(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】玩具
(51)【国際特許分類】
A63H 33/08 20060101AFI20240412BHJP
【FI】
A63H33/08 Z
A63H33/08 C
(21)【出願番号】P 2020096958
(22)【出願日】2020-06-03
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】312013147
【氏名又は名称】株式会社 市瀬
(74)【代理人】
【識別番号】100134050
【氏名又は名称】岩崎 博孝
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 英志
(72)【発明者】
【氏名】市瀬 泰一郎
【審査官】赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04254574(US,A)
【文献】国際公開第2008/051046(WO,A1)
【文献】kingyus,TROXES...JUST CARDBOARD!?,steemit [online],2017年,URL: <https://steemit.com/art/@kingyus/troxes-just-cardboard>,[令和6年2月20日検索日]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 33/04-33/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形の基礎面と、
当該基礎面の短手側両端にそれぞれ折り目を介して連接し、前記基礎面の短手辺が斜辺となる直角二等辺三角形状に構成された三角面と、
当該三角面における直角を構成する二辺にそれぞれ折り目を介して連接する矩形の補助面と、を備え、
前記補助面における前記直角を構成する二辺に対向する辺には、それぞれ係合突起が形成されると共に、
前記基礎面には、
2つの前記係合突起が係合する係合部が2箇所形成される同一形状のシート状部材を6枚組み合わせて立体とした玩具。
【請求項2】
請求項1において、
前記6枚のシート状部材は、前記基礎面同士が並行に配置される2枚が一組となって合計3組で構成され、
第1組の前記シート状部材の基礎面がX軸方向に延在するとき、
第2組の前記シート状部材の基礎面は前記X軸と直交するY軸方向に延在し、
第3組の前記シート状部材の基礎面は前記X軸及びY軸とそれぞれ直交するZ軸方向に延在する
ことを特徴とする玩具。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1組のシート状部材における前記係合突起は全て、前記第2組のシート状部材における前記係合部に嵌合し、
前記第2組のシート状部材における前記係合突起は全て、前記第3組のシート状部材における前記係合部に嵌合し、
前記第3組のシート状部材における前記係合突起は全て、前記第1組のシート状部材における前記係合部に嵌合する
ことを特徴とする玩具。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかにおいて、
前記三角面と前記補助面とを連接する折り目部分には、前記三角面に対して前記補助面を折り曲げると
現れる爪が形成されると共に、
前記係合突起が形成される辺には前記爪が入り込めるサイズの凹部が形成されている
ことを特徴とする玩具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玩具に関し、特に詳しくは、複数の紙製ピースで組み上げたブロックを複数個用意し、組み上げ後当該ブロックの表面に表れる凹凸構造を利用して他のブロックと連結・離間できる構造の玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シート状の部材を折り曲げるなどして立体に組み上げる構造の玩具等は種々のものが存在する。
【0003】
例えば、1枚のシート状部材を折り曲げて1つの立体を作るものや(特許文献1を参照)、複数のシート状部材を組み合わせて1つの立体を作るもの(特許文献2、特許文献3を参照)、更には、組み上がった立体同士を連結できるもの(特許文献4、特許文献5を参照)など、多種多様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3164697号公報
【文献】特開平9-290072号公報
【文献】特開2019-170426号公報
【文献】特開2008-161517号公報
【文献】特許第5767420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら従来技術においては、シート状部材自体の形状にいくつもの種類が用意される前提のものが多く(単一形状のシート状部材を組み合わせて構成されるシンプルなものではない)、それに伴い準備しなければならない要素が増えるためコスト増加に繋がってしまう。
