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特許7470908部品実装システムおよび部品実装方法ならびに部品実装装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】部品実装システムおよび部品実装方法ならびに部品実装装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20240412BHJP
   H05K 13/08 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
H05K13/04 M
H05K13/08 Q
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020158435
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2022052199
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩田 維里
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-113336(JP,A)
【文献】国際公開第2021/1995(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00 ー 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に部品を実装する部品実装システムであって、
部品を保持する実装ヘッドを有し、基板の実装点に前記部品を実装する部品実装部と、
前記実装ヘッドと一体的に移動し、前記実装ヘッドが前記基板の実装点に部品を実装する際に、前記基板の上面を撮像する撮像部と、
前記部品実装部を制御する実装制御部と、
前記基板に実装された前記部品の実装点からの位置ずれ量を検査する検査部と、
前記撮像部が撮像した一の基板の上面の画像と、前記検査部が検査した前記一の基板に実装された前記部品の前記位置ずれ量に基づき、学習データを作成する学習データ作成部と、
前記学習データに基づき、学習モデルを生成する学習部と、
生成された前記学習モデルを用いて、前記撮像部が撮像した基板の上面の画像から当該基板に部品を実装する場合の推定位置ずれ量を推定する位置ずれ量推定部と、を備え、
前記実装制御部は、推定された前記推定位置ずれ量に基づき前記部品実装部を制御して、当該基板の実装点に部品を実装させる、部品実装システム。
【請求項2】
前記検査部は、リフロー前の前記基板に実装された前記部品を検査する、請求項1に記載の部品実装システム。
【請求項3】
前記検査部は、リフロー後の前記基板に実装された前記部品を検査する、請求項1に記載の部品実装システム。
【請求項4】
基板に部品を実装する部品実装方法であって、
実装ヘッドと一体的に移動する撮像部により、前記実装ヘッドが基板の実装点に部品を実装する際に、前記基板の上面を撮像する撮像工程と、
前記基板に実装された前記部品の前記実装点からの位置ずれ量を検出する位置ずれ量検出工程と、
撮像された一の基板の上面の画像と、前記一の基板に実装された前記部品の前記位置ずれ量に基づき、学習データを作成する学習データ作成工程と、
前記学習データに基づき、学習モデルを生成する学習工程と、
生成された前記学習モデルを用いて、撮像された基板の上面の画像から当該基板に部品を実装する場合の推定位置ずれ量を推定する位置ずれ量推定工程と、
推定された前記推定位置ずれ量に基づき、当該基板の実装点に部品を実装する部品実装工程と、を含む、部品実装方法。
【請求項5】
基板に部品を実装する部品実装装置であって、
部品を保持する実装ヘッドを有し、基板の実装点に前記部品を実装する部品実装部と、
前記実装ヘッドと一体的に移動し、前記実装ヘッドが前記基板の実装点に部品を実装する際に、前記基板の上面を撮像する撮像部と、
前記部品実装部を制御する実装制御部と、
前記基板に実装された前記部品の実装点からの位置ずれ量を取得する位置ずれ量取得部と、
