(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-10
(45)【発行日】2024-04-18
(54)【発明の名称】車両、操舵制御のためのシステム、方法、プログラム、プログラムを記録した記録媒体、自動走行システム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/244 20240101AFI20240411BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20240411BHJP
【FI】
G05D1/244
G05D1/43
(21)【出願番号】P 2023555994
(86)(22)【出願日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 JP2021039882
(87)【国際公開番号】W WO2023073882
(87)【国際公開日】2023-05-04
【審査請求日】2023-12-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000128946
【氏名又は名称】マミヤ・オーピー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151987
【氏名又は名称】谷口 信行
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 聡
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敬文
(72)【発明者】
【氏名】菅原 洋
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-175813(JP,A)
【文献】特開平5-345056(JP,A)
【文献】特開2004-86767(JP,A)
【文献】特開平3-192406(JP,A)
【文献】特開2020-140424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/244
G05D 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁誘導線から発生する磁界を検出して前記電磁誘導線に沿って自動走行可能な車両のための操舵制御システムであって、
前記車両に取り付けられた複数の誘導線検出センサと、
制御サイクル毎に、前記複数の誘導線検出センサにより取得された検出データから算出した前記車両の前記電磁誘導線からのずれに基づいて、そのずれを打ち消すように前記車両を旋回させ、又は前記車両を直進させるような走行制御信号を生成し、出力する制御装置と、
を備え、
前記複数の誘導線検出センサのずれ検出基準点が、前記車両の旋回中心となるピボットから水平方向の距離l[m]だけ前方側に離れた位置に配置されており、
前記距離l[m]は、前記制御サイクルをt[秒]、前記車両が前記電磁誘導線上を走行する時の速度をv[m/秒]、前記ずれ検出基準点の前記電磁誘導線からの水平方向のずれ許容幅をD[m]、前記車両の最小旋回半径をR[m]としたとき、tv[m]以上かつ
以下である操舵制御システム。
【請求項2】
前記複数の誘導線検出センサ
として、
一組の中央誘導線検出センサ、左側誘導線検出センサ、及び右側誘導線検出センサ
のみを有し、
前記ずれ検出基準点が前記車両の中央線上に配置され、中央誘導線検出センサが前記すれ検出基準点に配置され、前記左側誘導線検出センサ及び前記右側誘導線検出センサが、前記車両の中央線に垂直で前記中央誘導線検出センサを通る直線上に、前記中央誘導線検出センサの左側と右側にそれぞれ配置されている請求項1に記載の操舵制御システム。
【請求項3】
前記ずれ許容幅は、前記中央誘導線検出センサから、前記中央誘導線検出センサの前記磁界を検出可能な最大の水平方向の距離である最大検出距離である請求項2に記載の操舵制御システム。
【請求項4】
前記車両は、前輪と後輪とを備え、
前記前輪が、駆動輪であり、前記後輪が、操舵輪であり、
前記前輪の車軸の中心が前記ピボットである請求項1~3のいずれか1項に記載の操舵制御システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の前記操舵制御システムから出力される前記走行制御信号に基づいて自己の走行を駆動する走行駆動機構を含む車両。
【請求項6】
前記車両は芝刈り機である請求項5に記載の車両。
【請求項7】
電磁誘導線から発生する磁界を検出して前記電磁誘導線に沿って自動走行可能な車両のための操舵制御方法であって、
前記車両には、複数の誘導線検出センサが取り付けられており、
制御サイクル毎に、前記複数の誘導線検出センサにより取得された検出データから算出した前記車両の前記電磁誘導線からのずれに基づいて、そのずれを打ち消すように前記車両を旋回させ、又は前記車両を直進させるような走行制御信号を生成し、出力し、
前記複数の誘導線検出センサのずれ検出基準点が、前記車両の旋回中心となるピボットから水平方向の距離l[m]だけ前方側に離れた位置に配置されており、
前記距離l[m]は、前記制御サイクルをt[秒]、前記車両が前記電磁誘導線上を走行する時の速度をv[m/秒]、前記ずれ検出基準点の前記電磁誘導線からの水平方向のずれ許容幅をD[m]、前記車両の最小旋回半径をR[m]としたとき、tv[m]以上かつ
以下である操舵制御方法。
【請求項8】
前記複数の誘導線検出センサ
として、
一組の中央誘導線検出センサ、左側誘導線検出センサ、及び右側誘導線検出センサ
のみを有し、
前記ずれ検出基準点が前記車両の中央線上に配置され、中央誘導線検出センサが前記すれ検出基準点に配置され、前記左側誘導線検出センサ及び前記右側誘導線検出センサが、前記車両の中央線に垂直で前記中央誘導線検出センサを通る直線上に、前記中央誘導線検出センサの左側と右側にそれぞれ配置されている請求項7に記載の操舵制御方法。
【請求項9】
前記ずれ許容幅は、前記中央誘導線検出センサから、前記中央誘導線検出センサの前記磁界を検出可能な最大の水平方向の距離である最大検出距離である請求項8に記載の操舵制御方法。
【請求項10】
前記車両は、前輪と後輪とを備え、
前記前輪が、駆動輪であり、前記後輪が、操舵輪であり、
前記前輪の車軸の中心が前記ピボットである請求項7~9のいずれか1項に記載の操舵制御方法。
【請求項11】
請求項7~10のいずれか1項に記載の操舵制御方法をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項13】
電磁誘導線から発生する磁界を検出して前記電磁誘導線に沿って自動走行可能な車両のための自動走行システムであって、
互いに交差せず互いに隣接して配置された、複数の閉ループ電磁誘導線と、
前記複数の閉ループ電磁誘導線にそれぞれ対応する電源装置と、
を含み、
