(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】解析システム及び解析方法
(51)【国際特許分類】
G01P 13/00 20060101AFI20240412BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
G01P13/00 E
G01B11/00 B
(21)【出願番号】P 2020038043
(22)【出願日】2020-03-05
【審査請求日】2022-12-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.2019年6月12日付で、西尾 拓海 及び 新妻 実保子が、2019 IEEE 28th International Symposium on Industrial Electronics(ISIE)にて公開。 2.2019年9月3日付で、西尾 拓海、橋本 貴洋、上出 篤、池田 達哉 及び 新妻 実保子が、第37回日本ロボット学会学術講演会(RSJ2019)学会学術講演会予稿集において、出願に係る発明の内容を公開。 3.2019年9月4日付で、西尾 拓海、橋本 貴洋、上出 篤 及び 新妻 実保子が、第37回日本ロボット学会学術講演会(RSJ2019)学会学術講演会において、出願に係る発明の内容を公開。
(73)【特許権者】
【識別番号】599011687
【氏名又は名称】学校法人 中央大学
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100097238
【氏名又は名称】鈴木 治
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】新妻 実保子
(72)【発明者】
【氏名】西尾 拓海
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-346617(JP,A)
【文献】特開2019-049932(JP,A)
【文献】特開2000-046856(JP,A)
【文献】特開2003-022309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 13/00
G01B 11/00 ~ 11/30
G06T 1/00
G09B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定時間間隔毎に所定空間内における物体までの距離を測定する、測域センサと、
処理部と、
を備えた、解析システムであって、
前記処理部は、
異なる複数の期間のそれぞれにおける前記測域センサからの測定データに基づいて、前記複数の期間のそれぞれについて、前記所定時間間隔毎の各時刻における前記所定空間内の移動物体の中心位置及び速度を特定する、位置速度特定処理と、
前記複数の期間のそれぞれについて、前記各時刻での前記移動物体の前記中心位置及び前記速度に基づいて、前記各時刻のそれぞれにおける、前記所定空間を俯瞰視し格子状に細分化することにより定義されるセル配列における複数のセルのうち、少なくとも、不動物体が位置するセルを除く各セルに、前記各セルにおける前記移動物体の活動度合いを表す活動度重み値をそれぞれ設定する、重み値設定処理と、
前記複数の期間のそれぞれについて、前記セル毎に、前記各時刻での前記活動度重み値を積算することにより活動度重み積算値を得る、積算値算出処理と、
を行うように構成されて
おり、
前記重み値設定処理において、前記処理部は、前記各時刻のそれぞれについて、
前記移動物体が移動中であるか又は停止中であるかを特定し、
前記移動物体が移動中である場合は、前記移動物体の前記中心位置に近いセルほど高い前記活動度重み値が設定されるように、前記セル配列において前記移動物体の速度ベクトルに重なる中心線を有する扇形上にある各セルに、それぞれ0超の前記活動度重み値を設定し、
前記移動物体が停止中である場合は、前記移動物体の前記中心位置に近いセルほど高い前記活動度重み値が設定されるように、前記セル配列において前記移動物体の前記中心位置を中心とする円形上にある各セルに、それぞれ0超の前記活動度重み値を設定する、解析システム。
【請求項2】
前記処理部は、
前記複数の期間のうちのいずれか1つの期間について、前記セル配列における全部又は一部のセルの前記活動度重み積算値の平均値を算出することにより、基準平均値を得る、基準平均値算出処理と、
前記複数の期間のうちの2つ以上の期間のそれぞれについて、前記セル毎に、前記活動度重み積算値を前記基準平均値で割ることにより相対活動度値を得る、相対活動度値算出処理と、
をさらに行うように構成されている、請求項1に記載の解析システム。
【請求項3】
表示部をさらに備え
前記処理部は、
前記2つ以上の期間のそれぞれについて、前記セル配列の前記複数のセルのうち、前記不動物体が位置するセルを除く各セルを、それぞれ前記各セルの前記相対活動度値に予め関連付けられた色濃さ及び/又は色で表してなる、相対活動度地図を作成する、相対活動度地図作成処理と、
前記2つ以上の期間のうち少なくとも1つの期間における前記相対活動度地図を、前記表示部に表示させる、相対活動度地図表示処理と、
をさらに行うように構成されている、請求項2に記載の解析システム。
【請求項4】
前記処理部は、
前記セル配列の前記セル毎に、前記複数の期間のうちの第1期間における前記活動度重み積算値を、前記複数の期間のうちの第2期間における前記活動度重み積算値で割ることにより、活動度比を得る、活動度比算出処理
をさらに行うように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の解析システム。
【請求項5】
表示部をさらに備え
前記処理部は、
前記セル配列の前記複数のセルのうち、前記不動物体が位置するセルを除く各セルを、それぞれ前記各セルの前記活動度比に予め関連付けられた色濃さ及び/又は色で表してなる、活動度対比地図を作成する、活動度対比地図作成処理と、
前記活動度対比地図を、前記表示部に表示させる、活動度対比地図表示処理と、
をさらに行うように構成されている、請求項4に記載の解析システム。
【請求項6】
所定時間間隔毎に所定空間内における物体までの距離を測定する、測域センサと、
処理部と、
を備えた、解析システムを用いた、解析方法であって、
前記処理部が、異なる複数の期間のそれぞれにおける前記測域センサからの測定データに基づいて、前記複数の期間のそれぞれについて、前記所定時間間隔毎の各時刻における前記所定空間内の移動物体の中心位置及び速度を特定する、位置速度特定ステップと、
前記処理部が、前記複数の期間のそれぞれについて、前記各時刻での前記移動物体の前記中心位置及び前記速度に基づいて、前記各時刻のそれぞれにおける、前記所定空間を俯瞰視し格子状に細分化することにより定義されるセル配列における複数のセルのうち、少なくとも、不動物体が位置するセルを除く各セルに、前記各セルにおける前記移動物体の活動度合いを表す活動度重み値をそれぞれ設定する、重み値設定ステップと、
