(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】プローブカード用プローブおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G01R 1/067 20060101AFI20240411BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20240411BHJP
【FI】
G01R1/067 G
G01R31/26 J
(21)【出願番号】P 2023506974
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2022009492
(87)【国際公開番号】W WO2022196399
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2021041973
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232405
【氏名又は名称】日本電子材料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大久保 和正
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-42448(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111474391(CN,A)
【文献】特表2018-515752(JP,A)
【文献】国際公開第2009/072368(WO,A1)
【文献】特開2003-185674(JP,A)
【文献】特開2003-202350(JP,A)
【文献】特開2014-35335(JP,A)
【文献】特開2004-29035(JP,A)
【文献】特開2009-162683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/067
G01R 1/06
G01R 31/26
G01R 31/28
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窪み形状または突出形状の複数の変形領域と、隣り合う前記変形領域の境界に設けられた骨組み領域とを表面に有し、前記変形領域が多角錐形の窪み形状または突出形状であることを特徴とするプローブカード用プローブ。
【請求項2】
窪み形状または突出形状の複数の変形領域と、隣り合う前記変形領域の境界に設けられた骨組み領域とを表面に有し、前記変形領域が
平面視において円形でかつ断面図において円弧状の窪み形状または突出形状であることを特徴とするプローブカード用プローブ。
【請求項3】
窪み形状または突出形状の複数の変形領域と、隣り合う前記変形領域の境界に設けられた骨組み領域とを表面に有し、前記変形領域が四角柱のパターンと三角錐のパターンとを組み合わせた形状であることを特徴とするプローブカード用プローブ。
【請求項4】
窪み形状または突出形状の複数の変形領域と、隣り合う前記変形領域の境界に設けられた骨組み領域とを表面に有し、前記変形領域が12角形の窪み形状または突出形状を含んでいることを特徴とするプローブカード用プローブ。
【請求項5】
前記変形領域および前記骨組み領域の表面が、被覆層によって覆われていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のプローブカード用プローブ。
【請求項6】
低抵抗の第1の金属層が、前記第1の金属層よりも硬い材質の第2の金属層によって包み込まれ、前記第2の金属層の表面に前記変形領域を備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のプローブカード用プローブ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のプローブカード用プローブの製造方法であって、基板の表面に導電層を形成し、前記導電層の表面に窪み形状または突出形状の変形領域と前記変形領域の境界に設定された骨組み領域とを形成したことを特徴とするプローブカード用プローブの製造方法。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか1項に記載のプローブカード用プローブの製造方法であって、表面に窪み形状または突出形状を有する第1の金型と、表面に突出形状または窪み形状を有する第2の金型とによって、金属板の表面に窪み形状または突出形状の変形領域と前記変形領域の境界に設定された骨組み領域とを形成したことを特徴とするプローブカード用プローブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、プローブカード用プローブおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プローブカードは、ウエハ上に形成された個々の半導体デバイスの動作テストを行うために、半導体デバイスの電極パッドにプローブを接触させて、電力の供給、信号の入出力、および接地を行うために使用される電気的な接続装置である。
プローブは、プローブカードの表面に設けられ、所定の押圧力で先端が半導体デバイスの電極パッドに押し付けられるように構成されている。
