のプルバック動作Lと回転動作Rを組み合わせることにより、管腔サンプル170の内表面171ヘリカルスキャンすることによって、Aラインを生成することができる。複数のAラインスキャンを組み合わせることにより、サンプル170の2D画像を生成することができる。動脈断面の各2D画像は、例えば、カテーテル160の全周(360度)スキャンに対応する、およそ500個かそれ以上のAラインスキャンによって形成することができる。このような全周スキャンは、「フレーム」と呼ばれることがある。内表面171の3次元(3D)イメージングは、カテーテルが回転しているときに、プルバック動作の長手方向並進運動中に得られる複数の2D画像フレームを組み合わせることによって、達成することができる。結果として得られるカテーテルスキャンは、2DのBスキャンを形成するためのらせん状経路の連続するAラインスキャンであり、Bスキャンを組み合わせて、サンプル170の完全な3Dデータセット(又はCスキャン)を得ることができる。ヘリカル経路内の各360度回転スキャンはフレームと呼ばれることもあり、複数のフレームは、長手方向(z)軸に沿ってマイナスz方向に生成される。連続するAラインスキャンから収集されたデータは、(例えば高速フーリエ変換その他の既知のアルゴリズムによって)処理されて、既知の方法でサンプル170のOCT画像が生成される。同時に、蛍光信号(強度値)も収集、処理(デジタル化及び較正)、表示され、OCT画像に対応して解析される。
【0045】
<コレジストレーションされたマルチモダリティ管腔画像の表示>
プルバック動作と画像記録動作の結果は、典型的には、ユーザが結果を評価できるように、"検出されたとおりに"表示される。蛍光情報(NIRAF又はNIRF)とOCTデータの表示は、OCTと蛍光のデータを所定のフォーマットでオーバーレイするためのアルゴリズム処理技術に基づいて、自動的に生成される。カテーテルベースのマルチモダリティイメージングの結果は、OCT断層撮影像の周りに蛍光データのリングがオーバーレイされたものとして表示することができ、かつ/又は、縦断面図(カーペット像と呼ばれることがある)にオーバーレイされたOCTと蛍光のデータを示すように表示することができる。
【0046】
より具体的には、OCTデータと蛍光データは、血管の2次元マップ上に自動的に表示され、血管の構造特性、プラークが存在する可能性、及び/又は、血管内の他の化学情報を明らかにする。縦断面図では、2次元マップは、x軸上でプルバック位置をミリメートル単位で示し、y軸上で円周位置を度単位で示すことができる。単位長さと単位角度(例えば長さ0.1mm、角度1°)の画素ごとに、収集されたスペクトルデータから蛍光の量が計算され、グレーの濃淡や三原色(赤、緑、青)の割合を表す数値範囲(例えば0~255)で、カラースケール(又はグレースケール)上に定量的に符号化される。影がある場合や予期せぬスパイクがある場合等、画素に十分なデータがない場合は、対応する画像画素にヌル値(例えば黒又は白)を割り当てることができる。OCTデータと蛍光データは、血管の長さに沿った選択位置での血管の軸方向像を表す断層撮影像に表示することもできる。断層撮影像では、蛍光データは、マッピングされるとともに、対応するOCTデータとペアリングされ、蛍光がOCT画像の周りにリングとして表示される。コレジストレーションされたOCTと蛍光の画像データを表示する様々な方法に関する更なる詳細は、出願人の以前の特許出願公開公報(米国第2019/0339850号、米国第2019/0029624号、米国第2018/0271614号等)に記載されており、それらはあらゆる目的で参照により本明細書に援用される。
【0047】
有利な点として、カテーテルベースの蛍光が、OCTデータから決定されるプラーク内特性や他の特徴特性と相関する場合、形態的にリスクの高いプラークを特定できるだけでなく、血管の病理学的領域を十分に正確に認識することが可能であり、臨床結果が改善され、患者ケアにとってより良好な診断結果が得られる。ただし、データの特性が正しく把握されるようにするには、カテーテルから管腔までの距離の適切な検出及び較正と、蛍光信号の正確な検出を確認する必要がある。
【0048】
マルチモダリティOCTワークフローでは、血管管腔の正確な空間検出(光学プローブから管腔までの距離と、管腔に関するプローブの角度とから成る)に依拠することが、NIRAF信号の正確な較正、照会及び補間に使用するために必須である。
【0049】
NIRAFイメージングは、フルオロフォアによる光の励起と放射に依拠する。フルオロフォアとは、血管の中心に配置されたカテーテルに含まれるイメージングコアによって発せられた励起光にさらされたときに自家蛍光を発する、撮像標的(プラーク及び血管壁)内の分子である。発せられた蛍光信号はカテーテルで受信され、信号の波長、振幅及び寿命によって特徴付けられ、発光フルオロフォアについての情報が得られ、動脈壁とプラークの機能特性が生成される。励起光と放射NIRAF信号は、その進路に沿った非蛍光性分子との衝突によって生じる吸収と散乱を受け、これはまとめて減衰と呼ばれる。減衰により、励起光に対するフルオロフォアの自家蛍光反応のみに関連するNIRAF信号によって運ばれる関連情報が不明瞭になってしまう。フルオロフォアまでの距離や、検出器プローブ開口への放射信号の入射角、励起信号の減衰、放射信号の減衰等の因子が較正によって制御されないと、蛍光組織の特性評価が不正確になってしまう。
【0050】
