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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】家禽飼料及び家禽肉
(51)【国際特許分類】
   A23K 50/75 20160101AFI20240412BHJP
   A23K 20/163 20160101ALI20240412BHJP
【FI】
A23K50/75
A23K20/163
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020129945
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2022026461
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000188227
【氏名又は名称】松谷化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】落合 優
(72)【発明者】
【氏名】山田 貴子
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/115408(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/035479(WO,A2)
【文献】特開2019-041710(JP,A)
【文献】国際公開第2014/175119(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2017/0303574(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 50/75
A23K 20/163
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
D-プシコースを0.3~3.0質量%含有する、家禽肉の柔らかさの向上用又は旨味コクの増強家禽飼料。
【請求項2】
D-プシコースを0.3~3.0質量%含有する家禽飼料を家禽に2週間以上給餌することを含む、家禽肉柔らかさの向上方法
【請求項3】
D-プシコースを0.3~3.0質量%含有する家禽飼料を家禽に2週間以上給餌することを含む、家禽肉の旨味コクの増強方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家禽飼料及びその飼料を与えて得られる家禽肉に関し、より詳細には、D-プシコースを含有する家禽飼料、その家禽飼料により肉質が改良された家禽肉、肉質が改良された家禽肉の生産方法、及び家禽肉の肉質改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食用肉は、部位によって食感や味質が異なる。例えば、鶏肉の場合、モモの肉質はジューシーで旨味が強いのに対し、ムネの肉質は固く旨味が少ない。また、牛肉の場合、モモの肉質は固いのに対し、ヒレの肉質は柔らかく、ロースは肉質が柔らかいことに加えて旨味が強い。
【0003】
そこで、食用肉の肉質を改良しようと、従来から食肉の加工方法が検討され、現在では、食用肉塊のタンブリング処理(調味液に浸潤させる処理)やインジェクション処理(脂などを注入する加工)がよく行われるようになっている。そして、これら処理に用いられる添加剤として、例えば、マルトトリオ―スを35%以上含有する糖組成物からなる食肉軟化剤(特許文献1)、カラメルを含有する砂糖を含有するpH8~11の畜肉軟化剤(特許文献2)、油脂と乳酸ナトリウムを含むO/W型エマルション組成物(特許文献3)などが開示されている。
【0004】
一方、食用肉に加工処理を施すのでなく、食用肉となる家畜の飼育方法や与える飼料を改良することにより、肉質を改善する方法も検討されている。改良された家畜用飼料としては、アスタキサンチン類を含有する家禽用飼料(特許文献4)、香辛料及びビタミンEを添加した養牛飼料(特許文献5)などが開示されている。
【0005】
