(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】樹脂供給装置、樹脂封止装置、及び樹脂封止品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 43/34 20060101AFI20240412BHJP
B29C 43/18 20060101ALI20240412BHJP
B29C 31/04 20060101ALI20240412BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
B29C43/34
B29C43/18
B29C31/04
H01L21/56 T
(21)【出願番号】P 2020191052
(22)【出願日】2020-11-17
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000144821
【氏名又は名称】アピックヤマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135677
【氏名又は名称】澤井 光一
(72)【発明者】
【氏名】川口 誠
(72)【発明者】
【氏名】藤沢 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】村松 吉和
(72)【発明者】
【氏名】花里 実
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-134846(JP,A)
【文献】特開2009-166415(JP,A)
【文献】特開2013-48130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/34
B29C 43/18
B29C 31/04
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向及び前記第1方向に交差する第2方向にそれぞれ配列した素子が配置されたワーク上に樹脂を供給する樹脂供給装置であって、
前記ワーク上の素子の配置情報を取得する取得部と、
前記ワーク上に樹脂を供給する供給部と、
前記配置情報に基づいて樹脂供給パターンを算出する算出部と、
前記樹脂供給パターンに沿って、前記ワーク及び前記供給部の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させる駆動部と、
を備え、
前記樹脂供給パターンは、前記第1方向に
対して平行に延在する複数の線状経路を有し、
前記複数の線状経路が、第1線状経路と、前記第1線状経路に隣接しかつ前記第1方向の一端側において前記第1線状経路と前記第2方向に繋がる第2線状経路と、前記第2線状経路に隣接しかつ前記第1方向の他端側において前記第2線状経路と前記第2方向に繋がる第3線状経路とを有するように、一筆書きで供給されるパターンであり、
前記複数の線状経路における互いに隣接する線状経路の間の領域は、前記ワークの外側に開放されている、樹脂供給装置。
【請求項2】
前記複数の線状経路の少なくとも1つは、前記第2方向に隣接する素子の間の領域上に延在している、
請求項
1に記載の樹脂供給装置。
【請求項3】
前記複数の線状経路の少なくとも1つは、前記第1方向に配列した素子上に延在している、
請求項1
又は2に記載の樹脂供給装置。
【請求項4】
前記複数の線状経路の少なくとも1つは、前記ワーク上の最外縁の素子に至るまで延在している、
請求項1から
3のいずれか1項に記載の樹脂供給装置。
【請求項5】
前記複数の線状経路における互いに隣接する線状経路は、前記ワーク上の最外縁の素子を除いて前記最外縁の素子よりも内側の素子に至るまで延在している、
請求項1から
4のいずれか1項に記載の樹脂供給装置。
【請求項6】
前記ワーク上の素子は、大きさの異なる2種類以上の素子を含み、
前記複数の線状経路は、前記ワーク上の素子のうち他の素子よりも小さい素子上に延在している、
請求項1から
5のいずれか1項に記載の樹脂供給装置。
【請求項7】
前記供給部は、液状の樹脂を供給するディスペンサである、
請求項1から
6のいずれか1項に記載の樹脂供給装置。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか1項に記載の樹脂供給装置と、
前記ワーク上の素子を樹脂封止する樹脂封止金型と、
を備え、
前記樹脂封止金型は、樹脂が充填されるキャビティが設けられた上型と、前記ワークがセットされる下型とを有し、
型締めされた前記樹脂封止金型は、前記上型と前記下型との間に前記キャビティ内のエアを排出する複数のエアベントを有する、樹脂封止装置。
【請求項9】
前記複数のエアベントのうち少なくとも1つは、前記複数の線状経路における互いに隣接する線状経路の間の領域の延長線上に設けられている、
請求項
8に記載の樹脂封止装置。
【請求項10】
第1方向及び前記第1方向に交差する第2方向にそれぞれ配列された素子が配置されたワーク上に樹脂を供給することを含む樹脂封止品の製造方法であって、
前記ワーク上に樹脂を供給することは、
前記ワーク上の素子の配置情報を取得することと、
前記配置情報に基づいて樹脂供給パターンを算出することと、
前記樹脂供給パターンに沿って、前記ワーク上に樹脂を供給することと、
を含み、
前記樹脂供給パターンは、前記第1方向に
対して平行に延在する複数の線状経路を有し、
前記複数の線状経路が、第1線状経路と、前記第1線状経路に隣接しかつ前記第1方向の一端側において前記第1線状経路と前記第2方向に繋がる第2線状経路と、前記第2線状経路に隣接しかつ前記第1方向の他端側において前記第2線状経路と前記第2方向に繋がる第3線状経路とを有するように、一筆書きで供給されるパターンであり、
前記複数の線状経路における互いに隣接する線状経路の間の領域は、前記ワークの外側に開放されている、樹脂封止品の製造方法。
【請求項11】
第1方向及び前記第1方向に交差する第2方向にそれぞれ配列した素子が配置されたワークの封止用に用いる樹脂をリリースフィルム上に供給する樹脂供給装置であって、
前記ワーク上の素子の配置情報を取得する取得部と、
