(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】輸送方法、輸送支援方法、輸送支援装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B65D 81/38 20060101AFI20240411BHJP
【FI】
B65D81/38
(21)【出願番号】P 2023010874
(22)【出願日】2023-01-27
(62)【分割の表示】P 2021551381の分割
【原出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2019180333
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】上山 健治
(72)【発明者】
【氏名】井手上 尚弘
(72)【発明者】
【氏名】船越 俊洋
(72)【発明者】
【氏名】植木 美賀
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-76624(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102004048560(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0243353(US,A1)
【文献】国際公開第2005/073648(WO,A1)
【文献】特開2018-8719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生鮮品
の輸送を支援するためにコンピュータによって実行される輸送支援方法であって、
前記生鮮品の種類及び量に関する情報と輸送目的地に関する情報とを含む依頼情報を取得する取得工程と、
前記依頼情報に基づいて前記生鮮品を予冷する際の予冷条件を算出する算出工程と、
前記予冷条件を出力する出力工程と、を含み、
前記算出工程では、前記依頼情報と、前記依頼情報から特定される前記生鮮品の呼吸熱又は摩擦熱に関する情報を含む生鮮品情報と、に基づいて、前記生鮮品を前記輸送目的地まで輸送するために要する輸送時間と、前記輸送中における前記生鮮品の温度変動と、を算出し、前記輸送時間及び前記温度変動に基づいて前記予冷条件を算出する、輸送支援方法。
【請求項2】
生鮮品
の輸送を支援するためにコンピュータによって実行される輸送支援方法であって、
前記生鮮品の種類及び量に関する情報と輸送目的地に関する情報とを含む依頼情報を取得する取得工程と、
前記依頼情報に基づいて前記生鮮品を予冷する際の予冷条件を算出する算出工程と、
前記予冷条件を出力する出力工程と、を含み、
前記算出工程では、前記依頼情報に基づいて前記輸送中における前記生鮮品の温度変動を算出し、前記温度変動に基づいて前記輸送中における前記生鮮品の品温を
算出し、前記品温を輸送完了時点まで積算した積算温度が所定の閾値未満となるように前記予冷条件を算出する、輸送支援方法。
【請求項3】
生鮮品
の輸送を支援するための方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記方法は、
前記生鮮品の種類及び量に関する情報と輸送目的地に関する情報とを含む依頼情報を取得する取得工程と、
前記依頼情報に基づいて前記生鮮品を予冷する際の予冷条件を算出する算出工程と、
前記予冷条件を出力する出力工程と、を含み、
前記算出工程では、前記依頼情報と、前記依頼情報から特定される前記生鮮品の呼吸熱又は摩擦熱に関する情報を含む生鮮品情報と、に基づいて、前記生鮮品を前記輸送目的地まで輸送するために要する輸送時間と、前記輸送中における前記生鮮品の温度変動と、を算出し、前記輸送時間及び前記温度変動に基づいて前記予冷条件を算出する、プログラム。
【請求項4】
生鮮品
の輸送を支援するための方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記方法は、
前記生鮮品の種類及び量に関する情報と輸送目的地に関する情報とを含む依頼情報を取得する取得工程と、
前記依頼情報に基づいて前記生鮮品を予冷する際の予冷条件を算出する算出工程と、
前記予冷条件を出力する出力工程と、を含み、
前記算出工程では、前記依頼情報に基づいて前記輸送中における前記生鮮品の温度変動を算出し、前記温度変動に基づいて前記輸送中における前記生鮮品の品温を
算出し、前記品温を輸送完了時点まで積算した積算温度が所定の閾値未満となるように前記予冷条件を算出する、プログラム。
【請求項5】
生鮮品
の輸送を支援するための輸送支援装置であって、
前記生鮮品の種類及び量に関する情報と輸送目的地に関する情報とを含む依頼情報を取得する取得部と、
前記依頼情報に基づいて前記生鮮品を予冷する際の予冷条件を算出する算出部と、
前記予冷条件を出力する出力部と、を備え、
前記算出部は、前記依頼情報と、前記依頼情報から特定される前記生鮮品の呼吸熱又は摩擦熱に関する情報を含む生鮮品情報と、に基づいて、前記生鮮品を前記輸送目的地まで輸送するために要する輸送時間と、前記輸送中における前記生鮮品の温度変動と、を算出し、前記輸送時間及び前記温度変動に基づいて前記予冷条件を算出する、輸送支援装置。
【請求項6】
生鮮品
の輸送を支援するための輸送支援装置であって、
前記生鮮品の種類及び量に関する情報と輸送目的地に関する情報とを含む依頼情報を取得する取得部と、
前記依頼情報に基づいて前記生鮮品を予冷する際の予冷条件を算出する算出部と、
前記予冷条件を出力する出力部と、を備え、
前記算出部は、前記依頼情報に基づいて前記輸送中における前記生鮮品の温度変動を算出し、前記温度変動に基づいて前記輸送中における前記生鮮品の品温を
算出し、前記品温を輸送完了時点まで積算した積算温度が所定の閾値未満となるように前記予冷条件を算出する、輸送支援装置。
【請求項7】
生鮮品を輸送する
ための梱包方法であって、
前記
生鮮品を予冷する予冷工程と、
予冷された前記
生鮮品を断熱材パネルで包囲する包囲工程と
、を含み
、
前記予冷工程では、
前記生鮮品の種類及び量に関する情報と輸送目的地に関する情報とを含む依頼情報を取得し、
前記依頼情報と、前記依頼情報から特定される前記生鮮品の呼吸熱又は摩擦熱に関する情報を含む生鮮品情報と、に基づいて、前記生鮮品を前記輸送目的地まで輸送するために要する輸送時間と、前記輸送中における前記生鮮品の温度変動と、を算出し、前記輸送時間及び前記温度変動に基づいて予冷条件を算出し、
算出した前記予冷条件に基づいて前記生鮮品を予冷する、
梱包方法。
【請求項8】
生鮮品を輸送する
ための梱包方法であって、
前記
生鮮品を予冷する予冷工程と、
予冷された前記
生鮮品を断熱材パネルで包囲する包囲工程と
、を含み
、
前記予冷工程では、
前記生鮮品の種類及び量に関する情報と輸送目的地に関する情報とを含む依頼情報を取得し、
前記依頼情報に基づいて前記輸送中における前記生鮮品の温度変動を算出し、前記温度変動に基づいて前記輸送中における前記生鮮品の品温を算出し、前記品温を輸送完了時点まで積算した積算温度が所定の閾値未満となるように予冷条件を算出し、
算出した前記予冷条件に基づいて前記生鮮品を予冷する、
梱包方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送方法、輸送支援方法、輸送支援装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、青果物等の荷物を出荷拠点から目的地へと冷蔵輸送車で輸送することが行われている。冷蔵輸送車を使用した冷蔵輸送では、車内に積載される位置によって荷物の冷蔵温度にムラが生じることに加え、満載・混載や荷降ろしに起因して冷蔵効果が低減されてしまう。また、冷蔵輸送車を使用すると、途中で荷物の積替作業が発生したり、到着時等に荷物が常温のまま放置されたりする場合がある。このため、たとえ荷物を保冷したとしても、目的地まで低温状態を維持することは困難であった。
【0003】
そこで、近年においては、荷物を収納するための断熱容器に、ドライアイス、氷、保冷剤、蓄冷材等の冷媒を収納する冷媒収納空間を設け、冷媒収納空間に収納した冷媒から荷物へと冷気を供給する技術が提案されている(例えば、特許文献1~4参照)。かかる技術を採用すると、冷媒から供給される冷気により荷物の低温を維持することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-43020号公報
【文献】特開2008-256336号公報
【文献】特開2015-9838号公報
