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特許7471005トリアリールアミン誘導体及びその有機電界発光素子
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  • 特許-トリアリールアミン誘導体及びその有機電界発光素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】トリアリールアミン誘導体及びその有機電界発光素子
(51)【国際特許分類】
   C07D 209/82 20060101AFI20240412BHJP
   C07D 209/88 20060101ALI20240412BHJP
   C07D 405/12 20060101ALI20240412BHJP
   C07D 413/12 20060101ALI20240412BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240412BHJP
   H10K 50/15 20230101ALI20240412BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
C07D209/82 CSP
C07D209/88
C07D405/12
C07D413/12
H05B33/14 A
H05B33/22 D
H05B33/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022094426
(22)【出願日】2022-06-10
(65)【公開番号】P2022189817
(43)【公開日】2022-12-22
【審査請求日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】202110654004.1
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520150360
【氏名又は名称】長春海譜潤斯科技股フン有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】劉輝
(72)【発明者】
【氏名】苗玉鶴
(72)【発明者】
【氏名】劉喜慶
(72)【発明者】
【氏名】董秀芹
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/035296(WO,A2)
【文献】国際公開第2009/038413(WO,A2)
【文献】特表2017-515304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
H10K
H05B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iで示される構造を有し、
【化1】
式I中、前記Xは単結合又はC(R)から選ばれ、前記R、Rは独立して水素、重水素、置換又は未置換のC1~C12のアルキル基、置換又は未置換のC3~C12のシクロアルキル基、置換又は未置換のC6~C30のアリール基、置換又は未置換のC2~C30のヘテロアリール基から選ばれるいずれか1種であるか、或いはR、Rの間を接続して置換又は未置換の環を形成し、
前記Ar、Arは互いに同一又は異なり、独立して置換又は未置換のC6~C30のアリール基、置換又は未置換のC2~C30のヘテロアリール基から選ばれるいずれか1種であり、
前記Ar、Arは互いに同一又は異なり、独立して置換又は未置換のC6~C30のアリール基又は下記の基から選ばれるいずれか1種であり、
【化2】
ただし、前記YaはO又はSから選ばれ、前記Ybは単結合又はC(R)から選ばれ、
前記YcはO、S又はN(R)から選ばれるいずれか1種であり、前記YdはO、S又はN(R)から選ばれ、
前記R、Rは独立して水素、重水素、置換又は未置換のC1~C12のアルキル基、置換又は未置換のC3~C12のシクロアルキル基、置換又は未置換のC6~C30のアリール基、置換又は未置換のC2~C30のヘテロアリール基から選ばれるいずれか1種であるか、或いはR、Rの間を接続して置換又は未置換の環を形成し、
前記Rは水素、重水素、置換又は未置換のC1~C12のアルキル基、置換又は未置換のC3~C12のシクロアルキル基、置換又は未置換のC6~C30のアリール基、置換又は未置換のC2~C30のヘテロアリール基から選ばれるいずれか1種であり、
前記L~Lは独立して単結合、置換又は未置換のC6~C30のアリーレン基、置換又は未置換のC2~C30のヘテロアリーレン基から選ばれるいずれか1種であり、
前記mは0又は1から選ばれ、前記mは0又は1から選ばれ、且つ前記m、mは同時に0から選ばれず、
前記mが0であるとき、前記Arは置換又は未置換のC6~C30のアリール基から選ばれるいずれか1種であり、上記の「置換又は未置換の」のうちの置換基は、重水素から選ばれ、前記mが1であり、且つmが0であるとき、前記Arは単結合から選ばれ、前記Lは単結合、置換又は未置換のC6~C30のアリーレン基から選ばれるいずれか1種であり、前記m が1であり、且つm が1であるとき、前記Ar は単結合から選ばれ、
前記Rは置換又は未置換のC1~C12のアルキル基、置換又は未置換のC3~C12のシクロアルキル基、置換又は未置換のC6~C30のアリール基から選ばれるいずれか1種であり、上記の「置換又は未置換の」のうちの置換基は、重水素から選ばれ、
前記R、Rは独立して水素、重水素、シアノ基、置換又は未置換のC1~C12のアルキル基、置換又は未置換のC3~C12のシクロアルキル基、置換又は未置換のC6~C30のアリール基、置換又は未置換のC2~C30のヘテロアリール基から選ばれるいずれか1種であり、
前記nは独立して0~4の整数から選ばれ、前記nは独立して0~4の整数から選ばれ、nが1を超えるとき、2つ又は複数のRは互いに同一又は異なり、
が1を超えるとき、2つ又は複数のR互いに同一又は異なるか、或いは隣接する2つのRの間を接続してベンゼン環又はナフタレン環を形成し、
前記Ar及び前記R以外、上記の「置換又は未置換の」のうちの置換基は、重水素、シアノ基、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基、置換又は未置換のC1~C12のアルキル基、置換又は未置換のC3~C12のシクロアルキル基、置換又は未置換のC1~C12のアルコキシ基、置換又は未置換のC6~C30のアリール基、置換又は未置換のC2~C30のヘテロアリール基から選ばれる1種以上であり、複数の置換基で置換された場合、複数の置換基は互いに同一又は異なる、ことを特徴とするトリアリールアミン誘導体。
【請求項2】
前記式Iの化合物は式I-A~I-Cで示される構造から選ばれるいずれか1種である、ことを特徴とする請求項1に記載のトリアリールアミン誘導体。
【化3】
【請求項3】
前記式Iの化合物は式I-1~I-6で示される構造から選ばれるいずれか1種である、ことを特徴とする請求項1に記載のトリアリールアミン誘導体。
【化4】
【請求項4】
前記Ar~Arは互いに同一又は異なり、独立して下記の基から選ばれるいずれか1種であり、
【化5】
前記Raは水素、重水素、置換又は未置換のC1~C12のアルキル基、置換又は未置換のC3~C12のシクロアルキル基、置換又は未置換のC6~C30のアリール基、置換又は未置換のC2~C30のヘテロアリール基から選ばれるいずれか1種であり、
前記aは独立して0~5の整数から選ばれ、前記aは0~7の整数から選ばれ、前記aは独立して0~9の整数から選ばれ、前記aは0~11の整数から選ばれ、前記aは独立して0~3の整数から選ばれ、前記aは独立して0~4の整数から選ばれ、
、a、a、a、a又はaが1を超えるとき、2つ又は複数のRa互いに同一又は異なるか、或いは隣接する2つのRaの間を接続して置換又は未置換の環を形成し、
前記YはO、S、C(RbRc)から選ばれるいずれか1種であり、前記YはO、Sから選ばれるいずれか1種であり、前記YはO、S、N(Re)から選ばれるいずれか1種であり、
前記Rb、Rcは独立して水素、C1~C12のアルキル基、C3~C12のシクロアルキル基、C6~C30のアリール基、C2~C30のヘテロアリール基から選ばれるいずれか1種であるか、或いはRb、Rcの間を接続して置換又は未置換の環を形成し、前記Reは水素、C1~C12のアルキル基、C3~C12のシクロアルキル基、C6~C30のアリール基、C2~C30のヘテロアリール基から選ばれるいずれか1種であり、
前記Laは単結合、置換又は未置換のC6~C18のアリーレン基から選ばれるいずれか1種である、ことを特徴とする請求項1に記載のトリアリールアミン誘導体。
【請求項5】
前記Ar~Arは互いに同一又は異なり、独立して下記の基から選ばれるいずれか1種である、ことを特徴とする請求項1に記載のトリアリールアミン誘導体。
【化6】
【請求項6】
前記L~Lは独立して単結合又は下記の基から選ばれるいずれか1種である、ことを特徴とする請求項1に記載のトリアリールアミン誘導体。
【化7】
【請求項7】
前記式Iの化合物は下記の構造から選ばれるいずれか1種である、ことを特徴とする請求項1に記載のトリアリールアミン誘導体。
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【請求項8】
陽極と、陰極と、有機層とを含み、前記有機層は前記陽極と陰極の間に位置するか、又は前記陽極及び陰極の1つ以上の電極の外側に位置する有機電界発光素子であって、
前記有機層は請求項1~7のいずれか一項に記載のトリアリールアミン誘導体の少なくとも1種を含む、ことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項9】
前記有機層は正孔輸送層を含み、前記正孔輸送層は請求項1~7のいずれか一項に記載のトリアリールアミン誘導体の少なくとも1種を含む、ことを特徴とする請求項8に記載の有機電界発光素子。
【請求項10】