前記撮像部が撮像した一の基板の上面の画像と、前記位置ずれ量取得部が取得した前記一の基板に実装された前記部品の前記位置ずれ量に基づき、学習データを作成する学習データ作成部と、
前記学習データに基づき、学習モデルを生成する学習部と、
生成された前記学習モデルを用いて、前記撮像部が撮像した基板の上面の画像から当該基板に部品を実装する場合の推定位置ずれ量を推定する位置ずれ量推定部と、を備え、
前記実装制御部は、推定された前記推定位置ずれ量に基づき前記部品実装部を制御して、当該基板の実装点に部品を実装させる、部品実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に部品を実装して実装基板を製造する部品実装システムおよび部品実装方法ならびに部品実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板に部品を実装する部品実装装置と、部品が実装された実装基板の部品の位置ずれ量などの実装状態を検査する検査装置を備える部品実装システムが知られている(例えば特許文献1)。特許文献1には、検査装置が撮像した複数の実装基板の画像の変化を監視し、画像の変化と画像の変化が認められた実装基板の品質劣化との相関関係の有無を判断し、相関関係が認められたときに、部品実装装置で使用するデータ(装着使用データ)を修正することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-148003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1を含む従来技術では、検査装置において取得された情報を部品実装装置にフィードバックして部品の実装精度を向上させることができるものの、フィードバックする情報は過去の作業に基づいているため、これから作業する基板に固有の歪などに起因する位置ずれまでも補正することはできない。また、部品実装前に部品実装装置が内蔵するカメラにより部品の実装点を撮像して基板に固有の位置ずれを補正することもできるが、カメラを実装点の上方に移動させて撮像するという作業時間が追加されるため、実装効率が低下するという問題点がある。
【0005】
そこで本発明は、部品の実装効率を低下することなく部品の実装精度を向上させることができる部品実装システムおよび部品実装方法ならびに部品実装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の部品実装システムは、基板に部品を実装する部品実装システムであって、部品を保持する実装ヘッドを有し、基板の実装点に前記部品を実装する部品実装部と、前記実装ヘッドと一体的に移動し、前記実装ヘッドが前記基板の実装点に部品を実装する際に、前記基板の上面を撮像する撮像部と、前記部品実装部を制御する実装制御部と、前記基板に実装された前記部品の実装点からの位置ずれ量を検査する検査部と、前記撮像部が撮像した一の基板の上面の画像と、前記検査部が検査した前記一の基板に実装された前記部品の前記位置ずれ量に基づき、学習データを作成する学習データ作成部と、前記学習データに基づき、学習モデルを生成する学習部と、生成された前記学習モデルを用いて、前記撮像部が撮像した基板の上面の画像から当該基板に部品を実装する場合の推定位置ずれ量を推定する位置ずれ量推定部と、を備え、前記実装制御部は、推定された前記推定位置ずれ量に基づき前記部品実装部を制御して、当該基板の実装点に部品を実装させる。
【0007】
本発明の部品実装方法は、基板に部品を実装する部品実装方法であって、実装ヘッドと一体的に移動する撮像部により、前記実装ヘッドが基板の実装点に部品を実装する際に、前記基板の上面を撮像する撮像工程と、前記基板に実装された前記部品の前記実装点からの位置ずれ量を検出する位置ずれ量検出工程と、撮像された一の基板の上面の画像と、前記一の基板に実装された前記部品の前記位置ずれ量に基づき、学習データを作成する学習データ作成工程と、前記学習データに基づき、学習モデルを生成する学習工程と、生成された前記学習モデルを用いて、撮像された基板の上面の画像から当該基板に部品を実装する場合の推定位置ずれ量を推定する位置ずれ量推定工程と、推定された前記推定位置ずれ量に基づき、当該基板の実装点に部品を実装する部品実装工程と、を含む。
