(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】ポリカルボシラザンを使用してlow-k誘電体ケイ素含有膜を形成するための硬化性配合物
(51)【国際特許分類】
C08G 77/60 20060101AFI20240411BHJP
C09D 183/16 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
C08G77/60
C09D183/16
(21)【出願番号】P 2022538838
(86)(22)【出願日】2020-12-28
(86)【国際出願番号】 US2020067194
(87)【国際公開番号】W WO2021138274
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-08-01
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ユイミン
(72)【発明者】
【氏名】ジラール、ジャン-マルク
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ポン
(72)【発明者】
【氏名】チン、ファン
(72)【発明者】
【氏名】イトフ、ジェナディ
(72)【発明者】
【氏名】マルケジャーニ、ファブリツィオ
(72)【発明者】
【氏名】ララビー、トーマス、ジェイ.
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-511585(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0305063(US,A1)
【文献】特表2017-529361(JP,A)
【文献】特開2019-110263(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0004358(US,A1)
【文献】特開2005-220261(JP,A)
【文献】国際公開第2017/165626(WO,A1)
【文献】特開平7-196371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C09D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボシランとアミンとを含む、膜形成ポリカルボシラザンポリマー又はオリゴマーを製造するための反応混合物であって、
前記カルボシランが、末端基(-SiH
2R)としての、又はカルボシラン環状化合物に埋め込まれたものとしての、少なくとも2つの-SiH
2-部位を含み、Rは、H、C
1~C
6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3~C
6の環状アルキル基、C
2~C
6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3~C
6の環状アルケニル基、又はこれらの組み合わせであり、
前記反応混合物が、前記膜形成ポリカルボシラザンポリマー又はオリゴマーを形成可能であり、
前記反応混合物が
a)2つより多い-SiH
2R官能基を含むポリシラン
(式中のRは
、C
1~C
6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3~C
6の環状アルキル基、C
2~C
6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3~C
6の環状アルケニル基
である。)、又は
、b)N(SiH
3
)
3
若しくはトリシリルアミン誘導体、又は、これらの組み合わせ
を含む、
反応混合物。
【請求項2】
前記膜形成ポリカルボシラザンポリマー又はオリゴマーが、-Si-N-単位、-Si-N-C
n-N-Si-単位、-Si-N-Si-単位、又はこれらの組み合わせを含む骨格を有し、n≧1であり、前記骨格が、架橋した-Si-N-単位、-Si-N-C
n-N-Si-単位、若しくは-Si-N-Si-単位、分岐した-Si-N-単位、-Si-N-C
n-N-Si-単位、若しくは-Si-N-Si-単位、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の反応混合物。
【請求項3】
前記カルボシランが下記式:
R
1
aSi[-(CH
2)
b-SiH
2R
2]
c (I)
(式中、R
1、R
2は、独立して、H、C
1~C
6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3~C
6の環状アルキル基、C
2~C
6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3~
C
6の環状アルケニル基、又はこれらの組み合わせであり;a=0~2であり;b=1~4であり;c=4-aである);又は
R
3
eC[-(CH
2)
f-SiH
2R
4]
g (II)
(式中、R
3、R
4は、独立して、H、C
1~C
6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3~C
6の環状アルキル基、C
2~C
6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3~C
6の環状アルケニル基、又はこれらの組み合わせであり;e=0~2であり;f=0~3であり;g=4-eである);又は
[足場]-[-(CH
2)
m-SiH
2R
5]
n (III)
(式中、R
5は、H、C
1~C
6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3~C
6の環状アルキル基、C
2~C
6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3~C
6の環状アルケニル基、又はこれらの組み合わせであり;m=0~4であり;n=2~4であり;足場は炭化水素基である);又は
R
6
x-1,3,5-トリシラシクロヘキサン (IV)
(式中、R
6は、C
1~C
6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3~C
6の環状アルキル基、C
2~C
6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3~C
6の環状アルケニル基であり;x=0~3であり、xが0の場合はR
6が存在せず、xが1~3の場合は1,3,5-トリシラシクロヘキサンの1~3個の水素原子にそれぞれR
6が1~3個置換する)
を有する、請求項1に記載の反応混合物。
【請求項4】
前記足場が、シリル基、-NH基、-O-エーテル基を含むC
3~C
10環状炭化水素基を含む炭化水素基である、請求項3に記載の反応混合物。
【請求項5】
前記カルボシラン骨格が-Si-C
n-Si-単位(n≧1)単位又は1,3,5-トリシラシクロヘキサン(TSCH)骨格を含む、請求項1に記載の反応混合物。
【請求項6】
前記カルボシランが、Si[-(CH
2)-SiH
3]
4、Si[-(CH
2)
2-SiH
3]
4、Si[-(CH
2)
3-SiH
3]
4、及びSi[-(CH
2)
4-SiH
3]
4、R
1Si[-(CH
2)-SiH
3]
3、R
1Si[-(CH
2)
2-SiH
3]
3、R
1Si[-(CH
2)
3-SiH
3]
3、及びR
1Si[-(CH
2)
4-SiH
3]
3、H
3Si-CH
2-SiH
2-CH
2-SiH
3(ビス(シリルメチル)シラン)、H
3Si-(CH
2)
2-SiH
2-(CH
2)
2-SiH
3(ビス(2-シリルエチル)シラン)、H
3Si-(CH
2)
3-SiH
2-(CH
2)
3-SiH
3(ビス(3-シリルプロピル)シラン)、及びH
3Si-(CH
2)
4-SiH
2-(CH
2)
4-SiH
3(ビス(4-シリルブチル)シラン)、C[-SiH
3]
4(テトラシリルメタン)、C[-(CH
2)-SiH
3]
4(2,2-ビス(シリルメチル)プロパン-1,3-ジイル)ビス(シラン))、C[-(CH
2)
2-SiH
3]
4(3,3-ビス(2-シリルエチル)ペンタン-1,5-ジイル)ビス(シラン))、及びC[-(CH
2)
3-SiH
3]
4(4,4-ビス(3-シリルプロピル)ヘプタン-1,7-ジイル)ビス(シラン))、R
1C[-SiH
3]
3、R
1C[-(CH
2)-SiH
3]
3、R
1C[-(CH
2)
2-SiH
3]
3、及びR
1C[-(CH
2)
3-SiH
3]
3、H
3Si-CH
2-SiH
3(ジシリルメタン)、H
3Si-(CH
2)
5-SiH
3(1,5-ジシリルペンタン)、及びH
3Si-(CH
2)
7-SiH
3(1,7-ジシリルヘプタン))、1,3-ジシリルシクロペンタン、1,2-ジシリルシクロペンタン、1,4-ジシリルシクロヘキサン、1,3-ジシリルシクロヘキサン、1,2-ジシリルシクロヘキサン、1,3,5-トリシリルシクロヘキサン、及び1,3,5-トリシリルベンゼン、2-Me-TSCH、2-Et-TSCH、2-iPr-TSCH、2-nPr-TSCH、2-nBu-TSCH、2-tBu-TSCH、2-sBu-TSCH、2-iBu-TSCH、2,4-Me
2-TSCH、2,4-Et
2-TSCH、2,4-iPr
2-TSCH、2,4-nPr
2-TSCH、2,4-nBu
2-TSCH、2
,4-iBu
2-TSCH、2,4-tBu
2-TSCH、2,4-sBu
2-TSCH、2,4,6-Me
3-TSCH、2,4,6-Et
3-TSCH、2,4,6-iPr
3-TSCH、2,4,6-nPr
3-TSCH、2,4,6-nBu
3-TSCH、2,4,6-iBu
3-TSCH、2,4,6-tBu
3-TSCH、2,4,6-sBu
3-TSCH、及びこれらの組み合わせから選択され、式中、R
1は、H、C
1~C
6の直鎖、分岐、若しくは環状アルキル基、C
1~C
6の直鎖、分岐、若しくは環状アルケニル基、又はこれらの組み合わせである、請求項1に記載の反応混合物。
【請求項7】
前記カルボシランが1,3,5-トリシラペンタン(CAS番号:5637-99-0)又は1,3,5-トリシラシクロヘキサン(CAS番号:291-27-0)である、請求項1に記載の反応混合物。
【請求項8】
前記アミンが、アンモニア、アミジン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、モノアルキルアミン、ジアミン(エチレンジアミンなど)、又はポリアミンのうちの1つ以上から選択され、前記ポリアミンが同じ窒素原子上又は別々の窒素原子上にある少なくとも2つのN-H結合を含む、請求項1に記載の反応混合物。
【請求項9】
前記
反応混合物が、
トリシリルアミン(N(SiH
3
)
3
)、トリシリルアミン誘導体、又は、ネオペンタシラン(Si(SiH
3)
4)
及び2-シリル-テトラシラン((SiH
3)
2SiHSiH
2SiH
3)のうちの1つ以上から選択される
ポリシランを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の反応混合物。
【請求項10】
カルボシランとアミンとの反応混合物の重合によって膜形成ポリカルボシランポリマー又はオリゴマーを製造する工程であって、
a)2つより多い-SiH
2R官能基を含むポリシラン
(RはC
1
~C
6
の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3
~C
6
の環状アルキル基、C
2
~C
6
の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3
~C
6
の環状アルケニル基、又はこれらの組み合わせである)又は、b)N(SiH
3
)
3
若しくはトリシリルアミン誘導体、又は、これらの組み合わせを前記反応混合物に添加する工程を含む、前記膜形成ポリカルボシラザンポリマー又はオリゴマーを製造する工程;
前記膜形成ポリカルボシラザンポリマー又はオリゴマーを含有する溶液を形成する工程;及び
スピンオンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、又はスリットコーティング技術により前記溶液を基板と接触させて、ケイ素炭素含有膜を形成する工程;
を含む、基板上への炭素ケイ素含有膜の形成方法であって、
前記カルボシランが、末端基(-SiH
2R)としての、又はカルボシラン環状化合物に埋め込まれたものとしての、少なくとも2つの-SiH
2-部位を含み、Rは
、C
1~C
6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3~C
6の環状アルキル基、C
2~C
6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3~C
6の環状アルケニル基、又はこれらの組み合わせである、
方法。
【請求項11】
N
2雰囲気下、前記ケイ素炭素含有膜を50℃~400℃の範囲の温度でプリベークする工程;及び
引き続き、O
2、O
3、H
2O、H
2O
2、N
2O、又はNO、空気、圧縮空気、又はこれらの組み合わせの雰囲気中で、200~1000℃の温度範囲で熱誘起ラジカル反応又はUV-Vis光誘起ラジカル反応によって前記ケイ素炭素含有膜をハードベークして、前記ケイ素炭素含有膜をSiOC又はSiOCN含有膜に変換する工程;
を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記膜形成ポリカルボシラザンポリマー又はオリゴマーが、-Si-N-単位、-Si-N-C
