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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】レーザ溶着装置、及びレーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/16 20060101AFI20240412BHJP
【FI】
B29C65/16
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020155523
(22)【出願日】2020-09-16
(65)【公開番号】P2022049354
(43)【公開日】2022-03-29
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518228345
【氏名又は名称】株式会社広島
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】井上 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】楓 祐二
(72)【発明者】
【氏名】隈元 周
(72)【発明者】
【氏名】國枝 秀明
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-111927(JP,A)
【文献】特開2005-035069(JP,A)
【文献】特開2009-119832(JP,A)
【文献】特開2006-044122(JP,A)
【文献】特開2008-254404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00-65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を透過させるレーザ光透過性樹脂からなり第1接触面を有する第1樹脂部材と、レーザ光を吸収するレーザ光吸収性樹脂からなり第2接触面を有する第2樹脂部材とを、前記第1接触面と前記第2接触面とが接触するように重ね合わせた状態で、前記第1接触面及び前記第2接触面をレーザ光により溶融して接合するレーザ溶着装置であって、
重ね合わされた前記第1樹脂部材及び前記第2樹脂部材のうち少なくとも一方の樹脂部材に当接して加圧力を付与する加圧部と、
前記第1樹脂部材を透過するレーザ光を出射するレーザ出射部と、
前記レーザ出射部が出射する前記レーザ光のレーザ出力を制御するレーザ制御部と、
前記第1樹脂部材と前記第2樹脂部材との重ね合わせ方向における前記第1接触面及び前記第2接触面の少なくとも一方の接触面の変位を測定する変位センサと、
前記変位センサから前記接触面の変位量を連続的もしくは断続的に取得し、取得した前記接触面の変位量に基づいて、前記加圧力を増減させるように前記加圧部を制御する制御部と、を備えたレーザ溶着装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記変位センサから取得した前記接触面の変位量に基づいて前記第2樹脂部材の熱膨張に伴う前記接触面の変位の変化を検知すると、前記加圧力を予め設定された時間増加させるように前記加圧部を制御し、その後、前記変位センサから取得した前記接触面の変位量に基づいて前記接触面の変位の方向が反転したことを検知すると、前記加圧力を段階的に低減させるように前記加圧部を制御する請求項1に記載のレーザ溶着装置。
【請求項3】
前記レーザ制御部は、前記変位センサで測定された変位の方向が反転したら、前記レーザ出力を予め設定された設定時間段階的に増加させるように前記レーザ出射部を制御する請求項2に記載のレーザ溶着装置。
【請求項4】
前記レーザ制御部は、前記設定時間が経過すると、前記レーザ出力を徐々に低下させるように前記レーザ出射部を制御する請求項3に記載のレーザ溶着装置。
【請求項5】
前記変位センサは、接触式の変位センサである請求項1に記載のレーザ溶着装置。
【請求項6】
前記加圧部が当接する前記第1樹脂部材及び前記第2樹脂部材のうち少なくとも一方の樹脂部材から前記加圧部に加わる反力を測定する反力測定センサを更に備え、
前記制御部は、前記反力測定センサで測定された反力を取得し、前記変位センサから取得した前記接触面の変位量及び前記反力測定センサから取得した反力に基づいて、前記加圧力を増減させるように前記加圧部を制御する請求項1から請求項5の何れか1項に記載のレーザ溶着装置。
【請求項7】
レーザ光を透過させるレーザ光透過性樹脂からなり第1接触面を有する第1樹脂部材と、レーザ光を吸収するレーザ光吸収性樹脂からなり第2接触面を有する第2樹脂部材とを、前記第1接触面と前記第2接触面とが接触するように重ね合わせた状態で、前記第1接触面及び前記第2接触面をレーザ光により溶融して接合する樹脂部材同士のレーザ溶着に使用されるレーザ加工装置であって、
前記第1樹脂部材を透過するレーザ光を出射するレーザ出射部と、
前記レーザ出射部が出射する前記レーザ光のレーザ出力を制御するレーザ制御部と、
前記第1樹脂部材と前記第2樹脂部材との重ね合わせ方向における前記第1接触面及び前記第2接触面の少なくとも一方の接触面の変位を測定する変位センサで測定された前記接触面の変位量に応じた測定信号が入力される入力部と、を備え、
前記レーザ制御部は、前記入力部に入力された前記測定信号に基づいて、前記レーザ出力を段階的に変化させるように前記レーザ出射部を制御するレーザ加工装置。
【請求項8】
前記レーザ制御部は、前記入力部に入力された前記測定信号に基づいて前記第2樹脂部材の熱膨張に伴う前記接触面の変位の変化を検知した後、前記測定信号に基づいて前記接触面の変位の方向が反転したことを検知すると、前記レーザ出力を予め設定された設定時間段階的に増加させるように前記レーザ出射部を制御する請求項7に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
前記入力部には、重ね合わされた前記第1樹脂部材及び前記第2樹脂部材のうち少なくとも一方の樹脂部材に当接して加圧する加圧部が当該樹脂部材に付与する加圧力に応じた加圧制御信号が更に入力され、
前記レーザ制御部は、前記入力部に入力された前記測定信号に基づいて前記第2樹脂部材の熱膨張に伴う前記接触面の変位の変化を検知した時点、及び、前記入力部に入力された前記加圧制御信号に基づいて前記加圧力が増加されたことを検知した時点の何れか一方の時点から、前記レーザ出力を予め設定された設定時間段階的に増加させるように前記レーザ出射部を制御する請求項7に記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
前記レーザ制御部は、前記設定時間が経過すると、前記レーザ出力を徐々に低下させるように前記レーザ出射部を制御する請求項8に記載のレーザ加工装置。
【請求項11】
前記入力部には、重ね合わされた前記第1樹脂部材及び前記第2樹脂部材のうち少なくとも一方の樹脂部材に当接して加圧する加圧部が当該樹脂部材に付与する加圧力に応じた加圧制御信号が更に入力され、
前記レーザ制御部は、前記入力部に入力された前記加圧制御信号に基づいて前記加圧力が段階的に低下されていることを検知し、かつ、前記入力部に入力された前記測定信号に基づいて前記接触面の変位の変化量が予め設定された時間一定であることを検知すると、前記レーザ出力を徐々に低下させるように前記レーザ出射部を制御する請求項7から請求項9の何れか1項に記載のレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ溶着装置、及びレーザ加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、重ね合わされた2つの樹脂部材をレーザ溶着によって接合するレーザ溶着装置がある。このようなレーザ溶着装置には、樹脂部材同士の溶着が不十分となることを抑制するために、2つの樹脂部材の接触面同士が密着するようにクランプ等の治具で加圧しながらレーザ溶着を行うものが各種提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されたレーザ溶着装置は、2つの樹脂部材をクランプ爪にてクランプしたときのクランプ爪に加わる反力の発生状況を検知し、検知した反力に応じて2つの樹脂部材が適正に密着するようにクランプ爪による加圧力を調整する。その後、同レーザ溶着装置は、クランプ爪から2つの樹脂部材に調整された加圧力が加えられた状態で当該2つの樹脂部材をレーザ溶着する。
【0004】
また、特許文献2には、クランプ機構による加圧力により密着された2つの樹脂部材の接触面にレーザ光が照射されたことに伴う同接触面における温度変化を検知し、検知した温度変化に応じてクランプ機構による加圧力を調整する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献3に記載されたレーザ溶着装置は、2つの樹脂部材が密着するように加圧する治具から当該2つの樹脂部材に付与される加圧力を漸増させるとともに、当該治具に作用する反力を検知し、当該治具の変位に対する検知した反力の傾きの変化を求める。そして、同レーザ溶着装置は、反力の傾きが角度を大きくする方向へ変化したときに、治具から2つの樹脂部材に付与される加圧力の漸増を停止する。その後、同レーザ溶着装置は、樹脂部材への加圧力の漸増が停止されたときの加圧力を治具から2つの樹脂部材に付与した状態で当該2つの樹脂部材をレーザ溶着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-44122号公報
【文献】特開2007-111927号公報
【文献】特開2008-254404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、レーザ溶着される2つの樹脂部材のうち一方の樹脂部材は、レーザ光を透過させるレーザ光透過性樹脂からなるとともに、他方の樹脂部材は、レーザ光を吸収するレーザ光吸収性樹脂からなる。そして、レーザ溶着される2つの樹脂部材のうちレーザ光を吸収する樹脂部材は、レーザ溶着の過程で、レーザ光を吸収することにより熱膨張する。また、レーザ溶着される2つの樹脂部材は、レーザ溶着の過程で、重ね合わされた2つの樹脂部材の接触面付近の硬さが変化したり、溶融したり、凝固したり、様々な変化を伴う。そのため、レーザ溶着の過程で、2つの樹脂部材の状態に応じた適切な加圧力を当該2つの樹脂部材に付与することが好ましい。また、レーザ溶着の過程で、2つの樹脂部材の状態に応じた適切なレーザ光の照射を行うことが好ましい。
【0008】
例えば、レーザ溶着の過程で2つの樹脂部材に付与される加圧力が大きすぎると、バリが過剰に発生したり、残留応力によって溶着後の樹脂部材に割れが発生したりすることが懸念される。その一方、レーザ溶着の過程で2つの樹脂部材に付与される加圧力が不足すると、樹脂部材同士の密着が不十分になるおそれがある。樹脂部材同士の密着が不十分な状態では、重ね合わされた2つの樹脂部材の接触面間に微小な隙間が存在する。そのため、この状態でレーザ溶着を行うと、当該微小な隙間が存在するために、レーザ光吸収性樹脂からなる樹脂部材からレーザ光透過樹脂からなる樹脂部材へ熱伝導し難くなる。すると、レーザ光吸収性樹脂からなる樹脂材料は、熱伝導が良好に行われないままレーザ光を吸収し続けることになるため、炭化する可能性がある。同時に、レーザ光透過性樹脂からなる樹脂部材は、レーザ光吸収性樹脂からなる樹脂部材からの熱伝導が良好に行われないために、溶融が不十分となる可能性がある。
