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特許7470823蓄電池管理装置および電池装置の管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】蓄電池管理装置および電池装置の管理方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20240411BHJP
【FI】
H02J7/02 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022577851
(86)(22)【出願日】2021-01-27
(86)【国際出願番号】 JP2021002717
(87)【国際公開番号】W WO2022162755
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000238360
【氏名又は名称】武蔵精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 健志
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-146707(JP,A)
【文献】特開2007-143285(JP,A)
【文献】特開2008-199827(JP,A)
【文献】特開2014-102248(JP,A)
【文献】特開2016-091830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電池が直列に接続された組電池を管理するための蓄電池管理装置であって、
前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧を計測する電圧計測部と、
制御部と、
前記組電池から前記制御部に電力を供給する経路上に設けられる電圧変換回路と、
前記電圧変換回路と前記組電池との間に接続される起動スイッチと、
外部起動信号が入力される入力端子を有し、前記外部起動信号が起動の論理になると、前記起動スイッチをオン状態にすると共に、前記外部起動信号の論理状態を示す監視信号を前記制御部に向けて出力し、前記制御部から起動維持信号が入力されている限り前記起動スイッチのオン状態を維持する電源起動回路と、
を備え、
前記制御部は、
前記外部起動信号の論理状態が起動の論理になると、前記組電池に直列に接続されたラインスイッチをオン状態にし、前記外部起動信号の論理状態が停止の論理になると、前記ラインスイッチをオフ状態にするラインスイッチ制御部と、
前記外部起動信号の論理状態が起動の論理になると、前記電源起動回路への前記起動維持信号の出力を開始する起動維持制御部と、
前記外部起動信号の論理状態が停止の論理になると、前記電圧計測部により計測された前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧の変化量を所定時間間隔で取得し、前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧の変化量がすべて所定変化量以下になると、その時点の前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧をOCVとして記録し、前記起動維持制御部に前記起動維持信号の出力を停止させるOCV特定部と、
を有する、蓄電池管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電池管理装置であって、
前記OCV特定部は、前記外部起動信号の論理状態が停止の論理になると、前記電圧計測部により計測された前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧の変化量を所定時間間隔で取得し、前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧の変化量がすべて所定変化量以下になる前に、前記変化量の取得回数が所定回数に達する度に、それまで取得した前記変化量から前記複数の蓄電池のそれぞれのOCVを推定して記録する、蓄電池管理装置。
【請求項3】
複数の蓄電池が直列に接続された組電池を管理するための蓄電池管理装置であって、
前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧を計測する電圧計測部と、
制御部と、
前記組電池から前記制御部に電力を供給する経路上に設けられる電圧変換回路と、
前記電圧変換回路と前記組電池との間に接続される起動スイッチと、
外部起動信号が入力される入力端子を有し、前記外部起動信号が起動の論理になると、前記起動スイッチをオン状態にすると共に、前記外部起動信号の論理状態を示す監視信号を前記制御部に向けて出力し、前記制御部から起動維持信号が入力されている限り前記起動スイッチのオン状態を維持する電源起動回路と、
を備え、
前記制御部は、
前記外部起動信号の論理状態が起動の論理になると、前記組電池に直列に接続されたラインスイッチをオン状態にし、前記外部起動信号の論理状態が停止の論理になると、前記ラインスイッチをオフ状態にするラインスイッチ制御部と、
前記外部起動信号の論理状態が起動の論理になると、前記電源起動回路への前記起動維持信号の出力を開始する起動維持制御部と、
前記外部起動信号の論理状態が停止の論理になると、前記電圧計測部により計測された前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧の変化量を所定時間間隔で取得し、前記変化量の取得回数が所定回数に達すると、それまで取得した前記変化量から前記複数の蓄電池のそれぞれのOCVを推定して記録し、前記起動維持制御部に前記起動維持信号の出力を停止させるOCV特定部と、
を有する、蓄電池管理装置。
【請求項4】
複数の蓄電池が直列に接続された組電池を管理するための蓄電池管理装置であって、
前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧を計測する電圧計測部と、
制御部と、
前記組電池から前記制御部に電力を供給する経路上に設けられる電圧変換回路と、
前記電圧変換回路と前記組電池との間に接続される起動スイッチと、