前記複数の閉ループ電磁誘導線の各々の一部が、走行経路を形成するように、互いに隣接して配置され、
前記複数の閉ループ電磁誘導線毎に対応する電源装置がそれぞれ接続され、前記電源装置から前記複数の閉ループ電磁誘導線に同じ周波数の低周波の交流電流が供給される、
自動走行システム。
【請求項14】
前記同じ周波数の低周波の交流電流は、同期が取られている請求項13に記載の自動走行システム。
【請求項15】
前記車両は、自動走行モードとして、受信した測位信号に基づいて自動走行を行う測位モードと、電磁誘導線から発生する磁界を検出して前記電磁誘導線に沿って自動走行を行う電磁誘導モードを有し、
前記電磁誘導線が敷設されていない経路は、前記測位モードで自動走行が行われる請求項13又は14に記載の自動走行システム。
【請求項16】
走行経路のうちの、測位信号を受信できない、又は測位信号の受信強度が弱い部分に前記電磁誘導線が敷設されている請求項13~15のいずれか1項に記載の自動走行システム。
【請求項17】
前記車両は、請求項5又は6に記載の車両である請求項13~16のいずれか1項に記載の自動走行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動走行車両、自動走行車両の操舵制御のためのシステム、方法、プログラム、プログラムを記録した記録媒体、自動走行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
路面に埋設した電磁誘導線に交流電流を供給し、これにより発生する交流磁界を、車両の中心線に対して左右に等間隔で配置した2つの磁気センサによって検出し、2つの磁気センサに発生する誘起起電力を検出して電磁誘導線の位置を判断して、判断された電磁誘導線の位置に基づいて操舵を行い、車両を電磁誘導線に沿って走行させる自動走行システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載されているような従来の電磁誘導線による自動走行システムは、(1)大規模な敷設工事が必要なこと、(2)電磁誘導線経路以外の経路は自動走行させることができないこと、(3)長距離の電磁誘導線へ電力を供給する必要があるため電力を供給する電源が大規模なものとなること等の問題がある。
【0005】
また、電磁誘導線による自動走行システムにおいては、車両が電磁誘導線から逸脱しないような制御を行う必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、大規模な敷設工事や大規模な電源の必要ない電磁誘導による自動走行システムを提供ことを目的の1つとする。
【0007】
また、本発明は、車両が電磁誘導線から逸脱しないような制御を可能とすることを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの態様は、電磁誘導線から発生する磁界を検出して前記電磁誘導線に沿って自動走行可能な車両のための操舵制御システムであって、前記車両に取り付けられた複数の誘導線検出センサと、制御サイクル毎に、前記複数の誘導線検出センサにより取得された検出データから算出した前記車両の前記電磁誘導線からのずれに基づいて、そのずれを打ち消すように前記車両を旋回させ、又は前記車両を直進させるような走行制御信号を生成し、出力する制御装置と、を備え、前記複数の誘導線検出センサのずれ検出基準点が、前記車両の旋回中心となるピボットから水平方向の距離l[m]だけ前方側に離れた位置に配置されており、前記距離l[m]は、前記制御サイクルをt[秒]、前記車両が前記電磁誘導線上を走行する時の速度をv[m/秒]、前記ずれ検出基準点の前記電磁誘導線からの水平方向のずれ許容幅をD[m]、前記車両の最小旋回半径をR[m]としたとき、tv[m]以上かつ
以下である操舵制御システムを提供するものである。
【0009】
前記複数の誘導線検出センサは、中央誘導線検出センサ、左側誘導線検出センサ、及び右側誘導線検出センサであり、前記ずれ検出基準点が前記車両の中央線上に配置され、中央誘導線検出センサが前記すれ検出基準点に配置され、前記左側誘導線検出センサ及び前記右側誘導線検出センサが、前記車両の中央線に垂直で前記中央誘導線検出センサを通る直線上に、前記中央誘導線検出センサの左側と右側にそれぞれ配置されているものとすることができる。
【0010】
前記ずれ許容幅は、前記中央誘導線検出センサから、前記中央誘導線検出センサの前記磁界を検出可能な最大の水平方向の距離である最大検出距離であるものとすることができる。
【0011】
前記車両は、前輪と後輪とを備え、前記前輪が、駆動輪であり、前記後輪が、操舵輪であり、前記前輪の車軸の中心が前記ピボットであるものとすることができる。
【0012】
本発明の1つの態様は、前記操舵制御システムから出力される前記走行制御信号に基づいて自己の走行を駆動する走行駆動機構を含む車両を提供するものである。
【0013】
本発明の1つの態様は、電磁誘導線から発生する磁界を検出して前記電磁誘導線に沿って自動走行可能な車両のための操舵制御方法であって、前記車両には、複数の誘導線検出センサが取り付けられており、制御サイクル毎に、前記複数の誘導線検出センサにより取得された検出データから算出した前記車両の前記電磁誘導線からのずれに基づいて、そのずれを打ち消すように前記車両を旋回させ、又は前記車両を直進させるような走行制御信号を生成し、出力し、前記複数の誘導線検出センサのずれ検出基準点が、前記車両の旋回中心となるピボットから水平方向の距離l[m]だけ前方側に離れた位置に配置されており、前記距離l[m]は、前記制御サイクルをt[秒]、前記車両が前記電磁誘導線上を走行する時の速度をv[m/秒]、前記ずれ検出基準点の前記電磁誘導線からの水平方向のずれ許容幅をD[m]、前記車両の最小旋回半径をR[m]としたとき、tv[m]以上かつ
以下である操舵制御方法を提供するものである。
【0014】
前記複数の誘導線検出センサは、中央誘導線検出センサ、左側誘導線検出センサ、及び右側誘導線検出センサであり、前記ずれ検出基準点が前記車両の中央線上に配置され、中央誘導線検出センサが前記すれ検出基準点に配置され、前記左側誘導線検出センサ及び前記右側誘導線検出センサが、前記車両の中央線に垂直で前記中央誘導線検出センサを通る直線上に、前記中央誘導線検出センサの左側と右側にそれぞれ配置されているものとすることができる。
【0015】
前記ずれ許容幅は、前記中央誘導線検出センサから、前記中央誘導線検出センサの前記磁界を検出可能な最大の水平方向の距離である最大検出距離であるものとすることができる。
【0016】
前記車両は、前輪と後輪とを備え、前記前輪が、駆動輪であり、前記後輪が、操舵輪であり、前記前輪の車軸の中心が前記ピボットであるものとすることができる。
【0017】
本発明の1つの態様は、前記操舵制御方法をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムを提供するものである。
【0018】
