(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】身分証明カード
(51)【国際特許分類】
B42D 25/23 20140101AFI20240412BHJP
B42D 25/41 20140101ALI20240412BHJP
【FI】
B42D25/23
B42D25/41
(21)【出願番号】P 2020181558
(22)【出願日】2020-10-29
【審査請求日】2023-09-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2020年9月30日に佐賀県(佐賀県佐賀市城内1丁目1-59)に販売
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2020年9月30日に箕面市(大阪府箕面市西小路4丁目6番1号)に販売
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2020年9月30日に八王子市(東京都八王子市元本郷町三丁目24番1号)に販売
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2020年9月30日に大分県(大分市大手町3丁目1番1号)に販売
(73)【特許権者】
【識別番号】000186566
【氏名又は名称】小林クリエイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】藤森 康臣
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕治
(72)【発明者】
【氏名】小川 純生
(72)【発明者】
【氏名】居川 和義
(72)【発明者】
【氏名】松浦 直之
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-189154(JP,A)
【文献】実開昭59-157863(JP,U)
【文献】特開2006-21411(JP,A)
【文献】特開2012-245639(JP,A)
【文献】特開2020-98305(JP,A)
【文献】国際公開第2017/014258(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 1/00-25/485
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面側に、被証明者の識別情報を記録する識別情報記録部が設けられ、他面側に、追加情報を記録する追加情報記録部が設けられた身分証明カードであって、
前記他面側の表層には、捺印適性を有するとともに、可視光と所定波長のレーザー光を透過可能な捺印層が全面に配設され、
基材層と前記捺印層との間には、前記所定波長のレーザー光で印字可能なレーザー印字層が配設されており、
前記追加情報記録部は、
前記他面側から前記捺印層を透して前記所定波長のレーザー光で、前記レーザー印字層に前記追加情報を印字可能であって、
前記レーザー印字層に印字される追加情報を、前記他面側から前記捺印層を透して視認可能であり、
さらに、前記追加情報を記録する担当者及び/又は担当組織の印を捺印し得るよう構成されていることを特徴とする身分証明カード。
【請求項2】
前記捺印層は、多孔質粒子と透明樹脂とを含み、
前記捺印層の厚みは、11~14μmであり、
前記捺印層における前記多孔質粒子の含有量は、前記透明樹脂の重量の13~18%であることを特長とする請求項1に記載の身分証明カード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、追加情報を記録する追加情報記録部が設けられた身分証明カードに関する。
【背景技術】
【0002】
免許証等の身分証明カードには、表側に記録されない属性情報や、カード発行後に変更された属性情報を記録する追加情報記録部(いわゆる備考欄)が設けられている。従来の追加情報記録部は、追加情報を筆記具やスタンプによって記録するものであり、追加情報記録部の表層は、筆記適性や捺印適性を付与するために、多孔質粒子を含有する樹脂層が形成されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の身分証明カードでは、追加情報記録部に記録された追加情報を、表層の樹脂層を削り取って消去することによる改ざんが懸念されている。
【0005】
