(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】無線充電装置およびそれを含む移動手段
(51)【国際特許分類】
H02J 50/70 20160101AFI20240411BHJP
H01F 1/26 20060101ALI20240411BHJP
H01F 1/34 20060101ALI20240411BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20240411BHJP
H01F 38/14 20060101ALI20240411BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240411BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20240411BHJP
【FI】
H02J50/70
H01F1/26
H01F1/34 140
H01F27/28 185
H01F38/14
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
H02J50/12
(21)【出願番号】P 2023519365
(86)(22)【出願日】2021-10-15
(86)【国際出願番号】 KR2021014403
(87)【国際公開番号】W WO2022124558
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】10-2020-0171698
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】508148079
【氏名又は名称】エスケイシー・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SKC CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】102, Jeongja-ro, Jangan-gu Suwon-si Gyeonggi-do 16338 (KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】キム、ナヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ、スンファン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ジョンハク
(72)【発明者】
【氏名】キム、テキョン
【審査官】阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-012656(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0001953(US,A1)
【文献】特開2012-216687(JP,A)
【文献】特表2017-528100(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189138(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0159736(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0221363(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/70
H01F 1/26
H01F 1/34
H01F 27/28
H01F 38/14
H02J 7/00
H02J 50/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ワイヤを含むコイル部と、
前記コイル部上に配置される磁性部と、
前記磁性部上に配置されるシールド部とを含み、
下記式(1)を満足する、無線充電装置:
1.1≦[(△Q1-△Q2)/Q]×100......(1)
ここで、
△Q1は、(Q-Qa)/△dであり、△Q2は、(Qb-Q)/△dであり、
Qは、85kHzの周波数にて測定された前記無線充電装置のQ因子であり、
Qaは、前記無線充電装置において前記磁性部と前記シールド部との間の距離をΔd(mm)の分さらに狭くしたときに測定されたQ因子であり、
Qbは、前記無線充電装置において前記磁性部と前記シールド部との間の距離を△d(mm)の分さらに広くしたときに測定されたQ因子であり、
前記Q因子は、2×π×f×L/Rで計算され、ここで、fは周波数(kHz)であり、Lは前記コイル部のインダクタンス(μH)であり、Rは前記コイル部の抵抗(mΩ)であり、
前記Q、Qa、Qb、f、L、R、△Q1、△Q2、および△dは、それぞれの単位を除いた数値のみが適用される。
【請求項2】
前記無線充電装置が、下記式(2)をさらに満足する、請求項1に記載の無線充電装置:
-1.1≧[(△R1-△R2)/R]×100......(2)
ここで、
△R1は、(R-Ra)/△dであり、△R2は、(Rb-R)/△dであり、
Rは、85kHzの周波数にて測定された前記コイル部の抵抗(mΩ)であり、
Raは、前記磁性部と前記シールド部との間の距離をΔd(mm)の分さらに狭くしたときに測定された前記コイル部の抵抗(mΩ)であり、
Rbは、前記磁性部と前記シールド部との間の距離をΔd(mm)の分さらに広くしたとき測定された前記コイル部の抵抗(mΩ)であり、
前記R、Ra、Rb、ΔR1、ΔR2、およびΔdは、それぞれの単位を除いた数値のみが適用される。
【請求項3】
前記無線充電装置が、下記式(3)をさらに満足する、請求項1に記載の無線充電装置:
0.1≦[(△L1-△L2)/L]×100......(3)
ここで、
△L1は、(L-La)/△dであり、△L2は、(Lb-L)/△dであり、
Lは、85kHzの周波数にて測定された前記コイル部のインダクタンス(μH)であり、
Laは、前記磁性部と前記シールド部との間の距離をΔd(mm)の分さらに狭くしたときに測定された前記コイル部のインダクタンス(μH)であり、
Lbは、前記磁性部と前記シールド部との間の距離をΔd(mm)の分さらに広くしたとき測定された前記コイル部のインダクタンス(μH)であり、
前記L、La、Lb、ΔL1、ΔL2、およびΔdは、それぞれの単位を除いた数値のみが適用される。
【請求項4】
前記磁性部と前記シールド部との間の距離が4mm~6mm内に属する、請求項1に記載の無線充電装置。
【請求項5】
前記コイル部と前記磁性部との間の距離が1mm~3mmである、請求項1に記載の無線充電装置。
【請求項6】
前記磁性部は、焼結されたフェライト系磁性体を含む、請求項1に記載の無線充電装置。
【請求項7】
前記磁性部は、高分子樹脂および前記高分子樹脂内に分散している磁性粉末を含む、請求項1に記載の無線充電装置。
【請求項8】
前記コイル部は、85kHzの周波数にて45μH以上のインダクタンスおよび80mΩ以下の抵抗を有し、
前記無線充電装置は、85kHzの周波数にて350以上のQ因子を有する、請求項1に記載の無線充電装置。
【請求項9】
