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特許7470925電力制御方法、プログラム、及び分散電源システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】電力制御方法、プログラム、及び分散電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20240412BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20240412BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20240412BHJP
   H02J 3/18 20060101ALI20240412BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20240412BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
H02J3/38 130
H02J3/46
H02J3/38 110
H02J3/32
H02J3/18
H02J7/35 K
H02J13/00 311R
H02J13/00 311T
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020067044
(22)【出願日】2020-04-02
(65)【公開番号】P2021164372
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大槻 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】小田 政志
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-161939(JP,A)
【文献】特開2017-135889(JP,A)
【文献】国際公開第2016/136260(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統電源から電力供給を受ける需要家の施設に設けられ、前記施設に存在する負荷に対して電力を供給可能な分散電源の出力を用いた特定制御を行う特定制御処理と、
前記特定制御を行っていない場合に、前記分散電源の出力電力の最大値、出力電流の最大値、及び無効電力の最大値の少なくとも一つに対して、前記特定制御を行うために必要な調整分を残すように、前記分散電源の出力を抑制する出力抑制処理と、を含む、
電力制御方法。
【請求項2】
前記分散電源は蓄電システムを含み、
前記特定制御は、前記蓄電システムから前記系統電源に放電させる放電制御を少なくとも含む、
請求項1に記載の電力制御方法。
【請求項3】
前記特定制御を行っていない場合において、前記蓄電システムの蓄電量に対して、充電量の上限を設定する充電上限値と、充電量の下限を設定する充電下限値とがそれぞれ設けられている、
請求項2に記載の電力制御方法。
【請求項4】
前記分散電源は、前記蓄電システムとは別の電源を含む、
請求項2又は3に記載の電力制御方法。
【請求項5】
前記分散電源は、太陽光発電システムを含む、
請求項1~4のいずれか1項に記載の電力制御方法。
【請求項6】
前記太陽光発電システムは、太陽電池と、太陽電池の出力電圧を電圧変換する電力変換装置と、を含み、
前記出力抑制処理では、前記電力変換装置が最大電力点追従制御を行う場合の最大点以外の動作点で動作させることによって前記電力変換装置の出力を抑制する、
請求項5に記載の電力制御方法。
【請求項7】
前記特定制御は、前記系統電源の電力品質を安定化するための系統安定化制御と、前記施設での電力の需給を制御する需要家制御との少なくとも一方を含む、
請求項1~6のいずれか1項に記載の電力制御方法。
【請求項8】
前記系統安定化制御は、前記系統電源の需給バランス、前記系統電源の系統電圧の電圧値、及び前記系統電圧の周波数のうちの少なくとも1つに基づいて、前記分散電源の出力を調整する制御を含む、
請求項7に記載の電力制御方法。
【請求項9】
前記特定制御を行うための前記調整分の大きさを、前記分散電源を含む前記施設での事象に基づいて更新する更新処理を更に含む、
請求項1~8のいずれか1項に記載の電力制御方法。
【請求項10】
前記調整分の大きさに関連する前記施設での事象の発生を抑制する事象抑制処理を更に含む、
請求項9に記載の電力制御方法。
【請求項11】
前記分散電源からの出力電力の出力状況をユーザに提示する提示処理を更に含む、
請求項1~10のいずれか1項に記載の電力制御方法。
【請求項12】
コンピュータシステムに、
請求項1~11のいずれか1項に記載の電力制御方法を実行させるための、
プログラム。
【請求項13】
系統電源から電力供給を受ける需要家の施設に設けられ、前記施設に存在する負荷に対して電力を供給可能な分散電源の出力を用いた特定制御を行う特定制御部と、
前記特定制御部が前記特定制御を行っていない場合に、前記分散電源の出力電力の最大値、出力電流の最大値、及び無効電力の最大値の少なくとも一つに対して、前記特定制御を行うために必要な調整分を残すように、前記分散電源の出力を抑制する出力抑制部と、を含む、
