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特許7470974地盤改良装置の駆動制御方法および地盤改良装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】地盤改良装置の駆動制御方法および地盤改良装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20240412BHJP
【FI】
E02D3/12 102
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020087826
(22)【出願日】2020-05-20
(65)【公開番号】P2021181719
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000177416
【氏名又は名称】三和機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089934
【弁理士】
【氏名又は名称】新関 淳一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100092945
【弁理士】
【氏名又は名称】新関 千秋
(72)【発明者】
【氏名】鳥飼 光俊
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-282454(JP,A)
【文献】特開昭53-117208(JP,A)
【文献】特開平08-134888(JP,A)
【文献】特開2016-065446(JP,A)
【文献】特開2008-095388(JP,A)
【文献】特開2000-220134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースマシン1に設けたリーダー2に昇降自在に回転駆動部3を取付け、回転駆動部3には下部に地盤改良や掘削作業を行う地盤改良装置5を駆動する回転軸体4の上部側を取付け、回転軸体4には地盤改良装置5の撹拌ロッド10を取付け、回転駆動部3の駆動モーター20を、常に最大出力を出力するように、昇降モーター17による地盤改良装置5を昇降させる昇降速度と関連させて自動制御する構成とし、前記回転軸体4および撹拌ロッド10は、中空部材により形成し、回転軸体4および撹拌ロッド10内には地盤の土壌改良剤を地盤改良装置5に供給する供給ホースを設け、地盤改良装置5に設けた撹拌部6の撹拌翼11を回転させながら地盤改良装置5から噴出させた土壌改良剤と地盤構成材とを撹拌し、回転駆動部3の駆動モーター20は地盤改良装置5の撹拌翼11およびオーガーヘッド15の回転速度を無段階に変更可能とし、駆動モーター20のトルクもしくは動力を検出し、地盤改良装置5の掘削負荷が駆動モーター20の許容されるトルク以下の場合は、駆動モーター20の許容される出力限界範囲まで自動的に駆動モーター20の回転を上げ、単位深度当たりの撹拌翼11の羽根切り回数を維持できる範囲で掘削下降速度、もしくは、引き抜き速度を自動的に制御する地盤改良装置の駆動制御方法。
【請求項2】
ベースマシン1に設けたリーダー2に昇降自在に回転駆動部3取付け、回転駆動部3には、下部に地盤改良や掘削作業を行う地盤改良装置5を駆動する回転軸体4の上部側を取付け、回転軸体4には地盤改良装置5の撹拌ロッド10を取付け、撹拌ロッド10には撹拌部6の撹拌翼11およびオーガーヘッド15を取付け、地盤改良装置5は、地盤改良装置5の所定部分に設けた突出口より、回転軸体4および撹拌ロッド10内に設けた供給ホースを介して土壌改良剤を噴出する構成とし、回転駆動部3の駆動モーター20は地盤改良装置5の撹拌翼11およびオーガーヘッド15の回転速度を無段階に変更可能とし、駆動モーター20のトルクもしくは動力を検出し、地盤改良装置5の掘削負荷が駆動モーター20の許容されるトルク以下の場合は、駆動モーター20の許容される出力限界範囲まで自動的に駆動モーター20の回転を上げ、単位深度当たりの撹拌翼11の羽根切り回数を維持できる範囲で掘削下降速度、もしくは、引き抜き速度を自動的に制御する構成とした地盤改良装置。