他方、D-プシコース(以下、D-アルロースともいう。)は、ラットやヒトを用いた試験において、その血糖上昇抑制作用がよく知られるところ、全固形分中7%をD-プシコースが占める「希少糖含有シロップ」が2%含有されるよう調製した飼料を採卵専用鶏に与えると、重量サイズが小さい卵が得られることが開示されている(特許文献6)。また、D-プシコースを1.15%含有する「希少糖生産時の副産物の混合液糖」を飲用水に1%又は5%添加し、これをブロイラー(コップ種)に与えて飼育したところ、取り出した浅胸筋(胸肉)の加熱損失は小さく、破断応力が大きくなることが開示されている(非特許文献1)。
【0006】
すなわち、D-プシコース0.1%含有の鶏飼料を鶏卵採取用鶏に与えると、産卵期後期にあっても小サイズの卵を産卵すること、また、D-プシコース0.01%又は0.06%含有の飲用水をブロイラーに与えると、胸肉の加熱損失が小さくなることと破断応力が大きくなることは確認されていた。しかし、これら実験に用いられた液糖は、いずれもD-プシコース以外の希少糖が含まれるばかりか、果糖及びブドウ糖が70%以上も占める混合液糖であって、D-プシコースそのものによる効果が確認されたものとはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-181415号公報
【文献】特開2013-247896号公報
【文献】特開2010-068772号公報
【文献】特開2011-055792号公報
【文献】特開平11-196776号公報
【文献】特開2019-041710号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】泉川康弘ら、「鶏への混合糖液給与試験」、香川畜試報告(2012年)、47巻、p.29-37
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、家禽の肉質を改良するための飼料を提供すること、その飼料を家禽に与えて肉質が改良され家禽肉を提供すること、肉質が改良された家禽肉の生産方法若しくは家禽の肉質改良方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、特定量のD-プシコースを固形餌として鶏に与えてその肉質を調べた結果、ムネ肉にあってはタンパク質含有率が高くなることに加え、旨味コクが強くなり、また、ムネ肉とモモ肉のいずれにおいても柔らかさが増すことを発見し、これら知見をもって本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[6]から構成されるものであり、第一の発明は、家禽飼料である。
[1]D-プシコースを0.3~3.0質量%含有する、肉質改良用の家禽飼料。
[2]肉質改良が、タンパク質含有率の増加、柔らかさの向上、及び旨味コクの増強のいずれか一以上である、上記[1]記載の家禽飼料。
また、第二の発明は、家禽肉の生産方法である。
[3]D-プシコースを0.3~3.0質量%含有する家禽飼料を家禽に2週間以上給餌する、肉質が改良された家禽肉の生産方法。
また、第三の発明は、肉質が改良された家禽肉である。
[4]D-プシコースを0.3~3.0質量%含有する家禽飼料を家禽に2週間以上給餌して得られる、肉質が改良された家禽肉。
また、第四の発明は、家禽肉の肉質改良方法である。
[5]D-プシコースを0.3~3.0質量%含有する家禽飼料を家禽に2週間以上給餌する、家禽肉の肉質改良方法。
[6]肉質改良が、タンパク質含有率の増加、柔らかさの向上、及び旨味コクの増強のいずれか一以上である、上記[5]記載の家禽肉の肉質改良方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の家禽飼料を用いることにより、脂肪分が少なく食感が固いために市場価値が低いとされる家禽肉のムネ部位については、その肉質を柔らかくしておいしさを増すことができ、また、モモ部位については、柔らかさをより増強することができるため、さらに付加価値を高めることができることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ムネ肉についての味覚センサーによる各味の応答値を示す図である。