外部起動信号が入力される入力端子を有し、前記外部起動信号が起動の論理になると、前記起動スイッチをオン状態にすると共に、前記外部起動信号の論理状態を示す監視信号を前記制御部に向けて出力し、前記制御部から起動維持信号が入力されている限り前記起動スイッチのオン状態を維持する電源起動回路と、
を備え、
前記制御部は、
前記外部起動信号の論理状態が起動の論理になると、前記組電池に直列に接続されたラインスイッチをオン状態にし、前記外部起動信号の論理状態が停止の論理になると、前記ラインスイッチをオフ状態にするラインスイッチ制御部と、
前記外部起動信号の論理状態が起動の論理になると、前記電源起動回路への前記起動維持信号の出力を開始する起動維持制御部と、
前記外部起動信号の論理状態が停止の論理になると、前記電圧計測部により計測された前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧の変化量を所定時間間隔で取得し、前記変化量の取得回数が所定回数に達する度に、それまで取得した前記変化量から前記複数の蓄電池のそれぞれのOCVを推定して記録し、前記ラインスイッチがオフ状態とされてから所定時間が経過すると、前記起動維持制御部に前記起動維持信号の出力を停止させるOCV特定部と、
を有する、蓄電池管理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の蓄電池管理装置であって、
前記OCV特定部は、前記外部起動信号の論理状態が停止の論理になると、前記電圧計測部により計測された前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧の変化量を所定時間間隔で取得し、前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧の変化量がすべて所定変化量以下になると、前記起動維持制御部に前記起動維持信号の出力を停止させ、次に前記外部起動信号の論理状態が起動の論理になると、その時点の前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧をOCVとして記録して、前記ラインスイッチ制御部に前記ラインスイッチをオン状態にさせる、蓄電池管理装置。
【請求項6】
複数の蓄電池が直列に接続された組電池と、
前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧を計測する電圧計測部と、
制御部と、
前記組電池から前記制御部に電力を供給する経路上に設けられる電圧変換回路と、
前記電圧変換回路と前記組電池との間に接続される起動スイッチと、
外部起動信号が入力される入力端子を有し、前記外部起動信号が起動の論理になると、前記起動スイッチをオン状態にすると共に、前記外部起動信号の論理状態を示す監視信号を前記制御部に向けて出力し、前記制御部から起動維持信号が入力されている限り前記起動スイッチのオン状態を維持する電源起動回路と、
を備える電池装置の管理方法であって、
前記外部起動信号の論理状態が起動の論理になると、前記組電池に直列に接続されたラインスイッチをオン状態にし、前記外部起動信号の論理状態が停止の論理になると、前記ラインスイッチをオフ状態にする工程と、
前記外部起動信号の論理状態が起動の論理になると、前記電源起動回路への前記起動維持信号の出力を開始する工程と、
前記外部起動信号の論理状態が停止の論理になると、前記電圧計測部により計測された前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧の変化量を所定時間間隔で取得し、前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧の変化量がすべて所定変化量以下になると、その時点の前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧をOCVとして記録し、前記起動維持信号の出力を停止する工程と、
を備える、電池装置の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、蓄電池管理装置および電池装置の管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の蓄電池が直列に接続された組電池において、例えば各蓄電池のSOC(State of Charge、充電率)を推定するために、各蓄電池のOCV(Open Circuit Voltage、開回路電圧)が計測される。
【0003】
電池電圧は、電池により動作する対象装置の動作状態によって変動する。そのため、対象装置が特定の動作モードにあるときに電池電圧を計測することにより、正確な電池電圧の計測値を得る技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、対象装置が特定の動作モードにあるときであっても電池電圧は変動し得るため、所定の周期で電池電圧の計測を繰り返し実行し、それらの計測値の平均値を電池電圧として算出する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-224844号公報
【文献】特開平10-229646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術に従い組電池を構成する各蓄電池のOCVを計測する場合、OCVの計測を実行する制御部が、長時間にわたってOCVの計測状態(または計測待機状態)となるため、OCVの計測に要する消費電力が大きい、という課題がある。