【0006】
また、組み上げた立体の表面に表れる凹凸が全方向に渡って統一的な美感の下に形成されているものではなく、立体単体としての意匠性に優れていないばかりか、縦横に自由自在な連結ができるものでもなかった。
【0007】
そこで本発明は、こういった問題点を解決するべくなされたものであって、単一形状のシート状部材(ピース)を組み合わせて構成でき、更にその組み上げた立体は全方向に渡って統一的な美感を備えた凹凸を有して高い意匠性を誇り、加えて当該凹凸を利用して縦横に自由自在な連結が可能な玩具を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するべく、本願発明は、矩形の基礎面と、当該基礎面の短手側両端にそれぞれ折り目を介して連接し、前記基礎面の短手辺が斜辺となる直角二等辺三角形状に構成された三角面と、当該三角面における直角を構成する二辺にそれぞれ折り目を介して連接する矩形の補助面と、を備え、前記補助面における前記直角を構成する二辺に対向する辺には、それぞれ係合突起が形成されると共に、前記基礎面には、前記係合突起が4つ係合できる形状の係合部が形成される同一形状のシート状部材を6枚組み合わせて立体としたことを特徴とする。
【0009】
このような構成を採用したことによって、単一形状のシート状部材のみで立体的な玩具を構成することが可能となる。
【0010】
また、前記6枚のシート状部材は、前記基礎面同士が並行に配置される2枚が一組となって合計3組で構成され、第1組の前記シート状部材の基礎面がX軸方向に延在するとき、第2組の前記シート状部材の基礎面は前記X軸と直交するY軸方向に延在し、第3組の前記シート状部材の基礎面は前記X軸及びY軸とそれぞれ直交するZ軸方向に延在することを特徴とする。
【0011】
このような構成を採用したことによって、組み上げられる立体には全方向に渡って統一的な美感を備えた凹凸が発現して高い意匠性を発揮し、加えて当該凹凸を利用して縦横に自由自在な連結が可能となる。
【0012】
また、前記第1組のシート状部材における前記係合部は全て、前記第2組のシート状部材における前記係合部に嵌合し、前記第2組のシート状部材における前記係合突起は全て、前記第3組のシート状部材における前記係合部に嵌合し、前記第3組のシート状部材における前記係合突起は全て、前記第1組のシート状部材における前記係合部に嵌合することを特徴とする。
【0013】
このような構成を採用したことによって、シート状部材同士が互いに絡み合う構造となり、立体が有する構造的な強度が確保され、例えば「紙」で構成した場合においても十分な構造的強度が確保できることに加えて、シート状部材を組み上げる際に適度な難易度が発揮されるため、組み上げる際の面白さ、ワクワク感、組み上げた際の達成感を高いレベルに維持することが可能となっている。
【0014】
また、前記三角面と前記補助面とを連接する折り目部分には、前記三角面に対して前記補助面を折り曲げると現れる爪が形成されると共に、前記係合突起が形成される辺には前記爪が入り込めるサイズの凹部が形成されていることを特徴とする。
【0015】
このような構成を採用したことによって、立体同士を連結した際に自動的にロック機能が発揮され、立体同士が意図せず離間してしまうことを防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明を適用することで、単一形状のシート状部材(ピース)を組み合わせて構成でき、更にその組み上げた立体は全方向に渡って統一的な美感を備えた凹凸を有して高い意匠性を誇り、加えて当該凹凸を利用して縦横に自由自在な連結が可能な玩具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態の一例である玩具を構成するシート状部材の正面図である。
【
図2】シート状部材を折り目に沿って折り畳んだ状態を示した斜視図である。
【
図3】シート状部材を組み合わせて1つの立体(玩具)を作成する過程(第1段階)の斜視図である。
【
図4】シート状部材を組み合わせて1つの立体(玩具)を作成する過程(第2段階)の斜視図である。
【
図5】シート状部材を組み合わせて1つの立体(玩具)を作成する過程(第3段階)の斜視図である。
【
図6】シート状部材を組み合わせて1つの立体(玩具)を作成する過程(第4段階)の斜視図である。
【
図7】シート状部材を組み合わせて1つの立体(玩具)を作成する過程(第5段階)の斜視図である。
【
図8】2つの立体(玩具)が離間して配置されている状態を示した斜視図である。
【
図9】2つの立体(玩具)が結合した状態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態の一例である立体玩具10及びそれを構成するシート状部材100について説明を加える。なお、図面理解容易の為、各部の大きさや寸法を誇張して表現している部分があり、実際の製品と必ずしも一致しない部分があることを付記しておく。また各図面は符号の向きに見るものとし、当該向きを基本に上下左右、手前、奥と表現する。