前記処理部が、前記複数の期間のそれぞれについて、前記セル毎に、前記各時刻での前記活動度重み値を積算することにより活動度重み積算値を得る、積算値算出ステップと、
を含
み、
前記重み値設定ステップにおいて、前記処理部は、前記各時刻のそれぞれについて、
前記移動物体が移動中であるか又は停止中であるかを特定し、
前記移動物体が移動中である場合は、前記移動物体の前記中心位置に近いセルほど高い前記活動度重み値が設定されるように、前記セル配列において前記移動物体の速度ベクトルに重なる中心線を有する扇形上にある各セルに、それぞれ0超の前記活動度重み値を設定し、
前記移動物体が停止中である場合は、前記移動物体の前記中心位置に近いセルほど高い前記活動度重み値が設定されるように、前記セル配列において前記移動物体の前記中心位置を中心とする円形上にある各セルに、それぞれ0超の前記活動度重み値を設定する、解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解析システム及び解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、センサを用いて環境地図を作成する技術がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、空間内の物体の位置や形状を把握できるに留まり、空間の使われ方を把握できるものではなかった。
【0005】
本発明は、空間の使われ方を把握することが可能になる、解析システム及び解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解析システムは、
所定時間間隔毎に所定空間内における物体までの距離を測定する、測域センサと、
処理部と、
を備えた、解析システムであって、
前記処理部は、
異なる複数の期間のそれぞれにおける前記測域センサからの測定データに基づいて、前記複数の期間のそれぞれについて、前記所定時間間隔毎の各時刻における前記所定空間内の移動物体の中心位置及び速度を特定する、位置速度特定処理と、
前記複数の期間のそれぞれについて、前記各時刻での前記移動物体の前記中心位置及び前記速度に基づいて、前記各時刻のそれぞれにおける、前記所定空間を俯瞰視し格子状に細分化することにより定義されるセル配列における複数のセルのうち、少なくとも、不動物体が位置するセルを除く各セルに、前記各セルにおける前記移動物体の活動度合いを表す活動度重み値をそれぞれ設定する、重み値設定処理と、
前記複数の期間のそれぞれについて、前記セル毎に、前記各時刻での前記活動度重み値を積算することにより活動度重み積算値を得る、積算値算出処理と、
を行うように構成されている。
【0007】
本発明の解析システムにおいて、
前記処理部は、
前記複数の期間のうちのいずれか1つの期間について、前記セル配列における全部又は一部のセルの前記活動度重み積算値の平均値を算出することにより、基準平均値を得る、基準平均値算出処理と、
前記複数の期間のうちの2つ以上の期間のそれぞれについて、前記セル毎に、前記活動度重み積算値を前記基準平均値で割ることにより相対活動度値を得る、相対活動度値算出処理と、
をさらに行うように構成されていると、好適である。
【0008】
本発明の解析システムは、
表示部をさらに備え
前記処理部は、
前記2つ以上の期間のそれぞれについて、前記セル配列の前記複数のセルのうち、前記不動物体が位置するセルを除く各セルを、それぞれ前記各セルの前記相対活動度値に予め関連付けられた色濃さ及び/又は色で表してなる、相対活動度地図を作成する、相対活動度地図作成処理と、
前記2つ以上の期間のうち少なくとも1つの期間における前記相対活動度地図を、前記表示部に表示させる、相対活動度地図表示処理と、
をさらに行うように構成されていると、好適である。
【0009】
本発明の解析システムにおいて、
前記処理部は、
前記セル配列の前記セル毎に、前記複数の期間のうちの第1期間における前記活動度重み積算値を、前記複数の期間のうちの第2期間における前記活動度重み積算値で割ることにより、活動度比を得る、活動度比算出処理
をさらに行うように構成されていると、好適である。
【0010】
本発明の解析システムは、
表示部をさらに備え
前記処理部は、
前記セル配列の前記複数のセルのうち、前記不動物体が位置するセルを除く各セルを、それぞれ前記各セルの前記活動度比に予め関連付けられた色濃さ及び/又は色で表してなる、活動度対比地図を作成する、活動度対比地図作成処理と、
前記活動度対比地図を、前記表示部に表示させる、活動度対比地図表示処理と、
をさらに行うように構成されていると、好適である。
【0011】
本発明の解析システムは、
前記重み値設定処理において、前記処理部は、前記各時刻のそれぞれについて、
前記移動物体が移動中であるか又は停止中であるかを特定し、
前記移動物体が移動中である場合は、前記移動物体の前記中心位置に近いセルほど高い前記活動度重み値が設定されるように、前記セル配列において前記移動物体の速度ベクトルに重なる中心線を有する扇形上にある各セルに、それぞれ0超の前記活動度重み値を設定し、
前記移動物体が停止中である場合は、前記移動物体の前記中心位置に近いセルほど高い前記活動度重み値が設定されるように、前記セル配列において前記移動物体の前記中心位置を中心とする円形上にある各セルに、それぞれ0超の前記活動度重み値を設定すると、好適である。
【0012】
本発明の解析方法は、
所定時間間隔毎に所定空間内における物体までの距離を測定する、測域センサと、
処理部と、
を備えた、解析システムを用いた、解析方法であって、
前記処理部が、異なる複数の期間のそれぞれにおける前記測域センサからの測定データに基づいて、前記複数の期間のそれぞれについて、前記所定時間間隔毎の各時刻における前記所定空間内の移動物体の中心位置及び速度を特定する、位置速度特定ステップと、
前記処理部が、前記複数の期間のそれぞれについて、前記各時刻での前記移動物体の前記中心位置及び前記速度に基づいて、前記各時刻のそれぞれにおける、前記所定空間を俯瞰視し格子状に細分化することにより定義されるセル配列における複数のセルのうち、少なくとも、不動物体が位置するセルを除く各セルに、前記各セルにおける前記移動物体の活動度合いを表す活動度重み値をそれぞれ設定する、重み値設定ステップと、