図2】モモ肉についての味覚センサーによる各味の応答値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明で使用する「D-プシコース」は、市販されるものを利用すればよく、D-プシコースを高度に含有する製品としては、例えば「Astraea」(松谷化学工業株式会社製)を利用することができ、混合品としては、例えば、D-プシコースを約7%含有する「レアシュガースウィート」(松谷化学工業株式会社製)を用いることができる。もっとも、後者のような混合シロップの場合、鶏飼料とするには粉末化工程を得る必要があることや、有効成分であるD-プシコースが非常に少ないばかりか過半が不要なD-グルコースとD-フラクトースであるため、D-プシコースを少なくとも15質量%以上、好ましくは20質量%以上、さらに好ましく30質量%以上含む、D-プシコース含有粉末品又は結晶品を用いるのがよい。なお、D-プシコースの測定方法は、糖の分析方法として一般的な公知の高速液体クロマトグラフ法(例えば、高峰ら著、「アルカリ異性化を用いた希少糖含有シロップの製造方法およびαグルコシダーゼの阻害作用」、応用糖質科学(2015)、第5巻、第1号p.44-49を参照)を用いて測定することができる。
【0015】
本発明の飼料中のD-プシコース濃度は、本発明の目的を達成するために0.1質量%以上とすることが好ましく、また、10質量%を超えて含有させたとしても本発明の効果が一定であることと、緩下作用防止の観点から、5%を超えないことが好ましく、0.1~5質量%の範囲、より好ましくは0.3~3質量%の範囲で飼料中にD-プシコースを含有させて家禽に与えるのがよい。
【0016】
本発明の家禽飼料には、有効成分となるD-プシコースのほか、アミノ酸やアミノ酸塩を含有させるのがよく、栄養面の観点からタンパク質やペプチド、油脂、ビタミン類を併用するのがよい。そして、本発明の効果を阻害しない限り、また、栄養不足や栄養過多とならない限り、どのような素材でも組み合わせて添加することができる。
【0017】
本発明の家禽飼料は、その給飼対象を鶏(ニワトリ)に限定するものでなく、七面鳥、アヒル、ウズラ、カモなども対象として包含する。
【0018】
本発明の家禽肉の「肉質改良」とは、本発明の家禽飼料を摂取しない家禽肉に比べて、肉質が柔らかくなること(軟化ともいい、硬化しないことを含む)、旨味コクが増強すること、タンパク質含有率が高くなること、のうちいずれか一以上の効果が達成されることをいう。ここで、家禽肉の柔らかさは、レオメーター(例えば、サン科学社製のCR-100など)を用いた破断強度分析による最大荷重点の数値(この数値が小さいほど柔らかい)により判断でき、家禽肉のタンパク質含有率は、ケルダール法(窒素-タンパク質換算係数を6.25とする)による粗タンパク質の含有率を測定することにより知ることができ、旨味コクは、味覚センサー(インテリジェントセンサーテクノロジー社製の味認識装置「TS-5000Z」など)により数値(この数値が大きいほどその味が強い)として測定することができる。
【0019】
上記の味覚センサーは、食品を含んだ瞬間の味である「先味」と、食品を飲み込んだ後に残る持続性のある味である「後味」の二種類で味を評価するものである。より詳細には、基準液(30mMKClと0.3mM酒石酸を含んだ、ほぼ無味の溶液。人間の唾液に相当。)の電位をゼロとして、サンプル液との電位差を「先味」として測定し、その後にセンサーを軽く洗浄して再度基準液を測定した時の電位差を「後味」として測定するものである。そして、「先味」として測定される味覚項目は、酸味、苦味雑味、渋味刺激、旨味、塩味、甘味であり、「後味」として測定される味覚項目は、苦味、渋味、旨味コクである。すなわち、「旨味」は先味の旨味であり、本発明にいう「旨味コク」は後味の旨味である。
【0020】
本発明の家禽飼料をもって家禽を飼育する場合、給飼方法(時間、回数、量など)は特に変更する必要もなく、すべて定法と同じでよいが、より好ましい肉質を得るためには少なくとも14日間の飼育が必要である。また、ブロイラーにあっては成長が著しいために14日間の飼育によりその肉質の改善効果は得られるが、家禽の種類などに応じて、14日より長い飼育期間、例えば、21日以上、より好ましくは28日以上、もっとも好ましくは35日以上の期間、本発明の家禽飼料をもって飼育することができる。このように、本発明の家禽飼料をもって飼育された家禽から得られる食用肉は、肉質が改良されたものとなる。
