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特許7470793HFC-23のリサイクルにおける触媒上の炭素堆積を減らす方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】HFC-23のリサイクルにおける触媒上の炭素堆積を減らす方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/20 20060101AFI20240411BHJP
   B01J 23/652 20060101ALI20240411BHJP
   B01J 27/13 20060101ALI20240411BHJP
   B01J 23/89 20060101ALI20240411BHJP
   B01J 23/90 20060101ALI20240411BHJP
   B01J 38/10 20060101ALI20240411BHJP
   C07C 19/10 20060101ALI20240411BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240411BHJP
【FI】
C07C17/20
B01J23/652 Z
B01J27/13 Z
B01J23/89 Z
B01J23/90 Z
B01J38/10
C07C19/10
C07B61/00 300
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022535667
(86)(22)【出願日】2020-02-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-09
(86)【国際出願番号】 CN2020076371
(87)【国際公開番号】W WO2021114480
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-08-02
(31)【優先権主張番号】201911282758.8
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520217629
【氏名又は名称】浙江省化工研究院有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】520217618
【氏名又は名称】浙江▲藍▼天▲環▼保高科技股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】513016127
【氏名又は名称】中化藍天集団有限公司
【氏名又は名称原語表記】SINOCHEM LANTIAN CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.96, Jiangnan Avenue, Binjiang District, Hangzhou 310051, Zhejiang, China
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ジェンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ハン ウェンフェン
(72)【発明者】
【氏名】ワン シュウチェン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ ウカン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ フェイシァン
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109748775(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109748776(CN,A)
【文献】特開平04-346943(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104628513(CN,A)
【文献】特開2015-120668(JP,A)
【文献】特表2005-536424(JP,A)
【文献】特公昭49-043922(JP,B1)
【文献】特開2009-179626(JP,A)
【文献】特表2023-505582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
B01J
CAplus/CASREACT/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
