(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】成果責任設定支援方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20230101AFI20240412BHJP
【FI】
G06Q10/06
(21)【出願番号】P 2020080575
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2023-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2019090912
(32)【優先日】2019-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】518232054
【氏名又は名称】株式会社スキルアカデミー
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】濱 弘光
【審査官】平井 嗣人
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-118668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被評価者が自身の業務上の成果責任を設定するために必要な成果責任の例を、業務活動と紐付けてある、業務活動と成果責任の関連付けデータを登録した業務活動・成果責任データベースと、
被評価者の成果責任に対して成果目標を設定する際に、評価者が目標の適切性を評価して改善例を示すために必要な、成果目標の達成判断基準となる業績指標を登録した業績指標データベースと、
にアクセス可能なコンピュータが、
前記業務活動・成果責任データベースに記録されている業務活動と成果責任の関連付けデータと被評価者が入力した業務活動の関連度を評価し、入力された業務活動にもっともふさわしいと評価される成果責任の例を示すことで、前記被評価者の成果責任の設定を支援する方法であり、
前記支援においては、被評価者が業務活動を入力する都度、前記業務活動・成果責任データベースに蓄積された
業務活動と成果責任の関連付けデータに基づく、業務活動と成果責任との関連度を評価するための機械学習による文章類似度判定による関連度スコアの計算をすることによって、関連度の高い成果責任の候補を示す成果責任設定支援方法。
【請求項2】
被評価者がこの成果責任の候補から選択し、確定したデータは、再度、前記業務活動・成果責任データベースに投入され、より業務活動と成果責任の関連度推測を強化するために利用されることを特徴とする請求項1記載の成果責任設定支援方法。
【請求項3】
被評価者が入力した業務活動についての記述を自然言語解析し、さらに、業務活動・成果責任データベースに記録されている業務活動と成果責任の関連付けデータを参照し、文章類似度判定による関連度スコアの計算によって、前記データにおける成果責任と関連度の低い業務を、実施不要である可能性の高い業務として示す請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人事制度に関し、特に、成果評価プロセスと能力評価プロセスが煩雑になるところを簡便化する、AIを活用した人事制度支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
企業理念に基づき、会社が全構成員の力を結集し、経営目標を達成していくためには、各人が会社目標との関係の中で、意欲的に、かつ、着実にその役割を遂行する目標が必要である。
【0003】
そこで、成果目標を設定してその達成度をマネジメントすること、および、社員の能力を把握し、その能力に見合った職場への配属や職務の付与が重要であり、その能力向上を図ることも重要となる。
【0004】
成果評価制度や能力評価制度は、こうした必要に応えるためのものである。前者は企業の経営目標をブレークダウンして、社員ひとり一人の仕事に結びつけてマネジメントするためのものであり、後者は各人の能力を見極めることで、最適な人員配置を実現するためのものである。
【0005】
ここで注目すべき点は、職務に付与された成果責任と個人の成果目標である。成果責任を明確にすることにより、会社の目指す方向の中で、自分の役割は何か、何を成果として生みだすことが期待されているかがはっきりするからである。その上で、会社の年度経営計画を考え合わせることにより、各人は重点課題を絞り出し、自主的に成果目標を設定することが出来る。
【0006】
成果評価制度と同時に、成果責任を果たすために必要な能力も考慮されなければならない。能力評価制度である。
【0007】
ある職務の成果目標の達成のためには、ある特定の能力が必要とされる。ここで能力とは、仕事を遂行する上での能力のことで、知識とスキルとコンピテンシーで構成される。ここで注目すべきは、米国で開発されたコンピテンシー(行動特性)という概念である。職務を遂行する社員のコンピテンシーが最適であれば成果目標も適切に達成されることが期待される。
【0008】
コンピテンシーのマネジメントは、従来より、人事担当者や職場の上司が自身で、あるいは、人事専門のコンサルタントの指導の下で行われているが、最近は、コンピュータを利用した人事管理システムも開発されている。
【0009】
その一例として、特許文献1では、社員に対して適切なコンピテンシー目標設定を促すために、コンピテンシー目標設定を定量的に評価して各被評価者のコンピテンシー獲得率を求めるとともに,各被評価者のMBO(Management By Objectives:目標管理)獲得点の最大値に対する割合からMBO獲得率を求め,これらコンピテンシー獲得率とMBO獲得率との差分値に基づいて各被評価者が良い目標設定をする者か悪い目標設定をする者かを判断することにより,被評価者の目標設定の良し悪しについて客観的に評価し、社員一人ひとりが適切なコンピテンシー目標を自発的に設定できるようにしたシステムがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第6129393号公報
【文献】Doc2Vecの仕組みとgensimを使った文書類似度算出チュートリアル(2017年01月8日) インターネット(URL:https://deepage.net/machine_learning/2017/01/08/doc2vec.html )
【文献】機械学習・自然言語処理の勉強メモ 2017-11-15 gensimでDoc2Vec インターネット(URL:http://kento1109.hatenablog.com/entry/2017/11/15/181838 )
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
コンピテンシー目標設定は成果責任を果たし成果目標を達成する上で重要ではあるが、経営管理においては、成果責任や成果目標をどのように管理することがより重要である。またコンピテンシーは、管理上必要な項目であるが、その他にも、知識やスキルについても、成果責任を果たし成果目標を達成する上でどの程度有しているのか、どのように伸ばしていくのかが重要なことである。
【0012】
成果目標を達成し、成果責任を全うするには、自己が日々の業務で行っている様々な行動が、どのような成果責任に関連しているのか、そして、自身が設定した成果目標の達成にどのように貢献しているのか、認識していなければならない。また、日々の業務活動と成果責任との関係が不明であると、業務活動の成果責任・成果目標に対する貢献度も不明となり、人材の活動の評価も不明となる。
【0013】
本発明は、以上のような点に鑑み、各人材の具体的業務活動と成果責任との関係性をAIの支援を受け簡便に設定し、成果責任や成果目標を適切に管理すること、または、成果責任を果たし成果目標を達成するために必要とされる能力を、知識・スキル・コンピテンシーと幅広く捉え、これら全体の能力測定・向上を支援し、人材と職務のベストなマッチングをAIにより特定・支援するための人事管理システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提案する。