【0006】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本明細書に開示される第1の蓄電池管理装置は、複数の蓄電池が直列に接続された組電池を管理するための装置であって、電圧計測部と、制御部と、電圧変換回路と、起動スイッチと、電源起動回路とを備える。電圧計測部は、前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧を計測する。電圧変換回路は、前記組電池から前記制御部に電力を供給する経路上に設けられる。起動スイッチは、前記電圧変換回路と前記組電池との間に接続される。電源起動回路は、外部起動信号が入力される入力端子を有し、前記外部起動信号が起動の論理になると、前記起動スイッチをオン状態にすると共に、前記外部起動信号の論理状態を示す監視信号を前記制御部に向けて出力し、前記制御部から起動維持信号が入力されている限り前記起動スイッチのオン状態を維持する。また、前記制御部は、ラインスイッチ制御部と、起動維持制御部と、OCV特定部とを有する。ラインスイッチ制御部は、前記外部起動信号の論理状態が起動の論理になると、前記組電池に直列に接続されたラインスイッチをオン状態にし、前記外部起動信号の論理状態が停止の論理になると、前記ラインスイッチをオフ状態にする。起動維持制御部は、前記外部起動信号の論理状態が起動の論理になると、前記電源起動回路への前記起動維持信号の出力を開始する。OCV特定部は、前記外部起動信号の論理状態が停止の論理になると、前記電圧計測部により計測された前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧の変化量を所定時間間隔で取得し、前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧の変化量がすべて所定変化量以下になると、その時点の前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧をOCVとして記録し、前記起動維持制御部に前記起動維持信号の出力を停止させる。
【0009】
本蓄電池管理装置によれば、外部起動信号の論理状態が停止の論理になってラインスイッチがオフ状態になった後、各蓄電池の電圧の変化量がすべて所定変化量以下になると、すなわち、各蓄電池の電圧が十分に収束すると、その時点の電圧がOCVとして記録されるため、各蓄電池のOCVを高精度に特定することができる。ひいては、OCVを用いた所定の処理(例えば、SOCの推定)を高精度に実行することができる。また、本蓄電池管理装置によれば、OCVが記録されたら直ちに起動維持信号の出力が停止され、起動スイッチがオフ状態となり、組電池から制御部への電力供給が停止されるため、各蓄電池のOCVの特定のために要する消費電力を低減することができる。
【0010】
(2)上記蓄電池管理装置において、前記OCV特定部は、前記外部起動信号の論理状態が停止の論理になると、前記電圧計測部により計測された前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧の変化量を所定時間間隔で取得し、前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧の変化量がすべて所定変化量以下になる前に、前記変化量の取得回数が所定回数に達する度に、それまで取得した前記変化量から前記複数の蓄電池のそれぞれのOCVを推定して記録する構成としてもよい。本蓄電池管理装置によれば、比較的早いタイミングで各蓄電池のOCVを特定することができる。ひいては、OCVを用いた所定の処理(例えば、SOCの推定)を比較的早いタイミングで実行することができる。また、本蓄電池管理装置によれば、各蓄電池の電圧の変化量がすべて所定変化量以下になる前に、外部起動信号の論理状態が起動の論理になり、ラインスイッチがオン状態となって各蓄電池のOCVを計測できない状態となった場合であっても、その前に実行されたOCV推定結果を用いて各蓄電池のOCVの特定を実現することができる。ひいては、OCVを用いた所定の処理(例えば、SOCの推定)が実行不可となることを回避することができる。
【0011】
(3)本明細書に開示される第2の蓄電池管理装置は、複数の蓄電池が直列に接続された組電池を管理するための装置であって、電圧計測部と、制御部と、電圧変換回路と、起動スイッチと、電源起動回路とを備える。電圧計測部は、前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧を計測する。電圧変換回路は、前記組電池から前記制御部に電力を供給する経路上に設けられる。起動スイッチは、前記電圧変換回路と前記組電池との間に接続される。電源起動回路は、外部起動信号が入力される入力端子を有し、前記外部起動信号が起動の論理になると、前記起動スイッチをオン状態にすると共に、前記外部起動信号の論理状態を示す監視信号を前記制御部に向けて出力し、前記制御部から起動維持信号が入力されている限り前記起動スイッチのオン状態を維持する。また、前記制御部は、ラインスイッチ制御部と、起動維持制御部と、OCV特定部とを有する。ラインスイッチ制御部は、前記外部起動信号の論理状態が起動の論理になると、前記組電池に直列に接続されたラインスイッチをオン状態にし、前記外部起動信号の論理状態が停止の論理になると、前記ラインスイッチをオフ状態にする。起動維持制御部は、前記外部起動信号の論理状態が起動の論理になると、前記電源起動回路への前記起動維持信号の出力を開始する。OCV特定部は、前記外部起動信号の論理状態が停止の論理になると、前記電圧計測部により計測された前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧の変化量を所定時間間隔で取得し、前記変化量の取得回数が所定回数に達すると、それまで取得した前記変化量から前記複数の蓄電池のそれぞれのOCVを推定して記録し、前記起動維持制御部に前記起動維持信号の出力を停止させる。
【0012】
本蓄電池管理装置によれば、各蓄電池のOCVが記録されたら、直ちに起動維持信号の出力が停止され、起動スイッチがオフ状態となり、組電池から制御部への電力供給が停止されるため、各蓄電池のOCVの特定のために要する消費電力を低減することができる。特に、第本蓄電池管理処理によれば、各蓄電池の電圧の収束度合いにかかわらず、予め設定されたタイミングで各蓄電池のOCVの特定を完了して、組電池から制御部への電力供給を停止することができる。すなわち、例えば、直前に組電池に流れる電流が大きい場合のように、各蓄電池の電圧の収束に時間がかかる場合であっても、該収束の前に各蓄電池のOCVの特定を完了して組電池から制御部への電力供給を停止することができる。そのため、本蓄電池管理装置によれば、各蓄電池のOCVの特定のために要する消費電力を効果的に低減することができる。
【0013】
