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特許7470818アルカリ水電解システム、およびアルカリ水電解システムの運転方法
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  • 特許-アルカリ水電解システム、およびアルカリ水電解システムの運転方法 図1
  • 特許-アルカリ水電解システム、およびアルカリ水電解システムの運転方法 図2
  • 特許-アルカリ水電解システム、およびアルカリ水電解システムの運転方法 図3A
  • 特許-アルカリ水電解システム、およびアルカリ水電解システムの運転方法 図3B
  • 特許-アルカリ水電解システム、およびアルカリ水電解システムの運転方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】アルカリ水電解システム、およびアルカリ水電解システムの運転方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/021 20210101AFI20240411BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20240411BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240411BHJP
   C25B 9/77 20210101ALI20240411BHJP
   C25B 15/025 20210101ALI20240411BHJP
   C25B 9/60 20210101ALI20240411BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20240411BHJP
   C25B 9/65 20210101ALI20240411BHJP
【FI】
C25B15/021
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B9/77
C25B15/025
C25B9/60
C25B15/08 302
C25B9/65
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022568150
(86)(22)【出願日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 JP2021042495
(87)【国際公開番号】W WO2022124045
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2020203018
(32)【優先日】2020-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100213333
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿山 昌代
(72)【発明者】
【氏名】内野 陽介
(72)【発明者】
【氏名】大野 純
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-126883(JP,A)
【文献】特開2020-045550(JP,A)
【文献】中国実用新案第202610342(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/04
C25B 9/00
C25B 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変動する電源と接続され、交流電力を直流電力に変換する整流器と、
前記整流器から供給される所定の直流電圧に基づいて、電解液を用いて水の電気分解により水素および酸素を発生させる複極式電解槽と、
前記複極式電解槽の上部に設けられ、前記水素および前記酸素を前記電解液から分離し、前記電解液を貯留する気液分離タンクと、
前記気液分離タンクの内部に設けられ、前記電解液を冷却する熱交換器と、
前記電解液の流量を計測する流量計と、
前記流量計により計測された計測結果に基づいて、前記熱交換器の交換熱量を制御する制御装置と、
を備える、アルカリ水電解システム。
【請求項2】
前記電解液を循環させる循環ポンプをさらに備え、
前記制御装置は、
前記流量計により計測された計測結果に基づいて、前記循環ポンプを制御する、
請求項に記載のアルカリ水電解システム。
【請求項3】
前記複極式電解槽は、
気液比を調整するバッフル板を備える、
請求項1または2に記載のアルカリ水電解システム。
【請求項4】
変動する電源と接続される整流器が、交流電力を直流電力に変換するステップと、
複極式電解槽が、前記整流器から供給される所定の直流電圧に基づいて、電解液を用いて水の電気分解により水素および酸素を発生させるステップと、
前記複極式電解槽の上部に設けられる気液分離タンクが、前記水素および前記酸素を前記電解液から分離し、前記電解液を貯留するステップと、
前記気液分離タンクの内部に設けられる熱交換器が、前記電解液を冷却するステップと、
流量計が、前記電解液の流量を計測するステップと、
制御装置が、前記流量計により計測された計測結果に基づいて、前記熱交換器の交換熱量を制御するステップと、
を含む、アルカリ水電解システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ水電解システム、およびアルカリ水電解システムの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素などの温室効果ガスによる地球温暖化、化石燃料の埋蔵量の減少などの問題を解決するため、再生可能エネルギを利用した風力発電、太陽光発電などの技術が注目されている。
【0003】
再生可能エネルギは、気候条件に依存して、大きく変動する。このため、再生可能エネルギを利用して発電させた電力を、一般電力系統へ輸送することは困難であり、電力需給のアンバランス、電力系統の不安定化などの社会的な影響が懸念されている。そこで、電力を貯蔵し、輸送可能な形に代えて利用しようとする研究が行われており、例えば、水の電気分解(電解)により水素を発生させ、水素をエネルギ源又は原料として利用することが検討されている。
【0004】
水素は、石油精製、化学合成、金属精製などの分野において、工業的に広く利用されており、近年では、燃料電池車向けの水素ステーション、スマートコミュニティ、水素発電所などにおける利用の可能性も広がっている。このため、再生可能エネルギから、特に水素を得る技術の開発に対する期待は高い。
【0005】
水の電解法として、固体高分子膜型水電解法、高温水蒸気電解法、アルカリ水電解法などが知られているが、アルカリ水電解法は、数十年以上前から工業化されていること、大規模に実施することができること、他の電解法と比べると安価であることなどから、特に有力なものの一つとされている。アルカリ水電解法とは、アルカリ塩が溶解したアルカリ性の水溶液(アルカリ水)を電解液として用いて、水を電気分解することにより、陰極から水素ガスを発生させ、陽極から酸素ガスを発生させる電解法である。
【0006】