本発明の1つの態様は、前記コンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供するものである。
【0019】
本発明の1つの態様は、電磁誘導線から発生する磁界を検出して前記電磁誘導線に沿って自動走行可能な車両のための自動走行システムであって、互いに隣接して配置された、複数の閉ループ電磁誘導線と、前記複数の閉ループ電磁誘導線にそれぞれ対応する電源装置と、を含み、前記複数の閉ループ電磁誘導線の各々の一部が、走行経路を形成するように、互いに隣接して配置され、前記複数の閉ループ電磁誘導線毎に対応する電源装置がそれぞれ接続され、前記電源装置から前記複数の閉ループ電磁誘導線に同じ周波数の低周波の交流電流が供給される自動走行システムを提供するものである。
【0020】
前記同じ周波数の低周波の交流電流は、同期が取られているものとすることができる。
【0021】
前記車両は、自動走行モードとして、受信した測位信号に基づいて自動走行を行う測位モードと、電磁誘導線から発生する磁界を検出して前記電磁誘導線に沿って自動走行を行う電磁誘導モードを有し、前記電磁誘導線が敷設されていない経路は、前記測位モードで自動走行が行われるものとすることができる。
【0022】
走行経路のうちの、測位信号を受信できない、又は測位信号の受信強度が弱い部分に前記電磁誘導線が敷設されているものとすることができる。
【0023】
前記車両は、請求項5又は6に記載の車両であるものとすることができる。
【発明の効果】
【0024】
上記構成を有する本発明によれば、大規模な敷設工事や大規模な電源の必要ない電磁誘導による自動走行システムを提供ことができる。
【0025】
また、上記構成を有する本発明によれば、車両が電磁誘導線から逸脱しないような制御を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】芝刈り作業本発明の1つの実施形態に係る、芝刈り機の自動走行に必要となる装置類の全体概要図である。
【
図2】本発明を適用した1つの実施形態に係る芝刈り機の側面外観図である。
【
図3】本発明の1つの実施形態に係る芝刈り機の主要部の上面概念図である。
【
図4】電磁誘導線からの誘導線検出センサのずれと電磁誘導線と誘導線検出センサの位置関係の関係を示す図である。
【
図5】電磁誘導線上を自動走行する際の幾何学的関係を示す図である。
【
図6】ピボットの軌跡と中央誘導線検出センサの軌跡の関係を示す図である。
【
図7】ピボットの軌跡と中央誘導線検出センサの軌跡の関係を示す図である。
【
図8】ピボットの軌跡と中央誘導線検出センサの軌跡の関係を示す図である。
【
図9】ピボットの軌跡と中央誘導線検出センサの軌跡の関係を示す図である。
【
図10】本発明の1つの実施形態に係る操舵制御処理の例のフローチャートである。
【
図12】本発明の1つの実施形態に係る自動走行システムの全体構成を示す図である。
【
図13】電磁誘導線に供給される交流電流と同期信号の一例を示す図である。
【
図14】隣接する閉ループ電磁誘導線の交流電流の位相が揃っている場合とずれている場合の電界強度の比較図である。
【0027】
以下、本発明の操舵制御システム、操舵制御システムを搭載した車両、自動走行システムを、ゴルフ場の芝刈りを行う芝刈り機に適用した場合を一例として説明する。
【0028】
<全体概要>
図1は、本発明の1つの実施形態に係る、芝刈り機の自動走行に必要となる装置類の全体概要図である。本実施形態では、RTK-GPS方式(Real Time Kinematic GPS:干渉測位方式)を用いて、現在位置の計測を行いながらゴルフ場の芝刈り作業を行う芝刈り機1の例を示す。
【0029】
基地局3は、RTK-GPSの基準局に相当するGPS受信装置31及び送受信装置32と、GPSアンテナ35と、通信アンテナ36とを備えている。基地局3は、その経度、緯度、高さが既知の地点に設置される。GPS受信装置31は、芝刈り機1の位置情報の誤差を補正するための補正情報を生成する。この補正情報は、送受信装置32及び通信アンテナ36を通じて、芝刈り機1へ適宜送信される。補正情報の送信タイミングは、例えば、芝刈り機1が要求するタイミングであったり、所定の間隔(例えば100ms毎)であったりする。
【0030】
本実施形態においては、測位方式として、RTK-GPS方式を用いているが、デファレンシャルGPS方式(Differential GPS:相対測位方式)を用いてもよい。
【0031】
芝刈り機1は、機体10、制御装置11、車速センサ12、方位角速度センサ13、左側誘導線検出センサ14、中央誘導線検出センサ15、右側誘導線検出センサ16、駆動制御部17、GPSアンテナ18、通信アンテナ19、刈り刃(前方)20、刈り刃(後方)21、駆動輪22、操舵輪23、操作入力部24、表示部25、音声出力部26を備えている。
【0032】
制御装置11は、CPU、通信機能、ストレージ機能(内部記録媒体並びに外部記録媒体に対するドライブユニット及び/又は入出力インタフェース)及び表示機能(ディスプレイ)を備えたコンピュータ装置と、所定のコンピュータプログラムとで構成される。このコンピュータプログラムは、コンピュータ装置を、GPS受信部101、送受信部102、車両情報受信部105、駆動指令部106、制御情報生成部107、記憶部108、リムーバブル記録媒体インタフェース部109、主制御部112、として機能させる。主制御部112は、各部の動作を統括的に制御する。このコンピュータ装置は、時刻データと制御動作の同期クロックとを出力するRTC(Real Time Clock)モジュールを備えたものである。芝刈り機が方位角速度センサを備えていない等の場合のために、制御装置11が、方位角速度センサを備えてもよい。制御装置11の詳細については後述する。
【0033】
車速センサ12は、芝刈り機1の前進又は後退する際の走行速度を検出する。方位角速度センサ13は、三次元軸線回り(ロール、ピッチ、ヨー)の角速度により芝刈り機1の傾き、旋回、ふらつき等の挙動(動態)を検出する。方位角速度センサ13で計測すべきデータを加速度計で代用しても良い。また、芝刈り機1が備える各種計器の計測結果を取り込むことで、センサ11,12を代用することもできる。
【0034】
中央誘導線検出センサ15、左側誘導線検出センサ14、右側誘導線検出センサ16の3つの誘導線検出センサは、電磁誘導線上の走行経路を自動走行する際に、電磁誘導線に供給された交流電流によって発生する交番磁界の強度を検出する。
【0035】
駆動制御部17は、後述する作業制御信号に基づいて芝刈り機1が備える刈り刃の昇降及び作動等を駆動する作業駆動機構を制御したり、後述する走行制御信号に基づいて芝刈り機1の右左への旋回、前進、後退等を駆動する走行駆動機構を制御する。この駆動制御部17は、図示されるように、制御装置11とは別に設けても良いが、制御装置11の一機能として実現しても良い。
【0036】