分散電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力制御方法、プログラム、及び分散電源システムに関する。より詳細には、本開示は、分散電源の出力電力を制御するための電力制御方法、プログラム、及び分散電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、発電装置及び蓄電装置(分散電源)に接続された電力制御装置を開示する。電力制御装置は出力制御情報受信部及び制御部を備える。出力制御情報受信部は、外部から、発電装置の出力を制限する出力制御情報を受信する。制御部は、出力制御情報を受信した場合に、発電装置から電力系統に出力される電力供給量が閾値以下となるように蓄電装置の蓄電量を増加させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-192209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、分散電源の出力を用いて負荷への給電以外の特定制御を行う場合に、分散電源の出力に余力が無ければ、特定制御を実行できない可能性がある。
【0005】
本開示の目的は、分散電源の出力を利用した特定制御を実行不能な事態を回避できる電力制御方法、プログラム、及び分散電源システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の電力制御方法は、特定制御処理と、出力抑制処理と、を含む。前記特定制御処理は、分散電源の出力を用いた特定制御を行う。前記分散電源は、系統電源から電力供給を受ける需要家の施設に設けられ、前記施設に存在する負荷に対して電力を供給可能である。前記出力抑制処理は、前記特定制御を行っていない場合に、前記分散電源の出力電力の最大値、出力電流の最大値、及び無効電力の最大値の少なくとも一つに対して、前記特定制御を行うために必要な調整分を残すように、前記分散電源の出力を抑制する。
【0007】
本開示の一態様のプログラムは、コンピュータシステムに、前記電力制御方法を実行させるためのプログラムである。
【0008】
本開示の一態様の分散電源システムは、特定制御部と、出力抑制部と、を含む。前記特定制御部は、分散電源の出力を用いた特定制御を行う。前記分散電源は、系統電源から電力供給を受ける需要家の施設に設けられ、前記施設に存在する負荷に対して電力を供給可能である。前記出力抑制部は、前記特定制御部が前記特定制御を行っていない場合に、前記分散電源の出力電力の最大値、出力電流の最大値、及び無効電力の最大値の少なくとも一つに対して、前記特定制御を行うために必要な調整分を残すように、前記分散電源の出力を抑制する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、分散電源の出力を利用した特定制御を実行不能な事態を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る分散電源システムを含む全体システムの概略的なシステム構成図である。
図2図2は、同上の分散電源システムの電力制御方法を説明するフローチャートである。
図3図3は、同上の分散電源システムの電力制御方法を説明する説明図である。
図4図4は、同上の分散電源システムが備える蓄電システムの容量の内訳を説明する説明図である。
図5図5は、同上の分散電源システムの電力制御方法を説明する説明図である。
図6図6は、同上の分散電源システムが提示部に提示する情報の一例を示す図である。
図7図7は、同上の分散電源システムの電力制御方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態)
(1)概要
以下の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0012】
本実施形態の分散電源システム1は、図1に示すように、特定制御部11と、出力抑制部12と、を備える。特定制御部11は、分散電源40の出力を用いた特定制御を行う。分散電源40は、系統電源100から電力供給を受ける需要家の施設F1に設けられ、施設F1に存在する負荷L1に対して電力を供給可能である。出力抑制部12は、特定制御部11が特定制御を行っていない場合に、分散電源40の出力電力の最大値、出力電流の最大値、及び無効電力の最大値の少なくとも一つに対して、特定制御を行うために必要な調整分を残すように、分散電源40の出力を抑制する。
【0013】
また、本実施形態の分散電源システム1が行う電力制御方法は、特定制御処理と、出力抑制処理と、を含む。特定制御処理では、分散電源40の出力を用いた特定制御を行う。出力抑制処理では、特定制御を行っていない場合に、分散電源40の出力電力の最大値、出力電流の最大値、及び無効電力の最大値の少なくとも一つに対して、特定制御を行うために必要な調整分を残すように、分散電源40の出力を抑制する。
【0014】
ここにおいて、分散電源40は、再生可能エネルギ又は化石燃料を利用して発電を行う発電システムを少なくとも含む。以下では、分散電源40が、再生可能エネルギである太陽光を受けて発電を行う太陽光発電システムを含む場合を例に説明を行う。なお、分散電源40は、太陽光以外の風力、水力、波力、潮力、又は地熱等の再生可能エネルギを利用して発電を行う発電システムを含んでもよいし、化石燃料を利用して発電を行う燃料電池等の発電システムを含んでもよい。本実施形態の分散電源システム1は、例えば、系統電源100から電力供給を受ける需要家の施設F1であって、戸建の住宅のような施設F1(図1参照)に適用される。なお、分散電源システム1が適用される施設F1は、戸建の住宅に限定されず、集合住宅(マンション)であってもよい。更に、施設F1は、住宅に限らず、非住宅、例えば、オフィスビル、劇場、映画館、公会堂、遊技場、複合施設、飲食店、百貨店、学校、ホテル、旅館、病院、老人ホーム、幼稚園、図書館、博物館、美術館、地下街、駅、空港等であってもよい。施設F1に存在する負荷L1は、系統電源100又は分散電源40から供給される電力で動作する電気機器である。特定制御は、系統電源100の給電能力が電力需要を下回ることによって系統電源100の電圧が低下する場合に、分散電源40の出力電力を系統電源100に出力(逆潮流)することによって、系統電源100の給電能力の不足を補う処理を少なくとも含む。
【0015】