前記コイル部は、直径3mm~7mmの導電性ワイヤが5回~20回巻きつけられたものであり、
前記磁性部は、一辺の長さが300mm~350mmの四角シートであって、3mm~7mmの厚さを有し、
前記シールド部は、一辺の長さが300mm~400mmの四角シートであって、1mm~3mmの厚さを有する、請求項1に記載の無線充電装置。
【請求項10】
無線充電装置を含む移動手段であって、
前記無線充電装置は、
導電性ワイヤを含むコイル部と、
前記コイル部上に配置される磁性部と、
前記磁性部上に配置されるシールド部とを含み、
下記式(1)を満足する、移動手段:
1.1≦[(△Q1-△Q2)/Q]×100......(1)
ここで、
△Q1は、(Q-Qa)/△dであり、△Q2は、(Qb-Q)/△dであり、
Qは、85kHzの周波数にて測定された前記無線充電装置のQ因子であり、
Qaは、前記無線充電装置において前記磁性部と前記シールド部との間の距離をΔd(mm)の分さらに狭くしたときに測定されたQ因子であり、
Qbは、前記無線充電装置において前記磁性部と前記シールド部との間の距離を△d(mm)の分さらに広くしたときに測定されたQ因子であり、
前記Q因子は、2×π×f×L/Rで計算され、ここで、fは周波数(kHz)であり、Lは前記コイル部のインダクタンス(μH)であり、Rは前記コイル部の抵抗(mΩ)であり、
前記Q、Qa、Qb、f、L、R、△Q1、△Q2、および△dは、それぞれの単位を除いた数値のみが適用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実現例は、無線充電装置(wireless charging device)およびそれを含む移動手段(vehicle)に関するものである。より具体的に、実現例は、適正厚さを有しながら充電効率が向上し発熱が最初化した無線充電装置およびそれを含む、電気自動車のような移動手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、情報通信分野は極めて速い速度で発展しており、電気、電子、通信、半導体などが総合的に組み合わされた多様な技術が持続的に開発される。また、電子機器のモバイル化傾向が増大するにつれ、通信分野においても無線通信および無線電力伝送技術に関する研究が盛んに行われている。特に、電子機器などに無線で電力を伝送する方案に関する研究が活発に進んでいる。
【0003】
前記無線電力伝送は、電力を供給する送信機と、電力供給を受ける受信機との間に物理的な接触なく誘導結合(inductive coupling)、容量結合(capacitive coupling)またはアンテナなどの電磁場共振構造を利用して、空間を介して電力を無線で伝送するものである。前記無線電力伝送は、大容量のバッテリーが求められる携帯用通信機器、電気自動車などに適しており、接点が露出されないため漏電などの危険がほとんどなく、有線方式の充電不良現象を防ぐことができる。
【0004】
一方、最近では、電気自動車への関心が急増するにつれ、充電インフラ構築に対する関心が増大している。既に、家庭用充電器を利用した電気自動車充電をはじめ、バッテリー交換、急速充電装置、無線充電装置などと、多様な充電方式が登場しており、新しい充電事業ビジネスモデルも登場し始めている(特許文献1参照)。また、欧州では試験運行中の電気自動車と充電所が目立ち始め、日本では自動車メーカーと電力会社が主導して電気自動車および充電所を試験的に運営している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国特許公開第2011-0042403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電気自動車のような移動手段に送受信機として用いられる無線充電装置には、コイル、磁性体、およびシールド部が設けられ、それらの間の距離と、それぞれの大きさおよび成分のような様々な変数によって装置の性能が変わることとなる。
【0007】
図5および
図8を参照すると、磁性部300とシールド部400との間の距離Vを近くするほど無線充電装置の全体厚さが薄くなる利点はあるが、
図3および
図4に示すように、インダクタンスが減少し抵抗が増加して、無線充電装置の充電効率が低下し発熱が悪化し得る。逆に、磁性部とシールド部との間の距離を遠くするほどインダクタンスが増加し抵抗が減少して、無線充電装置の充電効率が向上し発熱を減らし得るが、無線充電装置の全体厚さが厚くなる問題がある。
【0008】
特に、
図3および
図4に示すように、磁性部とシールド部との間の距離が増加することにより、インダクタンスと抵抗が一定して変化し続けることではなく、また、インダクタンスが最大であるポイントと抵抗が最小であるポイントが一致しないこともあり得るため、このような点を考慮して装置を設計する必要がある。
【0009】
そこで、本発明者らが研究した結果、インダクタンスと抵抗とがともに考慮され算出されたQ因子が最大の増加率を有するように、磁性部とシールド部との間隔を調整すると、無線充電装置が適正厚さを有しながら、充電効率が高く発熱が最小化され得ることを見出した。また、そのために本発明者らが、様々な規格および材料の無線充電装置について実験した結果、磁性部とコイル部との間の距離およびQ因子を含む特性の好ましい範囲を具体的な数式で実現することができた。
【0010】
したがって、実現例の課題は、適正厚さを有しながら充電効率が高く発熱が最小化され得るよう、磁性部とシールド部との間の距離およびQ因子を含む特性が具体的な数式で実現された無線充電装置、およびそれを含む移動手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実現例によると、導電性ワイヤを含むコイル部と、前記コイル部上に配置される磁性部と、前記磁性部上に配置されるシールド部とを含み、下記式(1)を満足する、無線充電装置が提供される。
1.1≦[(△Q1-△Q2)/Q]×100......(1)
ここで、△Q1は(Q-Qa)/△dであり、△Q2は(Qb-Q)/△dであり、Qは85kHzの周波数にて測定された前記無線充電装置のQ因子(Q factor)であり、Qaは、前記無線充電装置において前記磁性部と前記シールド部との間の距離をΔd(mm)の分さらに狭くしたときに測定されたQ因子であり、Qbは、前記無線充電装置において前記磁性部と前記シールド部との間の距離を△d(mm)の分さらに広くしたときに測定されたQ因子であり、前記Q因子は2×π×f×L/Rで計算され、ここで、fは周波数(kHz)であり、Lは前記コイル部のインダクタンス(μH)であり、Rは前記コイル部の抵抗(mΩ)であり、前記Q、Qa、Qb、f、L、R、△Q1、△Q2、および△dはそれぞれの単位を除いた数値のみが適用される。
【0012】
他の実現例によると、前記実現例による無線充電装置を含む移動手段が提供される。
【発明の効果】
【0013】
前記実現例による無線充電装置は、磁性部とシールド部との間の距離およびQ因子を含む特性が考慮された具体的な数式を満足することにより、適正厚さを有しながら充填効率が高く発熱が最小化され得る。
【0014】