【文献】特許第6436822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1~4に記載されたような従来の技術を採用すると、ドライアイス等の冷媒を予め準備したり途中で補充・交換したりする必要があり、そのような冷媒の準備・補充・交換作業が煩雑であった。また、断熱容器内に冷媒収納空間を設けていることから、荷物を収納するための空間が狭くなるために荷物の積載量が減少し、輸送効率が低下してしまうという問題もある。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、ドライアイス等の冷媒を用いることなく対象物の低温状態を維持することができ、かつ、高い輸送効率を実現させることができる輸送方法を提供することを目的とする。また、本発明は、生鮮品を常温輸送する際における生鮮品の予冷条件を的確に設定して常温輸送を支援することができる方法、装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明に係る輸送方法は、対象物を予冷する予冷工程と、予冷された対象物を断熱材パネルで包囲する包囲工程と、断熱材パネルで包囲された対象物を輸送する輸送工程と、を含むものである。予冷工程では、対象物を-60~20℃の範囲内で予冷することができる。
【0008】
かかる方法を採用すると、予冷された対象物を断熱材パネルで包囲して輸送することにより、断熱材パネル内部の空間で対象物を冷媒として機能させることができるため、輸送中においても対象物の低温状態を維持することができる。従って、例えば外気温が対象物の温度より高い場合においても、対象物が外気温によって加温されることを抑制することができ、対象物の品質低下を防ぐことができる。また、外気温が対象物の温度より低い場合においても、対象物が外気温によって過冷却されることを抑制することができ、対象物(例えば青果物)の低温障害を防ぐことができる。本方法においては、ドライアイス等の冷媒を用いる必要がないため、冷媒を別途準備したり途中で補充・交換したりする作業を省くことができ、かつ、冷媒収納空間を省くことができるため荷物の積載量を増大させて高い輸送効率を実現させることができる。
【0009】
本発明に係る輸送方法において、予冷工程では、目的地到着時における対象物の温度(着時温度)が設定された場合に、この着時温度が達成されるように、外気温と、対象物の量(嵩密度や容積)と、対象物の比熱と、輸送時間と、断熱材パネルの熱抵抗値と、に基づいて伝熱を算出して予冷温度を設定することができる。
【0010】
かかる方法を採用すると、目的地到着時における対象物の温度(着時温度)が達成されるように外気温等に基づいて適切に予冷温度を設定することができる。
【0011】
本発明に係る輸送方法において、予冷工程では、対象物を少なくとも2つの対象物群に分け、それら対象物群を互いに異なる予冷条件で予冷することができる。この際、包囲工程では、予冷工程で予冷した対象物群をそれぞれ異なる断熱材パネルで包囲することができる。
【0012】
かかる方法を採用すると、鮮度を保つためにそれぞれ適した予冷温度帯で対象物群を運搬することができる。
【0013】
本発明に係る輸送方法において、予冷工程では、対象物を少なくとも2つの対象物群に分け、それら対象物群を互いに異なる予冷条件で予冷することができる。この際、包囲工程では、予冷工程で予冷した対象物群を同一の断熱材パネルで包囲することができる。
【0014】
かかる方法を採用すると、一方の対象物群が他方の対象物群の保冷剤として働き、全体として鮮度を保ったまま運搬することができる。特に熱容量の違う対象物群を混載した場合に効果が高い。
【0015】
本発明に係る輸送方法において、包囲工程では、断熱材パネル内部の空間の全容積に占める対象物の容積の割合を30%以上に設定するか、又は、断熱材パネル内部における対象物の密度を30kg/m3以上に設定することができる。
【0016】
かかる方法を採用すると、断熱材パネル内部の空間の全容積に占める対象物の容積の割合(嵩占有率)を特定値(30%)以上に設定するか、又は、断熱材パネル内部における対象物の密度を特定値(30kg/m3)以上に設定するため、所望の冷媒効果を維持することができる。嵩占有率が30%未満であったり密度が30kg/m3未満であったりすると所望の冷媒効果を維持できないため、好ましくない。
【0017】
本発明に係る輸送方法において、包囲工程では、50m2・K/W以下の熱抵抗を有する断熱材で構成した断熱材パネルを使用することができる。
【0018】
かかる方法を採用すると、特定の熱抵抗(50m2・K/W以下)を有する断熱材で構成した断熱材パネルで対象物を包囲するため、断熱効果を効果的に維持することができる。
【0019】
本発明に係る輸送方法において、包囲工程では、厚み10mmあたりの熱抵抗が0.3m2・K/W以上の熱抵抗を有する断熱材で構成した断熱材パネルを使用することができる。
【0020】
かかる方法を採用すると、断熱材パネルの厚みを薄くしても熱抵抗を確保することができ、運搬容量を稼ぐことができる。
【0021】
本発明に係る輸送方法において、包囲工程では、0.15N/mm2以上の曲げ強度を有する断熱材で構成した断熱材パネルを使用することができる。
【0022】
かかる方法を採用すると、特定の曲げ強度(0.15N/mm2以上)を有する断熱材で構成した断熱材パネルで対象物を包囲するため、輸送時における断熱材パネルの変形を抑制するとともに振動・衝撃を吸収して圧潰を抑制することができ、対象物を確実に保護して断熱効果を効果的に維持することができる。
【0023】
本発明に係る輸送方法において、包囲工程では、断熱材パネルで構成したガス交換速度1回/時以下の気密性を有する筐体で対象物を包囲することができる。
【0024】
かかる方法を採用すると、断熱材パネルで構成した特定の気密性(ガス交換速度1回/時以下)を有する筐体で対象物を包囲するため、筐体内のガス濃度(例えばCO2濃度)を制御することができる。従って、例えば対象物が青果物である場合に、青果物の呼吸を抑制して鮮度を維持することができる。
【0025】
また、本発明に係る輸送支援方法は、生鮮品の常温輸送を支援するためにコンピュータによって実行される方法であって、生鮮品の種類及び量に関する情報と輸送目的地に関する情報とを含む依頼情報を取得する取得工程と、依頼情報に基づいて生鮮品を予冷する際の予冷条件を算出する算出工程と、予冷条件を出力する出力工程と、を含むものである。
【0026】
また、本発明に係るプログラムは、既に述べた輸送支援方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0027】
また、本発明に係る輸送支援装置は、生鮮品の常温輸送を支援するための装置であって、生鮮品の種類及び量に関する情報と輸送目的地に関する情報とを含む依頼情報を取得する取得部と、依頼情報に基づいて生鮮品を予冷する際の予冷条件を算出する算出部と、予冷条件を出力する出力部と、を備えるものである。なお、本明細書における「常温輸送」とは、冷却や加温を行うことなく輸送することを含む。例えば、冷却装置を有さない輸送手段等を使用して輸送を行ってもよいし、加温装置を有さない輸送手段等を使用して輸送を行ってもよい。
【0028】
かかる構成及び方法を採用すると、生鮮品の種類及び量に関する情報と、輸送目的地に関する情報と、を含む依頼情報を取得し、この取得した依頼情報に基づいて生鮮品を予冷する際の予冷条件を算出し、この算出した予冷条件を出力することができる。従って、依頼者から提供された依頼情報を入力として的確な予冷条件を出力し、この出力した予冷条件を生鮮品の保管者に提供することができる。そして、かかる予冷条件の提供を受けた保管者は、その的確な予冷条件で出荷前の生鮮品を適切に予冷することができるため、輸送目的地における生鮮品の品質を維持することが可能となる。
【0029】
本発明に係る輸送支援方法における算出工程では、依頼情報に基づいて、生鮮品を輸送目的地まで輸送するために要する輸送時間と、輸送中における生鮮品の温度変動と、を算出し、輸送時間及び温度変動に基づいて予冷条件を算出することができる。ここで、輸送中における生鮮品の温度変動は、生鮮品を輸送するための容器の内部に輸送中に入ってくる進入熱と、容器内に収納された生鮮品の重量及び比熱と、に基づいて算出することができる。進入熱は、容器の内外における気温と、容器の伝熱面積及び熱通過率と、に基づいて算出することができる。熱通過率は、容器の内外における熱伝達率と、容器を構成する断熱材の厚さ及び熱伝導率と、に基づいて算出することができる。
【0030】