【0009】
特許文献1及び特許文献3に記載されたレーザ溶着装置は、レーザ溶着を行う前の状態において、2つの樹脂部材に加圧力を付与することにより当該2つの樹脂部材を密着させている。しかしながら、特許文献1及び特許文献3には、レーザ溶着の過程において、2つの樹脂部材に付与する加圧力を調整することについては記載されていない。そのため、レーザ溶着を行う前に調整された2つの樹脂部材に付与する加圧力の大きさによっては、溶着された樹脂部材にバリが過剰に発生したり、割れが発生したりするおそれがある。
【0010】
また、特許文献2に記載されているように、レーザ溶着の過程において、2つの樹脂部材の接触面の温度を検知し、検知した温度に応じて2つの樹脂部材に付与する加圧力を調整する場合、検知される温度変化が微小であると、その微小な温度変化に応じて加圧力を調整することが難しいという問題がある。更に、2つの樹脂部材の接触面における温度変化に応じてリアルタイムに加圧力を制御しようとした場合には、2つの樹脂部材の接触面における温度変化の速度に対して、加圧力を調整する制御が遅れるおそれがある。そのため、レーザ溶着される2つの樹脂部材に対して、レーザ溶着の過程において樹脂部材の状態に応じた適切な加圧力を付与できるか懸念がある。
【0011】
本開示の目的は、過剰なバリの発生及び樹脂部材の割れの発生を抑制できるレーザ溶着装置、及びレーザ加工装置を提供することにある。もう少し言及すると、本開示の目的は、樹脂部材同士の密着不足による樹脂部材の炭化及び溶融不足を抑制できるレーザ溶着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するレーザ溶着装置は、レーザ光を透過させるレーザ光透過性樹脂からなり第1接触面を有する第1樹脂部材と、レーザ光を吸収するレーザ光吸収性樹脂からなり第2接触面を有する第2樹脂部材とを、前記第1接触面と前記第2接触面とが接触するように重ね合わせた状態で、前記第1接触面及び前記第2接触面をレーザ光により溶融して接合するレーザ溶着装置であって、重ね合わされた前記第1樹脂部材及び前記第2樹脂部材のうち少なくとも一方の樹脂部材に当接して加圧力を付与する加圧部と、前記第1樹脂部材を透過するレーザ光を出射するレーザ出射部と、前記レーザ出射部が出射する前記レーザ光のレーザ出力を制御するレーザ制御部と、前記第1樹脂部材と前記第2樹脂部材との重ね合わせ方向における前記第1接触面及び前記第2接触面の少なくとも一方の接触面の変位を測定する変位センサと、前記変位センサから前記接触面の変位量を連続的もしくは断続的に取得し、取得した前記接触面の変位量に基づいて、前記加圧力を増減させるように前記加圧部を制御する制御部と、を備えた。
【0013】
同構成によれば、第1樹脂部材と第2樹脂部材との重ね合わせ方向に変位する第1接触面及び第2接触面の少なくとも一方の接触面の変位量に基づいて、第1樹脂部材及び第2樹脂部材に付与する加圧力を増減する。第1接触面及び第2接触面は、レーザ溶着の過程で、第1樹脂部材の状態及び第2樹脂部材の状態に応じて重ね合わせ方向に変位する。従って、重ね合わせ方向における第1接触面及び第2接触面の変位は、レーザ溶着の過程における第1樹脂部材及び第2樹脂部材の状態に応じて変化する。このような第1接触面及び第2接触面の少なくとも一方の接触面の変位量に基づいて、第1樹脂部材及び第2樹脂部材に付与する加圧力を増減する。よって、レーザ溶着される第1樹脂部材及び第2樹脂部材に対して、レーザ溶着の過程において第1樹脂部材及び第2樹脂部材の状態に応じた適切な加圧力の付与を行うことができる。その結果、過剰なバリの発生、並びに、第1樹脂部材及び第2樹脂部材の割れの発生を抑制できる。また、樹脂部材同士の密着不足による樹脂部材の炭化及び溶融不足を抑制できる。
【0014】
上記レーザ溶着装置において、前記制御部は、前記変位センサから取得した前記接触面の変位量に基づいて前記第2樹脂部材の熱膨張に伴う前記接触面の変位の変化を検知すると、前記加圧力を予め設定された時間増加させるように前記加圧部を制御し、その後、前記変位センサから取得した前記接触面の変位量に基づいて前記接触面の変位の方向が反転したことを検知すると、前記加圧力を段階的に低減させるように前記加圧部を制御することが好ましい。
【0015】
同構成によれば、第2樹脂部材の熱膨張に伴う接触面の変位の変化が検知されると、第1樹脂部材及び第2樹脂部材に付与される加圧力が予め設定された時間増加される。従って、第2樹脂部材の熱膨張によって、第2接触面に対して第1樹脂部材が浮き上がることが抑制される。よって、第2樹脂部材が熱膨張している間も、第1接触面と第2接触面とを良好に密着させることができる。
【0016】
また、接触面の変位の方向が反転したことが検知されると、第1樹脂部材及び第2樹脂部材に付与される加圧力が段階的に低減される。第2樹脂部材の軟化が始まると、変位センサで測定している接触面の変位の方向が反転する。従って、第2樹脂部材の軟化が始まったことに応じて、第1樹脂部材及び第2樹脂部材に付与される加圧力が段階的に低減されることになる。よって、第1接触面及び第2接触面の外周に軟化した樹脂が押し出される量を低減できる。
【0017】
上記レーザ溶着装置において、前記レーザ制御部は、前記変位センサで測定された変位の方向が反転したら、前記レーザ出力を予め設定された設定時間段階的に増加させるように前記レーザ出射部を制御することが好ましい。
【0018】
同構成によれば、第2樹脂部材の軟化が始まってから、第2接触面に照射するレーザ光のレーザ出力を段階的に増加させることができる。従って、第2樹脂部材の状態に応じてレーザ光の照射を行うことができる。
【0019】
上記レーザ溶着装置において、前記レーザ制御部は、前記設定時間が経過すると、前記レーザ出力を徐々に低下させるように前記レーザ出射部を制御することが好ましい。
同構成によれば、レーザ出力を徐々に低下させることにより、溶融して互いに接合された状態の第1接触面及び第2接触面が徐々に冷却される。更に、第1樹脂部材及び第2樹脂部材に付与される加圧力が段階的に低下されているときに、第1接触面及び第2接触面が徐々に冷却される。従って、冷却後の第1樹脂部材及び第2樹脂部材に生じる残留応力をより低減できる。その結果、第1樹脂部材及び第2樹脂部材の割れの発生をより抑制できる。
【0020】
上記レーザ溶着装置において、前記変位センサは、接触式の変位センサであることが好ましい。
同構成によれば、接触式の変位センサを用いることにより、例えば光学式の変位センサを用いる場合に比べて、接触面の変位を直接的に測定するためより精度良く接触面の変位を検知できる。また、測定精度が同等である接触式の変位センサと光学式の変位センサとを比較した場合、接触式の変位センサの方が、比較的安価に接触面の変位を精度良く検知できる。
【0021】
上記レーザ溶着装置において、前記加圧部が当接する前記第1樹脂部材及び前記第2樹脂部材のうち少なくとも一方の樹脂部材から前記加圧部に加わる反力を測定する反力測定センサを更に備え、前記制御部は、前記反力測定センサで測定された反力を取得し、前記変位センサから取得した前記接触面の変位量及び前記反力測定センサから取得した反力に基づいて、前記加圧力を増減させるように前記加圧部を制御することが好ましい。
【0022】
同構成によれば、第1樹脂部材及び第2樹脂部材に付与する加圧力を、接触面の変位量だけでなく、第1樹脂部材及び第2樹脂部材のうち少なくとも一方の樹脂部材から加圧部に加わる反力に基づいて増減する。加圧部が当接する第1樹脂部材及び第2樹脂部材のうち少なくとも一方の樹脂部材から加圧部に加わる反力は、レーザ溶着の過程における第1樹脂部材及び第2樹脂部材の状態に応じて変化する。従って、当該反力に基づいても、第1樹脂部材及び第2樹脂部材に付与する加圧力を増減することにより、レーザ溶着される第1樹脂部材及び第2樹脂部材に対して、レーザ溶着の過程において第1樹脂部材及び第2樹脂部材の状態に応じたより適切な加圧力の付与を行うことができる。その結果、過剰なバリの発生、並びに、第1樹脂部材及び第2樹脂部材の割れの発生をより抑制できる。
【0023】
上記課題を解決するレーザ加工装置は、レーザ光を透過させるレーザ光透過性樹脂からなり第1接触面を有する第1樹脂部材と、レーザ光を吸収するレーザ光吸収性樹脂からなり第2接触面を有する第2樹脂部材とを、前記第1接触面と前記第2接触面とが接触するように重ね合わせた状態で、前記第1接触面及び前記第2接触面をレーザ光により溶融して接合する樹脂部材同士のレーザ溶着に使用されるレーザ加工装置であって、前記第1樹脂部材を透過するレーザ光を出射するレーザ出射部と、前記レーザ出射部が出射する前記レーザ光のレーザ出力を制御するレーザ制御部と、前記第1樹脂部材と前記第2樹脂部材との重ね合わせ方向における前記第1接触面及び前記第2接触面の少なくとも一方の接触面の変位を測定する変位センサで測定された前記接触面の変位量に応じた測定信号が入力される入力部と、を備え、前記レーザ制御部は、前記入力部に入力された前記測定信号に基づいて、前記レーザ出力を段階的に変化させるように前記レーザ出射部を制御する。
【0024】
同構成によれば、第1樹脂部材と第2樹脂部材との重ね合わせ方向に変位する第1接触面及び第2接触面の少なくとも一方の接触面の変位量に基づいて、第2接触面に照射するレーザ光のレーザ出力を段階的に変化させる。第1接触面及び第2接触面は、レーザ溶着の過程で、第1樹脂部材の状態及び第2樹脂部材の状態に応じて重ね合わせ方向に変位する。従って、重ね合わせ方向における第1接触面及び第2接触面の変位は、レーザ溶着の過程における第1樹脂部材及び第2樹脂部材の状態に応じて変化する。このような第1接触面及び第2接触面の少なくとも一方の接触面の変位量に基づいて、第2接触面に照射するレーザ光のレーザ出力を段階的に変化させる。よって、レーザ溶着される第1樹脂部材及び第2樹脂部材に対して、レーザ溶着の過程において第1樹脂部材及び第2樹脂部材の状態に応じた適切なレーザ光の照射を行うことができる。その結果、過剰なバリの発生、並びに、第1樹脂部材及び第2樹脂部材の割れの発生を抑制できる。
【0025】
上記レーザ加工装置において、前記レーザ制御部は、前記入力部に入力された前記測定信号に基づいて前記第2樹脂部材の熱膨張に伴う前記接触面の変位の変化を検知した後、前記測定信号に基づいて前記接触面の変位の方向が反転したことを検知すると、前記レーザ出力を予め設定された設定時間段階的に増加させるように前記レーザ出射部を制御することが好ましい。
【0026】
同構成によれば、第2樹脂部材の軟化が始まってから、第2接触面に照射するレーザ光のレーザ出力を段階的に増加させることができる。従って、第2樹脂部材の状態に応じてレーザ光の照射を行うことができる。その結果、第1樹脂部材と第2樹脂部材との接合品質を向上できる。
【0027】
上記レーザ加工装置において、前記入力部には、重ね合わされた前記第1樹脂部材及び前記第2樹脂部材のうち少なくとも一方の樹脂部材に当接して加圧する加圧部が当該樹脂部材に付与する加圧力に応じた加圧制御信号が更に入力され、前記レーザ制御部は、前記入力部に入力された前記測定信号に基づいて前記第2樹脂部材の熱膨張に伴う前記接触面の変位の変化を検知した時点、及び、前記入力部に入力された前記加圧制御信号に基づいて前記加圧力が増加されたことを検知した時点の何れか一方の時点から、前記レーザ出力を予め設定された設定時間段階的に増加させるように前記レーザ出射部を制御することが好ましい。
【0028】