n-N-Si-単位、-Si-N-Si-単位、又はこれらの組み合わせを含む骨格を有し、n≧1であり、前記骨格が、架橋した-Si-N-単位、-Si-N-C
n-N-Si-単位、若しくは-Si-N-Si-単位、分岐した-Si-N-単位、-Si-N-C
n-N-Si-単位、若しくは-Si-N-Si-単位、又はこれらの組み合わせを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記カルボシランが下記式:
R
1
aSi[-(CH
2)
b-SiH
2R
2]
c (I)
(式中、R
1、R
2は、独立して、H、C
1~C
6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3~C
6の環状アルキル基、C
2~C
6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3~C
6の環状アルケニル基、又はこれらの組み合わせであり;a=0~2であり;b=1~4であり;c=4-aである);又は
R
3
eC[-(CH
2)
f-SiH
2R
4]
g (II)
(式中、R
3、R
4は、独立して、H、C
1~C
6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3~C
6の環状アルキル基、C
2~C
6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3~C
6の環状アルケニル基、又はこれらの組み合わせであり;e=0~2であり;f=0~3であり;g=4-eである);又は
[足場]-[-(CH
2)
m-SiH
2R
5]
n (III)
(式中、R
5は、H、C
1~C
6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3~C
6の環状アルキル基、C
2~C
6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3~C
6の環状アルケニル基、又はこれらの組み合わせであり;m=0~4であり;n=2~4であり;足場は炭化水素基である);又は
R
6
x-1,3,5-トリシラシクロヘキサン (IV)
(式中、R
6は、C
1~C
6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3~C
6の環状アルキル基、C
2~C
6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3~C
6の環状アルケニル基であり;x=0~3であり、xが0の場合はR
6が存在せず、xが1~3の場合は1,3,5-トリシラシクロヘキサンの1~3個の水素原子にそれぞれR
6が1~3個置換する)
を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記カルボシランが、Si[-(CH
2)-SiH
3]
4、Si[-(CH
2)
2-SiH
3]
4、Si[-(CH
2)
3-SiH
3]
4、及びSi[-(CH
2)
4-SiH
3]
4、R
1Si[-(CH
2)-SiH
3]
3、R
1Si[-(CH
2)
2-SiH
3]
3、R
1Si[-(CH
2)
3-SiH
3]
3、及びR
1Si[-(CH
2)
4-SiH
3]
3、H
3Si-CH
2-SiH
2-CH
2-SiH
3(ビス(シリルメチル)シラン)、H
3Si-(CH
2)
2-SiH
2-(CH
2)
2-SiH
3(ビス(2-シリルエチル)シラン)、H
3Si-(CH
2)
3-SiH
2-(CH
2)
3-SiH
3(ビス(3-シリルプロピル)シラン)、及びH
3Si-(CH
2)
4-SiH
2-(CH
2)
4-SiH
3(ビス(4-シリルブチル)シラン)、C[-SiH
3]
4(テトラシリルメタン)、C[-(CH
2)-SiH
3]
4(2,2-ビス(シリルメチル)プロパン-1,3-ジイル)ビス(シラン))、C[-(CH
2)
2-SiH
3]
4(3,3-ビス(2-シリルエチル)ペンタン-1,5-ジイル)ビス(シラン))、及びC[-(CH
2)
3-SiH
3]
4(4,4-ビス(3-シリルプロピル)ヘプタン-1,7-ジイル)ビス(シラン))、R
1C[-SiH
3]
3、R
1C[-(CH
2)-SiH
3]
3、R
1C[-(CH
2)
2-SiH
3]
3、及びR
1C[-(CH
2)
3-SiH
3]
3、H
3Si-CH
2-SiH
3(ジシリルメタン)、H
3Si-(CH
2)
5-SiH
3(1,5-ジシリルペンタン)、及びH
3Si-(CH
2)
7-SiH
3(1,7-ジシリルヘプタン))、1,3-ジシリルシクロペンタン、1,2-ジシリルシクロペンタン、1,4-ジシリルシクロヘキサン、1,3-ジシリルシクロヘキサン、1,2-ジシリル
シクロヘキサン、1,3,5-トリシリルシクロヘキサン、及び1,3,5-トリシリルベンゼン、2-Me-TSCH、2-Et-TSCH、2-iPr-TSCH、2-nPr-TSCH、2-nBu-TSCH、2-tBu-TSCH、2-sBu-TSCH、2-iBu-TSCH、2,4-Me
2-TSCH、2,4-Et
2-TSCH、2,4-iPr
2-TSCH、2,4-nPr
2-TSCH、2,4-nBu
2-TSCH、2,4-iBu
2-TSCH、2,4-tBu
2-TSCH、2,4-sBu
2-TSCH、2,4,6-Me
3-TSCH、2,4,6-Et
3-TSCH、2,4,6-iPr
3-TSCH、2,4,6-nPr
3-TSCH、2,4,6-nBu
3-TSCH、2,4,6-iBu
3-TSCH、2,4,6-tBu
3-TSCH、2,4,6-sBu
3-TSCH、及びこれらの組み合わせから選択され、式中、R
1は、H、C
1~C
6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3~C
6の環状アルキル基、C
2~C
6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3~C
6の環状アルケニル基、又はこれらの組み合わせである、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記カルボシランが1,3,5-トリシラペンタン(CAS番号:5637-99-0)又は1,3,5-トリシラシクロヘキサン(CAS番号:291-27-0)である、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記膜形成ポリカルボシラザンポリマー又はオリゴマーを製造する工程が、前記反応混合物に触媒を添加する工程を含み、前記膜形成ポリカルボシラザンポリマー又はオリゴマーが、触媒的脱水素カップリング(DHC)反応による前記反応混合物の重合によって製造される、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記触媒がNH
4Clである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記
反応混合物が、
トリシリルアミン(N(SiH
3
)
3
)、トリシリルアミン誘導体、又は、ネオペンタシラン(Si(SiH
3)
4)
及び2-シリル-テトラシラン((SiH
3)
2SiHSiH
2SiH
3)のうちの1つ以上から選択される
ポリシランを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記膜形成ポリカルボシラザンポリマー又はオリゴマーが、
i)2種のうちの一方が末端基(-SiH
2R)としての、又はカルボシラン環状化合物に埋め込まれたものとしての、少なくとも2つの-SiH
2-部位を含む2種のカルボシラン(式中、Rは、H、C
1~C
6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3~C
6の環状アルキル基、C
2~C
6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3~C
6の環状アルケニル基、又はこれらの組み合わせである)と、2種のアミン;
ii)2種のカルボシランと、2種のうちの一方が2つより多いN-H結合を含む2種のアミン;及び
iii)2種より多いカルボシランと2種より多いアミン;
のうちの1つ以上から選択される触媒的脱水素カップリング(DHC)反応による前記カルボシランとアミンとの前記重合によって製造される、請求項10~18のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、米国特許法第119条(a)及び(b)の下、2019年12月31日に出願された米国特許出願第16/731,728号に基づく優先権の利益を主張するものであり、その内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ポリカルボシラザンポリマー又はオリゴマー含有配合物を含有するケイ素炭素含有膜形成組成物を使用して、ウェットコーティング、好ましくはスピンオン堆積(SOD)を行い、続いて硬化工程及びハードベーク工程を行うことによる、基板上へlow-k誘電体ケイ素炭素含有膜を堆積する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
スピンオンコーティングは、遠心力によって主に平坦な基板上に均一な薄膜を堆積させるために使用される手段である。一般的に、コーティング配合物は基材の中心に塗布され、これはその後特定の速度で回転される。コーティング配合物は遠心力によって広げられ、基材を被覆するための膜を形成する。膜の厚さは、典型的にはコーティング配合物の濃度とスピン速度によって制御される。コーティング材料を流動性にするために、揮発性溶媒が使用される。膜が形成されるのに伴い揮発性溶媒を蒸発させることができる。膜の厚さは、回転の角速度、溶液の粘度及び濃度、並びに溶媒に依存する。スピンオンコーティングは、フォトレジスト、反射防止コーティング、low-k誘電体膜、酸化ケイ素膜などの様々な膜を製造するためのマイクロエレクトロニクス製造において広く使用されている。一部の用途では、スピンオンコーティングプロセスによって形成されたスピンオン誘電体は、トランジスタ又は導電層を絶縁することができる。フィーチャサイズの微細化による半導体設計の高集積化により、配線工程(BEOL)では、薄い誘電体層で互いに絶縁された、相互接続されたメタルラインと垂直ビアのレベルが高められた。このような薄い誘電体層には、メタルライン間の電磁的なクロストークを抑制するため、低誘電率(low-k)の誘電体層が求められている。トランジスタ製造レベル(基板工程)では、デバイス製造のいくつかの工程で、深いトレンチや穴に堆積する能力を持つ誘電体膜を使用する必要がある。例えば、シャロートレンチアイソレーション及びフィンアイソレーションでは、トレンチの底に誘電体膜を堆積させる必要がある。同様に、BEOL用途のために、そのようなフィーチャをSiO2よりも低い誘電率を有する絶縁膜で充填する必要性も高まっている。BEOL low-k膜と比較すると、基板工程の追加の制約は、高いギャップ充填能力の要件と、堆積された膜が、膜の物理的及び化学的特性(寸法、応力、誘電率、化学結合など)に大きな影響を受けずに、チップの残りの部分を構築する際に必要とされる高温(すなわち典型的には>400℃、より好ましくは>500℃)に耐える要件である。半導体業界は、二酸化ケイ素に代わる無機、有機、又はハイブリッド材料である複数のlow-k材料を開発してきた。これらの材料は、化学蒸着(CVD)プロセス又はスピンオン堆積(SOD)プロセスのいずれかによって堆積することができる。ポリイミド、炭素ドープ酸化ケイ素、及びポリアリーレンなどの材料は、SOD技術を使用して堆積させることができる。
【0004】
Khandelwalらの米国特許出願公開第2019/0040279号明細書には、式:[-NR-R4R5Si-(CH2)t-SiR2R3-]n(式中、n=2~400であり;RはHであり;R2、R3、R4、R5は、独立してH、炭化水素基、又はアルキルアミノ基であるが、R2、R3、R4、及びR5のうちの少なくとも1つはHであることを条件とする)を持つ単位を有する前駆体を含むポリカルボシラザン含有配合物のための方法及び処方が開示されている。
【0005】
O’Neilらの米国特許出願公開第2015/0087139号明細書には、例えばH3Si(CH2)nSiH2NR-C(Me)=NRなどのオルガノアミノシラン前駆体を使用してSi含有膜を形成するための前駆体及び方法が開示されている。
【0006】
Kerriganらの国際公開第2016/160991号パンフレットには、Si-N含有前駆体を含むSi含有膜形成組成物、並びにカルボシランと、アンモニア、アミン、及びアミジンとの触媒的脱水素カップリングによってこれらの前駆体を合成するための方法が開示されている。
【0007】
Leibfriedらの米国特許第5,260,377号明細書には、ヒドロシリル化架橋反応において反応性の2つ以上の二重結合を有する多環式ポリエン架橋剤と組み合わせられた、ポリマー鎖中に反応性水素化ケイ素ラジカルを含む飽和又は不飽和カルボシランポリマーから調製された架橋性カルボシランポリマー配合物が開示されている。
【0008】
Bowenらの米国特許第9,243,324号明細書には、50原子%を超えるケイ素を含む酸素非含有Si系膜の形成方法が開示されている。一実施形態では、酸素非含有Si系膜は、1,4-ジシラブタンなどケイ素原子間に少なくとも1つのC2-3結合を有する少なくとも2つの-SiH3基を有する少なくとも1種の有機ケイ素前駆体を使用して堆積された。
【0009】
