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特許7470977水素発生剤及びそれを用いた水素の製造方法
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  • 特許-水素発生剤及びそれを用いた水素の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】水素発生剤及びそれを用いた水素の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/08 20060101AFI20240412BHJP
【FI】
C01B3/08 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020121830
(22)【出願日】2020-07-16
(65)【公開番号】P2022018610
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】514169714
【氏名又は名称】アルハイテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】水木 伸明
(72)【発明者】
【氏名】麻生 善之
(72)【発明者】
【氏名】松 良幸
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-320792(JP,A)
【文献】国際公開第2013/002128(WO,A1)
【文献】特開2010-202438(JP,A)
【文献】特開2007-320793(JP,A)
【文献】特開2008-166248(JP,A)
【文献】特開2011-011965(JP,A)
【文献】特開2016-117620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/08
C01F 7/02
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃度2%以上の水酸化ナトリウム水溶液に、濃度3%以上のテトラヒドロキシドアルミン酸イオン[Al(OH) を添加した反応液に、アルミニウム又はその合金を投入することを特徴とする水素の製造方法。
【請求項2】
前記反応液に固形分が発生しないように、水酸化ナトリウムを添加しながら水素を発生させることを特徴とする請求項1記載の水素の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム又はその合金と反応させることで水素を製造するのに用いられる水素発生剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムをアルカリ性水溶液に投入すると、アルミニウムが溶解し、水素が発生することが知られている。
例えば、特許文献1にはアルカリ水溶液を収容する反応容器に金属アルミニウムを投入し、水素を発生させる際に、金属アルミニウム量をアルカリ量に対してモル比で1以上に大きく設定し、反応容器内に生成された沈殿物を外部に排出する方法が開示されている。
例えば、アルカリ水溶液として水酸化ナトリウム[NaOH]の水溶液を用いるとアルミニウムと反応し、アルミニウムは溶解しアルミン酸ナトリウムになり、水素が発生する。
水溶液中に生成したアルミン酸ナトリウムは、水酸化アルミニウム[Al(OH)]の沈殿物になることから、これを外部に排出することで連続的に水素を得るのが目的となっている。
同公報にはアルカリ水溶液の替わりにアルミン酸アルカリの水溶液を用いてもよい旨の記載があるものの、これはアルミン酸アルカリから水酸化アルミニウムとして沈殿物を外部に除去することを念頭に置いているからであり、アルカリ水溶液の反応性を向上させるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-320792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、水素の発生速度が速くなり、水素の発生効率も向上する水素発生剤及びそれを用いた水素の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る水素発生剤は、テトラヒドロキシドアルミン酸イオン[Al(OH) を含有するアルカリ性水溶液からなることを特徴とする。
【0006】
ここで、テトラヒドロキシドアルミン酸イオン[Al(OH) はテトラヒドロキソアルミン酸イオンとも称され、水溶液中に陰イオン状態で存在し、透明な溶液となる。
アルカリ性水溶液は、水酸化ナトリウム,水酸化カルシウム等の強アルカリ性の水溶液が例として挙げられる。
【0007】
