(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】ガス発生器
(51)【国際特許分類】
C25B 9/00 20210101AFI20240412BHJP
C01B 3/02 20060101ALI20240412BHJP
C01B 13/02 20060101ALI20240412BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20240412BHJP
C25B 9/23 20210101ALI20240412BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C01B3/02 H
C01B13/02 Z
C25B1/04
C25B9/23
C25B15/08 302
(21)【出願番号】P 2021019354
(22)【出願日】2021-02-09
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石上 陽平
(72)【発明者】
【氏名】今井 慎
(72)【発明者】
【氏名】宮田 ▲隆▼弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 喜典
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-136193(JP,A)
【文献】特開2010-084201(JP,A)
【文献】特開2005-091180(JP,A)
【文献】国際公開第2016/043134(WO,A1)
【文献】特開2015-221397(JP,A)
【文献】特開2016-056408(JP,A)
【文献】特開2016-180166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 9/00
C01B 3/02
C01B 13/02
C25B 1/04
C25B 9/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ陽極及び陰極となる一対の電極を有し、供給液の少なくとも一部を電気分解して、水素ガスと酸素ガスを発生させる分解部と、
大気中の水分を捕集し、前記供給液として前記分解部に供給する供給部と、
を備え、
前記供給部は、ペルチェ素子を有し、前記ペルチェ素子の冷却によって前記大気中の水分を結露させて捕集し、
前記一対の電極は、板状に形成されていて、互いに対向して配置され、
前記ペルチェ素子は、前記一対の電極の一方と接触して配置さ
れ、かつ、前記ペルチェ素子の少なくとも一部が、前記一対の電極の厚み方向において、前記一対の電極の両方の投影領域と1箇所で重なるように配置される、
ガス発生器。
【請求項2】
それぞれ陽極及び陰極となる一対の電極を有し、供給液の少なくとも一部を電気分解して、水素ガスと酸素ガスを発生させる分解部と、
大気中の水分を捕集し、前記供給液として前記分解部に供給する供給部と、
を備え、
前記供給部は、ペルチェ素子を有し、前記ペルチェ素子の冷却によって前記大気中の水分を結露させて捕集し、
前記ペルチェ素子は、前記一対の電極の一方と接触して配置され、
前記一対の電極の少なくとも一方は、他方と対向する面において、凹むように形成された1又は複数の溝部を有する、
ガス発生器。
【請求項3】
前記供給部は、さらに水吸着材を有し、前記水吸着材によっても前記大気中の水分を吸着させて捕集し、前記水吸着材によって捕集した水分を含んだ高湿気体も、前記ペルチェ素子の冷却によって結露させて前記供給液として前記分解部に供給する、
請求項1又は2に記載のガス発生器。
【請求項4】
前記一対の電極の間に配置されるイオン交換膜を更に備える、
請求項1~3のいずれか1項に記載のガス発生器。
【請求項5】
前記一対の電極は、板状に形成されていて、互いの厚み方向が揃うように対向して配置され、
前記イオン交換膜は、前記一対の電極の間に挟まれて配置される、
請求項4に記載のガス発生器。
【請求項6】
前記一対の電極は、その間に前記供給液を挟んで分離している、
請求項1~3のいずれか1項に記載のガス発生器。
【請求項7】
前記供給液は、前記一対の電極の間に配置される前記イオン交換膜に吸収されて保持されている、
請求項4又は5に記載のガス発生器。
【請求項8】
前記一対の電極の少なくとも一方は、板状の電極であり、その厚み方向に貫通する1又は複数の開口部を有する、
請求項1~7のいずれか1項に記載のガス発生器。
【請求項9】
前記一対の電極に印加する電流の方向を切り替えて前記陽極と前記陰極とを変更する切替部を更に備える、
請求項1~8のいずれか1項に記載のガス発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、ガス発生器に関する。より詳細には、本開示は、水素ガスと酸素ガスの少なくとも一方を発生させるガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、飲料用水素発生器が開示されている。この水素発生器は、水を主組成とする水溶液を内部に封入するアンプル部材と、水と反応して水素を発生する金属材料及びアンプル部材を封入した外套部材と、を備える。この水素発生器を所望の飲料内に入れることで、外套部材から外部に流出した水素ガスが、飲料に溶け込み、使用者は、水素の溶解した飲料(水素水)を得ることができる。そして、特許文献1には、活性酸素が体内に発生しやすい運動時や、飲料時、喫煙時、紫外線・汚染環境下での滞在時、睡眠不足、長時間労働等の高いストレスを受けた時等の状態において、使用者が水素水を摂取することで、老化の防止、美容・健康促進となる点が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の水素発生器(ガス発生器)では、水又は液体(供給液)を定期的に供給する作業、又はアンプル部材を定期的に交換する作業が必要となり得る。その結果、そのような定期的な作業を行いやすい環境での使用、設置が必須条件となり、水素発生器の利便性に改善の余地がある。