かかる方法を採用すると、依頼情報に基づいて、生鮮品を輸送目的地まで輸送するために要する輸送時間と、輸送中における生鮮品の温度変動と、を算出し、これら輸送時間及び温度変動に基づいて予冷条件を算出することができる。この際、生鮮品を輸送するための容器に関する情報(容器内外の熱伝達率、容器内外の気温、容器を構成する断熱材の厚さ及び熱伝導率)と、容器内に収納された生鮮品の重量及び比熱と、に基づいて輸送中における生鮮品の温度変動を的確に算出することができる。従って、予冷条件を的確に算出することが可能となる。
【0031】
本発明に係る輸送支援方法における算出工程では、輸送目的地の到着時における生鮮品の温度(又は輸送目的地に到着するまでの生鮮品の積算温度)が所定の閾値未満となるように、予冷条件を算出することができる。
【0032】
かかる方法を採用すると、輸送目的地の到着時における生鮮品の温度(又は輸送目的地に到着するまでの生鮮品の積算温度)が所定の閾値未満となるように、予冷条件を的確に算出することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の一態様によれば、ドライアイス等の冷媒を用いることなく対象物の低温状態を維持することができ、かつ、高い輸送効率を実現させることができる輸送方法を提供することが可能となる。また、生鮮品を常温輸送する際における生鮮品の予冷条件を的確に設定して常温輸送を支援することができる方法、装置及びプログラムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の実施形態に係る輸送方法で使用される断熱容器を分解した状態の斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る輸送方法で使用される断熱容器を組み立てた状態の斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る輸送方法で使用される断熱容器の台座上に支持部材を配置した状態を示す平面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る輸送方法で使用される断熱容器の各パーツを積層して小容積化した状態を示す説明図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る輸送支援装置の機能的構成を説明するための機能ブロック図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る輸送支援装置の物理的的構成を説明するための構成図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る輸送支援方法の各工程を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態はあくまでも好適な適用例であって、本発明の適用範囲がこれらに限定されるものではない。
【0036】
<輸送方法>
まず、本発明の実施形態に係る輸送方法について説明する。本実施形態に係る輸送方法は、所定の対象物を予冷した状態で輸送する方法であって、対象物を予冷する予冷工程と、予冷された対象物を断熱材パネルで包囲する包囲工程と、断熱材パネルで包囲された対象物を輸送する輸送工程と、を含むものである。対象物は、例えば、青果物、食肉、鮮魚、飲料、加工食品、穀類、化粧品、医薬品、花、茶葉、コーヒー豆等であり、これらを筐体(段ボール箱、鉄コンテナ等)に収納した状態をも含む。
【0037】
予冷工程では、対象物を-60~20℃の範囲内で予冷する。例えば対象物が青果物である場合には予冷工程で0~15℃の範囲内で予冷し、対象物が食肉や鮮魚である場合には予冷工程で-60~10℃の範囲内で予冷し、対象物が(缶コーヒーや紙パック飲料等の)飲料である場合には予冷工程で-5~5℃の範囲内で予冷し、対象物が(チルド食品等の)加工食品である場合には予冷工程で-5~5℃の範囲内で予冷し、対象物が(米や麦等の)穀類である場合には予冷工程で5~15℃の範囲内で予冷し、対象物が化粧品である場合には予冷工程で-20~20℃の範囲内で予冷し、対象物が医薬品である場合には予冷工程で-60~10℃の範囲内で予冷し、対象物が花である場合には予冷工程で0~15℃の範囲内で予冷し、対象物が茶葉である場合には予冷工程で-20~15℃の範囲内で予冷し、対象物がコーヒー豆である場合には予冷工程で-20~15℃の範囲内で予冷する。
【0038】
予冷工程では、目的地到着時における対象物の温度(着時温度)が設定された場合に、この着時温度が達成されるように、外気温と、対象物の量(嵩密度や容積)と、対象物の比熱と、輸送時間と、断熱材パネルの熱抵抗値と、に基づいて伝熱を算出して予冷温度を設定することができる。このようにすると、目的地到着時における対象物の温度(着時温度)が達成されるように外気温等に基づいて適切に予冷温度を設定することができる。また、予冷工程では、対象物を少なくとも2つの対象物群に分け、それら対象物群を互いに異なる予冷条件で予冷することもできる。
【0039】
包囲工程では、予冷工程で予冷した対象物群をそれぞれ異なる断熱材パネルで包囲することができる。例えば、5℃に予冷したキャベツとニンジンを第一の断熱容器に入れ、10℃に予冷したピーマンとトマトを第二の断熱容器に入れ、1℃に予冷したタマネギを第三の断熱容器に入れ、これら第一、第二、第三の断熱容器を一台の輸送車で輸送することができる。このようにすると、鮮度を保つためにそれぞれ適した予冷温度帯で対象物群を運搬することができる(これに対し、従来の冷蔵車による運搬では、一つの予冷温度帯でしか運搬できない)。
【0040】
また、包囲工程では、予冷工程で予冷した対象物群を同一の断熱材パネルで包囲することができる。このようにすると、一方の対象物群が他方の対象物群の保冷剤として働き、全体として鮮度を保ったまま運搬することができる。特に熱容量の違う対象物群を混載した場合に効果が高い。例えば、3℃に予冷した温度変化し難い対象物群(例えばバレイショ)と、1℃に予冷した温度変化し易い対象物群(例えばホウレン草等の葉物野菜)と、を一つの断熱容器に混載し輸送することができる。
【0041】
包囲工程では、断熱材パネル内部の空間の全容積に占める対象物の容積の割合(嵩占有率)を30%以上に設定するか、又は、断熱材パネル内部における対象物の密度を30kg/m3以上に設定する。このように対象物の嵩占有率を特定値以上に設定するか又は対象物の密度を特定値以上に設定するため、所望の冷媒効果を維持することができる。嵩占有率が30%未満であったり密度が30kg/m3未満であったりすると所望の冷媒効果を維持できないため、好ましくない。
【0042】
包囲工程では、50m2・K/W以下の熱抵抗を有する断熱材で構成した断熱材パネルを使用するようにする。このように特定の熱抵抗を有する断熱材で構成した断熱材パネルで対象物を包囲するため、断熱効果を効果的に維持することができる。また、包囲工程では、厚み10mmあたりの熱抵抗が0.3m2・K/W以上の熱抵抗を有する断熱材で構成した断熱材パネルを使用することができる。このようにすると、断熱材パネルの厚みを薄くしても熱抵抗を確保することができ、荷物を収納するための空間を大きくすることができる。
【0043】
また、包囲工程では、0.15N/mm2以上の曲げ強度を有する断熱材で構成した断熱材パネルを使用するようにする。このように特定の曲げ強度を有する断熱材で構成した断熱材パネルで対象物を包囲するため、輸送時における断熱材パネルの変形を抑制するとともに振動・衝撃を吸収して圧潰を抑制することができ、対象物を確実に保護して断熱効果を効果的に維持することができる。また、包囲工程では、断熱材パネルで構成したガス交換速度1回/時以下の気密性を有する筐体で対象物を包囲するようにする。このように特定の気密性を有する筐体で対象物を包囲するため、筐体内のガス濃度(例えばCO2濃度)を制御することができる。従って、例えば対象物が青果物である場合に、青果物の呼吸を抑制して鮮度を維持することができる。
【0044】
<断熱容器>
ここで、
図1~
図4を用いて、本実施形態に係る輸送方法で使用される断熱容器1の構成について説明する。
【0045】
断熱容器1は、
図1及び
図2に示すように、断熱材パネルからなる前板10、後板20、左右一対の側板30、底板40及び天板50を備える略直方体状の断熱容器である。前板10、後板20、側板30、底板40及び天板50を構成する断熱材パネルとしては、既に述べたように、50m
2・K/W以下の熱抵抗を有するとともに、0.15N/mm
2以上の曲げ強度を有する断熱材で構成した断熱材パネルを採用するものとする。
【0046】
前板10は、
図1及び
