(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】吸収式冷凍機のファンカバー構造
(51)【国際特許分類】
F25B 15/00 20060101AFI20240412BHJP
F25B 35/00 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
F25B15/00 Z
F25B35/00
(21)【出願番号】P 2019188780
(22)【出願日】2019-10-15
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390029207
【氏名又は名称】オリンピア工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】石崎 修司
(72)【発明者】
【氏名】萩原 章雄
(72)【発明者】
【氏名】上戸 徹
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-125936(JP,U)
【文献】特開2011-184946(JP,A)
【文献】特開平08-313100(JP,A)
【文献】特開2000-055507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 15/00
F25B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンを収容するケーシングと、前記ケーシングの内外を連通させる開口を閉塞する取付板と、前記取付板に支持されて前記ケーシング内に突出するベルマウスと、前記ベルマウスの吸気口を外方から覆うファンカバーと、を備える吸収式冷凍機のファンカバー構造において、
前記ファンカバーは、前記取付板に対して脱着可能に形成され、
前記ファンカバーは、吸収式冷凍機の外方から前記ファンカバーが固定される固定位置に向かう装着方向に、前記取付板の外表面に沿って移動することで装着され
、
前記取付板は、前記ファンカバーに当接して前記ファンカバーを前記固定位置に位置決めする位置決め部を備える、
ことを特徴とする吸収式冷凍機のファンカバー構造。
【請求項2】
前記ファンの軸方向において、前記ファンカバーが前記外表面から突出する量よりも、前記外表面から前記ベルマウスが突出する量の方が小さい、ことを特徴とする請求項1に記載の吸収式冷凍機のファンカバー構造。
【請求項3】
前記位置決め部は、少なくとも前記装着方向において前記ファンカバーの奥側の位置決めをする奥側の位置決め部である、
ことを特徴とする請求項
1又は2に記載の吸収式冷凍機のファンカバー構造。
【請求項4】
前記ファンカバーは、前記取付板に面して開放された開放端を有し、
前記開放端には、前記開放端の外方に延在する延在部が設けられ、
前記奥側の位置決め部は、前記取付板との間に前記延在部が差し込まれる隙間を形成し、前記隙間に前記延在部が差し込まれて前記ファンカバーを固定する、
ことを特徴とする請求項
3に記載の吸収式冷凍機のファンカバー構造。
【請求項5】
前記開放端は四角形状に形成され、
前記延在部は、四辺に対応する前延在部と、奥延在部と、上延在部と、下延在部と、から構成され、
前記奥延在部は前記奥側の位置決め部で固定され、前記前延在部、前記上延在部、及び、前記下延在部は、締結部材で前記取付板に固定される、
ことを特徴とする請求項
4に記載の吸収式冷凍機のファンカバー構造。
【請求項6】
前記位置決め部は、少なくとも前記装着方向に直交する直交方向において前記ファンカバーの位置決めをする直交方向の位置決め部である、
ことを特徴とする請求項
1乃至
5のいずれか一項に記載の吸収式冷凍機のファンカバー構造。
【請求項7】
前記直交方向の位置決め部は、前記装着方向に沿って配置され、前記ファンカバーを前記装着方向に移動させる際に前記ファンカバーの前記直交方向を、案内、支持する、
ことを特徴とする請求項