前記処理部が、前記複数の期間のそれぞれについて、前記セル毎に、前記各時刻での前記活動度重み値を積算することにより活動度重み積算値を得る、積算値算出ステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、空間の使われ方を把握することが可能になる、解析システム及び解析方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る解析システムを概略的に示す、概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る解析方法における測定ステップを説明するための、説明図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る解析方法の概略的なフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態に係る解析方法における位置速度特定ステップ(位置速度特定処理)を説明するための、説明図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る解析方法における重み値設定ステップ(重み値設定処理)を説明するための、説明図である。
【
図6】2つの異なる期間のそれぞれの相対活動度地図の例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しつつ、本発明に係る解析システム及び解析方法の実施形態を例示説明する。
各図において共通する構成要素には同一の符号を付している。
【0016】
〔解析システム1〕
まず、
図1及び
図2を参照して、本発明の解析方法を使用し得る、本発明の一実施形態に係る解析システム1を説明する。解析システム1は、所定空間S(
図2)の解析をするように構成されている。具体的に、解析システム1は、所定空間Sが移動物体Dによってどのように使われるかを解析するように、構成されている。解析システム1のユーザは、例えば、所定空間Sの解析者、所有者、又は、使用者(人又は移動型ロボット)等が、挙げられる。
図1は、解析システム1の構成を概略的に示している。
図1に示すように、解析システム1は、1つ又は複数の測域センサ2と、解析装置3と、を備えている。
図2は、所定空間Sを俯瞰視した様子を示している。
本明細書において、「移動物体(D)」とは、人又は動物等、所定空間(S)内を移動する物体(言い換えれば、所定空間(S)を使用する物体)を指す。また、「不動物体(E)」とは、壁又は家具等、所定空間(S)内を移動しない物体を指す。
解析システム1の解析対象とする所定空間Sとしては、任意でよいが、例えば、建物(オフィスビルや商業施設等)内のエリア、あるいは、野外のエリア等が、挙げられる。
【0017】
(測域センサ2)
測域センサ2は、所定検出範囲内にある物体(不動物体E及び移動物体D)までの距離を測定するように構成されている。測域センサ2の所定検出範囲は、2次元の範囲に設定されると好適であり、例えば、測域センサ2の指向方向2a(
図2)を中心とする所定中心角(例えば270°)、かつ、所定半径(例えば30m)を有する、扇形の範囲に設定されることができる。測域センサ2は、例えば、レーザによって所定検出範囲内にある物体までの距離を測定するように構成された、LRF(Laser Range Finder)から構成されることができる。ただし、測域センサ2の所定検出範囲は、3次元の範囲に設定されてもよい。
解析システム1においては、当該1つ又は複数の測域センサ2の所定検出範囲を合わせた範囲が、解析システム1の解析対象とする所定空間Sの全体を含むように、当該1つ又は複数の測域センサ2が設置されると、好適である。
図2の例においては、1つの測域センサ2が、その所定検出範囲が所定空間Sの全体を含むように、設置されている。
測域センサ2は、その指向方向2aが水平方向に平行となるように設置されると好適である。測域センサ2は、測定対象とする移動物体Dを測定できるような高さに設置されることが好ましい。例えば、測定対象とする移動物体Dが人である場合、測域センサ2は、地面から1.0~1.3m程度の高さに設置されると好適である。
【0018】
測域センサ2は、所定時間間隔(例えば0.1秒)毎に、所定検出範囲内にある物体までの距離を測定し、その測定結果として、時系列の測定データを出力する。
測定データは、物体を点群で表す点群データであると、好適であり、2次元の点群データであると、特に好適であるが、3次元の点群データでもよい。
測域センサ2による測定データは、解析装置3に出力される。例えば、測域センサ2は、測定データを、測定中又は測定後に、解析装置3へ通信(有線通信及び/又は無線通信)により送信することにより、測定データを解析装置3に出力するようにしてもよい。あるいは、測域センサ2が、測定中又は測定後に、測定データを測域センサ2に接続された外部記憶装置(USB、SDカード等)に格納し、その後、当該外部記憶装置を解析装置3に接続することにより、測定データを解析装置3に出力するようにしてもよい。
【0019】
(解析装置3)
解析装置3は、
図1に示すように、処理部31と、通信部32と、記憶部33と、入力部34と、表示部35と、を有する。解析装置3は、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、携帯端末、専用装置等、任意のコンピュータから構成されることができる。解析装置3は、1つのコンピュータで構成されてもよいし、複数のコンピュータで構成されてもよい。
【0020】
処理部31は、例えば1つ又は複数のCPUから構成され、記憶部33に記憶された解析プログラム等のプログラムを実行することにより、通信部32、記憶部33、入力部34、及び表示部35を含む、解析装置3の全体を制御しながら、後述する物体抽出分類処理、位置速度特定処理、重み値設定処理、積算値算出処理、積算値使用処理等の処理を実行する。処理部31による処理の詳細については、後に説明する。
【0021】
通信部32は、測域センサ2との間で通信(有線通信及び/又は無線通信)を行うように構成されている。通信部32が、測域センサ2から測定データを受信すると、処理部31は、その測定データを記憶部33に格納する。
なお、解析装置3は、通信部32を備えていなくてもよい。
【0022】
記憶部33は、例えば1つ又は複数のROM、1つ又は複数のRAM、及び/又は、外部記憶装置(USB、SDカード等)等から構成され、処理部31が実行するための解析プログラム等のプログラム、測域センサ2からの測定データ、処理部31の算出結果等、様々な情報を記憶する。
【0023】
入力部34は、例えばキーボード、マウス、及び/又は、押しボタン等から構成され、ユーザからの入力を受け付ける。
表示部35は、例えば液晶パネル等から構成され、後述する相対活動度地図(
図6(a)、
図6(b))、活動度対比地図(
図7)等、様々な情報を表示する。
なお、入力部34及び表示部35は、タッチパネルを構成してもよい。
【0024】
〔解析方法〕
つぎに、
図2~
図7を参照して、本発明の一実施形態に係る解析方法を説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る解析方法の概略的なフローチャートである。以下では、上述した