【0005】
本開示は上記事由に鑑みてなされ、利便性を向上させたガス発生器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様のガス発生器は、分解部と、供給部と、を備える。前記分解部は、それぞれ陽極及び陰極となる一対の電極を有し、供給液の少なくとも一部を電気分解して、水素ガスと酸素ガスを発生させる。前記供給部は、大気中の水分を捕集し、前記供給液として前記分解部に供給する。前記供給部は、ペルチェ素子を有し、前記ペルチェ素子の冷却によって前記大気中の水分を結露させて捕集する。前記一対の電極は、板状に形成されていて、互いに対向して配置される。前記ペルチェ素子は、前記一対の電極の一方と接触して配置され、かつ、前記ペルチェ素子の少なくとも一部が、前記一対の電極の厚み方向において、前記一対の電極の両方の投影領域と1箇所で重なるように配置される。
本開示の別の一態様のガス発生器は、分解部と、供給部と、を備える。前記分解部は、それぞれ陽極及び陰極となる一対の電極を有し、供給液の少なくとも一部を電気分解して、水素ガスと酸素ガスを発生させる。前記供給部は、大気中の水分を捕集し、前記供給液として前記分解部に供給する。前記供給部は、ペルチェ素子を有し、前記ペルチェ素子の冷却によって前記大気中の水分を結露させて捕集する。前記ペルチェ素子は、前記一対の電極の一方と接触して配置される。前記一対の電極の少なくとも一方は、他方と対向する面において、凹むように形成された1又は複数の溝部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様に係るガス発生器によれば、利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るガス発生器の要部の外観斜視図である。
【
図2】
図2Aは、同上のガス発生器の要部の平面図である。
図2Bは、同上のガス発生器の要部の拡大正面図である。
【
図3】
図3は、同上のガス発生器の要部の分解斜視図である。
【
図5】
図5は、同上のガス発生器を備えるガス供給システムの概略ブロック図である。
【
図6】
図6は、同上のガス発生器の模式的な概念図であり、一部断面図である。
【
図7】
図7は、同上のガス発生器の第1変形例の模式的な概念図であり、一部断面図である。
【
図8】
図8A及び
図8Bは、同上のガス発生器の第2変形例の模式的な回路図である。
【
図9】
図9は、同上のガス発生器の第3変形例の模式的な概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
以下、本実施形態に係るガス発生器1及び変形例について、
図1~
図9を参照して説明する。
【0010】
ただし、以下に説明する実施形態及び変形例は、本開示の一例に過ぎず、本開示は、下記の実施形態及び変形例に限定されない。下記の実施形態及び変形例以外であっても、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0011】
また、下記の実施形態等において説明する各図は、いずれも模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0012】
(1)概要
まず、本実施形態に係るガス発生器1の概要について説明する。
【0013】
本実施形態に係るガス発生器1は、電気分解によりガスを発生させる装置である。ガス発生器1は、
図1に示すように、分解部2と、供給部3と、を備える。分解部2は、供給液の少なくとも一部と反応して水素ガス51及び酸素ガス52の少なくとも一方を発生させる。
【0014】
ここでは一例として、分解部2は、それぞれ陽極A1及び陰極B1となる一対の電極20を有し、供給液5(
図6参照)の少なくとも一部を電気分解して水素ガス51と酸素ガス52を発生させる。ただし、本実施形態に係るガス発生器1は、ガスの発生手段が「電気分解」を利用することに限定されない。例えば、分解部2は、金属との化学反応を利用して、水素ガス51及び酸素ガス52の少なくとも一方を発生させるように構成されてもよく、この場合、一対の電極20は省略されてもよい。
【0015】
供給部3は、大気中の水分を捕集し、供給液5として分解部2に供給する。すなわち、供給液5は、捕集された水分を含む。供給液5は、捕集された水分(純水)のみでもよいが、不純物が少ないと導通度(導電率)が低くなるため、水分と不純物を含む液体が望ましい。
【0016】
ここでは一例として、供給部3は、
図1~
図4に示すように、ペルチェ素子31を有し、ペルチェ素子31の冷却によって大気中の水分を結露させて捕集する。本実施形態のガス発生器1は、少なくとも一方の電極20(
図1では下側の電極)がペルチェ素子31によって直接冷却されることで、結露水が電極20の周辺に供給され、速やかに電気分解が実行され得るような配置構造を有する。
【0017】
ガス発生器1で発生する水素ガス51と酸素ガス52は、使用用途に応じて一方を利用し、他方を破棄してもよいし、両方を利用してもよい。水素(ガス)は、上述の特許文献1にも記載されるように、抗酸化作用があり、人の体内に取り込むことで、体内の活性酸素と結びついて水となり、汗や尿として排出されるため、水素は、老化の防止、美容・健康促進に対して利用効果がある。また酸素(ガス)は、例えば、バイオ関連、培養、発酵、魚類の成長促進等に対して利用効果がある。
【0018】
本実施形態に係るガス発生器1では、上述したように、大気中の水分を捕集することで供給液5が分解部2に供給される。そのため、例えば、水を定期的に補充(供給)したり、水の入った容器を交換したりする作業を省きやすくなり、ガス発生器1の使用環境や設置環境に関する制限を受けにくくなる。結果的に、ガス発生器1の利便性が向上する。
