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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】電力貯蔵および塩水洗浄システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 12/06 20060101AFI20240411BHJP
   H01M 12/08 20060101ALI20240411BHJP
   H01M 4/06 20060101ALI20240411BHJP
   H01M 4/583 20100101ALI20240411BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20240411BHJP
   H01M 4/70 20060101ALI20240411BHJP
   H01M 4/80 20060101ALI20240411BHJP
   H01M 50/253 20210101ALI20240411BHJP
   C02F 1/00 20230101ALI20240411BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240411BHJP
   H02J 15/00 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
H01M12/06 J
H01M12/08 K
H01M4/06 Q
H01M4/583
H01M4/66 A
H01M4/70 A
H01M4/80 C
H01M50/253
C02F1/00 A
H02J7/00 301E
H02J7/00 303Z
H02J15/00 D
【請求項の数】 33
(21)【出願番号】P 2022542630
(86)(22)【出願日】2020-09-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-22
(86)【国際出願番号】 US2020051051
(87)【国際公開番号】W WO2021055461
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-05-13
(31)【優先権主張番号】62/901,482
(32)【優先日】2019-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522106879
【氏名又は名称】エフエムシー テクノロジーズ, インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】シルバ, ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】パッセリーニ, ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】ブレッサー, ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ペータース, イェンス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイル, マルセル
(72)【発明者】
【氏名】フェーダヘン, イェンス
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-517252(JP,A)
【文献】特表2018-524758(JP,A)
【文献】特表2017-510937(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0018356(KR,A)
【文献】Rechargeable Seawater Batteries-From Concept to Applications,Advanced materials,2018年12月28日,31,1804936,1-14
【文献】Wooseok Go et al.,Nanocrevasse-Rich Carbon Fibers for Stable Lithium and Sodium Metal Anodes,Nano Lett.,2018年11月28日,19,PP.1504-1511
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 12/00-12/08
H01M 4/00-4/84
H01M 50/20-50/298
C02F 1/00
H02J 15/00
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード、
多孔質アノード集電体、
カソード、
多孔質カソード集電体、および
上記アノードと上記カソードとを分離するアルカリ金属導電セパレータ
を有する電気化学セルであって、
上記アルカリ金属導電セパレータは、上記多孔質アノード集電体と上記多孔質カソード集電体との間に配置され、両者と接触し、
上記多孔質アノード集電体は少なくとも一部が上記アルカリ金属導電セパレータに囲まれており、
上記アルカリ金属導電セパレータは少なくとも一部が上記多孔質カソード集電体に囲まれており、
上記カソードは海水を含む、電気化学セル。
【請求項2】
上記電気化学セルは管状であり、上記多孔質アノード集電体および上記多孔質カソード集電体の少なくとも一方は円筒形状である、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項3】
上記多孔質アノード集電体および上記多孔質カソード集電体はいずれも円筒形状である、請求項2に記載の電気化学セル。
【請求項4】
上記多孔質アノード集電体は、上記多孔質カソード集電体の内部に配置されている、請求項3に記載の電気化学セル。
【請求項5】
上記アルカリ金属導電セパレータはナトリウム超イオン伝導体膜である、請求項1~4のいずれか1項に記載の電気化学セル。
【請求項6】
上記多孔質アノード集電体は発泡金属である、請求項1~5のいずれか1項に記載の電気化学セル。
【請求項7】
上記発泡金属は発泡アルミニウムである、請求項6に記載の電気化学セル。
【請求項8】
上記アノードはハードカーボンである、請求項1~7のいずれか1項に記載の電気化学セル。
