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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】ソールおよびこれを備えた靴
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/12 20060101AFI20240411BHJP
   A43B 13/18 20060101ALI20240411BHJP
   A43B 13/14 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
A43B13/12 A
A43B13/18
A43B13/14 D
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023058700
(22)【出願日】2023-03-31
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中谷 健太
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 雄大郎
(72)【発明者】
【氏名】北見 亮太
(72)【発明者】
【氏名】竹井 惇
(72)【発明者】
【氏名】高浜 健太
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102266148(CN,A)
【文献】特開平09-285304(JP,A)
【文献】特開2009-056007(JP,A)
【文献】特開2023-3758(JP,A)
【文献】特表2015-529136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 13/12
A43B 13/18
A43B 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の足の足裏を支持する支持面を規定するソール本体と、
接地面を規定するアウトソールとを備え、
前記ソール本体が、第1弾性部材と、当該第1弾性部材よりも弾性率が高い第2弾性部材とを含み、
前記第1弾性部材が、フォーム材からなり、
前記第2弾性部材が、固体状の粘弾性体からなり、
前記第1弾性部材および前記第2弾性部材が、前記接地面の法線方向と直交する第1方向において互いに向き合う対向領域を含み、
前記対向領域の少なくとも一部において前記第1弾性部材と前記第2弾性部材とが互いに距離をもって配置されることにより、前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との間に空隙部が設けられ、これにより、前記空隙部を規定する部分の前記第1弾性部材の表面である第1壁面が非拘束とされるとともに、前記空隙部を規定する部分の前記第2弾性部材の表面である第2壁面が非拘束とされ、
前記第2弾性部材の表面のうちの前記第1方向において前記第2壁面と相対して位置する第3壁面が外部に向けて露出していることにより、前記第3壁面が非拘束とされている、ソール。
【請求項2】
前記第2壁面および前記第3壁面によって規定される部分の前記第2弾性部材が、前記第1方向における外形寸法を厚みとした略板形状の部分を含んでいる、請求項1に記載のソール。
【請求項3】
前記対向領域が、前記空隙部が設けられていない部分を含むとともに、当該部分において前記第1弾性部材と前記第2弾性部材とが、接合されている、請求項1に記載のソール。
【請求項4】
前記空隙部を外部に連通させる連通路が、前記ソール本体に設けられている、請求項に記載のソール。
【請求項5】
前記対向領域が、前記第1方向に交差しかつ前記接地面と略平行な方向である第2方向に沿って延在し、
前記空隙部が、前記第2方向において互いに距離をもって点在するように複数設けられている、請求項に記載のソール。
【請求項6】
前記対向領域が、前記第1方向に交差しかつ前記接地面と略平行な方向である第2方向に沿って延在し、
前記第2方向が、着用者の足の足幅方向と合致する方向である前記ソールの左右方向に対して交差する方向である、請求項1に記載のソール。
【請求項7】
前記空隙部が、前記接地面の法線方向に沿って延在するとともに、前記ソールの上端側に向かうにつれて前記ソールの前端側に近づく傾斜形状を有している、請求項に記載のソール。
【請求項8】
着用者の足の足趾部および踏付け部を支持する前足部と、
着用者の足の踏まず部を支持する中足部と、
着用者の足の踵部を支持する後足部とを備え、
前記対向領域が、前記ソールの内足側の部分であってかつ前記後足部に該当する部分である第1領域と、前記ソールの外足側の部分であってかつ前記後足部に該当する部分である第2領域と、に少なくとも位置するように設けられ、
前記空隙部が、前記第1領域および前記第2領域の各々に位置している、請求項に記載のソール。
【請求項9】
前記第1領域に位置する前記空隙部の体積が、前記第2領域に位置する前記空隙部の体積よりも小さい、請求項に記載のソール。
【請求項10】
前記第3壁面に、前記接地面の法線方向と交差する方向に延びる溝部が設けられている、請求項1に記載のソール。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載のソールと、
前記ソールの上方に設けられたアッパーとを備えた、靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソールおよびこれを備えた靴に関する。
【背景技術】
【0002】
着地時の衝撃を緩和する目的でソールに緩衝材が設けられてなる靴が開示された文献としては、たとえば国際公開第2018/070045号(特許文献1)がある。当該特許文献1に開示のソールは、ミッドソール、アウトソールおよび緩衝材を含んでおり、緩衝材は、着用者の足の踵部を支持する後足部において、ミッドソールとアウトソールとによって挟み込まれるように位置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/070045号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記特許文献1に開示のソールは、主として競技用の靴に具備されることが意図されて設計されたものであり、高荷重域において緩衝性に優れ、さらに着地時の安定性や、耐久性および軽量化の面においても良好な性能を発揮するものである。
【0005】
一方、一般的な歩行用の靴のソールを設計するに際しては、競技用の靴のように高荷重域での緩衝性に特化してその設計を行なうのではなく、より低荷重域で良好な緩衝性を発揮するようにその設計を行なうことが必要になる。しかしながら、低荷重域において良好な緩衝性を発揮するソールは、得てして耐久性に劣るものとなり易く、この点の改善が求められているところである。
【0006】
したがって、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、低荷重域において高い緩衝性を発揮するとともに、その耐久性にも優れた靴およびこれに具備されるソールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に基づくソールは、着用者の足の足裏を支持する支持面を規定するソール本体と、接地面を規定するアウトソールとを備えている。上記ソール本体は、第1弾性部材と、当該第1弾性部材よりも弾性率が高い第2弾性部材とを含んでおり、上記第1弾性部材は、フォーム材からなり、上記第2弾性部材は、固体状の粘弾性体からなる。上記ソール本体は、上記接地面の法線方向と直交する第1方向において上記第1弾性部材および上記第2弾性部材が互いに向き合う対向領域を有している。上記本発明の第2の局面に基づくソールにあっては、上記対向領域の少なくとも一部において上記第1弾性部材と上記第2弾性部材とが互いに距離をもって配置されることにより、上記第1弾性部材と上記第2弾性部材との間に空隙部が設けられており、これにより、上記空隙部を規定する部分の上記第1弾性部材の表面である第1壁面が非拘束とされるとともに、上記空隙部を規定する部分の上記第2弾性部材の表面である第2壁面が非拘束とされている。また、上記本発明の第2の局面に基づくソールにあっては、上記第2弾性部材の表面のうちの上記第1方向において上記第2壁面と相対して位置する第3壁面が外部に向けて露出していることにより、上記第3壁面が非拘束とされている。
【0009】
本発明に基づく靴は、上述した本発明の第1の局面に基づくソールおよび上述した本発明の第2の局面に基づくソールのうちのいずれかと、当該ソールの上方に設けられたアッパーとを備えてなるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低荷重域において高い緩衝性を発揮するとともに、その耐久性にも優れた靴およびこれに具備されるソールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る靴の概略斜視図である。
図2図1に示すソールの模式平面図である。
図3図1に示すソールを内足側から見た模式側面図である。
図4図1に示すソールを外足側から見た模式側面図である。
図5図3および図4中に示すV-V線に沿った模式断面図である。
図6図2中に示すVI-VI線に沿った模式断面図である。
図7図2中に示すVII-VII線に沿った模式断面図である。
