(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】ゴルフ用手袋
(51)【国際特許分類】
A63B 71/14 20060101AFI20240412BHJP
A41D 19/00 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
A63B71/14 A
A41D19/00 K
(21)【出願番号】P 2019209100
(22)【出願日】2019-11-19
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】519412660
【氏名又は名称】株式会社ケイ
(74)【代理人】
【識別番号】100081949
【氏名又は名称】神保 欣正
(72)【発明者】
【氏名】新木 かほる
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-107413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B71/00-A63B71/16
A41D19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掌部と甲部の左右の境目付近に配した伸縮生地、
掌部側の人指し指部、中指部、薬指部、小指部の付け根付近に掌部を横断するように配した線状の伸縮生地、
甲部側の人指し指部、中指部、薬指部、小指部の付け根付近に甲部を横断するように配した線状の伸縮生地、
掌部側の親指の付け根に沿うように配した線状の伸縮生地、
上記の掌部側の親指の付け根に沿うように配した伸縮生地の中間付近から、掌部と甲部の小指部側の境目付近に向け配した線状の伸縮生地、
上記各伸縮生地以外の箇所に配される複数の皮革生地、
を有し、
上記の各皮革生地同士を伸縮生地を介して縫着して連結するか、または伸縮生地上に上記の各皮革生地を縫着することにより伸縮可能としたゴルフ用手袋において、
掌部側の人指し指部、中指部、薬指部、小指部の付け根付近に甲部を横断するように配した線状の伸縮生地と、掌部側の親指の付け根に沿うように配した線状の伸縮生地と、掌部側の親指の付け根に沿うように配した伸縮生地の中間付近から、掌部と甲部の小指部側の境目付近に向け配した線状の伸縮生地に囲まれることにより掌の上半分を構成する逆三角形の皮革生地を設けたことを特徴とするゴルフ用手袋。
【請求項2】
人指し指部、中指部、薬指部および小指部の指腹側の中途に切り欠きを設け、この切り欠き内に伸縮生地を配した請求項1記載のゴルフ用手袋。
【請求項3】
伸縮生地は縦、横、斜め方向に伸縮可能な生地、皮革生地は伸縮生地よりも伸縮性は劣るが防滑性の良好な合成皮革、人工皮革、または天然皮革製の生地である請求項1または2に記載のゴルフ用手袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明はゴルフ用手袋に関し、より詳細にはゴルファーの手の大きさに応じて伸縮し、しかもグリップを阻害することのないフリーサイズ対応型のゴルフ用手袋に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なゴルフ用手袋は、人によって異なるゴルファーの手の大きさに対応できるように1cm刻みでサイズを違えたものを用意している。
【0003】
通常、男性用のゴルフ用手袋は、21・22・23・24・25・26cmの6サイズを用意している(ただし21cmと26cmはまれにしかいない。)。あるいは、XS/S/M/L/XLなどのサイズ表記を用いることもあり、この場合は、一般的にはS/M/Lの3サイズから選んでいる。女性用のゴルフ用手袋も同じように18・19・21cmの3サイズを用意している。
【0004】
一方、人間の手の形状は、長い・短い、太い・細い、厚い・薄いなど、千差万別だが、現在販売されているほとんどのゴルフ用手袋は標準的な形状で作られているため、例え同サイズであってもすべてのゴルファーが満足できるわけではない。
【0005】
一般的にゴルフ用手袋は、1サイズごとに縦寸法が3mm、横寸法が4mmずつ違うように作られている。つまり、設計上、22cmのグローブと25cmのグローブの違いは、縦12mm、巾16mmの違いとなる。
【0006】