前記リリースフィルム上に樹脂を供給する供給部と、
前記配置情報に基づいて樹脂供給パターンを算出する算出部と、
前記樹脂供給パターンに沿って、前記リリースフィルム及び前記供給部の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させる駆動部と、
を備え、
前記樹脂供給パターンは、前記第1方向に
対して平行に延在する複数の線状経路を有し、
前記複数の線状経路が、第1線状経路と、前記第1線状経路に隣接しかつ前記第1方向の一端側において前記第1線状経路と前記第2方向に繋がる第2線状経路と、前記第2線状経路に隣接しかつ前記第1方向の他端側において前記第2線状経路と前記第2方向に繋がる第3線状経路とを有するように、一筆書きで供給されるパターンであり、
前記複数の線状経路における互いに隣接する線状経路の間の領域は、前記リリースフィルムの外側に開放されている、樹脂供給装置。
【請求項12】
請求項
11に記載の樹脂供給装置と、
前記ワーク上の素子を樹脂封止する樹脂封止金型と、
を備え、
前記樹脂封止金型は、樹脂が充填されるキャビティが設けられ前記リリースフィルムがセットされる下型と、前記ワークがセットされる上型とを有し、
前記上型と前記下型との間に前記キャビティ内のエアを排出するエアベントが形成される、樹脂封止装置。
【請求項13】
第1方向及び前記第1方向に交差する第2方向にそれぞれ配列した素子が配置されたワークの封止に用いる樹脂をリリースフィルム上に供給することを含む樹脂封止品の製造方法であって、
前記リリースフィルム上に樹脂を供給することは、
前記ワーク上の素子の配置情報を取得することと、
前記配置情報に基づいて樹脂供給パターンを算出することと、
前記樹脂供給パターンに沿って、前記リリースフィルム上に樹脂を供給することと、
前記リリースフィルム上の樹脂を前記ワークに押し当てることと、
を含み、
前記樹脂供給パターンは、前記第1方向に
対して平行に延在する複数の線状経路を有し、
前記複数の線状経路が、第1線状経路と、前記第1線状経路に隣接しかつ前記第1方向の一端側において前記第1線状経路と前記第2方向に繋がる第2線状経路と、前記第2線状経路に隣接しかつ前記第1方向の他端側において前記第2線状経路と前記第2方向に繋がる第3線状経路とを有するように、一筆書きで供給されるパターンであり、
前記複数の線状経路における互いに隣接する線状経路の間の領域は、前記ワークの外側に開放されている、樹脂封止品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂供給装置、樹脂封止装置、及び樹脂封止品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮成形によってワークを樹脂封止することが知られている。このような圧縮成形による樹脂封止装置は、一般的に、ワーク上に樹脂を供給する樹脂供給装置と、樹脂をワーク上で押し広げて加熱加圧する樹脂封止金型とを備えている。
【0003】
ここで、特許文献1には、上記樹脂供給装置が供給する樹脂供給パターンについて、真空状態としたチャンバ内で、渦巻き状や格子状の樹脂供給パターンを形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された樹脂供給装置のように真空チャンバ内で樹脂を供給しても、成形を行う金型内においてエアや樹脂から発生するガスが存在している場合にはこれが樹脂に巻き込まれてしまい、充填不良によるエアトラップやボイドのような欠陥を発生させる場合がある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、欠陥の発生を抑制できる樹脂供給装置、樹脂封止装置、及び樹脂封止品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る樹脂供給装置は、第1方向及び第1方向に交差する第2方向にそれぞれ配列した素子が配置されたワーク上に樹脂を供給する樹脂供給装置であって、ワーク上の素子の配置情報を取得する取得部と、ワーク上に樹脂を供給する供給部と、配置情報に基づいて樹脂供給パターンを算出する算出部と、樹脂供給パターンに沿って、ワーク及び供給部の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させる駆動部と、を備え、樹脂供給パターンは、第1方向に沿って延在する複数の線状経路を有し、複数の線状経路における互いに隣接する線状経路の間の領域は、ワークの外側に開放されている。
【0008】
この態様によれば、隣接する線状経路の間の領域が排気のための流路として機能するため、樹脂が押し広げられる際のエアやガスの巻き込みが抑制でき、充填不良による欠陥の発生を抑制できる。
【0009】
上記態様において、複数の線状経路は、第1方向に対して平行に延在してもよい。
【0010】
上記態様において、複数の線状経路は、第1線状経路と、第1線状経路に隣接する第2線状経路と、第2線状経路に隣接する第3線状経路とを有し、第1方向の一端側において、第1線状経路及び第2線状経路が互いに接続され、第1方向の他端側において、第2線状経路及び第3線状経路が互いに接続されてもよい。
【0011】
上記態様において、樹脂供給パターンは、連続した1本の線状であってもよい。
【0012】
上記態様において、複数の線状経路の少なくとも1つは、第2方向に隣接する素子の間の領域上に延在してもよい。
【0013】
上記態様において、複数の線状経路の少なくとも1つは、第1方向に配列した素子上に延在してもよい。
【0014】
上記態様において、複数の線状経路における互いに隣接する線状経路は、ワーク上の最外縁の素子に至るまで延在してもよい。
【0015】
上記態様において、複数の線状経路における互いに隣接する線状経路は、ワーク上の最外縁の素子を除いて最外縁の素子よりも内側の素子に至るまで延在してもよい。
【0016】
上記態様において、ワーク上の素子は、大きさの異なる2種類以上の素子を含み、複数の線状経路は、ワーク上の素子のうち他の素子よりも小さい素子上に延在してもよい。
【0017】
上記態様において、供給部は、液状の樹脂を供給するディスペンサであってもよい。