【請求項9】
上記多孔質カソード集電体はカーボンフェルトである、請求項1~8のいずれか1項に記載の電気化学セル。
【請求項10】
上記電気化学セルが円筒形状であり、直径が5~25mmの範囲である、請求項1~9のいずれか1項に記載の電気化学セル。
【請求項11】
上記電気化学セルの長さが10~500mmの範囲である、請求項1~10のいずれか1項に記載の電気化学セル。
【請求項12】
上記電気化学セルは2~4Vの範囲の電圧を供給する、請求項1~11のいずれか1項に記載の電気化学セル。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の電気化学セルを複数有する電池モジュール。
【請求項14】
上記複数の電気化学セルは10~500個の範囲の数のセルを含む、請求項13に記載の電池モジュール。
【請求項15】
上記複数の電気化学セルは並列に接続されている、請求項13または14に記載の電池モジュール。
【請求項16】
上記電池モジュールは100~700Aの範囲の電流を供給する、請求項13~15のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項17】
上記複数の電気化学セルは金属構造物によって接続されている、請求項13~16のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項18】
上記複数の電気化学セルは千鳥状配置を有する、請求項13~17のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項19】
請求項13~18のいずれか1項に記載の電池モジュールを複数有する電池。
【請求項20】
上記複数の電池モジュールは50~250個の範囲の数の電池モジュールを含む、請求項19に記載の電池。
【請求項21】
上記電池モジュールは直列に接続されている、請求項19または20に記載の電池。
【請求項22】
上記電池の容量が0.5MWh以上である、請求項19~21のいずれか1項に記載の電池。
【請求項23】
上記電池は400~700Vの範囲の電圧を供給する、請求項19~22のいずれか1項に記載の電池。
【請求項24】
複数の電気化学セルを有する電池であって、
各電気化学セルは、
アノード、
多孔質アノード集電体、
海水カソード、
多孔質カソード集電体、および
ナトリウム超イオン伝導体膜であるアルカリ金属導電セパレータ
を有しており、
上記アルカリ金属導電セパレータは、上記多孔質アノード集電体と上記多孔質カソード集電体との間に配置され、両者と接触し、
上記多孔質アノード集電体は少なくとも一部が上記アルカリ金属導電セパレータに囲まれており、
上記アルカリ金属導電セパレータは少なくとも一部が上記多孔質カソード集電体に囲まれており、
上記電池の容量が3MWh以上である、電池。
【請求項25】
各電気化学セルにおいて、
上記アノードがハードカーボンアノードであり、
上記多孔質アノード集電体が発泡アルミニウムアノード集電体であり、
上記多孔質カソード集電体がカーボンフェルトカソード集電体である、
請求項24に記載の電池。
【請求項26】
前処理段、フィルタ、膜、および請求項25に記載の電池を有する淡水化プラント。
【請求項27】
上記電池は、上記プラントの上記前処理段に接続されている、請求項26に記載の淡水化プラント。
【請求項28】
上記電池は上記膜の後に接続されている、請求項26に記載の淡水化プラント。
【請求項29】
電力を発生させる方法であって、
電池モジュールを現場へ輸送する工程、
上記現場で上記電池モジュールに海水を加えて、請求項19~25のいずれか1項に記載の電池を提供する工程、および
上記電池で電力を発生させる工程
を有しており、
上記電池モジュールは、複数の電気化学セルを含み、
各電気化学セルは、
アノード、
多孔質アノード集電体、
多孔質カソード集電体、および
ナトリウム超イオン伝導体膜であるアルカリ金属導電セパレータを含む、
方法。
【請求項30】
海水を淡水化する方法であって、
海水を請求項19~25のいずれか1項に記載の電池に流す工程、および
上記海水で上記電池を充電する工程
を有しており、
上記電池は複数の電気化学セルを有し、それらがそれぞれナトリウム超イオン伝導体膜で形成されたセパレータを有している、方法。
【請求項31】
上記電池の容量が1MWh以上である、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
上記電池は、上記海水が淡水化膜を通過する前に上記海水を淡水化する、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
上記電池は、上記海水が淡水化膜を通過した後に上記海水を淡水化する、請求項30または31記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
輸送可能な電力貯蔵としては、リチウム系電池の技術が多数を占めている。電気自動車等といった輸送手段の電化や、携帯用家電製品のユビキタス化に伴って、このような電力に対する需要が高まっている。一般的に、Liイオン電池はマイクロワットからキロワットスケールの電力を供給することができ、メガワット級の電池は最近開発されたばかりである。大容量のリチウム系電池は、製造および廃棄にコストがかかる材料を使用し得る。
【0002】
グリッドおよび再生可能エネルギー用途では、メガワット時のエネルギーを貯蔵する能力が必要となる。現在、リチウム系電池と比較した場合の安定性および拡張性から、そのような用途のために大型フロー電池が開発されている。フロー電池では、セル内を循環する一対の化学成分を用いて、化学エネルギーから電気を発生させる。だが、安全性および環境への懸念からフロー電池の輸送は厳しく規制され、大きな制限およびコストが追加されるので、これらの電池は固定されているのが一般的であり、また、石油・ガスおよび再生可能エネルギーにおけるオフショア用途のためのサイクル寿命には限界があり得る。
【0003】