HFC-23のリサイクルにおける触媒の炭素堆積を減らす方法であって、
前記HFC-23のリサイクルは、HFC-23とハロゲン化炭化水素とのフッ素-塩素交換反応によって実現され、
前記フッ素-塩素交換反応の触媒は、触媒本体と貴金属とを含み、前記貴金属はPt、PdまたはRuのうちの少なくとも一つから選択され、かつその添加量は0.01~2重量%であり、
前記触媒本体は、クロム、アルミニウムもしくはマグネシウム系触媒、またはクロム、アルミニウムもしくはマグネシウムを活性炭/黒鉛上に支持させた触媒であり、
前記触媒は、金属酸化物をさらに含み、前記金属酸化物はCo であり、その添加量は0.5~2重量%であり、
前記フッ素-塩素交換反応中に水素を導入する、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記貴金属はPtまたはPdであり、その添加量は0.1~0.5重量%である、ことを特徴とする請求項1に記載のHFC-23のリサイクルにおける触媒の炭素堆積を減らす方法。
【請求項3】
前記金属酸化物の添加量は0.5~1.0重量%である、ことを特徴とする請求項1に記載のHFC-23のリサイクルにおける触媒の炭素堆積を減らす方法。
【請求項4】
水素、HFC-23およびハロゲン化炭化水素で混合ガスを形成して、触媒床層に導入するが、HFC-23、ハロゲン化炭化水素および水素のモル比は1:1~3:0.01~0.5である、ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のHFC-23のリサイクルにおける触媒の炭素堆積を減らす方法。
【請求項5】
水素を連続的に触媒床層に導入する、ことを特徴とする請求項4に記載のHFC-23のリサイクルにおける触媒の炭素堆積を減らす方法。
【請求項6】
前記触媒に対する前処理を行うが、前記前処理は、
(1)1%~20%のフッ化水素と80%~99%の窒素の混合ガス雰囲気下で、250℃~450℃でフッ化処理を1~6時間行う工程、
(2)フッ化水素の雰囲気下で、300℃~500℃で2~8h処理する工程、および、
(3)窒素パージして温度を下げる工程を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のHFC-23のリサイクルにおける触媒の炭素堆積を減らす方法。
【請求項7】
前記ハロゲン化炭化水素は、クロロフォルム、またはクロロフォルムを含有する混合物である、ことを特徴とする請求項1に記載のHFC-23のリサイクルにおける触媒の炭素堆積を減らす方法。
【請求項8】
前記フッ素-塩素交換反応の条件は、HFC-23とハロゲン化炭化水素とのモル比を1:1~3とし、反応温度を250~400℃とし、反応圧力を0.1~3barとし、保持時間を4~50秒とする、ことを特徴とする請求項1に記載のHFC-23のリサイクルにおける触媒の炭素堆積を減らす方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はHFC-23のリサイクルに関し、特にHFC-23のリサイクルにおける触媒表面上の炭素堆積を減らして、触媒の安定性を向上させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HFC-23(CHF、トリフルオロメタン、R23)はHFC-22(HCFC-22、クロロジフルオロメタン、R22またはCHClF)の工業生産において避けられない副産物であり、強い温室効果があり、その地球温暖化係数(GWP,Global Warming Potential)はCOの14800倍である。統計によれば、2013年、中国のHFC-23の排出量は、全世界排出量の68%も占め、産出量は2万トン以上にも達し、COの年間排出量に換算すれば2.96億トンにも相当する。そのため、HFC-23のリサイクルは省エネルギー化と排出削減とを実現する上で重要な課題となっている。
【0003】
目下、産業上ではHCFC-22の生産中に生じる副産物HFC-23に対して、一般的に直接排出するか、1200℃の高温で燃焼させる方法によって処分しているものの、直接排出は環境汚染をもたらし、1200℃の高温で燃焼させる方法は操業と設備のコストが高くなり、HCFC-22の生産コストを上昇させてしまう。そのため、従来技術ではHFC-23のリサイクルにおいて、以下の技術手段を使用している。
【0004】