(4)本明細書に開示される第3の蓄電池管理装置は、複数の蓄電池が直列に接続された組電池を管理するための装置であって、電圧計測部と、制御部と、電圧変換回路と、起動スイッチと、電源起動回路とを備える。電圧計測部は、前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧を計測する。電圧変換回路は、前記組電池から前記制御部に電力を供給する経路上に設けられる。起動スイッチは、前記電圧変換回路と前記組電池との間に接続される。電源起動回路は、外部起動信号が入力される入力端子を有し、前記外部起動信号が起動の論理になると、前記起動スイッチをオン状態にすると共に、前記外部起動信号の論理状態を示す監視信号を前記制御部に向けて出力し、前記制御部から起動維持信号が入力されている限り前記起動スイッチのオン状態を維持する。また、前記制御部は、ラインスイッチ制御部と、起動維持制御部と、OCV特定部とを有する。ラインスイッチ制御部は、前記外部起動信号の論理状態が起動の論理になると、前記組電池に直列に接続されたラインスイッチをオン状態にし、前記外部起動信号の論理状態が停止の論理になると、前記ラインスイッチをオフ状態にする。起動維持制御部は、前記外部起動信号の論理状態が起動の論理になると、前記電源起動回路への前記起動維持信号の出力を開始する。OCV特定部は、前記外部起動信号の論理状態が停止の論理になると、前記電圧計測部により計測された前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧の変化量を所定時間間隔で取得し、前記変化量の取得回数が所定回数に達する度に、それまで取得した前記変化量から前記複数の蓄電池のそれぞれのOCVを推定して記録し、前記ラインスイッチがオフ状態とされてから所定時間が経過すると、前記起動維持制御部に前記起動維持信号の出力を停止させる。
【0014】
本蓄電池管理装置によれば、各蓄電池のOCVが記録されたら、直ちに起動維持信号の出力が停止され、起動スイッチがオフ状態となり、組電池から制御部への電力供給が停止されるため、各蓄電池のOCVの特定のために要する消費電力を低減することができる。特に、第本蓄電池管理処理によれば、各蓄電池の電圧の収束度合いにかかわらず、予め設定されたタイミングで各蓄電池のOCVの特定を完了して、組電池から制御部への電力供給を停止することができる。すなわち、例えば、直前に組電池に流れる電流が大きい場合のように、各蓄電池の電圧の収束に時間がかかる場合であっても、該収束の前に各蓄電池のOCVの特定を完了して組電池から制御部への電力供給を停止することができる。そのため、本蓄電池管理装置によれば、各蓄電池のOCVの特定のために要する消費電力を効果的に低減することができる。
【0015】
(5)上記蓄電池管理装置において、前記OCV特定部は、前記外部起動信号の論理状態が停止の論理になると、前記電圧計測部により計測された前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧の変化量を所定時間間隔で取得し、前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧の変化量がすべて所定変化量以下になると、前記起動維持制御部に前記起動維持信号の出力を停止させ、次に前記外部起動信号の論理状態が起動の論理になると、その時点の前記複数の蓄電池のそれぞれの電圧をOCVとして記録して、前記ラインスイッチ制御部に前記ラインスイッチをオン状態にさせる構成としてもよい。本蓄電池管理装置によれば、さらに十分に収束した各蓄電池の電圧がOCVとして記録されるため、各蓄電池のOCVをさらに高精度に特定することができる。ひいては、OCVを用いた所定の処理(例えば、SOCの推定)をさらに高精度に実行することができる。
【0016】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、蓄電池管理装置、蓄電池管理装置と組電池とを備える電池装置、それらの管理方法、それらの方法を実現するコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態における電池装置100の構成を概略的に示す説明図
図2】第1実施形態の蓄電池管理処理を示すシーケンス図
図3】第1実施形態の蓄電池管理処理中の各信号の状態や各スイッチの状態の一例を示す説明図
図4】第1実施形態の蓄電池管理処理中の特定の期間における各信号の状態や各スイッチの状態、各蓄電池12の電圧Vcellの状態の一例を示す説明図
図5】第2実施形態の蓄電池管理処理中の特定の期間における各信号の状態や各スイッチの状態、各蓄電池12の電圧Vcellの状態の一例を示す説明図
図6】第3実施形態の蓄電池管理処理中の特定の期間における各信号の状態や各スイッチの状態、各蓄電池12の電圧Vcellの状態の一例を示す説明図
図7】第3実施形態の蓄電池管理処理中の特定の期間における各信号の状態や各スイッチの状態、各蓄電池12の電圧Vcellの状態の他の例を示す説明図
図8】第4実施形態の電池管理処理中の特定の期間における各信号の状態や各スイッチの状態、各蓄電池12の電圧Vcellの状態の一例を示す説明図
図9】第5実施形態の電池管理処理中の特定の期間における各信号の状態や各スイッチの状態、各蓄電池12の電圧Vcellの状態の一例を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0018】
A.第1実施形態:
A-1.電池装置100の構成:
図1は、第1実施形態における電池装置100の構成を概略的に示す説明図である。電池装置100は、組電池10と、蓄電池管理装置20とを備える。
【0019】
組電池10は、複数の蓄電池12が直列に接続された構成を有している。本実施形態では、組電池10は、4つの蓄電池12から構成されている。各蓄電池12は、例えばリチウムイオン電池である。組電池10は、プラス端子42およびマイナス端子44を介して、図示しない負荷および外部電源に接続される。
【0020】
蓄電池管理装置20は、組電池10を含む電池装置100を管理するための装置である。蓄電池管理装置20は、電圧計22と、電流計24と、監視部28と、電圧変換回路32と、起動スイッチ34と、電源起動回路36と、ラインスイッチ40と、制御部60と、記録部70とを備えている。
【0021】
電圧計22は、各蓄電池12に対して1つ設けられている。各電圧計22は、各蓄電池12に対して並列に接続され、各蓄電池12の電圧を計測して、電圧計測値を示す信号を監視部28に向けて出力する。電流計24は、組電池10に対して直列に接続されている。電流計24は、組電池10に流れる電流を計測して、電流計測値を示す信号を監視部28に向けて出力する。監視部28は、電圧計22および電流計24から受け取った信号に基づき、各蓄電池12の電圧および組電池10に流れる電流を示す信号を制御部60に向けて出力する。電圧計22および監視部28は、電圧計測部の一例である。