前記有機層は被覆層を含み、前記被覆層は請求項1~7のいずれか一項に記載のトリアリールアミン誘導体の少なくとも1種を含む、ことを特徴とする請求項8に記載の有機電界発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機電界発光の技術分野に関し、具体的には、トリアリールアミン誘導体及びその有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子(Organic Light-Emitting Diode,OLED)とは、有機半導体材料と発光材料が電界の駆動でのキャリア注入と再結合によって発光を引き起こす現象を指し、電気エネルギーを直接光エネルギーに変換できる。OLEDは、自発光し、視野角が広く、応答速度が速く、温度適応範囲が広く、駆動電圧が低く、消費電力が低く、輝度が高く、製造プロセスが簡単であり、軽量でフレキシブルに表示できるなどの利点により、商業、電子製品、交通、産業、医療、及び軍事分野でますます使用されており、液晶ディスプレイに代わる新型の平面型表示デバイスと考えられており、ファンタジー表示特徴を有する平面表示技術と呼ばれ、近年の新材料及び表示技術の分野における研究開発のホットスポットとなっている。
【0003】
有機電界発光素子の安定性は、素子の構造、有機発光材料、電極材料、プロセス条件など、多くの要因に関係する。科学技術の継続的な進歩につれて、有機電界発光素子の構造は継続的に最適化され、既に簡単な単層素子構造から3層及び多層素子構造に発展し、現在、有機電界発光素子に関わる有機機能層は、正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロッキング層、発光層、電子ブロッキング層、電子輸送層、電子注入層、被覆層などを含む。有機電界発光素子を製造するプロセス条件は、継続的に革新され、改善されている。しかしながら、有機発光材料の発展は現段階でまだ完全ではないため、有機電界発光素子には多くの問題が存在する。
【0004】
正孔輸送材料について、従来使用されている正孔輸送材料は、低いHOMO値と三重項状態準位を有し、発光層内の電荷の不均衡につながり、通常、望ましい発光効率を提供できず、それと同時に、正孔輸送層材料のガラス転移温度が低く、素子の使用寿命が短くなる。したがって、良好な成膜性と熱安定性、高いHOMO値と三重項状態準位、高い正孔輸送速度を有するとともに、電子ブロッキング能力を備える正孔輸送材料を設計することが非常に必要である。
【0005】
現在、有機電界発光材料の研究は既に学界及び産業界から大きな注目を集めており、有機発光素子は既に実用化、製品化に向けて発展しており、全体として、OLEDの将来の方向性は、高効率、高輝度、長寿命、低コストの表示デバイスを発展させることであり、素子の発光効率と使用寿命を向上せるために、正孔輸送材料が高い三重項状態準位、高いガラス転移温度、高い正孔移動度をどのように確保するかが、解決すべき緊急の問題になっている。
【0006】
出願番号が201711089080.2である中国特許には、正孔輸送層材料とする化合物が記載されているが、この構造は、結晶化しやすく、成膜性が悪く、正孔移動度が低いなどの問題があり、有機電界発光素子の発光効率と使用寿命の低下につながるため、良好な成膜性と安定性を有する正孔輸送材料の開発が急務となっている。
【発明の概要】
【0007】
上記の問題を解決するために、本発明はトリアリールアミン誘導体及びその有機電界発光素子を提供し、前記有機電界発光素子は低駆動電圧、高発光効率、長寿命を有する。
【0008】
具体的には、本発明は式Iで示される構造を有するトリアリールアミン誘導体を提供し、
【0009】
【化1】
【0010】
式I中、前記Xは単結合又はC(R)から選ばれ、前記R、Rは独立して水素、重水素、置換又は未置換のC1~C12のアルキル基、置換又は未置換のC3~C12のシクロアルキル基、置換又は未置換のC6~C30のアリール基、置換又は未置換のC2~C30のヘテロアリール基から選ばれるいずれか1種であるか、或いはR、Rの間を接続して置換又は未置換の環を形成し、
前記Ar、Arは互いに同一又は異なり、独立して置換又は未置換のC6~C30のアリール基、置換又は未置換のC2~C30のヘテロアリール基から選ばれるいずれか1種であり、
前記Ar、Arは互いに同一又は異なり、独立して置換又は未置換のC6~C30のアリール基又は下記の基から選ばれるいずれか1種であり、
【0011】
【化2】
【0012】
ただし、前記YaはO又はSから選ばれ、前記Ybは単結合又はC(R)から選ばれ、
前記YcはO、S又はN(R)から選ばれるいずれか1種であり、前記YdはO、S又はN(R)から選ばれ、
前記R、Rは独立して水素、重水素、置換又は未置換のC1~C12のアルキル基、置換又は未置換のC3~C12のシクロアルキル基、置換又は未置換のC6~C30のアリール基、置換又は未置換のC2~C30のヘテロアリール基から選ばれるいずれか1種であるか、或いはR、Rの間を接続して置換又は未置換の環を形成し、
前記Rは水素、重水素、置換又は未置換のC1~C12のアルキル基、置換又は未置換のC3~C12のシクロアルキル基、置換又は未置換のC6~C30のアリール基、置換又は未置換のC2~C30のヘテロアリール基から選ばれるいずれか1種であり、
前記L~Lは独立して単結合、置換又は未置換のC6~C30のアリーレン基、置換又は未置換のC2~C30のヘテロアリーレン基から選ばれるいずれか1種であり、
前記mは0又は1から選ばれ、前記mは0又は1から選ばれ、且つ前記m、mは同時に0から選ばれず、
が0であるとき、前記Arは置換又は未置換のC6~C30のアリール基から選ばれるいずれか1種であり、mが1であるとき、前記Arは単結合から選ばれ、
前記Rは置換又は未置換のC1~C12のアルキル基、置換又は未置換のC3~C12のシクロアルキル基、置換又は未置換のC6~C30のアリール基から選ばれるいずれか1種であり、
前記R、Rは独立して水素、重水素、シアノ基、置換又は未置換のC1~C12のアルキル基、置換又は未置換のC3~C12のシクロアルキル基、置換又は未置換のC6~C30のアリール基、置換又は未置換のC2~C30のヘテロアリール基から選ばれるいずれか1種であり、
前記nは独立して0~4の整数から選ばれ、前記nは独立して0~4の整数から選ばれ、nが1を超えるとき、2つ又は複数のRは互いに同一又は異なり、
が1を超えるとき、2つ又は複数のR互いに同一又は異なるか、或いは隣接する2つのRの間を接続してベンゼン環又はナフタレン環を形成し、
上記の「置換又は未置換の」のうちの置換基は、重水素、シアノ基、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基、置換又は未置換のC1~C12のアルキル基、置換又は未置換のC3~C12のシクロアルキル基、置換又は未置換のC1~C12のアルコキシ基、置換又は未置換のC6~C30のアリール基、置換又は未置換のC2~C30のヘテロアリール基から選ばれる1種以上であり、複数の置換基で置換された場合、複数の置換基は互いに同一又は異なる。
【0013】
本発明は、陽極と、陰極と、有機層とを含み、前記有機層は前記陽極と陰極の間に位置するか、又は前記陽極及び陰極の1つ以上の電極の外側に位置する有機電界発光素子をさらに提供し、前記有機層は本発明に係るトリアリールアミン誘導体の少なくとも1種を含む。
【0014】
有益な効果
本発明に係るトリアリールアミン誘導体は、非共役基を含むことにより、高い三重項状態準位を有するとともに、本発明は適切なHOMO、LUMO準位を備え、一方では、正孔の注入バリアを減らすことにより、有機電界発光素子の駆動電圧を低下させることができ、他方では、励起子が陽極側に逃げるのを効果的に抑制し、励起子を発光層内に制御することで、発光層における励起子の再結合確率を効果的に向上させ、さらに有機電界発光素子の発光効率を向上させることができ、構造にR基を導入した後、材料の三重項状態準位がさらに向上するとともに、HOMO準位も向上し、正孔移動度が向上し、有機電界発光素子の駆動電圧をさらにある程度低下させ、素子の発光効率を向上させることができる。
【0015】
本発明に係るトリアリールアミン誘導体は、空間立体構造を有し、Rの導入は、正孔移動度を向上させるとともに、空間における化合物の立体性を高め、全体構造はより良好な安定性を有し、同時に、このトリアリールアミン誘導体は高いガラス転移温度を有し、フィルム状態での結晶化が容易ではなく、良好な成膜性と熱安定性を有し、有機電界発光素子に使用したときに長寿命を示す。
【0016】
それと同時に、本発明に係るトリアリールアミン誘導体は、高い屈折率を有し、有機電界発光素子の被覆層に使用すると、素子の全反射現象を回避し、素子の光抽出効率を向上させ、さらに素子の発光効率を向上させることができる。
【0017】
以上により、本発明に係るトリアリールアミン誘導体は高い三重項状態準位、高い正孔移動度、高い屈折率を有し、良好な成膜性及び熱安定性を備え、有機電界発光素子に使用すると、効果的に、有機電界発光素子の駆動電圧を低下させ、発光効率を向上させ、素子の使用寿命を延長することができ、本発明に係るトリアリールアミン誘導体は、有機電界発光素子において良好な使用効果及び工業化の見通しを有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の化合物17、115、146、153、354及び比較化合物1で調製されたサンプルフィルムの様子図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例の技術案を参照しながら明確且つ完全に説明するが、説明される実施例は本発明の一部の実施例にすぎず、すべての実施例ではないことは明らかである。本発明を読んだ後、当業者が本発明に加えた同等の形態の修正はいずれも本発明で限定された範囲内に入る。
【0020】
本明細書では、
【化3】
は他の置換基と接続する部分を指す。
【0021】
本発明に係るハロゲン原子の実例はフッ素、塩素、臭素及びヨウ素を含んでもよい。
【0022】