米国特許US3009966Aには700~1090℃でトリフルオロメタンの熱分解によってTFEとヘキサフルオロプロパン(HFP)を作製する方法が開示されているが、この方法では副産物であるパーフルオロイソブチレン(PFIB)が多く生じ、収率を下げることを代価として低い温度にて行っても、無視できない量のPFIBが生じる。PFIBは極めて強い毒性を有し、その処理もかなり煩雑である。
【0005】
WO96/29296AにはHCFC-22とHFC-23の共熱分解によって高分子フルオロアルカンを形成する方法が開示されているが、この方法によるHCFC-22の転化率は100%に達するものの、産物であるペンタフルオロエタンの収率は僅か60%しかなく、且つ余分の処理または廃棄が必要となる低価値の副産物も生成する。
【0006】
米国特許US2003/0166981には金を触媒として、690~775℃温度の下で、HFC-23とHCFC-22の熱分解によって、ペンタフルオロエタン(HFC-125)、ヘプタフルオロプロパン(HFC-227ea)、TFEおよびHFPの混合物を作製する方法が開示されている。しかし、この方法は熱分解温度が高く、反応条件もかなり厳しい。
【0007】
中国特許CN104628514Aにはメタントリフルオロメタンを一定の比で触媒が入っている反応装置に通すと同時に、Oを添加して、比較的高い温度の条件下で反応させてフッ化ビニリデン(VDF)を生成させる方法が開示されている。しかし、この方法も熱分解に属し、熱分解温度が高く、反応条件もかなり厳しい。
【0008】
中国特許CN104628513Aにはトリフルオロメタンとクロロフォルムを原料とし、ルイス酸の触媒作用の下でHCFC-22に転化させる方法が開示されている。この方法は、分子間のフッ素-塩素交換を通じて、比較的低い温度(400℃以下)でトリフルオロメタンの転化を実現する。しかし、この方法は比較的強いルイス酸触媒を使用するため、触媒の安定性が良くなく、炭素堆積と焼結によって失活し易い。
【0009】
中国特許CN109748775AではMgF、Al、部分フッ素化酸化アルミニウムまたはAlF触媒が存在する下で、トリフルオロメタンとジクロロメタンの反応によって価値のもっと高いジフルオロメタンに転化させると同時に、反応段階にCl、CCl、H、O、CO、Oと窒素酸化物促進ガスを連続的に導入することによって、触媒効率と触媒安定性を向上させている。しかし、この方法においては、副産物のCFC-12の選択性が著しく増加して2%~8%にも達し、また産物の選択性が比較的低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の技術課題を解決するために、触媒上の炭素堆積を減らして、触媒の安定性や耐用期間を向上する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、HFC-23のリサイクルにおける触媒の安定性を向上させる方法であって、前記リサイクルが、HFC-23とハロゲン化炭化水素とのフッ素-塩素交換反応によって実現される方法によって達成される。
【0012】
【化1】
【0013】
上記フッ素-塩素交換の産物はジフルオロクロロメタン(HCFC-22)とジクロロフルオロメタン(HCFC-21)を含む。本発明者は、両者が触媒の表面にて不均化反応を起こし易く、触媒上の炭素堆積を引き起こすことを発見した。その反応式は以下のとおりである。
2CHClF2 → CHF3+CHFCl2
2CHCl2F → CHCl3+CHClF2
【0014】
触媒表面に生じた炭素堆積を除去するために、次の解決手段が適用される。前記フッ素-塩素交換反応の触媒は触媒本体と貴金属を含み、前記貴金属はPt、Pd、Ru、AuまたはRhのうちの少なくとも一つから選択され、その添加量は0.01~2重量%である。好ましくは、前記貴金属はPtまたはPdであり、その添加量は0.1~0.5重量%である。
【0015】
前記フッ素-塩素交換反応中に水素を導入する。その導入方式は、水素とHFC-23とハロゲン化炭化水素とで混合ガスを形成して、連続的に触媒床層に導入するが、HFC-23、ハロゲン化炭化水素および水素のモル比は1:1~3:0.01~0.5であり、好ましくは、HFC-23、ハロゲン化炭化水素および水素のモル比は1:1.5~2.5:0.05~0.2である。
【0016】
触媒本体上に貴金属を添加することによって、より効果的にHを吸着し、その場(in-situ)で炭素堆積を水素化することよってCHに転化させることができる。
【0017】
