(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】電極保持具及び電極反応装置
(51)【国際特許分類】
B22F 9/14 20060101AFI20240412BHJP
H05H 1/24 20060101ALN20240412BHJP
【FI】
B22F9/14 Z
H05H1/24
(21)【出願番号】P 2020053356
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】597029228
【氏名又は名称】京石産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145953
【氏名又は名称】真柴 俊一郎
(72)【発明者】
【氏名】土井 善夫
(72)【発明者】
【氏名】岡本 晃來
(72)【発明者】
【氏名】森永 智
(72)【発明者】
【氏名】西村 一誠
(72)【発明者】
【氏名】依田 眞一
(72)【発明者】
【氏名】真下 茂
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-089134(JP,A)
【文献】特開2004-062089(JP,A)
【文献】特開2014-167880(JP,A)
【文献】特開2014-101530(JP,A)
【文献】特開2003-075678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 9/00-9/30
H05H 1/00-1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の支持体と、
前記支持体の一端部側に備えられた本体と、及び
前記本体との間で電極を挟持するための挟持体とを含
み、
前記本体における挟持体と相対する面及び前記挟持体における本体と相対する面の両方に、1以上の切欠きを有する突起である挟持部を備えており、
前記本体の挟持部及び前記挟持体の挟持部の少なくとも一方が一定の間隔を空けて複数備えられており、
前記本体の挟持部と前記挟持体の挟持部とが嵌合する、電極保持具。
【請求項2】
前記切欠きの形状が三角形であることを特徴とする、請求項
1に記載の電極保持具。
【請求項3】
1対の電極を軸方向において水平に対向して保持する、請求項1
又は2に記載の電極保持具少なくとも2つと、
前記保持具を保持し、前記保持具の少なくとも1つを前記電極保持具に保持される電極の軸方向に移動させる駆動部と、並びに
電力供給部と、
を備える電極反応装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極保持具及びこれを用いた電極反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電極反応は、電極と電解質溶液との界面で生じる、電気化学的な反応の総称であり、水の電気分解に代表される分解反応や、金属メッキに代表される析出反応等幅広い用途で使用されている。特に近年、電極反応を応用した微粒子の製造が試みられている。金属や半導体、化合物の微粒子、特にナノサイズの粒子は、触媒、光触媒、磁性材料、電池材料、光電材料、医療材料として、環境、IT、印刷、医療などさまざまな分野で産業化が進められている材料である。ナノ粒子は、バルク体、粉体に比べて、表面積、反応性、触媒特性、磁性などに優れている。特に、貴金属類の微粒子は希少かつ高価であるが、触媒や電子材料、医療材料分野において他に替わることができない性質を有しているため特に高い需要が存在する。したがって、貴金属の微粒子を効率良く製造できれば、より付加価値の高い微粒子をより安価で提供できるようになる。特許文献1は、液中において金属電極間にパルス放電を行うことによりナノ粒子を得る方法を開示している。
【0003】
特許文献1の方法において、液体外から1対の金属電極を液体中に斜め方向に差し込み、各電極がV字を描きながら対向するように配置されている。特許文献1では、これら金属電極を用いてパルス放電を行い、通電時に電極を構成する金属を瞬間的にプラズマ化させ、停電時に当該プラズマを瞬間的に冷却することでナノ粒子を製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方法では、ナノ粒子の生成に伴い、各金属電極が対向した面(V字の先端部)において蒸発し、それにより電極間の距離が開いていく。電極が一定の距離以上に離れると放電できなくなるため、電極の蒸発にともない各電極をV字の先端部に向けて軸方向に移動させ電極間の距離を調整しつつ、パルス放電を継続しなければならない。しかしながら、これら金属電極を正確に対向させつつ、電極間の距離及び対向する各電極の面積を一定に保つことは困難を伴う。
