(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】マイクロチャネル熱交換器および空気調和機
(51)【国際特許分類】
F28F 9/02 20060101AFI20240412BHJP
F28D 1/053 20060101ALI20240412BHJP
F28F 9/22 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
F28F9/02 301D
F28D1/053 A
F28F9/22
(21)【出願番号】P 2020016629
(22)【出願日】2020-02-03
【審査請求日】2022-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003362
【氏名又は名称】弁理士法人i.PARTNERS特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河村 佳憲
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-194251(JP,A)
【文献】特許第5073849(JP,B1)
【文献】特開平03-140764(JP,A)
【文献】特開2000-304378(JP,A)
【文献】特開2016-095094(JP,A)
【文献】特開2017-203578(JP,A)
【文献】国際公開第2016/121123(WO,A1)
【文献】特表2015-511699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/02,9/22
F28D 1/00-1/06
F25B 39/00-39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側の流路を構成する第1ヘッダと、前記第1ヘッダからの冷媒が導入される第2ヘッダと、前記第1ヘッダと前記第2ヘッダとの間を接続する複数の冷媒管と、前記複数の冷媒管に接合される伝熱フィンとによって構成されるマイクロチャネル熱交換器において、
前記第1ヘッダ及び前記第2ヘッダ
は、内部を流れる前記冷媒の流速を高める複数の孔からなるオリフィスを、当該ヘッダに接続される下流側の前記複数の冷媒管よりも上流側に備え
、
少なくとも前記第1ヘッダの前記オリフィスは、前記第1ヘッダ内の流路と交差する方向から前記冷媒が流入する冷媒流入方向における冷媒管側に複数の孔が偏って開口していることを特徴とするマイクロチャネル熱交換器。
【請求項2】
前記オリフィスよりも上流側にメッシュが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロチャネル熱交換器。
【請求項3】
前記第1ヘッダと接続され、当該第1ヘッダに向けて前記冷媒が通過する流入口を備え、
前記流入口に前記メッシュが設けられていることを特徴とする請求項2に記載のマイクロチャネル熱交換器。
【請求項4】
前記第2ヘッダは、上流側の前記複数の冷媒管の接続位置と下流側の前記複数の冷媒管の接続位置との間に前記オリフィスを備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のマイクロチャネル熱交換器。
【請求項5】
気液二相冷媒を液体冷媒と気体冷媒とに分離する気液分離器を前記第1ヘッダよりも上流側に備え、
前記気液分離器からの液体冷媒を前記第1ヘッダに導入可能なことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のマイクロチャネル熱交換器。
【請求項6】
前記気液分離器に接続され、前記第1ヘッダ及び前記第2ヘッダを迂回する迂回流路を備え、
前記迂回流路によってコンプレッサーへのガス調整が行われることを特徴とする請求項5に記載のマイクロチャネル熱交換器。
【請求項7】
前記第1ヘッダ及び前記第2ヘッダは、それぞれ隔壁によって複数のブロックに区画され、