図1及び
図2の例の解析システム1を用いる場合について説明するが、
図1及び
図2の例とは異なる解析システム1を用いて、本発明の解析方法を実施することもできる。
本実施形態に係る解析方法は、測定ステップS1、物体抽出分類ステップS2、位置速度特定ステップS3、重み値設定ステップS4、積算値算出ステップS5、及び、積算値使用ステップS6を含む。測定ステップS1は、1つ又は複数の測域センサ2が行う。それ以外のステップS2~S6は、解析装置3の処理部31が、記憶部33に記憶された解析プログラムを実行することにより、行う。なお、積算値使用ステップS6は実施しなくてもよい。
以下、各ステップについて説明する。
【0025】
-測定ステップ(S1)-
測定ステップS1では、1つ又は複数の測域センサ2が、所定時間間隔(例えば0.1秒)毎に、所定空間S内(具体的には、所定空間Sの全体を含む1つ又は複数の所定検出範囲内)における物体(不動物体E及び移動物体D)までの距離を測定する。
測定ステップS1では、1つ又は複数の測域センサ2が、異なる複数の期間のそれぞれにわたって、あるいは、1つの期間にわたって、所定時間間隔毎の測定を行う。
測域センサ2の測定により得られた所定時間間隔毎の時系列の測定データは、測定中又は測定後に、通信により、又は、外部記憶装置を介して、解析装置3へ出力される。
一方、解析装置3側では、通信部32が通信により測定データを測域センサ2から受信すると、又は、測定データが格納された外部記憶装置が解析装置3に接続されると、処理部31が、その測定データを取得する。処理部31は、取得した測定データを、記憶部33に格納してもよい。
【0026】
なお、処理部31は、複数の測域センサ2からの測定データを取得する場合、以下のステップS2~S6において、当該複数の測域センサ2からの測定データどうしを合同して使用する。
【0027】
処理部31は、以下のステップS2~S6において、異なる複数の期間(以下、便宜のため、「複数の期間G」と表記する。)のそれぞれにおける1つ又は複数の測域センサ2からの測定データを用いる。処理部31が用いる、異なる複数の期間Gのそれぞれにおける測定データとしては、それぞれ、測定ステップS1において1つ又は複数の測域センサ2が異なる複数の期間のそれぞれにおいて測定することにより得られる測定データのうち、いずれか1つの期間の測定データの一部又は全部を用いてもよいし、あるいは、それぞれ、測定ステップS1において1つ又は複数の測域センサ2が1つの期間において測定することにより得られる測定データの別々の部分を用いてもよい。
解析装置3が用いる、異なる複数の期間Gのそれぞれにおける測定データに関し、「異なる複数の期間G」とは、任意でよいが、例えば、異なる複数の日における同じ時間帯(例えば、水曜日の13時~14時と日曜日の13時~14時)、あるいは、同じ日における異なる複数の時間帯(例えば、水曜日における9時~10時と13時~14時)等が、挙げられる。当該異なる複数の期間Gの時間長さどうしは、同じであると好適であるが、異なっていてもよい。
【0028】
以下に説明する例では、
図2に示すように、測定データによって表される空間Sには、2次元のxy直交座標系が定義されている。x軸及びy軸は、それぞれ、水平方向に平行である。ただし、測定データによって表される空間Sには、任意の座標系が定義されてよい。
【0029】
-物体抽出分類ステップ(S2)-
物体抽出分類ステップS2において、処理部31は、測定ステップS1で取得した、異なる複数の期間Gのそれぞれにおける測域センサ2からの測定データに基づいて、当該複数の期間Gのそれぞれについて、所定時間間隔毎の各時刻における所定空間S内の1つ又は複数の物体を抽出し、抽出した各物体を、それぞれ不動物体E又は移動物体Dに分類する、物体抽出分類処理を行う。
所定空間S内の物体は、それぞれある程度の大きさがあるため、例えば、測定データが点群データである場合、各時刻での測定データにおいて、所定空間S内の物体は、点群として現れる。その場合、物体を抽出するにあたって、処理部31は、例えば、階層的クラスタリングによって、互いに隣接する複数の点どうしの距離が所定閾値以下であるような点群を、1つの物体として抽出してもよい。
また、物体を分類するにあたって、処理部31は、例えば、測定ステップS1の測定期間中において移動しなかった物体を不動物体Eに分類し、測定ステップS1の測定期間中において少なくとも一時的に移動した物体を移動物体Dに分類するようにしてもよい。あるいは、処理部31は、例えば、測定ステップS1の測定期間のうち上記複数の期間G中において移動しなかった物体を不動物体Eに分類し、測定ステップS1の測定期間のうち上記複数の期間G中において少なくとも一時的に移動した物体を移動物体Dに分類するようにしてもよい。
【0030】
-位置速度特定ステップ(S3)-
位置速度特定ステップS3において、処理部31は、測定ステップS1で取得した、異なる複数の期間Gのそれぞれにおける測域センサ2からの測定データに基づいて、当該複数の期間Gのそれぞれについて、所定時間間隔毎の各時刻における所定空間S内の移動物体Dの中心位置DO及び速度vを特定する、位置速度特定処理を行う。
例えば、移動物体Dの中心位置DOを特定するにあたって、処理部31は、例えば、物体抽出分類ステップS2において抽出された移動物体Dを構成する点群を1つのかたまりとして観たときにおける重心位置又は平均位置を、移動物体Dの中心位置DOとして特定してもよい。
ここで、処理部31が、移動物体Dの速度vを特定する手法の一例を、つぎの式(1)及び
図4を参照しつつ、説明する。ここでは、所定時間間隔毎の各時刻を順次番号付けしたときの、時刻N(Nは整数)での速度v(v
N)を求める場合について、説明する。まず、xy直交座標系において、直近の5つの時刻N~N-4のそれぞれにおける移動物体Dの中心位置(中心座標)DO(DO
N~DO
N-4)どうしの間の4点の平均位置(平均座標)ADO
N~ADO
N-3を求め、その後、これら4点の平均位置(平均座標)ADO
N~ADO
N-3どうしの間のユークリッド距離d
N~d
N-3[m]を求める。これらのユークリッド距離d
N~d
N-3を用いて、式(1)により、時刻Nでの速度v
N[m/秒]を求めることができる。
【数1】
式(1)において、H[秒]は、上記所定時間間隔(例えば、0.1秒)である。
【0031】
-重み値設定ステップ(S4)-
重み値設定ステップS4において、処理部31は、複数の期間Gのそれぞれについて、位置速度特定ステップS3で特定した、所定時間間隔毎の各時刻での移動物体Dの中心位置DO及び速度vに基づいて、各時刻のそれぞれにおける、セル配列Aにおける複数のセルCのうち、少なくとも、不動物体Eが位置するセルCを除く各セルCに、当該各セルCにおける活動度重み値をそれぞれ設定する、重み値設定処理を行う。
