(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】生物応答性ヒドロゲルマトリックス及び使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240412BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20240412BHJP
A61K 31/405 20060101ALI20240412BHJP
A61K 47/62 20170101ALI20240412BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240412BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240412BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240412BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
A61K39/395 U
A61K47/20
A61K31/405
A61K47/62
A61P43/00 121
A61K45/00
A61P35/00
A61K9/06
(21)【出願番号】P 2020563583
(86)(22)【出願日】2019-05-13
(86)【国際出願番号】 US2019031971
(87)【国際公開番号】W WO2019217954
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-03-04
(32)【優先日】2018-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517366013
【氏名又は名称】ノース カロライナ ステート ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】NORTH CAROLINA STATE UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クー、チェン
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0021253(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0226724(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00
A61K 39/395
A61K 47/00-47/69
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性酸素種スカベンジャと、
抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体と、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(indoleamine-2,3-dioxygenase:IDO)の阻害剤とを含み、
前記活性酸素種スカベンジャが、L-メチオニンを含み、及び、
前記IDOの阻害剤が、デキストロ-1-メチルトリプトファン(dextro-1-methyl tryptophan:D-1MT)を含む、生物応答性ヒドロゲルマトリックス
であって、
前記ヒドロゲルマトリックスは、L-メチオニンおよびD-1MTを含むポリペプチドブロックによって挟まれたポリエチレングリコールを含むトリブロックコポリマーである、
生物応答性ヒドロゲルマトリックス。
【請求項2】
前記
抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体が、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピディリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、及びBMS-936559からなる群より選択される、請求項1に記載の生物応答性ヒドロゲルマトリックス。
【請求項3】
化学療法薬を更に含む、請求項1
又は2に記載の生物応答性ヒドロゲルマトリックス。
【請求項4】
がんを治療するための、請求項1~
3のいずれか一項に記載の生物応答性ヒドロゲルマトリックス。
【請求項5】
前記ヒドロゲルマトリックスが、活性酸素種(reactive oxygen species:ROS)への曝露に際して、
D-1MT、前記抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体、及び、前記化学療法薬、又はそれらの任意の組合せを、腫瘍微小環境中へ放出する、請求項
3に記載の生物応答性ヒドロゲルマトリックス。
【請求項6】
前記ヒドロゲル
マトリックスが、前記化学療法薬及び前記
抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体を、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30日間、前記腫瘍微小環境中へ放出する、請求項
5に記載の生物応答性ヒドロゲルマトリックス。
【請求項7】
前記がんが、メラノーマ、非小細胞肺がん、尿路上皮がん、腎がん、頭頸部がん、ホジキンリンパ腫、及び膀胱がんからなる群より選択されるがんである、請求項
4~6のいずれか一項に記載の生物応答性ヒドロゲルマトリックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年5月11日に出願された米国特許仮出願第62/670,632号の利益を主張するものであり、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
I.背景
プログラム死-1/プログラム死-リガンド1(PD-1/PD-L1)経路を標的とする免疫チェックポイント遮断(immune checkpoint blockade:ICB)は、メラノーマ、非小細胞肺がん、腎臓がん、頭頸部がん、及び膀胱がんなど、様々な悪性病変において顕著な臨床反応を誘導する。しかしながら、高いネオアンチゲン負荷によって特徴付けられる免疫原性腫瘍、エフェクタT細胞の事前浸潤及びPD-L1の発現を有する患者のみが、ICB後の投与後に、持続的な臨床反応を達成するように見受けられる。更に、ICBの臨床応用はまた、正常な臓器における様々な副作用とも関連している。これらの研究に基づいて、免疫原性腫瘍表現型を促進し、ICB応答を増加させ、そして重篤な副作用を回避することを目的とした戦略は、がん免疫療法の分野における中心的テーマである。必要とされているのは、行うことができる新しいがん療法及び治療戦略である。
【発明の概要】
【0003】
II.概要
生物応答性ヒドロゲルマトリックスに関連する方法及び組成物が開示される。
【0004】
一態様では、本明細書は、活性酸素種スカベンジャ(例えば、L-メチオニン、ピルビン酸ナトリウム;マンニトール;アジ化ナトリウム;尿酸;エブセレン;6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸(Trolox);4,5-ジヒドロキシベンゼン-1,3-ジスルホン酸(Tiron);α-トコフェロール(ビタミンE);2-(4-カルボキシフェニル)-4,4,5,5-テトラメチルイミダゾリン-1-オキシル-3-オキシド(Carboxy-PTIO);マンガン(III)-テトラキス(4-安息香酸)ポルフィリン(MnTBAP)、アセチル-L-システイン;ビタミンA;ビタミンC;グルタチオン;並びに/又はβ-カロテン)及びインドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)の阻害剤(例えば、デキストロ-1-メチルトリプトファン(インドキシモドとしても知られる、D-1MT)、NLG919、BMS-986205、ノルハルマン、ロスマリン酸、epacadostat、INCB024360類似体、IDO阻害剤1、PF-06840003、並びに/又はnavoximod)を含む、生物応答性ヒドロゲルマトリックスを開示する。
【0005】
一態様では、任意の先行する態様の生物応答性ヒドロゲルマトリックスは、トリブロック共重合体又はマルチブロック共重合体(例えば、トリブロック共重合体が、活性酸素種スカベンジャとインドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(indoleamine-2,3-dioxygenase:IDO)の阻害剤とを含むポリペプチドブロックによって隣接されたポリエチレングリコールを含む、トリブロック共重合体)として処方され得る。
【0006】
本明細書はまた、免疫遮断阻害剤(例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、スパルタリズマブ、ピディリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、及びBMS-9365599のようなPD-1/PD-L1遮断阻害剤、並びに/又は、例えばイピリムマブのようなCTLA-4阻害剤を含むが、これらに限定されない)を更に含む、任意の先行する態様の生物応答ヒドロゲルマトリックスも開示する。
【0007】
一態様では、任意の先行する態様に記載の生物応答性ヒドロゲルマトリックスは、化学療法薬を更に含み得る。
【0008】
本明細書はまた、任意の先行する態様に記載の生物応答性ヒドロゲルマトリックスを対象に投与することを含む、対象におけるがんを治療する方法も開示する。例えば、本明細書は、対象におけるがんを治療する方法であって、活性酸素種スカベンジャ(例えば、L-メチオニン、ピルビン酸ナトリウム;マンニトール;アジ化ナトリウム;尿酸;エブセレン;6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸(Trolox);4,5-ジヒドロキシベンゼン-1,3-ジスルホン酸(Tiron);α-トコフェロール(ビタミンE);2-(4-カルボキシフェニル)-4,4,5,5-テトラメチルイミダゾリン-1-オキシル-3-オキシド(Carboxy-PTIO);マンガン(III)-テトラキス(4-安息香酸)ポルフィリン(MnTBAP)、アセチル-L-システイン;ビタミンA;ビタミンC;グルタチオン;並びに/又はβ-カロテン)及びインドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)の阻害剤(例えば、デキストロ-1-メチルトリプトファン(インドキシモドとしても知られる、D-1MT)、NLG919、BMS-986205、ノルハルマン、ロスマリン酸、epacadostat、INCB024360類似体、IDO阻害剤1、PF-06840003、並びに/又はnavoximod)を含む、生物応答性ヒドロゲルマトリックスを該対象に投与することを含む、方法を開示する。
【0009】
一態様では、本明細書は、生物応答性ヒドロゲル(hyrodrogel)マトリックスが、免疫遮断阻害剤(例えばニボルマブ、ペムブロリズマブ、スパルタリズマブ、ピディリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、及びBMS-9365599のようなPD-1/PD-L1遮断阻害剤、並びに/又は、例えばイピリムマブのようなCTLA-4阻害剤を含むが、これらに限定されない)を更に含む、任意の先行する態様に記載のがんを治療する方法を開示する。
【0010】
本明細書はまた、該生物応答性ヒドロゲルマトリックスが、化学療法薬を更に含む、任意の先行する態様に記載のがんを治療する方法も開示する。
【0011】
一態様では、本明細書は、該ヒドロゲルマトリックスが、活性酸素種(reactive oxygen species:ROS)への曝露に際して、該IDOの阻害剤、該免疫遮断阻害剤、該化学療法薬、又はそれらの任意の組合せを、腫瘍微小環境中へ放出することを含む、任意の先行する態様に記載のがんを治療する方法を開示する。
【0012】
本明細書はまた、該ヒドロゲルが、該化学療法薬及びPD-1/PD-L1遮断阻害剤を、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30日間、該腫瘍微小環境中へ放出する、任意の先行する態様に記載のがんを治療する方法も開示する。
【0013】
一態様では、本明細書は、該がんが、メラノーマ、非小細胞肺がん、尿路上皮がん、腎がん、頭頸部がん、ホジキンリンパ腫、及び膀胱がんからなる群より選択される、低PD-L1発現であるがん又は非免疫原性がんである、任意の先行する態様に記載のがんを治療する方法を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
III.図面の簡単な説明
添付図面は、本明細書の一部に組み込まれ、本明細書の一部を構成し、いくつかの実施形態を図示し、明細書と共に、本開示の組成物及び方法を説明する。
【
図1】
図1Aは、腫瘍微小環境調節及び免疫療法のための注射可能な熱感受性ヒドロゲルに基づく、PD-L1及びD-1MT局所的送達を誘発する生体刺激の概略図を示す。
図1Bは、腫瘍微小環境調節及び免疫療法のための注射可能な熱感受性ヒドロゲルに基づく、PD-L1及びD-1MT局所的送達を誘発する生体刺激の概略図を示す。
図1Aは、P(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)及びROS誘発ポリマー疎水性転移の構造を示す。
図1Bは、局所的ヒドロゲル形成及び生体刺激誘発性薬物放出、並びに相乗的免疫療法の概略図を示す。
【
図2】
図2は、デキストロ-l-メチルトリプトファン(D-1MT)NCA(a)、L-メチオニンNCA(b)、及びP(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)(c)の合成経路を示す。
【
図3】
図3A、
図3B、
図3C、
図3D、
図3E、
図3F、
図3G、
図3H、
図3I、及び
図3J。P(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)系ヒドロゲルの機能性質決定。
図3Aは、水中におけるP(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)形成ミセルの粒度分布及びTEM画像を示す(スケールバー:200nm)。
図3Bは、それぞれ、4.0重量%~10.0重量%の濃度であるP(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)のゾル-ゲル転移状態図、及び8.0重量%(スケールバー:10μm)の濃度で凍結乾燥ゲルのSEM画像を示す。
図3Cは、8.0重量%(a)、12.0重量%(b)、及びIgG負荷ヒドロゲル(8.0重量%)(c)の濃度を有するP(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)形成ヒドロゲルのレオロジ試験を示す。
図3Dは、温度の上昇に伴うゾル-ゲル転移(a及びb)、H
2O
2(c)でのインキュベーションによるゲル崩壊、及び37℃の水中での注射可能なゲル化試験(d)の写真を示す。
図3Eは、濃度0.1mg/mLであるP(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)(a)及びP(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)オキシド(b)のCDスペクトルを示す。
図3Fは、8.0重量%のP(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)ヒドロゲルを、(a)トリス-HCl緩衝液(pH=7.4)、(b)トリス-HCl緩衝液中2.0mM H
2O
2(pH=7.4)、及び(c)トリス-HCl緩衝液中5.0U/mLプロテイナーゼK(pH=7.4)とインキュベートした場合の、インビトロ分解挙動を示す(n=3)。
図3Gは、異なる試験時間での周囲の皮膚のHE染色によるインサイチュ形成ヒドロゲル(8.0重量%)のインビボ分解挙動及び組織生体適合性を示す(スケールバー:400μm)。
図3Hは、PBS(pH=7.4)中におけるH
2O
2誘発(10.0mM)ヒドロゲル(8.0重量%)分解挙動を示す(n=3)。
図3Iは、PBS(pH=7.4)中におけるH
2O
2誘発(10.0mM)IgG放出挙動を示す(n=3)。
図3Jは、PBS(pH=7.4)中において(a)P(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)系ヒドロゲル(8.0重量%)を用いず、又は(b)P(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)系ヒドロゲル(8.0重量%)を用いてインキュベートした、インビトロH
2O
2スカベンジング試験を示す(n=3)。データは平均±標準偏差を示す。
【
図4】
図4Aは、インビボでの抗腫瘍効率評価を示す。
図4Bは、インビボでの抗腫瘍効率評価を示す。
図4Cは、インビボでの抗腫瘍効率評価を示す。
図4Dは、インビボでの抗腫瘍効率評価を示す。
図4Eは、インビボでの抗腫瘍効率評価を示す。
図4Fは、インビボでの抗腫瘍効率評価を示す。
図4Aは、異なる間隔でインビボ処置した後に、遊離するaPD-L1及びaPD-L1負荷P(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)系ヒドロゲルの両方で処理した後の、腫瘍内薬物保持挙動を示す(スケールバー:50μm)。
図4Bは、B16F10腫瘍のインビボ生物発光画像を示す。これは、設計された試験ポイントで観察され、(
図4C)定量化した個々の腫瘍増殖曲線、(
図4D)平均腫瘍体積(n=5)、(
図4E)平均体重(n=5)、及び(
図4F)生存曲線(n=5)を、様々な治療薬(G1、PBS、G2、ブランクP(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)ヒドロゲル;G3、遊離D-1MT及びaPD-L1;G4、aPD-L1負荷P(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT))の単回処理により、腫瘍体積が7日目に約110mm
3に達した場合に示す(赤い矢印で示される)。データは平均±標準偏差を示す。値は、
図4DについてTukey事後検定による一元配置分散分析によって、
図4Fについてログ・ランク(コックス・マンテル)検定によって分析した。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【
図5】