NIRAF信号とOCT信号を共局在化させることにより、NIRAFによって提供される組織の分子・化学組成を象徴する情報が、OCTによって提供される形態学的情報を補完できるようになるので、両方のイメージング技術の診断能力が大幅に向上する。以前の技術では、カテーテルから管腔までの距離、及び/又は、サンプル表面に対する法線への励起光の入射角を用いて、NIRAF信号と形態学的OCT信号を較正及び同期することが提案されている。しかしながら、プローブとフルオロフォアの間のNIRAF信号進路長に対応する信号減衰を考慮することによって、NIRAF信号を正確に較正するには、サンプル表面の正確な位置情報が最も重要である。したがって、この経路長減衰に対する較正を介する信号解釈における因子として、NIRAF信号の経路長減衰を排除することにより、放射されたNIRAF信号によって運ばれる情報は、フルオロフォアを正確に特徴付けることができる(つまり、経路長減衰に加えるフルオロフォアの特性ではなく、特性評価されているフルオロフォアの振幅、周波数及び寿命)。
【0051】
これに関して、血管壁や、血管の様々な場所に蓄積したプラークにおいて、様々な深さにフルオロフォアが位置し得ることに留意されたい。しかしながら、管腔距離及び/又は入射角を用いたNIRAFの較正方法では、現在の技術は、フルオロフォアが管腔壁の表面に位置することを前提としている。したがって、フルオロフォアの特徴を正確に明らかにするには、管腔壁までの距離のみ及び/又は入射角だけでなく、管腔形態とフルオロフォア位置も把握して、フルオロフォアまでの信号経路長の関数としてNIRAF信号の減衰を正確に較正する必要がある。
【0052】
現在の技術では、自動管腔検出は、主に、放射/検出プローブ及びカテーテルから管腔までの信号経路長を決定することに依拠しており、管腔表面、深さ及び角度の自動検出が不正確である場合は、結果として、イメージング信号の同期及び較正も不正確になってしまう。管腔壁の組成が変則的で不均一であり、光学プローブからの管腔壁距離が径方向に変化するような血管では、自動管腔検出の精度は損なわれてしまう。このような環境では、管腔深さは、径方向の関数(角度の関数としての管腔までの距離)としてより適切に表現され、自動管腔検出の手動オーバーライドによって(他の部分的自動化方法の中でも)、管腔までの距離がより正確に決定される。自動管腔検出のみに依拠すると、NIRAF較正の忠実度が低下するおそれがあり、このような較正に基づいて予測されるNIRAF再構成も不正確であるおそれがある。手動で管腔壁を特定し、蛍光領域を選択し、或いは、部分的に自動セグメンテーションを行うとともにNIRAF較正に関連する血管内の関心領域を手動で選択する方法により、較正の忠実度を高めることができるであろう。
【0053】
したがって、本開示の一実施形態によれば、MMOCTシステムは、管腔壁のうちOCTデータから生成された画像内の管腔壁に一致しない部分をユーザが選択できるようにすることによって、或いは、OCTデータから生成された画像内の管腔壁に一致するように囲み包(enclosing hull)を描写するか、又はアルゴリズム生成の囲み包をドラッグするようにユーザに促すことによって、不正確なアルゴリズム生成管腔検出を補正するように構成される。カテーテルと光学系が画像の中心に局在していると仮定すると、正確な管腔壁包を手動で生成することにより、径方向位置の関数として、壁への距離及び入射角に対して、蛍光信号を較正することができる(管腔壁までの距離は、径方向角度によって変化する)。ユーザが管腔壁の解剖学事例に一般に経験があると仮定すると、アルゴリズム生成された包にユーザが手動オーバーライドすることにより、正確性が向上し、また、蛍光信号の較正と、管腔に関する情報(最小及び最大の直径、管腔面積、サンプルの平均直径等)の自動生成の両方が向上する。
【0054】
少なくとも1つの実施形態によれば、MMOCTシステムにより、関心領域(ROI)の手動選択が可能になり、また、OCT画像における組織タイプの外観に関するユーザの知識に対応する選択ROIにおける組織タイプの特定が可能となる。OCT画像の領域に特定の組織タイプが割り当てられると、組織タイプとその既知の光減衰の情報を、この組織を通る蛍光信号の較正に織り込むことができ、それによって蛍光強度の較正が向上する。
【0055】
図3A図3Dは、患者の血管を撮像するMMOCTカテーテルの動作原理の簡略版を示す。MMOCTカテーテルのイメージング動作では、両方のイメージングモダリティからの光信号が、カテーテル軸を横切る方向に(角度をなして)カテーテルから出ると同時に、カテーテルが血管の管腔を通して回転しプルバックされる。光信号は、管腔内に含まれる流体(血液及び/又は造影剤)を通過し、このような光信号は、血管壁、壁に蓄積したプラーク、及び/又は、血管内の脂質リッチ組織に入射する。入射光の少なくとも一部は、血管壁を構成する様々な組織を通って進む(拡散する)間に、散乱、吸収、反射及び/又は再放射される。カテーテルによって収集された光は、検出器ユニット120によって検出され、DAQユニット130によってデジタル化され、コンピュータシステム200によって処理され、PACS350に保存され、かつ/又は、表示装置300に表示される。
【0056】
図3A図3Bは、管腔に組織アーチファクトが浮遊している状態の同一管腔断面のOCTオーバーレイと蛍光オーバーレイを示す。「管腔に組織アーチファクトが浮遊している」との表現は、断層撮影像で動脈を見たときに、動脈断面を構成する損傷組織(アーチファクト)が、心臓専門医には、プラーク内に浮遊していたり、場合によっては血管壁に埋まっているように見えることを指すように意図されている。より具体的には、血管壁を構成する組織は、平滑筋と結合組織を形成する内皮細胞である。このような組織は心臓専門医の関心対象であり、顕微鏡で見ると、心臓専門医には、内皮組織が管腔壁に浮遊しているように見える場合がある。アテローム性動脈硬化症の発症機序における脂質とリポタンパク質の役割と、リスク評価におけるそれらの重要な役割の医学的理解は、新たなイメージング技術によって改善できるので、本開示に係るMMOCTシステムは、蛍光信号をより正確に較正するために、正常組織と浮遊アーチファクトに関する形態的情報及び病理学的情報を提供する。