少なくとも前記第1ヘッダのブロック、前記第2ヘッダのブロック及び前記複数の冷媒管からなる分流路が複数形成され、
各分流路に冷媒を分流する分流器を備え、
前記第1ヘッダ及び前記第2ヘッダのうち少なくとも一方のヘッダの少なくとも1つのブロックは、内部を流れる冷媒の流速を高めるオリフィスを、当該ブロックに接続される下流側の前記複数の冷媒管よりも上流側に備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のマイクロチャネル熱交換器。
【請求項8】
前記第1ヘッダと接続され、当該第1ヘッダに向けて前記冷媒が通過する流入口が、前記第1ヘッダの上流側のブロック毎に複数設けられ、
各流入口にそれぞれメッシュが設けられていることを特徴とする請求項7に記載のマイクロチャネル熱交換器。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載のマイクロチャネル熱交換器を室外機に搭載したことを特徴とする空気調和機。
【請求項10】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載のマイクロチャネル熱交換器を室内機に搭載したことを特徴とする空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロチャネル熱交換器および空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機等の熱交換器の1つとして、マイクロチャネル熱交換器がある。
図5及び
図6は、従来のマイクロチャネル熱交換器500の構成を示す図である。マイクロチャネル熱交換器500は、2つのヘッダ部510、520間を接続するマイクロチャネルが形成された複数の細径流路からなる冷媒管(扁平管)530と、その冷媒管に接合される伝熱フィン540とによって構成されている。
【0003】
図6に示すように、冷媒Rは、蒸発時には、冷媒蒸気と冷媒液が混在した気液二相状態でヘッダ部510の下部から流入し、複数の冷媒管530内の複数(例えば、4パス)の細径流路に分流する(
図5におけるハッチングした矢印参照)。冷媒Rは、細径流路を通過する間に伝熱フィン540を介してマイクロチャネル熱交換器500を通過する空気A(
図5における白抜き矢印参照)と熱交換して蒸発し、細径流路からヘッダ部520に流入する。ヘッダ部520では、冷媒蒸気と冷媒液が混在した気液二相状態の冷媒Rは、上向き速度をうけて上側の冷媒管530の周辺に分布するが、重力Gによりヘッダ部520の下側(重力方向、すなわち鉛直方向の下側)に偏って冷媒液が分布する。このため、冷媒Rがヘッダ部520から下流側の冷媒管530内の細径流路に分流するとき、鉛直方向上側の冷媒管530内の細径流路に冷媒蒸気(気体状態の冷媒R)が流入し、鉛直方向下側の冷媒管530内の細径流路に冷媒液(液体状態の冷媒R)が多く流入する。従って、空気Aと冷媒Rの温度差が大きい鉛直方向上側の細径流路において、冷媒液が不足してドライアウトが発生する。このドライアウトが発生すると、周知の通りマイクロチャネル熱交換器500の蒸発伝熱性能が低下する。また、下方に冷媒液が寝込む(滞留する)ことになると、冷媒回路の冷媒不足が生じて低圧となり、早期に霜が着霜する虞がある。この為、マイクロチャネル熱交換器500を室外機に設けた構成において、当該マイクロチャネル熱交換器500における熱交換が妨げられ、頻繁に除霜運転に行う原因となってしまい、室内側が暖まり難くなる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の冷媒管に流入する冷媒の偏りを抑制すべく、特許文献1には、ヘッダパイプの中に冷媒誘導構造を形成したパラレルフロー型熱交換器が開示されている。しかしながら、特許文献1では、ヘッダパイプの内部流路を特殊な形状に加工したものを使用するものであるため、ヘッダパイプの加工に手間とコストが掛かるなどの課題がある。
【0006】