【請求項3】
請求項において、ベースマシン1の操作部のモニタを設け、モニタには、駆動モーター20の回転数と、地盤改良装置5の回転数と、地盤改良装置5の回転数に応じた推奨掘削(下降)速度、もしくは、引き抜き(上昇)速度を表示する構成とした地盤改良装置。
【請求項4】
請求項または請求項において、回転駆動部3の駆動モーター20は、油圧ポンプ35および油圧モータ36とによる構成、あるいは、インバーターモーター37により構成した地盤改良装置。
【請求項5】
請求項~請求項の何れかにおいて、地盤改良装置5に供給する土壌改良剤は、水とセメントとを混練して製造するセメントミルクにより構成し、セメントミルクを製造するセメントミルク供給プラント40と地盤改良装置5とを、地盤改良装置5の昇降速度に応じて供給プラント40のセメントミルクの吐出量を変更するように自動制御する構成とした地盤改良装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤の掘削あるいは掘削に伴って行う地盤改良するための地盤改良装置の駆動制御方法および地盤改良装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来の土壌改良作業は、地盤改良装置の撹拌部およびオーガーヘッドを、予め余裕を持って設定した回転数および回転トルクで駆動回転させ、施工現場の地盤の状態が硬く、回転負荷が大きくなると、回転数を低くし、あるいは、昇降速度を遅くする制御を行う方法は、公知である(特許文献1参照)。
この公知例は、地盤改良装置の駆動トルクと回転速度の関係において、設定した複数の変速段による変速制御において、地盤改良装置の撹拌翼の羽根切回数が、地盤改良装置の駆動トルクの上限値と下限値の間で最適な駆動トルクとなるように安定的かつ円滑に変速制御を行っても、地盤組成の不均一などがある場合に生じる、撹拌部の回転速度の変動により、羽根切回数が目標値に達しないおそれがある課題があり、この課題を公知例は、押しのけ容積を連続的に変更可能な油圧モータにより地盤改良装置を、設定した上限値と下限値の間で最適な駆動トルクとなるように、撹拌部の羽根切回数が目標値を下回ることのないように制御することで解決している。
そして、硬い地盤で回転負荷が大きくなり過ぎると、撹拌部の回転が停止するので、これを回避するため、回転数を低くし、あるいは、昇降速度を遅くしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-33818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記公知例では、予め余裕を持って設定した上限値と下限値の間で、地盤の性状に応じて、最適な駆動トルクを自動選択する制御とし、地盤組成の不均一などがあった場合の撹拌部の回転速度の変動に応じて段階的設定速度域の選択を変更する制御としているので、例えば、基本作業では、駆動モーターの能力の7割程度となるように、回転数を設定し、硬い地盤で地盤改良装置の回転負荷が掛かると、駆動モーターの能力を9割程度に上昇させ、それでも、回転負荷が大きいときは昇降速度を遅くして、地盤改良装置の負荷を軽減させて作業を行っていた。
なお、公知例では、軟弱地盤における回転負荷の小さい作業の回転制御方法の記載はなく、作業当初の回転数は低く設定する理由の明示もないが、作業状態に応じて回転数を上げる制御をしており、回転数を上げることによって、地盤改良装置の回転負荷が大きくなり過ぎると、回転が停止してしまうので、これを回避するため、回転数を低くし、あるいは、昇降速度を遅くする制御を実行し、この制御を可能にするため、常時、駆動モーターの出力に余裕を持たせ、対応できないときに、駆動モーターの出力(回転数・トルク)を自動的に高くする制御を実行することとしていた。