【0008】
本発明の部品実装装置は、基板に部品を実装する部品実装装置であって、部品を保持する実装ヘッドを有し、基板の実装点に前記部品を実装する部品実装部と、前記実装ヘッドと一体的に移動し、前記実装ヘッドが前記基板の実装点に部品を実装する際に、前記基板の上面を撮像する撮像部と、前記部品実装部を制御する実装制御部と、前記基板に実装された前記部品の実装点からの位置ずれ量を取得する位置ずれ量取得部と、前記撮像部が撮像した一の基板の上面の画像と、前記位置ずれ量取得部が取得した前記一の基板に実装された前記部品の前記位置ずれ量に基づき、学習データを作成する学習データ作成部と、前記学習データに基づき、学習モデルを生成する学習部と、生成された前記学習モデルを用いて、前記撮像部が撮像した基板の上面の画像から当該基板に部品を実装する場合の推定位置ずれ量を推定する位置ずれ量推定部と、を備え、前記実装制御部は、推定された前記推定位置ずれ量に基づき前記部品実装部を制御して、当該基板の実装点に部品を実装させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、部品の実装効率を低下することなく部品の実装精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態の部品実装システムの構成説明図
図2】本発明の一実施の形態の部品実装装置の構成説明図
図3】本発明の一実施の形態の部品実装装置の機能説明図
図4】本発明の一実施の形態の部品実装装置の制御系の構成を示すブロック図
図5】本発明の一実施の形態の部品実装装置により部品が実装される基板の例を示す図
図6】(a)(b)(c)本発明の一実施の形態の部品実装装置によって撮像された撮像画像の一例の説明図
図7】本発明の一実施の形態の実装点高さ推定方法の説明図
図8】本発明の一実施の形態の部品実装方法のフロー図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を用いて、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる構成、形状等は説明のための例示であって、部品実装システム、部品実装装置、実装検査装置、リフロー後検査装置の仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図1、及び後述する一部では、水平面内で互いに直交する2軸方向として、基板搬送方向のX方向(図1における左右方向)、基板搬送方向に直交するY方向(図5における上下方向)が示される。図1、及び後述する一部では、水平面と直交する高さ方向としてZ方向(図1における上下方向)が示される。Z方向は、部品実装装置が水平面上に設置された場合の上下方向または直交方向である。
【0012】
まず、図1を参照して、部品実装システム1の構成について説明する。部品実装システム1は基板に部品を実装して実装基板を生産する機能を有している。本実施の形態では、1本の部品実装ライン4を通信ネットワーク2を介して管理コンピュータ3に接続した構成となっている。なお、部品実装システム1が備える部品実装ライン4は1本に限定されることはなく、2本以上であってよい。
【0013】
部品実装ライン4における作業は、管理コンピュータ3によって管理される。管理コンピュータ3は、部品実装ライン4が備える生産設備の稼働に必要なデータや各種パラメータを作成し、各生産設備に送信する機能を有している。また、各生産設備より画像データ、検査結果などのデータが、管理コンピュータ3に送信される。
【0014】
図1において、部品実装ライン4は、基板供給装置M1、半田印刷装置M2、部品実装装置M3、部品実装装置M4、実装検査装置M5、リフロー装置M6、リフロー後検査装置M7および基板回収装置M8を連結した構成となっている。基板供給装置M1から供給された基板は、半田印刷装置M2に搬入される。半田印刷装置M2は、基板に部品接合用のクリーム半田をスクリーン印刷する半田印刷作業を実行する。半田印刷後の基板は、部品実装装置M3,M4に順次受け渡される。部品実装装置M3,M4は、半田印刷後の基板に部品を装着する部品実装作業を実行する。