図5Aは、種々の処置(G1、PBS;G2、ブランクP(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)ヒドロゲル;G3、遊離D-1MT及びaPD-L1;G4、aPD-L1負荷P(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT))で処置した後のインビボ抗腫瘍免疫応答研究を示す。
図5Bは、種々の処置(G1、PBS;G2、ブランクP(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)ヒドロゲル;G3、遊離D-1MT及びaPD-L1;G4、aPD-L1負荷P(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT))で処置した後のインビボ抗腫瘍免疫応答研究を示す。
図5Cは、種々の処置(G1、PBS;G2、ブランクP(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)ヒドロゲル;G3、遊離D-1MT及びaPD-L1;G4、aPD-L1負荷P(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT))で処置した後のインビボ抗腫瘍免疫応答研究を示す。
図5Dは、種々の処置(G1、PBS;G2、ブランクP(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)ヒドロゲル;G3、遊離D-1MT及びaPD-L1;G4、aPD-L1負荷P(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT))で処置した後のインビボ抗腫瘍免疫応答研究を示す。
図5Eは、種々の処置(G1、PBS;G2、ブランクP(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)ヒドロゲル;G3、遊離D-1MT及びaPD-L1;G4、aPD-L1負荷P(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT))で処置した後のインビボ抗腫瘍免疫応答研究を示す。
図5Fは、種々の処置(G1、PBS;G2、ブランクP(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)ヒドロゲル;G3、遊離D-1MT及びaPD-L1;G4、aPD-L1負荷P(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT))で処置した後のインビボ抗腫瘍免疫応答研究を示す。
図5Gは、種々の処置(G1、PBS;G2、ブランクP(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)ヒドロゲル;G3、遊離D-1MT及びaPD-L1;G4、aPD-L1負荷P(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT))で処置した後のインビボ抗腫瘍免疫応答研究を示す。
図5Hは、種々の処置(G1、PBS;G2、ブランクP(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)ヒドロゲル;G3、遊離D-1MT及びaPD-L1;G4、aPD-L1負荷P(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT))で処置した後のインビボ抗腫瘍免疫応答研究を示す。
図5Aは、CD8+T細胞浸潤を呈した腫瘍の代表的な免疫蛍光を示す(スケールバー:50μm)。
図5Bは、処置腫瘍中のCD45+T細胞のフローサイトメトリ分析を示す。
図5Cは、処置腫瘍中のCD8+及びCD4+T細胞(CD3+T細胞でゲート制御)のフローサイトメトリ分析を示す。
図5Dは、
図5B(n=3)に係るCD45+T細胞の腫瘍浸潤の割合を示す。
図5Eは、
図5C(n=3)に係るCD8+T細胞の腫瘍浸潤の割合を示す。
図5Iは、8.0重量%のヒドロゲルを用いて/用いず48時間処理した後の腫瘍内H
2O
2強度試験を示す。
図5Gは、
図5Fに係る腫瘍内H
2O
2強度の割合を示す(n=3)。
図5Hは、処理された腫瘍の代表的なHE染色画像を示す(スケールバー:100μm)。データは平均±標準偏差を示す。値は、
図5D及び
図5EについてTukey事後検定による一元配置分散分析によって、
図5Gについて両側のスチューデントのt検定によって分析した。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【発明を実施するための形態】
【0015】
IV.詳細な説明
本発明の化合物、組成物、物品、装置、及び/又は方法を開示及び記載する前に、それらは、他に指定されない限り、特定の合成方法又は特定の組換えバイオテクノロジ方法に限定されず、又は、他に指定されない限り、当然ながら変化し得る特定の試薬に限定されないことを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0016】
A.定義
明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈からそうでないことが明確に示されない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「医薬担体」への言及は、2つ以上のそのような担体の混合物などを含む。
【0017】
本明細書では、範囲は、「約」を用いた一方の特定の値から、及び/又は「約」を用いた他方の特定の値までを表すことができる。そのような範囲が表される場合、別の実施形態は、一方の特定の値から、及び/又は他方の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」を使用することによって、値が近似値として表される場合、特定の値により別の実施形態が生じることが理解されるであろう。更に、各範囲の端点は、他の端点と関連している場合も、他の端点とは独立している場合でも、有意であることが理解されるであろう。また、本明細書には開示されている多数の値があり、各値は、値自体に加えて、その特定の値を「約」として本明細書に開示されていることも理解されよう。例えば、「10」という値が開示されていれば、「約10」も開示されている。また、当業者によって適切に理解されるように、ある値が開示されている場合、その値「より少ないか又は等しい(その値以下)」、その値「より多いか又は等しい(その値以上)」、及び値間の可能な範囲も開示されていることが理解される。例えば、「10」という値が開示されている場合、「10より少ないか又は等しい(10以下)」だけでなく「10より多いか又は等しい(10以上)」も開示されている。本出願全体を通じて、データは多くの異なる形式で提供されており、このデータは終点及び始点、並びにデータ点の任意の組合せに対する範囲を表していることも理解される。例えば、特定のデータ点「10」と特定のデータ点15が開示されていれば、10と15より多い(超)、より多いか又は等しい(以上)、より少ない(未満)、より少ないか又は等しい(以下)、及び10と15に等しいことのほかに、10と15との間も考慮されていることが理解される。また、2つの特定の単位間の各単位も開示されていることも理解される。例えば、「10及び15」が開示されていれば、11、12、13及び14も開示されている。
【0018】
対象への「投与」には、薬剤を対象に導入又は送達する任意の経路が含まれる。投与は、経口、局所、静脈内、皮下、経皮的(transcutaneous)、経皮吸収(transdermal)、筋肉内、関節内、非経口、細動脈内、皮内、心室内、頭蓋内、腹腔内、病巣内、鼻腔内、直腸、膣、吸入による、移植されたリザーバ(implanted reservoir)を介して、非経口(例えば、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、関節滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、腹腔内、肝臓内、病巣内及び頭蓋内注射又は注射技法)などを含む、任意の適切な経路によって行うことができる。本明細書で使用される「併用投与」、「組合せでの投与」、「同時投与」、又は「同時に投与された」とは、同じ時点で、又は本質的に互いに直後に化合物が投与されることを意味する。後者の場合、2つの化合物は、同じ時点で化合物を投与した場合に達成される結果と観察された結果が、区別がつかないほど充分に近い時点で投与される。「全身投与」とは、例えば、循環系又はリンパ系への入口を通じて、対象の身体の広範な領域(例えば、身体の50%超)に薬剤を導入又は送達する経路を介して、薬剤を対象に導入又は送達することを指す。これに対して、「局所投与」とは、投与点の領域又は投与点に直接隣接した領域に薬剤を導入又は送達し、治療的に有意な量で薬剤を全身的には導入しない経路を介して、薬剤を対象に導入又は送達することを指す。例えば、局所的に投与された薬剤は、投与点の局所的近傍では容易に検出可能であるが、対象の身体の遠位部分では検出できないか、又は無視できる量で検出可能である。投与には、自己投与と他者による投与が含まれる。
【0019】
「生体適合性」とは、一般的にレシピエントに対して無毒であり、かつ対象に重大な悪影響を引き起こさない材料及びその任意の代謝産物又は分解産物を一般的に指す。
【0020】
「含むこと(comprising)」とは、組成物、方法等が、列挙された要素を含むが、他の要素を排除するものではないことを意図している。組成物及び方法を定義するために使用される場合の「から本質的になる」とは、列挙された要素を含むが、その組合せにとって本質的に重要ないかなる要素も排除することを意味するものとする。したがって、本明細書で定義される要素から本質的になる組成物は、単離及び精製方法からの微量の汚染物質並びに薬学的に許容される担体、例えば、リン酸緩衝生理食塩水及び保存剤などを排除しない。「からなる」とは、他の成分の微量を超える元素及び本発明の組成物を投与するための実質的な方法工程を排除することを意味するものとする。これらの各移行句によって定義される実施形態は、本発明の範囲内である。
【0021】
「対照」とは、比較目的で実験に使用される代替的な対象又は試料である。対照は、「陽性」又は「陰性」であり得る。
【0022】
「制御放出」又は「持続放出」とは、インビボで所望の薬物動態プロファイルを達成するために、所定の剤形から制御された方法で薬剤を放出することを指す。「制御放出」薬剤送達の一態様は、薬剤放出の所望の動態を確立するために、製剤及び/又は剤形を操作する能力である。
【0023】
薬剤の「有効量」とは、所望の効果を提供するために充分な量の薬剤を指す。「有効」である薬剤の量は、対象の年齢及び全身状態、特定の薬剤又は複数種の薬剤などの多くの要因に応じて、対象毎に異なるであろう。したがって、定量化された「有効量」を特定することは必ずしも可能ではない。しかしながら、いかなる対象の場合であっても、適切な「有効量」は、日常的な実験を用いて、当業者によって決定されることができる。また、本明細書で使用されるように、そして特に別途明記されていない限り、薬剤の「有効量」は、治療有効量と予防有効量の両方をカバーする量を指すことができる。治療効果を達成するために必要な薬剤の「有効量」は、対象の年齢、性別、及び体重などの要因によって異なる場合がある。投与レジメンは、最適な治療反応を提供するように調整することができる。例えば、数回に分けた用量を毎日投与してもよいし、又は治療状況の緊急性によって示されるように用量を比例的に減らしてもよい。
【0024】
「減少」は、より小さな、遺伝子発現、タンパク質発現、症状、疾患、組成物、状態、又は活性の量をもたらすあらゆる変化を表すことができる。当該物質ありでの遺伝子産物の遺伝的出力が当該物質なしでの遺伝子産物の出力と比較してより少ないときにも、物質は遺伝子の遺伝的出力を減少させると理解される。また、減少は、例えば、症状が以前に観察されたより低いような、障害の症状の変化であり得る。減少は、統計的に有意な量での、状態、症状、活性、組成のあらゆる個別的、中央値の又は平均の減少であり得る。このため、減少が統計的に有意である限り、減少は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100%の減少であり得る。
【0025】
「阻害する」、「阻害すること」、及び「阻害」は、活性、応答、状態、疾患又はその他の生物学的パラメータを減少することを意味する。これには、活性、応答、状態又は疾患の完全な消失が含まれ得るが、これに限定されない。これには、例えば、天然の又は対照レベルと比較して、活性、応答、状態又は疾患の10%の低減も含まれ得る。このため、低減は、天然の又は対照レベルと比較した、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100%又はその間のあらゆる量の低減であり得る。
【0026】
本明細書において使用される「予防する」、「予防すること」、「予防」という用語及び文法的なこれらの変形は、部分的に又は完全に、疾患の開始若しくは再発及び/若しくは疾患の付随するその症状の1種以上を遅延若しくは妨げる、又は対象が疾患を取得若しくは再取得しないようにする、又は疾患若しくは疾患の付随する症状の1種以上を取得若しくは再取得する対象のリスクを低減させる方法を表す。
【0027】
「薬学的に許容される」成分とは、生物学的に又は他の点で望ましくないものではない成分を指すことができ、すなわち、その成分は、重大な望ましくない生物学的作用を引き起こすことなく、又はそれが含まれる製剤の他のいずれの成分とも有害な形で相互作用することなく、本明細書に記載されているように、本発明の医薬製剤に組み込まれ、対象に投与され得る。ヒトへの投与に関連して使用される場合、この用語は、一般的に、成分が毒性試験及び製造試験の要求される基準を満たしていること、又は成分が米国食品医薬品局により作成された非活性成分ガイドに掲載されていることを含意する。
【0028】
「薬学的に許容される担体」(「担体」と呼ばれることもある)とは、一般的に安全かつ無毒である医薬組成物若しくは治療用組成物を調製するのに有用な担体又は医薬品添加剤を意味し、獣医学的用途及び/又はヒト医薬用途若しくは治療用途に許容される担体を含む。「担体」又は「薬学的に許容される担体」という用語は、リン酸緩衝生理食塩水、水、エマルジョン(油/水エマルジョン若しくは水/油エマルジョンなど)及び/又は様々な種類の湿潤剤を含み得るが、これらに限定されない。本明細書で使用されるように、「担体」という用語は、任意の医薬品添加剤、希釈剤、充填剤、塩、緩衝剤、安定剤、可溶化剤、脂質、又は医薬製剤で使用するために当該技術分野で周知であり、本明細書で更に説明されるような他の材料を包含するが、これらに限定されない。
【0029】
「薬理学的に活性な」誘導体又は類似体のように、「薬理学的に活性な」(又は単に「活性な」)とは、親化合物と同じ種類の薬理活性を有し、ほぼ同等の程度である誘導体又は類似体(例えば、塩、エステル、アミド、コンジュゲート、代謝産物、異性体、断片等)を指すことができる。
【0030】
「治療薬」とは、有益な生物学的効果を有する任意の組成物を指す。有益な生物学的効果には、治療効果、例えば、障害又は他の望ましくない生理学的状態の治療と、予防効果、例えば、障害又は他の望ましくない生理学的状態(例えば、非免疫原性がん)の予防の両方が含まれる。これらの用語はまた、塩、エステル、アミド、前駆薬剤(proagent)、活性代謝産物、異性体、断片、類似体などを含むがこれらに限定されない、本明細書に具体的に挙げられている有益な薬剤の薬学的に許容される、薬理学的に活性な誘導体も包含する。「治療薬」という用語が使用される場合、又は特定の薬剤が具体的に特定されている場合、その用語は、その薬剤自体のほかに、薬学的に許容される、薬理学的に活性な塩、エステル、アミド、前駆薬剤、コンジュゲート、活性代謝産物、異性体、断片、類似体等も含むことを理解されたい。
【0031】
組成物(例えば、薬剤を含む組成物)の「治療有効量」又は「治療有効用量」とは、所望の治療結果を達成するために有効である量を指す。いくつかの実施形態では、所望の治療結果は、I型糖尿病の抑制である。いくつかの実施形態では、所望の治療結果は、肥満の抑制である。所定の治療薬の治療有効量は、典型的には、治療下の障害又は疾患の種類及び重症度、並びに対象の年齢、性別、及び体重などの要因に関連して異なるであろう。この用語はまた、疼痛緩和などの所望の治療効果を促進するために有効な治療薬の量又は治療薬の送達速度(例えば、経時的な量)を指すこともできる。正確な所望の治療効果は、治療されるべき状態、対象の耐性、投与されるべき薬剤及び/又は薬剤製剤(例えば、治療薬の効力、製剤中の薬剤の濃度など)、並びに当業者によって理解される様々な他の要因に応じて異なるであろう。いくつかの事例では、所望の生物学的又は医学的な応答は、数日、数週間、又は数年の期間にわたって組成物の複数の用量を対象に投与した後に達成される。
【0032】
本明細書及び添付の特許請求の範囲では、以下の意味を有するように定義されるいくつかの用語に言及する。
【0033】
「場合に応じた」又は「場合に応じて」とは、続けて記載されるイベント又は状況が発生する場合と発生しない場合があり、この記載には、当該イベント又は状況が発生する場合と発生しない場合が含まれることを意味する。
【0034】
本出願全体を通じて、様々な刊行物が参照されている。本出願が属する技術分野の水準をより完全に記述するために、これらの刊行物の開示内容の全体が、参照により本明細書に組み込まれる。開示された参考文献はまた、その参考文献が依拠している文中で論じられている、その中に含まれる材料について、参照により個別かつ具体的に本明細書に組み込まれる。
【0035】
B.組成物
開示された組成物を調製するために使用される成分と、本明細書に開示された方法内で使用される組成物自体が開示される。これら及び他の材料は本明細書に開示されており、これらの材料の組合せ、サブセット、相互作用、グループ等が開示されている場合、これらの化合物の、各様々な個々かつ集合的な組合せ及び並べ替えへの具体的な言及は、明示的に開示されていないことがあるが、それぞれが本明細書で具体的に企図され、記載されていることが理解される。例えば、化学療法薬と遮断阻害剤を含む特定のヒドロゲルマトリックスが開示及び論述されており、化学療法薬と遮断阻害剤を含むヒドロゲルマトリックスを含む多数の分子に対して為し得る多数の修飾が論述されている場合、具体的に反対の記載がなければ、具体的に想定されているのは、化学療法薬と遮断阻害剤を含むヒドロゲルマトリックス並びに可能である修飾のそれぞれの及び全ての組合せ及び並べ替えである。したがって、分子A、B、及びCのクラスの他に、分子D、E、及びFのクラスも開示され、組合せ分子の例であるA~Dが開示されている場合、それぞれが個別に記載されていないときであっても、それぞれが個別かつ集合的に企図された意味の組合せA~E、A~F、B~D、B~E、B~F、C~D、C~E、及びC~Fが開示されているものとみなされる。同様に、これらの任意のサブセット又は組合せもまた開示される。したがって、例えば、A~E、B~F、及びC~Eのサブグループが開示されていると考えられる。この概念は、開示された組成物を作製及び使用する方法における工程を含むが、これらに限定されない、本出願の全ての態様に適用される。したがって、実行可能な様々な追加の工程が存在する場合、これらの追加の工程のそれぞれは、開示された方法の任意の特定の実施形態又は実施形態の組合せにより実行可能であることが理解される。