図8図1に示すソールの分解斜視図である。
図9図1に示すソールが具備するミッドソールの一部破断斜視図である。
図10】実施の形態2に係るソールの模式断面図である。
図11】実施の形態3に係るソールの模式断面図である。
図12】実施の形態4に係るソールの模式断面図である。
図13】実施の形態5に係るソールが具備するミッドソールを外足側から見た模式側面図である。
図14】実施の形態6に係るソールが具備するミッドソールを外足側から見た模式側面図である。
図15】実施の形態7に係るソールの模式断面図である。
図16】実施の形態8に係るソールの模式断面図である。
図17】実施の形態9に係るソールの模式断面図である。
図18】実施の形態10に係るソールの模式断面図である。
図19】実施の形態11に係るソールの模式断面図である。
図20】実施の形態12に係るソールの模式断面図である。
図21】実施の形態13に係るソールの模式断面図である。
図22】実施の形態14に係るソールの模式断面図である。
図23】実施の形態15に係るソールの模式断面図である。
図24】実施の形態16に係るソールの模式断面図である。
図25】実施の形態17に係るソールの模式断面図である。
図26】実施の形態18に係るソールの模式断面図である。
図27】実施の形態19に係るソールの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0013】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係る靴の概略斜視図であり、図2は、図1に示すソールの模式平面図である。図3および図4は、それぞれ図1に示すソールを内足側および外足側から見た模式側面図である。図5は、図3および図4中に示すV-V線に沿った模式断面図であり、図6および図7は、それぞれ図2中に示すVI-VI線およびVII-VII線に沿った模式断面図である。また、図8は、図1に示すソールの分解斜視図であり、図9は、図1に示すソールが具備するミッドソールの一部破断斜視図である。以下、これら図1ないし図9を参照して、本実施の形態に係る靴100およびこれに具備されたソール10について説明する。
【0014】
図1に示すように、靴100は、ソール10と、アッパー60とを備えている。ソール10は、略偏平な形状を有しており、着用者の足の足裏を支持する支持面11(図2ないし図4等参照)を規定する上面と、歩行時および走行時等の使用時において地面に着地する接地面12を規定する下面と、これら上面および下面を接続する内足側側面および外足側側面とを備えている。ソール10は、着用者の足の足裏を支持する部材である。アッパー60は、ソール10の上方に位置しており、挿入された着用者の足の足首よりも末端側の部分のほぼすべてを覆う形状を有している。
【0015】
図2ないし図4に示すように、ソール10は、平面視した状態において着用者の足の足長方向に合致する方向である前後方向(図2における図中上下方向、図3および図4における図中左右方向)に沿って、着用者の足の足趾部および踏付け部を支持する前足部R1と、着用者の足の踏まず部を支持する中足部R2と、着用者の足の踵部を支持する後足部R3とに区画される。
【0016】
ここで、ソール10の前方側末端を基準とし、当該前方側末端からソール10の前後方向の寸法の40%の寸法に相当する位置を第1境界位置とし、当該前方側末端からソール10の前後方向の寸法の70%の寸法に相当する位置を第2境界位置とした場合に、前足部R1は、前後方向に沿って前方側末端と第1境界位置との間に含まれる部分に該当し、中足部R2は、前後方向に沿って第1境界位置と第2境界位置との間に含まれる部分に該当し、後足部R3は、前後方向に沿って第2境界位置と靴底の後方側末端との間に含まれる部分に該当する。
【0017】
また、図2に示すように、ソール10は、平面視した状態において着用者の足の足幅方向に合致する方向である左右方向(図中左右方向)に沿って、足のうちの解剖学的正位における正中側(すなわち正中に近い側)である内足側の部分(図中に示すS1側の部分)と、足のうちの解剖学的正位における正中側とは反対側(すなわち正中に遠い側)である外足側の部分(図中に示すS2側の部分)とに区画される。
【0018】
ここで、内足側の部分と外足側の部分とにソール10を区画する境界線は、いわゆるシューセンターSCである。このシューセンターSCは、靴100に適合したサイズの足を有する標準的な着用者がこれを着用した場合に、当該着用者の第1足趾および第2足趾間の部分と踵骨の中心部分(いわゆる踵中心(当該踵中心を図2等において符号HCで示している))とを結んだ直線を上下方向に沿ってソール10に投影した場合に得られる直線である。なお、上述したソール10の前方側末端および後方側末端は、このシューセンターSC上に位置したソール10の端部である。
【0019】
図1に示すように、アッパー60は、アッパー本体61と、シュータン62と、シューレース63とを有している。このうち、シュータン62およびシューレース63は、いずれもアッパー本体61に固定または取り付けられている。
【0020】
アッパー本体61の上部には、着用者の足の足首の上部と足の甲の一部とを露出させる上側開口部が設けられている。一方、アッパー本体61の下部には、一例としては、ソール10によって覆われる下側開口部が設けられており、他の例としては、当該アッパー本体61の下端が袋縫いされること等で底部が形成されている。
【0021】
シュータン62は、アッパー本体61に設けられた上側開口部のうち、着用者の足の甲の一部を露出させる部分を覆うようにアッパー本体61に縫製、溶着あるいは接着またはこれらの組み合わせ等によって固定されている。アッパー本体61およびシュータン62としては、たとえば織地や編地、不織布、合成皮革、樹脂等が用いられ、特に通気性や軽量性が求められる靴においては、ポリエステル糸を編み込んだダブルラッセル経編地が利用される。
【0022】
シューレース63は、アッパー本体61に設けられた着用者の足の甲の一部を露出させる上側開口部の周縁を着用者の足の足幅方向において互いに引き寄せるための紐状の部材からなり、当該上側開口部の周縁に設けられた複数の孔部に挿通されている。アッパー本体61に着用者の足が挿入された状態においてこのシューレース63を締め付けることにより、アッパー本体61を当該足に密着させることが可能になる。
【0023】
図1ないし図8に示すように、ソール10は、ミッドソール20と、緩衝材30と、強化部材40と、アウトソール50とを有している。このうち、ミッドソール20および緩衝材30がソール本体を構成しており、ミッドソール20が第1弾性部材に該当し、緩衝材30が第2弾性部材に該当する。ここで、図1ないし図8においては、理解を容易とするために、第1弾性部材としてのミッドソール20に薄い色を付し、第2弾性部材としての緩衝材30に濃い色を付している(なお、図9ならびに後述する図10ないし図27においても同様に、第1弾性部材に薄い色を付し、第2弾性部材に濃い色を付している)。
【0024】
ミッドソール20は、ソール10の上部に配置されており、アウトソール50は、ソール10の下部に配置されている。緩衝材30は、ソール10の内足側端部および外足側端部の所定位置に配置されており、強化部材40は、ソール10の前後方向の略中央部において左右方向に沿って内足側端部から外足側端部に達するように配置されている。
【0025】
図1ないし図4および図8に示すように、ミッドソール20は、ソール10のベースとなる部分であり、中足部R2を経由して前足部R1から後足部R3にかけて連続して位置している。ミッドソール20は、概ね偏平な略板状の形状を有しており、後述するアウトソール50よりもその厚みは相対的に厚く構成されている。なお、ミッドソール20は、これが単一の部材にて構成されていてもよいし、複数の部材に分割されて構成されていてもよい。
【0026】
特に図8を参照して、ミッドソール20は、上面21と、下面22と、内足側側面23と、外足側側面24とを含んでおり、このうちの上面21が、上述したソール10の支持面11を規定している。ミッドソール20の上面21は、アッパー本体61にたとえば接着等によって接合されており、これによりソール10がアッパー60に固定されている(図1参照)。
【0027】
ミッドソール20の上面21は、その周縁が周囲に比して盛り上がった形状を有している。これにより、ミッドソール20の上面21には、凹状の部位が設けられることになり、この凹状の部位が、アッパー60を受け入れるための部位となる。この凹状の部位の底面である上記周縁を除く部分のミッドソール20の上面21は、着用者の足の足裏にフィットするように滑らかな曲面形状を有している。
【0028】
ここで、特に図6および図7に示すように、ミッドソール20の内足側側面23および外足側側面24の下端側の所定位置には、断面視逆段差形状の切り欠き部が設けられている。この断面視逆段差形状の切り欠き部は、緩衝材30が嵌め込まれてこれが配置されるスペースを規定している。
【0029】
ミッドソール20は、適度な強度を有しつつも緩衝性に優れていることが好ましく、当該観点から、ミッドソール20としては、たとえば、主成分としての樹脂材料と、副成分としての発泡剤や架橋剤とを含む樹脂製のフォーム材が用いられる。また、これに代えて、主成分としてのゴム材料と、副成分としての可塑剤や発泡剤、補強剤、架橋剤とを含むゴム製のフォーム材を用いてもよい。
【0030】