6に記載の吸収式冷凍機のファンカバー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収式冷凍機のファンカバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高温再生器、低温再生器、凝縮器、蒸発器、及び、吸収器を備え、これらを配管接続して吸収液及び冷媒の循環経路をそれぞれ形成した吸収式冷凍機が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の吸収式冷凍機では、吸収液を加熱するためのバーナが設けられているが、このバーナには燃焼空気を送風するファン装置が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、ファン装置は定期的に部品点検や部品交換などのメンテナンスをする必要があるが、メンテンナンスをする場合には、ファンカバーを取り外して、ファンが収容されたケーシングの内部を外部に開放させる必要がある。しかしながら、吸収式冷凍機では装置全体のコンパクト化を図った結果、各機器の配置が密集している。このため、ファンカバーを脱着する際のスペースが制限されており、メンテナンスの作業性が悪いという課題がある。特に、従来のファンカバーでは、ファンカバーに対して、取付板、および、ベルマウスが一体に設けられており、ベルマウスの部分をケーシングから引き抜くためには、ファンカバー全体をケーシングから大きく引き抜く必要があって、ファンカバーを脱着し難いという課題があった。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、メンテナンスの作業性が良い吸収式冷凍機のファンカバー構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明の吸収式冷凍機のファンカバー構造は、ファンを収容するケーシングと、前記ケーシングの内外を連通させる開口を閉塞する取付板と、前記取付板に支持されて前記ケーシング内に突出するベルマウスと、前記ベルマウスの吸気口を外方から覆うファンカバーと、を備える吸収式冷凍機のファンカバー構造において、前記ファンカバーは、前記取付板に対して脱着可能に形成され、前記ファンカバーは、吸収式冷凍機の外方から前記ファンカバーが固定される固定位置に向かう装着方向に、前記取付板の外表面に沿って移動することで装着され、前記取付板は、前記ファンカバーに当接して前記ファンカバーを前記固定位置に位置決めする位置決め部を備える、ことを特徴とする。
【0007】
これによれば、ファンカバーを脱着する際のスペースを小さくできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の吸収式冷凍機のファンカバー構造は、ファンカバーと、ベルマウスが設けられた取付板と、を別体にできるため、メンテナンス時に脱着させる部品がコンパクトになり、脱着する際のスペースを小さくできる。また、ファンカバーを取付板の外表面に沿って移動させて固定位置に装着でき、ファンカバーを引き抜く場合に比べて、脱着する際のスペースを小さくできる。脱着する際のスペースを小さくできるため、メンテナンス時に吸収式冷凍機の各機器間のスペースの制約を受け難くなり、メンテナンスの作業性を良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態における吸収式冷凍機を示す正面図
【
図7】取付板にファンカバーが装着される際の説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の発明は、ファンを収容するケーシングと、前記ケーシングの内外を連通させる開口を閉塞する取付板と、前記取付板に支持されて前記ケーシング内に突出するベルマウスと、前記ベルマウスの吸気口を外方から覆うファンカバーと、を備える吸収式冷凍機のファンカバー構造において、前記ファンカバーは、前記取付板に対して脱着可能に形成され、前記ファンカバーは、吸収式冷凍機の外方から前記ファンカバーが固定される固定位置に向かう装着方向に、前記取付板の外表面に沿って移動することで装着される。
これによれば、ファンカバーと、ベルマウスが設けられた取付板と、を別体にできるため、メンテナンス時に脱着させる部品がコンパクトになり、脱着する際のスペースを小さくできる。また、ファンカバーを取付板の外表面に沿って移動させて固定位置に装着でき、ファンカバーを引き抜く場合に比べて、脱着する際のスペースを小さくできる。脱着する際のスペースを小さくできるため、メンテナンス時に吸収式冷凍機の各機器間のスペースの制約を受け難くなり、メンテナンスの作業性を良くすることができる。
【0011】
第2の発明は、前記ファンの軸方向において、前記ファンカバーが前記外表面から突出する量よりも、前記外表面から前記ベルマウスが突出する量の方が小さい。
これによれば、ファンカバーの配置スペースを利用して、ベルマウスが設けられた取付板をケーシングから引き抜くことができる。