貴金属を導入することによって、炭素堆積を転化させることができるが、炭素堆積を抑制することはできない。産物であるHCFC-22とHCFC-21の触媒表面での迅速な脱離を実現して、触媒上の炭素堆積を根本的に減らし、触媒の安定性と耐用期間を向上するために、次の技術的解法が適用される。前記触媒はまた金属酸化物を含み、前記金属酸化物はK、Na、Fe、Co、Cu、Ni、ZnまたはTiのうちの少なくとも一つの金属の酸化物から選択され、その添加量は0.1~5重量%である。添加方法は既存の触媒作製のための通常の方法を使用すればよく、例えば、触媒本体との物理的研磨、または金属塩溶液前駆体を湿式混合法または浸漬法で添加させてから焼成する。好ましくは、前記金属酸化物はFe、Co、NiまたはZnの金属酸化物から選択され、その添加量は0.5~2重量%である。
【0018】
前記触媒本体はクロム、アルミニウムもしくはマグネシウム系触媒、またはクロム、アルミニウムもしくはマグネシウムを活性炭/黒鉛上に支持させた触媒であり、好ましくは、前記触媒本体はCr、Cr/Al、Cr/AlF、Cr/C、MgO、MgO/Al、MgO/AlF、MgO/AlF、AlまたはAlFのうちの少なくとも一つから選択される。
【0019】
本発明の触媒は前処理が必要であり、前記触媒に触媒本体と貴金属が含まれている場合には、触媒本体に対する前処理を終えてから貴金属を添加し、前記触媒に触媒本体、貴金属および金属酸化物が含まれている場合には、触媒本体上に金属酸化物を添加してから前処理を行い、前処理を終えてから貴金属を添加する。具体的な前処理プロセスは以下の工程を含む。
(1)1%~20%のフッ化水素と80%~99%の窒素の混合ガス雰囲気の下で、250℃~450℃でフッ化処理を1~6時間行う。
(2)フッ化水素の雰囲気の下で、300℃~500℃で2~8時間処理する。
(3)窒素パージして温度を下げる。
【0020】
上記フッ素-塩素交換反応におけるハロゲン化炭化水素はクロロフォルム、またはクロロフォルムを含有する混合物である。フッ素-塩素交換反応の条件は、HFC-23とハロゲン化炭化水素とのモル比を1:1~3とし、反応温度を250~400℃とし、反応圧力を0.1~3barとし、保持時間を4~50秒とする。好ましくは、HFC-23とハロゲン化炭化水素とのモル比を1:1~2とし、反応温度を300~360℃とし、反応圧力を0.1~2barとし、保持時間を4~12秒とする。
【発明の効果】
【0021】
従来技術と比べて、本発明は、次の有利な効果を有する。
(1)本発明では、触媒本体に貴金属を添加し、フッ素-塩素交換反応の際、水素と原料ガス(HFC-23とハロゲン化炭化水素)を混合した後、連続的に触媒床層に導入して、水素の触媒表面における吸着を促進し、触媒表面の炭素堆積のその場での水素化によるCH生成を促進し、これによって、その場での触媒上の炭素堆積を除去し、触媒の安定性と耐用期間が向上する。加えて、反応システム中のHFC-23やハロゲン化炭化水素(クロロフォルム)、HCFC-22およびHCFC-21自体が消火剤または冷却剤として使用可能なものであって燃焼性が良くないため、反応性に優れた水素を触媒上の炭素堆積抑制に利用して、目標反応性能に対する影響を小さくし、炭素体積の選択的な除去を実現することができる。
【0022】
(2)本発明は、触媒に金属酸化物を添加することによって、産物であるHCFC-22とHCFC-21の触媒表面上からの脱離を加速させ、これによって、触媒表面にて発生する不均化反応を抑制し、副反応によって生じる炭素堆積を減らし、触媒の安定性と耐用期間を向上することができる。
【0023】
(3)本発明は、触媒本体に貴金属と金属酸化物を同時に添加することによって、炭素堆積の発生を抑制できるだけでなく、生じた炭素堆積に対するその場での除去を行なうこともでき、優れた相乗効果を発揮して、触媒の安定性を著しく向上し、触媒の耐用期間を延ばすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、具体的な実施例と共に本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの具体的な実施形態に限定されるものではない。当業者は、本発明は、特許請求の範囲内に含まれる可能性のあるすべての予備技術手段や改進手段および等価手段を包含するということを理解すべきである。
【0025】
実施例1
触媒の作製:三酸化二クロム触媒(触媒本体)に対する前処理を行った。前処理プロセスは、次の通りとした。1)10%のフッ化水素と90%の窒素の混合ガス雰囲気中にて、250℃でフッ化処理を2時間行う。2)フッ化水素の雰囲気中にて、300℃で5時間処理する。3)窒素をパージして温度を下げる。フッ化前処理済み触媒をn-ヘキサン中に注ぎ入れ均一に攪拌し、Ruナノコロイド分散液を滴下してRuのローディング量を制御して質量含有量を0.1%とした。連続的に4時間攪拌してから静置し、溶液の上層が透明に澄んだ後、ロータリーエバポレーターに入れて、80℃にて回転蒸発乾燥を行った。オーブン中で110℃にて一晩乾燥し、マッフル炉内で400℃にて6時間焼成することによって触媒を得た。これを触媒1とした。
