(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-11
(45)【発行日】2024-04-19
(54)【発明の名称】ピーニング装置およびそれを利用するピーニング方法
(51)【国際特許分類】
B23P 17/00 20060101AFI20240412BHJP
【FI】
B23P17/00 A
(21)【出願番号】P 2022138940
(22)【出願日】2022-09-01
【審査請求日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0118486
(32)【優先日】2021-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513244557
【氏名又は名称】ダングック大学校 産学協力団
【氏名又は名称原語表記】Dankook University Industry Academic Cooperation Foundation
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】ジョン スンファン
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1690890(KR,B1)
【文献】国際公開第2009/031517(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/152717(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0143471(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 17/00
B24C 1/10
B22F 3/24
C21D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの湾曲したラウンド部を含み、内部
の一方に第1流体
が収容され、他方に気体相(gas phase)である第2流体が収容される中空が形成されたパイプ部材に圧縮残留応力を印加するピーニング装置であって、
前記中空に供給された前記第1流体に浸るように配置され、前記第1流体に波(wave)を印加する探針部
と、
前記探針部および前記パイプ部材と連結され、前記探針部と前記パイプ部材とを一緒に回転させる動力部とを含み、
前記第1流体と前記第2流体とは互いに異なる音響インピーダンス(acoustic impedance)を有して、前記第1流体と前記第2流体とが接触する反射面で前記波が全反射して定在波として形成され、
形成された前記定在波の圧力アンチノードで生成および成長するキャビティ(cavity)が爆発する際に放出される衝撃波(shockwave)またはマイクロジェット(microjet)によって、前記中空を取り囲む前記パイプ部材の内面に圧縮残留応力が印加され
、
前記第2流体の圧力が一定に維持され、前記探針部と前記パイプ部材とが一緒に回転することにより、前記反射面は前記パイプ部材の内壁に対する相対的な位置が調整され、前記パイプ部材の内面と所定の角度で維持される、ピーニング装置。
【請求項2】
複数の前記圧力アンチノードは、前記パイプ部材の前記内面に沿って所定の間隔で離隔して形成され、
前記キャビティは、
複数の前記圧力アンチノードに沿って臨界体積まで成長した後、爆発する、請求項1に記載のピーニング装置。
【請求項3】
前記パイプ部材の中空と連通して、前記中空に収容された前記第2流体の圧力または供給量が変化するように構成される制御部を含む、請求項1に記載のピーニング装置。
【請求項4】
前記中空の前記第2流体の圧力または供給量が制御されると、前記反射面の位置が前記パイプ部材の延長方向に沿って移動する、請求項3に記載のピーニング装置。
【請求項5】
前記第1流体が収容され、前記パイプ部材を収容するタンク部材を含み、
前記パイプ部材は、前記タンク部材に収容された前記第1流体に浸るように配置される、請求項
1に記載のピーニング装置。
【請求項6】
前記動力部は、
前記探針部と、前記パイプ部材と、前記パイプ部材を収容する前記タンク部材とを一緒に回転させるように構成される、請求項
5に記載のピーニング装置。
【請求項7】
前記反射面は、前記中空に挿入された固体相(solid phase)の板部材または膜部材からなる、請求項1に記載のピーニング装置。
【請求項8】
少なくとも1つの湾曲したラウンド部を含み、内部に第1流体および気体相(gas phase)の第2流体が収容される中空が形成されたパイプ部材に圧縮残留応力を印加するピーニング装置であって、
前記中空に供給された前記第1流体に浸るように配置され、前記第1流体に波(wave)を印加する探針部を含み、
前記第1流体と前記第2流体とは互いに異なる音響インピーダンス(acoustic impedance)を有して、前記第1流体と前記第2流体とが接触する反射面で前記波が全反射して定在波として形成され、
形成された前記定在波の圧力アンチノードで生成および成長するキャビティ(cavity)が爆発する際に放出される衝撃波(shockwave)またはマイクロジェット(microjet)によって、前記中空を取り囲む前記パイプ部材の内面に圧縮残留応力が印加され、
前記パイプ部材の使用中に荷重(loaded in the service)が加えられる方法により、前記パイプ部材に予備-荷重(pre-load)を加えられる予備-荷重印加部(pre-load applying unit)をさらに含む
、ピーニング装置。
【請求項9】
請求項1に記載の前記ピーニング装置を用いて、
前記中空が形成されたパイプ部材に圧縮残留応力を印加するピーニング方法であって、
(a)
前記パイプ部材の内部に形成された
前記中空に、液体相の
前記第1流体と気体相の
前記第2流体とを注入する段階と、
(b)前記パイプ部材の前記中空に注入された前記第1流体に波(wave)を印加し
前記キャビティ(cavity)を形成する段階と、
(c)形成された前記キャビティが爆発する際に、前記パイプ部材の内面に圧縮残留応力を印加させる段階と、
(d)前記波が形成する
前記圧力アンチノード(antinode)の位置を制御する段階とを含む、ピーニング方法。
【請求項10】
前記段階(b)は、
(b1)
前記探針部を、前記中空の端部のうち前記第1流体が収容された一端部に隣接して配置する段階と、
(b2)前記探針部で前記第1流体に前記波を印加する段階と、
(b3)前記第1流体と前記第2流体とが接触する部分に形成された
前記反射面に前記波が全反射することにより定在波として形成され、前記パイプ部材の内面に前記圧力アンチノードを形成する段階と、
(b4)前記圧力アンチノードが形成された部分に前記キャビティを形成する段階とを含む、請求項
9に記載のピーニング方法。
【請求項11】