【0006】
例えば、対向する電極の軸方向の形状に歪みがある場合や、対向する電極にわずかな振動等が加わることにより電極の対向面にずれが生じてしまった場合、金属電極の対向面全体で均一に放電されず、電極の一部が放電蒸発せずに残ってしまう場合がある。
図15は、特許文献1の方法によりナノ粒子を製造する際に、電極同士の対向面にずれが生じた結果、金属電極の蒸発が均一に進行せず、一部に溶け残りが生じた電極の写真である。このように金属電極の溶け残りが生じると、電極面積を一定に保つことができないため電流密度が一定とならず、安定したプラズマ形成が出来ないため、均一な粒子径を有するナノ粒子を得る事が困難となる場合がある。このような問題を解決するには、対向する各電極の軸あわせをミクロン単位で行う必要があるが、このような軸あわせは実験室レベルにおいて可能であっても、工業的に大量生産する場合には現実的ではない。したがって、このような問題を解決可能な技術が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、特定構造の電極保持具及びこれを用いた電極反応装置を使用することにより前記課題が解決できることを見いだし、本発明に至った。すなわち本発明は、
[1]棒状の支持体と、
前記支持体の一端部側に備えられた本体と、及び
前記本体との間で電極を挟持するための挟持体とを含む、電極保持具、
[2]前記本体における挟持体と相対する面及び前記挟持体における本体と相対する面の少なくとも一方に、1以上の切欠きを有する突起である挟持部を備えたことを特徴とする、[1]に記載の電極保持具、
[3]前記切欠きの形状が三角形であることを特徴とする、[2]に記載の電極保持具、
[4]前記本体及び前記挟持体の両方に前記挟持部が備えられており、前記本体の挟持部及び前記挟持体の挟持部の少なくとも一方が一定の間隔を空けて複数備えられており、
前記本体の挟持部と前記挟持体の挟持部とが嵌合することを特徴とする、[2]又は[3]に記載の電極保持具、並びに
[5]1対の電極を軸方向において水平に対向して保持する、[1]~[4]のいずれかに記載の電極保持具少なくとも2つと、
前記保持具を保持し、前記電極保持具の少なくとも1つを前記保持具に保持される電極の軸方向に移動させる駆動部と、並びに
電力供給部と、
を備える電極反応装置、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電極保持具及びこれを用いた電極反応装置を使用することにより、 一対の電極をより正確に対向させることができ、電極反応の効率をより高めることが出来る。また、本発明の別態様において、複数の電極を一度に使用して電極反応を行うことができ、さらに高い効率で電極反応を進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の電極保持具の一形態を示す(a)正面図、(b)平面図及び(c)底面図である。
【
図2】
図1の電極保持具からネジを外した状態を示す(a)正面図、(b)平面図及び(c)底面図である。
【
図3】
図1の電極保持具を用いて電極を保持した一形態を示す(a)正面図及び(b)平面図である。
【
図4】挟持部を備えた本発明の電極保持具の一形態を示す(a)正面図、(b)側面図、(c)挟持体の平面図及び(d)本体の底面図である。
【
図5】
図4の電極保持具を用いて電極を保持した一形態を示す(a)正面図及び(b)平面図である。
【
図6】挟持部を備えた本発明の電極保持具の別形態を示す(a)正面図、(b)側面図、(c)本体の底面図及び(d)挟持体の平面図である。
【
図7】
図6の電極保持具を用いて電極を保持した一形態を示す(a)正面図及び(b)平面図である。
【
図8】挟持部を備えた本発明の電極保持具のさらに別形態を示す(a)正面図、(b)側面図、(c)本体の底面図及び(d)挟持体の平面図である。
【
図9】