【0019】
〈玩具の構成〉
本発明の実施形態の一例として示す立体玩具10(
図7を参照)は、
図1に示した形状のシート状部材100を6枚(同じ形状のものを6枚)組み合わせて構成される。
【0020】
最初にシート状部材100の構造について説明する。本実施形態においてシート状部材100は「紙」で構成されており、中心にある横長矩形部分を基礎面102として左右対称となっている。当該基礎面102の左右、即ち、矩形の短手側の辺には、折り目αを介して直角三角形状の三角面110がそれぞれ一体的に形成されている。その結果、1つのシート状部材100の中に、三角面110は2つ存在する。
【0021】
この三角面110は、折り目αの部分が斜辺となり、その他の2辺で構成される角の角度θが90°に構成された直角三角形状をなしている。
【0022】
また、三角面110における直角を構成する2つの辺は、折り目βを介して矩形の補助面120とそれぞれ連接している。更に、当該補助面120における直角を構成する二辺(即ち折り目β)に対向する側の辺には、それぞれ係合突起130が形成されている。その結果、1つのシート状部材100の中に、補助面120及び係合突起130はそれぞれ4つずつ存在することとなる。
【0023】
なお、基礎面102の略中心には、2箇所の折り曲げ片103が設けられており、当該折り曲げ片103を折り曲げると、補助面120に形成された係合突起130が係合可能な係合部103aが現れる構造となっている。
【0024】
続いて、6枚のシート状部材100、200、300、400、500、600を使って1つの立体玩具10を組み上げる工程の一例を示す。なお、ここで示す手順はあくまで一例であって、これ以外の手順で組み上げることを排除するものではないし、権利範囲をこの手順で組み上げられたものに限定するものでもない。また、シート状部材は全て同じ構造のため、同一の部位には符号の数字下2桁を共通の符号で示すに留め、重複説明は省略する。また、これ以降組み立て手順を示す箇所においては、説明容易のため、「第1のシート状部材100」「第2のシート状部材200」・・・のように、シート状部材の前に「第○の」の表現で説明する。
【0025】
最初に、第1のシート状部材100を、折れ目α、βに沿って折り曲げる。この時、全ての折り目を同じ方向(例えばシート状部材100の表面から見たときに全て山折りする方向)に90°折り曲げる。更に基礎面102に形成された折り曲げ片103も折り曲げる(ここでも同じく表面から見ると山折りの方向、即ち裏面側に向かって折り曲げる)。そうすると第1のシート状部材100は
図2のような立体構造に変化する。
【0026】
その上で、
図3に示すように、第1のシート状部材100を立てた状態で、第3のシート状部材300を組付ける。このとき、第3のシート状部材300の折り曲げ片303を折り曲げておき、第1のシート状部材100における上側に位置する2つの係合突起103が、第3のシート状部材300の係合部303aに嵌合するように組み付ける。
【0027】
続いて、
図4に示すように、第2のシート状部材200を同様に折り目に沿って折り曲げて立体的形状にしつつ、第1のシート状部材100に対向する側に配置して組み付ける。この時、第1のシート状部材100の基礎面102と、第2のシート状部材200の基礎面202とは並行に位置することとなる。
【0028】
続いて、
図5に示すように、第3のシート状部材300の真下となる位置に、第4のシート状部材400を組み付ける。ここでも同様に、第4のシート状部材400の基礎面402に形成される係合部403aには、第1のシート状部材100の2つの係合突起130及び第2のシート状部材200の2つの係合突起230が嵌合することとなる。更に、第3のシート状部材300の基礎面302と、第4のシート状部材400の基礎面402とは並行に位置すると共に、これら基礎面302、402は、それぞれ、第1のシート状部材100の基礎面102及び第2のシート状部材200の基礎面202に対して直交する方向に配置されることとなる。
【0029】
続いて、
図6に示すように、第5のシート状部材500を手前に配置して組み付ける。ここでも同様に、第5のシート状部材500の基礎面502に形成される係合部503aには、第3のシート状部材300の2つの係合突起330及び第4のシート状部材400の2つの係合突起430が嵌合することとなる。
【0030】
更に、同様に、
図7に示しているように、奥方にも第6のシート状部材600配置して組み付ける。ここでも同様に、第6のシート状部材600の基礎面602に形成される係合部603aには、第3のシート状部材300の2つの係合突起330及び第4のシート状部材400の2つの係合突起430が嵌合することとなる。その結果、第5のシート状部材500の基礎面502と、第6のシート状部材600の基礎面602とは並行に位置すると共に、これら基礎面502、602は、それぞれ、第1のシート状部材100の基礎面102及び第2のシート状部材200の基礎面202に対して直交し、且つ、第3のシート状部材300の基礎面302及び第4のシート状部材400の基礎面402に対して直交する方向に配置されることとなる。