本発明はかかる現状に鑑みてなされたものであり、従来構成よりも追加情報記録部の改ざんが困難な身分証明カードの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一面側に、被証明者の識別情報を記録する識別情報記録部が設けられ、他面側に、追加情報を記録する追加情報記録部が設けられた身分証明カードであって、前記他面側の表層には、捺印適性を有するとともに、可視光と所定波長のレーザー光を透過可能な捺印層が全面に配設され、基材層と前記捺印層との間には、前記所定波長のレーザー光で印字可能なレーザー印字層が配設されており、前記追加情報記録部は、前記他面側から前記捺印層を透して前記所定波長のレーザー光で、前記レーザー印字層に前記追加情報を印字可能であって、前記レーザー印字層に印字される追加情報を、前記他面側から前記捺印層を透して視認可能であり、さらに、前記追加情報を記録する担当者及び/又は担当組織の印を捺印し得るよう構成されていることを特徴とする身分証明カードである。
【0007】
かかる構成にあっては、追加情報記録部には、表層(捺印層)の下のレーザー印字層に追加情報を記録可能となる。レーザー印字層に記録された追加情報は、表層を削っただけでは追加情報を消去できないため、表層に筆記具やスタンプで記録した追加情報よりも改ざん困難となる。なお、レーザー印字装置を用いれば、本発明の身分証明カードのレーザー印字層に偽の追加情報を記録することが可能であるが、追加情報記録部に、追加情報に加えて、担当者や担当組織の印を捺印するようにすれば、偽の追加情報が記録されたとしても容易に発見できる。また、本発明の身分証明カードは、他面側の捺印層やレーザー印字層がカードの全面に亘って一様に設けられているため、捺印層やレーザー印字層の形成位置の調整が不要であり、不良品が発生し難いという利点がある。
【0008】
本発明に係る捺印層は、多孔質粒子と透明樹脂とによって構成可能である。多孔質粒子は、捺印されたインキを捺印層に定着させるのに必須であるが、光を散乱する性質があるため、従来一般の身分証明カードでは、捺印適性を有する捺印層は不透明又は半透明となっている。発明者らは、捺印適性を失わない範囲で、従来構成よりも捺印層の多孔質粒子の含有率を減らし、さらに、捺印層の厚みを低減して、光の透過性を上げることにより、捺印層の下に記録される情報を外側から透かし見ることが可能な程度に、捺印層を透明にできることを発見し、本発明を完成したものである。なお、発明者の研究によれば、捺印層の厚さを11~14μmとし、多孔質粒子の含有量を透明樹脂の重量の13~18%とした場合に、捺印層は、十分な捺印適性と光透過性を具備したものとなる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、従来構成よりも追加情報記録部の改ざんが困難な身分証明カードを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施例の身分証明カード1の(a)表面図と(b)裏面図である。
【
図2】備考欄4に追加情報を記録した状態の身分証明カード1の裏面図である。
【
図3】本実施例の身分証明カード1の断面図である。
【
図4】(a)は試験1の結果を示す図表である。(b)は試験2の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を、以下の実施例によって説明する。なお、以下の実施例において、本発明に係る他面側は、身分証明カード1の裏側に相当する。また、本発明に係る追加情報記録部は、身分証明カード1の備考欄4に相当する。
【0012】
本実施例の身分証明カード1は大学の学生証である。かかる身分証明カード1のサイズは、横85mm×縦54mm×厚さ1mm程度であるが、本発明の身分証明カードのサイズはこれに限定されるものではない。
図1(a)に示すように、身分証明カード1の表側には、固定情報記録部2と識別情報記録部3が設けられる。固定情報記録部は、全ての学生の身分証明カード1に共通する固定情報を表示する箇所である。具体的には、「○○大学学生証」や「○○大学長」などの文字が固定情報に相当する。識別情報記録部3は、被証明者を特定可能な識別情報を記録する箇所である。具体的には、被証明者の顔写真や氏名、学生番号、学科、生年月日、住所が識別情報に相当する。かかる身分証明カード1は、識別情報記録部3に識別情報が記録されていない状態で出荷され、大学の事務局等で、個々の学生の識別情報を、インクジェットプリンタで識別情報記録部3にプリントしてから発行される。