図2に示すように、所定厚さを有する平面視略矩形状の平板である。本実施形態においては、前板10として、断熱容器1の上方に配置される上方前板11と、断熱容器1の下方に配置される下方前板12と、を採用している。下方前板12は、
図3に示すように、所定の場所に設置される台座60に形成された溝61に嵌合されて鉛直上方に立ち上がるように構成されており、上方前板11は、下方前板12の上方に配置されて鉛直上方に立ち上がるように構成されている。上方前板11と下方前板12は、後述する面ファスナ70を介して縁部同士が相互に連結されている。
【0047】
上方前板11と下方前板12の高さは略同一であるが、上方前板11の横幅の方が下方前板12の横幅よりも若干(側板30の厚さの2倍分だけ)大きく設定されている。前板10の高さ、厚さ、横幅は、断熱容器1のサイズ、断熱容器1に収納される対象物の種類、前板10を構成する断熱材パネルの強度等に応じて適宜設定することができる。
【0048】
後板20は、
図1に示すように、所定厚さを有し折畳可能に構成された平面視略矩形状の平板である。本実施形態においては、底板40に対して略垂直に配置された第一後板部21と、第一後板部21の底板40と反対側の縁部21aにフィルム24を介して連結され第一後板部21に対して容器内側方向へと折曲自在とされた第二後板部22と、第二後板部22の第一後板部21と反対側の縁部22aにフィルム25を介して連結され第二後板部22に対して容器内側方向へと折曲自在とされた第三後板部23と、を有している。フィルム24は、第一後板部21に対する第二後板部22の容器内側方向への折曲を可能とするように、第一後板部21及び第二後板部22の各縁部の内側面に貼り付けられている。フィルム25は、第二後板部22に対する第三後板部23の容器内側方向への折曲を可能とするように、第二後板部22及び第三後板部23の各縁部の内側面に貼り付けられている。
【0049】
第一後板部21は、
図1及び
図3に示すように、所定の場所に配置される台座60に形成された溝62に嵌合されて、後述する支持部材80の第二支持部82と略同じ高さまで鉛直上方に立ち上がるように構成されている。第二後板部22は、
図4に示すように、前板10、側板30及び天板50からなる積層体Pの上方を覆うように機能するものであり、底板40と略同一の面積を有している。第三後板部23は、
図4に示すように、前板10、側板30及び天板50からなる積層体Pの前方を覆うように機能するものであり、第一後板部21よりも若干小さい面積を有している。後板20全体の高さ、厚さ、横幅は、断熱容器1のサイズ、断熱容器1に収納される対象物の種類、後板20を構成する断熱材パネルの強度等に応じて適宜設定することができる。
【0050】
側板30は、
図1及び
図2に示すように、所定厚さを有する平面視略矩形状の平板である。本実施形態においては、側板30として、断熱容器1の上方に配置される上方側板31と、断熱容器1の下方に配置される下方側板32と、を採用している。下方側板32は、
図3に示すように、所定の場所に設置される台座60に形成された溝63に嵌合されて鉛直上方に立ち上がるように構成されており、上方側板31は、下方側板32の上方に配置されて鉛直上方に立ち上がるように構成されている。上方側板31と下方側板32は、後述する面ファスナ70を介して縁部同士が相互に連結されている。
【0051】
上方側板31と下方側板32の高さは略同一であるが、下方側板32の横幅の方が上方側板31の横幅よりも若干(前板10の厚さの分だけ)大きく設定されている。側板30の高さ、厚さ、横幅は、断熱容器1のサイズ、断熱容器1に収納される対象物の種類、側板30を構成する断熱材パネルの強度等に応じて適宜設定することができる。
【0052】
底板40は、
図1に示すように、所定厚さを有する平面視略矩形状の平板であり、所定の場所に設置される台座60の上面の溝61・62・63によって囲まれた略矩形状の領域(
図3参照)に配置された状態で固定されている。底板40の厚さ及び各辺の長さは、断熱容器1のサイズ、断熱容器1に収納される対象物の種類、底板40を構成する断熱材パネルの強度等に応じて適宜設定することができる。
【0053】
天板50は、
図1及び
図2に示すように、所定厚さを有する平面視略矩形状の平板であり、前板10、後板20及び側板30の上方に配置される。天板50の厚さ及び各辺の長さは、断熱容器1のサイズ、断熱容器1に収納される対象物の種類、天板50を構成する断熱材パネルの強度等に応じて適宜設定することができる
【0054】
前板10、後板20、側板30及び天板50は、面ファスナ70(
図2の斜線領域)を介して縁部同士が相互に連結されている。各縁部に沿った面ファスナ70の幅Wは、各縁部の長さLの2%以上に設定されている。このように面ファスナ70の幅を特定の値(各縁部の長さの2%以上)に設定しているため、断熱容器1の断熱機能や気密性を維持することができ、断熱容器1から熱やガスが漏れることを抑制することができる。また、前板10、側板30及び天板50は、
図4に示すように、相互に分離した状態で、後述する支持部材80の第一支持部81の上に積層されて積層体Pを構成するようになっている。
【0055】
断熱容器1は、
図1、
図3、
図4に示すように、容器に収納される対象物を積載する際のガイド等として機能する支持部材80を備えている。支持部材80は、剛性を有する材料で構成された平板状の第一支持部81と、剛性を有する材料で構成された平板状の第二支持部82と、が断面L字状に剛接合されて構成されている。本実施形態における支持部材80の第一支持部81は、
図1及び
図3に示すように、底板40の上に略平行に(略水平に)重ねられて配置された状態で、底板40に固定されている。支持部材80の第二支持部82は、
図1に示すように、後板20の第一後板部21の近傍に配置されており、
図4に示すように、第一支持部81の上に配置された(全てパーツが揃っている場合の)積層体Pの高さと略同じ高さまで鉛直上方に立ち上がるように構成されている。
【0056】
支持部材80の第一支持部81及び第二支持部82は、700N/mm以上の曲げ剛性を有している。このように第一支持部81及び第二支持部82の曲げ剛性を特定の値に設定するため、積載時における支持部材80の変形や破損を抑制することができ、断熱容器1が破損して容器内部の熱やガスが漏れることを抑制することができる。第一支持部81及び第二支持部82の曲げ剛性は、2500N/mm以上であることが好ましい。支持部材80の材料は、上記曲げ剛性を実現させるものであればよく、例えば金属材料等を採用することができる。
【0057】
<断熱容器の使用方法>
次に、本実施形態に係る輸送方法の各工程における断熱容器1の使用方法について説明する。
【0058】
まず、
図1に示すように、所定の場所に配置した台座60の上に、断熱容器1を構成する底板40を配置して固定し、底板40の上に支持部材80の第一支持部81を配置して固定する。次いで、支持部材80の第一支持部81の上に、第二支持部82をガイドとして用いて対象物を積載し、その状態で、予冷庫で通風予冷を行う(予冷工程)。
【0059】
次いで、断熱容器1を構成する下方前板12、後板20の第一後板部21及び下方側板32を、台座60の溝61・62・63に各々嵌合させて鉛直上方に立ち上げた後、上方前板11及び上方側板31を各々下方前板12及び下方側板32の上方に配置して荷物を四方から覆うようにし、面ファスナ70を用いて前板10、後板20及び側板30の縁部同士を相互に連結する。続いて、
図2に示すように、前板10、後板20及び側板30の上方に天板50を配置し、面ファスナ70を用いて天板50を前板10、後板20及び側板30に連結して断熱容器1を密閉する。これにより、予冷された対象物が断熱材パネルで包囲される(包囲工程)。
【0060】
この後、冷蔵輸送車等を用いて、対象物を収納した断熱容器1を所定の目的地に輸送する(輸送工程)。
【0061】
なお、断熱容器1を用いて対象物を所定の目的地に輸送したら、まず断熱容器1の天板50を取り外し、その後、前板10及び側板30を台座60の溝61・63から各々取り外し、
図4に示すように、前板10、側板30及び天板50からなる積層体Pを形成する。次いで、支持部材80の第一支持部81の上に、第二支持部82をガイドとして用いて積層体Pを積載する。このとき、支持部材80の第二支持部82の高さを、全てパーツが揃っている場合の積層体Pの高さに略一致させているため、積層体Pを構成する板の不足を目視で容易に認識することができる。
【0062】
続いて、