GPSアンテナ18は、GPS衛星から送信されたGPSデータを受信する位置検出センサとして機能するものである。通信アンテナ19は、基地局3の通信アンテナ36との間の通信を可能にする。この通信は、上記の芝刈り機1の位置情報の誤差を補正するための補正情報、芝刈り機1のオペレータとの通信、芝刈り機1の遠隔操作のための信号等の送受信に使用される。
【0037】
操作入力部24は、キーボードやマウス等から構成されるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
表示部25は、CRT、液晶ディスプレイ、積層表示灯等から構成されるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
音声出力部26は、スピーカ等から構成されるが、これに限定されるものではない。
【0040】
<芝刈り機>
図2は芝刈り機1を側面から見た外観図である。
図3は、本発明の1つの実施形態に係る芝刈り機の主要部の上面概念図である。上述した制御装置11、車速センサ12、方位角速度センサ13、駆動制御部17、及び走行駆動機構及び作業駆動機構は、芝刈り機1の機体10に内蔵されている。
【0041】
方位角速度センサ13は、芝刈り機1の挙動が正しく伝達される位置に設置される。GPSアンテナ18は、芝刈り機1の機体のほぼ中心部位、すなわち機体の長さ方向と幅方向それぞれのほぼ中心となるように備えられる。また、通信アンテナ19は、GPSアンテナ18の受信の障害にならないように芝刈り機1の機体の後方表面から突出するように取り付けられる。
【0042】
中央誘導線検出センサ15、左側誘導線検出センサ14、右側誘導線検出センサ16の3つの誘導線検出センサは、刈り刃(前方)20に取り付けられたステー27に取り付けられている。中央誘導線検出センサ15は、芝刈り機1の中央線C上で、芝刈り機1の旋回中心となる駆動輪22の車軸の中心に位置するピボットPvから後述の距離l[m]だけ離れた位置に配置され、左側誘導線検出センサ14と右側誘導線検出センサ16は、芝刈り機1の中央線Cに垂直で中央誘導線検出センサ15を通る直線上に、中央誘導線検出センサ15の左側と右側に、中央誘導線検出センサ15から後述の距離D[m]だけ離れた位置に配置されている。
【0043】
上述のように、芝刈り機1は、芝を刈るための一対の刈り刃(前方)20、刈り刃(後方)21を備えている。前方の刈り刃18は、走行方向と直交する方向の刈り幅W[m]のうち、左右端の芝を刈り取る。後方の刈り刃19は、刈り幅W[m]のうち、中央部の芝を刈り取る。この刈り幅W[m]が、芝刈り機1の1回の走行、作業で芝を刈りとることができる作業幅となる。
【0044】
<制御装置>
図1に戻り、制御装置11のGPS受信部101は、GPSアンテナ18で受信したGPSデータを制御情報生成部107へ出力する。送受信部102は、通信アンテナ19を介して、制御情報生成部107と基地局3との間の通信を可能にし、通信アンテナ19で受信した芝刈り機1の位置情報の誤差を補正するための補正情報を制御情報生成部107に出力する。制御情報生成部107は、GPSアンテナ18で受信したGPSデータと通信アンテナ19で受信した芝刈り機1の位置情報の誤差を補正するための補正情報に基づいて、芝刈り機1の現在位置を表す位置情報を生成する。また、送受信部102は、有線若しくは無線、又はLAN(Local Area Network)若しくは公衆通信回線を問わず任意のネットワークに接続されることができる。
【0045】
車両情報受信部105は、車速センサ12及び方位角速度センサ13、及び/又はGPSデータによる位置の追跡から、芝刈り機1の走行速度、方位、挙動を表す検知情報を取得する。取得した情報がアナログデータの場合には、それらをデジタルデータに変換して出力する。その際、必要に応じて、方位角速度センサ13の出力からオフセット成分及びドリフト成分の除去処理等を施すデータ補正を行う。また、車両情報受信部105は、中央誘導線検出センサ15、左側誘導線検出センサ14、右側誘導線検出センサ16による磁界強度を取得する。車両情報受信部105の出力情報は、現在時刻データと関連付けて、記憶部108に記録される。
【0046】
駆動指令部106は、制御情報生成部107の出力情報(走行制御信号/作業制御信号)に基づいて、芝刈り機1を走行制御あるいは作業制御するために走行駆動機構あるいは作業駆動機構の制御内容を定めた情報を駆動制御部17へ出力する。駆動制御部17は、この情報をもとに、芝刈り機の走行駆動機構あるいは作業駆動機構を制御する。これにより、芝刈り機1による自動走行や自動走行による芝刈り作業が可能となる。
【0047】
記憶部108は、走行経路及び動作データや所定のコンピュータプログラム等を記録することができる。記憶部108は、ハードディスクや半導体メモリ等の任意の数の記憶部品から構成されるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
リムーバブル記録媒体インタフェース部109には、CD-ROMやDVD等の光ディスク、USBメモリ、SDメモリカード等のリムーバブル記録媒体40が着脱自在に装着することができる。また、リムーバブル記録媒体インタフェース部109は、装着されたリムーバブル記録媒体40に記録されたデータを読み出したり、リムーバブル記録媒体40にデータを書き込んだりすることができる。リムーバブル記録媒体インタフェース部109は、例えばリムーバブル記録媒体40がCD-ROMやDVD等の光ディスクであれば専用のリーダ/ライタ等であり、USBメモリであればUSBポート等であり、SDメモリカードであればカードスロット等であるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
走行経路及び動作データが、記憶部108又はリムーバブル記録媒体インタフェース部109に装着されたリムーバブル記録媒体40に記録されている。動作データは、走行経路と関連付けられた、芝刈り機1の走行中あるいは停止中の刈り刃(前方)20、刈り刃(後方)21の昇降動作や回転の起動又は停止などを含む芝刈り作業に係る各種設定、芝刈り機1の速度や自動走行モードを含む。自動走行モードは、受信した測位信号に基づいて自動走行を行う測位モードと、電磁誘導線から発生する磁界を検出して前記電磁誘導線に沿って自動走行を行う電磁誘導モードを含む。制御情報生成部107は、測位モードである場合、その走行経路及び動作データとGPSデータや各種センサ11等より取得した現在位置とに基づいて、電磁誘導モードにおいては、中央誘導線検出センサ15、左側誘導線検出センサ14、右側誘導線検出センサ16により取得した磁界強度から算出した芝刈り機1の電磁誘導線Eからのずれに基づいて、走行制御信号及び作業制御信号を生成し、出力する。これにより自動走行による作業を可能にする。
【0050】
<操舵制御システム>
次に、本発明の一実施形態に係る操舵制御システム及び方法について説明する。まず、その原理について説明する。