【0022】
ラインスイッチ40は、組電池10とマイナス端子44との間に設置されている。ラインスイッチ40は、制御部60によってオン・オフ制御されることにより、組電池10と負荷および外部電源との間の接続を開閉する。ラインスイッチ40としては、例えば、MOSFETやリレーが用いられる。
【0023】
制御部60は、例えば、CPU、マルチコアCPU、プログラマブルなデバイス(Field Programmable Gate Array(FPGA)、Programmable Logic Device(PLD)等)を用いて構成され、蓄電池管理装置20の動作を制御する。制御部60は、ラインスイッチ制御部61と、起動維持制御部62と、OCV特定部63と、タイマー部64としての機能を有する。これら各部の機能については、後述の蓄電池管理処理の説明に合わせて説明する。
【0024】
記録部70は、例えばROMやRAM、ハードディスクドライブ(HDD)等により構成され、各種のプログラムやデータを記憶したり、各種の処理を実行する際の作業領域やデータの記憶領域として利用されたりする。例えば、記録部70には、後述する蓄電池管理処理を実行するためのコンピュータプログラムが格納されている。該コンピュータプログラムは、例えば、CD-ROMやDVD-ROM、USBメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体(不図示)に格納された状態で提供され、電池装置100にインストールすることにより記録部70に格納される。
【0025】
電圧変換回路32は、組電池10から制御部60に電力を供給する経路35上に設けられている。電圧変換回路32は、組電池10からの電力を、電圧を変換して制御部60に供給する回路である。起動スイッチ34は、上記経路35における組電池10と電圧変換回路32との間に配置されており、組電池10と電圧変換回路32との間の接続を開閉する。起動スイッチ34としては、例えば、MOSFETやリレーが用いられる。電源起動回路36は、起動スイッチ34のオン・オフを制御する回路である。電源起動回路36は、信号受信端子38(イネーブル、EN)を介して外部起動信号Soが入力される入力端子37を有している。
【0026】
A-2.蓄電池管理処理:
次に、第1実施形態の電池装置100において蓄電池管理装置20により実行される蓄電池管理処理について説明する。第1実施形態の蓄電池管理処理は、ラインスイッチ40を開閉することによって組電池10と負荷および外部電源との間の接続状態を切り替えたり、組電池10を構成する各蓄電池12のOCVを特定したりする処理である。蓄電池管理処理は、電池装置100の稼働中、繰り返し実行される。図2は、第1実施形態の蓄電池管理処理を示すシーケンス図である。図3は、第1実施形態の蓄電池管理処理中の各信号の状態や各スイッチの状態の一例を示す説明図である。図4は、第1実施形態の蓄電池管理処理中の特定の期間(図3の期間T1)における各信号の状態や各スイッチの状態、各蓄電池12の電圧Vcellの状態の一例を示す説明図である。
【0027】
図2に示すように、電源起動回路36(図1)は、電源起動回路36の入力端子37から入力される外部起動信号Soが起動の論理であるか否かを監視している(S110)。外部起動信号Soは、電池装置100を起動状態と停止状態との間で切り替えるために信号受信端子38を介して入力される信号である。外部起動信号Soが起動の論理になると(S110:YES)、電源起動回路36は、起動スイッチ34をオン状態にする(S120)(図3の時刻t1)。これにより、電圧変換回路32を介した組電池10から制御部60への電力供給が開始される。また、電源起動回路36は、制御部60に向けて、外部起動信号Soの論理状態を示す監視信号Smの出力を開始する(S120)。その後、電源起動回路36は、外部起動信号Soが停止の論理になったか否かを監視し(S122)、外部起動信号Soが停止の論理になると(S122:YES)、監視信号Smの論理状態を停止の論理に切り替える(S124)。
【0028】
制御部60への電力供給が開始されると、制御部60は、電源起動回路36から入力される監視信号Smが示す外部起動信号Soの論理状態が起動の論理であるか否かを監視する(S210)。監視信号Smが示す外部起動信号Soの論理状態が起動の論理である場合(S210:YES)、制御部60のラインスイッチ制御部61は、ラインスイッチ40をオン状態にする(S220)(図3の時刻t1)。これにより、組電池10が負荷および外部電源と接続される。また、制御部60の起動維持制御部62は、電源起動回路36に向けた起動維持信号Shの出力を開始する(S220)。電源起動回路36は、制御部60から起動維持信号Shが入力されているかを監視し(S130)、起動維持信号Shが入力されている限り(S130:YES)、起動スイッチ34のオン状態を維持する。なお、電源起動回路36は、起動維持信号Shが入力されている限り(S130:YES)、外部起動信号Soが停止の論理になったか否かの監視を継続する(S122)。
【0029】
その後、制御部60は、電源起動回路36から入力される監視信号Smが示す外部起動信号Soの論理状態が停止の論理であるか否かを監視する(S230)。監視信号Smが示す外部起動信号Soの論理状態が停止の論理になると(S230:YES)、制御部60のラインスイッチ制御部61は、ラインスイッチ40をオフ状態にする(S240)(図3および図4の時刻t2)。これにより、組電池10と負荷および外部電源との接続が解除され、各蓄電池12の電圧VcellはOCVに向けて収束するように変動する。
【0030】
ラインスイッチ40がオフ状態になると(S240)、制御部60のOCV特定部63は、以下に説明する各蓄電池12のOCV特定処理を開始する(S250)。すなわち、図4に示すように、制御部60のOCV特定部63は、タイマー部64により計測される所定時間間隔で、電圧計22および監視部28により計測された各蓄電池12の電圧Vcellの変化量(所定時間あたりの電圧変化量)ΔVcellを取得する。OCV特定部63は、各蓄電池12の電圧Vcellの変化量ΔVcellがすべて所定変化量ΔVth以下になると、その時点の各蓄電池12の電圧VcellをOCVとして記録部70に記録する。各蓄電池12の電圧Vcellの変化量ΔVcellがすべて所定変化量ΔVth以下になった場合、各蓄電池12の電圧Vcellは十分に収束してOCVとみなすことができると考えられるため、その時点での電圧VcellをOCVとして記録するものとしている。
