(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】表示装置およびその駆動方法
(51)【国際特許分類】
G09G 3/3233 20160101AFI20240411BHJP
G09G 3/3266 20160101ALI20240411BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
G09G3/3233
G09G3/3266
G09G3/20 624B
G09G3/20 622E
G09G3/20 612E
G09G3/20 612K
G09G3/20 622D
G09G3/20 611H
G09G3/20 642A
G09G3/20 670E
G09G3/20 611A
G09G3/20 621F
G09G3/20 611J
(21)【出願番号】P 2023088322
(22)【出願日】2023-05-30
(62)【分割の表示】P 2021546069の分割
【原出願日】2019-09-17
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104695
【氏名又は名称】島田 明宏
(74)【代理人】
【識別番号】100148459
【氏名又は名称】河本 悟
(72)【発明者】
【氏名】山本 薫
【審査官】西島 篤宏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0243203(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0323593(US,A1)
【文献】特開2009-004757(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0350891(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00 - 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N型トランジスタとP型トランジスタとを含む画素回路を備えた表示装置であって、
iおよびjを2以上の整数としてi×j個の前記画素回路からなるi行×j列の画素マトリクスと、
前記N型トランジスタを駆動するi本の第1走査信号線と、
前記P型トランジスタを駆動するi本の第2走査信号線と、
i個の単位回路を含み第1クロック信号と第2クロック信号とに基づいて動作するシフトレジスタによって構成され、前記i本の第1走査信号線に第1走査信号を印加し、前記i本の第2走査信号線に第2走査信号を印加する走査信号線駆動回路と、
第1定電位を供給する第1定電位線と、
前記第1定電位よりも高い第2定電位を供給する第2定電位線と
を備え、
各単位回路は、第1内部ノードと、前記第1内部ノードと同じ論理レベルの電位が与えられる第2内部ノードと、前記第1内部ノードの電位を制御する第1制御回路と、対応する第1走査信号線に前記第1走査信号を印加する第1出力回路と、対応する第2走査信号線に前記第2走査信号を印加する第2出力回路とを含み、
偶数番目の単位回路には、前記第1クロック信号が第1制御クロックとして入力されるとともに前記第2クロック信号が第2制御クロックとして入力され、
奇数番目の単位回路には、前記第2クロック信号が前記第1制御クロックとして入力されるとともに前記第1クロック信号が前記第2制御クロックとして入力され、
前記第1制御回路は、
前記第1制御クロックを受け取る入力端子と、
前記第1内部ノードに接続された出力ノードと
を含み、
前記第1出力回路は、
対応する第1走査信号線に接続された第1出力端子と、
前記第1内部ノードに接続された制御端子を有し、前記第1出力端子に接続された第1走査信号線に印加される第1走査信号をオンレベルにするためのP型の第1走査信号ターンオントランジスタと、
前記第1内部ノードに接続された制御端子と、前記第1出力端子に接続された第1導通端子と、前記第1定電位線に接続された第2導通端子とを有するN型の第1走査信号ターンオフトランジスタと
を含み、
前記第2出力回路は、
他の単位回路および対応する第2走査信号線に接続された第2出力端子と、
前記第2内部ノードに接続された制御端子と、前記第2制御クロックが与えられる第1導通端子と、前記第2出力端子に接続された第2導通端子とを有するP型の第2走査信号制御トランジスタと、
前記第2内部ノードに接続された第1端子と、前記第2出力端子に接続された第2端子とを有するキャパシタと
を含むことを特徴とする、表示装置。
【請求項2】
前記第1クロック信号と前記第2クロック信号とを出力するクロック信号出力回路を備え、
前記第1クロック信号と前記第2クロック信号とは、第1レベルの電位を維持する第1期間と前記第1レベルよりも高い第2レベルの電位を維持する第2期間とを周期的に繰り返す2相のクロック信号であって、
nを偶数として、n番目の単位回路の第2出力端子に接続された第2走査信号線に印加される第2走査信号がオンレベルで維持される期間は、各垂直走査期間の開始時点を基準として前記第2クロック信号の(n/2)番目の第1期間に対応することを特徴とする、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
(n-1)番目の単位回路の第2出力端子に接続された第2走査信号線に印加される第2走査信号がオンレベルで維持される期間は、各垂直走査期間の開始時点を基準として前記第1クロック信号の(n/2)番目の第1期間に対応し、
(n+1)番目の単位回路の第2出力端子に接続された第2走査信号線に印加される第2走査信号がオンレベルで維持される期間は、各垂直走査期間の開始時点を基準として前記第1クロック信号の((n/2)+1)番目の第1期間に対応し、
n番目の単位回路の第1出力端子に接続された第1走査信号線に印加される第1走査信号がオンレベルで維持される期間は、各垂直走査期間の開始時点を基準として前記第1クロック信号の(n/2)番目の第1期間の開始時点から前記第1クロック信号の((n/2)+1)番目の第1期間の開始時点までの期間に対応することを特徴とする、請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第1期間は、前記第2期間よりも短いことを特徴とする、請求項2または3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記N型トランジスタは、酸化物半導体によりチャネル層が形成された薄膜トランジスタであって、
前記P型トランジスタは、低温ポリシリコンによりチャネル層が形成された薄膜トランジスタであることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記第1制御回路は、前記第1制御クロックが与えられる制御端子と、他の単位回路の第2出力端子に接続された第1導通端子と、前記第1内部ノードに接続された第2導通端子とを有するP型の第1内部ノード制御トランジスタを含むことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記第1制御回路は、他の単位回路の第2出力端子と前記第1内部ノードとの間に直列に接続された2つのP型トランジスタを含み、
前記第1制御回路に含まれる2つのP型トランジスタの制御端子には、前記第1制御クロックが与えられることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記第1内部ノードの電位と前記第2内部ノードの電位とは等しいことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項9】
各単位回路は、前記第1内部ノードの電位を制御する第2制御回路を含み、
前記第2制御回路は、
前記第1内部ノードと前記第2定電位線との間に直列に接続された2つのP型トランジスタからなる安定化回路と、
前記第1定電位線に接続された制御端子と、前記第2内部ノードに接続された第1導通端子と、前記第1内部ノードに接続された第2導通端子とを有するP型の出力回路制御トランジスタと
を含み、
前記安定化回路に含まれる2つのP型トランジスタのうちの前記第1内部ノード側のP型トランジスタの制御端子には、前記第2制御クロックが与えられ、
前記安定化回路に含まれる2つのP型トランジスタのうちの前記第2定電位線側のP型トランジスタの制御端子は、前記第1出力端子に接続されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項10】
各単位回路は、前記第1内部ノードの電位を制御する第2制御回路を含み、
前記第2制御回路は、
前記第1内部ノードと前記第2定電位線との間に直列に接続された2つのP型トランジスタからなる安定化回路と、
前記第1内部ノードと前記第2内部ノードとの間に直列に接続された2つのP型トランジスタからなる出力回路制御部と
を含み、
前記安定化回路に含まれる2つのP型トランジスタのうちの前記第1内部ノード側のP型トランジスタの制御端子には、前記第2制御クロックが与えられ、
前記安定化回路に含まれる2つのP型トランジスタのうちの前記第2定電位線側のP型トランジスタの制御端子は、前記第1出力端子に接続され、
前記出力回路制御部に含まれる2つのP型トランジスタの制御端子は、前記第1定電位線に接続されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項11】
前記第1走査信号ターンオントランジスタの第1導通端子は、前記第2定電位線に接続され、
前記第1走査信号ターンオントランジスタの第2導通端子は、前記第1出力端子に接続されていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項12】
前記第1出力回路は、前記第1出力端子に接続された第1走査信号線に印加される第1走査信号をオフレベルにするためのリセット回路を含み、
前記リセット回路は、前記第1制御クロックが与えられる制御端子と、前記第1出力端子に接続された第1導通端子と、前記第1定電位線に接続された第2導通端子とを有するP型のリセットトランジスタを含み、
前記第1走査信号ターンオントランジスタの第1導通端子には、前記第1制御クロックが与えられ、
前記第1走査信号ターンオントランジスタの第2導通端子は、前記第1出力端子に接続されていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項13】
前記第1出力回路は、
前記第1出力端子に接続された第1走査信号線に印加される第1走査信号をオフレベルにするためのリセット回路と、
前記第1制御クロックが与えられる制御端子と、第1走査信号ターンオントランジスタの第2導通端子に接続された第1導通端子と、前記第1出力端子に接続された第2導通端子とを有するN型のリレートランジスタと
を含み、
前記リセット回路は、前記第1制御クロックが与えられる制御端子と、前記第1出力端子に接続された第1導通端子と、前記第1定電位線に接続された第2導通端子とを有するP型のリセットトランジスタを含み、
前記第1走査信号ターンオントランジスタの第1導通端子は、前記第2定電位線に接続され、
前記第1走査信号ターンオントランジスタの第2導通端子は、前記リレートランジスタの第1導通端子に接続されていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項14】
N型トランジスタとP型トランジスタとを含む画素回路を備えた表示装置の駆動方法であって、
前記表示装置は、
iおよびjを2以上の整数としてi×j個の前記画素回路からなるi行×j列の画素マトリクスと、
前記N型トランジスタを駆動するi本の第1走査信号線と、
前記P型トランジスタを駆動するi本の第2走査信号線と、
i個の単位回路を含み第1クロック信号と第2クロック信号とに基づいて動作するシフトレジスタによって構成され、前記i本の第1走査信号線に第1走査信号を印加し、前記i本の第2走査信号線に第2走査信号を印加する走査信号線駆動回路と、
第1定電位を供給する第1定電位線と、
前記第1定電位よりも高い第2定電位を供給する第2定電位線と
を備え、
各単位回路は、第1内部ノードと、前記第1内部ノードと同じ論理レベルの電位が与えられる第2内部ノードと、前記第1内部ノードの電位を制御する第1制御回路と、対応する第1走査信号線に前記第1走査信号を印加する第1出力回路と、対応する第2走査信号線に前記第2走査信号を印加する第2出力回路とを含み、
前記第1クロック信号と前記第2クロック信号とは、第1レベルの電位を維持する第1期間と前記第1レベルよりも高い第2レベルの電位を維持する第2期間とを周期的に繰り返す2相のクロック信号であって、
奇数番目の単位回路には、前記第1クロック信号が第1制御クロックとして入力されるとともに前記第2クロック信号が第2制御クロックとして入力され、