前記圧力アンチノードは、前記パイプ部材の延張方向に沿って前記内面に互いに離隔して複数形成され、
前記段階(c)は、
(c1)前記キャビティを複数の前記圧力アンチノードの位置で成長させる段階と、
(c2)前記キャビティを臨界体積以上に成長させて爆発させる段階と、
(c3)前記キャビティが爆発する際に発生する衝撃波(shockwave)またはマイクロジェット(microjet)によって、前記パイプ部材の内面に圧縮残留応力を印加する段階とを含む、請求項
9に記載のピーニング方法。
【請求項12】
前記段階(d)は、
(d1)制御部で、前記中空に収容された前記第2流体の圧力または供給量を制御する段階と、
(d2)前記第2流体の圧力または供給量を調整し、前記中空に収容された前記第1流体と前記第2流体との相対的な体積を制御する段階と、
(d3)前記第1流体と前記第2流体とが接触する部分に形成される
前記反射面の位置を制御する段階と、
(d4)前記波が前記反射面に全反射して形成される定在波の
前記圧力アンチノードの位置を制御する段階とを含む、請求項
9に記載のピーニング方法。
【請求項13】
前記段階(d)は、
前記段階(d2)の後および前記段階(d3)の前に、
(d2’)前記制御部で前記第2流体の圧力を一定に維持させ、前記パイプ部材と、前記パイプ部材に前記波を印加する
前記探針部と、タンク部材とを回転して、前記反射面と前記内面との間の角度を一定に維持する段階を含む、請求項
12に記載のピーニング方法。
【請求項14】
前記段階(d2’)は、
(d21’)前記パイプ部材と、前記探針部と、前記パイプ部材を収容する前記タンク部材とに動力部を連結する段階と、
(d22’)前記動力部で、前記パイプ部材と、前記探針部と、前記タンク部材とを回転させる段階とを含む、請求項
13に記載のピーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピーニング装置およびそれを利用するピーニング方法に関するものであり、より具体的に、パイプまたはスプリングなどの内部に形成された中空を取り囲む内面をピーニングして圧縮残留応力を印加し得るピーニング装置およびそれを利用するピーニング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パイプの内部には中空(hollow)が形成される。流体は、前記中空を介していずれか1つの部材から他の1つの部材に伝達され得る。
【0003】
パイプに形成された中空は、パイプそのものの強度を減少させる。すなわち、パイプの断面を考慮すると、その断面積は、形成された中空の断面積の分だけ減少して軽量化が可能である。軽量化とともに繰り返し荷重を受ける中空スプリングの場合、外壁(外面)とともに内壁(内面)にも一定レベル以上の疲労強度を実現せねばならない。そのための方法として、外面および内面処理に関する技術が紹介されている。
【0004】
外面および内面の処理は、パイプの外面および内面に圧縮残留応力を印加して、パイプの疲労強度を増加させるための技術である。よく活用されているショットピーニング(shot peening)は、ショットボール(shot ball)と呼ばれる小さいサイズのスチール素材のボールをパイプの外面および内面に投射して鍛造処理(hammering)する。これにより、ショットピーニングされたパイプの外面および内面に圧縮残留応力が印加され、パイプの疲労強度が増加され得る。
【0005】
特に、パイプに形成された中空の断面が微小である場合、またはパイプが湾曲部などを含む複雑な形状を有する場合、ショットピーニング、レーザーピーニングおよびウォータージェットピーニングのための装置の投入が容易ではない。
【0006】
中空コイルスプリング(hollow coil spring)が一例として含まれ得る。従来のコイルスプリングは、内部に中空のないバー(bar)状の母材を曲げ加工して形成されるのに対し、中空タイプのコイルスプリングは、内部に中空が形成されたパイプ状の母材を曲げ加工して形成される。
【0007】
したがって、中空コイルスプリングは、従来のコイルスプリングのような弾性係数を有することを前提として、中空の体積に対応する母材の質量分だけ軽量化が可能である。それにより、車両、鉄道車両、航空機等の燃費およびエネルギー効率向上のために部材の軽量化が必要な製品には、従来のコイルスプリングよりも中空コイルスプリングがなお有利である。
【0008】
ただ、曲げ加工が行われた後には、中空コイルスプリングの中空内壁にショットピーニング等を行うための装置が投入され難い。
【0009】
そこで、曲線状に延びる部材の内面を処理するための技術が紹介されている。
【0010】
特許文献1は、超音波衝撃処理による冷間加工部の強度向上方法および破壊靭性および疲労強度の高い金属製品を開示する。具体的には、超音波を利用してパイプの内面にピーニング作業を行うための技術が開示されている。
【0011】
ところで、前記先行文献は、作業対象物として直線状の金属管のみを開示している。すなわち、前記先行文献が提案する技術は、曲線状のパイプ、チューブまたはスプリングなどの内壁に適用することが難しい。
【0012】
特許文献2は、超音波ピーニングのためのショット、装置および設備、並びにこれらによって処理された部品(Shot,devices,and installations for ultrasonic peening,and parts treated thereby)を開示している。具体的には、ソノトロード(sonotrode)を利用して部品の内壁をピーニングするための技術が開示されている。
【0013】
ところが、前記先行文献もまた、その対象物をピーニング処理が必要な内壁の深さが浅い部品に限定している。すなわち、前記先行文献が提案する技術も、長さの長い曲線状のパイプ、チューブまたはスプリングなどの内壁に圧縮残留応力を発生させることは難しい。
【0014】
また、前記先行文献は、ソノトロードで発生するショットボールを対象物の内面に衝撃を加えてピーニングが行われるものであり、延長方向の一端部が閉鎖された部材にのみ適用され得る。
【0015】
したがって、前記先行文献は、1つ以上の曲線部分を含むように延びるパイプ、または中空コイルスプリングの内面を処理するために適用することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】韓国公開特許第10-2005-0086683号公報
【文献】米国特許出願公開第2006/0021410号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、前述の問題点を解決し得るピーニング装置およびそれを用いたピーニング方法を提供することを目的とする。
【0018】
まず、中空が形成されたパイプ等が軽量化しながらも内面に十分な疲労強度を有するように製造され得るピーニング装置およびそれを用いたピーニング方法を提供することを一目的とする。