したがって、前記実現例による無線充電装置は、送信機と受信機との間の大容量の電力伝送を求める、電気自動車のような移動手段に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、磁性部とシールド部との間の距離によるQ因子の曲線において、Q、Qa、Qb、Δd、ΔQ1およびΔQ2の概念を示すものである。
【
図2】
図2は、実験例1において、磁性部とシールド部との間の距離によるQ因子の変化を示すものである。
【
図3】
図3は、実験例1において、磁性部とシールド部との間の距離によるインダクタンスの変化を示すものである。
【
図4】
図4は、実験例1において、磁性部とシールド部との間の距離による抵抗の変化を示すものである。
【
図5】
図5は、一実現例による無線充電装置の分解斜視図を示すものである。
【
図6】
図6は、一実現例による無線充電装置の斜視図を示すものである。
【
図7】
図7は、一実現例による無線充電装置の断面図を示すものである。
【
図8】
図8は、一実現例による無線充電装置の断面図を拡大して示すものである。
【
図9】
図9は、コイル部の平面図の例示を示すものである。
【
図10】
図10は、無線充電のための送信機と受信機の断面図の例示を示すものである。
【
図11】
図11は、一実現例による移動手段を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の実現例の説明において、1つの構成要素が他の構成要素の上または下に配置されるものと記載されることは、1つの構成要素が他の構成要素の上または下に直接、またはさらに他の構成要素を介して間接的に形成されるものを全て含む。
【0017】
本明細書において、各構成要素の上/下関係は、理解を容易にするために添付の図面を参照して記述される。しかし、図面と異なる方法で対象を観察する際には、これらの構成要素の上/下関係が観察方向によって変わるものと理解すべきである。また、図面における各構成要素の大きさは、説明のために誇張されることがあり、実際に適用される大きさとは異なり得る。
【0018】
本明細書において、ある構成要素を「含む」ということは、特に反する記載がない限り、その外に他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0019】
また、本明細書に記載された構成要素の特性値、寸法などを示す全ての数値範囲は、特に記載がない限り、全ての場合において「約」という用語で修飾されるものと理解すべきである。
【0020】
本明細書において単数表現は、特に説明がなければ、文脈上解釈される単数または複数を含む意味として解釈されるべきである。
【0021】
[無線充電装置]
図5、6および7は、一実現例による無線充電装置の分解斜視図、斜視図および断面図をそれぞれ示すものである。
【0022】
一実現例による無線充電装置10は、導電性ワイヤを含むコイル部200と、前記コイル部200上に配置される磁性部300と、前記磁性部300上に配置されるシールド部400とを含む。前記無線充電装置10は、その外にも前記コイル部200を支持する支持部100と、前記構成要素を保護するハウジング610、620、630などをさらに含み得る。
【0023】
[無線充電装置のQ因子を利用した実現例]
一実現例によると、前記無線充電装置は下記式(1)を満足する。
1.1≦[(△Q1-△Q2)/Q]×100......(1)
ここで、△Q1は(Q-Qa)/△dであり、△Q2は(Qb-Q)/△dであり、Qは85kHzの周波数にて測定された前記無線充電装置のQ因子であり、Qaは、前記無線充電装置において前記磁性部と前記シールド部との間の距離をΔd(mm)の分さらに狭くしたときに測定されたQ因子であり、Qbは、前記無線充電装置において前記磁性部と前記シールド部との間の距離を△d(mm)の分さらに広くしたときに測定されたQ因子であり、前記Q因子は2×π×f×L/Rで計算され、ここで、fは周波数(kHz)であり、Lは前記コイル部のインダクタンス(μH)であり、Rは前記コイル部の抵抗(mΩ)であり、前記Q、Qa、Qb、f、L、R、△Q1、△Q2、および△dはそれぞれの単位を除いた数値のみが適用される。
【0024】
前記式(1)に適用される特性のうち、Q因子を除くインダクタンス(μH)、抵抗(mΩ)および距離(mm)はそれぞれの単位を有する特性であるが、前記式(1)には各々の単位を除いた数値のみが適用され、それにより前記式(1)の計算値は単位を有しない。
【0025】
また、本明細書において、インダクタンス、抵抗、およびQ因子のような測定値または計算値は、測定装置または計算過程においてわずかな誤差を有することがあり、例えば約0.5%以内の誤差を有し得ることを考慮するべきである。
【0026】
前記Q因子は、当該技術分野において周知のように品質因子(quality factor)とも呼ばれ、共振回路(resonance circuit)において電流の周波数または共振周波数による品質を表す。Q因子は、共振器に貯蔵されるエネルギーと損失するエネルギーとの比で算出されるので、Q因子が高いほど、当該周波数にて共振特性が良好であることを意味する。前記Q因子は、特定周波数においてLCRメータなどを用いて、前記コイルにより測定されるインダクタンスおよび抵抗から算出され、単位を有しない値である。
【0027】
図8は、一実現例による無線充電装置の断面図を拡大して示す図である。
図8を参照すると、磁性部300とシールド部400との間の距離Vは、互いに向かい合う磁性部300の表面とシールド部400の表面との間の距離Vであり、したがって、磁性部300とシールド部400との間の最短距離であり得る。
【0028】
また、前記Δdは特に限定されないが、例えば、0.1mm以上、0.3mm以上、0.5mm以上、1mm以上、または2.5mm以上であり、また、3mm以下、2.5mm以下、2mm以下、1.5mm以下、1mm以下、または0.5mm以下であり得る。具体的に、Δdは、0.1mm~3mm、0.3mm~2.5mm、または0.5mm~2mmであり得る。より具体的な例として、前記Δdは、0.5mm、1mm、1.5mm、2mm、3mm、または4mmであり得る。
【0029】
図1は、磁性部とシールド部との間の距離によるQ因子の曲線におけるQ、Qa、Qb、Δd、ΔQ1およびΔQ2の概念を示すものである。
図1の曲線において、Vは前記磁性部と前記シールド部との距離(mm)であり、Vaは前記距離をΔd(mm)の分さらに狭くしたものであり、Vbは前記距離をΔd(mm)の分さらに広くしたものである。ここで、ΔQ1はVa-V間の区間(Δd)におけるQ因子の変化率(曲線勾配)であり、ΔQ2はV-Vb間の区間ΔdにおけるQ因子の変化率(曲線勾配)を意味する。
【0030】
Q因子は、インダクタンスと抵抗とがともに考慮された特性なので、Q因子が最大の増加率を有するように磁性部とシールド部との間の間隔を調整すると、無線充電装置が適正厚さを有しながら、充電効率が高く発熱が最小化され得る。このように、Q因子が最大の増加率を有するポイントは、ΔQ1からΔQ2を減じた値が最大となるポイントで確認し得る。ただし、無線充電装置の細部構成要素によってQ因子の全体的なレベルが変わり、△Q1から△Q2を減じた値も大きく変わり得る。しかしながら、ΔQ1からΔQ2を減じた値を当該無線充電装置のQ因子で除すると、概ねの正規化値が導出され、それによって装置の細部構成に関係なく望ましい値の範囲を導出し得る。前記実現例によると、このような技術的思想が具体的な数式、すなわち前記式(1)により提示されている。