上記樹脂材料としては、たとえばエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリオレフィン樹脂、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性ポリアミド系エラストマ(TPA,TPAE)、または、熱可塑性ポリエステル系エラストマ等が利用できる。上記ゴム材料としては、たとえばブタジエンゴムが好適に利用できる。
【0031】
これにより、ミッドソール20は、概して弾性率が小さくかつ軟質の部材にて構成されることになる。そのため、ミッドソール20は、圧縮荷重を受けた場合に比較的容易に弾性変形することになり、これによって緩衝性に優れたものとなる。
【0032】
図1図3図4および図6ないし図8に示すように、アウトソール50は、主としてミッドソール20に組付けられており、概ね偏平な略板状の形状を有している。アウトソール50は、ミッドソール20よりもその厚みが相対的に薄く構成されている。
【0033】
特に図8を参照して、アウトソール50は、上面51と、下面52とを含んでおり、このうちの下面52が、上述したソール10の接地面12を規定している。アウトソール50の下面52には、グリップ性を向上させるために、凹凸が形成されることでトレッドパターンが形成されていてもよい。アウトソール50の上面51は、主としてミッドソール20の下面22に接着等によって接合されており、この他にも緩衝材30や強化部材40にたとえば接着等によって接合されている。
【0034】
アウトソール50は、これが単一の部材にて構成されていてもよいし、複数の部材に分割されて構成されていてもよい。また、アウトソール50は、たとえば中足部R2を経由して前足部R1から後足部R3にかけて連続して位置してもよいし、中足部R2を除く前足部R1および後足部R3にのみ設けられていてもよい。
【0035】
本実施の形態においては、アウトソール50が、内足側アウトソール50Aと外足側アウトソール50Bと中央前方アウトソール50Cとに分割されて構成されている。より具体的には、内足側アウトソール50Aは、前足部R1の前端から後足部R3の後端にかけてソール10の内足側端部に沿うように延在しており、外足側アウトソール50Bは、前足部R1の後端寄りの部分から後足部R3の後端にかけてソール10の外足側端部に沿うように延在しており、中央前方アウトソール50Cは、前足部R1の周縁を除く中央部に位置している。
【0036】
アウトソール50は、耐摩耗性やグリップ性に優れていることが好ましく、当該観点から、アウトソール50としては、たとえば、主成分としてのゴム材料と、副成分としての可塑剤や補強剤、架橋剤とを含む材料からなる部材が用いられる。当該ゴム材料としては、たとえばブタジエンゴムが好適に利用できる。
【0037】
これにより、アウトソール50は、概して弾性率が大きくかつ硬質の部材にて構成されることになる。そのため、アウトソール50は、耐摩耗性等の耐久性に優れたものとなる。
【0038】
図1ないし図8に示すように、緩衝材30は、主としてミッドソール20に組付けられており、複数の薄板状またはブロック状の部材にて構成されている。緩衝材30は、主として、圧縮荷重を受けた場合に比較的容易に弾性変形するものであり、ソール10の緩衝性と着地時における安定性とを局所的に高めるために設けられたものである。
【0039】
特に図6ないし図8を参照して、緩衝材30は、上面31と、下面32と、これら上面31および下面32を接続する内足側側面33および外足側側面34とを含んでいる。緩衝材30は、上下方向に沿って荷重を受けた場合の変形性が高められることとなるように、その形状が種々調整されて設計されたものであり、その詳細な形状については後述することとする。
【0040】
本実施の形態においては、緩衝材30が、内足側前方緩衝材30A1と、内足側後方緩衝材30A2と、外足側前方緩衝材30B1と、外足側後方緩衝材30B2とに分割されて構成されている。内足側前方緩衝材30A1は、前足部R1の後端寄りの部分と中足部R2の前端寄りの部分とに跨がるようにソール10の内足側端部に位置しており、内足側後方緩衝材30A2は、中足部R2の後端寄りの部分と後足部R3とに跨がるようにソール10の内足側端部に位置している。外足側前方緩衝材30B1は、前足部R1の後端寄りの部分と中足部R2の前端寄りの部分とに跨がるようにソール10の外足側端部に位置しており、外足側後方緩衝材30B2は、中足部R2の後端寄りの部分と後足部R3とに跨がるようにソール10の外足側端部に位置している。
【0041】
図2および図5に示すように、特に内足側後方緩衝材30A2および外足側後方緩衝材30B2は、ソール10の踵中心HCを取り囲むように全体として概ねU字状の形状を成すように、中足部R2の後端寄りの部分から後足部R3の周縁にわたってほぼ連続するように位置している。
【0042】
内足側前方緩衝材30A1は、ミッドソール20の内足側側面23に設けられた上述した切り欠き部に嵌め込まれた状態で、その上面31および外足側側面34が、当該切り欠き部を規定する部分のミッドソール20の内足側側面23にたとえば接着等によって接合されるとともに、その下面32がアウトソール50の上面51にたとえば接着等によって接合されている。すなわち、内足側前方緩衝材30A1は、ミッドソール20およびアウトソール50によって上下方向に挟み込まれた状態でソール10に組付けられるとともに、その外足側側面34がミッドソール20に組付けられている。
【0043】
内足側後方緩衝材30A2は、ミッドソール20の内足側側面23に設けられた上述した切り欠き部に嵌め込まれた状態で、その上面31および外足側側面34が、当該切り欠き部を規定する部分のミッドソール20の内足側側面23にたとえば接着等によって接合されるとともに、その下面32がアウトソール50の上面51にたとえば接着等によって接合されている。すなわち、内足側後方緩衝材30A2も内足側前方緩衝材30A1と同様に、ミッドソール20およびアウトソール50によって上下方向に挟み込まれた状態でソール10に組付けられるとともに、その外足側側面34がミッドソール20に組付けられている。
【0044】
外足側前方緩衝材30B1は、ミッドソール20の外足側側面24に設けられた上述した切り欠き部に嵌め込まれた状態で、その上面31および内足側側面33が、当該切り欠き部を規定する部分のミッドソール20の外足側側面24にたとえば接着等によって接合されるとともに、その下面32がアウトソール50の上面51にたとえば接着等によって接合されている。すなわち、外足側前方緩衝材30B1は、ミッドソール20およびアウトソール50によって上下方向に挟み込まれた状態でソール10に組付けられるとともに、その内足側側面33がミッドソール20に組付けられている。
【0045】
外足側後方緩衝材30B2は、ミッドソール20の外足側側面24に設けられた上述した切り欠き部に嵌め込まれた状態で、その上面31および内足側側面33が、当該切り欠き部を規定する部分のミッドソール20の外足側側面24にたとえば接着等によって接合されるとともに、その下面32がアウトソール50の上面51にたとえば接着等によって接合されている。すなわち、外足側後方緩衝材30B2も外足側前方緩衝材30B1と同様に、ミッドソール20およびアウトソール50によって上下方向に挟み込まれた状態でソール10に組付けられるとともに、その内足側側面33がミッドソール20に組付けられている。
【0046】
緩衝材30は、適度な強度を有しつつも緩衝性に優れていることが好ましく、当該観点から、緩衝材30としては、たとえば固体状の粘弾性体にて構成される。固体状の粘弾性体としては、たとえば軟質エラストマが利用できる。緩衝材30を樹脂製とする場合には、たとえばポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアミド系熱可塑性エラストマ(TPA、TPAE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)とすることができる。一方、緩衝材30をゴム製とする場合には、たとえばブタジエンゴムとすることができる。
【0047】
緩衝材30は、ポリマー組成物にて構成することもできる。その場合にポリマー組成物に含有させるポリマーとしては、たとえばオレフィン系エラストマやオレフィン系樹脂等のオレフィン系ポリマーが挙げられる。オレフィン系ポリマーとしては、たとえばポリエチレン(たとえば直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等)、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-4-メチル-ペンテン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、1-ブテン-1-ヘキセン共重合体、1-ブテン-4-メチル-ペンテン、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート共重合体、プロピレン-メタクリル酸共重合体、プロピレン-メタクリル酸メチル共重合体、プロピレン-メタクリル酸エチル共重合体、プロピレン-メタクリル酸ブチル共重合体、プロピレン-メチルアクリレート共重合体、プロピレン-エチルアクリレート共重合体、プロピレン-ブチルアクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、プロピレン-酢酸ビニル共重合体のポリオレフィン等が挙げられる。