セル配列Aは、所定空間Sを俯瞰視し格子状に細分化することにより定義されるものである。参考のため、
図2に、セル配列Aの一部A’を、拡大して示す。各セルCは、正方形をなしていると好適である。各セルCの一辺の長さは、実際の空間における所定長さ(例えば、10cm)に対応する。
なお、本例において、xy各セルCの座標は、xy直交座標系において、(p,q)として表される。ここで、p、qは、それぞれ、整数であると好適である。
各セルCにおける活動度重み値は、それぞれのセルCにおける移動物体Dの活動度合い(使用度合い)を表す値であり、言い換えれば、それぞれのセルCが移動物体Dによってどれだけ使用されているかを表す値である。活動度重み値が高いほど、活動度合いが高いことを意味する。
処理部31は、セル配列Aの各セルCのうち、不動物体Eが位置するセルCには、活動度重み値を設定しないか、あるいは、0の活動度重み値を設定すると、好適である。不動物体Eが位置するセルCは、物体抽出分類ステップS2によって特定される不動物体Eの位置によって特定される。
【0032】
ここで、処理部31が行う重み値設定処理における、活動度重み値の設定方法の一例を、
図5を参照しつつ説明する。
図5(a)及び
図5(b)は、それぞれ、セル配列Aの一部A’の各セルCに、活動度重み値を設定する様子を示している。
図5(a)及び
図5(b)のそれぞれの右側の図における各セルC内の数値は、それぞれ活動度重み値である。
図5(a)及び
図5(b)に示すように、処理部31は、セル配列Aのうち、各移動物体Dの中心位置DOを含むセルC及びその周辺のセルCに、それぞれ0超の活動度重み値を設定し、それ以外のセルCに、0の活動度重み値を設定する。移動物体Dは、実際には、中心位置DOの1点だけでなく、その周辺にも存在しているため、このように周辺のセルCにも0超の活動度重み値を設定することで、移動物体Dの実際の大きさを考慮して、活動度重み値を設定することができる。
【0033】
処理部31は、所定時間間隔毎の各時刻のそれぞれについて、当該時刻での速度vに基づいて、当該時刻において移動物体Dが移動中であるか又は停止中であるかを特定し、特定した結果に依って活動度重み値の設定方法を変えると、好適である。移動中であるか又は停止中であるかの特定方法としては、例えば、当該時刻での速度vが所定速度(例えば、0.1m/秒)以上の場合は移動中であると判断し、当該時刻での速度vが所定速度未満の場合は停止中であると判断するものが、挙げられる。
【0034】
例えば、当該時刻において移動物体Dが移動中である場合は、
図5(a)に示すように、セル配列Aにおいて移動物体Dの速度ベクトルFに重なる中心線を有する扇形上にある各セルCに、それぞれ0超の活動度重み値を設定すると、好適である。ここで、扇形の「中心線」とは、扇形の中心角にわたる角度範囲のうちの中心角度位置において、扇形の中心点(頂点)から弧まで延在する、線分を指す。速度ベクトルFの方向は、例えば、上述の平均位置ADO
Nと平均位置ADO
N-3(
図4)とを結んだ線の方向として特定することができる。扇形の中心線の長さと移動物体Dの速度ベクトルFの長さとは、同じであってもなくてもよく、ひいては、扇形の中心線と移動物体Dの速度ベクトルFとは、少なくとも一部において重なっていればよい。当該扇形は、厳密な扇形でなくてもよく、扇形に近い形状(略扇形)でもよい。当該扇形の中心点(頂点)は、移動物体Dの中心位置DOに位置する。当該扇形の半径は、移動物体の速度v(具体的には、速度の大きさ(速度ベクトルFの絶対値))に依存するように設定すると好適であり、例えば、速度v(速度の大きさ)が大きいほど長く設定すると好適である。当該扇形の中心角は、速度vに依らない所定角度に設定してもよいし、あるいは、速度vに依存する所定角度に設定してもよい。当該扇形上の各セルCには、移動物体Dの中心位置DOに近いセルCほど高い活動度重み値が設定されるように、活動度重み値を設定すると、好適である。移動物体Dの中心位置DOを含むセルCに設定する活動度重み値は、速度vに依存するように設定すると好適であり、例えば、速度v(速度の大きさ)が小さいほど、高く設定すると、好適である。
上記のことを実現するための具体的な手法としては、例えば、
図5(a)の左図に示すように、移動物体Dの中心位置DOを回転中心とする所定角度範囲α内における、一定角度毎の各角度位置において、それぞれ、所定数の単位重み点Bを半径方向に沿って一定間隔毎に配列し、各セルC内における単位重み点Bの数を、それぞれのセルCの活動度重み値として設定するものが挙げられる。上記所定角度範囲αは、上述の扇形の中心角に相当する。また、移動物体の中心位置DOから、当該中心位置DOから半径方向に最も離れた位置にある単位重み点Bまでの距離が、上述の扇形の半径に相当する。各角度位置に配列する単位重み点Bの数、及び/又は、各角度位置に配列する単位重み点Bどうしの間の間隔は、速度v(速度の大きさ)に依存するように設定すると好適である。
【0035】
また、当該時刻において移動物体Dが停止中である場合は、
図5(b)に示すように、セル配列Aにおいて移動物体Dの中心位置DOを中心とする円形上にある各セルCに、それぞれ0超の活動度重み値を設定すると、好適である。
当該円形は、厳密な円形でなくてもよく、円形に近い形状(略円形)でもよい。当該円形上の各セルには、移動物体Dの中心位置DOに近いセルCほど高い活動度重み値が設定されるように、活動度重み値を設定すると、好適である。
上記のことを実現するための具体的な手法としては、例えば、
図5(b)の左図に示すように、移動物体Dの中心位置DOを回転中心とする全周における、一定角度毎の各角度位置において、それぞれ、所定数の単位重み点Bを半径方向に沿って一定間隔毎に配列し、各セルC内における単位重み点Bの数を、それぞれのセルCの活動度重み値として設定するものが挙げられる。移動物体の中心位置DOから、当該中心位置DOから半径方向に最も離れた位置にある単位重み点Bまでの距離が、上述の円形の半径に相当する。
【0036】
なお、処理部31は、当該時刻において移動物体Dが停止中である場合、さらに、移動物体Dが滞在状態にあるか又は非滞在状態にあるかを判断し、判断した結果に依って、移動物体Dの中心位置DOを中心とする上記円形上にある各セルCの活動度重み値を変えると、好適である。滞在状態にあるか又は非滞在状態にあるかの判断方法としては、例えば、移動物体Dが直近の所定時間(例えば5秒)以上にわたって停止している場合は滞在状態にあると判断し、移動物体Dが直近の当該所定時間未満のみにわたって停止している場合は非滞在状態にあると判断するものが、挙げられる。