【0031】
制御部60は、OCV特定処理の開始後(S250)、監視信号Smが示す外部起動信号Soの論理状態が停止の論理であるか否かを監視すると共に(S260)、OCV特定処理が完了したか否かを監視する(S270)。監視信号Smが示す外部起動信号Soの論理状態が停止の論理である状態で(S260:YES)、OCV特定処理が完了すると(S270:YES)、制御部60のOCV特定部63は、起動維持制御部62に、起動維持信号Shの出力を停止させる(S280)(図3および図4の時刻t3)。起動維持信号Shの出力が停止されると、電源起動回路36は、制御部60から起動維持信号Shが入力されていないと判断し(S130:NO)、起動スイッチ34をオフ状態にする(S140)。これにより、電圧変換回路32を介した組電池10から制御部60への電力供給が停止され、制御部60による消費電力はゼロになる。なお、OCV特定処理が完了する前に(S270:NO)、監視信号Smが示す外部起動信号Soの論理状態が起動の論理になると(S260:NO)、制御部60は、上述したS220以降の処理を同様に実行する。その後は、上述した処理が繰り返し実行される。
【0032】
A-3.第1実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の蓄電池管理装置20は、複数の蓄電池12が直列に接続された組電池10を管理するための装置である。蓄電池管理装置20は、電圧計22および監視部28と、制御部60と、電圧変換回路32と、起動スイッチ34と、電源起動回路36とを備える。電圧計22および監視部28は、複数の蓄電池12のそれぞれの電圧Vcellを計測する。電圧変換回路32は、組電池10から制御部60に電力を供給する経路35上に設けられる。起動スイッチ34は、電圧変換回路32と組電池10との間に接続される。電源起動回路36は、外部起動信号Soが入力される入力端子37を有し、外部起動信号Soが起動の論理になると、起動スイッチ34をオン状態にすると共に、外部起動信号Soの論理状態を示す監視信号Smを制御部60に向けて出力し、制御部60から起動維持信号Shが入力されている限り起動スイッチ34のオン状態を維持する。
【0033】
また、制御部60は、ラインスイッチ制御部61と、起動維持制御部62と、OCV特定部63とを有する。ラインスイッチ制御部61は、監視信号Smが示す外部起動信号Soの論理状態が起動の論理になると、組電池10に直列に接続されたラインスイッチ40をオン状態にし、監視信号Smが示す外部起動信号Soの論理状態が停止の論理になると、ラインスイッチ40をオフ状態にする。起動維持制御部62は、監視信号Smが示す外部起動信号Soの論理状態が起動の論理になると、電源起動回路36に向けた起動維持信号Shの出力を開始する。OCV特定部63は、監視信号Smが示す外部起動信号Soの論理状態が停止の論理になると、複数の蓄電池12のそれぞれの電圧Vcellの変化量ΔVcellを所定時間間隔で取得し、複数の蓄電池12のそれぞれの電圧Vcellの変化量ΔVcellがすべて所定変化量ΔVth以下になると、その時点の複数の蓄電池12のそれぞれの電圧VcellをOCVとして記録し、起動維持制御部62に起動維持信号Shの出力を停止させる。
【0034】
このように、本実施形態の蓄電池管理装置20によれば、監視信号Smが示す外部起動信号Soの論理状態が停止の論理になってラインスイッチ40がオフ状態になった後、各蓄電池12の電圧Vcellの変化量ΔVcellがすべて所定変化量ΔVth以下になると、すなわち、各蓄電池12の電圧Vcellが十分に収束すると、その時点の電圧VcellがOCVとして記録されるため、各蓄電池12のOCVを高精度に特定することができる。ひいては、OCVを用いた所定の処理(例えば、SOCの推定)を高精度に実行することができる。また、本実施形態の蓄電池管理装置20によれば、OCVが記録されたら直ちに起動維持信号Shの出力が停止され、起動スイッチ34がオフ状態となり、組電池10から制御部60への電力供給が停止されるため、各蓄電池12のOCVの特定のために要する消費電力を低減することができる。
【0035】
B.第2実施形態:
図5は、第2実施形態の蓄電池管理処理中の特定の期間における各信号の状態や各スイッチの状態、各蓄電池12の電圧Vcellの状態の一例を示す説明図である。以下では、第2実施形態の電池管理処理のうち、上述した第1実施形態の電池管理処理と異なる点についてのみ説明し、第1実施形態の電池管理処理と同一の点については、その説明を適宜省略する。
【0036】
第2実施形態の蓄電池管理処理では、各蓄電池12のOCV特定処理が完了し(図2のS270:YES)、起動維持信号Shの出力が停止され(S280)、起動スイッチ34がオフ状態にされた後(S140)(図5の時刻t3)、制御部60のOCV特定部63は、次に外部起動信号Soの論理状態が起動の論理になると(図5の時刻t4)、その時点の各蓄電池12の電圧VcellをOCVとして記録し(すなわち、記録部70に記録された各蓄電池12のOCVを更新し)、その後、ラインスイッチ制御部61にラインスイッチ40をオン状態にさせる。
【0037】
このように、第2実施形態の蓄電池管理処理では、制御部60のOCV特定部63は、監視信号Smが示す外部起動信号Soの論理状態が停止の論理になると、電圧計22および監視部28により計測された各蓄電池12の電圧Vcellの変化量ΔVcellを所定時間間隔で取得し、各蓄電池12の電圧Vcellの変化量ΔVcellがすべて所定変化量ΔVth以下になると、起動維持制御部62に起動維持信号Shの出力を停止させ、次に外部起動信号Soの論理状態が起動の論理になると、その時点の各蓄電池12の電圧VcellをOCVとして記録し、ラインスイッチ制御部61にラインスイッチ40をオン状態にさせる。そのため、第2実施形態の蓄電池管理処理によれば、さらに十分に収束した各蓄電池12の電圧VcellがOCVとして記録されるため、各蓄電池12のOCVをさらに高精度に特定することができる。ひいては、OCVを用いた所定の処理(例えば、SOCの推定)をさらに高精度に実行することができる。
