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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】農作業機
(51)【国際特許分類】
   A01B 35/04 20060101AFI20240412BHJP
   A01B 59/044 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
A01B35/04 C
A01B59/044
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019228580
(22)【出願日】2019-12-18
(65)【公開番号】P2021093978
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390010836
【氏名又は名称】小橋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】河原 文雄
(72)【発明者】
【氏名】小澤 英樹
(72)【発明者】
【氏名】末平 直土
(72)【発明者】
【氏名】坂口 熙
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-039981(JP,A)
【文献】実開昭54-177316(JP,U)
【文献】登録実用新案第366665(JP,Z2)
【文献】特開2002-291305(JP,A)
【文献】実公平04-054726(JP,Y2)
【文献】特開2015-096045(JP,A)
【文献】米国特許第05699863(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 33/00 - 37/00
A01B 59/00 - 63/32
A01C 11/00 - 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪と一対の後輪との間に設けられた、圃場を耕す作業部と、
前記一対の後輪の後方に設けられた整地部材と、
を備え、
前記整地部材の幅は、前記一対の後輪の中心線の間の距離よりも広く、
平面視において、前記整地部材の前端は、後輪ごとに前記後輪よりも外側から内側に向かうほど後退する第1傾斜と、前記第1傾斜よりも内側に設けられ、外側に向かうほど後退する第2傾斜とを有し、
前記整地部材は、前記第2傾斜を有する部分に対して、前記第1傾斜を有する部分が折り畳み可能である、農作業機。
【請求項2】
前記第2傾斜は、前記第1傾斜に隣接する、請求項1に記載の農作業機。
【請求項3】
前記第1傾斜は、前記後輪よりも外側から前記後輪よりも内側に亘って連続的に延在する、請求項1又は2に記載の農作業機。
【請求項4】
前輪と後輪との間に設けられた、圃場を耕す作業部と、
前記後輪の後方に設けられた整地部材と、
を備え、
平面視において、前記整地部材の前端は、前記後輪よりも外側から内側に向かうほど後退する第1傾斜を有するとともに、前記第1傾斜よりも内側に、外側に向かうほど後退する第2傾斜を有し、
前記整地部材は、前記第2傾斜を有する部分に対して、前記第1傾斜を有する部分が折り畳み可能であり、
前記第1傾斜と前記第2傾斜との交点が、平面視において前記後輪が通過する範囲内に位置する、農作業機。
【請求項5】
前輪と後輪との間に設けられた、圃場を耕す作業部と、
前記後輪の後方に設けられた整地部材と、
を備え、
平面視において、前記整地部材の前端は、前記後輪よりも外側から内側に向かうほど後退する第1傾斜を有するとともに、前記第1傾斜よりも内側に、外側に向かうほど後退する第2傾斜を有し、
前記整地部材は、前記第2傾斜を有する部分に対して、前記第1傾斜を有する部分が折り畳み可能であり、
前記第1傾斜と前記第2傾斜との交点が、平面視において前記後輪よりも内側又は外側に位置する、農作業機。
【請求項6】
前記第1傾斜と前記第2傾斜との間に、進行方向に対して略垂直の平坦部をさらに有する、請求項1に記載の農作業機。
【請求項7】
前輪と一対の後輪との間に設けられた、圃場を耕す作業部と、
前記一対の後輪の後方に設けられた整地部材と、
を備え、
前記整地部材の幅は、前記一対の後輪の中心線の間の距離よりも広く、
平面視において、前記整地部材の前端は、後輪ごとに前記後輪よりも外側から内側に向かうほど後退する第1傾斜と、前記第1傾斜よりも内側に設けられ、外側に向かうほど後退する第2傾斜とを有し、