本発明は、上記した課題を解決しようとするものであって、簡単な構造にて複数の冷媒管に冷媒を均等に配分し易くすることができるマイクロチャネル熱交換器および空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のマイクロチャンネル熱交換器は、上流側の流路を構成する第1ヘッダと、前記第1ヘッダからの冷媒が導入される第2ヘッダと、前記第1ヘッダと前記第2ヘッダとの間を接続する複数の冷媒管と、前記複数の冷媒管に接合される伝熱フィンとによって構成されるマイクロチャネル熱交換器において、前記第1ヘッダ及び前記第2ヘッダは、内部を流れる前記冷媒の流速を高める複数の孔からなるオリフィスを、当該ヘッダに接続される下流側の前記複数の冷媒管よりも上流側に備え、少なくとも前記第1ヘッダの前記オリフィスは、前記第1ヘッダ内の流路と交差する方向に前記冷媒が流入する冷媒流入方向における冷媒管側に複数の孔が偏って開口していることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るマイクロチャネル熱交換器が用いられる空気調和機の熱サイクルの構成を示す図である。
【
図2】実施形態に係るマイクロチャネル熱交換器のヘッダ部と冷媒管の構成を示す図である。
【
図3】実施形態に係るマイクロチャネル熱交換器に用いられるオリフィスの形状の一例を図である。
【
図4】他の実施形態に係る空気調和機の構成を示す図である。
【
図5】一般的なマイクロチャネル熱交換器の形状を示す図である。
【
図6】従来のマイクロチャネル熱交換器における冷媒液溜まりの発生を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態に係るマイクロチャネル熱交換器を用いた空気調和機100の熱サイクルの構成を示す図である。空気調和機100は、第1熱交換器110を有する室外機120と、第2熱交換器130を有する室内機140とによって構成されている。2つの熱交換器のうち、少なくとも第1熱交換器110は、マイクロチャネル熱交換器で構成されている。なお、第1熱交換器110および第2熱交換器130の両方をマイクロチャネル熱交換器で構成しても良い。また、空気調和機100の室外機120には、図示しない室外ファンや四方弁等が設けられ、また室内機140には、図示しない室内ファンが設けられている。
【0010】
空気調和機100の冷凍サイクルでは、例えば、室外機120の第1熱交換器110は蒸発器として動作する。従来では、蒸発器として機能する熱交換器入口における冷媒は、気液二相状態となる。この気液二相状態では、その流れを制御することは極めて困難である。そこで、本実施形態では、気液分離器150を冷媒回路内に設けて、冷媒液だけを第1熱交換器110の冷媒管に流すようにすると共に、第1熱交換器110のマイクロチャネル熱交換器の冷媒管に分流不良対策を施している。
【0011】
図1の空気調和機100において、室外機120のコンプレッサー(圧縮機)160は、室内機140の第2熱交換器130に接続されている。第2熱交換器130は、暖房運転時、凝縮器(コンデンサー)として動作し、冷媒液を生成する。第2熱交換器130は、第1膨張弁170を経由して気液分離器150に接続されている。この気液分離器150は、冷媒液と冷媒ガスを蓄積する。気液二相冷媒を液体冷媒と気体冷媒とに分離する気液分離器150は、後述する第1ヘッダよりも上流側に備えられる。
【0012】
そして、気液分離器150内の冷媒液は、第1熱交換器110に送出され、第1熱交換器110が蒸発器として動作すると冷媒ガスが生成される。第1熱交換器110は、コンプレッサー160に接続されている。また気液分離器150内の冷媒ガスは、第2膨張弁180を経由して第1熱交換器110のコンプレッサー160側に接続され、ガス調整機能部190(本発明における迂回流路に相当)が形成される。すなわち、第2膨張弁180による圧力調整により、第1熱交換器110からコンプレッサー160に送出される冷媒ガスの流量および流圧を調整することができる。
【0013】
次に、