リチウムイオン電池および一般的なフロー電池はいずれも、環境に有害で廃棄が困難な電解質および材料を使用し得る。これらの要因が蓄積して、沖合、海中、および陸上の遠隔地で大規模な電力貯蔵を実施してエネルギー需要を満たすのが困難となっている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本概要は、詳細な説明でさらに後述される概念の抜粋を導入するためのものである。本概要は、特許請求の範囲に記載の主題の重要なまたは必須の特徴を特定することを意図したものではなく、特許請求の範囲に記載の主題の範囲を限定する際の補助として用いられることを意図したものでもない。
【0005】
一態様において、本明細書中に開示した実施形態は、アノード、多孔質アノード集電体、カソード、多孔質カソード集電体、および上記アノードと上記カソードとを分離し、上記アノード集電体の周囲に配置されたアルカリ金属導電セパレータを有する電気化学セルに関していてもよい。上記カソードは海水を含んでいてもよい。1つ以上の実施形態の電池モジュールは、上記電気化学セルを複数有していてもよい。1つ以上の実施形態の電池は、上記電池モジュールを複数有していてもよい。
【0006】
別の態様において、本明細書中に開示した実施形態は、容量が3MWh以上であり、複数の電気化学セルを有する電池であって、各電気化学セルは、海水カソードおよびNASICON(Sodium Super Ionic Conductor(ナトリウム超イオン伝導体))膜を有する電池に関していてもよい。別の態様において、本明細書中に開示した実施形態は、前処理段、フィルタ、膜、および海水電池を有する淡水化プラントに関する。
【0007】
別の態様において、本明細書中に開示した実施形態は、電力を発生させる方法であって、モジュールを現場へ輸送する工程、上記現場で上記モジュールに海水を加えて、電池を提供する工程、および上記電池で電力を発生させる工程を有する方法に関していてもよい。上記モジュールは、カソードを除いて上記電池の全構成要素を有していてもよい。
【0008】
最後の態様において、本明細書中に開示した実施形態は、海水を淡水化する方法であって、海水を電池に流す工程、および上記海水で上記電池を充電する工程を有しており、上記電池は複数の電気化学セルを有し、それらがそれぞれNASICON膜で形成されたセパレータを有している、方法に関していてもよい。
【0009】
他の態様および利点は、以下の記載および添付した特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の1つ以上の実施形態に係る電気化学セルの模式図を表す。
図2-1】本開示の1つ以上の実施形態に係る電池モジュールを表す。図2Aは、1つ以上の実施形態の電池モジュールの全体寸法を表す。また、モジュールの底部には空気および海水の給入口が、モジュールの上部にはエアベントおよび海水排出口が図示されている(図2Bで表示の通り)。図2Bは、1つ以上の実施形態の電池モジュールを表し、セルとモジュールの各種構成要素との配置が図示されている。図示されている通り、海水および空気の給入口はモジュールの底部に位置しており、海水および空気はセルを横方向に通過できる。
図2-2】図2Cは、1つ以上の実施形態のセルの千鳥状配置を表す。
図3】本開示の1つ以上の実施形態に係る電池を表す。
図4】本開示の1つ以上の実施形態に係る電池を表す。
図5】本開示の1つ以上の実施形態に係る、1つ以上の実施形態の電池の海洋構造物付近での使用を表す。
図6】本開示の1つ以上の実施形態に係る、1つ以上の実施形態の電池の洋上風力タービン付近での使用を表す。
図7】本開示の1つ以上の実施形態に係る、1つ以上の実施形態の電池の淡水化プロセスでの使用を表す。
図8】使用および/または輸送のための船舶への1つ以上の実施形態の電池の設置を表す。
図9】1つ以上の実施形態の電池のオフショアデータセンターでの使用を表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書中に開示した1つ以上の実施形態は、概して、海水由来のナトリウムイオンを利用して電力を発生させる電気化学セルに関する。本明細書中に開示した他の実施形態は、概して、並列に接続してもよい複数の電気化学セルを有する電池モジュールに関する。さらに別の実施形態は、海水由来のナトリウムイオンを利用して電力を発生させる電池モジュールを複数有する電池に関する。本開示に係る電池は、海水や他の環境に優しい材料(ナトリウムおよびアルミニウム等)を用いて、拡張可能なメガワット電力貯蔵容量を提供できる。1つ以上の実施形態において、本開示の電池は安全にかつ低コストで輸送できる。1つ以上の実施形態の電池は塩水洗浄システムであってもよい。いくつかの実施形態の電池は、大規模な洋上電力貯蔵で使用できるような拡張性を有することで、洋上再生可能エネルギー、石油・ガス産業、および海上輸送船のニーズを支援することができる。
【0012】
本明細書中に開示した1つ以上の実施形態は、概して、所定の場所で電力を発生させる方法に関する。別の実施形態は、海水を用いて電力を発生させることで海水を淡水化する方法に関する。1つ以上の実施形態のカソード用の電解質は海水なので、電池を空の状態で安全に輸送し、所定の場所で充電することができ、設置および配備のコストを削減できる。
【0013】
「約」、「実質的に」等の用語は、記載した特性、パラメータ、または値が厳密に達成される必要はなく、例えば、公差、測定誤差、測定精度の限界、および当業者に知られている他の要因を含む逸脱または変動が、その特性から意図された効果を妨げないような量で生じてもよいことを意味するよう意図したものである。
【0014】
同様に、「できる」および「してもよい」といった用語やそれらの変型は、非限定的なものであり、実施形態がある要素または特徴を有することができるまたは有していてもよいという記載によって、それらの要素または特徴を含んでいない本技術の他の実施形態が排除されないことを意図している。特に指定されない限り、範囲の開示は終点を含み、全範囲内の全ての異なる値およびさらに分割された範囲を含む。
【0015】
電池セル
【0016】
1つ以上の実施形態において、本開示に係る電気化学(または電池)セルはナトリウムイオンフローセルであってもよい。ナトリウムイオン電池は、一般的に、Liイオン等の電池技術よりも安価で豊富でかつ毒性が低い原材料を主体としている。具体的な実施形態において、ナトリウムイオンは海水から供給してもよい。他の実施形態では、任意のナトリウムイオン含有溶液を使用してナトリウムイオンを供給してもよい。通常、海水または同等のものをカソードとして利用できる。