【0019】
また、中空が形成されたパイプ等の内面に圧縮残留応力を印加し得るピーニング装置およびそれを用いたピーニング方法を提供することを一目的とする。
【0020】
また、曲線状パイプまたはスプリング等と、その形状が複雑な部材の内面にも圧縮残留応力を印加し得るピーニング装置およびそれを用いたピーニング方法を提供することを一目的とする。
【0021】
また、中空が形成されたパイプ等の内面において、圧縮残留応力が印加される位置を容易かつ正確に制御し得るピーニング装置およびそれを用いたピーニング方法を提供することを一目的とする。
【0022】
また、中空が形成されたパイプ等の内面に印加される圧縮残留応力の大きさを最大化し得るピーニング装置およびそれを用いたピーニング方法を提供することを一目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の一側面によると、少なくとも1つの湾曲したラウンド部を含み、内部に第1流体および気体相(gas phase)である第2流体が収容される中空が形成されたパイプ部材に圧縮残留応力を印加するピーニング装置であって、前記中空に供給された前記第1流体に浸るように配置され、前記第1流体に波(wave)を印加する探針部を含み、前記第1流体と前記第2流体とは互いに異なる音響インピーダンス(acoustic impedance)を有して、前記第1流体と前記第2流体とが接触する反射面で前記波が全反射して定在波が形成され、形成された前記定在波の圧力アンチノードで生成および成長するキャビティ(cavity)が爆発する際に放出される衝撃波(shockwave)またはマイクロジェット(microjet)により、前記中空を取り囲む前記パイプ部材の内面に圧縮残留応力が印加される、ピーニング装置が提供される。
【0024】
また、複数の前記圧力アンチノードは、前記パイプ部材の前記内面に沿って所定間隔で離隔して形成され、前記キャビティは、複数の前記圧力アンチノードから臨界体積まで成長した後に爆発する、ピーニング装置が提供され得る。
【0025】
また、前記パイプ部材の中空と連通して、前記中空に収容された前記第2流体の圧力または供給量が変化するように構成される制御部を含む、ピーニング装置が提供され得る。
【0026】
また、前記中空の前記第2流体の圧力または供給量が制御されると、前記反射面の位置は前記パイプ部材に沿って移動される、ピーニング装置が提供され得る。
【0027】
また、前記探針部および前記パイプ部材と連結され、前記探針部と前記パイプ部材とを一緒に回転させる動力部を含む、ピーニング装置が提供され得る。
【0028】
また、前記第2流体の圧力が一定に維持され、前記探針部と前記パイプ部材とが一緒に回転することにより、前記反射面はその位置が調整され、前記パイプ部材の内面と所定の角度で維持される、ピーニング装置が提供され得る。
【0029】
また、前記第1流体が収容され、前記パイプ部材を収容するタンク部材を含み、前記パイプ部材は、前記タンク部材に収容された前記第1流体に浸るように配置される、ピーニング装置が提供され得る。
【0030】
また、前記動力部は、前記探針部、前記パイプ部材、および前記パイプ部材を収容した前記タンク部材を一緒に回転させるように構成される、ピーニング装置が提供され得る。
【0031】
また、前記反射面は、前記中空に挿入された固体相(solid phase)の板部材または膜部材からなる、ピーニング装置が提供され得る。
【0032】
また、本発明の一側面によると、少なくとも1つの湾曲したラウンド部を含み、内部に第1流体および気体相である第2流体が収容される中空が形成されたパイプ部材に圧縮残留応力を印加するピーニング方法であって、(a)パイプ部材の内部に形成された中空に第1流体と第2流体とが注入される段階と、(b)前記パイプ部材の前記中空に注入された前記第1流体に定在波(standing wave)が形成され、定在波の圧力アンチノードでキャビティ(cavity)が形成される段階と、(c)形成された前記キャビティが爆発する際に前記パイプ部材の内面に圧縮残留応力が印加される段階と、(d)定在波の圧力アンチノード(antinode)の位置が制御される段階とを含む、ピーニング方法が提供され得る。
【0033】
さらに、前記段階(a)は、(a1)流体供給部が、前記パイプ部材との流体疎通を可能に連結される段階と、(a2)前記流体供給部が、前記第1流体を前記パイプ部材の一端部を介して前記中空に供給する段階と、(a3)前記流体供給部が、前記第2流体を前記パイプ部材の延長方向の他端部を介して前記中空に供給する段階と、(a4)前記第1流体と前記第2流体とが接触する部分に形成される反射面が形成される段階とを含む、ピーニング方法が提供され得る。
【0034】
また、前記段階(b)は、(b1)探針部が、前記中空の端部のうち前記第1流体が収容された一端部に隣接して配置される段階と、(b2)前記探針部が、前記第1流体に前記波を印加する段階と、(b3)前記第1流体と前記第2流体とが接触する部分に形成された反射面に前記波が全反射することにより定在波として形成され、前記パイプ部材の内面に定在波が形成される段階と、(b4)前記定在波の圧力アンチノードで前記キャビティが形成される段階とを含む、ピーニング方法が提供され得る。
【0035】
また、前記定在波の圧力アンチノードは、前記パイプ部材の延張方向に沿って前記内面に互いに離隔して複数形成され、前記段階(c)は、(c1)前記キャビティが複数の前記圧力アンチノードの位置で成長する段階と、(c2)前記キャビティが臨界体積以上に成長して爆発する段階と、(c3)前記キャビティが爆発する際に発生する衝撃波またはマイクロジェットによって、前記パイプ部材の内面に圧縮残留応力が印加される段階とを含む、ピーニング方法が提供され得る。
【0036】
また、前記段階(d)は、(d1)制御部により、前記中空に収容された前記第2流体の圧力または供給量が制御され、前記中空に収容された前記第1流体と前記第2流体との相対的な体積が制御される段階と、(d3)前記第1流体と前記第2流体とが接触する部分に形成される反射面の位置が制御される段階と、(d4)前記波が前記反射面に全反射して形成される定在波の圧力アンチノードの位置が制御される段階とを含む、ピーニング方法が提供され得る。
【0037】
また、前記段階(d)は、前記段階(d2)の後、および前記段階(d3)の前に、(d2’)前記制御部が前記第2流体の圧力を一定に維持させ、前記パイプ部材、前記パイプ部材に前記波を印加する探針部とタンク部材とが回転して、前記反射面と前記内面との間の角度が一定に維持される段階とを含む、ピーニング方法が提供され得る。
【0038】
また、前記段階(d2’)は、(d21’)前記パイプ部材、前記探針部および前記パイプ部材を収容する前記タンク部材に動力部が連結される段階と、(d22’)前記動力部が、前記パイプ部材、前記探針部および前記タンク部材を回転させる段階とを含む、ピーニング方法が提供され得る。