本実施形態の分散電源システム1では、特定制御部11が特定制御を行っていない場合に、出力抑制部12が、分散電源40の出力電力の最大値に対して、上記の調整分を残すように、分散電源40の出力電力を抑制している。したがって、特定制御部11は、出力抑制部12が分散電源40の出力電力を抑制することによって確保された上記の調整分を利用して特定制御を行うことができ、特定制御を行うのに必要な電力が不足する事態を回避できる。よって、本実施形態の分散電源システム1では、分散電源40の出力を利用した特定制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0016】
(2)詳細
(2.1)構成
以下、本実施形態に係る分散電源システム1を含む全体システムについて図面を参照して詳しく説明する。
【0017】
本実施形態では、施設F1に、分散電源システム1と、負荷L1と、受信端末60と、表示部70と、が設けられている。
【0018】
負荷L1は、施設F1内で使用される1又は複数の電気機器を含む。1又は複数の電気機器は、系統電源100及び分散電源システム1のいずれかから電力供給を受けて動作する。
【0019】
受信端末60は、インターネット等のネットワークNT1を介して外部サーバ110と通信する通信機能を有している。外部サーバ110は、施設F1に電力を供給する電力事業者が運営するサーバ装置である。外部サーバ110は系統電源100の需給バランスを常時監視している。外部サーバ110は、系統電源100の供給電力と電力需要との差が所定の閾値を超えると、系統安定化のための制御指令をネットワークNT1経由で需要家の施設F1の受信端末60に出力する。ここで、系統電源100の供給電力が電力需要に比べて不足している場合、外部サーバ110は、例えば所定電力値の逆潮電力を系統電源100に逆潮流させる制御指令を受信端末60に出力する。一方、系統電源100の供給電力が電力需要に比べて過剰である場合、外部サーバ110は、例えば施設F1が系統電源100から受け取る電力を所定電力値だけ増やすように指示する制御指令を受信端末60に出力する。
【0020】
表示部70は、施設F1を使用するユーザが視認可能な場所に設置されたディスプレイ装置を含む。表示部70は、分散電源システム1から入力される提示情報を表示する。
【0021】
次に、分散電源システム1について説明する。
【0022】
分散電源システム1は、コントローラ10と、分散電源40と、インバータ50と、を備える。本実施形態では、施設F1に、分散電源40として、太陽光発電システム20と、蓄電システム30と、が設けられている。つまり、本実施形態では、分散電源40が蓄電システム30を含んでいる。蓄電システム30は、再生可能エネルギを利用した太陽光発電システム20等の発電システムに比べて出力が安定しているので、系統電源100の安定化のためには蓄電システム30に蓄積された電力が利用される。そして、本実施形態では、分散電源40が、蓄電システム30とは別の電源を含んでおり、具体的には分散電源40が、太陽光発電システム20を含んでいる。
【0023】
太陽光発電システム20は、太陽電池21と、太陽電池21の出力電圧を電圧変換するPV(Photovoltaics)用コンバータ22(電力変換装置)とを備える。
【0024】
太陽電池21は、シリコン系又は化合物半導体系の複数の太陽電池セルを備え、複数の太陽電池セルは直列又は並列に接続されている。
【0025】
PV用コンバータ22は、太陽電池21の出力電圧を所定の電圧値の直流電圧に変換してインバータ50に出力する。PV用コンバータ22は、例えば最大電力点追従(MPPT:Maximum Power Point Tracking)方式で電力変換を行う機能を有している。最大電力点追従方式は、気象条件等の変化に応じて変動する最適動作点に追従しながら電力変換を行う機能である。
【0026】
蓄電システム30は、蓄電池31と、蓄電池用コンバータ32とを備える。
【0027】
蓄電池31は、例えばリチウムイオン電池等の二次電池であるが、蓄電池31はリチウムイオン電池に限定されず、ニッケル水素電池等の他の二次電池でもよい。
【0028】
蓄電池用コンバータ32は、蓄電池31の充電及び放電を行う機能を有している。蓄電池31の充電時は、蓄電池用コンバータ32は、インバータ50から供給される直流電流の電流値又は直流電圧の電圧値を調整して蓄電池31を充電する。蓄電池31の充電を開始してから蓄電池31の充電電圧が最大電圧に上昇するまでの間、蓄電池用コンバータ32は、蓄電池31に一定の電流を流して蓄電池31を充電するCC(Constant Current)充電を行う。そして、蓄電池31の充電電圧が最大電圧に達すると、蓄電池用コンバータ32は、蓄電池31の充電電圧を最大電圧とするように、蓄電池31に一定値の電圧を印加して蓄電池31を充電するCV(Constant Voltage)充電を行う。また、蓄電池31の放電時は、蓄電池用コンバータ32は、蓄電池31の出力電圧を所定の電圧値の直流電圧に変換して、インバータ50に出力する。
【0029】
インバータ50は、直流と交流とを変換する変換機能を有している。インバータ50は、PV用コンバータ22又は蓄電池用コンバータ32から入力される直流電圧を交流電圧に変換して、負荷L1又は系統電源100に出力する。インバータ50から出力された交流電圧が系統電源100に出力されることによって、施設F1から系統電源100に電力が逆潮流される。また、インバータ50は、系統電源100から入力される交流電圧を直流電圧に変換して蓄電池用コンバータ32に出力し、蓄電池用コンバータ32に蓄電池31を充電させる。また、インバータ50は、PV用コンバータ22から入力される直流電圧を蓄電池用コンバータ32に出力し、蓄電池用コンバータ32に蓄電池31を充電させることもできる。
【0030】
コントローラ10は、分散電源40が備える太陽光発電システム20及び蓄電システム30と、インバータ50との動作を制御する。