前記第1傾斜と前記第2傾斜との間に、進行方向に対して略垂直の平坦部を有し、
前記平坦部の幅は、前記後輪の幅と略同一である、農作業機。
【請求項8】
前記第1傾斜と前記第2傾斜との間に、湾曲部をさらに有する、請求項1に記載の農作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走式の農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、農作業の労働時間を軽減するために農作業機のオートマチック化が進められ、様々な農作業機が開発されている。特に、トラクタ等の走行機体の後方に装着され、農作業の種類に応じて交換可能な農作業機(ロータリ耕耘機や代かき機)は、走行機体に対してアタッチメントのように装着するだけで様々な農作業に対応することが可能であり、農作業のコスト低減に大きく寄与している。
【0003】
近年、農作業機のオートマチック化をさらに進めて、農作業の無人化を目的とした開発が進められている。この農作業の無人化に関しては、これまで走行機体の無人化を主体として進められてきた。そのため、耕耘作業や代かき作業などの農作業を無人化する場合、例えば特許文献1に記載される従来の農作業機を、自走式の走行機体に牽引させる方式が主流であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-201444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
走行機体ではなく、農作業機の無人化、すなわち自走式の農作業機を実現しようとする場合、農作業を行う部位(例えば、作業ロータ等)に加えて、車輪等の走行手段、エンジン等を配置する必要がある。この場合において、走行手段及びエンジンの後方に作業ロータ等を配置すると、農作業機の全長が長くなり、大型化を招いてしまう。しかしながら、走行手段の前方に作業ロータ等を配置すると、走行手段の走行跡(轍)を消すことができないという問題がある。
【0006】
本発明の一実施形態の課題は、自走式の農作業機における均平性能を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態における農作業機は、前輪と後輪との間に設けられた、圃場を耕す作業部と、前記後輪の後方に設けられた整地部材と、を備え、平面視において、前記整地部材の前端は、少なくとも前記後輪よりも外側に、内側に向かうほど後退する第1傾斜を有する。
【0008】
前記第1傾斜は、前記後輪よりも外側から前記後輪よりも内側に亘って連続的に延在していてもよい。
【0009】
前記整地部材の前端は、前記第1傾斜よりも内側に、外側に向かうほど後退する第2傾斜を有していてもよい。
【0010】
前記第2傾斜と前記第1傾斜との交点が、平面視において前記後輪が通過する範囲内に位置していてもよいし、前記後輪よりも内側又は外側に位置していてもよい。
【0011】
前記第1傾斜と前記第2傾斜との間に、進行方向に対して略垂直の平坦部をさらに有していてもよい。このとき、前記平坦部の幅は、前記後輪の幅と略同一であってもよい。また、前記第1傾斜と前記第2傾斜との間に、湾曲部をさらに有していてもよい。
【0012】
前記整地部材は、前記第2傾斜を有する部分に対して、前記第1傾斜を有する部分が折り畳み可能であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、自走式の農作業機における均平性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態の農作業機の構成を示す平面図である。
図2】本発明の第1実施形態の農作業機の構成を示す左側面図である。
図3】本発明の第1実施形態の農作業機における後輪と第3整地部材との位置関係を模式的に示す平面図である。
図4】本発明の第1実施形態の農作業機における整地部材の構成を示す側面図である。
図5】本発明の第2実施形態の農作業機における後輪と第3整地部材との位置関係を模式的に示す平面図である。
図6】本発明の第3実施形態の農作業機の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の農作業機について説明する。但し、本発明の農作業機は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す例の記載内容に限定して解釈されない。なお、本実施の形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号又は同一の符号の後にアルファベットを付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0016】