本発明に係るアルキル基とは、アルカン分子から1つの水素原子を除去して形成する炭化水素基を指し、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基であってもよく、好ましくは1~12個の炭素原子を有し、より好ましくは1~8個の炭素原子を有し、特に好ましくは1~6個の炭素原子を有し、実例として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基などを含んでもよいがこれらに限定されない。
【0023】
本発明に係るシクロアルキル基とは、アルカン分子から2つの水素原子を除去して環を形成する炭化水素基を指し、好ましくは3~12個の炭素原子を有し、より好ましくは3~10個の炭素原子を有し、特に好ましくは3~6個の炭素原子を有し、実例として、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基などを含んでもよいがこれらに限定されない。
【0024】
本発明に係るアリール基とは、芳香族炭化水素分子の芳香族核炭素から1つの水素原子を除去した後に残った一価基の総称であり、単環式アリール基、多環式アリール基又は縮合環式アリール基であってもよく、好ましくは6~30個の炭素原子を有し、より好ましくは6~22個の炭素原子を有し、さらに好ましくは6~18個の炭素原子を有し、最も好ましくは6~12個の炭素原子を有し、上記アリール基に関して、単環式アリール基として、フェニル基などであってもよいがこれらに限定されない。上記多環式アリール基として、ビフェニル基、ターフェニル基、クォーターフェニル基などであってもよいがこれらに限定されない。上記縮合環式アリール基として、ナフチル基、アントラセン基、フェナントレン基、ピレン基、フルオレン基、スピロフルオレン基、トリフェニレン基、ペリレン基、フルオランテン基、1,2‐ベンゾフェナントレン基などであってもよいがこれらに限定されない。
【0025】
本発明に係るヘテロアリール基とは、炭素とヘテロ原子からなる芳香族複素環の核炭素から1つの水素原子を除去した後に残った一価基の総称であり、前記ヘテロ原子は、N、O、Sの1つ又は複数であってもよく、単環式ヘテロアリール基、多環式ヘテロアリール基又は縮合環式ヘテロアリール基であってもよく、好ましくは2~30個の炭素原子を有し、より好ましくは2~22個の炭素原子を有し、さらに好ましくは2~20個の炭素原子を有し、最も好ましくは3~12個の炭素原子を有し、実例として、ピリジン基、ピリミジン基、ピラジン基、ピリダジン基、トリアジン基、チオフェン基、ピロール基、フラン基、ピラン基、オキサゾール基、チアゾール基、イミダゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾトリアゾール基、カルバゾール基、ベンゾカルバゾール基、アクリジン基、キサンテン基、チオキサンテン基、フェナジン基、フェノチアジン基、フェノキサジン基、インドール基、キノリン基、イソキノリン基、ベンゾチオフェン基、ベンゾフラン基、ジベンゾフラン基、ジベンゾチオフェン基、キノキサリン基、キナゾリン基、ナフチリジン基、プリン基、o-フェナントロリン基などを含んでもよいがこれらに限定されない。
【0026】
本発明に係るアリーレン基とは、芳香族炭化水素分子の芳香族核炭素から2つの水素原子を除去した後に残った二価基の総称であり、単環式アリーレン基、多環式アリーレン基又は縮合環式アリーレン基であってもよく、好ましくは6~30個の炭素原子を有し、より好ましくは6~22個の炭素原子を有し、さらに好ましくは6~18個の炭素原子を有し、最も好ましくは6~12個の炭素原子を有し、上記アリーレン基に関して、単環式アリーレン基として、フェニレン基などであってもよいがこれらに限定されない。上記多環式アリーレン基として、ビフェニレン基、ターフェニレン基、クォーターフェニレン基などであってもよいがこれらに限定されない。上記縮合環式アリーレン基として、ナフチレン基、アントラセニレン基、フェナントリレン基、ピレニレン基、フルオレニリレン基、スピロフルオレニリレン基、二価トリフェニレン基、ペリレニレン基、フルオランテニレン基、二価1,2‐ベンゾフェナントレン基などであってもよいがこれらに限定されない。
【0027】
本発明に係るヘテロアリーレン基とは、炭素とヘテロ原子からなる芳香族複素環の核炭素から2つの水素原子を除去した後に残った二価基の総称であり、前記ヘテロ原子はN、O、Sの1つ又は複数であってもよく、単環式ヘテロアリーレン基、多環式ヘテロアリーレン基又は縮合環式ヘテロアリーレン基であってもよく、好ましくは2~30個の炭素原子を有し、より好ましくは2~22個の炭素原子を有し、さらに好ましくは2~20個の炭素原子を有し、最も好ましくは3~12個の炭素原子を有し、実例として、ピリジレン基、ピリミジニレン基、ピラジニレン基、ピリダジニレン基、トリアジニレン基、チエニレン基、ピロリレン基、フラニレン基、ピラニレン基、オキサゾリニレン基、チアゾリレン基、イミダゾリレン基、ベンゾオキサゾリニレン基、ベンゾチアゾリレン基、ベンゾイミダゾリレン基、カルバゾリレン基、ベンゾカルバゾリレン基、二価アクリジン基、二価キサンテン基、二価チオキサンテン基、フェナジニレン基、フェノチアジニレン基、フェノキサジニル基、インドリレン基、キノリニレン基、イソキノリニレン基、ベンゾチエニレン基、ベンゾフラニレン基、ジベンゾフラニレン基、ジベンゾチエニレン基、キノキサリニレン基、キナゾリニレン基、ナフチリジニレン基、プリニレン基、二価o-フェナントロリン基などを含んでもよいがこれらに限定されない。本発明に係る「置換」とは、化合物の基における水素原子が他の原子又は基で置換され、且つ置換の位置は限定されないことを指す。
【0028】
本発明に係る「置換又は未置換の」のうちの置換基は、独立して重水素、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子、置換又は未置換のC1~C12のアルキル基、置換又は未置換のC1~C12のアルコキシ基、置換又は未置換のC1~C12のアルキルアミノ基、置換又は未置換のC3~C12のシクロアルキル基、置換又は未置換のC6~C30のアリール基、置換又は未置換のC2~C30のヘテロアリール基、置換又は未置換のC1~C30のシラン基から選ばれるいずれか1種であり、好ましくは重水素、シアノ基、ハロゲン原子、アミノ基、C1~C12のアルキル基、C3~C12のシクロアルキル基、C1~C12のアルコキシ基、C6~C30のアリール基、C2~C30のヘテロアリール基であり、具体的な実例として、重水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、シアノ基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、フェニル基、トルエン基、メシチレン基、五重水素化ベンゼン基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセン基、フェナントレン基、ピレン基、トリフェニレン基、1,2‐ベンゾフェナントレン基、ペリレン基、フルオランテン基、フルオレン基、9,9-ジメチルフルオレン基、9,9-ジフェニルフルオレン基、9-メチル-9-フェニルフルオレン基、スピロフルオレン基、カルバゾール基、9-フェニルカルバゾール基、9,9’-スピロビフルオレン基、インドロカルバゾール基、ピロール基、フラン基、チオフェン基、ベンゾフラン基、ベンゾチオフェン基、ジベンゾフラン基、ジベンゾチオフェン基、ピリジン基、ピリミジン基、ピリダジン基、ピラジン基、トリアジン基、オキサゾール基、チアゾール基、イミダゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾトリアゾール基、ベンゾイミダゾール基、キノリン基、イソキノリン基、キノキサリン基、キナゾリン基、フェノチアジン基、フェノキサジン基、アクリジン基などを含んでもよいがこれらに限定されない。或いは、前記置換基が複数であるとき、複数の置換基は互いに同一又は異なるか、或いは隣接する置換基を接続して環を形成してもよい。
【0029】
本発明に係る「0~Mの整数から選ばれる」とは、前記値は0~Mの整数から選ばれるいずれか1つであり、0、1、2…M-2、M-1、Mを含むことを指す。例えば、本発明に係る「nは0~4の整数から選ばれる」とは、nは0、1、2、3又は4から選ばれることを指す。前記「nは0~4の整数から選ばれる」とは、nは0、1、2、3又は4から選ばれることを指す。前記「aは0~5の整数から選ばれる」とは、aは0、1、2、3、4又は5から選ばれることを指す。前記「aは0~7の整数から選ばれる」とは、aは0、1、2、3、4、5、6又は7から選ばれることを指す。前記「aは0~9の整数から選ばれる」とは、aは0、1、2、3、4、5、6、7、8又は9から選ばれることを指す。前記「aは0~11の整数から選ばれる」とは、aは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11から選ばれることを指す。前記「aは0~3の整数から選ばれる」とは、aは0、1、2又は3から選ばれることを指す。前記「aは0~4の整数から選ばれる」とは、aは0、1、2、3又は4から選ばれることを指す。以下同様である。
【0030】
本発明に係る「接続して環を形成する」とは、2つの基を化学結合によって互いに接続して任意に芳香族化することを指す。以下のように例示される。
【0031】
【化4】
【0032】
本発明において、接続して形成された環は、5員環又は6員環又は縮合環、例えば、フェニル基、ナフチル基、フルオレン基、シクロペンタン基、シクロヘキサンフェニル基、フェナントレン基又はピレン基であってもよいがこれらに限定されない。
【0033】
本発明は、式Iで示される構造を有するトリアリールアミン誘導体を提供し、
【0034】
【化5】
【0035】
式I中、前記Xは単結合又はC(R)から選ばれ、前記R、Rは独立して水素、重水素、置換又は未置換のC1~C12のアルキル基、置換又は未置換のC3~C12のシクロアルキル基、置換又は未置換のC6~C30のアリール基、置換又は未置換のC2~C30のヘテロアリール基から選ばれるいずれか1種であるか、或いはR、Rの間を接続して置換又は未置換の環を形成し、