【0018】
本発明の一態様に係る樹脂封止装置は、上記態様のいずれかの樹脂供給装置と、ワーク上の素子を樹脂封止する樹脂封止金型と、を備え、樹脂封止金型は、樹脂が充填されるキャビティが設けられた上型と、ワークがセットされる下型とを有し、型締めされた樹脂封止金型は、上型と下型との間にキャビティ内のエアを排出する複数のエアベントを有する。
【0019】
上記態様において、複数のエアベントのうち少なくとも1つは、複数の線状経路における互いに隣接する線状経路の間の領域の延長線上に設けられてもよい。
【0020】
この態様によれば、型締めして樹脂を加熱加圧する際に、線状経路の間の領域の延長線上に設けられたエアベントは、互いに隣接する線状経路の間の領域が樹脂で埋まりきるまで閉塞せず、樹脂封止金型の内部から排気できる。
【0021】
本発明の一態様に係る樹脂封止品の製造方法は、第1方向及び第1方向に交差する第2方向にそれぞれ配列された素子が配置されたワーク上に樹脂を供給することを含む樹脂封止品の製造方法であって、ワーク上に樹脂を供給することは、ワーク上の素子の配置情報を取得することと、配置情報に基づいて樹脂供給パターンを算出することと、樹脂供給パターンに沿って、ワーク上に樹脂を供給することと、を含み、樹脂供給パターンは、第1方向に沿って延在する複数の線状経路を有し、複数の線状経路における互いに隣接する線状経路の間の領域は、ワークの外側に開放されている。
【0022】
この態様によれば、隣接する線状経路の間の領域が排気のための流路として機能するため、樹脂が押し広げられる際のエアやガスの巻き込みが抑制でき、充填不良による欠陥の発生を抑制できる。
【0023】
本発明の一態様に係る樹脂供給装置は、第1方向及び第1方向に交差する第2方向にそれぞれ配列した素子が配置されたワークの封止用に用いる樹脂をリリースフィルム上に供給する樹脂供給装置であって、ワーク上の素子の配置情報を取得する取得部と、リリースフィルム上に樹脂を供給する供給部と、配置情報に基づいて樹脂供給パターンを算出する算出部と、樹脂供給パターンに沿って、リリースフィルム及び供給部の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させる駆動部と、を備え、樹脂供給パターンは、第1方向に沿って延在する複数の線状経路を有し、複数の線状経路における互いに隣接する線状経路の間の領域は、リリースフィルムの外側に開放されている。
【0024】
この態様によれば、隣接する線状経路の間の領域が排気のための流路として機能するため、樹脂が押し広げられる際のエアやガスの巻き込みが抑制でき、充填不良による欠陥の発生を抑制できる。
【0025】
発明の一態様に係る樹脂封止装置は、上記態様の樹脂供給装置と、ワーク上の素子を樹脂封止する樹脂封止金型と、を備え、樹脂封止金型は、樹脂が充填されるキャビティが設けられリリースフィルムがセットされる下型と、ワークがセットされる上型とを有し、上型と下型との間にキャビティ内のエアを排出するエアベントが形成される。
【0026】
この態様によれば、型締めして樹脂を加熱加圧する際に、線状経路の間の領域の延長線上に設けられたエアベントは、互いに隣接する線状経路の間の領域が樹脂で埋まりきるまで閉塞せず、樹脂封止金型の内部から排気できる。
【0027】
本発明の一態様に係る樹脂封止品の製造方法は、第1方向及び第1方向に交差する第2方向にそれぞれ配列した素子が配置されたワークの封止に用いる樹脂をリリースフィルム上に供給することを含む樹脂封止品の製造方法であって、リリースフィルム上に樹脂を供給することは、ワーク上の素子の配置情報を取得することと、配置情報に基づいて樹脂供給パターンを算出することと、樹脂供給パターンに沿って、リリースフィルム上に樹脂を供給することと、リリースフィルム上の樹脂をワークに押し当てることと、を含み、樹脂供給パターンは、第1方向に沿って延在する複数の線状経路を有し、複数の線状経路における互いに隣接する線状経路の間の領域は、ワークの外側に開放されている。
【0028】
この態様によれば、隣接する線状経路の間の領域が排気のための流路として機能するため、樹脂が押し広げられる際のエアやガスの巻き込みが抑制でき、充填不良による欠陥の発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、欠陥の発生を抑制できる樹脂供給装置、樹脂封止装置、及び樹脂封止品の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】第1実施形態に係る樹脂封止装置の構成を概略的に示す図である。
【
図2】樹脂封止金型内のワーク及び樹脂供給パターンを概略的に示す平面図である。
【
図3】第1実施形態に係る樹脂封止装置を用いた樹脂封止品の製造方法を示すフローチャートである。
【
図4】樹脂封止金型の内部にセットされた直後のワーク上の樹脂を概略的に示す断面図である。
【
図5】樹脂封止金型によって押し広げられている途中の樹脂を概略的に示す断面図である。
【
図6】加熱加圧によってキャビティ内に充填した樹脂を概略的に示す断面図である。
【
図7】変形例に係る樹脂供給パターンを概略的に示す平面図である。
【
図8】他の変形例に係る樹脂供給パターンを概略的に示す平面図である。
【
図9】他の変形例に係る樹脂供給パターンを概略的に示す平面図である。
【
図10】他の変形例に係る樹脂供給パターンを概略的に示す平面図である。
【
図11】他の変形例に係る樹脂供給パターンを概略的に示す平面図である。
【
図12】他の変形例に係る樹脂供給パターンを概略的に示す平面図である。
【
図13】第2実施形態に係る樹脂封止装置の構成を概略的に示す図である。
【
図14】第2実施形態に係る樹脂封止装置を用いた樹脂封止品の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。各実施形態の図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本願発明の技術的範囲を当該実施形態に限定して解するべきではない。
【0032】
<第1実施形態>
図1及び