【0017】
1つ以上の実施形態のセルにおいて、充電および放電中に生じる電気化学反応は、以下の式(I)および(II)で表すことができる。このような実施形態では、セルを充電すると塩が消費され、塩素が発生する(式(I))。セルを放電させると酸素および水が消費されると同時に、放電中に苛性ソーダが発生する(式(II))。
【0018】
充電:4NaCl→4Na+2Cl+4e (I)
【0019】
放電:4Na+2HO+O+4e→4NaOH (II)
【0020】
注目すべきことに、排水は、通常、流入する海水よりも塩分が少なくなる。さらに、充電プロセスでは塩素ガスが発生するが、これは当該技術分野で知られている従来の方法で回収できる。1つ以上の実施形態のセルは、アノード、カソード、アノード集電体、カソード集電体、および上記アノードと上記カソードとを分離するセパレータを有していてもよい。
【0021】
1つ以上の実施形態のアノードは、当業者に知られている任意の好適な導電性材料であってもよい。いくつかの実施形態において、アノードは、1つ以上の炭素種、亜鉛種、スズ種、有機種、またはリン種を含んでいてもよく、これらはハードカーボン、(膨張)黒鉛、カーボンブラック、亜鉛、スズ、酸化スズ、赤リン、黒リン、およびテレフタル酸ナトリウムからなる群から選択されてもよい。アノード材料は任意の好適な材料であってもよく、その選択は、セルの全容量に影響を与え得るが、通常、全体的なセル設計には影響しない。具体的な実施形態において、アノードはハードカーボンで本質的に構成されていてもよい。1つ以上の実施形態において、アノードは粒子状であってもよい。
【0022】
1つ以上の実施形態のアノード集電体は、発泡金属等の多孔質導電材料であってもよい。いくつかの実施形態において、アノード集電体は、アルミニウム、ニッケル、銅、およびステンレス鋼からなる群のうち1種以上の発泡体であってもよい。具体的な実施形態において、アノード集電体は発泡アルミニウムを含んでいてもよい。他の実施形態において、アノード集電体は発泡アルミニウムで本質的に構成されていてもよい。他の実施形態において、アノード集電体は発泡アルミニウムで構成されていてもよい。アノードが粒子状である実施形態において、多孔質アノード集電体の空隙容量は、アノード材料と電解質とのスラリーで少なくとも部分的に満たされていてもよい。具体的な実施形態において、アノード集電体の空隙容量は、アノード材料と電解質とのスラリーで実質的に満たされていてもよい。電解質は、当該技術分野で知られている任意の好適な電解質であってもよく、コストの制約や電力需要等の要因に応じて選択できる。いくつかの実施形態において、電解質はイオン液体であってもよい。具体的な実施形態の電解質は、シアンイミド系イオン液体であってもよい。
【0023】
1つ以上の実施形態において、アノード活物質は、約55~65重量%の範囲の量のアノードと、約25~35重量%の範囲の量の電解質とを含んでいてもよい。他の実施形態において、セルは、約50~70重量%の範囲の量のアノードと、約40~20重量%の範囲の量の電解質とを含んでいてもよい。
【0024】
1つ以上の実施形態において、アノード集電体はシールを通過してセルの外部に出る。シールを通過するアノード集電体は、上述した多孔質導電材料と電気的に接続されたワイヤを有していてもよい。シールは、当業者に知られている任意の好適な材料で形成されていてもよい。具体的な実施形態において、シールは、エポキシで形成されていてもよい。このような場合、セル外部のアノード集電体を絶縁コーティングで電気的に絶縁して、リーク電流を防止してもよい。コーティングは任意の好適な材料を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、コーティングは、例えば、塩素、水酸化ナトリウム、塩化アルミニウム、および二酸化硫黄への曝露に対して安定な重合体を含んでいてもよい。具体的な実施形態のコーティングはポリ塩化ビニル(PVC)を含んでいてもよい。
【0025】
1つ以上の実施形態のカソードはナトリウムイオン含有溶液を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、ナトリウムイオン含有溶液は、特に、海水等の水溶液であってもよい。ナトリウムイオン含有溶液のナトリウムイオン含有量は特に限定されず、海水で見られる任意の含有量であってもよい。1つ以上の実施形態において、ナトリウムイオン含有溶液は、25、35、40、または45g/kgを下限とし、40、45、または50g/kgを上限とする範囲の量の塩化ナトリウムを含んでいてもよく、任意の下限を、数学的に適合する任意の上限と組み合わせて使用してもよい。
【0026】
1つ以上の実施形態の海水は、淡水化プラントの流出液を含んでいてもよい。当業者であれば、該流出液のナトリウム含有量が海水で通常見られるよりも実質的に高くなり得ることを理解できる。海水を使用すると本質的に無制限のナトリウム貯蔵庫を得ることができ、したがって根本的には、他の老化現象が存在しなければ無制限のサイクル寿命を得ることができる。したがって、エネルギー密度は最終的にアノードの容量および全体的なセル設計によってのみ制限され得る。
【0027】
1つ以上の実施形態のナトリウムイオン含有溶液は、ナトリウムイオンのフローを供給するように、ポンプによって電気化学セルに通してもよい。いくつかの実施形態において、セルを垂直に配置し、ポンプによって水を横方向にセルに通してもよい。セルに空気を注入して、放電反応(上記式(II))に必要な酸素を供給してもよい。空気は、1つ以上の実施形態のセルの底部に注入してもよい。
【0028】
1つ以上の実施形態のカソード集電体は多孔質導電材料であってもよい。いくつかの実施形態において、カソード集電体は、アルミニウム、ニッケル、およびステンレス鋼のうち1種以上等の金属、またはハードカーボン、黒鉛、活性炭、カーボンブラック、およびグラフェンからなる群から選択されてもよい炭素種を含んでいてもよい。具体的な実施形態において、カソード集電体はカーボンフェルトを含んでいてもよい。他の実施形態において、カソード集電体はカーボンフェルトで本質的に構成されていてもよい。他の実施形態において、カソード集電体はカーボンフェルトで構成されていてもよい。カソードが海水を含む実施形態では、海水が導電性であるため、カソード電解質が必ずしも必要ではないことに留意されたい。