【0019】
(2)詳細
次に、本実施形態に係るガス発生器1、及びその周辺構成を含んだ全体のシステム(ガス供給システム100)について、
図1~
図6を参照しながら詳しく説明する。周辺構成の少なくとも一部が、ガス発生器1の構成に含まれてもよい。
【0020】
(2.1)全体構成
本実施形態に係るガス供給システム100は、
図5に示すように、ガス発生器1と、第1電源回路101と、第2電源回路102と、制御回路104とを備える。ガス供給システム100は、ガス発生器1とその周辺構成とが1つのハウジングに収容される態様で適用されてもよいし、ガス発生器1とその周辺構成とが別々のハウジングにそれぞれ収容される態様で適用されてもよい。
【0021】
ガス発生器1は、
図1に示すように、負荷L1(
図5参照)を構成する分解部2と、供給部3と、イオン交換膜4(
図3参照)と、保持部7と、シンク部8と、固定部9と、を備える。またガス発生器1は、
図6に示すように、一対の電極20をそれぞれ一対一で収容する第1電極収容室H1、及び第2電極収容室H2を更に備える。
図6は、ガス発生器1を模式的に図示したものである。説明の便宜上、
図1~
図4では、第1電極収容室H1、及び第2電極収容室H2の図示を省略している。本開示では、放熱のためにシンク部8を設けているが、放熱が十分であれば、シンク構成は、ガス発生器1から適宜省略されてもよい。
【0022】
分解部2は、それぞれ陽極A1及び陰極B1となる一対の電極20を有する。一対の電極20の少なくとも一方は、板状であることが好ましく、ここではいずれも板状である。具体的には、一対の電極20は、
図3に示すように、互いに略同寸法の矩形の板状であり、互いの厚み方向が揃うように対向して配置される。
【0023】
以下では、ガス発生器1について、
図1に示すように、一対の電極20が並ぶ方向を上下方向と規定する。また
図2Aに示すように(後述する)第1端子片210と第2端子片220とが並ぶ方向を左右方向と規定する。また
図2Aに示すように(後述する)第1ペルチェ端子片31Aと第2ペルチェ端子片31Bとが並ぶ方向を前後方向と規定する。ただし、これらの規定は、ガス発生器1の使用方向を限定する趣旨ではない。また、
図1、
図2A及び
図2Bにおける前後、左右、上下を表す矢印はそれぞれ、説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
【0024】
以下では、説明の便宜上、
図1に示す一対の電極20のうち、上側の電極を第1電極21と呼び、下側の電極を第2電極22と呼ぶことがある。本実施形態では、第1電極21が陰極B1であり、第2電極22が陽極A1である。第1電極21と第2電極22との間にはイオン交換膜4が介在する。詳細は後述するが、供給液5は、主として第1電極21と第2電極22との間のイオン交換膜4で保持される。
【0025】
第1電極21は、第1面21A(上面)と、第1面21Aとは反対側の第2面21B(下面)とを有する(
図4参照)。また第2電極22は、第1面22A(上面)と、第1面22Aとは反対側の第2面22B(下面)とを有する(
図4参照)。
【0026】
一対の電極20の少なくとも一方は、その厚み方向に貫通する1又は複数の開口部201を有する。ここでは一例として、第1電極21は、
図1~
図4に示すように、その厚み方向に貫通する5つの開口部201を有する。
【0027】
各開口部201は、
図2Aに示すように、上面視において一方向(左右方向)に沿って長尺状に開口している。5つの開口部201は、その一方向と直交する方向(前後方向)に沿って並ぶ。各開口部201は、
図4に示すように、その内周は全体としてテーパ状に傾斜している。具体的には、各開口部201における対向する内面202は、第1面21Aから第2面21Bに向かうほど、互いの距離が小さくなるように傾斜している。
【0028】
各開口部201が設けられていることで、結露水が各開口部201やイオン交換膜4中に溜まりやすい。また電気分解により電極20の周囲で発生したガス(ここでは第1電極21が陰極B1のため水素ガス)が開口部201を通って第1面21Aより上側へ効率良く排出されるため、結果的に、水素ガス51と酸素ガス52とを分離しやすくなる。特に、各開口部201の内周がテーパ状でるため、各開口部201を通じて効率良く結露水が溜まりやすい構造となっている。
【0029】
一方、第2電極22は、
図2B及び
図3に示すように、開口部201を有する代わりに、1又は複数(
図3では10個)の溝部203を有する。
【0030】
10個の溝部203は、第2電極22の第1面22A(上面)において、第2面22Bに向かって凹むように形成されている。各溝部203は、上面視において一方向(前後方向)に沿って長尺状に延びている。10個の溝部203は、その一方向と直交する方向(左右方向)に沿って並ぶ。各溝部203は、第2電極22の前端面まで形成されており、第1電極21と第2電極22がイオン交換膜4を間に挟んで配置された態様で、第2電極22の前端面を正面から見ると、各溝部203が露出されている(
図2B参照)。
【0031】
各溝部203が設けられていることで、結露水が各溝部203やイオン交換膜4中に溜まりやすい。また電気分解により電極20の周囲で発生したガス(ここでは第2電極22が陽極A1のため、酸素ガス)が溝部203を伝って前方から排出される。結果的に、水素ガス51と酸素ガス52とを分離しやすくなる。なお、溝部203が上記一方向(前後方向)に沿って長尺状に延びていて上記一方向と直交する方向(左右方向)に沿って複数並ぶことは必須ではなく、発生したガスが十分に排出され、電極20間に保持する水の距離が一定割合保たれる構成であればよい。
【0032】
また分解部2は、