【0031】
コントローラ10は、例えば、プロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを有している。そして、プロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、コンピュータシステムがコントローラ10として機能する。本実施形態のコントローラ10は、上述した特定制御部11及び出力抑制部12の機能を備え、更に更新部13、事象抑制部14及び提示部15の機能を備えている。
【0032】
特定制御部11は、施設F1に設けられた受信端末60から系統安定化の制御指令が入力されると、分散電源40の出力を用いた特定制御を行う。例えば、特性制御は、蓄電システム30が、充電と放電との少なくとも一方を行うことによって実現される。例えば、系統電源100の供給能力が電力需要に比べて不足する場合、特定制御は、蓄電システム30から放電させた電力を系統電源100に出力することによって、系統電源100の供給能力と電力需要との均衡を図る制御である。また、系統電源100の供給能力が電力需要に比べて過剰である場合、特定制御は、系統電源100から入力される電力で蓄電システム30を充電することによって、系統電源100の供給能力と電力需要との均衡を図る制御である。つまり、特定制御は、系統電源100の電力品質を安定化するための系統安定化制御を含んでいるが、施設F1での電力の需給を制御する需要家制御を含んでもよい。例えば、系統電源100の供給能力が電力需要に比べて過剰である場合に、特定制御部11が、特定制御として需要家制御を実行することで、系統電源100の電力需要を増やして供給電力と電力需要との均衡を図ってもよい。なお、特定制御は、系統安定化制御と需要家制御との少なくとも一方を含んでもよい。なお、系統安定化制御は、負荷L1で消費される有効電力の過不足を調整する制御を含み得る。また、系統安定化制御は、系統電源100の系統電圧の高低を調整するための有効電力入出力調整と、系統電圧の周波数の高低を調整するための有効電力入出力調整と、系統電圧の高低を調整するための無効電力入出力調整との少なくとも1つを含み得る。
【0033】
出力抑制部12は、特定制御部11が特定制御を行っていない場合に、分散電源40である太陽光発電システム20の出力電力の最大値に対して、特定制御を行うために必要な調整分を残すように、太陽光発電システム20の出力電力を抑制する。具体的には、出力抑制部12が実行する出力抑制処理では、PV用コンバータ22が最大電力点追従制御を行う場合の最大点以外の動作点でPV用コンバータ22を動作させることによって、PV用コンバータ22の出力電力を抑制している。
【0034】
更新部13は、特定制御を行うための調整分の大きさを、分散電源40を含む施設F1での事象に基づいて更新する更新処理を行う。ここにおいて、施設F1での事象とは、特定制御に利用される分散電源40の出力電力に影響を与えるような事象である。例えば、分散電源40である蓄電システム30の出力電力は、周囲温度の影響を受けて変動する可能性があり、施設F1での事象は周囲温度の変化を含み得る。周囲温度が使用温度範囲の上限を上回る場合、蓄電池用コンバータ32を構成する部品の温度上昇等によって蓄電システム30の出力電力が低下する場合がある。また、周囲温度が使用温度範囲の下限を下回る場合、蓄電池31のセルの温度が低下することによって、蓄電システム30の出力電力が低下する場合がある。このように、周囲温度が使用温度範囲の上限を上回る場合、又は、使用温度範囲の下限を下回る場合、蓄電システム30の出力電力が低下する可能性がある。したがって、更新部13は、周囲温度が使用温度範囲の下限を下回る、又は、使用温度範囲の上限を上回る場合の調整分の大きさ(第1調整値)を、周囲温度が使用温度範囲内である場合の調整分の大きさ(第2調整値)に比べて、小さい値に設定する。第2調整値に比べて第1調整値を小さい値に設定することで、周囲温度が使用温度範囲の下限を下回る、又は、使用温度範囲の上限を上回る場合に、蓄電システム30から特定制御を行うために必要な調整分の電力を供給できない可能性を低減できる。
【0035】
事象抑制部14は、調整分の大きさに関連する施設F1での事象の発生を抑制する事象抑制処理を行う。上述のように、特定制御に利用される分散電源40の出力電力に影響を与えるような施設F1の事象は、分散電源40の周囲温度の変化を含み得る。施設F1に分散電源40の周囲温度を制御する空調システムが配置されている場合、事象抑制部14は、空調システムを制御して、分散電源40の周囲温度を使用温度範囲内に制御する事象抑制処理を行うことによって、調整分の大きさに関連する施設F1での事象の発生を抑制することができる。
【0036】
提示部15は、分散電源40からの出力電力の出力状況をユーザに提示する提示処理を行う。提示部15は、例えばモニタ装置である表示部70に出力状況を示す情報を表示させることにより、ユーザに対して出力状況を視覚的に提示することができる。なお、提示部15は、例えばスピーカから出力状況を示す音声を出力させることによって、ユーザに対して出力状況を音で提示してもよいし、出力状況を音と表示の両方で提示してもよい。
【0037】
(2.2)動作説明
本実施形態の分散電源システム1の動作を図2図7等に基づいて説明する。なお、図2に示すフローチャートは、分散電源システム1の電力制御方法の一例に過ぎず、処理の順序が適宜変更されてもよいし、処理が適宜追加又は省略されてもよい。
【0038】
分散電源システム1が動作を開始すると、コントローラ10の更新部13が、分散電源40である蓄電システム30の出力電力を利用した特定制御を行うために必要な調整分の大きさを設定する(ST1)。
【0039】