図2を参照しつつ、本発明の実施形態に係る樹脂封止装置1の構成について説明する。
図1は、第1実施形態に係る樹脂封止装置の構成を概略的に示す図である。
図2は、樹脂封止金型内のワーク及び樹脂供給パターンを概略的に示す平面図である。
【0033】
各々の図面には、各々の図面相互の関係を明確にし、各部材の位置関係を理解する助けとするために、便宜的にX軸、Y軸及びZ軸からなる直交座標系を付すことがある。Z軸の矢印の向く方向を上方向、Z軸の矢印の向きとは反対方向を下方向とする。
【0034】
樹脂封止装置1は、ワーク10を樹脂13で樹脂封止(モールド成形)するために用いられる装置である。樹脂封止装置1は、樹脂封止用の樹脂13を被塗布物(例えば、ワーク10やリリースフィルムRF)上に塗布(供給)する樹脂供給装置100と、樹脂を加熱加圧して硬化させる樹脂封止金型200とを備えている。ワーク10は、例えば、基板11と基板11上に配置された素子12とを備え、素子12は第1方向X及び第2方向Yにそれぞれ配列している。
【0035】
基板11及び素子12の構成は限定されるものではないが、一例として、基板11は半導体ウェハであり、素子12は基板11にフリップチップ実装された半導体チップとすることができる。この場合には、樹脂13を供給する時点で、基板11と素子12との間には間隙が存在するが、加熱加圧により樹脂がこの隙間に充填される。本発明はこの態様に限られるものではなく、例えば、基板11と素子12との間に隙間がなく、単に基板11に素子12が搭載されたものでもよく、基板11と素子12との間にアンダーフィル樹脂が充填されているものに適用してもよい。また、素子12は、複数の半導体チップが第3方向Zに間隔を空けて積層された多層体であってもよく、半導体素子以外の素子(MEMSデバイスや電子デバイスなど)でもよい。素子12の基板11への配置態様は限定されるものではなく、例えば、素子12が基板11にワイヤボンディング実装されていてもよく、あるいは素子12が基板11に着脱可能に固定されていてもよい。基板11は樹脂基板やガラス基板でもよく、インタポーザ基板、リードフレーム、粘着シート付きキャリアプレートなどであってもよい。第3方向Zの正方向(以下、上方向という)側からワーク10を平面視したとき、例えば、基板11の平面形状は円形状であり素子12の平面形状は矩形状であるが、基板11及び素子12の平面形状はこれらに限定されるものではない。例えば、基板の平面形状は矩形状でもよく、素子の平面形状は多角形状や円形状でもよい。ワークには形状の異なる2種類以上の素子が配置されてもよい。
【0036】
樹脂供給装置100は、ワーク10(より具体的には基板11)上の素子12の配置情報を取得する取得部110と、ワーク上に樹脂を供給する供給部120と、配置情報に基づいて樹脂供給パターンを算出する算出部130と、樹脂供給パターンに沿って供給部120を移動させる駆動部140と、ワーク10が載置されるステージ150とを備えている。
【0037】
取得部110は、例えば、ワーク10を撮像して画像解析によって素子12の配置情報を取得する。取得部110は、ワーク毎に配置情報を取得してもよく、複数のワークを有するロット毎に配置情報を取得してもよい。なお、取得部110は上記に限定されるものではなく、例えば、ワーク10に付与されたコードなどを読み取ることにより、予め記録されたデータベースから当該コードなどに対応する配置情報を取得してもよい。また、取得部110は、外部端末などから入力されることによって配置情報を取得してもよい。また、取得部110は、ウェハのようなワーク10においてVノッチなどの位置を検出しワーク10の向きを取得してもよい。樹脂供給装置100は、取得部110が取得したワーク10の向きに基づいてワーク10の向きを合わせた後に、後述する樹脂13を供給することもできる。
【0038】
供給部120は、例えば、液状の樹脂13を吐出するディスペンサである。供給部120は、樹脂13が貯留されるシリンジ121と、シリンジ121の内部に挿入されて樹脂13を押し出し可能なプッシャ(ピストン)122と、シリンジ121の先端のノズルの開閉を行うピンチバルブ123とを備えている。供給部120には、シリンジ121内に貯留された樹脂13を使い終わったときに、使用済みのシリンジ121を新しいシリンジ121に交換可能な構成が設けられている。なお、供給部120は上記に限定されるものではなく、ピンチバルブ123の代わりに開閉弁を備えてもよい。また、供給部120は2液を別に準備しその場で混合して供給する構成であってもよい。例えば、供給部120は粉粒体の樹脂を吐出するフィーダであってもよい。
【0039】
算出部130において算出される樹脂供給パターン(ワーク10上に描画される樹脂13の形状)は、第1方向Xに沿って延在する複数の線状経路14と、第2方向Yに並ぶ複数の線状経路14における互いに隣接する線状経路14を接続する中継経路15とを有している。
図2に示すように上側からワーク10を平面視したとき、複数の線状経路14における互いに隣接する線状経路14の間の領域19は、ワーク10の外側に開放されている。なお、複数の線状経路14は、例えば第1方向Xに対して平行に延在しているが、第1方向Xに対して傾斜していてもよい。
【0040】
第1線状経路14A、第1線状経路14Aに隣接する第2線状経路14B、及び第2線状経路14Bに隣接する第3線状経路14Cを例に挙げ、樹脂供給パターンについて説明する。第1線状経路14Aと第2線状経路14Bとは、第1方向Xの一端側(負方向側)において、第1中継経路15Aによって互いに接続されている。第1線状経路14Aと第2線状経路14Bとは、第1中継経路15A以外では接続されておらず、上側からワーク10を平面視したとき、第1線状経路14Aと第2線状経路14Bとの間の領域19Aは、第1方向Xの他端側(正方向側)において、ワーク10の外側に開放されている。第2線状経路14Bと第3線状経路14Cとは、第1方向Xの他端側において第2中継経路15Bによって互いに接続され、第2線状経路14Bと第3線状経路14Cの間の領域19Bは、第1方向Xの一端側においてワーク10の外側に開放されている。第1線状経路14A、第1中継経路15A、第2線状経路14B、第2中継経路15B及び第3線状経路14Cに沿って、樹脂13は一筆書きで供給できる。なお、樹脂供給パターンは連続した1本の線状であり、樹脂供給パターンの全体においても、樹脂13は一筆書きで供給できる。言い換えると、樹脂供給パターンは、平行な線状経路14が中継経路15で繋がるように繰り返し折り返されることで1本の線状のパターンとして形成される。