同構成によれば、第2樹脂部材の熱膨張に伴う接触面の変位の変化が検知された時点からレーザ出力を段階的に増加させると、第2樹脂部材の熱膨張が始まってから、第2接触面に照射するレーザ光のレーザ出力を段階的に増加させることができる。また、第2樹脂部材の熱膨張に伴う接触面の変位の変化に基づいて加圧力が増加される場合において、加圧制御信号に基づいて加圧力が増加されたことを検知した時点からレーザ出力を段階的に増加させると、第2樹脂部材の熱膨張が始まってから、第2接触面に照射するレーザ光のレーザ出力を段階的に増加させることができる。従って、第2樹脂部材の状態に応じてレーザ光の照射を行うことができる。その結果、第1樹脂部材と第2樹脂部材との接合品質を向上できる。
【0029】
上記レーザ加工装置において、前記レーザ制御部は、前記設定時間が経過すると、前記レーザ出力を徐々に低下させるように前記レーザ出射部を制御することが好ましい。
同構成によれば、レーザ出力を徐々に低下させることにより、溶融して互いに接合された状態の第1接触面及び第2接触面が徐々に冷却される。従って、冷却後の第1樹脂部材及び第2樹脂部材に生じる残留応力をより低減できる。その結果、第1樹脂部材及び第2樹脂部材の割れの発生をより抑制できる。
【0030】
上記レーザ加工装置において、前記入力部には、重ね合わされた前記第1樹脂部材及び前記第2樹脂部材のうち少なくとも一方の樹脂部材に当接して加圧する加圧部が当該樹脂部材に付与する加圧力に応じた加圧制御信号が更に入力され、前記レーザ制御部は、前記入力部に入力された前記加圧制御信号に基づいて前記加圧力が段階的に低下されていることを検知し、かつ、前記入力部に入力された前記測定信号に基づいて前記接触面の変位の変化量が予め設定された時間一定であることを検知すると、前記レーザ出力を徐々に低下させるように前記レーザ出射部を制御することが好ましい。
【0031】
同構成によれば、レーザ出力を徐々に低下させることにより、溶融して互いに接合された状態の第1接触面及び第2接触面が徐々に冷却される。更に、第1樹脂部材及び第2樹脂部材に付与される加圧力が段階的に低下されているときに、第1接触面及び第2接触面が徐々に冷却される。従って、冷却後の第1樹脂部材及び第2樹脂部材に生じる残留応力をより低減できる。その結果、第1樹脂部材及び第2樹脂部材の割れの発生をより抑制できる。
【発明の効果】
【0032】
本開示のレーザ溶着装置、及びレーザ加工装置によれば、過剰なバリの発生及び樹脂部材の割れの発生を抑制できる。また、本開示のレーザ溶着装置によれば、樹脂部材同士の密着不足による樹脂部材の炭化及び溶融不足を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】一実施形態におけるレーザ溶着装置を示す模式図。
図2】(a)は、レーザ溶着時における樹脂部材の硬さと時間との関係を説明するための説明図、(b)は、レーザ溶着時におけるレーザ強度と時間との関係を説明するための説明図、(c)は、レーザ溶着時における樹脂部材に付与される加圧力と時間との関係を説明するための説明図。
図3】レーザ溶着時における樹脂部材の接触面の変位量と時間との関係を示すグラフ。
図4】レーザ溶着時における樹脂部材の接触面の変位量と時間との関係を示すグラフ。
図5】レーザ溶着時における樹脂部材の接触面の変位量と時間との関係を示すグラフ。
図6】変形例におけるレーザ溶着装置を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、レーザ溶着装置の一実施形態を図面に従って説明する。
なお、添付図面は、理解を容易にするために構成要素を拡大して示している場合がある。構成要素の寸法比率は実際のものと、または別の図面中のものと異なる場合がある。
【0035】
図1に示す本実施形態のレーザ溶着装置1は、第1樹脂部材11と第2樹脂部材21とを重ね合わせた状態でレーザ溶着する装置である。レーザ溶着装置1は、加圧部31と、レーザ出射部32と、レーザ制御部33と、変位センサ34と、制御部35とを備えている。なお、本実施形態のレーザ溶着装置1は、レーザ加工装置2を含む。レーザ加工装置2は、レーザ出射部32と、レーザ制御部33とを含む。因みに、レーザ出射部32及びレーザ制御部33は、レーザ加工装置2の一部としてレーザ溶着装置1に備えられるものでなくてもよい。
【0036】
加圧部31は、重ね合わされた第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21のうち少なくとも一方の樹脂部材に当接して加圧力を付与する。加圧部31は、例えば、可動ステージ41と、可動ステージ41と対向するように配置された天板42とを有する。また、加圧部31は、可動ステージ41を加圧する加圧調整部43と、加圧調整部43を制御する加圧制御コントローラ44とを有する。
【0037】
可動ステージ41は、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21が配置される配置面45を有する。配置面45は、平面状をなしている。
ここで、第1樹脂部材11は、レーザ光を透過させるレーザ光透過性樹脂からなり第1接触面12を有する。また、第1樹脂部材11は、同第1樹脂部材11における第1接触面12と反対側の側面に第1当接面13を有する。第2樹脂部材21は、レーザ光を吸収するレーザ光吸収性樹脂からなり第2接触面22を有する。また、第2樹脂部材21は、同第2樹脂部材21における第2接触面22と反対側の側面に第2当接面23を有する。第1樹脂部材11と第2樹脂部材21とは、第1接触面12と第2接触面22とが接触するように重ね合わされた状態で配置面45上に配置される。また、重ね合わされた第1樹脂部材11と第2樹脂部材21とは、第2当接面23が配置面45に当接した状態で配置面45上に配置される。
【0038】
なお、第1樹脂部材11と第2樹脂部材21とが重ね合わされた方向である重ね合わせ方向X1は、本実施形態では、第2接触面22と垂直な方向である。そして、第1樹脂部材11と第2樹脂部材21とが配置面45上に配置された状態においては、重ね合わせ方向X1は、配置面45と垂直をなす。
【0039】
天板42は、可動ステージ41との間に、重ね合わされた第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21を挟持するものである。天板42は、配置面45と対向するように配置されている。天板42は、レーザ光を透過しない材料よりなるものであってもよいし、レーザ光を透過するガラスなどの透明体よりなるものであってもよい。天板42がレーザ光を透過しない材料よりなる場合には、当該天板42は、レーザ光を通過させるための貫通孔を有する。当該貫通孔は、レーザ光が透過する物理的な空間を内側に有するものであってもよい。また、当該貫通孔は、例えば、光学ガラスなどのレーザ光が透過する部材が当該貫通孔の内側に配置されていてもよい。即ち、当該貫通孔は、光学窓を構成するものであってもよい。このように、天板42がレーザ光を透過しない材料よりなる場合には、天板42は、物理的な空間の有無にかかわらず、光学的にレーザ光が透過する部分を有するように構成される。
【0040】
本実施形態では、天板42は、金属材料よりなる。更に、天板42は、第1樹脂部材11を露出させるための貫通孔46を有する。本実施形態では、貫通孔46は、同貫通孔46の内側にレーザ光が透過する物理的な空間を有する。天板42は、配置面45上に配置された第1樹脂部材11の第1当接面13に当接可能である。
【0041】
加圧調整部43は、第1接触面12と第2接触面22とが密着するように第2樹脂部材21に加圧力を付与するべく可動ステージ41を配置面45と垂直な方向に加圧する機構である。加圧調整部43は、例えば、モータ式、空圧式、油圧式、ばね圧式のいずれかもしくは複数を用いて可動ステージ41を天板42に向けて加圧する。本実施形態の加圧調整部43には、例えば、サーボプレスが用いられる。
【0042】
加圧制御コントローラ44は、加圧調整部43から可動ステージ41に付与される加圧力を調整するべく、加圧調整部43を制御する。また、加圧制御コントローラ44は、可動ステージ41の移動速度を調整するべく、加圧調整部43を制御する。
【0043】
レーザ出射部32は、第1樹脂部材11を透過するレーザ光Lwを出射する。レーザ制御部33は、レーザ出射部32が出射するレーザ光Lwのレーザ出力を制御する。
レーザ制御部33は、レーザ光Lwを出射する図示しないレーザ発振器を有する。レーザ発振器は、例えばYAGレーザ、COレーザ、ファイバーレーザ、等のレーザ光源である。レーザ発振器が出射したレーザ光Lwは、光ファイバなどを介してレーザ出射部32へ供給される。なお、レーザ制御部33は、後述する測定信号S1及び加圧制御信号S2の少なくとも一方の電気信号が入力される入力部51を有していてもよい。また、レーザ発振器は、レーザ制御部33ではなくレーザ出射部32に含まれてもよい。
【0044】
レーザ出射部32は、レーザ制御部33から供給されたレーザ光Lwを、配置面45上に配置された第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21に向けて出射する。レーザ出射部32が出射したレーザ光Lwは、第1樹脂部材11を透過して第2樹脂部材21の第2接触面22に照射される。なお、レーザ出射部32が出射したレーザ光Lwは、本実施形態では、貫通孔46を貫通して第1樹脂部材11を透過する。
【0045】
レーザ制御部33は、レーザ発振器を制御することによりレーザ光Lwの出射タイミングを制御する。また、レーザ制御部33は、レーザ出射部32を制御することによりレーザ光Lwによる第2樹脂部材21の走査を制御する。具体的には、レーザ制御部33は、レーザ出射部32を制御することにより、例えば、レーザ光Lwの走査経路及び走査速度を制御する。また、レーザ制御部33は、レーザ出射部32を制御することにより第2接触面22におけるレーザ光Lwのスポット径を調整する。
【0046】
変位センサ34は、重ね合わせ方向X1における第1接触面12及び第2接触面22の少なくとも一方の接触面の変位を測定する。本実施形態の変位センサ34は、例えば、重ね合わせ方向X1における第2接触面22の変位を測定する。具体的には、本実施形態の変位センサ34は、配置面45と垂直な方向における配置面45の変位を測定することにより、配置面45上に配置された第2樹脂部材21の第2接触面22の変位を測定する。
【0047】
変位センサ34は、接触式の変位センサであってもよいし、レーザフォーカス式、超音波式、光学式、渦電流式などの非接触式の変位センサであってもよい。変位センサ34として、周知の変位センサを用いることができる。本実施形態の変位センサ34は、例えば、接触式の変位センサである。変位センサ34は、例えば、測定ヘッド61と、変位センサコントローラ62とを有する。
【0048】
測定ヘッド61は、接触子63を有する。本実施形態では、測定ヘッド61は、接触子63が配置面45に接触するように配置される。接触子63は、配置面45と垂直な方向における配置面45の移動に伴って配置面45と垂直な方向に移動される。これにより、測定ヘッド61は、配置面45と垂直な方向における配置面45の変位を測定する。
【0049】
変位センサコントローラ62は、接触子63の変位量を求める。即ち、変位センサコントローラ62は、接触子63の変位量を求めることにより、配置面45と垂直な方向における配置面45の変位を得る。本実施形態では、変位センサコントローラ62は、求めた接触子63の変位量、即ち、重ね合わせ方向X1における第2接触面22の変位量を出力する。