<成果責任の設定支援>
本発明は、職務に対する成果責任を設定するとともに、その成果責任を果たすために成果目標を設定し、当該目標に向けて業務活動をする際に、その成果評価をコンピュータで行う場合に使用する方法である。
【0015】
ここでは、被評価者が自身の業務上の成果責任を設定するために必要な成果責任の例を、業務活動と紐付けてある、業務活動と成果責任の関連付けデータを登録した業務活動・成果責任データベースと、
被評価者の成果責任に対して成果目標を設定する際に、評価者が目標の適切性を評価して改善例を示すために必要な、成果目標の達成判断基準となる業績指標を登録した業績指標データベースと、が存在することが前提となる。
【0016】
そして、これらにアクセス可能なコンピュータが、前記業務活動・成果責任データベースに記録されている業務活動と成果責任の関連付けデータと被評価者が入力した業務活動の関連度を評価し、入力された業務活動にもっともふさわしいと評価される成果責任の例を示すことで、前記被評価者の成果責任の設定を支援する。
【0017】
前記支援においては、被評価者が業務活動を入力する都度、前記業務活動・成果責任データベースに蓄積された業務活動・成果責任データに基づく、業務活動と成果責任との関連度を評価するための機械学習による文章類似度判定による関連度スコアの計算によって、関連度の高い成果責任の候補を示す。
すなわち、被評価者が新たに業務活動を入力すると、業務活動・成果責任データベースに記録されている業務活動と成果責任の関連付けデータを参照して、入力した業務活動に相応しい成果責任を特定して、出力する。
その際に、まず、被評価者が入力した業務活動を示す文章と、データベースに蓄積されている業務活動を示す内容の文章とを比較して、文章類似度判定を行い、類似度から決定される関連度スコアを算出する。
そして、関連度スコアが高い業務活動が特定されると、当該業務活動に対応した成果責任が特定されるので、その特定された成果責任が、新たに入力された業務活動の成果責任候補として示される。
【0018】
ここで、被評価者がこの成果責任の候補から選択し、確定したデータは、新たに入力された業務活動と対をなす成果責任のデータとして、再度、前記業務活動・成果責任データベースに投入され、より業務活動と成果責任の関連度推測を強化するために利用される。
なお、以上の操作により、被評価者が新たに入力した業務活動を成果責任に紐付けることとなるが、この操作を通じて、入力した業務が、成果責任に関連性の低い業務であることが判明する。すなわち、関連度スコアが低い業務も特定されるので、そのスコア以下の業務は、もはや、成果には結びつかないものとして、実施してはならない不要業務として特定し、表示、あるいは、出力することが可能であることも自ずと明らかである。
よって、本発明では、被評価者が入力した業務活動についての記述を自然言語解析し、さらに、業務活動・成果責任データベースに記録されている業務活動と成果責任の関連付けデータを参照し、文章類似度判定による関連度スコアの計算によって、前記データにおける成果責任と関連度の低い業務を、実施不要である可能性の高い業務として示す手段を提供する。
このように、関連度スコアが低い業務を特定し、そのスコア以下の業務は、もはや、成果には結びつかない業務として告知できるので、業務改善に役立てることができる。
【0019】
<成果目標の設定支援>
また、成果責任だけではなく、成果目標の支援も要望される。
【0020】
そこで、被評価者が業務上の成果責任に対して達成すべき成果目標をコンピュータに入力して設定するにあたり、
コンピュータが、成果目標が達成されたかどうかの判断基準となる業績指標と、当該業績指標によって示される達成水準とに相当する用語が、被評価者によって入力された成果目標の文章中に含まれているか否かを、自然言語処理で解釈し、業績指標と達成水準の少なくともいずれか一方が含まれていないと判断されるとき、その由を示すことで、被評価者による成果目標の設定を支援する。
ここで、さらに、業務上の成果責任と成果目標とを関連付けて登録した成果目標データベースを備え、
被評価者が成果目標を設定するにあたり、前記成果目標データベースに蓄積された成果責任と成果目標の関連付けされたデータを参照して、被評価者が書いた成果目標に構文上、類似度の高い成果目標例を複数示し、被評価者に参照させ、評価者が判断しやすいと思われる成果目標を被評価者が自分の判断で完成させることを支援するようにするとよい。
【0021】
なお、被評価者が確定した成果目標データは、再度、前記成果目標データベースに投入され、より成果責任と成果目標の関連度推測を強化するために利用されるようにする。
【0022】
<人材登用支援>
人事管理においては、人材の適材適所が要求されるが、本発明では、以下の手段によりそれを可能とする。
まず、空席となった職務に人材候補者を示す方法を示す。
【0023】
すなわち、本発明の方法は、被評価者が有する現在の知識レベルを登録した知識評価データベースと、
被評価者が有する現在のスキルレベルを登録したスキル評価データベースと、
被評価者が有する現在のコンピテンシーレベルを登録したコンピテンシー評価データベースと、
組織機能を十分に発揮させるために必要な能力として、知識・スキル・コンピテンシーの理想モデルを組織機能・職務等級別に能力プロファイルとして登録した組織機能別能力モデルデータベースと、
にアクセス可能なコンピュータが、空席になった職務に対応して被評価者として登録されている人材の中から、当該職務にふさわしい候補者を示す方法であり、
組織機能別能力モデルデータベースにアクセスして、空席となった職務に必要な能力プロファイルと、
前記知識評価データベース、前記スキル評価データベース、前記コンピテンシー評価データベース、に登録してある社員の能力評価結果とを対比して、
空席となった職務に必要な能力プロファイルとの類似性の高い順に、空席となった職務の候補者として示すことで、人材の登用・配置候補者選定を支援する。
【0024】
空席となった職務については、既に、どのような能力プロファイルが必要かは登録されているので、それに見合った人材候補者を示せば良いが、新しい職務を設定した場合は、それにふさわしい人材の能力プロファイルはまだ不明であるため、新しく定義して設定する必要がある。
【0025】
そこで、新しく生じた職務にふさわしい候補者を示す方法として、以下の方法を示す。
【0026】
その職務を全うするために必要な能力プロファイルの作成用として、その職務に似た職務の能力プロファイルを前記組織機能別能力モデルデータベースから出力させ、
人事担当者が、これを編集して新職務要件としての能力モデルを完成させて新職務の能力プロファイルを前記組織機能別能力モデルデータベースに登録し、
その後、前記知識評価データベース、前記スキル評価データベース、前記コンピテンシー評価データベース、に登録してある社員の能力評価結果と新職務の能力プロファイルを対比して、
新職務に必要な能力プロファイルとの類似性の高い順に、新職務の候補者として示す。これにより、新しい職務についての人材の登用・配置候補者の選定が容易になる。
【0027】
<自律学習支援方法>
成果目標を達成して成果責任を果たすためには、それに見合った能力が必要であり、社員に対してはそれを発揮することが期待される。社員が特定のキャリアを実現したいと思うなら、そのような能力を身につける必要がある。
【0028】
人事管理としては、そのような能力向上のために支援をする必要がある。そこで、本発明では、以下の方法を提示する。
被評価者が有する現在の知識レベルを登録した知識評価データベースと、
被評価者が有する現在のスキルレベルを登録したスキル評価データベースと、
被評価者が有する現在のコンピテンシーレベルを登録したコンピテンシー評価データベースと、
組織機能を十分に発揮させるために必要な能力として、知識・スキル・コンピテンシーの理想モデルを組織機能・職務等級別に能力プロファイルとして登録した組織機能別能力モデルデータベースと、
にアクセス可能なコンピュータを利用して、被評価者である社員が、自らの希望するキ
ャリアをより早く実現するための自律学習を促す方法であり、