【0057】
図3Aは、OCTイメージングモダリティを用いた動脈内の微細構造及び/又は形態のカテーテルイメージングの例を示す。図3Bは、近赤外自家蛍光(NIRAF)イメージングモダリティを用いた動脈内の分子的かつ/又は病理学的なイメージングの例を示す。これらの画像は、イメージング原理を分かりやすく図示するために別々に示されているが、実際には、2つの画像は同じ断面図を表す。図3Aでは、第1の波長λ1の放射がカテーテル160から径方向に放射され、血管壁310を通って信号深度D1まで進む。第1の波長λ1の放射は、血管壁の内側の石灰化プラーク302及び/又は脂質沈着物304の領域を通過することができる。更に、第1の波長の放射は、カテーテル160を取り囲む血管壁310内に含まれる造影剤流体(図示なし)を通過することができる。第1の波長の放射は、造影剤流体、石灰化プラーク302及び/又は脂質沈着物304、並びに、血管壁300の組織と相互作用し(そして散乱され)、カテーテル160によって再び収集される。
【0058】
図3Bでは、第2の波長λ2の放射がカテーテル160から径方向に放射され、造影剤(図示なし)を通過し、血管壁310に入射し、また、脂質沈着物304まで進む。第2の波長λ2の放射が、脂質沈着物304に含まれるフルオロフォアを励起すると、脂質沈着物304から第3の波長λ3の放射(すなわち蛍光)が放射される。この場合、第2の波長の放射線(励起光)と第3の波長の放射(蛍光)は、信号経路長D2を有する。図3Bでは、第2の波長λ2の放射は、造影剤(図示なし)を通過し、血管壁310の表面に蓄積した石灰化プラーク302に入射することもある。第2の波長λ2の放射が、石灰化プラーク302に含まれるフルオロフォアを励起すると、石灰化プラーク302から第3の波長λ3の放射(すなわち蛍光)が放射される。この場合、第2の波長の放射(励起光)と第3の波長の放射(蛍光)は、信号経路長D2よりも短い信号経路長D3を有する。血管壁310のうち蛍光源のない部分(例えばプラークや脂質沈着物のない血管の部分)では、そのような部分に第2の波長の放射(励起光)が照射されても、サンプルが第3の波長の放射(蛍光)を発することはない。
【0059】
言い換えれば、OCT光(第1の波長の放射)は必ず血管環境と相互作用し、Aラインスキャンごとに後方散乱信号を提供するが、励起光(第2の波長の放射)は、励起光が血管壁の表面や血管組織の深部に存在する蛍光源(例えばフルオロフォア)と相互作用したときにのみ、蛍光信号(第3の波長の放射)を生成する。蛍光源は血管壁の様々な深さにある可能性があるので、第3の波長の放射(蛍光)は、信号経路長及び/又は蛍光源のタイプに対応する信号強度を有することになる。したがって、蛍光信号の較正をより正確に計算できるようにするために、蛍光源の位置とOCT信号から得られた形態学的特徴との適切な相互関係を確立することが重要である。
【0060】
図3Cは、極座標に配置された複数のAスキャンから再構成された例示のBスキャン画像を示す。図3Cに示されるように、システム100のコンピュータ200は、縦軸(y軸)上のAスキャンの数が0~2πの角度スケールを表し、横軸(x軸)が信号経路長(深さ)を表すように、複数のAラインスキャンを互いに隣接させて配置することによって、画像を形成する。図3Cでは、カテーテルと血管壁310の管腔エッジの間の距離が、実線の矢印dで示されている。光減衰特性を計算する対象の組織領域は、検出器で受け取った後方散乱OCT信号の検出強度に基づいて計算される。したがって、AラインスキャンA1、A2、A3の後方散乱信号を考えると、後方散乱信号の強度は、管腔エッジを越える組織の光減衰による影響と、脂質沈着物304の減衰による影響を受ける。
【0061】
図3Dは、OCT信号及びNIRAF信号(実際のデータではない)の深さ方向での信号強度プロファイルの例を示す。図3Dでは、脂質沈着物304の位置する深さに対応する領域324において、OCT信号の検出強度が低く、NIRAF放射の検出強度が高いことが観察できる。なお、ここで、脂質沈着物304が血管壁310の奥深くの位置にある場合であっても、脂質沈着物からの強い蛍光放射があるのでNIRAF信号は高い。しかしながら、OCT信号は脂質沈着物によって減衰するので、OCT信号の強度は低い。OCTデータからの深さ分解減衰と後方散乱の係数を用いて、組織タイプを特性評価し、それを同じ位置からの蛍光信号データと相関させることにより、NIRAF信号光路中の蛍光を発しない組織からの減衰に対して、蛍光信号を較正することができる。
【0062】
図4A及び図4Bは、マルチモダリティOCT/NIRAFイメージングの状況において、どのように管腔壁選択の手動オーバーライドが現れるのかの例を示す。図4A及び図4Bでは、システムが、NIRAF信号409に囲まれた断層撮影OCT画像408を自動生成し、管腔境界400も自動生成する。このプロセスは、当業者には周知である。本開示によれば、システムは、ユーザが管腔境界を手動で編集及び修正できるような方式で、管腔境界400を生成するように構成される。より具体的には、図4A及び図4Bは、コレジストレーションされたOCT画像とNIRAF画像を例示しており、自動検出アルゴリズムが正確な管腔境界の生成に失敗した場合の、アルゴリズム生成された管腔境界400と手動描画された管腔境界線402の両方を表示している。
【0063】