偶数番目の単位回路には、前記第2クロック信号が前記第1制御クロックとして入力されるとともに前記第1クロック信号が前記第2制御クロックとして入力され、
前記第1制御回路は、
前記第1制御クロックを受け取る入力端子と、
前記第1内部ノードに接続された出力ノードと
を含み、
前記第1出力回路は、
対応する第1走査信号線に接続された第1出力端子と、
前記第1内部ノードに接続された制御端子を有し、前記第1出力端子に接続された第1走査信号線に印加される第1走査信号をオンレベルにするためのP型の第1走査信号ターンオントランジスタと、
前記第1内部ノードに接続された制御端子と、前記第1出力端子に接続された第1導通端子と、前記第1定電位線に接続された第2導通端子とを有するN型の第1走査信号ターンオフトランジスタと
を含み、
前記第2出力回路は、
他の単位回路および対応する第2走査信号線に接続された第2出力端子と、
前記第2内部ノードに接続された制御端子と、前記第2制御クロックが与えられる第1導通端子と、前記第2出力端子に接続された第2導通端子とを有するP型の第2走査信号制御トランジスタと、
前記第2内部ノードに接続された第1端子と、前記第2出力端子に接続された第2端子とを有するキャパシタと
を含み、
前記駆動方法は、各単位回路に関し、
前記第1内部ノードの電位がハイレベルからローレベルに変化するよう前記第1制御クロックを前記第2レベルから前記第1レベルに変化させる第1ステップと、
前記第1内部ノードの電位がローレベルで維持されている期間中に、前記第2出力回路から出力される第2走査信号がオフレベルからオンレベルに変化するよう、前記第2制御クロックを前記第2レベルから前記第1レベルに変化させる第2ステップと、
前記第2ステップを実行してから所定期間経過後に、前記第2出力回路から出力される第2走査信号がオンレベルからオフレベルに変化するよう、前記第2制御クロックを前記第1レベルから前記第2レベルに変化させる第3ステップと、
前記第3ステップを実行してから所定期間経過後に、前記第1出力回路から出力される第1走査信号がオンレベルからオフレベルに変化するよう、前記第1制御クロックを前記第2レベルから前記第1レベルに変化させる第4ステップと
を含み、
前記第1ステップが実行される時点以降で前記第2ステップが実行される直前の時点までの期間に、前記第1出力回路から出力される第1走査信号をオフレベルからオンレベルに変化させることを特徴とする、駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、表示装置およびその駆動方法に関し、より詳しくは、複数種類のトランジスタが混在する画素回路を備えた表示装置およびその駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL素子を含む画素回路を備えた有機EL表示装置が実用化されている。有機EL素子は、OLED(Organic Light-Emitting Diode)とも呼ばれており、それに流れる電流に応じた輝度で発光する自発光型の表示素子である。このように有機EL素子は自発光型の表示素子であるので、有機EL表示装置は、バックライトおよびカラーフィルタなどを要する液晶表示装置に比べて、容易に薄型化・低消費電力化・高輝度化などを図ることができる。
【0003】
有機EL表示装置の画素回路に関し、有機EL素子への電流の供給を制御するための駆動トランジスタとして、典型的には薄膜トランジスタ(TFT)が採用される。しかしながら、薄膜トランジスタについては、その特性にばらつきが生じやすい。具体的には、閾値電圧にばらつきが生じやすい。表示部内に設けられている駆動トランジスタに閾値電圧のばらつきが生じると、輝度のばらつきが生じるので表示品位が低下する。そこで、従来より、閾値電圧のばらつきを補償する各種処理(補償処理)が提案されている。
【0004】
補償処理の方式としては、駆動トランジスタの閾値電圧の情報を保持するためのキャパシタを画素回路内に設けることによって補償処理を行う内部補償方式と、例えば所定条件下で駆動トランジスタに流れる電流の大きさを画素回路の外部に設けられた回路で測定してその測定結果に基づいて映像信号を補正することによって補償処理を行う外部補償方式とが知られている。
【0005】
補償処理に内部補償方式を採用した有機EL表示装置の画素回路として、例えば
図28に示すような、1個の有機EL素子91と7個の薄膜トランジスタT91~T97と1個のキャパシタC9とを含む画素回路90が知られている。薄膜トランジスタT91~T97のチャネル層の材料には、例えば低温ポリシリコン(LTPS)が採用されている。また、一般に、薄膜トランジスタT91~T97は全てP型(pチャネル型)の薄膜トランジスタである。それ故、画素回路90の動作を制御するゲートドライバについても、P型のみの薄膜トランジスタが用いられている。例えば日本の特開2017-227880号公報の
図8に、
図28に示した画素回路90と同様の構成の画素回路を備える有機EL表示装置のゲートドライバ内の単位回路の構成が開示されている。その単位回路内のトランジスタは全てP型である。また、米国特許第9443464号明細書に添付された
図3および
図5にも、P型のみの薄膜トランジスタを用いて構成された単位回路の回路図が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本の特開2017-227880号公報
【文献】米国特許第9443464号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、酸化物半導体をチャネル層の材料に用いた薄膜トランジスタ(以下、「酸化物TFT」という。)が注目されている。高精細化や低消費電力化を図ることができるという観点から、表示装置の画素回路や駆動回路を構成する薄膜トランジスタへの酸化物TFTの採用が増加しつつある。酸化物TFTとしては、典型的には、酸化インジウムガリウム亜鉛(InGaZnO)を含む薄膜トランジスタ(以下、「IGZO-TFT」という。)が採用されている。一方、低温ポリシリコンをチャネル層の材料に用いた薄膜トランジスタ(以下、「LTPS-TFT」という。)については、移動度が高いので高速駆動が可能であるという利点やパネルの狭額縁化を実現しやすいという利点がある。
【0008】
以上の点に鑑み、画素回路内にLTPS-TFTとIGZO-TFTとを混在させることが考えられる。すなわち、従来の画素回路90内に設けられているLTPS-TFTの一部をIGZO-TFTに置き換えることが考えられる。これに関し、IGZO-TFTについては、N型(nチャネル型)で実用可能なものは作製されているが、P型で実用可能なものは作製されていない。従って、画素回路内にIGZO-TFTを設ける場合、当該IGZO-TFTは必然的にN型となる。また、上述したように、一般に従来の画素回路90内の薄膜トランジスタT91~T97は全てP型であった(
図28参照)。以上より、従来の画素回路90内に設けられているLTPS-TFTの一部をIGZO-TFTに置き換えると、画素回路内にN型TFTとP型TFTとが混在することになる。これに伴い、N型TFTを制御する信号(以下、「N型用制御信号」という。)とP型TFTを制御する信号(以下、「P型用制御信号」という。)とをゲートドライバで生成する必要性が生じる。CMOSを用いた構成を採用すればN型用制御信号とP型用制御信号とを生成することは可能であるが、当該構成の採用はプロセスコストの上昇を引き起こす。
【0009】
そこで、以下の開示は、複数種類のトランジスタが混在する画素回路(例えば、IGZO-TFTとLTPS-TFTとが混在する画素回路、N型トランジスタとP型トランジスタとが混在する画素回路)を備え正常に動作する表示装置をプロセスコストの上昇を抑制しつつ実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示のいくつかの実施形態に係る表示装置は、N型トランジスタとP型トランジスタとを含む画素回路を備えた表示装置であって、
iおよびjを2以上の整数としてi×j個の前記画素回路からなるi行×j列の画素マトリクスと、
前記N型トランジスタを駆動するi本の第1走査信号線と、
前記P型トランジスタを駆動するi本の第2走査信号線と、
i個の単位回路を含み第1クロック信号と第2クロック信号とに基づいて動作するシフトレジスタによって構成され、前記i本の第1走査信号線に第1走査信号を印加し、前記i本の第2走査信号線に第2走査信号を印加する走査信号線駆動回路と、
第1定電位を供給する第1定電位線と、
前記第1定電位よりも高い第2定電位を供給する第2定電位線と
を備え、
各単位回路は、第1内部ノードと、前記第1内部ノードと同じ論理レベルの電位が与えられる第2内部ノードと、前記第1内部ノードの電位を制御する第1制御回路と、対応する第1走査信号線に前記第1走査信号を印加する第1出力回路と、対応する第2走査信号線に前記第2走査信号を印加する第2出力回路とを含み、
偶数番目の単位回路には、前記第1クロック信号が第1制御クロックとして入力されるとともに前記第2クロック信号が第2制御クロックとして入力され、
奇数番目の単位回路には、前記第2クロック信号が前記第1制御クロックとして入力されるとともに前記第1クロック信号が前記第2制御クロックとして入力され、
前記第1制御回路は、
前記第1制御クロックを受け取る入力端子と、
前記第1内部ノードに接続された出力ノードと
を含み、
前記第1出力回路は、
対応する第1走査信号線に接続された第1出力端子と、
前記第1内部ノードに接続された制御端子を有し、前記第1出力端子に接続された第1走査信号線に印加される第1走査信号をオンレベルにするためのP型の第1走査信号ターンオントランジスタと、
前記第1内部ノードに接続された制御端子と、前記第1出力端子に接続された第1導通端子と、前記第1定電位線に接続された第2導通端子とを有するN型の第1走査信号ターンオフトランジスタと
を含み、
前記第2出力回路は、
他の単位回路および対応する第2走査信号線に接続された第2出力端子と、
前記第2内部ノードに接続された制御端子と、前記第2制御クロックが与えられる第1導通端子と、前記第2出力端子に接続された第2導通端子とを有するP型の第2走査信号制御トランジスタと、
前記第2内部ノードに接続された第1端子と、前記第2出力端子に接続された第2端子とを有するキャパシタと
を含む。
【0011】
本開示のいくつかの実施形態に係る(表示装置の)駆動方法は、N型トランジスタとP型トランジスタとを含む画素回路を備えた表示装置の駆動方法であって、
前記表示装置は、
iおよびjを2以上の整数としてi×j個の前記画素回路からなるi行×j列の画素マトリクスと、
前記N型トランジスタを駆動するi本の第1走査信号線と、
前記P型トランジスタを駆動するi本の第2走査信号線と、
i個の単位回路を含み第1クロック信号と第2クロック信号とに基づいて動作するシフトレジスタによって構成され、前記i本の第1走査信号線に第1走査信号を印加し、前記i本の第2走査信号線に第2走査信号を印加する走査信号線駆動回路と、
第1定電位を供給する第1定電位線と、
前記第1定電位よりも高い第2定電位を供給する第2定電位線と
を備え、
各単位回路は、第1内部ノードと、前記第1内部ノードと同じ論理レベルの電位が与えられる第2内部ノードと、前記第1内部ノードの電位を制御する第1制御回路と、対応する第1走査信号線に前記第1走査信号を印加する第1出力回路と、対応する第2走査信号線に前記第2走査信号を印加する第2出力回路とを含み、
前記第1クロック信号と前記第2クロック信号とは、第1レベルの電位を維持する第1期間と前記第1レベルよりも高い第2レベルの電位を維持する第2期間とを周期的に繰り返す2相のクロック信号であって、
奇数番目の単位回路には、前記第1クロック信号が第1制御クロックとして入力されるとともに前記第2クロック信号が第2制御クロックとして入力され、
偶数番目の単位回路には、前記第2クロック信号が前記第1制御クロックとして入力されるとともに前記第1クロック信号が前記第2制御クロックとして入力され、
前記第1制御回路は、
前記第1制御クロックを受け取る入力端子と、
前記第1内部ノードに接続された出力ノードと
を含み、
前記第1出力回路は、
対応する第1走査信号線に接続された第1出力端子と、
前記第1内部ノードに接続された制御端子を有し、前記第1出力端子に接続された第1走査信号線に印加される第1走査信号をオンレベルにするためのP型の第1走査信号ターンオントランジスタと、
前記第1内部ノードに接続された制御端子と、前記第1出力端子に接続された第1導通端子と、前記第1定電位線に接続された第2導通端子とを有するN型の第1走査信号ターンオフトランジスタと
を含み、
前記第2出力回路は、
他の単位回路および対応する第2走査信号線に接続された第2出力端子と、