図1の空気調和機100の暖房運転時の動作を説明する。
コンプレッサー160には、蒸発器として動作する第1熱交換器110によって生成される冷媒ガスが、ガス調整機能部190によってガス調整されて供給されている。コンプレッサー160は、室内機140の第2熱交換器130に冷媒ガスを送出する。第2熱交換器130は、凝縮器として動作して、冷媒ガスと室内の空気とで熱交換を行って凝縮して、冷媒液を生成すると共に、室内に放熱する。第2熱交換器130は、生成した冷媒液を室外機120の第1膨張弁170に向けて出力する。
【0014】
第1膨張弁170は、入力された冷媒液に対し必要に応じて圧力調整を施して、気液分離器150の冷媒液中に送出する。これにより、第1膨張弁170から送出される冷媒液に冷媒ガスが含まれることがあっても、気液分離器150の冷媒液中に送出されることで、気液分離器150では冷媒液と冷媒ガスとが分離して蓄積されることになる。
【0015】
そして、気液分離器150内の冷媒液は、蒸発器として動作する第1熱交換器110に送出される。第1熱交換器110は、後述するマイクロチャネル熱交換器によって構成される。第1熱交換器110は、冷媒液と室外の空気とで熱交換を行って蒸発して、冷媒ガスを生成する。また、気液分離器150内の冷媒液上部の冷媒ガスは、第2膨張弁180に送出される。第2膨張弁180による圧力調整により、第1熱交換器110からコンプレッサー160に送出される冷媒ガスに対してガス調整が施され、冷媒ガスだけをコンプレッサー160に供給することで、二相冷媒の偏流抑制を行うことができる。これにより、コンプレッサー160には冷媒ガスだけを供給することができるので、冷媒ガスだけを第2熱交換器130の冷媒管に流すことができる。
【0016】
次に、第1熱交換器110における分流不良対策について説明する。
図2は、第1熱交換器110に用いられるマイクロチャネル熱交換器200のヘッダ部と冷媒管の構成を示す図である。
図2において、第1ヘッダ210および第2ヘッダ220は、後述する複数の細径冷媒流路230に共通する共通管となっている。第1ヘッダ210は、ほぼ中央において水平に設けられた隔壁(後述する上部壁280を構成する壁部)により、冷媒が流入する下部部分(上流側部分)と冷媒が流出する上部部分(下流側部分)とに分割されている。一方、第2ヘッダ220は、後述する第2オリフィス250’’を介して、下部部分(上流側部分)と上部部分(下流側部分)とが連通されている。そして、第1ヘッダ210の下部部分と第2ヘッダ220の下部部分とが複数の細径冷媒流路230(230a)によって連結され、第1ヘッダ210の上部部分と第2ヘッダ220の上部部分とが複数の細径冷媒流路230(230b)によって連結されている。
【0017】
第1ヘッダ210と第2ヘッダ220との間を接続する細径冷媒流路230(本発明における冷媒管に相当)は、複数の細径管が横方向に並列された冷媒管(扁平管)で構成されている。すなわち、各細径冷媒流路230a、230bは、マイクロチャネルが形成された冷媒管(扁平管)で構成されている。なお、本実施形態では、第1ヘッダ210の下部部分と第2ヘッダ220の下部部分とを接続する4列の細径冷媒流路230を細径冷媒流路230aと称し、第1ヘッダ210の上部部分と第2ヘッダ220の上部部分とを接続する4列の細径冷媒流路230を細径冷媒流路230bと称する。そして、気液分離器150からの冷媒(冷媒液)は、第1ヘッダ210の下部部分、細径冷媒流路230a、第2ヘッダ220の下部部分、第2ヘッダ220の上部部分、細径冷媒流路230b、及び、第1ヘッダ210の上部部分を通過して、コンプレッサー160側に流出する。また、複数の細径冷媒流路230a、230bは、多数の伝熱フィン240に接合されており、細径冷媒流路230を通過する冷媒と第1熱交換器110を通過する空気との間で熱交換が可能(すなわち、冷媒が空気から吸熱可能)に構成されている。
【0018】