前記知識評価データベース、前記スキル評価データベース、前記コンピテンシー評価データベース、から把握される当該社員の現状の能力プロファイルと、
前記組織機能別能力モデルデータベースに登録してある、希望するキャリアに必要な知識・スキル・コンピテンシーの理想的な能力モデルとを対比して、
研鑽すべき能力として、当該希望するキャリアへ向かうために効果が期待される能力要素を優先順位を付けて推奨する。
【0029】
<能力向上のためのコーチング>
上記のような自律学習につき、さらに、上司等によるコーチングが有用となる。本発明では、コンピュータを利用してコーチングを支援する。
すなわち、特定の社員の特定の業務についての成果責任とその成果責任に対する成果目標を設定し、特定社員の成果目標に対する達成度を評価結果として記録するとともに、
成果責任を果たす上で必要な能力モデルを定義し、能力目標を設定して、当該社員の能力向上を促す方法であり、
コンピュータが、当該成果目標と能力目標とを参照し、
かつ、コンピュータに入力された当該社員のコーチ役と当該社員とのコミュニケーションデータを解析して、コミュニケーションの中から成果の現状と能力の現状を把握し、
成果目標を達成するために取りうる施策を、各成果目標と現状とのギャップと目標達成の難易度の観点から、示すとともに、
能力目標を達成するために取りうる施策を、各能力目標と現状とのギャップと能力改善の難易度の観点から、示す。
これにより、上司等が当該社員につき、どのようにコーチすべきかのコーチングテーマの選定が容易となる。
【0030】
なお、本発明は、コンピュータを利用した方法として説明したが、これら方法の各工程を、コンピュータ上で機能実現手段として特定し、システム発明として捉えることができることは言うまでもない。
【発明の効果】
【0031】
本発明では、被評価者にとって抽象度が高く本来困難な成果責任の設定作業を、より容易に書き出すことが可能な日常の業務活動の記述から実施することができるので、成果責任の特定が容易になる。
【0032】
従来、成果責任の設定は、コンサルタントが適切な言語化作業をサポートする必要があり、導入コンサルティングのかなりのウェイトを占める作業となっていたが、本発明によって大幅に簡易化することができ、導入期間の短縮化、低コスト化を実現できる。
【0033】
また、従来は職務に必要な具体的な能力を測定するための基準を持たず、評価者の情意、被評価者と評価者の関係性が評価に大きく影響を与えることが制度の構築上の問題であったが、本発明では組織機能別能力モデルにより、定量化され、評価者による評価の差異を抑制できる能力水準の定義を備えるため、納得性が高く、能力向上効果のある能力評価が実現できるだけでなく、機械的な計算によって被評価者が獲得し無くてはならない能力および能力の水準を特定し、自律学習やコーチングによる能力向上施策を推奨する機能を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図3】本システムによる成果評価制度と能力評価制度の運用概念図
【
図4】成果評価システムと能力評価システムのデータの流れ全体像
【
図6】機能・職務等級別コンピテンシーモデルを示す図
【
図20】職務の能力モデル(コンピテンシー)表示画面
【
図23】成果責任の設定・更新部における業務活動入力画面
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の人事管理システムの実施形態を説明する。本システムは、成果目標に対してその達成度を評価する成果評価システム、被測定者に不足している能力を示す能力評価システム、能力を補うための自律学習支援システム等を提供する。
<成果評価>
本発明は、特定の職務に対応した成果責任を予め設定し、成果責任に対して達成すべき成果目標を設定し、その達成度を評価する成果評価システムを提供する。
成果評価のためには、組織・業務・職務に対応した成果責任が何かを予め定義されていなければならない。さらに、成果責任に対応した成果目標を立てることも重要である。
そして、各人材が、成果目標に向かって遂行している日々の業務活動が、当該成果責任の範囲に属している活動なのか、全く関係のない活動なのかを測定する必要がある。
【0036】
このため、本発明は、特定の組織における成果責任を設定する成果責任設定部と、当該組織内で働く人材の成果目標を設定する成果目標設定部と、当該人材の日々の業務活動を前記成果責任設定部で設定した成果責任と関連付ける業務活動・成果責任関連付け部と、を備えている。
【0037】
本発明では、AIを用いて、業務活動・成果責任関連付け部を構成しており、特定の具体的な業務活動がどの成果責任に関連性があるのかをAIが判断、学習し、学習した結果の「個々の業務活動を特定の成果責任に関連付けた情報」は、データベース(DB)に格納される。
【0038】
各人材は日々行われる業務活動を適宜業務活動登録部に登録していく。その情報は、業務活動DBに登録される。そして、当該個々の業務活動がどの成果責任に関連付けられるべきかを、「個々の業務活動を特定の成果責任に関連付けた情報」を参酌して判定する。そして、その判断結果もAIによる学習データとして蓄積される。
【0039】
具体的には、ここでは、被評価者ごとに自身の成果責任を設定するための、業務活動と成果責任記載例が紐付けられた業務活動・成果責任データベースを利用し、前記業務活動・成果責任データベースに記録されている業種別・職種別の業務活動と成果責任の関連付けデータと被評価者が入力した自身の業務活動のリストの関連性を評価し、入力された業務活動にもっともふさわしいと思われる成果責任の例を示し、被評価者の成果責任として設定する。
【0040】
蓄積された業務活動・成果責任データは、機械学習処理によって業務活動と成果責任の関連度を評価するための機械学習による文章類似度判定による関連度スコアを計算により算出し、関連度の高い成果責任の候補を表示する。被評価者は、提示された候補から最適な成果責任を選ぶ。
【0041】
機械学習による文章類似度判定についての公知技術が、非特許文献1、非特許文献2に示されている。ここで示されるDoc2Vecは、単語をベクトル表現化することで、単語の意
味的な表現をコンピュータが扱いやすい数学的表現に変換するWord2Vecを単語レベルではなく、任意の長さの文章を扱えるように拡張したものである。
被評価者がこの成果責任の候補から選択し、確定したデータは、再度、前記業務活動・成果責任データベースに投入され、より業務活動と成果責任の関連度推測を強化するために利用される。
【0042】
これにより、登録された個々の業務活動と成果責任との関係が明らかになるので、成果責任に応じた適切な成果目標の設定が可能となる。
【0043】
被評価者の成果責任に対して設定する年度ごとの成果目標を設定する際に、目標の適切性を評価する。評価の方法としては、改善例を示すための業績指標データベースに登録された業績指標と、成果目標データベースに既に設定されている被評価者の上司の成果目標とを参照し、さらに、入力された成果目標を自然言語解析部で解析して、入力された成果目標が適切な業績指標と達成水準を備えているかを示す。これにより、上司の成果目標との整合性が正しく担保されているかがわかるので、評価者が成果の達成度合いを判断しやすい成果目標の設定が可能となる。
【0044】
<能力評価>
本発明は、特定の職務遂行に必要な能力(知識、スキル、コンピテンシー)をモデル化し、かつ、被評価者の能力を測定して、モデルとの対比をし、その差分を測定して、被測定者に不足している能力を示す能力評価システムを提供する。
【0045】
上記成果評価では、成果責任に応じて設定した成果目標に対し、人材がどのような業務活動を行ったかが明らかになるが、業務活動が活発であるにもかかわらず、成果が上がっていないということもありうる。
【0046】
そのような場合、職務遂行能力に問題があるのではないかと疑われる。そこで、本発明では、予め、特定の職務遂行に必要な能力(知識、スキル、コンピテンシー)をモデル化し、かつ、被評価者の能力を測定して、モデルとの対比をし、その差分を測定して、被測定者に不足している能力を示すこととしている。
【0047】