【0031】
前記式(1)の計算値は、1.1以上であることが無線充電装置の厚さ、充電効率および発熱問題の面で有意な技術的効果を有するようになり、もしこれより少ない場合、例えば1.0またはそれ以下の場合には、技術的効果が微々たることとなるか、またはむしろ低調となり得る。例えば、前記式(1)の計算値は、1.5以上、2.0以上、2.5以上、3.0以上、3.5以上、4.0以上、4.5以上、または5.0以上であり得る。一方、前記式(1)の計算値の上限値は特に限定されないが、例えば、前記式(1)の計算値が20以下、10以下、8以下、7以下、または6以下であり得る。具体的に、前記式(1)の計算値は、1.1~20、1.1~10、1.1~8、1.1~7、または1.1~6であり得る。
【0032】
前記無線充電装置は、電気自動車の無線充電標準周波数付近で高いQ因子を有し得る。前記電気自動車の無線充電標準周波数は100kHz未満であり、例えば79kHz~90kHz、具体的に81kHz~90kHz、より具体的に約85kHzであり得る。これは、携帯電話のようなモバイル電子機器に適用する周波数とは区別される帯域である。
【0033】
前記無線充電装置のQ因子は、85kHzの周波数にて300以上であり得る。例えば、前記無線充電装置のQ因子は、85kHzの周波数にて、350以上、400以上、430以上、450以上、500以上、550以上、600以上、620以上、または630以上であり得る。また、前記無線充電装置のQ因子の上限値は特に限定されないが、例えば前記Q因子は、1000以下、900以下、800以下、700以下、600以下、または500以下であり得る。
【0034】
前記無線充電装置のQ因子は、各構成要素の材料および配置によって変わり得る。例えば、前記無線充電装置のQ因子は、磁性部の材料がフェライト焼結体または高分子磁性体からなることによって変わり得る。また、前記コイル部を構成する導電性ワイヤの直径または導電性ワイヤの巻き回数によって、コイル部のインダクタンスおよび抵抗が変わるので、それに応じてQ因子も変わり得る。
【0035】
[コイル部の抵抗を利用した実現例]
他の実現例によると、前記無線充電装置は下記式(2)を満足する。
-1.1≧[(△R1-△R2)/R]×100......(2)
ここで、△R1は(R-Ra)/△dであり、△R2は(Rb-R)/△dであり、Rは85kHzの周波数にて測定された前記コイル部の抵抗(mΩ)であり、Raは前記磁性部と前記シールド部との間の距離をΔd(mm)の分さらに狭くしたときに測定された前記コイル部の抵抗(mΩ)であり、Rbは前記磁性部と前記シールド部との間の距離をΔd(mm)の分さらに広くしたときに測定された前記コイル部の抵抗(mΩ)であり、前記R、Ra、Rb、ΔR1、ΔR2、およびΔdは、それぞれの単位を除いた数値のみが適用される。
【0036】
前記式(2)に適用される特性のうち、抵抗(mΩ)および距離(mm)は各々の単位を有する特性であるが、前記式(2)にはそれぞれの単位を除いた数値のみが適用され、それにより前記式(2)の計算値は単位を有しない。
【0037】
前記式(2)においてΔdは、前記式(1)で例示した範囲内で定められ、具体的な一例として2mmであり得る。
【0038】
磁性部とシールド部との間の距離によって変化するコイル部の抵抗を曲線で示す場合、前記磁性部と前記シールド部との間の距離V、それよりΔd(mm)の分さらに狭くした距離Va、および、逆にそれよりΔd(mm)の分さらに広くした距離Vbにおけるコイル部の抵抗をそれぞれR、RaおよびRbとし得る。ここで、ΔR1はVa-V間の区間Δdにおける抵抗の変化率(曲線勾配)であり、ΔR2はV-Vb間の区間Δdにおける抵抗の変化率(曲線勾配)を意味する。
【0039】
無線充電装置においてコイル部の抵抗は発熱を悪化させるので、コイル部の抵抗が最大の減少率を有するように磁性部とシールド部との間の間隔を調整すると、無線充電装置が適正厚さを有しながら発熱が最小化され得る。このように、コイル部の抵抗が最大の減少率を有するポイントは、ΔR1からΔR2を減じた値が最小となるポイントで確認し得る。ただし、無線充電装置の細部構成要素によってコイル部の抵抗のレベルが変わり得るので、ΔR1からΔR2を減じた値も装置によって大きく変わり得る。しかし、ΔR1からΔR2を減じた値を当該コイル部の抵抗で除すると、概ねの正規化値が導出され、それにより装置の細部構成に関係なく望ましい値の範囲を導出し得る。前記実現例によると、このような技術的思想が具体的な数式、すなわち前記式(2)により提示されている。
【0040】
前記式(2)の計算値は、-1.1以下であることが無線充電装置の厚さおよび発熱問題の面で有意な技術的効果を有するようになり、もしそれより大きい場合、例えば-1.0またはそれ以上の場合には技術的効果が微々たるものとなるか、または、むしろ低調となり得る。例えば、前記式(2)の計算値は、-1.5以下、-2.0以下、-2.5以下、-3.0以下、-3.5以下、-4.0以下、-4.5以下、または-5.0以下であり得る。一方、前記式(2)の計算値の下限値は特に限定されないが、例えば、前記式(2)の計算値は、-20以上、-10以上、-8以上、-7以上、または-6以上であり得る。具体的に、前記式(2)の計算値は、-20~-1.1、-10~-1.1、-8~-1.1、-7~-1.1、または-6~-1.1であり得る。
【0041】
前記コイル部の抵抗は、85kHzの周波数にて40mΩ以上、50mΩ以上、60mΩ以上、または70mΩ以上であり、また、100mΩ以下、90mΩ以下、80mΩ以下、または70mΩ以下であり、具体的に、45mΩ~75mΩまたは65mΩ~95mΩであり得るが、これに限定されない。
【0042】
[コイル部のインダクタンスを利用した実現例]
また他の実現例によると、前記無線充電装置は下記式(3)を満足する。
0.1≦[(△L1-△L2)/L]×100......(3)
ここで、△L1は(L-La)/△dであり、△L2は(Lb-L)/△dであり、Lは85kHzの周波数にて測定された前記コイル部のインダクタンス(μH)であり、Laは前記磁性部と前記シールド部との間の距離をΔd(mm)の分さらに狭くしたときに測定された前記コイル部のインダクタンス(μH)であり、Lbは前記磁性部と前記シールド部との間の距離をΔd(mm)の分さらに広くしたときに測定された前記コイル部のインダクタンス(μH)であり、前記L、La、Lb、ΔL1、ΔL2、およびΔdはそれぞれの単位を除いた数値のみが適用される。
【0043】
前記式(3)に適用される特性のうち、インダクタンス(μH)および距離(mm)は各々の単位を有する特性であるが、前記式(3)にはそれぞれの単位を除いた数値のみが適用され、それにより前記式(3)の計算値は単位を有しない。
【0044】
前記式(3)においてΔdは、前述の式(1)で例示した範囲内で定められ、具体的な一例として2mmであり得る。