本願の明細書及び特許請求の範囲において、「上」は圃場から垂直に遠ざかる方向を示し、「下」は圃場に向かって垂直に近づく方向を示す。また、「前」は農作業機が圃場に対して作業をしながら進行する方向を示し、「後」は前とは180°反対の方向を示す。また、「左」又は「右」は、農作業機が前方を向いた状態における左右方向を示す。なお、農作業機の各構成部位の左右方向の長さは「幅」と呼ぶ。さらに、平面視における農作業機の中心線(進行方向に平行な線)を基準としたとき、相対的に、中心線に近い側を「内側」と呼び、中心から遠い側を「外側」という。
【0017】
本願の明細書及び特許請求の範囲において、「耕す」という用語は、少なくとも「代かき」、「耕耘」、及び「砕土」を行うことを含む。以下の実施形態では、農作業機として代かき機を代表的に例示するが、この例に限らず、例えば、代かき機以外にも耕耘機、砕土機など、圃場を耕す農作業機に本発明を適用することができる。
【0018】
<第1実施形態>
[農作業機の構成]
本実施形態の農作業機100は、前進しながら無人で作業を行う自走式の農作業機である。図1は、本発明の第1実施形態の農作業機の構成を示す平面図である。図2は、本発明の第1実施形態の農作業機の構成を示す左側面図である。図1及び図2に示すように、本実施形態の農作業機100は、フレーム200、一対の前輪300、一対の後輪400、作業部500及び補助整地部600を有する。なお、図2において、一点鎖線は、作業時に想定される圃場101の表面を表している。
【0019】
フレーム200は、メインフレーム210、前輪フレーム220及び後輪フレーム230を含む。メインフレーム210は、農作業機100の骨格を構成する部材である。図示しないが、メインフレーム210には、農作業機100を動作させるために各種機能部材が設けられている。各種機能部材としては、例えば、エンジン、トランスミッション、旋回機構、駆動制御機構、通信機構、及び燃料タンクなどの部材を例示することができる。本実施形態では、通信機構を介した無線通信によってサーバ又はリモコンから制御信号を受信し、駆動制御機構が、受信した制御信号に基づいて、エンジン、トランスミッション、又は旋回機構を駆動する。これらの動作によって農作業機100の自動走行が実行される。なお、旋回機構は、前輪300だけを左右に旋回してもよく、後輪400だけを左右に旋回してもよく、両輪を旋回してもよい。
【0020】
前輪フレーム220は、メインフレーム210の前方側に接続されており、メインフレーム210から下方に向かって延びている。前輪フレーム220の下端付近には前輪300が取り付けられている。後輪フレーム230は、メインフレーム210の後方側に接続されており、メインフレーム210から下方に向かって延びている。各後輪フレーム230の下端付近には後輪400が取り付けられている。
【0021】
前輪フレーム220は、メインフレーム210から圃場に向かってほぼ垂直に延びており、メインフレーム210に固定されている。つまり、前輪フレーム220とメインフレーム210との位置関係は変化しない。他方、後輪フレーム230は、メインフレーム210から後方斜め下方に延びており、メインフレーム210に対して回動可能に接続されている。つまり、後輪フレーム230が回動することにより、メインフレーム210の後端を上下方向に移動させることができる。ただし、この例に限らず、前輪フレーム220と同様に、後輪フレーム230もメインフレーム210に固定されていてもよい。また、逆に、前輪フレーム220が、後輪フレーム230と同様に、メインフレーム210に対して回動可能に接続されていてもよい。
【0022】
前輪300及び後輪400は、それぞれメインフレーム210の前方側及び後方側に対で設けられている。なお、本実施形態では、前輪300及び後輪400は、タイヤを例としているが、この例に限られるものではない。例えば、前輪300及び後輪400が、それぞれ無限軌道(クローラ)のような構造を有していてもよい。
【0023】
作業部500は、サイドフレーム510、作業ロータ520、シールドカバー530、第1整地部材540及び第2整地部材550を含む。作業部500は、代かき、耕耘、砕土その他の農作業を行う部位である。図1に示されるように、本実施形態の農作業機100は、作業部500が一対の前輪300と一対の後輪400との間に設けられている。つまり、農作業機100は、ミッドマウント方式の農作業機である。