ここで、実施形態では、分流不良対策として、第1ヘッダ210内と第2ヘッダ220内にそれぞれオリフィス250が設けられる。具体的には、オリフィス250は、第1ヘッダ210内および第2ヘッダ220内に設けられた隔壁に開口する孔で構成されている。このオリフィス250によって加速した冷媒液を各ヘッダの上部壁280,290に当てて、渦を発生させる。これにより、冷媒液が重力で分離しないようにし、分流不良を発生しないようにすることができる。
図2では、流入側(上流側となる)の第1ヘッダ210内のオリフィスを第1オリフィス250’とし、第1オリフィス250’より下流側となる第2ヘッダ220内のオリフィスを第2オリフィス250’’としている。
【0019】
第1オリフィス250’は、第1ヘッダ210に接続される下流側の複数の細径冷媒流路(冷媒管)230aよりも上流側(すなわち、鉛直方向下側)に備えられている。より詳しくは、第1オリフィス250’は、第1ヘッダ210へ冷媒を流入させる流入口260と細径冷媒流路(冷媒管)230aの第1ヘッダ210側の開口との間に設けられている。本実施形態では、第1オリフィス250’は、第1ヘッダ210の下側水平方向(第1ヘッダ210に対して垂直方向)に開口されている流入口260の上側近傍に設けられている。第2オリフィス250’’は、第2ヘッダ220に接続される下流側の複数の細径冷媒流路(冷媒管)230bよりも上流側に備えられている。より詳しくは、第2オリフィス250’’は、細径冷媒流路(冷媒管)230aの第2ヘッダ220側の開口と細径冷媒流路(冷媒管)230bの第2ヘッダ220側の開口との間に設けられている。本実施形態では、第2オリフィス250’’は、第2ヘッダ220の折り返し中間部に水平方向(第2ヘッダ220に対して垂直方向)に設けられている。折り返し中間部とは、下側の4列の細径冷媒流路230aの最上位と、上側の4列の細径冷媒流路230bの最下位の間の位置である。
【0020】
図3は、第1オリフィス250’および第2オリフィス250’’の一例を示す。例えば、
図3(a)では、オリフィス250(両方のオリフィスを表現している)に丸形状の孔250aが複数設けられている。
図3(b)では、オリフィス250に四角形状の孔250bが複数設けられている。
図3(c)では、オリフィス250に複数の丸形状の孔のうち、中央の孔250c1が外側の孔250c2より大きく形成されている。
図3(d)では、
図3(b)に比べて小さい四角形状の孔250dが多数設けられている。このように、オリフィス250の孔の大きさ、形状、個数などは、オリフィス自体の大きさや冷媒液の流入時の圧力等に応じて最適に設計すると良い。
【0021】
図2に戻り、本実施形態においては、第1ヘッダ210の流入口260にはメッシュ270が設けられている。メッシュ270を設けることにより、冷媒液に対して乱流を起こすことができる。メッシュ270を介して流入した冷媒液は、流入口260の近傍の第1ヘッダ210内の第1オリフィス250’によって速度が加速され、その勢いで上部壁280にぶつけられる。これにより、第1ヘッダ210内に乱入した冷媒液に渦を発生させることができる。第1ヘッダ210内に発生した渦により、冷媒液は4つの細径冷媒流路230aに対して均等に分配され易くなる。細径冷媒流路230aでは、冷媒液は、室外の空気と熱交換を行って蒸発し、冷媒ガスを生成する。この段階では、冷媒液は完全にガス化されないので、残った一部の冷媒液と生成した冷媒ガスが第2ヘッダ220に送出される。
【0022】
第2ヘッダ220内でも同様に、第2オリフィス250’’によって冷媒液が加速されて上部壁290にぶつけられる。これにより、第2ヘッダ220内の冷媒液に渦を発生させることができる。第2ヘッダ220内に発生した渦により、冷媒液は4つの細径冷媒流路230bに対し均等に分配され易くなり、そして細径冷媒流路230bを通じて第1ヘッダ210側に折り返す。細径冷媒流路230bでは、細径冷媒流路230aの熱交換でガス化できなかった冷媒液と室外の空気とで熱交換を行って蒸発して、当該冷媒液をガス化して冷媒ガスを生成する。生成された冷媒ガスは、第1ヘッダ210の上部壁280の上側に設けられる流出口295からコンプレッサー160(