【0003】
ウエハ上に形成される半導体デバイスの数量を増加させるためには、半導体デバイスのサイズを小さくすることが必要である。このため、半導体デバイスの電極パッドが小さく設計されるとともに、電極パッド間の距離(ピッチ)が小さく設計されている。
半導体デバイスの微小化に応じて、プローブを微細にする必要がある。しかし、プローブを微細にすると、プローブの機械的強度が弱くなるという問題がある。
【0004】
このため、プローブは、半導体デバイスの電極パッドとの良好な電気的接触および機械的接触が保証されるために、例えば、特許文献1では、多層金属シートを使用する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示されているプローブは、コアに、高導電層と高硬度層とを設けた多層金属シートによる構造を、高い硬度の材料で完全に被覆されている。
特許文献1に示されているように、良好な電気的接触および機械的接触を果たすためには、材質の異なる複数の層を重ね合わせた構成が好ましいが、プローブの断面の厚さを薄くするという要求に応えるには限度があり、さらなるブレークスルーが必要であった。
【0007】
プローブカード用のプローブは、半導体デバイスの電極パッドへの接触を確実にするため、プローブが電極パッドに接触した後に、さらにプローブカードを半導体ウエハに近づけること(オーバードライブ)によって、プローブを半導体デバイスの電極パッドに押し付けることが行われる。
このため、プローブには、所定値以上の接触圧を加えても破壊されない強度が必要とされる。プローブが破壊されないために、プローブに局部的な応力集中が生じないようにする必要がある。そして、応力集中が生じないようにするため、できるだけ、表面が滑らかで、傷の無いプローブとすることが求められていた。
【0008】
しかし、金属表面を滑らかにするにも限度があり、プローブの断面の厚さが薄くなるほど外力に対して変形し易くなる(応力が小さくなる)という問題があった。
【0009】
本願は、上述の問題を解決する技術を開示するものであり、プローブを微細にしても、半導体デバイスの電極に適切な針圧で接触し、所定値以上の接触圧を加えても破壊されない強度を備えたプローブを提供することを目的とする。
すなわち、本願のプローブカード用プローブは、応力集中が生じないようにするのではなく、応力集中を意図的に分散させる構造とすることによって応力の大きな(機械的強度の高い)構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願に開示されるプローブカード用プローブは、窪み形状または突出形状の複数の変形領域と、隣り合う前記変形領域の境界に設けられた骨組み領域とを表面に有し、前記変形領域が多角錐形、球形、四角柱のパターンと三角錐のパターンとを組み合わせた形状、または12角形の形状の窪み形状または突出形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本願に開示されるプローブカード用プローブによれば、板厚を薄くしたとしても所定値以上に応力を高くすることのできる構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1のプローブの概略的な構成を示す斜視図である。
【
図2】実施の形態1のプローブの針圧の特性図である。
【
図3】実施の形態1のプローブの応力の特性図である。
【
図4】実施の形態1のプローブの製造方法の説明図である。
【
図5】実施の形態1のプローブの製造方法の説明図である。
【
図6】実施の形態2のプローブの表面の斜視図である。
【
図7】実施の形態2のプローブの製造方法の説明図である。
【
図8】実施の形態3の面積拡張パターンを示す図である。
【
図9】実施の形態4のプローブの概略的な構成を示す図である。
【
図10】実施の形態5のプローブの概略的な構成を示す図である。
【
図11】実施の形態5のプローブの概略的な構成を示す図である。
【
図12】実施の形態6のプローブの表面の変形領域のパターンを示す図である。
【
図13】実施の形態7のプローブの概略的な構成を示す図である。
【
図14】実施の形態8のプローブの概略的な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1
以下、図面に従って実施の形態1を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当部分には同一の符号を付ける。
図1は、この実施の形態1に係るプローブカード用のプローブの構成を示す斜視図である。
【0014】
この実施の形態1に示すプローブ1は、いわゆる垂直プローブと呼ばれるプローブであって、上側の第1のガイド板2と下側の第2のガイド板3によってほぼ垂直に保持されている。プローブ1の先端部分4は、半導体デバイスの電極パッド5に接触するように第2のガイド板3によって案内されている。プローブ1の後端部分6は、プローブカードの回路基板につながる電極(図示せず)に接続されるように第1のガイド板2によって案内されている。
【0015】
プローブ1は、導電部材の薄い金属板によって作られ、このプローブ1の中央部分7の表面には、複数の変形領域8と骨組み領域9とが形成されている。