例えば、特許文献1には、固体高分子電解質膜により陽極室と陰極室とに区画された水電解槽と、電解水の供給および酸素分離を併用する水供給タンクと、水電解槽の上部に設けられ、循環水の供給および水素分離を併用する水供給タンクと、を備えることで、電解効率を向上させた固体高分子膜型水電解装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-285368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の水電解システムは、変動する投入電力に応じて、電解液を安定的に循環させることが困難であった。このため、高純度の水素を製造するには不十分なシステムとなっていた。
【0009】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、高純度の水素を製造することが可能なアルカリ水電解システム、およびアルカリ水電解システムの運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明は以下のとおりである。
【0011】
一実施形態に係るアルカリ水電解システムは、変動する電源と接続され、交流電力を直流電力に変換する整流器と、
前記整流器から供給される所定の直流電圧に基づいて、電解液を用いて水の電気分解により水素および酸素を発生させる複極式電解槽と、
前記複極式電解槽の上部に設けられ、前記水素および前記酸素を前記電解液から分離し、前記電解液を貯留する気液分離タンクと、
前記気液分離タンクの内部に設けられ、前記電解液を冷却する熱交換器と、
を備える、ことを特徴とする。
さらに、一実施形態に係るアルカリ水電解システムにおいて、前記電解液の流量を計測する流量計と、
前記流量計により計測された計測結果に基づいて、前記熱交換器の交換熱量を制御する制御装置と、
をさらに備える、ことを特徴とする。
さらに、一実施形態に係るアルカリ水電解システムにおいて、前記電解液を循環させる循環ポンプをさらに備え、
前記制御装置は、
前記流量計により計測された計測結果に基づいて、前記循環ポンプを制御する、ことを特徴とする。
さらに、一実施形態に係るアルカリ水電解システムにおいて、前記複極式電解槽は、
気液比を調整するバッフル板を備える、ことを特徴とする。
【0012】
一実施形態に係るアルカリ水電解システムの運転方法は、変動する電源と接続される整流器が、交流電力を直流電力に変換するステップと、
複極式電解槽が、前記整流器から供給される所定の直流電圧に基づいて、電解液を用いて水の電気分解により水素および酸素を発生させるステップと、
前記複極式電解槽の上部に設けられる気液分離タンクが、前記水素および前記酸素を前記電解液から分離し、前記電解液を貯留するステップと、
前記気液分離タンクの内部に設けられる熱交換器が、前記電解液を冷却するステップと、
を含む、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高純度の水素を製造することが可能なアルカリ水電解システム、およびアルカリ水電解システムの運転方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係るアルカリ水電解システムの構成の一例を示す図である。
図2】本実施形態に係る複極式電解槽の構成の一例を示す図である。
図3A】本実施形態に係る電解セルの構成の一例を示す図である。
図3B】本実施形態に係る電解セルの構成の一例を示す図である。
図4】本実施形態に係るアルカリ水電解システムの運転方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、同一の構成要素には原則として同一の参照番号を付して、重複する説明を省略する。各図において、説明の便宜上、各構成の縦横の比率を実際の比率から誇張して示している。
【0016】
また、以下の説明における「縦」とは、図面に描かれた座標軸表示のZ軸に平行な方向を意味するものとし、「上」とは、当該Z軸におけるプラスの方向を意味するものとし、「下」とは、当該Z軸におけるマイナスの方向を意味するものとする。また、「横」とは、図面に描かれた座標軸表示のXY平面に平行な方向を意味するものとする。また、「斜め」とは、図面に描かれた座標軸表示のXY平面に対して、所定の角度(0°、90°、180°、270°を除く角度)を成す方向を意味するものとする。また、「左」とは、図面に描かれた座標軸表示のX軸におけるマイナスの方向を意味するものとし、「右」とは、図面に描かれた座標軸表示のX軸におけるプラスの方向を意味するものとする。ただし、「縦」、「横」、「斜め」、「上」、「下」、「右」、「左」とは、便宜的に定められたものに過ぎず、限定的に解釈すべきものではない。
【0017】
<アルカリ水電解システムの構成>
図1乃至図3Bを参照して、本実施形態に係るアルカリ水電解システム70の構成の一例について説明する。
【0018】
アルカリ水電解システム70は、整流器74と、複極式電解槽50と、気液分離タンク72と、熱交換器79と、制御装置30と、流量計77と、圧力計78と、圧力調整弁80と、循環ポンプ71と、を備える。
【0019】
〔整流器〕
整流器74は、複極式電解槽50と電気的に接続される。また、整流器74は、制御装置30と電気的に接続される。
【0020】
整流器74は、変動する電源と接続され、アルカリ水電解システム70の外部から、変動する電力(例えば、再生可能エネルギ)が供給されると、交流電力を直流電力に変換する。再生可能エネルギは、例えば、風力、太陽光、水力、潮力、波力、海流、地熱の少なくとも1つから得られるエネルギである。再生可能エネルギは、電力変動が生じ易いため、アルカリ水電解システム70には、低電流密度から高電流密度まで、広範囲にわたって電力がランダムに供給される。
【0021】
整流器74は、複極式電解槽50における陽極端子と陰極端子との間に、所定の直流電圧を印加する。所定の直流電圧は、制御装置30により決定される。整流器74が、制御装置30により決定された所定の直流電圧を、複極式電解槽50における陽極端子と陰極端子との間に印加することで、複極式電解槽50の稼働又は停止が制御される。
【0022】
〔複極式電解槽〕
複極式電解槽50は、気液分離タンク72の下部に設けられ、整流器74と電気的に接続される。複極式電解槽50は、整流器74から供給される所定の直流電圧に基づいて、電解液を用いて水の電気分解により、陽極側から酸素を発生させ、陰極側から水素を発生させる。複極式電解槽50は、複数の電解セル65を備える(図2参照)。なお、複極式電解槽50および電解セル65の構成の詳細については、後述する。
【0023】
電解液は、アルカリ塩が溶解したアルカリ性の水溶液であり、例えば、NaOH水溶液、KOH水溶液などである。アルカリ塩の濃度は、20質量%~50質量%であることが好ましく、25質量%~40質量%であることがより好ましい。電解液は、イオン導電率、動粘度、冷温下での凍結などを考慮すると、アルカリ塩の濃度が25質量%~40質量%のKOH水溶液であることが特に好ましい。
【0024】
〔気液分離タンク〕
気液分離タンク72は、複極式電解槽50の上部に設けられ、複極式電解槽50と接続される。気液分離タンク72は、発生したガス(水素、酸素)を電解液から分離し、且つ、複極式電解槽50から流入した電解液を貯留する。気液分離タンク72は、酸素分離タンク72oと、水素分離タンク72hと、を備える。
【0025】
酸素分離タンク72oは、複極式電解槽50から流入した酸素および電解液の混合物から、酸素を上層の気相へ、電解液を下層の液相へと分離する。分離された酸素は、酸素分離タンク72oの上方に設けられる排出口から排出される。分離された電解液は、酸素分離タンク72oの内部に貯留し、酸素分離タンク72oの下方に設けられる流出口から流出し、再び、複極式電解槽50へ流入する。