このことは、通常作業では、駆動モーターを連続運転させても故障あるいは破損しない許容範囲内における最大出力に対して7割程度に予め設定した出力と予め設定した昇降速度で常時作業することになり、駆動モーターの出力に余裕を持たせるために控えている3割分以上が常時失われている出力損失分、作業効率が低下することになる。
本発明では、地盤改良装置の駆動モーターの負荷変動が、地盤改良装置の昇降によっても生じることに着目し、地盤改良装置の昇降によって発生する負荷を考慮して地盤改良装置の駆動モーターによる駆動出力変速制御することにより、地盤改良作業の作業効率を向上させ、また、土壌改良作業の容易化を図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、ベースマシン1に設けたリーダー2に昇降自在に回転駆動部3を取付け、回転駆動部3には下部に地盤改良や掘削作業を行う地盤改良装置5を駆動する回転軸体4の上部側を取付け、回転軸体4には地盤改良装置5の撹拌ロッド10を取付け、回転駆動部3の駆動モーター20を、常に最大出力を出力するように、昇降モーター17による地盤改良装置5を昇降させる昇降速度と関連させて自動制御する構成とし、前記回転軸体4および撹拌ロッド10は、中空部材により形成し、回転軸体4および撹拌ロッド10内には地盤の土壌改良剤を地盤改良装置5に供給する供給ホースを設け、地盤改良装置5に設けた撹拌部6の撹拌翼11を回転させながら地盤改良装置5から噴出させた土壌改良剤と地盤構成材とを撹拌し、回転駆動部3の駆動モーター20は地盤改良装置5の撹拌翼11およびオーガーヘッド15の回転速度を無段階に変更可能とし、駆動モーター20のトルクもしくは動力を検出し、地盤改良装置5の掘削負荷が駆動モーター20の許容されるトルク以下の場合は、駆動モーター20の許容される出力限界範囲まで自動的に駆動モーター20の回転を上げ、単位深度当たりの撹拌翼11の羽根切り回数を維持できる範囲で掘削下降速度、もしくは、引き抜き速度を自動的に制御する地盤改良装置の駆動制御方法としたものである。
請求項の発明は、ベースマシン1に設けたリーダー2に昇降自在に回転駆動部3取付け、回転駆動部3には、下部に地盤改良や掘削作業を行う地盤改良装置5を駆動する回転軸体4の上部側を取付け、回転軸体4には地盤改良装置5の撹拌ロッド10を取付け、撹拌ロッド10には撹拌部6の撹拌翼11およびオーガーヘッド15を取付け、地盤改良装置5は、地盤改良装置5の所定部分に設けた突出口より、回転軸体4および撹拌ロッド10内に設けた供給ホースを介して土壌改良剤を噴出する構成とし、回転駆動部3の駆動モーター20は地盤改良装置5の撹拌翼11およびオーガーヘッド15の回転速度を無段階に変更可能とし、駆動モーター20のトルクもしくは動力を検出し、地盤改良装置5の掘削負荷が駆動モーター20の許容されるトルク以下の場合は、駆動モーター20の許容される出力限界範囲まで自動的に駆動モーター20の回転を上げ、単位深度当たりの撹拌翼11の羽根切り回数を維持できる範囲で掘削下降速度、もしくは、引き抜き速度を自動的に制御する構成とした地盤改良装置としたものである。
請求項の発明は、ベースマシン1の操作部のモニタを設け、モニタには、駆動モーター20の回転数と、地盤改良装置5の回転数と、地盤改良装置5の回転数に応じた推奨掘削(下降)速度、もしくは、引き抜き(上昇)速度を表示する構成とした地盤改良装置としたものである。
請求項の発明は、回転駆動部3の駆動モーター20は、油圧ポンプ35および油圧モータ36とによる構成、あるいは、インバーターモーター37により構成した地盤改良装置としたものである。