【0012】
第3の発明は、前記取付板は、前記ファンカバーに当接して前記ファンカバーを前記固定位置に位置決めする位置決め部を備える。これによれば、ファンカバーを固定位置に位置決めでき、メンテナンス時の作業を容易にできる。
【0013】
第4の発明は、前記位置決め部は、少なくとも前記装着方向において前記ファンカバーの奥側の位置決めをする奥側の位置決め部である。
これによれば、ファンカバーが固定位置から装着方向の奥側に位置がずれることを防止できる。
【0014】
第5の発明は、前記ファンカバーは、前記取付板に面して開放された開放端を有し、前記開放端には、前記開放端の外方に延在する延在部が設けられ、前記奥側の位置決め部は、前記取付板との間に前記延在部が差し込まれる隙間を形成し、前記隙間に前記延在部が差し込まれて前記ファンカバーを固定する。
これによれば、作業者が作業し難い奥側では、延在部の差し込みという簡易な操作でファンカバーを取付板に固定できる。
【0015】
第6の発明は、前記開放端は四角形状に形成され、前記延在部は、四辺に対応する前延在部と、奥延在部と、上延在部と、下延在部と、から構成され、前記奥延在部は前記奥側の位置決め部で固定され、前記前延在部、前記上延在部、及び、前記下延在部は、締結部材で前記取付板に固定される。
これによれば、作業者が作業し難い奥側では差し込みにより固定し、奥側以外では、締結部材を用いて締結することで、作業性を良くしつつ、ファンカバーの固定性を確保できる。
【0016】
第7の発明は、前記位置決め部は、少なくとも前記装着方向に直交する直交方向において前記ファンカバーの位置決めをする直交方向の位置決め部である。
これによれば、ファンカバーが固定位置から直交方向に位置がずれることを防止できる。
【0017】
第8の発明は、前記直交方向の位置決め部は、前記装着方向に沿って配置され、前記ファンカバーを前記装着方向に移動させる際に前記ファンカバーの前記直交方向を、案内、支持する。
これによれば、ファンカバーを装着方向に移動させる際に、ファンカバーを案内できて、ファンカバーを固定位置に移動させ易くできる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
図1は、本発明の実施の形態における吸収式冷凍機100を示す正面図である。
図2は、吸収式冷凍機100の高温再生器5の斜視図である。
図3は、高温再生器5のファンカバー構造の側面図である。
以下の説明において、前後、左右、および、上下、という方向の記載は
図1を基準にして用いる。
【0019】
吸収式冷凍機100は、冷媒に水を、吸収液に臭化リチウム(LiBr)水溶液を使用した吸収式冷凍機である。
吸収式冷凍機100は、蒸発器1と、この蒸発器1に並設された吸収器2と、これら蒸発器1及び吸収器2を収納した蒸発器吸収器胴3と、バーナ4を備えた高温再生器5と、低温再生器6と、この低温再生器6に並設された凝縮器7と、これら低温再生器6及び凝縮器7を収納した低温再生器凝縮器胴8と、を備え、これらの各機器が吸収液管及び冷媒管などを介して配管接続されている。蒸発器吸収器胴3および低温再生器凝縮器胴8には、右方に延びる水管9が配置されている。
【0020】
蒸発器吸収器胴3および低温再生器凝縮器胴8の左方には、高温再生器5が配置されている。高温再生器5の前部には、バーナ4が配置される。バーナ4の上方には、排煙部11が配置されている。バーナ4の下方には、バーナ4に燃料を供給するポンプ(不図示)を動作させるポンプモーター12が配置されている。ポンプモーター12の前方には、バーナ4に燃焼空気を送風するファン装置20が配置されている。
【0021】
バーナ4の右方には、上下方向に延びる吸収液管13が配置されている。吸収液管13の下端には、吸収液合流容器14が接続されている。吸収液合流容器14は、ファン装置20に対向する位置に設けられている。吸収液合流容器14はファン装置20に対してスペース15を空けて配置されている。吸収液合流容器14の前面には、右方に延びる吸収液管16が接続されている。
【0022】
ファン装置20は、外観箱型のケーシング21を備える。ケーシング21の内部には、ファン(インペラー)22が収容される。ファン22は、ファン22の左方に配置されたファンモーター23の軸23Aに支持されている。軸23Aは左右方向に沿って延びる。ケーシング21の壁面には、ケーシング21の外部と連通する開口21Aが形成されている。開口21Aを通じてファン22の脱着や、ケーシング21内のメンテナンスが可能になっている。