【0038】
C.第3実施形態:
図6は、第3実施形態の蓄電池管理処理中の特定の期間における各信号の状態や各スイッチの状態、各蓄電池12の電圧Vcellの状態の一例を示す説明図である。以下では、第3実施形態の電池管理処理のうち、上述した第1実施形態の電池管理処理と異なる点についてのみ説明し、第1実施形態の電池管理処理と同一の点については、その説明を適宜省略する。
【0039】
第3実施形態の蓄電池管理処理では、OCV特定処理(図2のS250)の方法が、上述した第1実施形態の蓄電池管理処理とは異なる。具体的には、制御部60のOCV特定部63は、OCV特定処理を開始すると、図6に示すように、タイマー部64により計測される所定時間間隔で、各蓄電池12の電圧Vcellの変化量ΔVcellを取得し、各蓄電池12の電圧Vcellの変化量ΔVcellがすべて所定変化量ΔVth以下になったか否かを監視する。ここで、OCV特定部63は、各蓄電池12の電圧Vcellの変化量ΔVcellがすべて所定変化量ΔVth以下になる前に、電圧Vcellの変化量ΔVcellの取得回数が所定回数に達する度に、それまで取得した電圧Vcellの変化量ΔVcellから各蓄電池12のOCVを推定し、該推定したOCVを記録部70に記録する。例えば、図6に示す例では、電圧Vcellの変化量ΔVcellの取得回数が、3回またはそれ以上になる毎に(図6の時刻ta,tb,tc)、各蓄電池12のOCVの推定および記録が実行される。そして、OCV特定部63は、各蓄電池12の電圧Vcellの変化量ΔVcellがすべて所定変化量ΔVth以下になると(図6の時刻t3)、その時点の各蓄電池12の電圧VcellをOCVとして記録部70に記録する(すなわち、記録部70に記録された各蓄電池12のOCVを更新する)。
【0040】
なお、OCV特定部63による各蓄電池12のOCVの推定方法は、任意の方法で実行可能であるが、例えば、それまで取得した各蓄電池12の電圧Vcellの変化量ΔVcellに基づき、各蓄電池12の電圧Vcellの時間的推移を表す近似曲線を算出し、該近似曲線において各蓄電池12の電圧Vcellの収束値を求め、該収束値をOCVとして推定する方法を採用することができる。
【0041】
このように、第3実施形態の蓄電池管理処理では、OCV特定部63は、監視信号Smが示す外部起動信号Soの論理状態が停止の論理になると、電圧計22および監視部28により計測された各蓄電池12の電圧Vcellの変化量ΔVcellを所定時間間隔で取得し、各蓄電池12の電圧Vcellの変化量ΔVcellがすべて所定変化量ΔVth以下になる前に、電圧Vcellの変化量ΔVcellの取得回数が所定回数に達する度に、それまで取得した電圧Vcellの変化量ΔVcellから各蓄電池12のOCVを推定して記録する。そのため、第3実施形態によれば、比較的早いタイミングで各蓄電池12のOCVを特定することができる。ひいては、OCVを用いた所定の処理(例えば、SOCの推定)を比較的早いタイミングで実行することができる。
【0042】
また、図7に示すように、各蓄電池12の電圧Vcellの変化量ΔVcellがすべて所定変化量ΔVth以下になる前に、外部起動信号Soの論理状態が起動の論理になった場合(図7の時刻td)、ラインスイッチ40がオン状態となって各蓄電池12のOCVを計測できない状態となる。しかしながら、第3実施形態の蓄電池管理処理によれば、そのような場合であっても、その前に実行されたOCV推定結果(例えば図7の時刻taにおける推定結果)を用いて各蓄電池12のOCVの特定を実現することができる。ひいては、OCVを用いた所定の処理(例えば、SOCの推定)が実行不可となることを回避することができる。
【0043】
D.第4実施形態:
図8は、第4実施形態の電池管理処理中の特定の期間における各信号の状態や各スイッチの状態、各蓄電池12の電圧Vcellの状態の一例を示す説明図である。以下では、第4実施形態の電池管理処理のうち、上述した第1実施形態の電池管理処理と異なる点についてのみ説明し、第1実施形態の電池管理処理と同一の点については、その説明を適宜省略する。
【0044】
第4実施形態の蓄電池管理処理では、OCV特定処理(図2のS250)の方法が、上述した第1実施形態の蓄電池管理処理とは異なる。具体的には、制御部60のOCV特定部63は、OCV特定処理を開始すると、図8に示すように、タイマー部64により計測される所定時間間隔で、各蓄電池12の電圧Vcellの変化量ΔVcellを取得し、電圧Vcellの変化量ΔVcellの取得回数が所定回数に達すると、それまで取得した電圧Vcellの変化量ΔVcellから各蓄電池12のOCVを推定し、該推定したOCVを記録部70に記録する。例えば、図8に示す例では、電圧Vcellの変化量ΔVcellの取得回数が4回に達すると(図8の時刻t5)、各蓄電池12のOCVの推定および記録が実行される。なお、電圧Vcellの変化量ΔVcellからの各蓄電池12のOCVの推定方法は、上述した第3実施形態における推定方法と同様の方法を採用可能である。その後、OCV特定部63は、直ちに、起動維持制御部62に起動維持信号Shの出力を停止させる。
【0045】
このように、第4実施形態の蓄電池管理処理では、OCV特定部63は、監視信号Smが示す外部起動信号Soの論理状態が停止の論理になると、電圧計22および監視部28により計測された各蓄電池12の電圧Vcellの変化量ΔVcellを所定時間間隔で取得し、電圧Vcellの変化量ΔVcellの取得回数が所定回数に達すると、それまで取得した電圧Vcellの変化量ΔVcellから各蓄電池12のOCVを推定して記録し、起動維持制御部62に起動維持信号Shの出力を停止させる。そのため、第4実施形態の蓄電池管理処理によれば、各蓄電池12のOCVが記録されたら、直ちに起動維持信号Shの出力が停止され、起動スイッチ34がオフ状態となり、組電池10から制御部60への電力供給が停止されるため、各蓄電池12のOCVの特定のために要する消費電力を低減することができる。特に、第4実施形態の蓄電池管理処理によれば、各蓄電池12の電圧Vcellの収束度合いにかかわらず、予め設定されたタイミングで各蓄電池12のOCVの特定を完了して、組電池10から制御部60への電力供給を停止することができる。そのため、例えば、直前に組電池10に流れる電流が大きい場合のように、各蓄電池12の電圧Vcellの収束に時間がかかる場合であっても、該収束の前に各蓄電池12のOCVの特定を完了して組電池10から制御部60への電力供給を停止することができるため、各蓄電池12のOCVの特定のために要する消費電力を効果的に低減することができる。
