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特許7470788制動制御装置、基板生産ラインおよび物品搬送装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】制動制御装置、基板生産ラインおよび物品搬送装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/00 20060101AFI20240411BHJP
【FI】
H05K13/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022527368
(86)(22)【出願日】2020-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2020020981
(87)【国際公開番号】W WO2021240697
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 草太
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/141365(WO,A1)
【文献】特開2009-200070(JP,A)
【文献】特開2002-217593(JP,A)
【文献】特開平04-188899(JP,A)
【文献】国際公開第2018/179033(WO,A1)
【文献】特開2004-363506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に所定の対基板作業を行う複数の対基板作業機が並んで設置されている基板生産ラインの所定の前記対基板作業機に物品を搬送する物品搬送装置を移動させる電動機と、
前記電動機の駆動電力を供給する電力供給装置と、
前記電力供給装置から前記電動機に前記駆動電力を送電する複数の電路と、
前記電動機を停止させる際に前記複数の電路の間において前記電動機の回生エネルギーを消費して前記電動機に制動力を発生させる制動装置と、
前記電動機が停止した後に前記電動機と前記制動装置との間の前記複数の電路である対象電路がそれぞれ閉路されている閉路状態から前記対象電路がそれぞれ開路される開路状態に切り替えて前記制動力の発生を規制する規制装置と、
を備え
前記規制装置は、前記電動機が停止してから前記物品搬送装置による前記物品の搬入作業または搬出作業が終了した後に、前記対象電路を前記閉路状態から前記開路状態に切り替える制動制御装置。
【請求項2】
前記物品搬送装置を停止させる非常停止ボタンの操作、作業者と前記物品搬送装置の間の距離が所定距離より短くなった接近状態を含む前記物品搬送装置に対する前記作業者の異常状態、および、停電のうちの少なくとも一つである非常事態を監視する監視装置を備え、
前記電力供給装置は、前記監視装置によって前記非常事態が発生したと判断されたときに、前記駆動電力の供給を停止し、
前記制動装置は、前記監視装置によって前記非常事態が発生したと判断されたときに、前記電動機に前記制動力を発生させる請求項1に記載の制動制御装置。
【請求項3】
前記制動装置は、
制動装置側コイルと、
前記複数の電路の間に設けられ前記制動装置側コイルが消磁されているときに接点が閉状態になり前記制動装置側コイルが励磁されているときに接点が開状態になる制動装置側開閉器と、
前記制動装置側開閉器に直列接続され前記回生エネルギーを消費可能な抵抗器と、
前記電動機を停止させる際に前記制動装置側コイルを消磁し前記制動装置側開閉器を開状態から閉状態にして、前記抵抗器に流れる電流の電流経路を形成する制動装置側制御部と、
を備える請求項1または請求項2に記載の制動制御装置。
【請求項4】
前記規制装置は、前記電力供給装置が前記駆動電力の供給を停止してから経過した経過時間が前記電動機の停止までに要する所要時間に達したときに、前記電動機が停止したと判断する請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の制動制御装置。
【請求項5】
前記電動機の可動子および前記物品搬送装置のうちの少なくとも一つの位置を検出する位置検出装置を備え、
前記規制装置は、前記位置検出装置の検出結果に基づいて、前記電動機が停止したか否かを判断する請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の制動制御装置。
【請求項6】
前記物品搬送装置を停止させる非常停止ボタンの操作、作業者と前記物品搬送装置の間の距離が所定距離より短くなった接近状態を含む前記物品搬送装置に対する前記作業者の異常状態、および、停電のうちの少なくとも一つである非常事態を監視する監視装置を備え、
前記規制装置は、前記電動機が停止し且つ前記監視装置によって前記非常事態が解消されていないと判断されたときに、前記対象電路を前記閉路状態から前記開路状態に切り替える請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の制動制御装置。
【請求項7】
前記規制装置は、
規制装置側コイルと、
前記複数の電路の各々に設けられ前記規制装置側コイルが消磁されているときに接点が開状態になり前記規制装置側コイルが励磁されているときに接点が閉状態になる規制装置側開閉器と、
前記電動機が停止した後に前記規制装置側コイルを消磁し前記規制装置側開閉器を閉状態から開状態にして、前記対象電路を前記閉路状態から前記開路状態に切り替える規制装置側制御部と、
を備える請求項1~請求項のいずれか一項に記載の制動制御装置。
【請求項8】
停電が生じてから前記電動機が停止し前記規制装置が前記対象電路を前記閉路状態から前記開路状態に切り替えるまでの時間、前記規制装置側制御部に電力を供給する停電時電力供給装置を備える請求項に記載の制動制御装置。
【請求項9】
請求項1~請求項のいずれか一項に記載の制動制御装置を備える基板生産ラインであって、
前記物品搬送装置は、前記複数の対基板作業機の配置方向に沿って設けられる走行路を走行可能であり、
前記電力供給装置は、
電力を生成する電源装置と、
前記電源装置によって生成された前記電力を前記複数の対基板作業機の各々に配電する配電装置と、
前記複数の対基板作業機の各々に設けられ、前記配電装置を介して配電された前記電力を用いて前記電動機に供給する前記駆動電力を生成する電力供給回路と、
を備え、前記電力供給回路から非接触給電によって供給された供給電力を用いて、前記電動機の前記駆動電力を供給する基板生産ライン。
【請求項10】
基板に所定の対基板作業を行う複数の対基板作業機が並んで設置されている基板生産ラインの所定の前記対基板作業機に物品を搬送する物品搬送装置であって、
前記物品搬送装置を移動させるものであって、前記対基板作業機が備える走行路に付勢機構によって付勢される駆動輪とユニット化された駆動モータと、
前記駆動モータの駆動電力を受電する受電回路と、
前記受電回路から前記駆動モータに前記駆動電力を送電する複数の電路と、
前記駆動モータを停止させる際に前記複数の電路の間において前記駆動モータの回生エネルギーを消費して前記駆動モータに制動力を発生させる制動装置と、