請求項の発明は、地盤改良装置5に供給する土壌改良剤は、水とセメントとを混練して製造するセメントミルクにより構成し、セメントミルクを製造するセメントミルク供給プラント40と地盤改良装置5とを、地盤改良装置5の昇降速度に応じて供給プラント40のセメントミルクの吐出量を変更するように自動制御する構成とした地盤改良装置としたものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明では、昇降モーター17による地盤改良装置5を昇降させる昇降速度と関連させて地盤改良装置5の出力を制御するので、回転駆動部3の駆動モーター20を、常に連続運転させても故障あるいは破損しない許容範囲内における最大出力を出力させても、作業状態に応じて地盤改良装置5の昇降速度を変更することにより、地盤改良装置5の撹拌による土壌改良の均一化を確保しつつ、従来の余裕を持たせて行う駆動モーター20の出力制御の、控えた余裕分として常時生じる出力損失分を、常時出力可能となって、作業効率を著しく向上させることができる。
また、駆動モーター20のトルクもしくは動力を検出し、地盤改良装置5の掘削負荷が駆動モーター20の許容されるトルク以下の場合は、駆動モーター20の許容される出力限界範囲まで自動的に駆動モーター20の回転を上げ、単位深度当たりの撹拌翼11の羽根切り回数を維持できる範囲で掘削下降速度、もしくは、引き抜き速度を自動的に制御するので、駆動モーター20を、常に連続運転させても故障あるいは破損しない許容範囲内における最大出力を出力させることができ、これにより、従来の余裕を持たせて行う駆動モーター20の出力制御の、控えた余裕分として常時生じる出力損失分を、常時出力可能となって、作業効率を著しく向上させることができる。
請求項の発明では、回転駆動部3の駆動モーター20は地盤改良装置5の撹拌翼11およびオーガーヘッド15の回転速度を無段階に変更可能とし、駆動モーター20のトルクもしくは動力を検出し、地盤改良装置5の掘削負荷が駆動モーター20の許容されるトルク以下の場合は、駆動モーター20の許容される出力限界範囲まで自動的に駆動モーター20の回転を上げ、単位深度当たりの撹拌翼11の羽根切り回数を維持できる範囲で掘削下降速度、もしくは、引き抜き速度を自動的に制御する構成としているので、回転駆動部3の駆動モーター20を、常に許容範囲内における最大出力を出力させつつ、作業状態に応じて地盤改良装置5の昇降速度を変更することにより、地盤改良装置5の撹拌による土壌改良の均一化を確保しつつ、従来の余裕を持たせて行う駆動モーター20の出力制御の、控えた余裕分として常時生じる出力損失分を、常時出力可能となって、作業効率を著しく向上させられる地盤改良装置を提供できる。
請求項の発明では、ベースマシン1の操作部に設けたモニタにより、駆動モーター20の制御状態および地盤改良装置5の作業状態を視認することができ、従来の余裕を持たせて行う駆動モーター20の出力制御の、控えた余裕分として常時生じる出力損失分を、常時出力可能となって、作業効率を向上させることができると共に、操作性および作業性を向上させて、一層、作業効率を向上させることができる。
請求項の発明では、回転駆動部3の駆動モーター20を、油圧ポンプ35および油圧モータ36とによる構成しているので、従来の出力損失する回転制御を、常時出力の自動制御とする本発明の出力制御を容易に実行でき、また、駆動モーター20をインバーターモーター37により構成することにより、一層精緻な出力制御とすることができる。
請求項の発明では、地盤改良装置5に供給する土壌改良剤は、水とセメントとを混練して製造するセメントミルクにより構成し、セメントミルクを製造するセメントミルク供給プラント40と地盤改良装置5とを、地盤改良装置5の昇降速度に応じて供給プラント40のセメントミルクの吐出量を変更するように自動制御する構成としているので、地盤改良装置および供給プラント40とを関連制御することにより、一層、地盤改良作業の操作性および作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】地盤改良装置の側面図。