このプロセスにより、OCT特性に基づいて、蛍光信号較正に用いる構造組成(組織、プラーク、脂質沈着物等)をより正確に特定することが可能となる。本発明者の提案は、断層撮影像のエッジ周辺のNIRAF信号409を除いて、図4A及び図4Bの中心に示される画像は、OCT光が血管壁と相互作用するときに収集されるOCT信号から生成されるという理解に基づいている。言い換えれば、OCTデータは、MMOCT画像の構造画像のソースである。したがって、血管壁の別個の層と、血管壁に含まれる構造(例えばプラーク、血液/造影剤、脂質)を正確に識別するには、構造画像に現れる組織や構造的特徴のOCT特性に依拠する方が良い(より有利である)。しかしながら、自動生成された管腔では、管腔境界を正確に画定できないことがある。
【0064】
図4Aは、自動管腔検出によって最初に管腔境界400が定められ得るシナリオを示す。しかしながら、経験豊富なユーザであれば、管腔境界400が血管壁の実際の構造と一致していないことに気付く可能性があるので、異常形状の動脈の管腔壁構造の周りに新たな管腔境界線402を手動で描くことができる。そのために、コンピュータは、アルゴリズム生成された管腔境界に沿って、複数の制御点401を自動的に描画するようにプログラムされてよい。次に、アルゴリズム生成された管腔境界の正確性を確認するように、又は管腔境界を編集するように、ユーザに促すことができる。
【0065】
同様に、図4Bは、自動管腔検出によって作成された管腔境界400の周りに、ユーザが新たな境界線402を手動で描画できる場合と同じ状況を示している。図4Bの場合は、より一般的な動脈形状において、何らかの事情が原因で、自動管腔アルゴリズムが管腔壁を適切に認識できなかった場合を示す。例えば、アルゴリズムが、組織領域404を誤って管腔の一部として含めてしまった場合がある。このタイプのエラーは、カテーテルが管腔エッジに近すぎて(接触していて)、ソフトウェアが管腔エッジを適切に認識できないことが原因で、発生する場合がある。したがって、補正された管腔境界線402を経験豊富なユーザが手動で描画することができるので、システムは、NIRAF信号をより正確に較正することができる。
【0066】
図5は、アルゴリズム生成された管腔境界400と手動選択されたROI405を表示する、コレジストレーションされたOCTとNIRAFの画像の例を示す。ROI405の手動選択は、まず回転コントロールバー406を動かして、MMOCT画像のうち疑わしい組織特徴のある部分を視覚的に分析し、次にポインタデバイス(マウス)やタッチスクリーンツール416(図4A図4Bに示される)を用いることによって、行うことができる。これにより、ユーザは、OCT特性に基づくNIRAF較正に用いられる組織組成を特定するために、血管壁のOCT画像内の特定の特徴を選択することができる。ROIのタイプは、組織タイプに関するユーザの経験に基づくユーザの入力(例えば心臓専門医の入力)によって定義することができる。例えば、選択されるROIは、血管壁に埋まっている特徴的な組織タイプであってよく、このような組織タイプは、周囲の内皮組織/平滑筋組織とは異なるNIRAF特性をもつ可能性があり、よってNIRAF較正に重要であり得る。組織ROIの手動の選択/特定では、ユーザはまさしくNIRAF信号の経路内にあるものを特定するので、NIRAF信号の較正が改善され、また、この径方向位置で観察されるNIRAF信号を考慮すると、当該組織の既知の影響をNIRAF吸収/放射に適用することができるので、NIRAF較正が改善される。
【0067】
<手動の管腔検出及びROI選択>
本開示は、自動生成された管腔境界400がディスプレイ300の画面上に表示されているが、下にあるMMOCT画像の実際のエッジと境界が一致しない場合に、ユーザが少ないステップで自由に補正を行えるようにするインタラクティブなツールを提供する。より具体的には、医療現場の無菌環境では、イメージング工程を制御するためにコンピュータマウスのようなポインタデバイスを使用することは、実用的ではなく困難であることがよく知られている。したがって、図4A図4B及び図5に示されるように、コンピュータ200は、MMOCT画像(OCT及びNIRAF)の色の上で区別しやすい別個の色や形状で表された複数のドット又は制御点401を用いて、管腔境界400を生成するように構成される。本開示の少なくとも1つの実施形態によれば、管腔境界400の輪郭を成形し直すために単純な編集ツールを用いて、ユーザによる編集操作を容易にできるような方式で、管腔エッジ境界400を表示することが有利である。例えば、自動生成された管腔境界400が血管画像の管腔エッジに正確に一致していないとユーザが認識した後、GUIは、ユーザが念頭に置いている標的にすぐに到達できるようにするために、迅速かつ直感的なツールを提供する。そのために、図4A及び図4Bに示されるように、ユーザは、タッチスクリーンツールポインタ416を用いて、管腔の真のエッジに位置していない制御点401を個別に選択することができる。ユーザは、管腔エッジの直径を大きくする方向に、制御点401を管腔の中心から径方向に離れるようにインタラクティブにドラッグすることができ(図4Aに示すように)、或いは、管腔エッジの直径を小さくするように、制御点401を管腔の中心に向かって径方向に動かすことができる(図4Bに示されるように)。特に、図4Aに示されるようなひどく不規則な血管壁の場合、ユーザは、制御点401を複数の方向に動かして、より正確に管腔の実際のエッジに一致させることができる。ユーザが手動編集プロセスに満足すると、確認ボタン415を用いて、変更内容が承認される。
【0068】