前記駆動モータが停止した後に前記駆動モータと前記制動装置との間の前記複数の電路である対象電路がそれぞれ閉路されている閉路状態から前記対象電路がそれぞれ開路される開路状態に切り替えて前記制動力の発生を規制する規制装置と、
を備える物品搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、制動制御装置および基板生産ラインに関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータが発生する逆起電力を消費してダイナミックブレーキを作用させる電子部品実装装置が開示されている。また、電子部品実装装置は、モータ断路スイッチと、誤操作防止用カバーと、安全スイッチとを備えている。モータ断路スイッチは、ダイナミックブレーキの解除時に、逆起電力に係る電流が流れる回路を遮断する。誤操作防止用カバーは、作業者によるモータ断路スイッチの誤操作を防止する。安全スイッチは、誤操作防止用カバーの開閉状態を検出する。電子部品実装装置は、安全スイッチにより誤操作防止用カバーの開状態が検出されている場合に、検出結果に応じた安全制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-200070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、装着ヘッドを軸移動させる電動機を制御対象としており、特許文献1には、基板生産ラインの所定の対基板作業機に物品を搬送する物品搬送装置を移動させる電動機を制御対象にすることは、記載も示唆もされていない。
【0005】
このような事情に鑑みて、本明細書は、基板生産ラインの所定の対基板作業機に物品を搬送する物品搬送装置を移動させる電動機を速やかに停止させると共に、電動機の停止後に物品搬送装置を移動させる際に生じる制動力を軽減可能な制動制御装置および基板生産ラインを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、電動機と、電力供給装置と、複数の電路と、制動装置と、規制装置とを備える制動制御装置を開示する。前記電動機は、基板に所定の対基板作業を行う複数の対基板作業機が並んで設置されている基板生産ラインの所定の前記対基板作業機に物品を搬送する物品搬送装置を移動させる。前記電力供給装置は、前記電動機の駆動電力を供給する。前記複数の電路は、前記電力供給装置から前記電動機に前記駆動電力を送電する。前記制動装置は、前記電動機を停止させる際に前記複数の電路の間において前記電動機の回生エネルギーを消費して前記電動機に制動力を発生させる。前記規制装置は、前記電動機が停止した後に前記電動機と前記制動装置との間の前記複数の電路である対象電路がそれぞれ閉路されている閉路状態から前記対象電路がそれぞれ開路される開路状態に切り替えて前記制動力の発生を規制する。
【0007】
また、本明細書は、前記制動制御装置を備える基板生産ラインを開示する。前記物品搬送装置は、前記複数の対基板作業機の配置方向に沿って設けられる走行路を走行可能である。前記電力供給装置は、電源装置と、配電装置と、電力供給回路とを備え、前記電力供給回路から非接触給電によって供給された供給電力を用いて、前記電動機の前記駆動電力を供給する。前記電源装置は、電力を生成する。前記配電装置は、前記電源装置によって生成された前記電力を前記複数の対基板作業機の各々に配電する。前記電力供給回路は、前記複数の対基板作業機の各々に設けられ、前記配電装置を介して配電された前記電力を用いて前記電動機に供給する前記駆動電力を生成する。
【発明の効果】
【0008】
上記の制動制御装置は、制動装置および規制装置を備えている。よって、制動制御装置は、制動装置および規制装置を具備しない場合と比べて、物品搬送装置を移動させる電動機を速やかに停止させることができ、電動機の停止後に物品搬送装置を移動させる際に生じる制動力を軽減することができる。制動制御装置について上述されていることは、上記の基板生産ラインについても同様に言える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】基板生産ラインの構成例を示す平面図である。
図2図1の部品装着機および物品搬送装置の概略構成を示す斜視図である。
図3図1の物品搬送装置を示す側面図である。
図4図3の移動装置の構成例を示す斜視図である。
図5】移動装置の内部構成例を示す透視図である。
図6】制動制御装置の構成例を示す模式図である。
図7】電力供給装置の構成例を示す模式図である。
図8】対基板作業機と物品搬送装置の間で非接触給電を行う給電回路の一例を示す回路図である。
図9】制動制御装置の制御ブロックの一例を示すブロック図である。
図10】制動制御装置による制御手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.実施形態
1-1.基板生産ライン1の構成例
本実施形態の制動制御装置60は、基板生産ライン1に適用される。図1に示すように、基板生産ライン1は、複数(同図では、4つ)の部品装着機10が図2に示す基板90の搬送方向に並んで設置されている。部品装着機10は、基板90に所定の対基板作業を行う対基板作業機WM0に含まれる。基板生産ライン1は、例えば、スクリーン印刷機、はんだ検査機、外観検査機、リフロー炉などの種々の対基板作業機WM0を備えることができる。
【0011】
基板生産ライン1の基板搬入側(図1の紙面左側)には、保管装置BS0が設置されている。保管装置BS0は、作業者または物品搬送装置30によって搬送される種々の物品を保管することができる。本実施形態の保管装置BS0は、基板90に装着される部品を供給するカセット式のフィーダ20を保管する。基板生産ライン1の各装置および物品搬送装置30は、ネットワークを介してライン制御装置LC0と種々のデータを入出力可能に構成されている。
【0012】
保管装置BS0は、複数のスロットを備える。保管装置BS0は、複数のスロットに装備されたフィーダ20をストックする。保管装置BS0のスロットに装備されたフィーダ20は、ライン制御装置LC0との間で通信可能な状態になる。これにより、保管装置BS0のスロットと当該スロットに装備されたフィーダ20の識別情報が関連付けられて、ライン制御装置LC0に記録される。
【0013】
ライン制御装置LC0は、基板生産ライン1の動作状況を監視し、対基板作業機WM0、保管装置BS0および物品搬送装置30を含む基板生産ライン1の制御を行う。ライン制御装置LC0には、例えば、対基板作業機WM0を制御する各種データが記憶されている。ライン制御装置LC0は、基板生産ライン1の各装置の制御プログラムなどの各種データを各装置に適宜送出する。
【0014】
1-2.部品装着機10の構成例
図2に示すように、基板生産ライン1を構成する複数(4つ)の部品装着機10の各々は、基板搬送装置11と、上部スロット12と、下部スロット13と、装着ヘッド14と、ヘッド駆動装置15とを備えている。本明細書では、部品装着機10の幅方向であり基板90の搬送方向をX方向とする。また、部品装着機10の奥行き方向であり水平面においてX方向に直交する方向をY方向とする。さらに、X方向およびY方向に垂直な鉛直方向(図2の紙面上下方向)をZ方向とする。