【発明の効果】
【0039】
本発明の実施例によると、以下のような効果を達成し得る。
【0040】
まず、本発明の実施例によるピーニング装置およびそれを用いたピーニング方法は、内部に中空が形成されたパイプまたはスプリング等の内面、すなわち中空を取り囲む内面に圧縮残留応力を印加し得る。したがって、中空を形成してパイプまたはスプリング等の内面にも十分な疲労強度を有するように形成され得る。
【0041】
さらに、中空が形成されることにより、パイプまたはスプリング等は、断面積および体積の減少分だけの重量が減少され得る。したがって、パイプまたはスプリング等の軽量化も達成され得る。
【0042】
結果的に、中空パイプまたはスプリング等は、内面にも十分な疲労強度を有するように形成されながらも軽量化され得る。これにより、本発明の実施例によるピーニング装置およびそれを用いたピーニング方法によってその内面が処理されたパイプまたはスプリング等は、軽量化および疲労強度の向上が同時に求められる様々な製品に適用され得る。
【0043】
また、本発明の実施例によるピーニング装置およびそれを用いたピーニング方法は、小型の探針部を用いて波、例えば、超音波を印加して内面に圧縮残留応力を印加し得る。
【0044】
また、本発明の実施例によるピーニング装置およびそれを用いたピーニング方法は、パイプまたはスプリング等の中空内部に探針部が提供する波が形成するキャビティの爆発により行われ得る。
【0045】
中空の内部には、第1流体と第2流体とが充填される。第1流体と第2流体とは、差の大きい音響インピーダンスを有する。探針部は、液体相である第1流体に浸るように配置され波を提供する。
【0046】
提供された波は、前記流体と差の大きい音響インピーダンスを有するパイプ部材の外部に流出せず、パイプの延長方向に進行して音響インピーダンス差の大きい第1流体と第2流体との境界面(すなわち、反射面)で全反射を成して、定在波を中空内部に形成する。
【0047】
提供された波は、反射面に反射されて定在波が形成され、定在波の圧力アンチノードが形成される部分にはキャビティが発生する。
【0048】
発生したキャビティは、臨界体積まで成長した後に爆発する。キャビティが爆発する際に衝撃波が発生し、中空を取り囲む内面は、前記衝撃波によって圧縮残留応力が発生する。
【0049】
一方、第1流体、第2流体およびパイプ部材の間では、音響インピーダンスの差が非常に大きいため(例えば、水と金属パイプ部材は音響インピーダンスの差が非常に大きい)、印加された波は外部に流出されない。
【0050】
長さの長いパイプ部材Pの内部にも一定の間隔で離隔された圧力アンチノードを有する定在波を形成し得る。また、屈曲が形成されたパイプ部材Pの内部にも一定の間隔で離隔された圧力アンチノードを有する定在波を形成し得る。
【0051】
圧力アンチノードは、パイプ部材Pの延長方向に沿って一定の間隔で形成され得る。なお、パイプ部材Pの延長方向は、パイプ部材Pの軸方向と理解され得る。
【0052】
一定の間隔で離隔された圧力アンチノードを有する定在波形成は、反射面位置制御によるピーニング位置制御を可能にする。反射面の位置制御は、中空の第2流体(すなわち、気体相からなる)の圧力を制御することによって実現され得る。さらに、反射面の位置が制御されることにより、反射面を基準に一定の間隔で離隔された圧力アンチノードの位置も制御される。
【0053】
これにより、波の圧力アンチノード、すなわち、キャビティが発生する位置が容易かつ正確に制御され得る。その結果、中空を取り囲む内面の部分中、ピーニング作業が行われ圧縮残留応力が印加される位置が、容易かつ正確に制御され得る。
【0054】
結果として、長さが長く曲げ加工されたパイプ部材または螺旋状に延びるスプリング等の内部に形成された中空を取り囲む内面に、効果的な方法により圧縮残留応力が印加され得る。
【0055】
また、本発明の一実施例によるピーニング装置およびそれを用いたピーニング方法によると、その内面にピーニング作業が行われる対象物であるパイプまたはスプリングおよびそれにピーニングを行うピーニング装置は、回転可能に備えられ得る。供給された第2流体の圧力を一定に維持しながらピーニング装置を回転させると、反射面の位置が変化し得る。この際、反射面はパイプ部材Pの内面に対して垂直な状態で維持され得る。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】
図1は、本発明の実施例によるピーニング装置の原理を示す概念図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例によるピーニング装置の原理を示す概念図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施例によるピーニング装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施例によるピーニング装置を示す概念図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施例によるピーニング装置を示す概念図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施例によるピーニング装置を用いたピーニング方法の流れを示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、
図6のピーニング方法における段階S100の具体的な流れを示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、
図6のピーニング方法における段階S200の具体的な流れを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、
図6のピーニング方法における段階S300の具体的な流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施例によるピーニング装置10を詳細に説明する。以下の説明においては、本発明の特徴を明確にするために、一部の構成要素に関する説明が省略され得る。
【0058】
(1.用語の定義)
ある構成要素が、他の構成要素に「連結されて」いる、または「接続されて」いると言及したときは、該他の構成要素に直接連結されているか、または接続されていることもあり得るが、間に他の構成要素が存在することもあり得ると理解されるべきである。
【0059】
一方、ある構成要素が、他の構成要素に「直接連結されて」いる、または「直接接続されて」いると言及したときは、間に他の構成要素が存在しないことと理解されるべきである。本明細書で使用される単数の表現は、文脈上明らかに異なるものと意味しない限り、複数の表現を含む。
【0060】