【0048】
また、上記ポリマーは、たとえばアミド系エラストマやアミド系樹脂等のアミド系ポリマーであってもよい。アミド系ポリマーとしては、たとえばポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610等が挙げられる。
【0049】
また、上記ポリマーは、たとえばエステル系エラストマやエステル系樹脂等のエステル系ポリマーであってもよい。エステル系ポリマーとしては、たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0050】
また、上記ポリマーは、たとえばウレタン系エラストマやウレタン系樹脂等のウレタン系ポリマーであってもよい。ウレタン系ポリマーとしては、たとえばポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン等が挙げられる。
【0051】
また、上記ポリマーは、たとえばスチレン系エラストマやスチレン系樹脂等のスチレン系ポリマーであってもよい。スチレン系エラストマとしては、スチレン-エチレン-ブチレン共重合体(SEB)、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、SBSの水素添加物(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS))、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、SISの水素添加物(スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEPS))、スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体(SIBS)、スチレン-ブタジエン-スチレン-ブタジエン(SBSB)、スチレン-ブタジエン-スチレン-ブタジエン-スチレン(SBSBS)等が挙げられる。スチレン系樹脂としては、たとえばポリスチレン、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS)等が挙げられる。
【0052】
また、上記ポリマーは、たとえばポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系ポリマー、ウレタン系アクリルポリマー、ポリエステル系アクリルポリマー、ポリエーテル系アクリルポリマー、ポリカーボネート系アクリルポリマー、エポキシ系アクリルポリマー、共役ジエン重合体系アクリルポリマーならびにその水素添加物、ウレタン系メタクリルポリマー、ポリエステル系メタクリルポリマー、ポリエーテル系メタクリルポリマー、ポリカーボネート系メタクリルポリマー、エポキシ系メタクリルポリマー、共役ジエン重合体系メタクリルポリマーならびにその水素添加物、ポリ塩化ビニル系樹脂、シリコーン系エラストマ、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等であってもよい。
【0053】
これにより、緩衝材30は、概して弾性率が小さくかつ軟質の部材にて構成されることになる。そのため、緩衝材30は、圧縮荷重を受けた場合に比較的容易に弾性変形することになり、これによって緩衝性に優れたものとなる。
【0054】
図1図3図4および図8に示すように、強化部材40は、主としてミッドソール20に組付けられており、断面視略U字状の板状の部材にて構成されている。強化部材40は、主としてソール10の剛性を局所的に高めるためのものである。
【0055】
強化部材40は、中足部R2の前後方向の略中央部においてミッドソール20とアウトソール50との間に挟み込まれた状態で配置されている。強化部材40は、その上面がミッドソール20の下面22にたとえば接着等によって接合されており、その下面がアウトソール50の上面51にたとえば接着等によって接合されている。また、強化部材40の内足側の端部は、ソール10の前後方向において内足側前方緩衝材30A1と内足側後方緩衝材30A2とによって挟まれており、強化部材40の外足側の端部は、ソール10の前後方向において外足側前方緩衝材30B1と外足側後方緩衝材30B2とによって挟まれている。強化部材40は、これら内足側前方緩衝材30A1、内足側後方緩衝材30A2、外足側前方緩衝材30B1および外足側後方緩衝材30B2に対しても、たとえば接着等によって接合されている。
【0056】
強化部材40は、ミッドソール20および緩衝材30よりも剛性の高い部材にて構成されており、より好ましくはアウトソール50よりも剛性の高い部材にて構成される。すなわち、強化部材40は、ミッドソール20および緩衝材30よりも弾性率が大きくかつ硬質である。
【0057】
強化部材40を構成する材料としては、特にこれが制限されるものではないが、たとえば、ウレタン系熱可塑性エラストマ(TPU)、アミド系熱可塑性エラストマ(TPA)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリマー樹脂からなる非繊維強化樹脂や、強化繊維としてカーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ダイニーマ繊維、ザイロン繊維、ボロン繊維等を用いた繊維強化樹脂等が好適に利用できる。
【0058】
ここで、特に図5ないし図7に示すように、本実施の形態に係る靴100およびこれに具備されたソール10にあっては、ミッドソール20および緩衝材30からなるソール本体が、接地面12の法線方向と直交する第1方向において第1弾性部材としてのミッドソール20と第2弾性部材としての緩衝材30とが互いに向き合う対向領域を有している。上記第1方向は、接地面12と平行な平面に重なることとなる任意の方向を意味しており、たとえば図2における紙面の面内方向のうちの任意の方向がこれに該当する。
【0059】
具体的には、当該対向領域には、内足側後方緩衝材30A2の外足側側面34と、これに対向する部分のミッドソール20の内足側側面23とによって規定される境界部が含まれる。なお、この境界部を規定する部分のミッドソール20の内足側側面23は、ミッドソール20の内足側側面23に設けられた上述した切り欠き部を規定する壁面の一部に該当する。
【0060】
また、当該対向領域には、外足側後方緩衝材30B2の内足側側面33と、これに対向する部分のミッドソール20の外足側側面24とによって規定される境界部が含まれる。なお、この境界部を規定する部分のミッドソール20の外足側側面24は、ミッドソール20の外足側側面24に設けられた上述した切り欠き部を規定する壁面の一部に該当する。
【0061】
図5および図7ないし図9に示すように、この対向領域を規定する部分のミッドソール20の内足側側面23および外足側側面24の所定位置には、ソール10の内側に向けて窪む凹部25が設けられている。これにより、当該凹部25が位置する部分においては、ミッドソール20と緩衝材30とが互いに距離をもって位置することになり、これに伴ってミッドソール20と緩衝材30との間に空隙部Sが形成されている。換言すれば、空隙部Sは、ミッドソール20と緩衝材30との境界部においてこれらミッドソール20と緩衝材30とによって取り囲まれることでソール10の内部に埋設された空間によって構成されている。
【0062】
図2ないし図9に示すように、本実施の形態においては、上述した対向領域の一部が、ソール10の内足側の部分であってかつ後足部R3に該当する部分である第1領域に位置するように設けられており、この第1領域においては、内足側後方緩衝材30A2に対向する部分のミッドソール20の内足側側面23に、2つの凹部25が設けられている。これにより、ソール10の内足側の部分であってかつ後足部R3に該当する部分には、2つの空隙部Sが位置することになる。
【0063】
ここで、第1領域に位置する部分の対向領域は、上述した第1方向に交差しかつ接地面12と略平行な方向である第2方向(当該第2方向は、着用者の足の足幅方向と合致する方向であるソール10の左右方向に対して交差する方向に該当し、具体的にはソール10の概ね前後方向である)に沿って延在しており、上述した2つの空隙部Sは、この第2方向において互いに距離をもって点在するように位置している。すなわち、これら2つの空隙部Sは、後足部R3の内足側端部に沿って前後方向に並んで位置している。
【0064】
また、本実施の形態においては、上述した対向領域の一部が、ソール10の外足側の部分であってかつ後足部R3に該当する部分である第2領域に位置するように設けられており、この第2領域においては、外足側後方緩衝材30B2に対向する部分のミッドソール20の外足側側面24に、3つの凹部25が設けられている。これにより、ソール10の外足側の部分であってかつ後足部R3に該当する部分には、3つの空隙部Sが位置することになる。
【0065】
ここで、第2領域に位置する部分の対向領域は、上述した第1方向に交差しかつ接地面12と略平行な方向である第2方向(当該第2方向は、着用者の足の足幅方向と合致する方向であるソール10の左右方向に対して交差する方向に該当し、具体的にはソール10の概ね前後方向である)に沿って延在しており、上述した3つの空隙部Sは、この第2方向において互いに距離をもって点在するように位置している。すなわち、これら3つの空隙部Sは、後足部R3の外足側端部に沿って前後方向に並んで位置している。