このため、本発明では、業務遂行に必要な理想的能力値を登録した能力モデル登録部と、人材の実能力の評価値を登録する人材実能力登録部と、能力モデル登録部に登録された能力の理想値・人材の実能力の評価値の差分から、不足している能力を示す能力判定部を有している。
【0048】
<自律学習支援>
このようなデータを元に、本発明では、当該人材の能力を補うための研修や学習方法の提示をしたり、能力開発のための研修プログラムを編集して提示するシステムを提供することができる。このため、教育コンテンツデータベースを備え、補完すべき能力に対応するコンテンツを選定し、能力向上のために、いつまでに、どのようなコンテンツをどのように学ぶべきかを研修プログラムとして提示する自律学習支援部を備える。
【0049】
<目標トラッキング>
また、成果目標の達成や、能力開発のために、当該人材(部下)を指導する。例えば職場の上司との間のコミュニケーションが重要となるが、その際に、当該コミュニケーションの内容を、自然言語解析、過去の能力向上のための取組履歴データ分析などの手法を使って解析し、成果目標の達成や、能力開発にどれだけ資する行動をとっているかを測定し、成果目標の達成や、能力向上へのコーチングをするコーチング支援部を備える。
【0050】
<報酬制度設計>
本発明では、上記成果評価や能力評価の結果を報酬制度に反映することが可能となる。成果目標に対し、100%を超えるパフォーマンスを見せた人材には、それに見合った加重的報酬が与えられるべきであるし、逆にパフォーマンスの低い人材には、報酬が減額されてもやむを得ない。
【0051】
本発明では、成果評価システムにおいて測定された目標達成度を元に、報酬を加減する報酬加減手段を提供する。
【0052】
能力評価についても同様で、指摘された能力不足に対し、与えられた研修プログラムを完了した者に、所定の報酬を加算することも可能である。これにより能力向上のモチベーションが上がることが期待される。
【0053】
<システムの全体像>
本システムの機能の全体像を
図1の機能ブロック図に従って説明する。
【0054】
図1に示したように、本発明では、成果評価、目標管理、職務等級・報酬管理、能力評価、自律学習支援、目標トラッキングを行う。
【0055】
まず、機能実現にあたって、人事コンサルタントや人事担当が行う作業として以下の作業を事前に行う。
【0056】
[事前コンサルティング]
・ 組織診断・・これは、会社がどのような組織として成立しているのか現状を把握する作業である(現状認識)。
・ 組織・人事方針の確認をする。
・ 組織設計・・・上記方針からあるべき組織を設計する。
・ 職務設計・・・上記方針からあるべき職務を設計する。
・ 職務等級の把握と設計をする。
【0057】
[成果評価]
職務についての成果評価につき、被評価者は社員(部下)、評価者は社員の上司である。成果評価にあたっては、事前に成果責任の設定(職務に付随する責任)をしておく。成果責任は、会社全体の経営目標を社員各自の職務(役割や階級)に細分化し、「その職務がどのような成果を出す必要があるのか」を、中長期的に妥当な程度に抽象化したものである。例えば営業職であれば、「売上高を向上させる」や「新規顧客を拡大する」などがあたる。
【0058】
本発明では、
図2に示したように、個々に行っている業務活動を分類して当該業務に必要でかつ、大まかな概念として、システム導入時に成果責任領域を予め設定しておく。各社員は、この成果責任領域に応じて、成果責任を定義し、入力する。
すなわち、成果責任とは、仕事の様々な業務活動を7~9個の大まかな概念分野としてとらえたものである。
図7に示したように、成果責任領域として、「戦略プランニング・全社の成長性・全社の収益性・継続プロジェクト改革・ビジネスプロセスと組織・顧客満足・品質・外部ステークホルダーとの関係・人事育成」を設定したとする。
これに対応する成果責任を、
図2に示す。
・「戦略プランニング」という成果責任領域には「事業部の事業戦略を策定する」という成果責任が含まれる。
また、「全社の成長性」という成果責任領域には「顧客数を増加させる」という成果責任が含まれる。
・「全社の収益性」という成果責任領域には「売上高を拡大する」という成果責任が含まれる。
・「継続プロジェクト改革」という成果責任領域には「新規プロジェクトを提案」という成果責任が含まれる。
・「ビジネスプロセスと顧客満足・品質」という成果責任領域には「顧客との関係性を強化する」という成果責任が含まれる。
・「人事育成」という成果責任領域には「人材を育成する」という成果責任が含まれる。
【0059】
そして、各社員は、自己が行なっている実際の業務活動の視点から、どのような成果責任を果たすべきかを考え、それを当該成果責任が属すべき当該成果責任領域に登録する。その際、業務活動・成果責任データベースに記録されている業務活動と成果責任の関連付けデータと被評価者が入力した業務活動の関連度を評価し、入力された業務活動にもっともふさわしいと評価される成果責任の例を示す。ここでは、業務活動と成果責任との関連度を評価するための機械学習による文章類似度判定による関連度スコアの計算によって、関連度の高い成果責任の候補を表示する。
【0060】
各社員は、その例を参考に、業務活動対応の成果責任を、成果責任領域に登録する。そして、その成果責任を記述するにあたり、実際の業務活動と成果責任との対応関係の教師データを与え、機械学習させる。
機械学習の手法としては、公知技術として、文章ベクトル空間を提供するDoc2Vecなど
がある。
前記したように、業務活動データは、利用者によって関連する成果責任に紐付けられる。そして、成果責任は、より上位の幅の広い概念である成果責任領域に紐付けられるが、これにより、業務活動・成果責任・成果責任領域というデータセットが構築され、これが基本情報として機械学習の入力データとなる。
上記データセットは、所属する成果責任領域毎に業務活動の文章を学習された文章ベクトルと業務活動と成果責任が紐付けられて業務活動・成果責任DB(
図4の26)に格納される。
こうすることで、同一文言の業務活動でも関連付けられる成果責任領域の違いによって
適切な成果責任文章を推定することが可能となる。
例えば「顧客を訪問する」では、成果責任領域「全社の収益性」にも「全社の成長性」さらに「顧客満足」にも関連する為、適切な成果責任の文言は、成果責任領域により異なり、成果責任領域「全社の収益性」に対応する成果責任は「売上高を拡大する」となり、成果責任領域「全社の成長性」に対応する成果責任は、「顧客数を増加させる」となり、成果責任領域「顧客満足」に対応する成果責任は、「顧客との関係性を強化する」となる。
【0061】
成果責任が明確になると成果目標の設定と目標管理が可能となる。
このように、本例では、成果責任領域>成果責任>社員の業務活動という概念を用いて管理している。成果責任領域は企業全体の経営計画を達成するのに必要な成果責任の大きな分類であり、成果責任は、成果責任領域に沿って社員が自身で定義する責任で、社員の業務活動は、その成果責任の下で行われるべきものである。
【0062】
前記したように、「戦略プランニング」という成果責任領域には「事業部の事業戦略を策定する」という成果責任が含まれる。そして、これに対応する業務活動としては、「他部門の部長と戦略策定方法について情報交換する」、「他社の事業戦略を調査する」などが含まれよう。
すなわち、前記した手法により、「他部門の部長と戦略策定方法について情報交換する」<「事業部の事業戦略を策定する」<「戦略プランニング」というデータセットと、「他社の事業戦略を調査する」<「事業部の事業戦略を策定する」<「戦略プランニング」というデータセットが新たに構築されたとして、それに従い、成果目標の設定と目標管理を行うこととなる。
【0063】
[目標管理]
成果責任を設定した後、目標設定(成果目標の設定)をする。
【0064】
成果目標はこの職務の成果責任にしたがって、所定期間、例えば当年度に達成しなければならない具体的な目標を記述するものである。営業職であれば、成果責任領域が「全社の成長性」という領域の中に「事業部の収益を拡大する」という成果責任が設定されたとすると、成果目標として、「当期の売上高を1億円達成する」「新規顧客を5社獲得する」などが設定されよう。成果目標は自由文で入力し、業績指標DBと自然言語解析により目標が具体的か否かの適否を判断して、不十分な場合にアドバイスを出す。ここでは、業績指標DBに登録されている適切な指標(売上高)と達成水準(1億円)が入力した文章に含まれているかが肝要である。よって、いずれかがあるいは双方が当該文章に含まれていないと判断されるとき、その旨をコンピュータがユーザー端末に表示する。