【0023】
図4は、取付板30とファンカバー40の説明図である。
図5は、取付板30とファンカバー40の分解図である。
図6は、
図4のVI-VI線断面図である。
図7は、取付板30にファンカバー40が装着される際の説明図である。
図1~
図7を参照して、ケーシング21には、開口21Aの位置に対応して、円板状の取付板30が取り付けられる。取付板30の中央部には、開口21Aに対応して開口する吸気口31(
図7参照)が形成されている。吸気口31には、ケーシング21内に突出するベルマウス部(ベルマウス)32が接続されている。ベルマウス部32は、取付板30と一体に形成されている。ベルマウス部32は、ケーシング21内ではファン22の外周まで突出している。ベルマウス部32は、吸気口31から吸気される空気を整流する。
【0024】
取付板30の外周部には、複数の固定孔33が形成される。固定孔33は、外周部の周方向に等間隔に形成されている。本実施の形態では、吸気口31に対して前後上下に一対ずつ、計8か所に固定孔33が形成されている。固定孔33には締結部材(不図示)が挿通され、この締結部材により、取付板30がケーシング21に脱着可能に固定される。取付板30の外表面34、すなわち、ベルマウス部32の無い側の面は、平坦に形成されている。
【0025】
取付板30の外表面34には、ファンカバー40が脱着可能に固定される。ファンカバー40は、取付板30の吸気口31を外方から覆うことにより、吸気口31内に異物が進入することを防止する。
ファンカバー40は、取付板30に対向する部分が開放された外観箱型に形成される。本実施の形態のファンカバー40は、正四角形状の底壁部41と、底壁部41の前後上下端からそれぞれ取付板30に向かって延びる前壁部42、後壁部43、上壁部44、および、下壁部45を備える。奥側の後壁部43、および、下方の下壁部45には、吸入口47(
図7参照)が形成される。吸入口47を通じてファンカバー40の内部に空気が取り込まれる。一方で、前側の前壁部42および上方の上壁部44には、吸入口は形成されていない。これにより、吸収式冷凍機100の前方や上方からスペース15内に異物が進入しても、異物がファンカバー40の内部に進入し難くなっている。
【0026】
ファンカバー40の開放端は、四角形状に形成されている。ファンカバー40の開放端には、前壁部42、後壁部43、上壁部44、および、下壁部45の外方に延在して形成されたフランジ状の前延在部42A、後延在部(奥延在部)43A、上延在部44A、および、下延在部45Aが設けられている。前延在部42A、後延在部43A、上延在部44A、および、下延在部45Aにより、ファンカバー40の開放端には、開放端の外周側に突出するフランジ形状が形成される。
【0027】
前延在部42A、上延在部44A、および、下延在部45Aのそれぞれには、長手方向に一対の固定孔46が形成されている。固定孔46には、締結部材48(
図5参照)が挿通され、この締結部材48は、取付板30の締結孔35(
図4、
図5参照)に締結される。
【0028】
取付板30には、ファンカバー40を位置決めする差込固定部50が設けられる。差込固定部50は吸気口31(
図7参照)の後方に配置される。差込固定部50は、後延在部43Aに対応する厚みの基部51と、基部51に支持されて前方に延びる板状の押さえ部52と、を備える。基部51および押さえ部52には、上下一対の固定孔53が形成されている。固定孔53は、前後方向に延びる長孔である。固定孔53には締結部材55(
図7参照)が挿通されて、この締結部材55により、差込固定部50は取付板30に固定される。
【0029】
このとき、基部51は、ファンカバー40の後延在部43Aが当接した場合に、ファンカバー40を固定位置に位置決めする位置に固定される。
また、押さえ部52は、基部51よりも前方に延出した状態で固定される。押さえ部52は、取付板30の外表面34との間に後延在部43Aが進入する隙間54を形成する。
後延在部43Aが隙間54に差し込まれて、基部51に当接することにより、ファンカバー40の前後方向の位置決めが行われる。また、後延在部43Aが押さえ部52により押さえられる。これにより、ファンカバー40が外表面34から離間する方向に移動することが規制され、ファンカバー40の左右方向の位置決めが行われる。なお、押さえ部52は、ファンカバー40が外表面34から離間して左右方向に脱落することを規制できる程度に位置決めできればよく、後延在部43Aが移動可能な遊びが生じた状態で後延在部43Aを左右方向から押さえる構成でもよいし、後延在部43Aに当接して後延在部43Aを取付板30に左右方向から押さえ付ける構成でもよい。