【0029】
1つ以上の実施形態のセパレータは、当業者に知られている任意の好適なイオン伝導性材料を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、セパレータはナトリウム超イオン伝導体(NASICON)を含んでいてもよい。具体的な実施形態において、セパレータは、NASICONで本質的に構成されていてもよい。1つ以上の実施形態において、セパレータは、NASICONセラミック膜で構成されていてもよい。1つ以上の実施形態のNASICONは、化学式:Na1+xZrSi3-x12(式中、0≦x≦3)を有していてもよい。いくつかの実施形態において、NASICONはNaZrSiPO12であってもよい。
【0030】
1つ以上の実施形態のセルは、導電性および機械的安定性を高める別の金属構造物をさらに有していてもよい。金属構造物は、アルミニウム、ニッケル、およびステンレス鋼からなる群のうち1種以上を含んでいてもよい。1つ以上の実施形態の金属構造物はステンレス鋼金網であってもよい。
【0031】
1つ以上の実施形態の電池セルは管状セルであってもよい。電池セルは円筒形状であって、セル内で半径方向中心に配置されたアノードおよびアノード集電体を有していてもよい。アノードおよびアノード集電体は、セパレータによってカソードと隔離されていてもよい。アノード集電体は円筒形状であってもよく、いくつかの実施形態では、セパレータに囲まれていてもよい。1つ以上の実施形態のセルは、セパレータの周りに配置されていてもよい円筒形状のカソード集電体を含んでいてもよい。
【0032】
1つ以上の実施形態の電池セルを図1に表す。上記電池セルは、NASICONセラミック膜で形成されたセパレータに囲まれている円筒状発泡アルミニウムアノード集電体を有する。発泡アルミニウムの空隙容量は、ハードカーボンアノード材料と電解質とのスラリーで満たされている。いくつかの実施形態において、電解質は、シアナミド系イオン液体またはSO系無機イオン液体であってもよい。NASICON膜は、多孔質カーボンフェルトカソード集電体および海水カソードで被覆されている。NASICON膜はアノードとカソードとを分離する。ステンレス鋼金網がカソード集電体を圧縮し、導電性を高める。アノード集電体はエポキシのシールを通過する。セルの外側では、集電体がポリマーコーティングによって周囲の海水から絶縁されている。
【0033】
1つ以上の実施形態の電池セルは、直径が約2~30mmの範囲であってもよい。例えば、電池セルは、直径が2、5、10、15、および20mmのいずれか1つを下限とし、5、10、15、20、25、および30mmのいずれか1つを上限とする範囲であってもよく、任意の下限を、数学的に適合する任意の上限と対にしてもよい。具体的な実施形態の電池セルは、直径が約20mmであってもよい。1つ以上の実施形態の電池セルは、長さが約200~500mmの範囲であってもよい。いくつかの実施形態において、電池セルは、長さが10、20、50、100、200、250、および300mmのいずれか1つをおよその下限とし、20、50、100、200、300、350、400、および500mmのいずれか1つをおよその上限とする範囲であってもよく、任意の下限を、数学的に適合する任意の上限と対にしてもよい。本開示の1つ以上の実施形態に係る電池セルの物理的寸法を合理的な範囲内で変化させて、モジュール設計の特定の側面や電力需要を修正してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、直径が小さいほど潜在的な充電/放電レートが高くなるが、直径が大きいほどエネルギー密度が高くなる。
【0034】
1つ以上の実施形態の電池セルは、1、1.5、2、2.5、および3Vのいずれか1つを下限とし、3、3.5、および4Vのいずれか1つを上限とする範囲の電圧を供給してもよく、任意の下限を、数学的に適合する任意の上限と対にしてもよい。具体的な実施形態において、電池セルは約3Vの電圧を供給してもよい。
【0035】
1つ以上の実施形態の電池セルは、サイクル寿命が200、500、1000、2500、または5000サイクルのいずれか1つを下限とし、1000、3000、5000、または10000サイクルのいずれか1つを上限とする範囲であってもよく、任意の下限を、数学的に適合する任意の上限と対にしてもよい。具体的な実施形態において、電池セルは、サイクル寿命が少なくとも200サイクル、少なくとも500サイクル、少なくとも1000サイクル、または少なくとも5000サイクルであってもよい。
【0036】
1つ以上の実施形態の電池セルは、充電レートおよび放電レートがほぼ同じであってもよい。いくつかの実施形態において、1つ以上の実施形態の電池セルは、充電レート(Cは1時間の充電レート)がC/100、C/50、C/20、C/10、またはC/5のいずれか1つを下限とし、C/10、C/5、C/2、C、または2Cのいずれか1つを上限とする範囲であってもよく、任意の下限を、数学的に適合する任意の上限と対にしてもよい。同じ実施形態において、1つ以上の実施形態の電池セルは、放電レート(Cは1時間の放電レート)がC/100、C/50、C/20、C/10、またはC/5のいずれか1つを下限とし、C/10、C/5、C/2、C、または2Cのいずれか1つを上限とする範囲であってもよく、任意の下限を、数学的に適合する任意の上限と対にしてもよい。
【0037】
当業者であれば、本開示の恩恵を受けて、本開示に係る電池セルは上で明示的に開示されたものに限定されず、その用途における特定の要件に従って調整してもよいことを理解できる。
【0038】
電池モジュール
【0039】
1つ以上の実施形態において、本開示に係る電池モジュールは複数の電気化学セルを有していてもよい。電池モジュールは、特に、上述した電気化学セルを複数有していてもよい。複数のセルは、共通のブスバーで並列に接続されていてもよい。しかしながら、いくつかの実施形態において、セルは直列に接続されていてもよい。当業者であれば、本開示の恩恵を受けて、並列または直列の選択は、電池の意図された用途における電圧および電流需要に依ることを理解できる。1つ以上の実施形態の電池モジュール内では、セルを並列に接続してもよく、その結果、モジュール電圧がセルと等しくなるようにしてもよい。例えば、セルが3Vの電圧を供給する場合、モジュールも3Vの電圧を供給してもよい。