【0066】
そのため、これら第1領域および第2領域を含む部分においてソール10を前後方向と直交する平面に沿って切断した場合には、当該前後方向に沿って概ね図6に示す如くの断面形状と図7に示す如くの断面形状とが交互に現われることになる。
【0067】
一方、ミッドソール20の内足側側面23と内足側前方緩衝材30A1とによって規定される部分の対向領域、および、ミッドソール20の外足側側面24と外足側前方緩衝材30B1とによって規定される部分の対向領域には、このような空隙部Sは形成されていない。
【0068】
このように構成することにより、本実施の形態に係るソール10においては、空隙部Sを規定する部分のミッドソール20の表面(当該壁面が第1壁面に該当する)が、他の部材に接触することなく空隙部Sに面することで非拘束とされているとともに、空隙部Sを規定する部分の緩衝材30の表面(当該壁面が第2壁面に該当する)が、他の部材に接触することなく空隙部Sに面することで非拘束とされている。
【0069】
加えて、緩衝材30の表面のうちの上述した第1方向において上記第2壁面(すなわち、空隙部Sを規定する部分の緩衝材30の表面)と相対して位置する部分である第3壁面は、ソール10の外部に向けて露出しており、これにより当該第3壁面もまた、他の部材に接触することなく非拘束とされている。
【0070】
これにより、本実施の形態に係る靴100およびこれに具備されたソール10においては、低荷重域において高い緩衝性が発揮されるとともに、その耐久性にも優れたものとなる。以下、その理由について詳説する。
【0071】
一般に、フォーム材は、変形性に優れる反面、繰り返し荷重を受けることでいわゆるへたりと呼ばれる劣化が生じてしまい、この点において必ずしも耐久性に優れているとまでは言い難いものである。これに対し、固体状の粘弾性体は、フォーム材に比べ、概して耐久性に優れ、しかもフォーム材に近い変形性を有している。
【0072】
しかしながら、フォーム材は、概してポアソン比が小さく、荷重が印加される方向と交差する方向において外部から拘束を受けている場合にも、相応に高い変形性が確保できるものであるところ、固体状の粘弾性体は、概してポアソン比が大きく、当該方向において外部から拘束を受けている場合には、著しく変形性が劣ってしまうことになる。
【0073】
この点、本実施の形態に係るソール10およびこれを備えた靴100にあっては、上述したように空隙部Sが設けられた部分において緩衝材30が他の部材(特にミッドソール20)によって拘束されることなく非拘束とされているため、この空隙部Sが緩衝材30の変形しろとなり、その変形性が顕著に低下してしまうことがない。加えて、空隙部Sが設けられた部分においてミッドソール20も他の部材(特に緩衝材30)によって拘束されることなく非拘束とされているため、この空隙部Sがミッドソール20の変形しろともなる。
【0074】
そのため、本実施の形態に係る靴100およびこれに具備されたソール10とすることにより、ミッドソール20を構成するフォーム材の使用量を減らすことでこれにへたりが発生することによる耐久性の低下を抑制しつつ、対向領域の一部に空隙部Sを設けることによって緩衝材30およびミッドソール20(特に緩衝材30)の変形しろを当該空隙部Sによって確保することが可能になるため、高い緩衝性が発揮されることになる。したがって、このように構成することにより、低荷重域において高い緩衝性を発揮するとともに、その耐久性にも優れたソールおよびこれを備えた靴とすることができる。
【0075】
ここで、第2弾性部材としての緩衝材30は、第1弾性部材としてのミッドソール20よりも弾性率が高いことを要し、また、その弾性率が2.5MPa以下であることを要する。これは、第2弾性部材としての緩衝材30が第1弾性部材としてのミッドソール20よりも低い弾性率である場合には、そもそも第2弾性部材としての緩衝材30に第1弾性部材としてのミッドソール20と同様のへたりが生じてしまうおそれがあるためであり、また、第2弾性部材としての緩衝材30の弾性率が2.5MPaを越える場合には、緩衝材30の剛性が高くなり過ぎることでそもそもその変形性が劣ってしまうことになるためである。
【0076】
この条件を満たす限りにおいては、第2弾性部材としての緩衝材30を本実施の形態の如く固体状の粘弾性体にて構成する必要は必ずしもなく、他の材質のものを用いてもよい。なお、第1弾性部材としてのミッドソール20の弾性率は、0.5MPa以上2.0MPa以下であることが好ましく、第2弾性部材としての緩衝材30の弾性率は、0.9MPa以上2.8MPa以下であることが好ましい。
【0077】
また、後足部R3の周縁に沿って配置された第2弾性部材としての緩衝材30が、後足部R3の周縁を除く部分である中央部に配置された第1弾性部材としてのミッドソール20よりも高い弾性率を有していることにより、後足部R3の周縁の剛性が後足部R3の中央部に比して高められることにもなる。そのため、このように構成することにより、後足部R3の周縁の剛性を局所的に高めることが可能になるため、結果として着地時や立位時等に踵部がぐらつくことが抑制可能となり、安定性の向上にも資することになる。
【0078】
また、第2弾性部材としての緩衝材30は、第1弾性部材としてのミッドソール20よりも硬度が低いことが好ましい。第1弾性部材であるミッドソール20としては、たとえばアスカーC硬度で30以上90以下のものを用いることができ、第2弾性部材である緩衝材30としては、第1弾性部材であるミッドソール20よりも硬度が低いことを条件に、たとえばアスカーC硬度で10以上60以下のものを用いることができる。
【0079】
また、第2弾性部材としての緩衝材30は、第1弾性部材としてのミッドソール20よりも圧縮永久歪みが小さいことが好ましい。第1弾性部材であるミッドソール20としては、たとえば圧縮永久歪みが70%以下のものを用いることができ、第2弾性部材である緩衝材30としては、第1弾性部材であるミッドソール20よりも圧縮永久歪みが小さいことを条件に、たとえば圧縮永久歪みが20%以下のものを用いることができる。
【0080】
また、上述したように、第2弾性部材としての緩衝材30は、第1弾性部材としてのミッドソール20よりもポアソン比が大きいことが想定される。第1弾性部材であるミッドソール20としては、たとえばポアソン比が0.2以上0.3以下のものを用いることが想定され、第2弾性部材である緩衝材30としては、たとえばポアソン比が0.35以上0.5以下のものを用いることが想定される。
【0081】
なお、これら硬度、圧縮永久歪みおよびポアソン比の条件を満たす限りにおいては、第2弾性部材としての緩衝材30を本実施の形態の如く固体状の粘弾性体にて構成する必要は必ずしもなく、他の材質のものを用いてもよい。
【0082】
図7に示すように、本実施の形態に係る靴100およびこれに具備されたソール10においては、空隙部Sに対応する部分の緩衝材30(すなわち、上述した第2壁面と第3壁面とによって規定される部分の緩衝材30)が、上述した第1方向における外形寸法を厚みとした略板形状の部分を含んでいる。より具体的には、空隙部Sに対応する部分の緩衝材30のうちの上部側の部分において、緩衝材30が左右方向を厚みとする略板形状を成している。
【0083】
このように構成した場合には、着地時において緩衝材30に上下方向に荷重が加わることにより、印加される荷重が比較的低荷重である場合にも当該部分に座屈が生じ易くなり、緩衝材30の変形をより促すことが可能になる。したがって、より高い緩衝性を得ることが可能になる。
【0084】
また、上述したように、本実施の形態に係る靴100およびこれに具備されたソール10にあっては、内足側後方緩衝材30A2の上面31および外足側側面34が、これに対向する部分のミッドソール20の内足側側面23にたとえば接着等によって接合されているとともに、外足側後方緩衝材30B2の上面31および内足側側面33が、これに対向する部分のミッドソール20の外足側側面24にたとえば接着等によって接合されている。すなわち、本実施の形態に係る靴100およびこれに具備されたソール10においては、対向領域のうちの空隙部Sが設けられていない部分の全面において、緩衝材30がミッドソール20に接合されている。
【0085】
このように構成すれば、ミッドソール20と緩衝材30との接合面積を最大化することができるため、緩衝材30をミッドソール20に強固に固定することが可能になり、耐久性に優れたソールおよびこれを備えた靴とすることができる。しかしながら、必ずしも対向領域のうちの空隙部S以外の部分の全面においてミッドソール20と緩衝材30とを接合する必要はなく、一部を非接合することとしてもよい。
【0086】
また、これに関連し、本実施の形態に係る靴100およびこれに具備されたソール10にあっては、上述したように、対向領域に複数の空隙部Sを設けることにより、個々の空隙部Sのサイズが必要以上に大きくなることを回避している。これは、空隙部Sのサイズが大き過ぎる場合には、ミッドソール20と緩衝材30との接合面積が小さくなることによる組付け強度不足が発生するおそれがあるためであり、そのように構成することで耐久性に劣るものとなってしまうことを避けるためである。なお、空隙部Sの大きさと接合面積とはトレードオフの関係にあるため、耐久性と緩衝性を両立する上でこれら空隙部Sの大きさおよび接合面積は、適宜調整することが好ましい。