図4に示すように、後板20の第二後板部22を第一後板部21に対して容器内側方向へと折り曲げて積層体Pの上方を覆い、さらに、後板20の第三後板部23を第二後板部22に対して容器内側方向へと折り曲げて積層体Pの前方を覆う。これにより、積層体(前板10、側板30、天板50)Pを確実に保護することができ、この状態で所定の場所で断熱容器1を保管するようにする。
【0063】
<作用効果>
以上説明した実施形態に係る輸送方法においては、予冷された対象物を断熱材パネル(前板10、後板20、側板30、底板40及び天板50)で包囲して輸送することにより、断熱材パネル内部の空間(断熱容器1の内部空間)で対象物を冷媒として機能させることができるため、輸送中においても対象物の低温状態を維持することができる。従って、例えば外気温が対象物の温度より高い場合においても、対象物が外気温によって加温されることを抑制することができ、対象物の品質低下を防ぐことができる。また、外気温が対象物の温度より低い場合においても、対象物が外気温によって過冷却されることを抑制することができ、対象物(例えば青果物)の低温障害を防ぐことができる。本方法においては、ドライアイス等の冷媒を用いる必要がないため、冷媒を別途準備したり途中で補充・交換したりする作業を省くことができ、かつ、冷媒収納空間を省くことができるため荷物の積載量を増大させて高い輸送効率を実現させることができる。
【0064】
また、以上説明した実施形態に係る輸送方法においては、断熱材パネル内部の空間(断熱容器1の内部空間)の全容積に占める対象物の容積の割合(嵩占有率)を特定値(30%)以上に設定するか、又は、断熱材パネル内部(断熱容器1の内部)における対象物の密度を特定値(30kg/m3)以上に設定するため、所望の冷媒効果を維持することができる。
【0065】
また、以上説明した実施形態に係る輸送方法においては、特定の熱抵抗(50m2・K/W以下)を有する断熱材で構成した断熱材パネル(前板10、後板20、側板30、底板40及び天板50)で対象物を包囲するため、断熱効果を効果的に維持することができる。
【0066】
また、以上説明した実施形態に係る輸送方法においては、特定の曲げ強度(0.15N/mm2以上)を有する断熱材で構成した断熱材パネル(前板10、後板20、側板30、底板40及び天板50)で対象物を包囲するため、輸送時における断熱材パネルの変形を抑制するとともに振動・衝撃を吸収して圧潰を抑制することができ、対象物を確実に保護して断熱効果を効果的に維持することができる。
【0067】
また、以上説明した実施形態に係る輸送方法においては、断熱材パネルで構成した特定の気密性(ガス交換速度1回/時以下)を有する筐体(断熱容器1)で対象物を包囲するため、筐体内のガス濃度(例えばCO2濃度)を制御することができる。従って、例えば対象物が青果物である場合に、青果物の呼吸を抑制して鮮度を維持することができる。
【0068】
<断熱容器の変形例>
なお、以上の実施形態においては、断面L字状の支持部材80と断熱材パネルとを別部材とした例を示したが、支持部材で断熱材パネルの一部を兼ねる(支持部材の一部を断熱材パネルで構成する)こともできる。また、以上の実施形態においては、断面L字状の支持部材80を採用した例を示したが、このような支持部材は必須ではなく、断熱材パネルのみで対象物を包囲してもよい。この際、特定の熱抵抗及び曲げ剛性を有する断熱材パネルで構成した特定の気密性を有する筐体で対象物を包囲することが好ましい。また、断熱材パネルで対象物を包囲する際には、対象物の嵩占有率を特定値以上にするか、又は、対象物の密度を特定値以上にすることが好ましい。
【0069】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0070】
<実施例1>
本実施例では、青果物(キャベツ、人参、大根等)を容積0.047m3の直方体状の段ボール箱に収納した状態のものを対象物とした。まず、着時温度が15℃以下となるように対象物を予冷庫で5℃で通風予冷した(予冷工程)。次いで、予冷された対象物を、熱抵抗2.5m2・K/Wで曲げ強度0.45N/mm2の断熱材パネルで構成したガス交換速度1回/時の気密性を有する断熱容器で包囲した(包囲工程)。包囲工程では、断熱容器の内部空間の全容積に占める対象物の容積の割合(嵩占有率)を96%に設定するとともに、断熱容器の内部における対象物の密度を250kg/m3に設定した。その後、断熱容器に収納された対象物を、出荷拠点から目的地へと輸送車で輸送した(輸送工程)。輸送時間は合計48時間であった。また、輸送時における平均外気温は25℃であった。本実施例において、対象物の着時温度は11℃であり、目標の着時温度が達成できていた。また、対象物の温度を一定時間毎に測定したところ、急激な温度上昇は見られなかった。さらに、本実施例では、対象物に劣化は見られなかった。
【0071】
<実施例2>
まず、実施例1と同様の対象物を、着時温度が15℃以下となるように予冷庫で5℃で通風予冷した(予冷工程)。次いで、予冷された対象物を、熱抵抗1.5m2・K/Wで曲げ強度0.25N/mm2の断熱材パネルで構成したガス交換速度1回/時の気密性を有する断熱容器で包囲した(包囲工程)。包囲工程では、断熱容器の内部空間の全容積に占める対象物の容積の割合(嵩占有率)を96%に設定するとともに、断熱容器の内部における対象物の密度を250kg/m3に設定した。その後、断熱容器に収納された対象物を、出荷拠点から目的地へと輸送車で輸送した(輸送工程)。輸送時間は合計48時間であった。また、輸送時における平均外気温は25℃であった。本実施例において、対象物の着時温度は13℃であり、目標の着時温度が達成できていた。また、対象物の温度を一定時間毎に測定したところ、急激な温度上昇は見られなかった。さらに、本実施例では、対象物に劣化は見られなかった。
【0072】
<実施例3>
まず、実施例1と同様の対象物を予冷庫で5℃で通風予冷した(予冷工程)。次いで、予冷された対象物を、曲げ強度0.14N/mm2の断熱材パネルで構成した断熱容器で包囲した(包囲工程)。包囲工程では、断熱容器の内部空間の全容積に占める対象物の容積の割合(嵩占有率)を96%に設定するとともに、断熱容器の内部における対象物の密度を250kg/m3に設定した。その後、断熱容器に収納された対象物を、出荷拠点から目的地へと輸送車で輸送した(輸送工程)。輸送時間は合計48時間であった。また、輸送時における平均外気温は25℃であった。本実施例においては、対象物の着時温度は13℃であり、目標の着時温度が達成できていた。一方、対象物の温度を一定時間毎に測定したところ、温度上昇率が大きくなっている時間帯があった。これは、輸送時の衝撃によって外気が断熱容器に入ったためと推測される。なお、対象物に劣化は見られなかった。
【0073】
<実施例4>
まず、実施例1と同様の対象物を予冷庫で5℃で通風予冷した(予冷工程)。次いで、予冷された対象物を、厚み50mm、熱抵抗2.5m2・K/Wで曲げ強度0.45N/mm2の断熱材パネルで構成したガス交換速度2回/時の気密性を有する断熱容器で包囲した(包囲工程)。包囲工程では、断熱容器の内部空間の全容積に占める対象物の容積の割合(嵩占有率)を96%に設定するとともに、断熱容器の内部における対象物の密度を250kg/m3に設定した。その後、断熱容器に収納された対象物を、出荷拠点から目的地へと輸送車で輸送した(輸送工程)。輸送時間は合計40時間であった。また、輸送時における平均外気温は25℃であった。本実施例においては、対象物の着時温度は15℃であり、実施例1より短時間の輸送であれば目標の着時温度が達成できることがわかった。なお、対象物に劣化は見られなかった。
【0074】
<実施例5>
まず、実施例1と同様の対象物を予冷庫で5℃で通風予冷した(予冷工程)。次いで、予冷された対象物を、厚み50mm、熱抵抗2.5m2・K/Wで曲げ強度0.45N/mm2の断熱材パネルで構成したガス交換速度1回/時の気密性を有する断熱容器で包囲した(包囲工程)。包囲工程では、断熱容器の内部空間の全容積に占める対象物の容積の割合(嵩占有率)を39%に設定するとともに、断熱容器の内部における対象物の密度を29kg/m3に設定した。その後、断熱容器に収納された対象物を、出荷拠点から目的地へと輸送車で輸送した(輸送工程)。輸送時間は合計10時間であった。また、輸送時における平均外気温は25℃であった。本実施例においては、対象物の着時温度は14℃であり、実施例1より短時間の輸送であれば目標の着時温度が達成できることがわかった。なお、対象物に劣化は見られなかった。
【0075】
<比較例>
