(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】抵抗器およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01C 17/24 20060101AFI20240412BHJP
H01C 3/00 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
H01C17/24
H01C3/00 Z
(21)【出願番号】P 2020566114
(86)(22)【出願日】2019-11-06
(86)【国際出願番号】 JP2019043527
(87)【国際公開番号】W WO2020148972
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2019004889
(32)【優先日】2019-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】坂口 優
【審査官】清水 稔
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-162720(JP,A)
【文献】特開昭61-184803(JP,A)
【文献】米国特許第06148502(US,A)
【文献】国際公開第1999/018584(WO,A1)
【文献】特開2002-050501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 17/24
H01C 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と、下面と、前記上面と前記下面とに繋がる第1の側面と、前記第1の側面の反対側で前記上面と前記下面とに繋がる第2の側面とを有する抵抗体を準備するステップと、前記抵抗体の前記第1の側面から前記抵抗体に第1の先端部まで第1のトリミング溝を形成するステップと、前記抵抗体の前記第2の側面から前記抵抗体に前記第1の先端部
と抵抗体の短手方向から見て略同じ箇所に位置する第2の先端部まで第2のトリミング溝を形成するステップと、を含み、
前記第1のトリミング溝と前記第2のトリミング溝とは略一直線上に位置するとともに、前記第1のトリミング溝の長さは前記第2のトリミング溝の長さより大きく、前記第1のトリミング溝の幅は前記第2のトリミング溝の幅より広い、抵抗器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、各種電子機器に使用される抵抗器およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図3と
図4はそれぞれ従来の抵抗器500の上面図と断面図である。抵抗器500は、板状の金属で構成された抵抗体1と、抵抗体1の下面の両端部に形成された一対の電極2と、抵抗体1の上面と一対の電極2間の領域の抵抗体1の下面とを被覆する保護膜4を備える。抵抗値を調整するために2つのトリミング溝3a、3bが抵抗体1に形成されている。
図3では保護膜4を省いている。
【0003】
また、2つのトリミング溝3a、3bは、抵抗体1の互いに対向する側面1a、1bにそれぞれ形成されている。トリミング溝3a、3bの先端部503a、503bが対向していない、これにより、電流が蛇行しながら抵抗体1に流れる。
【0004】
抵抗器500に類似の従来の抵抗器は、例えば、特許文献1にお開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
抵抗器は、互いに反対側の第1と第2の側面とを有する抵抗体と、抵抗体の両端部に接続された一対の電極とを備える。抵抗体には、第1の側面から第1の先端部まで延びる第1のトリミング溝と、第2の側面から第1の先端部に対向する第2の先端部まで延びる第2のトリミング溝とが形成されている。第1のトリミング溝の長さは第2のトリミング溝の長さより大きい。
【0007】
この抵抗器は、抵抗値の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は実施の形態における抵抗器の主要部の上面図である。
【
図2】
図2は
図1に示す抵抗器の線II-IIにおける断面図である。
【
図3】
図3は従来の抵抗器の主要部の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は実施の形態における抵抗器100の上面図である。
図2は
図1に示す抵抗器100の線II-IIにおける断面図である。
【0010】
抵抗器100は、金属で構成された抵抗体11と、抵抗体11の下面11dの両端部11p、11qにそれぞれ接続された一対の電極12a、12bと、抵抗体11を被覆する保護膜15とを備えている。なお、
図1では保護膜15を省略している。電極12a、12bは、抵抗体11の幅より広い幅を有する。抵抗体11にはトリミング溝13、14が形成されている。保護膜15は、抵抗体11の上面11cと、一対の電極12a、12bの間での抵抗体11の下面11dとを被覆する。抵抗体11は、上面11cと、下面11dと、上面11cと下面11dとに繋がる側面11aと、側面11aの反対側で上面11cと下面11dとに繋がる側面11bと、上面11cと下面11dとに繋がる側面11eと、側面11eの反対側で上面11cと下面11dとに繋がる側面11fとを有する板状を有する。
【0011】
トリミング溝13、14は抵抗体11の側面11a、11bにそれぞれ形成されている。トリミング溝13、14の先端部13a、14aは互いに対向している。
【0012】
抵抗体11は、ニクロム、銅ニッケル、マンガニン等からなる金属板で構成されている。また、抵抗体11は上面視にて矩形状を有する。
【0013】
抵抗体11には抵抗値を調整するために、トリミング溝13、14は抵抗体11を貫通するようにレーザ照射や打ち抜きによって形成されている。
【0014】