Liらの米国特許出願公開第2019/0055645号明細書には、炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する第1の化合物と、少なくとも1つのSi-H結合を含む第2の化合物とを含むSi含有膜形成組成物が開示されている。
【0010】
Leungらの米国特許出願公開第2009/0026924号明細書には、有機発光ダイオード(OLED)などの光学照明デバイスで使用するための、実質的に透明な基板上に実質的に透明なナノポーラスオルガノシリケート膜を形成するための方法が開示されている。この方法は、最初に、ケイ素含有プレポリマーと、ポロゲンと、触媒とを含有する組成物を調製することを含む。組成物は、可視光に対して実質的に透明である基板上にコーティングされ、その上に膜を形成する。その後、膜は架橋によってゲル化され、加熱によって硬化され、その結果得られる硬化膜は、可視光に対して実質的に透明である。
【0011】
Goethalsらの米国特許出願公開第2013/0075876号明細書には、オリゴマーを含むシーリングコンパウンドを塗布することにより多孔質材料上にシーリング層を形成することを含む、多孔質材料を少なくとも部分的にシーリングする方法が開示されており、ここでのオリゴマーは、環状炭素架橋有機シリカ及び/又は架橋オルガノシランを含む前駆体溶液をエージングすることによって形成される。この方法は、半導体デバイスに組み込まれるlow k誘電体多孔質材料用に特別に設計されている。
【0012】
Michalakらの米国特許第8,441,006号明細書には、誘電体膜及びlow-k誘電体膜、並びに誘電体及びlow-k誘電体膜の製造方法が開示されている。誘電体膜は、カルボシラン含有前駆体から製造される。
【0013】
Pandeyらの米国特許出願公開第2018/0208796号明細書には、ポリ(メチルシルセスキオキサン)樹脂と、四級アンモニウム塩及びアミノプロピルトリエトキシシラン塩のうちの少なくとも1つと、少なくとも1種の溶媒とを含む、半導体デバイス表面を平坦化するための組成物が開示されている。
【0014】
Kerriganらの米国特許出願第2018/0087150号明細書には、Si-N含有前駆体を含むポリカルボシラザン含有配合物が開示されている。前駆体を合成する方法は、以下の式Iに示すようにSi-N含有前駆体を生成し、副生成物としてH
2を生成するための、カルボシランと、アンモニア、アミン、及びアミジンとの触媒的脱水素カップリングである。反応は、金属カルボニル、ジコバルトオクタカルボニルなどの触媒を使用して加速される。触媒的脱水素カップリングの目標反応温度は、0~600℃の範囲とすることができる。
【化1】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
シラザンブリッジ若しくは架橋カルボシランモノマーからなるポリカルボシラザンポリマー又はオリゴマー含有配合物と、
末端基(-SiH
2
R)(式中、Rは、H、C1~C6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3
~C
6
の環状アルキル基、C
2
~C6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3
~C
6
の環状アルケニル基、又は、これらの組み合わせである)としての、又はカルボシラン環状化合物に埋め込まれたものとしての、少なくとも2つの-SiH2-部位を含むカルボシランと、
を含むケイ素炭素含有膜形成組成物が開示される。
【0016】
開示されるケイ素炭素含有膜形成組成物は、以下の態様のうちの1つ以上を含み得る:・カルボシランが下記式を有する:
R1
aSi[-(CH2)b-SiH2R2]c (I)
(式中、R1、R2は、独立して、H、C1~C6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3
~C
6
の環状アルキル基、C
2
~C6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3
~C
6
の環状アルケニル基、又は、これらの組み合わせであり;a=0~2であり;b=1~4であり;c=4-aである);
・カルボシランが下記式を有する:
R3
eC[-(CH2)f-SiH2R4]g (II)
(式中、R3、R4は、独立して、H、C1~C6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3
~C
6
の環状アルキル基、C
2
~C6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3
~C
6
の環状アルケニル基、又は、これらの組み合わせであり;e=0~2であり;f=0~3であり;g=4-eである);
・カルボシランが下記式を有する:
[足場]-[-(CH2)m-SiH2R5]n (III)
(式中、R5は、H、C1~C6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3
~C
6
の環状アルキル基、C
2
~C6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3
~C
6
の環状アルケニル基、又は、これらの組み合わせであり;m=0~4であり;n=2~4であり;足場は炭化水素足場である);
・カルボシランが下記式を有する:
R6
x-1,3,5-トリシラシクロヘキサン (IV)
(式中、R6は、C1~C6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3
~C
6
の環状アルキル基、C
2
~C6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3
~C
6
の環状アルケニル基であり;x=0~3である);
・炭化水素足場が、シリル基、-NH基、-O-エーテル基などを含むC3~C10環状炭化水素足場を含む炭化水素足場である;
・-Si-Cn-Si-単位(n≧1)単位又は1,3,5-トリシラシクロヘキサン(TSCH)骨格を含むカルボシラン;
・カルボシランが-Si-Cn-Si-単位(n≧1)単位を含む;
・カルボシランが1,3,5-トリシラシクロヘキサン(TSCH)骨格を含む;
・カルボシランがSi[-(CH2)-SiH3]4、Si[-(CH2)2-SiH3]4、Si[-(CH2)3-SiH3]4、及びSi[-(CH2)4-SiH3]4、R1Si[-(CH2)-SiH3]3、R1Si[-(CH2)2-SiH3]3、R1Si[-(CH2)3-SiH3]3、及びR1Si[-(CH2)4-SiH3]3、H3Si-CH2-SiH2-CH2-SiH3(ビス(シリルメチル)シラン)、H3Si-(CH2)2-SiH2-(CH2)2-SiH3(ビス(2-シリルエチル)シラン)、H3Si-(CH2)3-SiH2-(CH2)3-SiH3(ビス(3-シリルプロピル)シラン)、及びH3Si-(CH2)4-SiH2-(CH2)4-SiH3(ビス(4-シリルブチル)シラン)、C[-SiH3]4(テトラシリルメタン)、C[-(CH2)-SiH3]4(2,2-ビス(シリルメチル)プロパン-1,3-ジイル)ビス(シラン))、C[-(CH2)2-SiH3]4(3,3-ビス(2-シリルエチル)ペンタン-1,5-ジイル)ビス(シラン))、及びC[-(CH2)3-SiH3]4(4,4-ビス(3-シリルプロピル)ヘプタン-1,7-ジイル)ビス(シラン))、R1C[-SiH3]3、R1C[-(CH2)-SiH3]3、R1C[-(CH2)2-SiH3]3、及びR1C[-(CH2)3-SiH3]3、H3Si-CH2-SiH3(ジシリルメタン)、H3Si-(CH2)5-SiH3(1,5-ジシリルペンタン)、及びH3Si-(CH2)7-SiH3(1,7-ジシリルヘプタン))、1,3-ジシリルシクロペンタン、1,2-ジシリルシクロペンタン、1,4-ジシリルシクロヘキサン、1,3-ジシリルシクロヘキサン、1,2-ジシリルシクロヘキサン、1,3,5-トリシリルシクロヘキサン、及び1,3,5-トリシリルベンゼン、2-Me-TSCH、2-Et-TSCH、2-iPr-TSCH、2-nPr-TSCH、2-nBu-TSCH、2-tBu-TSCH、2-sBu-TSCH、2-iBu-TSCH、2,4-Me2-TSCH、2,4-Et2-TSCH、2,4-iPr2-TSCH、2,4-nPr2-TSCH、2,4-nBu2-TSCH、2,4-iBu2-TSCH、2,4-tBu2-TSCH、2,4-sBu2-TSCH、2,4,6-Me3-TSCH、2,4,6-Et3-TSCH、2,4,6-iPr3-TSCH、2,4,6-nPr3-TSCH、2,4,6-nBu3-TSCH、2,4,6-iBu3-TSCH、2,4,6-tBu3-TSCH、2,4,6-sBu3-TSCHから選択される(式中、R1は、H、C1~C6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3
~C
6
の環状アルキル基、C
2
~C6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3
~C
6
の環状アルケニル基、又は、これらの組み合わせである);
・カルボシランが1,3,5,-トリシラペンタン(CAS番号:5637-99-0)である;
・カルボシランが1,3,5-トリシラシクロヘキサン(CAS番号:291-27-0)である;
・アミンが、アンモニア、アミジン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、モノアルキルアミン、ジアミン(エチレンジアミンなど)、又はポリアミンから選択される;
・アミンが少なくとも2つのN-H結合を含む;
・少なくとも2つのN-H結合が、同じ窒素原子上又は別々の窒素原子上にある;
・ポリカルボシラザンポリマー又はオリゴマーが、
a)2種のうちの一方が2つより多い-SiH2R基(式中、Rは、H、C1~C6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3
~C
6
の環状アルキル基、C
2
~C6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3
~C
6
の環状アルケニル基、又は、これらの組み合わせである)を含む2種のカルボシランと、2種のアミン;
b)2種のカルボシランと、2種のうちの一方が2つより多いN-H結合を含む2種のアミン;及び
c)2種より多いカルボシランと2種より多いアミン;
からなる群から選択されるものの触媒的脱水素カップリング(DHC)反応によって製造される;
・ポリカルボシラザンポリマー又はオリゴマーが、2種のカルボシランと2種のアミンとの触媒的脱水素カップリング(DHC)反応によって製造され、2種のカルボシランのうちの少なくとも1種が2つより多い-SiH2R基を含み、Rは、H、C1~C6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3
~C
6
の環状アルキル基、C
2
~C6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3
~C
6
の環状アルケニル基、又は、これらの組み合わせである;
・ポリカルボシラザンポリマー又はオリゴマーが、2種のカルボシランと2種のアミンとの触媒的脱水素カップリング(DHC)反応によって製造され、2種のアミンのうちの少なくとも1種が2つより多いN-H結合を含み、Rは、H、C1~C6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3
~C
6
の環状アルキル基、C
2
~C6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3
~C
6
の環状アルケニル基、又は、これらの組み合わせである;
・ポリカルボシラザンポリマー又はオリゴマーが、2種より多いカルボシランと2種より多いアミンとの触媒的脱水素カップリング(DHC)反応によって製造され、Rは、H、C1~C6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3
~C
6
の環状アルキル基、C
2
~C6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3
~C
6
の環状アルケニル基、又は、これらの組み合わせである;
・いずれか1種のカルボシランのパーセント割合が、モルパーセントで0.5%~99.5%である;
・いずれか1種のアミンのパーセント割合がモルパーセントで0.5%~99.5%である;
・触媒的DHC反応で使用される触媒がNH4Clである;
・ポリカルボシラザンポリマー又はオリゴマー含有配合物がポリシランを含む;
・ポリシランが2つより多い-SiH2R官能基を含み、Rは、H、C1~C6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3
~C
6
の環状アルキル基、C
2
~C6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3
~C
6
の環状アルケニル基、又は、これらの組み合わせである;及び
・ポリシランが、ネオペンタシラン(Si(SiH3)4)、n-テトラシラン(SiH3(SiH2)2SiH3)、2-シリル-テトラシラン((SiH3)2(SiH2)2SiH3)、トリシリルアミン(N(SiH3)3)、又はアルキルアミノ置換トリシリルアミン又はトリシリルアミンのオリゴマーなどのトリシリルアミン(trisilyamine)誘導体から選択される。
【0017】