【0045】
磁性部とシールド部との間の距離に応じて変化するコイル部のインダクタンスを曲線で示す場合、前記磁性部と前記シールド部との間の距離(V)、それよりΔd(mm)の分さらに狭くした距離(Va)、および、逆にそれよりΔd(mm)の分さらに広くした距離Vbにおけるコイル部のインダクタンスをそれぞれL、La、Lbとし得る。ここで、ΔL1はVa-V間の区間Δdにおけるインダクタンスの変化率(曲線勾配)であり、ΔL2はV-Vb間の区間Δdにおけるインダクタンスの変化率(曲線勾配)を意味する。
【0046】
無線充電装置において、コイル部のインダクタンスは充電効率と概ね比例するので、コイル部のインダクタンスが最大の増加率を有するように磁性部とシールド部との間隔を調整すると、無線充電装置が適正厚さを有しながら充電効率が高くあり得る。このように、コイル部のインダクタンスが最大の増加率を有するポイントは、ΔL1からΔL2を減じた値が最大となるポイントで確認し得る。ただし、無線充電装置の細部構成要素によってコイル部のインダクタンスのレベルが変わり得るので、ΔL1からΔL2を減じた値も装置によって大きく変わり得る。しかし、ΔL1からΔL2を減じた値を当該コイル部のインダクタンスで除すると、概ねの正規化値が導出され、それによって装置の細部構成に関係なく望ましい値の範囲を導出し得る。前記実現例によると、このような技術的思想が具体的な数式、すなわち前記式(3)により提示されている。
【0047】
前記式(3)の計算値は、0.1以上であることが無線充電装置の厚さおよび充電効率の面で有意な技術的効果を有するようになり、もしこれより少ない場合、例えば0またはそれ以下の場合には技術的効果が微々たるものとなるか、または、むしろ低調となり得る。例えば、前記式(3)の計算値は、0.2以上、0.3以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.7以上、0.8以上、または0.9以上であり得る。一方、前記式(3)の計算値の上限値は特に限定されないが、例えば、前記式(3)の計算値が5以下、3以下、2以下、1.5以下、または1.3以下であり得る。具体的に、前記式(3)の計算値は、0.1~5、0.1~3、0.1~2、0.1~1.5、または0.1~1.3であり得る。
【0048】
前記コイル部のインダクタンスは、85kHzの周波数にて30μH以上、40μH以上、45μH以上、50μH以上、70μH以上、または90μH以上であり、また、120μH以下、110μH以下、100μH以下、80μH以下、60μH以下、または50μH以下であり、具体的に30μH~60μHまたは70μH~120μHであり得るが、これに限定されない。
【0049】
具体的な一例として、前記コイル部は、85kHzの周波数にて45μH以上のインダクタンスおよび80mΩ以下の抵抗を有し、前記無線充電装置は、85kHzの周波数にて350以上のQ因子を有し得る。ただし、前記コイル部のインダクタンスと抵抗は、コイル部の細部構成によって、また、磁性部とシールド部との間の距離によって変わることがあり、前記例示の範囲に限定されない。
【0050】
[構成要素間の距離]
図8は、一実現例による無線充電装置の断面図を拡大して示すものである。
図8を参照すると、磁性部300とシールド部400との間の距離Vは、一定範囲内に調整され得る。例えば、磁性部300とシールド部400との間の距離Vを近くするほど無線充電装置の全体厚さが薄くなるという利点はあるが、
図3および
図4に示すように、インダクタンスが減少し抵抗が増加して無線充電装置の充電効率が低下し、発熱が悪化し得る。逆に、磁性部300とシールド部400との間の距離Vを遠くするほどインダクタンスが増加し抵抗が減少して、無線充電装置の充電効率が向上し発熱を減らし得るが、無線充電装置の全体厚さが厚くなる問題がある。
【0051】
具体的に、前記磁性部と前記シールド部との間の距離は、1mm以上、2mm以上、3mm以上、3.5mm以上、4mm以上、4.5mm以上、または5mm以上であり得る。また、前記磁性部と前記シールド部との間の距離は、9mm以下、7mm以下、6.5mm以下、6mm以下、5.5mm以下、または5mm以下であり得る。例えば、前記磁性部と前記シールド部との間の距離は、1mm~9mm、3mm~7mm、3.5mm~6.5mm、4mm~6mm、4.5mm~5.5mm、5mm~7mm、または3mm~5mmであり得る。より具体的に、前記磁性部と前記シールド部との間の距離は4mm~6mmであり得る。
【0052】
また、コイル部200と磁性部300との間の距離Dも、一定範囲内に調整され得る。例えば、磁性部がコイル部から離れるほどインダクタンスが減少して、無線充電装置のQ因子を下げることにより、充電効率が低下し発熱が悪化し得る。逆に、コイル部と磁性部との距離が近いほどインダクタンスは増加するが、コイルと磁性体が密着すると組立に困難があり、外部の衝撃に脆弱であり得る。
【0053】
例えば、前記コイル部と前記磁性部との間の距離は、0mm超、1mm以上、1.5mm以上、2mm以上、または2.5mm以上であり得る。また、前記コイル部と前記磁性部との間の距離は、10mm以下、5mm以下、4mm以下、3.5mm以下、3mm以下、または2.5mm以下であり得る。例えば、前記コイル部と前記磁性部との間の距離は、1mm~5mm、1mm~3mm、1.5mm~4mm、1.5mm~3.5mm、1.5mm~2.5mm、2mm~3.5mm、2.5mm~3.5mmであり得る。より具体的に、前記コイル部と前記磁性部との間の距離は、1mm~3mmであり得る。
【0054】
[コイル部]
前記コイル部は導電性ワイヤを含む。前記導電性ワイヤは導電性物質を含む。例えば、前記導電性ワイヤは導電性金属を含み得る。具体的に、前記導電性ワイヤは、銅、ニッケル、金、銀、亜鉛、および錫からなる群より選択される1種以上の金属を含み得る。
【0055】
前記導電性ワイヤは、多数の微細線がねじれた後被覆されたリッツワイヤ(litz wire)であり得る。例えば、前記リッツワイヤは、10本以上、100本以上、または500本以上の微細線からなり、具体的に500本~1500本の微細線からなり得る。
【0056】
また、前記導電性ワイヤは、絶縁性外皮により被覆され得る。例えば、前記絶縁性外皮は、絶縁性高分子樹脂を含み得る。具体的に、前記絶縁性外皮は、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、テフロン樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂などを含み得る。
【0057】
前記導電性ワイヤは、平面コイル状で巻き付けられ得る。具体的に、前記平面コイルは、平面螺旋コイル(planar spiral coil)を含み得る。また、前記コイル部の平面形状は、円形、楕円形、多角形、または角の丸い多角形の形状であり得るが、特に限定されない。
【0058】
図9は、コイル部の平面図の例示を示す。