前記第2内部ノードに接続された制御端子と、前記第2制御クロックが与えられる第1導通端子と、前記第2出力端子に接続された第2導通端子とを有するP型の第2走査信号制御トランジスタと、
前記第2内部ノードに接続された第1端子と、前記第2出力端子に接続された第2端子とを有するキャパシタと
を含み、
前記駆動方法は、各単位回路に関し、
前記第1内部ノードの電位がハイレベルからローレベルに変化するよう前記第1制御クロックを前記第2レベルから前記第1レベルに変化させる第1ステップと、
前記第1内部ノードの電位がローレベルで維持されている期間中に、前記第2出力回路から出力される第2走査信号がオフレベルからオンレベルに変化するよう、前記第2制御クロックを前記第2レベルから前記第1レベルに変化させる第2ステップと、
前記第2ステップを実行してから所定期間経過後に、前記第2出力回路から出力される第2走査信号がオンレベルからオフレベルに変化するよう、前記第2制御クロックを前記第1レベルから前記第2レベルに変化させる第3ステップと、
前記第3ステップを実行してから所定期間経過後に、前記第1出力回路から出力される第1走査信号がオンレベルからオフレベルに変化するよう、前記第1制御クロックを前記第2レベルから前記第1レベルに変化させる第4ステップと
を含み、
前記第1ステップが実行される時点以降で前記第2ステップが実行される直前の時点までの期間に、前記第1出力回路から出力される第1走査信号をオフレベルからオンレベルに変化させる。
【発明の効果】
【0012】
本開示のいくつかの実施形態によれば、走査信号線駆動回路内のシフトレジスタを構成する単位回路は、画素回路内のN型トランジスタを駆動するための第1走査信号線に第1走査信号を印加する第1出力回路と、画素回路内のP型トランジスタを駆動するための第2走査信号線に第2走査信号を印加する第2出力回路とを含んでいる。第1出力回路にはP型トランジスタである第1走査信号ターンオントランジスタとN型トランジスタである第1走査信号ターンオフトランジスタとが含まれており、第1走査信号の立ち上げは第1走査信号ターンオントランジスタを介して行われ、第1走査信号の立ち下げは第1走査信号ターンオフトランジスタを介して行われる。このため、第1走査信号が立ち上がった状態の電位と第1走査信号が立ち下がった状態の電位との差が充分に大きくなり、画素回路内のN型トランジスタのオン/オフが確実に行われる。また、第2出力回路にはP型トランジスタである第2走査信号制御トランジスタとブースト容量として機能するキャパシタとが含まれており、第2走査信号の立ち下げ/立ち上げはキャパシタを介して行われる。このため、第2走査信号が立ち下がった状態の電位と第2走査信号が立ち上がった状態の電位との差が充分に大きくなり、画素回路内のP型トランジスタのオン/オフが確実に行われる。以上より、N型トランジスタとP型トランジスタとが混在する画素回路を備え正常に動作する表示装置(例えば有機EL表示装置)をプロセスコストの上昇を抑制しつつ実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施形態において、ゲートドライバ内の単位回路の構成を示す回路図である。
【
図2】上記第1の実施形態に係る有機EL表示装置の全体構成を示すブロック図である。
【
図3】上記第1の実施形態において、第n行第m列の画素回路の構成を示す回路図である。
【
図4】上記第1の実施形態において、ゲートドライバの概略構成について説明するための図である。
【
図5】上記第1の実施形態において、ゲートドライバを構成するシフトレジスタの5段分の構成を示すブロック図である。
【
図6】上記第1の実施形態において、ゲートクロック信号について説明するための図である。
【
図7】上記第1の実施形態において、単位回路の動作について説明するためのタイミングチャートである。
【
図8】上記第1の実施形態において、(n-2)行目~n行目の画素回路の動作を制御する信号等の波形を示すタイミングチャートである。
【
図9】上記第1の実施形態において、画素回路の動作について説明するためのタイミングチャートである。
【
図10】上記第1の実施形態において、第1内部ノードの電位について説明するための図である。
【
図11】第2の実施形態に関し、第1走査信号および第2走査信号の波形の遅延について説明するための図である。
【
図12】上記第2の実施形態に関し、画素回路内に生じる貫通電流について説明するための図である。
【
図13】上記第2の実施形態において、第n行第m列の画素回路の構成を示す回路図である。
【
図14】上記第2の実施形態において、(n-2)行目~n行目の画素回路の動作を制御する信号等の波形を示すタイミングチャートである。
【
図15】上記第2の実施形態において、画素回路の動作について説明するためのタイミングチャートである。
【
図16】第3の実施形態において、第n行第m列の画素回路および第(n+1)行第m列の画素回路の構成を示す回路図である。
【
図17】上記第3の実施形態において、初期化の経路について説明するための図である。
【
図18】第4の実施形態において、ゲートドライバ内の単位回路の構成を示す回路図である。
【
図19】上記第4の実施形態において、単位回路の動作について説明するためのタイミングチャートである。
【
図20】上記第4の実施形態の第1の変形例において、ゲートドライバ内の単位回路の構成を示す回路図である。
【
図21】上記第4の実施形態の第2の変形例において、ゲートドライバ内の単位回路の構成を示す回路図である。
【
図22】第5の実施形態において、ゲートドライバ内の単位回路の構成を示す回路図である。
【
図23】上記第5の実施形態の変形例において、ゲートドライバ内の単位回路の構成を示す回路図である。
【
図24】第6の実施形態において、ゲートドライバ内の単位回路の構成を示す回路図である。
【
図25】第7の実施形態において、ゲートドライバ内の単位回路の構成を示す回路図である。
【
図26】上記第7の実施形態において、単位回路の動作について説明するためのタイミングチャートである。
【
図27】第8の実施形態において、ゲートドライバ内の単位回路の構成を示す回路図である。
【
図28】従来例における画素回路の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しつつ、実施形態について説明する。第2~第8の実施形態については、主に第1の実施形態と異なる点について説明し、第1の実施形態と同様の点については適宜説明を省略する。なお、以下においては、iおよびjは2以上の整数であると仮定し、nは1以上i以下の整数であると仮定し、mは1以上j以下の整数であると仮定する。
【0015】
<1.第1の実施形態>
<1.1 全体構成>
図2は、第1の実施形態に係る有機EL表示装置の全体構成を示すブロック図である。
図2に示すように、この有機EL表示装置は、表示制御回路100と表示部200とゲートドライバ(走査信号線駆動回路)300とエミッションドライバ(発光制御線駆動回路)400とソースドライバ(データ信号線駆動回路)500とを備えている。表示部200を有する有機EL表示パネル6内にゲートドライバ300とエミッションドライバ400とソースドライバ500とが含まれている。本実施形態においては、ゲートドライバ300とエミッションドライバ400とはモノリシック化されている。ソースドライバ500については、モノリシック化されていても良いし、モノリシック化されていなくても良い。
【0016】
表示部200には、i本の第1走査信号線NS(1)~NS(i)、i本の第2走査信号線PS(1)~PS(i)、i本の発光制御線EM(1)~EM(i)、およびj本のデータ信号線D(1)~D(j)が配設されている。なお、
図2の表示部200内については、それらの図示を省略している。第1走査信号線NS(1)~NS(i)は、上述したN型用制御信号である第1走査信号を伝達するための信号線であり、第2走査信号線PS(1)~PS(i)は、上述したP型用制御信号である第2走査信号を伝達するための信号線である。なお、画素回路の構成については後述する。第1走査信号線NS(1)~NS(i)と第2走査信号線PS(1)~PS(i)と発光制御線EM(1)~EM(i)とは典型的には互いに平行になっている。第1走査信号線NS(1)~NS(i)とデータ信号線D(1)~D(j)とは直交している。以下、必要に応じて、第1走査信号線NS(1)~NS(i)にそれぞれ与えられる第1走査信号にも符号NS(1)~NS(i)を付し、第2走査信号線PS(1)~PS(i)にそれぞれ与えられる第2走査信号にも符号PS(1)~PS(i)を付し、発光制御線EM(1)~EM(i)にそれぞれ与えられる発光制御信号にも符号EM(1)~EM(i)を付し、データ信号線D(1)~D(j)にそれぞれ与えられるデータ信号にも符号D(1)~D(j)を付す。
【0017】
また、表示部200には、i本の第1走査信号線NS(1)~NS(i)とj本のデータ信号線D(1)~D(j)との交差部に対応して、i×j個の画素回路20が設けられている。このようにi×j個の画素回路20が設けられることによって、i行×j列の画素マトリクスが表示部200に形成されている。さらに、表示部200には、各画素回路20に共通の図示しない電源線が配設されている。より詳細には、有機EL素子を駆動するためのローレベル電源電圧ELVSSを供給する電源線(以下、「ローレベル電源線」という。)、有機EL素子を駆動するためのハイレベル電源電圧ELVDDを供給する電源線(以下、「ハイレベル電源線」という。)、および初期化電圧Viniを供給する電源線(以下、「初期化電源線」という。)が配設されている。ローレベル電源電圧ELVSS、ハイレベル電源電圧ELVDD、および初期化電圧Viniは、図示しない電源回路から供給される。なお、ローレベル電源線は第1電源線に相当し、ハイレベル電源線は第2電源線に相当する。
【0018】
以下、
図2に示す各構成要素の動作について説明する。表示制御回路100は、外部から送られる入力画像信号DINとタイミング信号群(水平同期信号、垂直同期信号など)TGとを受け取り、デジタル映像信号DVと、ゲートドライバ300の動作を制御するゲート制御信号GCTLと、エミッションドライバ400の動作を制御するエミッションドライバ制御信号EMCTLと、ソースドライバ500の動作を制御するソース制御信号SCTLとを出力する。ゲート制御信号GCTLには、ゲートスタートパルス信号、ゲートクロック信号などが含まれている。エミッションドライバ制御信号EMCTLには、エミッションスタートパルス信号、エミッションクロック信号などが含まれている。ソース制御信号SCTLには、ソーススタートパルス信号、ソースクロック信号、ラッチストローブ信号などが含まれている。
【0019】
ゲートドライバ300は、第1走査信号線NS(1)~NS(i)および第2走査信号線PS(1)~PS(i)に接続されている。ゲートドライバ300は、表示制御回路100から出力されたゲート制御信号GCTLに基づいて、第1走査信号線NS(1)~NS(i)に第1走査信号を印加し、第2走査信号線PS(1)~PS(i)に第2走査信号を印加する。第1走査信号線NS(1)~NS(i)に印加されるハイレベル電位と第2走査信号線PS(1)~PS(i)に印加されるハイレベル電位とは等しく、第1走査信号線NS(1)~NS(i)に印加されるローレベル電位と第2走査信号線PS(1)~PS(i)に印加されるローレベル電位とは等しい。
【0020】
エミッションドライバ400は、発光制御線EM(1)~EM(i)に接続されている。エミッションドライバ400は、表示制御回路100から出力されたエミッションドライバ制御信号EMCTLに基づいて、発光制御線EM(1)~EM(i)に発光制御信号を印加する。
【0021】
ソースドライバ500は、図示しないjビットのシフトレジスタ、サンプリング回路、ラッチ回路、およびj個のD/Aコンバータなどを含んでいる。シフトレジスタは、縦続接続されたj個のレジスタを有している。シフトレジスタは、ソースクロック信号に基づき、初段のレジスタに供給されるソーススタートパルス信号のパルスを入力端から出力端へと順次に転送する。このパルスの転送に応じて、シフトレジスタの各段からサンプリングパルスが出力される。そのサンプリングパルスに基づいて、サンプリング回路はデジタル映像信号DVを記憶する。ラッチ回路は、サンプリング回路に記憶された1行分のデジタル映像信号DVをラッチストローブ信号に従って取り込んで保持する。D/Aコンバータは、各データ信号線D(1)~D(j)に対応するように設けられている。D/Aコンバータは、ラッチ回路に保持されたデジタル映像信号DVをアナログ電圧に変換する。その変換されたアナログ電圧は、データ信号として全てのデータ信号線D(1)~D(j)に一斉に印加される。
【0022】