【0040】
電池モジュールが含むセルの厳密な数は特に限定されず、電池の意図された用途における電圧および電流需要に基づいて選択してもよい。利用可能な幅および高さ、ならびに電池モジュールの電圧および容量要件を考慮すると、具体的な実施形態において、モジュール内のセル数は約212個であってもよい。いくつかの実施形態において、モジュールは、セル数が10、25、50、100、150、200、または250個のいずれか1つを下限とし、100、200、250、300、または500個のいずれか1つを上限とする範囲であってもよく、任意の下限を、数学的に適合する任意の上限と対にしてもよい。
【0041】
いくつかの実施形態の電池モジュールは、個々のセルを所定の位置に固定し、構造的に安定させ、かつ/またはカソード集電体およびブスバーの1つ以上として機能してもよい金属構造物を有していてもよい。金属構造物は、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、亜鉛、ステンレス鋼、および鉛からなる群のうち1種以上で形成されていてもよいが、特にアルミニウムで形成されていてもよい。
【0042】
1つ以上の実施形態の電池モジュールの全体寸法は特に限定されない。モジュールの最小幅は、ハウジングの壁厚、集電体/ブスバーおよび他の接続部の寸法、ならびにセルの大きさによって決定してもよい。例示的な構成において、モジュールの全幅は約350mmであってもよい。図2Aを参照されたい。いくつかの実施形態において、モジュールは、幅が50、100、200、300、または500mmのいずれか1つを下限とし、200、300、400、500、または750mmのいずれか1つを上限とする範囲であってもよく、任意の下限を、数学的に適合する任意の上限と対にしてもよい。
【0043】
モジュールの高さは、少なくとも部分的に、モジュールが含むセルの総数およびそれらの間隔によって決定してもよい。いくつかの実施形態において、個々のモジュールの全高さは、容器の高さおよび供給ラインの直径によって制限される。例示的な構成において、モジュールの全高さは約2mであってもよい。図2Aを参照されたい。いくつかの実施形態において、モジュールは、高さが0.5、1.0、1.5、2.0、および2.5mのいずれか1つを下限とし、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、および4.0mのいずれか1つを上限とする範囲であってもよく、任意の下限を、数学的に適合する任意の上限と対にしてもよい。
【0044】
モジュールの奥行きは、少なくとも部分的に、モジュールが含むセルの総数およびそれらの間隔によって決定してもよい。例示的な構成において、モジュールの全奥行きは、約0.195mであってもよい。図2Aを参照されたい。いくつかの実施形態において、モジュールは、奥行きが0.10、0.14、0.18、0.20、および0.22mのいずれか1つを下限とし、0.16、0.18、0.20、0.22、および0.30mのいずれか1つを上限とする範囲であってもよく、任意の下限を、数学的に適合する任意の上限と対にしてもよい。
【0045】
1つ以上の実施形態のモジュールは、水および空気供給ラインと接続されていてもよい。1つ以上の実施形態の例示的な電池モジュールの構成要素を図2Bに表す。
【0046】
1つ以上の実施形態の電池モジュールのセルレイアウトは特に限定されないが、全てのセルに対して十分な海水および空気の供給を確保しつつ、できる限りコンパクトにしてもよい。水および空気のフロー要件に応じて各モジュール内のセルの空間的な分布を最適化することで、フロー抵抗を低くしてもよい。いくつかの実施形態において、セルレイアウトは千鳥状配置を有していてもよい。1つ以上の実施形態の例示的な電池モジュールのセルレイアウトを図2Cに示す。1つ以上の実施形態において、生成される塩素が確実に実質的に全て海水中に溶解するように海水のフローを選択してもよい。いくつかの実施形態において、海水の質量流量は、充電/放電サイクルあたり約150~250mの範囲であってもよい。いくつかの実施形態において、海水の質量流量は、電池モジュールあたり約0.05~0.15mであってもよい。
【0047】
いくつかの実施形態において、海水等のナトリウムイオン含有溶液は、セルを横方向に通過(セルの最短寸法を通過)するように、ポンプによって電池モジュールに通してもよい。別個のマニホールドを通してモジュールに空気を供給することで、十分な酸素供給を確保してもよい。マニホールドによって、モジュールの底部に空気を注入することで、放電中にナトリウムイオン含有溶液を確実に酸素で飽和させてもよい。いくつかの実施形態において、電池モジュールを垂直に配置することで、注入された空気をモジュールの上部へ上昇させながら電池セルを通過させてもよい。余分な空気は、ガスセパレータまたはエアベントによってモジュールからパージしてもよい。
【0048】
金属ブスバーは、1つ以上の実施形態のモジュールの各セルを並列に接続してもよい。金属は、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、亜鉛、ステンレス鋼、および鉛からなる群のうち1種以上であってもよい。具体的な実施形態において、ブスバーはアルミニウムブスバーであってもよい。1つ以上の実施形態の電池モジュールは、100、200、300、400、500、または600Aのいずれか1つを下限とし、500、600、700、800、または1000Aのいずれか1つを上限とする範囲の電流を供給してもよく、任意の下限を、数学的に適合する任意の上限と対にしてもよい。具体的な実施形態において、電池モジュールは約540Aの電圧を供給してもよい。
【0049】
ブスバーの寸法は、モジュールが供給する全電流と、ブスバーを形成する材料とによって影響を受ける。例えば、アルミニウムは銅よりも比抵抗が高いので、アルミニウムブスバーの最小断面積は銅の約1.6倍でなければならない。いくつかの実施形態において、アルミニウムブスバーは、断面積が約592mmとなる。1つ以上の実施形態のブスバーは、厚さが3~4mmの範囲であってもよい。いくつかの実施形態において、ブスバーは約3.3mmの厚さであってもよい。ブスバーは台形形状であってもよく、いくつかの実施形態において、別のモジュールと直に、またはケーブルを介して次列のモジュールと接続していてもよい。