前記Ar、Arは互いに同一又は異なり、独立して置換又は未置換のC6~C30のアリール基、置換又は未置換のC2~C30のヘテロアリール基から選ばれるいずれか1種であり、
前記Ar、Arは互いに同一又は異なり、独立して置換又は未置換のC6~C30のアリール基又は下記の基から選ばれるいずれか1種であり、
【0036】
【化6】
【0037】
ただし、前記YaはO又はSから選ばれ、前記Ybは単結合又はC(R)から選ばれ、
前記YcはO、S又はN(R)から選ばれるいずれか1種であり、前記YdはO、S又はN(R)から選ばれ、
前記R、Rは独立して水素、重水素、置換又は未置換のC1~C12のアルキル基、置換又は未置換のC3~C12のシクロアルキル基、置換又は未置換のC6~C30のアリール基、置換又は未置換のC2~C30のヘテロアリール基から選ばれるいずれか1種であるか、或いはR、Rの間を接続して置換又は未置換の環を形成し、
前記Rは水素、重水素、置換又は未置換のC1~C12のアルキル基、置換又は未置換のC3~C12のシクロアルキル基、置換又は未置換のC6~C30のアリール基、置換又は未置換のC2~C30のヘテロアリール基から選ばれるいずれか1種であり、
前記L~Lは独立して単結合、置換又は未置換のC6~C30のアリーレン基、置換又は未置換のC2~C30のヘテロアリーレン基から選ばれるいずれか1種であり、
前記mは0又は1から選ばれ、前記mは0又は1から選ばれ、且つ前記m、mは同時に0から選ばれず、
が0であるとき、前記Arは置換又は未置換のC6~C30のアリール基から選ばれるいずれか1種であり、mが1であるとき、前記Arは単結合から選ばれ、
前記Rは置換又は未置換のC1~C12のアルキル基、置換又は未置換のC3~C12のシクロアルキル基、置換又は未置換のC6~C30のアリール基から選ばれるいずれか1種であり、
前記R、Rは独立して水素、重水素、シアノ基、置換又は未置換のC1~C12のアルキル基、置換又は未置換のC3~C12のシクロアルキル基、置換又は未置換のC6~C30のアリール基、置換又は未置換のC2~C30のヘテロアリール基から選ばれるいずれか1種であり、
前記nは独立して0~4の整数から選ばれ、前記nは独立して0~4の整数から選ばれ、nが1を超えるとき、2つ又は複数のRは互いに同一又は異なり、
が1を超えるとき、2つ又は複数のR互いに同一又は異なるか、或いは隣接する2つのRの間を接続してベンゼン環又はナフタレン環を形成し、
好ましくは、上記の「置換又は未置換の」のうちの置換基は、重水素、シアノ基、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基、置換又は未置換のC1~C12のアルキル基、置換又は未置換のC3~C12のシクロアルキル基、置換又は未置換のC1~C12のアルコキシ基、置換又は未置換のC6~C30のアリール基、置換又は未置換のC2~C30のヘテロアリール基から選ばれる1種以上であり、複数の置換基で置換された場合、複数の置換基は互いに同一又は異なる。
【0038】
好ましくは、前記式Iの化合物は式I-A~I-Cで示される構造から選ばれるいずれか1種である。
【0039】
【化7】
【0040】
好ましくは、前記式Iの化合物は式I-1~I-6で示される構造から選ばれるいずれか1種である。
【0041】
【化8】
【0042】
好ましくは、前記式I-Aは式I-1又はI-4で示される構造から選ばれるいずれか1種である。
【0043】
好ましくは、前記式I-Bは式I-2又はI-5で示される構造から選ばれるいずれか1種である。
【0044】
好ましくは、前記式I-Cは式I-3又はI-6で示される構造から選ばれるいずれか1種である。
【0045】
好ましくは、前記Ar~Arは互いに同一又は異なり、独立して置換又は未置換のフェニル基、置換又は未置換のナフチル基、置換又は未置換のアントラセン基、置換又は未置換のフェナントレン基、置換又は未置換のトリフェニレン基、置換又は未置換のピレン基、置換又は未置換の1,2‐ベンゾフェナントレン基、置換又は未置換のフルオランテン基、置換又は未置換のフルオレン基、置換又は未置換のフラン基、置換又は未置換のチオフェン基、置換又は未置換のベンゾフラン基、置換又は未置換のベンゾチオフェン基、置換又は未置換のジベンゾフラン基、置換又は未置換のジベンゾチオフェン基、置換又は未置換のアクリジン基、置換又は未置換のフェナジン基、置換又は未置換のキサンテン基、置換又は未置換のチオキサンテン基、置換又は未置換のフェノチアジン基、置換又は未置換のフェノキサジン基、置換又は未置換のオキサゾール基、置換又は未置換のチアゾール基、置換又は未置換のイミダゾール基、置換又は未置換のベンゾオキサゾール基、置換又は未置換のベンゾチアゾール基、置換又は未置換のベンゾイミダゾール基から選ばれるいずれか1種である。
【0046】
さらに好ましくは、前記Ar~Arは互いに同一又は異なり、独立して下記の基から選ばれるいずれか1種であり、
【0047】
【化9】
【0048】
前記Raは水素、重水素、置換又は未置換のC1~C12のアルキル基、置換又は未置換のC3~C12のシクロアルキル基、置換又は未置換のC6~C30のアリール基、置換又は未置換のC2~C30のヘテロアリール基から選ばれるいずれか1種であり、
前記aは独立して0~5の整数から選ばれ、前記aは0~7の整数から選ばれ、前記aは独立して0~9の整数から選ばれ、前記aは0~11の整数から選ばれ、前記aは独立して0~3の整数から選ばれ、前記aは独立して0~4の整数から選ばれ、
、a、a、a、a又はaが1を超えるとき、2つ又は複数のRa互いに同一又は異なるか、或いは隣接する2つのRaの間を接続して置換又は未置換の環を形成し、
前記YはO、S、C(RbRc)から選ばれるいずれか1種であり、
前記YはO、Sから選ばれるいずれか1種であり、
前記YはO、S、N(Re)から選ばれるいずれか1種であり、
前記Rb、Rcは独立して水素、C1~C12のアルキル基、C3~C12のシクロアルキル基、C6~C30のアリール基、C2~C30のヘテロアリール基から選ばれるいずれか1種であるか、或いはRb、Rcの間を接続して置換又は未置換の環を形成し、前記Reは水素、C1~C12のアルキル基、C3~C12のシクロアルキル基、C6~C30のアリール基、C2~C30のヘテロアリール基から選ばれるいずれか1種であり、
前記Laは単結合、置換又は未置換のC6~C18のアリーレン基から選ばれるいずれか1種である。
【0049】
より好ましくは、前記Ar~Arは独立して下記の基から選ばれるいずれか1種である。
【0050】
【化10】
【0051】
好ましくは、前記L~Lは独立して単結合又は下記の基から選ばれるいずれか1種である。
【0052】
【化11】
【0053】
さらに好ましくは、前記Lは単結合から選ばれる。
【0054】
好ましくは、前記Rはメチル基、エチル基、イソプロピル基、t-ブチル基、フェニル基、ビフェニル基から選ばれるいずれか1種である。
【0055】
最も好ましくは、前記式I化合物は下記の構造から選ばれるいずれか1種である。
【0056】
【化12】
【0057】
【化13】
【0058】
【化14】
【0059】
【化15】
【0060】
【化16】
【0061】
【化17】
【0062】
【化18】
【0063】
【化19】
【0064】
【化20】
【0065】
【化21】
【0066】
【化22】
【0067】
【化23】
【0068】
以上、本発明に係る有機化合物のいくつかの具体的な構造形態を列挙したが、本発明は列挙したこれらの化学構造に限定されるものではなく、化学式Iに示す構造に基づいて、置換基が以上に限定された基であるものはすべて含まれるべきである。
【0069】
本発明は式Iの化合物の合成方法をさらに提供し、具体的な合成経路は次のとおりである。
1、xが単結合であるとき、調製方法は経路1に示すとおりである。
[経路1]
中間体A及び中間体A’の合成
【0070】
【化24】
【0071】
中間体C及び中間体C’の合成
【0072】
【化25】
【0073】
中間体Aと中間体C、中間体A’と中間体C’、中間体A’と中間体Cと中間体C’は、Buchwald-Hartwigアリールアミノ化反応によって本発明の式Iの化合物を合成する。
【0074】
2、XがC(R)であるとき、調製方法は経路2に示すとおりである。
[経路2]
i)中間体A、中間体A’、中間体A’’の合成
【0075】
【化26】
【0076】
ii)中間体C及び中間体C’の合成
【0077】
【化27】
【0078】
中間体Aと中間体C、中間体A’と中間体C’、中間体A’’と中間体Cと中間体C’は、Buchwald-Hartwigアリールアミノ化反応によって本発明の式Iの化合物を合成する。
【0079】
X、Ar、Ar~Ar、L~L、m、m、R、R~R、n、nの限定は上記限定と同一であり、Xa~Xdは独立してH、I、Br、Clから選ばれるいずれか1種である。
【0080】
本発明は、陽極と、陰極と、有機層とを含み、前記有機層は前記陽極と陰極の間に位置するか、又は前記陽極及び陰極の1つ以上の電極の外側に位置する有機電界発光素子をさらに提供し、前記有機層は本発明に係るトリアリールアミン誘導体の少なくとも1種を含む。
【0081】
好ましくは、本発明に係る有機電界発光素子は1つ以上の有機層を含んでもよく、前記有機層は、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、正孔ブロッキング層、電子ブロッキング層及び被覆層などを含んでもよく、具体的には、前記した前記陽極と陰極の間に位置する有機層は、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、正孔ブロッキング層、電子ブロッキング層などを含んでもよく、前記陽極及び陰極の1つ以上の電極の外側に位置する有機層は被覆層などを含んでもよい。前記有機層は単層構造により形成されてもよく、上記の有機層を積層した多層構造により形成されてもよく、また、前記各有機層は一層又は多層構造を含んでもよく、例えば、前記正孔輸送層は第1の正孔輸送層と第2の正孔輸送層とを含む。ただし、有機電界発光素子の構造はこれらに限定されず、より少ない又はより多い有機層を含んでもよい。