【0050】
制御部35は、例えばプログラマブルコントローラ(PLC)やパソコンなどである。制御部35は、記憶部、タイマなどを有していてもよい。
制御部35は、変位センサ34から第2接触面22の変位量を連続的もしくは断続的に取得し、取得した第2接触面22の変位量に基づいて、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21に付与する加圧力を増減させるように加圧部31を制御する。制御部35は、取得した第2接触面22の変位量に基づいて第2樹脂部材21に付与する加圧力を算出する。制御部35は、算出した加圧力を加圧部31に出力する。また、制御部35は、可動ステージ41の移動速度を制御すべく加圧部31を制御してもよい。
【0051】
制御部35は、変位センサ34から取得した変位量に応じた測定信号S1を入力部51に出力する。本実施形態では、測定信号S1は、変位センサ34で測定された第2接触面22の変位量に応じた電気信号である。測定信号S1は、連続的もしくは断続的に入力部51に入力される。
【0052】
また、制御部35は、加圧部31が第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の少なくとも一方に付与する加圧力に応じた加圧制御信号S2を入力部51に出力してもよい。本実施形態では、加圧制御信号S2は、加圧部31が第2樹脂部材21に付与する加圧力に応じた電気信号である。加圧制御信号S2は、連続的もしくは断続的に入力部51に入力されてもよい。また、加圧制御信号S2は、加圧部31が第2樹脂部材21に付与する加圧力が変化したときに入力部51に入力されてもよい。
【0053】
(レーザ溶着装置の動作)
次に、上記のように構成されたレーザ溶着装置1の動作について説明する。
図2(a)は、レーザ溶着装置1でレーザ溶着を行う場合における、時間とワークの硬さとの関係を示している。本実施形態では、ワークの硬さは、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21における溶着される部分の硬さに該当する。図2(b)は、レーザ溶着装置1でレーザ溶着を行う場合における、時間と、レーザ出射部32から出射されるレーザ光Lwの強度との関係を示している。図2(c)は、レーザ溶着装置1でレーザ溶着を行う場合における、時間と加圧部31による加圧力との関係を示している。なお、図2に示した、レーザ吸収・発熱、膨張、軟化、溶融、冷却、及び接合完了は、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の状態変化の過程を示している。各段階の時間は、例示的に示したものであり、実際の時間とは異なる場合がある。
【0054】
図3は、レーザ溶着を行う場合における、変位センサ34で測定される変位量と時間との関係を示すグラフである。図3には、変位センサ34で測定された変位量に基づいて第2樹脂部材21に付与する加圧力を増減させてレーザ溶着を行う場合の、変位センサ34で測定される変位量と時間との関係を実線で示している。また、樹脂部材に付与する加圧力を一定としてレーザ溶着を行う場合に、変位センサで測定される変位量と時間との関係を二点鎖線で示している。
【0055】
図1に示すように、まず、第1樹脂部材11と第2樹脂部材21とは、第1接触面12と第2接触面22とが接触するように重ね合わされた状態で、可動ステージ41の配置面45上に配置される。このとき、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21は、第2樹脂部材21の第2当接面23が配置面45に当接した状態となるように配置面45上に配置される。第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21が配置面45上に配置された状態においては、重ね合わせ方向X1は、配置面45と垂直な方向に概ね一致する。
【0056】
第1樹脂部材11と第2樹脂部材21とは、第1樹脂部材11の第1当接面13に当接する天板42と可動ステージ41とによって挟持される。天板42は、第1樹脂部材11に当接した状態においては、配置面45と垂直な方向、即ち重ね合わせ方向X1に変位しない。
【0057】
制御部35は、第2樹脂部材21に加圧力を付与するように加圧部31を制御する。これにより、第1樹脂部材11と第2樹脂部材21とが重ね合わせ方向X1に密着するように加圧部31から第2樹脂部材21に加圧力が付与される。なお、変位センサ34は、配置面45と垂直な方向における配置面45の変位を測定している。そして、制御部35は、変位センサ34から第2接触面22の変位量を連続的もしくは断続的に取得している。更に、制御部35は、変位センサ34から取得した第2接触面22の変位量に応じた測定信号S1を連続的もしくは断続的に入力部51に入力する。また、制御部35は、加圧制御信号S2を入力部51に入力してもよい。本実施形態では、制御部35は、加圧制御信号S2を入力部51に入力するものとする。
【0058】
なお、レーザ溶着後における第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の重ね合わせ方向X1の厚さが所望の厚さとなるように、変位センサ34で測定される変位量について予め目標変位量Tdが設定される。即ち、第1樹脂部材11と第2樹脂部材21との接合が完了した状態のときに、変位センサ34で測定される変位量が目標変位量Tdとなるように、第1樹脂部材11と第2樹脂部材21とのレーザ溶着が行われる。例えば、本実施形態では、目標変位量Tdは、250μmに設定されている。
【0059】
第1樹脂部材11と第2樹脂部材21とを重ね合わせ方向X1に密着させるための加圧が完了した後、レーザ制御部33がレーザ光Lwの出射を開始するようにレーザ出射部32を制御する。なお、本実施形態では、変位センサ34は、レーザ光Lwの出射が開始された時点での重ね合わせ方向X1における第2接触面22の位置を基準位置として、当該基準位置からの第2接触面22の変位量を測定する。即ち、本実施形態では、変位センサ34は、レーザ光Lwの出射が開始された時点での重ね合わせ方向X1における配置面45の位置を基準位置として、当該基準位置からの配置面45の変位量を測定する。従って、本実施形態では、第2接触面22が基準位置にあるとき、即ち配置面45が基準位置にあるときには、変位センサ34で測定される変位量は0である。レーザ出射部32から出射されたレーザ光Lwは、第1樹脂部材11を透過して第2樹脂部材21の第2接触面22に照射される。第2樹脂部材21は、レーザ光Lwを吸収して発熱し始める。
【0060】
図1図3に示すように、第2樹脂部材21がレーザ光Lwを吸収して発熱する段階では、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の硬さは変化せず一定である。このため、変位センサ34で測定される変位量に変化は無い。また、同段階では、レーザ光Lwの強度は一定にされている。また、同段階では、加圧部31が付与する加圧力は、一定の大きさに維持されている。
【0061】
レーザ光Lwの出射が開始されてから時間T1が経過すると、第2樹脂部材21が熱膨張し始める。第2樹脂部材21が熱膨張する段階では、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の硬さは、第2樹脂部材21がレーザ光Lwを吸収して発熱する段階と変わらず一定である。また、第2樹脂部材21が熱膨張する段階では、レーザ光Lwの強度は、第2樹脂部材21がレーザ光Lwを吸収して発熱する段階と同じ強度で一定にされている。
【0062】
第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の硬さが変わらないまま第2樹脂部材21が熱膨張するため、第2樹脂部材21の体積変化によって可動ステージ41が加圧部31による加圧方向と反対方向に押し戻される。従って、変位センサ34で測定される配置面45の変位が変化する。ここで、配置面45の変位の方向について、加圧部31が付与する加圧力と同じ方向の変位をプラス側の変位とし、当該加圧力と反対方向の変位をマイナス側の変位とする。即ち、重ね合わせ方向X1における第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の厚さが薄くなる方向の変位をプラス側の変位、当該厚さが厚くなる方向の変位をマイナス側の変位とする。
【0063】
第2樹脂部材21の熱膨張に伴って配置面45がマイナス側に変位すると、当該変位の方向及び変位量が変位センサ34で測定される。制御部35は、変位センサ34から取得した変位量に基づいて第2樹脂部材21の熱膨張に伴う第2接触面22の変位の変化を検知する。即ち、制御部35は、変位センサ34から取得した変位量に基づいて配置面45がマイナス側に変位したことを検知することにより、第2樹脂部材21の熱膨張に伴う第2接触面22の変位の変化を検知する。制御部35は、例えば、時間に対する変位量の傾きがマイナス側に傾いたことを検知すると、配置面45がマイナス側に変位したと判定する。また、制御部35は、時間に対する変位量の傾きの変化ではなく、配置面45の変位量が0である状態からマイナス側に配置面45の変位量の変化があったことを検知して、配置面45がマイナス側に変位したと判定してもよい。
【0064】
なお、このとき、レーザ制御部33は、制御部35から入力部51に入力された測定信号S1に基づいて、第2樹脂部材21の熱膨張に伴う第2接触面22の変位の変化を検知する。レーザ制御部33は、測定信号S1に基づいて、制御部35と同様にして第2樹脂部材21の熱膨張に伴う第2接触面22の変位の変化を検知する。
【0065】
そして、制御部35は、第2樹脂部材21の熱膨張に伴う第2接触面22の変位の変化を検知すると、加圧力を予め設定された時間増加させるように加圧部31を制御する。本実施形態では、第2樹脂部材21の熱膨張に伴う第2接触面22の変位の変化を検知した時点から時間t1の間、第2樹脂部材21に付与される加圧力が一段階増加される。このため、第2樹脂部材21の熱膨張によって、第2樹脂部材21が配置面45から浮き上がることが抑制される。また、第2樹脂部材21の熱膨張によって、第2接触面22に対して第1樹脂部材11が浮き上がることが抑制される。従って、第2樹脂部材21が熱膨張している間も、第1接触面12と第2接触面22とを良好に密着させることができる。
【0066】
なお、時間t1は、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の物性、レーザ光Lwの強度、加圧部31による加圧力などを考慮して任意に設定することができる。例えば、本実施形態では、時間t1は、制御部35が第2樹脂部材21の熱膨張に伴う第2接触面22の変位の変化を検知した時点から、制御部35が第2接触面22の変位の方向が反転したことを検知するまでの時間である。即ち、本実施形態では、時間t1は、第2樹脂部材21の膨張が始まった時点から、第2樹脂部材21の軟化が始まった時点までの時間に該当する。
【0067】