【0087】
また、図9に示すように、本実施の形態に係る靴100およびこれに具備されたソール10にあっては、個々の空隙部Sが、接地面12の法線方向に沿って延在するように構成されている。ここで、当該個々の空隙部Sは、上記方向に沿って延びる細長形状であることが好ましく、さらには、当該個々の空隙部Sは、ソール10の上端側に向かうにつれてソール10の前端側に近づく傾斜形状を有していることが好ましい。
【0088】
このように構成した場合には、着地時において緩衝材30に上下方向に荷重が加わった場合に、当該空隙部Sに隣接する部分のミッドソール20が前後方向に沿って剪断変形を起こし易くなるため、当該荷重の伝搬方向を、後足部R3から中足部R2を経由して前足部R1の順で着地する着地動作の際の力の流れる方向に合致させることが可能になる。したがって、歩行時や走行時におけるエネルギーロスの抑制を図ることができることになる。
【0089】
また、図2および図5に示すように、本実施の形態に係る靴100およびこれに具備されたソール10にあっては、上述した第1領域(すなわち、ソール10の内足側の部分であってかつ後足部R3に該当する部分)に位置する2つの空隙部Sの合計体積が、上述した第2領域(すなわち、ソール10の外足側の部分であってかつ後足部R3に該当する部分)に位置する3つの空隙部Sの合計体積よりも小さく構成されている。これら第1領域および第2領域に位置する空隙部Sの合計体積は、たとえばソール10を側面視した場合における個々の空隙部Sのサイズや数を調整することで変更することができる。
【0090】
このように、第1領域に位置する空隙部Sの体積を第2領域に位置する空隙部Sの体積よりも小さくすることにより、総じてソール10の内足側端部における剛性をソール10の外足側端部における剛性よりも高めることが可能になる。そのため、着地時において着用者の踵部が内足側に向けて過度に倒れ込むオーバープロネーションの発生を抑制することが可能になる。
【0091】
また、図1ないし図9に示すように、本実施の形態に係る靴100およびこれに具備されたソール10にあっては、ミッドソール20の内足側側面23および外足側側面24のうちの外部に対して露出する面に、接地面12の法線方向と交差する方向に延びる溝部27が複数設けられるとともに、緩衝材30の内足側側面23および外足側側面24のうちの外部に対して露出する面に、接地面12の法線方向と交差する方向に延びる溝部37が複数設けられている。
【0092】
このように構成することにより、着地時においてミッドソール20および緩衝材30に上下方向に荷重が加わった場合に、これらミッドソール20および緩衝材30の変形が促進されることになり、緩衝性をより高めることが可能になる。特に、空隙部Sに対応する部分の緩衝材30(すなわち、上述した第2壁面と第3壁面とによって規定される部分の緩衝材30)の外部に対して露出する部分(すなわち第3壁面)に溝部37が設けられることにより、当該空隙部Sに対応する部分の緩衝材30の変形しろが空隙部Sによって確保されていることと相まって、より高い変形性を得ることが可能になり、これに伴って緩衝性も大幅に促進されることになる。
【0093】
さらに、本実施の形態に係る靴100およびこれに具備されたソール10にあっては、緩衝材30の外部に露出する面の所定位置に、上述した溝部37に比較してその溝深さが深くかつその溝幅も大きい凹状部36が複数設けられている。当該凹状部36の各々は、接地面12の法線方向に沿って延びる細長形状であることが好ましく、さらには、当該個々の凹状部36は、ソール10の上端側に向かうにつれてソール10の前端側に近づく傾斜形状を有していることが好ましい。
【0094】
このように構成した場合には、着地時において緩衝材30に上下方向に荷重が加わった場合に、当該凹状部36に隣接する部分の緩衝材30が前後方向に沿って剪断変形を起こし易くなるため、当該荷重の伝搬方向を、後足部R3から中足部R2を経由して前足部R1の順で着地する着地動作の際の力の流れる方向に合致させることが可能になる。したがって、歩行時や走行時におけるエネルギーロスの抑制を図ることができることになる。
【0095】
加えて、図2図5および図7ないし図9に示すように、本実施の形態に係る靴100およびこれに具備されたソール10にあっては、個々の空隙部Sに対応する位置のミッドソール20に、一端が当該空隙部Sを規定する部分の壁部において開口し、他端が上面21において開口する連通路26が、空隙部Sの各々に対応して設けられている。当該連通路26は、空隙部Sを外部に連通させるものである。
【0096】
当該連通路26は、ソール10の内部に形成された個々の空隙部Sが外部に対して密閉されることを回避するために設けられたものである。すなわち、個々の空隙部Sが外部に対して密閉された場合には、ソール10の製造時における熱処理等の際に、当該空隙部Sに封入された空気が膨張することにより、ソール10に意図しない変形等が発生しないようにするためのものである。
【0097】
そのため、このように構成することにより、製造時に不具合が発生することを未然に防止することが可能になり、歩留まりよくソール10およびこれを備えた靴100を製造することが可能になる。なお、本実施の形態においては、ミッドソール20の上面21に達するように連通路26を設けた場合を例示したが、これを下面22や内足側側面23、外足側側面24に達するように設けることとしてもよい。また、ミッドソール20に連通路26を設けるのではなく、緩衝材30に連通路を設けてもよいし、ミッドソール20と緩衝材30との境界部に沿って延びるように連通路を設けることとしてもよい。
【0098】
<実施の形態2>
図10は、実施の形態2に係るソールの模式断面図である。以下、この図10を参照して、本実施の形態に係るソール10Aについて説明する。なお、本実施の形態に係るソール10Aは、上述した実施の形態1に係るソール10に代えて靴100に具備されるものである。
【0099】
図10に示すように、本実施の形態に係るソール10Aは、上述した実施の形態1に係るソール10と同様の構造を有するものであり、内足側後方緩衝材30A2および外足側後方緩衝材30B2の材質のみが、上述した実施の形態1に係るソール10と異なっている。
【0100】
具体的には、内足側後方緩衝材30A2および外足側後方緩衝材30B2の各々は、主成分としての樹脂材料と、副成分としての発泡剤や架橋剤とを含む樹脂製のフォーム材にて構成されている。また、これに代えて、主成分としてのゴム材料と、副成分としての可塑剤や発泡剤、補強剤、架橋剤とを含むゴム製のフォーム材を用いてもよい。
【0101】
上記樹脂材料としては、たとえばエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリオレフィン樹脂、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性ポリアミド系エラストマ(TPA,TPAE)、または、熱可塑性ポリエステル系エラストマ等が利用できる。上記ゴム材料としては、たとえばブタジエンゴムが好適に利用できる。
【0102】
ここで、本実施の形態に係るソール10Aにおいては、ミッドソール20が上述した実施の形態1に係るソール10と同様にフォーム材にて構成されており、そのため、ミッドソール20と緩衝材30とは、いずれもフォーム材にて構成されている。しかしながら、第2弾性部材としての緩衝材30を構成するフォーム材は、第1弾性部材としてのミッドソール20を構成するフォーム材よりも弾性率が高く、また、その弾性率が2.5MPa以下である。
【0103】
このように構成した場合にも、上述した実施の形態1の場合と同様に、対向領域の一部に空隙部Sを設けることによって緩衝材30およびミッドソール20(特に緩衝材30)の変形しろを当該空隙部Sによって確保することが可能になるため、高い緩衝性が発揮されるソールとすることができる。したがって、上述した実施の形態1において説明した効果に準じた効果を得ることが可能になる。
【0104】
<実施の形態3,4>
図11および図12は、それぞれ実施の形態3,4に係るソールの模式断面図である。以下、図11および図12を参照して、これら実施の形態に係るソール10B,10Cについて説明する。なお、ソール10B,10Cは、いずれも上述した実施の形態1に係るソール10に代えて靴100に具備されるものである。
【0105】
図11に示すように、実施の形態3に係るソール10Bは、実施の形態1に係るソール10と比較した場合に、空隙部Sが設けられる位置のみが相違している。具体的には、ソール10Bにおいては、空隙部Sが、ミッドソール20および緩衝材30が互いに向き合う対向領域のうちの第1領域(すなわち、ソール10Bの内足側の部分であってかつ後足部R3に該当する部分)にのみ設けられている。
【0106】
図12に示すように、実施の形態4に係るソール10Cは、実施の形態1に係るソール10と比較した場合に、空隙部Sが設けられる位置のみが相違している。具体的には、ソール10Cにおいては、空隙部Sが、ミッドソール20および緩衝材30が互いに向き合う対向領域のうちの第2領域(すなわち、ソール10Cの外足側の部分であってかつ後足部R3に該当する部分)にのみ設けられている。
【0107】
これらのいずれかの構成を採用した場合にも、上述した実施の形態1の場合と同様に、対向領域の一部に空隙部Sを設けることによって緩衝材30およびミッドソール20(特に緩衝材30)の変形しろを当該空隙部Sによって確保することが可能になるため、高い緩衝性が発揮されるソールとすることができる。したがって、上述した実施の形態1において説明した効果に準じた効果を得ることが可能になる。