【0013】
図1(b)に示すように、身分証明カード1の裏側には、追加情報を記録する備考欄4が設けられる。追加情報は、表側に記録できない付加的な識別情報や、表側の識別情報が変更された場合の変更情報などである。例えば、学生の住所に変更があった場合には、
図2に示すように、備考欄4に、変更日と新住所が追加情報15として記録される。また、本実施例の身分証明カード1は、追加情報の偽造を防止するために、備考欄4に追加情報15を記録する際に、当該追加情報を記録する担当者(大学職員)や担当組織(大学事務局)の印16を、備考欄4の当該追加情報15の脇に捺印する仕様となっている。また、図示は省略しているが、身分証明カード1の表裏には、背景デザインとして地紋が印刷されている。かかる地紋は、主にカードの偽造防止を目的とするものであり、文字や図形、地模様、ホログラムなどによって構成される。
【0014】
本実施例の身分証明カード1は、
図3に示す積層構造をなしている。具体的には、身分証明カード1は、基材層7と、基材層7の両面に積層された印刷層8,9を備えている。基材層7の表側の印刷層8には、透明な保護層10が積層される。また、裏側の印刷層9には、YAGレーザー光で印字可能なレーザー印字層11と、保護層12と、捺印適性を有する捺印層13が積層される。
【0015】
基材層7は、一般的なカード基材によって実現され得るものであり、可視光及びYAGレーザー光を透過しないものが用いられる。基材層7の厚みは、300~600μm程度が好ましい。基材層7は、一枚の薄板であってもよいし、複数枚の薄板の貼り合わせであってもよい。基材層7の材質は、特に限定されず、樹脂や紙、金属、又はこれらの組合せであってもよい。
【0016】
基材層7の表裏の印刷層8,9は、基材層7の表裏全面に形成される。身分証明カード1の表側に表示される固定情報や地紋は、表側の印刷層8の印刷パターンによって形成される。また、身分証明カード1の裏側に表示される地紋や、備考欄4の「備考」の文字、枠線は、裏側の印刷層9の印刷パターンによって形成される。かかる印刷層8,9は、オフセット印刷・スクリーン印刷・グラビア印刷・熱転写印刷などにより形成され得る。各印刷層8,9は、複数層からなるものであってもよい。また、印刷層8,9はホログラムを含むものであってもよい。
【0017】
表側の保護層10は、一枚の樹脂フィルムによって構成されるものであり、表側の印刷層8の全面に接着されて、身分証明カード1の表層を形成している。身分証明カード1の識別情報記録部3の識別情報は、インクジェットプリンタによって保護層10の表面に印字される。すなわち、保護層10は、印刷層8の表面を保護し得る耐久性と、インクジェットプリンタによる印字適性を有している。保護層10を構成する望ましい樹脂フィルムの材質としては、ポリ塩化ビニル(PVC)やグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)などが挙げられる。表側の保護層10の厚みは、50~100μm程度が好ましい。なお、かかる保護層10は、材質によっては、基材層7や印刷層8に対して、接着でなく溶着してもよい。また、保護層10は、複数枚の樹脂フィルムの貼り合わせによって構成してもよい。また、樹脂フィルムの接合に替えて、保護層10を、基材層7や印刷層8へのコーティングにより形成してもよい。
【0018】
レーザー印字層11は、YAGレーザー光(波長1064nm)の吸収率の高い、透明な樹脂層である。レーザー印字層11は、一枚の樹脂フィルムによって構成されるものであり、透明な接着剤で印刷層9の全面に接着されている。かかるレーザー印字層11は、YAGレーザー光を用いたレーザー印字で炭化させることにより、黒色に発色させることができる。すなわち、かかるレーザー印字層11に追加情報15をレーザー印字可能となっている。レーザー印字層11を構成する樹脂フィルムの材質としては、ポリカーボネートやPVC、PETGなどが挙げられる。レーザー印字層11の厚みは、80~120μm程度が好ましい。なお、レーザー印字層11は、材質によっては、基材層7や印刷層9に対して、接着でなく溶着してもよい。また、レーザー印字層11は、複数枚の樹脂フィルムの貼り合わせによって構成してもよい。また、樹脂フィルムの接合に替えて、レーザー印字層11を、基材層7や印刷層9へのコーティングにより形成してもよい。
【0019】