図4は、電磁誘導線からの誘導線検出センサのずれと電磁誘導線と誘導線検出センサの位置関係の関係を示す図である。
図5は、電磁誘導線上を自動走行する際の幾何学的関係を示す図である。
図6から
図9は、ピボットの軌跡と中央誘導線検出センサの軌跡の関係を示す図である。
図10は、本発明の1つの実施形態に係る操舵制御処理の例のフローチャートである。
【0051】
操舵制御システム60は、制御装置11、中央誘導線検出センサ15、左側誘導線検出センサ14、右側誘導線検出センサ16を含む。
【0052】
図4は、芝刈り機1の進行方向に垂直な断面における、電磁誘導線からの誘導線検出センサのずれと電磁誘導線と誘導線検出センサの位置関係の関係を示す図である。
図4を参照して、電磁誘導線Eから中央誘導線検出センサ15までの垂直方向の高さをh[m]、電磁誘導線Eからの中央誘導線検出センサ15の水平方向のずれ、すなわち電磁誘導線Eから中央誘導線検出センサ15までの水平方向の距離をd[m]、電磁誘導線を通る鉛直方向の直線と中央誘導線検出センサ15とのなす角度をθとすると、電磁誘導線Eから誘導線検出センサ15までの距離(磁力線半径)r[m]は、r=d/sinθ[m]となる。
【0053】
電磁誘導線Eから中央誘導線検出センサ15までの垂直方向の高さh[m]は一定であるとみなすと、d=r・sinθ[m]であるので、電磁誘導線Eから中央誘導線検出センサ15までの水平方向の距離dの値は電磁誘導線Eから中央誘導線検出センサ15までの距離r[m]に比例する。また、電磁誘導線Eから発する磁界の強さは、電磁誘導線Eから中央誘導線検出センサ15までの距離r[m]に反比例するため、r[m]が大きくなるほど、中央誘導線検出センサ15が検出する磁界は弱くなる。よって、閾値の強度以下の信号を検出しないようにすると、中央誘導線検出センサ15が検出可能な最大のr[m]の値を決定することができる。d[m]の値はr[m]の値に比例するので、中央誘導線検出センサ15が検出可能な最大のd[m]の値も決定することができる。この検出可能な最大の水平方向の距離d[m]を最大検出距離D[m]と呼ぶことにする。本実施形態においては、左側誘導線検出センサ14と右側誘導線検出センサ16の検出性能が同じであり、最大検出距離もD[m]とする。
【0054】
上述のように、中央誘導線検出センサ15は、芝刈り機1の中央線C上でピボットPvから距離l[m]だけ離れた位置に配置され、左側誘導線検出センサ14と右側誘導線検出センサ16は、芝刈り機1の中央線Cに垂直で中央誘導線検出センサ15を通る直線上に、中央誘導線検出センサ15の左側と右側に、中央誘導線検出センサ15から最大検出距離D[m]だけ離れた位置に配置されている。中央誘導線検出センサ15、左側誘導線検出センサ14、右側誘導線検出センサ16は、検出性能が同じであるから、このような配置により、中央誘導線検出センサ15の位置の電磁誘導線Eからのずれが検出できる。
【0055】
制御装置11の制御情報生成部107は、車両情報受信部105により取得された、中央誘導線検出センサ15、左側誘導線検出センサ14、及び右側誘導線検出センサ16により取得された検出データである磁界強度に基づいて、芝刈り機1の電磁誘導線Eからのずれを算出する。具体的には、中央誘導線検出センサ15が磁界を検出せず、左側誘導線検出センサ14が磁界を検出した場合は、電磁誘導線Eが左側誘導線検出センサ14の左側に位置するようにずれていると判定することができる。また、中央誘導線検出センサ15が磁界を検出せず、右側誘導線検出センサ16が磁界を検出した場合は、電磁誘導線Eが右側誘導線検出センサ16の右側に位置するようにずれていると判定することができる。そして、中央誘導線検出センサ15が磁界を検出し、左側誘導線検出センサ14が磁界を検出した場合は、電磁誘導線Eが中央誘導線検出センサ15と左側誘導線検出センサ14の間に位置するようにずれていると判定することができる。また、中央誘導線検出センサ15が磁界を検出し、右側誘導線検出センサ16が磁界を検出した場合は、電磁誘導線Eが中央誘導線検出センサ15と右側誘導線検出センサ16の間に位置するようにずれていると判定することができる。
【0056】
ただし、本実施形態においては、芝刈り機1(より厳密には、中央誘導線検出センサ15の位置)が電磁誘導線Eからそれ以上ずれた場合に芝刈り機1を停止させるずれ許容幅を最大検出距離D[m]と設定し、中央誘導線検出センサ15が磁界を検出しなかったときに、制御情報生成部107は、芝刈り機1を停止させる走行制御信号を生成し、芝刈り機1を停止させる。
【0057】
なお、芝刈り機1の電磁誘導線Eからのずれの算出は、制御情報生成部107で算出する構成に限定されるものではなく、例えば、制御装置11の外部で算出し、算出されたずれを制御装置が受け取る構成等他の任意の適切な構成とすることができる。
【0058】
また、中央誘導線検出センサ15を配置せず、左側誘導線検出センサ14と右側誘導線検出センサ16のみでも、左側誘導線検出センサ14の位置と右側誘導線検出センサ16の位置の中点の電磁誘導線Eからのずれは算出できるので、中央誘導線検出センサ15を配置しない構成としてもよい。
【0059】
図5を参照して、芝刈り機1の操舵が行われたとき、芝刈り機1は、ピボット(制御点)Pvが、操舵輪の法線が交差する点(旋回中心O)を半径Rとする円弧の軌道を通るように移動する。ここで、左側誘導線検出センサ14と右側誘導線検出センサ16は、実際の制御には必要なものの、以下で考察する中央誘導線検出センサ15の芝刈り機1の前後方向の配置位置の範囲には影響しないため、
図5では省略している。
【0060】
上述のように、制御情報生成部107は、中央誘導線検出センサ15、左側誘導線検出センサ14、右側誘導線検出センサ16により取得した磁界強度から算出した芝刈り機1の電磁誘導線Eからのずれに基づいて、走行制御信号を生成し、出力する。具体的には、制御情報生成部107は、制御サイクルt[秒]毎に、中央誘導線検出センサ15、左側誘導線検出センサ14、右側誘導線検出センサ16により取得した磁界強度から算出した芝刈り機1の電磁誘導線Eからのずれに基づいて、そのずれを打ち消すように芝刈り機1を旋回させ、又は芝刈り機1を直進させるような走行制御信号を生成し、出力する。出力された走行制御信号は駆動指令部106を介して駆動制御部17に送られ、駆動制御部17は受け取った走行制御信号に応じて、駆動輪22を制御し、操舵輪23を旋回させる。
【0061】
なお、本実施形態においては、芝刈り機1は、電磁誘導線上を走行する際は、後進を行わないものとする。
【0062】