【0015】
部品実装後の基板は、実装検査装置M5に搬入される。実装検査装置M5は、実装検査カメラ5を備えており、実装検査カメラ5で基板に実装された部品を撮像し、撮像結果を認識処理して実装された部品の実装点からの位置ずれ量を検査する。検査結果(リフロー前検査結果)は、管理コンピュータ3、および部品実装装置M3,M4に送信される。検査後の基板はリフロー装置M6に搬入される。リフロー装置M6は、所定の加熱プロファイルに従って基板を加熱し、部品接合用のクリーム半田を溶融固化させて、基板に部品を半田付けする。
【0016】
リフロー後の基板は、リフロー後検査装置M7に搬入される。リフロー後検査装置M7は、リフロー後検査カメラ6を備えており、リフロー後検査カメラ6で基板に半田付けされた部品を撮像し、撮像結果を認識処理して半田付けされた部品の実装点からの位置ずれ量を検査する。検査結果(リフロー後検査結果)は、管理コンピュータ3、および部品実装装置M3,M4に送信される。検査後の基板は、基板回収装置M8に回収される。このように、実装検査装置M5は、リフロー前の基板に実装された部品を検査する検査部である。また、リフロー後検査装置M7は、リフロー後の基板に実装された部品を検査する検査部である。
【0017】
次に図2を参照して、部品実装装置M3,M4の構成を説明する。部品実装装置M3,M4は、基板BのY方向の両側部を下方から支持する搬送コンベア10を有する基板搬送機構11を備えている。基板搬送機構11は、搬送コンベア10を駆動させて作業対象となる基板BをX方向に搬送する。基板搬送機構11の中間地点には、基板Bを作業位置Wで保持する基板保持部12が設けられている。基板保持部12は、基板Bの下面を支える下受け部材13や基板Bの両側部を固定するクランプ部材(図示省略)からなる基板クランプ機構14(図4参照)を備えている。基板保持部12は、基板搬送機構11によって作業位置Wに搬送された基板Bを基板クランプ機構14によって上下方向(Z方向)および水平方向(X方向、Y方向)に固定して保持する。
【0018】
基板搬送機構11の上方には、実装ヘッド15が配置されている。実装ヘッド15は、下端で部品Pを真空吸引によって保持するノズル16と、ノズル16を上下方向に昇降させるノズル昇降機構17を備えている。実装ヘッド15は、実装ヘッド移動機構18によって部品供給部(図示省略)と基板保持部12によって作業位置Wに保持された基板Bの上方との間を往復移動する。そして、実装ヘッド15は、部品供給部が供給する部品Pを保持したノズル16を下降させて基板Bの実装点Kn(図3参照)に部品Pを搭載する。
【0019】
このように、実装ヘッド15と実装ヘッド移動機構18は、部品Pを保持する実装ヘッド15を有し、基板Bの実装点Knに部品Pを実装する部品実装部19である。なお、実装ヘッド15は、複数のノズル16とノズル昇降機構17を備える構成であってもよい。また、ノズル16は、チャックにより部品Pを把持して保持する構成であってもよい。
【0020】
図3において、基板Bの実装点Knの周囲には、ランドEが形成されている。ランドEは、部品Pの端子と接合される電極である。また、ランドEの上には、半田印刷装置M2によってペースト状のクリーム半田Cが印刷されている。ノズル昇降機構17は、ノズル16が保持する部品Pの下面が所定の押込み量だけランドE上のクリーム半田Cの上面を押しつぶす高さまでノズル16を下降させる(矢印a)。その後、ノズル16による真空吸引を停止し、ノズル昇降機構17がノズル16を上昇させることで、部品Pが基板Bに実装(移載)される。
【0021】
図2図3において、実装ヘッド15には、基板保持部12によって作業位置Wに保持された基板Bの上面Baに設けられた認識マーク(図示省略)を撮像するヘッドカメラ20が装着されている。ヘッドカメラ20は、実装ヘッド移動機構18によって認識マークを撮像可能な位置に移動する。ヘッドカメラ20が撮像した認識マークの位置に基づいて、実装点Knの位置が補正される。このように、ヘッドカメラ20は、実装ヘッド15と一体的に移動し、基板Bの上面Baを撮像する撮像部である。