ここにおいて、更新部13は、分散電源システム1が備えるインバータ50及び蓄電システム30の入出力範囲、並びに太陽光発電システム20の出力範囲等に基づいて、特定制御を行うために必要な調整分の大きさを設定する。図3は、インバータ50の入出力範囲PW1と、太陽光発電システム20の出力範囲PW2と、蓄電システム30の入出力範囲PW3の一例を示している。インバータ50の入出力範囲PW1は、例えば、負荷L1又は系統電源100への放電時(出力時)の最大値が5500W、蓄電システム30の充電時(入力時)の最大値が1500Wとなっている。太陽光発電システム20の出力範囲PW2は、例えば0~5500Wである。つまり、太陽光発電システム20の出力範囲PW2の最大値は、放電時におけるインバータ50の出力電力の最大値に等しい値となっている。蓄電システム30の入出力範囲PW3は蓄電池31の容量によって決定され、蓄電システム30からの放電電力の最大値は2000Wであり、蓄電システム30が充電する場合の充電電力の最大値は1500Wとなっている。なお、本実施形態では、分散電源40の出力電力の最大値は、放電時におけるインバータ50の出力電力の最大値となっている。
【0040】
ここにおいて、分散電源システム1のコントローラ10は、例えば外部サーバ110からの制御指令に基づいて、蓄電システム30の容量に対して、系統電源100への放電に利用する場合の調整用容量と、系統電源100からの充電に利用する場合の調整用容量とをそれぞれ設定している。図4は、蓄電システム30が備える蓄電池31の容量の内訳を模式的に示す図である。コントローラ10は、特定制御を行っていない場合において、蓄電システム30の蓄電量に対して、充電量の上限を設定する充電上限値LV3と、充電量の下限を設定する充電下限値LV2とをそれぞれ設けている。ここで、蓄電システム30の放電下限をLV1、容量の最大値をLV4とすると,容量の最大値LV4から充電上限値LV3を引いた容量が、系統電源100からの充電に利用する場合の調整用容量(第2容量C2)となる。また、充電下限値LV2から放電下限LV1を引いた容量が、系統電源100への放電に利用する場合の調整用容量(第1容量C1)となる。すなわち、更新部13は、蓄電システム30の調整用容量を蓄電システム30の放電下限LV1に基づいて設定しており、放電下限LV1を超えて放電される可能性を低減できる。このように、特定制御を行っていない場合に、蓄電システム30の蓄電量に対して充電上限値LV3及び充電下限値LV2をそれぞれ設定することによって、分散電源40の出力電力の最大値に対して特定制御を行うために必要な調整分が設定される。また、蓄電システム30の容量において、充電上限値LV3と充電下限値LV2との間の第3容量C3が、施設F1での電力の需給に関わる需要家制御に利用可能な容量となる。また、蓄電システム30の容量において、放電下限LV1以下の部分を第4容量C4という。
【0041】
コントローラ10が蓄電システム30の容量に対して第1~第4容量C1~C4を設定することによって、蓄電システム30の入出力範囲PW3の一部が、系統安定化制御に利用可能な入出力範囲PW4に設定され、残りが需要家側で利用可能な入出力範囲PW5に設定される。また、系統安定化制御に利用可能な入出力範囲PW4は、放電時の第1範囲(出力範囲)PW41と、充電時の第2範囲(入力範囲)PW42とに分けられる。蓄電システム30は、系統安定化制御において系統電源100に放電する場合には第1範囲PW41の電力を放電可能であり、系統電源100から充電する場合には第2範囲PW42の電力を充電可能である。
【0042】
ところで、特定制御部11が、蓄電システム30から第1範囲PW41のうち制御指令で指示された所定量PW40の電力を放電させる場合に、太陽光発電システム20が出力範囲PW2の最大値に等しい出力電力P1を出力していると、インバータ50は出力電力をこれ以上増やすことができない。そのため、特定制御部11が特定制御を実行するために蓄電システム30から所定量PW40の電力を放電させたとしても、インバータ50に出力電力を増やす余力がないため、特定制御を実行できない可能性がある。
【0043】
そこで、本実施形態では、更新部13が特定制御に利用する調整分の大きさを設定すると、出力抑制部12が、分散電源40の出力電力の最大値に対して、特定制御のための調整分を残すように、分散電源40の出力電力を抑制する出力抑制処理を行う(ST2)。
【0044】
すなわち、出力抑制部12は、特定制御部11が特定制御を行っていない場合に、分散電源40の出力電力の最大値Pmax(本実施形態では例えば5000W)に対して、特定制御のための調整分を残すように、太陽光発電システム20の出力電力を最大値P1max以下に抑制している(図5参照)。本実施形態では特定制御のための調整分は、蓄電システム30から系統安定化用に放電される電力であり、第1範囲PW41の電力となる。ここで、出力抑制部12は、太陽光発電システム20のPV用コンバータ22を、最大電力点追従制御を行う場合の最大点以外の動作点で動作させることによってPV用コンバータ22の出力電力を抑制する。このように、出力抑制部12が、太陽光発電システム20の出力電力を最大値P1max以下に抑制することで、分散電源40の最大電力であるインバータ50の出力電力の最大値に対して調整分を出力する余裕ができるので、調整分を利用した特定制御を行うことができる。
【0045】
次に、コントローラ10の特定制御部11は、受信端末60が系統安定化制御の制御指令を受信しているか否かを判断し(ST3)、制御指令を受信していない場合(ST3:No)は処理を終了する。
【0046】