以上の問題点を解消するために、縦、横、斜め方向に伸縮可能な伸縮生地と、伸縮生地よりも伸縮性は劣るが防滑性の良好な合成皮革、人工皮革、または天然皮革製の皮革生地をつなぎ合わせて縫製したゴルフ用手袋が提案されている。特許文献1には縦、横、斜めいずれの方向にも自在に伸縮する伸縮生地で手袋本体をなす甲部側及び掌部側の大部分が形成されたゴルフ用手袋であって、手袋本体の掌部側に、伸縮生地よりも伸縮性は劣るが防滑性の良好な合成皮革、人工皮革、あるいは天然皮革製の防滑薄片を、掌部側の人指し指片、中指片、薬指片及び小指片の各先端部付近から手袋本体の手首側の下端部付近に至るまで伸縮生地が途絶えることなく連続して露出されるように縫着したことを特徴とするゴルフ用手袋が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記の特許文献1に記載のゴルフ用手袋は、僅かなサイズの違いや長い・短い、太い・細い、厚い・薄いなどの手の形状の違いに対応できる優れた効果を有する。
【0009】
しかしながら、サイズの大きな違いに対応し、一つのゴルフ用手袋で全サイズに対応するフリーサイズ化には対応できなかった。
【0010】
この場合、伸縮生地の比率を高めれば、フリーサイズ化が可能なことは当業者であれば容易に想到できるところであるが、ことゴルフ用手袋においては、伸縮生地の比率を高めた場合には、手にフィットするとしても素材的に滑り易く、グリップを確実なものにすることができずにミスショットの原因になるという不具合があり、防滑性の良好な合成皮革、人工皮革、または天然皮革製の皮革生地の比率を低くすることはできなかった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は前記の問題を解消したゴルフ用手袋を提供することを目的として創作されたものであり、
掌部と甲部の左右の境目付近に配した伸縮生地部分、
掌部側の人指し指部、中指部、薬指部、小指部の付け根付近に掌部を横断するように配した伸縮生地部分、
甲部側の人指し指部、中指部、薬指部、小指部の付け根付近に甲部を横断するように配した伸縮生地部分、
掌部側の親指の付け根に沿うように配した伸縮生地部分、
上記の掌部側の親指の付け根に沿うように配した伸縮生地部分の中間付近から、掌部と甲部の小指部側の境目付近に向け配した伸縮生地部分、
上記各伸縮生地以外の箇所に配される複数の皮革生地部分、
を有し、
上記の各皮革生地同士を伸縮生地を介して縫着して連結するか、または伸縮生地上に上記の各皮革生地を縫着することにより伸縮可能としたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項2記載の発明においては前記のゴルフ用手袋において、
掌部と甲部の左右の境目付近に配した細幅の伸縮生地部分、
掌部側の人指し指部、中指部、薬指部、小指部の付け根付近に掌部を横断するように配した細幅の伸縮生地部分、
甲部側の人指し指部、中指部、薬指部、小指部の付け根付近に甲部を横断するように配した細幅の伸縮生地部分、
掌部側の親指の付け根に沿うように配した細幅の伸縮生地部分、
上記の掌部側の親指の付け根に沿うように配した伸縮生地部分の中間付近から、掌部と甲部の小指部側の境目付近に向け配した細幅の伸縮生地部分、
掌部側の手首付近に配した伸縮生地部分、
上記各伸縮生地以外の箇所に配される複数の皮革生地部分、
を有し、
上記の各皮革生地同士を伸縮生地を介して縫着して連結するか、または伸縮生地上に上記の各皮革生地を縫着することにより伸縮可能としたことを特徴とする。
【0013】
また、請求項3記載の発明においては前記のゴルフ用手袋において、人指し指部、中指部、薬指部および小指部の指腹側の中途に切り欠きを設け、この切り欠き内に伸縮生地を縫着したことを特徴とする。
【0014】
本願発明において、伸縮生地とは縦、横、斜め方向に伸縮可能な生地、皮革生地とは伸縮生地よりも伸縮性は劣るが防滑性の良好な合成皮革、人工皮革、または天然皮革製の生地を指す。
【発明の効果】
【0015】
以上の構成よりなる本願発明のゴルフ用手袋においては、皮革生地を複数の領域に分割し、分割した各皮革生地を手袋の掌部と甲部の左右の境目に配した伸縮生地部分、掌部側の人指し指部、中指部、薬指部の付け根付近に掌部を横断するように配した伸縮生地部分、甲部側の人指し指部、中指部、薬指部の付け根付近に甲部を横断するように配した伸縮生地部分、掌部側の親指の付け根に沿うように配した伸縮生地部分、上記の掌部側の親指の付け根に沿うように配した伸縮生地部分の中間付近から、掌部と甲部の小指部側の境目付近に向け配した細幅の伸縮生地部分を介してつなぎ合わせるので、伸縮生地により手袋は伸縮し、一つのゴルフ用手袋が伸縮することによって人によって異なるゴルファーの掌の大きさに対応できるようになる。しかも、この場合、掌部の伸縮生地はMP関節、CM関節、手根中央関節などの屈曲箇所付近に位置し、それ以外の箇所には防滑性の良好な皮革生地が位置するので、グリップを損なうことなくミスショットの原因になるという不具合が生ずることがない。
【0016】