以上を前提に、芝刈り機1が電磁誘導線から逸脱することなく自動走行可能とするための中央誘導線検出センサ15の芝刈り機1の前後方向の配置位置の範囲について考察する。ここで、芝刈り機1は、最小旋回半径よりも小さい旋回半径で旋回することはできないので、走行経路は、最小旋回半径よりも小さい曲率半径のカーブを含んではならない。また、逆に、芝刈り機1は、最小旋回半径以上のカーブは走行することができる。よって、芝刈り機1が電磁誘導線から逸脱することなく自動走行可能であるか否かの限界の走行経路は、最小旋回半径を半径とする円弧を考えればよい。言い換えれば、最小旋回半径を半径とする円弧の電磁誘導線から逸脱することなく自動走行可能であるならば、最小旋回半径よりも小さい曲率半径のカーブを含まない走行経路は自動走行可能である。したがって、以下では、走行経路が最小旋回半径を半径とする円弧である場合について検討する。
【0063】
(ピボットPv上にある場合)
まず、中央誘導線検出センサ15が、ピボットPv上にある場合を考えてみる。
【0064】
図6を参照して、中央誘導線検出センサ15が初期位置P0にある時は、制御情報生成部107はずれを検出しないので、操舵制御システム60は操舵を行わず、芝刈り機1は直進する。芝刈り機1が電磁誘導線E上を走行する時の速度をv[m/秒]としたとき、1制御サイクル後、すなわちt秒後のピボットPv及び中央誘導線検出センサ15は、初期位置P0からtv[m]だけ直進したP1の位置となる。
【0065】
1制御サイクル後のこのタイミングで、制御情報生成部107は、電磁誘導線Eとのずれを検出するので、操舵制御システム60は、芝刈り機1を、最小旋回で電磁誘導線に近づくように、すなわち最小旋回半径で左側に旋回するように操舵する。しかしながら、この時、ピボットPvは、位置P1にあるので、
図6から分かるように、芝刈り機1が最小旋回で旋回しても電磁誘導線Eに近づくことはできず、芝刈り機1は電磁誘導線Eに戻ることはできない。すなわち、旋回タイミングが遅すぎるので、芝刈り機1が電磁誘導線Eに戻ることができない。
【0066】
したがって、芝刈り機1の位置が電磁誘導線Eからずれた場合に、芝刈り機1が電磁誘導線Eに戻れるようにするためには、旋回タイミングを早める必要がある。そのためには、中央誘導線検出センサ15をピボットPvよりも前方側に配置する必要があるが、どのくらいの距離だけ前方に配置すれば芝刈り機1が電磁誘導線Eに戻ることができるようになるかについて以下検討する。
【0067】
(ピボットPvから最も近い配置)
まず、ピボットPvから最も近い配置について検討する。
図7を参照して、l=tv[m]、すなわち、中央誘導線検出センサ15が、芝刈り機1の中央線C上でピボットPvから距離tv[m]だけ離れて配置されている場合を考える。ピボットPvの初期位置をP2、中央誘導線検出センサ15の初期位置をP3とする。初期位置において、中央誘導線検出センサ15は、電磁誘導線E上の位置にあり、中央誘導線検出センサ15はずれを検出しないので、操舵制御システム60は操舵を行わず、芝刈り機1は直進する。1制御サイクル後、すなわちt秒後のピボットPv及び中央誘導線検出センサ15は、初期位置P2、P3からそれぞれtv[m]だけ、初期位置での芝刈り機1の中心線に沿って前方に直進したP3、P4の位置となる。
【0068】
1制御サイクル後のこのタイミングで、中央誘導線検出センサ15は、中央誘導線検出センサ15の位置が電磁誘導線Eから右側にずれていることを検出するので、操舵制御システム60は、芝刈り機1を、最小旋回で電磁誘導線に近づくように、すなわち最小旋回半径で左側に旋回するように操舵する。この時、ピボットPvは、位置P3にあるので、
図7から分かるように、芝刈り機1は、最小旋回で旋回することにより、電磁誘導線Eから逸脱することなく、電磁誘導線E上を走行することができる。
【0069】
また、中央誘導線検出センサ15が、ピボットPvからtv[m]よりも小さい距離しか離れていなかった場合は、芝刈り機1は電磁誘導線Eに戻ることができないことが
図6と
図7の比較により理解することができる。
【0070】
一方、
図8を参照して、このような中央誘導線検出センサ15の配置において、初期位置において、中央誘導線検出センサ15が、芝刈り機1の中央線Cに垂直な方向に右側に距離D[m]だけ離れた場所にある場合を考える。ピボットPvの初期位置をP5、中央誘導線検出センサ15の初期位置をP6とする。初期位置において、中央誘導線検出センサ15は、中央誘導線検出センサ15の位置が電磁誘導線Eから右側にずれていることを検出するので、操舵制御システム60は、芝刈り機1を、最小旋回で電磁誘導線に近づくように、すなわち最小旋回半径で左側に旋回するように操舵する。1制御サイクル後、すなわちt秒後のピボットPvの位置は、最小旋回半径Rの円周上を距離tv[m]だけ進んだ位置P7となり、中央誘導線検出センサ15の位置は、位置P7から、位置P7における最小旋回半径Rの円周の接線方向に前方にtv[m]だけ離れた位置P8となる。位置P8において、中央誘導線検出センサ15の位置は、依然として電磁誘導線Eから右側にずれているので、制御情報生成部107は、中央誘導線検出センサ15の位置が電磁誘導線Eから右側にずれていることを検出するので、操舵制御システム60は、芝刈り機1を、再度、最小旋回で電磁誘導線に近づくように、すなわち最小旋回半径で左側に旋回するように操舵する。このような操舵を制御サイクル毎に繰り返すことにより、芝刈り機1は電磁誘導線Eに戻ることができる。
【0071】
以上から、芝刈り機1が電磁誘導線から逸脱することなく自動走行可能とするための、中央誘導線検出センサ15をピボットPvから最も近くに配置する場合の中央誘導線検出センサ15の位置は、中央誘導線検出センサ15が、芝刈り機1の中央線C上でピボットPvから距離tv[m]だけ離れた位置であることが分かる。
【0072】
(ピボットPvから最も遠い配置)
次に、ピボットPvから最も遠い配置について検討する。
図9を参照して、
すなわち、中央誘導線検出センサ15が、芝刈り機1の中央線C上でピボットPvから距離
だけ離れて配置されていて、初期位置において、中央誘導線検出センサ15が、芝刈り機1の中央線Cに垂直な方向に右側にずれ許容幅D[m]の距離だけ離れた場所にある場合を考える。ピボットPvの初期位置をP9、中央誘導線検出センサ15の初期位置をP10とする。初期位置において、制御情報生成部107は、中央誘導線検出センサ15の位置が電磁誘導線Eから右側にずれていることを検出するので、操舵制御システム60は、芝刈り機1を、最小旋回で電磁誘導線に近づくように、すなわち最小旋回半径で左側に旋回するように操舵する。よって、芝刈り機1は、最小旋回半径の電磁誘導線E上を走行する。このとき、中央誘導線検出センサ15の軌跡は、最小旋回半径Rの電磁誘導線Eと平行となる、すなわち電磁誘導線Eに近づくことはできないが、遠ざかることもない。よって、制御サイクル毎に最小旋回半径で左側に旋回するように操舵しても、中央誘導線検出センサ15の軌跡は、最小旋回半径Rの電磁誘導線Eと平行のままとなる。
【0073】
したがって、芝刈り機1が電磁誘導線からずれ許容幅D[m]より大きく逸脱することなく自動走行可能とするための、中央誘導線検出センサ15をピボットPvから最も遠くに配置する場合の中央誘導線検出センサ15の位置は、中央誘導線検出センサ15が、芝刈り機1の中央線C上でピボットPvから距離