レーザ光Lwの出射が開始されてから時間T2が経過すると、第2樹脂部材21の軟化が始まる。第2樹脂部材21の軟化が始まると、時間の経過に伴って、第2樹脂部材21における第2接触面22付近の部分の硬さが徐々に軟らかくなっていく。そして、第2樹脂部材21における第2接触面22付近の軟化した部分が、加圧部31からの加圧力によって押し潰される。これにより、第2接触面22が配置面45に近づく方向に変位するため、配置面45が加圧部31による加圧方向と同じ方向に変位する。即ち、変位センサ34で測定される配置面45の変位量がプラス側に変化する。
【0068】
第2樹脂部材21の軟化に伴って配置面45がプラス側に変位すると、当該変位の方向及び変位量が変位センサ34で測定される。制御部35は、変位センサ34から取得した変位量に基づいて第2接触面22の変位の方向が反転したことを検知する。即ち、制御部35は、変位センサ34から取得した変位量に基づいて配置面45の変位の方向がマイナス側からプラス側に反転したことを検知することにより、第2接触面22の変位の方向が反転したことを検知する。制御部35は、例えば、時間に対する変位量の傾きがマイナス側からプラス側に傾いたことを検知すると、配置面45の変位の方向がマイナス側からプラス側に反転したと判定する。なお、制御部35において配置面45の変位の方向がマイナス側からプラス側に反転したと判定する方法は、これに限らない。例えば、制御部35は、時間に対する変位量の傾きがマイナス側から0になったことを検知して、配置面45の変位の方向がマイナス側からプラス側に反転したと判定してもよい。また、制御部35は、時間に対する変位量の傾きの変化ではなく、マイナス側に変位していた配置面45がプラス側に変位したことを検知して、配置面45の変位の方向が反転したと判定してもよい。即ち、制御部35は、マイナス側に増えていた配置面45の変位量がプラス側に増えだしたことを検知して、配置面45の変位の方向がマイナス側からプラス側に反転したと判定してもよい。
【0069】
そして、制御部35は、第2接触面22の変位の方向が反転したことを検知すると、加圧力を段階的に低減させるように加圧部31を制御する。本実施形態では、第2接触面22の変位の方向が反転したことを検知した時点から時間t2の間、第2接触面22に付与される加圧力が一段階低減される。このため、第1接触面12及び第2接触面22の外周に軟化した樹脂が押し出される量を低減できる。
【0070】
なお、時間t2は、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の物性、レーザ光Lwの強度、加圧部31による加圧力などを考慮して任意に設定することができる。例えば、本実施形態では、時間t2は、制御部35が第2接触面22の変位の方向が反転したことを検知した時点、即ち第2樹脂部材21の軟化が始まった時点から、第2樹脂部材21の溶融が始まる頃までの時間に設定されている。
【0071】
更に、制御部35は、時間t2が経過した時点から時間t3の間、第2接触面22に付与する加圧力を更に一段階低減させるように加圧部31を制御する。また、制御部35は、時間t3が経過した時点から時間t4の間、第2接触面22に付与する加圧力を更に一段階低減させるように加圧部31を制御する。このように、制御部35は、第2接触面22の変位の方向が反転したことを検知した後、天板42と可動ステージ41による第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の挟持を解除するまで(即ちアンクランプするまで)、加圧力を段階的に低減させるように加圧部31を制御する。
【0072】
なお、時間t3及び時間t4は、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の物性、レーザ光Lwの強度、加圧部31による加圧力などを考慮して任意に設定することができる。例えば、本実施形態では、時間t3は、第2樹脂部材21の溶融が始まる頃から、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の冷却を始める頃までの時間に設定されている。また、例えば、本実施形態では、時間t4は、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の冷却を始める頃から、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の冷却が終了する頃までの時間に設定されている。
【0073】
レーザ制御部33は、変位センサ34で測定された変位の方向が反転したら、レーザ出力を予め設定された設定時間段階的に増加させるようにレーザ出射部32を制御する。例えば、レーザ制御部33は、測定信号S1に基づいて第2樹脂部材21の熱膨張に伴う第2接触面22の変位の変化を検知した後、測定信号S1に基づいて第2接触面22の変位の方向が反転したことを検知すると、レーザ出力を予め設定された設定時間段階的に増加させるようにレーザ出射部32を制御する。本実施形態では、上述したように、レーザ制御部33は、時間T1のときに、測定信号S1に基づいて第2接触面22の変位の方向が反転したことを検知している。そして、レーザ制御部33は、時間T2のときに、測定信号S1に基づいて第2接触面22の変位の方向が反転したことを検知して、まず、レーザ出力を1段階増加させている。本実施形態では、レーザ制御部33は、第2接触面22の変位の方向が反転したことを検知した時点から時間t12の間、レーザ出力を1段階増加させるようにレーザ出射部32を制御する。その後、レーザ制御部33は、時間t12が経過した時点から時間t13の間、レーザ出力を更に1段階増加させるようにレーザ出射部32を制御する。
【0074】
なお、レーザ出力の増減は、レーザ光Lwの照射部位における単位面積当たりのエネルギ密度を増減させることによりなされるものであればよい。レーザ出力は、例えば、レーザ光Lwの強度(即ちレーザパワー)、レーザ光Lwの照射回数(即ちレーザ光Lwのオンオフ)、レーザ光Lwの走査速度のうちの少なくとも1つを調整することにより増減される。
【0075】
また、時間t12及び時間t13は、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の物性、レーザ光Lwの強度、加圧部31による加圧力などを考慮して任意に設定することができる。例えば、本実施形態では、時間t12は、レーザ制御部33が第2接触面22の変位の方向が反転したことを検知した時点、即ち第2樹脂部材21の軟化が始まった時点から、第2樹脂部材21の溶融が始まる頃までの時間に設定されている。また、例えば、本実施形態では、時間t13は、第2樹脂部材21の溶融が始まる頃から、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の冷却を始める頃までの時間に設定されている。なお、本実施形態では、時間t12及び時間t13、即ち時間T2から時間T4までの時間が、設定時間に該当する。
【0076】
レーザ光Lwの出射が開始されてから時間T3が経過すると、第2樹脂部材21の溶融が始まる。また、第2樹脂部材21から第1樹脂部材11に熱が伝達されることにより、第1樹脂部材11の溶融も始まる。時間の経過に伴って、第1樹脂部材11における第1接触面12付近の部分、及び第2樹脂部材21における第2接触面22付近の部分の硬さが更に軟らかくなっていく。そして、第1接触面12及び第2接触面22が接合される。また、第1樹脂部材11における第1接触面12付近の部分、及び第2樹脂部材21における第2接触面22付近の溶融した部分が、加圧部31からの加圧力によって更に押し潰される。これにより、第2接触面22が配置面45に近づく方向に更に変位するため、配置面45が加圧部31による加圧方向と同じ方向に更に変位する。即ち、変位センサ34で測定される配置面45の変位量がプラス側に更に変化する。
【0077】
前述したように、制御部35は、第2接触面22の変位の方向が反転したことを検知すると、加圧力を段階的に低減させるように加圧部31を制御する。そのため、第1樹脂部材11における第1接触面12付近の部分及び第2樹脂部材21における第2接触面22付近の部分が溶融した状態にあるときには、第2樹脂部材21に付与する加圧力が段階的に低減される最中である。溶融した状態の樹脂は、軟化した状態の樹脂よりも軟らかい。従って、第1樹脂部材11における第1接触面12付近の部分及び第2樹脂部材21における第2接触面22付近の部分が溶融した状態にあるときには、第2樹脂部材21における第2接触面22付近の部分が軟化した状態のときよりも、第2樹脂部材21に付与する加圧力を更に低減することが好ましい。本実施形態では、第1樹脂部材11における第1接触面12付近の部分及び第2樹脂部材21における第2接触面22付近の部分が溶融した状態にあるときには、第2樹脂部材21における第2接触面22付近の部分が軟化した状態のときよりも、第2樹脂部材21に付与する加圧力が更に一段階低減されている。このため、第1接触面12及び第2接触面22の外周に溶融した樹脂が押し出される量を低減できる。従って、発生するバリの量を低減できる。
【0078】
レーザ制御部33は、前述した時間t13が経過した時点から(即ち前述した設定時間が経過すると)、レーザ出力を低下、もしくはレーザ光Lwの出射を停止させるようにレーザ出射部32を制御する。即ち、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の冷却が開始される。本実施形態では、時間t13が経過した時点では、レーザ光Lwの出射が開始されてから時間T4が経過している。本実施形態では、レーザ制御部33は、時間t13が経過した時点から、レーザ出力を徐々に低下させるようにレーザ出射部32を制御する。そして、レーザ制御部33は、予め設定されたレーザ出力になると、レーザ光Lwの出射を停止するようにレーザ出射部32を制御する。本実施形態では、レーザ光Lwの出射が停止された時点では、レーザ光Lwの出射が開始されてから時間T5が経過している。そして、レーザ光Lwの出射が停止されると、第1樹脂部材11と第2樹脂部材21とのレーザ溶着が完了する。
【0079】
制御部35は、レーザ光Lwの出射が停止されると、天板42と可動ステージ41による第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の挟持を解除するように加圧部31を制御する。そして、第1接触面12と第2接触面22とが接合された第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21が配置面45上から取り出される。
【0080】
ここで、レーザ溶着装置1で樹脂部材同士のレーザ溶着を行う場合と、従来のように一定の加圧力で樹脂部材同士のレーザ溶着を行う場合とを比較する。図3図5には、レーザ溶着装置1でレーザ溶着を行う場合における、樹脂部材の接触面の変位量と時間との関係を実線で図示している。また、図3図5には、一定の加圧力で樹脂部材同士のレーザ溶着を行う場合における、樹脂部材の接触面の変位量と時間との関係を二点鎖線で図示している。樹脂部材の接触面の変位量は、レーザ溶着される2つの樹脂部材が重ね合わされた方向における一方の樹脂部材の接触面の変位量である。
【0081】
