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  • 特許-水素貯蔵燃料及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】水素貯蔵燃料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/00 20060101AFI20240412BHJP
   C01C 1/10 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
C01B3/00 B
C01C1/10 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023095648
(22)【出願日】2023-06-09
【審査請求日】2023-11-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513099603
【氏名又は名称】兵庫県公立大学法人
(73)【特許権者】
【識別番号】390000022
【氏名又は名称】サンアロイ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086335
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 榮一
(72)【発明者】
【氏名】森下 政夫
(72)【発明者】
【氏名】柳田 秀文
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/115582(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/058807(WO,A1)
【文献】特開2023-061564(JP,A)
【文献】特開2019-098328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00
C01C 1/10
B01J 20/00
C01B 35/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体の水素貯蔵燃料であって、
不可避不純物として、アンモニア水和物(NH(HO))及びアンモニアボラン(NHBH)が混入され、常温常圧下で固体とされたアンモニア(NH)からなる
ことを特徴とする水素貯蔵燃料。
【請求項2】
アンモニア(NH)を溶解した水溶液にホウ酸(B を混合して混合水溶液を作製し、
次いで、前記混合水溶液を凍結して凍結固化体を作製し、
その後、前記凍結固化体を凍結乾燥し、前記凍結固化体中に気体として含有された水蒸気(HO(g))と、気体として含有されたホウ素化合物(BH、B、B)を排出し、前記凍結固化体中のアンモニア(NH)を濃縮して固体とした
ことを特徴とする水素貯蔵燃料を製造する方法。
【請求項3】
前記凍結固化体中のアンモニア(NH)は、不可避不純物として、アンモニア水和物(NH(HO))及びアンモニアボラン(NHBH)が混入されて固化された
ことを特徴とする請求項2記載の水素貯蔵燃料を製造する方法。
【請求項4】
前記混合水溶液は、液体窒素により冷却されて凍結固化体とされたことを特徴とする請求項2又は請求項3記載の水素貯蔵燃料を製造する方法。
【請求項5】
前記凍結固化体は、液体窒素により冷却され状態で、減圧処理されて凍結乾燥されることを特徴とする請求項4に記載の水素貯蔵燃料を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素含有化合物であるアンモニアを用いた水素貯蔵燃料及びこの水素貯蔵燃料を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、環境破壊を抑制するエネルギー源として水素が注目され、体積あたり、質量あたりの含有密度が高く、燃焼時に二酸化炭素(CO)を排出しない水素含有化合物であるアンモニア(NH)が、内燃機関や発電システムの燃料として注目されている。
【0003】
水素含有化合物としてのアンモニアは、ハーバーボッシュ法により工業レベルで大量に製造されている。このハーバーボッシュ法は、400―600℃、200-1000気圧の条件下で、鉄を触媒に用いて、水素と窒素を直接反応させることで、アンモニアを生産している。
【0004】
ハーバーボッシュ法は、電気エネルギーを大量に使用する等の問題点を有するため、ハーバーボッシュ法に代わるアンモニアの合成方法が提案されている(特許文献1)。
【0005】
そして、アンモニアを燃料とするアンモニアエンジンシステムとして、特許文献2に開示されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2014/115582号パンフレット
【文献】国際公開第2010/058807号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、アンモニアは、常温常圧で気体である。気体であるアンモニアは、生体内に容易に吸入され、呼吸器官の粘膜を刺激し、そのショックで呼吸停止を誘発するおそれがある。また、生体内に吸引されることにより、生体の血中アンモニア濃度を高め、意識障害を生じさせるおそれがある。