図8の電極保持具を用いて電極を保持した一形態を示す(a)正面図及び(b)平面図である。
【
図10】三角形の切欠きを有する挟持部を備えた本発明の電極保持具の一形態を示す(a)正面図、(b)側面図、(c)本体の底面図及び(d)挟持体の平面図である。
【
図11】
図10の電極保持具を用いて電極を保持した形態を示す正面図である。
【
図12】(a)複数の挟持部を備えた本体の底面図及び(b)挟持体の平面図並びに(c)前記本体及び挟持体の正面図である。
【
図13】
図12の電極保持具を、(a)及び(b)本体及び挟持体の挟持部を嵌合させた際の正面図、(c)前記本体と挟持体とで円柱形の棒状電極1本を挟持した一態様を示す図面並びに(d)前記本体と挟持体とで円柱形の棒状電極3本を挟持した一態様を示す図面である。
【
図14】本発明の電極保持具を備えた電極反応装置の一形態を示す図面である。
【
図15】特許文献1の方法を実施した後の電極の一例を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照しながら、具体的な実施形態に基づいて本発明を説明する。なお、図面及び以下の説明はあくまでも本発明の一形態を説明するものであり、本発明の範囲に何ら制限を加えるものではない。また、以下において、「上下」、「左右」及び「前後」というときには、各対応する図面において表示されている方向を意味する。
【0011】
1.電極保持具1
本発明の電極保持具1の具体的な一形態が
図1に示されている。
図1の電極保持具1は、棒状の支持体11と、前記支持体11の一端部側に備えられた本体12と、及び前記本体12との間で電極を挟持するための挟持体13とを含む。
【0012】
支持体11の形状は、電極反応装置に固定でき、その一端部側において後述する本体12を接続できる形状であれば特に制限されない。このような形状の例として、例えば、三角柱、四角柱、五角柱及び六角柱等の多角形柱形や、楕円を含む円形柱形の棒状が挙げられる。
図1において支持体11は、円柱形の棒で表されている。支持体11の太さに特に制限は無く、使用する電極の大きさ、電極反応の条件等に基づいて適宜変更可能である。例えば、支持体11の太さを、その断面積が好ましくは0.1~5.0cm
2、より好ましくは0.2~4.0cm
2、さらに好ましくは0.3~3.5cm
2となるような太さにしてよい。支持体11の長さについても特に制限は無く、電極反応の条件等に基づいて適宜変更可能である。例えば、支持体11の長さを、好ましくは5.0~15.0cm、より好ましくは6.0~12.0cm、さらに好ましくは6.3~10.0cmにしてよい。
【0013】
支持体11の素材に特に制限は無く、例えば、ステンレス、アルミ、鉄及び鉄鋼等の金属材料、アクリル、塩化ビニル及びポリエステル等のプラスチック材料等が挙げられる。なお、電極保持具1自体に通電性を持たせることで、電源と電極保持具1とを接続する事により、保持具に保持された電極と電源とを接続する必要がなくなるため、ステンレス等の通電性を有する金属素材により支持体11を形成することがより好ましい。
【0014】
支持体11には、必要に応じて、支持体11を電極反応装置に固定するための固定部111を備えてもよい。
図1において、固定部111は、支持体11の上側端部付近に備えられている。
図1における固定部111は、支持体11の直径よりも大きな直径を有するリング状の突起として備えられている。固定部111の1箇所においてネジ穴112が空けられており、ネジ穴112は支持体11と電極反応装置、例えば後述する駆動部とをネジ締結して固定する際に用いられる。
【0015】
本体12は、支持体11の一端部側に備えられる。本体12の形状に特に制限は無く、後述する挟持体13と共に電極を挟持できる形状であれば特に制限されない。本体12の具体的な形状として、例えば、その平面方向の形状が、三角形、四角形、五角形及び六角形等の多角形の形状を有する平板又はブロックや、楕円を含む円形の形状を有する平板又はブロックであってよい。
図1において本体12は、その平面方向の形状が四角形である厚めの平板として表されている。本体12の大きさも特に制限は無く、使用する電極の大きさ、電極反応の条件等に基づいて適宜変更可能である。例えば、本体12を平面方向から見たときの面積を、好ましくは2~30cm
2、より好ましくは4~28cm