図2】ブロック図。
図3】(A)駆動モーターの回転数とトルクと地盤改良装置の昇降速度の関係を示した表図。 (B)同模式図。
図4】モニタの正面図。
図5】拡大ヘッド部分の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態を図により説明する。1はベースマシン、2はベースマシン1に設けたリーダー、3はリーダー2に昇降自在に取付けた回転駆動部(アースオーガー)であり、回転駆動部3には回転軸体4の上部を取付ける(図1)。リーダー2は回転駆動部3を支持するためのものであり、リーダー2は、地盤に対して垂直な状態から水平な状態まで起伏可能に構成する共に、ベースマシン1と共に旋回する構成としている。
回転駆動部3の回転軸体4の下部には地盤改良装置5の撹拌部6の撹拌ロッド10の上部を着脱自在に取付ける。撹拌ロッド10には撹拌部6の撹拌翼11を設ける。撹拌翼11は撹拌ロッド10に対して放射方向に設けられていればよく、その構成は任意である。
【0009】
本実施形態では、撹拌翼11は撹拌ロッド10の軸心方向(上下方向)と回転方向に複数並設している。
回転軸体4および撹拌ロッド10は中空の管状部材で形成し、回転軸体4および撹拌ロッド10の内部には土壌改良剤を供給する供給管12を設け、供給管12の下端は地盤改良装置5の所定位置に設けた吐出口13にて開口させ、供給管12を介して供給された土壌改良剤は吐出口13から地盤中に注入され、注入した地盤改良剤と土砂とを撹拌部6により撹拌する(図5)。14は回転軸体4および撹拌ロッド10を支持する振れ止め部である(図1)。
【0010】
地盤改良装置5は、撹拌ロッド10の下部に地盤を掘削するオーガーヘッド15を設けて構成する。
起立させたリーダー2に対して地盤改良装置5はワイヤー16を出し入れさせることにより昇降する。17は地盤改良装置5である撹拌部6およびオーガーヘッド15を昇降させる昇降モーター(ウインチ)であり、撹拌部6およびオーガーヘッド15が昇降すると、回転駆動部3と共に撹拌ロッド10も同じ量だけ昇降し、撹拌ロッド10を回転駆動させながら下降させて、掘削し、同時に、地盤改良装置5から地盤改良剤を噴出させて地盤構成物に注入し、この地盤構成物を撹拌して地盤改良を行う。地盤改良剤は、セメントミルク等で形成され、回転軸体4および撹拌ロッド10の中空部を通して地盤改良装置5に供給される。
【0011】
しかして、地盤改良装置5を駆動させる回転駆動部3の駆動モーター20が、常に最大出力を出力するように、昇降モーター17による地盤改良装置5を昇降させる昇降速度と関連させて、自動制御する構成とする。
土壌改良作業において、そもそも軟弱地盤では駆動モーター20の回転負荷が小さく、回転負荷が小さいのに駆動モーター20の回転数を高くすると、セメントミルク等の液状の土壌改良剤は遠心力により改良地盤部分のうちの外側部分に偏ることになり、均質な土壌改良を望めないことになって、従来の回転制御は作業当初の駆動モーター20の回転数を低く設定し、作業状態に応じて回転数を上げる制御としており、回転数を上げることによって、地盤改良装置の回転負荷が大きくなり過ぎると、回転が停止してしまうので、これを回避するため、回転数を低くし、あるいは、昇降速度を遅くする制御を実行していた。
【0012】
換言すると、地盤改良装置5の撹拌部6およびオーガーヘッド15を、予め余裕を持って設定した回転数および回転トルクで駆動回転させ、施工現場の地盤の状態が硬く、回転負荷が大きくなると、回転数を低くし、あるいは、昇降速度を遅くする制御を行っていたが、このことは、駆動モーター20の能力を充分に発揮させていなかった。
つまり、常時、駆動モーター20の出力に余裕を持たせ、対応できないときに、駆動モーター20の出力(回転数・トルク)を自動的に高くする制御を実行していた。