だけ離れた位置であることが分かる。
【0074】
以上から、l[m]をtv[m]以上、
以下となるように中央誘導線検出センサ15を配置すれば、芝刈り機1が電磁誘導線Eから逸脱しても電磁誘導線Eに戻れるように制御できることが分かる。
【0075】
以上の説明においては、中央誘導線検出センサ15、左側誘導線検出センサ14、及び右側誘導線検出センサ16の3つの誘導線検出センサによって、中央誘導線検出センサ15の位置の電磁誘導線Eからのずれが検出されていた。すなわち、中央誘導線検出センサ15、左側誘導線検出センサ14、及び右側誘導線検出センサ16の3つの誘導線検出センサによって検出される電磁誘導線Eからのずれの検出基準点は、中央誘導線検出センサ15の位置であった。よって、一般に、複数の誘導線検出センサが車両に取り付けられている場合、複数の誘導線検出センサによって検出される電磁誘導線Eからのずれの検出基準点が、上記の条件(tv[m]以上、
以下)を満たす、ピボットから水平方向の距離l[m]だけ前方側に離れた位置に配置されていれば、ずれの検出基準点が電磁誘導線からずれ許容幅D[m]より大きく逸脱することなく自動走行可能であることも理解される。
【0076】
以上の原理を前提に、本発明の1つの実施形態に係る操舵制御方法の例について説明する。
【0077】
車両情報受信部105は、中央誘導線検出センサ15、左側誘導線検出センサ14、及び右側誘導線検出センサ16から、各誘導線検出センサにより取得された検出データである磁界強度を取得する(S1)。
【0078】
制御情報生成部107は、制御サイクルt[秒]毎に、中央誘導線検出センサ15、左側誘導線検出センサ14、右側誘導線検出センサ16により取得した磁界強度から算出した芝刈り機1の電磁誘導線Eからのずれに基づいて、そのずれを打ち消すように芝刈り機1を旋回させ、又は芝刈り機1を直進させるような走行制御信号を生成し、出力する(S2)。出力された走行制御信号は駆動指令部106を介して駆動制御部17に送られ、駆動制御部17は受け取った走行制御信号に応じて、駆動輪22を制御し、操舵輪23を旋回させる(S3)。
【0079】
本実施形態においては、誘導線検出センサの構成が、中央誘導線検出センサ15、左側誘導線検出センサ14、及び右側誘導線検出センサ16の3つの誘導線検出センサによって検出される電磁誘導線Eからのずれの検出基準点が、中央誘導線検出センサ15の位置である構成であり、前輪が駆動輪、後輪が操舵輪で、ピボットPvが駆動輪の車軸の中心に位置している車両であったが、このような車両に限定されるものでなく、ピボット(制御点)Pvが一意に決まる車両については、駆動方式(2輪駆動、3輪駆動、4輪駆動、等)や操舵方式(前輪操舵、後輪操舵)に依らず、複数の誘導線検出センサによって検出される電磁誘導線Eからのずれの検出基準点が、tv[m]以上かつ
以下を満たす、ピボットPvから水平方向の距離l[m]だけ前方側に離れた位置に配置されているのであれば、任意の適切な誘導線検出センサの構成や車両とすることができる。
【0080】
本実施形態によれば、芝刈り機1が電磁誘導線から逸脱しないような制御を可能とすることができる。
【0081】
上記実施形態においては、ずれ許容幅を中央誘導線検出センサの最大検出距離と設定したが、ずれ許容幅は、中央誘導線検出センサの最大検出距離でなくともよく、任意の適切な幅とすることができる。
【0082】
操舵制御システムの一部機能は、別体のサーバ、基地局、タブレット型のコンピュータ等の、走行制御装置とは別体のものとして構成してもよい。
【0083】
<自動走行システム>
次に、本発明の一実施形態に係る自動走行システムについて説明する。
図11は、走行経路の一例を示す図である。
図12は、本発明の1つの実施形態に係る自動走行システムの全体構成を示す図である。
図13は、電磁誘導線に供給される交流電流と同期信号の一例を示す図である。
図14は、隣接する閉ループ電磁誘導線の交流電流の位相が揃っている場合とずれている場合の電界強度の比較図である。
【0084】
図11は、走行経路の一例を示す図で、カート道CPからホールHに進入し、ホールHの芝刈りを行い、ホールHから再びカート道CPに戻り、カート道CPを進み、カート道CPから車庫Wに入る走行経路TPを示す図である。
図12は、切り換えポイントSWP1付近から切り換えポイントSWP2付近までを拡大した、本発明の1つの実施形態に係る自動走行システムの全体構成を示す図である。
【0085】
自動走行システム5は、第1の閉ループ電磁誘導線CL1と第2の閉ループ電磁誘導線CL2、第1の閉ループ電磁誘導線CL1、第2の閉ループ電磁誘導線CL2にそれぞれ対応する第1の電源装置51、第2の電源装置52を含む。第1の閉ループ電磁誘導線CL1と第2の閉ループ電磁誘導線CL2は隣接して配置されている。第1の閉ループ電磁誘導線CL1、第2の閉ループ電磁誘導線CL2には、対応する第1の電源装置51、第2の電源装置52がそれぞれ接続されている。
【0086】
第1の電源装置51は、第1の交流電流生成部511と同期信号生成部513を備える。また、第2の電源装置52は、第2の交流電流生成部521を備える。第1の交流電流生成部511と第2の交流電流生成部521は、同じ周波数の低周波の交流電流を生成する。本実施形態においては、例えば、
図13に示されるような1.5kHzの矩形波交流電流を生成するが、これに限定されるものではなく、生成する交流電流の周波数は、他の任意の適切な低周波の周波数とすることができ、また、生成する交流電流の形状は、他の任意の適切な形状の交流電流とすることができる。
【0087】
同期信号生成部513は、所定のタイミングで同期信号を生成する。同期信号生成部513で生成された同期信号は、第2の交流電流生成部521に供給され、第2の交流電流生成部521は、この同期信号に基づいて、所定のタイミングで、第1の交流電流生成部511によって生成される矩形波交流電流と同期した矩形波交流電流を生成する。このように、所定のタイミングで、第1の交流電流生成部511によって生成される矩形波交流電流と第2の交流電流生成部521によって生成される矩形波交流電流の同期が取られる。
【0088】
切り換えポイントSWP1から切り換えポイントSWP2までの走行経路TPは電磁誘導線上にある。具体的には、第1の閉ループ電磁誘導線CL1の第1の部分CL1Pと第2の閉ループ電磁誘導線CL2の第1の部分CL2Pが、走行経路TPを形成するように、互いに隣接して配置されている。第1の閉ループ電磁誘導線CL1の第1の部分CL1Pの両端と第2の閉ループ電磁誘導線CL2の第1の部分CL2Pの両端において、第1の閉ループ電磁誘導線CL1と第2の閉ループ電磁誘導線CL2は直角に折り曲げられ、折り曲げられた部分はカート道CP上で直線状となっている。このような構成とすることによって、第1の閉ループ電磁誘導線CL1と第2の閉ループ電磁誘導線CL2を接近して隣接させ、走行経路TP上の電磁誘導線間の間隔を小さくすることができ、また、芝刈り機1が、走行経路TPの方向ではなく、第1の閉ループ電磁誘導線CL1や第2の閉ループ電磁誘導線CL2の折れ曲がった方向に誘導されることを防止することができる。