2、さらに好ましくは6~26cm
2となるような大きさにしてよい。上記のような面積にする事で、1個のみならず複数の電極をより容易に保持する事ができる。
【0016】
本体12の素材に特に制限は無く、例えば、ステンレス、アルミ、鉄及び鉄鋼等の金属材料、アクリル、塩化ビニル及びポリエステル等のプラスチック材料等が挙げられる。なお、電極保持具1自体に通電性を持たせることで、電源と電極保持具1とを接続する事により、保持具に保持された電極と電源とを接続する必要がなくなるため、ステンレス等の通電性を有する金属素材により本体12を形成することがより好ましい。
【0017】
本体12は支持体11の一端部側に備えられる。ここで、「一端部側」とは、支持体11のどちらか一方の端部だけで無く、本体12と挟持体13とによる電極の保持に支障を及ぼさない程度の端部付近の領域も意味する。
図1において、本体12は支持体11の下側端部に備えられている。支持体11と本体12とが接続される位置に特に制限は無い。例えば、
図1において、支持体11は、本体12のほぼ中央に接続されているが、必要に応じてこの位置を調整することが可能である。また、
図1において、支持体11と本体12とは、支持体11の軸方向と本体12の平面方向との角度がほぼ垂直になるように接続されている。当該角度は、支持体11を電極反応装置に固定でき、本体12と挟持体13とで電極を挟持して、対となる2つの電極保持具1にて電極を水平方向に対向できる角度であることを条件として自由に調整可能である。
【0018】
挟持体13は、本体12との間で電極を挟持する部材である。挟持体13の形状に特に制限は無く、前述の本体12と共に電極を保持できる形状であれば特に制限されない。挟持体13の具体的な形状として、例えば、その平面方向の形状が、三角形、四角形、五角形及び六角形等の多角形の形状を有する平板又はブロックや、楕円を含む円形の形状を有する平板又はブロックであってよい。
図1において挟持体13は、その平面方向の形状が四角形である厚めの平板として表されている。挟持体13の大きさも特に制限は無く、使用する電極の大きさ、電極反応の条件等に基づいて適宜変更可能である。例えば、挟持体13を平面方向から見たときの面積を、好ましくは2~30cm
2、より好ましくは4~28cm
2、さらに好ましくは6~26cm
2となるような大きさにしてよい。上記のような面積にする事で、1個のみならず複数の電極をより容易に保持する事ができる。なお、電極をより確実に保持するために、本体12の平面形状及び平面方向の面積と挟持体13の平面形状及び平面方向の面積とを同一にすることがより好ましい。
【0019】
挟持体13の素材に特に制限は無く、例えば、ステンレス、アルミ、鉄及び鉄鋼等の金属材料、アクリル、塩化ビニル及びポリエステル等のプラスチック材料等が挙げられる。なお、電極保持具1自体に通電性を持たせることで、電源と電極保持具1とを接続する事により、保持具に保持された電極と電源とを接続する必要がなくなるため、ステンレス等の通電性を有する金属素材により挟持体13を形成することがより好ましい。
【0020】
挟持体13は、本体12に固定されていてもよいし、本体12と着脱自在に固定できるようにしてもよい。前者の場合は、例えば、本体12と挟持体13とをいずれか1箇所において蝶番により接続してもよい。後者の場合には、例えば、
図2に示すように、本体12にネジ穴121と挟持体13にネジ穴131とを複数設け、電極を挟持する際には、
図1に示すようにネジ14を用いて本体12と挟持体13とをネジ締結してもよい。
図1では、平面方向の形状が四角形の本体12及び挟持体13の四隅に開けられた4つのネジ穴を通してネジ14にて締結されている。ネジ穴を開ける場合、その位置は、電極を保持する際に過度に邪魔にならない事を条件として、特に制限されない。幅広い電極の形状及び大きさに容易に対応可能となり、また電極反応後に清掃がより容易となるため、挟持体13と本体12とを着脱自在にすることがより好ましい。
【0021】
本体12と挟持体13との対向するそれぞれの面は平面であってよい。このように、それぞれの面を平面とすることにより、1又は2以上の電極を挟持してより容易に固定できる。
図3は、このような本体12と挟持体13との対向するそれぞれの面が平面である電極保持具1により、四角形柱状の棒状電極3本を挟持した態様を示している。