【0024】
なお、本実施形態では、作業部500が上下方向に昇降可能な構成となっている。図2では、農作業機100が作業状態にある場合における作業部500及び補助整地部600を実線で示し、非作業状態にある場合における作業部500及び補助整地部600を点線で示している。作業部500の昇降動作は、例えば、作業部500の上部にシリンダ等の伸縮部材を設けたり、作業部500の前方側上部又は後方側上部に作業部を昇降させるためのリンク機構を設けたりして実現することが可能である。
【0025】
また、本実施形態では、作業部500の昇降動作に連動して、補助整地部600も昇降動作を行うように構成されている。補助整地部600の昇降動作は、例えば、作業部500の昇降動作に連動して前方に引っ張られるワイヤ等(図示せず)を設け、当該ワイヤ等の引張力を利用して、支持アーム620(図2参照)を、支持軸610を中心として上方に回動させればよい。
【0026】
サイドフレーム510は、作業ロータ520を回転可能に支持するフレームである。作業ロータ520は、サイドフレーム510に対して回転可能に支持された爪軸(図示せず)に、複数の作業爪(耕耘爪)が設けられた構造を有する。本実施形態では、前輪300と後輪400との間に設けられた作業ロータ520が回転して複数の作業爪が圃場に作用することにより圃場の耕耘作業が行われる。
【0027】
シールドカバー530は、作業ロータ520の上方を覆うように、サイドフレーム510に対して固定される。シールドカバー530は、作業ロータ520によって跳ね上げられた土の上方への飛散を防ぐカバー部材である。シールドカバー530は、作業ロータ520の幅方向の全体にわたって設けられている。
【0028】
第1整地部材540は、作業ロータ520の後方を覆うように、シールドカバー530の後端に対して回動可能に連結される。第1整地部材540は、作業ロータ520によって耕された圃場の起伏を均す整地部材として機能するとともに、作業ロータ520によって跳ね上げられた土の後方への飛散を防ぐカバー部材としても機能する。本実施形態では平面視において、第1整地部材540の幅が、前端側(シールドカバー530に近い側)よりも後端側(第2整地部材550に近い側)の方が狭い構成となっている。
【0029】
第2整地部材550は、第1整地部材540の後端に対して回動可能に連結される。第2整地部材550は、作業ロータ520によって耕された圃場の起伏を均す整地部材として機能する。ただし、第2整地部材550は、必要に応じて省略することも可能である。
【0030】
補助整地部600は、支持軸610、支持アーム620及び第3整地部材630を含む。支持軸610は、一対の後輪フレーム230の間に架け渡され、後輪フレーム230に対して回動可能に軸支される。支持アーム620は、一端が支持軸610に固定され、他端が第3整地部材630に固定されることにより、第3整地部材630を支持する。
【0031】
第3整地部材630は、第2整地部材550と同様に、作業ロータ520によって耕された圃場の起伏を均す整地部材として機能する。本実施形態において、第3整地部材630は、中央整地部材630C、左整地部材630L及び右整地部材630Rを含む。左整地部材630L及び右整地部材630Rは、中央整地部材630Cに対して折り畳み可能な構成となっている。例えば、左整地部材630Lは、回動機構635を介して中央整地部材630Cと連結されており、中央整地部材630Cの上に重なるように折り畳むことが可能である。詳細な説明は省略するが、右整地部材630Rについても、左整地部材630Lと同様の構造を有している。
【0032】
図1に示すように、本実施形態では、中央整地部材630Cの幅が、一対の後輪400の中心線402の間の距離W1に略等しい。そのため、回動機構635を回動させて左整地部材630L及び右整地部材630Rをそれぞれ展開した場合(外側に広げた場合)、第3整地部材630の幅(作業幅)は、一対の後輪400の中心線402の間の距離W1よりも十分に広い。したがって、第3整地部材630は、後輪400の通過によって圃場に形成された車輪の跡(走行跡)を均平化することができる。さらに、本実施形態の第3整地部材630は、後輪400の車輪の走行跡を効率よく消すために、進行方向に向かって拡開する略V字形状の前端部を有する。この点については、後述する。
【0033】