【0082】
好ましくは、本発明に係る正孔輸送層は単一の化合物からなる単層構造、2種以上の化合物からなる単層構造、2種以上の化合物からなる多層構造から選ばれるいずれか1種であり、そのうち、前記正孔輸送層に本発明に係るトリアリールアミン誘導体を少なくとも1種含む。
【0083】
より好ましくは、前記正孔輸送層は第1の正孔輸送層と第2の正孔輸送層とを含み、前記第2の正孔輸送層は本発明に係るトリアリールアミン誘導体を少なくとも1種含む。
【0084】
さらに好ましくは、第1の正孔輸送層は陽極の上側に位置し、第2の正孔輸送層は第1の正孔輸送層の上側に位置し、陰極は第2の正孔輸送層の上側に位置する。
【0085】
好ましくは、本発明に係る被覆層は単一の化合物からなる単層構造、2種又は2種以上の化合物からなる単層構造、2種又は2種以上の化合物からなる多層構造から選ばれるいずれか1方であり、そのうち、前記被覆層に本発明に係るトリアリールアミン誘導体を少なくとも1種含むか、或いは当業者に知られている従来の被覆層材料を含む。
【0086】
好ましくは、本発明に係る有機電界発光素子は下記の構造を有するがこれらに限定されない。
(1)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(2)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(3)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極/被覆層
(4)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔ブロッキング層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(5)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/電子ブロッキング層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(6)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/電子ブロッキング層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極/被覆層
(7)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/電子ブロッキング層/発光層/正孔ブロッキング層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(8)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔ブロッキング層/電子輸送層/電子注入層/陰極/被覆層
(9)陽極/正孔注入層/第1の正孔輸送層/第2の正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(10)陽極/正孔注入層/第1の正孔輸送層/第2の正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極/被覆層
【0087】
本発明の陽極として、好ましくは有機層への正孔注入を促進可能な高仕事関数材料を使用する。陽極材料の具体的な実例は、バナジウム、クロム、銅、亜鉛及び金、又はそれらの合金などの金属、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、及び酸化インジウム亜鉛(IZO)などの金属酸化物、ZnO:Alなどの金属と酸化物の組み合わせ、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ[3,4-(エチレン-1,2-ジオキシ)チオフェン](PEDOT)、ポリピロール及びポリアニリンなどの導電性ポリマーを含んでもよいがこれらに限定されない。
【0088】
本発明の陰極として、好ましくは有機層への電子注入を促進可能な低仕事関数材料を使用する。陰極材料の具体的な実例として、Ag、Mg、Cu、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Mo、Ti、又はそれらの合金などの金属、LiF/Al又はLiO/Alなどの多層構造材料を含んでもよいがこれらに限定されない。
【0089】
本発明の正孔注入層として、正孔を受け入れる優れた能力を有する材料が好ましい。具体的な実例として、金属ポルフィリン、オリゴチオフェン、アリールアミンベースの有機材料、ヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレンベースの有機材料、キナクリドンベースの有機材料、ペリレンベースの有機材料、アントラキノン、及びポリアニリンベースとポリチオフェンベースの導電性ポリマーなどを含んでもよいがこれらに限定されない。
【0090】
本発明に係る正孔輸送層として、通常、高正孔移動度を有する材料が好ましく、本発明に係るトリアリールアミン誘導体に加えて、カルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、ビフェニレンジアミン誘導体、フルオレン誘導体、フタロシアニン系化合物、ヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン系化合物、キナクリドン系化合物、アントラキノン系化合物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリビニルカルバゾールなどの構造から選ばれてもよいがこれらに限定されない。
【0091】
本発明の発光層材料として、ホスト材料(マトリックス材料とも呼ばれる)とドーパント材料(ゲスト材料とも呼ばれる)を含んでもよく、発光層材料は複数のホスト材料と複数のドーパント材料とを含んでもよい。発光層は単一の発光層であってもよく、横方向又は縦方向に積層された複合発光層であってもよい。ドーパント材料の種類の選択について、蛍光材料であってもよく、リン光材料であってもよい。ドーパント材料の使用量の選択について、好ましくは0.1~70質量%、より好ましくは0.1~30質量%、さらに好ましくは1~30質量%、よりさらに好ましくは1~20質量%、特に好ましくは1~10質量%である。
【0092】
本発明で使用可能な蛍光ドーパント材料は、縮合多環式芳族誘導体、スチリルアミン誘導体、縮合環式アミン誘導体、ホウ素含有化合物、ピロール誘導体、インドール誘導体、カルバゾール誘導体などを含んでもよいがこれらに限定されない。本発明で使用可能なリン光ドーパント材料は、重金属錯体、リン光発光性の希土類金属錯体などを含んでもよいがこれらに限定されない。重金属錯体は、例えば、イリジウム錯体、白金錯体、オスミウム錯体などが挙げられ、希土類金属錯体は、例えば、テルビウム錯体、ユーロピウム錯体などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0093】
本発明で使用可能なホスト材料は、縮合芳族環誘導体、複素環含有化合物などを含んでもよい。具体的には、縮合芳族環誘導体はアントラセン誘導体、ピレン誘導体、ナフタレン誘導体、ペンタセン誘導体、フェナントレン誘導体、フルオランテン誘導体などを含み、複素環含有化合物はカルバゾール誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、ピリミジン誘導体などを含むがこれらに限定されない。
【0094】
本発明の電子輸送層材料として、強力な電子吸引能力と低いHOMO及びLUMO準位を有する材料が好ましい。具体的な実例は、キノリン系、イミダゾール系、1,10-フェナントロリン誘導体,トリアゾール系などの材料、例えば、2,9-(ジメチル)-4,7-ビフェニル-1,10-フェナントロリン(BCP)、8-ヒドロキシキノリン-リチウム(LiQ)、1,3,5-トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール-2-イル)ベンゼン(TPBi)、3-(ビフェニル-4-イル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-4-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾール(TAZ)、4,4’-ジ(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン)ビフェニル(BTB)、1,3,5-トリス[(3-ピリジン)-フェニル]ベンゼン(TmPyPB)、2-(ナフタレン-2-イル)-4,7-(ジフェニル)-1,10-フェナントロリン(HNBphen)などを含んでもよいがこれらに限定されない。
【0095】
本発明の電子注入層材料として、隣接する有機輸送材料又はホスト材料などとのバリアの差が小さい材料が好ましい。具体的な実例は、Al、MoOなどの金属酸化物、LiF、CsFなどのアルカリ金属塩、MgFなどのアルカリ土類金属塩を含んでもよいがこれらに限定されない。
【0096】
本発明に係る有機電界発光素子は、上記の構造を順次積層することにより製造可能である。製造方法は、湿式成膜法、乾式成膜法などの公知の方法を使用可能である。湿式成膜法の具体例として、スピンナー法、浸漬法、流延法、インクジェット法などの様々な塗布法が挙げられ、乾式成膜法の具体例として、真空蒸着法、スパッタ法、プラズマ法、イオンプレーティング法などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0097】
本発明に係る有機発光素子はパネルディスプレイ、照明光源、フレキシブルOLED、電子ペーパー、有機太陽電池、有機感光体、有機フィルムトランジスタ、掲示板、信号灯などの分野で広く使用可能である。