また、シラザンブリッジ又は架橋カルボシランモノマーからなるポリカルボシランポリマー又はオリゴマー含有配合物を含有する溶液を形成する工程であって、カルボシランが末端基(-SiH
2
R)としてであるかカルボシラン環状化合物に埋め込まれたものである少なくとも2つの-SiH2-部位を含み、Rが、H、C1~C6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3
~C
6
の環状アルキル基、C
2
~C6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3
~C
6
の環状アルケニル基、又は、これらの組み合わせである工程;及びスピンオンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、又はスリットコーティング技術により溶液を基板と接触させて、ケイ素炭素含有膜を形成する工程;
を含む、基板上にケイ素炭素含有膜を形成する方法も開示される。
【0018】
開示される方法は、以下の態様のうちの1つ以上を含み得る:
・方法が、
N2雰囲気下、ケイ素炭素含有膜を約50℃~400℃の範囲の温度でプリベークする工程;及び
O2、O3、H2O、H2O2、N2O、又はNO、空気、圧縮空気、又はこれらの組み合わせの雰囲気中で、200~1000℃の温度範囲で熱誘起ラジカル反応又はUV-Vis光誘起ラジカル反応によってケイ素炭素含有膜をハードベークして、ケイ素炭素含有膜を、低いk値を有するSiOC又はSiOCN含有膜に変換する工程;
を更に含む;
・カルボシランが下記式を有する:
R1
aSi[-(CH2)b-SiH2R2]c (I)
(式中、R1、R2は、独立して、H、C1~C6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3
~C
6
の環状アルキル基、C
2
~C6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3
~C
6
の環状アルケニル基、又は、これらの組み合わせであり;a=0~2であり;b=1~4であり;c=4-aである);
・カルボシランが下記式を有する:
R3
eC[-(CH2)f-SiH2R4]g (II)
(式中、R3、R4は、独立して、H、C1~C6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3
~C
6
の環状アルキル基、C
2
~C6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3
~C
6
の環状アルケニル基、又は、これらの組み合わせであり;e=0~2であり;f=0~3であり;g=4-eである);
・カルボシランが下記式を有する:
[足場]-[-(CH2)m-SiH2R5]n (III)
(式中、R5は、H、C1~C6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3
~C
6
の環状アルキル基、C
2
~C6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3
~C
6
の環状アルケニル基、又は、これらの組み合わせであり;m=0~4であり;n=2~4であり;足場は炭化水素足場である);
・カルボシランが下記式を有する:
R6
x-1,3,5-トリシラシクロヘキサン (IV)
(式中、R6はC1~C6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3
~C
6
の環状アルキル基、C
2
~C6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3
~C
6
の環状アルケニル基であり;x=0~3である);
・カルボシランがSi[-(CH2)-SiH3]4、Si[-(CH2)2-SiH3]4、Si[-(CH2)3-SiH3]4、及びSi[-(CH2)4-SiH3]4
、R1Si[-(CH2)-SiH3]3、R1Si[-(CH2)2-SiH3]3、R1Si[-(CH2)3-SiH3]3、及びR1Si[-(CH2)4-SiH3]3、H3Si-CH2-SiH2-CH2-SiH3(ビス(シリルメチル)シラン)、H3Si-(CH2)2-SiH2-(CH2)2-SiH3(ビス(2-シリルエチル)シラン)、H3Si-(CH2)3-SiH2-(CH2)3-SiH3(ビス(3-シリルプロピル)シラン)、及びH3Si-(CH2)4-SiH2-(CH2)4-SiH3(ビス(4-シリルブチル)シラン)、C[-SiH3]4(テトラシリルメタン)、C[-(CH2)-SiH3]4(2,2-ビス(シリルメチル)プロパン-1,3-ジイル)ビス(シラン))、C[-(CH2)2-SiH3]4(3,3-ビス(2-シリルエチル)ペンタン-1,5-ジイル)ビス(シラン))、及びC[-(CH2)3-SiH3]4(4,4-ビス(3-シリルプロピル)ヘプタン-1,7-ジイル)ビス(シラン))、R1C[-SiH3]3、R1C[-(CH2)-SiH3]3、R1C[-(CH2)2-SiH3]3、及びR1C[-(CH2)3-SiH3]3、H3Si-CH2-SiH3(ジシリルメタン)、H3Si-(CH2)5-SiH3(1,5-ジシリルペンタン)、及びH3Si-(CH2)7-SiH3(1,7-ジシリルヘプタン))、1,3-ジシリルシクロペンタン、1,2-ジシリルシクロペンタン、1,4-ジシリルシクロヘキサン、1,3-ジシリルシクロヘキサン、1,2-ジシリルシクロヘキサン、1,3,5-トリシリルシクロヘキサン、及び1,3,5-トリシリルベンゼン、2-Me-TSCH、2-Et-TSCH、2-iPr-TSCH、2-nPr-TSCH、2-nBu-TSCH、2-tBu-TSCH、2-sBu-TSCH、2-iBu-TSCH、2,4-Me2-TSCH、2,4-Et2-TSCH、2,4-iPr2-TSCH、2,4-nPr2-TSCH、2,4-nBu2-TSCH、2,4-iBu2-TSCH、2,4-tBu2-TSCH、2,4-sBu2-TSCH、2,4,6-Me3-TSCH、2,4,6-Et3-TSCH、2,4,6-iPr3-TSCH、2,4,6-nPr3-TSCH、2,4,6-nBu3-TSCH、2,4,6-iBu3-TSCH、2,4,6-tBu3-TSCH、2,4,6-sBu3-TSCHから選択される(式中、R1は、H、C1~C6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3
~C
6
の環状アルキル基、C
2
~C6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3
~C
6
の環状アルケニル基、又は、これらの組み合わせである);
・ポリカルボシラザンポリマー又はオリゴマー含有配合物が、ネオペンタシラン(又は2,2-ジシリルトリシラン)(Si(SiH3)4)、n-テトラシラン(SiH3(SiH2)2SiH3)、2-シリル-テトラシラン((SiH
3
)
2
SiHSiH
2
SiH
3
)、トリシリルアミン(N(SiH3)3)、又はトリシリルアミン(trisilyamine)誘導体(アルキルアミノ置換トリシリルアミン又はトリシリルアミンのオリゴマーなど)から選択されるポリシランを含む;
・カルボシランが1,3,5,-トリシラペンタン(CAS番号:5637-99-0)又は1,3,5-トリシラシクロヘキサン(CAS番号:291-27-0)である;
・カルボシランが1,3,5,-トリシラペンタン(CAS番号:5637-99-0)である;
・カルボシランが1,3,5-トリシラシクロヘキサン(CAS番号:291-27-0)である;
・ポリカルボシラザンポリマー又はオリゴマーが、
a)2種のうちの一方が2つより多い-SiH2R基(式中、Rは、H、C1~C6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3
~C
6
の環状アルキル基、C
2
~C6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3
~C
6
の環状アルケニル基、又は、これらの組み合わせである)を含む2種のカルボシランと、2種のアミン;
b)2種のカルボシランと、2種のうちの一方が2つより多いN-H結合を含む2種のアミン;及び
c)2種より多いカルボシランと2種より多いアミン;
の触媒的脱水素カップリング(DHC)反応によって製造される;及び
・触媒的DHC反応で使用される触媒がNH4Clである。
【0019】
表記法及び命名法
以下の詳細な説明及び特許請求の範囲は、当該技術分野で一般によく知られている複数の略語、記号、及び用語を利用しており、以下を含む:
【0020】
本明細書で使用される不定冠詞「a」又は「an」は、1つ又は複数を意味する。
【0021】
本明細書で使用される、文章中又は特許請求の範囲中の「約」又は「ほぼ」又は「およそ」は、記載された値の±10%を意味する。
【0022】
本明細書で使用される、文章中又は特許請求の範囲中の「室温」は、約20℃~約25℃を意味する。
【0023】
「周囲温度」という用語は、約20℃~約25℃の環境温度を指す。
【0024】
「基板」という用語は、その上でプロセスが行われる材料を指す。基板は、その上でプロセスが行われる材料を有するウェハーを指す場合がある。基板は、半導体、太陽電池、フラットパネル、又はLCD-TFTデバイスの製造において使用される任意の適切なウェハーであってよい。基板は、その前の製造工程からその上に既に堆積されている異なる材料の1つ以上の層も有し得る。例えば、ウェハーは、シリコン層(例えば結晶性、アモルファス、多孔質など)、ケイ素含有層(例えばSiO2、SiN、SiON、SiCOHなど)、金属含有層(例えば銅、コバルト、ルテニウム、タングステン、白金、パラジウム、ニッケル、ルテニウム、金など)、又はこれらの組み合わせを含み得る。更に、基板は、平坦であってもパターニングされていてもよい。基板は、パターニングされた有機フォトレジスト膜であってもよい。基板は、MEMS、3D NAND、MIM、DRAM、又はFeRamデバイス用途で誘電体材料として使用される酸化物の層(例えばZrO2ベースの材料、HfO2ベースの材料、TiO2ベースの材料、希土類酸化物ベースの材料、三元酸化物ベースの材料など)又は電極として使用される窒化物ベースの膜(例えばTaN、TiN、NbN)を含み得る。当業者は、本明細書で使用される「膜」又は「層」という用語が、表面上に配置されているか広がっている何らかの材料の厚さを指し、その表面はトレンチ又はラインであってよいことを認識するであろう。本明細書及び特許請求の範囲全体を通して、ウェハー及びその上の関連する層は、基板と呼ばれる。
【0025】
「ウェハー」又は「パターニングされたウェハー」という用語は、基板上に膜のスタックと、low-k膜の堆積の前の工程で形成された形態的特徴を有する少なくとも最上部の膜とを有するウェハーを指す。
【0026】
「アスペクト比」という用語は、トレンチの幅(又はアパーチャの直径)に対するトレンチ(又はアパーチャ)の高さの比を指す。
【0027】
なお、本明細書では、「膜」及び「層」という用語は、交換可能に使用され得る。膜は、層に対応するか、層に関連する場合があり、また層は膜を指す場合があることが理解される。更に、当業者は、本明細書で使用される「膜」又は「層」という用語が、表面上に配置されているか広がっている何らかの材料の厚さを指し、その表面がウェハー全体ほどに大きい大きさから、トレンチ又はラインほどに小さい大きさまでの範囲であってよいことを認識するであろう。
【0028】
元素周期表からの元素の標準的な略語が本明細書で使用される。元素はこれらの略語で呼ばれる場合があることを理解すべきである(例えば、Siはケイ素を指し、Nは窒素を指し、Oは酸素を指し、Cは炭素を指し、Hは水素を指し、Fはフッ素を指す、など)。
【0029】
開示されている特定の分子を識別するために、Chemical Abstract Serviceによって割り当てられた固有のCAS登録番号(すなわち「CAS」)が示される。
【0030】
本明細書において、用語「炭化水素」は、炭素原子と水素原子のみを含む飽和又は不飽和の官能基を指す。本明細書において、用語「アルキル基」は、炭素原子と水素原子のみを含む飽和の官能基を指す。アルキル基は炭化水素の1種である。更に、用語「アルキル基」は、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基を指す。直鎖アルキル基の例としては、限定するものではないが、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。分岐アルキル基の例としては、限定するものではないが、t-ブチルが挙げられる。環状アルキル基の例としては、限定するものではないが、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0031】
本明細書において、用語「カルボシラン」は、Si、C、及びH原子と少なくとも2つの-SiH2R基とを含む直鎖、分岐、又は環状の分子を指し、一般式RxSiyHz(x、y、及びzは≧1である)と書くことができる。
【0032】
本明細書において、用語「ポリカルボシラザン」は、Si-NR-Si結合によって連結された少なくとも2つのカルボシランによって形成されるオリゴマー/ポリマーを指す。ポリカルボシラザンは、Si、C、H、及びN原子とSi-NR-Si結合とを含む、直鎖の、分岐の、又は架橋したポリマーである。
【0033】