【0022】
しかしながら、本体12と挟持体13との対向するそれぞれの面が平面である場合、電極の位置を調整しなければならない場合がある。そこで、本体12及び挟持体13の少なくとも一方に、1以上の切欠きを有する突起である挟持部122及び/又は挟持部132を備えてもよい。このような挟持部122及び/又は挟持部132を備えることにより、本体12と挟持体13との間に電極を保持する場合の位置調整の手間を最小限に省く事ができる。切欠きの大きさ、形状及び数等を変化させる事により、1つの電極保持具1にて2以上の電極を一度に保持する事も可能である。
【0023】
図4にこのような挟持部132を有する電極保持具1が示されている。
図4の電極保持具1は、挟持体13における本体12と相対する面に挟持部132を備えている。挟持部132は、挟持体13の中央に平面方向の形状が挟持体13より小さい四角形の突起の形で備えられている。なお、
図4において挟持部は挟持体13のみに備えられているが、挟持体13に備えずに本体12のみに挟持部を備えても良い。挟持部132はその正面方向中央に前記突起を前後方向に貫通する半円形の切欠きNを有している。なお、切欠きの位置、形状及び深さは、使用する電極の形状、大きさ並びに電極反応の種類及び条件により適宜変更可能である。一方、本体12における挟持体13と対向する面には挟持体が設けられておらず、平面状である。
【0024】
図5は、
図4に示す電極保持具1を用いて円柱形の棒状電極1本を保持した場合の一態様を示している。挟持部132の切欠きNにより円柱形の棒状電極Eの一端部側が保持されており、平面状の本体12と前記挟持部132との間で棒状電極Eが保持されている。一端部側で固定された電極Eは、本体12及び挟持体13から前後方向に飛び出すように固定されている。円柱形の棒状電極Eは、前記半円の切欠きNの方向に沿って保持されるため、棒状電極Eの位置合わせの時間を最小限に抑える事ができる。
【0025】
図6には、さらに、挟持部122及び132を有する電極保持具1が示されている。
図6の電極保持具1は、本体12における挟持体13と相対する面に挟持部122を、挟持体13における本体12と相対する面に挟持部132を備えている。これら挟持部122及び132は、本体12及び挟持体13の中央に平面方向の形状が本体12及び挟持体13よりも小さい四角形の突起の形で備えられている。これら挟持部122及び132はその正面方向中央に前記突起を前後方向に貫通する半円形の切欠きNをそれぞれ有している。挟持部122の半円形の切欠きの位置、形状及び深さと挟持部132の半円形の切欠きの位置、形状及び深さとは、本体12と挟持体13とを合わせた際に正面方向からみて円形の貫通孔となるように調整されている。なお、切欠きの位置、形状及び深さは、使用する電極の形状、大きさ並びに電極反応の種類及び条件により適宜変更可能である。また、挟持部122の切欠きNの正面方向から見た位置と、挟持部132の切欠きNの正面方向から見た位置とをずらしてもよい。
【0026】
図7は、
図6に示す電極保持具1を用いて円柱形の棒状電極1本を保持した場合の一態様を示している。挟持部122の切欠きNと挟持部132の切欠きNとが合わさってできた前記円形の貫通孔に、当該貫通孔とほぼ同じ形状及び断面積を有する円柱形の棒状電極Eが挟持されている。円柱形の棒状電極Eは、前記円形の貫通孔の方向に沿って保持されるため、棒状電極Eの位置合わせの時間を最小限に抑える事ができる。
【0027】
また、
図8は、挟持部122と挟持部132とに、複数(
図8においては3本)の半円形の切欠きを有する電極保持具1が示されている。
図8の電極保持具1は、本体12における挟持体13と相対する面に挟持部122を、挟持体13における本体12と相対する面に挟持部132を備えている。これら挟持部122及び132は、本体12及び挟持体13の中央に平面方向の形状が本体12及び挟持体13よりも小さい四角形である突起の形で備えられている。これら挟持部122及び132は前記突起を前後方向に貫通する半円形の切欠きNを3つ有している。挟持部122の半円形の切欠きの位置、形状及び深さと挟持部132の半円形の切欠きの位置、形状及び深さとは、本体12と挟持体13とを合わせた際に正面方向からみて円形の孔となるように調整されている。なお、切欠きの位置、形状及び深さは、使用する電極の形状、大きさ並びに電極反応の種類及び条件により適宜変更可能である。また、切欠きの数は、電極反応の条件及び使用する電極の数等に応じて適宜増減可能である。さらに、挟持部122の切欠きNの正面方向から見た位置と、挟持部132の切欠きNの正面方向から見た位置とをずらしてもよい。