本実施の形態では、差込固定部50は、奥側の位置決め部に対応する。
【0030】
取付板30の吸気口31(
図7参照)の下方にはガイド部材60が配置される。ガイド部材60は、前後方向に延びる板材であり、断面形状がL字状に形成されている。ガイド部材60は、ファンカバー40に固定される基部61と、基部61の上端から右方に延在するガイド部62と、を備える。ガイド部62は、ファンカバー40の下延在部45Aを案内可能に支持する。
【0031】
基部61には、前後一対の固定孔63が形成されている。固定孔63は、上下方向に延びる長孔である。固定孔63には締結部材64(
図7参照)が挿通されて、この締結部材64により、基部61が取付板30に固定される。ガイド部材60は、ファンカバー40を固定位置に向けてガイドする位置に設置される。すなわち、ガイド部材60は、ガイド部62にガイドされたファンカバー40が、差込固定部50の基部51に当接した場合に、ファンカバー40の固定孔46が取付板30の締結孔35に一致して連通する位置に取り付けられる。
【0032】
ここで、
図1に示すように、左右方向において、ファンカバー40が、取付板30の外表面34からスペース15に突出する突出量(長さ)L1は、外表面34に対するベルマウス部32の突出量(長さ)L2、すなわち、取付板30の厚みとベルマウス部32の突出量との合計の長さL2に比べて大きい。また、吸収液合流容器14は、ファン装置20との間のスペース15において、ファンカバー40の底壁部41に対して左右方向に長さL3のスペース15Aを空けて配置されている。さらに、ファンカバー40と取付板30とベルマウス部32の全体の左右方向の長さL1+L2の方が、ファンカバー40とスペース15Aとの長さL1+L3よりも大きい。
【0033】
次に、本実施の形態のファン装置20の作用を説明する。
ファン装置20では、ファンモーター23が駆動してファン22が回転すると、ファンカバー40の吸入口47、取付板30の吸気口31、ベルマウス部32を通じてケーシング21内に空気が取り込まれる。ケーシング21内に取り込まれた空気は、バーナ4に燃焼空気として送風され、バーナ4では効率良く燃焼が行われる。
【0034】
一般に、ファン装置20においては、定期的に、部品点検や部品交換などのメンテナンスをする必要があり、ケーシング21の内部を外部に開放する必要がある。
本実施の形態では、ケーシング21の内部を外部に開放する場合には、ファンカバー40と取付板30とを別々に取り外す。
【0035】
ファンカバー40は、上延在部44A、下延在部45A、および、前延在部42Aの締結部材48を外すことにより、取付板30から取り外し可能となる。すなわち、締結部材48を外した後に、ファンカバー40を前方に引き出すと、ファンカバー40は、外表面34上をガイド部材60に沿って前方に案内されて移動し、後延在部43Aが差込固定部50から引き抜かれる。これにより、ファンカバー40は、ファン装置20から取り外される。
【0036】
取付板30は、固定孔33に挿通された締結部材(不図示)を外すことにより、ケーシング21から取り外すことが可能となる。このとき、ファンカバー40が既に取り外されているため、スペース15全体を利用して、取付板30の締結部材(不図示)を外すことができ、締結部材を外し易くなっている。
【0037】
締結部材(不図示)を外した後に、取付板30を右方向(引き抜き方向)に移動させると、ベルマウス部32が、ケーシング21の開口21Aから引き抜かれる。そして、取付板30をケーシング21に沿わせて手前に移動させるなどして、取付板30が取り外される。
【0038】
ファンカバー40、および、取付板30がケーシング21から取り外されると、開口21Aを通じてケーシング21内がスペース15側に開放される。よって、作業者は、開口21Aを通じてケーシング21内のファン22を脱着させたり、ケーシング21内のメンテナンスを行うことができる。
【0039】
メンテナンスが終了してファンカバー40を取り付ける場合には、まず、取付板30がケーシング21に取り付けられる。取付板30は、締結部材(不図示)によりケーシング21に固定される。このとき、取付板30は、スペース15全体を利用して締結部材(不図示)で締結できる。
【0040】