【0065】
この目標管理はプロセス管理であり、その成果評価は、どの程度まで目標が達成されたのか、ということに基づく。
【0066】
[報酬算定]
目標管理の結果がわかると、報酬の算定も客観的に行うことができる。人事部は予め報酬算定ルールを設定しておき、当該算定ルールに従ってコンピュータが特定の被評価者の報酬を算定する。
【0067】
[職務等級・報酬制度]
成果責任を基準にその職務の責任の大きさを職務等級として表す。この判断は、人事担当あるいはコンサルタントが行う。
【0068】
報酬制度・・職務等級が決まったらそのレベルに応じた標準報酬を決定する。この標準
報酬に対し、上記のように成果評価に基づき実報酬を変動させる。
【0069】
[能力評価]
能力とは、知識・スキル・コンピテンシーである。コンピテンシーは、360度評価すな
わち複数の第3者による客観的な評価をする。能力、特にコンピテンシーの評価にあたっては、被評価者である社員が、評価者になってほしい人を選択して、その人に評価してもらう。評価者は仕事の現場で被評価者の行動を見ている人である。評価基準として、客観的事実に基づくことが重要である。また、複数の人に評価してもらうことが客観性を担保する上で重要である。評価してほしい人の選択の是非は上司が決める。知識・スキルの評価は上司が行う。
【0070】
能力評価にあたっては、当該職務を遂行するにあたって必要とされる理想の能力モデルをあらかじめ設定しておく。これは、
図4において、組織機能別能力モデルDBに設定されるもので、この組織機能別能力モデルDBは、11.知識定義DB、12.スキル定義DB、13.コン
ピテンシー定義DBと連携する。
【0071】
そして、実際に職務遂行時の被評価者の活動からどの程度の能力があるのかを評価した結果が、16.知識評価DB、17.スキル評価DB、18.コンピテンシー評価DBに格納されるので
、それら能力評価結果が、理想の能力モデルと対比される。
【0072】
この対比結果により、当該人材がどの業務・どの職務に向いているのかがわかる。また、不足している能力がわかる。
【0073】
[キャリア制度・人材登用制度]
理想の能力モデルと、測定した能力との対比をした能力評価結果が出ると、それに鑑みて、適切なキャリアパスを示すことが可能となる。希望のキャリアとの齟齬がある場合は、どのような能力を補完すべきか提示する。
【0074】
すなわち、16.知識評価DB、17.スキル評価DB、18.コンピテンシー評価DBに格納されて
いる特定の人材の能力評価結果(個々人の能力プロファイル)と、組織機能別能力モデルDBに設定されている能力モデル(理想の能力プロファイル)を対比して、当該希望するキャリアへ向かうために効果が期待される能力要素を優先順位を付けて推奨する。すなわち、知識やスキルとしてプログラミングの知識・スキルを補完することが、希望するキャリアへ向かうのに最適とされるのであればそのような補完を勧めるということである。
【0075】
そして能力評価の結果を、人材登用・配置制度にも活用し、人事権を持つ人へのアドバイスが可能となり、空いたポストに適切な人材を提示することが可能となる。
【0076】
この場合、空いたポストにはすでにその職務に応じた理想の能力プロファイルが組織機能別能力モデルDBに設定されているので、16.知識評価DB、17.スキル評価DB、18.コンピ
テンシー評価DBに格納されている人材の能力評価結果を検索して、登録してある個々人の能力プロファイルと対比し、空いたポストの職務能力に相当する、あるいは、それに限りなく近い能力プロファイルを有する人材を特定して、人事担当に表示し推奨する。
例えば、
図20には、営業部長の理想のコンピテンシーが示されている。一方、
図31には、特定の評価者のコンピテンシー評価結果が示されている。特定の評価者のコンピテンシー評価結果/理想のコンピテンシーが1に近いほど、当該職務に向いていると判断されるので、当該特定の人材を営業部長として推奨するということになる。
【0077】
[自律学習支援]
能力プロファイル・・・ここでは、被評価者の現状能力を登録する。これは能力評価シ
ステムが測定した各個別能力を入力してもよいし、自分で認識している自分の能力を入力してもよい。
【0078】
そして、能力プロファイルに鑑みた、キャリア設計を支援することも可能である。ここでは、自身で希望のキャリアを入力することも可能である。
【0079】
コンテンツ学習・・・ここでは、希望のキャリアに必要な自律学習用コンテンツを示し学習を促す。学習用コンテンツはコンテンツ保存庫に格納されている。
【0080】
[目標トラッキング機能]
これは、1on1コミュニケーション(上司と部下のコミュニケーション)を図ることである。
【0081】
上記のように本発明では、成果評価と能力評価ができるが、その双方の機能を活用し、成果目標、能力目標を達成できるよう上司が部下にコーチングする。そのためのコミュニケーションが重要である。上司と部下が、その内容を自由文にて、および向上させたい能力を選択・入力すると、自然文解析・自然言語処理で何をしているか等を解釈し、目標に向かって適切な行動をしているかを判断する。
【0082】
コーチングマネジャーとして、上司をコンピュータに登録し、きちんとコーチしているか人事担当(システム統括運営者)が指導する。
【0083】
そのイメージ図が
図3である。本システムを用い、まず、部下が職務を定義し、成果目標を設定するとともに、その成果を上げるために必要な能力を定義し、その過不足を判断して、不足している場合に、能力目標を設定する。そして、定期的に上司と部下がミーティングをし、システムに記録された内容を自然言語処理で解釈し、上司の適切な指導を補助する。
【0084】
[移行計画]
本システムの運用により、より良き方向へと組織・職務を変更することとなるが、急激な変更をすると歪を生じることがある。そこで、移行計画として、組織・職務を変更するときの歪み・衝撃を緩和するための設計をする(コンサルタントと人事担当者)。そして、導入後レビューを人事コンサルタントと人事担当者が再度、現場で組織診断・インタビューをして、導入時の組織診断との比較をして、システム運用の評価をする。
【0085】
<システムの構成>
以上が、本システムで実現する機能であるが、その機能を実現するためのシステムを説明する。
【0086】
人事管理システムは,
図5のように、管理サーバ,管理者端末,及びユーザー端末がネットワークを通じて相互に接続されている。管理サーバはWeb上に設置されたサーバであ
る。また、管理者端末は、例えば人事部に配置される。ユーザー端末は、各職場に配置される。
【0087】
図4のように,管理サーバには、1.社員DB(以下DBとはデータベースを意味する)、2.組織DB、3.職務DB、4.組織の機能分類DB、5.成果責任領域DB、6.業務活動DB、7.成果責任DB、8.成果目標DB、9.成果評価DB、11.知識定義DB、12.スキル定義DB、13.コンピテンシ
ー定義DB、14.コンピテンシーディクショナリDB、15.組織機能別能力モデルDB、16.知識
評価DB、17.スキル評価DB、18.コンピテンシー評価DB、21.ワークフローDB、22.目標トラッキング施策DB、23.ミーティングDB、24.自律学習DB、25.学習コンテンツDB、26. 業務
活動・成果責任 DB、27. 業績指標 DBが接続されている。そして、それらDBのデータに基づき、10.成果評価結果が出力され、また、19.評価加重計算、がなされ、また、20.能力
総合評価結果、が出力されるようになっている。
【0088】
社員DBは、社員のID番号、氏名、年齢、など社員の属性データを格納してある。
組織DBは、当該会社の組織情報を登録してある。
職務DBは、組織内で、どのような職務等級が存在するのか、また、その職務の目的などを登録してある。