以下の説明で使用される「流体疎通可能な連結」または「連通」という用語は、2つ以上の部材のうち1つの部材から他の部材に流体が流動可能に連結されることを意味する。流体疎通可能な連結または連通は、パイプなどの配管またはホース等を用いて形成され得る。
【0061】
以下の説明で使用される「超音波」という用語は、人間の可聴範囲を超える周波数を有する周期的な音圧のことを意味する。一実施例において、超音波は20kHz以上の周波数、または20kHzの範囲より低い周波数を有する音圧であり得る。
【0062】
以下の説明で使用される「キャビテーション(cavitation)」という用語は、流体の圧力変化によって流体内に空洞(cavity)が形成/成長/爆発する一連の現象のことを意味する。一実施例において、前記空洞が形成された後に爆発する過程を通して、パイプ部材P等の内面に衝撃が印加され得る。
【0063】
以下の説明で使用される「ピーニング(peening)」という用語は、材料特性を改善するために、金属などの表面に外力を印加して圧縮残留応力を実現する一連の過程を意味する。ピーニングは、表面に圧縮残留応力を印加して、表面の疲労強度を向上させ疲労寿命を増加させるために行う。一実施例において、ピーニングは、超音波加振の際に発生するキャビティの爆発によって発生する衝撃波によって行われ得る。
【0064】
以下の説明で使用される「パイプ部材P」という用語は、中空(hollow)が内部に形成された任意の部材のことを意味する。パイプ部材Pは、直線状または曲線状に形成されるか、または直線部分および曲線部分のうちの少なくとも1つ以上を含むように形成され得る。
【0065】
一実施例において、パイプ部材Pは、コイルスプリング(coil spring)のように螺旋状に延びて形成され得る。他の実施例において、パイプ部材Pは、内部に中空が形成されたスタビライザ(stabilizer)等、直線部分とラウンド状の部分とのいずれも含む部材からなり得る。
【0066】
すなわち、本発明の実施例によるピーニング装置10およびそれを用いたピーニング方法により、その内面に圧縮残留応力が印加されるパイプ部材Pは、湾曲形成されたラウンド部を少なくとも1つ含むように形成され得る。
【0067】
以下の説明で使用される「第1流体F1」および「第2流体F2」は、パイプ部材Pの中空H内部に充填され、波Wが流動するための媒質として機能する任意の流体のことを意味する。第1流体F1と第2流体F2とは、互いに混合されず、互いに異なる音響インピーダンスを有する。
【0068】
したがって、第1流体F1から第2流体F2に向かって提供された波Wは、第1流体F1と第2流体F2とが接触する面である反射面R.Sで全反射し得る。
【0069】
一実施例において、第1流体F1は、液体相(liquid phase)からなり得る。また、第2流体F2は、気体相(gas phase)からなり得る。
【0070】
前記実施例において、第1流体F1は水からなり得る。また、第2流体F2は空気からなり得る。
【0071】
第1流体F1が水からなる実施例において、水供給器(water supply)が備えられ得る。
【0072】
また、第2流体F2が空気からなる実施例において、空気供給器(air supply)が備えられ得る。
【0073】
以下の説明において、「反射面R.S」という用語は、第1流体F1と第2流体F2とが接触する部分に形成される面のことを意味する。
【0074】
以下の説明では、反射面R.Sが、互いに異なる音響インピーダンスを有する2つの流体が接触して形成されることを前提とする。例えば、中空Hに挿入された固体相(solid phase)の別途の板部材または膜部材が反射面R.Sとして機能し得る。
【0075】
以下で説明するピーニング装置10およびそれを用いたピーニング方法は、パイプ部材Pの内面処理のために活用され得る。さらには、ピーニング装置10およびそれを用いたピーニング方法は、パイプ部材Pの内面を洗浄するためにも活用され得る。
【0076】
(2.本発明の一実施例によるピーニング装置10の説明)
本発明の一実施例によるピーニング装置10は、パイプ部材Pの内部に波Wを照射するように構成され得る。パイプ部材Pの内部空間には、第1流体F1および第2流体F2が充填される。第1流体F1と第2流体F2とが互いに接触する部分は反射面R.Sと定義され得る。
【0077】
この際、充填された第1流体F1および第2流体F2とパイプ部材Pとの音響インピーダンスの差により、照射された波Wはパイプ部材Pの外部に流出されず、両流体F1、F2の境界面で全反射して定在波を形成する。
【0078】
キャビティCは、波Wが形成する圧力アンチノードANに集中的に発生し得る。これは、圧力アンチノード(AN)において周期的な圧力振幅(cyclic pressure amplitude)が最大となることに起因する。キャビティCは、周期的な圧力変位によって成長する。
【0079】
既定のサイズ、すなわち、臨界サイズまで成長したキャビティCは爆発して、パイプ部材Pの内面I.Sに衝撃波を伝達し得る。前記衝撃波によって内面I.Sに圧縮残留応力が印加され得る。
【0080】
さらに、キャビティCが発生および爆発する第1流体F1とパイプ部材Pとは、互いに異なる音響インピーダンスを有するように設けられる。第1流体F1は、パイプ部材Pと差の大きい音響インピーダンスを有するように設けられ、提供された波Wはパイプ部材Pの内部にのみ音波を形成し得る。
【0081】
パイプ部材Pの内面I.Sを塑性変形させて圧縮残留応力を印加するための手段として、波Wおよびそれによって発生するキャビティCを用いることにより、本発明の一実施例によるピーニング装置10は、パイプ部材Pの形状とは関係なく活用され得る。
【0082】
すなわち、本発明の実施例によるピーニング装置10は、パイプ部材Pが直線状、曲線状である場合、さらには、コイルスプリングのように螺旋状である場合にも活用され得る。
【0083】
また、提供された波Wは、パイプ部材Pの内部に充填された第1流体F1および第2流体F2の境界面と定義される反射面R.Sによって全反射して定在波として形成され得る。
【0084】
さらには、反射面R.Sの位置は、中空Hの内部に供給された第2流体F2の圧力(または流体F2の供給量)を制御することによって制御され得る。すなわち、
図2に示すように、提供された波Wの反射位置およびそれによって形成される圧力アンチノードANの位置は、キャビテーションが誘導する圧縮残留応力が求められる内部表面領域に設定され得る。
【0085】
したがって、その幅および体積の狭いパイプ部材Pの内部空間を取り囲む内面I.Sの求められる領域に、キャビテーションによって発生した圧縮残留応力が発生し得る。これにより、パイプ部材Pの疲労強度が増加され得る。
【0086】
一実施例において、パイプ部材Pは、コイルスプリングまたは内部に中空が形成されたスタビライザ等として備えられ得る。
【0087】