【0008】
このように、気体のアンモニアは、生体に対し極めて有害な物質であり、保管管理や搬送に困難を伴うため、広く一般に汎用して利用な可能なエネルギーキャリアとして用いることが困難である。
【0009】
また、アンモニアは、20℃、8.46気圧で液化することから、加圧ボンベに加圧した状態で充填することで、液体として保管することができる。しかし、液体のアンモニアは、生体の目に入ると失明に至るおそれもある。さらに、液体のアンモニアは、加圧状態で加圧ボンベに充填して保管する必要があり、保管や搬送に困難が伴う。
【0010】
なお、アンモニアは、常圧の雰囲気下において、-78℃以下に冷却することにより、安定な形態である固体とすることができる。
【0011】
しかし、アンモニアを常圧の雰囲気下で安定した固体の状態を維持するためには、-78℃以下に冷却した状態を保持する必要があり、保管、搬送が困難である。そのため、アンモニアは、移動手段として用いられる自動車などに搭載されるアンモニアエンジンシステムの燃料として用いることを困難としている。
【0012】
そこで、本発明の技術課題は、生体にとって危険な劇物であり、貯蔵保管が困難であり、さらに搬送が困難なアンモニアが有する問題点を解決し得る新規な水素貯蔵燃料を提供することを目的とする。
【0013】
さらに、本発明の技術課題は、安全に利用することを可能となし、しかも、貯蔵、運搬に適した形態とした水素貯蔵燃料を提供することにある。
【0014】
また、本発明の他の技術課題は、以下に、図面を参照した説明により一層明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、本発明者等が、上述した技術課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果 完成されたものであって、アンモニア(NH)に、不可避不純物として、アンモニア水和物(NH(HO))及びアンモニアボラン(NHBH)が混入されることにより、常温常圧下で固体とされることを見出し完成したものである。
【0016】
したがって、本発明は、固体の水素貯蔵燃料であって、不可避不純物として、アンモニア水和物(NH(HO))及びアンモニアボラン(NHBH)が混入され、常温常圧下で固体とされたアンモニア(NH)を主体として構成された水素貯蔵燃料である。
【0017】
この水素貯蔵燃料は、次の工程を経て製造される。
【0018】
まず、アンモニア(NH)を溶解した水溶液にホウ酸(B を混合して混合水溶液を作製する。次いで、混合水溶液を凍結して凍結固化体を作製する。その後、凍結固化体を凍結乾燥し、この凍結固化体中に気体として含有された水蒸気(HO(g))と、気体として含有されたホウ素化合物(BH(g)、B(g)、B(g))を排出し、凍結固化体中のアンモニア(NH(cr))を濃縮した固化体を得る。濃縮固化されたアンモニア(NH(cr))は、不可避不純物として、アンモニア水和物(NH(HO))及びアンモニアボラン(NHBH)が混入されて固化され、固体の水素貯蔵燃料とされる。
【0019】
本発明方法において、前記凍結固化体中のアンモニア(NH)は、不可避不純物として、アンモニア水和物(NH(HO))及びアンモニアボラン(NHBH)が混入された状態で固化されて固体の水素貯蔵燃料となる。
【0020】
そして、アンモニア(NH)を溶解した水溶液にホウ酸(B)を混合した混合水溶液は、液体窒素により冷却されて凍結固化体とされる。
【0021】
さらに、前記凍結固化体は、液体窒素により冷却され状態で、減圧処理されて凍結乾燥されることにより、不可避不純物として、アンモニア水和物(NH(HO))及びアンモニアボラン(NHBH)を混入した固体のアンモニア(NH)が製造され、この固体が水素貯蔵燃料とされる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る水素貯蔵燃料は、固体のアンモニアにより構成されてなるので、安全に貯蔵保管することが可能となり、さらに搬送も容易とすることができる。
【0023】
固体とされた水素貯蔵燃料は、広く一般に汎用して利用な可能な水素エネルギーキャリアとして利用することができ、アンモニアエンジンシステム、アンモニア発電システム、その他アンモニア燃料機器の燃料として提供することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る水素貯蔵燃料の製造に用いられる製造装置を示す概略図である。
図2】本発明方法により製造された固体アンモニアの外観を示す図面代用写真である。
図3】本発明方法により製造された固体アンモニアのX線回折図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る水素貯蔵燃料及びその製造方法の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0026】