このことは、通常作業では、駆動モーター20を連続運転させても故障あるいは破損しない許容範囲内における最大出力に対して7割程度に予め設定した出力と予め設定した昇降速度で常時作業することになり、駆動モーター20の出力に余裕を持たせるために控えている3割分が常時失われている出力損失分、作業効率が低下することになる。
【0013】
一方、駆動モーター20の負荷変動は、地盤改良装置5の昇降時の掘削抵抗や引き抜き抵抗に起因して変動することが判明し、本発明では、回転駆動部3の駆動モーター20に対する作業負荷が一定となるように自動制御している際に、地盤改良装置5の昇降時の回転駆動部3の駆動モーター20に対する負荷変動を利用して、自動回転制御することとし、回転駆動部3の駆動モーター20は地盤改良装置5の撹拌翼11およびオーガーヘッド15の回転速度を無段階に変更可能にし、駆動モーター20のトルクもしくは動力を検出し、地盤改良装置5の掘削負荷が駆動モーター20の許容されるトルク(負荷)以下の場合は、当初より、回転駆動部3の駆動モーター20を常時の最大出力駆動させつつ、例えば、回転駆動部3の駆動モーター20と回転駆動部3を昇降させる昇降モーター17とを、地盤に対する回転駆動部3の駆動モーター20が常時の最大最適出力を出力するように自動制御する構成とし、駆動モーター20を常に最大出力を出力させ、地盤に対して過剰回転となるときには、単位深度当たりの撹拌翼11の羽根切り回数を維持できる範囲で掘削下降速度、もしくは、引き抜き速度を自動的に制御して、地盤改良装置5に作業負荷(撹拌抵抗)を付与し、これにより、掘削・回転負荷が小さいときの遠心力による土壌改良剤の偏りを抑制しつつ、地盤の性状にあった地盤改良装置5の駆動力を発揮させるようにしたうえで、駆動モーター20の能力を常時最大限発揮させ、掘削撹拌作業の作業効率を向上させるのである。
【0014】
すなわち、従来では、駆動モーター20の回転出力と、地盤改良装置5の昇降速度とは、掘削負荷が過剰になったときのみ、地盤改良装置5の昇降速度を遅くさせるのみの対応であったが、本発明では、駆動モーター20を常時最大出力状態とし、掘削負荷が過剰になったときに地盤改良装置5の昇降速度を遅くさせることは当然とし、掘削負荷が小さいときにも、昇降速度を掘削負荷に応じて変速することにより、単位深度当たりの撹拌翼11の羽根切り回数を最適状態で維持させ、掘削撹拌作業の作業効率を向上させるのである。
【0015】
図3(A)はこの駆動モーター20の回転数とトルクと地盤改良装置5の昇降速度との関係を示した表図であり、トルクが大きいときは回転数は低く、かつ、昇降速度が遅いが、トルクが小さくなると回転数は高くなるので、昇降速度を速くしている。
同様に、 図3(B)は、この駆動モーター20が一定出力(許容最大出力)時の回転数とトルクと、地盤改良装置5の昇降速度と地盤改良装置5の昇降速度の関係を示した模式図であり、鎖線の反比例の反比例曲線Aが駆動モーター20の許容最大出力時の回転数とトルクの変化を示し、実線の反比例曲線Bは地盤改良装置5の昇降させる際の昇降速度の変化を示し、掘削負荷が小さく回転数が上昇するときに、昇降速度を速くして掘削負荷を大きくさせることを示している。
【0016】
具体的には、駆動モーター20に回転数を検出する回転計25と、駆動モーター20の回転トルク検出するトルク計26と、昇降モーター17による地盤改良装置5の昇降速度を検出する昇降速度計(深度計)27とを設け、これらのデータに基づき制御部28で自動制御する。29は手動昇降スイッチである。
なお、地盤改良装置5の昇降速度を検出する昇降速度計(深度計)27の構成は任意であり、一例を示すと、地盤改良装置5に牽引するワイヤー16とは別個にワイヤー27Aを設け、ワイヤー27Aの移動速度に時間を乗じて検出する構成としている。
【0017】