【0050】
1つ以上の実施形態の電池モジュールのハウジングは特に限定されないが、その内容物を機械的に支持するように選択されるべきである。1つ以上の実施形態において、ハウジングは、海水に対して実質的に化学的耐性を有しつつも、費用対効果が高い生産および組立てを可能とするものであるべきである。いくつかの実施形態において、ハウジングは、充電および放電プロセスで生成される操業レベルの塩素および苛性ソーダに対しても耐性を有するべきである。例示的な材料としては、PVC等のプラスチックが挙げられる。ハウジングは、約6mmの均一な壁厚を有していてもよい。1つ以上の実施形態のモジュール設計は、必ずしもビード等の剛性を最大化する何らかの方法を特徴としていなくてもよい。
【0051】
電池モジュールは、2つのマニホールド、セルを収容する立方体状管、および分離シートという4つの部分を有していてもよい。図2Bを参照されたい。第1のマニホールドは、水および空気の給入口として機能してもよい。第1のマニホールドは、フィッティングを介して接続され、予め形成された穴に設置され、テーパーネジで封止された供給パイプを有していてもよい。モジュールの上部に設置してもよい第2のマニホールドは、水排出口フィッティング、ガスセパレータ、およびブスバー接続用の開口部を特徴としていてもよい。セルは、カソード集電体および分離シートを介して固定し、アノードブスバーとともにユニットとして組み立ててもよい。組立品は外部管と結合および溶接されて、水密性が得られる。マニホールドは、大きな電流が海水に流れるのを避けるのに十分な長さであってもよい。
【0052】
当業者であれば、本開示の恩恵を受けて、本開示に係る電池モジュールは上で明示的に開示されたものに限定されず、その用途における特定の要件に従って調整してもよいことを理解できる。
【0053】
電池
【0054】
1つ以上の実施形態において、本開示に係る電池は複数の電池モジュールを有していてもよい。電池は、特に、上述した電池モジュールを複数有していてもよい。複数の電池モジュールは、いくつかの実施形態において、ブスバーで直列に接続されていてもよい。しかしながら、他の実施形態において、セルは並列に接続されていてもよい。当業者であれば、本開示の恩恵を受けて、並列または直列の選択は、電池の意図された用途における電圧および電流需要に依ることを理解できる。
【0055】
具体的な実施形態において、電池モジュールは複数列に並べられていてもよい。各列のモジュールは、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、亜鉛、ステンレス鋼、および鉛からなる群のうち1種以上で形成されていてもよいブスバーで直列に接続されていてもよい。具体的な実施形態において、ブスバーはアルミニウムで形成されていてもよい。モジュールの列は、例えば、モジュールの上部の銅ケーブルと接続されていてもよい。図3Aおよび図3Bを参照されたい。
【0056】
電池が含むモジュールおよびセルの厳密な数は特に限定されず、電池の意図された用途における電圧および電流需要に基づいて選択してもよい。1つ以上の実施形態の電池は、電池モジュール数が50、100、150、200、および250個のいずれか1つをおよその下限とし、100、150、200、250、または500個のいずれか1つをおよその上限とする範囲であってもよく、任意の下限を、数学的に適合する任意の上限と対にしてもよい。
【0057】
1つ以上の実施形態の電池は、容量が0.5、1、2、3、4、5、および10MWhのいずれか1つをおよその下限とし、1、3、5、10、および15MWhのいずれか1つをおよその上限とする範囲であってもよく、任意の下限を、数学的に適合する任意の上限と対にしてもよい。具体的な実施形態において、電池は、容量が0.5MWh以上、1MWh以上、2MWh以上、3MWh以上、4MWh以上、5MWh以上、または10MWh以上であってもよい。本開示の1つ以上の実施形態に係る電池は、一般的に拡張性が高いので、非常に大きい容量を得ることができる。
【0058】
1つ以上の実施形態の電池は、出力が100、200、300、または500kWのいずれか1つをおよその下限とし、400、500、750、または1000kWのいずれか1つをおよその上限とする範囲であってもよく、任意の下限を、数学的に適合する任意の上限と対にしてもよい。具体的な実施形態において、電池は、出力が200kW以上、300kW以上、400kW以上、または500kW以上であってもよい。
【0059】
1つ以上の実施形態の電池は、100、200、300、400、または500Vのいずれか1つをおよその下限とし、500、600、750、または1000Vのいずれか1つをおよその上限とする範囲の電圧を供給してもよく、任意の下限を、数学的に適合する任意の上限と対にしてもよい。具体的な実施形態の電池は約576Vの電圧を供給してもよい。電池モジュールが直列に接続されている1つ以上の実施形態の電池の場合、電池が供給する電圧は、おおよそ電池モジュールが供給する電圧の合計となる。直列に接続された電池モジュールの数は、所望の電圧を供給するのに必要な数であってもよい。
【0060】
1つ以上の実施形態の電池は、100、200、300、400、500、または600Aのいずれか1つを下限とし、500、600、700、800、または1000Aのいずれか1つを上限とする範囲の電流を供給してもよく、任意の下限を、数学的に適合する任意の上限と対にしてもよい。具体的な実施形態において、電池モジュールは約540Aの電圧を供給してもよい。電池モジュールが直列に接続されている1つ以上の実施形態の電池の場合、電池が供給する電流は、1つの電池モジュールが供給する電流とほぼ同じになる。
【0061】
1つ以上の実施形態の電池は、サイクル寿命が200、500、1000、2500、または5000サイクルのいずれか1つを下限とし、1000、3000、5000、または10000サイクルのいずれか1つを上限とする範囲であってもよく、任意の下限を、数学的に適合する任意の上限と対にしてもよい。具体的な実施形態において、電池は、サイクル寿命が少なくとも200サイクル、少なくとも500サイクル、少なくとも1000サイクル、または少なくとも5000サイクルであってもよい。