以上のようにして、データ信号線D(1)~D(j)にデータ信号が印加され、第1走査信号線NS(1)~NS(i)に第1走査信号が印加され、第2走査信号線PS(1)~PS(i)に第2走査信号が印加され、発光制御線EM(1)~EM(i)に発光制御信号が印加されることによって、入力画像信号DINに基づく画像が表示部200に表示される。
【0023】
<1.2 画素回路の構成>
次に、表示部200内の画素回路20の構成について説明する。なお、ここで示す画素回路20の構成は一例であって、これには限定されない。
図3は、第n行第m列の画素回路20の構成を示す回路図である。
図3に示す画素回路20は、表示素子としての1個の有機EL素子(有機発光ダイオード)21と、7個のトランジスタ(典型的には薄膜トランジスタ)T1~T7(第1初期化トランジスタT1、閾値電圧補償トランジスタT2、書き込み制御トランジスタT3、駆動トランジスタT4、電源供給制御トランジスタT5、発光制御トランジスタT6、第2初期化トランジスタT7)と、1個の保持キャパシタCaとを含んでいる。トランジスタT1,T2,およびT7は、N型トランジスタである。トランジスタT3~T6は、P型トランジスタである。チャネル層の材料の観点では、トランジスタT1,T2,およびT7は例えばIGZO-TFTであって、トランジスタT3~T6は例えばLTPS-TFTである。但し、これには限定されない。保持キャパシタCaは、2つの電極(第1電極および第2電極)からなる容量素子である。
【0024】
第1初期化トランジスタT1については、制御端子は(n-1)行目の第1走査信号線NS(n-1)に接続され、第1導通端子は閾値電圧補償トランジスタT2の第2導通端子と駆動トランジスタT4の制御端子と保持キャパシタCaの第2電極とに接続され、第2導通端子は初期化電源線に接続されている。閾値電圧補償トランジスタT2については、制御端子はn行目の第1走査信号線NS(n)に接続され、第1導通端子は駆動トランジスタT4の第2導通端子と発光制御トランジスタT6の第1導通端子とに接続され、第2導通端子は第1初期化トランジスタT1の第1導通端子と駆動トランジスタT4の制御端子と保持キャパシタCaの第2電極とに接続されている。書き込み制御トランジスタT3については、制御端子はn行目の第2走査信号線PS(n)に接続され、第1導通端子はm列目のデータ信号線D(m)に接続され、第2導通端子は駆動トランジスタT4の第1導通端子と電源供給制御トランジスタT5の第2導通端子とに接続されている。駆動トランジスタT4については、制御端子は第1初期化トランジスタT1の第1導通端子と閾値電圧補償トランジスタT2の第2導通端子と保持キャパシタCaの第2電極とに接続され、第1導通端子は書き込み制御トランジスタT3の第2導通端子と電源供給制御トランジスタT5の第2導通端子とに接続され、第2導通端子は閾値電圧補償トランジスタT2の第1導通端子と発光制御トランジスタT6の第1導通端子とに接続されている。
【0025】
電源供給制御トランジスタT5については、制御端子はn行目の発光制御線EM(n)に接続され、第1導通端子はハイレベル電源線と保持キャパシタCaの第1電極とに接続され、第2導通端子は書き込み制御トランジスタT3の第2導通端子と駆動トランジスタT4の第1導通端子とに接続されている。発光制御トランジスタT6については、制御端子はn行目の発光制御線EM(n)に接続され、第1導通端子は閾値電圧補償トランジスタT2の第1導通端子と駆動トランジスタT4の第2導通端子とに接続され、第2導通端子は第2初期化トランジスタT7の第1導通端子と有機EL素子21のアノード端子とに接続されている。第2初期化トランジスタT7については、制御端子はn行目の第1走査信号線NS(n)に接続され、第1導通端子は発光制御トランジスタT6の第2導通端子と有機EL素子21のアノード端子とに接続され、第2導通端子は初期化電源線に接続されている。保持キャパシタCaについては、第1電極はハイレベル電源線と電源供給制御トランジスタT5の第1導通端子とに接続され、第2電極は第1初期化トランジスタT1の第1導通端子と閾値電圧補償トランジスタT2の第2導通端子と駆動トランジスタT4の制御端子とに接続されている。有機EL素子21については、アノード端子は発光制御トランジスタT6の第2導通端子と第2初期化トランジスタT7の第1導通端子とに接続され、カソード端子はローレベル電源線に接続されている。
【0026】
以上のように、第n行第m列の画素回路20では、第1初期化トランジスタT1の制御端子は(n-1)行目の第1走査信号線NS(n-1)に接続され、閾値電圧補償トランジスタT2の制御端子はn行目の第1走査信号線NS(n)に接続されている。従って、本実施形態においては、n行目の画素回路20内の第1初期化トランジスタT1の制御端子と(n-1)行目の画素回路20内の閾値電圧補償トランジスタT2の制御端子とはi本の第1走査信号線NS(1)~NS(i)のうちの同じ第1走査信号線NS(n-1)に接続されている。但し、n行目の画素回路20内の第1初期化トランジスタT1の制御端子に与えられる第1走査信号を伝達する第1走査信号線と(n-1)行目の画素回路20内の閾値電圧補償トランジスタT2の制御端子に与えられる第1走査信号を伝達する第1走査信号線とがゲートドライバ300の1つの出力から枝分かれした2本の信号線であるケースも考えられる。このようなケースも考慮すると、次のように規定することができる。n行目の画素回路20内の第1初期化トランジスタT1の制御端子に接続された第1走査信号線と(n-1)行目の画素回路20内の閾値電圧補償トランジスタT2の制御端子に接続された第1走査信号線とは駆動信号(第1走査信号)が同じである。
【0027】
<1.3 ゲートドライバ>
<1.3.1 シフトレジスタ>
図4は、ゲートドライバ300の概略構成について説明するための図である。ゲートドライバ300は複数段からなるシフトレジスタ301によって構成されている。表示部200にはi行×j列の画素マトリクスが形成されているところ、それら画素マトリクスの各行と1対1で対応するようにシフトレジスタ301の各段が設けられている。なお、以下においては、シフトレジスタ301の各段を構成する回路のことを「単位回路」という。本実施形態においては、シフトレジスタ301はi個の単位回路3(1)~3(i)を含んでいる。
【0028】
図5は、シフトレジスタ301の5段分の構成を示すブロック図である。ここでは、nを偶数と仮定して、(n-2)段目、(n-1)段目、n段目、(n+1)段目、および(n+2)段目の単位回路3(n-2)、3(n-1)、3(n)、3(n+1)、および3(n+2)に着目している。このシフトレジスタ301には、ゲート制御信号GCTLとして、ゲートスタートパルス信号、第1ゲートクロック信号GCK1、および第2ゲートクロック信号GCK2が与えられる。また、第1定電位としてのゲートロー電位VGLおよび第2定電位としてのゲートハイ電位VGHも、このシフトレジスタ301に与えられる。ゲートハイ電位VGHは、画素回路20内のN型トランジスタをオン状態、画素回路20内のP型トランジスタをオフ状態にするレベルの電位である。ゲートロー電位VGLは、画素回路20内のN型のトランジスタをオフ状態、画素回路20内のP型トランジスタをオン状態にするレベルの電位である。なお、ゲートロー電位VGLは第1定電位線361によって供給され、ゲートハイ電位VGHは第2定電位線362によって供給される。ゲートスタートパルス信号は、セット信号Sとして1段目の単位回路3(1)に与えられる信号であり、
図5では省略している。
【0029】
各単位回路3は、第1制御クロックCK1、第2制御クロックCK2、セット信号S、ゲートハイ電位VGH、およびゲートロー電位VGLをそれぞれ受け取るための入力端子と、出力信号OUT1および出力信号OUT2をそれぞれ出力するための出力端子とを含んでいる。出力信号OUT1はN型用制御信号であり、出力信号OUT2はP型用制御信号である。すなわち、各単位回路3では、N型用制御信号およびP型用制御信号が生成される。
【0030】
偶数段目の単位回路3については、第1ゲートクロック信号GCK1が第1制御クロックCK1として与えられ、第2ゲートクロック信号GCK2が第2制御クロックCK2として与えられる。奇数段目の単位回路3については、第2ゲートクロック信号GCK2が第1制御クロックCK1として与えられ、第1ゲートクロック信号GCK1が第2制御クロックCK2として与えられる。ゲートハイ電位VGHおよびゲートロー電位VGLについては、全ての単位回路3に共通的に与えられる。また、各段の単位回路3には、前段の単位回路3からの出力信号OUT2がセット信号Sとして与えられる。各段の単位回路3からの出力信号OUT1は、対応する第1走査信号線NSに第1走査信号として与えられる。各段の単位回路3からの出力信号OUT2は、次段の単位回路3にセット信号Sとして与えられ、対応する第2走査信号線PSに第2走査信号として与えられる。なお、
図3に示したように、n行目の画素回路20に着目すると、閾値電圧補償トランジスタT2の制御端子および第2初期化トランジスタT7の制御端子には第1走査信号線NS(n)が接続され、第1初期化トランジスタT1の制御端子には第1走査信号線NS(n-1)が接続され、書き込み制御トランジスタT3の制御端子には第2走査信号線PS(n)が接続されている。
【0031】
ところで、
図6に示すように、第1ゲートクロック信号GCK1と第2ゲートクロック信号GCK2とは、ゲートロー電位VGL(第1レベルの電位)を維持する第1期間とゲートハイ電位VGH(第2レベルの電位)を維持する第2期間とを周期的に繰り返す2相のクロック信号である。第1期間の長さP1は第2期間の長さP2以下である。但し、典型的には、第1期間の長さP1は第2期間の長さP2よりも短い。なお、第1ゲートクロック信号GCK1および第2ゲートクロック信号GCK2は表示制御回路100内に設けられたクロック信号出力回路から出力される。
【0032】
<1.3.2 単位回路>
図1は、本実施形態における単位回路3の構成を示す回路図である。
図1に示すように、単位回路3は、5個のトランジスタM1~M5と1個のキャパシタC1とを備えている。トランジスタM1~M4はP型トランジスタであり、トランジスタM5はN型トランジスタである。単位回路3は、また、ゲートロー電位VGLを供給する第1定電位線に接続された入力端子およびゲートハイ電位VGHを供給する第2定電位線に接続された入力端子のほか、3個の入力端子31~33および2個の出力端子38,39を有している。
図1では、セット信号Sを受け取るための入力端子に符号31を付し、第1制御クロックCK1を受け取るための入力端子に符号32を付し、第2制御クロックCK2を受け取るための入力端子に符号33を付し、出力信号OUT1を出力するための出力端子に符号38を付し、出力信号OUT2を出力するための出力端子に符号39を付している。なお、以下においては、出力信号OUT1を出力するための出力端子を「第1出力端子」といい、出力信号OUT2を出力するための出力端子を「第2出力端子」という。
【0033】
トランジスタM3の第2導通端子、トランジスタM4の制御端子、およびトランジスタM5の制御端子は互いに接続されている。なお、これらが互いに接続されている一節点のことを「第1内部ノード」という。第1内部ノードには符号N1を付す。また、トランジスタM1の制御端子とキャパシタC1の一端とは接続されている。なお、これらが接続されている一節点のことを「第2内部ノード」という。第2内部ノードには符号N2を付す。第1内部ノードN1と第2内部ノードN2とには、同じ論理レベルの電位が与えられる。
図1から把握されるように、本実施形態においては、第1内部ノードN1と第2内部ノードN2とは直接的に接続されている。
【0034】
ところで、単位回路3には、第1内部ノードN1の電位を制御する第1制御回路311と、出力信号OUT1の出力を制御する第1出力回路321と、出力信号OUT2の出力を制御する第2出力回路322とが含まれている。第1制御回路311は、トランジスタM3を含んでいる。第1制御回路311の出力ノード34は第1内部ノードN1に接続されている。第1出力回路321は、トランジスタM4とトランジスタM5とを含んでいる。第2出力回路322は、トランジスタM1とトランジスタM2とキャパシタC1とを含んでいる。
【0035】
トランジスタM1については、制御端子は第2内部ノードN2に接続され、第1導通端子は入力端子33に接続され、第2導通端子は第2出力端子39に接続されている。トランジスタM2については、制御端子は第1出力端子38に接続され、第1導通端子は第2定電位線に接続され、第2導通端子は第2出力端子39に接続されている。トランジスタM3については、制御端子は入力端子32に接続され、第1導通端子は入力端子31に接続され、第2導通端子は第1内部ノードN1に接続されている。トランジスタM4については、制御端子は第1内部ノードN1に接続され、第1導通端子は第2定電位線に接続され、第2導通端子は第1出力端子38に接続されている。トランジスタM5については、制御端子は第1内部ノードN1に接続され、第1導通端子は第1出力端子38に接続され、第2導通端子は第1定電位線に接続されている。キャパシタC1については、一端は第2内部ノードN2に接続され、他端は第2出力端子39に接続されている。