図3に示すように、第1電極21と連続一体となって形成されている第1端子片210と、第2電極22と連続一体となって形成されている第2端子片220と、を更に有する。第1端子片210及び第2端子片220はいずれも板状であり、上面視においてクランク形状であり、互いに重なり合わないように配置される。第1端子片210及び第2端子片220の先端部は、第1電源回路101の電流源103と電気的に接続される。
【0033】
分解部2は、電流源103からの電流が印加されることで、一対の電極20間に存在する供給液5の少なくとも一部を電気分解して水素ガス51と酸素ガス52を発生させる。
図1の例では、電流源103からの電流は、第2端子片220、第2電極22、供給液5、第1電極21、及び第1端子片210の方向に順に流れる。
【0034】
供給部3は、大気中の水分を捕集し、その結露水を供給液5として分解部2に供給する。ここでは、供給部3は、ペルチェ素子31を有する。供給部3は、ペルチェ素子31の冷却によって大気中の水分を結露させて捕集する。供給液5は、主としてイオン交換膜4内で保持され、その一部は、第1電極21の表面及び開口部201、並びに、第2電極22の表面及び溝部203内で保持される。
【0035】
ペルチェ素子31(ペルチェモジュール)は、例えば、第1基板311(上側基板)と、第2基板312(下側基板)と、複数(
図3の例では合計14個)の半導体313とを有する。
【0036】
第1基板311は、例えば矩形の板状であり、セラミック基板である。第2基板312は、例えば第1基板311よりも面積が大きい矩形の板状であり、セラミック基板である。第1基板311は、各電極20と略同形で面積が略同寸法である。
【0037】
14個の半導体313は、7個のN型半導体と、7個のP型半導体とから構成され、N型とP型とが交互に電気的に連結している。第1基板311の下面、及び第2基板312の上面には、N型半導体とP型半導体とを交互に連結するための導体パターン(電極)が形成されている。
【0038】
またペルチェ素子31は、
図2Aに示すように、第2基板312上に実装される一対のパッド電極314と、第1ペルチェ端子片31A及び第2ペルチェ端子片31Bとを更に有する。
【0039】
第1ペルチェ端子片31Aは、第2基板312上に実装され、一対のパッド電極314の一方と接続される。第2ペルチェ端子片31Bは、第2基板312上に実装され、一対のパッド電極314の他方と接続される。
【0040】
また第1ペルチェ端子片31A及び第2ペルチェ端子片31Bは、第2電源回路102の電圧源と電気的に接続される。ここでは一例として、第1ペルチェ端子片31Aは、対応するパッド電極314を介して、連結する14個の半導体313のうちの始端に位置するN型半導体と電気的に接続されている。また第2ペルチェ端子片31Bは、対応するパッド電極314を介して、連結する14個の半導体313のうちの終端に位置するP型半導体と電気的に接続されている。
【0041】
ペルチェ素子31は、第2電源回路102の電圧源により電圧が印加されることで、第1ペルチェ端子片31A、14個の半導体313、及び第2ペルチェ端子片31Bの方向に順に一方向に直流電流が流れる。その結果、ペルチェ素子31は、第1基板311の上面で吸熱(冷却)し、第2基板312の下面で発熱する。
【0042】
ここでペルチェ素子31は、一対の電極20の少なくとも一方と対向するように配置される。ここでは一例として、第1基板311が、各電極20及びイオン交換膜4と略同形(矩形の板状)で、面積が略同寸法であり、第1電極21、イオン交換膜4、第2電極22、及び第1基板311は、この順で上から並んで配置される。そのため、第1基板311は、第2電極22の表面(第2面22B)と対向して配置される。ここでは一例として、第1基板311は、
図4に示すように、第2電極22の第2面22Bと接触する態様で対向する。
【0043】
ペルチェ素子31は、主として第2電極22を冷却し、間接的にイオン交換膜4及び第1電極21も冷却し得る。結果的に、第1電極21、イオン交換膜4及び第1電極21には結露水が発生する。
【0044】
イオン交換膜4は、イオン交換樹脂を膜状に形成したものである。イオン交換膜4は、一対の電極20の間に配置される。
【0045】
特に本実施形態では一例として、一対の電極20は、それらの厚み方向における間にイオン交換膜4を挟んで配置される。つまり、イオン交換膜4の上面は、第1電極21と概ね面接触し、イオン交換膜4の下面は、第2電極22と概ね面接触している。イオン交換膜4を一対の電極20で挟む構成とすることで、一対の電極20に関する電極ギャップが一意的に設定できる。結果的に、複数のガス発生器1を製造する際に、電極ギャップに関する製造ばらつきが抑制される。
【0046】
イオン交換膜4は、各電極20と略同形(矩形)で、面積が略同寸法である。イオン交換膜4の厚みは、例えば0.1μmである。親水膜であるイオン交換膜4は、供給部3のペルチェ素子31の冷却により一対の電極20に生じた結露水を吸収して保持する。したがって、結露水を含む供給液5は、陽極A1と陰極B1の間を一定抵抗により導通させる。つまり、一対の電極20は、
図6に示すように、その間に供給液5を挟んで分離している。したがって、例えば一定の深さのある供給液5を収容する容器内の供給液5に対して、一対の電極20全体を浸すような構成に比べて、電気分解により発生する水素ガス51と酸素ガス52とを分離しやすくなる。結果的に、利用するガスの選択が容易な構成を提供できる。
【0047】
一対の電極20間に電流が印加することで、陽極A1に接する供給液5及び、陰極B1に接する供給液5は電気分解される。陽極A1の表面では酸素ガス52、陰極B1の表面では水素ガス51が発生して空間に放出される。
【0048】
保持部7は、
図1及び
図3に示すように、シンク部8と共に、ペルチェ素子31を保持するように構成される。保持部7は、第1部材71及び第2部材72を有する。第1部材71及び第2部材72はいずれも電気絶縁性を有する。第1部材71及び第2部材72は、例えば樹脂部材である。