本発明は、水素貯蔵媒体としてアンモニア(NH)を用いた水素貯蔵燃料である。この水素貯蔵燃料は、不可避不純物として、アンモニア水和物(NH(HO))及びアンモニアボラン(NHBH)が混入され、常温常圧下で固体とされたアンモニア(NH)を主体として構成されている。不可避不純物として、アンモニア水和物及びアンモニアボランが混入されて凍結乾燥されたアンモニアは、常温常圧下で固化されて固体とされた状態を維持する。
【0027】
本発明に係る水素貯蔵体を構成する常温常圧下で固体とされたアンモニアは、図1に示す製造装置を用いて製造される。
【0028】
この製造装置は、固体アンモニアの原料となるアンモニアの混合水溶液が注水される反応容器1と、この反応容器1が収納されて真空排気される真空排気槽2と、液体窒素が充填される第1の液体窒素冷却槽3を備える。真空排気槽2は、第1の液体窒素冷却槽3内に設置され、反応容器1とともに、第1の液体窒素冷却槽3に充填される液体窒素により冷却される。
【0029】
反応容器1を収納した真空排気槽2は、排気バルブ4を介して液体窒素冷却槽3の外部に接続されている。排気バルブ4は、第1の液体窒素冷却槽3を密封して取り付けられる。排気バルブ4は、内部に設けた開閉弁が操作されることにより、真空排気槽2を開閉する。
【0030】
そして、真空排気槽2には、真空ポンプ5が連結されている。真空ポンプ5と真空排気槽2との間は、ガストラップ機構6が設けられている。このガストラップ機構6は、第2の液体窒素冷却槽7内に設置され、第2の液体窒素冷却槽7に充填される液体窒素により冷却される。
【0031】
真空排気槽2とガストラップ機構6との間は、連結管8を介して連結されている。この連結管8は、一端側が排気バルブ4を介して真空排気槽2に連結され、他端側が第2の液体窒素冷却槽7を貫通してガストラップ機構6に挿入されることにより、真空排気槽2とガストラップ機構6との間を連結している。
【0032】
また、真空ポンプ5は、真空ポンプ連結管9を介してガストラップ機構6に連結されている。真空ポンプ連結管9は、一端側を真空ポンプ5に連結し、他端側を第2の液体窒素冷却槽7を貫通してガストラップ機構6に挿入して、真空ポンプ5と排気ガストラップ機構6との間を連結している。
【0033】
したがって、真空排気槽2の内部は、ガストラップ機構6を介して真空ポンプ5により吸引減圧される。そして、真空ポンプ5が駆動して真空排気槽2から吸引されたガスは、排気バルブ4を介して真空排気槽2の外部に排出され、連結管8を介してガストラップ機構6に導入され、第2の液体窒素冷却槽7に充填される液体窒素により冷却される。
【0034】
上述したような構成を備えた製造装置を用いて固体アンモニアを製造する工程を説明する。
【0035】
まず、固体のアンモニアを製造するため、アンモニア水とホウ酸(B)の粉末を用意し、アンモニア水中にホウ酸の粉末を混合した混合水溶液を作製する。
【0036】
この混合水溶液は、重量比でアンモニアを29wt%含有したアンモニア水1Lに対して、ホウ酸粉末532gの量比で混合することが望ましい。
【0037】
なお、混合水溶液は、後述の固体アンモニアの製造工程を用いて濃縮されて固体アンモニアにされるものであれば、アンモニアを適宜の割合で含有するアンモニア水を用い、さらに、このアンモニア水に対するホウ酸粉末の混合割合も適宜選択することが可能である。
【0038】
次に、アンモニア水にホウ酸粉末を混合した混合水溶液を、前述した製造装置の真空排気槽2に収納された反応容器1に注水する。次いで、第1の液体窒素冷却槽3内に液体窒素を充填し、真空排気槽2、反応容器2を介して、反応容器2内の混合水溶液を冷却する。このとき、反応容器2内の混合水溶液は、少なくともアンモニアが固化する-78℃以下に冷却され凍結固化体とされる。
【0039】
反応容器1内の混合水溶液を凍結固化した状態で、排気バルブ4を解放するとともに、真空ポンプ5を駆動して真空排気槽2内を真空排気し減圧する。この真空排気は、混合水溶液を、反応容器1内で凍結固化させた状態で2-10時間に亘って行う。真空排気槽2内が、所定時間、真空排気され減圧されると、反応容器1内で凍結固化された凍結固化体内に水蒸気成分として残存する水分(HO(g))と、気体成分として残存するホウ素化合物であるBH(g)、B(cr)及びB(g)を凍結固化体の外部に排出する凍結乾燥が行われる。
【0040】
凍結固化体に対し凍結乾燥の処理が施されると、凍結固化体中から水分とホウ酸化合物が排出されてアンモニア成分が濃縮され、不可避的にアンモニア水和物(NH(HO))及びアンモニアボラン(NHBH)が混入された固体のアンモニア(NH(cr))が生成される。
【0041】
不可避的な成分であるアンモニア水和物及びアンモニアボランが混入されて固体とされたアンモニアは、常温常圧下において、安定である。すなわち、ここで生成されたアンモニアは、常温常圧下において、固体の状態を保持する。
【0042】
これは、固体のアンモニア成分中に、後述する実施例で示すように、不可避的な成分としてアンモニア水和物及びアンモニアボランが混入されことによるものと認められる。
【0043】