【0089】
組織の機能分類DBは、組織に存在する営業・開発・業務等の機能のリストが登録してある。
【0090】
成果責任領域DBは、
図2の右側に示したように、仕事の一定領域を同一の成果責任の領域として定義するためのDBである。
【0091】
成果責任領域は企業全体の経営計画を達成するのに必要な成果責任の大きな分類である。例えば、「経営戦略」や「利益の拡大」「規模の拡大」「品質」などである。
【0092】
「品質」という成果責任領域には「施工品質、業務品質、安全、リスク管理、コンプライアンス」に関連する成果責任が含まれる、といった具合で、全社で1つ定義されるもので、成果責任領域DBはこれをデータとして管理する。成果責任領域は、先に説明したように、
図2の右側の図のように、社員の業務活動に応じた成果責任の7~9個を含む大きな概念分野として捉えられるもので、社員は、その領域内で、果たすべき成果責任を登録する。そのためのデータベースが成果責任DBであり、成果責任DBには、前述の成果責任領域に沿って社員が定義した個々の成果責任が格納される。成果責任は1つの成果責任領域に1つ、もしくは複数個設定される。
【0093】
業務活動DBは、職務内容としてどのような業務活動があるのかを登録したDBである。業務活動DBは成果責任を定義する際に、社員が書き出した個々の業務活動が格納される。成果責任を定義するプロセスで個々の業務活動を特定の成果責任に関連付けた情報が格納されており、AIが業務活動から関連する成果責任を推奨する際の学習データとしても利用される。
【0094】
成果目標DBは、成果責任に対応する成果目標を設定登録するDBである。
成果評価DBは、成果評価の結果を登録するDBである。
【0095】
知識定義DBは、能力評価のために、業務遂行に必要とされる「知識」とその内容を定義して登録するDBである。
スキル定義DBは、能力評価のために、業務遂行に必要とされる「スキル」とその内容を定義して登録するDBである。
コンピテンシー定義DBは、能力評価のために、業務遂行に必要とされる「コンピテンシー」とその内容を定義して登録するDBである。
コンピテンシーディクショナリDBには、
図17のように、各コンピテンシーの0~6段階の具体的な行動例の記述が定義される。これは、コンピテンシー360度評価を行う際の入力画面のプルダウンに表示されて評価のために参照される。
【0096】
組織機能別能力モデルDBとは、組織機能を十分に発揮させるために必要な能力の理想モデルを組織機能・職務等級別に登録したDBである。
知識評価DBは、能力評価のうち、知識レベルの能力の評価結果を登録したDBである。
スキル評価DBは、能力評価のうち、スキルレベルの能力の評価結果を登録したDBである
。
【0097】
コンピテンシー評価DBは、能力評価のうち、コンピテンシーレベルの能力の評価結果を登録したDBである。
ワークフローDBは、組織DBに定義された組織階層構造及び社員DBに定義された評価者の情報を元に、成果評価タスク・能力評価タスクの実施割当と進捗状況の管理を行う情報を登録したDBである。
【0098】
目標トラッキング施策DBは、目標トラッキングにて実施された1on1コミュニケーション
・コーチング面談の中で設定された成果目標達成、能力向上達成のための能力項目と施策内容を登録したDBである。
【0099】
ミーティングDBは、上記目標トラッキングにて実施された1on1コミュニケーション・コーチング面談の実施日時、参加者、自然言語による面談内容が登録されたDBである。
【0100】
自律学習DBは、社員がキャリアの実現、能力向上のために実施した自律学習の実施日時、実施内容が登録されたDBである。
【0101】
学習コンテンツDBは、本システムが提供するコンテンツ学習に用いることができるコンテンツ保存庫に格納されたコンテンツの情報を登録したDBである。
【0102】
業務活動・成果責任DBは、業務活動DBに格納された個別の業務活動と成果責任DBに登録された個別の成果責任の関連付け情報を機械学習によって生成したDBである。
【0103】
業績指標DBは、成果目標の設定でシステムが自然言語解析し成果目標に必要な業績指標を推奨する際に参照する業績指標例が登録されたDBである。
【0104】
成果評価結果は、成果評価DBに登録された成果評価を出力した結果である。
【0105】
評価加重計算は、能力評価で行われる。知識・スキル・コンピテンシーの評価結果に対して、評価対象者の職務の能力モデルに対する充足度から評価点を計算するが(能力モデルを100%満たせば100点)、その際、コンピテンシーの評価をより重要視するため、知識・スキルよりも倍のウェイトで計算を行うような調整・計算を行う。これを評価加重計算という。
【0106】
能力総合評価結果は、知識レベルの能力の評価結果を登録した知識評価DB、スキルレベルの能力の評価結果を登録したスキル評価DB、コンピテンシーレベルの能力の評価結果を登録したコンピテンシー評価DBを参照して、被評価者の総合的な評価を出力した結果である。
【0107】
[基本情報管理部]
本システムのサーバには、ソフトウェアにより基本情報管理部が構築されている。システムの運用にあたっては、初期設定として、事前に基本情報管理部にて組織構造を登録しておく。この作業は、通常は、人事部の担当者が行うこととなろう。
【0108】
基本情報管理部は、人材管理部、組織管理部、職務定義部、適用年度設定部を有する。人材管理部は、社員の情報・・氏名、年齢、所属組織、職務等を社員DBに登録する。
【0109】
組織管理部は、組織DBに組織名とその組織の機能の設定登録をする。営業、開発、業務などである。
【0110】
職務定義部は、職務DBに組織の中に存在する職務の設定登録をする。平社員、課長、部長などである。事業部長の例を
図7に示す。
【0111】
適用年度設定部は、当該人事管理の運用の適用年度を設定する。
【0112】
[制度設計管理部]
制度設計管理部は、成果評価制度管理部と、能力評価制度管理部とからなる。
【0113】
成果評価制度管理部は、成果評価を行うためのもので、成果責任領域定義部、成果責任領域適用部と、職務目的定義部とを有する。
【0114】
成果責任領域定義部は、成果責任領域DBに成果責任領域を登録する情報登録部である。
【0115】
成果責任領域適用部とは、全社に適用される成果責任領域、例えばこれが8つの領域があったとして、上級管理職は当然すべての成果責任領域に対しての責任を負う(成果責任をもつ)が、例えば入社したての社員は、8つのうちの3つだけの責任を負えばよい、というような運用を行う場合、こうした職務ごとに適用する成果責任領域、すなわち誰がどの成果責任を負うのかを管理するのが成果責任領域適用部である。これに対応し、データを保管する成果責任領域適用DBがある。
【0116】
なお、職務目的定義部は、職務目的を職務DBに登録する入力部である。
【0117】
能力評価制度管理部は、組織機能定義部と、知識ジャンル管理部と、知識リスト管理部と、スキル管理部と、コンピテンシー管理部と、ディクショナリ管理部と、職務の能力モデル管理部とを有する。
【0118】
組織機能定義部は、組織機能の定義を組織DBに登録する情報登録部である。
知識ジャンル管理部は、職務に必要な知識のジャンルを登録する情報登録部である。
【0119】
知識リスト管理部は、職務に必要な知識を前記知識ジャンル管理部で登録されたジャンル対応で知識定義DBに登録するための情報登録部である。
【0120】
スキル管理部は、職務に必要なスキルをスキル定義DBに登録するための情報登録部である。
【0121】
コンピテンシー管理部は、職務に必要なコンピテンシーをコンピテンシー定義DBに登録するための情報登録部である。
【0122】
ディクショナリ管理部は、コンピテンシーディクショナリーの登録内容を編集・修正する等を行うものである。
ここでは、組織機能別に必要とされるコンピテンシーの定義および0~6の各レベルに対応する具体的な行動基準例を設定する。
【0123】
職務の能力モデル管理部は、職務に応じて、どのような知識が必要かなど、その職務能力の理想モデルを登録した情報登録部である。