【0015】
基板搬送装置11は、ベルトコンベア、位置決め装置などを備えている。基板搬送装置11は、基板90を搬送方向(X方向)に順次搬送すると共に、機内の所定位置に基板90を位置決めする。基板搬送装置11は、部品装着機10による装着処理が終了した後に、基板90を部品装着機10の機外に搬出する。
【0016】
上部スロット12および下部スロット13は、基板90に装着される部品を供給するフィーダ20を装備することができる。上部スロット12は、部品装着機10の前部側の上部に配置され、装備されたフィーダ20を動作可能に保持する。つまり、上部スロット12に装備されたフィーダ20は、部品装着機10による装着処理において駆動制御され、当該フィーダ20の上部の規定位置に設けられている取り出し部において、部品を供給する。
【0017】
下部スロット13は、上部スロット12の下方に配置され、装備されたフィーダ20をストックする。つまり、下部スロット13は、基板製品の生産に用いられるフィーダ20を予備的に保持する。また、下部スロット13は、基板製品の生産に用いられた使用済みのフィーダ20を一時的に保持する。なお、上部スロット12と下部スロット13との間のフィーダ20の交換は、物品搬送装置30による自動交換、または、作業者による手動交換によって行われる。
【0018】
また、フィーダ20は、上部スロット12または下部スロット13に装備されると、コネクタを介して部品装着機10から電力が供給される。そして、フィーダ20は、部品装着機10との間で通信可能な状態になる。上部スロット12に装備されたフィーダ20は、部品装着機10による制御指令などに基づいて、部品を収容するキャリアテープの送り動作を制御する。これにより、フィーダ20は、フィーダ20の上部に設けられている取り出し部において、装着ヘッド14の保持部材によって部品を採取可能に供給する。
【0019】
ヘッド駆動装置15は、装着ヘッド14の保持部材によって採取された部品を、基板90上の所定の装着位置まで移載する。例えば、ヘッド駆動装置15は、直動機構によって移動台を水平方向(X方向およびY方向)に移動させる。移動台には、クランプ部材によって装着ヘッド14が交換可能に固定される。装着ヘッド14は、部品を採取し、部品の鉛直方向(Z方向)の位置および回転角度を調整して、基板90に部品を装着する。
【0020】
具体的には、装着ヘッド14には、フィーダ20によって供給される部品を保持する保持部材が着脱可能に取り付けられている。保持部材は、例えば、供給される負圧エアによって部品を保持する吸着ノズル、部品を把持して保持するチャックなどを用いることができる。装着ヘッド14は、保持部材を鉛直方向(Z方向)に移動可能に、且つ、鉛直方向(Z方向)に平行なQ軸周りに回転可能に保持する。装着ヘッド14は、ヘッド駆動装置15の直動機構によって水平方向(X方向およびY方向)に移動される。
【0021】
部品装着機10は、基板90に部品を装着する装着処理を実行する。部品装着機10は、画像処理の結果、各種センサによる検出結果、予め記憶されている制御プログラムなどに基づいて、装着処理においてヘッド駆動装置15に制御信号を送出する。これにより、装着ヘッド14に支持されている複数の保持部材(例えば、吸着ノズル)の位置および回転角度が制御される。
【0022】
なお、装着ヘッド14に保持される保持部材(例えば、吸着ノズル)は、装着処理において基板90に装着される部品の種別に応じて適宜変更され得る。例えば、部品装着機10は、実行する装着処理において用いる吸着ノズルが装着ヘッド14に保持されていない場合に、ノズルステーションに収容されている吸着ノズルを装着ヘッド14に保持させる。ノズルステーションは、部品装着機10の機内の所定位置に着脱可能に装備される。
【0023】
1-3.物品搬送装置30の構成例
物品搬送装置30は、基板90に所定の対基板作業を行う複数の対基板作業機WM0が並んで設置されている基板生産ライン1の所定の対基板作業機WM0に物品を搬送する。本実施形態の物品搬送装置30は、基板90に装着される部品を供給するフィーダ20を搬送する。物品搬送装置30は、基板生産ライン1を構成する複数(4つ)の部品装着機10との間、および、保管装置BS0との間でフィーダ20の補給および回収を行う。
【0024】
具体的には、物品搬送装置30は、保管装置BS0から部品装着機10の上部スロット12または下部スロット13にフィーダ20を搬送する。また、物品搬送装置30は、部品装着機10の上部スロット12と下部スロット13との間でフィーダ20を交換する。さらに、物品搬送装置30は、基板製品の生産で使用されたフィーダ20を部品装着機10から保管装置BS0に搬送する。
【0025】
図3に示すように、本実施形態の物品搬送装置30は、交換装置31と、第一レール32と、第二レール33と、離脱防止ガイド34と、移動装置40とを備えている。交換装置31は、複数(4つ)の部品装着機10に装備されるフィーダ20の補給および回収を行う。具体的には、交換装置31は、フィーダ20を把持するクランプをY方向およびZ方向に移動させる移動機構を備える。
【0026】
交換装置31は、上部スロット12との間でフィーダ20を移載する上部移載部31aと、下部スロット13との間でフィーダ20を移載する下部移載部31bとを備えている。交換装置31は、部品装着機10またはライン制御装置LC0による制御指令に基づいて、上部移載部31aまたは下部移載部31bにおいて、クランプのY方向位置、Z方向位置および把持状態を制御する。
【0027】
図1に示すように、第一レール32は、複数(4つ)の部品装着機10の前部に設けられている。具体的には、第一レール32は、複数(4つ)の部品装着機10の各々において、上部スロット12と下部スロット13との間に設けられている。なお、本実施形態の第一レール32は、複数(4つ)の部品装着機10および保管装置BS0において、同型のレール部材がX方向に連続するように設けられている。
【0028】
また、図4および図5に示すように、第一レール32は、走行路32aと、上面部32bと、側面部32cとを備えている。走行路32aは、平面状に形成されており、交換装置31側を向いてZ方向に延伸している。走行路32aは、後記されている駆動輪52が転動する。そのため、走行路32aは、全体として平面状であれば良く、例えば、駆動輪52の空転を抑制するための凹凸やスリットが形成されていても良い。上面部32bは、X方向およびY方向によって形成される水平面と平行に形成されている。側面部32cは、上面部32bからZ方向に突出するように形成されている。
【0029】
第二レール33は、複数(4つ)の部品装着機10の前部において、第一レール32と異なるZ方向位置に設けられている。図3に示すように、本実施形態の第二レール33は、部品装着機10の下部スロット13よりも下方に設けられている。第二レール33は、支持部33aを備えている。支持部33aは、平面状に形成されており、交換装置31側を向いてZ方向に延伸している。
【0030】