【0098】
以下の実施例では、上記の有機電界発光素子の製造について具体的に説明する。ただし、以下の実施例は本明細書を例示するためのものにすぎず、本明細書の範囲は該実施例により限定されない。
【0099】
化合物の調製及び分析について
原料、試薬及び分析する機器の説明について
本発明は、以下の実施例で使用される原料の供給源に特に限定されず、市販の製品又は当業者に周知の調製方法を用いて調製されたものであってもよい。
【0100】
マススペクトルは、英国Waters社のG2-Si 高分解能タンデム四重極飛行時間型質量分析計が用いられ、クロロホルムを溶剤として使用する。
元素分析は、ドイツElementar社のVario EL cube型有機元素分析計が用いられ、サンプル質量を5~10mgにする。
【0101】
[合成実施例1]中間体A-1の合成
【0102】
【化28】
【0103】
a-1(30.79g,85mmol)、b-1(23.83g,80mmol)及び乾燥させたCu(OAc)・HO(1.60g,8.0mmol)、デカン酸(2.75g,16mmol)をCaClで保護した反応フラスコに加え、その後にDBU(14.81g,96mmol)及び無水トルエン(250mL)を反応混合物に順に加えて室温で24時間撹拌した。反応完了後に、反応混合物を水(150mL)で希釈し、酢酸エチル(2×150ml)で抽出した。合わせた酢酸エチルの部分を塩水溶液(150mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、濾過し、濾液を減圧下で濃縮し、へキサン/酢酸エチル(99:1)を溶離剤として、粗生成物をカラムクロマトグラフィーで分離して純化して精製し、中間体A-1(36.86g,収率75%)を得て、HPLC検出固体純度≧99.5%であった。
【0104】
中間体A-1(36.74g,60mmol)、無水トルエン(300mL)、Pd(OAc)(0.67g,3.0mmol)及びDBU(55.53g,360mmol)を連続して反応フラスコに加え、反応混合物を窒素で脱気し、100℃で12時間加熱した。反応完了後に、室温で、水(300mL)で反応混合物を希釈し、反応混合物を水(150mL)で希釈し、酢酸エチル(2×150ml)で抽出した。合わせた酢酸エチルの部分を塩水溶液(150mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、濾過し、濾液を減圧下で濃縮し、へキサン/酢酸エチル(90:10)を溶離剤として、粗生成物をカラムクロマトグラフィーで分離して純化して精製し、中間体A-1(24.22g,収率83%)を得て、HPLC検出固体純度≧99.4%であった。
【0105】
中間体A-1(19.46g,40mmol)、トルエン(200mL),c-1(8.16g,40mmol)、Pd(dba)(0.36g,0.40mmol)、BINAP(0.74g,1.20mmol)及びナトリウムt-ブトキシド(7.68g,80mmol)を反応フラスコに加え、撹拌して溶解し、窒素保護下で7時間還流反応し、反応完了後に、混合物を室温まで冷却し、濾過し、濾液を減圧蒸留で有機溶剤を除去し、得られた固形物をメタノールで再結晶し、中間体A-1(18.0g,収率80%)を得て、HPLC検出固体純度≧99.6%であった。マススペクトルm/z:561.1129(理論値:561.1092)。
【0106】
[合成実施例2]中間体A-2の合成
【0107】
【化29】
【0108】
合成実施例1と同じ方法を用いて、b-1を等モルのb-2に変更し、中間体A-2(18.23g)を合成し、HPLC検出固体純度≧99.7%であった。マススペクトルm/z:561.1135(理論値:561.1092)。
【0109】
[合成実施例3]中間体A-3の合成
【0110】
【化30】
【0111】
中間体A-2(16.88g,30mmol)、テトラヒドロフラン(200mL)、d-1(4.69g,30mmol)を反応フラスコに加え、その後にそれに100mLの2M炭酸カリウム水溶液を加えてから、Pd(PPh(0.46g,0.4mmol)を加え、撹拌して溶解し、窒素保護下で5時間還流反応し、反応完了後に、反応物を室温まで冷却し、減圧回転蒸発でテトラヒドロフランを除去してから、酢酸エチルと水を加えて抽出し、有機層を減圧蒸留で有機溶剤を除去し、得られた固形物を酢酸エチルで再結晶し、最後に中間体A-3(15.86g,収率89%)を得て、HPLC検出固体純度≧99.6%であった。マススペクトルm/z:593.1953(理論値:593.1910)。
【0112】
[合成実施例4]中間体A-4の合成
【0113】
【化31】
【0114】
合成実施例1と同じ方法を用いて、b-1を等モルのb-3に変更し、c-1を等モルのc-2に変更し、中間体A-4(16.99g)を合成し、HPLC検出固体純度≧99.5%であった。マススペクトルm/z:517.1620(理論値:517.1597)。
【0115】
[合成実施例5]中間体A-5の合成
【0116】
【化32】
【0117】
合成実施例1と同じ方法を用いて、b-1を等モルのb-2に変更し、c-1を等モルのc-3に変更し、中間体A-5(20.01g)を合成し、HPLC検出固体純度≧99.2%であった。マススペクトルm/z:595.0741(理論値:595.0702)。
【0118】
[合成実施例6]中間体A-6の合成
【0119】
【化33】
【0120】
合成実施例1と同じ方法を用いて、a-1を等モルのa-2に変更し、b-1を等モルのb-2に変更し、中間体A-6(16.21g)を合成し、HPLC検出固体純度≧99.5%であった。マススペクトルm/z:499.0896(理論値:499.0936)。
【0121】
[合成実施例7]中間体A-7の合成
【0122】
【化34】
【0123】
合成実施例3と同じ方法を用いて、a-1を等モルのa-2に変更し、中間体A-7(14.37g)を合成し、HPLC検出固体純度≧99.7%であった。マススペクトルm/z:531.1709(理論値:531.1754)。
【0124】
[合成実施例8]化合物1の合成
【0125】
【化35】
【0126】
中間体C-1の合成
窒素保護下で、反応フラスコにトルエン溶剤(200mL)、D-1(3.72g,40mmol)、E-1(8.28g,40mmol)、Pd(dba)(0.36g,0.40mmol)、BINAP(0.74g,1.20mmol)及びナトリウムt-ブトキシド(7.68g,80mmol)を順に加え、撹拌して溶解し、窒素保護下で7時間還流反応し、反応完了後に、混合物を室温まで冷却し、セライトで濾過して濾液を得て、濾液を減圧蒸留で有機溶剤を除去し、得られた固形物をメタノールで再結晶し、最後に中間体C-1(7.19g,収率82%)を得て、HPLC検出固体純度≧99.6%であった。
【0127】
化合物1の合成
窒素保護下で、反応フラスコにトルエン溶剤(250mL)、中間体C-1(6.57g,30mmol)、中間体A-1(16.87g,30mmol)、Pd(dba)(0.27g,0.30mmol)、BINAP(0.56g,0.90mmol)及びナトリウムt-ブトキシド(5.76g,60mmol)を順に加え、撹拌して溶解し、窒素保護下で8時間還流反応し、反応停止後に、混合物を室温まで冷却し、セライトで濾過して濾液を得て、濾液を濃縮し、得られた固形物を酢酸エチルで再結晶し、最後に化合物1(16.40g,収率78%)を得て、HPLC検出固体純度≧99.6%であった。
【0128】
マススペクトルm/z:700.2855(理論値:700.2878)。理論元素含有量(%)C5336:C,90.83;H,5.18;N,4.00。実測元素含有量(%):C,90.78;H,5.12;N,4.04。
【0129】
[合成実施例9]化合物3の合成
【0130】
【化36】
【0131】
合成実施例8と同じ方法を用いて、D-1を等モルのD-2に変更し、E-1を等モルのE-2に変更し、化合物3(18.79g)を合成し、HPLC検出固体純度≧99.4%であった。マススペクトルm/z:802.3379(理論値:802.3348)。理論元素含有量(%)C6142:C,91.24;H,5.27;N,3.49。実測元素含有量(%):C,91.17;H,5.22;N,3.54。
【0132】
[合成実施例10]化合物17の合成
【0133】
【化37】
【0134】
合成実施例8と同じ方法を用いて、D-1を等モルのD-2に変更し、E-1を等モルのE-2に変更し、A-1を等モルの中間体A-2に変更し、化合物17(18.54g)を合成し、HPLC検出固体純度≧99.7%であった。マススペクトルm/z:802.3386(理論値:802.3348)。理論元素含有量(%)C6142:C,91.24;H,5.27;N,3.49。実測元素含有量(%):C,91.18;H,5.24;N,3.53。
【0135】
[合成実施例11]化合物28の合成
【0136】
【化38】
【0137】
合成実施例8と同じ方法を用いて、D-1を等モルのD-2に変更し、E-1を等モルのE-3に変更し、A-1を等モルの中間体A-2に変更し、化合物28(19.96g)を合成し、HPLC検出固体純度≧99.6%であった。マススペクトルm/z:852.3015(理論値:852.3504)。理論元素含有量(%)C6544:C,91.52;H,5.20;N,3.28。実測元素含有量(%):C,91.46;H,5.24;N,3.35。
【0138】
[合成実施例12]化合物39の合成
【0139】
【化39】
【0140】
合成実施例8と同じ方法を用いて、D-1を等モルのD-2に変更し、E-1を等モルのE-4に変更し、A-1を等モルの中間体A-2に変更し、化合物39(18.36g)を合成し、HPLC検出固体純度≧99.6%。マススペクトルm/z:816.3115(理論値:816.3141)。理論元素含有量(%)C6140O:C,89.68;H,4.94;N,3.43。実測元素含有量(%):C,89.74;H,5.01;N,3.37。
【0141】