本明細書で使用される「Me」という略号はメチル基を表し;「Et」という略号はエチル基を表し;「Pr」という略号は任意のプロピル基(すなわちn-プロピル又はイソプロピル)を表し;「iPr」という略号はイソプロピル基を表し;「Bu」という略号は任意のブチル基(n-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル)を表し;「tBu」という略号はtert-ブチル基を表し;「sBu」という略号はsec-ブチル基を表し;「iBu」という略号はiso-ブチル基を表し;「Ph」という略号はフェニル基を表し;「Am」という略号は任意のアミル基(iso-アミル、sec-アミル、tert-アミル)を表し;「Cy」という略号は環状炭化水素基(シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等)を表す。
【0034】
なお、Si、SiN、SiO、SiOC、SiON、SiCONなどのケイ素含有膜は、それらの適切な化学量論に言及せずに、本明細書及び特許請求の範囲全体に記載されていることに留意されたい。ケイ素含有膜は、B、P、As、Ga、及び/又はGeなどのドーパントも含み得る。膜が若干の残留水素を含むという事実も、膜組成の説明から省略されている。例えば、SiOC膜は残留Hを含み得る。
【0035】
範囲は、本明細書において、約1つの特定の値から、及び/又は約別の特定の値までとして表現され得る。そのような範囲が表現される場合、別の実施形態は、前記範囲内の全ての組み合わせと共に、ある特定の値及び/又は別の特定の値からのものであることが理解されるべきである。本明細書に記載されている全ての範囲は、「境界値を含む」という言葉が使用されているかどうかにかかわらず境界値を含む(すなわち、x=1~4又はXは1~4の範囲である、は、x=1、x=4、及びx=それらの間の任意の数、を含む)。
【0036】
本明細書における「一実施形態」又は「ある実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載されている特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれ得ることを意味する。本明細書の様々な場所における「一実施形態では」という語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すわけではなく、また別の又は代替の実施形態は、必ずしも他の実施形態と相互に排他的ではない。同じことが「実施」という用語にも当てはまる。
【0037】
本明細書で使用される「独立に」という用語は、R基を説明する文脈で使用される場合、対象となるR基が、同じ又は異なる下付き文字又は上付き文字を持っている別のR基から独立して選択されるということだけでなく、その同じR基の任意の追加の化学種からも独立して選択されるということを表すと理解すべきである。例えば、式MR1
x(NR2R3)(4-x)(式中、xは2又は3である)において、2つ又は3つのR1基は、互いに同じであっても、R2と同じであっても、R3と同じであってもよいが、必ずしも同じである必要はない。更に、別段の規定がない限り、R基の値は、異なる式で使用されている場合、互いに独立であることも理解すべきである。
【0038】
本出願で使用される「例示的」という用語は、本明細書では、実施例、実例、又は例示として機能することを意味するために使用される。本明細書で「例示的」と記載されている態様又は設計は、必ずしも他の態様又は設計よりも好ましい又は有利であるものとして解釈されるべきではない。むしろ、例示的な言葉の使用は、具体的な形式で概念を提示することが意図されている。
【0039】
更に、「又は」という用語は、排他的「又は」ではなく、包括的な「又は」を意味することが意図されている。すなわち、別段の明記がない限り、或いは文脈から明らかでない限り、「XはA又はBを使用する」は、自然な包括的順列のいずれかを意味することが意図されている。つまり、XがAを使用する場合、XはBを使用する場合、或いはXがAとBの両方を使用する場合;前述した場合のいずれかにおいて、「XはA又はBを使用する」が満たされる。更に、本出願及び添付の特許請求の範囲で使用される冠詞「a」及び「an」は、別段の指定がない限り、或いは文脈から単数形に関するものであることが明確でない限り、通常「1つ以上」を意味すると解釈されるべきである。
【0040】
本発明の前述した及び様々な他の態様、特徴、及び利点、並びに本発明自体は、以下の図面と関連して検討される場合に、本発明の以降の詳細な説明を参照してより完全に理解することができる。図面は、例示のみを目的として提示されており、本発明を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】SODプロセスの簡略化されたフローチャートである。
【
図2】TSCHベースのポリカルボシラザン溶液の熱重量分析(TGA)グラフである。
【
図3】N
2中で200℃でSOD膜をプリベークしたものと、プリベークしたSOD膜を空気中で約30分間350℃でハードベークしたものとのFTIRスペクトルの比較である。
【
図4】
図3の低周波数領域(1,500~650cm
-1)のFTIRスペクトルである。
【
図5】
図3の高周波領域(4,000~1,500cm
-1)のFTIRスペクトルである。
【
図6】プリベークされたSOD膜とハードベークされたSOD膜のFTIRスペクトルの比較である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
Si含有low-k誘電体膜の堆積のためのポリカルボシラザン含有配合物を含むケイ素炭素含有膜形成組成物、ポリカルボシラザンの合成方法、及びSiOC、SiOCN、又はSiCNデバイスを製造するためのケイ素炭素含有膜を堆積するためのケイ素炭素含有膜形成組成物の使用方法が開示される。特に、本開示の方法は、SiOC膜又はSiOCN膜などのlow-k誘電体膜を形成するための、ポリカルボシラザン含有配合物を含むケイ素炭素含有膜形成組成物のスピンオン堆積(SOD)と、それに続くプリベーク(又は硬化)及びハードベークプロセスである。
【0043】
本開示のケイ素炭素含有膜形成組成物は、スピンオンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、又はスリットコーティング法に適した特性、例えば低い融点(好ましくは室温で液体形態である)、コーティングされる基板上での優れた濡れ挙動、並びに保管寿命及び劣化のない保管のための優れた熱安定性を有する。これらの堆積技術に適した本開示のポリカルボシラザンのオリゴマー及び/又はポリマーは、典型的には、約300Da~約10,0000,000Da、好ましくは約500Da~約100,000Da、より好ましくは約1,000Da~約50,000Daの範囲の分子量を有する。
【0044】
本開示のポリカルボシラザンのオリゴマー及び/又はポリマーは、カルボシランモノマーとアミンモノマーとの触媒的脱水素カップリング(DHC)反応によって製造することができる。本開示のポリカルボシラザンの合成に使用される好ましいカルボシランは、DHCプロセスにおけるカルボシランとアミンとの反応を促進してポリカルボシラザンを形成するために、少なくとも2つの-SiH2R基を含む(式中、Rは、H、C1~C6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3
~C
6
の環状アルキル基、C
2
~C6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3
~C
6
の環状アルケニル基、又は、これらの組み合わせであり;-SiH2RはCとSiとを含む環状構造の一部であってもよい)。カルボシランとのDHC反応に使用されるアミンは、それらが少なくとも2つのN-H結合を含む限り、アンモニア、アミジン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、モノアルキルアミン、ジアミン、又はポリアミンなどのうちの1つ以上から選択することができる。このようなN-H結合は、同じ窒素原子上、すなわち一級アミン-NH2であってもよく、或いは別のN原子上、例えばジアルキルジアミン(RNH-C2H4-NHR)であってもよい。しかしながら、アミン又はカルボシランが、分岐及び/又は架橋重合のために少なくとも3つのN-H結合又は少なくとも3つの-SiH2R基を含む場合、分岐又は架橋ポリカルボシラザンが形成され得る。アミン又はカルボシランのいずれかがそれぞれ少なくとも3つのN-H結合又は少なくとも3つの-SiH2R基を含む場合、架橋が延長されたポリカルボシラザンが得られる。架橋の程度は、混合カルボシランモノマーを使用することによって加減することができる。例えば、少なくとも3つの-SiH2R基を含むものと、2つしか-SiH2Rを含まない他のものとのカルボシラン混合物を使用することができる。或いは、混合アミンモノマーを使用することにより、架橋の程度を加減することができる。例えば、少なくとも3つのN-H結合を含むものと、2つしかN-H結合を含まない他のものとのアミン混合物を使用することができる。カルボシラン又はアミンのいずれか1つのパーセント割合は、望まれる架橋の程度に応じて、モルパーセントで0.5%~99.5%の範囲であってよい。好ましくは、アミン対カルボシランモノマーの比率は、DHC反応化学量論における-NH官能基の数が-SiH2R官能基の数よりも多くなるように選択される。
【0045】
本開示のポリカルボシラザンを合成するために使用されるカルボシランモノマーは、直鎖、分岐、又は環状の飽和又は不飽和構造であってよい-Si-Cn-Si-単位(n≧1)単位を含み得る。更に、本開示のポリカルボシラザンを合成するために使用されるカルボシランモノマーは、1,3,5-トリシラシクロヘキサン(TSCH)骨格を含み得る。カルボシランモノマーの環状構造は、最終的な膜に分子スケールの空隙を形成することから、low-k膜に好ましく、これにより、膜密度及び誘電率が低下する。1,3,5-トリシラシクロヘキサンは、この用途に特に興味深いことが見出されている。
【0046】
本開示のポリカルボシラザンを合成するために使用されるカルボシランモノマーは、下記式を有する:
R1
aSi[-(CH2)b-SiH2R2]c (I)
(式中、R1、R2は、独立して、H、C1~C6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3
~C
6
の環状アルキル基、C
2
~C6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3
~C
6
の環状アルケニル基、又は、これらの組み合わせであり;a=0~2であり;b=1~4であり;c=4-aである);又は
R3
eC[-(CH2)f-SiH2R4]g (II)
(式中、R3、R4は、独立して、H、C1~C6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3
~C
6
の環状アルキル基、C
2
~C6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3
~
C
6
の環状アルケニル基、又は、これらの組み合わせであり;e=0~2であり;f=0~3であり;g=4-eである);又は
[足場]-[-(CH2)m-SiH2R5]n (III)
(式中、R5は、H、C1~C6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3
~C
6
の環状アルキル基、C
2
~C6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3
~C
6
の環状アルケニル基、又は、これらの組み合わせであり;m=0~4であり;n=2~4であり;足場は炭化水素足場である);又は
R6
x-1,3,5-トリシラシクロヘキサン (IV)
(式中、R6は、C1~C6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3
~C
6
の環状アルキル基、C
2
~C6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3
~C
6
の環状アルケニル基であり;x=0~3である)。
【0047】
式IIIは、以下の構造によっても表すことができる:
【化2】
(式中、
【化3】
は炭化水素足場である)。例示的な炭化水素足場としては、限定するものではないが、C
3~C
10環状炭化水素足場があげられる。炭化水素足場は、シリル基、-NH基、-O-エーテル基などを含み得る。
【0048】
式Iで示されるカルボシランモノマーは、少なくとも2つの-SiH
2R
2又は-SiH
3基及び炭化水素鎖を含み得る。例えば、a=0であり、b=1~4であり、c=4であり、且つR
2=Hである場合、カルボシランモノマーには、下記一般構造:
【化4】
を有するSi[-(CH
2)-SiH
3]
4(テトラキス(シリルメチル)シラン)、Si[-(CH
2)
2-SiH
3]
4(テトラキス(2-シリルエチル)シラン)、Si[-(CH
2)
3-SiH
3]
4(テトラキス(3-シリルプロピル)シラン)、及びSi[-(CH
2)
4-SiH
3]
4(テトラキス(4-シリルブチル)シラン)が含まれ;a=1であり、b=1~4であり、c=3であり、R
1が、H、C
1~C
6の直鎖
、若しくは
分岐アルキル基、
C
3
~C
6
の環状アルキル基、C
2
~C
6の直鎖、
若しくは分
岐アルケニル基、又は
C
3
~C
6
の環状アルケニル基であり、且つR
2=Hである場合、カルボシランモノマーには、下記一般構造:
【化5】
を有するR
1Si[-(CH
2)-SiH
3]
3、R
1Si[-(CH
2)
2-SiH
3]
3、R
1Si[-(CH
2)
3-SiH
3]
3、及びR
1Si[-(CH
2)
4-SiH