【0026】
HFC-23のリサイクル:トリフルオロメタン、クロロフォルムおよび水素を1:1.5:0.2の比(モル比)で50mlの触媒1を入れた反応装置中に導入して、反応温度310℃、圧力1bar、保持時間5秒の条件下で、フッ素-塩素交換反応を行った。トリフルオロメタンの転化率は27.1%、HCFC-22の選択性は45.7%、HCFC-21の選択性は53.1%であった。排ガスには少量の副産物であるCFC-12などのガスと微量のメタンなどのガスが含まれていた。905時間経つと、触媒が著しく失活しており、これは水素化性能を有する貴金属Ruをローディングした触媒は、同時に水素を導入することによって、炭素堆積を除去でき、その場での触媒の再生を実現できるということを意味する。
【0027】
実施例2
触媒の作製:三酸化二クロム触媒(触媒本体)に対する前処理を行った。前処理プロセスは、次の通りとした。1)10%のフッ化水素と90%の窒素の混合ガス雰囲気中にて、250℃でフッ化処理を2時間行う。2)フッ化水素の雰囲気中にて、300℃で5時間処理する。3)窒素パージして温度を下げる。フッ化前処理済み触媒をn-ヘキサン中に注ぎ入れ均一に攪拌し、Ptナノコロイド分散液を滴下させて、Ptのローディング量を制御して質量含有量を0.1%とした。連続的に4時間攪拌してから静置し、溶液の上層が透明に澄んだ後、ロータリーエバポレーターに入れて、80℃にて回転蒸発乾燥を行った。オーブン中で110℃にて一晩乾燥し、マッフル炉中で400℃にて6時間焼成することによって触媒を得た。これを触媒2とした。
【0028】
HFC-23のリサイクル:トリフルオロメタン、クロロフォルムおよび水素を1:1.5:0.2の比(モル比)で50mlの触媒2を入れた反応装置中に導入して、反応温度310℃、圧力1bar、保持時間5秒の条件下で、フッ素-塩素交換反応を行った。トリフルオロメタンの転化率は27.9%、HCFC-22の選択性は45.9%、HCFC-21の選択性は52.9%であった。排ガスには少量の副産物であるCFC-12などのガスと微量のメタンなどのガスが含まれていた。989時間経つと、触媒が著しく失活しており、これは水素化性能を有する貴金属Ptをローディングした触媒は、同時に水素を導入することによって、炭素堆積を除去でき、その場での触媒の再生を実現できるということを意味する。
【0029】
実施例3
触媒の作製:三酸化二クロム触媒(触媒本体)に対する前処理を行った。前処理プロセスは、次の通りとした。1)10%のフッ化水素と90%の窒素の混合ガス雰囲気中にて、250℃でフッ化処理を2時間行う。2)フッ化水素の雰囲気中にて、300℃で5時間処理する。3)窒素パージして温度を下げる。フッ化前処理済み触媒をn-ヘキサン中に注ぎ入れ均一に攪拌し、Pdナノコロイド分散液を滴下させて、Pdのローディング量を制御して質量含有量を0.1%とした。連続的に4時間攪拌してから静置し、溶液の上層が透明に澄んだ後、ロータリーエバポレーターに入れて、80℃にて回転蒸発乾燥を行った。オーブン中で110℃にて一晩乾燥し、マッフル炉中で400℃にて6時間焼成することによって触媒を得た。これを触媒3とした。
【0030】
HFC-23のリサイクル:トリフルオロメタン、クロロフォルムおよび水素を1:1.5:0.2の比(モル比)で50mlの触媒3を入れた反応装置中に導入して、反応温度310℃、圧力1bar、保持時間5秒の条件下で、フッ素-塩素交換反応を行った。トリフルオロメタンの転化率は26.9%、HCFC-22の選択性は43.9%、HCFC-21の選択性は54.7%であった。排ガスには少量の副産物であるCFC-12などのガスと微量のメタンなどのガスが含まれていた。956時間経つと、触媒が著しく失活しており、これは水素化性能を有する貴金属Pdをローディングした触媒は、同時に水素を導入することによって、炭素堆積を除去でき、その場での触媒の再生を実現できるということを意味する。
【0031】
実施例4
本実施例の操作は実施例2と同様であって、違う点は、実施例2の触媒本体である三酸化二クロムをAlFに替えたことであり、作製した触媒を触媒4とした。
【0032】