更に、ユーザは、図5に示されるようにタッチスクリーンポインタツール416を用いて、幾何学的図形(例えば四角形や円、三角形)又は不規則形状を描画して、ROI405を手動選択することができる。コンピュータ200は、ユーザが制御点401を移動したり、かつ/又はROI405を選択したりする間、MMOCT画像を変化させずに維持するように構成されてよい。確認ボタン415は、ユーザが様々な変更を試せるようにするために、GUIによって提供することができる。次いで、ユーザが変更に満足した後にのみ、ユーザは、変更が許容可能であることを確認することができる。確認後、コンピュータ200は、変更を受け入れ、図6のアルゴリズムに従って蛍光信号に適切な較正を適用することになる。このようなインタラクティブなタッチスクリーンツール416は、当技術分野において周知のジェスチャー機能や画像注釈技術を活かすことによって、タッチスクリーンGUIの使用方法を簡素化することができる。例えば、米国付与前特許出願公開第2020/0402646号を参照されたい。
【0069】
<手動管腔検出に基づいて蛍光を較正するためのアルゴリズム>
図6は、手動の管腔検出及び/又は手動の関心領域(ROI)選択に基づいて蛍光データを較正するための信号処理アルゴリズムの機能ブロック図を示す。アルゴリズムには、生のNIRAF信号のみに基づく「スマート較正」プロセスと、手動検出された管腔パラメータ及び/又は手動選択されたROIのOCT減衰に基づく「手動較正」プロセスとが含まれる。
【0070】
実施形態によれば、マルチモダリティシステム100は、「スマートNIRAF較正」を実行するように構成される。スマートNIRAF較正は、NIRAF信号の検出強度が所定の閾値を超える径方向位置でのみ較正を実行することにより、NIRAF較正の中で計算コストが高いプロセスのパフォーマンスを向上させることを提案するものであり、したがって、較正を行った位置でのみNIRAF情報が表示される。開示されるワークフローは、特定の径方向位置においてNIRAF放射信号強度が所定の較正閾値を上回ると仮定して、前述したような経路移動の成分の任意の組合わせに基づく当該位置の較正係数を計算でき、この係数を乗じたNIRAF信号が径方向に表示される、という考えに従う。ここで留意すべきこととして、提案するワークフローの「スマート較正」では、検出されたNIRAF信号強度が所定の閾値未満である径方向位置でのみ較正を行うので、NIRAF情報は、較正が行われた位置でのみ表示されることになる。これにより、ユーザが観察及び分析を行う必要のあるデータの量を削減することができる。
【0071】
更なる実施形態によれば、蛍光較正は、手動選択されたROI及び/又は手動で再描画された管腔境界におけるOCT信号の減衰等の光学特性に基づく。本実施形態によれば、マルチモダリティシステムは、特定の径方向位置について較正係数パラメータ(例えば組織組成や信号の深度)を決定/計算するように構成される。これは、径方向OCT減衰によって決定することができる。特定の組織タイプや分子構造では、信号移動距離について正規化すると(すなわち単位距離あたり)、特徴的なOCT減衰が生じる。具体的には、散乱又は吸収されないOCT信号の量は、特定の組織の特定の特性に従う。径方向OCT信号の特定の減衰を考慮すると、OCT信号が通過する組織の組成に関して、既知の組織光学係数に基づく推論を行うことができる。
【0072】
Aスキャンを作成するためにスペクトル領域OCTデータを空間領域に変換する標準的な方法は、OCT信号の光路における組織の後方散乱特性を明らかにするものである。ヒト心房組織の深さ分解後方散乱係数と減衰係数をOCT画像から導出する研究が行われており、後方散乱と減衰の関係について仮定が異なると、係数を推定する方法も異なる。例えば、Shengnan Liu他(Liu)の"Tissue characterization with depth-resolved attenuation coefficient and backscatter term in intravascular optical coherence tomography images"(J.Biomed.Opt.22(9)096004、2017年9月12日)を参照されたい。Liuが論じる係数の推定方法は、OCT画像を用いて、6種類の管腔血管組織タイプの区別に成功した。ここで、深さ分解後方散乱係数と減衰係数の導出についてLiuが記述したのと同じ技術を用いて、手動の管腔検出及び/又はROI選択におけるNIRAF較正を改善/強化することができる。OCTの深さ分解係数を決定することにより、観察されるOCT信号を、その特定のAスキャンでの組織のタイプと相関させることができる。次に、特定のAスキャン内の組織を知ることによって、この情報を用いて、同位置のNIRAF信号を較正することができる。この情報を用いる利点は、自動及び手動の管腔選択に基づくNIRAF較正の場合と同じである。しかしながら、自動管腔検出において組織が血管壁の特定部分と見なされない、或いは、組織が特定ROIと見なされない場合、自動較正に含まれないかもしれない組織をユーザが手動選択できるように、ユーザにツールを提供することが有利である。
【0073】
再び図6を参照すると、ステップS700において、プルバック中と画像再コード化動作中に取得された各Aラインスキャンの生データ、又はAラインスキャンの平均に対して、アルゴリズムが適用される。前述したように、OCT-蛍光イメージングシステムは、OCTイメージングと蛍光イメージングを同時に実行して、コレジストレーションされたOCTデータとNIRAFデータを取得する。最初のステップとして、ステップS701において、システム100のコンピュータ200は、最初に生蛍光データを解析して、初期蛍光信号(FLS0)が最小強度閾値(TH0)を満たすかどうかを決定する。最小強度閾値は、システムの検出限界(LOD)値や、LODに関連する任意のシステムパラメータに基づいてよい。ここで、画像処理中に、生蛍光信号の強度がLOD閾値を満たさない場合(S701でNO)、プロセスはステップS733に進む。ステップS733において、システムは、マルチモダリティ画像の中でAラインスキャンに対応する領域を未定義領域としてマークし、NIRAF値の観点から除外する(そのAスキャン位置には何も表示しない)。言い換えれば、蛍光信号強度がシステムのLODを満たさない場合、プロセスはステップS733に進み、そこでシステムは、ステップS734においてディスプレイ300に示されるNIRAF信号について何も出力しない(ヌル値を割り当てる)。一方、生蛍光信号の強度がシステムのLOD以上である場合(S701でYES)、プロセスは較正手順(ステップS706)に進む。