職務の能力モデル管理部は、知識ジャンル管理部と、知識リスト管理部と、スキル管理部と、コンピテンシー管理部にて定義した各能力要素を、組織機能別・職務別の能力モデル(
図6のマトリックス)を作成・管理する。
【0124】
知識・スキルの能力レベルは0~4、コンピテンシーの能力レベルは0~6とし、組織機能・職務等級ごとに、必要な能力レベルを設定する。能力モデルのレベルはシステムに産業別に初期データとして設定してあるが、個別企業毎に、導入コンサルでその組織に適したものに改訂する。
【0125】
これらに登録された能力モデルは、能力評価のリファレンス情報として用いられる。
【0126】
<システムの運用>
以下、本システムを利用した人事管理を説明する。
【0127】
まず、前提として、
図8に示したように、社員情報登録部により、社員全員が人材として登録される。社員番号、顔写真、名前、所属組織、職務、評価者などである。
【0128】
また、
図9のように、組織登録部により、組織名称、その親組織、組織責任者、その組織の属性としての機能別組織名が登録される。
【0129】
また、職務登録部により、
図10のように、職務名、評価権限の有無、システムへの閲覧権限が登録される。職務にはランク(職務等級)が付けられている。
【0130】
さらに、
図11のように、成果責任領域登録部より成果責任領域を登録しておく。
また、
図12のように機能別組織名も登録しておく。ここで登録した機能別組織名は組織登録部(
図9)、職務の能力モデル登録部(
図18)などで参照される。
【0131】
また、
図13のように、知識リスト登録部で、知識ジャンル、知識名が登録される。知識ジャンルは、知識を区分するための大分類名称である。
【0132】
さらに、
図14のように、スキル登録部でスキルを登録する。ここでは、スキルが所属する大分類名称であるクラスタにスキル名、さらに、スキルの定義を登録しておく。
スキルについては、さらに、その詳細定義、レベルごとの定義が
図15のように登録され、表示される。
【0133】
また、
図16のように、コンピテンシー管理画面にて、コンピテンシーが登録される。さらに、
図17のように、コンピテンシーディクショナリーが備えられ、コンピテンシーの詳細定義、レベルごとの定義を登録し、閲覧できるようになっている。
【0134】
以上のように登録された、知識、スキル、コンピテンシーは、
図18~
図20のように組織機能別職務の能力モデルとして登録し、閲覧可能となる。
なお、以上の各登録内容は、対応するDBにそれぞれ格納される。
【0135】
<成果評価の方法>
成果評価は期首に行う。まず、人事部が、システムを起動して、成果評価の実施開始を指定すると評価タスクが開始される。
【0136】
評価タスクとは、各組織における成果評価の特定のプロセスを社員が行うことである。例えば成果評価タスクでは、上司Bの成果責任の設定終了後に人材Aの成果責任の設定が開始される。人材Aの成果責任の設定をするには、上司Bの成果責任の設定が必要である。これは組織目標を適切に末端の社員までブレークダウンするためには組織構造の上から細分化して定義を行っていく必要があるからである。
【0137】
社員の評価タスク表示画面には
図21のように、評価タスクが表示されるので、
図22
の指示に従い、タスク開始ボタンを押してタスクを開始する。
【0138】
こうした評価タスクの割当、進捗状況の管理はシステムが自動的に生成・管理するワークフローDBに記録され、タスクの制御に用いられる。
成果評価タスクは以下の4つである。
【0139】
[タスク1:成果責任の設定タスク]
これは、成果責任設定部で行う。ここでは、成果責任領域とその領域での成果責任が登録される。
【0140】
ここでは、業務活動登録部にて、
図23のように、日常行っている実際の具体的な業務活動の内容を登録していく。その内容は、
図24に示した成果責任設定部に反映される。ここでは、AIが、個々の業務活動を特定の成果責任に関連付けた情報を参酌して対応する成果責任に振り分ける。
図24の成果責任「当社のサービス・ソリューション戦略を立案する」に振り分けられたものが、「業界誌を読む」「他部門の部長と情報交換」「クラインと企業情報を調査する」である。振り分けられない場合は、関連度の高い成果責任記述を例示し、被評価者であるユーザーが、手動で対応関係をつける。AIはこれを学習し、学習データとして保存し、次回からは、同じような業務活動は同様に振り分ける。
なお、手動でも振り分けられない業務は、不要な業務と評価されるので、業務活動DBにおいて、成果責任に関連づけられていない業務として特定される。そこで、このような不要な業務をまとめて一覧出力することで、業務の合理化を図ることができる。
この点を俯瞰すると、被評価者が入力した業務活動についての記述を自然言語解析し、さらに、業務活動・成果責任データベースに記録されている業務活動と成果責任の関連付けデータを参照し、文章類似度判定による関連度スコアの計算によって、前記データにおける成果責任と関連度の低い業務を不要である可能性の高い業務として示す手段の一例が実現されていると言える。
このように、日常業務を記述し、業務と成果責任とを紐づける作業をすることで、成果責任に関係のない業務があぶり出され、本来不要な業務が特定できるので、無駄な作業の合理化に寄与できる。
【0141】
具体的には、業務活動・成果責任関連付け部に「顧客へ訪問する」という業務活動文章を入力すると、業務活動・成果責任関連付け部からの出力は「売上高を拡大する:0.76」「顧客数を増加させる:0.65」「顧客との関係性を強化する:0.55」などのように、成果責任の例文と関連度スコア(0.0~1.0)が得られるので、関連度スコアが0.75を超える場合はその結果を設定し、0.75を超える候補がない場合は、その上位3件を候補として入力画面へ表示する。
成果責任等の設定例を
図7に示す。ここでは、成果責任領域に対応し、成果責任と登録され、かつ、その重要度(%)が登録される。そして、その職務に必要な知識・経験レベル、職務に必要なスキルとレベル、職務に必要なコンピテンシーとレベルが示される。
【0142】
[タスク2:成果目標の設定タスク]
これは、成果目標設定部で行うが、成果責任に対して、一対一で成果目標設定を行なう。
図25にその例を示す。ここでも、上司Bの成果目標の設定終了後に人材Aの成果目標の設定が開始される。
【0143】
成果目標設定部は、成果責任に対して入力された成果目標に対して自然言語解析を行い、目標の記述の中に具体的な業績指標(例:売上高)と達成水準(例:1億円)が含まれているかを判定し、存在しない場合は画面上へ設定を促す注意文を表示する。この際、業績指標DBを検索し、類似する成果責任に対する成果目標設定時に使用する業績指標例を例示し、選択設定可能とする。選択設定された業績指標は再度業績指標DBへ登録され、次回
移行の業績指標例として例示する候補となる。
【0144】
具体的には、「売上高を2億円達成する」という成果目標を成果目標設定部の自然言語解析器へ入力すると、「売上高」「2億円」というエンティティが得られる。この場合、具体的な業績指標としての「売上高」と、達成水準である「2億円」が含まれており、成果目標としては妥当な表現であると判断できる。
【0145】
対して「売上高を前期より拡大する」という成果目標の場合、得られるエンティティは「売上高」のみとなり、達成水準が含まれていないことが判定できるため、入力画面へ具体的な達成水準が含まれていない旨を表示し、修正を促す。
【0146】
[タスク3:中間評価タスク]
中間評価タスクは4半期毎もしくは、半期に1回程度行う。
【0147】
成果責任に対して、一対一で成果目標設定を行っているので、中間・期末評価は、この成果目標(具体的な対象・達成水準が記載されているもの)に対しての評価を行う。
【0148】
目標達成度合いの評価は、上司が
図26で示した、中間評価入力画面にて行う。ここには、成果責任領域、成果責任、業績指標(業績の良し悪しを判断する価値基準)、成果目標、評価期限、ウェイト、信号管理が表示されている。
【0149】
ここで、ウェイトとは、社員のすべての成果目標に対して全体が100%となるように成果目標毎に重要度で重み付けしたものである。
【0150】