【0036】
事前の化学療法は、免疫療法の治療結果を増強し、これは、長期の化学療法後の化学療法耐性も反転させた。いくつかの化学治療薬は、単一の処置として使用された場合に穏やかな活性を有するが、免疫療法とのそれらの組合せは強化された抗がん効果をもたらし得る。これらの観察は、いくつかの化学療法薬は免疫原性腫瘍表現型を促進するために使用することができると仮定することの論拠となる。他方、改変された送達ビヒクル又は足場は、低下した全身毒性で、免疫療法薬を輸送するための有望なツールとますます考えられている。しかしながら、インビボ投与した際の、搭載物の制御された放出及び支持マトリックスの分解の動態は、処置の有効性のために特に適切な側面である。
【0037】
過去数年間、免疫チェックポイント遮断(immune checkpoint blockade:ICB)療法、特にプログラム細胞死タンパク質1/プログラム細胞死リガンド1(PD-1/PD-L1)又は細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)経路の遮断が、目覚ましい進歩を遂げてきた。ICBは、メラノーマ、非小細胞肺がん、腎細胞がん、尿路上皮がん、及び古典的ホジキンリンパ腫を含む多くの種類のがんの治療に利用されている。
【0038】
これにもかかわらず、ICBに基づくがん免疫療法においてはいくつかの課題を克服する必要がある。低い免疫応答効率がその一つであり、これは通常、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、インターロイキン-10(IL-10)、及び形質転換増殖因子-β;(TGF-β)等といった免疫抑制因子により引き起こされる。通常、腫瘍及び腫瘍排出リンパ節で過剰発現する免疫抑制酵素であるIDOは、キヌレニン経路を介してトリプトファン分解を触媒することにより、T細胞活性化を制限し、腫瘍免疫寛容の誘導に関わる重要な問題の1つである。IDO経路阻害剤として、IDOにより誘発されるT細胞アネルギを防止することができるトリプトファン誘導体であるデキストロ-1-メチルトリプトファン(D-1MT)は、有望な臨床成績を示している。D-1MTによる治療により、他の抗腫瘍薬との併用において腫瘍の明確な退縮が起こった。更に、最近の報告では、効果的なT細胞免疫を改善し、相乗的がん免疫療法のため局所IDO活性を抑制することによって、抗腫瘍効果がaPD-1とD-1MTとの併用により顕著に増強されることが証明された。
【0039】
ヒドロゲルは治療薬を効率的に輸送するための局所的な薬物送達デポとして機能するだけでなく、治療の有効性を促進するための腫瘍内微小環境を調節する(
図1)。重要なことに、ROSは免疫系の重要なシグナル伝達メッセンジャの1つとして多くの生理学的過程に関与するだけでなく、アポトーシスの誘導、PD-1発現の調節、T細胞の機能的抑制、並びにがんの発生及び進行の促進を介して腫瘍免疫抑制微小環境と密接に関連している。インビボでの典型的なROS分子として、H
2O
2は酸素検知、免疫応答、及び細胞傷害のような多くの過程に関与することが報告されており、これもまた、インビボでの発がんに必須の役割を果たしている。したがって、腫瘍部位における過酸化物(例えば、過酸化水素、有機過酸化物)、超酸化物、ヒドロキシルラジカル、及び一重項酸素を含むがこれらに限定されないROSをスカベンジングすることによって、T細胞の生存を改善し、免疫抑制性腫瘍微小環境を軽減することが重要である。ROSスカベンジャは当技術分野で公知であり、例えば、L-メチオニン;ピルビン酸ナトリウム;マンニトール;アジ化ナトリウム;尿酸;エブセレン;6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸(トロロックス);4,5-ジヒドロキシベンゼン-1,3-ジスルホン酸(タイロン);α-トコフェロール(ビタミンE);2-(4-カルボキシフェニル)-4,4,5,5-テトラメチルイミダゾリン-1-オキシル-3-オキシド(Carboxy-PTIO);マンガン(III)-テトラキス(4-安息香酸)ポルフィリン(MnTBAP)、アセチル-L-システイン;ビタミンA;ビタミンC;グルタチオン;及び/又はβ-カロテンを含み得る。したがって、一態様では、活性酸素種スカベンジャ(例えば、L-メチオニンなど)及びインドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)の阻害剤を含む、生物応答性ヒドロゲルマトリックスが本明細書に開示される。
【0040】
上記の通り、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、インターロイキン-10(IL-10)、及び形質転換増殖因子-β;(TGF-β)等といった免疫抑制因子は、腫瘍に対する低い免疫応答効率をもたらす。IDOは、キヌレニン経路を介してトリプトファン分解を触媒することにより、T細胞活性化を制限し、腫瘍免疫寛容の誘導に関わる重要な問題の1つである。例えば、デキストロ-1-メチルトリプトファン(インドキシモド(indoximod)としても知られるD-1MT)、NLG919、BMS-986205、ノルハルマン、ロスマリン酸、epacadostat、INCB024360類似体、IDO阻害剤1、PF-06840003、及び/又はnavoximodのようなIDO経路阻害剤は、IDOによって誘発されるT細胞アネルギを予防することができる。したがって、一態様では、活性酸素種スカベンジャ(例えば、L-メチオニンなど)及びインドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)の阻害剤を含む、生物応答性ヒドロゲルマトリックスが本明細書に開示される。ここで、IDOの阻害剤としては、デキストロ-1-メチルトリプトファン(D-1MT)、ノルハルマン、ロスマリン酸、epacadostat、INCB024360類似体、IDO阻害剤1、PF-06840003、及び/又はnavoximodが挙げられる。
【0041】
上述のように、開示された生物応答性ヒドロゲルマトリックスは、ROS修飾物質と同様に、免疫遮断阻害剤及びIDOの阻害剤の持続放出のための注射可能なポリペプチドに基づくゲルデポ(gel depot)として設計することができる。これらの機能を促進するために、生物応答性ヒドロゲルをトリブロック共重合体として設計した。「ポリマー」とは、天然又は合成の比較的高分子量の有機化合物を指し、その構造は繰返しの小単位である単量体で表すことができる。ポリマーの非限定的な例として、ポリエチレン、ゴム、セルロースが挙げられる。合成ポリマーは、典型的には、単量体の付加重合又は縮合重合によって形成される。「共重合体」という用語は、2種以上の異なる繰返し単位(単量体残基)から形成されたポリマーを指す。限定としてではなく例示的に、共重合体は、交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体、又はグラフト共重合体であり得る。特定の態様ではまた、ブロック共重合体の様々なブロックセグメントは、それ自体が共重合体を含み得ることも企図される。「ポリマー」という用語は、天然ポリマー、合成ポリマー、ホモポリマー、ヘテロポリマー又は共重合体、付加ポリマー等を含むがこれらに限定されない、あらゆる形態のポリマーを包含する。
【0042】
一態様では、生物応答性ヒドロゲルとして、生体適合性ポリマー(例えば、メタクリル化ヒアルロン酸(m-HA))を挙げることができる。一態様では、生体適合性ポリマーは架橋され得る。そのようなポリマーはまた、脂肪褐変剤及び/又は脂肪調節剤を組織中にゆっくりと放出するのに役立ち得る。本明細書で使用されるように、生体適合性ポリマーとして、多糖類;親水性ポリペプチド;ポリ(アミノ酸)、例えばポリ-L-グルタミン酸(PGS)、γ-ポリグルタミン酸、ポリ-L-アスパラギン酸、ポリ-L-セリン、又はポリ-L-リジン;ポリアルキレングリコール及びポリアルキレンオキシド、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、及びポリ(エチレンオキシド)(PEO);ポリ(オキシエチル化ポリオール);ポリ(オレフィン性アルコール);ポリビニルピロリドン);ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド);ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート);ポリ(サッカライド);ポリ(ヒドロキシ酸);ポリ(ビニルアルコール)、ポリヒドロキシ酸、例えばポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、及びポリ(乳酸-coーグリコール酸);ポリヒドロキシアルカノエート、例えばポリ3-ヒドロキシブチレート又はポリ4-ヒドロキシブチレート;ポリカプロラクトン;ポリ(オルトエステル);ポリ無水物;ポリ(ホスファゼン);ポリ(ラクチド-coーカプロラクトン);ポリカーボネート、例えばチロシンポリカーボネート;ポリアミド(合成及び天然ポリアミドを含む)、ポリペプチド、及びポリ(アミノ酸);ポリエステルアミド;ポリエステル;ポリ(ジオキサノン);ポリ(アルキレンアルキレート)(poly(alkylene alkylates);疎水性ポリエーテル;ポリウレタン;ポリエーテルエステル;ポリアセタール;ポリシアノアクリレート;ポリアクリレート;ポリメチルメタクリレート;ポリシロキサン;ポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)共重合体;ポリケタール;ポリホスフェート;ポリヒドロキシバレレート;ポリアルキレンオキサレート;ポリアルキレンサクシネート;ポリ(マレイン酸)、並びにその共重合体が挙げられるが、これらに限定されない。生体適合性ポリマーとしてまた、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタラート、ポリビニルアルコール(PVA)、メタクリル酸PVA(m-PVA)、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルハライド、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタン及びそれらの共重合体、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、アクリル及びメタクリル酸エステルのポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシ-プロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、カルボキシエチルセルロース、セルローストリアセテート、セルロース硫酸ナトリウム塩、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタラート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアセテート、ポリ塩化ビニルポリスチレン及びポリビニルピロリドン、それらの誘導体、直鎖及び分岐共重合体、並びにそれらのブロックコポリマー、並びにそれらのブレンド物を挙げることもできる。生分解性ポリマーの例としては、ポリエステル、ポリ(オルトエステル)、ポリ(エチレンアミン)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ無水物、ポリ(アクリル酸)、ポリグリコリド、ポリ(ウレタン)、ポリカーボネート、ポリリン酸エステル、ポリホスフィアゼン、それらの誘導体、それらの直鎖及び分岐共重合体、並びにブロック共重合体、並びにそれらのブレンド物が挙げられる。
【0043】
いくつかの実施形態では、粒子は、生体適合性及び/若しくは生分解性ポリエステル、又はポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)及びポリ(乳酸-グリコール酸)などのポリ無水物を含む。粒子は、以下のポリエステルのうちの1つ以上を含むことができる:本明細書において「PGA」と呼ばれるグリコール酸単位と、本明細書において「PLA」と総称されるポリ-L-乳酸、ポリ-D-乳酸、ポリ-D、L-乳酸、ポリ-L-ラクチド、ポリ-D-ラクチド、及びポリ-D、L-ラクチド5のような乳酸単位と、本明細書において「PCL」と総称されるポリ(e-カプロラクトン)のようなカプロラクトン単位とを含むホモポリマー;並びに本明細書において「PLGA」と総称される、例えば乳酸:グリコール酸の比によって特徴付けられる種々の形態のポリ(乳酸-coーグリコール酸)及びポリ(ラクチド-coーグリコリド)などの乳酸及びグリコール酸単位を含む共重合体;並びにポリアクリレート及びその誘導体。例示的なポリマーとしてはまた、例えば、本明細書中で「PEG化ポリマー」と総称されるPLGA-PEG共重合体又はPLA-PEG共重合体の様々な形態といった、ポリエチレングリコール(PEG)と前述のポリエステルとの共重合体が挙げられる。ある特定の実施形態では、PEG領域は、切断可能なリンカによってポリマーと共有結合して「PEG化ポリマー」を産生することができる。一態様では、ポリマーは、少なくとも60、65、70、75、80、85、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%のアセタールペンダント基を含む。
【0044】
本明細書に開示されるトリブロック共重合体は、コアポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(ビニルピロリドン-coー酢酸ビニル)、ポリメタクリレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリカプロラクタム、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(乳酸-グリコール)酸、ポリ(乳酸-coーグリコール酸)酸(PLGA)、及びセルロース誘導体、例えばヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどを含む。一態様では、コアポリマーは、ポリペプチドブロックに隣接してもよい。一態様では、隣接するポリペプチドブロックは、ROSスカベンジャ(例えばL-メチオニン、ピルビン酸ナトリウム;マンニトール;アジ化ナトリウム;尿酸;エブセレン;トロロックス;タイロン;α-トコフェロール;Carboxy-PTIO;MnTBAP、アセチル-L-システイン;ビタミンA;ビタミンC;グルタチオン;及び/又はβ-カロテンなど)、及び/又はIDOの阻害剤(例えば、D-1MT、NLG919、BMS-986205、ノルハルマン、ロスマリン酸、epacadostat、INCB024360類似体、IDO阻害剤1、PF-06840003、及び/又はnavoximod)を含み得る。
【0045】
一態様では、生物応答性ヒドロゲルマトリックスは、免疫遮断阻害剤、例えばPD-1/PD-L1遮断阻害剤を更に含み得る。本明細書では、メラノーマの治療効果を増強するために、腫瘍微小環境における活性酸素種(ROS)レベルを調節するだけでなくaPD-L1及びD-1MTの持続放出のために、注射可能なポリペプチド系ゲルデポを設計した。ヒドロゲルマトリックスは、免疫遮断阻害剤を封入するミセルを形成することができる。開示されたヒドロゲルマトリックス中で使用するためのPD-1/PD-L1遮断阻害剤の例には、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピディリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ及びBMS-936559を含むがこれらに限定されない、本分野において既知のあらゆるPD-1/PD-L1遮断阻害剤が含まれ得る。したがって、一態様では、本明細書では、ROSスカベンジャ、IDOの阻害剤、及び遮断阻害剤を含むヒドロゲルマトリックスが開示される。ここで、遮断阻害剤は、例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、スパルタリズマブ、ピディリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、及びBMS-936559のようなPD-1/PD-L1遮断阻害剤、又は例えばイピリムマブのようなCTLA-4遮断阻害剤である。
【0046】