まず、実施例1と同様の対象物を予冷庫で5℃で通風予冷した(予冷工程)。次いで、予冷された対象物を、断熱材パネルを用いないコンテナ(厚み10mm、熱抵抗0.0002m2・K/W、曲げ強度270N/mm2、ガス交換速度1回/時)で包囲した(包囲工程)。包囲工程では、コンテナの内部空間の全容積に占める対象物の容積の割合(嵩占有率)を96%に設定するとともに、コンテナの内部における対象物の密度を250kg/m3に設定した。その後、コンテナに収納された対象物を、出荷拠点から目的地へと輸送車で輸送した(輸送工程)。輸送時間は合計48時間であった。また、輸送時における平均外気温は25℃であった。比較例においては、対象物の着時温度が25℃となり、実施例1よりもきわめて高くなった上に、対象物の約1割に劣化が見られた。
【0076】
<輸送支援装置>
次に、
図5を用いて、本発明の実施形態に係る輸送支援装置100の機能的構成について説明する。
【0077】
本実施形態に係る輸送支援装置100は、予冷された生鮮品の常温輸送を支援するためのものであって、依頼者C等から送られる依頼情報等の各種情報を取得するための情報取得部101と、予冷条件等の各種情報を算出するための情報算出部102と、情報算出部102で算出された予冷条件等の各種情報を保管者P等に対して出力する情報出力部103と、各種情報を記録する各種データベース104(依頼情報データベース104A、生鮮品情報データベース104B、輸送情報データベース104C、梱包情報データベース104D)と、を備えている。なお、本実施形態における「生鮮品」は、輸送中の温度変化によって劣化する食品等を意味しており、例えば、青果物(野菜や果物)、食肉、鮮魚、穀類、茶葉、コーヒー豆、花等を含む。また、本実施形態における「生鮮品」には、冷凍食品も含まれるものとする。
【0078】
情報取得部101は、依頼者Cから送られる依頼情報を取得したり、輸送支援装置100のユーザから入力された各種情報を受け付けたりするように機能するものであり、通信部140(
図6で後述)や入力部150(
図6で後述)で構成されている。依頼情報は、
図5に示すように、依頼者Cの保有する端末U
Cから通信ネットワークNを介して輸送支援装置100の情報取得部101に入力される。端末U
Cとしては、情報表示部や情報入力部や通信手段を有する各種電子機器(デスクトップ型PC、ノート型PC、スマートフォン等)を採用することができる。通信ネットワークNは、複数のコンピュータを相互に接続可能な情報通信網であり、例えばインターネット等のグローバルな情報通信網であってよい。情報取得部101を介して取得された依頼情報は、依頼情報データベース104Aに格納される。
【0079】
依頼情報は、生鮮品の種類及び量に関する情報を含むものである。例えば、「キュウリ(600kg)」、「ピーマン(300kg)」、「ナス(200kg)」、「レタス(200kg)」、「ジャガイモ(150kg)」等が依頼情報に含まれる。なお、本実施形態においては、「トウモロコシ」や「オクラ」等の呼吸量の多い生鮮品と、「大豆」のように輸送中の振動で擦れやすい生鮮品と、に関連する生鮮品情報(例えば「呼吸熱」や「摩擦熱」)が生鮮品情報データベース104Bに記録されており、依頼情報にこれらの生鮮品が含まれると、生鮮品情報データベース104Bからその生鮮品に関連する生鮮品情報が読み込まれて、後述する予冷条件の算出に用いられる。また、依頼情報は、輸送目的地に関する情報(輸送目的地の位置情報等)を含むものである。
【0080】
情報算出部102は、情報取得部101で取得した依頼情報や、依頼情報に基づいて各種データベース104から読み込まれた情報(生鮮品情報、輸送情報、梱包情報)に基づいて、生鮮品を予冷する際の予冷条件を算出するように機能するものである。具体的には、情報算出部102は、生鮮品を輸送目的地まで輸送するために要する輸送時間と、輸送中における生鮮品の温度変動と、を算出し、輸送時間及び温度変動に基づいて予冷条件を算出する。
【0081】
生鮮品を輸送目的地まで輸送するために要する輸送時間は、依頼情報に含まれる輸送目的地に関する情報に加えて、予め設定されている初期情報(生鮮品の保管場所の位置情報、輸送用車両の仕様、等)や、輸送目的地に関する情報等から設定される各種輸送に関する情報(輸送経路、輸送距離、等)に基づいて算出することができる。これら初期情報や輸送に関する情報は、輸送情報として輸送情報データベース104Cに記録されており、依頼情報として輸送目的地に関する情報が入力されると、その輸送目的地に関する輸送情報が輸送情報データベース104Cから読み込まれるようになっている。例えば、生鮮品の保管場所の位置情報が「宮崎県延岡市」であり、輸送目的地の位置情報が「東京都大田区(大田市場)」であり、輸送経路が「陸路及び航路」である場合には、想定される輸送距離が「1050km」と算出でき、輸送用車両の仕様に基づき平均巡航速度が「70km/h」と想定されることから、輸送時間は「15時間」と算出される。
【0082】
輸送中における生鮮品の温度変動は、生鮮品を輸送するための断熱容器1(
図1~
図4参照)の内部に輸送中に入ってくる進入熱と、断熱容器1内に収納された生鮮品の重量及び比熱と、に基づいて算出することができる。ここで、断熱容器1の内部に輸送中に入ってくる進入熱は、断熱容器1の内外における気温と、断熱容器1の伝熱面積及び熱通過率と、に基づいて算出することができる。断熱容器1の熱通過率は、断熱容器1の内外における熱伝達率と、断熱容器1を構成する断熱材の厚さ及び熱伝導率と、に基づいて算出することができる。なお、進入熱は、負の値を採ることもある。すなわち、断熱容器1から輸送中に熱が出ていく場合は、進入熱が負の値となる。
【0083】
断熱容器1の熱通過率CHTRは、断熱容器1の設計仕様によって決定される。すなわち、断熱容器1の内部における熱伝達率をCHTI、断熱容器1の外部における熱伝達率をCHTO、断熱容器1を構成する断熱材パネル(既に述べた前板10、後板20、側板30、底板40及び天板50)の厚さをTH、当該断熱パネルの熱伝導率をCTC、とすると、断熱容器1の熱通過率CHTRは以下の数式(1)によって算出される。
CHTR=1/{1/CHTO+(TH/CTC)}+1/CHTI …(1)
輸送支援装置100のユーザは、断熱容器1の設計仕様が確定した段階で断熱容器1の熱通過率CHTRを算出し、情報取得部101を介してその値を入力し、輸送支援装置Dに設置された梱包情報データベース104Dに梱包情報として記録しておくことができる。
【0084】
また、断熱容器1の内部における気温をIT、断熱容器1の外部における気温をOT、断熱容器1の伝熱面積をAT、とすると、断熱容器1の内部に輸送中に入ってくる進入熱HPは以下の数式(2)によって算出される。
HP=(OT-IT)×AT×CHTR …(2)
断熱容器1の伝熱面積ATもまた、予め梱包情報データベース104Dに梱包情報として記録しておくことができる。断熱容器1の内部における気温ITとしては、断熱容器1内に収納された生鮮品の(例えば算出時の1時間前における)品温を採用することができる。断熱容器1の外部における気温OTとしては、依頼情報として入力された輸送目的地の気温を採用することができる。
【0085】
そして、断熱容器1内に収納された生鮮品の重量をW、当該生鮮品の比熱をS、とすると、輸送中における生鮮品の温度変動ΔTは以下の数式(3)によって算出される。
ΔT=(HP/W)×S …(3)
生鮮品の比熱Sは、生鮮品情報として生鮮品情報データベース104Bに記録されており、依頼情報として生鮮品の種類が入力されると、生鮮品情報データベース104Bからその生鮮品の比熱Sが読み込まれて温度変動の算出に用いられる。なお、生鮮品が野菜である場合は、その比熱Sは水の比熱と同一の値と仮定することができる。
【0086】
なお、温度変動は、生鮮品が単位時間あたりに発する呼吸熱を考慮してもよい。かかる呼吸熱は、一定の値を用いてもよいし、ボックス内温度や、CO2濃度等の関数として表現されてもよい。呼吸熱の具体的な値は、例えば農業機械学会誌 55(2): 69~75, 1993 69に記載されている値を用いることができる。また、温度変動は、輸送中の摩擦熱を考慮してもよい。かかる摩擦熱は、品種毎の摩擦係数、生鮮品の梱包状態に応じた面圧、運動速度、単位運動あたりの摩擦熱量、等から算出することができる。
【0087】
このようにすると、依頼情報(生鮮品に関する情報)に基づいて設定された生鮮品の呼吸熱や摩擦熱に関する情報を用いて、予冷条件を算出することができる。従って、生鮮品が「トウモロコシ」や「オクラ」等の呼吸量の多いものであるために「呼吸熱」が無視できないような場合や、生鮮品が「大豆」のように輸送中の振動で擦れやすいものであるために「摩擦熱」が無視できないような場合においても、予冷条件を的確に算出することができる。
【0088】