[合成実施例13]化合物48の合成
【0142】
【化40】
【0143】
合成実施例8と同じ方法を用いて、D-1を等モルのD-2に変更し、E-1を等モルのE-5に変更し、A-1を等モルの中間体A-2に変更し、化合物48(18.95g)を合成し、HPLC検出固体純度≧99.6%であった。マススペクトルm/z:842.3629(理論値:842.3661)。理論元素含有量(%)C6446:C,91.18;H,5.50;N,3.32。実測元素含有量(%):C,91.25;H,5.54;N,3.28。
【0144】
[合成実施例14]化合物59の合成
【0145】
【化41】
【0146】
合成実施例8と同じ方法を用いて、D-1を等モルのD-2に変更し、E-1を等モルのE-6に変更し、A-1を等モルの中間体A-2に変更し、化合物59(21.74g)を合成し、HPLC検出固体純度≧99.3%。マススペクトルm/z:966.3938(理論値:966.3974)。理論元素含有量(%)C7450:C,91.89;H,5.21;N,2.90。実測元素含有量(%):C,91.95;H,5.17;N,2.94。
【0147】
[合成実施例15]化合物72の合成
【0148】
【化42】
【0149】
合成実施例8と同じ方法を用いて、D-1を等モルのD-2に変更し、E-1を等モルのE-7に変更し、A-1を等モルの中間体A-2に変更し、化合物72(20.07g)を合成し、HPLC検出固体純度≧99.3%であった。マススペクトルm/z:892.3843(理論値:892.3817)。理論元素含有量(%)C6848:C,91.45;H,5.42;N,3.14。実測元素含有量(%):C,91.52;H,5.47;N,3.08。
【0150】
[合成実施例16]化合物78の合成
【0151】
【化43】
【0152】
合成実施例8と同じ方法を用いて、D-1を等モルのD-2に変更し、E-1を等モルのE-8に変更し、A-1を等モルの中間体A-2に変更し、化合物78(18.97g)を合成し、HPLC検出固体純度≧99.5%であった。マススペクトルm/z:843.3216(理論値:843.3250)。理論元素含有量(%)C6241O:C,88.23;H,4.90;N,4.98。実測元素含有量(%):C,88.18;H,4.84;N,5.03。
【0153】
[合成実施例17]化合物90の合成
【0154】
【化44】
【0155】
合成実施例8と同じ方法を用いて、E-1を等モルのE-9に変更し、A-1を等モルの中間体A-2に変更し、化合物90(19.98g)を合成し、HPLC検出固体純度≧99.7%であった。マススペクトルm/z:888.3527(理論値:888.3504)。理論元素含有量(%)C6844:C,91.86;H,4.99;N,3.15。実測元素含有量(%):C,91.93;H,5.05;N,3.12。
【0156】
[合成実施例18]化合物115の合成
【0157】
【化45】
【0158】
合成実施例8と同じ方法を用いて、D-1を等モルのD-3に変更し、E-1を等モルのE-10に変更し、A-1を等モルの中間体A-2に変更し、化合物115(19.85g)を合成し、HPLC検出固体純度≧99.8%であった。マススペクトルm/z:882.3938(理論値:882.3974)。理論元素含有量(%)C6750:C,91.12;H,5.71;N,3.17。実測元素含有量(%):C,91.05;H,5.65;N,3.23。
【0159】
[合成実施例19]化合物141の合成
【0160】
【化46】
【0161】
合成実施例8と同じ方法を用いて、D-1を等モルのD-2に変更し、E-1を等モルのE-11に変更し、中間体A-1を等モルの中間体A-3に変更し、化合物141(19.31g)を合成し、HPLC検出固体純度≧99.5%であった。マススペクトルm/z:858.4019(理論値:858.3991)。理論元素含有量(%)C6638N:C,92.27;H,6.10;N,1.63。実測元素含有量(%):C,92.34;H,6.14;N,1.58。
【0162】
[合成実施例20]化合物153の合成
【0163】
【化47】
【0164】
合成実施例8と同じ方法を用いて、D-1を等モルのD-2に変更し、E-1を等モルのE-10に変更し、中間体A-1を等モルの中間体A-3に変更し、化合物153(20.66g)を合成し、HPLC検出固体純度≧99.6%であった。マススペクトルm/z:918.3946(理論値:918.3974)。理論元素含有量(%)C7050:C,91.47;H,5.48;N,3.05。実測元素含有量(%):C,91.54;H,5.53;N,2.99。
【0165】
[合成実施例21]化合物161の合成
【0166】
【化48】
【0167】
合成実施例8と同じ方法を用いて、E-1をモルのE-12に変更し、中間体A-1を等モルの中間体A-3に変更し、化合物161(22.61g)を合成し、HPLC検出固体純度≧99.4%であった。マススペクトルm/z:966.4011(理論値:966.3974)。理論元素含有量(%)C7450:C,91.89;H,5.21;N,2.90。実測元素含有量(%):C,91.95;H,5.25;N,2.85。
【0168】
[合成実施例22]化合物170の合成
【0169】
【化49】
【0170】
合成実施例8と同じ方法を用いて、D-1を等モルのD-4に変更し、E-1を等モルのE-10に変更し、中間体A-1を等モルの中間体A-3に変更し、化合物170(21.76g)を合成し、HPLC検出固体純度≧99.6%であった。マススペクトルm/z:942.4001(理論値:942.3974)。理論元素含有量(%)C7250:C,91.69;H,5.34;N,2.97。実測元素含有量(%):C,91.75;H,5.40;N,2.94。
【0171】
[合成実施例23]化合物219の合成
【0172】
【化50】
【0173】
合成実施例8と同じ方法を用いて、D-1を等モルのD-2に変更し、E-1を等モルのE-2に変更し、中間体A-1を等モルの中間体A-4に変更し、化合物219(12.20g,収率76%)を合成し、HPLC検出固体純度≧99.7%であった。マススペクトルm/z:802.3309(理論値:802.3348)。理論元素含有量(%)C6142:C,91.24;H,5.27;N,3.49。実測元素含有量(%):C,91.31;H,5.34;N,3.45。
【0174】
[合成実施例24]化合物240の合成
【0175】
【化51】
【0176】
窒素保護下で、反応フラスコにトルエン溶剤(250mL)、中間体C-15(8.46g,50mmol)、中間体A-5(16.04g,25mmol)、Pd(dba)(0.45g,0.50mmol)、BINAP(0.93g,1.5mmol)及びナトリウムt-ブトキシド(9.61g,100mmol)を順に加え、撹拌して溶解し、窒素保護下で8時間還流反応し、反応完了後に、反応停止後に、混合物を室温まで冷却し、セライトで濾過して濾液を得て、濾液を濃縮し、得られた固形物を酢酸エチルで再結晶し、化合物240(14.72g,収率72%)を得て、HPLC検出固体純度≧99.7%であった。マススペクトルm/z:817.3429(理論値:817.3457)。理論元素含有量(%)C6143:C,89.56;H,5.30;N,5.14。実測元素含有量(%):C,89.63;H,5.35;N,5.09。
【0177】
[合成実施例25]化合物301の調製
【0178】
【化52】
【0179】
合成実施例8と同じ方法を用いて、E-1を等モルのE-2に変更し、D-1を等モルのD-2に変更し、中間体A-1を等モルの中間体A-6に変更し、化合物301(17.78g)を合成し、HPLC検出固体純度≧99.8%であった。マススペクトルm/z:740.3215(理論値:740.3191)。理論元素含有量(%)C5640:C,90.78;H,5.44;N,3.78。実測元素含有量(%):C,90.80;H,5.45;N,3.75。
【0180】
[合成実施例26]化合物312の合成
【0181】
【化53】
【0182】
合成実施例8と同じ方法を用いて、E-1を等モルのE-14に変更し、中間体A-1を等モルの中間体A-6に変更し、化合物312(16.85g)を合成し、HPLC検出固体純度≧99.6%であった。マススペクトルm/z:720.3178(理論値:720.3141)。理論元素含有量(%)C5340O:C,88.30;H,5.59;N,3.89。実測元素含有量(%):C,88.38;H,5.65;N,3.83。
【0183】
[合成実施例27]化合物330の合成
【0184】
【化54】
【0185】
合成実施例8と同じ方法を用いて、E-1を等モルのE-13に変更し、中間体A-1を等モルの中間体A-7に変更し、化合物330(15.34g)を合成し、HPLC検出固体純度≧99.8%であった。マススペクトルm/z:664.2911(理論値:664.2878)。理論元素含有量(%)C5036:C,90.33;H,5.46;N,4.21。実測元素含有量(%):C,90.40;H,5.52;N,4.17。
【0186】
[合成実施例28~43]
合成実施例8と同じ方法に従って、下記の化合物14、化合物16、化合物64、化合物103、化合物137、化合物139、化合物146、化合物155、化合物198、化合物235、化合物308、化合物340、化合物354、化合物361、化合物374、化合物386、化合物393、化合物399、化合物408、化合物415を合成し、得られた最終の生成物の構造分析は表1に示すとおりである。
【0187】
【表1】
【0188】
【表2】
【0189】
【表3】
【0190】
[実施例48]ガラス転移温度のテスト
テストサンプル:化合物1、化合物3、化合物14、化合物16、化合物17、化合物28、化合物39、化合物48、化合物59、化合物64、化合物72、化合物78、化合物90、化合物103、化合物115、化合物137、化合物139、化合物141、化合物146、化合物153、化合物155、化合物161、化合物198、化合物170、化合物219、化合物235、化合物240、化合物301、化合物308、化合物312、化合物330、化合物340、化合物354、化合物361、化合物374、化合物386、化合物393、化合物399、化合物408、化合物415及び比較化合物1~2、個別にテストし、各サンプルの質量は5mgであった。