開示された生物応答ヒドロゲルマトリックスは、1種以上の化学療法薬を更に含むことができることが理解され、本明細書において企図される。開示されたヒドロゲルマトリックスにおいて使用することができる化学療法薬は、以下を含むがこれに限定されない、当該技術分野で公知の任意の化学療法剤を含むことができる:アベマシクリブ、アビラテロンアセテート、Abitrexate(メトトレキサート)、Abraxane(パクリタキセル・アルブミン安定化ナノ粒子製剤)、ABVD、ABVE、ABVE-PC、AC、AC-T、Adcetris(ブレンツキシマブベドチン)、ADE、アドトラスツズマブエムタンシン、Adriamycin(ドキソルビシン塩酸塩)、アファチニブジマレエート、Afinitor(エベロリムス)、Akynzeo(ネツピタント/パロノセトロン塩酸塩)、Aldara(イミキモド)、アルデスロイキン、アレセンサ(アレクチニブ)、アレクチニブ、アレムツズマブ、Alimta(ペメトレキセド二ナトリウム)、Aliqopa(コパンリシブ塩酸塩水和物)、注射用アルケラン(メルファラン塩酸塩)、アルケラン錠(メルファラン)、Aloxi(パロノセトロン塩酸塩)、ALUNBRIG(ブリガチニブ)、Ambochlorin(クロラムブシル)、Ambochlorin(クロラムブシル)、アミフォスチン、アミノレブリン酸、アナストロゾール、アプレピタント、Aredia(パミドロン酸二ナトリウム)、Arimidex(アナストロゾール)、Aromasin(エキセメスタン)、Arranon(ネララビン)、三酸化ヒ素、Arzerra(オファツムマブ)、アスパラギナーゼエルウィニアクリサンチミー、アテゾリズマブ、Avastin(ベバシズマブ)、アベルマブ、アキシチニブ、アザシチジン、BAVENCIO(アベルマブ)、BEACOPP、Becenum(カルムスチン)、Beleodaq(ベリノスタット)、ベリノスタット、ベンダムスチン塩酸塩、BEP、Besponsa(イノツズマブオゾガマイシン)、ベバシズマブ、ベキサロテン、Bexxar(トシツモマブ・ヨウ素I 131トシツモマブ)、ビカルタミド、BiCNU(カルムスチン)、ブレオマイシン、ブリナツモマブ、Blincyto(ブリナツモマブ)、ボルテゾミブ、Bosulif(ボスチニブ)、ボスチニブ、ブレンツキシマブベドチン、ブリガチニブ、BuMel、ブスルファン、Busulfex(ブスルファン)、カバジタキセル、Cabometyx(カボザンチニブ―S―マレート)、カボザンチニブ―S―マレート、CAF、Campath(アレムツズマブ)、Camptosar、(イリノテカン塩酸塩)、カペシタビン、CAPOX、Carac(フルオロウラシル-局所)、カルボプラチン、カルボプラチン-TAXOL、カルフィルゾミブ、Carmubris(カルムスチン)、カルムスチン、カルムスチン・インプラント、Casodex(ビカルタミド)、CEM、セリチニブ、Cerubidine(ダウノルビシン塩酸塩)、Cervarix(組換えHPV二価ワクチン)、セツキシマブ、CEV、クロラムブシル、クロラムブシル-プレドニゾン、CHOP、シスプラチン、クラドリビン、Clafen(シクロホスファミド)、クロファラビン、Clofarex(クロファラビン)、Clolar(クロファラビン)、CMF、コビメチニブ、Cometriq(カボザンチニブ-S―マレート)、コパンリシブ塩酸塩水和物、COPDAC、COPP、COPP-ABV、Cosmegen(ダクチノマイシン)、Cotellic(コビメチニブ)、クリゾチニブ、CVP、シクロホスファミド、Cyfos(イホスファミド)、Cyramza(ラムシルマブ)、シタラビン、シタラビンリポソーム、Cytosar-U(シタラビン)、Cytoxan(シクロホスファミド)、ダブラフェニブ、ダカルバジン、Dacogen(デシタビン)、ダクチノマイシン、ダラツムマブ、Darzalex(ダラツムマブ)、ダサチニブ、ダウノルビシン塩酸塩、ダウノルビシン塩酸塩及びシタラビンリポソーム、デシタビン、デフィブロチドナトリウム、Defitelio(デフィブロチドナトリウム)、デガレリクス、デニロイキンディフティトックス、デノスマブ、DepoCyt(シタラビンリポソーム)、デキサメタゾン、デキスラゾキサン塩酸塩、ジヌツキシマブ、ドセタキセル、Doxil(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、ドキソルビシン塩酸塩、ドキソルビシン塩酸塩リポソーム、Dox-SL(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、DTIC-Dome(ダカルバジン)、デュルバルマブ、Efudex(フルオロウラシル-局所)、Elitek(ラスブリカーゼ)、Ellence(エピルビシン塩酸塩)、エロツズマブ、Eloxatin(オキサリプラチン)、エルトロンボパグオラミン、Emend(アプレピタント)、Empliciti(エロツズマブ)、エナシデニブメシル酸塩、エンザルタミド、エピルビシン塩酸塩、EPOCH、Erbitux(セツキシマブ)、エリブリンメシレート、Erivedge(ビスモデギブ)、エルロチニブ塩酸塩、Erwinaze(アスパラギナーゼエルウィニアクリサンチミー)、Ethyol(アミフォスチン)、Etopophos(エトポシドホスフェート)、エトポシド、エトポシドホスフェート、Evacet(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、エベロリムス、Evista、(ラロキシフェン塩酸塩)、Evomela(メルファラン塩酸塩)、エキセメスタン、5-FU(フルオロウラシル注射)、5-FU(フルオロウラシル-局所)、Fareston(トレミフェン)、Farydak(パノビノスタット)、Faslodex(フルベストラント)、FEC、Femara(レトロゾール)、フィルグラスチム、Fludara(フルダラビンホスフェート)、フルダラビンホスフェート、Fluoroplex(フルオロウラシル-局所)、フルオロウラシル注射、フルオロウラシル-局所、フルタミド、Folex(メトトレキサート)、Folex PFS(メトトレキサート)、FOLFIRI、FOLFIRI-ベバシズマブ、FOLFIRI-セツキシマブ、FOLFIRINOX、FOLFOX、Folotyn(プララトレキセート)、FU-LV、フルベストラント、Gardasil(組換えHPV四価ワクチン)、Gardasil 9(組換えHPV九価ワクチン)、Gazyva(オビヌツズマブ)、ゲフィチニブ、ゲムシタビン塩酸塩、ゲムシタビン-シスプラチン、ゲムシタビン-オキサリプラチン、ゲムツズマブオゾガマイシン、Gemzar(ゲムシタビン塩酸塩)、Gilotrif(アファチニブジマレエート)、Gleevec(イマチニブメシレート)、Gliadel(カルムスチン・インプラント)、Gliadel wafer(カルムスチン・インプラント)、グルカルピダーゼ、ゴセレリンアセテート、Halaven(エリブリンメシレート)、Hemangeol(プロプラノロール塩酸塩)、Herceptin(トラスツズマブ)、HPV二価ワクチン、組換え、HPV九価ワクチン、組換え、HPV四価ワクチン、組換え、Hycamtin(トポテカン塩酸塩)、Hydrea(ヒドロキシ尿素)、ヒドロキシ尿素、Hyper-CVAD、Ibrance(パルボシクリブ)、イブリツモマブチウキセタン、イブルチニブ、ICE、Iclusig(ポナチニブ塩酸塩)、Idamycin(イダルビシン塩酸塩)、イダルビシン塩酸塩、イデラリシブ、Idhifa(エナシデニブメシル酸塩)、Ifex(イホスファミド)、イホスファミド、Tfosfamidum(イホスファミド)、IL-2(アルデスロイキン)、イマチニブメシレート、Tmbruvica(イブルチニブ)、Tmfinzi(デュルバルマブ)、イミキモド、Imlygic(タリモジーン・ラハーパレプベック)、Inlyta(アキシチニブ)、イノツズマブオゾガマイシン、インターフェロンアルファ-2b、組換え、インターロイキン-2(アルデスロイキン)、Intron A(組換えインターフェロンアルファ-2b)、ヨウ素I 131トシツモマブ・トシツモマブ、イピリムマブ、Iressa(ゲフィチニブ)、イリノテカン塩酸塩、イリノテカン塩酸塩リポソーム、Istodax(ロミデプシン)、イクサベピロン、イキサゾミブクエン酸塩、Ixempra(イクサベピロン)、Jakafi(ルキソリチニブホスフェート)、JEB、Jevtana(カバジタキセル)、Kadcyla(アドトラスツズマブエムタンシン)、Keoxifene(ラロキシフェン塩酸塩)、Kepivance(パリフェルミン)、Keytruda(ペムブロリズマブ)、Kisqali(リボシクリブ)、Kymriah(チサゲンレクルユーセル)、Kyprolis(カルフィルゾミブ)、ランレオチドアセテート、ラパチニブジトシレート、Lartruvo(オララツマブ)、レナリドミド、レンバチニブメシレート、Lenvima(レンバチニブメシレート)、レトロゾール、ロイコボリンカルシウム、Leukeran(クロラムブシル)、ロイプロリドアセテート、Leustatin(クラドリビン)、Levulan(アミノレブリン酸)、Linfolizin(クロラムブシル)、LipoDox(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、ロムスチン、Lonsurf(トリフルリジン及びトリフルリジン・チピラシル)、Lupron(ロイプロリドアセテート)、Lupron Depot(ロイプロリドアセテート)、Lupron Depot-Ped(ロイプロリドアセテート)、Lynparza(オラパリブ)、Marqibo(ビンクリスチンスルフェートリポソーム)、Matulane(プロカルバジン塩酸塩)、メクロレタミン塩酸塩、メゲストロールアセテート、Mekinist(トラメチニブ)、メルカプトプリン、メルファラン塩酸塩、メルカプトプリン、メスナ、Mesnex(メスナ)、Methazolastone(テモゾロミド)、メトトレキサート、Methotrexate LPF(メトトレキサート)、メチルナルトレキソン臭化物、Mexate(メトトレキサート)、Mexate-AQ(メトトレキサート)、ミドスタウリン、マイトマイシンC、ミトキサントロン塩酸塩、Mitozytrex(マイトマイシンC)、MOPP、Mozobil(プレリキサホル)、Mustargen(メクロレタミン塩酸塩)、Mutamycin(マイトマイシンC)、Myleran(ブスルファン)、Mylosar(アザシチジン)、Mylotarg(ゲムツズマブオゾガマイシン)、Nanoparticle Paclitaxel(パクリタキセル・アルブミン安定化ナノ粒子製剤)、Navelbine(ビノレルビンタルタレート)、ネシツムマブ、ネララビン、Neosar(シクロホスファミド)、ネラチニブマレイン酸塩、Nerlynx(ネラチニブマレイン酸塩)、ネツピタント・パロノセトロン塩酸塩、Neulasta(ペグフィルグラスチム)、Neupogen(フィルグラスチム)、Nexavar(ソラフェニブトシレート)、Nilandron(ニルタミド)、ニロチニブ、ニルタミド、Ninlaro(イキサゾミブクエン酸塩)、ニラパリブトシル酸塩一水和物、ニボルマブ、Nolvadex(タモキシフェンシトレート)、Nplate(ロミプロスチム)、オビヌツズマブ、Odomzo(ソニデジブ)、OEPA、オファツムマブ、OFF、オラパリブ、オララツマブ、オマセタキシンメペスクシナート、Oncaspar(ペグアスパラガーゼ)、オンダンセトロン塩酸塩、Onivyde(イリノテカン塩酸塩リポソーム)、Ontak(デニロイキンディフティトックス)、Opdivo(ニボルマブ)、OPPA、オシメルチニブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、パクリタキセル・アルブミン安定化ナノ粒子製剤、PAD、パルボシクリブ、パリフェルミン、パロノセトロン塩酸塩、パロノセトロン塩酸塩・ネツピタント、パミドロン酸二ナトリウム、
パニツムマブ、パノビノスタット、Paraplat(カルボプラチン)、Paraplatin(カルボプラチン)、パゾパニブ塩酸塩、PCV、PEB、ペグアスパラガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペグインターフェロンアルファ-2b、PEG-Intron(ペグインターフェロンアルファ-2b)、ペムブロリズマブ、ペメトレキセド二ナトリウム、Perjeta(ペルツズマブ)、ペルツズマブ、Platinol(シスプラチン)、Platinol-AQ(シスプラチン)、プレリキサホル、ポマリドミド、Pomalyst(ポマリドミド)、ポナチニブ塩酸塩、Portrazza(ネシツムマブ)、プララトレキセート、プレドニゾン、プロカルバジン塩酸塩、Proleukin(アルデスロイキン)、Prolia(デノスマブ)、Promacta(エルトロンボパグオラミン)、プロプラノロール塩酸塩、Provenge(シプロイセル-T)、Purinethol(メルカプトプリン)、Purixan(メルカプトプリン)、塩化ラジウム223、ラロキシフェン塩酸塩、ラムシルマブ、ラスブリカーゼ、R-CHOP、R-CVP、組換えヒトパピローマウイルス(HPV)二価ワクチン、組換えヒトパピローマウイルス(HPV)九価ワクチン、組換えヒトパピローマウイルス(HPV)四価ワクチン、組換えインターフェロンアルファ-2b、レゴラフェニブ、Relistor(メチルナルトレキソン臭化物)、R-EPOCH、Revlimid(レナリドミド)、Rheumatrex(メトトレキサート)、リボシクリブ、R-ICE、Rituxan(リツキシマブ)、Rituxan Hycela(リツキシマブ・ヒアルロニダーゼ)、リツキシマブ、リツキシマブ、及びヒアルロニダーゼ、ロラピタント塩酸塩、ロミデプシン、ロミプロスチム、Rubidomycin(ダウノルビジン塩酸塩)、Rubraca(ルカパリブカンシル酸塩)、ルカパリブカンシル酸塩、ルキソリチニブホスフェート、Rydapt(ミドスタウリン)、Sclerosol Intrapleural Aerosol(タルク)、シルツキシマブ、シプロイセル-T、Somatuline Depot(ランレオチドアセテート)、ソニデジブ、ソラフェニブトシレート、Sprycel(ダサチニブ)、STANFORD V、Sterile Talc Powder(タルク)、Steritalc(タルク)、Stivarga(レゴラフェニブ)、スニチニブマレート、Sutent(スニチニブマレート)、Sylatron(ペグインターフェロンアルファ-2b)、Sylvant(シルツキシマブ)、Synribo(オマセタキシンメペスクシナート)、Tabloid(チオグアニン)、TAC、Tafinlar(ダブラフェニブ)、Tagrisso(オシメルチニブ)、タルク、タリモジーン・ラハーパレプベック、タモキシフェンシトレート、Tarabine PFS(シタラビン)、Tarceva(エルロチニブ塩酸塩)、Targretin(ベキサロテン)、Tasigna(ニロチニブ)、Taxol(パクリタキセル)、Taxotere(ドセタキセル)、TECENTRIQ、(アテゾリズマブ)、Temodar(テモゾロミド)、テモゾロミド、テムシロリムス、サリドマイド、Thalomid(サリドマイド)、チオグアニン、チオテパ、チサゲンレクルユーセル、Tolak(フルオロウラシル-局所)、トポテカン塩酸塩、トレミフェン、Torisel(テムシロリムス)、トシツモマブ・ヨウ素I 131トシツモマブ、Totect(デクスラゾキサン塩酸塩)、TPF、トラベクテジン、トラメチニブ、トラスツズマブ、Treanda(ベンダムスチン塩酸塩)、トリフルリジン及びトリフルリジン・チピラシル、Trisenox(三酸化二ヒ素)、Tykerb(ラパチニブジトシレート)、Unituxin(ジヌツキシマブ)、ウリジントリアセテート、VAC、バンデタニブ、VAMP、Varubi(ロラピタント塩酸塩)、Vectibix(パニツムマブ)、VeIP、Velban(ビンブラスチンスルフェート)、Velcade(ボルテゾミブ)、Velsar(ビンブラスチンスルフェート)、ベムラフェニブ、Venclexta(ベネトクラクス)、ベネトクラクス、Verzenio(アベマシクリブ)、Viadur(ロイプロリドアセテート)、Vidaza(アザシチジン)、ビンブラスチンスルフェート、Vincasar PFS(ビンクリスチンスルフェート)、ビンクリスチンスルフェート、ビンクリスチンスルフェートリポソーム、ビノレルビンタルタレート、VIP、ビスモデギブ、Vistogard(ウリジントリアセテート)、Voraxaze(グルカルピダーゼ)、ボリノスタット、Votrient(パゾパニブ塩酸塩)、Vyxeos(ダウノルビシン塩酸塩及びシタラビンリポソーム)、Wellcovorin(ロイコボリンカルシウム)、Xalkori(クリゾチニブ)、Xeloda(カペシタビン)、XELIRI、XELOX、Xgeva(デノスマブ)、Xofigo(塩化ラジウム223)、Xtandi(エンザルタミド)、Yervoy(イピリムマブ)、Yondelis(トラベクテジン)、Zaltrap(Ziv-アフリベルセプト)、Zarxio(フィルグラスチム)、Zejula(ニラパリブトシル酸塩一水和物)、Zelboraf(ベムラフェニブ)、Zevalin(イブリツモマブチウキセタン)、Zinecard(デクスラゾキサン塩酸塩)、Ziv-アフリベルセプト、Zofran(オンダンセトロン塩酸塩)、Zoladex(ゴセレリンアセテート)、ゾレドロン酸、Zolinza(ボリノスタット)、Zometa(ゾレドロン酸)、Zydelig(イデラリシブ)、Zykadia(セリチニブ)、並びに/又はZytiga(アビラテロンアセテート)。したがって、一態様では、化学療法薬がゲムシタビンである、化学療法薬を更に含むヒドロゲルマトリックスが本明細書に開示される。一態様では、化学療法薬は、生物応答性ヒドロゲルマトリックスに共有結合される。
【0047】
本開示の生物応答性ヒドロゲルマトリックスは、それらが生体適合性温度で安定なゲルを形成するというユニークな特徴を有する。一態様では、本明細書に開示される生物応答性ヒドロゲルマトリックス(化学療法薬及び免疫遮断阻害剤を備えるヒドロゲルを含む)を含む組成物は、溶液として投与することができ、対象への投与時にはゲルに移行することができる。
【0048】
抗体
(1)抗体全般
「抗体」という用語は、本明細書において、広義に使用され、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の両方を含む。PD-1がPD-L1と相互作用することから阻害されるように、PD-1及び/又はPD-L1と相互する能力に関して選択される限り、完全な状態の免疫グロブリン分子に加えて、免疫グロブリン分子の断片又はポリマー、及び免疫グロブリン分子のヒト若しくはヒト化バージョン又はその断片も「抗体」という用語に含まれる。抗体は、その所望の活性に関して、本明細書に記載されているインビトロアッセイを用いて、又は類似の方法によって検査することができ、その後、そのインビボ治療及び/又は予防活性が、既知の臨床的検査方法に従って検査される。ヒト免疫グロブリンの5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG-1、IgG-2、IgG-3、及びIgG-4;IgA-1及びIgA-2に更に分けられ得る。当業者は、マウスに対する同等のクラスを認識するであろう。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ及びμと呼ばれる。
【0049】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を表す、すなわち、抗体分子の小さなサブセット中に存在し得る天然に存在する可能性がある変異を除いて、集団内の各抗体が同一である。本明細書におけるモノクローナル抗体は、具体的には、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種に由来する又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一若しくは相同であるが、鎖の残りは、別の種に由来する又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一若しくは相同である「キメラ」抗体、並びに所望の拮抗的活性を示す限り、このような抗体の断片を含む。
【0050】