【0036】
本実施形態においては、トランジスタM1によって第2走査信号制御トランジスタが実現され、トランジスタM3によって第1内部ノード制御トランジスタが実現され、トランジスタM4によって第1走査信号ターンオントランジスタが実現され、トランジスタM5によって第1走査信号ターンオフトランジスタが実現されている。
【0037】
<1.4 駆動方法>
<1.4.1 単位回路の動作>
図7を参照しつつ、単位回路3の動作について説明する。時刻t01以前の期間には、第1内部ノードN1および第2内部ノードN2の電位はハイレベルで維持され、出力信号OUT1はローレベルで維持され、出力信号OUT2はハイレベルで維持されている。なお、出力信号OUT1がローレベルで維持されているので、トランジスタM2はオン状態で維持されている。
【0038】
時刻t01になると、第1制御クロックCK1がハイレベルからローレベルに変化する。これにより、トランジスタM3がオン状態となる。また、時刻t01には、セット信号Sがハイレベルからローレベルに変化する。これにより、第1内部ノードN1および第2内部ノードN2の電位がローレベルへと低下し、トランジスタM1およびトランジスタM4はオン状態となり、トランジスタM5はオフ状態となる。トランジスタM4がオン状態かつトランジスタM5がオフ状態となることによって、出力信号OUT1がローレベルからハイレベルへと変化する。これにより、トランジスタM2はオフ状態となる。
【0039】
時刻t02になると、第1制御クロックCK1がローレベルからハイレベルに変化する。これにより、トランジスタM3がオフ状態となる。また、時刻t02には、セット信号Sがローレベルからハイレベルに変化する。
【0040】
時刻t03になると、第2制御クロックCK2がハイレベルからローレベルに変化する。このとき、トランジスタM1はオン状態となっているので、入力端子33の電位の低下とともに第2出力端子39の電位(出力信号OUT2の電位)が低下する。ここで、第2内部ノードN2-第2出力端子39間にはキャパシタC1が設けられているので、第2出力端子39の電位の低下とともに第2内部ノードN2および第1内部ノードN1の電位も低下する(第2内部ノードN2および第1内部ノードN1がブースト状態となる)。このようなブースト動作の結果、トランジスタM1の制御端子には大きな負の電圧が印加され、第2出力端子39の接続先の書き込み制御トランジスタT3がオン状態となるのに充分なレベルにまで出力信号OUT2の電位が低下する。
【0041】
時刻t04になると、第2制御クロックCK2がローレベルからハイレベルに変化する。これにより、入力端子33の電位の上昇とともに第2出力端子39の電位(出力信号OUT2の電位)が上昇する。第2出力端子39の電位が上昇すると、キャパシタC1を介して、第2内部ノードN2および第1内部ノードN1の電位も上昇する。
【0042】
時刻t05になると、第1制御クロックCK1がハイレベルからローレベルに変化する。これにより、トランジスタM3がオン状態となる。このとき、セット信号Sはハイレベルで維持されている。このため、第1内部ノードN1および第2内部ノードN2の電位がハイレベルへと上昇し、トランジスタM1およびトランジスタM4はオフ状態となり、トランジスタM5はオン状態となる。トランジスタM4がオフ状態かつトランジスタM5がオン状態となることによって、出力信号OUT1がハイレベルからローレベルへと変化する。これにより、トランジスタM2はオン状態となる。
【0043】
時刻t05以降の期間には、時刻t01以前の期間と同様、第1内部ノードN1および第2内部ノードN2の電位はハイレベルで維持され、出力信号OUT1はローレベルで維持され、出力信号OUT2はハイレベルで維持される。
【0044】
以上のように単位回路3が動作することにより、(n-2)行目~n行目の画素回路20の動作を制御する信号等の波形は
図8に示すようなものとなる。なお、第2走査信号PS(n-3)は、(n-2)段目の単位回路3(n-2)にセット信号Sとして与えられる。時刻t11に第2走査信号PS(n-3)がハイレベルからローレベルに変化することにより、第1ゲートクロック信号GCK1および第2ゲートクロック信号GCK2のクロック動作に基づき、時刻t11~時刻t15の期間に第1走査信号NS(n-2)はハイレベルで維持され、時刻t13~時刻t14の期間に第2走査信号PS(n-2)はローレベルで維持される。また、時刻t13に第2走査信号PS(n-2)がハイレベルからローレベルに変化することにより、第1ゲートクロック信号GCK1および第2ゲートクロック信号GCK2のクロック動作に基づき、時刻t13~時刻t17の期間に第1走査信号NS(n-1)はハイレベルで維持され、時刻t15~時刻t16の期間に第2走査信号PS(n-1)はローレベルで維持される。さらに、時刻t15に第2走査信号PS(n-1)がハイレベルからローレベルに変化することにより、第1ゲートクロック信号GCK1および第2ゲートクロック信号GCK2のクロック動作に基づき、時刻t15~時刻t19の期間に第1走査信号NS(n)はハイレベルで維持され、時刻t17~時刻t18の期間に第2走査信号PS(n)はローレベルで維持される。以上のように第1走査信号NSおよび第2走査信号PSの波形が変化することにより、画素回路20へのデータ信号Dの書き込みが1行ずつ順次に行われる。
【0045】
ところで、例えば(n-1)行目とn行目との関係に着目すると、第1走査信号NS(n-1)がローレベルからハイレベルに変化する時刻t13から第1走査信号NS(n)がローレベルからハイレベルに変化する時刻t15までの期間の長さと第2走査信号PS(n-1)がハイレベルからローレベルに変化する時刻t15から第2走査信号PS(n)がハイレベルからローレベルに変化する時刻t17までの期間の長さとは等しい。すなわち、(n-1)行目の画素回路20内の閾値電圧補償トランジスタT2がオフ状態からオン状態に変化した時点からn行目の画素回路20内の閾値電圧補償トランジスタT2がオフ状態からオン状態に変化する時点までの期間の長さと(n-1)行目の画素回路20内の書き込み制御トランジスタT3がオフ状態からオン状態に変化した時点からn行目の画素回路20内の書き込み制御トランジスタT3がオフ状態からオン状態に変化する時点までの期間の長さとは等しい。
【0046】
また、シフトレジスタ301は2相のクロック信号(第1ゲートクロック信号GCK1および第2ゲートクロック信号GCK2)に基づいて動作するので、第2走査信号PSがオンレベル(ローレベル)で維持される期間および第1走査信号NSがオンレベル(ハイレベル)で維持される期間は以下のとおりである。n段目の単位回路3(n)の第2出力端子39に接続された第2走査信号線に印加される第2走査信号PS(n)がオンレベル(ローレベル)で維持される期間は、各垂直走査期間の開始時点を基準として第2ゲートクロック信号GCK2の(n/2)番目の第1期間(
図8で符号71を付した矢印で示す期間)に対応している。(n-1)段目の単位回路3(n-1)の第2出力端子39に接続された第2走査信号線に印加される第2走査信号PS(n-1)がオンレベル(ローレベル)で維持される期間は、各垂直走査期間の開始時点を基準として第1ゲートクロック信号GCK1の(n/2)番目の第1期間(
図8で符号72を付した矢印で示す期間)に対応している。(n+1)段目の単位回路3(n+1)の第2出力端子39に接続された第2走査信号線に印加される第2走査信号PS(n+1)がオンレベル(ローレベル)で維持される期間は、各垂直走査期間の開始時点を基準として第1ゲートクロック信号GCK1の((n/2)+1)番目の第1期間(
図8で符号73を付した矢印で示す期間)に対応している。n段目の単位回路3(n)の第1出力端子38に接続された第1走査信号線に印加される第1走査信号NS(n)がオンレベル(ハイレベル)で維持される期間は、各垂直走査期間の開始時点を基準として第1ゲートクロック信号GCK1の(n/2)番目の第1期間の開始時点から第1ゲートクロック信号GCK1の((n/2)+1)番目の第1期間の開始時点までの期間(
図8の時刻t15~時刻t19の期間)に対応している。
【0047】
なお、上記においてはnを偶数と仮定しているが、nが奇数の場合には次のようになる。n段目の単位回路3(n)の第2出力端子39に接続された第2走査信号線に印加される第2走査信号PS(n)がオンレベル(ローレベル)で維持される期間は、各垂直走査期間の開始時点を基準として第1ゲートクロック信号GCK1の((n+1)/2)番目の第1期間に対応する。(n-1)段目の単位回路3(n-1)の第2出力端子39に接続された第2走査信号線に印加される第2走査信号PS(n-1)がオンレベル(ローレベル)で維持される期間は、各垂直走査期間の開始時点を基準として第2ゲートクロック信号GCK2の((n-1)/2)番目の第1期間に対応する。(n+1)段目の単位回路3(n+1)の第2出力端子39に接続された第2走査信号線に印加される第2走査信号PS(n+1)がオンレベル(ローレベル)で維持される期間は、各垂直走査期間の開始時点を基準として第2ゲートクロック信号GCK2の(((n-1)/2)+1)番目の第1期間に対応する。n段目の単位回路3(n)の第1出力端子38に接続された第1走査信号線に印加される第1走査信号NS(n)がオンレベル(ハイレベル)で維持される期間は、各垂直走査期間の開始時点を基準として第2ゲートクロック信号GCK2の((n-1)/2)番目の第1期間の開始時点から第2ゲートクロック信号GCK2の(((n-1)/2)+1)番目の第1期間の開始時点までの期間に対応する。
【0048】
<1.4.2 画素回路の動作>
図9は、n行目の画素回路20(
図3に示す画素回路20)の動作について説明するためのタイミングチャートである。時刻t21以前には、第2走査信号PS(n)はハイレベルとなっており、第1走査信号NS(n-1)、第1走査信号NS(n)、および発光制御信号EM(n)はローレベルとなっている。このとき、電源供給制御トランジスタT5および発光制御トランジスタT6はオン状態となっていて、有機EL素子21は駆動電流の大きさに応じて発光している。
【0049】
時刻t21になると、発光制御信号EM(n)がローレベルからハイレベルに変化する。これにより、電源供給制御トランジスタT5および発光制御トランジスタT6がオフ状態となる。その結果、有機EL素子21への電流の供給が遮断され、有機EL素子21は消灯状態となる。
【0050】
時刻t22になると、第1走査信号NS(n-1)がローレベルからハイレベルに変化する。これにより、第1初期化トランジスタT1がオン状態となる。その結果、駆動トランジスタT4のゲート電圧が初期化される。すなわち、駆動トランジスタT4のゲート電圧が初期化電圧Viniに等しくなる。なお、時刻t22には、(n-1)行目の画素回路20において、閾値電圧補償トランジスタT2がオン状態となる。
【0051】
時刻t23になると、第1走査信号NS(n)がローレベルからハイレベルに変化する。これにより、閾値電圧補償トランジスタT2および第2初期化トランジスタT7がオン状態となる。第2初期化トランジスタT7がオン状態となることにより、有機EL素子21のアノード電圧が初期化電圧Viniに基づいて初期化される。
【0052】
時刻t24になると、第1走査信号NS(n-1)がハイレベルからローレベルに変化する。これにより、第1初期化トランジスタT1がオフ状態となる。また、時刻t24には、第2走査信号PS(n)がハイレベルからローレベルに変化する。これにより、書き込み制御トランジスタT3がオン状態となる。閾値電圧補償トランジスタT2が時刻t23にオン状態となっているので、時刻t24に書き込み制御トランジスタT3がオン状態となることにより、書き込み制御トランジスタT3、駆動トランジスタT4、および閾値電圧補償トランジスタT2を介して、データ信号D(m)が保持キャパシタCaの第2電極に与えられる。これにより、保持キャパシタCaが充電される。なお、時刻t24には、(n-1)行目の画素回路20において、閾値電圧補償トランジスタT2がオフ状態となる。
【0053】
時刻t25になると、第2走査信号PS(n)がローレベルからハイレベルに変化する。これにより、書き込み制御トランジスタT3がオフ状態となる。
【0054】