トリフルオロメタンの転化率は26.8%、HCFC-22の選択性は45.4%、HCFC-21の選択性は53.9%であった。排ガスには少量の副産物であるCFC-12などのガスと微量のメタンなどのガスが含まれていた。978時間経つと、触媒が著しく失活しており、これはAlF触媒本体上に水素化性能を有する貴金属Ptをローディングした触媒は、水素を導入することによって、炭素堆積をその場で除去でき、触媒の再生を実現できるということを意味する。
【0033】
実施例5
本実施例の操作は実施例2と同様であって、違う点は、実施例2のPtのローディング量を0.1重量%から0.05重量%に下げたことで、作製した触媒を触媒5とした。
【0034】
トリフルオロメタンの転化率は27.0%、HCFC-22の選択性は45.5%、HCFC-21の選択性は53.1%であった。排ガスには少量の副産物であるCFC-12などのガスと微量のメタンなどのガスが含まれていた。817時間経つと、触媒が著しく失活しており、実施例2の結果に比べて、貴金属のローディング量を0.05重量%まで下げると、その場での炭素堆積除去能力がある程度下がるということを意味する。
【0035】
実施例6
本実施例の操作は実施例2と同様であって、違う点は、実施例2のPtのローディング量を0.1重量%から1.0重量%に上げたことであり、作製した触媒を触媒6とした。
【0036】
トリフルオロメタンの転化率は26.8%、HCFC-22の選択性は45.6%、HCFC-21の選択性は53.2%であった。排ガスには少量の副産物であるCFC-12などのガスと微量のメタンなどのガスが含まれていた。854時間経つと、触媒が著しく失活しており、実施例2の結果に比べて、貴金属のローディング量を1.0%まで上げると、その場での炭素堆積除去能力もある程度下がるということを意味する。
【0037】
実施例7
触媒の作製:三酸化二クロム触媒(触媒本体)と三酸化二コバルト粉末を研磨して混合し、Coの質量含有量を1.0%として、1.0%のCo/Cr触媒前駆体を得た。この1.0%のCo/Cr触媒前駆体に対する前処理を行った。前処理プロセスは、次の通りとした。1)10%のフッ化水素と90%の窒素の混合ガス雰囲気中にて、250℃でフッ化処理を2時間行う。2)フッ化水素の雰囲気中にて、300℃で5時間処理する。3)窒素パージして温度を下げる。
【0038】
フッ化前処理済み触媒をn-ヘキサン中に注ぎ入れ均一に攪拌し、Ptナノコロイド分散液を滴下させて、Ptのローディング量を制御して質量含有量を0.1%とした。連続的に4時間攪拌してから静置し、溶液の上層が透明に澄んだ後、ロータリーエバポレーターに入れて、80℃にて回転蒸発乾燥を行った。オーブン中で110℃にて一晩乾燥し、マッフル炉中で400℃にて6時間焼成することによって触媒を得た。これを触媒7とした。
【0039】
HFC-23のリサイクル:トリフルオロメタン、クロロフォルムおよび水素を1:1.5:0.1の比(モル比)で50mlの触媒7を入れた反応装置中に導入して、反応温度310℃、圧力1bar、保持時間5秒の条件下で、フッ素-塩素交換反応を行った。トリフルオロメタンの転化率は26.7%、HCFC-22の選択性は48.6%、HCFC-21の選択性は50.3%であった。排ガスには少量の副産物であるCFC-12などのガスと微量のメタンなどのガスが含まれていた。2063時間経つと、触媒が著しく失活しており、これは三酸化二クロムの触媒本体に水素化性能を有する貴金属Ptと炭素堆積を避けるCoをローディングすると、相乗効果が得られ、触媒の耐用期間が、貴金属を単独で添加するか、或いは金属酸化物を単独で添加した場合に比べて長いということを意味する。
【0040】
実施例8
触媒の作製:フッ化アルミニウム(触媒本体)と三酸化二コバルト粉末を研磨して混合し、Coの質量含有量を1.0%として、1.0%のCo/AlF触媒前駆体を得た。この1.0%のCo/AlF触媒前駆体に対する前処理を行った。前処理プロセスは、次の通りとした。1)10%のフッ化水素と90%の窒素の混合ガス雰囲気中にて、250℃でフッ化処理を2時間行う。2)フッ化水素の雰囲気中にて、300℃で5時間処理する。3)窒素パージして温度を下げる。
【0041】
フッ化前処理済み触媒をn-ヘキサン中に注ぎ入れ均一に攪拌し、Ptナノコロイド分散液を滴下させて、Ptのローディング量を制御して質量含有量を0.1%とした。連続的に4時間攪拌してから静置し、溶液の上層が透明に澄んだ後、ロータリーエバポレーターに入れて、80℃にて回転蒸発乾燥を行った。オーブン中で110℃にて一晩乾燥し、マッフル炉中で400℃にて6時間焼成することによって触媒を得た。これを触媒8とした。
【0042】