第二レール33の支持部33aは、後記されている第三ガイドローラ44が転動可能に第三ガイドローラ44を支持する。離脱防止ガイド34は、支持部33aと対向する対向面を有し、第二レール33の支持部33aを転動する第三ガイドローラ44が支持部33aから離脱することを抑制する。これにより、離脱防止ガイド34は、交換装置31全体が傾動する外力が加えられたときに、第三ガイドローラ44と接触して交換装置31の傾動を抑制する。
【0031】
第一レール32および第二レール33は、基板生産ライン1のX方向の略全域に亘って設置されている。例えば、基板90の搬入側の第一レール32および第二レール33は、保管装置BS0まで延伸している。よって、交換装置31は、後記されている移動装置40によって、複数(4つ)の部品装着機10および保管装置BS0の前部側を含むX方向の任意の位置に位置決め可能になっている。
【0032】
移動装置40は、駆動ユニット50の駆動輪52を第一レール32の走行路32aに沿って転動させることにより交換装置31を第一レール32に沿って移動させる。この際、駆動輪52と走行路32aとの間には、摩擦力が生じる。図3図4および図5に示すように、移動装置40は、本体部41と、第一ガイドローラ42と、第二ガイドローラ43と、第三ガイドローラ44と、付勢機構45と、駆動ユニット50とを備えている。本体部41は、交換装置31を保持するフレーム部材である。また、本体部41には、駆動ユニット50を取り付けるためのブラケット41aが形成されている。
【0033】
図4に示すように、第一ガイドローラ42は、第一レール32の上面部32bを転動することができる。これにより、第一ガイドローラ42は、本体部41に保持されている交換装置31のZ方向の移動を規制する。第二ガイドローラ43は、第一レール32の側面部32cを転動することができる。これにより、第二ガイドローラ43は、交換装置31のY方向の移動を規制する。本実施形態では、複数の第一ガイドローラ42と複数の第二ガイドローラ43とが、X方向に沿って交互に配置されている。
【0034】
図3に示すように、第三ガイドローラ44は、第二レール33の支持部33aに沿って転動することができる。これにより、第三ガイドローラ44は、交換装置31の姿勢を維持する。ここで、第一ガイドローラ42が上面部32bを転動し、且つ、第二ガイドローラ43が側面部32cを転動すると、交換装置31の支持位置と交換装置31の重心位置との関係から、交換装置31にはX方向に平行な軸線周りに交換装置31を回転させるモーメントが発生する。具体的には、交換装置31の下部が第二レール33側に接近する力が発生する。
【0035】
これに対して、交換装置31の下部において、Z方向に平行な軸線周りに回転可能な第三ガイドローラ44が第二レール33の支持部33aを転動することにより、上記のモーメントに抗して交換装置31の姿勢が維持される。このように、交換装置31は、三種類のガイドローラによって支持されるので、図3に示す床面US0に対して非接触で直立した姿勢を維持することができる。
【0036】
図5に示すように、駆動ユニット50は、ベースプレート51と、駆動輪52と、駆動モータ53と、伝達機構54とを備えている。ベースプレート51は、Y方向に延伸する板状部51aを備えている。板状部51aは、本体部41のブラケット41aに対してY方向にスライド可能に取り付けられている。また、ベースプレート51には、板状部51aの下面から下方に延伸する鍔部51bが形成されている。
【0037】
図3に示すように、駆動輪52は、交換装置31の上部移載部31aと、下部移載部31bとの間に設けられている。また、図5に示すように、駆動輪52は、Z方向に平行な軸線周りに回転可能に、ベースプレート51に設けられている。駆動輪52の外周部は、例えば、ウレタンなどのゴム状の弾性材料で形成されている。駆動輪52は、例えば、金属製の第一レール32の走行路32aに付勢されることによって、所定の摩擦力を受けて走行路32aを転動する。駆動モータ53は、駆動電力が供給されて駆動輪52を回転させる。本実施形態の駆動モータ53は、出力軸(シャフト)がZ方向と平行になるようにベースプレート51に支持されている。
【0038】
伝達機構54は、駆動モータ53の出力を駆動輪52に伝達する。本実施形態の伝達機構54は、ベルト式の伝達機構であり、プーリ54aと、無端ベルト54bとを備える。プーリ54aは、駆動輪52と同軸に配置され、駆動輪52と一体的に回転する。無端ベルト54bは、駆動モータ53の出力軸とプーリ54aとの間に掛け渡されている。伝達機構54は、駆動モータ53の回転速度を減速して、駆動輪52に駆動モータ53の出力を伝達する。
【0039】
付勢機構45は、駆動輪52を走行路32aに付勢する。駆動輪52は、ベースプレート51に設けられている駆動モータ53および伝達機構54と共にユニット化されている。つまり、駆動ユニット50は、全体として本体部41に対してY方向にスライド可能に設けられている。そこで、本実施形態の付勢機構45は、スプリング45aの弾性力によって、本体部41に対して駆動ユニット50を第一レール32側に押圧することにより、駆動輪52を走行路32aに付勢する。
【0040】
付勢機構45のスプリング45aは、本体部41のブラケット41aとベースプレート51の鍔部51bとの間に圧縮された状態で配置されている。これにより、駆動ユニット50は、本体部41に対してY方向の走行路32a側に押圧された状態になる。よって、付勢機構45は、仮に、第一レール32を構成するレール部材同士の繋ぎ目に隙間や段差が生じても、駆動輪52が第一レール32の走行路32aに接触した状態を維持することができる。
【0041】
1-4.制動制御装置60の構成例
例えば、図1に示す非常停止ボタン66aが操作されると、物品搬送装置30を速やかに停止させる必要がある。このような場合に、いわゆるダイナミックブレーキを用いることが想定される。図6に示すように、ダイナミックブレーキは、物品搬送装置30を移動させる電動機61(既述した駆動モータ53に相当)に電力供給装置62から駆動電力を送電する複数(同図では、3つ)の電路63の間を、抵抗器64cを介してそれぞれ短絡させる。これにより、電動機61の回生エネルギーが抵抗器64cによって消費されて、電動機61を速やかに停止させることができる。
【0042】
しかしながら、例えば、電動機61が停止した後に作業者が物品搬送装置30を移動させる場合、ダイナミックブレーキが機能して、物品搬送装置30の移動が困難になる可能性がある。特に、本実施形態の物品搬送装置30は、駆動ユニット50の駆動輪52が第一レール32の走行路32aに付勢されている。そのため、駆動輪52と走行路32aとの間に生じる摩擦力に、ダイナミックブレーキによる制動力が加わり、作業者による物品搬送装置30の移動がさらに困難になる可能性がある。そこで、本実施形態の基板生産ライン1は、制動制御装置60を備えている。図6に示すように、制動制御装置60は、電動機61と、電力供給装置62と、複数(同図では、3つ)の電路63と、制動装置64と、規制装置65とを備えている。
【0043】
1-4-1.電動機61
電動機61は、基板生産ライン1の所定の対基板作業機WM0に物品を搬送する物品搬送装置30を移動させる。図1に示すように、基板生産ライン1は、基板90に所定の対基板作業を行う複数(同図では、4つ)の対基板作業機WM0(同図では、部品装着機10)が並んで設置されている。物品搬送装置30は、例えば、基板製品の生産計画に基づいて、基板製品の生産に必要な物品を対基板作業機WM0に搬送する。