一方、受信端末60が制御指令を受信している場合(ST3:Yes)、特定制御部11は、分散電源40の出力電力を利用した特定制御を実行する(ST4)。ここで、外部サーバ110からの制御指令が系統電源100への放電を指示する指令であれば、特定制御部11は、蓄電システム30から系統安定化用に用意された第1範囲PW41内の大きさの直流電力を放電させ、インバータ50によって交流電力に変換させた後、系統電源100へと出力させる。このように、外部サーバ110からの制御指令を受けて、特定制御部11が蓄電システム30から第1範囲PW41内の大きさの直流電力を放電させる場合でも、インバータ50は、調整分の交流電力を出力する能力を残しているので、インバータ50が、第1範囲PW41内の大きさの直流電力を交流電力に変換して系統電源100に出力することができる。なお、外部サーバ110からの制御指令が、系統電源100からの受電量を増やす指令である場合、特定制御部11は、太陽光発電システム20の出力電力を低下させる処理と、蓄電システム30の充電量を増加させる処理との少なくとも一方を行うことで、系統電源100からの受電量を増やせばよい。
【0047】
また、提示部15は、分散電源40からの出力電力の出力状況、例えば太陽光発電システム20及び蓄電システム30の出力電力の出力状況を示す情報を、表示部70に表示させることによって、施設F1のユーザに出力状況を提示する提示処理を行う(ST5)。図6は提示部15が表示部70に表示する情報の一例であり、表示部70の画面701には、太陽光発電システム20を表すアイコンM1と、蓄電システム30を表すアイコンM2と、系統電源100を表すアイコンM3とが表示される。また、画面701には、太陽光発電システム20の出力状況と、蓄電システム30の出力状況と、系統電源100への出力状況とが、電力の出力方向を示す矢印と、出力電力の大きさを示す数値とで表示されている。分散電源システム1は、図6に示すような出力状況を示す情報を表示部70に表示させているので、施設F1のユーザに対して、分散電源40からの出力電力の出力状況を報知することができる。なお、図6中の引き出し線及び符号は説明のために表記しているにすぎず、表示部70の画面701には表示されない。
【0048】
分散電源システム1は、ステップST1~ST5までの処理を所定の時間間隔で繰り返し実行しており、外部サーバ110からの制御指令を受けて系統安定化のための特定制御を実行することができる。また、外部サーバ110は、系統電源100での需給バランスの実測値に基づいて系統安定化のための制御指令を受信端末60に出力しているので、特定制御部11は、系統電源100での需給バランスに基づいて系統安定化制御を実行できる。すなわち、特定制御部11は、系統電源100での需給バランスに基づいて、分散電源40の出力電力を調整する制御を実行することができ、時間とともに変化する需給バランスを改善するために分散電源40の出力電力をより細かく調整することができる。なお、系統電源100での需給バランスに基づいて系統安定化制御を実行するとは、将来の需給バランスを予測した結果ではなく、実際の需給バランスの実測値に基づいて系統安定化制御を実行することをいう。
【0049】
また、分散電源システム1は、系統電源100での需給バランスに基づいて系統安定化制御を実行しているが、需給バランス、系統電圧の電圧値、及び系統電圧の周波数のうちの少なくとも1つに基づいて、系統安定化制御を実行してもよい。分散電源システム1は、需給バランス、系統電圧の電圧値、及び系統電圧の周波数のうちの少なくとも1つを監視し、分散電源40からの有効電力又は無効電力を制御することで、系統安定化制御を行えばよい。なお、分散電源システム1が、分散電源40から系統電源100に出力される有効電力を増やすと、系統電圧の電圧値が高くなり、系統電圧の周波数が高くなる。分散電源システム1が、分散電源40から系統電源100に出力される有効電力を減らすと、系統電圧の電圧値が低くなり、系統電圧の周波数が低くなる。また、分散電源40から見て進み位相の無効電力を系統電源100に注入すると、系統電圧の電圧値が低くなり、分散電源40から見て遅れ位相の無効電力を系統電源100に注入すると、系統電圧の電圧値が高くなる。したがって、分散電源システム1は、需給バランス、系統電圧の電圧値、及び系統電圧の周波数のうちの少なくとも一つの実績値に基づいて、分散電源40から系統電源100に出力される有効電力又は無効電力を制御することで、系統安定化制御を行うことができる。
【0050】
ところで、本実施形態において、分散電源システム1の更新部13は、特定制御を行うための調整分(上記の第1範囲PW41の電力)の大きさを、施設F1での事象に基づいて更新してもよい。例えば、施設F1での事象とは蓄電システム30の周囲温度の温度変化を含む。コントローラ10は、蓄電システム30の周囲温度を検知する温度センサから周囲温度の検出値を適宜のタイミングでモニタしている。コントローラ10は、周囲温度が蓄電システム30の使用温度範囲の範囲外になると、蓄電システム30の放電能力の低下を考慮して、放電時における蓄電システム30の出力電力の最大値をPL1に低下させる(図7参照)。この場合、蓄電システム30の出力電力が制限値PL1以下に制限されるため、系統安定化のための電力(第1範囲PW41の電力)と、需要家制御に利用可能な出力電力(入出力範囲PW5内のる出力電力)とを確保できなくなる。例えば、外部サーバ110からの制御指令によって、系統安定化制御に利用可能な蓄電システム30の出力電力がPW40に設定され、需要家制御に利用可能な蓄電システム30の出力電力がPW51に設定されている場合、系統安定化制御用の電力PW40と、需要家制御用の電力PW51とを合計した電力は制限値PL1を超えることになる。本実施形態では、特定制御部11が、需要家制御に比べて系統安定化制御を優先させており、需要家制御に利用可能な電力PW51のうち制限値PL1内に収まる電力PW52を、系統安定化制御用の電力PW40に加えた電力(PW40+PW52)を蓄電システム30から出力させている。
【0051】
これにより、施設F1において、分散電源40の出力電力が低下するような事象が発生したとしても、分散電源システム1は、系統安定化のために必要な調整分を確保して、系統安定化のための特定処理を実行させることができる。
【0052】