3]
3)が含まれ;a=2であり、b=1~4であり、c=2であり、R
1=Hであり、且つR
2=Hである場合、カルボシランモノマーには、H
3Si-CH
2-SiH
2-CH
2-SiH
3(1,3,5-トリシラペンタン(TSP)又はビス(シリルメチル)シラン)(CAS No.5637-99-0)、H
3Si-(CH
2)
2-SiH
2-
(CH
2)
2-SiH
3(ビス(2-シリルエチル)シラン)、H
3Si-(CH
2)
3-SiH
2-(CH
2)
3-SiH
3(ビス(3-シリルプロピル)シラン)、及びH
3Si-(CH
2)
4-SiH
2-(CH
2)
4-SiH
3(ビス(4-シリルブチル)シラン)が含まれる。以下に構造を示す。
【化6】
【0049】
式IIで示されるカルボシランモノマーは、少なくとも2つの-SiH
3基と炭化水素鎖とを含み得る。例えば、a=0であり、b=0~3であり、c=4であり、且つR
2=Hである場合、カルボシランモノマーには、下記一般構造:
【化7】
を有するC[-SiH
3]
4(テトラシリルメタン)、C[-(CH
2)-SiH
3]
4((2,2-ビス(シリルメチル)プロパン-1,3-ジイル)ビス(シラン))、C[-(CH
2)
2-SiH
3]
4((3,3-ビス(2-シリルエチル)ペンタン-1,5-ジイル)ビス(シラン))、及びC[-(CH
2)
3-SiH
3]
4((4,4-ビス(3-シリルプロピル)ヘプタン-1,7-ジイル)ビス(シラン))が含まれ;a=1であり、b=0~3であり、c=3であり、R
1が、H、C
1~C
6の直鎖
、若しくは
分岐アルキル基、
C
3
~C
6
の環状アルキル基、C
2
~C
6の直鎖、
若しくは分
岐アルケニル基、又は
C
3
~C
6
の環状アルケニル基の場合、カルボシランモノマーには、下記一般構造:
【化8】
を有するR
1C[-SiH
3]
3、R
1C[-(CH
2)-SiH
3]
3、R
1C[-(CH
2)
2-SiH
3]
3、及びR
1C[-(CH
2)
3-SiH
3]
3が含まれ;a=2であり、b=0~3であり、c=2であり、R
1=Hであり、且つR
2=Hである場合、カルボシランモノマーには、H
3Si-CH
2-SiH
3(ビシリルメタン)、H
3Si-(CH
2)
3-SiH
3(1,3-ジシリルプロパン)、H
3Si-(CH
2)
5-SiH
3(1,5-ジシリルペンタン)、及びH
3Si-(CH
2)
7-SiH
3(1,7-ジシリルヘプタン)が含まれる。
【0050】
式IIIにおいて、複数のカルボシラン基が、環などの炭化水素足場に連結されていてもよく、またポリカルボシラザン形成のためのN-H結合を形成していてもよい。式IIIで示されるカルボシランモノマーは、2つの-SiH
2R基又はカルボシリル基で連結されている炭化水素足場を含み得る。例えば、式IIIでc=2の場合、カルボシランモノマーとしては、以下のものが挙げられる:
【化9】
(式中、
【化10】
は、シリル基、-NH基、-O-エーテル基などを含み得るC
3~C
10環状炭化水素足場などの炭化水素足場である)。R
5=Hの場合には、カルボシランモノマーとしては以下のものが挙げられる:
【化11】
(式中、
【化12】
は、シリル基、-NH基、-O-エーテル基などを含み得るC
3~C
10環状炭化水素足場などの炭化水素足場である)。
【0051】
例示的なカルボシランとしては、以下のものが挙げられる:
【化13】
【0052】
式IIIで示されるカルボシランモノマーは、少なくとも2つの-SiH
2R基、炭化水素鎖、及び炭化水素足場を含み得る。例えば、c=3の場合には、カルボシランモノマーとしては以下のものが挙げられる:
【化14】
(式中、
【化15】
は、シリル基、-NH基、-O-エーテル基などを含み得るC
3~C
10環状炭化水素足場などの炭化水素足場である)。
【0053】
式IIIのカルボシランモノマーは、3つの-SiH
3基、又はカルボシリル基と連結された炭化水素足場を含み得る。例えば、c=3であり、R
5=Hである場合には、カルボシランモノマーとしては以下のものが挙げられる:
【化16】
(式中、
【化17】
は、シリル基、-NH基、-O-エーテル基などを含み得るC
3~C
10環状炭化水素足場などの炭化水素足場である)。例示的なカルボシランとしては、1,3,5-トリシリルシクロヘキサン及び1,3,5-トリシリルベンゼン:
【化18】
が挙げられる。
【0054】
式IIIで示されるカルボシランモノマーは、少なくとも4つの-SiH
2R
5基及び炭化水素鎖及び炭化水素足場を含み得る。すなわち、カルボシランモノマーは、4つの-SiH
2R
5基又はカルボシリル基と連結された炭化水素足場を含み得る。例えば、c=4の場合には、カルボシランモノマーとしては以下のものが挙げられる:
【化19】
(式中、
【化20】
は、シリル基、-NH基、-O-エーテル基などを含み得るC
3~C
10環状炭化水素足場などの炭化水素足場である)。
【0055】
式IVで示されるカルボシランモノマーは、1つの1,3,5-トリシラシクロヘキサン(TSCH)基を含んでいてもよく、これは、カルボシラン分子及び炭化水素鎖において分子サイズの空隙を形成する。x=0でありR
6がHである場合には、カルボシランはTSCH(CAS No.:291-27-0):
【化21】
である。
x=1であり、R
6がC
2の位置にある場合には、カルボシランは2-R
6-1,3,5-トリシラシクロヘキサン(2-R
6-TSCH)である。カルボシランの例としては、2-Me-TSCH、2-Et-TSCH、2-iPr-TSCH、2-nPr-TSCH、2-nBu-TSCH、2-tBu-TSCH、2-sBu-TSCH、2-iBu-TSCHなどが挙げられる。x=2であり、2つのR
6がC
2とC
4の位置にある場合には、カルボシランは、2,4-R
6
2-1,3,5-トリシラシクロヘキサン(2,4-R
6
2-TSCH)である。カルボシランの例としては、2,4-Me
2-TSCH、2,4-Et
2-TSCH、2,4-iPR
2-TSCH、2,4-nPR
2-TSCH、2,4-nBu
2-TSCH、2,4-iBu
2-TSCH、2,4-tBu
2-TSCH、2,4-sBu
2-TSCHが挙げられる。x=3であり、3つのR
6がC
2、C
4、及びC
6の位置にある場合には、カルボシランは、2,4,6-R
6
3-1,3,5-トリシラシクロヘキサン(2,4,6-R
6
3-TSCH)である。カルボシランの例としては、2,4,6-Me
3-TSCH、2,4,6-Et
3-TSCH、2,4,6-iPr
3-TSCH、2,4,6-nPr
3-TSCH、2,4,6-nBu
3-TSCH、2,4,6-iBu
3-TSCH、2,4,6-tBu
3-TSCH、及び2,4,6-sBu
3-TSCHが挙げられる。
【0056】
本開示のポリカルボシラザンは、式I、II、III、及びIVで示されるカルボシランと液体アンモニアとの加圧下での触媒的DHC反応によって合成することができる。式I、II、III、及びIVで示されるカルボシランは、一般式でRxSiyHzと書くことができ、x、y、及びzは1以上である。その場合の反応スキームは以下の通りである:
RxSiyHz+NH3=RxSiyH(z-1)NH2+H2 (1)
2RxSiyH(z-1)NH2=[RxSiyH(z-1)]NH+NH3 (2)
(式中、x、y、zは1以上であり;Rは、H、C1~C6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3
~C
6
の環状アルキル基、C
2
~C6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3
~C
6
の環状アルケニル基、又はこれらの組み合わせである)。一実施形態では、Rは、同様の反応に関与する活性Hを有するSi原子を含む。或いは、Rは以下の単位:-SiHa-C-SiHb-及び/又は-SiHa-C-C-SiHb-及び/又は-SiHa-C-C-C-SiHb-及び/又は-SiHa-C-C-C-C-SiHb-を含むことができ、a及びbは0~3の整数である(a及び/又はb=3の場合、対応するSi原子は末端である)。或いは、RはTSCH基を含み得る。反応(1)の後に必ずしも反応(2)が続くわけではない。この場合、いくつかの末端-NH2基を有するオリゴマーが得られる。反応(1)は通常触媒を必要とする。つまり、反応(1)は、カルボシランとアミンとの触媒的脱水素カップリング(DHC)である。触媒的DHCは、反応副生成物が水素であり、容易に排出されるため、ポリカルボシラザン合成に好ましい合成経路である。触媒は不均一系であっても均一系であってもよい。不均一系触媒の例は、Pt及びPt族金属(担持又は非担持)である。均一系触媒の例としては、置換又は無置換のアンモニウム塩及びホスホニウム塩、金属アミド、他のルイス酸及びブレンステッド酸、並びに反応媒体に可溶性の塩基が挙げられる。例えば、以下の実施例では均一系のNH4Clが使用されている。このプロセスは、バッチ形式又はフロースルー形式で行うことができる。
【0057】
理論的には、プロセス全体は、両方の試薬が気相で、両方の試薬が液相で、又は一方の出発物質が液体でもう一方が気相で行うことができる。反応は、溶媒の存在下又は溶媒なしで進行し得る。適切な溶媒は、炭化水素(例えばヘキサン、ヘプタンなど)、芳香族化合物(例えばベンゼン、トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼンなど)、エーテル、アミン、及びこれらの混合物である。アンモニアが気相のみとされる場合には、反応は、選択されたカルボシランの安定限界までの温度で行うことができる。
【0058】
反応の温度範囲は、約20℃~約300℃、好ましくは約100℃~約200℃であってよい。アンモニアが溶媒又は共溶媒として機能する場合には、NH3が液体として存在する温度及び圧力条件で反応を行う必要がある。好ましい温度範囲は、加圧下で約20℃~約100℃である。好ましい圧力範囲は、約100~1500psigである。本開示の合成方法は、大量の生成物を製造するためにスケールアップすることができる。例えば、約1kg~約100kgにスケールアップされる。
【0059】
本開示のポリカルボシラザンのポリマー鎖を製造するために、本明細書で使用されるアミンは、それぞれ、カルボシランのSi-H結合と反応してポリカルボシラザンのポリマー鎖を形成する2つ以上のN-H結合を含む必要がある。2つのN-H結合はポリマー形成の最低要件であり、追加のN-H結合は、シラザンブリッジ若しくは架橋及び/又は分岐ポリマーを形成するために必要である。少なくとも2つのN-H結合は、1つのアミン中で同じ窒素原子又は異なる窒素原子に結合することができる。具体的には、本明細書で使用されるアミンは、アンモニア、アミジン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、又はC1~C6モノアルキルアミン、ジアミン(エチレンジアミンなど)、又はカルボシランとのポリマー形成のための少なくとも2つのN-H結合を含むポリアミンから選択される。
【0060】
上述したように、本開示のポリカルボシラザンのシラザンブリッジ又は架橋を増強するために、カルボシランモノマーは、アミンのN-H結合と反応して、得られるSi含有膜のエッチング特性などの特定の物理的特性を向上させる分岐及び/又は架橋ポリカルボシランポリマーを形成するための、少なくとも2つの-SiH2R基(Rは、H、C1~C6の直鎖、若しくは分岐アルキル基、C
3
~C
6
の環状アルキル基、C
2
~C6の直鎖、若しくは分岐アルケニル基、又はC
3
~C
6
の環状アルケニル基、又はこれらの組み合わせである)を有する必要がある。例えば、式Iで示すカルボシランは2つより多い-SiH2R2基を有し、ポリカルボシラザンを形成するためのアミンとの触媒的DHC反応に関与することができる。特に、式Iのカルボシランモノマーは、Si原子に結合した最大4個のカルボシリル基を含み得る。したがって、カルボシリル基の最小数は2であり、これにより、架橋及び分岐したポリカルボシラザン又はオリゴマー状のポリカルボシラザンに対して3つの-SiH2R2基が生成される。式Iでは、カルボシランモノマーは、炭素鎖の長さに基づいて調整可能な炭素原子並びに結合したアルキル基R2を含む。R1とR2の両方が、架橋のためのオレフィン基などの追加の官能基を有する。更に、Siに結合したカルボシリル基は必ずしも同じである必要はなく、炭素鎖の長さが異なっていてもよく、またR2の異なる官能基を有していてもよい。ただし、製造のためには、同じ官能基を持つ化学物質の方が合成が容易である。アルケニル基は、硬化及びハードベーク工程において、ポリカルボシラザン中の他のアルケニル基との架橋又は重合のためのラジカル反応用の官能基として使用することができる。R1の数は、0~2であってよい。R1の数がゼロの場合には、モノマーは四置換である。
【0061】
上述したように、触媒的DHCプロセスによるSi-N結合形成によりカルボシラン及びアミンからポリカルボシラザンを合成するためには、下記式IIに示すように、カルボシランは少なくとも2つのSi-H結合を有する必要があり、アミンは少なくとも2つのN-H結合を有する必要がある。
【化22】
【0062】
Si-N結合形成による分岐又は架橋(又はシラザンブリッジ)ポリカルボシラザンは、カルボシランモノマーのうちの1種又はアミンのうちの1種が、鎖の成長、架橋、及び分岐に関与するカルボシラン中の3つ以上の-SiH
2R