本発明は、アルカリ性水溶液中にテトラヒドロキシドアルミン酸イオンを共存させることでアルミニウム又はその合金の溶解を促進する。
テトラヒドロキシドアルミン酸イオンの濃度は、アルカリ性水溶液に対して3%以上がよく、好ましくは4%以上である。
また、テトラヒドロキシドアルミン酸イオンの添加の上限は、アルカリ性水溶液のアルカリ濃度にもよるが概ね20%以下である。
【0008】
上記のような水素発生剤にアルミニウム又はその合金を投入することで、従来の水酸化ナトリウムや水酸化カルシウムのみの水溶液を用いるよりも水素の発生速度が速くなり,投入される金属アルミニウムの溶解性が向上することから水素の発生量も向上する。
【0009】
そこで本発明に係る水素の製造方法においては、前記水素発生剤中に前記アルミニウム又はその合金を投入し、連続的に水素を製造する際に、前記水素発生剤中に固形分が発生しないように、反応液中のアルカリ濃度を濃くしてもよい。
この場合には反応の進行に合せて、順次アルカリを添加して、その濃度が高くなるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
例えば、水酸化ナトリウムのアルカリ性水溶液にアルミニウムを投入して、水素を発生させる際にアルミニウムは溶解してアルミン酸ナトリウムになることから、従来はアルカリ性水溶液中にテトラヒドロキシドアルミン酸イオンを投入することはアルミニウムの溶解を阻害する要因となると考えられていた。
ところが、本発明者らの研究により、アルカリ性水溶液中に予めテトラヒドロキシドアルミン酸イオンを含有させておくことで、アルミニウムとの反応性が向上することを見い出したものである。
【0011】
本発明において、テトラヒドロキシドアルミン酸イオンをアルカリ性水溶液中に含有させる方法は、予めアルミニウムをアルカリ性水溶液に溶解させたテトラヒドロキシドアルミン酸イオンの高濃度溶液を用いても良よく、また、アルカリ性水溶液を反応液として用いてアルミニウム又はその合金を投入し、水素を製造した反応終了液の一部をアルカリ性水溶液に投入することで反応終了液の一部を再利用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】反応液(A),(B)に所定量のアルミニウム(金属)を投入し、水素を発生させた後に反応終了液から水酸化アルミニウムを沈殿回収する操作を繰り返し行った際の水素発生速度の変化を示す。
図2図1の水素発生操作を繰り返した際の全体の累積経過時間と水素発生速度の変化を示す。
図3】4%[Al(OH) 濃度に対して2%NaOH濃度の場合の水素発生量の変化を示す。
図4図3に対して3%NaOHの場合の変化を示す。
図5図3に対して4%NaOHの場合の変化を示す。
図6】[Al(OH) の濃度と水素発生速度の変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に4%の水酸化ナトリウム水溶液(B)と、この4%NaOH水溶液に4%[Al(OH) を含有させた反応液(A)とを用いて水素の発生速度を比較したので説明する。
上記2種類の濃度の反応液(200ml)を40℃に温調しながら、アルミニウム(金属)2gを投入し、水素を発生させた。
上記反応が終了した反応液は沈殿物等を除去することなくそのまま全量使用し、アルミニウム2gを改たに投入し、繰り返し反応に供した。
その実験結果を、図1,2のグラフに示す。
図1は、横軸に反応の繰り返し回数、縦軸に反応中の最大を示した水素発生速度(ml/min・g)を示した。
図2は、上記の累積反応時間を横軸に表したものである。
これらの結果から、4%NaOH単独の反応液(B)に比較して、4%NaOH+4%[Al(OH) のテトラヒドロキシドアルミン酸イオンをアルミニウムを投入する前の初期反応液とした反応液(A)の方が明らかに水素の発生速度が速い。
【0014】
次に4%[Al(OH) 濃度を一定にし、NaOH濃度を2%,3%,4%と変化させた反応液を用いて、上記の実験と同様に7回繰り返した結果を図3図5のグラフに示す。
図3は、2%NaOHとアルカリ濃度が他よりも低いので、トータルの水素発生時間が長かった。
これに対して、図4図5は同じ4%[Al(OH) 濃度に対して、NaOHを3%,4%と濃くしたことにより水素の発生速度が速くなっている。
【0015】
次に、4%NaOH濃度を一定にし、テトラヒドロキシドアルミン酸濃度を4%[Al(OH) に調整した反応液(A)-1と10%[Al(OH) に調整した反応液(A)-2とを用いて、水素発生速度(最大速度)を比較した実験結果を図6のグラフに示す。
図6の結果から[Al(OH) 濃度が高いものの方が、より水素発生速度が速くなることが分かる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6