また、施設F1において、特定制御に利用される調整分の大きさ(上記の入出力範囲PW4)に影響を与えるような事象が発生した場合、事象抑制部14は、事象の発生を抑制するための処理を行ってもよい。例えば、施設F1での事象が蓄電システム30の周囲温度の温度変化を含む場合、周囲温度が蓄電システム30の使用温度範囲の範囲外になると、事象抑制部14は、周囲温度を蓄電システム30の使用温度範囲の範囲内に調整する処理を行う。例えば、周囲温度が蓄電システム30の使用温度範囲よりも高くなると、事象抑制部14は、蓄電システム30に設けられたファンを動作させたり、施設F1に設けられた空調システムを動作させたりすることによって、周囲温度を使用温度範囲内に調整する。また、周囲温度が蓄電システム30の使用温度範囲よりも低くなると、事象抑制部14は、蓄電システム30に設けられたヒータを動作させたり、施設F1に設けられた空調システムを動作させたりすることによって、周囲温度を使用温度範囲内に調整する。このように、事象抑制部14が、特定制御に利用される調整分の大きさに影響を与えるような事象を抑制するための制御を行うので、特定制御に利用される調整分の大きさが変化するのを抑制できる。
【0053】
なお、特定制御部11は、更新部13によって特定制御を行うための調整分の大きさが制限された場合に、系統安定化制御と需要家制御とで経済的に有利な方を優先的に行ってもよい。例えば、特定制御部11は、系統安定化のために系統電源100に逆潮流する場合の電力の単価と、系統安定化制御を行わず需要家の施設F1で自家消費する場合の電力の単価とを比較し、需要家によって有利な方を優先的に行えばよい。
【0054】
(3)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、分散電源システム1と同様の機能は、分散電源システム1の電力制御方法、コンピュータプログラム、又はプログラムを記録した非一時的な記録媒体等で具現化されてもよい。一態様に係る電力制御方法は、特定制御処理と、出力抑制処理とを含む。特定制御処理では、分散電源40の出力を用いた特定制御を行う。出力抑制処理では、特定制御を行っていない場合に、分散電源40の出力電力の最大値に対して、特定制御を行うために必要な調整分を残すように、分散電源40の出力電力を抑制する。一態様に係る(コンピュータ)プログラムは、コンピュータシステムに、特定制御処理と、出力抑制処理と、を実行させるためのプログラムである。
【0055】
以下、上記の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0056】
本開示における分散電源システム1は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における分散電源システム1としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0057】
また、分散電源システム1における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは分散電源システム1に必須の構成ではなく、分散電源システム1の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、分散電源システム1の少なくとも一部の機能、例えば、分散電源システム1の一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0058】
上記の実施形態では、出力抑制部12は、特定制御部11が特定制御を行っていない場合に、分散電源40の出力電力の最大値に対して、特定制御を行うために必要な調整分を残すように、分散電源40の出力を抑制しているが、これに限定されない。出力抑制部12は、特定制御部11が特定制御を行っていない場合に、分散電源40の出力電流の最大値に対して、特定制御を行うために必要な調整分を残すように、分散電源40の出力電流を抑制してもよい。また、出力抑制部12は、特定制御部11が特定制御を行っていない場合に、分散電源40の無効電力の最大値に対して、特定制御を行うために必要な調整分を残すように、分散電源40の無効電力を抑制してもよい。さらに言えば、出力抑制部12は、特定制御を行っていない場合に、分散電源40の出力電力の最大値、出力電流の最大値、及び無効電力の最大値の少なくとも一つに対して、特定制御を行うために必要な調整分を残すように、分散電源40の出力を抑制してもよい。
【0059】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様の電力制御方法は、特定制御処理と、出力抑制処理と、を含む。特定制御処理は、分散電源(40)の出力を用いた特定制御を行う。分散電源(40)は、系統電源(100)から電力供給を受ける需要家の施設(F1)に設けられ、施設(F1)に存在する負荷(L1)に対して電力を供給可能である。出力抑制処理は、特定制御を行っていない場合に、分散電源(40)の出力電力の最大値、出力電流の最大値、及び無効電力の最大値の少なくとも一つに対して、特定制御を行うために必要な調整分を残すように、分散電源(40)の出力を抑制する。
【0060】
この態様によれば、分散電源(40)の出力を利用した特定制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0061】
第2の態様の電力制御方法では、第1の態様において、分散電源(40)は蓄電システム(30)を含み、特定制御は、蓄電システム(30)から系統電源(100)に放電させる放電制御を少なくとも含む。
【0062】
この態様によれば、分散電源(40)の出力を利用した特定制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0063】