なお、反応容器1内で凍結固化された凍結固化体内から外部に排出された水分とホウ素化合物は、真空ポンプ5により吸引され、排気バルブ4を介して真空排気槽2の外部に排気される。真空排気槽2の外部に排気された水蒸気成分としての水分と気体成分としてのホウ素化合物は、連結管8を介してガストラップ機構6に導入される。ガストラップ槽6に、導入された水分とホウ酸化合物は、第2の液体窒素冷却槽7に充填される液体窒素により冷却されて凍結され、凍結ホウ酸水として回収される。
【0044】
すなわち、ガストラップ機構6が液体窒素により冷却されることにより、水蒸気成分としての水分と気体成分としてのホウ素化合物は凝縮されて凍結され固体とされる。凍結固化体から排出された水分とホウ素化合物は、固体とされることにより、装置外部への取り出しが容易となる。
【0045】
ここで製造された固体とされたアンモニアは、水素を貯蔵した水素貯蔵燃料として構成され、アンモニアエンジンシステム、アンモニア発電システム、その他アンモニア燃料機器の燃料として用いられる。
【実施例
【0046】
以下、本発明に係る水素貯蔵燃料を構成する固体アンモニアの一実施例を示す。
【0047】
ここに示す実施例は、重量比でアンモニアを29wt%含有したアンモニア水0.3mLに対して、ホウ酸粉末を160mgの量比で混合した混合水溶液を用意する。
【0048】
次に、前記混合水溶液を、図1に示すような構成を備えた製造装置の真空排気槽2に収納された反応容器1に注水する。次いで、第1の液体窒素冷却槽3内に液体窒素を充填し、真空排気槽2、反応容器1を介して、反応容器2内の混合水溶液を冷却する。このとき、反応容器2内の混合水溶液は、少なくともアンモニアが固化する-78℃以下に冷却され凍結固化体とされる。
【0049】
反応容器1内の混合水溶液を凍結固化した状態で、排気バルブ4を解放するとともに、真空ポンプ5を駆動して真空排気槽2内を真空排気し減圧する。この真空排気は、混合水溶液を、反応容器1内で凍結固化させた状態で8時間行う。真空排気槽2内が、所定の時間、真空排気され減圧されると、反応容器1内で凍結固化された凍結固化体内に水蒸気成分として残存する水分(HO(g))と、気体成分として残存するホウ素化合物であるBH(g)、B(cr)及びB(g)が凍結固化体の外部に排出される凍結乾燥が行われる。
【0050】
そして、凍結固化体に対し凍結乾燥の処理を施すことにより、凍結固化体中から水分とホウ酸化合物が排出され、凍結固体中のアンモニア成分が濃縮され、不可避的にアンモニア水和物(NH(HO))及びアンモニアボラン(NHBH)が混入された固体とされたアンモニア(NH(cr))が生成される。
【0051】
なお、反応容器1内で凍結固化された凍結固化体内から外部に排出された水分とホウ素化合物は、真空ポンプ5により吸引され、排気バルブ4を介して真空排気槽2の外部に排気される。真空排気槽2の外部に排気された水蒸気成分としての水分と気体成分としてのホウ素化合物は、連結管8を介してガストラップ槽6に導入される。ガストラップ槽6に導入された水分とホウ酸化合物は、第2の液体窒素冷却槽7に充填される液体窒素により冷却されて凍結され、凍結ホウ酸水として回収される。
【0052】
ここで製造されたアンモニアは、その外観を観察した図2の写真に示すように、常温常圧の環境下で、白色の結晶体として析出された固体であることが認められた。このアンモニアは、粉末状であった。
【0053】
ここで白色の結晶体として得られた固体のアンモニアを、X線回折装置を用いて観察した。その結果を図3に示す。本実施例で作製された白色の結晶体は、図3に示すように、シャープな固体のアンモニアのピークが観察された。この結晶体は、固体のアンモニア(NH(cr))のピークが観察されるとともに、不可避的な混入物であるアンモニア水和物(NHO(cr))とアンモニアボラン(NHBH(cr))のピークも認められた。
【0054】
このように、白色の結晶体として得られた固体のアンモニアは、不可避的な成分であるアンモニア水和物及びアンモニアボランが混入されたことにより、常温常圧下において、固体の状態を安定して保持するものと認められる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る固体のアンモニアを水素貯蔵媒体として構成した水素貯蔵燃料、並びに本発明方法により製造された固体のアンモニアを水素貯蔵媒体に用いた水素彫像燃料は、アンモニアエンジンシステム、アンモニア発電システム、その他アンモニア燃料機器の燃料として用いられる。
【符号の説明】
【0056】
1 反応容器
2 真空排気槽
3 第1の液体窒素冷却槽
4 排気バルブ
5 真空ポンプ
6 ガストラップ機構
7 第2の液体窒素冷却槽

【要約】
【課題】
取り扱いの安全性を向上し、しかも、貯蔵、運搬に適した形態とした水素貯蔵燃料を提供する。
【解決手段】
不可避不純物として、アンモニア水和物(NH(HO))及びアンモニアボラン(NHBH)が混入され、常温常圧下で固体とされたアンモニア(NH)を主体として構成された水素貯蔵燃料である。
この水素貯蔵燃料を構成するアンモニア(NH3(cr))は、アンモニア(NH)を溶解した水溶液にホウ酸(B)を混合した混合水溶液を凍結して凍結固化体を作製し、この凍結固化体を凍結乾燥することにより、不可避不純物として、アンモニア水和物(NH(HO))及びアンモニアボラン(NHBH)を混入して結晶固体として製造される。
【選択図】 図1
図1
図2
図3