図9を参照すると、前記コイル部200は、平面上で内部が中空の形状を有し、これにより、外部寸法(または外径)Odおよび内部寸法(または内径)Idを有し得る。例えば、前記外部寸法および内部寸法は、前記コイル部が平面上で円形ドーナツ状の場合には、外部の径および内部の径のことを意味し、前記コイル部が平面上で四角ドーナツ状である場合には、外部四角形状の辺の長さおよび内部の中空の四角領域の辺の長さのことを意味し得る。
【0059】
具体的に、前記コイル部200の外部寸法Odは、50mm~1000mm、100mm~500mm、100mm~300mm、200mm~800mm、300mm~400mm、または500mm~1000mmであり得る。また、前記コイル部200の内部寸法Idは、5mm~300mm、10mm~200mm、100mm~200mm、150mm~250mm、または20mm~150mmであり得る。
【0060】
前記平面コイルにおいて、導電性ワイヤの巻き回数は、5回~50回、10回~30回、5回~30回、15回~50回、または20回~50回であり得る。
【0061】
具体的な一例として、前記コイル部は、前記導電性ワイヤが5回~15回巻きつけられた平面螺旋コイルであって、300mm~400mmの外部寸法および150mm~250mmの内部寸法を有し得る。
【0062】
前記のような好ましい平面コイル寸法および規格範囲内であるとき、電気自動車のような大容量電力伝送を求める分野に好適であり得る。
【0063】
前記平面コイル形状内で前記導電性ワイヤ間の間隔は、0.1cm~1cm、0.1cm~0.5cm、または0.5cm~1cmであり得る。
【0064】
図8を参照すると、コイル部200を構成する導電性ワイヤの直径Cも一定範囲内に調整され得る。例えば、前記導電性ワイヤの直径は、1mm以上、2mm以上、3mm以上、4mm以上、または5mm以上であり得る。また、前記導電性ワイヤの直径は、10mm以下、8mm以下、7mm以下、6mm以下、または5mm以下であり得る。具体的に、前記導電性ワイヤの直径は、1mm~10mmまたは2mm~8mmであり得る。より具体的に、前記導電性ワイヤの直径は、3mm~7mmであり得る。具体的な一例として、前記コイル部は、直径3mm~7mmの導電性ワイヤが5回~20回巻きつけられたものであり得る。
【0065】
[磁性部]
前記磁性部は、前記コイル部上に配置され、無線充電の効率を増大させる。
前記磁性部の材料は特に限定されず、無線充電装置に用いられる磁性体であり得る。
【0066】
例えば、前記磁性部は、フェライト磁性体および高分子磁性体のうち少なくとも1つを含み得る。
【0067】
一例として、前記磁性部は、フェライト系磁性体を含み得る。例えば、前記フェライト系磁性体の具体的な化学式は、MOFe2O3(ここで、Mは、Mn、Zn、Cu、Niなどの1種以上の2価金属元素である)で表され得る。具体的に、前記磁性部は、焼結されたフェライト系磁性体を含むものが透磁率のような磁性特性の面から有利である。前記焼結フェライト系磁性体は、原料成分を混合してか焼後粉砕し、これをバインダー樹脂と混合して成形し焼成して、シート状またはブロック状に製造され得る。具体的に、前記フェライト系磁性体は、Ni-Zn系、Mg-Zn系、またはMn-Zn系フェライトを含んでよく、特に、Mn-Zn系フェライトは、85kHzの周波数にて室温乃至100℃以上の温度範囲にわたって高い透磁率、低い透磁損失、および高い飽和磁束密度を示し得る。
【0068】
他の例として、前記磁性部は、高分子樹脂および前記高分子樹脂内に分散している磁性粉末を含み得る。これにより、前記磁性部は、高分子樹脂によって磁性粉末が互いに結合されることによって、広い面積において全体的に欠陥が少ないとともに、衝撃による損傷が少なくあり得る。前記磁性粉末は、酸化物系磁性粉末、金属系磁性粉末、またはこれらの混合粉末であり得る。例えば、前記酸化物系磁性粉末はフェライト系粉末、具体的にNi-Zn系、Mg-Zn系、Mn-Zn系フェライト粉末であり得る。また、前記金属系磁性粉末は、Fe-Si-Al合金磁性粉末、またはNi-Fe合金磁性粉末であり、より具体的に、センダスト(sendust)粉末またはパーマロイ(permalloy)粉末であり得る。また、前記磁性粉末は、ナノ結晶質(nanocrystalline)磁性粉末であり、例えば、Fe系ナノ結晶質磁性粉末であり、具体的にFe-Si-Al系ナノ結晶質磁性粉末、Fe-Si-Cr系ナノ結晶質磁性粉末、または、Fe-Si-B-Cu-Nb系ナノ結晶質磁性粉末であり得る。前記磁性粉末の平均粒径は、3nm~1mm、1μm~300μm、1μm~50μm、または1μm~10μmの範囲であり得る。前記磁性部は、前記磁性粉末を10重量%以上、50重量%以上、70重量%以上、または85重量%以上の量で含み得る。例えば、前記磁性部は、前記磁性粉末を10重量%~99重量%、10重量%~95重量%、または50重量%~95重量%の量で含み得る。前記高分子樹脂として、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリフェニルスルフィド(PSS)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、エポキシ樹脂などが例示され得るが、これに限定されるものではない。
【0069】
前記磁性部は、シート状またはブロック状を有し得る。
図8を参照すると、前記磁性部300の厚さMは、0.5mm~10mmであり、具体的に1mm~9mm、2mm~8mm、または3mm~7mmであり得る。前記磁性部の面積は、200cm
2以上、400cm
2以上、または600cm
2以上であり、また、10000cm
2以下であり得る。また、前記磁性部は、多数の磁性単位体が組み合わされて構成され、この際、前記磁性単位体の面積は、60cm
2以上、90cm
2以上、または95cm
2~900cm
2であり得る。
【0070】
前記磁性部は、前記コイル部と平行な方向に延びる形状を有し得る。例えば、前記磁性部が平面シートの形状を有し、前記コイル部が平面コイルの形状を有し、前記磁性部と前記コイル部とが互いに平行に配置され得る。前記磁性部の平面形状は、多角形、角の丸い多角形、または円形の形状であり得る。例えば、前記磁性部は、四角シート形状の場合、一辺の長さが100mm~700mm、200mm~500mm、または300mm~350mmであり得る。具体的な一例として、前記磁性部は、一辺の長さが300mm~350mmの四角シートであって、3mm~7mmの厚さを有し得る。
【0071】
前記磁性部は、電気自動車の無線充電標準周波数近傍において、一定レベルの磁性特性を有し得る。前記磁性部の85kHzにおける透磁率は、材料によって変わり得るが5以上、例えば、5~150000であり、具体的な材料により5~300、500~3500、または10000~150000であり得る。また、前記磁性部の85kHzにおける透磁損失は、材料によって変わり得るが0以上、例えば、0~50000であり、具体的な材料により0~1000、1~100、100~1000、または5000~50000であり得る。
【0072】
[シールド部]
前記シールド部は、前記磁性部上に配置され、電磁波遮蔽によって外部に電磁波が漏れて発生し得る電磁干渉(EMI)を抑制する。
【0073】