裏側の保護層12は、一枚の樹脂フィルムによって構成される樹脂層であり、透明な接着剤でレーザー印字層11の裏側全面に接着されている。保護層12は、レーザー印字層11の印字パターンと、印刷層9の印刷パターンを視認し得るように透明樹脂で構成されており、また、身分証明カード1の裏側からレーザー印字層11へレーザー印字し得るように、YAGレーザー光の透過性を有する材料で構成される。かかる保護層12を構成する望ましい樹脂フィルムの材質としては、PETGやPVCなどが挙げられる。また、保護層12の厚みは、50~100μm程度が好ましい。なお、かかる保護層12は、材質によっては、レーザー印字層11に対して接着でなく溶着してもよい。また、保護層10は、複数枚の樹脂フィルムの貼り合わせによって構成してもよい。また、樹脂フィルムの接合に替えて、保護層10を、レーザー印字層11へのコーティングにより形成してもよい。
【0020】
捺印層13は、シリカ(帝国インキ製造株式会社製マット剤)からなる多孔質粒子と、メジウム(帝国インキ製造株式会社製HAS-000メジウム)からなる透明樹脂により構成される。かかる捺印層13は、多孔質粒子を液状メジウムに分散させたインキを、保護層12の裏側全面にスクリーン印刷することによって形成される。かかる捺印層13は、可視光とYAGレーザー光を透過可能であるため、本実施例では、身分証明カード1の裏側から、YAGレーザー光で、捺印層13を透してレーザー印字層11に追加情報を印字でき、また、レーザー印字層11の記録情報や印刷層9の印刷パターンを、身分証明カード1の裏側から捺印層13を透して視認可能となっている。なお、捺印層13に含まれる多孔質粒子は光を散乱させる性質を有しているが、本実施例では、捺印層13が捺印適性を失わない範囲内で、多孔質粒子の含有率を抑えるとともに、捺印層13の厚みを抑えることによって、可視光とYAGレーザー光が捺印層13を透過し得るようにしている。また、一般的に、捺印適性を有する表面は、筆記適性を兼備しており、本実施例の捺印層13も、捺印適性とともに筆記適性も有している。すなわち、本実施例の身分証明カード1の裏側には、ボールペンや水性ペン、油性ペン等の筆記具を用いて追加情報15を書き込むことができる。
【0021】
本実施例の身分証明カード1は、例えば、以下の(1)~(6)の工程を順次実行することによって製造され得る。
(1)基材層7の表裏に印刷層8,9を印刷する。
(2)表側の印刷層8に、保護層10を形成するフィルムを接着する。
(3)裏側の印刷層9に、レーザー印字層11を形成するフィルムを接着する。
(4)レーザー印字層11に、保護層12を形成するフィルムを接着する。
(5)保護層12に、捺印層13を印刷する。
(6)(1)~(5)の工程を、複数の身分証明カード1が縦横に連続する状態で実行し、最後に各カードを切断・分離する。
【0022】
なお、本実施例の身分証明カード1は、レーザー印字層11及び捺印層13が、身分証明カード1の全面に一様に設けられているため、身分証明カード1の製造工程において、レーザー印字層11や捺印層13の形成位置の調整が不要であり、不良品が発生し難いという利点がある。
【0023】
以上のように、本実施例の身分証明カード1は、レーザー印字層11の裏側の保護層12及び捺印層13が、YAGレーザー光を透過可能であるため、身分証明カード1の裏側からYAGレーザー印字で追加情報15をレーザー印字できる。また、基材層7の裏側に配置されるレーザー印字層11、保護層12及び捺印層13は、可視光を透過可能であるため、身分証明カード1の裏側から、印刷層9の印刷パターンやレーザー印字層11に印字された追加情報15を容易に視認できる。捺印層13の内側のレーザー印字層11に印字した追加情報15は、身分証明カード1の表層を削り取っても消去できないため、本実施例にあっては、従来構成に比べて追加情報15の改ざんが困難となる。また、本実施例の身分証明カード1は、備考欄4に追加情報15を記録する際に、担当者や担当組織の印16を捺印するよう構成されているため、レーザー印字によって備考欄4に偽の追加情報が記録された場合でも、担当者や担当組織の印16を照合することにより、追加情報の偽造を容易に発見できる。
【0024】
また、本実施例に係る捺印層13は筆記適性も有しているため、改ざんのおそれのない重要度の低い追加情報は、筆記具で備考欄4に追記することができる。このようにすれば、比較的高価なレーザー印字装置の使用頻度を低減できるため、追加情報15の記録作業を効率化できる。
【0025】
本実施例に係る捺印層13について、多孔質粒子の含有率と、捺印層の厚みを変更して、捺印適性と、追加情報の印字適性について検証した。