開示されているモノクローナル抗体は、モノクローナル抗体を生産するあらゆる手法を用いて作製することができる。例えば、開示されているモノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein、「Nature」、第256巻第495頁(1975年)によって記載されているものなど、ハイブリドーマ法を用いて調製することができる。ハイブリドーマ法では、免疫化剤に特異的に結合する抗体を産生する、又は産生することができるリンパ球を誘発するために、典型的には、マウス又はその他の適切な宿主動物が免疫化剤で免疫化される。あるいは、リンパ球は、インビトロで免疫化され得る。
【0051】
モノクローナル抗体は、組換えDNA法によっても作製され得る。開示されたモノクローナル抗体をコードするDNAは、慣用の手法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離し、配列決定することができる。抗体又は活性な抗体断片のライブラリは、例えば、Burtonらの米国特許第5,804,440号及びBarbasらの米国特許第6,096,441号に記載されているような、ファージディスプレイ技術を用いて、生成し、スクリーニングすることもできる。
【0052】
インビトロ法もまた、一価抗体を調製するのに適している。抗体の断片、特にFab断片を作製するための抗体の消化は、本分野において既知の日常的技術を用いて達成することができる。例えば、消化は、パパインを用いて実施することができる。パパイン消化の例は、1994年12月22日に公開された国際公開第WO94/29348号及び米国特許第4,342,566号に記載されている。抗体のパパイン消化は、典型的には、各々が単一の抗原結合部位を有するFab断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片と残りのFc断片を生成する。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有し、抗原をなお架橋することができる断片を生じる。
【0053】
本明細書において使用される「抗体又はその断片」という用語は、二重若しくは多重抗原特異性又はエピトープ特異性を有するキメラ抗体及びハイブリッド抗体並びにハイブリッド断片を含む、F(ab’)2、Fab’、Fab、Fv、scFvなどの断片を包含する。このように、特異的な抗原を結合する能力を保持する抗体の断片が提供される。例えば、PD-1及び/又はPD-L1結合活性を維持する抗体の断片が、用語「抗体又はその断片」の意味に含まれる。このような抗体及び断片は、本分野において既知の技術によって作製することができ、実施例に記載されている方法に従って、並びに抗体を生産し、特異性及び活性について抗体をスクリーニングするための一般的な方法において、特異性及び活性に関してスクリーニングすることができる(Harlow及びLane、「Antibodies,A Laboratory Manual.」、Cold Spring Harbor Publications、ニューヨーク(1988年)参照)。
【0054】
抗体断片及び抗原結合タンパク質(一本鎖抗体)のコンジュゲートも、「抗体又はその断片」という意味に含まれる。
【0055】
抗体又は抗体断片の活性が修飾されていない抗体又は抗体断片と比較して、著しく変化され又は損なわれていなければ、断片は、他の配列に付着されているか否かを問わず、特定の領域又は特異的なアミノ酸残基の挿入、欠失、置換、又はその他の選択された修飾も含むことができる。これらの修飾は、ジスルフィド結合することができるアミノ酸を除去/追加すること、その生体寿命を増加させること、その分泌特性を変化させること等の、なんらかの追加の特性を与えることができる。いずれの事例でも、抗体又は抗体断片は、その同種抗原(cognate antigen)への特異的結合など、生理活性特性を保有しなければならない。抗体又は抗体断片の機能的な又は活性な領域は、タンパク質の特異的領域の変異誘発に続く、発現されたポリペプチドの発現及び検査によって特定され得る。このような方法は当業者にとって自明であり、抗体又は抗体断片をコードする核酸の部位特異的変異誘発を含むことができる。(Zoller,M.J.、「Curr.Opin.Biotechnol.」、第3巻第348~354頁(1992年))。
【0056】
本明細書において使用される、「抗体」又は「複数の抗体」という用語は、ヒト抗体及び/又はヒト化抗体も表すことができる。多くの非ヒト抗体(例えば、マウス、ラット、又はウサギに由来するもの)は、ヒトでは本来抗原性であり、このため、ヒトに投与されたときに、望ましくない免疫応答を生じることができる。したがって、方法中でのヒト抗体又はヒト化抗体の使用は、ヒトに投与された抗体が望ましくない免疫応答を惹起する可能性を減らす役割を果たす。
【0057】
(2)ヒト抗体
開示されているヒト抗体は、任意の技術を用いて調製することができる。開示されているヒト抗体は、トランスジェニック動物から取得することもできる。例えば、免疫化に応答してヒト抗体の完全なレパートリを産生することができるトランスジェニックな突然変異マウスが記載されている(例えば、Jakobovitsら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」、第90巻第2551~255頁(1993年);Jakobovitsら、「Nature」、第362巻第255~258頁(1993年);Bruggermannら、「Year in Immunol.」、第7巻第33頁(1993年)を参照されたい)。具体的には、これらのキメラ及び生殖系列変異体マウス中の抗体重鎖連結領域(J(H))遺伝子のホモ接合型欠失は内在性抗体産生の完全な阻害をもたらし、ヒト生殖系列抗体遺伝子アレイをこのような生殖系列変異体マウス中に首尾よく移植すると、抗原攻撃誘発に際して、ヒト抗体の産生をもたらす。所望の活性を有する抗体は、本明細書において記載されているように、Env-CD4-共受容体複合体を用いて選択される。
【0058】
(3)ヒト化抗体
抗体ヒト化技術は、一般に、抗体分子の1種以上のポリペプチド鎖をコードするDNA配列を操作するための組換えDNA技術の使用を伴う。したがって、非ヒト抗体(又はその断片)のヒト化形態は、ヒト(レシピエント)抗体のフレームワーク中に組み込まれた非ヒト(ドナー)抗体由来の抗原結合部位の一部を含有するキメラ抗体又は抗体鎖(又は、sFv、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2若しくは抗体のその他の抗原結合部分などのそれらの断片)である。
【0059】
ヒト化抗体を生成するために、レシピエント(ヒト)抗体分子の1つ以上の相補性決定領域(complementarity determining region:CDR)からの残基が、所望の抗原結合特性(例えば、標的抗原に対するあるレベルの特異性及び親和性)を有することが知られているドナー(非ヒト)抗体分子の1つ以上のCDRからの残基によって置き換えられる。いくつかの事例では、ヒト抗体のFvフレームワーク(FR)残基が、対応する非ヒト残基によって置換されている。ヒト化抗体は、レシピエント抗体中にも、移入されるCDR又はフレームワーク配列中にも見出されない残基も含有し得る。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである源からヒト化抗体中に導入された1種以上のアミノ酸残基を有する。実際には、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかのCDR残基が、及び場合によりいくつかのFR残基がげっ歯類抗体中の類似の部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。ヒト化抗体は、一般に、典型的にはヒト抗体のものである抗体定常領域(Fc)の少なくとも一部を含有する(Jonesら、「Nature」、第321巻第522~525頁(1986年)、Reichmannら、「Nature」、第332巻第323~327頁(1988年)、及びPresta、「Curr.Opin.Struct.Biol.」、第2巻第593~596頁(1992年))。
【0060】
非ヒト抗体をヒト化する方法は当該技術分野において周知である。例えば、ヒト化抗体は、Winterと共同研究者の方法に従って(Jonesら、「Nature」、第321巻第522~525頁(1986年)、Riechmannら、「Nature」、第332巻第323~327頁(1988年)、Verhoeyenら、「Science」、第239巻第1534~1536頁(1988年))、げっ歯類CDR又はCDR配列をヒト抗体の対応する配列で置換することによって作製することができる。ヒト化抗体を作製するために使用することができる方法は、米国特許第4,816,567号(Cabillyら)、米国特許第5,565,332号(Hoogenboomら)、米国特許第5,721,367号(Kayら)、米国特許第5,837,243号(Deoら)、米国特許第5,939,598号(kucherlapatiら)、米国特許第6,130,364号(Jakobovitsら)及び米国特許第6,180,377号(Morganら)にも記載されている。
【0061】
(4)抗体の投与
抗体の投与は、本明細書に開示されているように行うことができる。抗体送達のための核酸アプローチも存在する。患者又は対象自身の細胞が核酸を取り込み、コードされている抗体又は抗体断片を産生及び分泌するように、広く中和する抗PD-1及び/又はPD-L1抗体及び抗体断片を、抗体又は抗体断片をコードする核酸調製物(例えば、DNA又はRNA)として患者又は対象に投与することもできる。核酸の送達は、例えば、本明細書に開示されているようなあらゆる手段によることができる。
【0062】
医薬担体/薬学的生成物の送達
上記のように、組成物は、薬学的に許容される担体中でインビボ投与することもできる。「薬学的に許容される」とは、生物学的に又は他の点で望ましくないものではない材料を意味し、すなわち、その材料は、いかなる望ましくない生物学的作用も引き起こすことなく、又はそれが含まれる医薬組成物の他のいずれの成分とも有害な形で相互作用することなく、核酸又はベクタと共に対象に投与され得る。担体は、当業者に周知である通り、当然のことながら、活性成分のいかなる分解も最小限に抑え、対象におけるいかなる有害な副作用も最小限に抑えるように選択されるであろう。
【0063】
組成物は、経口投与、非経口投与(例えば、静脈内投与)、筋肉内注射、腹腔内注射、経皮投与、体外投与、又は局所投与などで投与することができ、局所鼻腔内投与又は吸入剤による投与を含む。本明細書で使用されるように、「局所鼻腔内投与」は、鼻孔の一方又は両方を通じた鼻及び鼻腔内への組成物の送達を意味し、噴霧機構若しくは液滴機構による、又は核酸若しくはベクタのエアロゾル化を介した送達を含むことができる。吸入剤による組成物の投与は、噴霧機構又は液滴機構による送達を介した鼻又は口を通じたものであり得る。挿管を介して呼吸器系の任意の領域(例えば、肺)に直接送達することもできる。必要とされる組成物の正確な量は、対象の種、年齢、体重及び全身状態、治療下のアレルギー性障害の重症度、使用される特定の核酸又はベクタ、その投与形式などに応じて、対象毎に異なるであろう。したがって、全ての組成物に対して正確な量を特定することは可能でない。しかしながら、適切な量は、本明細書の教示があれば、日常的な実験のみを用いて、当業者によって決定されることができる。
【0064】
組成物の非経口投与は、使用される場合、一般的に注射によって行われることを特徴とする。注射剤は、液体溶液若しくは懸濁液として、注射前の液体中での懸濁液の溶解に適した固体形態として、又はエマルジョンとしてのいずれかで、慣用の形態で調製することができる。比較的最近になって改訂された非経口投与のためのアプローチは、一定の用量が維持されるように徐放系又は持続放出系の使用を伴う。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第3,610,795号を参照されたい。
【0065】
材料は、溶液、懸濁液(例えば、微粒子、リポソーム、又は細胞中に組み込まれている)の状態であってもよい。これらは、抗体、受容体、又は受容体リガンドを介して、特定の細胞型を標的とし得る。以下の参考文献は、特定のタンパク質が腫瘍組織を標的とする本技術の使用例である(Senterら、「Bioconjugate Chem」、第2巻第447~451頁(1991年);Bagshawe,K.D.、「Br.J.Cancer」、第60巻第275~281頁(1989年);Bagshaweら、「Br.J.Cancer」、第58巻第700~703頁(1988年);Senterら、「Bioconjugate Chem.」、第4巻第3~9頁(1993年);Battelliら、「Cancer Immunol.Immunother.」、第35巻第421~425頁(1992年);Pietersz及びMcKenzieら、「Immunolog.Reviews」、第129巻第57~80頁(1992年);並びに、Rofflerら、「Biochem.Pharmacol」、第42巻第2062~2065頁(1991年))。ビヒクル、例えば「ステルス」及び抗体がコンジュゲートされた他のリポソーム(結腸がん腫への脂質媒介性薬物標的化を含む)、細胞特異的リガンドを介したDNAの受容体媒介性標的化、リンパ球誘導腫瘍標的化、及びインビボでのマウス神経膠腫細胞の高特異的治療レトロウイルス標的化。以下の参考文献は、特定のタンパク質が腫瘍組織を標的とする本技術の使用例である(Hughesら、「Cancer Research」、第49巻第6214~6220頁(1989年);並びにLitzinger及びHuang、「Biochimica et Biophysica Acta」、第1104巻第179~187頁(1992年))。一般に、受容体は、構成性又はリガンド誘導性のいずれかで、エンドサイトーシスの経路に関与している。これらの受容体は、クラスリンで被覆されたピットに集まり、クラスリンで被覆された小胞を介して細胞内に入り、酸性化されたエンドソームを通過し、その中で受容体は選別され、次いで、細胞表面にリサイクルされるか、細胞内に貯蔵されるか、又はリソソーム中で分解されるかのいずれかである。インターナリゼーション経路は、栄養素の取込み、活性化タンパク質の除去、高分子のクリアランス、ウイルス及び毒素の日和見的侵入、リガンドの解離及び分解、並びに受容体レベルの調節などの様々な機能を果たす。多くの受容体は、細胞型、受容体の濃度、リガンドの種類、リガンドの価数、及びリガンドの濃度に応じて、1つ以上の細胞内経路をたどる。受容体媒介性エンドサイトーシスの分子及び細胞機序が概説されている(Brown及びGreene、「DNA and Cell Biology」、第10巻第6号第399~409頁(1991年))。
【0066】
a)薬学的に許容される担体
抗体を含む組成物は、薬学的に許容される担体と組み合わせて治療的に使用することができる。
【0067】
適切な担体及びそれらの配合は、「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」(第19版)、A.R.Gennaro編、Mack Publishing Company、ペンシルベニア州イーストン(1995年)に記載されている。典型的には、製剤を等張性にするために、適切な量の薬学的に許容される塩が製剤中で使用される。薬学的に許容される担体の例として、生理食塩水、リンゲル溶液、及びデキストロース溶液が挙げられるがこれらに限定されない。溶液のpHは、好ましくは約5~約8、より好ましくは約7~約7.5である。更なる担体として、持続放出製剤、例えば、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは、成形品、例えば、フィルム、リポソーム、又は微粒子の形態である。ある担体が、例えば、投与される組成物の投与経路及び濃度に応じて、より好ましいものであり得ることは、当業者に自明であろう。
【0068】
医薬担体は、当業者に知られている。これらは、最も典型的には、無菌水、生理食塩水、及び生理学的pHで緩衝化された溶液などの溶液を含む、ヒトへの薬物投与のための標準的な担体であろう。組成物は、筋肉内投与に又は皮下投与することができる。他の化合物は、当業者によって使用される標準的な手順に従って投与されるであろう。
【0069】
医薬組成物は、選択された分子に加えて、担体、増粘剤、希釈剤、緩衝剤、保存剤、及び界面活性剤などを含み得る。医薬組成物は、抗菌剤、抗炎症剤、麻酔剤などの1種以上の活性成分も含み得る。
【0070】
医薬組成物は、局所的又は全身的な治療が所望されるか否かと、治療されるべき領域に応じて、いくつかの方法で投与され得る。投与は、局所的(点眼、経膣、直腸内、鼻腔内を含む)、経口的、吸入により、又は非経口的、例えば、点滴、皮下、腹腔内、若しくは筋肉内注射により行うことができる。開示された抗体は、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、腔内投与、又は経皮投与することができる。
【0071】
非経口投与のための調製物として、無菌水性溶液又は非水性溶液、懸濁液、及びエマルジョンが挙げられる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、及びオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性担体として、生理食塩水及び緩衝化媒体を含む、水、アルコール性/水性溶液、エマルジョン、又は懸濁液が挙げられる。非経口ビヒクルとして、塩化ナトリウム溶液、デキストロースリンゲル液、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液、又は不揮発性油が挙げられる。静脈内ビヒクルとして、流体及び栄養素補充液、電解質補充液(デキストロースリンゲル液をベースとするものなど)などが挙げられる。保存剤及び他の添加剤、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性ガスなども存在し得る。
【0072】
局所投与用の製剤として、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、滴剤、坐剤、スプレー、液体、及び粉末が挙げられ得る。慣用の医薬担体、水性、粉末又は油性の基剤、増粘剤などが必要であり得、又は望ましくあり得る。
【0073】
経口投与用の組成物として、粉末若しくは顆粒、水若しくは非水性媒体中の懸濁液若しくは溶液、カプセル、サシェ剤、又は錠剤が挙げられる。増粘剤、着香剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤、又は結合剤が望ましいことがあり得る。
【0074】