信号管理は部下が中間評価時点での成果目標の進捗度合いを青:順調・黄:注意・赤:困難の3段階で設定し、上司へ報告するものである。
【0151】
上司は部下の報告を受け、面談を設定し、特に信号管理が注意・困難の成果目標に対して、原因の特定や改善策を検討・指示する。
【0152】
<タスク4:期末評価タスク>
最終的な評価は、期末評価タスクとして期の最後に行う。ここでは、
図27に示したような、期末評価入力画面で評価入力をする。評価点は、0~150点の評価点とし、評価点に対応する標語S,A,B,C,Dを付与する。例えば、S=150~120点、A=119~8
0点、B=79~60点、C=59~40点、D=39点以下という具合である。
【0153】
評価の判断材料は、成果目標の達成度である。成果責任に対して、一対一で成果目標設定を行っており、成果責任は、その職務の中長期的な責任を示すもので、成果目標はその成果責任に対して当該事業年度で達成すべき具体的な目標を設定しているため、評価の際はこの成果目標の達成度合いを評価する。
評価結果を用いて報酬の決定をする。
例えば、報酬は、S・・標準報酬より20%アップ
A・・10%アップ
B(標準通り),
C・・10%ダウン
D・・20%ダウン
とする。
<能力評価の方法>
人事部が、システムを起動して、能力評価の実施開始を指定する。
【0154】
能力評価は期末に行うが、能力目標は期首に設定する。
能力評価タスクは以下の3つである。
【0155】
[タスク1:知識とスキルの評価タスク]
図23の知識とスキルの評価画面において、上司Bが先に部下Aの評価値を入力する。その後、部下A が自己評価する。自己評価の結果は再度上司Bに通知されるので、面談でそ
の各評価の差分を見て、認識の差の原因、対策を検討し、フィードバックする。面談結果はシステムに入力しておく。
【0156】
[タスク2:コンピテンシーの360度評価の評価者選定タスク]
図29コンピテンシー評価者選択画面で、部下Aが、自分のコンピテンシー評価者を複
数指定する。これを、上司Bが確認し、承認するか修正を入れる。
【0157】
[タスク3:コンピテンシー評価タスク]
ここでは、タスク2で選定されたコンピテンシー評価者全員に評価依頼をする。部下A
は自己評価をする。そして、
図30のコンピテンシー評価画面にて、全員が所定画面に入力を完了すると、評価完了通知が部下Aに通知されるが、このとき、他の評価者全員によ
る評価の平均が生成され、Aに通知される。結果は
図31のように表示され、評価者個々
人の評価はAに通知されない。なお、その内容は、人事部や上司にも通知され、能力向上
のためのコーチングや自律学習、キャリアの検討などに利用される。
【0158】
<登用・配置制度>
上記能力評価の結果を用いると、空いたポストに最適な人材を推奨するこが可能となるが、同様に、新しく設定された職務につき、それを全うする確率の高い順に候補者を表示することが可能となる。すなわち、新しい職務に似た職務の能力プロファイルを前記組織機能別能力モデルデータベースから出力させ、これを編集して新職務要件としての能力モデルを完成させて新職務の能力プロファイルを前記組織機能別能力モデルデータベースに登録し、その後、前記知識評価DB、前記スキル評価DB、前記コンピテンシー評価DB、に登録してある社員の現状の能力評価結果と新職務の能力プロファイルを対比して、新職務に必要な能力プロファイルとの類似性の高い順に、新職務の候補者として示す。
【0159】
具体的には、民間市場向けに営業展開を行っている企業に、新たに官公庁向け営業の部門を新設することとなり、その部門長職を新設することとなった場合、人事部の担当者は民間市場向け営業の部門長職の能力プロファイルをシステムから出力し、「官公庁向け営業の知識:レベル2」「ライティングスキル:レベル3」「情報指向性:レベル4」といった新たに必要な能力とそのレベルを追加して官公庁向け営業部門長職の能力モデルを作成することができる。その上で、当該職務に適合する能力を持った社員を検索すると、能力モデルに定義された各能力項目と全社員の能力プロファイルを数値比較し、最も能力モデルに近い順、すなわち、社員の能力プロファイルの数値/必要とされる能力モデルの数値の値が1に近い順、に社員を候補者として表示選択可能とする。
【0160】
<目標トラッキングの方法>
目標トラッキングは期初、前述の成果目標の設定を行う際に開始され、月次、もしくは四半期ごとに実施する。目標トラッキングでは上司と部下の1on1コミュニケーションもしくはコーチング面談にて、当該年度、部下が成果目標の達成および能力向上を達成するために必要な行動や施策を検討し、その内容をコンピュータに記録する。コンピュータはこの記録内容を自然言語解析し、四半期ごともしくは半期に1回程度行われるコーチング面談にて、これまでの施策の実施状況の解析結果より、効果の高いと類推される施策を目標トラッキングDBから抽出し、優先順位をつけて表示する。
【0161】
具体的には、上司と部下の期初のコーチング面談にて、部下の能力向上を意図した施策として「プレゼンテーションスキル」のレベルを年度中に2上げる、という課題を設定する。この施策は目標トラッキング施策DBに記録され、また、ミーティングDBに、面談の内容が自然文で記録される。4半期経過後のコーチング面談では上司は部下にプレゼンテーションスキルを向上させる施策の実施状況をヒアリングし、具体的な行動や学習を促す。また、レベルが上がっていることを確認できた場合は、向上したレベルを目標トラッキング施策DBへ入力する。こうして目標トラッキング施策DBには成果目標・能力目標の向上に対して行った取組と獲得した能力レベルが蓄積されていく。
コンピュータは能力レベルが目標とするレベルに到達した際、組織機能別能力モデルDBに格納された部下の職務の能力モデルと、現在の部下の能力モデルを数値比較し、また、目標トラッキング施策DBから実施済の施策を検索し、能力モデルとの乖離が大きく、能力向上施策が未実施の能力項目を選択し、取り組むべき施策として画面上に推奨を表示する。
【0162】
<自律学習の方法>
社員はいつでも自身が必要なときにシステム上の自立学習画面から必要なコンテンツを選択し、学習することができる。社員自身が目標とするキャリアを設定し、能力評価の実施もしくは自身で能力プロファイルを登録することで、コンピュータが希望するキャリアの能力モデルと現在の社員の能力プロファイルを比較し、最も効果が期待できる能力要素の学習案を自律学習DBから抽出し、推奨する。自律学習で取り組んでいる学習内容は上記目標トラッキングの施策実施状況の解析にも利用される。
【0163】
具体的には、組織機能別能力モデルDBに格納された社員の職務に求められる能力モデルと、現在の社員の能力モデルを数値比較し、また、自律学習DBから実施済の学習履歴を検索し、能力モデルとの乖離が大きく、学習が未実施の能力項目を学習コンテンツDBから選択し、取り組むべき施策として画面上に推奨を表示する。自律学習で取り組んでいる学習内容は上記目標トラッキングの施策実施状況の解析にも利用するため目標トラッキング施策DBに学習情報を登録する。
【0164】
なお、
図5で示したように、本システムはWeb上に構成されるため、webに接続可能な端末さえあれば、どの地域でも運用できる。そして、成果評価を人事管理で行うので、テレワークやリモートワークであっても、最適な人事管理を行うことができ、現在望まれている働き方改革にふさわしい人事管理を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0165】
1.社員DB
2.組織DB
3.職務DB
4.組織の機能分類DB
5.成果責任領域DB
6.業務活動DB
7.成果責任DB
8.成果目標DB
9.成果評価DB
10.成果評価結果
11.知識定義DB
12.スキル定義DB
13.コンピテンシー定義DB
14.コンピテンシーディクショナリDB
15.組織機能別能力モデルDB
16.知識評価DB
17.スキル評価DB
18.コンピテンシー評価DB
19.評価加重計算
20.能力総合評価結果
21.ワークフローDB
22.目標トラッキング施策DB
23.ミーティングDB
24.自律学習DB
25.学習コンテンツDB
26.業務活動・成果責任DB
27.業績指標DB