【0026】
<試験1>
上記実施例の身分証明カード1について、捺印層13の多孔質粒子の含有率を変化させた試料を複数枚作成し、各試料について、捺印適性と、レーザー印字の印字適性を判定した。具体的には、捺印適性の有無(「○」有、「×」無)は、各試料の備考欄に対して、同じ印鑑を同じ条件で捺印して、印影のかすれ具合に基づいて判定した。レーザー印字の印字適性の有無(「○」有、「×」無)は、市販のレーザー印字装置を用いて、同じ条件でYAGレーザー光により所定の文字をレーザー印字層に印字して、印字した文字の視認性に基づいて判定した。結果を
図4(a)に示す。
図4(a)の結果より、多孔質粒子の含有率が13g以下になると捺印適性が失われ、多孔質粒子の含有率が18g以上になると印字適性が失われるが、含有率が14~17gの範囲内では、捺印適性と印字適性を同時に満足し得ることがわかった。
【0027】
<試験2>
上記実施例の身分証明カード1について、捺印層13の厚みを変化させた試料を複数枚作成し、各試料について、試験1と同様にして捺印適性と、レーザー印字の印字適性を判定した。結果を
図4(b)に示す。
図4(b)の結果は、捺印層の厚みが10μm以下になると捺印適性が失われ、捺印層の厚みが15μm以上になると印字適性が失われるが、厚みが11~14μmの範囲内では、捺印適性と印字適性を同時に満足し得ることがわかった。
【0028】
以上のように、試験1,2の結果から、捺印適性を損なわない範囲内で、多孔質粒子の含有量を低減するとともに、捺印層の厚みを抑えることにより、捺印適性と、レーザー印字の印字適性を同時に満足し得る捺印層を実現できることが確認された。
【0029】
以上に、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記実施例の形態に限定されるものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能である。
例えば、上記実施例は、本発明を学生証に適用したものであるが、本発明の身分証明カードは、カード型の身分証全般に適用可能である。具体的には、免許証、保険証、マイナンバーカード、在留カード、カード型の障害者手帳などの公的な身分証や、社員証や企業や施設が出入業者に発行する許可証などの商用の身分証が挙げられる。また、本発明の身分証明カードは、ICチップが埋設されたものであってもよい。また、上記実施例では、識別情報記録部3に識別情報を印刷済みのものを図示しているが(
図1参照)、本発明の身分証明カードは、識別情報記録部3に識別情報が印刷される前のものを含む。
【0030】
また、身分証明カード1の表側は、識別情報記録部3が設けられていればよく、身分証明カード1の表側の層構造は、実施例の層構造に特に限定されるものではない。例えば、身分証明カード1の表側にもレーザー印字層を配設して、インクジェットプリンタに替えて、レーザー印字装置で識別情報を印字するようにしてもよい。また、表側の表層にも捺印層を形成して、表側に発行者等が捺印するようにしてもよい。
【0031】
また、身分証明カード1の裏側は、レーザー印字層11と捺印層13が設けられていればよく、基材層7の裏側の印刷層9や保護層12は省略することが可能である。
【0032】
また、上記実施例の身分証明カード1は、裏側の略全面に亘って備考欄4が設けられているが、本発明の身分証明カードの裏側(他面側)には、備考欄4(追加情報記録部)以外の記録欄が設けられていてもよい。
【0033】
また、上記実施例の身分証明カード1は、追加情報15のレーザー印字にYAGレーザー光を用いるが、本発明に係る所定のレーザー光は、YAGレーザー光に限定されるものでない。具体的には、本発明に係る所定のレーザー光は、CO2レーザー光や、YVO4レーザー光、ファイバレーザー光などであってもよい。
【0034】
また、上記実施例の身分証明カード1は、レーザー光により基材層7を炭化させて、追加情報を黒色で印字するものであるが、本発明に係るレーザー印字は、レーザー印字層11の表面を炭化させるものに限らず、レーザー光の照射対象を凝縮や発泡、化学変化させることによって発色させるものであってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 身分証明カード
2 固定情報記録部
3 識別情報記録部
4 備考欄(追加情報記録部)
7 基材層
8,9 印刷層
10,12 保護層
11 レーザー印字層
13 捺印層
15 追加情報
16 印