【0049】
第1部材71は、略矩形の板状であり、その下面には、ペルチェ素子31の第2基板312の後端部が係合する位置決め段部711(
図3参照)を有する。第1部材71は、その位置決め段部711に第2基板312の後端部が係合した状態で、後端部をシンク部8の上面(平坦面800)と共に挟み込んで保持する。第1部材71は、厚み方向に貫通する挿通孔710(
図3参照)を有する。挿通孔710に、ねじJ1が挿通されて、シンク部8のねじ穴に螺合される。第1部材71は、固定部9と一緒に、ねじJ1によりシンク部8に共締めされる。
【0050】
また第1部材71は、その上面に、第1端子片210及び第2端子片220をそれぞれ位置決めするように上方に突出した複数のリブ712(
図3参照)を有する。第1部材71の上面における略左半分の第1領域R1は、略右半分の第2領域R2よりも僅かに上方に突出している(
図3参照)。第1端子片210は、複数のリブ712間に嵌入することで、第1領域R1上にて位置決めされ、第2端子片220は、複数のリブ712間に嵌入することで、第2領域R2上にて位置決めされて配置される。この状態で固定部9及び第1部材71がねじJ1で共締めされる。その結果、第1端子片210及び第2端子片220は、互いに電気絶縁性が保たれた状態で保持される。
【0051】
要するに第1部材71は、ペルチェ素子31を位置決めする機能と、一対の電極20を位置決めする機能とを有する。
【0052】
第2部材72は、略矩形の板状であり、その下面には、ペルチェ素子31の第2基板312の前端部が係合する位置決め段部721(
図3参照)を有する。第2部材72は、その位置決め段部721に第2基板312の前端部が係合した状態で、前端部をシンク部8の平坦面800と共に挟み込んで保持する。第2部材72は、厚み方向に貫通する挿通孔を有する。その挿通孔に、ねじJ2が挿通されて、シンク部8のねじ穴に螺合される。
【0053】
このようにして、ペルチェ素子31は、保持部7及びシンク部8によって上下方向に挟まれる態様で安定的に保持される。
【0054】
固定部9は、略矩形の板状である。固定部9は、電気絶縁性を有する。固定部9は、例えば樹脂部材である。固定部9は、その厚み方向に貫通する挿通孔90(
図3参照)を有する。挿通孔90にねじJ1が挿通されて、上述の通り、第1部材71と一緒に、シンク部8に共締めされる。その結果、第1端子片210及び第2端子片220が第1部材71に固定され、それらの先端にある一対の電極20の安定的な位置決めが達成される。
【0055】
シンク部8(ヒートシンク)は、伝熱特性の良い部材で構成される。シンク部8は、例えばアルミダイカストで形成されている。シンク部8の下面には、複数のフィン80(
図1参照)が形成されている。シンク部8の平坦面800(上面)には、ペルチェ素子31の第2基板312が略面接触しており、第2基板312で発生した熱を下側のフィン80で効率良く外部へ放出する。シンク部8は、ねじJ1及びJ2がそれぞれ螺合するためのねじ穴を有し、上述の通り、分解部2及び供給部3がねじ止めされる。要するに、シンク部8は、放熱機能だけでなく、分解部2及び供給部3が搭載される基台としての機能も兼ねている。
【0056】
第1電極収容室H1(
図6参照)は、第1電極21を収容するように構成される。第1電極収容室H1は、中空の箱状である。第1電極収容室H1は、例えば樹脂製である。第1電極収容室H1は、第1電極21の第1面21Aを覆う。第1電極収容室H1は、その下面に、イオン交換膜4の上面と略面接触する第1電極21の第2面21Bを露出するための開口を有する。すなわち、第1電極収容室H1は、開口から第2面21Bを露出する態様で、第1電極21を収容する。また第1電極収容室H1は、第1電極21に接する供給液5で発生したガスを排出するための排気口H10(
図6参照)を有する。ここでは第1電極21が陰極B1であることから、排気口H10からは、電気分解により発生した水素ガス51が排出される。
【0057】
図6では、理解しやすいように、供給液5をドットハッチングで図示し、また水素ガス51及び酸素ガス52の流れを破線矢印で模式的に図示する。
【0058】
このガス発生器1が水素発生器として適用される場合、排気口H10からの水素ガス51が利用ガスとして回収されるように、排気口H10に対して配管接続される。このガス発生器1が酸素発生器として適用される場合、排気口H10からの水素ガス51は、破棄されるように、排気口H10に対して配管接続される。排気口H10とは別に、大気が内部に入るための通気口が、第1電極収容室H1に設けられてもよい。
【0059】
第2電極収容室H2(
図6参照)は、第2電極22を収容するように構成される。第2電極収容室H2は、中空の箱状である。第2電極収容室H2は、例えば樹脂製である。第2電極収容室H2は、第2電極22の第2面22Bを覆う。第2電極収容室H2は、その上面に、イオン交換膜4の下面と略面接触する第2電極22の第1面22Aを露出するための開口を有する。すなわち、第2電極収容室H2は、開口から第1面22Aを露出する態様で、第2電極22を収容する。また第2電極収容室H2は、第2電極22に接する供給液5で発生したガスを排出するための排気口H20(
図6参照)を有する。ここでは第2電極22が陽極A1であることから、排気口H20からは、電気分解により発生した酸素ガス52が排出される。
【0060】
このガス発生器1が酸素発生器として適用される場合、排気口H20からの酸素ガス52が利用ガスとして回収されるように、排気口H20に対して配管接続される。このガス発生器1が水素発生器として適用される場合、排気口H20からの酸素ガス52は、破棄されるように、排気口H20に対して配管接続される。排気口H20とは別に、大気が内部に入るための通気口が、第2電極収容室H2に設けられてもよい。