取付板30がケーシング21に固定されると、ファンカバー40が、ケーシング21に装着可能となる。ファンカバー40は、後延在部43Aが後方になるようにして、前延在部42A、後延在部43A、上延在部44A、および、下延在部45Aを外表面34上に沿わせて、ガイド部材60上にセットされる。このとき、本実施の形態では、ガイド部材60が吸気口31の下方にのみ配置されているため、ファンカバー40をガイド部材60に対して上方から下方に移動させることで、容易にガイド部材60にファンカバー40をセットでき、上下方向の位置合わせが容易にできる。
【0041】
ファンカバー40を後方に押すと、下延在部45Aがガイド部材60に位置決めされながら案内されて移動し、ファンカバー40の後延在部43Aが、差込固定部50の隙間54に差し込まれる。そして、後延在部43Aが基部51に当接すると、ファンカバー40の前後方向の位置が位置決めされ、ファンカバー40が固定位置に位置決めされる。固定位置では、ファンカバー40の固定孔46が取付板30の締結孔35に連通するため、締結部材48で容易に締結可能である。本実施の形態では、後方向が装着方向に対応する。
【0042】
以上のように、本実施の形態のファン装置20では、ファンカバー40と、ベルマウス部32を備えた取付板30とが別体に構成されているため、ファンカバー40と、取付板30とを、別々に取り出すことができる。すなわち、一つ一つの部材が従来のファンカバーに比べてコンパクトになり、ファン装置20と吸収液合流容器14との間のスペース15に余裕を持たせた状態で脱着でき、ファンカバー40と、取付板30とを脱着し易くなっている。また、ファンカバー40を取付板30の外表面34に沿わせて装着するため、引き抜く場合に比べて、ファンカバー40を脱着する際のスペースを小さくできる。
【0043】
また、ファンカバー40を取付板30に固定する際に、後延在部43Aは差込固定部50に差し込まれて固定され、それ以外の上延在部44A、下延在部45A、前延在部42Aは締結部材48により取付板30に固定される。ファンカバー40の後側(奥側)はファンカバー40によって隠れるため、前方からは見え難く、また、作業者の手が届き難い。本実施の形態では、後側は差込により固定し、作業者の作業し易い部位は、締結部材48で締結することにより、作業性と固定性の両立が図られている。
【0044】
特に、ベルマウス部32の突出量L2が、ファンカバー40の突出量L1に比べて小さいため、ファンカバー40の設置スペースを利用してベルマウス部32を開口21Aから引き抜くことができる。
したがって、ファンカバーにベルマウスが一体の従来の構成では、スペース15の大きさは左右方向に長さL1+L2以上必要であったが、本実施の形態では、スペース15の大きさは、それよりも小さい長さL1+L3となっている。よって、本実施の形態のファンカバー40と取付板30によれば、吸収式冷凍機100の設置面積を小さくすることも可能である。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態のファン装置20は、ファン22を収容するケーシング21と、ケーシング21の内外を連通させる開口21Aを閉塞する取付板30と、取付板30に支持されてケーシング21内に突出するベルマウス32と、ベルマウス32の吸気口31を外方から覆うファンカバー40と、を備える。このファン装置20において、ファンカバー40は、取付板30に対して脱着可能に形成され、ファンカバー40は、吸収式冷凍機100の外方からファンカバー40が固定される固定位置に向かう装着方向に、取付板30の外表面34に沿って移動することで装着される。
【0046】
これによれば、ファンカバー40と、ベルマウス32が設けられた取付板30と、を別体にできるため、メンテナンス時に脱着させる部品がコンパクトになり、脱着する際のスペースを小さくできる。また、ファンカバー40を取付板30の外表面34に沿って移動させて固定位置に装着でき、ファンカバー40を引き抜く場合に比べて、脱着する際のスペースを小さくできる。脱着する際のスペースを小さくできるため、メンテナンス時に吸収式冷凍機100の各機器間のスペース15の制約を受け難くなり、メンテナンスの作業性を良くすることができる。
【0047】
本実施の形態では、ファン22の軸方向において、ファンカバー40が外表面34から突出する量L1よりも、外表面34からベルマウス32が突出する量L2の方が小さい。