なお、本実施形態では、支持軸610が回動して第3整地部材630が昇降動作を行う構成を例示したが、この例に限られるものではない。例えば、支持軸610を回動させるのではなく、例えば支持アーム620を2本のアーム部材で構成して平行リンク機構としてもよい。この場合、平行リンク機構を動作させることにより、第3整地部材630の昇降動作を実現することができる。
【0034】
[整地部材の構成]
図3は、本発明の第1実施形態の農作業機100における後輪400と第3整地部材630との位置関係を模式的に示す平面図である。具体的には、図3(A)~図3(C)は、それぞれ、右側の後輪400と第3整地部材630の右側端部との位置関係を示している。また、図4は、本発明の第1実施形態の農作業機100における第3整地部材630の構成を示す側面図である。具体的には、図4(A)は、農作業機100における中央整地部材630Cの側面図であり、図4(B)は、その変形例である。なお、図1に示した農作業機100と同じ部位については、同じ符号を用いて説明を省略する。また、ここでは第3整地部材630の右側端部に着目して説明を行い、同様の構造及び効果を有する左側端部についての説明は省略する。
【0035】
図3(A)は、図1に示した農作業機100における右側の後輪400と第3整地部材630の右側端部との位置関係を示している。図3(A)に示すように、第3整地部材630の前端は、内側に向かうほど後退する(すなわち、内側に向かうほど後ろに位置する)第1傾斜631(右整地部材630Rの前端)、及び、外側に向かうほど後退する(すなわち、外側に向かうほど後ろに位置する)第2傾斜632(中央整地部材630Cの前端)を有する。そして、本実施形態では、第1傾斜631と第2傾斜632とが隣接(連続)して鈍角を形成することにより、進行方向に向かって拡開する略V字形状の前端部が形成されている。なお、第1傾斜631と第2傾斜632との角度は、鈍角に限定されるものではなく、作業速度や土質に応じて適宜設定することが可能である。
【0036】
また、図4(A)に示すように、中央整地部材630Cは、側方から見ると、整地面633aに対して略垂直の前面633bを有する。代かき作業時に農作業機100が進行すると、圃場の泥土は、整地面633aで滞留すると共に前面633bに抱え込まれてゆく。すなわち、前面633bは、代かき作業時に圃場の泥土を受ける面として作用する。そして、代かき作業に伴い第3整地部材630が前方に移動すると、前面633bの前方で受け止められた泥土は、第3整地部材630の前端に形成された第1傾斜631及び第2傾斜632に沿って寄せられてゆき、轍等の圃場の凹凸を効率的に埋めてゆく。なお、前面633bは、第3整地部材630の前方に泥土を滞留させることができれば、必ずしも整地面633aに対して垂直でなくてもよく、任意の角度を有していてもよい。また、図4(A)に示す形状に限らず、例えば、図4(B)に示すように、整地面633afに対して略垂直の前面633bfを有する略L字状の中央整地部材630Cfを用いてもよい。
【0037】
以上のように、第3整地部材630は、前方に泥土を滞留させることが可能な構成となっているため、第3整地部材630が有する略V字形状の前端部では、第3整地部材630が前方に進むにつれて、圃場の泥土が第1傾斜631及び第2傾斜632に沿って流れる。すなわち、第3整地部材630の進行に応じて、第1傾斜631と第2傾斜632とが交差する部分(以下、「交点」と呼ぶ)に向かって圃場の泥土が集まる。したがって、第1傾斜631と第2傾斜632との交点近傍に後輪400の走行跡があれば、効率よく走行跡を泥土で埋めることができる。なお、本実施形態の農作業機100は、第3整地部材630が折り畳み式であるため、交点634は、中央整地部材630Cと右整地部材630Rの境界に位置する。
【0038】
本実施形態の農作業機100は、図3(A)に示すように、第1傾斜631と第2傾斜632との交点634が、後輪400の中心線402のほぼ延長線上に位置する。つまり、交点634は、後輪400の真後ろに位置する。したがって、略V字形状の前端部の中心が、後輪400によって形成された走行跡404の範囲内に位置するため、効率よく後輪400の走行跡404を埋めて均平化することができる。
【0039】
なお、本実施形態では、交点634が後輪400の中心線402のほぼ延長線上に位置する例を示したが、交点634が中心線402の延長線上にある必要はない。すなわち、交点634が、後輪400の走行跡404の範囲内(すなわち、平面視において、後輪400が通過する範囲内)にあれば、図3(A)に示す構成と同様の効果を奏する。
【0040】