【0026】
水素分離タンク72hは、複極式電解槽50から流入した水素および電解液の混合物から、水素を上層の気相へ、電解液を下層の液相へと分離する。分離された水素は、水素分離タンク72hの上方に設けられる排出口から排出される。分離された電解液は、水素分離タンク72hの内部に貯留し、水素分離タンク72hの下方に設けられる流出口から流出し、再び、複極式電解槽50へ流入する。
【0027】
なお、気液分離タンク72の排出口から排出される酸素又は水素は、アルカリミストを含んだ状態である。したがって、気液分離タンク72は、排出口の下流側に、例えば、ミストセパレーター、クーラーなど、余剰ミストを液化させて気液分離タンク72に戻すことが可能な装置を備えることが好ましい。
【0028】
気液分離タンク72は、気液分離の度合いが、内部に貯留する電解液の線束、ガス気泡の浮遊速度、ガスの滞留時間などによって定められる。気液分離の度合いが適切に定められると、複極式電解槽50から気液分離タンク72へ電解液などが流入する際に、酸素と水素とが混合してガス純度が低下しまうなどの不具合を回避することができる。
【0029】
気液分離タンク72は、設置容積を考慮すると、容量が小さい方が好ましいが、容積が小さすぎると、圧力又は電流の変化に起因して気液分離タンク72の内部に貯留する電解液の液面変動が大きくなってしまう。したがって、気液分離タンク72の容量は、電解液の液面変動を考慮して設計されることが好ましい。なお、気液分離タンク72は、内部に貯留する電解液の液面の高さを計測する液面計をさらに備えていてもよい。
【0030】
気液分離タンク72は、少なくとも内部に電解液を貯留できる形状であればよく、例えば、円筒形状などであってよい。気液分離タンク72は、耐アルカリ性金属材料で形成されることが好ましく、このような材料としては、例えば、ニッケル、SUSなどが挙げられる。
【0031】
気液分離タンク72は、内面に樹脂ライニング層を有することが好ましい。気液分離タンク72は、内面に樹脂ライニング層を有する場合、外面が保温材で覆われることが好ましい。
【0032】
樹脂ライニング層は、厚さが0.5mm~4.0mmであることが好ましく、1.0mm~2.0mmであることがより好ましい。0.5mmよりも薄い場合、ガスおよび電解液に起因する気液分離タンク72の内面の劣化が生じ易く、4.0mmよりも厚い場合、高温およびアルカリにより残留応力が開放されることで、変形又は剥離を引き起こす可能性が高まる。樹脂ライニング層の厚さが当該範囲を満たすことで、気液分離タンク72の耐久性を向上させることができる。
【0033】
樹脂ライニング層は、厚さの標準偏差が1.0mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましい。樹脂ライニング層の厚みのバラつきを抑えることで、気液分離タンク72の耐久性を向上させることができる。なお、樹脂ライニング層の厚みのバラつきは、樹脂ライニング層を形成する前に行われる気液分離タンク72の表面に対するブラスト処理の条件を適宜調整することで抑えることができる。
【0034】
樹脂ライニング層は、2層以上で形成されることが好ましい。樹脂ライニング層は、公知の手法で形成することが可能である。このような手法としては、例えば、回転焼成法、紛体塗装による塗布法、液体塗布法、吹付法などが挙げられる。なお、樹脂ライニング層を形成する前に、気液分離タンク72の内面に、脱脂処理、砂などを用いたブラスト処理、プライマー処理などを、1つ又は複数施してもよい。
【0035】
樹脂ライニング層は、フッ素系樹脂材料で形成されることが好ましい。フッ素系樹脂材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)からなる群から選択される少なくとも1種類が挙げられる。樹脂ライニング層がフッ素系樹脂材料で形成されることで、気液分離タンク72の電極液に対する耐久性を向上させることができる。
【0036】
保温材は、公知の断熱材であってよく、例えば、ガラスウール、発泡材などであってよい。気液分離タンク72の内面は、特に高温条件下において、ガスおよび電解液による劣化が顕著になるところ、気液分離タンク72の外面が保温材で覆われることにより、このような劣化を抑制することができる。
【0037】
上述のように、気液分離タンク72は、複極式電解槽50の上部に設けられる。これにより、密度の大きい液体が下側に、密度の小さい気体が上側に誘導されるため、アルカリ水電解システム70に変動する電力が投入されても、電解液を安定的に循環させ、自己循環を促進させることができる。また、複極式電解槽50を停止させた場合に、気液分離タンク72と複極式電解槽50との間に生じる密度差により、複極式電解槽50の内部を、気液分離タンク72が保有する電解液によって、満液とすることができるため、隔膜を介したガスの拡散を抑制することができる。また、不純物ガスが、酸素分離タンク72oと水素素分離タンク72hとの間で、複極式電解槽50を介して、混じり合ってしまうという不具合を回避することができる。また、複極式電解槽50が気液分離タンク72の上部に位置する場合、複極式電解槽50のメンテナンスにおいて、クレーンなどで複極式電解槽50を気液分離タンク72の上部まで吊り上げる必要があり、メンテナンスが煩雑になるが、複極式電解槽50が気液分離タンク72の下部に設けられる場合は、クレーンなどで複極式電解槽50を吊り上げる必要がないため、円滑にメンテナンスが可能である。
【0038】
〔熱交換器〕
熱交換器79は、気液分離タンク72の内部に設けられる。熱交換器79は、制御装置30により、交換熱量が制御され、気液分離タンク72の内部に貯留する電解液の温度を調整する。この際、熱交換器79は、流量計77により計測された電解液の流量に基づいて、制御装置30により制御されてよい。
【0039】
熱交換器79oは、酸素分離タンク72oの内部に設けられ、酸素分離タンク72oの内部に貯留する電解液の温度を調整する。例えば、複極式電解槽50が稼働すると、複極式電解槽50において電解液の温度が上昇するため、このような場合、熱交換器79oは、酸素分離タンク72oの内部に貯留する電解液を冷却する。熱交換器79oが適切なタイミングで、酸素分離タンク72oの内部に貯留する電解液を効率的に冷却することで、自己循環を促進させることができる。
【0040】
熱交換器79hは、水素分離タンク72hの内部に設けられ、水素分離タンク72hの内部に貯留する電解液の温度を調整する。例えば、複極式電解槽50が稼働すると、複極式電解槽50において電解液の温度が上昇するため、このような場合、熱交換器79hは、水素分離タンク72hの内部に貯留する電解液を冷却する。熱交換器79hが適切なタイミングで、水素分離タンク72hの内部に貯留する電解液を効率的に冷却することで、自己循環を促進させることができる。
【0041】