情報算出部102は、情報取得部101で取得した依頼情報や、依頼情報に基づいて各種データベース104から読み込まれた情報に基づき、以上の数式(1)~(3)を用いて、輸送中における生鮮品の温度変動ΔTを算出することができる。なお、温度変動ΔTが正の場合「温度上昇」、ΔTが負の場合「温度下降」ともいう。そして、情報算出部102は、このように算出した温度変動ΔTと、別途算出した輸送時間と、に基づいて予冷条件を算出する。この際、情報算出部102は、輸送目的地の到着時における生鮮品の温度(着時温度)が所定の条件を満たすように予冷条件を算出することができる。一例としては、着時温度が所定の閾値未満となるように予冷条件を算出することができる。例えば、生鮮品がジャガイモであり、算出した輸送時間が経過した際の温度変動ΔTが「5℃」である場合には、ジャガイモの着時温度が所定の閾値(10℃)未満となるように、ジャガイモの初期品温T0を「5℃」に設定(算出)する。ここでいう初期品温T0は、予冷条件の一例である。なお、ここで使用する閾値は、生鮮品の種類毎に生鮮品情報データベース104Bに記録しておくことができる。
【0089】
また、情報算出部102は、輸送目的地に到着するまでの生鮮品の積算温度が所定の条件を満たすように予冷条件を算出することができる。一例としては、積算温度が所定の閾値未満となるように予冷条件を算出することもできる。この場合には、情報算出部102は、予め設定した時間毎、例えば輸送開始時点から1時間毎に生鮮品の温度変動ΔT1、ΔT2、…、ΔTNを算出し、各温度変動ΔT1、ΔT2、…に基づいて1時間毎の生鮮品の品温T1、T2、…、TNを算出し、これら1時間毎の生鮮品の品温T1、T2、…、TNを輸送完了時点まで積算することにより積算温度ΣTを算出する。輸送開始から1時間後の生鮮品の品温T1は、初期品温T0に0~1時間の温度変動ΔT1を加算することにより得られる。また、輸送開始から2時間後の生鮮品の品温T2は、1時間後の品温T1に1~2時間の温度変動ΔT2を加算することにより得られる。以下同様に、輸送開始からN時間後の生鮮品の品温TNは、(N-1)時間後の品温TN-1に(N-1)~N時間の温度変動ΔTNを加算することにより得られる。情報算出部102は、これら1時間毎の生鮮品の品温T1、T2、…、TNを輸送完了時点まで積算することにより積算温度ΣTを算出し、この算出した積算温度ΣTが所定の閾値未満となるように生鮮品の初期品温T0を設定(算出)することができる。ここで使用する閾値もまた、生鮮品の種類毎に生鮮品情報データベース104Bに記録しておくことができる。
【0090】
情報算出部102は、生鮮品の着時温度(又は積算温度)を最適化するために、一度設定した初期品温T0を変化させてシミュレーションを繰り返すこともできる。例えば、ある生鮮品の初期品温T0を「0℃」に設定すると着時温度は「5℃」と算出され、初期品温T0を「5℃」に設定すると着時温度は「10℃」と算出され、初期品温T0を「10℃」に設定すると着時温度は「15℃」と算出されるケースにおいて、その生鮮品の品質が「10℃」以下であれば劣化しないと判断されるような場合には、初期品温T0を「0℃」に設定しなくても輸送目的地到着時における生鮮品の劣化を回避することができるため、初期品温T0を「5℃」に設定して余分な予冷を回避することができる。なお、情報算出部102は、シミュレーションの際に、必要に応じて生鮮品の内容量(kg)や断熱容器1の設計仕様を変更することもできる。また、情報算出部102は、過去に生鮮品を輸送したときの依頼情報と予冷条件の間の相関関係履歴を用いて、統計的処理や機械学習等によって予冷条件を推定(算出)してもよい。
【0091】
なお、本実施形態における「予冷条件」は、初期品温T0に限られるものではなく、輸送開始前の生鮮品の保管条件を含む(「予冷」のみではなく「予熱」をも含む)ことができる。予冷条件は、例えば、生鮮品を所定の初期品温T0まで予冷するための予冷庫の設定温度、生鮮品を収納する断熱容器1の予冷温度、生鮮品を所定重量(所定容積)毎に小分けで梱包するための梱包箱の予冷温度、等を予冷条件として採用することもできる。また、保管条件としては、生鮮品を所定の初期品温T0まで予熱するための予冷庫の設定温度、生鮮品を収納する断熱容器1の予熱温度、生鮮品を所定重量(所定容積)毎に小分けで梱包するための梱包箱の予熱温度、等を採用することもできる。
【0092】
初期品温T0(予冷条件)の算出は、生鮮品の種類毎に行うことができる。この場合は、断熱容器1の内部に1種類の生鮮品のみを所定容積収納し、断熱容器1内における残りの空間が空気であると仮定したケース(最も温度変動し易いワーストケース)の初期品温T0を算出するようにする。このような手法を採用すると、残りの空間に他種類の生鮮品を収納した場合にワーストケースよりも各生鮮品の温度変動が抑えられることとなる(どの生鮮品も空気よりは比熱が大きく温度変動し難いためである)。また、上記手法を用いて生鮮品の種類毎に初期品温T0を算出し、全ての種類の初期品温T0の平均値を算出し、その平均値を断熱容器1の予冷温度(予冷条件)として採用することができる。この際、平均値を採用する代わりに、最も重量の大きい生鮮品の初期品温T0を代表値とし、その代表値を断熱容器1の予冷温度(予冷条件)として採用することもできる。
【0093】
情報出力部103は、情報算出部102で算出された予冷条件等の各種情報を保管者P等に対して出力するように機能するものであり、通信部140(
図6で後述)や表示部160(
図6で後述)で構成されている。情報算出部102で算出された予冷条件や、各種データベース104から読みだして予冷条件の算出に使用した各種情報は、
図5に示すように、輸送支援装置100の情報出力部103から通信ネットワークNを介して保管者Pの保有する端末U
Pに出力される。端末U
Pとしては、端末U
Cと同様に、情報表示部や情報入力部や通信手段を有する各種電子機器を採用することができる。
【0094】
次に、
図6を用いて、本実施形態に係る輸送支援装置100を実現するための物理的構成について説明する。
【0095】
輸送支援装置100は、
図6に示すように、CPU(Central Processing Unit)110、RAM(Random Access Memory)120、ROM(Read only Memory)130、通信部140、入力部150及び表示部160を有しており、これらの各構成はバスを介して相互にデータ送受信可能に接続される。なお、本例では輸送支援装置100が一台のコンピュータで構成される場合について説明するが、輸送支援装置100は、複数台のコンピュータから構成されてもよい。例えば、表示部160は、複数台のディスプレイから構成されてもよい。また、
図6で示す構成は一例に過ぎず、これらの構成のうち一部を有さなくてもよい。さらに、構成の一部が遠隔地に設けられてもよい。例えば、ROM130の一部を遠隔地に設け、通信ネットワークを介して通信可能に構成してもよい。
【0096】
CPU110は、ROM130等に記録されたコンピュータプログラム等を実行することにより本実施形態における演算処理等を行う演算部であって、情報算出部102を構成するものである。CPU110は、プロセッサを備える。CPU110は、RAM120、ROM130、通信部140及び入力部150等から種々の情報(プロセスデータを含む)を受け取り、演算処理結果等を表示部160に表示させたり、RAM120及び/又はROM130に格納させたりする。
【0097】
RAM120は、キャッシュメモリとして機能するものであって、情報算出部102の一部を構成することができる。RAM120は、例えばSRAM及びDRAM等の揮発性半導体記憶素子で構成されてよい。
【0098】
ROM130は、メインメモリとして機能するものであって、情報算出部102の一部を構成することができる。ROM130は、例えばフラッシュメモリ等の電気的に情報を書き換え可能な不揮発性半導体記憶素子又は磁気的に情報を書き換え可能なHDDで構成されてよい。ROM130は、例えば、本実施形態における各種演算処理を実行するためのコンピュータプログラム及びデータを記憶することができる。
【0099】
RAM120及びROM130は、輸送支援装置100の各種データベース104(依頼情報データベース104A、生鮮品情報データベース104B、輸送情報データベース104C、梱包情報データベース104D)を構成する。
【0100】
通信部140は、輸送支援装置100を他の装置に接続するためのインターフェースであって、情報取得部101及び情報出力部103を構成する。通信部140は、インターネット等の通信ネットワークNに接続される。
【0101】