以上のように、本実施形態の農作業機100は、平面視において、第3整地部材630の前端が、内側に向かうほど後退する第1傾斜631と、外側に向かうほど後退する第2傾斜632とを有する。これらの第1傾斜631と第2傾斜632とで形成される略V字形状の前端部の中心は、後輪400の走行跡404の範囲内に位置する。したがって、第3整地部材630が進行するにつれて走行跡404に圃場の泥土が集まり、効率良く走行跡404が消して圃場の均平性を向上させることができる。このように、本実施形態によれば、圃場の均平性能を向上させた農作業機100を提供することができる。
【0041】
(変形例1)
図3(B)は、第1実施形態の農作業機100の変形例を示している。具体的には、図3(B)に示す第3整地部材630aでは、第1傾斜631と第2傾斜632との交点634が、平面視において後輪400よりも内側(すなわち、後輪400の走行跡404よりも内側)に位置する。この場合であっても、右整地部材630Raの第1傾斜631及び中央整地部材630Caの第2傾斜632によって圃場の泥土は走行跡404を埋めつつ交点634近傍に集まるため、十分に走行跡404を均平化することができる。
【0042】
(変形例2)
図3(C)は、第1実施形態の農作業機100の変形例を示している。具体的には、図3(C)に示す第3整地部材630bでは、第1傾斜631と第2傾斜632との交点634が、平面視において後輪400よりも外側(すなわち、後輪400の走行跡404よりも外側)に位置する。この場合であっても、右整地部材630Rbの第1傾斜631及び中央整地部材630Cbの第2傾斜632によって圃場の泥土は走行跡404を埋めつつ交点634近傍に集まるため、十分に走行跡404を均平化することができる。
【0043】
(変形例3)
図1に示した農作業機100では、第3整地部材630が、中央整地部材630C、左整地部材630L及び右整地部材630Rの3つの部位によって構成されているが、この例に限られるものではない。例えば、第3整地部材630は、1つの部材で構成された一体物であってもよい。この場合は、第3整地部材630の左右の端部を、本実施形態で説明した略V字形状の前端部を有するように加工しておけばよい。
【0044】
<第2実施形態>
第2実施形態では、第3整地部材の形状を第1実施形態とは異なる形状とした例について説明する。
【0045】
図5は、本発明の第2実施形態の農作業機における後輪400と第3整地部材630c~630eとの位置関係を模式的に示す平面図である。具体的には、図5(A)~図5(C)は、それぞれ、右側の後輪400と第3整地部材630c~630eの右側端部との位置関係を示している。なお、図1に示した農作業機100と同じ部位については、同じ符号を用いて説明を省略する。また、ここでは第3整地部材630c~630eの右側端部に着目して説明を行い、同様の構造及び効果を有する左側端部についての説明は省略する。
【0046】
図5(A)に示すように、第3整地部材630cの前端は、第1実施形態と同様に、右整地部材630Rcに第1傾斜631を有し、中央整地部材630Ccに第2傾斜632を有する。第1実施形態の第3整地部材630と異なる点は、第3整地部材630cは、第1傾斜631と第2傾斜632との間に、進行方向に対して略垂直の平坦部636を有する点である。なお、図5(A)において、平坦部636の幅は、後輪400の幅(つまり、後輪400の走行跡404の幅)よりも広いが、この例に限られるものではない。例えば、平坦部636の幅は、後輪400の幅と略同一であってもよいし、後輪400の幅よりも狭くてもよい。
【0047】
図5(B)に示す第3整地部材630dの前端は、右整地部材630Rdの第1傾斜631と中央整地部材630Cdの第2傾斜632との間に、湾曲部637を有する。湾曲部637の曲率は任意であるが、第1傾斜631と第2傾斜632との間をなめらかに繋ぐように形成することが好ましい。
【0048】
図5(C)に示す第3整地部材630eの前端は、右整地部材630Reの第1傾斜631と中央整地部材630Ceの第2傾斜632との間に、第3傾斜638a、第4傾斜638b及び平坦部638cを有する。第3傾斜638aは、第1傾斜631よりも平坦部638cに対して急峻な角度を有する傾斜である。同様に、第4傾斜638bは、第2傾斜632よりも平坦部638cに対して急峻な角度を有する傾斜である。図5(C)に示す例では、平坦部638cは、後輪400の幅よりも若干狭い幅を有するが、この例に限られるものではない。
【0049】