【0041】
図示した例では、第1方向X(
図2中の上下方向)及び第2方向Y(
図2中の左右方向)にマトリクス状に配列された素子12の第2方向Yにおける隙間を埋めるように線状経路14に沿って樹脂13が供給されている。そのため、線状経路14の左側部は、当該線状経路14の左側に位置した素子12の右端を覆う配置となる。また、線状経路14の右側部は、当該線状経路14の右側に位置した素子12の左端を覆う配置となる。
【0042】
素子12は
図2中で上下に並べられており、上端及び下端の素子12はワーク10の最外縁の近くまで配置されている。以下の説明において、基板11の縁から同図の上端の素子12までの領域と、基板11の縁から同図の下端の素子12までの領域とをまとめて「ワーク10の外部領域」とする。ワーク10の外部領域のうち、樹脂封止金型200によって挟まれる領域を「外部領域10A」とし、外部領域10Aよりも素子12側の領域を「外部領域10B」とする。
【0043】
各々の線状経路14は、同図の上端の素子12から同図の下端の素子12まで延在している。そのため、隣り合う線状経路14の端部同士を繋ぐ中継経路15は、同図の上端の素子12や同図の下端の素子12の上に重なるように配置される。同図の上側の中継経路15は、同図の上端の素子12よりも更に上側の外部領域10Bに配置されてもよい。同図の下側の中継経路15は、同図の下端の素子12よりも更に同図の下側の外部領域10Bに配置されてもよい。
【0044】
なお、樹脂供給パターンは図示した例に限定されるものではない。例えば、線状経路14を配置できる領域は前述した素子12の隙間だけに限定されない。素子12の隙間と素子12の主面中央との双方を通過する線状経路14が配置されてもよいし、素子12の主面中央のみに線状経路14が配置されてもよい。また、中継経路15を配置できる領域は前述した同図の上端及び下端の素子12や外部領域10Bに限定されない。上端の素子12と下端の素子12との間にある内側の素子12の上に中継経路15の一部又は全部が配置されてもよい。
【0045】
樹脂供給パターンの角部は、尖鋭形状を有していてもよいし、あるいはR形状を有していてもよい。
【0046】
駆動部140は、樹脂供給パターンに沿って、ワーク10及び供給部120の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させる。本実施形態では、駆動部140は供給部120を移動させる。具体的には、駆動部140は、上ベース部141と、第1モータ142Mと、第1移動部142と、第2モータ143Mと、第2移動部143と、第3モータ144Mと、第3移動部144と、第4モータ122Mとを備えている。
【0047】
第1移動部142は上ベース部141に対して第1方向Xに移動可能に構成され、第2移動部143は第1移動部142に対して第2方向Yに移動可能に構成され、第3移動部144は第2移動部143に対して第3方向Zに移動可能に構成されている。具体的には、上ベース部141はレールを有し、第1移動部142は、上ベース部141のレール上を第1モータ142Mの駆動によってスライドするスライダを有している。第1移動部142はレールを有し、第2移動部143は、第1移動部142のレール上を第2モータ143Mの駆動によってスライドするスライダを有している。第2移動部143はレールを有し、第3移動部144は、第2移動部143のレール上を第3モータ144Mの駆動によってスライドするスライダを有している。第3移動部144には、供給部120のシリンジ121が固定されている。第3移動部144はレールを有し、供給部120のプッシャ122は、第3移動部144のレール上を第4モータ122Mの駆動によってスライドするスライダを有している。すなわち、第1モータ142Mが供給部120の第1方向Xの移動量及び移動速度を制御し、第2モータ143Mが供給部120の第2方向Yの移動量及び移動速度を制御し、第3モータ144Mが供給部120の第3方向Zの移動量及び移動速度を制御する。そして、第4モータ122Mが、プッシャ122の移動量及び移動速度を制御することにより、供給部120からの樹脂13の吐出量及び吐出速度を制御する。
【0048】
なお、本実施形態において、樹脂13の供給時にワーク10は固定されているが、駆動部140は、供給部120を固定し、ワーク10が載置されたステージ150を供給部120に対して移動させてもよい。駆動部140は、ワーク10及び供給部120の両方を移動させてもよい。
【0049】
ステージ150は、例えば、重量計を備えている。樹脂供給装置100は、ステージ150の重量計によってワーク10上に供給された樹脂13の重量を計測しながら、樹脂13を供給する。具体的には、重量計の計量結果に基づき、駆動部140の第1モータ142M~第4モータ122Mの駆動を変化させる。このような構成により、任意の吐出速度で樹脂13を供給しながら任意の移動速度でシリンジ121を移動させることでワーク10に任意の形状で任意の量の樹脂13を供給することができる。例えば、第1方向X及び第2方向Yにおける移動速度を早くすると同じ吐出速度でも所定の長さにおける供給量を少なくすることもでき、第1方向X及び第2方向Yにおける移動速度を遅くすると同じ吐出速度でも所定の長さにおける供給量を多くすることもできる。
【0050】
樹脂封止金型200は、圧縮成形技術を用いてワーク10を樹脂封止するための一対の金型(下型210及び上型220)である。本実施形態において、樹脂封止金型200は、上型220にキャビティ201を有する上型キャビティ構造である。また、樹脂封止金型200は、樹脂封止金型200の内部(下型210と上型220との間の空間)をシールするシールリング203(例えばOリング)を備えている。なお、図示しないが、樹脂封止装置1は、樹脂封止金型200の内部圧力を調節する圧調節部(例えば真空ポンプ)や、内部温度(成形温度)を調節する温度調節部(例えばヒータ)を備えている。