【0108】
<実施の形態5,6>
図13および図14は、それぞれ実施の形態5,6に係るソールが具備するミッドソールを外足側から見た模式側面図である。以下、図13および図14を参照して、これら実施の形態に係るソール10D,10Eについて説明する。なお、これらのソール10D,10Eは、いずれも上述した実施の形態1に係るソール10に代えて靴100に具備されるものである。
【0109】
図13に示すように、実施の形態5に係るソール10Dは、上述した実施の形態1に係るソール10と比較した場合に、空隙部Sを形成するためにミッドソール20に設けられる凹部25が、後足部R3のみならず、中足部R2にも設けられている点においてのみ、その構成が相違している。このように構成した場合には、空隙部Sは、ソール10Dのうちの後足部R3のみならず、中足部R2にも形成されることになる。なお、図13においては理解を容易とするために、当該凹部25に斜線を付している。
【0110】
図14に示すように、実施の形態6に係るソール10Eは、上述した実施の形態1に係るソール10と比較した場合に、空隙部Sを形成するためにミッドソール20に設けられる凹部25が、ソール10Eの前後方向に沿って延びる細長形状に構成されている点においてのみ、その構成が相違している。なお、図13においては理解を容易とするために、当該凹部25に斜線を付している。
【0111】
これらのいずれかの構成を採用した場合にも、上述した実施の形態1の場合と同様に、対向領域の一部に空隙部Sを設けることによって緩衝材30およびミッドソール20(特に緩衝材30)の変形しろを当該空隙部Sによって確保することが可能になるため、高い緩衝性が発揮されるソールとすることができる。したがって、上述した実施の形態1において説明した効果に準じた効果を得ることが可能になる。
【0112】
<実施の形態7ないし19>
図15ないし図27は、それぞれ実施の形態7ないし19に係るソールの模式断面図である。以下、図15ないし図27を参照して、これら実施の形態7ないし19に係るソール10Fないし10Rについて説明する。なお、実施の形態7ないし19に係るソール10Fないし10Rは、いずれも上述した実施の形態1に係るソール10と比較した場合に、ミッドソール20および緩衝材30の形状のみが相違するものであり、上述した実施の形態1に係るソール10に代えて靴100に具備されるものである。
【0113】
図15に示すように、実施の形態7に係るソール10Fは、ミッドソール20の内足側側面23および外足側側面24にそれぞれ断面視逆段差形状の切り欠き部を設け、これら切り欠き部を規定する壁面の各々にさらに断面視矩形状の凹部25を設け、これら凹部25がそれぞれ内足側に配置される断面視略I字状の緩衝材30の外足側側面34および外足側に配置される断面視略I字状の緩衝材30の内足側側面33によって覆われることとなるように、これら緩衝材30を上記切り欠き部にそれぞれ嵌め込んだものである。この場合、個々の空隙部Sは、ミッドソール20に設けられた凹部25と、これを覆う緩衝材30の壁面とによって規定されることになる。
【0114】
図16に示すように、実施の形態8に係るソール10Gは、ミッドソール20の内足側側面23および外足側側面24にそれぞれ断面視逆段差形状の切り欠き部を設け、これら切り欠き部を規定する壁面の各々にさらに断面視逆段差形状の凹部25を設け、これら凹部25がそれぞれ内足側に配置される断面視略I字状の緩衝材30の外足側側面34および外足側に配置される断面視略I字状の緩衝材30の内足側側面33によって覆われることとなるように、これら緩衝材30を上記切り欠き部にそれぞれ嵌め込んだものである。この場合、個々の空隙部Sは、ミッドソール20に設けられた凹部25と、これを覆う緩衝材30の壁面と、アウトソール50の上面51とによって規定されることになる。
【0115】
図17に示すように、実施の形態9に係るソール10Hは、ミッドソール20の内足側側面23および外足側側面24に断面視逆段差形状の凹部25を設け、これら凹部25がそれぞれ内足側に配置される断面視略I字状の緩衝材30の外足側側面34および外足側に配置される断面視略I字状の緩衝材30の内足側側面33によって覆われることとなるように、これら緩衝材30を上記凹部25にそれぞれ嵌め込んだものである。この場合、個々の空隙部Sは、ミッドソール20に設けられた凹部25と、これを覆う緩衝材30の壁面と、アウトソール50の上面51とによって規定されることになる。
【0116】
図18に示すように、実施の形態10に係るソール10Iは、ミッドソール20の内足側側面23および外足側側面24に断面視矩形状の凹部25を設け、これら凹部25をそれぞれ内足側に配置される断面視略I字状の緩衝材30の外足側側面34および外足側に配置される断面視略I字状の緩衝材30の内足側側面33によって覆ったものである。この場合、個々の空隙部Sは、ミッドソール20に設けられた凹部25と、これを覆う緩衝材30の壁面とによって規定されることになる。
【0117】
図19に示すように、実施の形態11に係るソール10Jは、内足側に配置される緩衝材30の外足側側面34および外足側に配置される緩衝材30の内足側側面にそれぞれ断面視矩形状の凹部35を設け、これら凹部35をそれぞれミッドソール20の内足側側面23および外足側側面24によって覆ったものである。この場合、個々の空隙部Sは、緩衝材30に設けられた凹部35と、これを覆うミッドソール20の壁面とによって規定されることになる。
【0118】
図20に示すように、実施の形態12に係るソール10Kは、ミッドソール20の内足側側面23および外足側側面24にそれぞれ断面視段差形状の凹部25を設け、内足側に配置される緩衝材30の外足側側面34および外足側に配置される緩衝材30の内足側側面にそれぞれ断面視逆段差形状の凹部35を設け、これら凹部25と凹部35とが互いを覆うこととなるように、ミッドソール20とこれら緩衝材30とを組み合わせたものである。この場合、個々の空隙部Sは、ミッドソール20に設けられた凹部25と、緩衝材30に設けられた凹部35とによって規定されることになる。
【0119】
図21に示すように、実施の形態13に係るソール10Lは、内足側に配置される緩衝材30の外足側側面34および外足側に配置される緩衝材30の内足側側面にそれぞれ断面視逆段差状の凹部35を設け、これら凹部35をそれぞれミッドソール20の内足側側面23および外足側側面24によって覆ったものである。この場合、個々の空隙部Sは、緩衝材30に設けられた凹部35と、これを覆うミッドソール20の壁面と、アウトソール50の上面51とによって規定されることになる。
【0120】
図22に示すように、実施の形態14に係るソール10Mは、ミッドソール20の内足側側面23および外足側側面24にそれぞれ断面視逆段差形状の凹部25を設け、内足側に配置される緩衝材30の外足側側面34および外足側に配置される緩衝材30の内足側側面にそれぞれ断面視段差形状の凹部35を設け、これら凹部25と凹部35とが互いを覆うこととなるように、ミッドソール20とこれら緩衝材30とを組み合わせたものである。この場合、個々の空隙部Sは、ミッドソール20に設けられた凹部25と、緩衝材30に設けられた凹部35とによって規定されることになる。
【0121】
図23に示すように、実施の形態15に係るソール10Nは、ミッドソール20の内足側側面23および外足側側面24にそれぞれ断面視逆段差形状の凹部25を設け、これら凹部25をそれぞれ内足側に配置される断面視略I字状の緩衝材30の外足側側面34および外足側に配置される断面視略I字状の緩衝材30の内足側側面33によって覆ったものである。この場合、個々の空隙部Sは、ミッドソール20に設けられた凹部25と、これを覆う緩衝材30の壁面と、アウトソール50の上面51とによって規定されることになる。
【0122】
図24に示すように、実施の形態16に係るソール10Oは、当該ソール10Oの内足側端部から外足側端部にまで達するように単一の緩衝材30を配置し、当該緩衝材30の下面32に断面視矩形状の凹部35を設け、この凹部35の側壁に対して距離をもって位置するようにミッドソール20を当該凹部35に嵌め込んだものである。この場合、個々の空隙部Sは、緩衝材30に設けられた凹部35と、ミッドソール20の側面と、アウトソール50の上面51とによって規定されることになる。
【0123】
図25に示すように、実施の形態17に係るソール10Pは、当該ソール10Pの内足側端部から外足側端部にまで達するようにミッドソール20を配置し、当該ミッドソール20の下面22に断面視矩形状の凹部25を設け、この凹部25の側壁に対して距離をもって位置するように断面視逆段差状の凹部35が設けられた一対の緩衝材30をそれぞれミッドソール20の凹部25の両端部に嵌め込んだものである。この場合、個々の空隙部Sは、ミッドソール20に設けられた凹部25と、緩衝材30に設けられた凹部35と、アウトソール50の上面51とによって規定されることになる。
【0124】