【0021】
以下、本発明について具体的に詳述するが、本発明はこれに限定されるものでない。
【実施例
【0022】
(1)鶏飼料の調製
鶏に給餌する「基本飼料」は、『ヒナ餌付名人』、『幼す名人』、『中す名人』(以上、中部飼料株式会社製品)のいずれかを週齢に応じて用いることとし、「D-プシコース3%添加飼料」は、その基本飼料100質量部に対し、D-プシコース3質量部を10mlの水に溶解したものを加えてフードミキサーで混合して調製した。具体的には、馴化期間の3週間は『ヒナ餌付名人』を、本飼育期間の初期2週間は『幼す名人』を、本飼育期間の3週間目以降は『幼す名人』と『中す名人』の1:1混合物を、本飼育期間の25日目以降は『中す名人』(以上、中部飼料株式会社製品)を「基本飼料」とした、「D-プシコース3%添加飼料」又はD-プシコースを添加しない「対照飼料」を調製して用いた。
【0023】
(2)鶏の飼育
給餌対象の鶏として、肉用鶏である雄チャンキー種(ひな鶏)12羽を二群(一群あたり6匹)に分けて用いた。馴化期間の初期1週間は室内温度を23℃、育成器内温度を30℃とし、その後の1週間は、室内温度を23℃、育成器内温度を24℃とした。飼育スペースは開放スペースとし、個飼い等は行わない環境とした。照明は24時間点灯とした。馴化期間終了以降の5週間を本飼育期間とし、室内温度25℃に設定された飼育室で個飼い飼育を行った。食餌及び水は自由摂取とし、1日1回交換した。照明は24時間点灯とした。なお、食餌摂取量は毎日午前中に測定し、体重は週に1回測定した。
【0024】
(3)鶏の処理
本飼育期間最終日の18時以降は絶食とし、翌日朝9時より解剖を行った。肉質評価のために麻酔薬等は使用せず、鶏に電気ショック器材(自製)で電気ショックを与え、その後に解剖を行った。血液は心臓より採取し、遠心分離後の血漿を分析まで冷凍保管(-30℃)した。その後、温水に鶏生体を浸けて脱羽し、解剖用メスを用いてムネ肉、モモ肉および肝臓を採取した。採取した組織および臓器は重量測定後、ドライアイスを用いて凍結し、分析まで冷凍保管(-30℃)した。肝臓及びモモ肉の小片はドライアイスを用いて凍結後、分析まで-80℃に保管した。また、臓器および組織の一部を10%中性緩衝ホルマリン溶液にて固定処理した。
【0025】
(4)採取サンプルの分析
まず、血漿を用いて生化学試験を行った。分析項目は、血漿中のグルコース、中性脂肪若しくは総コレステロール濃度、肝臓中の水分、グリコーゲン、中性脂肪若しくはコレステロールの含量、及び骨格筋(モモ肉)の水分、グリコーゲン、中性脂肪若しくはコレステロールの含量とした。脂質含量は、Folch法で総脂質を抽出し、和光純薬製の市販キットを用いて定量分析し、グリコーゲン含量は、熱アルカリ溶液中で加水分解して生成したグルコースを和光純薬製の市販キットを用いて定量することにより分析した。
【0026】
また、モモ肉及びムネ肉については、栄養成分(粗タンパク質、粗脂肪、灰分、水分)の分析に加えて、ガスクロマトグラフィー法による脂肪酸組成分析、物性分析(破断強度、水分保持率)及び味覚センサー(旨味、苦味雑味、甘味、酸味、塩味、渋味、渋味刺激、旨味コク)による分析を行うこととした。なお、味覚センサーの分析は、バイアスを排除するため、サンプル名等を伏せた上、北里大学獣医学部食品機能安全学研究室に測定を依頼した。
【0027】
栄養成分分析には、モモ肉及びムネ肉をそれぞれミンチ状にしたものを用い、粗タンパク質はケルダール法(窒素―タンパク質換算係数を6.25とした)、粗脂肪は石油エーテルを用いたソックスレー抽出法、灰分は加熱炭化法(530℃、24時間)、水分は加熱法(105℃、24時間)によって測定した。
【0028】
また、破断強度の分析にはレオメーター(CR-100、サン科学)を用い、レオメーターに供するサンプルは、各肉片を加熱調理(密封可能な袋に入れ、70℃の湯中で60分間加温)の後、包丁で一辺約10mmの立方体に成形したものとした。レオメーターの先端には、破断分析用のアタッチメントを使用し、最大荷重(N)と荷重点に至るまでの傾き(弾性指標、N/mm)を算出した。水分保持率の分析にはブロック肉を用い、加熱遊離水分量(密封可能な袋に入れ、70℃の湯中で60分間加温後に遊離する水分量)、及び遠心遊離水分量(肉を濾紙に包み、2000×gで30分間遠心分離した際に遊離する水分量)を用いて評価した。