しかして、前記したように、軟弱地盤であれば、駆動モーター20の回転数を低速にし、撹拌翼11の羽根切り回数を維持して地盤の土砂と土壌改良剤とを撹拌するところ、軟弱地盤であっても、駆動モーター20の掘削負荷に対する許容出力限界範囲まで自動的に駆動モーター20の回転を上げたまま、単位深度当たりの撹拌翼11の羽根切り回数を維持できる範囲で掘削下降速度、もしくは、引き抜き速度を自動的に制御して地盤改良装置5の昇降速度を速めることにより、撹拌翼11の撹拌抵抗を大きくし、単位深度当たりの撹拌翼11の羽根切り回数を最適状態で維持させ、駆動モーター20が常に最大出力を無駄なく発揮させて、掘削撹拌作業の作業効率を向上させる。
【0018】
この場合、駆動モーター20の許容出力限界範囲は、原則、連続運転させても故障あるいは破損しない許容範囲内(例えば、9割程度)を想定しているが、設定は任意であり、故障あるいは破損しない範囲内の最大値を選択すると、作業効率を向上させられ、好適である。
また、故障あるいは破損しない許容範囲内において、常時駆動モーター20の出力を最大出力とし、最大出力時の地盤改良装置5の回転に対して、地盤の性状に合わせて、地盤改良装置5の昇降速度を、単位深度当たりの撹拌翼11の羽根切り回数を最適状態で維持させるように、昇降速度を自動変速制御する。
【0019】
また、ベースマシン1の操作部のモニタ30には、作業者が、手動で行う掘削撹拌作業する際に、地盤改良装置5(撹拌翼17)の回転数を表示する撹拌翼回転数表示部32と、地盤改良装置(撹拌翼5)の回転数に応じた推奨掘削(下降)速度、もしくは、引き抜き(上昇)速度を表示する昇降速度表示部33と、掘削撹拌状態を表示する掘削撹拌状態表示部34とを設け、このモニタ30により作業者の作業を誘導表示する構成とする。
なお、撹拌翼回転数表示部32の表示回転数は、駆動モーター20の回転数と連動しているので、撹拌翼回転数表示部32が表示する回転数により駆動モーター20の回転数も確認可能である。
【0020】
駆動モーター20の構成は任意であり、油圧ポンプ35と油圧モータ36により構成してもよく、また、インバーターモーター37により構成してもよく、何れの場合でも、無段階に回転数を変更できると、自動回転制御を容易かつ正確にできる。
また、地盤改良装置5にセメントミルク等の土壌改良剤の供給プラント40と地盤改良装置5とを、地盤改良装置5の昇降速度に応じて供給プラント40の土壌改良剤の吐出量を変更するように自動制御する。そのため、土壌改良の品質を向上させられる。
41は供給プラント40から地盤改良装置5の回転駆動部3にセメントミルク等の土壌改良剤を送る搬送ホースである。
【0021】
(実施形態の作用)
本発明は上記構成であり、ベースマシン1を施工現場に運搬または走行させ、リーダー2を起立させた状態で、リーダー2に対して回転駆動部3と回転軸体4と地盤改良装置5とを昇降モーター17によりワイヤー16を繰り出して、予め掘削されている縦杭穴内に下降させ、あるいは、地盤上面に地盤改良装置5のオーガーヘッド15を下降させて、地盤改良装置5のオーガーヘッド15により地盤を掘削して縦杭穴を形成する。
【0022】
縦杭穴の所定深度まで、地盤改良装置5を下降させると、オーガーヘッド15が掘削した土砂等の地盤構成物に地盤改良装置5から地盤改良剤を噴出させて注入し、この地盤構成物と土壌改良剤とを地盤改良装置5の撹拌部6の撹拌翼11により撹拌して地盤改良を行う。
掘削作業を行う場合、従来では、単に、地盤改良装置5の駆動トルクおよび回転速度を地盤の状態(軟らかい、硬いなど)に応じて適切な値に設定するようにしており、例えば、固い地盤では撹拌工具11の駆動トルクを大きく(回転速度を遅く)しなければならず、一方、柔らかい地盤では回転速度を速く(駆動トルクを小さく)して掘削作業を行っていた。
【0023】
このことは、例えば、基本作業では、駆動モーター20の能力の7割程度となるように、回転数を設定し、硬い地盤で地盤改良装置5の回転負荷が掛かると、駆動モーター20の能力を9割程度に上昇させ、それでも、回転負荷が大きいときは昇降速度を遅くして、地盤改良装置5の負荷を軽減させて作業を行っていた。