上述のように、熱交換器79が、気液分離タンク72の内部に設けられることで、気液分離タンク72の内部に貯留する電解液を、効率的に冷却することができる。また、気液分離タンク72と複極式電解槽50との間に密度差を生じさせ、アルカリ水電解システム70において、自己循環を加速させて、高効率な運転を行うことができる。また、システム全体の占有面積を低減させることができる。また、熱交換器79が、気液分離タンク72の内部に設けられることで、気液分離タンク72で高温の電解液を冷却することが可能であり、蒸気として水素及び酸素ガスと同伴するガス量を抑制するという効果を奏する。また、熱交換器79が、気液分離タンク72の内部に設けられることで、気液分離タンク72の内部での電解液の自己循環を促進し、気液分離タンク72の内部での温度分布を抑制し、気液分離タンク72の内部の局所的な腐食を抑制するという効果を奏する。また、熱交換器79が、気液分離タンク72の内部に設けられることで、気液分離タンク72の外部の配管部に熱交換器79を特別に設ける必要がなく、設置面積の低減、配管圧損の抑制という効果を奏する。
【0042】
なお、循環ポンプ71を用いることで、電解液を安定的に循環させることも可能であるが、システム全体の消費電力が大きくなる、複極式電解槽50の内部で水素と酸素との混合も促進されてしまう、などの不具合が生じてしまう。しかしながら、上述のように、本実施形態に係るアルカリ水電解システム70は、気液分離タンク72が複極式電解槽50の上部に設けられ、且つ、気液分離タンク72の内部に設けられる熱交換器79が適切に電解液を冷却する。つまり、アルカリ水電解システム70において、複極式電解槽50が発生させたガスの量に応じて、複極式電解槽50と気液分離タンク72との密度差が変更されるため、複極式電解槽50は、安定した流量範囲で稼働することができる。また、アルカリ水電解システム70において、気液分離タンク72の内部に貯留する電解液を、効率的に冷却し、自己循環を加速させることができる。これにより、変動する投入電力に応じて、電解液を安定的に循環させ、高純度の水素を製造することが可能なアルカリ水電解システム70を実現できる。
【0043】
〔制御装置〕
制御装置30は、プログラムによって所定の処理を行うことのできるコンピュータであればよく、例えば、オペレータが使用するノートPC(personal computer)、スマートフォンなどの携帯電話、タブレット端末などである。制御装置30は、アルカリ水電解システム70が備える各部を制御する。
【0044】
制御装置30は、制御部と、記憶部と、を備える。制御部は、専用のハードウェアによって構成されてもよいし、汎用のプロセッサ又は特定の処理に特化したプロセッサによって構成されてもよい。記憶部は、1つ以上のメモリを含み、例えば、半導体メモリ、磁気メモリ、光メモリなどを含んでよい。記憶部に含まれる各メモリは、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してよい。各メモリは、必ずしも制御装置30がその内部に備える必要はなく、制御装置30の外部に備える構成としてもよい。
【0045】
制御装置30は、複極式電解槽50の稼働又は停止を制御するための制御信号を生成し、整流器74へ出力する。例えば、制御装置30は、複極式電解槽50を稼働させるための制御信号を整流器74へ出力する。例えば、制御装置30は、複極式電解槽50を停止させるための制御信号を整流器74へ出力する。このように、制御装置30が、複極式電解槽50に供給する所定の直流電圧を適切に決定することにより、複極式電解槽50の稼働又は停止が制御される。
【0046】
制御装置30は、熱交換器79の交換熱量を制御するための制御信号を生成し、熱交換器79へ出力する。例えば、制御装置30は、流量計77oにより計測される電解液の流量に基づいて、酸素分離タンク72oの内部に設けられる熱交換器79oの交換熱量を制御する。これにより、酸素分離タンク72oの内部に貯留する電解液は、冷却される。例えば、制御装置30は、流量計77hにより計測される電解液の流量に基づいて、水素分離タンク72hの内部に設けられる熱交換器79hの交換熱量を制御する。これにより、水素分離タンク72hの内部に貯留する電解液は、冷却される。
【0047】
制御装置30は、圧力調整弁80を制御するための制御信号を生成し、圧力調整弁80へ出力する。例えば、制御装置30は、酸素分離タンク72oの内部の圧力を計測する圧力計78oの計測結果に基づいて、酸素分離タンク72oと接続される圧力調整弁80oを制御する。これにより、酸素分離タンク72oの内部の圧力は、適切な圧力(例えば、100kPa)に調整される。例えば、制御装置30は、水素分離タンク72hの内部の圧力を計測する圧力計78hの計測結果に基づいて、水素分離タンク72hと接続される圧力調整弁80hを制御する。これにより、水素分離タンク72hの内部の圧力は、適切な圧力(例えば、100kPa)に調整される。
【0048】
制御装置30は、循環ポンプ71を制御するための制御信号を生成し、循環ポンプ71へ出力する。例えば、制御装置30は、循環ポンプ71の稼働又は停止を制御する。例えば、制御装置30は、流量計77により計測される電解液の流量に基づいて、循環ポンプ71の回転速度を制御する。これにより、アルカリ水電解システム70を循環する電解液の流量を、制御装置30により決定された目標流量と一致させることができるため、アルカリ水電解システム70を循環する電解液の流量が適切な流量に調整される。
【0049】
制御装置30は、上述した複極式電解槽50、整流器74、熱交換器79、圧力調整弁80、循環ポンプ71の他、アルカリ水電解システム70が備える各部を制御する。
【0050】
〔循環ポンプ〕
循環ポンプ71は、複極式電解槽50と気液分離タンク72との間に敷設される管路に設けられ、電解液を循環させる。循環ポンプ71は、正転および逆転が可能である。
【0051】
循環ポンプ71が正転する場合、気液分離タンク72の内部に貯留する電解液が、管路を介して、複極式電解槽50に移送され、さらに、複極式電解槽50における電解液が、管路を介して、気液分離タンク72へ移送される。このように、循環ポンプ71が正転する場合、電解液は、複極式電解槽50と気液分離タンク72との間を循環する。
【0052】
循環ポンプ71が逆転する場合、複極式電解槽50における電解液が、管路を介して、気液分離タンク72へ移送され、さらに、気液分離タンク72の内部に貯留する電解液が、管路を介して、複極式電解槽50へ移送される。循環ポンプ71の逆転が継続すると、気液分離タンク72へ電解液が継続的に移送され、気液分離タンク72の内部に貯留する電解液および気液分離タンク72に移送された電解液が排水される。このように、循環ポンプ71が逆転する場合、複極式電解槽50におけると気液分離タンク72とを循環していた電解液が排水され、複極式電解槽50および気液分離タンク72へ、新たな電解液が充填される。その結果、循環していた電解液は、新たな電解液と入れ替わる。
【0053】
循環ポンプ71は、その構成が特に限定されるものではないが、例えば、ロータリーポンプ、ギヤポンプ、チューブポンプなどであってよい。循環ポンプ71としてチューブポンプを採用すると、耐薬品性を向上させ、且つ、アルカリ水電解システム100の小型化を図ることができる。
【0054】
〔流量計〕
流量計77は、複極式電解槽50の下部に設けられ、複極式電解槽50と接続される。流量計77は、複極式電解槽50を循環する電解液の流量を計測し、計測結果を制御装置30へ出力する。
【0055】
流量計77oは、複極式電解槽50を循環する電解液の流量を計測し、計測結果を制御装置30へ出力する。当該計測結果に基づいて、制御装置30が熱交換器79oの交換熱量を制御することにより、酸素分離タンク72oの内部に貯留する電解液は冷却される。また、当該計測結果に基づいて、制御装置30が循環ポンプ71を制御することにより、アルカリ水電解システム70を循環する電解液の流量を、制御装置30により決定された目標流量と一致させることができる。