一対の電極12a、12bは、抵抗体11とは別体の導電体で形成され、抵抗体11より導電性の高いCu等の金属で構成されている。さらに、一対の電極12a、12bは抵抗体11の長手方向DXに配列された両端部11p、11qにおいて下面11dに、溶接、クラッド、印刷等の方法で接続されている。電流は、電極12a、12b間で抵抗体11を長手方向DXに流れる。抵抗体11の側面11a、11bは方向DYで互いに反対側に位置する。
【0015】
また、長手方向DXに直角に交差する方向DYにおいて一対の電極12a、12bの長さは抵抗体11の長さより大きく、上面視で一対の電極12a、12bの上面の一部は、方向DYに突出するように抵抗体11から露出している。
【0016】
一対の電極12a、12bには電気めっきまたは、ディップにてすずめっき層が施されており、これにより、抵抗器100は実装用基板に実装される。
【0017】
保護膜15は、エポキシ樹脂またはシリコン等で構成され、抵抗体11の上面11cと、一対の電極12a、12b間での抵抗体11の下面11dとを被覆する。保護膜15は、抵抗体11の側面11a、11bをさらに被覆してもよい。
【0018】
トリミング溝13は抵抗体11の側面11aに形成され、トリミング溝14は抵抗体11の側面11bに形成される。トリミング溝13、14は、抵抗体11の長手方向DXにおける中心部に配置される。
【0019】
トリミング溝13の先端部13aと、トリミング溝14の先端部14aとは方向DYで互いに対向している。すなわち、トリミング溝13、14の先端部13a、14bは方向DYから見て同じ箇所に位置している。
【0020】
トリミング溝13は側面11aから先端部13aまで方向DYに沿った方向DY1に延びる。トリミング溝14は、抵抗体11の側面11bから先端部14aまで方向DY1の反対の方向DY2に延びる。トリミング溝13の方向DY1(DY)の長さはトリミング溝14の方向DY2(DY)の長さより大きい。
【0021】
トリミング溝13の先端部13aとトリミング溝14の先端部14aとはトリミング溝13が延びる方向DY1で互いに対向する。トリミング溝13の先端部13aとトリミング溝14の先端部14aとはトリミング溝14が延びる方向DY2で互いに対向する。トリミング溝13とトリミング溝14とは方向DY(DY1、DY2)に延びる一直線LXに沿って延びる。
【0022】
トリミング溝13、14の方向DYでの長さL13、L14は、ともに抵抗体11の長手方向DXと直交する方向DYにおける長さの半分以下である。さらに、トリミング溝13の方向DY1(DY)での長さL13はトリミング溝14の方向DY2(DY)での長さL14より大きい、トリミング溝13の長手方向DXでの幅W13はトリミング溝14の長手方向DXでの幅W14より広くなっている。
【0023】
トリミング溝13、14は以下の方法で形成できる。まず一対の電極12a、12b間の抵抗体11の抵抗値を測定する。その後、所定の関係式によりトリミング溝13の長さL13を決定してトリミング溝13を形成して抵抗値の粗調整をする(抵抗値粗調整工程)。その際、幅W13を所定の値に固定しておいて、長さL13は所望の抵抗値より少し大きい抵抗値が得られるように関係式で決定する。その後、抵抗値を測定することとトリミング溝14を形成して長さL14を少しずつ大きくすることとを交互に繰り返して抵抗値を微調整する(抵抗値微調整工程)。関係式は、例えば、幅W13を上記所定の値に固定しておいて、抵抗器100の製造前に、抵抗器100のサンプルで抵抗値とトリミング溝13の長さL13とを測定して導き出す。関係式はシミュレーションによっても導き出すことができる。
【0024】
ただし、抵抗値粗調整工程と抵抗値微調整工程とは、ほぼ同時に実施しても良く、また、抵抗値微調整工程の後、抵抗値粗調整工程を実施しても良い。
【0025】
抵抗器100が実装された実装用基板は抵抗器100の下方に位置する。
【0026】
実施の形態における抵抗器100において、トリミング溝13の長さをトリミング溝14の長さより大きくしているので、実装用基板に抵抗器100が実装された状態で一対の電極12a、12bの片方からもう一方に電流が流れる際に、トリミング溝14の周囲での電流密度は、トリミング溝13の先端部13aの周囲での電流密度より低くなる。これにより、トリミング溝14を形成する時のトリミング溝の長さの変化に対する抵抗体11の抵抗値の変化量が小さくなり、抵抗値の精度を向上させることができる。
【0027】
図3と
図4に示す従来の抵抗器500は、トリミング溝3a、3bの長さが増加するのに従って、トリミング溝3a、3bの先端部503a、503bに電流がより集中して電流密度が高くなる。トリミング溝3a、3bの長さが大きくなるとトリミング溝3a、3bの長さの変化に対する抵抗値の変化量が大きくなり、これにより、抵抗値の精度が悪化する。
【0028】
実施の形態における抵抗器100では、前述のように、抵抗値の精度を向上させることができる。
【0029】
すなわち、抵抗体11においてトリミング溝13の先端部13aの周囲の電流密度は高く、トリミング溝13の長さを大きくすると抵抗値の変化量が大きくなり、抵抗値の粗調整ができる。トリミング溝14を形成する抵抗体11の側面11b付近の電流密度は、側面11bがトリミング溝13の先端部13aから離れているので、トリミング溝13の先端部13aよりは低く、トリミング溝14の長さを増加させても抵抗値の変化量が小さく、抵抗値の微調整ができる。
【0030】
また、トリミング溝14の幅をトリミング溝13の幅をより狭くしているため、トリミング溝14の位置がずれても、トリミング溝14の長さに対する抵抗値の変化量を安定させることができる。
【0031】
実施の形態において、「上面」「下面」「下方」等の方向を示す用語は、抵抗体11や電極12a、12b等の抵抗器100の構成部材の相対的な位置関係でのみ決まる相対的な方向を示し、鉛直方向等の絶対的な方向を示すものではない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本開示に係る抵抗器およびその製造方法は、抵抗値精度が悪化するのを抑制することができ、特に各種電子機器の電流値検出等に使用される高電力で低い抵抗値の抵抗器等に有用である。
【符号の説明】
【0033】
11 抵抗体
12a,12b 電極
13 トリミング溝(第1のトリミング溝)
14 トリミング溝(第2のトリミング溝)