【0089】
このように、第1の閉ループ電磁誘導線CL1と第2の閉ループ電磁誘導線CL2が接近して隣接するようにされているので、第1の交流電流生成部511により生成される交流電流と第2の交流電流生成部521により生成される交流電流の位相がずれると、
図14の右側の図に示されるように、隣接部付近で互いの、交流電流から発生する交番磁界が一部打ち消し合い、磁界強度が低下し、各誘導線検出センサが磁界を検出することができなくなり、走行を継続することが困難となる。したがって、第1の交流電流生成部511により生成される交流電流と第2の交流電流生成部521により生成される交流電流が高精度で位相のずれがほとんどないような場合でないときは、上述のように、第1の交流電流生成部511により生成される交流電流と第2の交流電流生成部521により生成される交流電流を同期信号によって、同期させることにより、隣接部付近での磁界強度が低下することを抑制して(
図14の左側の図参照)、走行を継続すること可能とすることができる。
【0090】
上記実施形態においては、走行経路TPを構成する、隣接する閉ループ電磁誘導線が2つであったが、走行経路TPを構成する、隣接する閉ループ電磁誘導線の数は2つに限定されるものではなく、任意の他の適切な数とすることができる。
【0091】
切り換えポイントSWP1、SWP2は、GPS衛星からの測位信号が良好に受信可能な位置に設定されており、上述の自動走行システム5において、芝刈り機1は、自動走行モードを測位モードとして、設定された走行経路に沿って自動走行し、切り替えポイントSWP1に達すると、測位モードから電磁誘導モードに自動走行モードを切り換えて、電磁誘導による自動走行を行う。そして、切り替えポイントSWP2に達すると、自動走行モードを電磁誘導モードから測位モードに切り換えて、測位(GPS)による自動走行を行い車庫Wに向かう。自動走行モードの切り換えは、記憶部108又はリムーバブル記録媒体インタフェース部109に装着されたリムーバブル記録媒体40に記録された走行経路及び動作データに基づいて制御情報生成部107によって生成される走行制御信号によって行われる。
【0092】
上記実施形態によれば、従来の長距離の電磁誘導線に電力を供給可能な容量の大きい電源が必要でないので、本実施形態の閉ループ電磁誘導線を数珠繋ぎすることによって長距離にわたって電磁誘導線による自動走行が可能となる。
【0093】
GPSによる測位信号に基づいて自動走行を行う場合、GPS衛星からの測位信号が良好に受信できる必要がある。しかしながら、例えば、ゴルフコースにおいては、樹木が多く上空の見晴らしが悪い箇所も多い。芝刈り機が芝刈り作業を行うフェアウェイにおいては上空の視界を遮る樹木はごく一部に限られるものの、ホールとホールの間のカード道については、山間部を開拓した場所が多いため、作業ホール間のカート道は前述の樹木に加え、道幅が狭く高低差も大きい。芝刈り機に搭載されたジャイロセンサや車速センサ等から自己位置を推定し走行することもできるが、上述のような区間では路面の起伏や路面状況の変化に対応しきれず、自己位置を正確に求めることができないため、走行経路を自動走行することが難しい。本実施形態によれば、そのような測位モードでの自動走行が難しい区間を電磁誘導モードでの自動走行に切り換えて自動走行を行うことによって、GPS信号等の測位信号を受信できない、又は測位信号の受信強度が弱い経路が走行経路に含まれていても、全区間にわたって自動走行を可能とすることができる。
【0094】
なお、上記の実施形態の方法を実現するコンピュータプログラムを記録した記録媒体を、制御装置10に対して供給してもよい。この場合、制御装置10のコンピュータが、記録媒体に記録されたコンピュータプログラムを読み取り、実行することによって、本発明の目的を達成することができる。したがって、記録媒体から読み取られたコンピュータプログラム自体が本発明の方法を実現するため、そのコンピュータプログラムが本発明を構成する。
【0095】
上記の実施形態においては、本発明を芝刈り機に適用した例を説明したが、本発明は、散水機、散布機、施肥機、種まき機、土壌状態測定機、収穫機、耕耘機、耕土機、整地機をはじめとする農業機械、清掃機械、カート等の他の任意の適切な車両に適用可能である。
【0096】
上記の実施形態においては、測位モードで用いる測位信号はGPSデータであったが、測位モードで用いる測位信号はこれに限定されるものではなく、車両の種類に応じて、GPSデータ、無線LANのアクセスポイントから発信されるビーコン信号、BLEビーコン信号、インパルス方式UWB(IR-UWB)信号、IMES(Indoor Messaging System)信号等他の適切な任意の測位信号、又はそれらの全部又は一部の組み合わせとすることができる。
【0097】
以上、本発明について、例示のためにいくつかの実施形態に関して説明してきたが、本発明はこれに限定されるものでなく、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、形態及び詳細について、様々な変形及び修正を行うことができることは、当業者に明らかであろう。
【符号の説明】
【0098】
1・・・芝刈り機
10・・・本体
11・・・制御装置
12・・・車速センサ
13・・・方位角速度センサ
14・・・左側誘導線検出センサ
15・・・中央誘導線検出センサ
16・・・右側誘導線検出センサ
17・・・駆動制御部
18・・・GPSアンテナ
19・・・通信アンテナ
20・・・刈り刃(前方)
21・・・刈り刃(後方)
22・・・駆動輪
23・・・操舵輪
24・・・操作入力部
25・・・表示部
26・・・音声出力部
27・・・ステー
101・・・GPS受信部
102・・・送受信部
105・・・車両情報受信部
106・・・駆動指令部
107・・・制御情報生成部
108・・・記憶部
109・・・リムーバブル記録媒体インタフェース部
112・・・主制御部
3・・・基地局
31・・・GPS受信装置
32・・・送受信装置
35・・・GPSアンテナ
36・・・通信アンテナ
40・・・リムーバブル記録媒体
5・・・自動走行システム
51・・・第1の電源装置
511・・・第1の交流電流生成部
513・・・同期信号生成部
52・・・第2の電源装置
521・・・第2の交流電流生成部
60・・・操舵制御システム
Pv・・・ピボット
R・・・最小旋回半径
C・・・芝刈り機の中心線
D・・・最大検出距離、ずれ許容幅
E・・・電磁誘導線
CP・・・カート道
H・・・ホール
W・・・車庫
TP・・・走行経路
SWP1、SWP2・・・切り換えポイント
CL1・・・第1の閉ループ電磁誘導線
CL1P・・・第1の閉ループ電磁誘導線CL1の第1の部分
CL2・・・第2の閉ループ電磁誘導線
CL2P・・・第2の閉ループ電磁誘導線CL1の第1の部分