図26に示すように、実施の形態18に係るソール10Qは、当該ソール10Qの内足側端部から外足側端部にまで達するようにミッドソール20を配置し、当該ミッドソール20の下面22に断面視矩形状の凹部25を設け、この凹部25の側壁に対して距離をもって位置するように断面視段差状の凹部35が設けられた一対の緩衝材30をそれぞれミッドソール20の凹部25の両端部に嵌め込んだものである。この場合、個々の空隙部Sは、ミッドソール20に設けられた凹部25と、緩衝材30に設けられた凹部35とによって規定されることになる。
【0125】
図27に示すように、実施の形態19に係るソール10Rは、当該ソール10Rの内足側端部から外足側端部にまで達するようにミッドソール20を配置し、当該ミッドソール20の下面22に断面視矩形状の凹部25を設け、この凹部25の側壁に対して距離をもって位置するように断面視I字状の一対の緩衝材30をミッドソール20の凹部25の両端部にそれぞれ嵌め込んだものである。この場合、個々の空隙部Sは、ミッドソール20に設けられた凹部25と、緩衝材30の側面と、アウトソール50の上面51とによって規定されることになる。
【0126】
これらのいずれかの構成を採用した場合にも、上述した実施の形態1の場合と同様に、対向領域の一部に空隙部Sを設けることによって緩衝材30およびミッドソール20(特に緩衝材30)の変形しろを当該空隙部Sによって確保することが可能になるため、高い緩衝性が発揮されるソールとすることができる。したがって、上述した実施の形態1において説明した効果に準じた効果を得ることが可能になる。
【0127】
<実施の形態等における開示内容の要約>
上述した実施の形態1ないし19において開示した特徴点を要約すると、以下のとおりとなる。
【0128】
[付記1]
着用者の足の足裏を支持する支持面を規定するソール本体と、
接地面を規定するアウトソールとを備え、
上記ソール本体が、第1弾性部材と、当該第1弾性部材よりも弾性率が高い第2弾性部材とを含み、
上記第2弾性部材の弾性率が、2.5MPa以下であり、
上記ソール本体が、上記接地面の法線方向と直交する第1方向において上記第1弾性部材および上記第2弾性部材が互いに向き合う対向領域を有し、
上記対向領域の少なくとも一部において上記第1弾性部材と上記第2弾性部材とが互いに距離をもって配置されることにより、上記第1弾性部材と上記第2弾性部材との間に空隙部が設けられ、これにより、上記空隙部を規定する部分の上記第1弾性部材の表面である第1壁面が非拘束とされるとともに、上記空隙部を規定する部分の上記第2弾性部材の表面である第2壁面が非拘束とされ、
上記第2弾性部材の表面のうちの上記第1方向において上記第2壁面と相対して位置する部分である第3壁面が外部に向けて露出していることにより、上記第3壁面が非拘束とされている、ソール。
【0129】
[付記2]
上記第1弾性部材が、フォーム材からなり、
上記第2弾性部材が、固体状の粘弾性体からなる、付記1に記載のソール。
【0130】
[付記3]
上記第1弾性部材および上記第2弾性部材が、いずれもフォーム材からなる、付記1に記載のソール。
【0131】
[付記4]
着用者の足の足裏を支持する支持面を規定するソール本体と、
接地面を規定するアウトソールとを備え、
上記ソール本体が、第1弾性部材と、当該第1弾性部材よりも弾性率が高い第2弾性部材とを含み、
上記第1弾性部材が、フォーム材からなり、
上記第2弾性部材が、固体状の粘弾性体からなり、
上記ソール本体が、上記接地面の法線方向と直交する第1方向において上記第1弾性部材および上記第2弾性部材が互いに向き合う対向領域を有し、
上記対向領域の少なくとも一部において上記第1弾性部材と上記第2弾性部材とが互いに距離をもって配置されることにより、上記第1弾性部材と上記第2弾性部材との間に空隙部が設けられ、これにより、上記空隙部を規定する部分の上記第1弾性部材の表面である第1壁面が非拘束とされるとともに、上記空隙部を規定する部分の上記第2弾性部材の表面である第2壁面が非拘束とされ、
上記第2弾性部材の表面のうちの上記第1方向において上記第2壁面と相対して位置する部分である第3壁面が外部に向けて露出していることにより、上記第3壁面が非拘束とされている、ソール。
【0132】
[付記5]
上記第2壁面および上記第3壁面によって規定される部分の上記第2弾性部材が、上記第1方向における外形寸法を厚みとした略板形状の部分を含んでいる、付記1から4のいずれかに記載のソール。
【0133】
[付記6]
上記対向領域が、上記空隙部が設けられていない部分を含むとともに、当該部分において上記第1弾性部材と上記第2弾性部材とが、接合されている、付記1から5のいずれかに記載のソール。
【0134】
[付記7]
上記空隙部を外部に連通させる連通路が、上記ソール本体に設けられている、付記6に記載のソール。
【0135】
[付記8]
上記対向領域が、上記第1方向に交差しかつ上記接地面と略平行な方向である第2方向に沿って延在し、
上記空隙部が、上記第2方向において互いに距離をもって点在するように複数設けられている、付記6または7に記載のソール。
【0136】
[付記9]
上記対向領域が、上記第1方向に交差しかつ上記接地面と略平行な方向である第2方向に沿って延在し、
上記第2方向が、着用者の足の足幅方向と合致する方向である上記ソールの左右方向に対して交差する方向である、付記1から7のいずれかに記載のソール。
【0137】
[付記10]
上記空隙部が、上記接地面の法線方向に沿って延在するとともに、上記ソールの上端側に向かうにつれて上記ソールの前端側に近づく傾斜形状を有している、付記9に記載のソール。
【0138】
[付記11]
着用者の足の足趾部および踏付け部を支持する前足部と、
着用者の足の踏まず部を支持する中足部と、
着用者の足の踵部を支持する後足部とを備え、
上記対向領域が、上記ソールの内足側の部分であってかつ上記後足部に該当する部分である第1領域と、上記ソールの外足側の部分であってかつ上記後足部に該当する部分である第2領域と、に少なくとも位置するように設けられ、
上記空隙部が、上記第1領域および上記第2領域の各々に位置している、付記9または10に記載のソール。
【0139】
[付記12]
上記第1領域に位置する上記空隙部の体積が、上記第2領域に位置する上記空隙部の体積よりも小さい、付記11に記載のソール。
【0140】
[付記13]
上記第3壁面に、上記接地面の法線方向と交差する方向に延びる溝部が設けられている、付記1から12のいずれかに記載のソール。
【0141】
[付記14]
付記1から13のいずれかに記載のソールと、
上記ソールの上方に設けられたアッパーとを備えた、靴。
【0142】
<その他の形態等>
上述した実施の形態1ないし19においては、第1弾性部材としてのミッドソールと第2弾性部材としての緩衝材とによって規定される対向領域が、いずれもソールの周縁に沿って延びるように配置された場合を例示して説明を行なったが、必ずしも対向領域が設けられる位置はこれに限られず、ソールを縦断または横断するように対向領域を設けることとしてもよい。その場合に、ソールを縦断または横断する部分の対向領域に空隙部を設けた場合にも、上述した各種の効果が相応に得られることになる。
【0143】
また、上述した実施の形態1ないし19において開示した各部の形状や大きさ、個数、配設位置等は、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々変更が可能である。
【0144】
さらには、上述した実施の形態ならびにその変形例において示した特徴的な構成は、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて相互に組み合わせることができる。
【0145】
このように、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0146】
10,10A~10R ソール、11 支持面、12 接地面、20 ミッドソール、21 上面、22 下面、23 内足側側面、24 外足側側面、25 凹部、26 連通路、27 溝部、30 緩衝材、30A1 内足側前方緩衝材、30A2 内足側後方緩衝材、30B1 外足側前方緩衝材、30B2 外足側後方緩衝材、31 上面、32 下面、33 内足側側面、34 外足側側面、35 凹部、36 凹状部、37 溝部、40 強化部材、50 アウトソール、50A 内足側アウトソール、50B 外足側アウトソール、50C 中央前方アウトソール、51 上面、52 下面、60 アッパー、61 アッパー本体、62 シュータン、63 シューレース、100 靴、HC 踵中心、R1 前足部、R2 中足部、R3 後足部、S 空隙部、SC シューセンター。
【要約】
【課題】低荷重域において高い緩衝性を発揮するとともに、その耐久性にも優れたソールを提供する。
【解決手段】ソール10は、第1弾性部材20と、第1弾性部材20よりも弾性率が高くその弾性率が2.5MPa以下である第2弾性部材30A2,30B2とを含むソール本体を備える。ソール本体は、第1弾性部材20および第2弾性部材30A2,30B2が互いに向き合う対向領域を有し、対向領域の少なくとも一部に空隙部Sが設けられることにより、空隙部Sを規定する部分の第1弾性部材20の表面である第1壁面が非拘束とされるとともに、空隙部Sを規定する部分の第2弾性部材30A2,30B2の表面である第2壁面が非拘束とされる。第2弾性部材30A2,30B2の表面のうちの、第2壁面と相対して位置する部分である第3壁面が外部に向けて露出することにより、第3壁面が非拘束とされる。
【選択図】図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27