【0074】
より具体的には、生蛍光データの解析と同時に、ステップS702において、コンピュータ200はOCTデータも解析して、カテーテルと管腔のエッジ(血管壁)との間の距離を計算又は推定する。ここで、当業者には当然のことながら、血管壁の内側境界は、血管の管腔境界とも呼ばれる。よって、管腔境界との用語は、本明細書では血管の内表面又は壁に言及するように同義に使用されている。OCT画像を解析することによってカテーテルから管腔までの距離を計算することは、周知であり、出願人の以前の米国特許出願公開第2019/0099079号及び第2019/0298174号に開示されているのと同じ方法で行うことができる。ステップS702において、コンピュータ200は、血管壁から後方散乱されるとともにバランス光検出器121(図1参照)によって検出されたOCT信号の強度を分析するようにプログラムされてよい。このプロセスでは、OCT信号の強度に基づいて、サンプル(血管壁)の1つ以上の層を検出することができる(図3A図3D参照)。カテーテルから管腔までの距離(d)は、カテーテルから血管の1つ以上の層までの平均距離として定めることができ、或いは、カテーテルから血管の第1の層までの径方向での距離として決定することができる(図3C参照)。イメージングカテーテルと管腔表面の間の距離は、例えばWang(上記参照)によって記載されているような、自動セグメンテーションアルゴリズムを用いて測定することができる。次に、ステップS704において、コンピュータ200は、距離較正係数g(x)=1/f(x)を計算する。ここで、f(x)は距離較正関数である。距離較正関数f(x)は、f(x)=a*exp(b*x)+c*exp(d*x)の指数関数あてはめモデルであり、各Aラインスキャンに対応するOCT信号のあてはめに適用される。定数(a)、(b)、(c)、(d)は、あてはめプロセスにおいて、組織のタイプ(例えば石灰化血管組織と非石灰化血管組織)に応じたベース参照値(グラウンドトゥルース値)又は既知の減衰特性に従って決定される。
【0075】
ステップS706において、コンピュータ200は、生蛍光信号(FLS0)に較正係数g(x)を適用(乗算)する。したがって、ステップS706のプロセスから、第1の較正済み蛍光信号(FLS1)が得られる。第1の較正済み蛍光信号(FLS1)は距離較正信号であり、NIRAF信号の検出強度が所定の閾値(例えばシステム検出限界)を超える径方向位置でのみNIRAF較正を考慮しており、したがって、較正を行った位置でのみNIRAF情報が表示される。
【0076】
ステップS708において、コンピュータ200は、第1の較正済み信号FLS1が所定の第1の閾値パラメータTH1を満たすかどうかを決定する。第1の閾値パラメータTH1は、所与の血管サンプルについて予測される最小又は最大の半径であってよい。この最小又は最大の半径は、管腔距離が実際に血管サンプルの第1の層(又は境界)までのものであるかどうかを決定するために必要になることがある。第1の較正済み信号FLS1が所定の第1の閾値パラメータTH1を満たす場合(S708でYES)、プロセスはステップS730に進む。ステップS730において、コンピュータ200は、補正済み蛍光データ値を出力する。次に、ステップS732において、コンピュータは、OCTデータと補正済み蛍光データを組み合わせる。その後、ステップS734において、コンピュータ200は、較正が行われた位置でのみNIRAF情報を示すMMOCT画像(OCT-NIRAF画像)をディスプレイ300に表示する。
【0077】
第1の較正済み信号FLS1が所定の第1の閾値パラメータTH1を満たさない場合(S708でNO)、プロセスはステップS710に進む。すなわち、第1の較正済み蛍光信号が、所与の血管サンプルについて予測される最小又は最大の半径を満たさない場合、プロセスはステップS710に進む。ステップS710において、システムは、管腔境界を手動で選択するようユーザに促す。前述したように、第1の閾値パラメータTH1は、血管壁の最小又は最大の管腔半径又は直径であってよい。ただし、この第1の閾値パラメータTH1は、血管の半径や直径に限定されない。第1の閾値パラメータTH1の別のパラメータとしては、血管側枝の検出や、ステントの不完全圧着又は拡張不良の検出等が挙げられる。ここで、例えば、コンピュータ200は、サンプルの適切な境界が検出されていないこと、或いは検出された境界が疑わしいこと、また、ユーザが管腔境界を手動で選択する必要があること(例えば画像上の1つ以上の制御点401をクリックすることによって)をユーザに示すプロンプトを発することができる。したがって、ステップS710では、コンピュータは、血管直径のおおよそのアウトラインに沿って複数の制御点401を生成し、また、管腔境界の少なくとも一部を手動で選択(補正)するようユーザに指示する。
【0078】