【0191】
テスト機器:DSC 25型示差走査熱量計(米国TA社)、
テスト条件:テスト雰囲気は窒素、窒素の流速は50mL/minであり、昇温速度は10℃/min、温度範囲は50~350℃であった。ガラス転移温度(Tg)のテスト結果を表2に示した。
【0192】
【表4】
【0193】
表1の結果から、本発明に係るトリアリールアミン誘導体は高いガラス転移温度を有し、熱安定性が良好であり、フィルム状態での結晶化が容易ではなく、有機電界発光素子に使用すると、素子の安定性を向上させ、素子の使用寿命を延長することができることが分かった。
【0194】
[実施例49]材料の成膜性のテスト
ITOガラス基板に本発明の化合物17、化合物115、化合物146、化合物153、化合物354及び比較化合物1をそれぞれ蒸着してサンプルを作成し、蒸着厚さは10nmであり、原子間力顕微鏡で本発明の化合物17、化合物115、化合物146、化合物153、化合物354及び比較化合物1のフィルム様子を分析した。各サンプルのフィルム様子は図1に示すとおりであり、得られた表面粗さの値は表3に示すとおりである。
【0195】
【表5】
【0196】
表3の結果から、本発明の化合物は空間立体性を有し、化合物の結晶化が容易ではなく、本発明の化合物はいずれも連続的で均一なフィルムを形成可能であり、比較化合物1と比較して、本発明の化合物の粗さ(RMS)が比較化合物1よりも著しく低く、本発明の化合物は蒸着の方式によって、より均一で安定した平坦なフィルムを得ることができ、よりよい成膜性を有することが分かった。
【0197】
[素子実施例1]
まず、ITOガラス基板を蒸留水に入れて2回洗浄し、超音波で30分間洗浄してから、蒸留水で2回繰り返し洗浄し、超音波で10分間洗浄し、蒸留水で洗浄を終了した後に、イソプロピルアルコール、アセトン、メタノール溶剤を用いて順に超音波で洗浄した後に、120℃までに加熱したホットプレートで乾燥し、乾燥した基板をプラズマ洗浄機に移し、5分間洗浄した後に基板を蒸着機に移した。
【0198】
その後に、洗浄されたITO基板にHT-1(60nm)及びHATCN(5nm)を正孔注入層として蒸着し、該正孔注入層に本発明の化合物1を正孔輸送層として蒸着し、蒸着厚さは80nmであり、該正孔輸送層にH-1をホスト材料として真空蒸着し、D-1をドーパント材料として蒸着し、両者を96:4のドーピング比で発光層を形成し、蒸着厚さは25nmであり、該発光層にBAlqを正孔ブロッキング層として蒸着し、蒸着厚さは10nmであり、該正孔ブロッキング層にET-1及びLiq(ドーピング比は1:1)を電子輸送層として蒸着し、蒸着厚さは30nmであり、該電子輸送層にフッ化リチウムを電子注入層として蒸着し、蒸着厚さは1nmであり、その後、該電子注入層にAlを陰極として蒸着し、蒸着厚さは150nmであり、これにより有機電界発光素子を製造した。
【0199】
【化55】
【0200】
[素子実施例2~40]
素子実施例1における化合物1の代わりに、本発明の化合物3、化合物14、化合物16、化合物17、化合物28、化合物39、化合物48、化合物59、化合物64、化合物72、化合物78、化合物90、化合物103、化合物115、化合物137、化合物139、化合物141、化合物146、化合物153、化合物155、化合物161、化合物198、化合物170、化合物219、化合物235、化合物240、化合物301、化合物308、化合物312、化合物330、化合物340、化合物354、化合物361、化合物374、化合物386、化合物393、化合物399、化合物408、化合物415をそれぞれ正孔輸送層としたことに加えて、素子実施例1と同じ製造方法によって有機電界発光素子を製造した。
【0201】
[比較素子実施例1]
素子実施例1における化合物1の代わりに比較化合物1を正孔輸送層としたこと以外は、素子実施例1と同じ製造方法によって有機電界発光素子を製造した。
【0202】
テストソフトウェア、コンピュータ、米国のKeithley社製のK2400デジタルソースメーター及び米国のPhoto Research社製のPR788スペクトル走査輝度計を連合IVLテストシステムに構成し、有機電界発光素子の駆動電圧及び発光効率をテストした。寿命のテストはMcScience社製のM6000 OLED寿命テストシステムを用いた。テストの環境は大気環境であり、温度は室温であった。本発明の素子実施例における素子1~40、比較実施例1~2で得られた有機電界発光素子の発光特性のテスト結果は下記表4に示すとおりである。
【0203】
【表6】
【0204】
【表7】
【0205】
表4のテスト結果から、比較実施例1と比較して、本発明に係るトリアリールアミン誘導体を有機電界発光素子の正孔輸送層として使用すると、有機電界発光素子の駆動電圧を低下させ、発光効率を著しく向上させ、素子の使用寿命を延長することができることが分かった。特に、本発明に係るRがアリール基であると、有機電界発光素子の性能に対する前記本発明のトリアリールアミン誘導体の改善効果が特に目立った。
【0206】
[素子実施例41]
まず、ITOガラス基板を蒸留水に入れて2回洗浄し、超音波で30分間洗浄してから、蒸留水で2回繰り返し洗浄し、超音波で10分間洗浄し、蒸留水で洗浄を終了した後に、イソプロピルアルコール、アセトン、メタノール溶剤を用いて順に超音波で洗浄した後に、120℃までに加熱したホットプレートで乾燥し、乾燥した基板をプラズマ洗浄機に移し、5分間洗浄した後に基板を蒸着機に移した。
【0207】
その後に、洗浄されたITO基板にHT-1(60nm)及びHATCN(5nm)を正孔注入層として蒸着し、該正孔注入層にNPBを第1の正孔輸送層として蒸着し、蒸着厚さは60nmであり、該正孔輸送層に本発明の化合物1を第2の正孔輸送層として真空蒸着し、蒸着厚さは20nmであり、該第2の正孔輸送層にH-1をホスト材料として真空蒸着し、D-1をドーパント材料として蒸着し、両者を96:4のドーピング比で発光層を形成し、蒸着厚さは25nmであり、該発光層にBAlqを正孔ブロッキング層として蒸着し、蒸着厚さは10nmであり、該正孔ブロッキング層にET-1及びLiq(ドーピング比は1:1)を電子輸送層として蒸着し、蒸着厚さは30nmであり、該電子輸送層にフッ化リチウムを電子注入層として蒸着し、蒸着厚さは1nmであり、その後、該電子注入層にAlを陰極として蒸着し、蒸着厚さは150nmであり、これにより有機電界発光素子を製造した。
【0208】
[素子実施例42~50]
実施例41における化合物1の代わりに、本発明の化合物3、化合物17、化合物28、化合物39、化合物48、化合物90、化合物115、化合物153、化合物161をそれぞれ第2の正孔輸送層としたことに加えて、素子実施例41と同じ製造方法によって、有機電界発光素子を製造した。
【0209】
[素子実施例51~55]
素子実施例41~50におけるNPBの代わりに、本発明の化合物14、化合物59、化合物146、化合物361、化合物399を第1の正孔輸送層としたことに加えて、素子実施例41と同じ製造方法によって、有機電界発光素子を製造した。テスト結果は下記の表5に示した。
【0210】
【表8】
【0211】
表5のテスト結果から、本発明に係るトリアリールアミン誘導体を有機電界発光素子の第2の正孔輸送層として使用する場合、他の正孔輸送層と組み合わせると、有機電界発光素子の性能を向上させることができ、本発明に係るトリアリールアミン誘導体を組み合わせて第1の正孔輸送層及び第2の正孔輸送層に使用すると、有機電界発光素子の駆動電圧をさらに低下させ、発光効率を著しく向上させ、素子の使用寿命を延長することができることが分かった。
【0212】
[素子実施例56]有機電界発光素子56の製造
Agを含む反射層が形成されたITO基板にHT-1(60nm)及びHATCN(5nm)を正孔注入層として蒸着し、該正孔注入層にNPBを正孔輸送層として蒸着し、蒸着厚さは120nmであり、該正孔輸送層にH-2をホスト材料として真空蒸着し、D-2をドーパント材料として蒸着し、両者を95:5のドーピング比で発光層を形成し、蒸着厚さは30nmであり、該発光層にBAlqを正孔ブロッキング層として蒸着し、蒸着厚さは10nmであり、該正孔ブロッキング層にET-1及びLiq(ドーピング比は1:1)を電子輸送層として蒸着し、蒸着厚さは30nmであり、該電子輸送層にフッ化リチウムを電子注入層として蒸着し、蒸着厚さは1nmであり、その後、該電子注入層にMg/Agを陰極として蒸着し、蒸着厚さは15nmであり、該陰極に本発明の化合物1を被覆層として蒸着し、蒸着厚さは60nmであり、これにより有機電界発光素子を製造した。
【0213】
[素子実施例57~60]
素子実施例56における化合物1の代わりに、本発明の化合物39、本発明の化合物78、本発明の化合物115、本発明の化合物153を被覆層としたことに加えて、素子実施例56と同じ調製方法によって有機電界発光素子を製造した。
【0214】
[比較実施例2]
素子実施例56における化合物1の代わりに比較化合物2を被覆層としたことに加えて、素子実施例56と同じ製造方法によって有機電界発光素子を製造した。テスト結果は表6に示すとおりである。
【0215】
【表9】
【0216】
表6のテスト結果から、本発明に係るトリアリールアミン誘導体を有機電界発光素子の被覆層として使用すると、光抽出効率を効果的に向上させ、さらに有機電界発光素子の発光効率を向上させるとともに、空気中の水分及び酸素が素子の内部構造を侵食することを防止し、素子使用寿命を延長することができることが分かった。
【0217】
本発明は個々の実施形態で具体的に説明されているが、本発明の原理から逸脱しない前提で、当業者は本発明に様々な形態又は細部に対する改善を加えることができ、これらの改善も本発明の保護範囲内に入ることを指摘すべきである。
図1