【0056】
流量計77hは、複極式電解槽50を循環する電解液の流量を計測し、計測結果を制御装置30へ出力する。当該計測結果に基づいて、制御装置30が熱交換器79hの交換熱量を制御することにより、水素分離タンク72hの内部に貯留する電解液は冷却される。また、当該計測結果に基づいて、制御装置30が循環ポンプ71を制御することにより、アルカリ水電解システム70を循環する電解液の流量を、制御装置30により決定された目標流量と一致させることができる。
【0057】
流量計77が、適宜、制御装置30へ計測結果を出力し、制御装置30が、当該計測結果に基づいて、電解液を冷却し、あるいは、循環ポンプ71を適切に制御することで、アルカリ水電解システム70に、変動する電力が投入されても、電解液を安定的に循環させ、自己循環を促進させることができる。これにより、高効率な運転が可能となり、且つ、高純度の水素を製造可能なアルカリ水電解システム70を実現できる。
【0058】
〔圧力計〕
圧力計78は、気液分離タンク72の上部に設けられ、気液分離タンク72と接続される。例えば、圧力計78oは、酸素分離タンク72oの内部の圧力を計測し、計測結果を制御装置30へ出力する。当該計測結果に基づいて、制御装置30が圧力調整弁80oを制御することにより、酸素分離タンク72oの内部の圧力が適切な圧力に維持される。例えば、圧力計78hは、水素分離タンク72hの内部の圧力を計測し、計測結果を制御装置30へ出力する。当該計測結果に基づいて、制御装置30が水素分離タンク72hを制御することにより、水素分離タンク72hの内部の圧力が適切な圧力に維持される。
【0059】
〔圧力調整弁〕
圧力調整弁80は、制御装置30により制御される。圧力調整弁80は、気液分離タンク72の上部に設けられ、気液分離タンク72と接続される。例えば、圧力調整弁80oは、酸素分離タンク72oと接続され、圧力計78oにより計測された酸素分離タンク72oの内部の圧力に基づいて、制御装置30により制御されることで、酸素分離タンク72oの内部の圧力を調整する。例えば、圧力調整弁80hは、水素分離タンク72hと接続され、圧力計78hにより計測された水素分離タンク72hの内部の圧力に基づいて、制御装置30により制御されることで、水素分離タンク72hの内部の圧力を調整する。
【0060】
圧力調整弁80が制御装置30により適切に調整されることで、気液分離タンク72の内部の圧力の過度な上昇、あるいは、気液分離タンク72の内部の圧力の過度な下降を抑制し、気液分離タンク72の内部の圧力を適切な圧力とすることができる。また、水の電気分解により発生したガスにより、気液分離タンク72の内部の圧力が設計圧力を超えてしまっても、安全に圧力を下げることが可能となる。
【0061】
〔その他の構成〕
アルカリ水電解システム70は、上述の構成要素の他にも、水補給器73、酸素濃度計75、水素濃度計76、温度調整弁、検知器などを備えていてよい。これらの構成要素としては、公知のものを採用することができるため、詳細な説明は省略する。
【0062】
本実施形態に係るアルカリ水電解システム70は、上述の構成を有することで、変動する投入電力に応じて、電解液を安定的に循環させることができる。これにより、高純度の水素を製造することが可能なアルカリ水電解システム70を実現できる。
【0063】
<複極式電解槽の構成>
次に、図2図3Aおよび図3Bを参照して、本実施形態に係る複極式電解槽50の構成の一例について詳細に説明する。
【0064】
複極式電解槽50は、複数の複極式エレメント60が、陽極ターミナルエレメント(陽極端子)51aと陰極ターミナルエレメント(陰極端子)51cとの間に配置される。陽極ターミナルエレメント51aおよび陰極ターミナルエレメント51cは、整流器74と電気的に接続される。また、陽極ターミナルエレメント51aは、最も左端に位置する陽極2aと電気的に接続され、陰極ターミナルエレメント51cは、最も右端に位置する陰極2cと電気的に接続される。電流は、陽極ターミナルエレメント51aから、複数の複極式エレメント60が含む陰極2cおよび陽極2aを経由し、陰極ターミナルエレメント51cへ向かって流れる。
【0065】
複極式電解槽50は、左から右へ、ファストヘッド51g1、絶縁板51i1、陽極ターミナルエレメント51a、陽極側ガスケット部分7a、隔膜4、陰極側ガスケット部分7c、複数の複極式エレメント60、陽極側ガスケット部分7a、隔膜4、陰極側ガスケット部分7c、陰極ターミナルエレメント51c、絶縁板51i2、ルーズヘッド51g2、がこの順で配置される。複数の複極式エレメント60は、陽極ターミナルエレメント51a側に陰極2cが向くように、陰極ターミナルエレメント51c側に陽極2aが向くように配置される。複極式電解槽50は、全体がタイロッド方式51rで締め付けられることによりー体化される。なお、締め付け機構として、油圧シリンダなどを用いてもよい。また、複極式電解槽50は、陽極側からでも陰極側からでも任意に配置変更可能であり、上述の順序に限定されるものではない。
【0066】
複極式電解槽50は、単極式電解槽と比較して、電源の電流を小さくでき、化合物、所定の物質などを短時間で大量に製造することができる。したがって、工業的には、単極式電解槽よりも複極式電解槽を用いた方が、低コスト化を図ることができる。
【0067】
〔複極式エレメント〕
複極式エレメント60は、陽極2aと、陰極2cと、陽極2aと陰極2cとを隔離する隔壁1と、隔壁1を縁取る外枠3と、を備える。複極式エレメント60は、一方の面が陽極2a、他方の面が陰極2cとなる。
【0068】
複極式エレメント60は、対数が特に限定されるものではなく、設計生産量に必要な対数だけ繰り返し配置されればよいが、50個~500個であることが好ましく、70個~300個であることがより好ましく、100個~200個であることが特に好ましい。
【0069】
複極式エレメント60は、対数が少ないと、リーク電流によるガス純度への悪影響が緩和される。また、複極式エレメント60は、対数が多いと、電解液を各電解セル65に均一に分配することが困難になる。また、複極式エレメント60は、対数が多過ぎると、複極式電解槽50の製作が困難になる。製作精度が悪い複極式エレメント60が多数スタックされると、複極式電解槽50において、シール面圧が不均一になり、電解液の漏れおよびガス漏洩が生じ易くなる。したがって、複極式エレメント60の対数が、上述の範囲を満たすことで、電力供給を停止した際に生じる自己放電を低減させ、電気制御システムの安定化を図ることができる。また、ポンプ動力を低減させ、且つ、リーク電流を低減させることができるなど高効率での電力の貯蔵が可能となる。
【0070】
〔電解セル〕
電解セル65は、隣接する一方の複極式エレメント60が含む隔壁1、陽極室5a、および陽極2aと、隣接する他方の複極式エレメント60が含む陰極2c、陰極室5c、および隔壁1と、外枠3と、隔膜4と、ガスケット7と、を備える。陰極室5cは、集電体2rと、導電性弾性体2eと、整流板6と、を備える。電解セル65は、バッフル板8を備えていてもよい。
【0071】