前記シールド部は、前記コイル部と一定間隔離間して配置され得る。例えば、前記シールド部と前記コイル部との離間距離は、10mm以上または15mm以上であり、具体的に10mm~30mmまたは10mm~20mmであり得る。
【0074】
前記シールド部は金属を含んで良く、具体的に、前記シールド部は金属板であり得るが、特に限定されない。具体的な一例として、前記シールド部の材料はアルミニウムであり、その外、電磁波遮蔽能を有する金属または合金材料が使用され得る。
【0075】
図8を参照すると、前記シールド部400の厚さSは、0.2mm~10mm、0.5mm~5mm、または1mm~3mmであり得る。また、前記シールド部の面積は、200cm
2以上、400cm
2以上、または600cm
2以上であり得る。
【0076】
前記シールド部は、前記磁性部と平行な方向に延びる形状を有し得る。例えば、前記磁性部と前記シールド部とが平面シート状を有し、互いに平行に配置され得る。前記シールド部の平面形状は、多角形、角の丸い多角形、または円形の形状であり得る。例えば、前記シールド部が四角シートの形状である場合、一辺の長さは100mm~700mm、200mm~500mm、または300mm~400mmであり得る。具体的な一例として、前記シールド部は、一辺の長さが300mm~400mmの四角シートであって、1mm~3mmの厚さを有し得る。
【0077】
[その他の構成要素]
図5~
図7を参照して、前記無線充電装置10は、コイル部200を支持する支持部100をさらに含み得る。前記支持部は、平板構造またはコイル部を固定させ得るよう、コイル部の形状に沿って溝が掘られた構造を有し得る。例えば、前記支持部100は、コイルトレイであり得る。
【0078】
また、前記実現例による無線充電装置10は、前記シールド部400と前記磁性部300との間の空間を確保するためのスペーサをさらに含み得る。前記スペーサの材質および構造は、無線充電装置に用いられる通常のスペーサの材質および構造を採用し得る。
【0079】
前記実現例による無線充電装置10は、前述の構成要素を保護するハウジング600をさらに含み得る。例えば、前記ハウジングは、下面ハウジング610、側面ハウジング620、および上面ハウジング630が結合された構成を有し得るが、これに特に限定されない。
【0080】
前記ハウジングは、前記コイル部、シールド部、磁性部などの構成要素が適切に配置され組み立てられ得るようにする。前記ハウジングの材質および構造は、無線充電装置に使用される通常のハウジングの材質および構造を採用し得る。例えば、前記ハウジングは、耐久性に優れるプラスチック素材を利用して作製し得る。
【0081】
(移動手段)
前記無線充電装置は、送信機と受信機との間の大容量の電力伝送を求める電気自動車のような移動手段などに有用である。
【0082】
また、前記無線充電装置は、前記移動手段に対応して無線電力送信を行うステーション(または充電所)にも適用され得る。つまり、一実現例によるステーションもまた、前述のような構成および特徴を有する無線充電装置を含み得る。
【0083】
図10は、無線充電のための受信機21と送信機22との断面図を例示する。前記受信機21および前記送信機22は、それぞれ前述の実現例による無線充電装置と同じ構造を有する。無線充電の際に送信機22に電力が印加されると、磁束30によって誘導された電力が受信機21に発生し、無線電力伝送が行われることとなる。
【0084】
図11は、無線充電装置が適用された移動手段、具体的に電気自動車を示すものであり、下部に無線充電装置を備え、電気自動車用無線充電システムが設けられた駐車区域において無線で充電され得る。
【0085】
図11を参照して、一実現例による移動手段1は、前記実現例による無線充電装置を受信機21として含む。前記無線充電装置は、移動手段1の無線充電の受信機21として機能し、無線充電の送信機22から電力供給を受け得る。
【0086】
一実現例による移動手段は、無線充電装置を含み、前記無線充電装置は、導電性ワイヤを含むコイル部と、前記コイル部上に配置される磁性部と、前記磁性部上に配置されるシールド部とを含み、下記式(1)を満足する。
1.1≦[(△Q1-△Q2)/Q]×100......(1)
ここで、△Q1は(Q-Qa)/△dであり、△Q2は(Qb-Q)/△dであり、Qは85kHzの周波数にて測定された前記無線充電装置のQ因子であり、Qaは、前記無線充電装置において前記磁性部と前記シールド部との間の距離をΔd(mm)の分さらに狭くしたときに測定されたQ因子であり、Qbは、前記無線充電装置において前記磁性部と前記シールド部との間の距離を△d(mm)の分さらに広くしたときに測定されたQ因子であり、前記Q因子は2×π×f×L/Rで計算され、ここで、fは周波数(kHz)であり、Lは前記コイル部のインダクタンス(μH)であり、Rは前記コイル部の抵抗(mΩ)であり、前記Q、Qa、Qb、f、L、R、△Q1、△Q2、および△dはそれぞれの単位を除いた数値のみが適用される。
【0087】
前記移動手段に含まれる無線充電装置の各構成要素の構成および特徴は、前述の通りである。また、前記移動手段に含まれる無線充電装置は、前記式(1)で計算される値が1.1以上であり、これにより可能な利となる効果も同様に適用され得る。
【0088】
前記移動手段は、前記無線充電装置から電力伝送を受けるバッテリーをさらに含み得る。前記無線充電装置は、無線で電力伝送を受けて前記バッテリーに伝達し、前記バッテリーは前記電気自動車の駆動系に電力を供給し得る。前記バッテリーは、前記無線充電装置またはその他追加の有線充電装置から伝達される電力によって充電され得る。
【0089】
また、前記移動手段は、充電に関する情報を無線充電システムの送信機に伝達する信号伝送機をさらに含み得る。このような充電に関する情報は、充電速度のような充電効率、充電状態などであり得る。
【0090】
(実施例)
以下、前記実現例をより具体的な例示を挙げて説明するが、前記実現例の範囲がこれらの範囲に限定されるものではない。
【0091】
(無線充電装置の製造例)
図5、6および7は、一実現例による無線充電装置の分解斜視図、斜視図および断面図をそれぞれ示すものであり、これらの図面のように無線充電装置を作製した。
【0092】
(装置A)
支持部100としてコイルトレイを使用しており、前記コイルトレイの溝にコイル部200を安着させ固定した。コイル部200は、
図9を参照して、外部寸法Odが320mm×320mm、内部寸法Idが160mm×160mmであり、全体的に角の丸い四角形状の平面螺旋コイル(planar spiral coil)であって、直径5mmの導電性ワイヤ(1000本からなるリッツワイヤ)が9回巻きつけられたものを用意した。
【0093】
磁性部300は、320mm×320mm×5mm(横×縦×厚さ)の寸法で用意し、磁性部の材料はフェライト焼結体または高分子磁性体にした。まず、フェライト焼結体の場合、フェライトスラリーをシート状に成形し焼結して、80mm×80mm×5mm(横×縦×厚さ)のフェライト単位体16個を得た後、これらを結合して320mm×320mm×5mm(横×縦×厚さ)の磁性部を作製した。また、高分子磁性体の場合、当該寸法(320mm×320mm×5mm)の形状を成形し得るモールドを先に作製した後、磁性粉末スラリーを射出成形機により前記モールドに注入して磁性部を得た。