変形領域8とは、元の平面が変形された領域を示している。また骨組み領域9とは、複数の変形領域8の間を結合する領域を示している。また、変形領域8と骨組み領域9との間の稜線に相当するところは境界部分10として表している。
【0016】
この実施の形態1では、変形領域8として、元の平面に四角柱の形の窪みを設けた例を示している。また、骨組み領域9は、変形領域8間の平面の部分が該当している。
ここで、変形領域8を何も設けなかった構造のプローブと、変形領域8を表面側および裏面側に設けた構造のプローブとを比較すると、次の結果を得ることができた。すなわち、表面に変形領域8を設けなかったプローブの測定結果をAとし、変形領域8を設けたプローブ1の特性の測定結果をBとして表して、プローブ1の先端部分4が電極パッド5に接触した後に、さらに荷重を加えてプローブ1を電極パッド5に押し付ける状態(オーバードライブ状態)において、オーバードライブ量に対する針圧の関係は、
図2に示すようになった。また、オーバードライブ量に対する応力の関係は、
図3に示すようになった。
【0017】
図2に示すように、オーバードライブ量が70μmの時の針圧は、窪みの無いプローブでは1.72gfであったのに対して、窪みを設けたプローブ1では1.19gfであった。また、
図3に示すように、オーバードライブ量が110μmの時の最大応力は、窪みの無いプローブでは670MPaであったのに対して、窪みを設けたプローブ1では891MPaであって、プローブとしての機械的特性を満足できる状態であることが確認された。
【0018】
最大応力が大きくなった要因を検討したところ、構造上の特異点としては、プローブ1の表面積の相違が考えられる。
すなわち、プローブ1の表面に四角柱の窪みの変形領域8を設けることによって表面積が増加している。四角い平面を陥没させた窪みの形状(すなわち、四角柱形の陥没形状を表している)の場合、四角柱形の頂部の表面積は、元の表面を押し下げただけであるので、面積に変化はない。これに対して、陥没によって生じた内壁面の部分の面積が増加している。
【0019】
この実施の形態1では、プローブの表裏に設けられた窪みの寸法は、一辺が20μmの四角形で、表面側の窪み深さを3.5μmとし、裏面側の窪みの深さを2.5μmとしている。このサイズの窪みを表面側および裏面側にそれぞれ、429個設けている。これによって、表面側では、120120μm2の面積が増加し、裏面側では85800μm2の面積が増加している。陥没による窪みの内壁面の面積の分について表面積が増加することになる。ここで、大きな窪みは、プローブ1の厚さに影響するため、表面積を大きくするには、小さな窪みを数多く設けることによって達成することが望ましい。この窪み形状の大きさおよび配置を設計することによって、表面積を任意に変化させることができる。
【0020】
さらに、変形領域8によって、どのような効果を得ることができるのかについて分析した。窪みの無い(表面が滑らかな形状)のプローブA、四角柱の形状の窪みをマトリクス状に配置したプローブB,四角柱の形状の窪みを千鳥配置したプローブC、円形の窪みを千鳥配置したプローブDについて、有限要素法(FEM)に基づいて、プローブの針圧および最大応力を求めた結果は、表1に表すとおりであった。
【0021】
【0022】
この表1に示すとおり、プローブAの場合には、オーバードライブが70μmの時には針圧が1.72gfであり、オーバードライブが110μmの時には最大応力670MPaであった。これに対して、同じ条件で、プローブBでは、針圧が1.19gf、最大応力が891Mpaであり、プローブCでは、針圧が1.18gf、最大応力が899Mpaであり、プローブDでは、針圧が1.18gf、最大応力が1164Mpaであった。
【0023】
また、プローブA、プローブB、プローブCおよびプローブDについて、応力コンター図(コンター図とは、計算結果を等高線表示した図)を作成したところ、プローブAでは、最大応力670MPaでほぼ均一に分布している状態となっていた。プローブBでは、変形領域8の底面の平面部において74MPa、骨組み領域9において668MPaとなり、最大応力は891Mpaであった。プローブCでは、変形領域8の底面の平面部において74MPa、骨組み領域9において674MPaとなり、最大応力は899Mpaであった。プローブDでは、変形領域8の底面の球面部において97MPa、骨組み領域9において873MPaとなり、最大応力は1164Mpaであった。
【0024】
この結果から、プローブA、プローブB、プローブCおよびプローブDに、外部から力が加えられた場合、応力は、変形領域8と骨組み領域9との境界部分10に集中していると推定される。また、変形領域8の底面を平面形状または球面形状とすることによって、変形領域8と骨組み領域9との境界部分10に応力が集中することになる。
このことは、変形領域8を多角柱の窪みで形成した場合には、多角形の各頂点に応力集中が生じることになることから、外力が加えられた場合には、応力が各頂点に分散することになることを表している。
【0025】
したがって、変形領域8を円錐形状または角錐形状の窪みによって形成すれば、外周の各頂点だけでなく、円錐あるいは角錐の頂点も含めて、応力を分散することができる。
この場合には、変形領域8と骨組み領域9との境界部分10に生じる応力集中を軽減できることになる。
【0026】
なお、境界部分10が多角形の場合、各頂点に応力集中が生じるが、角数が多いほど各頂点の負担する応力集中は小さくなる。