電解セル65は、内部における電解液の温度が、40℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましい。また、電解セル65は、内部における電解液の温度が、110℃以下であることが好ましく、95℃以下であることがより好ましい。電解セル65の内部における電解液の温度が当該範囲を満たすことで、高い電解効率を維持しながら、アルカリ水電解システム70が備える各種部材が熱により劣化することを効果的に抑制することができる。
【0072】
電解セル65は、与えられる電流密度の下限が、1[kA/m]以上であることが好ましく、8[kA/m]以上であることがより好ましい。また、電解セル65は、与えられる電流密度の上限が、15[kA/m]以下であることが好ましく、10[kA/m]以下であることがより好ましい。特に、アルカリ水電解システム70のように、変動電源が使用される場合には、電流密度の上限を上記範囲とすることが好ましい。
【0073】
電解セル65は、内部の圧力が、3[kPa]~1000[kPa]であることが好ましく、3[kPa]~300[kPa]であることがより好ましい。
【0074】
-隔壁-
隔壁1は、陽極2aと陰極2cとを隔離する。隔壁1は、整流板6を介して、集電体2rと電気的に接続される。
【0075】
隔壁1は、導電性を有する材料で形成されることが好ましい。導電性を有する材料としては、例えば、ニッケル、ニッケル合金、軟鋼、ニッケル合金上にニッケルメッキを施したものが挙げられる。隔壁1が導電性を有する材料で形成されることで、電力の均一な供給を実現することができる。隔壁1は、電解液に接液する部材の材料が、ニッケルで形成されることが特に好ましい。これにより、耐アルカリ性、耐熱性などを向上させることができる。
【0076】
隔壁1は、その形状が特に限定されるものではないが、所定の厚みを有する板形状であることが好ましい。また、隔壁1は、平面視形状が、例えば、矩形状、円形状、楕円形状であってよく、矩形状である場合、角が丸みを帯びていてもよい。
【0077】
-電極-
陽極2aは、陽極室5aに設けられ、陰極2cは、陰極室5cに設けられる。1つの電解セル65に属する陽極2aと陰極2cとは互いに電気的に接続される。また、陰極2cは、導電性弾性体2eを介して、集電体2rと電気的に接続される。
【0078】
電極2は、水の電気分解に用いられる表面積を増加させるため、また、水の電気分解により発生するガスを、効率的に電極2表面から除去するために、多孔体であることが好ましい。多孔体としては、例えば、平織メッシュ、パンチングメタル、エキスパンドメタル、金属発泡体などが挙げられる。
【0079】
電極2は、基材そのものであってもよいが、基材の表面に反応活性の高い触媒層を有するものであることが好ましい。
【0080】
基材は、使用環境への耐性から、例えば、軟鋼、ステンレス、ニッケル、ニッケル基合金などの材料で形成されることが好ましい。
【0081】
陽極2aの触媒層は、酸素発生能が高く、耐久性が良い材料で形成されることが好ましく、このような材料としては、例えば、ニッケル又はコバルト、鉄もしくは白金族元素などが挙げられる。さらに、所望の触媒活性、耐久性などを実現するための材料としては、例えば、パラジウム、イリジウム、白金、金、ルテニウム、ロジウム、セリウム、ニッケル、コバルト、タングステン、鉄、モリブデン、銀、銅、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、ランタノイドなどの金属単体、酸化物などの化合物、複数の金属元素からなる複合酸化物又は合金、あるいはそれらの混合物、グラフェンなどの炭素材料などが挙げられる。
【0082】
陰極2cの触媒層は、水素発生能が高い材料で形成されることが好ましく、このような材料としては、例えば、ニッケル又はコバルト、鉄もしくは白金族元素などが挙げられる。さらに、所望の触媒活性、耐久性などを実現するための材料としては、例えば、金属単体、酸化物などの化合物、複数の金属元素からなる複合酸化物又は合金、あるいはそれらの混合物などが挙げられる。具体的には、例えば、ラネーニッケル、ニッケルおよびアルミニウム、あるいはニッケルおよび錫などの複数の材料の組み合わせからなるラネー合金、ニッケル化合物又はコバルト化合物を原料としてプラズマ溶射法により作製した多孔被膜、ニッケルと、コバルト、鉄、モリブデン、銀、銅などから選ばれる元素との合金、又は複合化合物、水素発生能が高い白金又はルテニウムなどの白金族元素の金属又は酸化物、およびそれらの白金族元素の金属又は酸化物と、イリジウム、パラジウムなどの他の白金族元素の化合物、ランタン又はセリウムなどの希土類金属の化合物との混合物、グラフェンなどの炭素材料などが挙げられる。高い触媒活性、耐久性などを実現するために、上記の材料で形成される触媒層を複数積層してもよいし、触媒層中に複数の材料を混在させてもよい。また、耐久性および基材との接着性を向上させるために、高分子材料などの有機物が材料に含まれていてもよい。
【0083】
電解電圧は、電極2の性能に大きく依存する。電解電圧を低減させることで、アルカリ水電解システム70において、エネルギ消費量を削減することができる。電解電圧は、理論的に求められる水の電気分解に必要な電圧の他、陽極反応(酸素発生)の過電圧、陰極反応(水素発生)の過電圧、陽極2aと陰極2cとの電極間距離による電圧などを含む。ここで、過電圧とは、ある電流を流す際に、理論分解電位を越えて、過剰に印加する必要のある電圧を意味する。過電圧を低くすることにより、電解電圧を低減させることができる。
【0084】
電極2は、導電性が高く、酸素発生能あるいは水素発生能が高く、電極2表面で電解液の濡れ性が高いなどの性能を有することが好ましい。電極2がこのような性能を有することで、上述の過電圧を低くすることができる。また、電極2は、再生可能エネルギのような不安定な電力が供給されても、基材および触媒層の腐食、触媒層の脱落、電解液への溶解、隔膜4への含有物の付着などが起きにくい性能を有することが好ましい。
【0085】
-集電体-
集電体2rは、導電性弾性体2eおよび電極2へ電気を伝えるとともに、導電性弾性体2eおよび電極2から受ける荷重を支え、電極2から発生するガスを隔壁1側に支障なく通過させる機能を有する。
【0086】
集電体2rは、エキスパンドメタル、打ち抜き多孔板などの形状を有することが好ましい。集電体2rは、開口率が、電極2から発生した水素ガスを、支障なく隔壁1側に抜き出せる範囲を満たすことが好ましい。開口率が大き過ぎると、集電体2r強度が低下する、あるいは、導電性弾性体2eへの導電性が低下するなどの問題が生じ易く、開口率が小さ過ぎると、ガス抜けが悪くなる。このため、集電体2rの開口率は、これらの問題を考慮して、適宜設定されることが好ましい。
【0087】
集電体2rは、導電性および耐アルカリ性の観点から、例えば、ニッケル、ニッケル合金、ステンレススチール、軟鋼などの材料で形成されることが好ましい。集電体2rは、耐蝕性の観点から、ニッケル、軟鋼、ステンレススチールニッケル合金上に、ニッケルメッキが施されることが好ましい。
【0088】
-導電性弾性体-
導電性弾性体2eは、集電体2rおよび電極2と接し、集電体2rと陰極2cとの間に設けられる。導電性弾性体2eは、隔膜4を損傷させない程度の適切な圧力を、電極2に均等に加えることにより、隔膜4と電極2とを密着させる機能を有する。
【0089】
導電性弾性体2eは、電極2に対する導電性を有しつつ、電極2から発生したガスの拡散を阻害しないことが好ましい。仮に、導電性弾性体2eにより、ガスの拡散が阻害されてしまうと、電気的抵抗が増加し、水の電気分解に使用される電極2面積が低下することで、電解効率が低下してしまう。