2基(又はSi-H結合)とアミン中の3つ以上のN-H結合のいずれかである3つの官能基を有さなければならないことを要件とする。架橋ポリカルボシラザンの例を下記式IIIに示す。カルボシランは、2つのSi-H結合を含むカルボシランと、3つのSi-H結合を含むカルボシランとの混合物であってよい。アミンを2つのN-H結合のままにしながらも、2つのSi-H基を有するカルボシランと3つ以上のSi-H基を有するカルボシランとの混合比を調整することによって、架橋の程度を加減することができる。同様に、アミンは、2つのN-H結合を含むアミンと3つのN-H結合を含むアミンとの混合物であってよい。2種のカルボシランの混合物中の1種のカルボシランモノマーのパーセント割合は、望まれる架橋に応じて、モルパーセント単位で0.5%~99.5%の範囲であってよい。同様に、カルボシランとの触媒的DHC反応のために、2つのN-H結合を含むアミンと3つのN-H結合を含むアミンとの混合物を適用することができる。2種のアミンの混合物中の1種のアミンのパーセント割合は、望まれる架橋に応じて、モルパーセント単位で0.5%~99.5%の範囲であってよい。本明細書で使用されるアミンとしては、アンモニア、アルキルアミン、アルケニルアミン、ヒドラジン、アミジンなどが挙げられる。ポリシラン及びポリハロシランは、N-H結合と反応して架橋重合及び分岐重合を促進するための架橋添加剤又は試薬として使用することができる。或いは、追加の架橋は、カルボシラン、又は不飽和炭素-炭素結合(すなわちC=C及び/又はC≡C)を有するアミン、及びSODに続くラジカル反応(例えば硬化及びハードベーク工程)によって生成される追加のSi-H結合を使用することによって形成することができる。ラジカル反応は、以下で説明するハードベークプロセスでUV-Vis光又は熱によって誘発することができる。
【化23】
【0063】
開示されるものには、カルボシランの混合物及び/又はアミンの混合物との架橋を有するポリカルボシラザンの製造方法も含まれる。本開示のポリカルボシラザンは、カルボシランの混合物及びアミンの混合物を用いて合成することができる。2種のカルボシランの混合物には、3つ又は4つの-SiH2R2基を持つ1種のカルボシランと、2つの-SiH2R2基を持つ別のカルボシランが含まれる。3つ又は4つの-SiH2R2を持つカルボシランが架橋部位になる。同様に、2種のアミンの混合物には、3つ以上のN-H結合を持つ1種のアミンと、2つのN-H結合を持つ別のアミンが含まれる。この場合も、混合物中のカルボシラン又はアミンのうちのいずれか1種のパーセント割合は、モルパーセント単位で0.5%~99.5%の範囲であってよい。
【0064】
カルボシランとアミンとの混合物は、ポリカルボシラザンを形成するための1種のカルボシランと1種のアミンを含み得る。或いは、カルボシランとアミンの混合物は、分岐及び/又は架橋ポリカルボシラザンを形成するための2種以上のカルボシラン又は2種以上のアミンを含み得る。
【0065】
一実施形態では、ポリカルボシラザンを形成するプロセスは、2種のカルボシランを用いて実施することができ、この中では、アミンとの架橋重合反応を強化するために、一方のカルボシランが他方よりも多くの-SiH2R官能基を含む。
【0066】
更に別の代替形態では、ポリカルボシラザンを形成するプロセスは、2種のアミンを用いて実施することができ、この中では、カルボシランとの架橋重合反応を強化するために、一方のアミンが他方よりも多くのN-H結合を含む。
【0067】
更に別の代替形態では、ポリカルボシラザンを形成するプロセスは、少なくとも1種のアミンと共に2種より多いカルボシランを用いて実施することができる。
【0068】
更に別の代替形態では、ポリカルボシラザンを製造するプロセスは、少なくとも1種のカルボシランと共に2種より多いアミンを用いて実施することができる。
【0069】
更に別の代替形態では、ポリカルボシラザンを製造するプロセスは、複数のカルボシランと複数のアミンとの組み合わせを用いて実施することができる。
【0070】
本開示のケイ素炭素含有膜形成組成物は、ポリシランなどの他のモノマーを含み得る。ポリシランは炭素鎖を含まず、ポリカルボシラザンと共に分岐及び/又は架橋ポリマーを形成するのに有利な少なくとも3つの-SiH
2R基を有する。例示的なポリシランとしては、ネオペンタシラン(Si(SiH
3)
4)、n-テトラシラン(SiH
3(SiH
2)
2SiH
3)、
2-シリル-テトラシラン((SiH
3
)
2
SiHSiH
2
SiH
3
)、トリシリルアミン(N(SiH
3)
3)、又はトリシリルアミン(trisilyamine)誘導体(アルキルアミノ置換トリシリルアミン又はトリシリルアミンのオリゴマーなど)が挙げられるが、これらに限定されない:
【化24】
【0071】
本開示のポリカルボシラザン含有配合物は、少なくとも一部にはSi-H結合について上で説明した利点のため、コーティング配合物、好ましくはスピンオンコーティング又はSOD用途における使用に適している。アミノ配位子は、改善された熱安定性、並びに得られる膜の熱安定性のための追加のN及び/又はC源を提供することもできる。
【0072】
本開示のケイ素炭素含有膜形成組成物は、典型的には、溶媒又は溶媒混合物中に1~20重量%、好ましくは2%~10%の不揮発性ポリカルボシラザンオリゴマー/ポリマーを含む。溶媒又は溶媒混合物は、炭化水素、芳香族溶媒(トルエン、キシレン、又はメシチレンなど)、エーテル(tert-ブチル(buly)エーテル、THF、又はグリムなど)、アミン(トリアルキルアミン又はジアルキルアミンなど)などのうちの少なくとも1つから選択される。本開示のケイ素炭素含有膜形成組成物は、得られる膜の全体的な特性を改善するための、表面への濡れ性を改善するための、最終的な膜組成物を調整するための、並びに硬化及びベーク工程中の膜の収縮を低減するための、他の成分を含み得る。そのため、本開示のケイ素炭素含有膜形成組成物は、触媒、界面活性剤、湿潤剤、及び他のポリマー、オリゴマー、又はモノマー(限定するものではないが、ポリシラザン、ポリカルボシラン、ポリシラン、金属又は半金属の有機金属モノマー又はオリゴマー)を含み得る。
【0073】
スピンオンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、又はスリットコーティング技術などのコーティング堆積方法において、本開示のケイ素炭素含有膜形成組成物を使用する方法も開示される。コーティング方法に適しているためには、本開示のポリカルボシラザンは、約300Da~約1,000,000Da、好ましくは約500Da~約100,000Da、より好ましくは約1,000Da~約50,000Daの範囲の分子量を有するべきである。
【0074】
本開示の方法は、ケイ素含有膜、特にケイ素炭素含有膜の堆積のためのケイ素炭素含有膜形成組成物の使用を提供する。本開示の方法は、半導体、太陽電池、LCD-TFT、光学コーティング、又はフラットパネル型デバイスの製造に有用な場合がある。この方法は、a)基板上に、ポリカルボシラザン含有配合物を含む液体形態の本開示のケイ素炭素含有膜形成組成物を塗布すること、b)硬化して溶媒を除去し、基板の少なくとも一部の上にポリカルボシラザン膜を形成すること、及びc)カルボシラン骨格構造の少なくとも一部が残る条件下で、酸化雰囲気でポリカルボシラザン膜をハードベークして、カルボシランモノマー間のSi-NR-Si(シラザン)ブリッジの少なくとも一部を、Si-O-Si(シロキサン)ブリッジに変換すること、を含む。
【0075】
スピンコーティングの前に、基板上のケイ素炭素含有膜形成組成物の濡れ性を改善することを目的として、基板に対して処理及び表面改質を行うことができる。この処理は、単なる溶剤暴露であってもよく、或いは化学的表面組成を変更することを目的とした化学的処理であってもよい。表面改質は、気相で、又は基板を表面改質剤を含む溶液に曝露することによって実施することができる。表面改質剤は、膜の基板への接着性を改善するために、硬化工程又はベーク工程中に化学反応する化学官能基を含み得る。そのような化学改質剤の例は、式XxSiR4-x又はSiR3-NH-SiR3を有し、これらの式中のXはハライド、アルキルアミノ、アセトアミドなどの表面ヒドロキシル基と反応する化学基であり、Rは、H、C1~C20のアルキル、アルケニル、又はアルキン基から独立して選択され、x=1、2、3である。例えば、表面改質剤はMe3Si-NMe2であってよい。表面改質基は、基板の特定の領域と優先的に反応し、特定の領域にポリカルボシラザンの優先的な接着を形成し、ポリカルボシラザンを少なくともある程度選択的に堆積させることができる。
【0076】
SODは、通常、スピンオンコーティング、ソフトベーク(又は硬化)、及びハードベークの3つの工程からなる。本開示のポリカルボシラザン含有配合物の液体形態又は溶液を、基板の中心に直接塗布することができる。その後、溶液は、基板上に膜を形成する回転プロセス中に基板全体に均一に分配される。膜厚は、本開示のポリカルボシラザン含有配合物の濃度、溶媒又は溶媒混合物の選択、及びスピンレシピが複数の工程を有する場合のスピン速度を調整することによって制御することができる。その後、堆積されたままの状態の膜は、膜の溶媒又は揮発性成分を蒸発させるために、ホットプレート又は他の加熱装置上で一定時間ベークすることができる。ソフトベーク温度は、溶媒の特性に応じて50~400℃の範囲で変えることができる。ソフトベークは、ポリカルボシラザン膜に対して不活性な雰囲気中で行うことができ、或いはポリカルボシラザン膜の予備反応を生じさせるためにO2及び/又はH2Oを含む雰囲気で行うことができる。最終的に、ハードベークプロセスは、O2、O3、H2O、H2O2、N2O、NO、空気、圧縮空気、及びこれらの組み合わせなどの酸化性雰囲気中で、200~1000℃の範囲の温度で基板をアニール処理することによって行うことができる。膜の品質は、昇温速度、温度、アニール処理継続時間、及び酸化剤の組み合わせなどを最適化することによって改善することができる。シラザンブリッジからシロキサンブリッジへの変換の程度は、アニール処理温度、アニール処理雰囲気の組成、及びアニール処理時間によって制御することができる。
【0077】
例示的なコーティング堆積方法は、スピンオンコーティング又はスピンオン堆積(SO
D)を含む。
図1は、SODのためのポリカルボシラザンの形成及び配合に続く例示的なSODプロセスのフローチャートを示している。当業者は、明細書の教示から逸脱することなしに、
図1に示されているものよりも少ない又は追加の工程が行われ得ることを認識するであろう。当業者は、プロセスが、好ましくは膜の望ましくない酸化を防止するために不活性雰囲気中で、及び/又は汚染を防止して膜の粒子汚染を防止するのを助けるためにクリーンルーム内で、行われることを更に認識するであろう。工程Aにおいて、上述したように、ポリカルボシラザンは、式I、II、III、及びIVに示される本開示のカルボシランとアミンとの触媒的DHC反応によって合成される。工程Bは、SODプロセスのために合成されたポリカルボシラザンの配合物である。その後、反応物、触媒、固体副生成物、望ましくない長鎖固体ポリマーなどを除去するために、合成されたポリカルボシラザンが分離及び濾過されてもよい。その後、ポリカルボシラザン含有配合物がSODのために調製され、これは、溶媒中に1~20%のポリカルボシラザンを含み得る。当業者は、SODプロセスの必要な継続時間、基板のスピン加速度、溶媒蒸発速度などが、目標とする膜の厚さと均一性を得るためにそれぞれの新しい配合物の最適化を必要とする調整可能なパラメータであることを認識するであろう(例えばUniversity of
Louisville,Micro/Nano Technology Center-Spin Coating Theory,October 2013を参照)。更に、目的のSi含有膜に応じて、ケイ素炭素含有膜形成組成物は、ハードベークプロセスによる重合及びSOD膜の結合性又は架橋を強化するための添加剤及び/又は界面活性剤などの追加の試薬を含み得る。例えば、ケイ素炭素含有膜形成組成物は、目的とする膜の架橋及び分岐重合を強化するために、2つより多い-SiH
2R官能基(式中、Rは、H、C
1~C
6の直鎖
、若しくは
分岐アルキル基、
C
3
~C
6
の環状アルキル基、C
2
~C
6の直鎖、
若しくは分
岐アルケニル基、又は
C
3
~C
6
の環状アルケニル基、又はこれらの組み合わせである)を含むポリシランを含み得る。
【0078】
次に、Si含有膜が堆積される平坦な又はパターニングされた基板が、工程1の堆積プロセスのために洗浄又は準備され得る。準備プロセスでは、高純度のガス及び溶媒が使用される。ガスは、典型的には半導体グレードであり、粒子汚染がない。半導体利用のためには、溶媒は粒子を含まない、典型的には100粒子/mL未満(0.5μmの粒子、より好ましくは10粒子/mL未満)である必要があり、また表面汚染をもたらす不揮発性残留物がない必要がある。50ppb未満(各元素について、好ましくは5ppb未満)の金属汚染を有する半導体グレードの溶媒が推奨される。
【0079】
工程1において、基板(平坦な又はパターニングされた基板)又はウェハーは、イソプロパノール(IPA)やアセトンなどの当該技術分野で典型的な化学洗浄剤を使用して洗浄される。洗浄工程は、主に基板表面の汚れを除去することである。当業者は、少なくとも基板材料及び必要とされる清浄度に基づいて、適切なウェハー準備プロセスを決定することができる。基板の洗浄準備の後、清浄な基板は工程2でスピンコーターに移される。ポリカルボシラザン含有配合物の液体形態又は溶液が基板上に分配される。スピン速度は、典型的には1000rpm~10000rpmに調整することができる。基板は、基板の表面全体に均一なSi含有膜が形成されるまで回転される。スピン時間は10秒から3分まで変化し得る。当業者は、このスピンオン堆積プロセスが静的モード(逐次)又は動的モード(同時)のいずれかで行われ得ることを認識するであろう。このスピンオン堆積は、制御されたガス環境で行うことが好ましい。例えば、制御されたO2レベル又はH2Oレベルである。当業者は、スピンコーティングプロセスの必要な継続時間、加速度、溶媒蒸発速度などが、目標とする膜の厚さと均一性を得るためにポリカルボシラザン含有配合物のそれぞれの新しい配合物の最適化を必要とする調整可能なパラメータであることを認識するであろう(例えばUniversity of Louisville,Micro/Nano Technology Center-Spin Coating Theory,October 2013を参照)。