入力部150は、運転員からデータの入力及びグラフの選択等を受け付けるものであって、情報取得部101の一部を構成することができる。入力部150は、例えば、キーボードやタッチパネルを含んでよい。
【0102】
表示部160は、CPU110による演算結果を視覚的に表示するものであって、情報出力部103の一部を構成することができる。表示部160は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)から構成されてよい。
【0103】
上記のような物理的構成において、主としてCPU110がコンピュータプログラムを実行することにより、輸送支援装置100を構成する各機能部を実現することが可能である。なお、輸送支援装置100は、タブレット端末で構成されてもよい。タブレット端末で輸送支援装置100を構成することで、輸送支援装置100を持ち歩くことができ、例えば移動しながら輸送支援装置100を利用することができる。
【0104】
<輸送支援方法>
続いて、
図7のフローチャート等を用いて、本実施形態に係る輸送支援装置100を用いた輸送支援方法について説明する。
【0105】
まず、輸送支援装置100の情報取得部101は、依頼者Cの保有する端末UCから通信ネットワークNを介して送られた依頼情報を取得する(依頼情報取得工程:S1)。依頼情報取得工程S1で取得する依頼情報には、生鮮品の種類及び量に関する情報と、輸送目的地に関する情報と、が含まれる。
【0106】
次いで、輸送支援装置100の情報算出部102は、依頼情報取得工程S1で取得した依頼情報等に基づいて、生鮮品を予冷する際の予冷条件を算出する(予冷条件算出工程:S2)。予冷条件算出工程S2では、依頼情報等に基づいて、生鮮品を輸送目的地まで輸送するために要する輸送時間と、輸送中における生鮮品の温度変動と、を算出し、輸送時間及び温度変動に基づいて予冷条件を算出する。予冷条件の具体的な算出方法については、既に述べた通りである。すなわち、情報算出部102は、まず、断熱容器1の内外における熱伝達率と、断熱容器1を構成する断熱材パネルの厚さ及び熱伝導率と、に基づいて熱通過率を算出する。次いで、断熱容器1の内外における気温と、断熱容器1の伝熱面積及び熱通過率と、に基づいて進入熱を算出する。次いで、算出した進入熱と、断熱容器1内に収納された生鮮品の重量及び比熱と、に基づいて温度変動を算出する。その後、算出した温度変動と、別途算出した輸送時間と、に基づいて、輸送目的地の到着時における生鮮品の温度(又は輸送目的地に到着するまでの生鮮品の積算温度)が所定の閾値未満となるように、予冷条件(例えば初期品温T0)を算出する。
【0107】
次いで、輸送支援装置100の情報出力部103は、予冷条件算出工程S2で算出した予冷条件を、通信ネットワークNを介して保管者Pの保有する端末UPに出力する(予冷条件出力工程:S3)。予冷条件の提供を受けた保管者Pは、その予冷条件に従って出荷前の生鮮品を予冷することができ、予冷が完了した時点で生鮮品を出荷することができる。
【0108】
なお、本実施形態に係る輸送支援装置100の情報算出部102を用いて、輸送する生鮮品の種類及び重量に基づき、必要となる総容積(断熱容器1の個数)を算出することもできる。例えば、輸送する生鮮品が「キュウリ(600kg)」、「ピーマン(300kg)」、「ナス(200kg)」、「レタス(200kg)」、「ジャガイモ(150kg)」である場合には、以下のように総容積を算出する。
【0109】
まず、「キュウリ(600kg)」を1箱15L(10kg)の梱包箱に小分けする場合には60個の梱包箱が必要となり、この60個の梱包箱の合計容積は900Lとなる。次に、「ピーマン(300kg)」を1箱10L(4kg)の梱包箱に小分けする場合には75個の梱包箱が必要となり、この75個の梱包箱の合計容積は750Lとなる。次に、「ナス(200kg)」を1箱15L(8kg)の梱包箱に小分けする場合には25個の梱包箱が必要となり、この25個の梱包箱の合計容積は375Lとなる。次に、「レタス(200kg)」を1箱30L(10kg)の梱包箱に小分けする場合には20個の梱包箱が必要となり、この20個の梱包箱の合計容積は600Lとなる。最後に、「ジャガイモ(150kg)」を1箱15L(15kg)の梱包箱に小分けする場合には10個の梱包箱が必要となり、この10個の梱包箱の合計容積は150Lとなる。このため、必要となる総容積は(900+750+375+600+150=)2775Lとなる。仮に、1個の断熱容器1の容積が1500Lであるとすると、総容積2775Lの生鮮品を全て収納するには2個の断熱容器1が必要となる。
【0110】
輸送支援装置100の情報算出部102は、輸送される生鮮品の種類及び重量が入力されると、予めテーブルに記憶させておいた生鮮品毎の梱包箱の1箱あたりの重量及び容積を参照して、生鮮品毎の合計容積及びその総和(総容積)を算出し、情報出力部103を介してその総容積(必要となる断熱容器1の個数)に関する情報を保管者Pに提供することができる。かかる情報の提供を受けた保管者Pは、2個の断熱容器1に生鮮品を適宜振り分けることができる。
【0111】
例えば、保管者Pは、2個の断熱容器1に重量の大きい生鮮品(「キュウリ(600kg)」と「ピーマン(300kg)」)をそれぞれ振り分けた後、各断熱容器1内の容積及び重量がほぼ均等になるように、残る生鮮品を振り分けることができる。例えば、1個目の断熱容器1には「キュウリ(600kg:900L)」と、「ナス(200kg:375L)」と、振り分ける一方、2個目の断熱容器1には「ピーマン(300kg:750L)」と、「レタス(200kg:600L)」と、「ジャガイモ(150kg:150L)」と、を振り分けることができる(第一の振分方法)。
【0112】
或いは、保管者Pは、各生鮮品の重量を、必要となる断熱容器1の個数(2個)で割り、各断熱容器1への梱包量を決定することもできる。すなわち、2個の断熱容器1の各々に、「キュウリ」を300kg(450L)、「ピーマン」を150kg(375L)、「ナス」を100kg(187.5L)、「レタス」を100kg(300L)、「ジャガイモ」を75kg(75L)、それぞれ振り分けることができる(第二の振分方法)。
【0113】
<作用効果>
以上説明した実施形態に係る輸送支援方法においては、生鮮品の種類及び量に関する情報と、輸送目的地に関する情報と、を有する依頼情報を取得し、この取得した依頼情報に基づいて生鮮品を予冷する際の予冷条件を算出し、この算出した予冷条件を出力することができる。従って、依頼者Cから提供された依頼情報を入力として的確な予冷条件を出力し、この出力した予冷条件を生鮮品の保管者Pに提供することができる。そして、かかる予冷条件の提供を受けた保管者Pは、その的確な予冷条件で出荷前の生鮮品を適切に予冷することができるため、輸送目的地における生鮮品の品質を維持することが可能となる。
【0114】
また、以上説明した実施形態に係る輸送支援方法においては、依頼情報に基づいて、生鮮品を輸送目的地まで輸送するために要する輸送時間と、輸送中における生鮮品の温度変動と、を算出し、これら輸送時間及び温度変動に基づいて予冷条件を算出することができる。この際、生鮮品を輸送するための断熱容器1に関する情報(断熱容器1内外の熱伝達率、断熱容器1内外の気温、断熱容器1を構成する断熱材パネルの厚さ及び熱伝導率)と、断熱容器1内に収納された生鮮品の重量及び比熱と、に基づいて輸送中における生鮮品の温度変動を的確に算出することができる。従って、予冷条件を的確に算出することが可能となる。
【0115】
また、以上説明した実施形態に係る輸送支援方法においては、輸送目的地の到着時における生鮮品の温度(又は輸送目的地に到着するまでの生鮮品の積算温度)が所定の閾値未満となるように、予冷条件を的確に算出することができる。
【0116】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、かかる実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。すなわち、前記実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前記実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0117】
1…断熱容器(筐体)
10…前板(断熱材パネル)
20…後板(断熱材パネル)
30…側板(断熱材パネル)
40…底板(断熱材パネル)
50…天板(断熱材パネル)
100…輸送支援装置
101…情報取得部
102…情報算出部
103…情報出力部
S1…依頼情報取得工程
S2…予冷条件算出工程
S3…予冷条件出力工程