図3に示すように、例えば、同じ加工時間で目標変位量Tdに到達する場合には、レーザ溶着装置1でレーザ溶着を行う場合は、従来のように一定の加圧力でレーザ溶着を行う場合に比べて、樹脂部材同士の接合品質を向上できる。これは、レーザ溶着装置1でレーザ溶着を行う場合は、第2樹脂部材21が軟化し始めてから第1樹脂部材11と第2樹脂部材21との接合が完了するまでの間に、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21が過度に加圧されることを抑制できるためである。従って、レーザ溶着装置1でレーザ溶着を行った場合は、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の過度な加圧を抑制しつつ、第2接触面22の変位量を目標変位量Tdに合わせることができる。因みに、レーザ溶着装置1でレーザ溶着を行う場合は、樹脂部材が軟化し始めてから樹脂部材同士の接合が完了するまでの時間が、従来のように一定の加圧力でレーザ溶着を行う場合に比べて長くかかる。しかしながら、レーザ溶着装置1でレーザ溶着を行う場合は、第2樹脂部材21の熱膨張時における第2接触面22の変位量を小さく抑えることができるため、第2接触面22の変位の方向が反転してから第2接触面22の変位量が目標変位量Tdに到達するまでの第2接触面22の変位量を小さくできる。従って、従来のように一定の加圧力でレーザ溶着を行う場合と同じ加工時間で、第1樹脂部材11と第2樹脂部材21とを接合できる。
【0082】
また、例えば、図4に示すように、レーザ溶着装置1でレーザ溶着を行う場合は、従来のように一定の加圧力でレーザ溶着を行う場合に比べて、加工時間を短縮することが可能である。これは、レーザ溶着装置1でレーザ溶着を行う場合は、第2樹脂部材21の熱膨張時における第2接触面22の変位量を小さく抑えることができるためである。従って、第2接触面22の変位の方向が反転してから第2接触面22の変位量が目標変位量Tdに到達するまでの第2接触面22の変位量を小さくできることから、第2接触面22の変位の方向が反転してから第2接触面22の変位量が目標変位量Tdに到達するまでの時間を短縮できる。その結果、レーザ溶着装置1でレーザ溶着を行う場合は、加工時間を短縮することにより、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21のレーザ溶着に関する製造コストを低減できる。
【0083】
また、例えば、図5に示すように、レーザ溶着装置1でレーザ溶着を行う場合は、従来のように一定の加圧力でレーザ溶着を行う場合に比べて、樹脂部材が過度に加圧されることが抑制される。従来のように一定の加圧力でレーザ溶着を行う場合には、樹脂部材が軟化し始めてから樹脂部材同士の接合が完了するまでの間に、樹脂部材を過度に加圧する可能性がある。この場合、樹脂部材の接触面の変位量が、目標変位量Tdよりも多くなってしまうおそれがある。すると、バリが過剰に発生したり、残留応力が大きくなるために樹脂部材に割れが発生したりする。これに対し、レーザ溶着装置1でレーザ溶着を行う場合は、レーザ溶着の過程における第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の状態に応じて、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21に付与する加圧力を増減する。従って、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21が過度に加圧されることが抑制される。その結果、第2接触面22の変位量を目標変位量Tdに容易に合わせることができる。
【0084】
本実施形態の作用及び効果を以下に記載する。
(1)第1樹脂部材11は、レーザ光Lwを透過させるレーザ光透過性樹脂からなり第1接触面12を有する。第2樹脂部材21は、レーザ光Lwを吸収するレーザ光吸収性樹脂からなり第2接触面22を有する。レーザ溶着装置1は、第1樹脂部材11と第2樹脂部材21とを、第1接触面12と第2接触面22とが接触するように重ね合わせた状態で、第1接触面12及び第2接触面22をレーザ光により溶融して接合する。レーザ溶着装置1は、重ね合わされた第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21のうち少なくとも一方の樹脂部材に当接して加圧力を付与する加圧部31を備えている。レーザ溶着装置1は、第1樹脂部材11を透過するレーザ光Lwを出射するレーザ出射部32を備えている。レーザ溶着装置1は、レーザ出射部32が出射する前記レーザ光Lwのレーザ出力を制御するレーザ制御部33を備えている。レーザ溶着装置1は、第1樹脂部材11と第2樹脂部材21との重ね合わせ方向X1における第1接触面12及び第2接触面22の少なくとも一方の接触面の変位を測定する変位センサ34を備えている。レーザ溶着装置1は、変位センサ34から接触面の変位量を連続的もしくは断続的に取得し、取得した接触面の変位量に基づいて、加圧力を増減させるように加圧部31を制御する制御部35を備えている。
【0085】
本実施形態では、加圧部31は、第2樹脂部材21に当接して加圧力を付与する。また、本実施形態では、変位センサ34は、重ね合わせ方向X1における第2接触面22の変位を測定する。
【0086】
同構成によれば、重ね合わせ方向X1に変位する第2接触面22の変位量に基づいて、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21に付与する加圧力を増減する。第2接触面22は、レーザ溶着の過程で、第1樹脂部材11の状態及び第2樹脂部材21の状態に応じて重ね合わせ方向X1に変位する。従って、重ね合わせ方向X1における第2接触面22の変位は、レーザ溶着の過程における第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の状態に応じて変化する。このような第2接触面22の変位量に基づいて、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21に付与する加圧力を増減する。よって、レーザ溶着される第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21に対して、レーザ溶着の過程において第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の状態に応じた適切な加圧力の付与を行うことができる。その結果、過剰なバリの発生、並びに、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の割れの発生を抑制できる。また、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21同士の密着不足による第2樹脂部材21の炭化及び溶融不足を抑制できる。
【0087】
本実施形態では、レーザ溶着の過程で第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21に付与される加圧力が大きすぎることが抑制されている。そのため、バリが過剰に発生したり、残留応力によって溶着後の第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21に割れが発生したりすることが抑制される。また、本実施形態では、レーザ溶着の過程で第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21に付与される加圧力が不足することが抑制されている。そのため、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21同士の密着が不十分になることが抑制されている。従って、第1接触面12と第2接触面22との間に微小な隙間が存在することが抑制された状態でレーザ溶着が行われるため、第2樹脂部材21から第1樹脂部材11へ熱伝導しやすい。その結果、第2樹脂部材21が炭化したり、第1樹脂部材11の溶融が不十分となったりすることが抑制される。
【0088】
(2)制御部35は、変位センサ34から取得した第2接触面の変位量に基づいて第2樹脂部材21の熱膨張に伴う第2接触面22の変位の変化を検知すると、加圧力を予め設定された時間増加させるように加圧部31を制御する。その後、制御部35は、変位センサ34から取得した第2接触面の変位量に基づいて第2接触面22の変位の方向が反転したことを検知すると、加圧力を段階的に低減させるように加圧部31を制御する。
【0089】
同構成によれば、第2樹脂部材21の熱膨張に伴う第2接触面22の変位の変化が検知されると、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21に付与される加圧力が予め設定された時間増加される。従って、第2樹脂部材21の熱膨張によって、第2樹脂部材21が配置面45から浮き上がることが抑制される。また、第2樹脂部材21の熱膨張によって、第2接触面22に対して第1樹脂部材11が浮き上がることが抑制される。よって、第2樹脂部材21が熱膨張している間も、第1接触面12と第2接触面22とを良好に密着させることができる。
【0090】
また、第2接触面22の変位の方向が反転したことが検知されると、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21に付与される加圧力が段階的に低減される。第2樹脂部材21の軟化が始まると、変位センサ34で測定している第2接触面22の変位の方向が反転する。従って、第2樹脂部材21の軟化が始まったことに応じて、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21に付与される加圧力が段階的に低減されることになる。よって、第1接触面12及び第2接触面22の外周に軟化した樹脂が押し出される量を低減できる。その結果、発生するバリの量を低減できる。
【0091】
(3)レーザ制御部33は、変位センサ34で測定された変位の方向が反転したら、レーザ出力を予め設定された設定時間段階的に増加させるようにレーザ出射部32を制御する。
【0092】
同構成によれば、第2樹脂部材21の軟化が始まってから、第2接触面22に照射するレーザ光Lwのレーザ出力を段階的に増加させることができる。従って、第2樹脂部材21の状態に応じてレーザ光Lwの照射を行うことができる。
【0093】
(4)レーザ制御部33は、設定時間が経過すると、レーザ出力を徐々に低下させるようにレーザ出射部32を制御する。
同構成によれば、レーザ出力を徐々に低下させることにより、溶融して互いに接合された状態の第1接触面12及び第2接触面22が徐々に冷却される。更に、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21に付与される加圧力が段階的に低下されているときに、第1接触面12及び第2接触面22が徐々に冷却される。従って、冷却後の第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21に生じる残留応力をより低減できる。その結果、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の割れの発生をより抑制できる。
【0094】
(5)変位センサ34は、接触式の変位センサである。
同構成によれば、変位センサ34は、接触式の変位センサであるため、配置面45の変位を直接的に測定する。そのため、変位センサ34による測定結果は、配置面45の微細な傷や配置面45に付着した微細な異物などの影響を受け難い。従って、接触式の変位センサを用いることにより、例えば光学式の変位センサを用いる場合に比べて、より精度良く配置面45(本実施形態では、第2接触面22)の変位を検知できる。また、測定精度が同等である接触式の変位センサと光学式の変位センサとを比較した場合、接触式の変位センサの方が、比較的安価に配置面45の変位を精度良く検知できる。