ユーザが管腔境界の少なくとも一部を手動で選択した後、プロセスはステップS712に進む。ステップS712において、コンピュータ200は、ユーザによって新たに選択(補正)された境界の1つ以上の点において入射角ベータ(β)を計算する。ステップS714において、コンピュータ200は、角度較正関数f(β)に基づいて角度較正係数g(β)を計算する。角度とその較正係数g(β)=1/f(β)は、本願の譲受人によって以前開示された米国公報第2019/0099079号に記載の方法と同じ方法で計算することができる。ステップS716において、コンピュータ200は、蛍光信号FLS1に角度較正係数を適用(乗算)する。したがって、ステップS716のプロセスから、第2の較正済み蛍光信号(FLS2)が得られる。
【0079】
ステップS718において、コンピュータ200は、第2の較正済み信号FLS2が所定の第2の閾値(TH2)を満たすかどうかを決定する。第2の閾値TH2は、所与のサンプルに照射する際の最小又は最大の予測入射角の関数として決定することができる。例えば、血管壁のような生体管腔に照射する場合、放射の入射角は、サンプル表面の法線の一定範囲内にあると予測される。この場合、放射が予測範囲の入射角でサンプル表面に入射した場合、較正済み信号FLS2(第2の較正済み蛍光信号)の強度は、第2の閾値TH2を満たすはずである。したがって、第2の較正済み信号FLS2が所定の第2の閾値TH2を満たす場合(S718でYES)、プロセスはステップS730に進む。
【0080】
ステップS718でも、第2の閾値TH2は入射角に限定されない。コンピュータ200が蛍光信号FLS1に角度較正係数を適用(乗算)した後、コンピュータは、所定の第2の閾値TH2に加えて、或いは所定の第2の閾値TH2の代わりに、較正済み信号を他のパラメータ(蛍光信号の減衰量等)と比較することができる。
【0081】
第2の較正済み信号FLS2が所定の第2の閾値TH2を満たさない場合(S718でNO)、プロセスはステップS720に進む。第2の較正済み信号FLS2が所定の第2の閾値TH2を満たさない場合(S718でNO)の例としては、その信号が血管側枝や不規則な血管形状(図4参照)に対応し、放射がサンプル表面に予測範囲の入射角で入射しなかった場合が挙げられる。
【0082】
ステップS720において、コンピュータ200は、血管サンプルの画像内で関心領域(ROI)を手動選択するようユーザに促す。ここでユーザは、組織タイプやプラークその他の基準についての自身の知識(習熟度)を利用して、所望のROIを選択することができる。或いは、コンピュータ200は、ユーザによる手動選択の推奨ROI(例えば信号減衰が異常に高い領域)をユーザに知らせるために、ポインタや何らかの標示を提供することができる。
【0083】
次に、ステップS722において、コンピュータ200は、ユーザによって選択されたROI内の組織の1つ以上の光学特性を計算する。本明細書では、当該1つ以上の光学特性を、ユーザによって選択されたROI内の組織を通る光信号を劣化させる関心領域の「減衰」(μROI)と見なす。ステップS724において、コンピュータシステムは、減衰較正関数f(μ)に基づいて減衰較正係数g(μ)を計算する。減衰較正関数f(μ)は、信号吸収や信号拡散、経路長減衰等の1つ以上の減衰係数を用いて計算される。ここで、減衰較正関数f(μ)は、出願人の以前の米国公報第2019/0298174号(あらゆる目的で参照により本明細書に援用される)に記載されているのと同じ方法で決定することができる。
【0084】
ステップS726において、コンピュータシステムは、既に較正された第2の蛍光信号FLS2に減衰較正係数g(μ)を適用(乗算)する。したがって、ステップS726から、第3の蛍光較正済み信号(FLS3)が得られる。ステップS728において、コンピュータ200は、第3の較正済み信号FLS3が所定の第3の閾値(TH3)を満たすかどうかを再び決定する。第3の閾値TH3は、所与のサンプルの選択されたROI内の組織によって引き起こされる光信号の最大(又は最小)の予想減衰の関数として決定することができる。例えば、血管壁等の生体管腔のROIでは、ROIがプラークのある1つ以上の組織層を含むかどうかに基づいて、放射の減衰を決定することができる。この場合、ROIが少なくとも1つのプラーク層を含む場合は、当該層によって十分な蛍光が発せられた場合、較正済み信号FLS3(第3の較正済み蛍光信号)の強度はTH3を満たすことになる。したがって、S728において、第3の較正済み信号FLS3が所定の第3の閾値TH3を満たす場合(S728でYES)、プロセスはステップS730に進む。ステップS730では、補正された蛍光データが出力又は保存される。次に、ステップS732において、コンピュータ200は、OCTデータと補正済み(較正済み)蛍光データを既知の方法で組み合わせる。その後、コンピュータ200は、組み合わされたOCT-蛍光画像を適切な形式で表示する。
【0085】
第3の較正済み信号FLS3が所定の第3の閾値TH3を満たさない場合(S728でNO)、プロセスはステップS700に戻り、コンピュータ200は、生データの次のAスキャン又は次のフレームを解析する。ステップS702では、OCT画像内の特定の組織タイプの外観に関するユーザの経験と知識に基づいて、ユーザが適切な管腔境界の選択を手動で完了できるまで、或いは、全ての所望のROIを試すことができるまで、コンピュータ200はプロセスを繰り返す。特に、前述したように、手動選択された境界及び/又は手動選択されたROIについては、較正が行われた箇所でのみ蛍光データが表示される。
【0086】
OCT画像を用いて管腔血管組織タイプを区別できることを考慮すると、得られる組織特性評価の推定を用いて、蛍光信号を較正することができる。前述した光路長、入射角の信号パラメータを用いて計算されたNIRAF較正係数を、OCT特性評価から得られた信号の深さと組織組成の情報と比較することにより、非蛍光性組織による励起信号と放射信号の減衰を考慮しながら、蛍光性組織の自家蛍光を正確に反映するように、蛍光信号を繰り返し完全に較正することができる。ここで留意すべきこととして、この実施形態は、IVUSモダリティ等の他の形態学的モダリティを用いて変更することができ、それにより、径方向の光音響減衰から組織組成と信号の深さを決定することができる。更に、他の分光モダリティ(例えば拡散光分光法や拡散相関分光法)を用いることができ、それにより、光拡散パラメータから組織組成と信号の深さを決定することができる。