例えば、処理部31は、移動物体Dが滞在状態にあると判断した場合、上記円形上の各セルCのうち一部又は全部のセルCの活動度重み値を、移動物体Dが非滞在状態にあると判断した場合に比べて、異なるように(例えば小さくなるように)設定すると、好適である。上記円形上の各セルCのうち一部又は全部のセルCの活動度重み値を、移動物体Dが非滞在状態にあると判断した場合に比べて、小さくなるように設定する場合は、当該円形上の各セルCにおける後述の活動度重み積算値W(t, p, q) が、他のセルCに比べて、顕著に高くなるのを抑制でき、それにより、例えば、後述の相対活動度地図(
図6)や活動度対比地図(
図7)が見やすい地図となる。
【0037】
-積算値算出ステップ(S5)-
積算値算出ステップS5において、処理部31は、複数の期間Gのそれぞれについて、セル配列AのセルC毎に、重み値設定ステップS4で設定した各時刻での活動度重み値を、積算することにより、活動度重み積算値W(t, p, q) を得る、積算値算出処理を行う。
なお、重み値設定ステップS4において各時刻での活動度重み値を設定した後に、積算値算出ステップS5を行ってもよいし、あるいは、時刻毎に重み値設定ステップS4及び積算値算出ステップS5を繰り返すように、重み値設定ステップS4及び積算値算出ステップS5を並行して行ってもよい。
【0038】
積算値算出ステップS5(積算値算出処理)によれば、ある期間について、セル配列AのセルC毎に活動度重み積算値W(t, p, q) を得ることにより、当該期間内において、セル配列A(ひいては所定空間S)内の各セルCが、移動物体Dによってどれだけ使用されたかを把握することが可能になるので、所定空間S内の場所毎の使われ方を把握することが可能になる。
また、積算値算出ステップS5(積算値算出処理)によれば、複数の期間Gのそれぞれについて、セル配列AのセルC毎に活動度重み積算値W(t, p, q) を得ることにより、複数の期間Gのそれぞれにおける所定空間Sの使われ方どうしを比較することが可能になり、言い換えれば、期間によって所定空間Sの使われ方がどう違うかを把握することが可能になる。
また、積算値算出ステップS5(積算値算出処理)によれば、所定空間S内の人のIDを特定しないため、個人情報に関するセキュリティ上の問題やプライバシー侵害の問題もなく、また、測定期間中において所定空間S内の人の心理的負担によって当該人の行動に影響が出ることも抑制できる。
積算値算出ステップS5で得られた結果は、例えば、後述の積算値使用ステップS6においてさらなる解析のために使用されてもよいし、あるいは、そのまま使用されてもよい。
積算値算出ステップS5で得られた結果をそのまま使用する場合の使用例としては、例えば、移動型ロボット(掃除ロボット等)によって環境地図として使用される例が挙げられる。この場合、移動型ロボットは、当該環境地図と現在位置とを照らし合わせながら、現在位置付近のセルの活動度重み積算値W(t, p, q)に応じて、人等との衝突を避けるべく、速度の調整や移動経路の構築等をするようにしてもよい。 また、複数の期間Gのそれぞれについて、セル配列AのセルC毎の活動度重み積算値W(t, p, q) を得ておくことにより、移動型ロボットは、期間に応じて適切な環境地図を用いることができる。
【0039】
-積算値使用ステップ(S6)-
積算値使用ステップS6において、処理部31は、積算値算出ステップS5で得られた、複数の期間GのそれぞれについてのセルC毎の活動度重み積算値W(t, p, q)を使用して、さらなる解析をする、積算値使用処理を行う。
処理部31は、積算値使用ステップS6において、活動度重み積算値W(t, p, q)を使用した任意の解析を行ってよいが、例えば、後述する相対活動度解析ステップS61及び活動度対比解析ステップS62のうち少なくともいずれか一方を行うと、好適である。
ただし、処理部31は、積算値使用ステップS6を行わなくてもよい。
以下、相対活動度解析ステップS61及び活動度対比解析ステップS62について、1つずつ説明する。
【0040】
<相対活動度解析ステップ(S61)>
積算値使用ステップS6において、処理部31は、ユーザから入力部34を介して入力される所定の指示に応じて、あるいは、積算値算出ステップS5の後に自動的に、相対活動度解析ステップS61を行うようにされていると、好適である。
相対活動度解析ステップS61は、基準平均値算出ステップS611、相対活動度算出ステップS612、相対活動度地図作成ステップS613、及び、相対活動度地図表示ステップS614を含む。なお、相対活動度地図作成ステップS613及び相対活動度地図表示ステップS614は、実施しなくてもよい。
以下、各ステップについて説明する。
【0041】
≪基準平均値算出ステップ(S611)≫
基準平均値算出ステップS611において、処理部31は、複数の期間Gのうちのいずれか1つの期間nについて、セル配列Aにおける全部又は一部のセルCの活動度重み積算値W(t, p, q)(W
n(t, p, q))の平均値を算出することにより、基準平均値W'
a,nを得る、基準平均値算出処理を行う。
基準平均値W'
a,nは、例えば、つぎの式(2)により表される。
【数2】
式(2)において、iとjはそれぞれxy直交座標系における任意のx軸座標であり、i≦jである。kとlはそれぞれxy直交座標系における任意のy軸座標であり、k≦lである。
【0042】
≪相対活動度算出ステップ(S612)≫
相対活動度算出ステップS612において、処理部31は、複数の期間Gのうちの任意の2つ以上の期間(以下、便宜のため、「2つ以上の期間G’」と表記する。)のそれぞれについて、セルC毎に、活動度重み積算値W(t, p, q)を、基準平均値算出ステップS611で得られた基準平均値W'
a,nで割ることにより、相対活動度値ω'(t, p, q)を得る、相対活動度値算出処理を行う。
上記2つ以上の期間G’のうちのいずれか1つの期間mにおける相対活動度値ω'(t, p, q)(ω'
m(t, p, q))は、当該期間mにおける活動度重み積算値W(t, p, q)(W
m(t, p, q))を用いて、つぎの式(3)により表される。
ω'
m(t, p, q) = W
m(t, p, q) / W'
a,n ・・・(3)
例えば、複数の期間Gのうちの期間1及び期間2のそれぞれについて、セルC毎に、活動度重み積算値W(t, p, q)を、期間2の基準平均値W'
a,2で割る場合、期間1における相対活動度値ω'(t, p, q)(ω'
1(t, p, q))は、期間1における活動度重み積算値W(t, p, q)(W
1(t, p, q))を用いて、つぎの式(4)により表され、また、期間2における相対活動度値ω'(t, p, q)(ω'
2(t, p, q))は、期間2における活動度重み積算値W(t, p, q)(W
2(t, p, q))を用いて、つぎの式(5)により表される。
ω'
1(t, p, q) = W
1(t, p, q) / W'
a,2 ・・・(4)
ω'
2(t, p, q) = W