【0044】
既述したように、本実施形態の物品搬送装置30は、フィーダ20を搬送する。フィーダ20は、基板90に装着される部品を供給する。物品搬送装置30は、複数(4つ)の対基板作業機WM0(部品装着機10)の配置方向(基板90の搬送方向(X方向))に沿って設けられる走行路32aを走行可能であり、複数(4つ)の部品装着機10との間、および、保管装置BS0との間でフィーダ20の補給および回収を行う。よって、本実施形態の電動機61は、物品搬送装置30を基板90の搬送方向(X方向)に移動させる。電動機61は、物品搬送装置30を移動させることができれば良く、公知の電動機を用いることができる。本実施形態の電動機61は、三相のサーボモータである。
【0045】
1-4-2.電力供給装置62
電力供給装置62は、電動機61の駆動電力を供給する。電力供給装置62は、電動機61の駆動電力を供給することができれば良く、種々の形態をとり得る。図7に示すように、本実施形態の電力供給装置62は、電源装置62aと、配電装置62bと、電力供給回路62cとを備え、電力供給回路62cから非接触給電によって供給された供給電力を用いて、電動機61の駆動電力を供給する。
【0046】
電源装置62aは、電力を生成する。電源装置62aは、公知の電源装置を用いることができ、種々の直流電力または交流電力を生成することができる。本実施形態の電源装置62aは、入力された交流電力から直流電力を生成する電力変換器であり、三相(R相、S相、T相)の交流電力を直流電力(同図では、直流電力Vdc1で示されている。)に変換する。また、電源装置62aは、例えば、基板生産ライン1の一端側の作業機に設けることができる。本実施形態の電源装置62aは、保管装置BS0に設けられている。
【0047】
配電装置62bは、電源装置62aによって生成された電力を複数(4つ)の対基板作業機WM0(部品装着機10)の各々に配電する。例えば、電源装置62aおよび複数(4つ)の対基板作業機WM0(部品装着機10)は、デイジーチェーン接続、バス接続、スター接続などによって電気的に接続される。本実施形態の配電装置62bでは、電源装置62aおよび複数(4つ)の対基板作業機WM0(部品装着機10)がデイジーチェーン接続されている。
【0048】
配電装置62bは、電源装置62aによって生成された電力を基板生産ライン1の一端側の対基板作業機WM0(部品装着機10)から他端側の対基板作業機WM0(部品装着機10)まで順に配電する。図7では、図示の便宜上、電源装置62aおよび複数(2つ)の部品装着機10がデイジーチェーン接続されている状態が示されているが、実際は、電源装置62aおよび図1に示す複数(4つ)の対基板作業機WM0(部品装着機10)がデイジーチェーン接続されている。
【0049】
電力供給回路62cは、複数(4つ)の対基板作業機WM0(部品装着機10)の各々に設けられ、配電装置62bを介して配電された電力を用いて電動機61に供給する駆動電力を生成する。例えば、駆動電力は、図8に示す給電回路PS0および図6に示すサーボアンプSV0を介して、電動機61に供給される。給電回路PS0は、対基板作業機WM0(部品装着機10)の側に設けられる送電回路PT0と、物品搬送装置30の側に設けられる受電回路PR0とを備え、対基板作業機WM0(部品装着機10)と物品搬送装置30との間で非接触給電を行う。
【0050】
電力供給回路62cは、送電回路PT0に交流電力を供給する。図8に示すように、電力供給回路62cは、平滑コンデンサC0と、電力変換器INV0とを備えている。平滑コンデンサC0は、電力変換器INV0の入力側において並列接続されている。配電装置62bを介して入力された直流電力(同図では、直流電力Vdc1で示されている。)は、平滑コンデンサC0によって平滑され、電力変換器INV0によって交流電力に変換される。電力変換器INV0は、入力された直流電力を交流電力に変換する電力変換器であり、公知の電力変換器を用いることができる。
【0051】
送電回路PT0は、送電側共振部RT1と、送電部LT1とが直列接続されており、送電側共振回路が形成されている。例えば、送電側共振部RT1は、コンデンサを用いることができる。送電部LT1は、コイルを用いることができる。受電回路PR0は、受電部LR1と、受電側共振部RR1と、整流回路RC0とを備えている。受電部LR1および受電側共振部RR1は、整流回路RC0の入力側において並列接続されており、受電側共振回路が形成されている。例えば、受電部LR1は、コイルを用いることができる。受電側共振部RR1は、コンデンサを用いることができる。
【0052】
整流回路RC0は、送電回路PT0から供給された交流電力を整流する整流回路であり、公知の整流回路を用いることができる。本実施形態の電動機61は、サーボモータである。そのため、整流回路RC0によって整流された直流電力(同図では、直流電力Vdc2で示されている。)は、図6に示すサーボアンプSV0を介して、電動機61に供給される。
【0053】
図6に示すように、サーボアンプSV0は、電力変換器MC0を備えている。電力変換器MC0は、入力された直流電力から交流電力を生成する電力変換器であり、直流電力(既述した直流電力Vdc2)を交流電力に変換する。なお、サーボアンプSV0は、電力変換器MC0に入力される直流電力に係る直流電圧を昇圧する昇圧部を備えることもできる。
【0054】
1-4-3.複数の電路63
図6に示すように、複数(同図では、3つ)の電路63は、電力供給装置62から電動機61に駆動電力を送電する。既述したように、本実施形態の電動機61は、三相のサーボモータであり、電力供給装置62には、サーボアンプSV0が設けられている。そのため、本実施形態の複数(3つ)の電路63は、サーボアンプSV0と電動機61との間に設けられている。
【0055】
なお、同図では、説明の便宜上、複数(3つ)の電路63のうちの一つがU相で示されている。同様に、複数(3つ)の電路63のうちの他の一つがV相で示されている。複数(3つ)の電路63のうちの残りの一つがW相で示されている。U相、V相およびW相は、この順に位相が120°ずつ遅れている。また、電動機61が単相の電動機の場合、制動制御装置60は、複数(2つ)の電路63を備えることができる。
【0056】
1-4-4.制動装置64および監視装置66
制動装置64は、電動機61を停止させる際に複数の電路63の間において電動機61の回生エネルギーを消費して電動機61に制動力を発生させる。制動装置64は、上記の制動力を発生させることができれば良く、種々の形態をとり得る。
【0057】
図6および図9に示すように、本実施形態の制動装置64は、制動装置側コイル64aと、制動装置側開閉器64bと、抵抗器64cと、制動装置側制御部64dとを備えている。制動装置側コイル64aは、公知の電磁コイルを用いることができる。制動装置側コイル64aには、例えば、直流電源から出力される直流電力が供給可能であり、制動装置側コイル64aは、直流電力が供給されているときに励磁される。制動装置側開閉器64bは、複数(図6では、3つ)の電路63の間に設けられ、制動装置側コイル64aが消磁されているときに接点が閉状態になり制動装置側コイル64aが励磁されているときに接点が開状態になる。