【0022】
次に図4を参照して、部品実装装置M3,M4の制御系の構成について説明する。部品実装装置M3,M4は、制御装置30、基板搬送機構11、基板保持部12、部品実装部19、ヘッドカメラ20、タッチパネル21を備えている。制御装置30は、記憶部31、実装制御部32、撮像処理部33、位置ずれ量取得部34、学習データ作成部35、学習部36、位置ずれ量推定部37を備えている。タッチパネル21は、各種データの他、操作画面などを液晶パネルなどに表示する機能と、操作コマンドやデータを入力する機能を備えている。
【0023】
記憶部31は記憶装置であり、実装データ38、撮像画像データ39、位置ずれ量データ40、学習データ41、学習モデル42、推定位置ずれ量データ43などが記憶されている。実装データ38には、基板Bに実装される部品Pの部品種やサイズ、基板Bにおける実装点Knの座標などの各種情報が、生産する実装基板の基板種ごとに記憶されている。
【0024】
図4において、撮像処理部33は、部品実装作業中に部品Pを保持したノズル16が実装点Knの上方に水平方向(XY方向)に移動して位置合わせを行った後、ノズル16を下降させる前に、ヘッドカメラ20を制御して基板Bの上面Baを撮像させる。すなわち、ヘッドカメラ20(撮像部)は、ノズル16が実装点Knに部品Pを実装する際に、基板Bの上面Baを撮像する。ヘッドカメラ20による撮像時間は、実装ヘッド15(ノズル16)の移動時間と比較して短いため、ノズル16が実装点Knの上方に移動した後のヘッドカメラ20による基板Bの上面Baの撮像による追加時間は非常に少ない。
【0025】
図3は、部品P5を保持したノズル16が実装点K5の上方で水平方向に位置合わせして停止した状態を示している。図5は、部品P5を基板Bに実装する直前の実装点K5付近の基板Bの上面Baの状態を示している。撮像処理部33は、ノズル16が実装点K5の上方に停止した状態でヘッドカメラ20を制御して、基板Bの上面Baを撮像させる。この例では、ヘッドカメラ20の撮像範囲には、基板Bに実装済みの部品P1~P3などが含まれている。撮像処理部33は、撮像された基板Bの上面Baの撮像画像と、基板Bを特定する情報、ノズル16が停止した実装点Knを特定する情報、撮像日時などを関連付けて、撮像画像データ39として記憶部31に記憶させる。
【0026】
図6(a)~(c)は、部品P5を保持するノズル16が実装点K5の上方に停止した状態において、ヘッドカメラ20によって撮像された撮像画像20aの例を示している。実装点K5に対応する撮像画像20aに含まれる部品P1~P3などの水平方向(X方向、Y方向)の位置は、ノズル16の実装点K5に対する水平方向の位置ずれ量、基板Bの歪みなどにより変動する。実装点K5に対応する撮像画像20a中の部品P1~P3などの位置から、ノズル16またはノズル16が保持する部品P5と実装点K5の相対的な位置関係を推定することができる。
【0027】
図4において、位置ずれ量取得部34は、実装検査装置M5からリフロー前検査結果を、リフロー後検査装置M7からリフロー後検査結果をそれぞれ取得し、位置ずれ量データ40として記憶部31に記憶させる。リフロー前検査結果とリフロー後検査結果には、検査した基板Bを特定する情報、検査した部品Pの実装点Knを特定する情報、部品Pの実装点Knからの位置ずれ量(以下、「検査位置ずれ量」と称する。)を関連付けた情報が含まれている。このように、位置ずれ量取得部34は、実装検査装置M5およびリフロー後検査装置M7(検査部)から、基板Bに実装された部品Pの実装点Knからの検査位置ずれ量を取得する。
【0028】
図4において、学習データ作成部35は、撮像画像データ39に含まれるヘッドカメラ20(撮像部)が撮像した基板Bの上面Baの実装点Knに対応する撮像画像20aと、位置ずれ量取得部34が取得したその基板Bの実装点Knに実装された部品Pの検査位置ずれ量に基づき、学習データ41を作成する。すなわち、学習データ41は、実装点Kn毎に作成される。作成された学習データ41は、記憶部31に記憶される。学習部36は、実装点Knの学習データ41を教師データとして、後述する実装点Knの学習モデル42を、機械学習等を用いた学習アルゴリズムにより生成する。