【0062】
電池システムは、輸送および取扱いを容易とするための標準的な輸送コンテナに搭載してもよい。構成に応じて、電池は、少なくとも複数の電池モジュール、給入管、排出管、および電気接続部を含んでいてもよい。1つ以上の実施形態の電池は、周辺機器をさらに有していてもよい。周辺機器は、例えば、電池管理要素、ろ過要素、(電気化学反応に対して十分な量の酸素を供給してもよい)空気圧縮機、およびウォーターポンプのうち1つ以上を有していてもよい。これらの機器は、いくつかの実施形態において、20ftコンテナ(図3A参照)であれば別々に配置するか、あるいは40ftコンテナ(図3B参照)であれば電池容器内に配置してもよい。採用するモジュールの数が比較的少ない実施形態において、上記機器は、モジュールとともに20ftコンテナ内に配置してもよい。40ftコンテナを使用することで、セルおよびモジュールの数をさらに増やすことができる。一般に、電池の大きさは特に限定されず、直列または並列に接続されたいくつかの容器を有していてもよい。
【0063】
1つ以上の実施形態の空気圧縮機は、約450~550mbarの範囲の圧力で、150、200、220、または240m/hを下限とし、250、275、または300m/hを上限とする範囲の量の空気を供給可能であるが、任意の下限を任意の上限と組み合わせて使用してもよい。
【0064】
当業者であれば、本開示の恩恵を受けて、本開示に係る電池は上で開示されたものに限定されず、その用途における特定の要件に従って調整してもよいことを理解できる。本開示に係る電池は、サイクル時に非常に優れた容量維持率を示すことができるが、これは、サイクル時に電気化学反応に対して新しい海水を連続供給することや、使用材料が化学的安定性を有することに依るものであり得る。また、いくつかの実施形態の電池は、既存の電池技術と比較して環境に優しい点で有利であり得る。
【0065】
用途
【0066】
コスト、安全性、設置、環境への配慮、および長期操業が重要であるオフショア用途および遠隔地向けに、大規模で費用対効果が高く効率的な設計をここで紹介する。
【0067】
1つ以上の実施形態の電池は、洋上風車、波力・潮力変換器、および海流活性化タービンを伴う石油・ガスのプラットフォームおよびリグにおけるオフショアおよびニアショア用途に電力貯蔵を提供できる。いくつかの実施形態の電池は、既存のシステムへ容易に組み込むことができる。電池は、浮体式構造物上の海洋構造物付近に設置したり、コンテナ内、モジュール間、ならびにポンプおよび圧縮機間に保護バリアを設置して半潜水式にしたりできる。これらの用途のうちいくつかを図5および図6に表す。電池が海面上に配置される実施形態では、ポンプによって海水をモジュールに通してもよい。
【0068】
1つ以上の実施形態のカソードは海水なので、電池はモジュールとして最終使用の現場まで安全に輸送できる。該モジュールは、カソードを除いて(すなわち、海水を除いて)電池の全構成要素を有していてもよいため、設置および配備のコストを削減できる。現場で海水を用いてモジュールを充電することで、電池を得ることができる。これは、洋上や、沿岸を含む他の遠隔地での電力貯蔵用途に有益となり得る。
【0069】
1つ以上の実施形態の電池は、塩分濃度が低下した水を放出するので、電池を淡水化等のプロセスに使用できる。例えば、電池を充電モードで使用する場合、淡水化プラントからの塩水およびフラッキング水の洗浄に電池を使用できる。また、充電中に高純度の塩素が生成されるので、これを収集してさらに使用できる。
【0070】
いくつかの実施形態では、電池を淡水化プラントの海水前処理段で用いて、海水を電池へ迂回させて塩分を除去し、水をプラントに再注入してより効率的に膜でろ過および淡水化することができる。また、電池を用いて、海へ廃棄する前に、プラントで生成された塩水から塩分を除去できる。このように塩水を処理することで、局所環境の塩分濃度を安定化させやすくなる。図7は、淡水化プラントにおける電池用途を表す。
【0071】
また、1つ以上の実施形態の電池は、輸送船、クルーズ客船、およびはしけ内に組み込んで、巡航中に電力を貯蔵し、アイドル時間中に電力を供給することができる。また、電池容器を空にして(すなわち、海水を除去して)、電池を使用しない巡航中の重量を減らすこともできる。静止時に電池を充電してもよい。図8を参照されたい。
【0072】
データセンターのなかには、海中環境に配置することで、必要とされる冷却を抑えることができるものがある。1つ以上の実施形態の電池を用いて、該データセンターのために電力を貯蔵できる。具体的な実施形態において、電池は、データの完全性を保護するためのバックアップ電力を提供できる。図9を参照されたい。
【0073】
また、いくつかの実施形態の電池は、酸素を追加供給せず稼働でき、その代わりに海水中に溶解した酸素にゆっくり依存する。該実施形態は、特に、海中用途における電池の使用に関していてもよい。その場合、水の浸入に対してシステムを保護するとともに、海中圧力に耐えるための補償タンクおよびバリアを有することになる。場合によっては、酸素を追加供給しないと電池の稼働効率が低くなることがある。
【0074】
本明細書では、具体的な手段、材料、および実施形態を参照して上記記載を述べたが、本明細書中に開示した詳細に限定されることを意図したものではなく、むしろ、添付した特許請求の範囲内のものなど、機能的に均等な構造、方法、および使用の全てに拡張されるものである。特許請求の範囲において、ミーンズ・プラス・ファンクション節は、記載した機能を実施するものとして本明細書中に記載された構造に加えて、構造的な均等物だけでなく均等な構造もカバーすることを意図したものである。したがって、木製部品同士を固定するのに釘が円筒面を採用する一方、ネジは螺旋面を採用するという点で、釘とネジは構造的な均等物ではないと言えるが、木製部品を留めるという環境の下では、釘とネジは均等な構造であると言える。本出願人は、請求項において関連する機能とともに「のための手段(means for)」という語を明示的に使用したものを除いて、本明細書中のいかなる請求項のいかなる限定に対しても米国特許法(35 U.S.C.)第112条(f)項を発動しないことを明確に意図している。

図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9