【0058】
抵抗器64cは、制動装置側開閉器64bに直列接続され、回生エネルギーを消費することができる。具体的には、一の抵抗器64cは、一端側が一の制動装置側開閉器64bを介してU相の電路63と電気的に接続され、他端側が他の二つの抵抗器64cの他端側と電気的に接続されている。他の一の抵抗器64cは、一端側が他の一の制動装置側開閉器64bを介してV相の電路63と電気的に接続され、他端側が他の二つの抵抗器64cの他端側と電気的に接続されている。
【0059】
図6から分かるように、二つの制動装置側開閉器64bの接点が開状態のときには、W相の電路63と電気的に接続される抵抗器64cには電流が流れない。逆に、二つの制動装置側開閉器64bの接点が閉状態になると、W相の電路63と電気的に接続される抵抗器64cにも電流が流れる。そのため、W相の電路63と電気的に接続される制動装置側開閉器64bは、省略することができる。つまり、残りの一の抵抗器64cは、一端側がW相の電路63と電気的に接続され、他端側が他の二つの抵抗器64cの他端側と電気的に接続されている。なお、残りの一の抵抗器64cは、一端側が他の一の制動装置側開閉器64bを介してW相の電路63と電気的に接続されても良い。
【0060】
また、複数(同図では、3つ)の抵抗器64cの各々は、電動機61を停止させる際に抵抗器64cに流れる電流値または電路63の間の電圧値と、回生エネルギーの電力値(換算値)とに基づいて、回生エネルギーを消費可能に抵抗値が設定される。電流値、電圧値および電力値は、いずれも推定値であり、シミュレーション、実機による検証などによって予め取得することができる。また、本実施形態では、制動装置側コイル64a、制動装置側開閉器64bおよび抵抗器64cは、サーボアンプSV0に設けられている。
【0061】
制動装置側制御部64dは、電動機61を駆動させるときに、制動装置側コイル64aを励磁する。これにより、制動装置側開閉器64bは、接点が閉状態から開状態に切り替わる。電動機61は、電力供給装置62から供給された駆動電力によって駆動可能になり、物品搬送装置30が移動可能になる。制動装置側制御部64dは、電動機61を停止させる際に制動装置側コイル64aを消磁し制動装置側開閉器64bを開状態から閉状態にして、抵抗器64cに流れる電流の電流経路を形成する。
【0062】
具体的には、電動機61が駆動を開始すると、制動装置側制御部64dは、電動機61に所定の停止が必要になったか否かを判断する(図10に示すステップS11)。例えば、図1に示す非常停止ボタン66aが操作されると、安全性の向上の観点から電動機61を速やかに停止させる必要がある。また、作業者と物品搬送装置30の間の距離が所定距離より短くなった接近状態を含む物品搬送装置30に対する作業者の異常状態が生じると、安全性の向上の観点から電動機61を速やかに停止させる必要がある。さらに、基板生産ライン1に停電が生じると、安全性の向上の観点から電動機61を速やかに停止させる必要がある。
【0063】
そこで、図3および図9に示すように、制動制御装置60は、監視装置66を備えていると良い。本実施形態の監視装置66は、物品搬送装置30の上部に設けられている。監視装置66は、物品搬送装置30を停止させる非常停止ボタン66aの操作、作業者と物品搬送装置30の間の距離が所定距離より短くなった接近状態を含む物品搬送装置30に対する作業者の異常状態、および、停電のうちの少なくとも一つである非常事態を監視する。
【0064】
例えば、基板生産ライン1には、非常停止ボタン66aが設けられている。非常停止ボタン66aが操作されると、非常停止ボタン66aが操作されたことを示す検出信号が監視装置66に送出される。検出信号の送出は、非常停止ボタン66aの操作が解除されるまで継続される。また、物品搬送装置30には、人感センサを設けることができる。人感センサは、例えば、赤外線、超音波などを用いて、物品搬送装置30の周辺の作業者の存在(既述した接近状態)を検出する。
【0065】
物品搬送装置30には、複数の人感センサを設けることもできる。例えば、物品搬送装置30の上部と下部に人感センサを設けて、人感センサの検出領域を補い合うこともできる。また、基板生産ライン1では、物品搬送装置30の移動中に、作業者が物品搬送装置30と対基板作業機WM0(部品装着機10)との間に進入しないように、種々の安全対策が行われている。
【0066】
仮に、作業者が物品搬送装置30と対基板作業機WM0(部品装着機10)との間に進入して、作業者がこれらによって挟まれた場合であっても、例えば、物品搬送装置30のフレームが変形することにより、作業者に加わる負荷を軽減することができる。この場合、物品搬送装置30には、フレームの変形を検出するセンサを設けることができる。このように、監視装置66は、各種センサから送出される検出信号に基づいて、既述した接近状態を含む物品搬送装置30に対する作業者の種々の異常状態を検出することができる。
【0067】
また、基板生産ライン1には、電源監視センサを設けることができる。例えば、電源監視センサは、サーボアンプSV0に入力される直流電力(既述した直流電力Vdc2)を監視する。電源監視センサは、直流電力Vdc2に係る直流電圧が所定の許容電圧値以下になると、検出信号を送出する。監視装置66は、電源監視センサから送出される検出信号に基づいて、基板生産ライン1の停電を検出することができる。
【0068】
このように、制動装置側制御部64dは、監視装置66によって非常事態の発生が判断されたか否かに基づいて、電動機61に所定の停止が必要になったか否かを判断することができる(図10に示すステップS11)。監視装置66によって非常事態が発生したと判断され、制動装置側制御部64dによって電動機61に所定の停止が必要になったと判断されると(ステップS11でYesの場合)、電力供給装置62は、駆動電力の供給を停止する(ステップS12)。
【0069】
具体的には、電力供給装置62は、サーボアンプSV0の電力変換器MC0のスイッチング素子を開状態にして、電力変換器MC0の出力を停止する。また、電力変換器MC0の入力側に、サーボアンプSV0に入力される直流電力(既述した直流電力Vdc2)を断続する開閉器が設けられる場合、電力供給装置62は、当該開閉器を閉状態から開状態に切り替えても良い。
【0070】
また、監視装置66によって非常事態が発生したと判断され、制動装置側制御部64dによって電動機61に所定の停止が必要になったと判断されると(ステップS11でYesの場合)、制動装置64は、電動機61に制動力を発生させる(ステップS12)。具体的には、制動装置側制御部64dは、電動機61を停止させる際に制動装置側コイル64aを消磁し制動装置側開閉器64bを開状態から閉状態にして、抵抗器64cに流れる電流の電流経路を形成する。
【0071】
図6に示すように、制動装置側開閉器64bが開状態から閉状態に切り替わると、電動機61、複数(3つ)の電路63および制動装置64によって閉回路が形成される。閉回路が形成されると、電動機61の回生エネルギーが抵抗器64cによって消費される。具体的には、抵抗器64cを流れる電流が生じ、電動機61の回生エネルギーが抵抗器64cによって熱消費される。つまり、抵抗器64cに流れる電流の電流経路が上記閉回路に形成される。