2(t, p, q) / W'
a,2 ・・・(5)
式(4)及び式(5)において、期間2の基準平均値W'
a,2は、例えば、つぎの式(6)により表される。
【数3】
【0043】
相対活動度算出ステップS612(相対活動度算出処理)によれば、セルC毎に活動度重み積算値W(t, p, q)を基準平均値W'a,nで割るため、上述した積算値算出ステップS5(積算値算出処理)の効果に加えて、例えば後述の相対活動度地図作成ステップS613において相対活動度地図を作成する場合に、1つの期間におけるセル配列A(ひいては所定空間S)内の各セルCどうしの活動度合い(使用度合い)の違いをより明確に把握することができるようになる。よって、所定空間S内の場所毎の使われ方を、より明確かつ簡単に把握することが可能になる。
また、相対活動度算出ステップS612(相対活動度算出処理)によれば、2つ以上の期間G’のそれぞれにおいて、セルC毎に活動度重み積算値W(t, p, q)を共通の基準平均値W'a,nで割るため、これら2つ以上の期間G’の各セルCの相対活動度値ω'(t, p, q)の基準をそろえることができる。よって、例えば、上記式(4)、(5)で表される、期間1のあるセルCの相対活動度値ω'1(t, p, q)と期間2のあるセルCの相対活動度値ω'2(t, p, q)とは、互いに値が同じである場合、互いに活動度合い(使用度合い)が同じであることを意味する。それにより、これら2つ以上の期間G’の各セルCの相対活動度値ω'(t, p, q)どうしを比較することにより、これら2つ以上の期間G’のそれぞれにおける所定空間Sの使われ方どうしを正確かつより簡単に比較することが可能になり、言い換えれば、期間によって所定空間Sの使われ方がどう違うかを把握することがより簡単になる。
相対活動度算出ステップS612で得られた結果は、例えば、後述の相対活動度地図作成ステップS613において相対活動度地図の作成のために使用されてもよいし、あるいは、そのまま使用されてもよい。
相対活動度算出ステップS612で得られた結果をそのまま使用する場合の使用例としては、例えば、前述のように、移動型ロボット(掃除ロボット等)によって環境地図として使用される例が挙げられる。
【0044】
≪相対活動度地図作成ステップ(S613)、相対活動度地図表示ステップ(S614)≫
相対活動度地図作成ステップS613において、処理部31は、2つ以上の期間G’のそれぞれについて、セル配列Aの複数のセルCのうち、不動物体Eが位置するセルCを除く各セルCを、相対活動度算出ステップS612で得られた、それぞれのセルCの相対活動度値ω'(t, p, q)に予め関連付けられた色濃さ及び/又は色で表してなる、相対活動度地図を作成する、相対活動度地図作成処理を行う。
ここで、「相対活動度値ω'(t, p, q)に予め関連付けられた色濃さ及び/又は色」とは、相対活動度値ω'(t, p, q)の1点の値毎に異なる色濃さ及び/又は色を予め関連付ける場合だけでなく、相対活動度値ω'(t, p, q)の値の範囲毎に異なる色濃さ及び/又は色を予め関連付ける場合も含む。
相対活動度地図作成ステップS613では、相対活動度地図において、セル配列Aの各セルCのうち、不動物体Eが位置する各セルCを、それぞれ不動物体Eに予め関連付けられた色濃さ及び/又は色で表すと、好適である。この場合、不動物体Eに予め関連付けられた色濃さ及び/又は色は、相対活動度値ω'(t, p, q)に予め関連付けられた色濃さ及び/又は色とは異なると、視覚的に不動物体Eを識別しやすいので、好適である。あるいは、相対活動度地図作成ステップS613では、不動物体Eをより見やすくするために、相対活動度地図において、セル配列Aの各セルCのうち、不動物体Eが位置する各セルC又はその近辺に、別途用意された不動物体Eを表す図形又は画像を表示してもよい。
相対活動度地図表示ステップS614において、処理部31は、相対活動度地図作成ステップS613で得られた2つ以上の期間G’の相対活動度地図のうち、少なくとも1つ(好適には2つ以上)の期間における相対活動度地図を、表示部35に表示させる、相対活動度地図表示処理を行う。
処理部31は、ユーザから入力部34を介して入力される所定の指示に応じて、相対活動度地図表示ステップS614を行うようにされていると、好適である。
【0045】
図6は、
図2に示すようなあるオフィス内の同じ所定空間Sを測定することにより得られた、2つの異なる期間(期間1及び期間2)のそれぞれの相対活動度地図の例を示している。
図6(a)は、期間1の相対活動度地図(相対活動度地
図1)を示しており、
図6(b)は、期間2の相対活動度地図(相対活動度地
図2)を示している。期間1は、通常期の14時~15時である。期間2は、繁忙期の14時~15時である。
図6(a)及び
図6(b)において、一部の不動物体Eが位置する各セルCは、濃い黒で表されており、また、その他の不動物体Eとしての「机1」、「机2」、「机3」が位置する各セルCには、別途用意された図形が表示されている。
図6(a)及び
図6(b)において、不動物体Eが位置するセルCを除く、各セルCの相対活動度値ω'(t, p, q)は、値毎に予め対応付けられた、同一色(例えば緑)の色濃さで表されている。具体的は、相対活動度値ω'(t, p, q)が高いほど、濃くなるように、表されている。
期間1の相対活動度地図と期間2の相対活動度地図とを見比べることにより、期間2(
図6(b)。繁忙期。)は、期間1(
図6(a)。通常期。)に比べて、活動度合いが全体的に多いことが判る。また、期間1(
図6(a)。通常期。)は、期間2(
図6(b)。繁忙期。)に比べて、相対活動度地図のうち机2より上側の領域の活動度合いが多いことが判る。
【0046】
このように、相対活動度地図作成ステップS613(相対活動度地図作成処理)及び相対活動度地図表示ステップS614(相対活動度地図表示処理)によれば、上述した相対活動度算出ステップS612(相対活動度算出処理)の効果に加えて、1つの期間におけるセル配列A(ひいては所定空間S)内の各セルCどうしの活動度合い(使用度合い)の違いを、視覚的に、把握することができるようになる。よって、所定空間S内の場所毎の使われ方を、視覚的に、把握することが可能になる。
また、相対活動度地図作成ステップS613(相対活動度地図作成処理)及び相対活動度地図表示ステップS614(相対活動度地図表示処理)によれば、上述した相対活動度算出ステップS612(相対活動度算出処理)の効果に加えて、2つ以上の期間G’のそれぞれにおける所定空間Sの使われ方どうしを、視覚的に、比較することが可能になり、言い換えれば、期間によって所定空間Sの使われ方がどう違うかを、視覚的に、把握することができる。
相対活動度地図は、例えば、当該所定空間Sのレイアウトの評価又は設計等のために使用することができる。
【0047】
<活動度対比解析ステップ(S62)>