組成物のいくつかは、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸及びリン酸などの無機酸、並びにギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸及びフマル酸などの有機酸との反応によって、又は水酸化ナトリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カリウムなどの無機塩基、並びにモノ-、ジ-、トリアルキルアミン及びアリールアミン及び置換されたエタノールアミンなどの有機塩基との反応によって形成される薬学的に許容される酸又は塩基付加塩として潜在的に投与され得る。
【0075】
b)治療用途
組成物を投与するための有効用量及びスケジュールは実験により決定され得、そのような決定を行うことは当該技術分野の範疇である。組成物の投与のための用量範囲は、障害の症状が影響を受ける所望の効果を生じるのに充分大きな投与量範囲である。用量は、望ましくない交差反応、アナフィラキシ型反応などの有害な副作用を引き起こすほど多いものであってはならない。一般的に、用量は、患者の年齢、状態、性別、疾患の程度、投与経路により、又は他の薬物がレジメンに含まれているか否かで異なり、当業者によって決定されることができる。用量は、任意の禁忌の場合には、個々の医師によって調整されることができる。用量は変えることができ、1日又は数日間で、毎日1回以上の用量投与で投与されることができる。所与の部類の医薬製品の適切な用量については、文献に手引きを見出すことができる。例えば、抗体の適切な用量を選択する上での手引きは、抗体の治療用途に関する文献、例えば、「Handbook of Monoclonal Antibodies」、Ferroneら編、Noges Publications、Park Ridge,N.J.(1985年)、第22章及び第303~357頁;Smithら、「Antibodies in Human Diagnosis and Therapy」、Haberら編、Raven Press、ニューヨーク(1977年)第365~389頁中に見出すことができる。単独で使用される抗体の典型的な一日用量は、上記の要因に応じて、1日当たり約1μg/kg~最大100mg/kg(体重)又はそれを超える範囲であり得る。
【0076】
がんを治療し、腫瘍におけるPD-1/PD-L1遮断阻害剤感受性を誘導する方法
本明細書に記載されるように、開示された、操作れたナノ小胞(nanovesicle)、操作された巨核球、操作された血小板、及び/又は医薬組成物は、がんなどの制御されない細胞増殖が起こる任意の疾患を治療するために使用することができる。したがって、一態様では、本明細書は、がん(メラノーマ、腎細胞がん、尿路上皮がん、非小細胞肺がん、及び/又は膀胱がんを含むが、これらに限定されない);がんの増殖(メラノーマ、腎細胞がん、尿路上皮がん、非小細胞肺がん、及び/又は膀胱がんを含むが、これらに限定されない);がんの転移(メラノーマ、腎細胞がん、尿路上皮がん、非小細胞肺がん、及び/又は膀胱がんを含むが、これらに限定されない);を治療する、減少させる、阻害する、又は予防する方法、及び/又は本明細書に開示される操作されたナノ小胞、操作された巨大核細胞(magekaryocytes)、操作された血小板、及び/又は医薬組成物を、がんを有する患者に投与することを含む、対象における、腫瘍の外科的切除後のがん(メラノーマ、腎細胞がん、尿路上皮がん、非小細胞肺がん、及び/又は膀胱がんを含むが、これらに限定されない)を治療する、減少させる、阻害する、又は再発、増殖、若しくは転移を予防する方法を開示する。したがって、一態様では、本明細書は、がん;がんの増殖;転移;及び/又は、対象における腫瘍の外科的切除後のがんの再発、増殖、又は転移を治療、減少、阻害又は予防する方法であって、該対象に、本明細書に開示される生物応答性ヒドロゲルマトリックスのいずれかを含む組成物(例えば、IDOの阻害剤及びROSスカベンジャからなる生物応答性ヒドロゲルマトリックスを含む)を投与することを含む、方法を開示する。したがって、本明細書は、がん;がんの増殖;転移;及び/又は、対象における腫瘍の外科的切除後のがんの再発、増殖、又は転移を治療、減少、阻害又は予防する方法であって、該対象に、活性酸素種スカベンジャ及びインドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)の阻害剤を含む生物応答性ヒドロゲルマトリックスを投与することを含む、方法を開示する。
【0077】
開示された組成物は、がんなどの制御されない細胞増殖が起こる任意の疾患を治療するために使用することができる。したがって、一態様では、本明細書は、対象における非免疫原性がんを治療する方法、及び/又はがんを有する対象における腫瘍中のPD-1/PD-L1遮断阻害剤感受性を誘導する方法であって、該方法は、ROSスカベンジャ(例えば、L-メチオニン)、IDOの阻害剤(例えば、D-1MT)、及び免疫遮断阻害剤を含むヒドロゲルマトリックスを対象に投与することを含む、方法を開示する。対象中の非免疫原性がんを処置する及び/又はがんを有する対象中の腫瘍中にPD-1/PD-L1遮断阻害剤感受性を誘導する開示された方法において使用するためのPD-1/PD-L1遮断阻害剤の例には、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピディリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ及びBMS-936559)を含むがこれらに限定されない、本分野において既知のあらゆるPD-1/PD-L1遮断阻害剤が含まれ得る。したがって、一態様では、本明細書は、対象における非免疫原性がんを治療する方法、及び/又はがんを有する対象における腫瘍中のPD-1/PD-L1遮断阻害剤感受性を誘導する方法であって、ROSスカベンジャ(例えばL-メチオニン)、IDOの阻害剤(例えば、D-1MT)、及び免疫遮断阻害剤を含むヒドロゲルマトリックスを対象に投与することを含む、方法を開示する。ここで、該遮断阻害剤は、例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピディリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、及びBMS-936559などのPD-1/PD-L1遮断阻害剤である。
【0078】
一態様では、対象の非免疫原性がんを治療する、及び/又はがんを有する対象の腫瘍におけるPD-1/PD-L1遮断阻害剤感受性を誘導する、開示された方法で使用されるヒドロゲルマトリックスは、化学療法薬を含む。開示された方法で使用される化学療法は、当技術分野で知られている任意の化学療法薬を含み得るが、これらに限定されない以下を含む:アベマシクリブ、アビラテロンアセテート、Abitrexate(メトトレキサート)、Abraxane(パクリタキセル・アルブミン安定化ナノ粒子製剤)、ABVD、ABVE、ABVE-PC、AC、AC-T、Adcetris(ブレンツキシマブベドチン)、ADE、アドトラスツズマブエムタンシン、Adriamycin(ドキソルビシン塩酸塩)、アファチニブジマレエート、Afinitor(エベロリムス)、Akynzeo(ネツピタント/パロノセトロン塩酸塩)、Aldara(イミキモド)、アルデスロイキン、アレセンサ(アレクチニブ)、アレクチニブ、アレムツズマブ、Alimta(ペメトレキセド二ナトリウム)、Aliqopa(コパンリシブ塩酸塩水和物)、注射用アルケラン(メルファラン塩酸塩)、アルケラン錠(メルファラン)、Aloxi(パロノセトロン塩酸塩)、ALUNBRIG(ブリガチニブ)、Ambochlorin(クロラムブシル)、Ambochlorin(クロラムブシル)、アミフォスチン、アミノレブリン酸、アナストロゾール、アプレピタント、Aredia(パミドロン酸二ナトリウム)、Arimidex(アナストロゾール)、Aromasin(エキセメスタン)、Arranon(ネララビン)、三酸化ヒ素、Arzerra(オファツムマブ)、アスパラギナーゼエルウィニアクリサンチミー、アテゾリズマブ、Avastin(ベバシズマブ)、アベルマブ、アキシチニブ、アザシチジン、BAVENCIO(アベルマブ)、BEACOPP、Becenum(カルムスチン)、Beleodaq(ベリノスタット)、ベリノスタット、ベンダムスチン塩酸塩、BEP、Besponsa(イノツズマブオゾガマイシン)、ベバシズマブ、ベキサロテン、Bexxar(トシツモマブ・ヨウ素I 131トシツモマブ)、ビカルタミド、BiCNU(カルムスチン)、ブレオマイシン、ブリナツモマブ、Blincyto(ブリナツモマブ)、ボルテゾミブ、Bosulif(ボスチニブ)、ボスチニブ、ブレンツキシマブベドチン、ブリガチニブ、BuMel、ブスルファン、Busulfex(ブスルファン)、カバジタキセル、Cabometyx(カボザンチニブ―S―マレート)、カボザンチニブ―S―マレート、CAF、Campath(アレムツズマブ)、Camptosar、(イリノテカン塩酸塩)、カペシタビン、CAPOX、Carac(フルオロウラシル-局所)、カルボプラチン、カルボプラチン-TAXOL、カルフィルゾミブ、Carmubris(カルムスチン)、カルムスチン、カルムスチン・インプラント、Casodex(ビカルタミド)、CEM、セリチニブ、Cerubidine(ダウノルビシン塩酸塩)、Cervarix(組換えHPV二価ワクチン)、セツキシマブ、CEV、クロラムブシル、クロラムブシル-プレドニゾン、CHOP、シスプラチン、クラドリビン、Clafen(シクロホスファミド)、クロファラビン、Clofarex(クロファラビン)、Clolar(クロファラビン)、CMF、コビメチニブ、Cometriq(カボザンチニブ-S―マレート)、コパンリシブ塩酸塩水和物、COPDAC、COPP、COPP-ABV、Cosmegen(ダクチノマイシン)、Cotellic(コビメチニブ)、クリゾチニブ、CVP、シクロホスファミド、Cyfos(イホスファミド)、Cyramza(ラムシルマブ)、シタラビン、シタラビンリポソーム、Cytosar-U(シタラビン)、Cytoxan(シクロホスファミド)、ダブラフェニブ、ダカルバジン、Dacogen(デシタビン)、ダクチノマイシン、ダラツムマブ、Darzalex(ダラツムマブ)、ダサチニブ、ダウノルビシン塩酸塩、ダウノルビシン塩酸塩及びシタラビンリポソーム、デシタビン、デフィブロチドナトリウム、Defitelio(デフィブロチドナトリウム)、デガレリクス、デニロイキンディフティトックス、デノスマブ、DepoCyt(シタラビンリポソーム)、デキサメタゾン、デキスラゾキサン塩酸塩、ジヌツキシマブ、ドセタキセル、Doxil(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、ドキソルビシン塩酸塩、ドキソルビシン塩酸塩リポソーム、Dox-SL(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、DTIC-Dome(ダカルバジン)、デュルバルマブ、Efudex(フルオロウラシル-局所)、Elitek(ラスブリカーゼ)、Ellence(エピルビシン塩酸塩)、エロツズマブ、Eloxatin(オキサリプラチン)、エルトロンボパグオラミン、Emend(アプレピタント)、Empliciti(エロツズマブ)、エナシデニブメシル酸塩、エンザルタミド、エピルビシン塩酸塩、EPOCH、Erbitux(セツキシマブ)、エリブリンメシレート、Erivedge(ビスモデギブ)、エルロチニブ塩酸塩、Erwinaze(アスパラギナーゼエルウィニアクリサンチミー)、Ethyol(アミフォスチン)、Etopophos(エトポシドホスフェート)、エトポシド、エトポシドホスフェート、Evacet(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、エベロリムス、Evista、(ラロキシフェン塩酸塩)、Evomela(メルファラン塩酸塩)、エキセメスタン、5-FU(フルオロウラシル注射)、5-FU(フルオロウラシル-局所)、Fareston(トレミフェン)、Farydak(パノビノスタット)、Faslodex(フルベストラント)、FEC、Femara(レトロゾール)、フィルグラスチム、Fludara(フルダラビンホスフェート)、フルダラビンホスフェート、Fluoroplex(フルオロウラシル-局所)、フルオロウラシル注射、フルオロウラシル-局所、フルタミド、Folex(メトトレキサート)、Folex PFS(メトトレキサート)、FOLFIRI、FOLFIRI-ベバシズマブ、FOLFIRI-セツキシマブ、FOLFIRINOX、FOLFOX、Folotyn(プララトレキセート)、FU-LV、フルベストラント、Gardasil(組換えHPV四価ワクチン)、Gardasil 9(組換えHPV九価ワクチン)、Gazyva(オビヌツズマブ)、ゲフィチニブ、ゲムシタビン塩酸塩、ゲムシタビン-シスプラチン、ゲムシタビン-オキサリプラチン、ゲムツズマブオゾガマイシン、Gemzar(ゲムシタビン塩酸塩)、Gilotrif(アファチニブジマレエート)、Gleevec(イマチニブメシレート)、Gliadel(カルムスチン・インプラント)、Gliadel wafer(カルムスチン・インプラント)、グルカルピダーゼ、ゴセレリンアセテート、Halaven(エリブリンメシレート)、Hemangeol(プロプラノロール塩酸塩)、Herceptin(トラスツズマブ)、HPV二価ワクチン、組換え、HPV九価ワクチン、組換え、HPV四価ワクチン、組換え、Hycamtin(トポテカン塩酸塩)、Hydrea(ヒドロキシ尿素)、ヒドロキシ尿素、Hyper-CVAD、Ibrance(パルボシクリブ)、イブリツモマブチウキセタン、イブルチニブ、ICE、Iclusig(ポナチニブ塩酸塩)、Idamycin(イダルビシン塩酸塩)、イダルビシン塩酸塩、イデラリシブ、Idhifa(エナシデニブメシル酸塩)、Ifex(イホスファミド)、イホスファミド、Ifosfamidum(イホスファミド)、IL-2(アルデスロイキン)、イマチニブメシレート、Tmbruvica(イブルチニブ)、Tmfinzi(デュルバルマブ)、イミキモド、Imlygic(タリモジーン・ラハーパレプベック)、Inlyta(アキシチニブ)、イノツズマブオゾガマイシン、インターフェロンアルファ-2b、組換え、インターロイキン-2(アルデスロイキン)、Intron A(組換えインターフェロンアルファ-2b)、ヨウ素I 131トシツモマブ・トシツモマブ、イピリムマブ、Iressa(ゲフィチニブ)、イリノテカン塩酸塩、イリノテカン塩酸塩リポソーム、Istodax(ロミデプシン)、イクサベピロン、タキサゾミブクエン酸塩、Ixempra(イクサベピロン)、Jakafi(ルキソリチニブホスフェート)、JEB、Jevtana(カバジタキセル)、Kadcyla(アドトラスツズマブエムタンシン)、Keoxifene(ラロキシフェン塩酸塩)、Kepivance(パリフェルミン)、Keytruda(ペムブロリズマブ)、Kisqali(リボシクリブ)、Kymriah(チサゲンレクルユーセル)、Kyprolis(カルフィルゾミブ)、ランレオチドアセテート、ラパチニブジトシレート、Lartruvo(オララツマブ)、レナリドミド、レンバチニブメシレート、Lenvima(レンバチニブメシレート)、レトロゾール、ロイコボリンカルシウム、Leukeran(クロラムブシル)、ロイプロリドアセテート、Leustatin(クラドリビン)、Levulan(アミノレブリン酸)、Linfolizin(クロラムブシル)、LipoDox(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、ロムスチン、Lonsurf(トリフルリジン及びトリフルリジン・チピラシル)、Lupron(ロイプロリドアセテート)、Lupron Depot(ロイプロリドアセテート)、Lupron Depot-Ped(ロイプロリドアセテート)、Lynparza(オラパリブ)、Marqibo(ビンクリスチンスルフェートリポソーム)、Matulane(プロカルバジン塩酸塩)、メクロレタミン塩酸塩、メゲストロールアセテート、Mekinist(トラメチニブ)、メルカプトプリン、メルファラン塩酸塩、メルカプトプリン、メスナ、Mesnex(メスナ)、Methazolastone(テモゾロミド)、メトトレキサート、Methotrexate LPL(メトトレキサート)、メチルナルトレキソン臭化物、Mexate(メトトレキサート)、Mexate-AQ(メトトレキサート)、ミドスタウリン、マイトマイシンC、ミトキサントロン塩酸塩、Mitozytrex(マイトマイシンC)、MOPP、Mozobil(プレリキサホル)、Mustargen(メクロレタミン塩酸塩)、Mutamycin(マイトマイシンC)、Myleran(ブスルファン)、Mylosar(アザシチジン)、Mylotarg(ゲムツズマブオゾガマイシン)、Nanoparticle Paclitaxel(パクリタキセル・アルブミン安定化ナノ粒子製剤(Lormulation))、Navelbine(ビノレルビンタルタレート)、ネシツムマブ、ネララビン、Neosar(シクロホスファミド)、ネラチニブマレイン酸塩、Nerlynx(ネラチニブマレイン酸塩)、ネツピタント・パロノセトロン塩酸塩、Neulasta(ペグフィルグラスチム)、Neupogen(リルグラスチム)、Nexavar(ソラフェニブトシレート)、Nilandron(ニルタミド)、ニロチニブ、ニルタミド、Ninlaro(イキサゾミブクエン酸塩)、ニラパリブトシル酸塩一水和物、ニボルマブ、Nolvadex(タモキシフェンシトレート)、Nplate(ロミプロスチム)、オビヌツズマブ、Odomzo(ソニデジブ)、OEPA、オファツムマブ、OFF、オラパリブ、オララツマブ、オマセタキシンメペスクシナート、Oncaspar(ペグアスパラガーゼ)、オンダンセトロン塩酸塩、Onivyde(イリノテカン塩酸塩リポソーム)、Ontak(デニロイキンディフティトックス)、Opdivo(ニボルマブ)、OPPA、オシメルチニブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、パクリタキセル・アルブミン安定化ナノ粒子製剤、PAD、パルボシクリブ、パリフェルミン、パロノセトロン塩酸塩、パロ