【0061】
ここでは、ペルチェ素子31も、第2電極収容室H2の内部に収容されることを想定する。例えば、第2電極収容室H2は、その下面に開口を有し、当該開口を介して、ペルチェ素子31のうち主に第1基板311が挿入されて第2電極収容室H2内に収容される。しかし、ペルチェ素子31は、第2電極収容室H2の外側に配置されて、第2電極収容室H2を介して、第2電極22の第2面22Bと対向してもよい。この場合、第2電極収容室H2のうちペルチェ素子31と第2電極22との間に介在する部位は、伝熱性の良い部材で構成されることが好ましい。
【0062】
第1電源回路101は、一定の大きさの直流電流(定電流)を負荷L1(分解部2)に印加する電流源103を含む。電流源103は、第1端子片210及び第2端子片220間に電気的に接続される。また第1電源回路101は、例えば商用の交流電源からの交流電力を入力電力として(二次電池からの直流電力を入力電力としてもよい)、所定の大きさの直流電力に変換する変換回路を含み得る。電流源103は、変換回路で変換した直流電力を用いて定電流を生成する。電流源103は、負荷L1を流れる電流の電流値を検出し、比較器等で基準電流値と比較し、負荷L1を流れる電流が一定に保たれるようにコントロールする。
【0063】
第2電源回路102は、所定の直流電圧をペルチェ素子31の両端間に印加するように構成される。第2電源回路102は、例えば上記の変換回路で変換した直流電力を用いて所定の直流電圧を生成し、第1ペルチェ端子片31A及び第2ペルチェ端子片31B間に印加する。
【0064】
制御回路104は、第1電源回路101及び第2電源回路102を制御するように構成される。制御回路104は、例えば、1以上のプロセッサ(マイクロプロセッサ)と1以上のメモリとを含むコンピュータシステムにより実現され得る。つまり、1以上のプロセッサが1以上のメモリに記憶された1以上のプログラム(アプリケーション)を実行することで、制御回路104として機能する。プログラムは、ここでは制御回路104のメモリに予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0065】
制御回路104の制御形態は、ガス発生器1の適用例によって様々である。例えば、ガス供給システム100が、ガス発生器1を利用するユーザからのオン/オフ操作を受け付ける電源スイッチを備える場合、制御回路104は、ユーザからのオン操作、又はオフ操作に応じて、第1電源回路101に定電流の印加の開始、又は停止を行う。つまり、ユーザが所望する任意のタイミングで、水素ガス51及び酸素ガス52の供給が開始、又は停止される。或いは、ガス供給システム100からの定期的なガス供給が必要となる場合、制御回路104は、定期的に第1電源回路101に定電流の印加の開始、又は停止を行う。
【0066】
ペルチェ素子31の冷却動作の開始/停止は、水素ガス51及び酸素ガス52の供給の開始/停止とそれぞれ連動して概ね同時に実行されてもよいが、必ずしも同時に実行されることに限定されない。例えば、制御回路104は、負荷L1を流れる電流の電流値の検出結果から、供給液5が不足していると判定すると、第2電源回路102に所定の直流電圧の印加を開始させて、ペルチェ素子31の冷却動作を実行してもよい。またガス供給システム100が、発生するガスの流量を検知するセンサを備える場合、制御回路104は、その検知結果に基づき、ペルチェ素子31の冷却動作の開始/停止を行ってもよい。また制御回路104は、所定の間隔で定期的にペルチェ素子31の冷却動作の開始/停止を行ってもよい。或いは、制御回路104は、ガス供給システム100の稼働中において、ペルチェ素子31の冷却動作をほぼ常時実行し続けてもよい。
【0067】
(2.2)動作
以下、ガス発生器1の動作について
図6を参照しながら簡単に説明する。
【0068】
制御回路104によりペルチェ素子31の冷却動作が行われると、その周囲の大気に含まれる蒸気が一対の電極20及びイオン交換膜4の表面に結露する。結果的に、供給液5が自動的に分解部2に提供される。供給液5は、主としてイオン交換膜4により保持される。また一部の供給液5は、開口部201や溝部203の中に入り込む態様で電極20に保持される。
【0069】
制御回路104により負荷L1への電流の印加動作が行われると、供給液5の一部が電気分解される。
【0070】
陰極B1(第1電極21)に接する供給液5からは、水素ガス51が発生する。特に第1電極21の複数の開口部201の内部に入り込む供給液5から発生する水素ガス51は、開口部201から第1電極収容室H1内を流動し、排気口H10から排気される。
【0071】
陽極A1(第2電極22)に接する供給液5からは、酸素ガス52が発生する。特に第2電極22の複数の溝部203の内部に入り込む供給液5から発生する酸素ガス52は、溝部203を伝って第2電極収容室H2内を流動し、排気口H20から排気される。
【0072】
[利点]
上述の通り、本実施形態に係るガス発生器1によれば、供給部3は、大気中の水分を捕集し、供給液5として分解部2に供給するので、供給液5の定期的な供給の自動化を実現しやすくなる。そのため、例えば、水を定期的に補充(供給)したり、水の入った容器(モジュール)を交換したりする作業を省きやすくなり、ガス発生器1の使用環境や設置環境に関する制限を受けにくくなる。例えば大気さえ得られる環境であれば、水の供給手段(水道設備等)が整っていない場所、又は水の補充作業や水の入ったモジュールの交換作業が困難な場所にも、ガス発生器1を設置できるようになる。結果的に、ガス発生器1の利便性が向上する。
【0073】
また本実施形態では、供給部3が、ペルチェ素子31を有し、ペルチェ素子31の冷却によって大気中の水分を結露させて捕集するため、簡素な構成により、供給液5の定期的な供給の自動化を実現しやすくなる。
【0074】