第3の態様の電力制御方法では、第2の態様において、特定制御を行っていない場合において、蓄電システム(30)の蓄電量に対して、充電量の上限を設定する充電上限値(LV3)と、充電量の下限を設定する充電下限値(LV2)とがそれぞれ設けられている。
【0064】
この態様によれば、分散電源(40)の出力を利用した特定制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0065】
第4の態様の電力制御方法では、第2又は3の態様において、分散電源(40)は、蓄電システム(30)とは別の電源を含む。
【0066】
この態様によれば、分散電源(40)の出力を利用した特定制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0067】
第5の態様の電力制御方法では、第1~4のいずれかの態様において、分散電源(40)は、太陽光発電システム(20)を含む。
【0068】
この態様によれば、分散電源(40)の出力を利用した特定制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0069】
第6の態様の電力制御方法では、第5の態様において、太陽光発電システム(20)は、太陽電池(21)と、太陽電池(21)の出力電圧を電圧変換する電力変換装置(22)と、を含む。出力抑制処理では、電力変換装置(22)が最大電力点追従制御を行う場合の最大点以外の動作点で動作させることによって電力変換装置(22)の出力を抑制する。
【0070】
この態様によれば、分散電源(40)の出力を利用した特定制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0071】
第7の態様の電力制御方法では、第1~6のいずれかの態様において、特定制御は、系統電源(100)の電力品質を安定化するための系統安定化制御と、施設(F1)での電力の需給を制御する需要家制御との少なくとも一方を含む。
【0072】
この態様によれば、分散電源(40)の出力を利用した特定制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0073】
第8の態様の電力制御方法では、第7の態様において、系統安定化制御は、系統電源(100)の需給バランス、系統電源(100)の系統電圧の電圧値、及び系統電圧の周波数のうちの少なくとも1つに基づいて、分散電源(40)の出力を調整する制御を含む。
【0074】
この態様によれば、分散電源(40)の出力を利用した特定制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0075】
第9の態様の電力制御方法は、第1~8のいずれかの態様において、更新処理を更に含む。更新処理では、特定制御を行うための調整分の大きさを、分散電源(40)を含む施設(F1)での事象に基づいて更新する。
【0076】
この態様によれば、分散電源(40)の出力を利用した特定制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0077】
第10の態様の電力制御方法は、第9の態様において、事象抑制処理を更に含む。事象抑制処理では、調整分の大きさに関連する施設(F1)での事象の発生を抑制する。
【0078】
この態様によれば、分散電源(40)の出力を利用した特定制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0079】
第11の態様の電力制御方法は、第1~10のいずれかの態様において、提示処理を更に含む。提示処理では、分散電源(40)からの出力電力の出力状況をユーザに提示する。
【0080】
この態様によれば、分散電源(40)の出力を利用した特定制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0081】
第12の態様のプログラムは、コンピュータシステムに、第1~11のいずれかの態様の電力制御方法を実行させるための、プログラムである。
【0082】
この態様によれば、分散電源(40)の出力を利用した特定制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0083】
第13の態様の分散電源システム(1)は、特定制御部(11)と、出力抑制部(12)と、を含む。特定制御部(11)は、分散電源(40)の出力を用いた特定制御を行う。分散電源(40)は、系統電源(100)から電力供給を受ける需要家の施設(F1)に設けられ、施設(F1)に存在する負荷(L1)に対して電力を供給可能である。出力抑制部(12)は、特定制御部(11)が特定制御を行っていない場合に、分散電源(40)の出力電力の最大値、出力電流の最大値、及び無効電力の最大値の少なくとも一つに対して、特定制御を行うために必要な調整分を残すように、分散電源(40)の出力を抑制する。
【0084】
この態様によれば、分散電源(40)の出力を利用した特定制御を実行不能な事態を回避することができる。
【0085】
上記態様に限らず、上記実施形態に係る分散電源システム(1)の種々の構成(変形例を含む)は、分散電源システム(1)の電力制御方法、(コンピュータ)プログラム、又はプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化可能である。
【0086】
第2~第11の態様に係る構成については、分散電源システム(1)の電力制御方法に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 分散電源システム
20 太陽光発電システム
21 太陽電池
22 電力変換装置
30 蓄電システム
40 分散電源
100 系統電源
L1 負荷
LV2 充電下限値
LV3 充電上限値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7