【0046】
E.第5実施形態:
図9は、第5実施形態の電池管理処理中の特定の期間における各信号の状態や各スイッチの状態、各蓄電池12の電圧Vcellの状態の一例を示す説明図である。以下では、第5実施形態の電池管理処理のうち、上述した第1実施形態の電池管理処理と異なる点についてのみ説明し、第1実施形態の電池管理処理と同一の点については、その説明を適宜省略する。
【0047】
第5実施形態の蓄電池管理処理では、OCV特定処理(図2のS250)の方法が、上述した第1実施形態の蓄電池管理処理とは異なる。具体的には、制御部60のOCV特定部63は、OCV特定処理を開始すると、図9に示すように、タイマー部64により計測される所定時間間隔で、各蓄電池12の電圧Vcellの変化量ΔVcellを取得し、電圧Vcellの変化量ΔVcellの取得回数が所定回数に達する度に、それまで取得した電圧Vcellの変化量ΔVcellから各蓄電池12のOCVを推定して記録部70に記録する。なお、電圧Vcellの変化量ΔVcellからの各蓄電池12のOCVの推定方法は、上述した第3実施形態における推定方法と同様の方法を採用可能である。また、OCV特定部63は、ラインスイッチ40がオフ状態とされてから(すなわち、OCV特定処理が開始されてから)所定時間が経過すると、起動維持制御部62に起動維持信号Shの出力を停止させる。例えば、図9に示す例では、電圧Vcellの変化量ΔVcellの取得回数が、3回またはそれ以上になる毎に、各蓄電池12のOCVの推定および記録が実行され、ラインスイッチ40がオフ状態とされてから所定時間が経過した時刻t6に、起動維持信号Shの出力が停止されている。
【0048】
このように、第5実施形態の蓄電池管理処理では、OCV特定部63は、監視信号Smが示す外部起動信号Soの論理状態が停止の論理になると、電圧計22および監視部28により計測された各蓄電池12の電圧Vcellの変化量ΔVcellを所定時間間隔で取得し、電圧Vcellの変化量ΔVcellの取得回数が所定回数に達する度に、それまで取得した電圧Vcellの変化量ΔVcellから各蓄電池12のOCVを推定して記録し、ラインスイッチ40がオフ状態とされてから所定時間が経過すると、起動維持制御部62に起動維持信号Shの出力を停止させる。そのため、第5実施形態の蓄電池管理処理によれば、OCVが記録されたら直ちに起動維持信号Shの出力が停止され、起動スイッチ34がオフ状態となり、組電池10から制御部60への電力供給が停止されるため、各蓄電池12のOCVの特定のために要する消費電力を低減することができる。特に、第5実施形態によれば、各蓄電池12の電圧Vcellの収束度合いにかかわらず、予め設定されたタイミングで各蓄電池12のOCVの特定を完了して、組電池10から制御部60への電力供給を停止することができる。例えば、直前に組電池10に流れる電流が大きい場合のように、各蓄電池12の電圧Vcellの収束に時間がかかる場合であっても、該収束の前に各蓄電池12のOCVの特定を完了して組電池10から制御部60への電力供給を停止することができるため、各蓄電池12のOCVの特定のために要する消費電力を効果的に低減することができる。
【0049】
F.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0050】
上記各実施形態における電池装置100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記各実施形態において、組電池10を構成する蓄電池12の個数は任意に変更可能である。また、上記各実施形態において、電源起動回路36と制御部60とを一体構成としてもよい。
【0051】
上記各実施形態における蓄電池管理処理の内容は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、蓄電池管理処理のうちの各蓄電池12のOCV特定処理について、該処理の直前に(ラインスイッチ40がオフ状態とされる直前に)組電池10に流れていた電流値に応じて、OCV特定処理の方法を変更してもよい。具体的には、直前に組電池10に流れていた電流値が比較的小さい場合には、各蓄電池12の電圧Vcellの収束に要する時間が比較的短いと考えられるため、上記第1実施形態のように、各蓄電池12の電圧Vcellの変化量ΔVcellがすべて所定変化量ΔVth以下になるまで起動スイッチ34をオン状態に維持して、OCV特定の精度向上を優先させる方法を採用する一方、直前に組電池10に流れていた電流値が比較的大きい場合には、各蓄電池12の電圧Vcellの収束に要する時間が比較的長いと考えられるため、上記第3実施形態や第4実施形態のように、各蓄電池12の電圧Vcellの変化量ΔVcellがすべて所定変化量ΔVth以下になる前に起動スイッチ34をオフ状態にして、消費電力の削減を優先させる方法を採用するものとしてもよい。
【0052】
また、上記第3実施形態から第5実施形態において、第2実施形態と同様に、各蓄電池12のOCV特定処理が完了し、起動維持信号Shの出力が停止され、起動スイッチ34がオフ状態にされた後、次に外部起動信号Soの論理状態が起動の論理になると、その時点の各蓄電池12の電圧VcellがOCVとして記録された後、ラインスイッチ40がオン状態にされるとしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10:組電池 12:蓄電池 20:蓄電池管理装置 22:電圧計 24:電流計 28:監視部 32:電圧変換回路 34:起動スイッチ 35:経路 36:電源起動回路 37:入力端子 38:信号受信端子 40:ラインスイッチ 42:プラス端子 44:マイナス端子 60:制御部 61:ラインスイッチ制御部 62:起動維持制御部 63:OCV特定部 64:タイマー部 70:記録部 100:電池装置 Sh:起動維持信号 Sm:監視信号 So:外部起動信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9