これによれば、ファンカバー40の配置スペースを利用して、ベルマウス32が設けられた取付板30をケーシング21から引き抜くことができる。
【0048】
本実施の形態では、取付板30は、ファンカバー40に当接してファンカバー40を固定位置に位置決めする差込固定部50およびガイド部材60を備える。
これによれば、ファンカバー40を固定位置に位置決めでき、メンテナンス時の作業を容易にできる。
【0049】
本実施の形態では、差込固定部50は、装着方向においてファンカバー40の奥側の位置決めをする奥側の位置決め部である。
これによれば、ファンカバー40が固定位置から装着方向の奥側に位置がずれることを防止できる。
【0050】
本実施の形態では、ファンカバー40は、取付板30に面して開放された開放端を有し、開放端には、開放端の外方に延在する延在部42A、43A、44A、45Aが設けられ、差込固定部50は、取付板30との間に後延在部43Aが差し込まれる隙間54を形成し、隙間54に後延在部43Aが差し込まれてファンカバー40を固定する。
これによれば、作業者が作業し難い奥側では、後延在部43Aの差し込みという簡易な操作でファンカバー40を取付板30に固定できる。
【0051】
本実施の形態では、開放端は四角形状に形成され、延在部42A、43A、44A、45Aは、四辺に対応する前延在部42Aと、後延在部43Aと、上延在部44Aと、下延在部45Aと、から構成され、後延在部43Aは差込固定部50で固定され、前延在部42A、上延在部44A、及び、下延在部45Aは、締結部材48で取付板30に固定される。
これによれば、作業者が作業し難い奥側では差し込みにより固定し、奥側以外では、締結部材48を用いて締結することで、作業性を良くしつつファンカバー40の固定性を確保できる。
【0052】
本実施の形態では、ガイド部材60は、装着方向に直交する上下方向においてファンカバー40の位置決めをする上下方向の位置決め部である。
これによれば、ファンカバー40が固定位置から上下方向に位置がずれることを防止できる。
【0053】
本実施の形態では、ガイド部材60は、装着方向に沿って配置され、ファンカバー40を装着方向に移動させる際にファンカバー40の下延在部45Aを、案内、支持する。
これによれば、ファンカバー40を装着方向に移動させる際に、ファンカバー40を案内でき、ファンカバー40を固定位置に移動させ易くできる。
【0054】
なお、本発明は、前記実施形態に記載のものに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更および応用が可能である。
例えば、奥側の位置決め部として差込固定部50を説明し、直交方向の位置決め部としてガイド部材60を説明した。しかし、奥側の位置決め部としては、差込固定部50に代えて、ガイド部材60のように上下方向に延びる断面形状がL字状の部材でもよい。
【0055】
奥側の位置決め部と、直交方向の位置決め部とは、分離している構成を説明したが、一体でもよく、例えば、ファンカバー40の下後部に当接して、ファンカバー40を装着方向および直交方向に位置決めする位置決め部でもよい。
直交方向の位置決め部としてのガイド部材60は、吸気口31の下側にのみ設けられる構成を説明したが、吸気口31の上方にのみ設けてもよいし、吸気口31の上下両方に設けてもよい。
【0056】
直交方向の位置決め部としてのガイド部材60は、一体の構成を説明したが、例えば、前後方向に複数設けられてもよい。同様に、奥側の位置決め部としての差込固定部50は、上下方向に複数設けられてもよい。
ファンカバー40の装着方向として前後方向に移動させる構成を説明した。しかし、ファンカバー40の装着方向は、上下方向や、上下斜め方向に移動させる構成でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように、本発明に係る吸収式冷凍機のファンカバー構造は、スペースの制約され易い吸収式冷凍機に設けられるファン装置に好適に適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
22 ファン
21 ケーシング
21A 開口
30 取付板
31 吸気口
32 ベルマウス
34 外表面
40 ファンカバー
ファンカバーが突出する量L1
ベルマウスが突出する量L2
50 差込固定部(奥側の位置決め部)
60 ガイド部材(直交方向の位置決め部)
42A 前延在部
43A 後延在部(奥延在部)
44A 上延在部
45A 下延在部
54 隙間
100 吸収式冷凍機