HFC-23のリサイクル:トリフルオロメタン、クロロフォルムおよび水素を1:1.5:0.2の比(モル比)で50mlの触媒8を入れた反応装置中に導入して、反応温度310℃、圧力1bar、保持時間5秒の条件下で、フッ素-塩素交換反応を行った。トリフルオロメタンの転化率は26.7%、HCFC-22の選択性は44.6%、HCFC-21の選択性は54.3%であった。排ガスには少量の副産物であるCFC-12などのガスと微量のメタンなどのガスが含まれていた。2145時間経つと、触媒が著しく失活しており、これはフッ化アルミニウムの触媒本体に水素化性能を有する貴金属Ptと炭素堆積を避けるCoをローディングすると、相乗効果が得られ、触媒の耐用期間が、貴金属を単独で添加するか、或いは金属酸化物を単独で添加した場合に比べて長いということを意味する。
【0043】
比較例1
三酸化二クロム触媒に対する前処理を行った。前処理プロセスは、次の通りとした。1)10%のフッ化水素と90%の窒素の混合ガス雰囲気中にて、250℃でフッ化処理を2時間行う。2)フッ化水素の雰囲気中にて、300℃で5時間処理する。3)窒素パージして温度を下げる。前処理済み触媒をB1とした。
【0044】
HFC-23のリサイクル:トリフルオロメタンとクロロフォルムを1:1.5の比(モル比)で50mlの触媒B1を入れた反応装置中に導入して、反応温度310℃、圧力1bar、保持時間5秒の条件下で、フッ素-塩素交換反応を行った。トリフルオロメタンの転化率は25.6%、HCFC-22の選択性は44.4%、HCFC-21の選択性は55.2%であった。排ガスには少量の副産物であるCFC-12などのガスが含まれていた。340時間経つと、触媒が著しく失活しており、触媒を取り出して見ると著しく黒くなっており、炭素堆積が酷かった。
【0045】
比較例2
本比較例の操作は比較例1と同様であって、違う点は、三酸化二クロムをAlFに替えたことであり、前処理済み触媒をB2とした。
【0046】
トリフルオロメタンの転化率は25.8%、HCFC-22の選択性は44.2%、HCFC-21の選択性は54.9%であった。排ガスには少量の副産物であるCFC-12などのガスが含まれていた。395時間経つと、触媒が著しく失活しており、触媒を取り出して見ると著しく黒くなっており、炭素堆積が酷かった。
【0047】
比較例3
触媒の作製:三酸化二クロム触媒(触媒本体)に対する前処理を行った。前処理プロセスは、次の通りとした。1)10%のフッ化水素と90%の窒素の混合ガス雰囲気中にて、250℃でフッ化処理を2時間行う。2)フッ化水素の雰囲気中にて、300℃で5時間処理する。3)窒素パージして温度を下げる。フッ化前処理済み触媒をn-ヘキサン中に注ぎ入れ均一に攪拌し、Agナノコロイド分散液を滴下させて、Agのローディング量を制御して質量含有量を0.1重量%とした。連続的に4時間攪拌してから静置し、溶液の上層が透明に澄んだ後、ロータリーエバポレーターに入れて、80℃にて回転蒸発乾燥を行った。オーブン中で110℃にて一晩乾燥し、マッフル炉中で400℃にて6時間焼成することによって触媒を得た。これを触媒B3とした。
【0048】
HFC-23のリサイクル:トリフルオロメタン、クロロフォルムおよび水素を1:1.5:0.2の比(モル比)で50mlの触媒2を入れた反応装置中に導入して、反応温度310℃、圧力1bar、保持時間5秒の条件下で、フッ素-塩素交換反応を行った。
【0049】
トリフルオロメタンの転化率は26.3%、HCFC-22の選択性は45.6%、HCFC-21の選択性は53.2%であった。排ガスには少量の副産物であるCFC-12などのガスと微量のメタンなどのガスが含まれていた。321時間経つと、触媒が著しく失活しており、これは触媒本体に貴金属Agをローディングし、水素を導入することによって、その場での触媒の再生を実現できないということを意味する。
【0050】
比較例4
触媒の作製:三酸化二クロムと三酸化二コバルト粉末を研磨して混合し、Coの質量含有量を1.0%として、1.0%のCo/Cr触媒前駆体を得た。この1.0%のCo/Cr触媒前駆体に対する前処理を行った。前処理プロセスは、次の通りとした。1)10%のフッ化水素と90%の窒素の混合ガス雰囲気中にて、250℃でフッ化処理を2時間行う。2)フッ化水素の雰囲気中にて、300℃で5時間処理する。3)窒素パージして温度を下げる。前処理済み触媒をB4とした。
【0051】
HFC-23のリサイクル:トリフルオロメタン、クロロフォルムを1:1.5の比(モル比)で50mlの触媒B4を入れた反応装置中に導入して、反応温度310℃、圧力1bar、保持時間5秒の条件下で、フッ素-塩素交換反応を行った。
【0052】