図1参照)に向けて供給される。
【0023】
従って、実施形態では、メッシュ270により冷媒液に対して乱流を起こし、更に第1ヘッダ210および第2ヘッダ220内に設けた第1オリフィス250’および第2オリフィス250’’によって加速させた冷媒液を上部壁280,290にぶつけることによって渦を発生させる。これにより、上流側の複数の細径冷媒流路230a内、および下流側の複数の細径冷媒流路230b内において、冷媒液を均等に分配し易くすることができる。なお、第1ヘッダ210において、上流側の第1オリフィス250’だけで冷却液をほぼ均等に分配できるものであれば、メッシュ270が無くても良い。
【0024】
図4は、空気調和機の他の実施形態を示す図である。
本実施形態では、細径冷媒流路1本当たりに流れる冷媒流量をより低減し、圧力損失を一掃抑制できるように構成さている。具体的には、
図4に示す空気調和機では、マイクロチャネル熱交換器を2つのブロックに分割し、各ブロックの細径冷媒流路に流れる冷媒量を削減することで圧力損失を抑制する。
【0025】
図4に示す空気調和機のマイクロチャネル熱交換器300は、第1ブロック310と第2ブロック320に分割して構成される。各ブロック310,320の基本的な構成は、
図2に示した構成と同じである。すなわち、本実施形態では、第1ヘッダ410および第2ヘッダ420が、各ブロック310,320に対応して、それぞれ流路ブロックに分割されている。具体的には、第1ヘッダ410は、下半分を構成する下部ブロックと上半分を構成する上部ブロックとに分割され、第1ヘッダ410の下部ブロックおよび上部ブロックは、それぞれ冷媒が流入する下部部分と冷媒が流出する上部部分とに分割されている。また、第2ヘッダ420は、下半分を構成する下部ブロックと、上半分を構成する上部ブロックとに分割され、第2ヘッダ420の下部ブロックおよび上部ブロックは、それぞれオリフィスを介して冷媒が連通する下部部分と上部部分とに分割されている。
【0026】
第1ブロック310を構成する第1ヘッダ410の上部ブロックの下部部分および第2ブロック320を構成する第1ヘッダ410の下部ブロックの下部部分には、それぞれ流入口315,325が接続されている。また、この流入口315,325の内部にはメッシュが設けられている。各流入口315,325は、冷媒管を介して分流器330に接続されている。これにより、冷媒(冷媒液)は、分流器330によって2つに分流され、メッシュにより乱流となった状態で、第1ブロック310と第2ブロック320にそれぞれ送出される。さらに、第1ブロック310を構成する第1ヘッダ410の上部ブロックの上部部分および第2ブロック320を構成する第1ヘッダ410の下部ブロックの上部部分には、共通流出口340が接続されている。共通流出口340は、第1ブロック310に接続される流出口部分と第2ブロック320に接続される流出口部分とが途中で合流するように構成されている。なお、第1ヘッダ410の下部ブロックの下部部分から複数の細径冷媒流路230、第2ヘッダ420の下部ブロック、第1ヘッダ410の下部ブロックの上部部分を介して、共通流出口340に至る流路、および、第1ヘッダ410の上部ブロックの下部部分から複数の細径冷媒流路230、第2ヘッダ420の上部ブロック、第1ヘッダ410の上部ブロックの上部部分を介して、共通流出口340に至る流路が、それぞれ本発明における分流路に相当する。
【0027】
このように構成されたマイクロチャネル熱交換器300では、第1ブロック310と第2ブロック320において、第1実施形態で説明した分流処理と熱交換動作が実行される。即ち、分流処理では、