【0029】
学習アルゴリズムとしては、ニューラルネットワーク(多層のニューラルネットワークを用いた深層学習を含む)、遺伝的プログラミング、決定木、ベイジアン・ネットワーク、サポート・ベクター・マシン(SVM)等を使用し得る。生成された学習モデル42は、記憶部31に記憶される。
【0030】
位置ずれ量推定部37は、生成された実装点Knの学習モデル42を用いて、ヘッドカメラ20(撮像部)が撮像した基板Bの上面Baの実装点Knに対応する撮像画像20aから当該基板Bに部品Pを実装する場合の推定位置ずれ量を推定(算出)する。すなわち、推定位置ずれ量は、ノズル16の水平方向の位置を補正することなくノズル16を下降させて基板Bに部品Pを実装した場合に、検査部において検出されると推定される位置ずれ量である。推定された推定位置ずれ量は、推定位置ずれ量データ43として記憶部31に記憶される。算出された推定位置ずれ量は、実装制御部32による部品Pの実装動作におけるノズル16の水平方向の位置補正に使用される。
【0031】
ここで、図7を参照して、部品実装装置M3,M4により推定位置ずれ量を推定する位置ずれ量推定方法について説明する。まず、学習データ作成部35は、記憶部31に記憶されている撮像画像データ39と位置ずれ量データ40より、同一の基板Bにおける同一の実装点Knに対応する撮像画像20a(撮像された基板Bの上面Baの画像)と、検査位置ずれ量(検査部が検査した基板Bに実装された部品Pの実装点Knからの位置ずれ量)に基づき、学習データ41を作成する(ST1:学習データ作成工程)。
【0032】
すなわち、学習データ作成部35は、複数(例えば、50枚)の基板Bについて、実装点Knに対応する撮像画像20a、実装点Knの検査位置ずれ量、および基板Bと実装点Knを特定する情報を関連付けた教師データを作成し、学習データ41として記憶させる。図7の例では、基板B1の実装点Knに対応する撮像画像20aと、実装点Knの検査位置ずれ量を関連付けた教師データが、実装点Knの学習データ41として作成される。また、基板B2の実装点Knに対応する撮像画像20aと、実装点Knの検査位置ずれ量を関連付けた教師データが、実装点Knの学習データ41として作成される。
【0033】
図7において、次いで学習部36は、実装点Knの学習データ41に基づき、実装点Knの学習モデル42を生成する(ST2:学習工程)。作成された学習モデル42は記憶部31に記憶される。次いで位置ずれ量推定部37は、生成された実装点Knの学習モデル42を用いて、学習モデル42の作成後に撮像された基板B99の実装点Knに対応する撮像画像20aから当該基板B99の実装点Knに部品Pを実装する場合の推定位置ずれ量を推定(算出)する(ST3:位置ずれ量推定工程)。推定された推定位置ずれ量は、推定位置ずれ量データ43として記憶部31に記憶される。
【0034】
すなわち、位置ずれ量推定部37は、実装点Knの学習モデル42を用いて、ノズル16を基板B99の実装点Knの上方に停止させて撮像した実装点Knに対応する撮像画像20aから基板B99の実装点Knに部品Pを実装する場合に生ずると推定される推定位置ずれ量を計算する。言い換えると、学習モデル42は、ノズル16を実装点Knの上方に停止させて撮像した実装点Knに対応する撮像画像20aから、実装点Knの推定位置ずれ量を推定(算出)する計算式や計算方法である。
【0035】
図4において、実装制御部32は、推定された推定位置ずれ量に基づき、部品実装部19を制御して、推定位置ずれ量を補正するように部品Pを保持するノズル16の水平方向の位置を補正し(位置ずれ補正)、基板Bの実装点Knに部品Pを実装させる。これによって、部品Pの実装精度を向上させることができる。
【0036】
上記説明したように、部品実装装置M3,M4は、実装ヘッド15を有し、基板Bの実装点Knに部品Pを実装する部品実装部19と、実装ヘッド15と一体的に移動し、実装ヘッド15が基板Bの実装点Knに部品Pを実装する際に、基板Bの上面Baを撮像する撮像部(ヘッドカメラ20)と、部品実装部19を制御する実装制御部32と、基板Bに実装された部品Pの実装点Knからの検査位置ずれ量を取得する位置ずれ量取得部34と、を備えている。