【0090】
導電性弾性体2eは、その構成が特に限定されるものではなく、公知の構成であってよい。導電性弾性体2eは、例えば、線径0.05mm~0.5mm程度のニッケル製ワイヤを織ったものが、波付け加工されたクッションマットであってよい。
【0091】
-外枠-
外枠3は、隔壁1の外縁に沿って、隔壁1を取り囲むように設けられる。外枠3は、隔壁1を取り囲むことができる形状であればよく、その形状が特に限定されるものではないが、隔壁1の平面に対して縦方向に沿う内面を隔壁1の外延に亘って備える形状であることが好ましい。外枠3は、隔壁1の平面視形状に合わせて適宜設定されることが好ましい。
【0092】
外枠3は、導電性を有する材料で形成されることが好ましく、このような材料としては、例えば、ニッケル、ニッケル合金、軟鋼、ニッケル合金などが挙げられる。外枠3は、さらに、耐アルカリ性および耐熱性といった観点から、例えば、ニッケル、ニッケル合金、軟鋼、ニッケル合金上に、ニッケルメッキが施されることが好ましい。
【0093】
-隔膜-
隔膜4は、陽極2aを有する陽極室5aと陰極2cを有する陰極室5cとを区画する。隔膜4は、陽極ターミナルエレメント51aと複極式エレメント60との間、隣接する複極式エレメント60の間、および複極式エレメント60と陰極ターミナルエレメント51cとの間に設けられる。隔膜4は、イオン透過性を有し、イオンを導通させつつ、水素ガスと酸素ガスとを隔離する。隔膜4は、イオン交換能を有するイオン交換膜、電解液を浸透することができる多孔膜などにより構成される。隔膜4は、ガス透過性が低く、イオン伝導率が高く、電子電導度が小さく、強度が強いことが好ましい。
【0094】
--多孔膜--
多孔膜は、複数の微細な貫通孔を有し、電解液を透過させる構造を有する。このような構造を有する多孔膜としては、例えば、高分子多孔膜、無機多孔膜、織布、不織布などが挙げられる。これらの膜は、公知の技術を適用することで形成される。
【0095】
多孔膜は、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンおよびポリフェニルスルホンからなる群より選ばれる少なくとも1種の高分子樹脂を含むことが好ましい。これにより、優れたイオン透過性を維持することが可能となる。
【0096】
多孔膜は、電解液が浸透することにより、イオン伝導性を発現するため、孔径、気孔率、親水性といった多孔構造が適切に制御されることが好ましい。多孔膜において、多孔構造が適切に制御されることで、電解液を透過させるのみならず、発生ガスの遮断性を高めることができる。
【0097】
多孔膜は、その厚みが特に限定されるものではないが、例えば、200μm以上700μm以下であることが好ましい。多孔膜は、厚みが250μm以上であれば、一層優れたガス遮断性を得ることができ、また、衝撃に対する多孔膜の強度を一層向上させることが可能となる。この観点より、多孔膜は、厚みの下限が300μm以上であることがより好ましく、350μm以上であることがより好ましく400μm以上であることがさらに好ましい。一方で、多孔膜は、厚みが700μm以下であれば、アルカリ水電解システム70の運転時に、孔内に含まれる電解液の抵抗によりイオンの透過性が阻害され難いため、一層優れたイオン透過性を維持することが可能となる。このような観点から、多孔膜は、厚みの上限が600μm以下であることがより好ましく、550μm以下であることがよりに好ましく、500μm以下であることがさらに好ましい。
【0098】
--イオン交換膜--
イオン交換膜は、カチオンを選択的に透過させるカチオン交換膜、アニオンを選択的に透過させるアニオン交換膜の何れの交換膜を用いてもよい。
【0099】
イオン交換膜は、その材料が特に限定されるものではなく、公知の材料を用いることができる。イオン交換膜は、例えば、含フッ素系樹脂又はポリスチレン・ジビニルベンゼン共重合体の変性樹脂で形成されることが好ましい。耐熱性および耐薬品性などに優れるという観点から、イオン交換膜は、含フッ素系樹脂で形成されることが、特に好ましい。
【0100】
-電極室-
電極室5は、電解液を通過させ、隔壁1、外枠3、隔膜4などにより、画定される。電極室5は、その画定される範囲が、隔壁1の外端に設けられる外枠3の構造により変動する。電極室5は、外枠3との境界において、電極室5に電解液を導入する電解液入口と、電極室5から電解液を導出する電解液出口と、を備える。例えば、陽極室5aは、陽極室5aに電解液を導入する陽極電解液入口と、陽極室5aから導出する電解液を導出する陽極電解液出口と、を備える。例えば、陰極室5cは、陰極室5cに電解液を導入する陰極電解液入口と、陰極室5cから導出する電解液を導出する陰極電解液出口と、を備える。
【0101】
電極室5は、複極式電解槽50の内部において、気液比を調整するバッフル板8を備えていてもよい。また、電極室5は、複極式電解槽50の内部において、電解液を電極2面内に均一に分配するための内部ディストリビュータを、備えていてもよい。また、電極室5は、複極式電解槽50の内部において、電解液の濃度、電解液の温度を均一化するため、あるいは、電極2および隔膜4に付着するガスの脱泡の促進のために、カルマン渦を作るための突起物を、備えていてもよい。
【0102】
なお、陰極室5cの内部のみならず、陽極室5aの内部に、集電体2rが設けられていてもよい。集電体2rは、陰極室5cの内部に設けられる集電体と同様の材料および構成としてよい。また、陽極2a自体を集電体として機能させることも可能である。
【0103】
-整流板-
整流板6は、陽極2aを支持し、陽極2aと隔壁1との間に設けられる。また、整流板6は、陰極2cおよび集電体2rを支持し、集電体2rと隔壁1との間に設けられる。
【0104】
整流板6は、隣接する電解セル65の一方の隔壁1に取り付けられ、例えば、陽極室5aにおいて、左から右へ、隔壁1、整流板6、陽極2aの順に重ね合わせられた構造が採用されてよい。隔壁1、整流板6、および陽極2aは、電気的に接続され、且つ、物理的に直接接続されてよい。これらの各構成部材を互いに直接取り付ける方法として、溶接などが挙げられる。なお、陽極室5aにおいて、左から右へ、隔壁1、整流板6、集電体2r、導電性弾性体2e、陽極2aの順に重ね合わせられた構造が採用されてよいことは勿論である。
【0105】
整流板6は、隣接する電解セル65の他方の隔壁1に取り付けられ、例えば、陰極室5cにおいて、左から右へ、陰極2c、導電性弾性体2e、集電体2r、整流板6、隔壁1の順に重ね合わせられた構造が採用されてよい。陰極2c、導電性弾性体2e、集電体2r、整流板6、および隔壁1は、電気的に接続され、且つ、物理的に直接接続されてよい。これらの各構成部材を互いに直接取り付ける方法として、溶接などが挙げられる。
【0106】
電解室5に整流板6が設けられることで、隔壁1から陽極2aへ、あるいは、陰極2cから隔壁1へ、電流が流れ易くなる。また、電解室5に整流板6が設けられることで、電解室5の内部における気液の流れの乱れにより、電解室5の内部に生じる対流を低減させて、局所的な電解液の温度の上昇を抑制することが可能となる。
【0107】
整流板6は、導電性を有する金属材料で形成されることが好ましい。このような材料としては、例えば、ニッケルメッキを施した軟鋼、ステンレススチール、ニッケルなどが挙げられる。
【0108】