このことから、窪みの周縁が円形の場合、その周縁に応力が分散されることになるため、プローブDとして説明したように、変形領域8として球形の窪み形状を設ける構造が、応力を最も分散する構造となって、応力の高い構造のプローブとなると推定される。
【0027】
次に、この
図1に示したプローブ1の製造方法について説明する。
プローブの製作方法としては、二通りの方法がある。まず第1の製作方法は、電鋳による方法であって、
図4のAに示すように、基板41の表面に導電層42による窪み形状に対応する突出形状8aを形成し、その後、
図4のBに示すように、導電層42の表面に、プローブの部材となる金属層43を設けることによって、面積を拡張する変形領域8を形成するもので、この金属層43の形成は、例えば電鋳によって行うことができる。その後、表面を平たんに加工し、マスクを設けて、エッチングを行い目標とするプローブを作成する。その後、導電層42を取り除くことによって、基板41からプローブ1を取り外す。
【0028】
第2の製作方法は、
図5に示すように、窪み形状の面を有する第1の金型51と第2の金型52によって、金属板53の表面に窪み形状を形成するものである。この場合は、電鋳によって金属層を形成することに比べて、製作時間を短縮することができるという効果がある。
【0029】
なお、実施の形態1において、変形領域8を窪み形状にした構造について説明したが、この形状を突出形状としても同様の効果を得ることができる。
【0030】
実施の形態2
この実施の形態2は、実施の形態1における変形領域8の窪みの形状を四角柱による窪みの形状としていたものを、三角錐の窪みの形状に変更したものである。すなわち、プローブ1の表面の一部を切り出した斜視図を、
図6に示すように、窪みを三角錐のパターン61によって形成している。すなわち、この三角錐のパターン61は、
図7に示すように、複数の三角錐を並べた形状の雄型の金型71と、三角錐の突出した形状に対応する受け側の形状の雌型の金型72とによって、金属板73を両側から挟み込んで圧力を加えることによって形成したものである。
【0031】
この雄型の金型71と雌型の金型72とによって、金属板73を挟み込んで、金属板73の表面および裏面に窪み形状または突出形状の三角錐のパターン61を形成することができる。また、三角錐のパターン61を形成する際に、金属板を打ち抜くことを同時に行うことによって、プローブ1の製作工程の効率を高めることができる。特に、プレスによって金属板73の表面加工と打ち抜きとを1工程で行うことによって、表面に窪み形状または突出形状の三角錐のパターン61を有するプローブ1を製作することができる。
【0032】
この実施の形態2の場合には、変形領域8の表面積の増加分は、三角錐の側面の表面積と底面の面積との差分となる。
図1に示した四角柱のパターンと、
図6に示した三角錐のパターン61とを比較した場合、四角柱のパターンの場合には窪みの内壁面が必要であるため、四角柱のパターンを近づけるには限りがある。これに対して、三角錐のパターン61では、隣り合う三角錐を限りなく接近できるという効果を得ることができる。
【0033】
実施の形態3
この実施の形態3のプローブでは、プローブ1の表面に、実施の形態1の四角柱のパターンと実施の形態2の三角錐のパターン61とを組み合わせて形成している。この実施の形態3のプローブでは、表面積の増加を様々に実現することができる。
【0034】
図8に、プローブ1の表面のパターンを示す。
図8に示すように、ここでは、四角柱のパターン81と三角錐のパターン61とを組み合わせた平面形状となっている。この形状では、四角柱のパターン81と三角錐のパターン61とを組み合わせて、四角柱のパターン81の辺が接しないように配置し、四角柱のパターン81の間を三角錐のパターン61によって繋ぐようにしたものである。
【0035】
このように四角柱のパターン81と三角錐のパターン61との組み合わせによって平面全体を埋め尽くすことができる。
さらに、矩形と三角との組み合わせ以外であっても面積を拡張することが可能である。例えば、波板形状のパターンであっても同様に面積を増加させることができる。
【0036】
実施の形態4
実施の形態4のプローブ1は、
図9に示すように、
図9Aは平面のパターンを示し、
図9Bは、
図9Aの直線A9-A9における断面を示している。この
図9A,Bに示すように、
平面視において第1の径
を有する円形でかつ断面図において円弧状の窪み形状の第1の変形領域91及び
、平面視において第2の径
を有する円形でかつ断面図において円弧状の突出形状の第2の変形領域92を表面に設けた構造となっている。
このプローブ1の表面には、第1の変形領域91が千鳥状に配列され、第1の変形領域91の間の空間に第2の変形領域92が配置されている。この第1の変形領域91と第2の変形領域92との配置によって応力が均一に分散され、応力の高い構造のプローブとなると推定される。
【0037】
実施の形態5
実施の形態1および2においては、垂直のプローブ1を対象に、窪み形状または突出形状のパターンを形成する事例を示したが、
図10に示すように、カンチレバー形状のプローブ1に変形領域として面積拡張パターン領域101を設けた場合、実施の形態1と同様の針圧および応力の特性を備えたプローブを得ることができる。
また、