さらに本実施形態では、ペルチェ素子31は、電極20(第2電極22)と対向するように配置されるため、電極20が冷やされてその表面上に直接結露水が発生しやすくなる。そのため、例えば、電極20から離れた別の場所でペルチェ素子31の冷却により得られた結露水を、供給液5として電極20側へ送り込む構成に比べて、供給液5の電気分解がより速やかに実行され得る。
【0075】
特に本実施形態では、ガス発生器1がイオン交換膜4を備えることで、大気中の水分を捕集して得られる供給液5が導電率の低い純水となりやすい点の改善を図れる。
【0076】
(3)変形例
上述の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上述の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、上述の実施形態の変形例を列挙する。以下では、上述の実施形態に係るガス発生器1を「基本例」のガス発生器1と呼ぶ。以下に説明する各変形例は、基本例又は他の変形例と適宜組み合わせて適用可能である。
【0077】
(3.1)第1変形例
以下、第1変形例のガス発生器1について
図7を参照して説明する。基本例のガス発生器1と実質的に共通する構成要素については、同じ参照符号を付与して適宜に説明を省略する場合がある。
【0078】
基本例のガス発生器1では、第1電極21が、厚み方向に貫通する開口部201を有する一方で、第2電極22は、非貫通の溝部203を有していた。
【0079】
本変形例のガス発生器1では、
図7に示すように、第2電極22も、厚み方向に貫通する開口部201を有する。
【0080】
本変形例においても、一対の電極20が、その間に供給液5を挟んで、互いに分離した構成を採用しており、開口部201を通じて、水素ガス51と酸素ガス52とが上下に分かれて排出されやすい。結果的に、ガス発生器1の利便性が向上する。
【0081】
第1変形例の別例として、第1電極21及び第2電極22の両方が、溝部203を有してもよい。或いは、基本例とは逆に、第1電極21が溝部203を有し、第2電極22が開口部201を有してもよい。
【0082】
(3.2)第2変形例
以下、第2変形例のガス発生器1について
図8A及び
図8Bを参照して説明する。基本例のガス発生器1と実質的に共通する構成要素については、同じ参照符号を付与して適宜に説明を省略する場合がある。
【0083】
基本例のガス発生器1では、第1電極21が陰極B1で、第2電極22が陽極A1であった。しかし第1電極21が陽極A1で、第2電極22が陰極B1でもよいし、陽極A1と陰極B1を入れ替えることが可能であってもよい。
【0084】
本変形例のガス発生器1は、
図8A及び
図8Bに示すように、一対の電極20に印加する電流の方向を切り替えて陽極A1と陰極B1とを変更する切替部6を更に備える。
【0085】
この例では、切替部6は、電路の導通(オン)/非導通(オフ)を切り替える4つのスイッチSW1~SW4から構成される。スイッチSW1~SW4は、例えば、MOSFET等の半導体素子であることを想定するが、接点を開閉するメカニカルな開閉器でもよい。
【0086】
スイッチSW1~SW4は、制御回路104(
図5参照)と電気的に接続されて制御回路104によりオン/オフ制御される。この場合、制御回路104及び電流源103も、切替部6と合わせてガス発生器1と同じハウジングに収容されていることが好ましい。
【0087】
図示例では、スイッチSW1とスイッチSW2とからなる直列回路、及び、スイッチSW3とスイッチSW4とからなる直列回路が、電流源103とそれぞれ並列に接続される。またスイッチSW1とスイッチSW2の接続点に、第1電極21が電気的に接続され、スイッチSW3とスイッチSW4の接続点に、第2電極22が電気的に接続される。
【0088】
図8Aでは、スイッチSW1及びスイッチSW4がオン状態、スイッチSW2及びスイッチSW3がオフ状態となるように制御されることで、基本例と同様に、第1電極21が陰極B1で、第2電極22が陽極A1となる。一方、
図8Bでは、スイッチSW1及びスイッチSW4がオフ状態、スイッチSW2及びスイッチSW3がオン状態となるように制御されることで、基本例とは反対に、第1電極21が陽極A1で、第2電極22が陰極B1となる。
図8A及び
図8Bでは、理解しやすいように、電流の流れを破線の矢印で示す。
【0089】
このように切替部6が設けられていることで、電気分解により発生する水素ガス51と酸素ガス52のうち、利用するガスの設定変更が容易な構成を提供できる。
【0090】
(3.3)第3変形例
以下、第3変形例のガス発生器1について
図9を参照して説明する。基本例のガス発生器1と実質的に共通する構成要素については、同じ参照符号を付与して適宜に説明を省略する場合がある。
【0091】
基本例では、供給部3は、ペルチェ素子31を含んでいた。本変形例のガス発生器1では、供給部3は、ペルチェ素子31の代わりに、水吸着材32(
図9参照)を有する。この場合、供給部3は、水吸着材32によって大気中の水分を吸着させて捕集する。水吸着材32としては、例えば、シリカゲル又はゼオライトといった吸湿材を想定する。吸湿材は、物質間に水を保持する特性があり、空間中に放置しておくことにより、一定の保水が行える。水吸着材32は、例えば、通気性を有した容器内に入れられる。ガス発生器1は、水吸着材32にて吸着されて容器内に貯まった水分を多く含んだ気体(高湿気体)は、チューブ等の配管により、イオン交換膜4に向かって送り込まれるように構成される。このように供給部3が水吸着材32を有することで、簡素な構成により、供給液5の定期的な供給の自動化を実現しやすくなる。
【0092】
第3変形例の別例として、供給部3は、ペルチェ素子31と水吸着材32の両方を有してもよい。例えば、水吸着材32にて吸着されて容器内に貯まった水分を多く含んだ気体が、ペルチェ素子31の冷却によってより効率良く電極20やイオン交換膜4に結露されてもよい。