次に、請求項3に係る発明によれば、人指し指部、中指部、薬指部および小指部の指腹側の中途に切り欠きを設け、この切り欠き内に伸縮生地を縫着されるので、皮革生地を使用してもこの切り欠き部分が伸縮して各指部の全長方向の伸縮にも対応することが可能となる。
【0017】
よって、本願発明によればゴルフ用手袋の生産性が向上しコストを軽減できるとともに、販売店においても各種サイズのゴルフ用手袋を揃えることが不要となるので、収益性が向上することになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に本願発明のゴルフ用手袋の具体的実施例を添付図面に基づいて説明する。本願発明のゴルフ用手袋は縦、横、斜め方向に伸縮可能な伸縮生地と、伸縮生地よりも伸縮性は劣るが防滑性の良好な合成皮革、人工皮革、または天然皮革製の皮革生地をつなぎ合わせて縫製して構成される。伸縮生地としてはナイロンやポリエステルと一緒にポリウレタンを編み込んだツーウェイトリコットと呼ばれる布地や、ツーウェイトリコットにウレタン樹脂を含浸させ又はウレタンシートを貼り合わせた合成皮革等が公知であるが、これらに限られないことは勿論である。防滑性の良好な皮革生地としては例えば東レコーテックス社製の合成皮革が公知であるが、これに限られないことは勿論である。
【0020】
本願発明のゴルフ用手袋の最大の特徴は手袋を複数の領域に分割するとともに、各領域を皮革生地で構成し、上記の各皮革生地同士を伸縮生地を介して連結するか、または伸縮生地上に上記の各皮革生地を縫着することにより掌部を伸縮可能とした点にある。
図1および
図2は前記の特徴が現れている手袋の斜視図である。
【0021】
ここでは、手袋は掌部と甲部の左右の境目付近に配した伸縮生地部分2A・2B、掌部側の人指し指部、中指部、薬指部、小指部の付け根付近に掌部を横断するように配した伸縮生地部分2C、甲部側の人指し指部、中指部、薬指部、小指部の付け根付近に甲部を横断するように配した伸縮生地部分2F、掌部側の親指の付け根に沿うように配した伸縮生地部分2D、上記の掌部側の親指の付け根に沿うように配した伸縮生地部分の中間付近から、掌部と甲部の小指部側の境目付近に向け配した伸縮生地部分2E、掌部側の手首付近に配した伸縮生地部分2Gを有し、上記各伸縮生地以外の箇所に複数の皮革生地部分を配している。
【0022】
すなわち、前記伸縮生地部分は手袋の全域に渡ってほぼ連続して配され、伸縮生地部分が位置しない箇所に皮革生地部分が島状に配されることになる。図中符号1Aは親指部を構成する皮革生地部分、1Bは人指し指部、中指部、薬指部、小指部を構成する皮革生地部分、1Cは掌の上半分を構成する皮革生地部分、1Dは掌の下半分を構成する皮革生地部分、1Eは甲部分を構成する皮革生地部分を指す。
【0023】
この実施例においては掌部側の人指し指部、中指部、薬指部、小指部の付け根付近に掌部を横断するように配した伸縮生地部分2C、甲部側の人指し指部、中指部、薬指部、小指部の付け根付近に甲部を横断するように配した伸縮生地部分2F、掌部側の親指の付け根に沿うように配した伸縮生地部分2D、上記の掌部側の親指の付け根に沿うように配した伸縮生地部分の中間付近から、掌部と甲部の小指部側の境目付近に向け配した伸縮生地部分2E、掌部と甲部の小指部側の境目に配した伸縮生地部分2Bは特に細幅に構成している。
【0024】
また、掌部と甲部の親指部側の境目に配した伸縮生地部分2Aは手袋の人指し指部の指背の付け根から先端にかけて延設されて延設部2Jを、親指部の人指し指側の側縁側の付け根から先端にかけて延設されて延設部2Hを構成する。
【0025】
また、前記各指部の皮革生地部1Bの人指し指部、中指部、薬指部および小指部の指腹側の中途に切り欠きを設け、これらの切り欠き内に伸縮生地部3A、3B、3C、3Dを設けている。
【0026】
この実施例では以上の各皮革生地部分をその外縁に縫着される伸縮生地部分を介して連結している。すなわち、各皮革生地間には伸縮生地が位置し、この伸縮生地の伸縮により手袋のサイズが変化することになる。この実施例のゴルフ用手袋は単に掌部ではなく、手袋の全域において伸縮する。その場合の基本的な考えとしては、グリップに差し障りがない箇所は伸縮生地を使用し、それ以外の箇所には防滑性の良好な皮革生地を使用することが挙げられる。なお、伸縮生地上に皮革生地を重ねて縫着してもよいことは勿論である。
【0027】
図中符号4はゴルファーが手袋を装着するに際して手首箇所から甲箇所にかけて大きく開放させるために甲部の手首側端部から指方向にかけて切りかかれるスリットの一側から延設されるリストバンドである。スリットの他側の甲部にはリストバンドの他端に設けられた係着部材11が係着される被係着部材が設けられる。
【符号の説明】
【0028】
1A~1E 皮革生地部分
2A~2H 伸縮生地部分
3A~3D 伸縮生地部分