【0080】
Si含有膜が基板上に形成された後、基板が工程3でプリベーク又はソフトベークされることで、ポリカルボシラザン含有配合物の残りの揮発性有機成分及び/又は副生成物がスピンコーティングから除去される。プリベークは、約50℃~約400℃の範囲の温度で、約1分~約30分の範囲の時間、サーマルチャンバー中又はホットプレート上で行うことができる。プリベーク後、基板上のSi含有膜は、ハードベークプロセス(工程4)によって、SiOC膜などの目的の誘電体膜へと硬化される。
【0081】
ハードベークプロセスは、約200℃~約1000℃の範囲の温度で約30分~約4時間の範囲の時間、酸化性雰囲気中で熱アニール処理することにより、ケイ素含有膜(すなわちポリカルボシラザン膜)中のオレフィン基の重合のための熱誘起ラジカル反応によって行うことができる。酸化剤は、O2、O3、H2O、H2O2、N2O、NO、空気、圧縮空気、及びこれらの組み合わせから選択することができる。或いは、Si含有膜は、UV硬化によって、すなわちケイ素含有膜(すなわちポリカルボシラザン膜)中のオレフィン基の重合のためのUV-Vis光誘起ラジカル反応によって硬化することができる。Si含有膜は、単色又は多色の光源を使用して、190~400nmの波長範囲でUV硬化される。別の代替形態では、熱的プロセスとUVプロセスの両方を、工程4で指定された同じ温度及び波長基準で行うことができる。当業者は、硬化方法及び条件の選択が望まれる目標とするケイ素含有膜によって決定されることを認識するであろう。
【0082】
工程5では、硬化した膜は、標準的な分析ツールを使用して特性評価される。例示的なツールとしては、限定するものではないが、エリプソメーター、X線光電子分光法、原子間力顕微鏡法、X線蛍光法、フーリエ変換赤外分光法、走査型電子顕微鏡法、二次イオン質量分析法(SIMS)、ラザフォード後方散乱分光法(RBS)、応力分析用のプロフィロメーター、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0083】
簡潔にいうと、本開示のケイ素炭素含有膜形成組成物の液体形態は、基板の中心に直接塗布してから回転によって基板全体に広げることができ、或いは噴霧によって基板全体に塗布することができる。基板の中心に直接塗布される場合、組成物を基板全体に均一に分布させるために、基板は遠心力を利用するために回転させることができる。或いは、基板をケイ素炭素含有膜形成組成物に浸漬することができる。得られる膜は、膜の溶媒又は揮発性成分を蒸発させるために室温で一定時間乾燥することができ、或いは強制乾燥若しくはベークによって、又は熱硬化や照射(イオン刺激、電子照射、UV及び/又は可視光照射など)含む任意の適切なプロセスの1つ又は組み合わせを使用することによって、乾燥させることができる。
【0084】
ポリカルボシラザン含有配合物を含む本開示のケイ素炭素含有膜形成組成物は、トーン反転などのリソグラフィー用途のために、又は反射防止膜のために、スピンオン誘電体膜配合物を形成するために使用することができる。例えば、本開示のケイ素炭素含有膜形成組成物は、溶媒又は溶媒混合物に含まれ、基板に塗布されることで、ポリカルボシラザン膜を形成することができる。必要に応じて、基板を回転させることで、基板全体にケイ素炭素含有膜形成組成物を均一に分布させることができる。当業者は、ケイ素炭素含有膜形成組成物の粘度が、基板の回転が必要であるか否かに寄与することを認識するであろう。得られるポリカルボシラザン膜は、アルゴン、ヘリウム、又は窒素などの不活性ガス中で、及び/又は減圧下で加熱することができる。或いは、得られるポリカルボシラザン膜は、膜の結合性及び窒化を強化するために、NH3又はヒドラジンのような反応性ガス中で加熱することができる。得られたポリカルボシラザン膜に電子線又は紫外線が照射されてもよい。本開示のポリカルボシラザンの反応性基(すなわち、直接のSi-N、N-H、又はSi-H結合)は、得られるポリマーの結合性を高めるのに有用であることが証明され得る。或いは、得られるポリカルボシラザン膜の結合性及び酸化を強化するために、得られるポリカルボシラザン膜をO3のような反応性ガス中で加熱して、得られるポリカルボシラザン膜中の窒素を酸素に変換することができる。その結果、得られるポリカルボシラザン膜中の窒素は、完全に又は少なくとも部分的に酸素で置き換えられ、ハードベーク後に目的のSiOC膜又はSiOCN膜を形成することができる。
【0085】
上で説明したプロセスから得られるケイ素含有膜は、SiOC、SiOCN、SiNCを含み得る。しかしながら、ポリカルボシラザンオリゴマー溶液を他のポリマー又はオリゴマー(共反応物)と混合することで、B、Ge、Ga、Al、Zr、Hf、Ti、Nb、V、Taなどの他の元素も含む膜を形成することができる。当業者は、適切なポリカルボシラザン含有配合物及び共反応物を選択することにより、望まれる膜組成が得られることを認識するであろう。
【0086】
本開示のケイ素炭素含有膜形成組成物に意図的に添加されない限り、ケイ素炭素含有膜形成組成物中の微量金属及び半金属の濃度は、それぞれ約0ppbw~約500ppbw、好ましくは約0ppbw~約100ppbw、より好ましくは約0ppbw~約10ppbwの範囲であってよい。当業者は、フッ化水素、硝酸、又は硫酸などの試薬を使用する抽出、及び原子吸光分光法、X線蛍光分光法、又は同様の分析技術による分析を使用して、微量金属及び半金属の濃度を決定できることを認識するであろう。
【実施例】
【0087】
以下の非限定的な実施例は、本発明の実施形態を詳しく説明するために提供される。しかしながら、これらの実施例は、包括的であることを意図しておらず、また本明細書に記載の本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0088】
実施例1:TSPを使用するオリゴマー状アミノシランの合成
TSPを使用するオリゴマー状アミノシランの合成は、触媒的DHC反応によって行った。触媒的DHC反応は、均一系触媒(NH4Cl)の存在下でTSPと液体NH3との間で行った。
【0089】
グローブボックス内で、磁気撹拌子と圧力計とを備えた60ccのステンレス鋼製反応器に、1.08g(20.1mmol)のNH4Cl及び1.81g(15.0mmol)のTSPを入れた。反応器を密封し、ベンチ上のマニホールドに接続した。これを液体窒素の中で凍結し、真空にし、6.9g(0.41mol)のNH3をこれに縮合させた。反応器をマグネチックスターラープレートの上に置き、圧力を監視しながら徐々に80℃まで加熱した。圧力の上昇が予想される量のH2の蓄積を示したときに、反応器を液体窒素で冷却し、約30mmolのH2をポンプで排出した。-20℃に冷却した反応器から過剰のNH3を除去した。反応器をグローブボックス内で開け、トルエンを添加し、内容物を濾別し、濾液を分析した。GC及びNMRによれば、濾液にはシラザンが含まれていた。重量分析試験(20℃で0.5Tまで揮発性物質を除去)からは、オリゴマー状アミノシランの含有量が約15重量%であることが示された。
【0090】
実施例2:TSCHを使用するポリカルボシラザンの合成
TSCHを使用するポリカルボシラザンの合成は、触媒的DHC反応(スケールアップ)によって行った。触媒的DHC反応は、均一系触媒(NH4Cl)の存在下でTSCHと液体NH3との間で行った。
【0091】
グローブボックス内で、600ccのステンレス鋼製PARR反応器に、8.2g(0.15mmol)のNH
4Cl及び18.0g(0.136mmol)のTSCHを入れた。反応器を密封し、ベンチ上のマニホールドに接続した。これを液体窒素の中で凍結し、真空にし、72.5g(4.3mol)のNH
3をこれに縮合させた。圧力を監視しながら、反応器を徐々に95℃まで加熱した。圧力の上昇が予想される量のH
2の蓄積を示したときに、反応器を液体窒素で冷却し、約0.38molのH
2をポンプで排出した。-20℃に冷却した反応器から過剰のNH
3を除去した。反応器をグローブボックス内で開け、トルエンを添加し、内容物を濾別し、濾液を分析した。NMR及びFTIRによれば、濾液にはポリカルボシラザンが含まれていた。GPC(ダイモーダルクロマトグラム)試験からは、重量平均分子量(Mw)840Da、数平均分子量(Mn)780Da、多分散指数(PDI)1.1(PDI=Mw/Mn)が示された。N
2流中での500℃及び850℃までのTGAは、それぞれ8.9%及び8.5%の残留物を示した(
図2を参照)。
【0092】
実施例3:TSCH含有ポリカルボシラザンを使用してSODによって形成されるSiOCのlow-k膜
Si基板は、イソプロパノール(IPA)とアセトンの溶液中で、室温で約10~20分間、超音波処理プロセスによって洗浄した。TSCH含有ポリカルボシラザンを使用して基板上に形成されたSOD膜は、上記
図1で説明したSODプロセスに従って得た。次いで、SOD膜を、200℃で5分間、N
2雰囲気でプリベークし、350℃で30分間、空気中でハードベークした。
図3は、N
2中で200℃でSOD膜をプリベークしたものと、プリベークしたSOD膜を約30分間空気中で350℃でハードベークしたものとのFTIRスペクトルの比較である。FTIRの結果は、ハードベーク後のSi-O-Siの成長(約1,150~950cm
-1)とSi-H伸縮の減少(約2,120cm
-1)を示している。
図4は、
図3の低周波領域(1,500~650cm
-1)のFTIRスペクトルである。示されているように、ハードベーク後、Si-O-Siが成長し、約1,175cm
-1のN-Hが消失して1,360cm
-1のSi-C-Siが維持される。これは、プリベークされたSOD膜でNがOに置き換えられ、ハードベークされたSOD膜にSiOCとSi-O-Siが含まれていることを示している。
図5は、
図3の高周波領域(4,000~1,500cm
-1)のFTIRスペクトルである。示されているように、ハードベーク後、Si-H結合は減少し、CH
2は残存しているもののわずかにシフトし、3,473cm
-1のN-H結合は消失し、3,377cm
-1のN-H結合は減少するものの依然として存在し、約3,700~3,400cm
-1のSi-OHが出現し、C=O結合は見られない。これは、プリベークされたSOD膜でNがOに置き換えられており、ハードベークされたSOD膜にSiOCが含まれていることを示している。3,377cm
-1のN-H結合が依然として存在することから、SiOCNを含む可能性のあるハードベークされた膜にNが残存する場合がある。ハードベークされたSOD膜の厚さ及び収縮は、各パラメータの3回の測定の平均と共に表1に列挙されている。プリベークされたSOD膜の厚さとハードベークされたSOD膜の厚さはエリプソメーターによって測定した。FTIRピークの帰属を表2に示す。
【0093】
【0094】
【0095】
実施例4:TSP含有ポリカルボシラザンを使用するSODプロセスによって形成されたSiOCのlow-k膜
TSP含有ポリカルボシラザンを使用することによって形成されたSOD膜は、
図1で上述したようなSODプロセスに従って得た。次いで、SOD膜をN
2雰囲気で200℃で5分間プリベークし、350℃で30分間空気中でハードベークした。
図6は、プリベークされたSOD膜とハードベークされたSOD膜のFTIRスペクトルの比較である。示されているように、約1,010cm
-1のSi-O-Siピークが成長し、1,360cm
-1のCH
2は望まれる通りに残り、3,377cm
-1のN-H結合は減少するものの依然として残存しており、これはプリベークされたSOD膜においてNの一部がOに置き換えられており、ハードベークされたSOD膜にはSiOCとSiOCNが含まれていることを示している。ハードベークされたSOD成形膜の厚さ及び収縮を表1に示す。
【0096】
本明細書で説明される主題は、ユーザ対話型コンポーネントを有するコンピューティングプリケーションのための1つ以上のコンピューティングアプリケーション機能/動作を処理するための例示的な実装との関係で説明され得るが、主題はこれらの特定の実施形態に限定されない。むしろ、本明細書に記載の技術は、任意の適切なタイプのユーザ対話型コンポーネント実行管理方法、システム、プラットフォーム、及び/又は装置に適用することができる。
【0097】
本発明の性質を説明するために本明細書に記載及び図示されてきた、詳細な事項、材料、工程、及び部品の配置における多くの追加の変更が、添付の特許請求の範囲に記載されている本発明の原理及び範囲内で当業者によって行われ得ることが理解されるであろう。したがって、本発明は、上記実施例及び/又は添付の図面中の具体的な実施形態に限定されることを意図するものではない。
【0098】
本発明の複数の実施形態が示され、説明されてきたが、本発明の趣旨又は教示から逸脱することなしに、その修正が当業者によってなされ得る。本明細書に記載の実施形態は例示にすぎず、限定するものではない。組成物及び方法の多くの変形及び修正が可能であり、それらは本発明の範囲内である。したがって、保護の範囲は、本明細書に記載の実施形態に限定されず、以下の特許請求の範囲によってのみ限定され、その範囲は、特許請求の範囲の主題の全ての均等物を含むものとする。