【0051】
上型220は、チェイス221と、キャビティ駒223と、キャビティ駒223を囲むクランパ225と、間隔を空けてクランパ225を囲むチャンバブロック227とを備えている。キャビティ駒223はチェイス221に固定されている。クランパ225は、キャビティ駒223よりも下型210に向かって突出し、キャビティ駒223とともにキャビティ201を構成している。クランパ225は、スプリングを介してチェイス221に接続され、キャビティ駒223に対して摺動可能に構成されている。型締めしたとき、クランパ225と下型210との間に、ワーク10の外部領域10Aが挟まれる。クランパ225の下面(下型210に対向する面)には、チャンバブロック227側の空間とキャビティ201とを繋ぐ複数の凹部のエアベント226が設けられている。複数のエアベント226は、キャビティ201を中心とした放射状に延在している。型締めされた上型220と下型210との間において、エアベント226を介しキャビティ201内のエアを排出する。なお、各図面においてエアベント226は、理解の用意のために深く図示しているが、実際には金型内のエアやガスは排出されるが、樹脂13は流出しないような深さ(例えば数μm程度)に形成されている。チャンバブロック227の一部には、ポンプに接続されてキャビティ201内のエアを排出するための排気孔228が設けられている。チャンバブロック227の排気孔228は、キャビティ201を中心とした放射状に延在している。シールリング203は、チャンバブロック227と下型210とによって挟まれる。
【0052】
型締めされた樹脂封止金型200において、複数のエアベント226のうち少なくとも1つは、複数の線状経路14における互いに隣接する線状経路14の間の領域19の延長線上に設けられていてもよい。例えば
図2に示すように、第1線状経路14Aと第2線状経路14Bとの間の領域19Aの延長線上には、エアベント226が設けられている。
【0053】
次に、
図3乃至
図6を参照しつつ、本実施形態に係る樹脂封止装置1を用いた樹脂封止品の製造方法について説明する。
図3は、第1実施形態に係る樹脂封止装置を用いた樹脂封止品の製造方法を示すフローチャートである。
図4は、樹脂封止金型の内部にセットされた直後のワーク上の樹脂を概略的に示す断面図である。
図5は、樹脂封止金型によって押し広げられている途中の樹脂を概略的に示す断面図である。
図6は、加熱加圧によってキャビティ内に充填した樹脂を概略的に示す断面図である。なお、説明の簡略化のため、
図4乃至
図6においてチャンバブロック227の図示を省略している。
【0054】
まず、ワーク10上の素子の配置情報を取得する(S11)。例えば、取得部110によってワーク10を撮像し、ワーク10の画像を解析して、第1方向X及び第2方向Yに配列する素子12の配置情報を取得する。
【0055】
次に、素子12の配置情報に基づいて樹脂供給パターンを算出する(S12)。例えば、算出部130は、取得部110によって登録された配置情報を読み取り、事前に登録されたルール(例えば、線状経路14は素子12の間の領域を通過する、線状経路14はワーク10の最外縁の素子12に至るまで延在させる、など。)に則って、供給部120の望ましい移動経路、移動速度などを算出する。なお、線状経路14の算出の際には、キャビティ201の構造情報を利用してもよい。この構造情報としては、キャビティの内周寸法や最終成形時のキャビティの深さなどが挙げられる。算出された樹脂供給パターンは、第1方向Xに沿って延在する複数の線状経路14を有している。また、複数の線状経路14における互いに隣接する線状経路14の間の領域19は、上側からワーク10を平面視したときに、ワーク10の外側に開放されている。
【0056】
次に、樹脂供給パターンに沿ってワーク10上に樹脂13を供給する(S13)。ここでは、ワーク10が第1方向X、第2方向Y、及び、Z軸を中心とした回転方向における位置決めがされた状態で樹脂供給パターンに基づき駆動部140を駆動させ、供給部120を移動させる。供給部120が供給開始位置(樹脂供給パターンの一端)に移動したら、シリンジ121に対してプッシャ122を押し込みつつピンチバルブ123を開き、供給部120からの樹脂13の供給を開始させる。樹脂13の供給を続ける供給部120を移動させ、供給部120が供給終了位置(樹脂供給パターンの他端)に移動したら、シリンジ121に対してプッシャ122を停止させつつピンチバルブ123を閉じ、供給部120からの樹脂13の供給を終了させる。
【0057】
次に、リリースフィルムRFを上型220にセットし、ワーク10を下型210にセットする。キャビティ201を覆うようにリリースフィルムRFを型開きした樹脂封止金型200の内部に搬入する。リリースフィルムRFは、例えば、金型の前方に設けた未使用フィルムのロールから送り出し、金型の後方に設けた使用後フィルムのロールで巻き取ることで供給されてもよい。キャビティ駒223とクランパ225との間の隙間や、図示を省略した上型220中の吸気孔からエアを抜き、リリースフィルムRFを上型220に吸着させる。また、樹脂13が供給されたワーク10を型開きした樹脂封止金型200の内部に搬入する。図示を省略した上型220中の吸気孔からエアを抜き、ワーク10を下型210に吸着させる。
【0058】
次に、型締めにより樹脂13を押し広げる(S15)。
【0059】
まず、
図4に示すように、例えばフリップチップ実装された素子12と基板11を有するワーク10の外部領域10Aをクランパ225と下型210とで挟む。このとき、図示を省略しているが、チャンバブロック227と下型210とでシールリング203を挟んでいる。クランパ225の下面に設けられた浅い掘り込みは、下型210とクランパ225との間(ワーク10とクランパ225との間)にエアベント226を形成し、当該エアベント226を通してクランパ225の内側の空間(キャビティ201)とクランパ225の外側の空間とが繋がっている。これにより、
図4に示す金型におけるエアはチャンバブロック227の外側に排出される。