積算値使用ステップS6において、処理部31は、ユーザから入力部34を介して入力される所定の指示に応じて、あるいは、積算値算出ステップS5の後に自動的に、活動度対比解析ステップS62を行うようにされていると、好適である。
活動度対比解析ステップS62は、活動度比算出ステップS621、活動度対比地図作成ステップS622、及び、活動度対比地図表示ステップS623を含む。なお、活動度対比地図作成ステップS622及び活動度対比地図表示ステップS623は、実施しなくてもよい。
以下、各ステップについて説明する。
【0048】
≪活動度比算出ステップ(S621)≫
活動度比算出ステップS621において、処理部31は、セル配列AのセルC毎に、複数の期間Gのうちの第1期間における活動度重み積算値W(t, p, q)(W1(t, p, q))を、複数の期間Gのうちの第2期間における活動度重み積算値W(t, p, q)(W2(t, p, q))で割ることにより、活動度比θ(t, p, q)を得る、活動度比算出処理を行う。
活動度比θ(t, p, q)は、つぎの式(7)により表される。
θ(t, p, q) = W1(t, p, q) / W2(t, p, q) ・・・(7)
【0049】
活動度比算出ステップS621(活動度比算出処理)によれば、上述した積算値算出ステップS5(積算値算出処理)の効果に加えて、セルC毎に、第1期間の活動度重み積算値W(t, p, q)と第2期間の活動度重み積算値W(t, p, q)との違いを、1つの値(活動度比θ(t, p, q))によって簡単に把握することができるので、第1期間の情報と第2期間の情報とを見比べる必要無しに、第1期間及び第2期間のそれぞれにおける所定空間Sの使われ方どうしを正確かつより簡単に比較することが可能になり、言い換えれば、期間によって所定空間Sの使われ方がどう違うかを把握することがより簡単になる。
活動度比算出ステップS621で得られた結果は、例えば、後述の活動度対比地図作成ステップS622において活動度対比地図の作成のために使用されてもよいし、あるいは、そのまま使用されてもよい。
活動度比算出ステップS621で得られた結果をそのまま使用する場合の使用例としては、例えば、前述のように、移動型ロボット(掃除ロボット等)によって環境地図として使用される例が挙げられる。
【0050】
≪活動度対比地図作成ステップ(S622)、活動度対比地図表示ステップ(S623)≫
活動度対比地図作成ステップS622において、処理部31は、セル配列Aの複数のセルCうち、不動物体Eが位置するセルCを除く各セルCを、活動度比算出ステップS621で得られた、それぞれのセルCの活動度比θ(t, p, q)に予め関連付けられた色濃さ及び/又は色で表してなる、活動度対比地図を作成する、活動度対比地図作成処理を行う。
ここで、「活動度比θ(t, p, q)に予め関連付けられた色濃さ及び/又は色」とは、活動度比θ(t, p, q)の1点の値毎に異なる色濃さ及び/又は色を予め関連付ける場合だけでなく、活動度比θ(t, p, q)の値の範囲毎に異なる色濃さ及び/又は色を予め関連付ける場合も含む。
活動度対比地図作成ステップS622では、活動度対比地図において、セル配列Aの複数のセルCのうち、不動物体Eが位置する各セルCを、それぞれ不動物体Eに予め関連付けられた色濃さ及び/又は色で表すと、好適である。この場合、不動物体Eに予め関連付けられた色濃さ及び/又は色は、活動度比θ(t, p, q)に予め関連付けられた色濃さ及び/又は色とは異なると、視覚的に不動物体Eを識別しやすいので、好適である。あるいは、活動度対比地図作成ステップS622では、不動物体Eをより見やすくするために、活動度対比地図において、セル配列Aの複数のセルCのうち、不動物体Eが位置する各セルC又はその近辺に、別途用意された不動物体Eを表す図形又は画像を表示してもよい。
活動度対比地図表示ステップS623において、処理部31は、活動度対比地図作成ステップS622で得られた活動度対比地図を、表示部35に表示させる、活動度対比地図表示処理を行う。
処理部31は、ユーザから入力部34を介して入力される所定の指示に応じて、活動度対比地図表示ステップS623を行うようにされていると、好適である。
【0051】
図7は、
図2に示すようなあるオフィス内の所定空間Sを期間1及び期間2において測定することにより得られた、活動度対比地図の例を示している。期間1は、通常期の14時~15時である。期間2は、繁忙期の14時~15時である。
図7において、一部の不動物体Eが位置する各セルCは、濃い黒で表されており、また、その他の不動物体Eとしての「机1」、「机2」、「机3」が位置する各セルCには、別途用意された図形が表示されている。
図7において、不動物体Eが位置するセルCを除く、各セルCの活動度比θ(t, p, q)は、値毎に予め対応付けられた、色濃さ及び色で表されている。具体的は、活動度比θ(t, p, q)が1.0の場合は、白で表され、活動度比θ(t, p, q)が1.0超の場合は、活動度比θ(t, p, q)が高いほど、濃い赤になるように表され、活動度比θ(t, p, q)が1.0未満の場合は、活動度比θ(t, p, q)が低いほど、濃い青になるように表されている。
活動度対比地図を見ることにより、期間2(青。繁忙期。)は、期間1(赤。通常期。)に比べて、全体的に活動度合いが2倍以上多いことが判る。
【0052】
このように、活動度対比地図作成ステップS622(活動度対比地図作成処理)及び活動度対比地図表示ステップS623(活動度対比地図表示処理)によれば、上述した活動度比算出ステップS621(活動度比算出処理)の効果に加えて、セルC毎に、第1期間の活動度重み積算値W(t, p, q)と第2期間の活動度重み積算値W(t, p, q)との違いを、1つの地図(活動度対比地図)によって、視覚的に、簡単に把握することができるので、第1期間の情報と第2期間の情報とを見比べる必要無しに、第1期間及び第2期間のそれぞれにおける所定空間Sの使われ方どうしを正確かつより簡単に比較することが可能になり、言い換えれば、期間によって所定空間Sの使われ方がどう違うかを把握することがより簡単になる。
活動度対比地図は、例えば、当該所定空間Sのレイアウトの評価又は設計等のために使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の解析システム及び解析方法は、例えば、建物(オフィスビルや商業施設等)内のエリアあるいは野外のエリア等の任意の空間の使われ方を解析するために使用されると好適なものである。
【符号の説明】
【0054】
1 解析システム
2 測域センサ
2a 指向方向
3 解析装置
31 処理部
32 通信部
33 記憶部
34 入力部
35 表示部
A セル配列
A’ セル配列の一部
C セル
D 移動物体
DO 移動物体の中心位置
E 不動物体
F 速度ベクトル
S 空間