つまり、常時、駆動モーター20の出力に余裕を持たせ、対応できないときに、駆動モーター20の出力(回転数・トルク)を自動的に高くする制御を実行していたので、駆動モーター20を連続運転させても故障あるいは破損しない許容範囲内における最大出力に対して7割程度に予め設定した出力と予め設定した昇降速度で常時作業することになり、駆動モーター20の出力に余裕を持たせるために控えている3割分が常時失われている出力損失分、作業効率が低下することになっていた。
【0024】
本発明では、回転駆動部3の駆動モーター20は地盤改良装置5の撹拌翼11およびオーガーヘッド15の回転速度を無段階に変更可能とし、駆動モーター20のトルクもしくは動力を検出し、地盤改良装置5の掘削負荷が駆動モーター20の許容されるトルク以下の場合は、駆動モーター20の許容される出力限界範囲まで自動的に駆動モーター20の回転を上げ、単位深度当たりの撹拌翼11の羽根切り回数を維持できる範囲で掘削下降速度、もしくは、引き抜き速度を自動的に制御する構成としているので、当初より、駆動モーター20を、許容される出力限界範囲にて駆動させ、掘削負荷が小さいときには地盤改良装置5の昇降速度を自動的に速くし、単位深度当たりの撹拌翼11の羽根切り回数を維持させ、昇降速度を速くすることにより、掘削撹拌作業の作業効率を向上させることができる。
【0025】
すなわち、従来では、駆動モーター20の回転出力と、地盤改良装置5の昇降速度とは、掘削負荷が過剰になったときのみ、地盤改良装置5の昇降速度を遅くさせるのみの対応であったが、本発明では掘削負荷が過剰になったときに地盤改良装置5の昇降速度を遅くさせることは当然とし、掘削負荷が小さいときにも、昇降速度を掘削負荷に応じて変速(速く)することにより、掘削撹拌抵抗を増加させて、単位深度当たりの撹拌翼11の羽根切り回数を最適状態で維持させ、掘削撹拌作業の作業効率を向上させる。
【0026】
ベースマシン1の操作部のモニタ30には、作業者が、手動で行う掘削撹拌作業する際に、地盤改良装置5(撹拌翼17)の回転数を表示する撹拌翼回転数表示部32と、地盤改良装置(撹拌翼5)の回転数に応じた推奨掘削(下降)速度、もしくは、引き抜き(上昇)速度を表示する昇降速度表示部33と、掘削撹拌状態を表示する掘削撹拌状態表示部34とを設けているので、作業者は、モニタ30により自動制御状態を視認することができ、また、手動操作により地盤改良する際にも、作業操作を誘導表示でき、操作性を向上させることができる。
【0027】
駆動モーター20の構成は任意であり、油圧ポンプ35と油圧モータ36により構成しているので、無段階に回転数を変速制御可能な地盤改良装置5の駆動源を、簡素かつ安価に構成することができる。
また、駆動モーター20を、インバーターモーター37により構成すると、無段階に回転数を変更できると、自動回転制御を容易かつ正確にできる。
また、地盤改良装置5にセメントミルク等の土壌改良剤の供給プラント40と地盤改良装置5とを、地盤改良装置5の昇降速度に応じて供給プラント40の土壌改良剤の吐出量を変更するように自動制御する構成としているので、土壌改良の品質を向上させられる。
【符号の説明】
【0028】
1…ベースマシン、2…リーダー、3…回転駆動部、4…回転軸体、5…装置、10…撹拌ロッド、11…撹拌翼、12…供給管、13…吐出口、14…振れ止め部、15…オーガーヘッド、16…ワイヤー、17…昇降モーター、20…駆動モーター 、25…回転計、26…トルク計、27…昇降速度計、28…制御部、29…手動昇降スイッチ、30…モニタ、32…撹拌翼回転数表示部、33…昇降速度表示部、34…掘削撹拌状態表示部、35…油圧ポンプ、36…油圧モータ、37…インバーターモーター、40…供給プラント。
図1
図2
図3
図4
図5