以下に説明するパイプ部材Pは、内部に中空Hが形成されることを前提とする。したがって、パイプ部材Pの重量が減少し、パイプ部材Pを用いて作製された製品、例えば、スプリング等の軽量化が達成され得る。パイプ部材Pの中空Hは、パイプ部材Pの延長方向に沿って延びるが、その延長方向の各端部が開放形成され外部と連通され得る。
【0088】
一方、中空Hを取り囲む内面I.Sにピーニング処理が完了したパイプ部材Pは、実際の使用時に各端部に位置する開口部が閉鎖され得る。これにより、実際使用の際、内面I.Sの腐食等が防止され得る。
【0089】
中空Hの内部には、第1流体F1および第2流体F2がそれぞれ充填され得る。この際、第1流体F1および第2流体F2は、中空Hの延長方向に沿って互いに異なる位置に隣接して充填され得る。
図1および
図2に示す実施例において、第1流体F1は相対的に左側に位置し、第2流体F2は相対的に右側に位置する。
【0090】
第1流体F1には、波Wを照射するための探針部200が挿入され得る。
【0091】
図1および
図2に示す実施例において、探針部200は第1流体F1に部分的に浸るように配置される。探針部200から提供された波Wは、パイプ部材Pが延びる方向に沿って伝播される。言い換えると、波Wは第2流体F2に向かって伝播すると言える。
【0092】
第1流体F1および第2流体F2が接触する面は、反射面R.Sと定義され得る。前述のように、第1流体F1と第2流体F2とは互いに異なる音響インピーダンスを有する。
【0093】
したがって、第1流体F1に沈殿した探針部200から提供された波Wは、反射面R.Sによって全反射し定在波を形成する。
【0094】
この際、定在波は、複数の圧力ノードNと圧力アンチノードANとを形成するが、最も大きい周期的圧力振幅を有する圧力アンチノードAN部分にてキャビティCが発生する。
【0095】
波Wの圧力アンチノードANでは、圧力振幅(pressure amplitude)が周期的に変化し、キャビティCは徐々に成長して、臨界サイズ以上になると爆発する。キャビティCの爆発は、パイプ部材Pの内面I.Sに衝撃波を印加するが、これによって内面I.Sに圧縮残留応力が発生し得る。
【0096】
結果として、キャビティCの爆発によって発生する衝撃波によって、パイプ部材Pの内面I.Sに塑性変形(plastic deformation)および圧縮残留応力が発生し得る。
【0097】
キャビティCが予想される圧力アンチノードANの位置は、中空Hに注入された第1流体F1および第2流体F2が接触する部分に形成される反射面R.Sの位置によって決定され得る。したがって、中空Hの内部に収容された気体相の第2流体F2の圧力または供給量を制御して反射面R.Sの位置を変更すれば、圧力アンチノードANの位置も変更され得る。
【0098】
図2を参照して前記内容を具体的に説明すると、次の通りである。
【0099】
図2において、点線で示す圧力アンチノードANおよび反射面R.Sは位置変化の前、一点鎖線で示す圧力アンチノードANおよび反射面R.Sは位置変化の後を示す。
【0100】
図2の右側に示す拡大図を参照すると、反射面R.Sの位置が下側に移動する(一点鎖線で示す反射面R.S)。これにより、反射面R.Sに反射して形成された定在波が形成する圧力アンチノードANの位置も反射面R.Sが移動した分下側に移動する(一点鎖線で示す圧力アンチノードAN)。
【0101】
図2の左側に示す拡大図を参照すると、反射面R.Sの位置変化による圧力アンチノードANが移動した状態が示される。
【0102】
すなわち、
図2の左側に示す拡大図において、新たな圧力アンチノードAN(一点鎖線で示す圧力アンチノード(AN))は、以前の圧力アンチノードAN(点線で示す圧力アンチノード(AN))に比べて上側に移動する。
【0103】
結果として、反射面R.Sの位置を連続的に変化させると、内面I.S全体に圧縮残留応力の発生が起こり得る。
【0104】
図1および
図2に示す左側の拡大図は、探針部200に連結されたパイプ部材Pの内部を概念的に示し、右側の拡大図は、反射面R.Sが形成されるパイプ部材Pの内部を概念的に示すものである。
【0105】
以下、
図1~
図5を参照して、本発明の実施例によるピーニング装置10を詳細に説明する。図示の実施例において、ピーニング装置10は、制御部100、探針部200、タンク部材300、および動力部400を含む。
【0106】
第1流体および第2流体が充填されたパイプ中空内部の反射面の位置制御は、気相の第2流体と連結されている制御部100により実現される。制御部100は、反射面の位置にて静圧(static pressure)の変化および/または供給量の変化により、反射面の位置を変化させる。
【0107】
制御部100は、パイプ部材Pの内部に供給される第2流体(気体)の圧力と供給量(supplied flow rate)とを調節し得る。また、制御部100は、パイプ部材Pの内部に充填されている第1流体(液体)の量を感知し得る。
【0108】
探針部200は、波Wをパイプ部材Pの中空Hに照射する。照射された波Wは、中空Hを取り囲む内面I.SにキャビティCを生成し得る。具体的に、波Wが反射面R.Sにより反射して形成される定在波の圧力アンチノードAN部分にキャビティCが形成され得る。
【0109】
生成されたキャビティCが、成長および爆発する際に発生する衝撃波によってパイプ部材Pの内面I.Sに圧縮残留応力が印加され得ることは、前述の通りである。
【0110】
探針部200は、中空Hに部分的に収容され得る。
図1を参照すると、探針部200の端部が、第1流体F1に沈殿するように中空Hに収容される。探針部200の前記端部から波Wが照射され得ることが理解される。
【0111】
探針部200は、小型のサイズを有するように形成され得る。具体的に、探針部200は、中空Hの断面よりも小さい断面を有する一部分を含むように形成され、中空Hに収容され得る。
【0112】
タンク部材300は、パイプ部材Pおよびパイプ部材Pに充填される第1流体F1を収容する。パイプ部材Pは、タンク部材300に収容され、その一部が第1流体F1に浸るように配置される。
【0113】
図4~
図5に示す実施例において、パイプ部材Pは、タンク部材300に収容された第1流体F1に完全に浸るように配置される。パイプ部材Pが第1流体F1に浸る領域の割合は変更され得る。
【0114】
他の実施例において、パイプ部材Pは、タンク部材300に収容されない状態で配置され得る。前記実施例において、パイプ部材Pの中空Hには、第1流体F1が供給された状態で設けられ得る。この際、制御部100によって中空Hに供給された第1流体F1および第2流体F2の量が制御され得る。
【0115】
すなわち、パイプ部材Pがタンク部材300なしで設けられる実施例においても、タンク部材300が適用された実施例でパイプ部材Pの内面I.Sに圧縮残留応力が印加される過程が同様に行われ得る。
【0116】