【0093】
(3.4)その他の変形例
ガス発生器1は、電極20、イオン交換膜4、ペルチェ素子31、又は第3変形例の水吸着材32等に対して、大気を効率よく送り込むためのファン等を備えてもよい。
【0094】
基本例ではペルチェ素子31が、第2電極22と対向して配置されている。しかし、ペルチェ素子31は、第1電極21と対向して配置されてもよい。またガス発生器1は、基本例のペルチェ素子31に加えて、第1電極21と対向して配置される別のペルチェ素子31を備えてもよい。
【0095】
基本例のガス発生器1は、ペルチェ素子31が、電極20(第2電極22)と隣接して配置され、直接電極20を冷却する構成である。しかし、ペルチェ素子31は、電極20から離れた位置に配置されてもよい。この場合、ガス発生器1は、ペルチェ素子31の冷却により得られた結露水を貯める貯水槽、及び当該貯水槽の水を電極20へ送出するポンプ等の供給機構を有してもよい。
【0096】
(態様)
以上説明したように、第1の態様に係るガス発生器(1)は、分解部(2)と、供給部(3)と、を備える。分解部(2)は、供給液(5)の少なくとも一部と反応して水素ガス(51)及び酸素ガス(52)の少なくとも一方を発生させる。供給部(3)は、大気中の水分を捕集し、供給液(5)として分解部(2)に供給する。
【0097】
この態様によれば、供給液(5)の定期的な供給の自動化を実現しやすくなる。そのため、例えば、水を定期的に補充(供給)したり、水の入った容器を交換したりする作業を省きやすくなり、ガス発生器(1)の使用環境や設置環境に関する制限を受けにくくなる。結果的に、ガス発生器(1)の利便性が向上する。
【0098】
第2の態様に係るガス発生器(1)に関して、第1の態様において、供給部(3)は、ペルチェ素子(31)を有し、ペルチェ素子(31)の冷却によって大気中の水分を結露させて捕集する。
【0099】
この態様によれば、簡素な構成により、供給液(5)の定期的な供給の自動化を実現しやすくなる。
【0100】
第3の態様に係るガス発生器(1)に関して、第2の態様において、分解部(2)は、それぞれ陽極(A1)及び陰極(B1)となる一対の電極(20)を有し、供給液(5)の少なくとも一部を電気分解して水素ガス(51)と酸素ガス(52)を発生させる。ペルチェ素子(31)は、一対の電極(20)の少なくとも一方と対向するように配置される。
【0101】
この態様によれば、電極(20)の表面上に直接結露水が発生しやすくなるため、供給液(5)の電気分解がより速やかに実行され得る。
【0102】
第4の態様に係るガス発生器(1)に関して、第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、供給部(3)は、水吸着材(32)を有し、水吸着材(32)によって大気中の水分を吸着させて捕集する。
【0103】
この態様によれば、簡素な構成により、供給液(5)の定期的な供給の自動化を実現しやすくなる。
【0104】
第5の態様に係るガス発生器(1)に関して、第1~第4の態様のいずれか1つにおいて、分解部(2)は、それぞれ陽極(A1)及び陰極(B1)となる一対の電極(20)を有し、供給液(5)の少なくとも一部を電気分解して水素ガス(51)と酸素ガス(52)を発生させる。
【0105】
この態様によれば、簡素な構成により、水素ガス(51)と酸素ガス(52)の両方の発生が可能となる。
【0106】
第6の態様に係るガス発生器(1)は、第5の態様において、一対の電極(20)の間に配置されるイオン交換膜(4)を更に備える。
【0107】
この態様によれば、大気中の水分を捕集して得られる供給液(5)は、導電率の低い純水となりやすいが、イオン交換膜(4)を備えることで、供給液(5)の導電率の改善を図れる。
【0108】
第7の態様に係るガス発生器(1)に関して、第6の態様において、一対の電極(20)は、板状であり、それらの厚み方向における間にイオン交換膜(4)を挟んで配置される。
【0109】
この態様によれば、一対の電極(20)に関する電極ギャップが一意的に設定できるため、製造ばらつきが抑制される。
【0110】
第8の態様に係るガス発生器(1)に関して、第5~第7の態様のいずれか1つにおいて、一対の電極(20)は、その間に供給液(5)を挟んで分離している。
【0111】
この態様によれば、電気分解により発生する水素ガス(51)と酸素ガス(52)とを分離しやすくなり、利用するガスの選択が容易な構成を提供できる。
【0112】
第9の態様に係るガス発生器(1)に関して、第5~第8の態様のいずれか1つにおいて、一対の電極(20)の少なくとも一方は、板状であり、その厚み方向に貫通する1又は複数の開口部(201)を有する。
【0113】
この態様によれば、電気分解により電極(20)の周囲で発生するガス(水素ガス51又は酸素ガス52)が開口部(201)を通って排出されやすくなり、結果的に、水素ガス(51)と酸素ガス(52)とを分離しやすくなる。
【0114】
第10の態様に係るガス発生器(1)は、第5~第9の態様のいずれか1つにおいて、一対の電極(20)に印加する電流の方向を切り替えて陽極(A1)と陰極(B1)とを変更する切替部(6)を更に備える。
【0115】
この態様によれば、電気分解により発生する水素ガス(51)と酸素ガス(52)のうち、利用するガスの設定変更が容易な構成を提供できる。
【0116】
第2~10の態様に係る構成については、ガス発生器(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0117】
1 ガス発生器
2 分解部
20 電極
201 開口部
3 供給部
31 ペルチェ素子
32 水吸着材
4 イオン交換膜
5 供給液
51 水素ガス
52 酸素ガス
6 切替部
A1 陽極
B1 陰極