時刻t26になると、第1走査信号NS(n)がハイレベルからローレベルに変化する。これにより、閾値電圧補償トランジスタT2および第2初期化トランジスタT7がオフ状態となる。また、時刻t26には、発光制御信号EM(n)がハイレベルからローレベルに変化する。これにより、電源供給制御トランジスタT5および発光制御トランジスタT6がオン状態となり、保持キャパシタCaの充電電圧に応じた駆動電流が有機EL素子21に供給される。その結果、当該駆動電流の大きさに応じて有機EL素子21が発光する。その後、次に発光制御信号EM(n)がローレベルからハイレベルに変化するまでの期間を通じて、有機EL素子21は発光する。
【0055】
以上のように、
図9の時刻t22~時刻t26の期間に着目すると、(n-1)行目の画素回路20の閾値電圧補償トランジスタT2がオフ状態からオン状態に変化した後にn行目の画素回路20内の閾値電圧補償トランジスタT2がオフ状態からオン状態に変化し、その後、(n-1)行目の画素回路20内の閾値電圧補償トランジスタT2がオン状態からオフ状態に変化した後にn行目の画素回路20内の閾値電圧補償トランジスタT2がオン状態からオフ状態に変化している。また、時刻t24には、(n-1)行目の画素回路20内の閾値電圧補償トランジスタT2がオン状態からオフ状態に変化するのと同じタイミングでn行目の画素回路20内の書き込み制御トランジスタT3がオフ状態からオン状態に変化している。
【0056】
また、書き込み制御トランジスタT3が時刻t24~時刻t25の期間にオン状態で維持されるのに対して、閾値電圧補償トランジスタT2は時刻t23~時刻t26の期間にオン状態で維持される。換言すれば、書き込み制御トランジスタT3の制御端子に接続された第2走査信号線に印加される第2走査信号がオンレベルで維持される期間は、閾値電圧補償トランジスタT2の制御端子に接続された第1走査信号線に印加される第1走査信号がオンレベルで維持される期間に包含される。ここで、書き込み制御トランジスタT3としてLTPS-TFTが採用されていれば、閾値電圧補償トランジスタT2がオン状態で維持されている期間の一部の期間に書き込み制御トランジスタT3をオン状態にすれば、データ信号D(m)に基づくキャパシタCaの充電(書き込み)が充分に行われる。何故ならば、LTPS-TFTは移動度が高く高速な書き込みを可能とするからである。
【0057】
<1.5 リーク電流対策>
図7の時刻t01に、第1制御クロックCK1およびセット信号Sがハイレベルからローレベルに変化するのに応じて第1内部ノードN1の電位が低下している。これに関し、第1内部ノードN1の電位はゲートロー電位VGLにまで低下するのが理想的であるが、実際には
図10に示すようにゲートロー電位VGLよりもトランジスタM3の閾値電圧Vth(M3)分だけ高い電位にまでしか低下しない。すなわち、
図7の時刻t01~時刻t03の期間および時刻t04~時刻t05の期間には、第1内部ノードN1の電位はゲートロー電位VGLよりもトランジスタM3の閾値電圧Vth(M3)分だけ高い電位となっている。ここで、仮にトランジスタM5の閾値電圧がトランジスタM3の閾値電圧Vth(M3)よりも小さければ、トランジスタM5の第2導通端子-第1導通端子間にリーク電流が生じるおそれがある。
【0058】
そこで、トランジスタM5でのリーク電流の発生を抑制するため、トランジスタM3の閾値電圧をトランジスタM5の閾値電圧よりも小さくすることが好ましい。また、IGZO-TFTはオフリークが顕著に小さいという特性を有しているので、トランジスタM5はIGZO-TFTであることが好ましい。
【0059】
<1.6 効果>
本実施形態によれば、ゲートドライバ300内のシフトレジスタ301を構成する単位回路3は、画素回路20内のN型トランジスタを駆動するための第1走査信号線NSに第1走査信号を印加する第1出力回路321と、画素回路20内のP型トランジスタを駆動するための第2走査信号線PSに第2走査信号を印加する第2出力回路322とを含んでいる。第1出力回路321にはP型のトランジスタM4とN型のトランジスタM5とが含まれており、第1走査信号の立ち上げはトランジスタM4を介して行われ、第1走査信号の立ち下げはトランジスタM5を介して行われる。このため、第1走査信号が立ち上がった状態の電位と第1走査信号が立ち下がった状態の電位との差が充分に大きくなり、画素回路20内のN型トランジスタのオン/オフが確実に行われる。また、第2出力回路322にはP型のトランジスタM1とブースト容量として機能するキャパシタC1とが含まれており、第2走査信号の立ち下げ/立ち上げはキャパシタC1を介して行われる。このため、第2走査信号が立ち下がった状態の電位と第2走査信号が立ち上がった状態の電位との差が充分に大きくなり、画素回路20内のP型トランジスタのオン/オフが確実に行われる。ここで、画素回路20内のN型トランジスタにIGZO-TFTを採用するとともに画素回路20内のP型トランジスタにLTPS-TFTを採用することができる。以上より、本実施形態によれば、複数種類のトランジスタが混在する画素回路(N型トランジスタとP型トランジスタとが混在する画素回路、IGZO-TFTとLTPS-TFTとが混在する画素回路)20を備え正常に動作する有機EL表示装置をプロセスコストの上昇を抑制しつつ実現することが可能となる。また、単位回路3は少ない数の回路素子(トランジスタなど)で構成されているので、容易に狭額縁化を実現することができる。
【0060】
<2.第2の実施形態>
<2.1 貫通電流について>
第1の実施形態においては、n行目の画素回路20では、第1初期化トランジスタT1の制御端子は(n-1)行目の第1走査信号線NS(n-1)に接続され、閾値電圧補償トランジスタT2の制御端子はn行目の第1走査信号線NS(n)に接続され、書き込み制御トランジスタT3の制御端子はn行目の第2走査信号線PS(n)に接続されていた(
図3参照)。このような構成においては、画素回路20内に貫通電流が流れるおそれがある。これについて、以下に説明する。
【0061】
図9では第1走査信号や第2走査信号の波形の遅延を考慮していないが、実際には、それらの波形には遅延が生じる。従って、
図9に示した信号のうちの第1走査信号NS(n-1)、第1走査信号NS(n)、および第2走査信号PS(n)の波形は、実際には、
図11に示すようなものとなる。ここで、
図11で符号75を付した矢印で示す期間に着目すると、当該期間には、第1走査信号NS(n-1)は充分には立ち下がっていない。それ故、当該期間には、n行目の画素回路20において、第1初期化トランジスタT1、閾値電圧補償トランジスタT2、および書き込み制御トランジスタT3の全てがオン状態となっている。これにより、
図12で符号76を付した矢印で示すように、データ信号線Dから初期化電源線へと貫通電流が流れる。そこで、本実施形態においては、貫通電流の発生を防ぐため、以下に記す構成を採用している。
【0062】
<2.2 画素回路の構成>
図13は、本実施形態における第n行第m列の画素回路20の構成を示す回路図である。第1の実施形態(
図3参照)とは異なり、第1初期化トランジスタT1の制御端子は(n-2)行目の第1走査信号線NS(n-2)に接続され、第2初期化トランジスタT7の制御端子は(n-1)行目の第1走査信号線NS(n-1)に接続されている。それ以外の点については第1の実施形態と同様である。なお、本実施形態においては、n行目の画素回路20内の第1初期化トランジスタT1の制御端子に接続された第1走査信号線と(n-2)行目の画素回路20内の閾値電圧補償トランジスタT2の制御端子に接続された第1走査信号線とに同じ駆動信号(第1走査信号)が与えられる。
【0063】
<2.3 動作>
単位回路3の構成は第1の実施形態と同様であるので、単位回路3は第1の実施形態と同様に動作する。従って、(n-2)行目~n行目の画素回路20の動作を制御する信号等の波形は
図14に示すようなものとなる。なお、
図14では、第1走査信号NSおよび第2走査信号PSの波形の遅延を考慮している。
【0064】
図15は、n行目の画素回路20(
図13に示す画素回路20)の動作について説明するためのタイミングチャートである。時刻t41以前には、第2走査信号PS(n)はハイレベルとなっており、第1走査信号NS(n-2)、第1走査信号NS(n-1)、第1走査信号NS(n)、および発光制御信号EM(n)はローレベルとなっている。このとき、電源供給制御トランジスタT5および発光制御トランジスタT6はオン状態となっていて、有機EL素子21は駆動電流の大きさに応じて発光している。
【0065】
時刻t41になると、発光制御信号EM(n)がローレベルからハイレベルに変化する。これにより、電源供給制御トランジスタT5および発光制御トランジスタT6がオフ状態となる。その結果、有機EL素子21への電流の供給が遮断され、有機EL素子21は消灯状態となる。
【0066】
時刻t42になると、第1走査信号NS(n-2)がローレベルからハイレベルに変化する。これにより、第1初期化トランジスタT1がオン状態となる。その結果、駆動トランジスタT4のゲート電圧が初期化される。すなわち、駆動トランジスタT4のゲート電圧が初期化電圧Viniに等しくなる。
【0067】
時刻t43になると、第1走査信号NS(n-1)がローレベルからハイレベルに変化する。これにより、第2初期化トランジスタT7がオン状態となり、有機EL素子21のアノード電圧が初期化電圧Viniに基づいて初期化される。
【0068】
時刻t44になると、第1走査信号NS(n)がローレベルからハイレベルに変化する。これにより、閾値電圧補償トランジスタT2がオン状態となる。また、時刻t44には、第1走査信号NS(n-2)がハイレベルからローレベルに変化する。これにより、第1初期化トランジスタT1がオフ状態となる。
【0069】
時刻t45になると、第1走査信号NS(n-1)がハイレベルからローレベルに変化する。これにより、第2初期化トランジスタT7がオフ状態となる。また、時刻t45には、第2走査信号PS(n)がハイレベルからローレベルに変化する。これにより、書き込み制御トランジスタT3がオン状態となる。閾値電圧補償トランジスタT2が時刻t44にオン状態となっているので、時刻t45に書き込み制御トランジスタT3がオン状態となることにより、書き込み制御トランジスタT3、駆動トランジスタT4、および閾値電圧補償トランジスタT2を介して、データ信号D(m)が保持キャパシタCaの第2電極に与えられる。これにより、保持キャパシタCaが充電される。
【0070】
時刻t46になると、第2走査信号PS(n)がローレベルからハイレベルに変化する。これにより、書き込み制御トランジスタT3がオフ状態となる。
【0071】
時刻t47になると、第1走査信号NS(n)がハイレベルからローレベルに変化する。これにより、閾値電圧補償トランジスタT2がオフ状態となる。また、時刻t47には、発光制御信号EM(n)がハイレベルからローレベルに変化する。これにより、電源供給制御トランジスタT5および発光制御トランジスタT6がオン状態となり、保持キャパシタCaの充電電圧に応じた駆動電流が有機EL素子21に供給される。その結果、当該駆動電流の大きさに応じて有機EL素子21が発光する。その後、次に発光制御信号EM(n)がローレベルからハイレベルに変化するまでの期間を通じて、有機EL素子21は発光する。
【0072】
<2.4 効果>
本実施形態においては、
図15に示すように、第1初期化トランジスタT1の制御端子に与えられている第1走査信号NS(n-2)の立ち下がり開始時刻t44から書き込み制御トランジスタT3の制御端子に与えられている第2走査信号PS(n)の立ち下がり開始時刻t45までに充分な期間(
図15で符号78を付した矢印で示す期間)が設けられる。このため、画素回路20内で第1初期化トランジスタT1と書き込み制御トランジスタT3とが同時にオン状態となることはない。従って、画素回路20内に
図12で符号76を付した矢印で示すような貫通電流が流れることはない。以上より、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られるのに加えて、画素回路20内における貫通電流の発生が防止されるという効果が得られる。
【0073】
<2.5 変形例>
第2の実施形態においては、第2初期化トランジスタT7の制御端子は(n-1)行目の第1走査信号線NS(n-1)に接続されていたが、これには限定されない。第2初期化トランジスタT7の制御端子は例えば(n-2)行目の第1走査信号線NS(n-2)に接続されていても良い。すなわち、有機EL素子21のアノード電圧の初期化が非発光期間(発光制御信号EM(n)がハイレベルで維持されている期間)に行われるのであれば、第2初期化トランジスタT7の制御端子の接続先は特に限定されない。
【0074】
<3.第3の実施形態>
<3.1 画素回路の構成>
図16は、本実施形態における第n行第m列の画素回路20(n)および第(n+1)行第m列の画素回路20(n+1)の構成を示す回路図である。
図13および