【0094】
シールド部400は、350mm×350mm×2mm(横×縦×厚さ)の寸法を有するアルミニウム板を用いた。
【0095】
(装置B)
コイル部200として、
図9を参照して、外部寸法Odが320mm×320mm、内部寸法Idが125mm×125mmで、全体的に角の丸い四角形状の平面螺旋コイルであって、直径5mmの導電性ワイヤ(1000本からなるリッツワイヤ)が16回巻きつけられたものを用いたことを除いては、前記装置Aの製造方法と同様の手順を繰り返して、無線充電装置を製造した。
【0096】
(装置C)
支持部100としてコイルトレイを使用しており、前記コイルトレイの溝にコイル部200を安着させ固定した。コイル部200は、
図9を参照して、外部寸法Odが675mm×534mm、内部寸法Idが300mm×160mmであり、全体的に角の丸い矩形状の平面螺旋コイルであって、直径5mmの導電性ワイヤ(1000本からなるリッツワイヤ)が16回巻きつけられたものを用意した。
【0097】
磁性部300は、フェライトスラリーをシート状に成形し焼結して、厚さ5mmのフェライト単位体16個を得た後、これらを結合して675mm×534mm×5mm(横×縦×厚さ)の磁性部を作製した。
【0098】
シールド部400は、675mm×534mm×2mm(横×縦×厚さ)の寸法を有するアルミニウム板を使用した。
【0099】
(実験例1:コイル部-磁性部間の距離による特性変化)
先般製造した無線充電装置(装置AまたはB)において、
図8を参照して、コイル部-磁性部間の距離Dを2mmに固定し、スペーサにより磁性部-シールド部間の距離Vを多様に変化させながら、LCRメータを用いて85kHzの周波数(f)および5Vの電圧にて、コイル部のインダクタンス(L)および抵抗(R)を測定した後、これに基づいてQ因子を算出して、その結果を下記表1および
図2~4に示した。
【0100】
また、これらの測定データに基づいて式(1)~(3)の値を算出し、その結果を表2~7に示す。
式(1)の計算値=[(△Q1-△Q2)/Q]×100
式(2)の計算値=[(△R1-△R2)/R]×100
式(3)の計算値=[(△L1-△L2)/L]×100
ここで、
△Q1=(Q-Qa)/△d、△Q2=(Qb-Q)/△d、
△R1=(R-Ra)/△d、△R2=(Rb-R)/△d、
△L1=(L-La)/△d、△L2=(Lb-L)/△d、
Qa、Ra、Laは磁性部-シールド部間距離をΔdの分さらに狭くしたときのQ、R、L、
Qb、Rb、Lbは、磁性部-シールド部間距離をΔdの分さらに広くしたときのQ、R、L、
△d=2.0mmである。
【0101】
前記表に示すように、装置Aにおいて磁性部とシールド部との間の距離が4.0mm~6.0mmの場合(焼結フェライト)または4.5mm~6.0mmの場合(高分子磁性体)に、式(1)の計算値が1.1以上と確認された。一方、この区間を外れると、Q因子が低いため共振特性が低調となるか、またはQ因子のさらなる向上はなく、装置の全体厚さだけ増加するという問題があった。特に、磁性部とシールド部との間の距離が5.0mmの場合、式(1)の計算値が最も高いものと確認された。
【0102】
前記表に示すように、装置Bにおいて磁性部とシールド部との間の距離が4.0mm~6.0mmの場合(焼結フェライト)または4.0mm~6.5mmの場合(高分子磁性体)に、式(1)の計算値が1.1以上と確認された。一方、この区間を外れると、Q因子が低いため共振特性が低調となるか、またはQ因子のさらなる向上はなく、装置の全体厚さだけ増加するという問題があった。特に、磁性部とシールド部との間の距離が5.0mmの場合に、式(1)の計算値が最も高いものと確認された。
【0103】
前記表に示すように、装置Aにおいて磁性部とシールド部との間の距離が4.0mm~6.0mmの場合(焼結フェライト)、または4.5mm~6.0mmの場合(高分子磁性体)に、式(2)の計算値が-1.1以下と確認された。一方、この区間を外れると、コイル部の抵抗が増加して無線充電中に発熱が悪化するか、または抵抗のさらなる減少はなく、装置の全体厚さだけ増加するという問題があった。特に、磁性部とシールド部との間の距離が5.0mmの場合に、式(2)の計算値が最も低いものと確認された。
【0104】
前記表に示すように、装置Bにおいて磁性部とシールド部との間の距離が4.0mm~6.0mmの場合(焼結フェライトおよび高分子磁性体)に、式(2)の計算値が-1.1以下と確認された。一方、この区間を外れると、コイル部の抵抗が増加して無線充電中に発熱が悪化するか、または抵抗のさらなる減少はなく、装置の全体厚さだけ増加するという問題があった。特に、磁性部とシールド部との間の距離が5.0mmの場合に、式(2)の計算値が最も低いものと確認された。
【0105】
前記表に示すように、装置Aにおいて磁性部とシールド部との間の距離が2.0mm~6.5mmの場合(焼結フェライト)、または2.0mm~5.0mmの場合(高分子磁性体)に、式(3)の計算値が0.1以上と確認された。一方、この区間を外れると、コイル部のインダクタンスが低いため充電効率が低下するか、またはインダクタンスのさらなる向上はなく、装置の全体厚さだけ増加するという問題があった。
【0106】
前記表に示すように、装置Bにおいて磁性部とシールド部との間の距離が4.0mm~6.5mmの場合(焼結フェライト)、または5.0mm~6.5mmの場合(高分子磁性体)に、式(3)の計算値が0.1以上と確認された。一方、この区間を外れると、コイル部のインダクタンスが低いため充電効率が低下するか、またはインダクタンスのさらなる向上はなく、装置の全体厚さだけが増加するという問題があった。特に、磁性部とシールド部との間の距離が5.0mmの場合に、式(3)の計算値が最も高いものと確認された。
【0107】
(実験例2:充填効率の測定)
充電効率を測定するための受信機として、先般製造した無線充電装置AまたはBを用い、送信機として、先般製造した無線充電装置Cを用いた。送信機の電圧を380Vに固定し、受信機の電流を20Aに固定した状態で、送信機の電流を変化して送信電力を調整し、受信機の受信電力が8.8kWになったとき、下記式に基づいて充電効率を計算した。
充電効率(%)=(受信電力(kW)/送信電力(kW))×100
【0108】
その結果、装置AおよびBの両方において、磁性部とシールド部との間の距離が5.0mmの場合に最も高い充電効率(最大87.7%)が測定された。一方、磁性部とシールド部間の距離が5.0mmより狭くなる場合は充電効率が徐々に低下しており、逆に磁性部とシールド部との間の距離が5.0mmより広くなると、それ以上の充電効率の向上は確認されなかった。
【符号の説明】
【0109】
1:移動手段
10:無線充電装置
21:受信機
22:送信機
30:磁束
100:支持部
200:コイル部
300:磁性部
400:シールド部
600:ハウジング
610:下面ハウジング
620:側面ハウジング
630:上面ハウジング
Id:内部寸法
Od:外部寸法、
C:導電性ワイヤの直径
D:コイル部と磁性部との間の距離
M:磁性部の厚さ
S:シールド部の厚さ
V:シールド部と磁性部との間の距離