図4に示すように、各ヘッダ410,420内に設けたオリフィス360’,360’’,370’,370’’によって加速させた冷媒液を上部壁にぶつけることによって渦を発生させ、これにより冷媒液を細径冷媒流路内に均等に分配することができる。第1ブロック310と第2ブロック320は、流入した冷媒液をガス化して冷媒ガスのみを生成し、生成した冷媒ガスを共通流出口340からコンプレッサー160に供給する。従って、この実施形態の空気調和機によれば、マイクロチャネル熱交換器を2つのブロックに分割し、各ブロックの細径冷媒流路パスに流れる冷媒量を減らすことにより、圧力損失を低減することができる。なお、オリフィス360’,360’’,370’,370’’は、第1ヘッダ410及び第2ヘッダ420の両方の各ブロックに設けられたが、これには限られない。すなわち、第1ヘッダ410及び第2ヘッダ420のうち少なくとも一方のヘッダの少なくとも1つのブロックに、内部を流れる冷媒の流速を高めるオリフィスが設けられていればよい。
【0028】
実施形態では、マイクロチャネル熱交換器200は
図1の第1熱交換器110の構成例として説明したが、冷房運転時に蒸発器として動作する第2熱交換器130においても同じ形状の構成を実施しても良い。冷房運転時に第2熱交換器130で生成した冷媒ガスは、図示しない四方弁を経由してコンプレッサー160に送出される。なお、冷房運転時では、第1熱交換器110は凝縮器として動作する。したがって、第1熱交換器110および第2熱交換器130の両方を実施形態に示すマイクロチャネル熱交換器で構成しても良い。また、
図4の共通流出口340から送出される冷媒ガスに対して、
図1のガス調整機能部190によりガス調整を施してコンプレッサー160に冷媒ガスを供給するようにしても良い。
【0029】
以上で説明したように、第1実施形態のマイクロチャネル熱交換器200によれば、上流側の流路を構成する第1ヘッダ210と第1ヘッダ210からの冷媒が導入される第2ヘッダ220と、第1ヘッダ210と第2ヘッダ220との間を接続する複数の細径冷媒流路230と、複数の細径冷媒流路230に接合される伝熱フィン240とによって構成されるマイクロチャネル熱交換器200において、第1ヘッダ210及び第2ヘッダ220のうち少なくとも一方のヘッダは、内部を流れる冷媒の流速を高めるオリフィス250を、当該ヘッダに接続される下流側の複数の細径冷媒流路230よりも上流側に備えた構成であるので、ヘッダ内に設けたオリフィス250によって、冷媒液をヘッダ上部壁に当てて渦を発生させることができる。これにより、冷媒液が重力で下方に偏らないようにし、分流不良を発生しないようにすることができる。また、ヘッダ内の冷媒液を複数の冷媒管に均等に分配し易くすることができる。その結果、ドライアウトの発生を抑制できる。また、第1ヘッダ210又は第2ヘッダ220にオリフィス250を設ける構成であるため、ヘッダ内の流路を複雑な形状に加工する必要が無く、加工が容易になる。その結果、製造コストを削減することができる。
【0030】
また、第1オリフィス250’よりも上流側にメッシュ270が設けられるので、このメッシュ270により、第1ヘッダ210に流入される冷媒液に対して乱流を起こすことができる。これにより、第1ヘッダ210内の冷媒液を複数の細径冷媒流路230に一段と均等に分配し易くすることができる。なお、メッシュは、第2オリフィス250’’の直前、すなわち、第2オリフィス250’’と上流側の複数の細径冷媒流路230の開口との間に設けることもできる。
【0031】
さらに、第1ヘッダ210と接続され、当該第1ヘッダ210に向けて冷媒が通過する流入口260を備え、流入口260にメッシュ270が設けられるので、第1ヘッダ210に流入される冷媒液に対して乱流を起こすことができる。これにより、第1ヘッダ210内の冷媒液を複数の細径冷媒流路230に一段と均等に分配し易くすることができる。また、第1ヘッダ210内にメッシュを設ける構成と比較して、メッシュを取り付けやすくなる。
【0032】
また、第2ヘッダ220は、上流側の複数の細径冷媒流路230の接続位置と下流側の複数の細径冷媒流路230の接続位置との間に第2オリフィス250’’を備えた構成であるので、第2オリフィス250’’によって、第2ヘッダ220内においても冷媒液を第2ヘッダ220内の上部壁に当てて渦を発生させることができる。これにより、第2ヘッダ220内において、冷媒液が重力で下方に偏らないようにし、分流不良を発生しないようにすることができる。したがって、第2ヘッダ220内の冷媒液を複数の細径冷媒流路230に均等に分配し易くすることができる。