図16から把握されるように、第2初期化トランジスタT7以外のトランジスタT1~T6の構成は第2の実施形態と同様である。但し、第1初期化トランジスタT1の制御端子については、第1の実施形態のように(n-1)行目の第1走査信号線NS(n-1)に接続されていても良い。
【0075】
n行目の画素回路20(n)内の第2初期化トランジスタT7については、制御端子は(n+1)行目の画素回路20(n+1)内の第1初期化トランジスタT1の制御端子に接続され((n-1)行目の第1走査信号線NS(n-1)に接続され)、第1導通端子は発光制御トランジスタT6の第2導通端子と有機EL素子21のアノード端子とに接続され、第2導通端子は(n+1)行目の画素回路20(n+1)内の第1初期化トランジスタT1の第1導通端子、閾値電圧補償トランジスタT2の第2導通端子、駆動トランジスタT4の制御端子、および保持キャパシタCaの第2電極に接続されている。
【0076】
以上のように、或る行の画素回路20内の第2初期化トランジスタT7とその次の行の画素回路20内の第1初期化トランジスタT1とが直列に接続される。このような構成において、仮に第1初期化トランジスタT1および第2初期化トランジスタT7のオフリーク特性が良好でなければ、リーク電流に起因する誤動作が発生するおそれがある。そこで、本実施形態においては、第1初期化トランジスタT1および第2初期化トランジスタT7には、IGZO-TFTが採用される。
【0077】
以上のような構成が採用されることにより、誤動作を生ずることなく、
図17で符号81を付した矢印で示すように初期化(駆動トランジスタT4のゲート電圧の初期化および有機EL素子21のアノード電圧の初期化)が行われる。
【0078】
<3.2 効果>
本実施形態によれば、或る行の画素回路20内の第2初期化トランジスタT7とその次の行の画素回路20内の第1初期化トランジスタT1とが直列に接続される。このため、初期化電源線に直接的に接続されるトランジスタが第1初期化トランジスタT1だけとなる。これにより、初期化電源線の負荷が低減し、ノイズに強い安定した電位を画素回路20に供給することが可能となる。なお、第1の実施形態と同様の効果も得られる。
【0079】
<4.第4の実施形態>
<4.1 単位回路の構成>
図18は、本実施形態における単位回路3の構成を示す回路図である。本実施形態における単位回路3には、第1制御回路311、第1出力回路321、および第2出力回路322に加えて、第1内部ノードN1の電位を制御する第2制御回路312が含まれている。第2制御回路312は、安定化回路330とトランジスタM8とを含んでいる。安定化回路330は、トランジスタM6とトランジスタM7とを含んでいる。トランジスタM6~M8はP型トランジスタである。なお、トランジスタM8によって出力回路制御トランジスタが実現されている。
【0080】
図18に示すように、トランジスタM6の第1導通端子とトランジスタM7の第2導通端子とは接続されている。なお、これらが接続されている一節点のことを「第3内部ノード」という。第3内部ノードには符号N3を付す。
【0081】
トランジスタM6については、制御端子は入力端子33に接続され、第1導通端子は第3内部ノードN3に接続され、第2導通端子は第1内部ノードN1に接続されている。トランジスタM7については、制御端子は第1出力端子38に接続され、第1導通端子は第2定電位線に接続され、第2導通端子は第3内部ノードN3に接続されている。以上より、トランジスタM6とトランジスタM7とは、第1内部ノードN1と第2定電位線との間に直列に接続されている。トランジスタM8については、制御端子は第1定電位線に接続され、第1導通端子は第2内部ノードN2に接続され、第2導通端子は第1内部ノードN1に接続されている。
【0082】
<4.2 単位回路の動作>
図19を参照しつつ、単位回路3の動作について説明する。時刻t51以前の期間には、第1内部ノードN1および第2内部ノードN2の電位はハイレベルで維持され、出力信号OUT1はローレベルで維持され、出力信号OUT2はハイレベルで維持されている。なお、出力信号OUT1がローレベルで維持されているので、トランジスタM2,M7はオン状態で維持されている。
【0083】
時刻t51になると、第1制御クロックCK1がハイレベルからローレベルに変化する。これにより、トランジスタM3がオン状態となる。また、時刻t51には、セット信号Sがハイレベルからローレベルに変化する。これにより、第1内部ノードN1の電位がローレベルへと低下し、トランジスタM4はオン状態となり、トランジスタM5はオフ状態となる。その結果、出力信号OUT1がローレベルからハイレベルへと変化する。これにより、トランジスタM2,M7はオフ状態となる。また、第1内部ノードN1の電位がローレベルへと低下してもトランジスタM8はオン状態で維持されることから、第2内部ノードN2の電位もローレベルへと低下する。これにより、トランジスタM1がオン状態となる。
【0084】
時刻t52になると、第1制御クロックCK1がローレベルからハイレベルに変化する。これにより、トランジスタM3がオフ状態となる。また、時刻t52には、セット信号Sがローレベルからハイレベルに変化する。
【0085】
時刻t53になると、第2制御クロックCK2がハイレベルからローレベルに変化する。このとき、トランジスタM1はオン状態となっているので、入力端子33の電位の低下とともに第2出力端子39の電位(出力信号OUT2の電位)が低下する。ここで、第2内部ノードN2-第2出力端子39間にはキャパシタC1が設けられているので、第2出力端子39の電位の低下とともに第2内部ノードN2の電位も低下する(第2内部ノードN2がブースト状態となる)。このようなブースト動作の結果、トランジスタM1の制御端子には大きな負の電圧が印加され、第2出力端子39の接続先の書き込み制御トランジスタT3がオン状態となるのに充分なレベルにまで出力信号OUT2の電位が低下する。ところで、時刻t53に第2内部ノードN2の電位が低下したとき、トランジスタM8の制御端子-第1導通端子間の電圧がトランジスタM8の閾値電圧以下となる。これにより、トランジスタM8はオフ状態となる。従って、時刻t53には第1内部ノードN1の電位は変化しない。
【0086】
時刻t54になると、第2制御クロックCK2がローレベルからハイレベルに変化する。これにより、入力端子33の電位の上昇とともに第2出力端子39の電位(出力信号OUT2の電位)が上昇する。第2出力端子39の電位が上昇すると、キャパシタC1を介して、第2内部ノードN2の電位も上昇する。これにより、トランジスタM8はオン状態となる。
【0087】
時刻t55になると、第1制御クロックCK1がハイレベルからローレベルに変化する。これにより、トランジスタM3がオン状態となる。このとき、セット信号Sはハイレベルで維持されている。このため、第1内部ノードN1の電位がハイレベルへと上昇し、トランジスタM4はオフ状態となり、トランジスタM5はオン状態となる。その結果、出力信号OUT1がハイレベルからローレベルへと変化する。これにより、トランジスタM2,M7はオン状態となる。また、トランジスタM8はオン状態で維持されているので、時刻t55には第2内部ノードN2の電位もハイレベルへと上昇する。これにより、トランジスタM1がオフ状態となる。
【0088】
時刻t55以降の期間には、時刻t51以前の期間と同様、第1内部ノードN1および第2内部ノードN2の電位はハイレベルで維持され、出力信号OUT1はローレベルで維持され、出力信号OUT2はハイレベルで維持される。
【0089】
単位回路3が以上のように動作することにより、画素回路20は第1の実施形態と同様に動作する。すなわち、画素回路20内のN型トランジスタおよびP型トランジスタのオン/オフが確実に行われる。
【0090】
ところで、単位回路3内のトランジスタには寄生容量が存在する。このため、時刻t51以前の期間や時刻t55以降の期間には、第2制御クロックCK2のクロック動作とトランジスタM1の寄生容量の存在とに起因して、第1内部ノードN1および第2内部ノードN2の電位に変動が生じ得る。それ故、出力信号OUT1や出力信号OUT2の電位に変動が生じ得る。しかしながら、時刻t51以前の期間や時刻t55以降の期間には、トランジスタM7はオン状態で維持されており、かつ、第2制御クロックCK2がローレベルになる毎にトランジスタM6はオン状態となる。トランジスタM6およびトランジスタM7の双方がオン状態となっているときには、第1内部ノードN1はゲートハイ電位VGHを供給する第2定電位線に接続される。従って、時刻t51以前の期間や時刻t55以降の期間には、第2制御クロックCK2のクロック動作に起因するノイズが生じても、第1内部ノードN1および第2内部ノードN2の電位は確実にハイレベルで維持される。
【0091】
なお、時刻t51~時刻t53の期間には、第2制御クロックCK2がハイレベルとなっているのでトランジスタM6はオフ状態で維持される。従って、第3内部ノードN3の電位がハイレベルで維持されていることが第1内部ノードN1および第2内部ノードN2の電位に影響を及ぼすことはない。また、時刻t53にはトランジスタM7がオフ状態となっているので第2制御クロックCK2がハイレベルからローレベルに変化することによって第3内部ノードN3の電位もハイレベルからローレベルへと変化する。その後、上述したように時刻t55にトランジスタM7がオン状態となることによって、第3内部ノードN3の電位はローレベルからハイレベルへと変化する。
【0092】
<4.3 効果>
本実施形態によれば、単位回路3にトランジスタM8が設けられていることにより、ブースト動作によって第2内部ノードN2の電位が低下するときに第1内部ノードN1の電位は維持される。このため、トランジスタM8が設けられていない場合に比べて、第1内部ノードN1の電位の振幅は小さくなる。これにより、トランジスタM4,M5の制御端子に掛かるストレスやトランジスタM3,M6の第2導通端子に掛かるストレスが低減される。その結果、信頼性が向上する。また、単位回路3に安定化回路330が設けられていることにより、出力信号OUT1がローレベルで維持されるべき期間中、第2制御クロックCK2のクロック動作に起因するノイズが生じても、第1内部ノードN1および第2内部ノードN2の電位は確実にハイレベルで維持される。その結果、第2制御クロックCK2のクロック動作に起因する表示不良等の不具合の発生が防止される。
【0093】
<4.4 変形例>
以下、第4の実施形態の変形例について説明する。
【0094】
<4.4.1 第1の変形例>
図20は、第4の実施形態の第1の変形例における単位回路3の構成を示す回路図である。本変形例においては、第2制御回路312には、安定化回路330は含まれているが、トランジスタM8は含まれていない。このような構成によっても、第2制御クロックCK2のクロック動作に起因する表示不良等の不具合の発生が防止されるという効果が得られる。
【0095】
<4.4.2 第2の変形例>
図21は、第4の実施形態の第2の変形例における単位回路3の構成を示す回路図である。本変形例においては、第2制御回路312には、トランジスタM8は含まれているが、安定化回路330は含まれていない。このような構成によっても、トランジスタM4,M5の制御端子に掛かるストレスやトランジスタM3の第2導通端子に掛かるストレスが低減されることによって信頼性が向上するという効果が得られる。
【0096】
<5.第5の実施形態>
<5.1 単位回路の構成>
図22は、本実施形態における単位回路3の構成を示す回路図である。
図1および
図22から把握されるように、第1の実施形態における単位回路3内のトランジスタM3をカスコード接続された2つのトランジスタ(トランジスタM3aおよびトランジスタM3b)に置き換えることによって得られる構成が本実施形態における単位回路3の構成である。
【0097】
トランジスタM3aおよびトランジスタM3bは、いずれもP型トランジスタである。トランジスタM3aの第2導通端子とトランジスタM3bの第2導通端子とは接続されている。なお、これらが接続されている一節点のことを「第4内部ノード」という。第4内部ノードには符号N4を付す。トランジスタM3aについては、制御端子は入力端子32に接続され、第1導通端子は入力端子31に接続され、第2導通端子は第4内部ノードN4に接続されている。トランジスタM3bについては、制御端子は入力端子32に接続され、第1導通端子は第1内部ノードN1に接続され、第2導通端子は第4内部ノードN4に接続されている。以上より、トランジスタM3aとトランジスタM3bとは、入力端子31(すなわち、他の単位回路3の第2出力端子39)と第1内部ノードN1との間に直列に接続されている。
【0098】
<5.2 効果>