タンク部材300に収容される第1流体F1は、外部の流体供給部(図示せず)から供給され得る。前記実施例において、タンク部材300は、外部の流体供給部(図示せず)と流体疎通可能に連結され得る。
【0117】
反射面において、気相の第2流体の圧力が一定に保たれた状態でタンク部材300が回転すると、反射面と内面との間の角度を一定に維持しながら反射面の位置を制御し得る。すなわち、後述する動力部400は、タンク部材300を時計方向および反時計方向中のいずれかの方向に回転させ得る。タンク部材300は、ピーニング装置20の他の構成要素、例えば、探針部200とともに回転され得る。
【0118】
図示されてはいないが、タンク部材300にはカバー部材(図示せず)が設けられ得る。前記カバー部材(図示せず)は、タンク部材300の開口部を閉鎖して、タンク部材300の回転時に収容された第1流体F1が漏れたり、パイプ部材Pが離脱したりすることが防止され得る。
【0119】
動力部400は、ピーニング装置20の他の構成要素が回転されるための動力を提供する。一実施例において、動力部400は、制御部100と、探針部200と、タンク部材300と、第1流体F1および第2流体F2が充填されたパイプ部材Pとを回転させ得る。
【0120】
これにより、反射面R.Sと内面I.Sとの間の角度が一定に保たれながら反射面の位置が制御されると、反射面の位置に応じて連続的に形成される定在波のパターンは変化しない。その結果、定在波の圧力アンチノードANの制御の精度および発生するキャビティCの位置制御の精度が向上し得る。
【0121】
動力部400は、ピーニング装置20の他の構成要素およびパイプ部材Pと連結される。動力部400は、ピーニング装置20の他の構成要素およびパイプ部材Pを回転させ得る。
【0122】
図5に示す実施例において、動力部400は、タンク部材300の下部プラットフォームを軸として、ピーニング装置20の他の構成要素と、パイプ部材Pとを回転させ得る(
図5に示す矢印の方向)。
【0123】
動力部400は、パイプ部材Pを回転させ得る任意の形態で備えられ得る。一実施例において、動力部400は、モータ等の電動機の形態で備えられ得る。前記実施例において、動力部400は外部の電源(図示せず)と通電可能に連結され、回転に必要な電力伝達を受け得る。動力部400の回転速度および回転方向などは制御可能に構成され得る。
【0124】
図示されてはいないが、ピーニング装置10には予備-荷重印加部(図示せず)が設けられ得る。予備-荷重印加部(図示せず)は、実際の使用時にパイプ部材Pに印加される使用中荷重(例えば、使用中荷重は自動車のスプリングコイルに加えられるものであり得る)と同様の荷重をパイプ部材Pに印加し得る。この際、予備-荷重印加部(図示せず)は、探針部200が波Wを印加する前にパイプ部材Pに荷重を印加するように構成され得る。
【0125】
例えば、予備-荷重印加部(図示せず)は、パイプ部材Pに使用中荷重が加えられる方法によりパイプ部材Pに予備-荷重(pre-load)を加えられる。
【0126】
パイプ部材Pが、コイルスプリング(coil spring)として設けられる場合、予備-荷重印加部(図示せず)は、コイルスプリングが使用中荷重を受ける方法により、コイルスプリングの軸方向に圧縮荷重または引張荷重を印加し得る。
【0127】
予備-荷重印加部(図示せず)が設けられる実施例において、キャビティによる圧縮残留応力発生の効果は、引張応力が得られる領域において向上され得る。
【0128】
図1、
図2、
図4、および
図5を参照すると、本実施例によるピーニング装置10によって圧縮残留応力が印加されるパイプ部材Pが示される。
【0129】
図示の実施例において、パイプ部材Pは、螺旋状に延びるコイルスプリングの形態で設けられる。パイプ部材Pの内部には、外面O.Sおよび内面I.Sで取り囲まれて形成される空間である中空Hが形成される。
【0130】
中空Hは、パイプ部材Pが延びる方向に延長する。図示の実施例において、パイプ部材Pは螺旋状に形成されるので、中空Hも螺旋状に形成されることが理解され得る。中空Hの延長方向の各端部は、開放形成され外部と連通され得る。
【0131】
図1および
図2に示すように、探針部200は、中空Hの一端部(図示の実施例において上端部)に部分的に挿入され得る。探針部200の端部は中空Hの内部に収容され、中空Hに波Wを効果的に照射し得る。探針部200が、中空Hの外部から中空Hに波Wを照射し得るように設けられ得ることは前述の通りである。
【0132】
図1および
図2の拡大図に示す実施例において、探針部200は液体相である第1流体F1に沈殿して波Wを照射するように配置される。
【0133】
前述のように、波Wが反射面R.Sで反射して定在波によって形成される圧力アンチノードAN部分にてキャビティCが生成および成長して爆発する。
【0134】
キャビティCの前記爆発によって発生する衝撃波によって、内面I.Sに圧縮残留応力が印加され得る。
【0135】
以上説明したピーニング装置10において、パイプ部材Pが延びる方向の中間部に反射面R.Sが形成され得る。ピーニング装置10は、パイプ部材Pの中間部分に形成された反射面R.Sの一方および他方それぞれの内面I.Sに順次圧縮残留応力を印加し得る。
【0136】
具体的に、探針部200は、反射面R.Sを基準にパイプ部材Pの一端部に先ず挿入され、パイプ部材Pの前記一方に偏った半分の部分に圧縮残留応力を印加し得る。
【0137】
前記過程が完了すると、探針部200は、反射面R.Sを基準にパイプ部材Pの他端部に挿入され、パイプ部材Pの前記他方に偏った残り半分の部分に圧縮残留応力を印加し得る。
【0138】
これは、パイプ部材Pの延長長さが過剰であると、波Wの延長距離も増加して、中空H内部の超音波の強度が弱くなるおそれのあることに起因する。したがって、本実施例において、パイプ部材Pが適切に区切られ、区切られた部分にそれぞれ圧縮残留応力を発生させると各々の定在波フィールド(standing wave field)の延長長さが小さくなるので、パイプ部材Pが区画なく結合する場合に比べて、定在波の強度が弱くなることが低減される。
【0139】
(3.本発明の実施例によるピーニング方法の説明)
本発明の実施例によるピーニング方法は、前述の実施例によるピーニング装置10によって行われ得る。
【0140】
以下、
図6~
図9を参照して、本発明の実施例によるピーニング方法を詳細に説明する。
【0141】
図6を参照すると、図示の実施例によるピーニング方法は、パイプ部材Pの内部に形成された中空Hに第1流体F1および第2流体F2が注入される段階S10と、パイプ部材Pの中空Hに注入された第1流体F1に波Wが印加されキャビティCが形成される段階S100と、形成されたキャビティCが爆発する際にパイプ部材Pの内面I.Sに圧縮残留応力が印加される段階S200と、波Wが形成する圧力アンチノードANの位置が制御される段階S300とを含む。
【0142】