【0037】
さらに、部品実装装置M3,M4は、撮像部が撮像した一の基板Bの撮像画像20aと、位置ずれ量取得部34が取得した一の基板Bの検査位置ずれ量に基づき、学習データ41を作成する学習データ作成部35と、学習データ41に基づき、学習モデル42を生成する学習部36と、生成された学習モデル42を用いて、撮像部が撮像した基板Bの撮像画像20aから当該基板Bに部品Pを実装する場合の推定位置ずれ量を推定する位置ずれ量推定部37と、を備えている。そして、実装制御部32は、推定された推定位置ずれ量に基づき、当該基板Bの実装点Knに部品Pを実装する。これによって、部品Pの実装効率を低下することなく部品Pの実装精度を向上させることができる。
【0038】
なお、部品実装システム1は、管理コンピュータ3が位置ずれ量取得部34、学習データ作成部35、学習部36と、部品実装装置M3,M4から撮像画像データ39を取得する画像データ取得部を備える構成であってもよい。この場合、管理コンピュータ3において、検査部である実装検査装置M5またはリフロー後検査装置M7から取得した検査結果と、部品実装装置M3,M4から取得した撮像部(ヘッドカメラ20)が撮像した撮像画像20aに基づき、学習モデル42が生成される。生成された学習モデル42は、部品実装装置M3,M4に送信される。
【0039】
そして、部品実装装置M3,M4において、位置ずれ量推定部37が、ヘッドカメラ20(撮像部)が撮像した撮像画像20aから受信された学習モデル42を用いて推定位置ずれ量を推定し、実装制御部32が推定位置ずれ量に基づき部品実装部19を制御して、推定位置ずれ量を補正するように基板Bの実装点Knに部品Pを実装させる。
【0040】
次に図8のフローに沿って、部品実装装置M3,M4により基板Bに部品Pを実装する部品実装方法について説明する。まず、実装制御部32は、基板搬送機構11を制御して、基板Bを搬入する(ST10:基板搬入工程)。次いで実装制御部32は、基板保持部12を制御して基板Bを作業位置Wで保持する(ST11:基板保持工程)。
【0041】
次いで実装制御部32は、部品実装部19を制御して実装ヘッド15を水平方向に移動させて、部品Pを保持したノズル16を実装点Knの上方に水平移動させる(ST12:ノズル水平移動工程)。この時、ヘッドカメラ20(撮像部)は実装ヘッド15と一体に移動して、実装点Knに対応する位置に移動する。次いでヘッドカメラ20は、基板Bの上面Baの実装点Knに対応する位置を撮像する(ST13:撮像工程)。すなわち、実装ヘッド15と一体に移動するヘッドカメラ20により、ノズル16が基板Bの実装点Knに部品Pを実装する際に、基板Bの上面Baが撮像される。撮像された実装点Knに対応する撮像画像20aは、撮像画像データ39として記憶部31に記憶される。
【0042】
図8において、次いで実装制御部32は、部品実装部19を制御して、ノズル16を下降させて基板Bの実装点Knに部品Pを実装させる(ST14:ノズル下降工程)。以下、次の実装点Knへのノズル水平移動工程(ST12)、撮像工程(ST13)、ノズル下降工程(ST14)が、繰り返し実行される。基板保持部12に保持された基板Bに対する部品Pの実装が終了すると、実装制御部32は基板搬送機構11を制御して、基板Bを搬出させる(ST15:基板搬出工程)。
【0043】
部品実装装置M3,M4から搬出された基板Bは、実装検査装置M5(検査部)に搬入される。実装検査装置M5は、基板Bに実装された部品Pの実装点Knからの位置ずれ量を検出する(リフロー前位置ずれ量検出工程)。検査後の基板Bはリフロー装置M6に搬入され、リフロー後の基板Bはリフロー後検査装置M7(検査部)に搬入される。リフロー後検査装置M7は、基板Bに実装された部品Pの実装点Knからの位置ずれ量を検出する(リフロー後位置ずれ量検出工程)。検査後の基板Bは、基板回収装置M8に回収される。
【0044】