【0087】
前述した解決策によってもたらされる全般的な利点は、蛍光信号の忠実度の向上として現れる。すなわち、既知の励起信号振幅を与えられた特定の蛍光分子から受け取られる放射信号は、その分子に特有である(すなわち、その寿命にわたって積分された放射振幅や、受け取られた信号のスペクトル形状は、まさに入力された励起信号を吸収したときに分子から放射されることが知られており、この特性からほとんどずれることがない)。散乱や非蛍光性組織を通る進路によって生じる蛍光信号の減衰を制御することにより、蛍光分子によって発せられるものに信号をより厳密に一致させることによって、蛍光信号の忠実度が向上する。NIRAFの忠実度を高めることにより、モダリティの診断能力が向上する。
【0088】
忠実度の向上だけでなく、"スマートな"較正方法を固守することにより、較正プロセスの計算上の複雑さが軽減される。検出された蛍光信号が特定の閾値要件を満たす領域でのみ蛍光強度を選択的に較正することにより、システムは手動選択された境界又はROIのみを処理するように構成され、画像全体を処理する必要がないので、実行される較正計算の回数が減少する。本明細書に開示される有利な特徴の一部としては、管腔壁の手動オーバーライド選択、較正ROIの手動選択及び組織組成の特定、NIRAF較正計算の複雑さと処理時間の低減、信号減衰パラメータによって決定されるOCT組織特性評価に基づくNIRAF較正が挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
<ソフトウェア関連の開示>
本明細書に開示される例示の実施形態の少なくとも特定の態様は、記憶媒体(「非一時的コンピュータ可読記憶媒体」と呼ばれる場合もある)に記録されたコンピュータ実行可能命令(例えば1つ以上のプログラム又は実行可能コード)を読み出して実行して、前述した1つ以上のブロック図又はフローチャートの機能を実行するシステム又は装置のコンピュータによって実現することができる。コンピュータは、当業者に知られている各種コンポーネントを含んでよい。例えば、コンピュータは、例えば、コンピュータ実行可能命令を記憶媒体から読み出して実行して、前述した実施形態のうちの1つ以上の機能を実行することにより、かつ/又は、前述した実施形態のうちの1つ以上の機能を実行するための1つ以上の回路を制御することにより、前述した実施形態のうちの1つ以上の機能を実行するための1つ以上の回路(例えばフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)や特定用途向け集積回路(ASIC))によって実装される信号プロセッサを含んでよい。コンピュータは、1つ以上のプロセッサ(例えば中央処理装置(CPU)、マイクロ処理ユニット(MPU))を含んでよく、コンピュータ実行可能命令を読み出して実行するための別個のコンピュータ又は別個のプロセッサのネットワークを含んでよい。コンピュータ実行可能命令は、例えばクラウドベースのネットワークから、又は記憶媒体から、コンピュータに提供することができる。記憶媒体は、例えば、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、分散コンピューティングシステムのストレージ、光ディスク(コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)又はBlu-ray Disc(BD)(商標)等)、フラッシュメモリデバイス、メモリカード等のうち1つ以上を含んでよい。コンピュータは、入出力デバイスに対して通信信号(データ)を送受信するために入出力(I/O)インタフェースを含んでよく、入出力デバイスとしては、キーボード、ディスプレイ、マウス、タッチスクリーン、タッチレスインタフェース(例えばジェスチャー認識デバイス)、印刷デバイス、ライトペン、光学式ストレージデバイス、スキャナ、マイクロフォン、カメラ、ドライブ、通信ケーブル及びネットワーク(有線又は無線)が挙げられる。
【0090】
他の実施形態及び変更
説明に言及する際、開示する例を完全に理解できるようするために、具体的な詳細が記載される。他の例では、本開示を不必要に長くしないように、周知の方法、手順、コンポーネント及び回路は、詳細には説明されない。本明細書において別段の定義がされない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。その点に関して、本開示の広さ及び範囲は、明細書又は図面によって限定されるのではなく、むしろ、採用される特許請求の範囲の用語の平易な意味によってのみ限定される。
【0091】
図面に示された例示の実施形態を説明する際、分かりやすくするために、具体的な専門用語が使用される。しかしながら、本特許明細書の開示はそのように選択された具体的な専門用語に限定されることを意図するものではなく、当然ながら、具体的な要素の各々は、同様に機能する技術的な均等物を全て含む。
【0092】
本開示は、例示の実施形態を参照して説明されたが、当然のことながら、本開示は、開示された例示の実施形態に限定されない。以下の特許請求の範囲は、そのような変更並びに均等の構造及び機能を全て包含するように、最も広い解釈が与えられるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6