以上のように、本実施形態においても、平面視において、第3整地部材630c~630eの前端が、内側に向かうほど後退する第1傾斜631と、外側に向かうほど後退する第2傾斜632とを有する。したがって、第3整地部材630c~630eが進行するにつれて走行跡404に圃場の泥土が集まり、効率良く走行跡404が消して圃場の均平性を向上させることができる。このように、本実施形態によれば、圃場の均平性能を向上させた農作業機を提供することができる。
【0050】
なお、図5(A)~図5(C)では、第3整地部材が、中央整地部材、左整地部材及び右整地部材の3つの部位によって構成された例を示したが、この例に限らず、第3整地部材は、1つの部材で構成された一体物であってもよい。
【0051】
<第3実施形態>
第3実施形態では、第3整地部材の形状を第1実施形態とは異なる形状とした例について説明する。
【0052】
図6は、本発明の第3実施形態の農作業機100aの構成を示す平面図である。具体的には、図6に示す農作業機100aは、補助整地部600fの構成として、第3整地部材630fを有する。なお、図1に示した農作業機100と同じ部位については、同じ符号を用いて説明を省略する。
【0053】
第3整地部材630fは、中央整地部材630Cf、左整地部材630Lf及び右整地部材630Rfを有する。このとき、本実施形態は、第3整地部材630fの前端が、内側に向かうほど後退する第1傾斜631を有し、第2傾斜632を有していない点で第1実施形態とは異なっている。具体的には、本実施形態の農作業機100aは、第3整地部材630fの左右両端に、後輪400よりも外側から後輪400よりも内側に亘って連続的に延在する第1傾斜631が設けられている。
【0054】
本実施形態によれば、第3整地部材630fの前方に滞留した泥土が第1傾斜631に沿って内側に向かって流れるため、後輪よりも外側の泥土が後輪よりも内側に向かって移動し、後輪400の走行跡を横切る。したがって、本実施形態の農作業機100aの構成であっても効率よく走行跡を泥土で埋めることができる。このように、本実施形態によれば、圃場の均平性能を向上させた農作業機100aを提供することができる。
【0055】
なお、本実施形態の第3整地部材630fは、農作業機100aの中心線付近が平坦部になっている例を示したが、この例に限らず、左側の第1傾斜631と右側の第1傾斜631とが農作業機100aの中心線上で交差する構成となっていてもよい。
【0056】
また、本実施形態の農作業機100aは、後輪400の後方(真後ろ)に左整地部材630Lf及び右整地部材630Rfを折り畳む回動機構635を配置する例を示したが、この例に限らず、回動機構635は、さらに内側に設けられていてもよい。
【0057】
以上説明したように、第1実施形態から第3実施形態に示した各農作業機に共通する事項は、後輪よりも外側の泥土を内側に向けて移動させ、後輪の通過によって形成される走行跡を泥土で埋めることである。すなわち、本発明の一実施形態の農作業機は、平面視において、第3整地部材の前端が、少なくとも後輪よりも外側に、内側に向かうほど後退する第1傾斜を有していればよい。
【0058】
以上、本発明について図面を参照しながら説明したが、本発明は前述の各実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、各実施形態の農作業機を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。さらに、前述した各実施形態と各変形例は、相互に矛盾がない限り適宜組み合わせが可能であり、各実施形態及び各変形例に共通する技術事項については、明示の記載がなくても各実施形態及び各変形例に含まれる。
【0059】
前述した各実施形態及び各変形例の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0060】
100…農作業機、101…圃場、200…フレーム、210…メインフレーム、220…前輪フレーム、230…後輪フレーム、300…前輪、400…後輪、402…中心線、404…走行跡、500…作業部、510…サイドフレーム、520…作業ロータ、530…シールドカバー、540…第1整地部材、550…第2整地部材、600…補助整地部、610…支持軸、620…支持アーム、630、630a~630f…第3整地部材、631…第1傾斜、632…第2傾斜、633a、633af…整地面、633b、633bf…前面、634…交点、635…回動機構、636…平坦部、637…湾曲部、638a…第3傾斜、638b…第4傾斜、638c…平坦部
図1
図2
図3
図4
図5
図6