【0031】
最後に、第5のシート状部500の係合突起530を、第1のシート状部材100の係合部103a及び第2のシート状部材200の係合部203aに嵌合させる。更に、第6のシート状部600の係合突起630を、第1のシート状部材100の係合部103a及び第2のシート状部材200の係合部203aに嵌合させることにより立体玩具10が完成となる。
【0032】
〈玩具の作用・機能〉
このようにして組み上げた立体玩具10は、単体でも高い意匠性を有するためそのまま飾りや置物として利用することも可能である。更に、
図8に示しているように、複数の立体玩具10、20を組み上げれば、表面に形成される凹凸部分を組み合わせるようにして連結させることが可能である(
図9参照)。この時、一方の立体玩具10側に形成される爪112が、他方の立体玩具20側に形成される凹部224に引っ掛る構造となっている。
【0033】
上記構成で説明した通り、本発明の実施形態の一例として示した立体玩具は、矩形の基礎面102と、当該基礎面102の短手側両端にそれぞれ折り目αを介して連接し、基礎面102の短手辺が斜辺となる直角二等辺三角形状に構成された三角面110と、この三角面110における直角を構成する二辺にそれぞれ折り目βを介して連接する矩形の補助面120と、を備え、この補助面120における直角を構成する二辺に対向する辺には、それぞれ係合突起130が形成されると共に、基礎面102には、(他のシート状部材の)係合突起が4つ係合できる形状の係合部103aが形成されており、これと同一形状のシート状部材を6枚組み合わせて立体玩具を構成していた。
【0034】
また、6枚のシート状部材100~600は、基礎面同士が並行に配置される2枚が一組となって合計3組で構成され、第1組のシート状部材(上記では第1のシート状部材100と第2のシート状部材200が相当)の基礎面102、202がX軸方向に延在するとき、第2組のシート状部材(上記では第3のシート状部材300と第4のシート状部材400が相当)の基礎面302、303はX軸と直交するY軸方向に延在し、第3組のシート状部材(上記では第5のシート状部材500と第6のシート状部材600が相当)の基礎面502、602はX軸及びY軸とそれぞれ直交するZ軸方向に延在していた。
【0035】
このような構成を採用したことによって、組み上げられる立体玩具10には全方向に渡って統一的な美感を備えた凹凸が発現して高い意匠性を発揮し、加えて当該凹凸を利用して縦横に自由自在な連結が可能となっている。
【0036】
また、第1組のシート状部材(上記では第1のシート状部材100と第2のシート状部材200が相当)における係合突起130、230は全て、第2組のシート状部材(上記では第3のシート状部材300と第4のシート状部材400が相当)における係合部303a、403aに嵌合し、第2組のシート状部材(上記では第3のシート状部材300と第4のシート状部材400が相当)における係合部330、430は全て、第3組のシート状部材(上記では第5のシート状部材500と第6のシート状部材600が相当)における係合部503a、603aに嵌合し、第3組のシート状部材(上記では第5のシート状部材500と第6のシート状部材600が相当)における係合突起530、630は全て、第1組のシート状部材(上記では第1のシート状部材100と第2のシート状部材200が相当)における係合部103a、203aに嵌合していた。
【0037】
このような構成を採用したことによって、シート状部材同士が互いに絡み合う構造となり、立体が有する構造的な強度が確保され、例えば「紙」で構成した場合においても十分な構造的強度が確保できることに加えて、シート状部材を組み上げる際に適度な難易度が発揮されるため、組み上げる際の面白さ、ワクワク感、組み上げた際の達成感を高いレベルに維持することが可能となっている。
【0038】
また、三角面110と補助面120とを連接する折り目β部分には、三角面110に対して補助面120を折り曲げると表れる爪112(三角面110の一部がそのまま延びるようにして現れる爪)が形成されると共に、係合突起130が形成される辺には爪112が入り込めるサイズの凹部124が形成されていた。
【0039】
このような構成を採用したことによって、立体同士を連結した際に自動的にロック機能が発揮され、立体同士が意図せず離間してしまうことを防止することができる。
【符号の説明】
【0040】
10、20・・・立体(玩具)
100・・・シート状部材
102・・・基礎面
103・・・係合穴
103a・・・係合部
110・・・三角面
112・・・爪
120・・・補助面
124・・・凹部
130・・・係合突起
α、β・・・折り目