【0060】
次に、
図5に示すように、減圧状態となった金型において樹脂13がキャビティ駒223によって押し広げられる。このとき、素子12とリリースフィルムRFとの間の隙間だけでなく、ワーク10とフリップチップ実装された素子12との間の隙間にも樹脂13を侵入させアンダーフィルさせることができる。ワーク10上では互いに隣接する経路の樹脂13の間の領域は狭まっていくが、樹脂13の充填が完了するまで線状に塗布された樹脂13同士が接触することを防止できるため、エアベント226からエアを排出することができる。
【0061】
さらに型締めすることでキャビティ駒223を相対的に下降させ、
図6に示すように、キャビティ201における樹脂13を充填させる。これにより、エアベント226の手前まで樹脂13が充填される。ここでは、図示しないヒータにより加熱しながら樹脂13を軟化させキャビティ駒223によって加圧することで、樹脂13をキャビティ内で充填(モールド)させながら、ワーク10とフリップチップ実装された素子12との間の隙間に樹脂13をアンダーフィルさせる。
【0062】
最後に、所定時間だけ加熱加圧(キュア)を継続させて樹脂13を硬化させる(S16)。こうしてワーク10の樹脂封止を完了させる。
【0063】
上記実施形態で説明した構成によれば、樹脂供給パターンは、第1方向Xに対して平行に延在する複数の線状経路14を有し、複数の線状経路14における互いに隣接する線状経路14の間の領域19は、上側からワーク10の平面視において外側に開放されている。これによれば、樹脂封止金型200で樹脂13を押し広げてワーク10を樹脂封止するとき、樹脂封止金型200の内部に残存するエアや、樹脂13から発生したガスを、領域19を通して排出できる。このため、樹脂13によるエアなどの抱え込みによる欠陥(例えばエアトラップや未充填)の発生を抑制できる。これによれば、ワーク10の細部への樹脂13の侵入がエアなどによって阻害され難い場合、例えばフリップチップ実装された素子12と基板11との間に間隙への樹脂13の充填を促進して充填不良の発生を抑制できる。
【0064】
ワーク10上の第1方向Xにおける一端側で第1線状経路14Aと第2線状経路14Bとが互いに接続され、ワーク10上の第1方向Xにおける他端側で第2線状経路14Bと第3線状経路14Cとが互いに接続されている。また、樹脂供給パターンは、連続した1本の線状である。これによれば、隣接する線状経路同士が少なくともいずれかの端部側では接続されていない形状としてエアの排気を行いながら、樹脂13を一筆書きで供給できる。このため、供給の途中で樹脂13の吐出を止める必要がなく、樹脂13を連続して吐出することで効率的にワーク10上に樹脂13を供給できる。
【0065】
樹脂供給パターンは、第2方向Yに隣接する素子12の間の領域上に延在している。これによれば、基板11と素子12との間の間隙や、素子12同士の間の間隙に効率よく樹脂13を進入させることができ、封止不良の発生を抑制できる。
【0066】
線状経路14はワーク10上の最外縁の素子12に至るまで延在し、中継経路15が最外縁の素子12上に延在している。これによれば、素子12が存在しない分だけ樹脂13の必要量が多いワーク10の外部領域10B上の空間において樹脂13が不足することによる欠陥の発生を抑制できる。
【0067】
エアベント226は、互いに隣接する線状経路14の間の領域19の延長線上に設けられている。これによれば、互いに隣接する線状経路14の間の領域19が樹脂13で埋まるまでエアベントは閉塞せず、樹脂封止金型200の内部から排気できる。
【0068】
以下に、樹脂供給パターンの変形例及び本発明の他の実施形態に係る樹脂封止装置の構成について説明する。なお、上記第1実施形態と共通の事柄については以下の各態様においても同様に適用できるものとしその記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成には同様の符号を付し、同様の構成とそれによる同様の作用効果については逐次言及しない。
【0069】
図7から
図11はそれぞれ異なる変形例に係る樹脂供給パターンの平面概略図を示したものである。
【0070】
図7に示すように、ワーク20において素子22同士が離れて搭載されているときには、素子22の間で基板21上に樹脂13を塗布することもできる。具体的には、上側からワーク20を平面視したとき、線状経路24は、第2方向Yに隣接する素子22の間であって素子22の外側の領域上に延在している。これによれば、樹脂23が基板21上に供給されるため、基板21と素子22との間の間隙などの微細な空間に樹脂23が侵入し易い。
【0071】
中継経路25は、素子22の外側且つ外部領域20Bに延在している。これによれば、例えば素子22の占有面積の密度が低いワーク20であっても、素子22が存在しない分だけ樹脂23の必要量が多いワーク20の外部領域20B上の空間において樹脂23が不足することによる欠陥の発生を抑制できる。
【0072】
図8に示すように、上側からワーク30を平面視したとき、線状経路34は、第1方向Xに配列した素子32上に延在している。線状経路34は、素子32中の第2方向Yにおける中央部を通るように延在している。これにより、素子32の第2方向Y側の端部が、互いに隣接する線状経路34の間の領域39に位置している。これによれば、第2方向Yに隣接する素子32の間で素子32のない領域が排気のための流路として機能するため、排気を効率的に行うことができ充填不良による欠陥の発生を抑制できる。
【0073】
図9に示すように、線状経路44の間隔を任意に設定することもできる。例えば、上側からワーク40を平面視したとき、線状経路44は、素子42の1列分以上の間隔を空けて第2方向Yに並び、第1方向Xに配列した素子42上に延在している。言い換えると、互いに隣接する線状経路44の間の領域49には、少なくとも一列の素子42が配列している。線状経路44は、第2方向Yに隣接する素子42の間の領域上に延在してもよい。例えば、すべての素子42の列に対応して樹脂13を共有する構成と比べ、樹脂13の供給される経路の長さを短くして短時間で供給することができる。また、樹脂13の必要量が少ないときに線状経路44の間隔を広げることで、樹脂13の供給量を調整することもできる。