整流板6は、少なくとも一部が導電性を有することが好ましく、全部が導電性を有することがさらに好ましい。整流板6が導電性を有することで、電極たわみに起因する電解セル65の電圧の上昇を抑制することができる。
【0109】
-ガスケット-
ガスケット7は、隔壁1を縁取る外枠3に設けられる。ガスケット7は、複極式電解槽50の外部への電解液および発生ガスの漏れ、陽極室5aと陰極室5cとの間でのガス混合などを防ぐ機能を有する。
【0110】
ガスケット7は、外枠3に接する面に合わせて、電極2面をくり抜いた四角形状又は環形状を有する。2枚のガスケットにより、隔膜4を挟み込むことで、隣接する複極式エレメント60の間に、隔膜4をスタックさせることができる。
【0111】
ガスケット7は、隔膜4を保持できるように、隔膜4を収容することが可能なスリット部を備えることが好ましい。また、ガスケット7は、隔膜4をガスケット7の両表面に露出させること可能とする開口部を備えることが好ましい。ガスケット7が開口部を備えることで、スリット部内に隔膜4の縁部を収容し、隔膜4の縁部における端面を覆うことが可能となる。これにより、隔膜4の縁部における端面から電解液およびガスが漏れることを、確実に防止することができる。
【0112】
ガスケット7は、その材質が、特に制限されるものではなく、絶縁性を有する公知のゴム材料又は樹脂材料などを選択することができる。ゴム材料又は樹脂材料としては、具体的には、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、シリコーンゴム(SR)、エチレン-プロピレンゴム(EPT)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、フッ素ゴム(FR)、イソブチレン-イソプレンゴム(IIR)、ウレタンゴム(UR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)などのゴム材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)などのフッ素樹脂材料、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアセタールなどの樹脂材料を用いることができる。これらの中でも、弾性率および耐アルカリ性の観点から、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、フッ素ゴム(FR)を選択することが特に好適である。
【0113】
-バッフル板-
バッフル板8は、電極室5の内部における電解液の流れを制限する機能を有する仕切り板である。バッフル板8は、電極室5の内部における電解液とガスとの比を調整し、例えば、裏側に電解液のみが流れ、表側に電解液およびガスが流れるように、電解液とガスとを分離する。すなわち、バッフル板8により、所定の箇所にガスを滞留させることで、電極室5において電解液を内部循環させ、電解液の濃度をより均一にすることができる。
【0114】
バッフル板8は、例えば、陰極室5cの内部に設けられる。バッフル板8は、陰極2cと隔壁1との間に、陰極室5cの横方向に沿って、隔壁1に対して斜め又は平行に設けられることが好ましい。バッフル板8により仕切られた陰極2cの近傍の空間では、水の電気分解が進行すると、電解液の濃度が下がり、水素が発生する。これにより気液の比重差が生じる場合があるが、陰極室5cの内部に、バッフル板8が配置されることで、陰極室5cにおいて電解液の内部循環を促進させ、陰極室5cにおける電解液の濃度分布をより均一にすることができる。
【0115】
以上、複極式電解槽50の構成の一例について詳細に説明したが、複極式電解槽50は、上述の構成に限定されるものではない。複極式電解槽50は、上述の構成要素の他にも、例えば、電解液を配液又は集液するヘッダーなどを備えていてよい。
【0116】
<アルカリ水電解システムの運転方法>
図4を参照して、本実施形態に係るアルカリ水電解システム70の運転方法の一例について説明する。
【0117】
ステップS101において、整流器74は、アルカリ水電解システム70の外部から、変動する電力が供給されると、交流電力を直流電力に変換する。そして、整流器74は、複極式電解槽50における陽極端子と陰極端子との間に、所定の直流電圧を印加する。
【0118】
ステップS102において、複極式電解槽50は、整流器74から印加された所定の直流電圧に基づいて、電解液を用いて水の電気分解により、陽極側から酸素を発生させ、陰極側から水素を発生させる。
【0119】
ステップS103において、酸素分離タンク72oは、複極式電解槽50から流入した酸素および電解液の混合物から、酸素を分離する。分離された酸素は、酸素分離タンク72oの上方に設けられる排出口から排出される。分離された電解液は、酸素分離タンク72oの内部に貯留する。また、水素分離タンク72hは、複極式電解槽50から流入した水素および電解液の混合物から、水素を分離する。分離された水素は、水素分離タンク72hの上方に設けられる排出口から排出される。分離された電解液は、水素分離タンク72hの内部に貯留する。
【0120】
ステップS104において、熱交換器79oは、酸素分離タンク72oの内部に貯留する電解液を冷却する。また、熱交換器79hは、水素分離タンク72hの内部に貯留する電解液を冷却する。
【0121】
本実施形態に係るアルカリ水電解システム70の運転方法によれば、変動する投入電力に応じて、電解液を安定的に循環させることができる。したがって、本実施形態に係るアルカリ水電解システム70の運転方法を適用することで、高純度の水素を製造することが可能となる。
【0122】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本開示の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、実施形態の構成図に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。また、実施形態のフローチャートに記載の複数の工程を1つに組み合わせたり、あるいは1つの工程を分割したりすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明によれば、高純度の水素を製造することが可能なアルカリ水電解システムを実現できるため、石油精製、化学合成、金属精製などの分野の他、燃料電池車向けの水素ステーション、スマートコミュニティ、水素発電所などの用途において、特に有用である。
【符号の説明】
【0124】
1 隔壁
2 電極
2a 陽極
2c 陰極
2e 導電性弾性体
2r 集電体
3 外枠
4 隔膜
5 電極室
5a 陽極室
5c 陰極室
6 整流板
6a 陽極整流板
6c 陰極整流板
7 ガスケット
8 バッフル板
30 制御装置
50 複極式電解槽
51g1 ファストヘッド
51g2 ルーズヘッド
51i1 絶縁板
51i2 絶縁板
51a 陽極ターミナルエレメント
51c 陰極ターミナルエレメント
51r タイロッド
60 複極式エレメント
65 電解セル
70 アルカリ水電解システム
72 気液分離タンク
72o 酸素分離タンク
72h 水素分離タンク
73 水補給器
74 整流器
75 酸素濃度計
76 水素濃度計
78 圧力計
78o 圧力計
78h 圧力計
79 熱交換器
79o 熱交換器
79h 熱交換器
80 圧力調整弁
80o 圧力調整弁
80h 圧力調整弁
図1
図2
図3A
図3B
図4