【0028】
図9は、
図8に示す電極保持具1を用いて円柱形の棒状電極3本を保持した場合の一態様を示している。挟持部122の切欠きNと挟持部132の切欠きNとが合わさってできた複数の前記円形の貫通孔に、当該貫通孔とほぼ同じ形状及び断面積を有する円柱形の棒状電極Eが貫通孔の数に応じた数だけ挟持されている。円柱形の棒状電極Eは、前記円形の貫通孔の方向に沿って保持されるため、棒状電極Eの位置合わせの時間を最小限に抑える事ができる。
【0029】
なお、切欠きの形状を三角形にすることがより好ましい。切欠きの形状を三角形にする事により、保持される電極の形状、大きさ及び個数の幅をより広げる事ができる。
図10にこのような三角形の切欠きを有する挟持部122及び132を有する電極保持具1が示されている。
図10の電極保持具1は、本体12における挟持体13と相対する面に挟持部122を、挟持体13における本体12と相対する面に挟持部132を備えている。これら挟持部122及び132は、本体12及び挟持体13の中央に平面方向の形状が本体12及び挟持体13よりも小さい四角形である突起の形で備えられている。挟持部122はその正面方向中央に前記突起を前後方向に貫通する三角形の切欠きNを有している。また、挟持部132はその正面方向中央に前記突起を前後方向に貫通する三角形(逆三角形)の切欠きNを有している。挟持部122の三角形の切欠きの位置、形状及び深さと、挟持部132の三角形(逆三角形)の切欠きの位置、形状及び深さとは、ほぼ同じになるようにしてある。
【0030】
なお、
図10における挟持部122における三角形の切欠きの深さ及び頂点の角度と、挟持部132における三角形(逆三角形)の切欠きの深さ及び頂点の角度とが同じである。しかしながら、使用する電極の形状等により、深さ及び角度は自由に変更可能である。
図10における三角形の切欠きは挟持部122と挟持部132とにそれぞれ1つずつ備えられているが、前述のように複数の三角形の切欠きを備えてもよい。また、前述のように、本体12又は挟持体13のいずれか一方のみに挟持部122又は132を備えてもよい。さらに、挟持部122の切欠きNの正面方向から見た位置と、挟持部132の切欠きNの正面方向から見た位置とをずらしてもよい。
【0031】
図11は、
図10に示す電極保持具1を用いて棒状電極を保持した場合の一態様を示している。
図11(a)に示すように2つの三角形の切欠きが合わさってできた菱形の空間Rと同じ形状及び断面積を有する棒状電極1本を保持できる。さらに、挟持部122における三角形の切欠きNと挟持部132における三角形(逆三角形)の切欠きNとにより棒状電極を上下から挟み込む事が可能である。したがって、
図11(b)に示すように前記菱形の形状と異なる形状(例えば、円形柱状)の電極や、
図11(c)に示すように前記空間Rの断面積よりも大きな断面積を有する四角形柱状の棒状電極を保持する事も可能である。また、
図11(d)に示すように、複数の棒状電極を一度に保持する事も可能である。
【0032】
本体12及び挟持体13の両方に挟持部122及び132を備える場合、本体部12及び挟持体13の挟持部122及び132の少なくとも1方が一定の間隔を空けて複数備えられており、本体12の挟持部122と挟持体13の挟持132とが嵌合するようにすることがより好ましい。このような形態について、
図12を用いて説明する。
【0033】
図12(a)は、三角形の切欠きを有する突起である挟持部122を4つ(挟持部122a、b、c及びd)備えた本体12の平面図であり、
図12(b)は同じく三角形の切欠きを有する突起である挟持部132を3つ(挟持部132a、b及びc)備えた挟持体13の平面図である。挟持部122a、b、c及びdは、平面方向から見て長方形の突起であり、一定の間隔を空けて並列している。同様に、挟持部132a、b及びcも、平面方向から見て長方形の突起であり、一定の間隔を空けて並列している。各挟持部122a、b、c及びd並びに挟持部132a、b及びcは、その正面方向中央に三角形の切欠きを有している。