図8において、撮像工程(ST13)において実装点Knに対応する撮像画像20aが撮像された基板Bの枚数が所定数より少ない場合(ST16においてNo)、図8中の左側に示す基板搬入工程(ST10)に戻って、次の基板Bに対する部品実装作業が実行される。所定の枚数の基板Bで撮像画像20aが撮像されると(ST16においてYes)、位置ずれ量取得部34は、実装検査装置M5またはリフロー後検査装置M7から位置ずれ量を取得して、位置ずれ量データ40として記憶部31に記憶させる(ST17:位置ずれ量取得工程)。
【0045】
次いで学習データ作成工程(ST1)が実行されて、撮像された一の基板Bの上面Baの撮像画像20aと、一の基板Bに実装された部品Pの位置ずれ量に基づき、学習データ41が作成される。次いで学習工程(ST2)が実行されて、学習データ41に基づき、学習モデル42が生成される。次いで図8中の右側に示す基板搬入工程(ST10)に進んで、次の作業対象の基板Bが搬入される。次いで基板保持工程(ST11)、ノズル水平移動工程(ST12)、撮像工程(ST13)が実行される。これにより、部品Pを保持するノズル16が実装点Knの上方に移動し、基板保持部12に保持されている基板Bの実装点Knに対応する撮像画像20aが取得される。
【0046】
図8において、次いで位置ずれ量推定工程(ST3)が実行される。すなわち、生成された学習モデル42を用いて、撮像された基板Bの上面Baの実装点Knに対応する撮像画像20aから当該基板Bの実装点Knに部品Pを実装する場合の推定位置ずれ量が推定される。次いで実装制御部32は、推定された推定位置ずれ量の基づき部品実装部19を制御して、部品Pを保持するノズル16の水平方向の位置ずれを補正する(ST18:位置ずれ補正工程)。次いでノズル下降工程(ST14)が実行されて、ノズル16が保持する部品Pが基板Bの実装点Knに実装される。
【0047】
すなわち、位置ずれ補正工程(ST18)とノズル下降工程(ST14)は、推定された推定位置ずれ量に基づき、基板Bの実装点Knに部品Pを実装する部品実装工程である。このように、部品Pを実装点Knに実装する前に撮像した実装点Knに対応する撮像画像20aに基づいて、位置ずれ量を推定して補正することで、部品Pの実装効率を低下することなく部品Pの実装精度を向上させることができる。
【0048】
図8において、以下、次の実装点Knへのノズル水平移動工程(ST12)、撮像工程(ST13)、位置ずれ量推定工程(ST3)、位置ずれ補正工程(ST18)、ノズル下降工程(ST14)が、繰り返し実行される。基板保持部12に保持された基板Bに対する部品Pの実装が終了すると、基板搬出工程(ST15)が実行される。そして、所定枚数の実装基板の生産が終了するまで(ST19においてNo)、図8中の右側に示す基板搬入工程(ST10)に戻って、次の基板Bに対する部品実装作業が実行される。
【0049】
なお上記では、位置ずれ補正工程(ST18)においてノズル16の水平方向(X方向、Y方向)の位置ずれを補正する例で説明したが、補正される位置ずれは水平方向に限定されることはなく、θ方向(Z方向の軸を回転軸とする回転の方向)もしくはZ方向も補正するようにしてもよい。すなわち、検査部(実装検査装置M5、リフロー後検査装置M7)においてθ方向(Z方向)の位置ずれ量も検出し、位置ずれ量推定部37が学習モデル42を用いて、実装点Knに対応する撮像画像20aから実装点Knにおけるθ方向(Z方向)の推定位置ずれ量も推定する。そして、位置ずれ補正工程(ST18)において、部品Pを保持するノズル16のθ方向(Z方向)の位置ずれを補正してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の部品実装システムおよび部品実装方法ならびに部品実装装置は、部品の実装効率を低下することなく部品の実装精度を向上させることができるという効果を有し、部品を基板に実装する分野において有用である。
【符号の説明】
【0051】
1 部品実装システム
15 実装ヘッド
19 部品実装部
20 ヘッドカメラ(撮像部)
20a 撮像画像
B 基板
Ba 上面
K5,Kn 実装点
M3,M4 部品実装装置
M5 実装検査装置(検査部)
M7 リフロー後検査装置(検査部)
P1~P5,P 部品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8