【0095】
(6)レーザ加工装置2は、第1樹脂部材11と第2樹脂部材21とを、第1接触面12と第2接触面22とが接触するように重ね合わせた状態で、第1接触面12及び第2接触面22をレーザ光Lwにより溶融して接合する樹脂部材同士のレーザ溶着に使用される。レーザ加工装置2は、第1樹脂部材11を透過するレーザ光Lwを出射するレーザ出射部32を備えている。レーザ加工装置2は、レーザ出射部32が出射するレーザ光Lwのレーザ出力を制御するレーザ制御部33を備えている。レーザ加工装置2は、第1樹脂部材11と第2樹脂部材21との重ね合わせ方向X1における第2接触面22の変位を測定する変位センサ34で測定された第2接触面22の変位量に応じた測定信号S1が入力される入力部51を備えている。レーザ制御部33は、入力部51に入力された測定信号S1に基づいて、レーザ出力を段階的に変化させるようにレーザ出射部32を制御する。
【0096】
同構成によれば、第1樹脂部材11と第2樹脂部材21との重ね合わせ方向X1に変位する第2接触面22の変位量に基づいて、第2接触面22に照射するレーザ光Lwのレーザ出力を段階的に変化させる。第2接触面22は、レーザ溶着の過程で、第1樹脂部材11の状態及び第2樹脂部材21の状態に応じて重ね合わせ方向に変位する。従って、重ね合わせ方向X1における第2接触面22の変位は、レーザ溶着の過程における第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の状態に応じて変化する。このような第2接触面22の変位量に基づいて、第2接触面22に照射するレーザ光Lwのレーザ出力を段階的に変化させる。よって、レーザ溶着される第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21に対して、レーザ溶着の過程において第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の状態に応じた適切なレーザ光Lwの照射を行うことができる。その結果、過剰なバリの発生、並びに、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の割れの発生を抑制できる。
【0097】
(7)レーザ制御部33は、入力部51に入力された測定信号S1に基づいて第2樹脂部材21の熱膨張に伴う第2接触面22の変位の変化を検知した後、測定信号S1に基づいて第2接触面22の変位の方向が反転したことを検知すると、レーザ出力を予め設定された設定時間段階的に増加させるようにレーザ出射部32を制御する。
【0098】
同構成によれば、第2樹脂部材21の軟化が始まってから、第2接触面22に照射するレーザ光Lwのレーザ出力を段階的に増加させることができる。従って、第2樹脂部材21の状態に応じてレーザ光Lwの照射を行うことができる。その結果、第1樹脂部材11と第2樹脂部材21との接合品質を向上できる。
【0099】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、レーザ制御部33は、第2接触面22の変位の方向が反転したことを検知した時点から予め設定された設定時間(即ち、上記実施形態では、時間t12及び時間t13の間)、レーザ出力を段階的に増加させるようにレーザ出射部32を制御する。その後、レーザ制御部33は、当該予め設定された設定時間が経過した時点から、レーザ出力を徐々に低下させている。しかしながら、レーザ制御部33は、例えば、当該予め設定された時間が経過した時点から、レーザ出力を段階的に低下させてもよい。また、レーザ制御部33は、例えば、予め設定された時間が経過した時点でレーザ光Lwの出射を停止させるようにレーザ出射部32を制御してもよい。
【0100】
また、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の冷却を始めるタイミングは、上記実施形態のタイミングに限らない。
例えば、レーザ制御部33は、入力部51に入力された加圧制御信号S2に基づいて加圧力が段階的に低下されていることを検知し、かつ、入力部51に入力された測定信号S1に基づいて第2接触面22の変位の変化量が予め設定された時間一定であることを検知すると、レーザ出力を徐々に低下させるようにレーザ出射部32を制御するように構成されてもよい。
【0101】
このようにすると、レーザ出力を徐々に低下させることにより、溶融して互いに接合された状態の第1接触面12及び第2接触面22が徐々に冷却される。更に、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21に付与される加圧力が段階的に低下されているときに、第1接触面12及び第2接触面22が徐々に冷却される。従って、冷却後の第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21に生じる残留応力をより低減できる。その結果、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の割れの発生をより抑制できる。
【0102】
例えば、第1接触面12及び第2接触面22の両方が溶融している状態のときに、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21に加圧部31から付与される加圧力が一定であると、第2接触面22の変位の変化量が一定となる時間がある。従って、第2接触面22の変位の変化量が予め設定された時間一定であることを検知してからレーザ出力を徐々に低下させることにより、レーザ溶着の過程において第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の状態に応じた適切なタイミングで第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の冷却を開始可能になる。なお、第2接触面22の変位の変化量が予め設定された時間一定であることは、例えば、変位センサ34で測定された変位の変化量が、予め設定された時間、予め設定された閾値の範囲内の値であることを検知することにより検知できる。
【0103】
また、例えば、レーザ制御部33は、入力部51に入力された測定信号S1に基づいて、第2接触面22の変位が予め設定された変位量になったことを検知すると、レーザ出力を徐々に低下もしくはレーザ光Lwの出射を停止させるようにレーザ出射部32を制御するものであってもよい。
【0104】
・上記実施形態では、レーザ制御部33は、測定信号S1に基づいて第2樹脂部材21の熱膨張に伴う第2接触面22の変位の変化を検知した後、測定信号S1に基づいて第2接触面22の変位の方向が反転したことを検知すると、レーザ出力を予め設定された設定時間段階的に増加させるようにレーザ出射部32を制御する。しかしながら、測定信号S1に基づいて第2樹脂部材21の熱膨張に伴う第2接触面22の変位の変化を検知した後、レーザ出力を段階的に増加させるタイミングは、上記実施形態のタイミングに限らない。
【0105】
例えば、レーザ制御部33は、入力部51に入力された測定信号S1に基づいて第2樹脂部材21の熱膨張に伴う第2接触面22の変位の変化を検知した時点から、レーザ出力を予め設定された設定時間段階的に増加させるようにレーザ出射部32を制御するように構成されてもよい。このようにすると、第2樹脂部材21の熱膨張が始まってから、第2接触面22に照射するレーザ光Lwのレーザ出力を段階的に増加させることができる。従って、第2樹脂部材21の状態に応じてレーザ光Lwの照射を行うことができる。その結果、第1樹脂部材11と第2樹脂部材21との接合品質を向上できる。
【0106】
また例えば、レーザ制御部33は、入力部51に入力された加圧制御信号S2に基づいて加圧力が増加されたことを検知した時点から、レーザ出力を予め設定された設定時間段階的に増加させるようにレーザ出射部32を制御するように構成されてもよい。このようにすると、第2樹脂部材21の熱膨張に伴う第2接触面22の変位の変化に基づいて加圧力が増加される場合において、第2樹脂部材21の熱膨張が始まってから、第2接触面22に照射するレーザ光Lwのレーザ出力を段階的に増加させることができる。従って、第2樹脂部材21の状態に応じてレーザ光Lwの照射を行うことができる。その結果、第1樹脂部材11と第2樹脂部材21との接合品質を向上できる。
【0107】
・上記実施形態では、レーザ出力を段階的に増加させる際、予め設定された時間が経過するごとに一段階ずつレーザ出力を増加させる。しかしながら、レーザ制御部33は、測定信号S1に基づいて、レーザ出力を段階的に増加させるようにレーザ出射部32を制御してもよい。例えば、レーザ制御部33は、測定信号S1に基づいて変位センサ34で測定された変位(即ち重ね合わせ方向X1における接触面の位置)が予め設定された変位と同じであることを検知するごとに、レーザ出力を一段階ずつ増加させるようにレーザ出射部32を制御してもよい。また例えば、レーザ制御部33は、測定信号S1に基づいて第2接触面22のプラス側への変位量が予め設定された変位量となったことを検知するごとに、レーザ出力を一段階ずつ増加させるようにレーザ出射部32を制御してもよい。
【0108】
図6に示すように、レーザ溶着装置1は、加圧部31が当接する第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21のうち少なくとも一方の樹脂部材から加圧部31に加わる反力を測定する反力測定センサ71を更に備えていてもよい。そして、制御部35は、反力測定センサ71で測定された反力を取得し、変位センサ34から取得した第2接触面22の変位量及び反力測定センサ71から取得した反力に基づいて、加圧力を増減させるように加圧部31を制御するものであってもよい。
【0109】
図6に示すレーザ溶着装置1Aにおいては、反力測定センサ71は、配置面45から露出するように可動ステージ41に設置されている。なお、図6においては、上記実施形態と同一の構成または対応する構成に同一の符号を付している。反力測定センサ71は、配置面45上に配置された第2樹脂部材21の第2当接面23に当接して第2樹脂部材21から可動ステージ41に加わる反力を測定する。反力測定センサ71としては、例えば、ロードセルを用いることができる。
【0110】
制御部35は、反力測定センサ71で測定された反力を取得する。例えば、制御部35は、反力測定センサ71で測定された反力を連続的もしくは断続的に取得する。
第1樹脂部材11と第2樹脂部材21とをレーザ溶着する際、第2樹脂部材21が熱膨張する段階では、第2樹脂部材21が熱膨張に伴って反力測定センサ71で測定される反力が増大する。また、第2樹脂部材21が軟化し始めると、反力測定センサ71で測定される反力が減少する。
【0111】
例えば、制御部35は、反力測定センサ71から取得した反力が予め設定された閾値より大きいことを検知し、かつ、変位センサ34から取得した変位量に基づいて第2樹脂部材21の熱膨張に伴う第2接触面22の変位の変化を検知すると、加圧力を予め設定された時間増加させるように加圧部31を制御する。
【0112】
その後、例えば、制御部35は、変位センサ34から取得した変位量に基づいて第2接触面22の変位の方向が反転したことを検知し、かつ、反力測定センサ71から取得した反力が予め設定された閾値より小さいことを検知すると、加圧力を段階的に低減させるように加圧部31を制御する。