第1の実施形態のように入力端子31-第1内部ノードN1間に1つのトランジスタM3が設けられている構成によれば、上述したブースト動作時にトランジスタM3の第1導通端子-第2導通端子間の電圧が大きくなる。すなわち、ブースト動作によってトランジスタM3が大きな電圧ストレスを受ける。これにより、トランジスタM3の特性が変動する。その結果、単位回路3の動作異常が生じやすくなり、ゲートドライバ300の信頼性が低下する。
【0099】
これに対して、本実施形態によれば、入力端子31-第1内部ノードN1間に2つのトランジスタ(トランジスタM3aおよびトランジスタM3b)が設けられている。ここで、ブースト動作時に関して、入力端子31-第1内部ノードN1間の電圧をVxとし、入力端子31-第4内部ノードN4間の電圧をVyとし、第1内部ノードN1-第4内部ノードN4間の電圧をVzとすると、VyはVxよりも小さくなり、かつ、VzはVxよりも小さくなる。このように、ブースト動作時に1つのトランジスタが受ける電圧ストレスは、第1の実施形態に比べて小さくなる。以上より、本実施形態によれば、入力端子31-第1内部ノードN1間に設けられたトランジスタの特性変動が抑制され、ゲートドライバ300の信頼性が向上する。
【0100】
また、本実施形態によれば、上述のように入力端子31-第1内部ノードN1間に2つのトランジスタが設けられているので、第1制御クロックCK1がハイレベルとなっている時の入力端子31-第1内部ノードN1間のリーク電流の大きさが第1の実施形態よりも小さくなる。このような観点からもゲートドライバ300の信頼性が向上する。
【0101】
<5.3 変形例>
第5の実施形態においては、第1の実施形態における単位回路3内のトランジスタM3を2つのトランジスタ(トランジスタM3aおよびトランジスタM3b)に置き換えていた。しかしながら、これには限定されず、
図23に示すように、第4の実施形態における単位回路3(
図18参照)内のトランジスタM3を2つのトランジスタ(トランジスタM3aおよびトランジスタM3b)に置き換えても良い。このような本変形例によれば、第4の実施形態と同様の効果が得られるのに加えて、ゲートドライバ300の信頼性が向上するという効果が得られる。
【0102】
<6.第6の実施形態>
<6.1 単位回路の構成>
図24は、本実施形態における単位回路3の構成を示す回路図である。
図18および
図24から把握されるように、第4の実施形態における単位回路3内のトランジスタM8をカスコード接続された2つのトランジスタ(トランジスタM8aおよびトランジスタM8b)に置き換えることによって得られる構成が本実施形態における単位回路3の構成である。
【0103】
トランジスタM8aおよびトランジスタM8bは、いずれもP型トランジスタである。トランジスタM8aの第2導通端子とトランジスタM8bの第2導通端子とは接続されている。なお、これらが接続されている一節点のことを「第5内部ノード」という。第5内部ノードには符号N5を付す。トランジスタM8aについては、制御端子は第1定電位線に接続され、第1導通端子は第1内部ノードN1に接続され、第2導通端子は第5内部ノードN5に接続されている。トランジスタM8bについては、制御端子は第1定電位線に接続され、第1導通端子は第2内部ノードN2に接続され、第2導通端子は第5内部ノードN5に接続されている。以上より、トランジスタM8aとトランジスタM8bとは、第1内部ノードN1と第2内部ノードN2との間に直列に接続されている。なお、トランジスタM8aとトランジスタM8bとによって出力回路制御部が実現されている。
【0104】
<6.2 効果>
第4の実施形態のように第1内部ノードN1-第2内部ノードN2間に1つのトランジスタM8が設けられている構成によれば、上述したブースト動作時にトランジスタM8の第1導通端子-第2導通端子間の電圧が大きくなる。すなわち、ブースト動作によってトランジスタM8が大きな電圧ストレスを受ける。これにより、トランジスタM8の特性が変動する。その結果、単位回路3の動作異常が生じやすくなり、ゲートドライバ300の信頼性が低下する。
【0105】
これに対して、本実施形態によれば、第1内部ノードN1-第2内部ノードN2間に2つのトランジスタ(トランジスタM8aおよびトランジスタM8b)が設けられている。ここで、ブースト動作時に関して、第1内部ノードN1-第2内部ノードN2間の電圧をVxとし、第1内部ノードN1-第5内部ノードN5間の電圧をVyとし、第2内部ノードN2-第5内部ノードN5間の電圧をVzとすると、VyはVxよりも小さくなり、かつ、VzはVxよりも小さくなる。このように、ブースト動作時に1つのトランジスタが受ける電圧ストレスは、第4の実施形態に比べて小さくなる。以上より、本実施形態によれば、第1内部ノードN1-第2内部ノードN2間に設けられたトランジスタの特性変動が抑制され、ゲートドライバ300の信頼性が向上する。なお、第4の実施形態と同様の効果も得られる。
【0106】
<7.第7の実施形態>
<7.1 単位回路の構成>
図25は、本実施形態における単位回路3の構成を示す回路図である。本実施形態においては、第4の実施形態と同様、単位回路3には、第1制御回路311と第2制御回路312と第1出力回路321と第2出力回路322とが含まれている。但し、第1出力回路321の構成が第4の実施形態(
図18参照)とは異なっている。
【0107】
本実施形態においては、第1出力回路321には、トランジスタM4およびトランジスタM5に加えて、出力信号OUT1をローレベルにするためのリセット回路340が含まれている。リセット回路340は、トランジスタM9を含んでいる。トランジスタM9はP型トランジスタである。トランジスタM9については、制御端子は入力端子32に接続され、第1導通端子は第1出力端子38に接続され、第2導通端子は第1定電位線に接続されている。また、トランジスタM4の第1導通端子は、第4の実施形態においては第2定電位線に接続されていたが、本実施形態においては入力端子32に接続されている。なお、トランジスタM9によってリセットトランジスタが実現されている。
【0108】
<7.2 単位回路の動作>
図26を参照しつつ、単位回路3の動作について説明する。但し、主に、第4の実施形態(
図19参照)と異なる点について説明する。
図26における時刻t61~時刻t65の期間は、
図19における時刻t51~時刻t55の期間に相当する。
【0109】
時刻t61になると、第4の実施形態と同様、第1内部ノードN1の電位がローレベルへと低下し、トランジスタM4はオン状態となり、トランジスタM5はオフ状態となる。このとき、トランジスタM4の第1導通端子は第1制御クロックCK1が与えられている入力端子32に接続されているので、トランジスタM4の第1導通端子の電位はローレベルとなっている。また、トランジスタM9の制御端子も入力端子32に接続されているので、時刻t61になるとトランジスタM9はオン状態となる。以上より、出力信号OUT1はローレベルで維持される。これにより、トランジスタM2,M7はオン状態で維持される。
【0110】
時刻t62になると、第1制御クロックCK1がローレベルからハイレベルに変化する。これにより、トランジスタM4の第1導通端子の電位がハイレベルとなる。また、時刻t62には、トランジスタM9がオフ状態となる。以上より、出力信号OUT1がローレベルからハイレベルに変化する。時刻t63,t64については、第4の実施形態における時刻t53,t54(
図19参照)と同様である。
【0111】
時刻t65になると、第4の実施形態と同様、第1内部ノードN1の電位がハイレベルへと上昇し、トランジスタM4はオフ状態となり、トランジスタM5はオン状態となる。また、時刻t65には、トランジスタM9がオン状態となる。時刻t65になると以上のようにトランジスタM5およびトランジスタM9がオン状態となるので出力信号OUT1がハイレベルからローレベルへと変化する。
【0112】
<7.3 効果>
本実施形態によれば、第4の実施形態と同様の効果が得られるのに加えて、以下のような効果が得られる。単位回路3内の第1出力回路321には、出力信号OUT1を立ち下げるためのトランジスタとして、N型のトランジスタM5とP型のトランジスタM9とが設けられている。これに関し、例えばトランジスタM5がIGZO-TFTであってトランジスタM9がLTPS-TFTであれば、IGZO-TFTよりもLTPS-TFTの方が駆動能力が高いため、トランジスタM5およびトランジスタM9の合計のサイズを第4の実施形態におけるトランジスタM5のサイズ(出力信号OUT1を立ち下げるためのトランジスタとしてN型のトランジスタM5のみが設けられている場合の当該トランジスタM5のサイズ)よりも小さくしても第4の実施形態と同様に出力信号OUT1を立ち下げることができる。このように、出力信号OUT1を立ち下げるためのトランジスタの全体のサイズを小さくすることができるので、有機EL表示パネル6の狭額縁化が可能となる。
【0113】
なお、上述の例の場合、トランジスタM9だけでなくトランジスタM5も出力信号OUT1の立ち下げに寄与する。従って、出力信号OUT1の立ち上げはトランジスタM4を介して行われ、出力信号OUT1の立ち下げはトランジスタM5,M9を介して行われる。それ故、本実施形態においても、第1走査信号(出力信号OUT1)が立ち上がった状態の電位と第1走査信号(出力信号OUT1)が立ち下がった状態の電位との差が充分に大きくなり、画素回路20内のN型トランジスタのオン/オフは確実に行われる。
【0114】
<8.第8の実施形態>
<8.1 単位回路の構成>
図27は、本実施形態における単位回路3の構成を示す回路図である。
図25および
図27から把握されるように、第1出力回路321の構成が第7の実施形態とは異なっている。それ以外の点については、第7の実施形態と同様である。
【0115】
本実施形態においては、第1出力回路321には、トランジスタM4,M5,およびM9に加えて、リレートランジスタとして機能するトランジスタM10が含まれている。トランジスタM10はN型トランジスタである。トランジスタM4の第2導通端子とトランジスタM10の第1導通端子とは接続されている。なお、これらが接続されている一節点のことを「第6内部ノード」という。第6内部ノードには符号N6を付す。トランジスタM10については、制御端子は入力端子32に接続され、第1導通端子は第6内部ノードN6に接続され、第2導通端子は第1出力端子38に接続されている。また、トランジスタM4の第1導通端子は、第7の実施形態においては入力端子32に接続されていたが、本実施形態においては第2定電位線に接続されている。
【0116】
<8.2 効果>
本実施形態によれば、第1内部ノードN1の電位が低下してトランジスタM4がオン状態になった後、出力信号OUT1の立ち上げが行われるべき時点(
図26の時刻t62)に、第1制御クロックCK1がローレベルからハイレベルに変化することによって、トランジスタM9はオン状態からオフ状態へと変化し、トランジスタM10はオフ状態からオン状態へと変化する。ここで、トランジスタM4の第1導通端子は、ゲートハイ電位VGHを供給する第2定電位線に接続されている。以上より、トランジスタM4,M10の双方がオン状態になっているときに、それらトランジスタM4,M10を介して出力信号OUT1は立ち上げられる。このとき、第1ゲートクロック信号GCK1あるいは第2ゲートクロック信号GCK2を供給するクロック信号線から電荷が供給されるのではなく、第2定電位線から電荷が供給される。このため、第7の実施形態に比べて、出力信号OUT1の立ち上げに要するクロックの駆動負荷が低減する。以上のように、本実施形態によれば、第7の実施形態と同様の効果が得られるのに加えて、出力信号OUT1の立ち上げに要するクロックの駆動負荷が低減するという効果が得られる。
【0117】
<9.その他>
上記各実施形態および上記各変形例では有機EL表示装置を例に挙げて説明したが、これには限定されず、無機EL表示装置、QLED表示装置などにも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0118】
3…単位回路
6…有機EL表示パネル
20…画素回路
21…有機EL素子
100…表示制御回路
200…表示部
300…ゲートドライバ(走査信号線駆動回路)
301…シフトレジスタ
311…第1制御回路
312…第2制御回路
321…第1出力回路
322…第2出力回路
330…安定化回路
340…リセット回路
400…エミッションドライバ(発光制御線駆動回路)
500…ソースドライバ(データ信号線駆動回路)
NS…第1走査信号、第1走査信号線
PS…第2走査信号、第2走査信号線
EM…発光制御信号、発光制御線
M1~M10…単位回路内のトランジスタ
T1…第1初期化トランジスタ
T2…閾値電圧補償トランジスタ
T3…書き込み制御トランジスタ
T4…駆動トランジスタ
T5…電源供給制御トランジスタ
T6…発光制御トランジスタ
T7…第2初期化トランジスタ