【0033】
さらに、気液二相冷媒を液体冷媒と気体冷媒とに分離する気液分離器150を第1ヘッダ210よりも上流側に備え、気液分離器150からの液体冷媒を第1ヘッダ210に導入可能にした構成であるので、第1ヘッダ210には冷媒液のみが供給されるようになる。これにより、複数の細径冷媒流路230により一層冷媒を均等に分配し易くすることができる。また、気液分離器150により、コンプレッサー160に冷媒ガスだけを流すことができ、第1熱交換器130に冷媒ガスだけを流しやすくなる。
【0034】
また、第1ヘッダ及び第2ヘッダを迂回するガス調整機能部190を備え、ガス調整機能部190によってコンプレッサーへのガス調整が行われるため、ガス調整機能部190に対する圧力調整により、コンプレッサーに送出される冷媒ガスの圧力を調整することができる。これにより、コンプレッサー160の仕事量を減らすことができる。
【0035】
さらに、
図4に示す他の実施形態では、第1ヘッダ410及び第2ヘッダ420は、それぞれ隔壁によって複数のブロックに区画され、少なくとも第1ヘッダ410のブロック、第2ヘッダ420のブロック及び複数の細径冷媒流路230からなる分流路が複数形成され、各分流路に冷媒を分流する分流器330を備え、第1ヘッダ410及び第2ヘッダ420のうち少なくとも一方のヘッダの少なくとも1つのブロックは、内部を流れる冷媒の流速を高めるオリフィスを、当該ブロックに接続される下流側の複数の細径冷媒流路230よりも上流側に備えた構成であるので、各ブロックの冷媒管に流れる冷媒量を減らすことにより、圧力損失を低減することができる。また、各ブロックのヘッダ内に設けたオリフィスによって、冷媒液をヘッダ上部壁に当てて渦を発生させることにより、冷媒液が下方に偏らないようにし、分流不良を発生しないようにすることができる。これにより、各ブロックのヘッダ内の冷媒液を複数の細径冷媒流路230に均等に分配し易くすることができる。
【0036】
また、流入口315,325が第1ヘッダ410の上流側のブロック毎(すなわち、第1ヘッダ410の上部ブロックの下部部分および第1ヘッダ410の下部ブロックの下部部分)に複数設けられ、各流入口315,325にそれぞれメッシュが設けられる構成としたので、メッシュにより、第1ヘッダ410の各ブロックに流入される冷媒液に対して乱流を起こすことができる。これにより、第1ヘッダ410内の各ブロックから冷媒液を複数の細径冷媒流路230に一段と均等に分配し易くすることができる。
【0037】
そして、上記のようなマイクロチャネル熱交換器を空気調和機100の室外機120に搭載したので、室外機120の第1熱交換器110における分流不良が抑制された空気調和機100を提供することができる。
【0038】
また、上記のようなマイクロチャネル熱交換器を空気調和機100の室内機140に搭載すれば、室内機140の第2熱交換器に130における分流不良が抑制された空気調和機100を提供することができる。
【0039】
なお、本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
100…空気調和機、 110…第1熱交換器、 120…室外機、
130…第1熱交換器、 140…室内機、 150…気液分離器
160…コンプレッサー(圧縮機)、 170…第1膨張弁、 180…第2膨張弁、 190…ガス調整部、
200,300…マイクロチャネル熱交換器、
210…第1ヘッダ、 220…第2ヘッダ、
230a、230b…細径冷媒流路、 240…フィン、
250’…第1オリフィス、 250’’…第2オリフィス、 260…流入口、
270…メッシュ、 280,290…上部壁、
295…流出口、 310…第1ブロック、 320…第2ブロック、
330…分流器、 340…共通流出口、