トリフルオロメタンの転化率は26.6%、HCFC-22の選択性は44.3%、HCFC-21の選択性は54.7%であった。排ガスには少量の副産物であるCFC-12などのガスが含まれていた。973時間経つと、触媒が著しく失活していた。実験結果は、Crを添加することによって、触媒の安定性と耐用期間を効果的に向上できるということを意味する。
【0053】
比較例5
触媒の作製:三酸化二クロムと三酸化二鉄粉末を研磨して混合し、Feの質量含有量を1.0%として、1.0%のFe/Cr触媒前駆体を得た。この1.0%のFe/Cr触媒前駆体に対する前処理を行った。前処理プロセスは、次の通りとした。1)10%のフッ化水素と90%の窒素の混合ガス雰囲気中にて、250℃でフッ化処理を2時間行う。2)フッ化水素の雰囲気中にて、300℃で5時間処理する。3)窒素パージして温度を下げる。前処理済み触媒をB5とした。
【0054】
HFC-23のリサイクル:トリフルオロメタン、クロロフォルムを1:1.5の比(モル比)で50mlの触媒B5を入れた反応装置中に導入して、反応温度310℃、圧力1bar、保持時間5秒の条件下で、フッ素-塩素交換反応を行った。
【0055】
トリフルオロメタンの転化率は26.3%、HCFC-22の選択性は44.7%、HCFC-21の選択性は54.4%であった。排ガスには少量の副産物であるCFC-12などのガスが含まれていた。861時間経つと、触媒が著しく失活していた。実験結果は、Feを添加することによって、触媒の安定性と耐用期間を効果的に向上できるということを意味する。
【0056】
比較例6
触媒の作製:三酸化二クロムと三酸化二ニッケル粉末を研磨して混合し、Niの質量含有量を1.0%として、1.0%のNi/Cr触媒前駆体を得た。前記1.0%のNi/Cr触媒前駆体に対する前処理を行った。前処理プロセスは、次の通りとした。1)10%のフッ化水素と90%の窒素の混合ガス雰囲気中にて、250℃でフッ化処理を2時間行う。2)フッ化水素の雰囲気中にて、300℃で5時間処理する。3)窒素パージして温度を下げる。前処理済み触媒をB6とした。
【0057】
HFC-23のリサイクル:トリフルオロメタン、クロロフォルムを1:1.5の比(モル比)で50mlの触媒B6を入れた反応装置中に導入して、反応温度310℃、圧力1bar、保持時間5秒の条件下で、フッ素-塩素交換反応を行った。
【0058】
トリフルオロメタンの転化率は25.3%、HCFC-22の選択性は43.7%、HCFC-21の選択性は55.4%であった。排ガスには少量の副産物であるCFC-12などのガスが含まれていた。758時間経つと、触媒が著しく失活していた。実験結果はNiを添加することによって、触媒の安定性と耐用期間を効果的に向上できるということを意味する。
【0059】
比較例7
本比較例の操作は比較例4と同様であって、違う点は、三酸化二クロムをフッ化アルミニウムに替えたことであり、前処理済み触媒をB7とした。
【0060】
トリフルオロメタンの転化率は26.3%、HCFC-22の選択性は44.1%、HCFC-21の選択性は54.9%であった。排ガスには少量の副産物であるCFC-12などのガスが含まれていた。965時間経つと、触媒が著しく失活していた。実験結果は触媒本体AlF上にCoを添加することによって、触媒の安定性と耐用期間を効果的に向上できるということを意味する。
【0061】
比較例8
本比較例の操作は比較例4と同様であって、違う点は、比較例4のCoの質量含有量を1.0%から0.1%まで下げたことであり、作製した触媒を触媒B8とした。
【0062】
トリフルオロメタンの転化率は26.4%、HCFC-22の選択性は44.1%、HCFC-21の選択性は54.9%であった。排ガスには少量の副産物であるCFC-12などのガスが含まれていた。654時間経つと、触媒が著しく失活していた。実験結果は、比較例4に比べて、Coの質量含有量が0.1%になる場合に、触媒の安定性と耐用期間を向上する能力も弱くなるということを意味する。
【0063】
比較例9
本比較例の操作は比較例4と同様であって、違う点は、比較例4のCoの質量含有量を0.1%から5.0%まで上げたことであり、作製した触媒を触媒B9とした。
【0064】
トリフルオロメタンの転化率は26.3%、HCFC-22の選択性は44.4%、HCFC-21の選択性は54.3%であった。排ガスには少量の副産物であるCFC-12などのガスが含まれていた。804時間経つと、触媒が著しく失活していた。実験結果は、比較例4に比べて、Coの質量含有量が5.0%になる場合に、触媒の安定性と耐用期間を向上する能力も弱くなるということを意味する。
【0065】
【表1】