【0029】
味覚センサーによる評価は、ミンチ状にしたムネ肉又はモモ肉に4倍量の蒸留水を加えてさらにミンチ化し、これを遠心分離後の上清を濾過して得られる濾液を測定サンプルとした。測定項目(味)は、旨味、苦味雑味、甘味、酸味、塩味、渋味、渋味刺激、旨味コク、甘みとし、味認識装置TS-5000Z(インテリジェントセンサーテクノロジー社製)を用いて行った。
【0030】
(5)統計解析
分析値はすべて、平均値±標準誤差(n=6)として示した。統計分析はエクセル統計を用いて実施し、「対照群」と「D-プシコース給餌群」との間の差はStudent’st-testの解析により、p<0.05のときに有意差があると判断した。以下、結果の表中「有意差検定」欄に、有意差がある場合はその数値を、有意差がない場合はNSと記載する。
【0031】
(6)結果
(ア)体重増加及び食餌摂取量
体重増加及び食餌摂取量の結果を表1に示す。35日間の平均食餌摂取量は、両群間に差は認められなかったが、解剖時体重は、対照群と比較してD-プシコース給餌群で有意に低値となった。飼育経過中の体重は、経時的にD-プシコース給餌群で低く推移する傾向がみられたが、両群間に有意差は認められなかった。筋肉重量は、実重量についてはムネ肉およびモモ肉ともにD-プシコース給餌群で有意に低値となったが、相対重量については両群間に有意差は認められなかった。
【0032】
【表1】
【0033】
(イ)血漿、肝臓及びモモ肉中の成分の評価
血漿、肝臓及びモモ肉の成分濃度・含有量の結果を表2に示す。血漿中のグルコース、中性脂肪及び総コレステロール濃度については、各群間に有意差は認められなかった。また、肝臓及び筋肉(モモ肉)の水分、グリコーゲン、中性脂肪及びコレステロール含量についても、両群間に有意差は認められなかった。
【0034】
【表2】
【0035】
(ウ)モモ肉及びムネ肉の栄養成分の評価
モモ肉及びムネ肉の成分組成(粗タンパク質、粗脂肪、灰分、水分)を表4に示す。モモ肉を構成する栄養成分は、両群間に有意差は認められなかった。ムネ肉のタンパク質含有率は、D-プシコース給餌群で有意に高値となったが、その他の成分含有率は、両群間に有意な差は認められなかった。
【0036】
【表3】
【0037】
(エ)モモ肉及びムネ肉の物性評価
モモ肉及びムネ肉の物性(破断強度、加熱水分遊離率、遠心水分遊離率)の結果を表5に示す。破断強度分析における最大荷重点は、両群間に有意差は認められなかったが、ムネ肉及びモモ肉ともにD-プシコース給餌群で低くなる傾向が認められた(0.05<P≦0.1)。弾性指標(試料に1mm侵入する際にサンプルにかかる重力を示す指標)についても同様の結果となった。一方で、遠心分離または加熱によって遊離・脱離する水分率については、モモ肉及びムネ肉とも両群間に有意差は認められなかった。
【0038】
【表4】
【0039】
(オ) 味覚センサー評価
ムネ肉及びモモ肉について、味覚センサーによる旨味、苦味雑味、甘味、酸味、塩味、渋味、渋味刺激、旨味コクの応答値を測定した結果を図1及び図2に示す。ムネ肉においては、旨味コクの応答値がD-プシコース給餌群で高値を示し、対照群に比して約1.0ポイントも高かった。モモ肉においては、旨味、苦味、渋味の応答値がD-プシコース給餌群で低値を示した。なお、味覚センサーによる測定値が1ポイント異なると、サンプル中の呈味物質が約20%異なるとされており、その差はヒトの舌で感じることのできる差である。一方、統計的な差がみられたとしても、相違する値が1ポイント未満であれば、実際のヒトの舌ではその差を確認できない。よって、モモ肉については、対照群とはその味に違いがほとんどないと考えられる。
【0040】
以上のとおり、本発明のD-プシコースを含有する家禽飼料を給飼すれば、その家禽肉の水分保持力を低下させることなく、ムネ部位においてはタンパク質含有率が向上した柔らかくて旨味コクのあるおいしい食用肉が、モモ部位においては柔らかい食用肉が得られることとなる。
図1
図2