ノセトロン塩酸塩・ネツピタント、パミドロン酸二ナトリウム、パニツムマブ、パノビノスタット、Paraplat(カルボプラチン)、Paraplatin(カルボプラチン)、パゾパニブ塩酸塩、PCV、PEB、ペグアスパラガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペグインターフェロンアルファ-2b、PEG-Intron(ペグインターフェロンアルファ-2b)、ペムブロリズマブ、ペメトレキセド二ナトリウム、Perjeta(ペルツズマブ)、ペルツズマブ、Platinol(シスプラチン)、Platinol-AQ(シスプラチン)、プレリキサホル、ポマリドミド、Pomalyst(ポマリドミド)、ポナチニブ塩酸塩、Portrazza(ネシツムマブ)、プララトレキセート、プレドニゾン、プロカルバジン塩酸塩、Proleukin(アルデスロイキン)、Prolia(デノスマブ)、Promacta(エルトロンボパグオラミン)、プロプラノロール塩酸塩、Provenge(シプロイセル-T)、Purinethol(メルカプトプリン)、Purixan(メルカプトプリン)、塩化ラジウム223、ラロキシフェン塩酸塩、ラムシルマブ、ラスブリカーゼ、R-CHOP、R-CVP、組換えヒトパピローマウイルス(HPV)二価ワクチン、組換えヒトパピローマウイルス(HPV)九価ワクチン、組換えヒトパピローマウイルス(HPV)四価ワクチン、組換えインターフェロンアルファ-2b、レゴラフェニブ、Relistor(メチルナルトレキソン臭化物)、R-EPOCH、Revlimid(レナリドミド)、Rheumatrex(メトトレキサート)、リボシクリブ、R-ICE、Rituxan(リツキシマブ)、Rituxan Hycela(リツキシマブ・ヒアルロニダーゼ)、リツキシマブ、リツキシマブ、及びヒアルロニダーゼ、ロラピタント塩酸塩、ロミデプシン、ロミプロスチム、Rubidomycin(ダウノルビジン塩酸塩)、Rubraca(ルカパリブカンシル酸塩)、ルカパリブカンシル酸塩、ルキソリチニブホスフェート、Rydapt(ミドスタウリン)、Sclerosol Intrapleural Aerosol(タルク)、シルツキシマブ、シプロイセル-T、Somatuline Depot(ランレオチドアセテート)、ソニデジブ、ソラフェニブトシレート、Sprycel(ダサチニブ)、STANFORD V、Sterile Talc Powder(タルク)、Steritalc(タルク)、Stivarga(レゴラフェニブ)、スニチニブマレート、Sutent(スニチニブマレート)、Sylatron(ペグインターフェロンアルファ-2b)、Sylvant(シルツキシマブ)、Synribo(オマセタキシンメペスクシナート)、Tabloid(チオグアニン)、TAC、Tafinlar(ダブラフェニブ)、Tagrisso(オシメルチニブ)、タルク、タリモジーン・ラハーパレプベック、タモキシフェンシトレート、Tarabine PFS(シタラビン)、Tarceva(エルロチニブ塩酸塩)、Targretin(ベキサロテン)、Tasigna(ニロチニブ)、Taxol(パクリタキセル)、Taxotere(ドセタキセル)、TECENTRIQ、(アテゾリズマブ)、Temodar(テモゾロミド)、テモゾロミド、テムシロリムス、サリドマイド、Thalomid(サリドマイド)、チオグアニン、チオテパ、チサゲンレクルユーセル、Tolak(フルオロウラシル-局所)、トポテカン塩酸塩、トレミフェン、Torisel(テムシロリムス)、トシツモマブ・ヨウ素I 131トシツモマブ、Totect(デクスラゾキサン塩酸塩)、TPF、トラベクテジン、トラメチニブ、トラスツズマブ、Treanda(ベンダムスチン塩酸塩)、トリフルリジン及びトリフルリジン・チピラシル、Trisenox(三酸化二ヒ素)、Tykerb(ラパチニブジトシレート)、Unituxin(ジヌツキシマブ)、ウリジントリアセテート、VAC、バンデタニブ、VAMP、Varubi(ロラピタント塩酸塩)、Vectibix(パニツムマブ)、VeIP、Velban(ビンブラスチンスルフェート)、Velcade(ボルテゾミブ)、Velsar(ビンブラスチンスルフェート)、ベムラフェニブ、Venclexta(ベネトクラクス)、ベネトクラクス、Verzenio(アベマシクリブ)、Viadur(ロイプロリドアセテート)、Vidaza(アザシチジン)、ビンブラスチンスルフェート、Vincasar PFS(ビンクリスチンスルフェート)、ビンクリスチンスルフェート、ビンクリスチンスルフェートリポソーム、ビノレルビンタルタレート、VIP、ビスモデギブ、Vistogard(ウリジントリアセテート)、Voraxaze(グルカルピダーゼ)、ボリノスタット、Votrient(パゾパニブ塩酸塩)、Vyxeos(ダウノルビシン塩酸塩及びシタラビンリポソーム)、Wellcovorin(ロイコボリンカルシウム)、Xalkori(クリゾチニブ)、Xeloda(カペシタビン)、XELIRI、XELOX、Xgeva(デノスマブ)、Xofigo(塩化ラジウム223)、Xtandi(エンザルタミド)、Yervoy(イピリムマブ)、Yondelis(トラベクテジン)、Zaltrap(Ziv-アフリベルセプト)、Zarxio(フィルグラスチム)、Zejula(ニラパリブトシル酸塩一水和物)、Zelboraf(ベムラフェニブ)、Zevalin(イブリツモマブチウキセタン)、Zinecard(デクスラゾキサン塩酸塩)、Ziv-アフリベルセプト、Zofran(オンダンセトロン塩酸塩)、Zoladex(ゴセレリンアセテート)、ゾレドロン酸、Zolinza(ボリノスタット)、Zometa(ゾレドロン酸)、Zydelig(イデラリシブ)、Zykadia(セリチニブ)、並びに/又はZytiga(アビラテロンアセテート)。
【0079】
ヒドロゲルマトリックスは、腫瘍の微小環境に生物応答性であるように設計され、酸性の存在で、例えば過酸化物(例えば過酸化水素、有機過酸化物)、超酸化物、ヒドロキシルラジカル、及び一重項酸素を含むがこれらに限定されない活性酸素種などの微小環境内の因子に曝露すると、化学療法薬及び/又はPD-1/PD-L1阻害剤を放出するように設計され得ることが理解され、本明細書において企図されている。
【0080】
一態様では、本明細書は、対象における非免疫原性がんを治療する方法、及び/又はがんを有する対象における腫瘍中のPD-1/PD-L1遮断阻害剤感受性を誘導する開示された方法で使用されるヒドロゲルマトリックスが、化学療法薬を放出され、そしてPD-1/PD-L1遮断阻害剤が、同じ速度で又は異なる速度でヒドロゲルから放出され得ることを企図する。該ヒドロゲルは、該化学療法薬及びPD-1/PD-L1遮断阻害剤を、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30日間、該腫瘍微小環境中へ放出するように設計されてもよい。したがって、一態様では、本明細書は、対象における非免疫原性がんを治療する方法、及び/又はがんを有する対象における腫瘍中のPD-1/PD-L1遮断阻害剤感受性を誘導する方法は、化学療法薬を放出することができ、そしてPD-1/PD-L1遮断阻害剤が、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30日間、ヒドロゲルから放出される方法を開示する。
【0081】
対象における非免疫原性がんを治療する、及び/又はがんを有する対象の腫瘍におけるPD-1/PD-L1遮断阻害剤感受性を誘導する開示された方法が、がんのような制御されない細胞増殖が起こる任意の疾患、障害、又は状態を治療するために使用され得ることが理解され、本明細書において企図されている。
【0082】
本明細書で使用される「治療する」、「治療すること」、「治療」、及びそれらの文法的な変形は、1つ以上の疾患若しくは状態、疾患若しくは状態の症状、又は疾患若しくは状態の根本的な原因の強度又は頻度を、部分的又は完全に予防、遅延、癒す、治癒、緩和、軽減、変化、処置、改善、改善化、安定化、鎮静、及び/又は減少させることを意図又は目的とした、組成物の投与を含む。本発明に係る治療は、防止的(preventively)に、予防的(prophylactically)に、一時的(pallatively)に、又は改善的(remedially)に適用することができる。予防的治療は、発症前(例えば、がんの明らかな徴候が現れる前)、早期発症中(例えば、がんの初期徴候及び症状が現れた際)、又はがんの発症が確立した後に、対象へ投与される。予防的投与は、感染症の症状が現れるより数日前から数年前に渡って行われてもよい。
【0083】
開示された組成物が治療に使用され得る代表的ながんは、以下:リンパ腫;B細胞リンパ腫;T細胞リンパ腫;菌状息肉腫;ホジキン病;骨髄性白血病を含むがこれらに限定されない白血病;形質細胞腫;組織球腫;膀胱がん;脳がん、神経系がん、頭頸部がん、頭頸部扁平上皮がん、尿路上皮がん、腎臓がん、小細胞肺がん及び非小細胞肺がんなどの肺がん、神経芽細胞腫、神経膠芽腫、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、皮膚がん、肝臓がん、メラノーマ、口、喉頭、喉頭及び肺の扁平上皮がん;結腸がん;子宮頸がん;子宮頸がん腫;乳がん;上皮がん;腎がん、尿生殖器がん;肺がん;食道がん;頭頸部がん;大腸がん;造血器のがん;精巣がん;結腸がん及び直腸がん;前立腺がん;エイズ関連リンパ腫若しくは肉腫、転移性がん、又は一般的ながん;若しくは膵がんであるが、これらに限定されない。
【0084】
したがって、一態様では、本明細書は、がんを治療する方法及び/又はがんを有する対象の腫瘍におけるPD-1/PD-L1遮断阻害剤感受性を誘導する方法を開示し、ここで、該がんは、PD-L1発現が低いがん、PD-L1発現が高いがん、又はメラノーマ、尿路上皮がん、非小細胞肺がん、腎がん、頭頸部がん、及び/又は膀胱がんからなる群より選択される非免疫原性がんである。
【実施例】
【0085】
C.実施例
以下の実施例は、本明細書の特許請求の範囲に記載された化合物、組成物、物品、装置及び/又は方法がどのように作製され評価されるかの完全な開示及び記述を当業者に提供するために提示されており、純粋に例示的であることが意図されており、本開示を限定することは意図されていない。数字(例えば、量、温度等)に関して正確性を確保するための努力がなされているが、一部の誤差及び偏差が考慮されるべきである。特に明記しない限り、部は重量部であり、温度は℃単位又は周囲温度であり、圧力は大気圧であるか又は大気圧に近い。
【0086】
実施例1:増強した免疫チェックポイント遮断のための注射可能な生物応答性ゲルデポ
a)結果
本明細書では、メラノーマの治療効果を増強するために、腫瘍微小環境における活性酸素種(ROS)レベルを調節するだけでなくaPD-L1及びD-1MTの持続放出のために、注射可能なポリペプチド系ゲルデポを設計した。ヒドロゲルは治療薬を効率的に輸送するための局所的な薬物送達デポとして機能するだけでなく、治療の有効性を促進するための腫瘍内微小環境を調節する(
図1)。重要なことに、ROSは免疫系の重要なシグナル伝達メッセンジャの1つとして多くの生理学的過程に関与するだけでなく、アポトーシスの誘導、PD-1発現の調節、T細胞の機能的抑制、並びにがんの発生及び進行の促進を介して腫瘍免疫抑制微小環境と密接に関連している。特に、インビボでの典型的なROS分子として、H
2O
2は酸素検知、免疫応答、及び細胞傷害のような多くの過程に関与することが報告されており、これもまた、インビボでの発がんに必須の役割を果たしている。したがって、T細胞の生存を改善し、腫瘍部位でROSをスカベンジングすることにより免疫抑制性腫瘍微小環境を緩和することが重要である。
【0087】
ゲル構築のため、2つのポリペプチドブロックに挟まれた中央のポリエチレングリコール(PEG)ブロックを含む機能性トリブロック共重合体を調製した。これは、ROS応答性E-メチオニン(Me)及びD-1MT(P(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)と指定)を含む(
図2)。トリブロック共重合体を、高分子開始剤としてアミン末端PEG(M
n=2000)を用いてL-メチオニンN-カルボキシ無水物(NCA)とD-1MT NCAとの開環重合(ROP)により合成した。1H NMRによる更なる性質決定は、E-メチオニン及びD-1MTの重合度(polymerization degree:DP)がそれぞれ12.0及び1.3である共重合体が成功裏に得られたことを示した。
【0088】
次いで、P(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)トリブロック共重合体に基づくヒドロゲルの機能特性を、種々の測定により調べた(
図3)。
図3Aに示されるように、動的光散乱は、P(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)トリブロック共重合体が、130±33nmの流体力学的直径を有するミセルに自己集合することができ、水溶液中において比較的低い濃度(0.2mg/mE)で球状形態を呈することを示した。にもかかわらず、高濃度(8.0重量%)の共重合体溶液は温度上昇に際してヒドロゲル中へ移動できる(
図3D、a及びb)。古典的な熱応答ゾル-ゲル相転移はまた、PBS(pH=7.4)中において異なる濃度でも観察された。
図3Bに示すように、転移温度は、ポリマー濃度が4.0重量%から10.0重量%に増加するにつれて30℃から12℃へと規則的に低下し、凍結乾燥後のヒドロゲル(8.0重量%)の多孔質構造がSEM画像から観察された。ゾル-ゲル転移は、両親媒性PEG含有ブロック共重合体の熱駆動ミセル凝集によって生じ得る。レオロジデータは更に、相転移結果と同様の傾向を示した(
図3C)。具体的には、12.0重量%の濃度である試験試料(
図3C、b)は、低濃度の試料(8.0重量%、
図3C、a)と比較して、より速いゲル化速度及びより高い貯蔵弾性率(G’Pa)を示した。当然のことながら、8.0重量%のヒドロゲルのG’は、モデル抗体の封入後にわずかに増加し(IgG、2.0mg/mF)、抗体の負荷がヒドロゲルの機械的特性に明らかな影響を及ぼさなかったことを示している(
図3C、c)。
【0089】
レオロジデータは更に、相転移結果と同様の傾向を示した(
図3C)。具体的には、12.0重量%の濃度である試験試料(
図3C、b)は、低濃度の試料(8.0重量%、
図3C、a)と比較して、より速いゲル化速度及びより高い貯蔵弾性率(G’Pa)を示した。当然のことながら、8.0重量%のヒドロゲルのG’は、モデル抗体の封入後にわずかに増加し(IgG、2.0mg/mF)、抗体の負荷がヒドロゲルの機械的特性に明らかな影響を及ぼさなかったことを示している(
図3C、c)。8.0重量%共重合体溶液は、好適なゾル-ゲル転移温度(およそ22℃)(
図3B)、37℃での理想的な注射可能ゲル化特性(
図3D、d)、及びゲル形成後の良好な安定性(
図3C)を呈したので、この濃度を、インビトロ及びインビボの両方で更なる生物学的評価のために固定した。
【0090】
ヒトの必須アミノ酸であるL-メチオニン(F-Me)は、インビボでの酸化ストレス損傷から一部の細胞小器官を保護するなど、哺乳動物の体内代謝において重要な役割を果たしている。ポリ(L-メチオニン)(PMe)系材料はスルホエーテル基のスルホキシド/スルホンへの酸化を介して所望のH
2O
2応答特性を有するということを実証した。本明細書では、それぞれ
1H NMR及びCDにより特徴付けした共重合体のH
2O
2感受性関連特性を研究した。元のピークi、hと比較して、ピークi’及びITの高磁界移動は、スルホキシド/スルホン基が酸化共重合体中に生成されていることを示した。興味深いことに、CDスペクトル(
図3E)は、酸化共重合体の二次構造が主にランダムコイルに変化し、これが非酸化P(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)及び報告された酸化PMe系ポリマーの両方と比較して明らかな違いを示したということを表した。その上、FTIRスペクトルはまた、H
2O
2によるトリブロック共重合体の酸化の後、スルホキシド/スルホン基の生成を伴う主にβ-シート配座から主にランダムコイル構造への転移も確認した。これらは更なる疎水性及びデキストラルキラル特性を付与したD-1MT成分によって引き起こされ得る。
【0091】
生成されたゲルの分解挙動を、インビトロ及びインビボで調べた。
図3Fによれば、ゲル侵食は、主にトリス-HCl緩衝液(pH7.4)中で形成されたゲルの重量減少を引き起こした。およそ40%の質量損失が3週間で観察された。重要なことに、ヒドロゲルの分解速度は、トリス-HCl(pH=7.4)中のプロテイナーゼK(5.0U/mF)又はH
2O
2(2.0mM)の刺激によって増強することができる。ヒドロゲルは、プロテイナーゼK及びH
2O
2の存在下において、それぞれ8日及び12日で完全に分解した。インビボ分解試験は、この共重合体水溶液(50μL、8.0重量%)がマウスへの皮下注射後数分以内にヒドロゲル中へ迅速に移動できることを示した。以下の研究は、ヒドロゲルがインビボで良好な生分解性を有することを実証した。これは、注射から3週間後に体積の明らかな減少を示し、約5週間で溶解した(
図3G)。
【0092】
更に、分解ゲルに関連した上記溶液集め、HPFCによって分析してインビトロでのD-1MTの放出挙動を評価した。プロテイナーゼKなしではD-1MTのおよそ1.0%のみが8日以内にゲルから放出されたが、D-1MTの累積放出の増強(9.6%)が同期間のプロテイナーゼKの存在で観察された。D-1MTは比較的遅い速度でゲルから放出されたにもかかわらず、キヌレニン産生を阻害する明らかなパターンがヒドロゲルの分解断片で観察された。これは、P(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)の分解断片を含むD-1MTがIDO阻害活性を保持し、遊離D-1MTと比較して、トリブロック共重合体の比較的低い阻害効果がD-1MTの持続放出によって引き起こされ得ることを示した。
【0093】
ROS応答性カーゴ放出プロファイルを評価するために、IgGをモデル抗体としてヒドロゲルに負荷し、H
2O
2の存在の有無によりインビトロで放出挙動を検出した(
図3H)。薬物負荷ヒドロゲルは、最初の4日間はPBS(pH=7.4)中における遅い質量損失で比較的安定な状態を維持したが、3日間でのゲルを全分解する分解速度の明らかな上昇がH
2O
2(10mM)によって誘発された。したがって、IgGのおよそ20%のみがH
2O
2なしで最初の4日間にヒドロゲルから放出された。90%以上のIgGがH
2O
2(10mM)の添加から3日間で系から放出されたものの、H
2O
2がヒドロゲルからの薬物放出を誘発し、加速できるということを示した(
図3I)。その上、このゲルはまた優れたH
2O
2スカベンジング能力も示た。これは1時間で約60%のH
2O
2を除去し、24時間でH
2O
2をほぼ完全に除去した(
図3J)。
【0094】
更に、結果として3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)は、95%以上の細胞が様々な濃度のゲル(8.0重量%)によりインキュベートした後に生存し、この材料が良好な細胞適合性を有することを示した。また、ヒドロゲル周囲の注射部位の周りの宿主皮膚組織のヘマトキシリン-エオジン染色(HE)画像は、ヒドロゲルの分解中又は分解後の明らかな慢性炎症反応を示さなかった(