【0074】
図10に示すように、ワーク20において複数種類の素子22搭載されているときには、搭載された素子22に応じて樹脂13を塗布することもできる。具体的には、ワーク50には、素子52Aと、素子52Aよりも大きい素子52Bとが配置されている。上側からワーク50を平面視したとき、線状経路54は、素子52Bの間の領域であって、素子52A上に延在している。これによれば、樹脂53がワーク50の細部に侵入し易く、充填不良による欠陥の発生を抑制できる。
【0075】
図11に示すように、上側からワーク60を平面視したとき、互いに隣接する線状経路64の間の領域69は、第1方向Xの正方向側及び負方向側の両方に向かって、ワーク60の外側に開放されている。線状経路64の第2方向Yの幅は例えば一定であるが、線状経路64の第1方向Xにおける中央部の幅が第1方向Xにおける端部の幅よりも大きくてもよい。また、互いに隣接する線状経路64は、第1方向Xにおける中央部において接続されてもよい。
【0076】
なお、上記説明した
図2及び
図7から
図11のそれぞれの樹脂供給パターンは、一つのワークに対して適宜組み合わせて適用することができる。
【0077】
図12は、ワークの変形例で、パネルレベルパッケージ(PLP:PanelLevelPackaging)で用いられる矩形状のワーク10の場合を示したものである。
図12に示すように、上側からワーク70を平面視したとき、基板71は、一対の短辺と一対の長辺とを有する矩形状である。線状経路74は、基板71の短辺に沿って延在しており、より具体的には基板71の短辺に対して平行に延在している。これによれば、線状経路74が基板71の長辺に沿って延在する構成に比べて、互いに隣接する線状経路74の間の領域79の長さを短くして、この領域79に樹脂73を押し広げられる工程の途中で線状経路74の樹脂13同士が接触することで閉塞し、エアが樹脂73に巻き込まれるのを抑制できる。なお、
図12に示す変形例は、上記の各樹脂供給パターンに適宜適用することができる。
【0078】
<第2実施形態>
図13を参照しつつ、第2実施形態に係る樹脂供給パターンの構成について説明する。
図13は、第2実施形態に係る樹脂封止装置の構成を概略的に示す図である。
【0079】
本実施形態において、ステージ150の上にはリリースフィルムRFが載置され、取得部110が取得したワーク10上の素子12の配置情報に基づいて駆動部140が供給部120を移動させ、リリースフィルムRF上に樹脂13が供給される。樹脂封止金型800は、キャビティ801を有する下型810と、上型820とを備えた下型キャビティ構造である。下型810にはリリースフィルムRFがセットされ、上型820にはワーク10がセットされる。下型810は、キャビティ801を構成するキャビティ駒813及びクランパ815を有し、クランパ815の上面(上型820に対向する面)には、型締めされたときにエアベント816が設けられている。
【0080】
次に、
図14を参照しつつ、本実施形態に係る樹脂封止装置8を用いた樹脂封止品の製造方法について説明する。
図13は、第2実施形態に係る樹脂封止装置の構成を概略的に示す図である。
図14は、第2実施形態に係る樹脂封止装置を用いた樹脂封止品の製造方法を示すフローチャートである。
【0081】
まず、ワーク10上の素子12の配置情報を取得する(S81)。次に、素子12の配置情報に基づいて樹脂供給パターンを算出する(S82)。ワーク10に対向させたときにリリースフィルムRF上の樹脂13が、第2方向Yに隣接する素子12の間の領域上、及び/又は第1方向Xに配列する素子12上にセットされるように、素子12の配置情報を反転させて樹脂供給パターンが算出される。次に、樹脂供給パターンに沿ってリリースフィルムRF上に樹脂13を供給する(S83)。次に、リリースフィルムRFを下型810にセットし、ワーク10を上型820にセットする(S84)。このとき、リリースフィルムRFとワーク10とは第1方向X、第2方向Y、及び、Z軸を中心とした回転方向における位置決めがされることで、リリースフィルムRF上に塗布された樹脂13がワーク10における素子12に対応する位置に供給されたのと同様の効果を得ることができる。次に、型閉じすることで金型のチャンバからはエアが排出していきながら樹脂13を素子12や基板11に接触させ、型締めにより樹脂13を押し広げる(S85)。下型810にセットされたリリースフィルムRF上の樹脂13を上型820にセットされたワーク10に押し当てて、樹脂13をワーク10とリリースフィルムRFとで挟み込んで押し広げる。ここで、樹脂13を素子12や基板11に接触させる前にエアを排出させることで、リリースフィルムRF上の樹脂13同士が接触することで閉空間が形成されても、エアトラップを防止できるようにも思われる。しかしながら、樹脂13が押し広げられる際に樹脂13が加熱されることで生成されるガスが残存してしまい充填不良の発生するおそれがある。これに対し、本実施形態のようにガスを排出する経路を設けていることで、ガスによるエアトラップのような不具合の発生を抑制することができる。続いて、加熱加圧により樹脂13を硬化させる(S86)。このように、下型キャビティ構造の金型であっても上述した発明と同様の効果を得ることができる。
【0082】
なお、本実施形態で説明した態様は、第1実施形態において説明したいずれか一つ又は複数の樹脂供給パターンを適宜組み合わせて適用することができる。
【0083】
以上説明したように、本発明の一態様によれば、欠陥の発生を抑制できる樹脂供給装置、樹脂封止装置、及び樹脂封止品の製造方法が提供できる。
【0084】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0085】
1…樹脂封止装置、10…ワーク、11…基板、12…素子、13…樹脂、14…線状経路、15…中継経路、19…線状経路の間の領域、100…樹脂供給装置、110…取得部、120…供給部、130…算出部、140…駆動部、150…ステージ、200…樹脂封止金型、201…キャビティ、210…下型、220…上型。