図11に示すように、プローブ1の一部に生じていた応力集中領域102の周辺に面積拡張パターン領域101を設けることによって、応力集中領域102の応力を分散させて緩和させることによって、必要とされる機械的強度を得ることができる。
【0038】
実施の形態6
変形領域8のパターンとして、多角柱の形状の窪み形状または突出形状である場合、多角形の具体的な事例としては、三角形、四角形、五角形、六角形およびさらに多角形の形状などが想定される。
多角形の窪み形状または突出形状において、応力集中は、多角形の頂点に生じることになる。そして応力は、頂点の数に応じて、それぞれの頂点に分散される。すなわち、三角形の場合には、外力に対する応力は、各頂点に1/3の応力が生じると推定される。
【0039】
応力が多角形の頂点に集中し、頂点の数に応じて応力が分散されるとした場合、頂点の数を多くして円形とした場合、円形の周辺全体に応力が分散されることになる。しかし、応力の分散を把握して最適な状態にコントロールするためには、予め定めた頂点の数を予め定めた位置に配置することが望ましい。
ここで、この実施の形態6においては、
図12に示すように、隣り合う第1の変形領域121の間に存在する骨組み領域9に平面が含まれている場合には、骨組み領域9の平面の部分にさらに、窪み形状または突出形状の複数の第2の変形領域122を含ませることができる。
【0040】
第2の変形領域122に第1の変形領域121と同様に多角形の角柱の窪み形状または突出形状を設定する場合、この第2の変形領域122を第1の変形領域121の周辺に隙間なく設けることが好ましく、第1の変形領域121の角柱の窪みとしては、
図12に示すように、12角形の角柱とすることが好ましい。
【0041】
第1の変形領域121を12角形の角柱の窪み形状とすることによって、その周囲は、三角形、四角形、六角形の窪み形状または突出形状によって隙間なく埋めることができることから、応力の分散のシミュレーションが行い易いという効果だけでなく、同じパターンを繰り返して配置できることから、応力の分散を均一にできるという効果を得ることができる。
【0042】
実施の形態7
図13に、実施の形態7のプローブ1の部分的な断面形状を示す。
図13に示すように、
図13Aは平面のパターンを示し、
図13Bは、
図13Aの直線A13-A13における断面を示している。この
図13A,Bに示すように、この実施の形態7では、実施の形態4において示したプローブ1の金属板の表面に異物が付着しないように被覆層13を設けている。また、たとえ、異物が付着したとしても、容易に取り除くことができるように、金属板の表面を滑らかに覆っている。この構成は、実施の形態4のプローブに限られるものではなく、金属板の表面に窪み形状または突出形状の変形領域を有するプローブであれば、同様に被覆層を設けることによって異物の付着という問題を解決することができる。
【0043】
被覆層13の材質としては、金属板の変形を妨げない樹脂層が望ましい。特に、実施の形態1から6においては、表面に窪み形状または突出形状の複数の変形領域8を設けているため、異物の付着が懸念されるので、その懸念を取り除くため、表面が滑らかにするための被覆層13は、有効である。窪み形状または突出形状の複数の変形領域8と骨組み領域9とを導電体の表面に有し、表面に被覆層13を設けることによって、機械強度が高く、異物の付着の無いプローブを得ることができる。
【0044】
実施の形態8
プローブが、低抵抗の第1の金属層141を、この第1の金属層141よりも硬い材質の第2の金属層142によって包み込む構造のプローブである場合には、
図14のように、表層の第2の金属層142の表面または裏面に、応力を分散させるように窪み形状または突出形状の変形領域8を設けることによって機械強度の高いプローブを提供することができる。
なお、「窪み形状または突出形状」とは「窪み形状」だけを並べた場合、「突出形状」だけを並べた場合、および「窪み形状」と「突出形状」とを並べた場合を意味するものである。
【0045】
図14Aは、プローブの概略的な斜視図で、
図14Bは、
図14AのA14-A14線における断面を示している。図に示すように、低抵抗の第1の金属層141を、高硬質の第2の金属層142が覆っている。そして第2の金属層142の表面に窪み形状の変形領域8を設けている。
この窪み形状による変形領域8は、突出形状に変えた場合であっても、応力を分散させるという効果に変わりはない。
また、窪み形状または突出形状の変形領域8の表面に、実施の形態7のように、被覆層13を設けることによって、異物の付着を防ぐことができる。
【0046】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0047】
1 プローブ、2 第1のガイド板、3 第2のガイド板、4 先端部分、5 電極パッド、6 後端部分、7 中央部分、8 変形領域、9 骨組み領域、10 境界部分、13 被覆層、41 基板、42 導電層、43 金属層、51 第1の金型、52 第2の金型、53 金属板、61 三角錐のパターン、71 雄型の金型、72 雌型の金型、73 金属板、81 四角柱のパターン、91 第1の変形領域、92 第2の変形領域、101 面積拡張パターン領域、102 応力集中領域、121 第1の変形領域、122 第2の変形領域、141 第1の金属層、142 第2の金属層