【0113】
このようにすると、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21に付与する加圧力を、第2接触面22の変位量だけでなく、第2樹脂部材21から加圧部31に加わる反力に基づいて増減する。加圧部31が当接する第2樹脂部材21から加圧部31に加わる反力は、レーザ溶着の過程における第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の状態に応じて変化する。従って、当該反力に基づいても、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21に付与する加圧力を増減することにより、レーザ溶着される第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21に対して、レーザ溶着の過程において第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の状態に応じたより適切な加圧力の付与を行うことができる。その結果、過剰なバリの発生、並びに、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の割れの発生をより抑制できる。
【0114】
なお、反力測定センサ71は、第1当接面13に当接するように天板42に配置されてもよい。
・上記実施形態では、変位センサ34で測定された変位量に応じた測定信号S1が入力部51に入力される。しかしながら、入力部51に測定信号S1が入力されなくてもよい。この場合、例えば、制御部35は、変位センサ34から取得した変位量に基づいて第2樹脂部材21の熱膨張に伴う第2接触面22の変位の変化を検知したことを示す第1検知信号を入力部51に入力してもよい。また、制御部35は、変位センサ34から取得した変位量に基づいて第2接触面22の変位の方向が反転したことを検知すると、第2接触面22の変位の方向が反転したことを示す第2検知信号を入力部51に入力してもよい。そして、レーザ制御部33は、例えば、入力部51に第1検知信号が入力されたことを検知した後、入力部51に第2検知信号が入力されたことを検知すると、レーザ出力を予め設定された設定時間段階的に増加させるようにレーザ出射部32を制御する。
【0115】
・上記実施形態では、変位センサ34は、配置面45の変位を測定することにより、第2接触面22の変位を測定している。しかしながら、変位センサ34は、配置面45の変位を測定することにより、第1接触面12の変位を測定してもよい。また、変位センサ34によって変位が測定される面は、配置面45に限らず、第1接触面12及び第2接触面22のうち少なくとも一方の接触面と同様に変位する面であればよい。例えば、変位センサ34は、可動ステージ41における配置面45と反対側の側面の変位を測定することにより、第1接触面12及び第2接触面22のうち少なくとも一方の接触面の変位を測定するものであってもよい。また、例えば、変位センサ34が光学式の変位センサである場合、第1接触面12及び第2接触面22の少なくとも一方の変位を直接測定してもよい。
【0116】
・上記実施形態では、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21に付与する加圧力を段階的に低減させる際、予め設定された時間が経過するごとに一段階ずつ同加圧力低減させる。しかしながら、制御部35は、変位センサ34で測定された変位量に基づいて、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21に付与する加圧力を段階的に低減させるように加圧部31を制御してもよい。例えば、変位センサ34で測定された変位(即ち重ね合わせ方向X1における接触面の位置)が予め設定された変位と同じであることが検知されるごとに、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21に付与する加圧力を一段階ずつ低減させてもよい。また例えば、プラス側への変位量が予め設定された変位量となるごとに、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21に付与する加圧力を一段階ずつ低減させてもよい。
【0117】
・加圧部31は、第1樹脂部材11に当接して重ね合わせ方向X1に加圧力を付与してもよい。また、加圧部31は、第1樹脂部材11及び第2樹脂部材21の両方に当接して重ね合わせ方向X1に加圧力を付与してもよい。例えば、上記実施形態の加圧部31において、可動ステージ41を、レーザ溶着中に重ね合わせ方向X1に移動されない固定ステージとするとともに、天板42を可動板としてもよい。この場合、加圧調整部43は、第1接触面12と第2接触面22とが密着するように第1樹脂部材11に加圧力を付与すべく可動板である天板42を重ね合わせ方向X1に加圧する。そして、この場合には、変位センサ34は、例えば、天板42における第1当接面13に当接する側面の変位を測定するように構成される。ただし、この場合において、変位センサ34が変位を測定する面は、天板42における第1当接面13に当接する側面に限らず、第1接触面12及び第2接触面22のうち少なくとも一方の接触面と同様に変位する面であればよい。
(付記)
(付記1)
レーザ光を透過させるレーザ光透過性樹脂からなり第1接触面を有する第1樹脂部材と、レーザ光を吸収するレーザ光吸収性樹脂からなり第2接触面を有する第2樹脂部材とを、前記第1接触面と前記第2接触面とが接触するように重ね合わせた状態で、前記第1接触面及び前記第2接触面をレーザ光により溶融して接合するレーザ溶着装置であって、
重ね合わされた前記第1樹脂部材及び前記第2樹脂部材のうち少なくとも一方の樹脂部材に当接して加圧力を付与する加圧部と、
前記第1樹脂部材を透過するレーザ光を出射するレーザ出射部と、
前記レーザ出射部が出射する前記レーザ光のレーザ出力を制御するレーザ制御部と、
前記第1樹脂部材と前記第2樹脂部材との重ね合わせ方向における前記第1接触面及び前記第2接触面の少なくとも一方の接触面の変位を測定する変位センサと、
前記変位センサから前記接触面の変位量を連続的もしくは断続的に取得し、取得した前記接触面の変位量に基づいて、前記加圧力を増減させるように前記加圧部を制御する制御部と、を備えたレーザ溶着装置。
(付記2)
前記制御部は、前記変位センサから取得した前記接触面の変位量に基づいて前記第2樹脂部材の熱膨張に伴う前記接触面の変位の変化を検知すると、前記加圧力を予め設定された時間増加させるように前記加圧部を制御し、その後、前記変位センサから取得した前記接触面の変位量に基づいて前記接触面の変位の方向が反転したことを検知すると、前記加圧力を段階的に低減させるように前記加圧部を制御する付記1に記載のレーザ溶着装置。
(付記3)
前記レーザ制御部は、前記変位センサで測定された変位の方向が反転したら、前記レーザ出力を予め設定された設定時間段階的に増加させるように前記レーザ出射部を制御する付記2に記載のレーザ溶着装置。
(付記4)
前記レーザ制御部は、前記設定時間が経過すると、前記レーザ出力を徐々に低下させるように前記レーザ出射部を制御する付記3に記載のレーザ溶着装置。
(付記5)
前記変位センサは、接触式の変位センサである付記1から付記4の何れか1つに記載のレーザ溶着装置。
(付記6)
前記加圧部が当接する前記第1樹脂部材及び前記第2樹脂部材のうち少なくとも一方の樹脂部材から前記加圧部に加わる反力を測定する反力測定センサを更に備え、
前記制御部は、前記反力測定センサで測定された反力を取得し、前記変位センサから取得した前記接触面の変位量及び前記反力測定センサから取得した反力に基づいて、前記加圧力を増減させるように前記加圧部を制御する付記1から付記5の何れか1つに記載のレーザ溶着装置。
(付記7)
レーザ光を透過させるレーザ光透過性樹脂からなり第1接触面を有する第1樹脂部材と、レーザ光を吸収するレーザ光吸収性樹脂からなり第2接触面を有する第2樹脂部材とを、前記第1接触面と前記第2接触面とが接触するように重ね合わせた状態で、前記第1接触面及び前記第2接触面をレーザ光により溶融して接合する樹脂部材同士のレーザ溶着に使用されるレーザ加工装置であって、
前記第1樹脂部材を透過するレーザ光を出射するレーザ出射部と、
前記レーザ出射部が出射する前記レーザ光のレーザ出力を制御するレーザ制御部と、
前記第1樹脂部材と前記第2樹脂部材との重ね合わせ方向における前記第1接触面及び前記第2接触面の少なくとも一方の接触面の変位を測定する変位センサで測定された前記接触面の変位量に応じた測定信号が入力される入力部と、を備え、
前記レーザ制御部は、前記入力部に入力された前記測定信号に基づいて、前記レーザ出力を段階的に変化させるように前記レーザ出射部を制御するレーザ加工装置。
(付記8)
前記レーザ制御部は、前記入力部に入力された前記測定信号に基づいて前記第2樹脂部材の熱膨張に伴う前記接触面の変位の変化を検知した後、前記測定信号に基づいて前記接触面の変位の方向が反転したことを検知すると、前記レーザ出力を予め設定された設定時間段階的に増加させるように前記レーザ出射部を制御する付記7に記載のレーザ加工装置。
(付記9)
前記入力部には、重ね合わされた前記第1樹脂部材及び前記第2樹脂部材のうち少なくとも一方の樹脂部材に当接して加圧する加圧部が当該樹脂部材に付与する加圧力に応じた加圧制御信号が更に入力され、
前記レーザ制御部は、前記入力部に入力された前記測定信号に基づいて前記第2樹脂部材の熱膨張に伴う前記接触面の変位の変化を検知した時点、及び、前記入力部に入力された前記加圧制御信号に基づいて前記加圧力が増加されたことを検知した時点の何れか一方の時点から、前記レーザ出力を予め設定された設定時間段階的に増加させるように前記レーザ出射部を制御する付記7に記載のレーザ加工装置。
(付記10)
前記レーザ制御部は、前記設定時間が経過すると、前記レーザ出力を徐々に低下させるように前記レーザ出射部を制御する付記8又は付記9に記載のレーザ加工装置。
(付記11)
前記入力部には、重ね合わされた前記第1樹脂部材及び前記第2樹脂部材のうち少なくとも一方の樹脂部材に当接して加圧する加圧部が当該樹脂部材に付与する加圧力に応じた加圧制御信号が更に入力され、
前記レーザ制御部は、前記入力部に入力された前記加圧制御信号に基づいて前記加圧力が段階的に低下されていることを検知し、かつ、前記入力部に入力された前記測定信号に基づいて前記接触面の変位の変化量が予め設定された時間一定であることを検知すると、前記レーザ出力を徐々に低下させるように前記レーザ出射部を制御する付記7から付記9の何れか1つに記載のレーザ加工装置。
【符号の説明】
【0118】
1,1A…レーザ溶着装置
2…レーザ加工装置
11…第1樹脂部材
12…第1接触面
13…第1当接面
21…第2樹脂部材
22…第2接触面
23…第2当接面
31…加圧部
32…レーザ出射部
33…レーザ制御部
34…変位センサ
35…制御部
41…可動ステージ
42…天板
43…加圧調整部
44…加圧制御コントローラ
45…配置面
46…貫通孔
51…入力部
61…測定ヘッド
62…変位センサコントローラ
63…接触子
71…反力測定センサ
Lw…レーザ光
S1…測定信号
S2…加圧制御信号
T1~T5…時間
t1~t4…時間
t12,t13…時間(設定時間)
Td…目標変位量
X1…重ね合わせ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6