【0072】
このように、本実施形態では、電力供給装置62は、監視装置66によって非常事態が発生したと判断されたときに、駆動電力の供給を停止し、制動装置64は、監視装置66によって非常事態が発生したと判断されたときに、電動機61に制動力を発生させる。よって、本実施形態の制動制御装置60は、監視装置66によって非常事態の発生が判断されたときに、電動機61に制動力を発生させることができる。
【0073】
また、本実施形態の制動装置64は、制動装置側コイル64aと、制動装置側開閉器64bと、抵抗器64cと、制動装置側制御部64dとを備えている。制動装置側開閉器64bは、制動装置側コイル64aが消磁されているときに接点が閉状態になり制動装置側コイル64aが励磁されているときに接点が開状態になる。制動装置側制御部64dは、電動機61を停止させる際に制動装置側コイル64aを消磁し制動装置側開閉器64bを開状態から閉状態にして、抵抗器64cに流れる電流の電流経路を形成する。
【0074】
よって、仮に、基板生産ライン1の停電または制動装置64の故障(サーボアンプSV0の故障)が生じても、制動装置側コイル64aが消磁されるので、制動装置64は、電動機61を停止させる際に電動機61に制動力を発生させることができる。なお、監視装置66によって非常事態の発生が判断されず、制動装置側制御部64dによって電動機61に所定の停止が必要になったと判断されない場合(ステップS11でNoの場合)、制御は、一旦、終了する。
【0075】
1-4-5.規制装置65および位置検出装置67
規制装置65は、電動機61が停止した後に電動機61と制動装置64との間の複数の電路63である対象電路63tがそれぞれ閉路されている閉路状態から対象電路63tがそれぞれ開路される開路状態に切り替えて制動力の発生を規制する。
【0076】
図6および図9に示すように、本実施形態の規制装置65は、規制装置側コイル65aと、規制装置側開閉器65bと、規制装置側制御部65cとを備えている。規制装置側コイル65aは、公知の電磁コイルを用いることができる。規制装置側コイル65aには、例えば、直流電源から出力される直流電力が供給可能であり、規制装置側コイル65aは、直流電力が供給されているときに励磁される。なお、本実施形態の規制装置側コイル65aは、監視装置66に設けられている。
【0077】
規制装置側開閉器65bは、複数(図6では、3つ)の電路63の各々に設けられ規制装置側コイル65aが消磁されているときに接点が開状態になり規制装置側コイル65aが励磁されているときに接点が閉状態になる。規制装置側制御部65cは、電動機61が停止した後に規制装置側コイル65aを消磁し規制装置側開閉器65bを閉状態から開状態にして、対象電路63tを閉路状態から開路状態に切り替える。
【0078】
具体的には、規制装置側制御部65cは、対象電路63tの切り替え条件が成立したか否かを判断する(図10に示すステップS13)。対象電路63tの切り替え条件が成立する場合(ステップS13でYesの場合)、規制装置側制御部65cは、規制装置側コイル65aを消磁し規制装置側開閉器65bを閉状態から開状態にして、対象電路63tを閉路状態から開路状態に切り替える(ステップS14)。そして、制御は、一旦、終了する。
【0079】
これにより、制動装置64による制動力の発生が抑制される。そのため、例えば、作業者が物品搬送装置30を移動させる際に、制動装置64による制動力が発生する場合と比べて、物品搬送装置30の移動が容易になる。特に、本実施形態の物品搬送装置30は、駆動ユニット50の駆動輪52が第一レール32の走行路32aに付勢されている。そのため、規制装置65(規制装置側制御部65c)を具備しない場合、駆動輪52と走行路32aとの間に生じる摩擦力に、制動装置64による制動力が加わり、作業者による物品搬送装置30の移動が困難になる可能性がある。
【0080】
本実施形態の制動制御装置60は、規制装置65(規制装置側制御部65c)を具備しているので、制動装置64による制動力の発生が抑制される。そのため、規制装置65(規制装置側制御部65c)を具備しない場合と比べて、物品搬送装置30の移動が容易である。なお、対象電路63tの切り替え条件が成立しない場合(ステップS13でNoの場合)、制御は、ステップS13に示す判断に戻る。そして、規制装置65(規制装置側制御部65c)は、対象電路63tの切り替え条件が成立するまで待機する。
【0081】
対象電路63tの切り替え条件には、電動機61が停止したことが少なくとも含まれる。例えば、規制装置65(規制装置側制御部65c)は、電力供給装置62が駆動電力の供給を停止してから経過した経過時間が電動機61の停止までに要する所要時間に達したときに、電動機61が停止したと判断することができる。
【0082】
これにより、規制装置65(規制装置側制御部65c)は、容易に電動機61の停止を判断することができる。なお、所要時間は、シミュレーション、実機による検証などによって予め取得することができる。また、所要時間は、電動機61の種類(出力、サイズなど)、物品搬送装置30の種類(重量、サイズなど)、電動機61の駆動条件(可動子の速度など)、駆動輪52と走行路32aとの間に生じる摩擦力の大きさなどに応じて設定することもできる。
【0083】
また、制動制御装置60は、位置検出装置67を備えることもできる。位置検出装置67は、電動機61の可動子および物品搬送装置30のうちの少なくとも一つの位置を検出する。図4に示すように、例えば、位置検出装置67は、歯付きベルト67aと、ピニオン67bと、ロータリエンコーダ67cとを備えている。歯付きベルト67aは、例えば、ゴム状の弾性材料で形成され、第一レール32に沿ってX方向に設けられている。
【0084】
ピニオン67bは、Y方向に平行な軸線周りに回転可能に、移動装置40の本体部41に設けられている。ピニオン67bは、歯付きベルト67aの歯部との噛み合い状態が維持されるように保持されている。ロータリエンコーダ67cは、例えば、ピニオン67bの回転角度を検出する回転角度センサを用いることができる。
【0085】
位置検出装置67は、ロータリエンコーダ67cの出力パルスに基づいて、基板生産ライン1における交換装置31および移動装置40のX方向の位置を検出する。これにより、物品搬送装置30は、対基板作業機WM0(部品装着機10)またはライン制御装置LC0による制御指令および交換装置31の現在位置に基づいて、移動装置40を駆動制御して制御指令に応じたX方向の位置まで交換装置31を移動させることができる。なお、位置検出装置67は、リニアスケールなどの種々の位置検出装置を用いることができる。また、位置検出装置67は、電動機61に設けられ、電動機61の可動子の位置を検出するエンコーダなどの位置検出装置を用いることもできる。
【0086】
このように、制動制御装置60が位置検出装置67を備える形態では、規制装置65(規制装置側制御部65c)は、位置検出装置67の検出結果に基づいて、電動機61が停止したか否かを判断することもできる。これにより、規制装置65(規制装置側制御部65c)は、上述した経過時間に基づいて判断する場合と比べて、より正確に電動機61の停止を判断することができる。