図3G)。
【0095】
このヒドロゲルの薬物送達デポとしての可能性を評価するために、腫瘍内薬物放出挙動及び抗腫瘍効果を、B16F10腫瘍を有するC57BF6雌マウスで評価した。
図4Aに示すように、遊離aPD-L1(2.0mg/kg)及びaPD-L1負荷ゲルの両方は、腫瘍内注射後最初の8時間で高い腫瘍内蛍光強度を示した。しかしながら、遊離aPD-L1で処理した群の緑色蛍光強度の顕著な減衰が注射後3日目に観察された。処理後7日目には、可視緑色蛍光シグナルはほとんど観察されなかった。対照的に、より強い緑色蛍光強度がaPD-L1負荷ヒドロゲルで処理した群で見出され、緑色蛍光シグナルは処理後7日でなお検出された。これらのデータは、ポリペプチド系ヒドロゲルが腫瘍部位におけるタンパク質カーゴの保持時間を著しく延長できることを証明した。
【0096】
相乗的免疫抗腫瘍効果を更に評価するため、メラノーマを有する雌C57BF6マウスをランダムにグループ分けし、7日目に腫瘍体積がそれぞれ約110mm
3に達した際、PBS(G1)、ブランクP(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)ヒドロゲル(G2)、遊離aPD-L1(2.0mg/kg)及びD-1MT(4.5mg/kg)(G3)、並びにaPD-L1負荷P(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)ヒドロゲル(aPD-L1 2.0mg/kg、D-1MT 4.5mg/kg)(G4)の単回腫瘍内注射で処置した。その後10日間にわたり、腫瘍増殖をB16F10-luc細胞の生物発光シグナルでモニタした(
図4B)。aPD-L1負荷ヒドロゲルで処理したマウス(G4)の腫瘍増殖は、他の3群(G1~G3)よりも明らかに遅延した。しかしながら、ブランクヒドロゲル処理群(G2)はPBS処理群(G1)と比較してわずかな腫瘍阻害効果しか示さず、これはヒドロゲルの遅い分解速度に起因するD-1MTの遅延放出挙動による可能性がある。特に、遊離薬物処理群の腫瘍増殖は処理の最初4日間で著しく阻害されたが、腫瘍増殖速度はその後の6日で徐々に加速された(
図4C及び
図4D)。この結果は、処置3日後に有効薬物用量を満たすことができなかった遊離薬物の体内での急速な拡散及び代謝に起因する可能性がある(
図4A)。更に、体重は様々な処理後に有意な減少を示さなかった(
図4E)。そしてG4のマウス生存率は、観察された31日間以内に他の3つの群と比較して顕著に改善された(
図4F)。
【0097】
治療後の腫瘍部位における免疫細胞の浸潤挙動を調べるため、腫瘍浸潤リンパ球(tumor-infiltrating lymphocyte:TIL)を腫瘍組織から採取し、治療10日後に免疫蛍光法及びフローサイトメトリによって分析した。[25]免疫蛍光画像はPBS処理対照群の腫瘍に限られたT細胞浸潤があることを示した(
図5A)。対照的に、他の3つの処理群は、対照群と比較して高強度のCD8+T細胞を示した。aPD-L1負荷ヒドロゲルで処理した腫瘍(G4)は明らかにCD8+T細胞が浸潤していた。更に、aPD-L1負荷ヒドロゲルで処理した腫瘍(G4)もまた、他の3つの群と比較して、最も高い免疫細胞比を示した(
図5B及び
図5D)。aPD-L1負荷ヒドロゲルで処理した腫瘍(G4)中のCD8+T細胞の割合はPBS処理群(G1)の2倍を超え、遊離薬物で処理した群(G3)と比較して、およそ1.6倍であった(
図5C及び
図5E)。特に、遊離ゲル処理群は、遊離薬物処理群と比較してより高いCD8+T細胞浸潤を示した。この違いはIDO阻害及びROSスカベンジングを介した遊離ゲルの腫瘍微小環境調節により生じ得る(
図5F及び
図5G)。総括すると、これらのデータは、P(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)ヒドロゲルを介してaPD-L1及びD-1MTを局所送達する併用療法が、効果的なT細胞媒介免疫応答を引き起こし得ることを示した。
【0098】
ヘマトキシリン/エオジン(HE)染色画像によりまた、aPD-L1負荷ヒドロゲルで処理した群が他の群と比較して腫瘍細胞死の最大範囲を示すことが確認された。一方で、肝臓、肺、腎臓、脾臓、及び心臓を含む主要臓器のHE画像は、いくらかの病理学的変化を示すG3の脾臓画像を除き、無視できる損傷又は炎症を示した。病理学的変化は遊離薬物のピーク用量毒性によって引き起こされ得る。結論として、免疫抑制リガンドPD-L1を適切に阻害し抗腫瘍免疫応答の増強のための免疫抑制酵素IDO活性を抑制する、併用がん免疫療法のために、新しい熱ゲル化ROS応答性ヒドロゲル系の局所的薬物送達プラットフォームを作製した。生体適合性P(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)系ヒドロゲルは、インサイチュでaPD-L1及びD-1MTの送達を維持するだけでなく、腫瘍内ROSレベルを低下させることもできた。インビボ研究は、aPD-L1負荷ヒドロゲルが免疫細胞の浸潤を自然に刺激し、同程度の用量で遊離薬物と比較して抗腫瘍効果を増強することを実証した。この熱ゲル化ポリペプチドヒドロゲルは、簡単な投与方法でがん免疫療法を増強するための局所化薬物送達プラットフォームとして有望である。
【0099】
b)材料及び方法
(1)材料.
アミン-PEG-アミン(Mr=2000)はLaysan Bio社から購入した。デキストロ-1-メチルトリプトファン(D-1MT)はCayman Chemical社から入手した。プロテイナーゼK(組換え型、PCRグレード)、細胞活性酸素種検出アッセイキット(深赤色蛍光)、及びほとんどの溶媒は、Thermo Fisher Scientific社から購入した。3-(4,5-ジメチル-チアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)、GoInVivo(商標)精製抗マウスCD274抗体(B7-H1、aPD-L1)、Cy3ヤギ抗ラットIgG(最小x反応性)抗体、ヒト組換えIFN-γ、Alexa Fluor 488抗マウスCD8a、及びAPC抗マウスCD4を、Biolegend社から入手した。ラットIgG全ELISAキットはAffymetrix社から購入した。蛍光過酸化水素アッセイキット、L-グルタミン酸、アジ化ナトリウムL-メチオニン、及び他の化学物質は、Sigma-Aldrich社から入手した。ヒト子宮頸がん細胞株(HeLa)はAmerican Type Culture Collection(ATCC)から購入した。B16F10-Luc細胞株は、ノースカロライナ大学チャペルヒル校の黄力夫教授の研究室から入手した。雌C57BL6マウス(5~6週齢)はJackson Laboratory(米国)から入手した。全てのマウス研究は、Chapel Hillのノースカロライナ大学及びノースカロライナ州立大学の学内実験動物委員会によって承認された動物プロトコルに基づいて行われた。
【0100】
(2)P(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)ポリペプチドの合成及び性質決定。
D-1MT NCA及びL-メチオニンNCAを、以前の研究(「J.Am.Chem.Soc.」(2014年)、第136巻第5547頁)に従って得た。次いでこれらのNCAを使用し、著者らが報告したいくつかの変化を伴う方法(アドベンチャーヘルスケアメイター。2016、5、1979)を用いてP(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)共重合体を合成した。簡単に述べると、1.0g(0.5mmol)のNH2-PEG-NH2を、トルエン中110℃で3時間共沸蒸留により乾燥させた。次いで、溶媒を蒸発させ、無水DMF(25mL)をボトルに加えて、NH2-PEG-NH2を再溶解した。D-1MT NCA(0.245g、1.0mmol)及びL-メチオニンNCA(1.75g、10mmol)の両方を、NH2-PEG-NH2が完全に溶解した後、N2保護を有する反応系に添加した。反応物をN2雰囲気下において室温で72時間撹拌した。その後、反応混合物を72時間室温で水に対して透析した。凍結乾燥後に最終ポリマーを得て、化合物の構造を1H NMR(Varian Gemini 2300)により決定した。
【0101】
(3)二次構造試験.
0.1mg/mLの濃度であるP(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)及びP(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)オキシドの両方の二次構造を、PBS(pH=7.4)中の異なる温度でCD分光計(Aviv)により分析した。
【0102】
(4)動的光散乱(dynamic light scattering:DLS).
H2O2の有無による材料の自己集合挙動を、水中でゼータサイザー(ナノZS、マルバーン)により調べた。0.25mg/mLのP(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)及びP(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)オキシドをそれぞれ水中に溶解し、3日間撹拌した。次に、試料をフィルタ(0.45μm)で前処理し、ゼータサイザーで測定した。
【0103】
(5)透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscopy:TEM).
濃度0.1mg/mLであるP(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)水溶液をTEM銅グリッド(300メッシュ)上に滴下し、空気中で乾燥した。その後、TEM(JEM-2000FX、日立)を使用して、試料の情報を収集した。
【0104】
(6)ゾル-ゲル相試験.
P(ME-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)を1.0mLのPBSに異なる濃度(4.0重量%、6.0重量%、8.0重量%、及び10.0重量%)で溶解し、氷/水浴中で48時間撹拌した。その後、材料溶液300μLを内径8mmの小型バイアルに移した。次いで、ゾル-ゲル転移挙動を試験管反転法により10分工程ごとに1℃の温度上昇によって性質決定した。試験バイアルの30秒後に流動性が認められなかった場合、温度をゾル-ゲル転移点として記録する。各データ点について3回の試験を行った。
【0105】
(7)ミセル化挙動。
この材料のミセル化挙動を調べるため、濃度0.1mg/mLであるP(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)水溶液を調製し、37℃のマルバーンゼータサイザーナノZS上で定量し、凝集体の形態のTEM画像もまたJEOL 2000FX TEM装置で200kVにて性質決定した。
【0106】
(8)走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy:SEM).
ヒドロゲルの微細構造をFEI Verios 460L電界放射走査型電子顕微鏡(FESEM、20kV)で観察し、この試料(8.0重量%)を液体窒素中における再凍結(repaid freezing)後に凍結乾燥機で乾燥した。
【0107】
(9)レオロジ特性試験.
IgG(1.0mg/mL)の有無による異なる濃度のP(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)の熱依存性レオロジ特性の変動を、ゾル-ゲル転移中のアントンパール製MCR 301レオメータで0.5℃分-1にて記録した。
【0108】
(10)ヒドロゲル分解挙動及びD-1MT放出.
濃度8.0重量%(300μL)であるP(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)ヒドロゲルを、内径1.0cmのヴェイル(vail)中において37℃にて15分間で形成した。0mM、2.0mM、10mMのH2O2を有するトリス-HCl緩衝液又はプロテイナーゼK(5U/mL)を、それぞれ分解培地として用いた(pH=7.4)。全ての試料を穏やかに振盪しながら37℃でインキュベートした。培地を取り出して4℃に保ち、全ての試料のゲル残存量を設定した時間間隔で記録した後、新しい培地を加えた。更に、ゲル浸出溶液中の放出されたD-1MTの構造をHPLC-MSで確認し、放出速度を移動相として酢酸アンモニウム緩衝液/アセトニトリル(92:8)を用いたHPLCで分析した。D-1MT含有量を280nmの励起波長で決定した。
【0109】
(11)H2O2還元速度試験.
ヒドロゲルを300μLのP(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)溶液(8.0重量%)を用いてヴェイル中で形成し、次いで2mLのH2O2溶液(10mM)をヴェイルに加え、37℃でインキュベートし、遊離H2O2溶液(10mM)を対照としてインキュベートした。異なる間隔で10μLの試料を移し、-20℃に保ち、対応する量の新鮮なPBSをシステムに加えた。全試料を蛍光過酸化水素アッセイキットで検出し、各データ点について試験を3回実施した。
【0110】
(12)インビトロでのIgG放出試験.
0.3mgの免疫グロブリンG抗体(IgG、1.0mg/mL)をモデル薬物として使用し、各バイアルの300μL共重合体溶液(8.0重量%)に加えた。試料を37℃のオービタルシェーカでインキュベートし、異なるH2O2濃度である3.0mLのPBS(pH=7.4)を薬物放出培地として使用した。所望の間隔で、試料の全ての培地を取り出し、更なる分析のために-20℃で保存し、次いで、別の3.0mLの新鮮な培地をバイアルに加えた。IgG放出量をラットIgG ELISAにより測定した。吸光度をUV-Vis分光光度計により450nmで検出し、標準曲線として希釈した遊離抗体を用いた。
【0111】
(13)IDO細胞活性試験.
IDO酵素阻害アッセイを、修正の少ない以前の方法(「ACS Nano」(2016年)第10巻第8956頁)に従って検討した。簡単に述べると、5x104細胞/ウェル(12ウェルプレート)の密度で、100μMのL-トリプトファンを含有する2.0mLのDMEM中にHeLa細胞を播種した。次いで、遊離するD-1MT及びP(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)を、指定された濃度で翌日にウェルへ加えた。その後、最終濃度0.1μg/mLであるIFN-γを各ウェルに添加して、IDO発現を刺激した。72時間のインキュベーション後、200μLの上清を移動し、新しい96ウェルプレートに堆積させ、タンパク質沈殿のため10μLの30%TCAを各ウェルに加えた。生成したキヌレニンを、移動相として酢酸アンモニウム緩衝液/アセトニトリル(92:8)を用いて360nmに固定した励起波長でHPLCにより分析した。実験は3回繰り返した。
【0112】
(14)インビトロでの細胞傷害性評価.
B16F10及びHeLa細胞株の両方を使用して、異なる濃度でヒドロゲルの相対的細胞傷害性を評価した。簡単に述べると、1x104個の細胞を、DMEM(1mL)中で一晩インキュベートしながら、24ウェルプレート中の各ウェルに播種した。異なる体積のP(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)溶液(8.0重量%)をトランスウェル上に滴下し、10分間37℃でインキュベートした。その後、ヒドロゲル負荷トランスウェルを細胞播種プレートに移動し、更に48時間共インキュベートした。次いでトランスウェルを取り出し、細胞生存性をMTTアッセイにより評価した。各データ点を3回測定した。
【0113】
(15)インビボにおける分解及び生体適合性試験.
PBS中8.0重量%の濃度である50μLのP(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)溶液を、C57マウスの右側腹部に注射した。所定の時点(30分、3週間、及び5週間)で、マウスを屠殺し、ゲル状態を記録し、ヒドロゲルに付着した皮膚を収集し、1倍PBSと共に4.0%(w/v)パラホルムアルデヒド中にて4℃で保存した。次いで組織のHE染色切片を調製し、顕微鏡で観察した。
【0114】
(16)インビボ腫瘍モデル.
この研究において、全てのマウス研究は、Chapel Hillのノースカロライナ大学及びノースカロライナ州立大学の学内実験動物委員会によって承認された動物プロトコルに基づいて行われた。簡単に述べると、50μLのPBS中1.5×106のB16F10細胞懸濁液を、C57B6雌マウスの右側腹部に移植した。腫瘍体積が約110mm3に達した場合、以下の実験を詳細に実施した。
【0115】
(17)腫瘍内ROS強度試験.
20μLのPBS又はP(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)溶液(8.0重量%、PBS)を、穏やかに腫瘍へ注入した。48時間後、マウスを屠殺し、腫瘍組織を収集し、更なる試験のため氷上で保存した。次いで腫瘍内ROS強度を細胞活性酸素種検出アッセイキット(深赤色蛍光)により決定し、続いて市販のプロトコルに従った。
【0116】
(18)腫瘍内薬物放出試験.
20μLのPBS、又はaPD-L1を含むP(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)溶液(8.0重量%、PBS)(2.0mg/mL)を、メラノーマ腫瘍に注入した。その後腫瘍を採取し、それぞれ異なる間隔で保存した。その後、腫瘍凍結切片を、DAPI及びCy3標識二次抗体によって、BSA(3.0%)でブロッキングした後に4℃で一晩染色した。蛍光画像はCLSM(Ziss 710)を用いて収集した。
【0117】
(19)インビボ抗腫瘍評価.
マウスを加重後、ランダムに4群へ分けた。異なる製剤(20μL)を慎重に腫瘍へ注入し、異なる実験を以下のように実施した:PBS(G1)、注射可能P(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)ヒドロゲル(G2)、遊離D-1MT及びaPD-L1(G3)、並びにaPD-L1負荷P(Me-D-1MT)-PEG-P(Me-D-1MT)ヒドロゲル(G4)。腫瘍の大きさ及びマウスの体重を、処置後2日ごとにモニタした。腫瘍体積は、a及びbがそれぞれ腫瘍の長さ及び幅を表す式
で算出した。処置後、腫瘍及び主要臓器(肝臓、心臓、肺、脾臓、腎臓等)の病理組織学を分析した。
【0118】
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