図12(c)は、これら本体12と挟持体13とを有する電極保持具1の正面図である。本体12の各挟持部(挟持部122a、b、c及びd)及び挟持体13の各挟持部(挟持部132a、b及びc)の大きさ並びに三角形の切欠きの形、深さ及び頂点の角度はほぼ同一である。
【0034】
本体12に備えられた各挟持部122の幅はL1であり、各挟持部122間の幅はL2である。一方、挟持体13に備えられた各挟持部132の幅はL3であり、挟持部132間の幅はL4である。本体12と挟持体13とは、ネジ穴121位及び131を通じてネジ14にて締結される。挟持部122の幅L1は、挟持部132間の幅L4と比較するとわずかに小さい幅となっている。また、挟持部132の幅L3は、挟持部122間の幅L2と比較するとわずかに小さい幅となっている。本体12と挟持体13とを
図12(a)と(b)のように横に並べたとき、挟持部122の位置と挟持部132の位置とが互い違いになっている。
【0035】
本体12と挟持体13とをネジ締結することにより、本体12の挟持部122b及びcが、それぞれ挟持体13の挟持部132aと132bの間隙及び挟持部132bと132cの間隙に嵌合する。また、挟持体13の挟持部132a、b及びcが、それぞれ本体12の挟持部122aと122bの間隙、挟持部122bと122cとの間隙及び挟持部122cと122dの間隙に嵌合する。なお、本発明における「嵌合」とは、形状があったものをはめ合わせる事を意味する。また、「形状が合う」とは、例えば前記のような挟持部122の形状(凸形状)と複数の挟持部132間の形状(凹形状)とが一致する場合を含む事はもちろん、本体12と挟持体13を合わせた際に、電極の位置合わせが困難となる程度にまで本体12が挟持体13に対して動くことがない程度に凸形状と凹形状とが異なる場合、具体的には凸部の幅が凹部の幅よりもわずかに小さい場合も含まれる。
【0036】
このように本体12の挟持部122と挟持体13の挟持部132とを互いにかみ合わせ、
図13(a)及び(b)に示すように本体12と挟持体13との距離dを調整(
図13(b)におけるd2は
図13(a)のd1よりも狭くなっている)することにより、挟持部122と132とで形成される菱形の空隙Rの大きさを調整できる。挟持部122及び132の形状を上記のようにすることで、本体12と挟持体13との間で挟持される電極の様々な大きさ及び形状に対応する事が可能となるだけでなく、複数の電極を挟持した場合において、対向する電極同士の位置調整がより容易となる。
【0037】
例えば、円柱形の電極Eを1本固定した場合の態様が、
図13(c)に示されている。本体12と挟持体13との距離を縮めることにより、電極Eの外径が三角形の切欠き表面に接触してしっかりと固定される。さらに、電極Eは常に菱形の空隙Rの中央に位置することとなるため、電極保持具1にて電極Eを保持して対向させる際に、位置調整の手間を大幅に省くことができる。また、円柱形の電極Eを3本固定した場合の態様が、
図13(d)に示されている。複数の電極Eを保持する場合であっても、各電極Eの外径が三角形の切欠き表面に接触してしっかりと固定される。さらに、菱形の空隙Rの断面積が狭まることにより、3本の電極Eの位置が三角形を描くように自然と調整される。従って、複数の電極を使用する場合であっても、電極保持具1にて電極Eを保持して対向させる際に、位置調整の手間を大幅に省くことができ、複数の電極を使用することによる電極反応の効率向上を容易に達成できる。
【0038】
挟持部122と挟持部132とは、少なくともどちらか一方が複数あればよい。したがって、例えば、挟持部122を1つ備え、挟持部132を2つ備え、当該2つの挟持部132の間に前記挟持部122を嵌合させてもよい。
【0039】
本発明の電極保持具1により、電極、例えば、棒状又は板状の電極を1個だけで無く複数用いて、水平方向に保持する事が可能となる。本発明の電極保持具1を2つ使用する事で、容易に、1対の電極を軸方向に水平に対向させる事ができるため、電極に振動が加えられた場合や、電極の長さ方向の形状においてわずかな歪みを有する場合でも、電極の対向面がずれにくく、電極間の放電をより均一に行う事ができる。
【0040】
2.電極反応装置
本発明の電極反応装置Xは、1対の電極を軸方向において水平に対向して保持する、前記電極保持具1を少なくとも2つと、