【0087】
電動機61が停止しても非常事態が解消されていない場合、例えば、作業者によって物品搬送装置30を移動させたい場合がある。そこで、対象電路63tの切り替え条件には、既述した非常事態が解消されていないことを含めることができる。既述したように、本実施形態の制動制御装置60は、監視装置66を備えている。規制装置65(規制装置側制御部65c)は、電動機61が停止し且つ監視装置66によって非常事態が解消されていないと判断されたときに、対象電路63tを閉路状態から開路状態に切り替えることができる。
【0088】
また、例えば、対基板作業機WM0において物品の不足(例えば、部品装着機10における部品切れ)が生じている場合、物品搬送装置30による物品の搬入作業または搬出作業を優先させたい場合がある。この場合に、対象電路63tが閉路状態から開路状態に切り替えられると、制動装置64による制動力の発生が抑制されて、物品搬送装置30が移動し易くなり、物品の搬入作業または搬出作業が困難になる可能性がある。
【0089】
そこで、対象電路63tの切り替え条件には、物品搬送装置30による物品の搬入作業または搬出作業の終了を含めることができる。この場合、規制装置65(規制装置側制御部65c)は、電動機61が停止してから物品搬送装置30による物品の搬入作業または搬出作業が終了した後に、対象電路63tを閉路状態から開路状態に切り替えることができる。
【0090】
なお、対象電路63tの切り替え条件には、種々の条件を含めることができる。例えば、作業者が対基板作業機WM0のメンテナンス作業を行う際に、作業者によって物品搬送装置30を移動させたい場合がある。この場合、対象電路63tの切り替え条件には、対基板作業機WM0のメンテナンス作業の開始を含めることができる。規制装置65(規制装置側制御部65c)は、電動機61が停止してから対基板作業機WM0のメンテナンス作業が開始されるときに、対象電路63tを閉路状態から開路状態に切り替えることができる。
【0091】
1-4-6.停電時電力供給装置68
既述したように、規制装置65は、規制装置側コイル65aと、規制装置側開閉器65bと、規制装置側制御部65cとを備えている。規制装置側開閉器65bは、規制装置側コイル65aが消磁されているときに接点が開状態になり規制装置側コイル65aが励磁されているときに接点が閉状態になる。上記の規制装置65は、フェールセーフという観点において好ましい。
【0092】
しかしながら、電動機61が停止する前に基板生産ライン1に停電が生じると、規制装置側コイル65aが消磁され、電動機61が停止する前に対象電路63tが閉路状態から開路状態に切り替わる可能性がある。そのため、電動機61を停止させる際に、制動装置64によって電動機61に制動力を発生させることが困難になる。そこで、図9に示すように、本実施形態の制動制御装置60は、停電時電力供給装置68を備えている。
【0093】
停電時電力供給装置68は、停電が生じてから電動機61が停止し規制装置65が対象電路63tを閉路状態から開路状態に切り替えるまでの時間、規制装置側制御部65cに電力を供給する。停電時電力供給装置68は、例えば、バッテリなどの電源装置を備えており、規制装置側制御部65cに電力を供給することができる。これにより、規制装置65(規制装置側制御部65c)は、基板生産ライン1に停電が生じても、対象電路63tを閉路状態から開路状態に切り替えることができる。
【0094】
1-4-7.制動制御装置60を備える基板生産ライン1
基板生産ライン1は、上記のいずれの形態の制動制御装置60を備えることもできる。また、既述したように、物品搬送装置30は、複数(4つ)の対基板作業機WM0(部品装着機10)の配置方向(基板90の搬送方向(X方向))に沿って設けられる走行路32aを走行可能である。さらに、電力供給装置62は、電源装置62aと、配電装置62bと、電力供給回路62cとを備え、電力供給回路62cから非接触給電によって供給された供給電力を用いて、電動機61の駆動電力を供給する。
【0095】
1-5.その他
本実施形態の物品搬送装置30は、複数(4つ)の対基板作業機WM0(部品装着機10)の配置方向(基板90の搬送方向(X方向))に沿って設けられる走行路32aを走行することができる。しかしながら、物品搬送装置30は、自動走行可能な無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)であっても良い。また、本実施形態では、物品搬送装置30が搬送する物品は、フィーダ20である。しかしながら、物品は、例えば、部品装着機10に交換可能に装備されるノズルステーション、廃棄テープ回収容器などであっても良い。さらに、本実施形態の電動機61は、可動子が回転する回転電機である。しかしながら、電動機61は、リニアモータであっても良い。
【0096】
また、制動制御装置60は、制動装置64による制動力の発生と共に、いわゆる回生ブレーキによる制動力を発生させることもできる。具体的には、制動制御装置60は、第二制動装置を備えることができる。第二制動装置は、制動装置64によって電動機61に制動力を発生させるときに、サーボアンプSV0の電力変換器MC0のスイッチング素子を開閉制御する。例えば、第二制動装置は、電力変換器MC0に入力される直流電力(図6に示す直流電力Vdc2)の正極側に接続される複数(3つ)の正極側スイッチング素子を所定のデューティ比で開閉制御することができる。また、第二制動装置は、電力変換器MC0に入力される直流電力(直流電力Vdc2)の負極側に接続される複数(3つ)の負極側スイッチング素子を所定のデューティ比で開閉制御することもできる。いずれの場合も、第二制動装置は、抵抗器、コンデンサなどの受動素子を備えており、受動素子によって回生エネルギーが消費される。
【0097】
2.実施形態の効果の一例
制動制御装置60は、制動装置64および規制装置65を備えている。よって、制動制御装置60は、制動装置64および規制装置65を具備しない場合と比べて、物品搬送装置30を移動させる電動機61を速やかに停止させることができ、電動機61の停止後に物品搬送装置30を移動させる際に生じる制動力を軽減することができる。制動制御装置60について上述されていることは、基板生産ライン1についても同様に言える。
【符号の説明】
【0098】
1:基板生産ライン、30:物品搬送装置、32a:走行路、
60:制動制御装置、61:電動機、62:電力供給装置、
62a:電源装置、62b:配電装置、62c:電力供給回路、
63:電路、63t:対象電路、64:制動装置、
64a:制動装置側コイル、64b:制動装置側開閉器、64c:抵抗器、
64d:制動装置側制御部、65:規制装置、65a:規制装置側コイル、
65b:規制装置側開閉器、65c:規制装置側制御部、66:監視装置、
66a:非常停止ボタン、67:位置検出装置、
68:停電時電力供給装置、90:基板、WM0:対基板作業機。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10