なお、後述する段階S100、S200、S300の前に、パイプ部材Pの内部に形成された中空Hに液体相の第1流体F1および気体相の第2流体F2が注入される段階S10が先行され得る。
【0143】
[(1)パイプ部材Pの中空Hに注入された第1流体F1に波Wが印加されキャビティCが形成される段階S100の説明]
本段階S100は、パイプ部材Pの中空Hに探針部200が挿入され波Wが印加され、波Wが反射面R.Sに全反射して定在波として形成され、これにより、圧力アンチノードAN部分にキャビティCを形成される段階である。以下、
図7を参照して本段階S100を詳細に説明する。
【0144】
探針部200は、中空Hの一端部に隣接して配置される。具体的に、探針部200は、中空Hの端部のうち、液体相の第1流体F1が収容されたパイプ部材Pの延長方向の前記一端部に隣接して位置される(S110)。
【0145】
探針部200は、波Wを第1流体F1に印加する(S120)。
【0146】
波Wは、第1流体F1および第2流体F2が接触する部分に形成された反射面R.Sに全反射して定在波として形成される。これにより、定在波として形成された波Wは、圧力ノードNおよび圧力アンチノードANを形成するが、圧力アンチノードANはパイプ部材Pの内面に形成される(S130)。
【0147】
前述のように、圧力アンチノードANは、周期的な圧力振幅が最大となるポイントである。これにより、圧力アンチノードANが形成された位置にキャビティCが集中的に形成される(S140)。
【0148】
[(2)形成されたキャビティCが爆発する際にパイプ部材Pの内面I.Sに圧縮残留応力が印加される段階S200の説明]
本段階S200は、形成されたキャビティCが成長して爆発することにより発生する衝撃波によって、パイプ部材Pの内面I.Sに圧縮残留応力が印加される段階、すなわち、ピーニング作業が行われる段階である。以下、
図8を参照して本段階S200を詳細に説明する。
【0149】
波Wが定在波となって形成される圧力アンチノードANは、複数であり得る。複数の圧力アンチノードANは、パイプ部材Pが延びる方向に沿って互いに離隔され、内面I.Sに位置される。
【0150】
キャビティCは、複数の圧力アンチノードの位置で成長する(S210)。キャビティCの成長が持続して臨界サイズ以上になると、キャビティCは爆発して衝撃波(shockwave)またはマイクロジェット(microjet)を放出する(S220)。
【0151】
キャビティCが放出する前記衝撃波は、パイプ部材Pの内面I.Sに伝達される。これにより、前記衝撃波によって内面I.Sが塑性変形して圧縮残留応力が発生し得る(S230)。
【0152】
[(3)波Wが形成する圧力アンチノードANの位置が制御される段階S300の説明]
本段階S300は、内面I.S全体またはピーニングが求められる部分にむらなく圧縮残留応力を印加するために、キャビティCが発生および成長する圧力アンチノードANの位置が制御される段階である。以下、
図9を参照して本段階S300を詳細に説明する。
【0153】
制御部100は、中空Hに収容された第2流体F2の圧力および/または供給量を制御する(S310)。そのために、制御部100が中空Hと連結されることは前述の通りである。
【0154】
一方、反射面R.Sの位置をより正確に制御するために、パイプ部材Pと、パイプ部材Pに波Wを印加する探針部200と、タンク部材300とがともに回転される段階S330がさらに行われ得る。前記段階S330は、反射面R.Sと内面I.Sとの間の相対的な角度を一定に保ち、反射面R.Sの位置が制御される段階である。
【0155】
まず、パイプ部材P、探針部200、タンク部材300に動力部400が連結される(S331)。図示されてはいないが、ピーニング装置10の他の構成要素、例えば制御部100も動力部400に連結され得る。
【0156】
次に、動力部400がパイプ部材Pと、探針部200と、タンク部材300とを回転させる(S332)。この際、制御部100によって中空Hに供給された第2流体F2の圧力は一定に維持される。
【0157】
図示されてはいないが、ピーニング装置10の他の構成要素、例えば制御部100も一緒に回転され得る。
【0158】
すなわち、制御部100によって中空Hの圧力が一定に維持された状態でパイプ部材Pが回転すると、反射面R.Sと内面I.Sとの間の角度が一定に維持される状態で反射面R.Sの位置が制御され得る。
【0159】
本段階S330が追加で行われると、第2流体F2の圧力または供給量のみを制御して反射面R.Sの位置を制御する場合に比べて、反射面R.Sの位置およびそれによる圧力アンチノードANの位置がより正確に制御され得る。
【0160】
反射面R.Sの位置変化による定在波の圧力アンチノードANのパターンは、一般的に同様に維持されるものと期待され得る。
【0161】
この際、反射面R.Sと内面I.Sとの間の角度が一定に維持されると、圧力アンチノードANのパターンの同一性がさらに向上し得る。その結果、キャビティCの位置および圧縮残留応力が印加される位置がより正確に制御され得る。
【0162】
制御部100によって中空Hに収容された第2流体F2の圧力および/または供給量が制御されることにより(S320)、第1流体F1および第2流体F2が接触する部分に形成される反射面R.Sの位置が制御される(S340)。
【0163】
また、パイプ部材P、探針部200およびタンク部材300がともに回転して反射面R.Sの角度および位置が制御されることにより(S330)、第1流体F1および第2流体(F2)が接触する部分に形成される反射面R.Sの位置が制御され得る(S340)。
【0164】
前記段階S310、S320、S330、S340により、中空Hに印加された波Wが反射面R.Sに全反射して形成される定在波の圧力アンチノードANの位置が変更される(S350)(
図2参照)。その結果、圧力アンチノードANに形成されるキャビティCの位置も制御され得る。
【0165】
以上、本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、当技術分野において通常の知識を有する者であれば、以下の特許請求の範囲に記載された本発明の思想および領域から逸脱しない範囲内で、本発明を多様に修正および変更させ得ることは理解されよう。
【符号の説明】
【0166】
10:ピーニング装置
100:制御部
200:探針部
300:タンク部材
400:動力部
F1:第1流体
F2:第2流体
H:中空(Hollow)
I.S:内面(Inner Surface)
O.S:外面(Outer Surface)
N:圧力ノード(pressure node)
AN:圧力アンチノード(pressure antinode)
C:キャビティ(cavity)
P:パイプ部材
R.S:反射面(Reflection Surface)
W:波(Wave)
W.L:水面(Water Line)