前記保持具1を保持し、前記保持具1の少なくとも1つを前記保持具1に保持される電極の軸方向に移動させる駆動部2と、並びに
電力供給部3と、
を備える。以下に図面に基づいて各要素を説明する。
【0041】
図14に本発明の電極反応装置Xの概略が示されている。
図14における電極反応装置Xは、筐体4を有している。筐体4は、2本の脚42、42と脚42、42の上端部に掛け渡されている梁41を有している。脚42、42は、ボルト等を用いてその下端部を平坦な面、例えば机の表面に固定されている(図示せず)。脚42、42の表面上下方向にレール43、43が備えられている。横架材44が当該レール43、43の方向に沿って上下に移動可能に備えられている。当該横架材44の左右端部にはモーター等の動力に接続されたベルト(図示せず)が接続されており、当該モーター等を起動してベルトを駆動させて当該横架材44が上下方向に移動でき、当該モーター等を停止させる事により横架材44を任意の箇所で固定できるようしている。
【0042】
前記横架材44の外側に、2つの駆動部2が備えられている。駆動部2は、本発明の電極保持具1を保持できる機構を有している。例えば、駆動部2は、その下側に穴が空いており、電極保持具1の本体12が備えられていない方の端部を挿し込み、固定部111と駆動部2をネジ締結できるようにしてある。また、左側の駆動部2は、駆動部2を水平方向に移動させるためのベルト21が接続されている。前記ベルト21は、モーター等(図示せず)の動力を用いて駆動させ、駆動部2を左右水平方向に移動させる事ができる。なお、
図14において、ベルト21は左側の駆動部2のみに接続されているが、駆動部2が複数存在する場合に、例えば
図14に示すように左右2つの駆動部が存在する場合には、両方の各駆動部2にベルト21を接続して、左右両方の駆動部2がそれぞれ動くようにしてもよい。
【0043】
各駆動部2は、その下側において電極Eを保持した電極保持具1を固定する。電極保持具1は、各電極保持具1により保持された1対の電極を軸方向において水平に対向するように固定される。
【0044】
電極保持具1により保持された電極Eは、電力供給部3にリード線31を用いて接続される。電力供給部3から流れた電流は、リード線31を通じて電極Eに供給され、電極反応が進行する。電極反応の進行に伴い電極Eが分解又は蒸発し電極E間の距離が離れた場合、駆動部2のベルト21を作動させ、電極Eを水平方向に移動させ電極E間の距離を調整できる。本発明のこのような構成により、電極同士がより正確な位置で対向し、電極の分解を伴う電極反応においても均一に電流を流す事ができ、電極の不均一な分解又は蒸発を避ける事ができる。また、本発明の電極保持具により複数の電極を固定できるため、電極反応を高い効率で、例えば微粒子を作成する際には一度により大量の微粒子を製造できる。
【0045】
なお、電極反応の種類や目的に応じて、パルス放電をするためのインバーター、誤って電極同士が接触した場合に過剰放電を防止するための抵抗、水等液体中で電極反応を行うための水槽及びマグネチックスターラーやバブラー等の液体攪拌手段等を備えてもよい。
【0046】
本発明の電極反応装置により、電極、例えば、棒状又は板状の電極を1個だけで無く複数用いて、水平方向に保持する事が可能となる。本発明の電極保持具1を2つ使用する事で、容易に、1対の電極を軸方向に水平に対向させる事ができるため、電極に振動が加えられた場合や、電極の長さ方向の形状においてわずかな歪みを有する場合でも、電極の対向面がずれにくく、電極間の放電をより均一に行う事ができる。本発明の電極反応装置は、微粒子の製造をはじめとした様々な電極反応において使用する事が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の電極保持具により、電極反応を行う際に対抗する電極の対向面の位置合わせをする手間を大幅に省く事ができ、電極反応の効率を飛躍的に向上可能である。また、本発明の電極保持具は、一度に2以上の電極を保持する事が可能となるため、さらに効率を高めた電極反応を提供できる。
【符号の説明】
【0048】
1:電極保持具、11:支持体、111:固定部、112:ネジ穴、12:本体、121:ネジ穴、122:挟持部、13:挟持体、131:ネジ穴、132:挟持部、14:ネジ
2:駆動部
3:電力供給部
4:筐体、41:梁、42:脚、43:レール、44:横架材